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特許7173807回路付サスペンション基板および回路付サスペンション基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】回路付サスペンション基板および回路付サスペンション基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20221109BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20221109BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G11B21/21 D
G11B5/60 P
G11B5/60 C
H05K3/28 B
H05K3/28 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018177682
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020047355
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】山内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤村 仁人
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-107621(JP,A)
【文献】特開2012-099204(JP,A)
【文献】特開2012-104210(JP,A)
【文献】特開2017-107629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/21
G11B 5/60
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダが実装される回路付サスペンション基板であって、
ベース絶縁層と、
前記ベース絶縁層の厚み方向における前記ベース絶縁層の一方側に配置され、前記スライダと接続される端子および配線を備える導体パターンと、
前記配線を被覆するように、前記厚み方向における前記ベース絶縁層の一方側に配置されるカバー絶縁層と、を備え、
前記カバー絶縁層は、
前記スライダの実装領域において、前記端子を露出させるとともに、前記配線を被覆する配線被覆部分と、
前記厚み方向における前記配線被覆部分の一方面に部分的に配置され、前記スライダの台座となる台座部分とを備え、
前記配線被覆部分と前記台座部分とは、一体であり、
前記台座部分が、前記カバー絶縁層における前記配線被覆部分から厚み方向一方側に向かって突出することを特徴とする、回路付サスペンション基板。
【請求項2】
前記ベース絶縁層および前記カバー絶縁層のそれぞれは、前記配線が延びる長手方向に延び、
前記端子は、前記長手方向と交差する交差方向に互いに間隔を空けて複数設けられ、
前記台座部分は、前記交差方向に沿って延びる第1台座部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の回路付サスペンション基板。
【請求項3】
前記配線は、互いに間隔を空けて複数設けられ、
前記第1台座部分は、前記厚み方向から見て、複数の前記配線と重なるように配置されることを特徴とする、請求項2に記載の回路付サスペンション基板。
【請求項4】
スライダが実装される回路付サスペンション基板の製造方法であって、
ベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の厚み方向における前記ベース絶縁層の一方側に配置され、前記スライダと接続される端子および配線を備える導体パターンとを備える積層体を準備する工程と、
前記導体パターンを被覆するように、前記厚み方向における前記ベース絶縁層の一方側に感光性樹脂層を形成する工程と、
前記感光性樹脂層を階調露光および現像した後、加熱硬化させることにより、前記スライダの実装領域において、前記端子を露出させるとともに、前記配線を被覆する配線被覆部分と、前記厚み方向における前記配線被覆部分の一方面に部分的に積層され、前記スライダの台座となる台座部分とを一体に備えるカバー絶縁層を形成する工程と、を含み、
前記台座部分が、前記カバー絶縁層における前記配線被覆部分から厚み方向一方側に向かって突出することを特徴とする、回路付サスペンション基板の製造方法。
【請求項5】
前記感光性樹脂層を階調露光するときに、フォトマスクを前記感光性樹脂層に対して配置して、前記感光性樹脂層を露光し、
前記フォトマスクは、
前記感光性樹脂層における前記台座部分に対応する部分と向かい合う第1光透過部と、
前記感光性樹脂層における前記配線被覆部分に対応する部分と向かい合う第2光透過部と、
前記感光性樹脂層における前記端子を被覆する部分と向かい合う遮光部と、を備え、
前記第2光透過部の光透過率は、前記第1光透過部の光透過率よりも小さいことを特徴とする、請求項4に記載の回路付サスペンション基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路付サスペンション基板および回路付サスペンション基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気ヘッドを有するスライダが実装される回路付サスペンション基板が知られている。回路付サスペンション基板は、金属支持基板と、金属支持基板の一方面に配置されるベース絶縁層と、ベース絶縁層の一方面に配置され、スライダに接続される端子および配線を備える導体パターンと、ベース絶縁層の一方面に配置され、配線を被覆するカバー絶縁層とを備える。
【0003】
そのような回路付サスペンション基板として、例えば、スライダを支持する台座を備え、台座が、ベース絶縁層に含まれる台座ベース層と、導体パターンに含まれ、台座ベース層の一方面に配置される台座導体層と、カバー絶縁層に含まれ、台座導体層の一方面に配置される台座カバー層と、台座カバー層の一方面に配置される台座支持層とを備える回路付サスペンション基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-152051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1に記載の回路付サスペンション基板を製造するには、まず、金属支持基板上にベース絶縁層および導体パターンを順次形成した後、感光性の合成樹脂を含むワニスを、導体パターンを被覆するように、ベース絶縁層上に塗布し、端子が露出されかつ配線が被覆されるように露光および現像し、次いで、加熱硬化して、台座カバー層を含むカバー絶縁層を形成する。
【0006】
その後、感光性の合成樹脂を含むワニスを、カバー絶縁層上に塗布し、台座カバー層上に台座支持層が形成されるように露光および現像した後、加熱硬化して、台座支持層を形成する。これによって、回路付サスペンション基板が製造される。
【0007】
つまり、特許文献1に記載の回路付サスペンション基板の製造において、カバー絶縁層は、カバー絶縁層を硬化するための熱処理と、台座支持層を硬化するための熱処理との両方の環境下に曝され、台座支持層は、台座支持層を硬化するための熱処理の環境下のみに曝される。
【0008】
そのため、カバー絶縁層と台座支持層とは、互いに熱履歴が異なるために熱収縮率に差異が生じる場合があり、カバー絶縁層と台座支持層との相対的な位置精度が低下してしまうおそれがある。
【0009】
すると、カバー絶縁層から露出する端子と、台座支持層に支持されるスライダとの相対的な位置精度が低下し、端子とスライダとの接続信頼性が低下するとともに、スライダの姿勢が不安定となる不具合がある。
【0010】
本発明は、端子を露出させるとともに配線を被覆する配線被覆部分と、スライダの台座となる台座部分との相対的な位置精度の向上を図ることができる回路付サスペンション基板および回路付サスペンション基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明[1]は、スライダが実装される回路付サスペンション基板であって、ベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の厚み方向における前記ベース絶縁層の一方側に配置され、前記スライダと接続される端子および配線を備える導体パターンと、前記配線を被覆するように、前記厚み方向における前記ベース絶縁層の一方側に配置されるカバー絶縁層と、を備え、前記カバー絶縁層は、前記スライダの実装領域において、前記端子を露出させるとともに前記配線を被覆する配線被覆部分と、前記厚み方向における前記配線被覆部分の一方面に部分的に配置され、前記スライダの台座となる台座部分とを備え、前記配線被覆部分と前記台座部分とは、一体である、回路付サスペンション基板を含む。
【0012】
このような構成によれば、端子を露出させるとともに配線を被覆する配線被覆部分と、スライダの台座となる台座部分とが一体であるので、回路付サスペンション基板の製造において、配線被覆部分および台座部分を一括して加熱硬化させることができる。そのため、配線被覆部分および台座部分の熱履歴を互いに一致させることができ、それらの熱収縮率に差異が生じることを抑制できる。
【0013】
その結果、配線被覆部分と台座部分との相対的な位置精度の向上を図ることができ、ひいては、配線被覆部分から露出する端子と、台座部分に支持されるスライダとの相対的な位置精度の向上を図ることができる。また、配線被覆部分と台座部分とが一体であるので、それらが別体である場合と比較して、配線被覆部分と台座部分との密着性の向上を図ることができる。これによって、端子とスライダとの接続信頼性の向上を図るとともに、スライダの姿勢の安定性の向上を図ることができる。
【0014】
本発明[2]は、前記ベース絶縁層および前記カバー絶縁層のそれぞれは、前記配線が延びる長手方向に延び、前記端子は、前記長手方向と交差する交差方向に互いに間隔を空けて複数設けられ、前記台座部分は、前記交差方向に沿って延びる第1台座部分を含む、上記[1]に記載の回路付サスペンション基板を含む。
【0015】
しかるに、絶縁層の熱収縮は、長手方向において比較的大きく、長手方向と交差する交差方向において比較的小さい。
【0016】
上記の構成では、複数の端子が、ベース絶縁層およびカバー絶縁層が延びる長手方向と交差する交差方向に互いに間隔を空けて配置されており、第1台座部分が交差方向に沿って延びている。
【0017】
そのため、第1台座部分が長手方向に沿って延びる態様と比較して、第1台座部分に対するカバー絶縁層の熱収縮の影響を低減できる。その結果、複数の端子と第1台座部分との相対的な位置精度の向上を確実に図ることができ、ひいては、複数の端子と、第1台座部分に支持されるスライダとの相対的な位置精度の向上を確実に図ることができる。
【0018】
本発明[3]は、前記配線は、互いに間隔を空けて複数設けられ、前記第1台座部分は、前記厚み方向から見て、複数の前記配線と重なるように配置される、上記[2]に記載の回路付サスペンション基板を含む。
【0019】
このような構成によれば、第1台座部分が厚み方向から見て複数の配線と重なるように配置されるので、複数の端子が並ぶ方向に延びる第1台座部分と、複数の配線との効率的な配置を確保することができる。
【0020】
本発明[4]は、スライダが実装される回路付サスペンション基板の製造方法であって、ベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の厚み方向における前記ベース絶縁層の一方側に配置され、前記スライダと接続される端子および配線を備える導体パターンとを備える積層体を準備する工程と、前記導体パターンを被覆するように、前記厚み方向における前記ベース絶縁層の一方側に感光性樹脂層を形成する工程と、前記感光性樹脂層を階調露光および現像した後、加熱硬化させることにより、前記スライダの実装領域において、前記端子を露出させるとともに前記配線を被覆する配線被覆部分と、前記厚み方向における前記配線被覆部分の一方面に部分的に積層され、前記スライダの台座となる台座部分とを一体に備えるカバー絶縁層を形成する工程と、を含む、回路付サスペンション基板の製造方法を含む。
【0021】
しかるに、配線被覆部分と台座部分とが別体として構成される場合、まず、導体パターンを被覆するように、ベース絶縁層上に感光性樹脂層を形成し、感光性樹脂層を露光および現像した後、加熱硬化させて、配線被覆部分を備えるカバー絶縁層を形成し、次いで、カバー絶縁層上に感光性樹脂層を形成し、感光性樹脂層を露光および現像した後、加熱硬化させて、台座部分を形成する必要がある。つまり、配線被覆部分および台座部分を形成するために、感光性樹脂層の形成と、露光および現像と、加熱硬化とが繰り返される。
【0022】
一方、上記の方法によれば、導体パターンを被覆するように、厚み方向におけるベース絶縁層の一方側に感光性樹脂層を形成し、感光性樹脂層を階調露光および現像した後、加熱硬化させて、配線被覆部分および台座部分を一体に備えるカバー絶縁層を形成する。
【0023】
そのため、感光性樹脂層の形成と、露光および現像と、加熱硬化とを繰り返す必要がなく、カバー絶縁層を形成する工程において、階調露光および現像後の感光性樹脂層を加熱硬化することにより、配線被覆部分および台座部分を一括して形成することができる。
【0024】
その結果、製造プロセスの短縮化を図ることができながら、配線被覆部分および台座部分の熱履歴を互いに一致させることができる。これによって、配線被覆部分と台座部分との相対的な位置精度が優れた回路付サスペンション基板を円滑に製造することができる。
【0025】
本発明[5]は、前記感光性樹脂層を階調露光するときに、フォトマスクを前記感光性樹脂層に対して配置して、前記感光性樹脂層を露光し、前記フォトマスクは、前記感光性樹脂層における前記台座部分に対応する部分と向かい合う第1光透過部と、前記感光性樹脂層における前記配線被覆部分に対応する部分と向かい合う第2光透過部と、前記感光性樹脂層における前記端子を被覆する部分と向かい合う遮光部と、を備え、前記第2光透過部の光透過率は、前記第1光透過部の光透過率よりも小さい、上記[4]に記載の回路付サスペンション基板の製造方法を含む。
【0026】
このような方法によれば、フォトマスクは、感光性樹脂層を階調露光するときに、第1光透過部が感光性樹脂層における台座部分に対応する部分と向かい合い、第2光透過部が感光性樹脂層における配線被覆部分に対応する部分と向かい合い、遮光部が感光性樹脂層における端子を被覆する部分と向かい合うように、配置される。
【0027】
そのため、フォトマスク越しに感光性樹脂層を露光することにより、端子を露出させることができながら、配線被覆部分および台座部分を一体に備えるカバー絶縁層を円滑に形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の回路付サスペンション基板によれば、端子を露出させるとともに配線を被覆する配線被覆部分と、スライダの台座となる台座部分との相対的な位置精度の向上を図ることができる。
【0029】
本発明の回路付サスペンション基板の製造方法によれば、製造プロセスの短縮化を図ることができながら、配線被覆部分と台座部分との相対的な位置精度が優れた回路付サスペンション基板を円滑に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の回路付サスペンション基板の一実施形態の平面図を示す。
図2図2は、図1に示す金属支持層および導体パターンの平面図を示す。
図3図3は、図1に示す回路付サスペンション基板のA-A断面図を示す。
図4図4は、図1に示す回路付サスペンション基板のB-B断面図を示す。
図5図5は、図1に示す回路付サスペンション基板のC-C断面図を示す。
図6図6は、図1に示す回路付サスペンション基板のD-D断面図を示す。
図7図7Aは、積層体を準備する工程を示す。図7Bは、図7Aに続いて、積層体上に感光性樹脂層を形成する工程を示す。図7Cは、図7Bに続いて、感光性樹脂層と向かい合うようにフォトマスクを配置して、感光性樹脂層を露光する工程を示す。図7Dは、図7Cに続いて、露光後の感光性樹脂層を現像する工程を示す。
図8図8は、本発明の回路付サスペンション基板の第1変形例(台座部分がグランド配線と重なる態様)の断面図を示す。
図9図9は、本発明の回路付サスペンション基板の第2変形例(台座部分が長手方向に延びる態様)の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.回路付サスペンション基板
本発明の一実施形態としての回路付サスペンション基板1を、図1図6を参照して説明する。
【0032】
図1に示すように、回路付サスペンション基板1は、スライダ実装領域Rを有し、スライダ実装領域Rにスライダ7を実装可能である(図3参照)。回路付サスペンション基板1は、長手方向に延びる略平帯状を有している。
【0033】
図1において、紙面厚み方向は、回路付サスペンション基板1の厚み方向(第1方向)であり、紙面手前側が厚み方向の一方側(第1方向の一方側)、紙面奥側が厚み方向の他方側(第1方向の他方側)である。
【0034】
図1において、紙面上下方向は、回路付サスペンション基板1の長手方向(第1方向と直交する第2方向)であり、紙面上側が長手方向の一方側(第2方向の一方側)、紙面下側が長手方向の他方側(第2方向の他方側)である。
【0035】
図1において、紙面左右方向は、交差方向の一例としての回路付サスペンション基板1の幅方向(第1方向および第2方向に直交する第3方向)であり、紙面右側が幅方向の一方側(第3方向の一方側)、紙面左側が幅方向の他方側(第3方向の他方側)である。具体的には、方向は、各図に記載の方向矢印従う。
【0036】
また、以下において、特に言及しない場合、回路付サスペンション基板1の厚み方向を単に厚み方向とし、回路付サスペンション基板1の長手方向を単に長手方向とし、回路付サスペンション基板1の幅方向を単に幅方向とする。
【0037】
図3に示すように、回路付サスペンション基板1は、金属支持層2と、ベース絶縁層3と、導体パターン4と、カバー絶縁層5と、を備える。より詳しくは、回路付サスペンション基板1は、積層構造を有しており、金属支持層2と、ベース絶縁層3と、導体パターン4と、カバー絶縁層5とを、厚み方向の他方側から一方側に向かって順に備えている。
【0038】
図2に示すように、金属支持層2は、導体パターン4を支持する金属支持体であって、長手方向に延びている。なお、図2では、便宜上、ベース絶縁層3およびカバー絶縁層5を省略している。
【0039】
金属支持層2は、ジンバル部20と、本体部21とを備える。
【0040】
ジンバル部20は、長手方向における金属支持層2の一端部に位置する。ジンバル部20は、スライダ実装部22と、素子実装部23と、複数(2つ)のアウトリガー24と、アウトリガー連結部25とを備える。
【0041】
スライダ実装部22は、ジンバル部20の中央部分に位置しており、スライダ実装領域Rに対応している。なお、スライダ実装領域Rは、回路付サスペンション基板1において、厚み方向から見てスライダ実装部22と重なる領域である。スライダ実装部22は、厚み方向から見て矩形状を有する。
【0042】
素子実装部23は、回路付サスペンション基板1において圧電素子8を実装する領域に対応している。素子実装部23の個数は、回路付サスペンション基板1に実装可能な圧電素子8の個数に対応する。本実施形態では、回路付サスペンション基板1は、複数(2つ)の圧電素子8を実装可能である(図4参照)。そのため、金属支持層2は、複数(2つ)の素子実装部23を有する。
【0043】
複数(2つ)の素子実装部23は、幅方向において、スライダ実装部22の長手方向他方側部分を挟むように、スライダ実装部22の両側に配置されている。
【0044】
複数(2つ)の素子実装部23のそれぞれは、2つの端子支持部23Aを有する。2つの端子支持部23Aは、長手方向に互いに間隔を空けて位置する。2つの端子支持部23Aのそれぞれは、厚み方向から見て矩形状を有する。各端子支持部23Aは、スライダ実装部22の幅方向端縁から連続して、幅方向外側に向かって突出している。
【0045】
複数(2つ)のアウトリガー24は、幅方向において、スライダ実装部22の長手方向一方側部分を挟むように、スライダ実装部22の両側に配置されており、長手方向において、複数(2つ)の素子実装部23に対して一方側に間隔を空けて配置されている。
【0046】
複数(2つ)のアウトリガー24のそれぞれは、厚み方向から見てL字形状を有する。各アウトリガー24は、スライダ実装部22の幅方向端部から連続して幅方向外側に向かって延びた後、屈曲して長手方向一方側に向かって延びる。
【0047】
アウトリガー連結部25は、スライダ実装部22に対して、長手方向の一方側に間隔を空けて位置する。アウトリガー連結部25は、複数(2つ)のアウトリガー24の長手方向の一端部間を連結する。
【0048】
本体部21は、スライダ実装部22に対して長手方向の他方側に位置する。本体部21は、第1部分21Aと、第2部分21Bとを備える。
【0049】
第1部分21Aは、本体部21における長手方向一方側部分であって、スライダ実装部22と第2部分21Bとの間に位置する。第1部分21Aは、長手方向に延びており、その長手方向の途中部(例えば、中央部)が幅方向に屈曲している。詳しくは、第1部分21Aは、スライダ実装部22の長手方向の他端部から連続して、長手方向の他方側に向かって延びた後、幅方向に屈曲して、長手方向の他方側に向かうにつれて幅方向他方側に向かうように延びている。
【0050】
第2部分21Bは、本体部21における長手方向他方側部分であって、長手方向に沿って延びている。第2部分21Bは、第1部分21Aの長手方向の他端部から連続して長手方向の他方側に向かって延びている。
【0051】
金属支持層2の材料として、例えば、ステンレスなどの金属材料が挙げられる。金属支持層2の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、15μm以上、例えば、35μm以下、好ましくは、25μm以下である。
【0052】
図3に示すように、ベース絶縁層3は、厚み方向における金属支持層2の一方側、具体的には、金属支持層2の厚み方向の一方面に配置される。なお、ベース絶縁層3の厚み方向と、回路付サスペンション基板1の厚み方向とは、同じ方向である。
【0053】
図1に示すように、ベース絶縁層3は、長手方向に延びており、導体パターン4に対応する所定のパターンを有する。ベース絶縁層3は、スライダ実装ベース32と、素子実装ベース33(図4参照)と、複数(2つ)のベースリミッタ34と、本体ベース31と、を備える。
【0054】
図3に示すように、スライダ実装ベース32は、スライダ実装領域Rに位置している。スライダ実装ベース32は、スライダ実装部22上、具体的には、スライダ実装部22の厚み方向一方面に配置される。スライダ実装ベース32は、厚み方向から見て、スライダ実装部22と同じ形状を有する。
【0055】
図4に示すように、素子実装ベース33は、素子実装部23の端子支持部23Aと同数設けられる。そのため、本実施形態では、ベース絶縁層3は、複数(4つ)の素子実装ベース33を有する。
【0056】
複数(4つ)の素子実装ベース33のそれぞれは、各端子支持部23A上、具体的には、各端子支持部23Aの厚み方向一方面に配置される。各素子実装ベース33は、厚み方向から見て、各端子支持部23Aと同じ形状を有する。図示しないが、各素子実装ベース33の幅方向内側端部は、スライダ実装ベース32の幅方向端部に連続している。
【0057】
図1に示すように、複数(2つ)のベースリミッタ34は、スライダ実装部22のバネ特性を調整する。複数(2つ)のベースリミッタ34は、複数(4つ)の素子実装ベース33(図4参照)に対して長手方向の一方側に間隔を空けて位置する。複数のベースリミッタ34のそれぞれは、スライダ実装ベース32の幅方向端部とアウトリガー連結部25とを連結する。
【0058】
本体ベース31は、スライダ実装ベース32に対して長手方向の他方側に位置している。図5に示すように、本体ベース31は、本体部21上、具体的には、本体部21の厚み方向一方面に配置される。本体ベース31は、第1本体ベース31Aと、第2本体ベース31Bとを備える。
【0059】
第1本体ベース31Aは、本体部21の第1部分21A上に配置される。第1本体ベース31Aは、厚み方向から見て、第1部分21Aと同じ形状を有する。図示しないが、第1本体ベース31Aの長手方向一端部は、スライダ実装ベース32の長手方向他端部に連続している。
【0060】
第2本体ベース31Bは、本体部21の第2部分21B上に配置される。第2本体ベース31Bは、厚み方向から見て、第2部分21Bと同じ形状を有する。第2本体ベース31Bの長手方向一端部は、第1本体ベース31Aの長手方向他端部に連続している。
【0061】
ベース絶縁層3の材料として、例えば、ポリイミドなどの合成樹脂が挙げられる。ベース絶縁層3の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上、例えば、25μm以下、好ましくは、15μm以下である。
【0062】
図3に示すように、導体パターン4は、ベース絶縁層3の厚み方向の一方側、具体的には、ベース絶縁層3の厚み方向の一方面に配置される。
【0063】
図2に示すように、導体パターン4は、複数の端子の一例としての複数(6つ)のスライダ接続端子40と、複数(4つ)の素子接続端子43と、複数(8つ)の外部接続端子41と、複数の配線の一例としての複数(6つ)のスライダ配線42と、複数(2つ)の素子配線44とを備える。
【0064】
図3に示すように、複数(6つ)のスライダ接続端子40は、スライダ7がスライダ実装領域Rに実装されたときに、スライダ7が備えるスライダ端子7Aと、接合材料9(例えば、はんだなど)を介して電気的に接続される。
【0065】
複数のスライダ接続端子40は、スライダ実装領域Rに位置しており、スライダ実装ベース32上、具体的には、スライダ実装ベース32の厚み方向一方面における長手方向一端部に配置される。図1に示すように、複数のスライダ接続端子40は、幅方向(長手方向と交差する交差方向の一例)に互いに間隔を空けて配置される。複数のスライダ接続端子40のそれぞれは、厚み方向から見て長手方向に延びる矩形状を有する。
【0066】
図4に示すように、複数(4つ)の素子接続端子43は、圧電素子8が回路付サスペンション基板1に実装されたときに、圧電素子8と、接合材料10(例えば、はんだなど)を介して電気的に接続される。複数の素子接続端子43のそれぞれは、各素子実装ベース33上、具体的には、各素子実装ベース33の厚み方向一方面に配置される。
【0067】
図2に示すように、各素子接続端子43は、厚み方向から見て幅方向に延びる矩形状を有する。複数(4つ)の素子接続端子43は、長手方向に互いに間隔を空けて配置される2つの素子接続端子43からなる端子対43Aを複数(2つ)含む。複数の端子対43Aは、複数の素子実装部23に支持されており、幅方向に互いに間隔を隔てて配置される。なお、以下において、各端子対43Aのうち、長手方向の他方側に位置する素子接続端子43を第1素子接続端子43Bとし、長手方向の一方側に位置する素子接続端子43を第2素子接続端子43Cとする。
【0068】
複数(8つ)の外部接続端子41は、第2本体ベース31Bの長手方向の他端部上、具体的には、第2本体ベース31Bの厚み方向一方面における長手方向の他端部に配置される(図1参照)。複数の外部接続端子41は、幅方向に互いに間隔を空けて配置される。複数の外部接続端子41のそれぞれは、厚み方向から見て、長手方向に延びる矩形状を有する。
【0069】
複数(8つ)の外部接続端子41は、複数(6つ)の第1外部端子41Aと、複数(2つ)の第2外部端子41Bとを含む。複数(6つ)の第1外部端子41Aは、複数(6つ)のスライダ接続端子40に対応する。複数(2つ)の第2外部端子41Bは、複数(2つ)の第1素子接続端子43Bに対応する。複数(2つ)の第2外部端子41Bは、複数(8つ)の外部接続端子41のうち幅方向の両端に位置しており、幅方向において複数(6つ)の第1外部端子41Aを挟むように配置される。
【0070】
複数(6つ)のスライダ配線42は、長手方向に延びており、複数のスライダ接続端子40と、複数の第1外部端子41Aとを電気的に接続する。つまり、スライダ配線42は、ベース絶縁層3が延びる方向と同じ方向に延びており、言い換えれば、ベース絶縁層3は、スライダ配線42が延びる長手方向に延びている。
【0071】
複数のスライダ配線42は、第1配線群42Aと、第2配線群42Bとに分類される。
【0072】
第1配線群42Aは、複数(6つ)のスライダ接続端子40のうち、幅方向の一方側に配置される複数(3つ)のスライダ接続端子40と、複数(6つ)の第1外部端子41Aのうち、幅方向の一方側に配置される複数(3つ)の第1外部端子41Aとを電気的に接続する。第1配線群42Aは、互いに平行となるように延びる複数(3つ)のスライダ配線42からなる。
【0073】
詳しくは、第1配線群42Aは、スライダ接続端子40の長手方向他端部から連続して、スライダ実装部22の幅方向一方側部分を通過するように、スライダ実装部22上を引き回された後、本体ベース31上を引き回され、第1外部端子41Aの長手方向一端部に接続される。
【0074】
第2配線群42Bは、複数(6つ)のスライダ接続端子40のうち、幅方向の他方側に配置される複数(3つ)のスライダ接続端子40と、複数(6つ)の第1外部端子41Aのうち、幅方向の他方側に配置される複数(3つ)の第1外部端子41Aとを電気的に接続する。第2配線群42Bは、互いに平行となるように延びる複数(3つ)のスライダ配線42からなる。
【0075】
詳しくは、第2配線群42Bは、スライダ接続端子40の長手方向他端部から連続して、スライダ実装部22の幅方向他方側部分を通過するように、スライダ実装部22上を引き回された後、本体ベース31上を引き回され、第1外部端子41Aに接続される。
【0076】
複数(2つ)の素子配線44は、複数の第1素子接続端子43Bと、複数の第2外部端子41Bとを電気的に接続する。詳しくは、複数の素子配線44のそれぞれは、第1素子接続端子43Bの幅方向内側端部から連続して、素子実装ベース33上通過するように幅方向に延びた後、屈曲して複数のスライダ配線42と平行となるように、スライダ実装ベース32(図3参照)上および本体ベース31(図5参照)上を順次引き回され、第2外部端子41Bの長手方向一端部に接続される。
【0077】
なお、図示しないが、複数の第2素子接続端子43Cは、グランド配線により、金属支持層2に接地されている。
【0078】
導体パターン4の材料として、例えば、銅などの導体材料が挙げられる。導体パターン4の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上、例えば、20μm以下、好ましくは、12μm以下である。
【0079】
図3および図5に示すように、カバー絶縁層5は、スライダ配線42および素子配線44を被覆するように、ベース絶縁層3の厚み方向の一方側、具体的には、ベース絶縁層3の厚み方向の一方面に配置される。
【0080】
図1に示すように、カバー絶縁層5は、長手方向に延びており、スライダ配線42および素子配線44を被覆する所定のパターンを有する。つまり、カバー絶縁層5は、スライダ配線42が延びる方向と同じ方向に延びている。
【0081】
カバー絶縁層5は、スライダ実装領域カバー50と、複数(2つ)の素子実装領域カバー51と、複数(2つ)の補強カバー52と、本体カバー53とを備える。
【0082】
スライダ実装領域カバー50は、スライダ実装領域Rに位置する。スライダ実装領域カバー50は、配線被覆部分54と、台座部分55とを備える。
【0083】
配線被覆部分54は、スライダ実装領域Rにおいて、複数のスライダ接続端子40を露出させるとともに複数のスライダ配線42を被覆するように、スライダ実装ベース32の厚み方向の一方側、具体的には、スライダ実装ベース32の厚み方向の一方面に配置される(図3参照)。配線被覆部分54は、厚み方向から見て、スライダ実装ベース32と同じ形状を有する。
【0084】
厚み方向から見て導体パターン4(スライダ配線42)と重なる部分の配線被覆部分54の厚みは、例えば、0.5μm以上、好ましくは、2μm以上、例えば、10μm以下、好ましくは、8μm以下である。
【0085】
台座部分55は、スライダ7の台座となる部分である。台座部分55は、スライダ7がスライダ実装領域Rに実装されたときに、スライダ7と接触して、スライダ7の姿勢を維持する(図3参照)。台座部分55は、配線被覆部分54の厚み方向一方面に部分的に配置されており、配線被覆部分54から厚み方向一方側に向かって突出している(図3参照)。台座部分55は、厚み方向から見て、ベース絶縁層3上に位置する導体パターン4の部分と重なっている。
【0086】
具体的には、台座部分55は、第1台座部分55Aと、複数(2つ)の第2台座部分55Bと、複数(2つ)の第3台座部分55Cとを含む。
【0087】
第1台座部分55Aは、配線被覆部分54の厚み方向一方面における長手方向一端部に配置されている。第1台座部分55Aは、細長い直線矩形状を有し、幅方向、すなわち、複数のスライダ接続端子40が並ぶ方向に沿って延びている。第1台座部分55Aは、厚み方向から見て、複数のスライダ配線42のすべてと一括して重なるように配置されている。
【0088】
複数(2つ)の第2台座部分55Bは、配線被覆部分54の厚み方向一方面における幅方向一端部に配置されており、第1台座部分55Aに対して長手方向他方側に間隔を空けて位置している。複数(2つ)の第2台座部分55Bは、厚み方向から見て第1配線群42Aと重なるように配置されており、長手方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数(2つ)の第2台座部分55Bのそれぞれは、細長い直線矩形状を有し、幅方向、すなわち、複数のスライダ接続端子40が並ぶ方向に沿って延びている。
【0089】
複数(2つ)の第3台座部分55Cは、配線被覆部分54の厚み方向一方面における幅方向他端部に配置されており、複数(2つ)の第2台座部分55Bと幅方向に間隔を空けて位置している。複数(2つ)の第3台座部分55Cのそれぞれは、厚み方向から見て第2配線群42Bと重なるように配置されており、長手方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数(2つ)の第3台座部分55Cのそれぞれは、細長い直線矩形状を有し、幅方向、すなわち、複数のスライダ接続端子40が並ぶ方向に沿って延びている。
【0090】
厚み方向から見て導体パターン4(スライダ配線42)と重なる部分の台座部分55の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、2μm以上、例えば、10μm以下、好ましくは、8μm以下である。配線被覆部分54の厚みに対する台座部分55の厚み(台座部分55の厚み/配線被覆部分54の厚み)は、例えば、0.5以上、好ましくは、1以上、例えば、12以下、好ましくは、10以下である。
【0091】
また、配線被覆部分54の厚みと台座部分55の厚みとの総和(スライダ実装ベース32の厚み方向一方面と台座部分55の厚み方向一方面との間の間隔)は、例えば、2μm以上、好ましくは、4μm以上、例えば、20μm以下、好ましくは、16μm以下である。
【0092】
このような配線被覆部分54と台座部分55とは、一体である。詳しくは後述するが、配線被覆部分54の熱履歴と台座部分55の熱履歴とは同じであり、配線被覆部分54の硬化条件と台座部分55の硬化条件とは同じである。そのため、配線被覆部分54の熱収縮率と台座部分55の熱収縮率とは同じであり、配線被覆部分54の表面硬度と台座部分55の表面硬度とは同じである。
【0093】
複数(2つ)の素子実装領域カバー51は、圧電素子8を実装する領域に対応しており、厚み方向から見て複数(2つ)の素子実装部23と重なっている。複数(2つ)の素子実装領域カバー51は、幅方向において、スライダ実装領域カバー50を挟むように、スライダ実装領域カバー50の両側に配置されている。
【0094】
図4に示すように、複数の素子実装領域カバー51のそれぞれは、第1端子被覆部分56と、第2端子被覆部分57と、堰部分58とを備える。
【0095】
第1端子被覆部分56は、第1素子接続端子43Bの周縁部を被覆するように、対応する素子実装ベース33上に配置される。第1端子被覆部分56の幅方向内側端部は、スライダ実装領域カバー50の幅方向端部に接続されている(図1参照)。第1端子被覆部分56の厚みの範囲は、上記した配線被覆部分54の厚みの範囲と同様である。
【0096】
第1端子被覆部分56は、第1開口56Aを有する。第1開口56Aは、第1素子接続端子43Bの厚み方向一方面における中央部分を露出している。
【0097】
第2端子被覆部分57は、第1端子被覆部分56に対して長手方向に一方側に間隔を空けて配置されており、第2素子接続端子43Cの周縁部を被覆するように、対応する素子実装ベース33上に配置される。第2端子被覆部分57の幅方向内側端部は、スライダ実装領域カバー50の幅方向端部に接続されている(図1参照)。第2端子被覆部分57の厚みの範囲は、上記した配線被覆部分54の厚みの範囲と同様である。
【0098】
第2端子被覆部分57は、第2開口57Aを有する。第2開口57Aは、第2素子接続端子43Cの厚み方向一方面における中央部分を露出している。
【0099】
堰部分58は、第2端子被覆部分57と一体である。堰部分58は、第2端子被覆部分57の厚み方向一方面に配置されており、第2開口57Aの長手方向一方側の周縁部に配置されている。堰部分58は、第2端子被覆部分57から厚み方向一方側に向かって突出している。堰部分58は、厚み方向から見て、第2端子被覆部分57の長手方向一端部と重なっており、長手方向の他方側に向かって開放される凹形状を有する(図1参照)。堰部分58の厚みは、上記した台座部分55の厚みと同じである。
【0100】
このような堰部分58は、圧電素子8と第2素子接続端子43Cとを接合材料10(例えば、はんだなど)により接続するときに、接合材料10が長手方向の一方側に向かって流出することを抑制する。
【0101】
図6に示すように、複数(2つ)の補強カバー52のそれぞれは、厚み方向から見て、アウトリガー連結部25の長手方向他端縁を跨ぐように、各ベースリミッタ34の長手方向一端部上に配置されている。これによって、アウトリガー連結部25に接続されるベースリミッタ34の端部を補強することができる。各補強カバー52の厚みは、上記した配線被覆部分54の厚みと台座部分55の厚みとの総和と同じである。
【0102】
図5に示すように、本体カバー53は、スライダ配線42および素子配線44を被覆するように、本体ベース31上、具体的には、本体ベース31の厚み方向一方面に配置される。本体カバー53は、第1本体カバー53Aと、第2本体カバー53Bとを備える。
【0103】
第1本体カバー53Aは、スライダ配線42および素子配線44を被覆するように、第1本体ベース31A上に配置される。第1本体カバー53Aの長手方向一端部は、スライダ実装領域カバー50の長手方向他端部に接続されている(図1参照)。第1本体カバー53Aの厚みは、第2本体カバー53Bの厚みより薄く、上記した配線被覆部分54の厚みと同じである。
【0104】
第2本体カバー53Bは、複数の外部接続端子41を露出させるとともに、スライダ配線42および素子配線44を被覆するように、第2本体ベース31B上に配置される(図1参照)。第2本体カバー53Bの長手方向一端部は、第1本体カバー53Aの長手方向他端部に接続されている。第2本体カバー53Bの厚みは、上記した配線被覆部分54の厚みと台座部分55の厚みとの総和と同じである。
【0105】
このようなカバー絶縁層5は、上記したように、比較的厚みの厚い厚肉部分5Aと、比較的厚みの薄い薄肉部分5Bとを備える。
【0106】
図1に示すように、厚肉部分5Aは、台座部分55と配線被覆部分54とが重なる部分、第2端子被覆部分57と堰部分58とが重なる部分、補強カバー52および第2本体カバー53Bを含む。厚肉部分5Aの厚みの範囲は、上記した配線被覆部分54の厚みと台座部分55の厚みとの総和の範囲と同じである。
【0107】
薄肉部分5Bは、カバー絶縁層5における厚肉部分5A以外の部分であり、具体的には、台座部分55と重ならない配線被覆部分54の部分、第1端子被覆部分56と、堰部分58と重ならない第2端子被覆部分57の部分および第1本体カバー53Aを含む。薄肉部分5Bの厚みの範囲は、上記した配線被覆部分54の厚みの範囲と同じである。
【0108】
カバー絶縁層5の材料として、例えば、ポリイミドなどの合成樹脂が挙げられる。
【0109】
2.回路付サスペンション基板の製造
次に、図7A図7Bを参照して、回路付サスペンション基板1の製造方法について説明する。
【0110】
回路付サスペンション基板1の製造方法は、金属支持層2とベース絶縁層3と導体パターン4とを備える積層体60を準備する工程と(図7A参照)、導体パターン4を被覆するようにベース絶縁層3上に感光性樹脂層61を形成する工程と(図7B参照)、感光性樹脂層61を階調露光および現像した後、加熱硬化させて、カバー絶縁層5を形成する工程と(図7Cおよび図7D参照)、を含む。
【0111】
このような回路付サスペンション基板1の製造方法では、図7Aに示すように、まず、積層体60を準備する。積層体60は、公知の方法により準備できる。
【0112】
例えば、図示しないが、金属支持層2を準備し、金属支持層2上に、感光性の合成樹脂を含むワニスを塗布して乾燥させて、感光性樹脂層を形成した後、感光性樹脂層を露光および現像し、加熱硬化させて、ベース絶縁層3を上記のパターンに形成した後、導体パターン4を、ベース絶縁層3上に、例えば、アディティブ法またはサブトラクティブ法によって、上記のパターンに形成する。これによって、積層体60が準備される。
【0113】
次いで、図7Bに示すように、導体パターン4を被覆するように、ベース絶縁層3の厚み方向一方側、具体的には、ベース絶縁層3の厚み方向一方面に、感光性樹脂層61を形成する。
【0114】
具体的には、感光性の合成樹脂(例えば、ポリイミド)を含むワニスを、公知の方法により、ベース絶縁層3の厚み方向一方面全体に塗布して乾燥させる。これによって、感光性樹脂層61が形成される。
【0115】
次いで、感光性樹脂層61を階調露光する。
【0116】
感光性樹脂層61を階調露光するには、図7Cに示すように、1つのフォトマスク62を、感光性樹脂層61に対して厚み方向の一方側に間隔を空けて配置する。
【0117】
フォトマスク62は、光を透過する光透過部63と、光を透過しない遮光部64とを備える。光透過部63は、ベース絶縁層3と同じパターンを有しており、第1光透過部63Aと、第2光透過部63Bとを含む。
【0118】
第1光透過部63Aは、カバー絶縁層5の厚肉部分5Aに対応するパターンを有する。波長が300nm~450nmの光に対する第1光透過部63Aの光透過率は、例えば、50%以上、好ましくは、75%以上、さらに好ましくは、80%を超過し、例えば、100%以下である。
【0119】
フォトマスク62が感光性樹脂層61に対して厚み方向の一方側に配置された状態において、第1光透過部63Aは、感光性樹脂層61のうち、台座部分55を含む厚肉部分5Aに対応する部分と向かい合う。
【0120】
第2光透過部63Bは、カバー絶縁層5の薄肉部分5Bに対応するパターンを有する。波長が300nm~450nmの光に対する第2光透過部63Bの光透過率は、波長が300nm~450nmの光に対する第1光透過部63Aの光透過率よりも小さい。第1光透過部63Aの光透過率に対する第2光透過部63Bの光透過率(第2光透過部63Bの光透過率/第1光透過部63Aの光透過率×100)は、例えば、10%以上、好ましくは、15%以上、例えば、90%以下、好ましくは、80%以下である。具体的には、波長が300nm~450nmの光に対する第2光透過部63Bの光透過率は、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上、さらに好ましくは、30%を超過し、例えば、80%以下、好ましくは、75%未満、さらに好ましくは、50%未満である。
【0121】
フォトマスク62が感光性樹脂層61に対して厚み方向の一方側に配置された状態において、第2光透過部63Bは、感光性樹脂層61のうち、配線被覆部分54を含む薄肉部分5Bに対応する部分と向かい合う。
【0122】
遮光部64は、ベース絶縁層3から露出させる導体パターン4の各部分(具体的には、スライダ接続端子40、素子接続端子43および外部接続端子41)に対応するパターンを有する。波長が300nm~450nmの光に対する遮光部64の光透過率は、例えば、0%以上、例えば、30%以下、好ましくは、10%未満、さらに好ましくは、5%未満である。
【0123】
フォトマスク62が感光性樹脂層61に対して厚み方向の一方側に配置された状態において、遮光部64は、感光性樹脂層61のうち、複数のスライダ接続端子40を被覆する部分と向かい合う。なお、図示しないが、遮光部64は、感光性樹脂層61のうち、複数の外部接続端子41を被覆する部分と、第1開口56Aおよび第2開口57Aに対応する部分とも向かい合う。
【0124】
次いで、フォトマスク62越しに、感光性樹脂層61に、例えば、波長が300nm~450nmの光(紫外線)を照射する。
【0125】
このとき、光は、第1光透過部63Aを透過して、感光性樹脂層61における厚肉部分5Aに対応する部分を露光するとともに、第2光透過部63Bを透過して、感光性樹脂層61における薄肉部分5Bに対応する部分を露光する。第1光透過部63Aの光の透過量は、第2光透過部63Bの光の透過量よりも大きい。
【0126】
そのため、第1光透過部63Aと向かい合う感光性樹脂層61の部分は、例えば、厚み方向の全体にわたって完全に露光される一方、第2光透過部63Bと向かい合う感光性樹脂層61の部分は、厚み方向の一部(例えば、厚み方向他方側部分)のみが露光され、厚み方向の残部(例えば、厚み方向一方側部分)は十分に露光されない。また、遮光部64と向かい合う感光性樹脂層61の部分は、遮光部64により遮光されるため、露光されない。
【0127】
次いで、図7Dに示すように、公知の現像液により現像処理して、感光性樹脂層61において、未露光部分(露光が不十分な部分を含む)を溶解除去する。
【0128】
これにより、感光性樹脂層61が、上記したカバー絶縁層5のパターンを有するように、現像される。
【0129】
その後、現像後の感光性樹脂層61を加熱処理して、硬化させる。
【0130】
加熱温度は、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上、例えば、500℃以下、好ましくは、450℃以下である。加熱時間は、例えば、60分以上、好ましくは、120分以上、例えば、720分以下、好ましくは、600分以下である。
【0131】
このとき、配線被覆部分54および台座部分55が一体であるので、配線被覆部分54および台座部分55を一括して加熱硬化させることができる。そのため、配線被覆部分54および台座部分55の熱履歴を互いに一致させることができ、それらの熱収縮率が同程度となる。これによって、カバー絶縁層5が形成される。
【0132】
以上によって、回路付サスペンション基板1が製造される。
【0133】
図3に示すように、カバー絶縁層5は、スライダ実装領域Rにおいて、複数のスライダ接続端子40を露出させるとともに複数のスライダ配線42を被覆する配線被覆部分54と、配線被覆部分54の厚み方向一方面に部分的に配置され、スライダ7の台座となる台座部分55とを一体に備える。
【0134】
そのため、回路付サスペンション基板1の製造において、配線被覆部分54および台座部分55を一括して加熱硬化させることができる。その結果、配線被覆部分54および台座部分55の熱履歴を互いに一致させることができ、それらの熱収縮率を同程度にすることができる。
【0135】
これによって、配線被覆部分54と台座部分55との相対的な位置精度の向上を図ることができ、ひいては、配線被覆部分54から露出するスライダ接続端子40と、台座部分55に支持されるスライダ7との相対的な位置精度の向上を図ることができる。また、配線被覆部分54と台座部分55とが一体であるので、それらが別体である場合と比較して、配線被覆部分54と台座部分55との密着性の向上を図ることができる。その結果、スライダ接続端子40とスライダ7との接続信頼性の向上を図るとともに、スライダ7の姿勢の安定性の向上を図ることができる。
【0136】
また、図1に示すように、複数のスライダ接続端子40が、ベース絶縁層3およびカバー絶縁層5が延びる長手方向と直交する幅方向に、互いに間隔を空けて配置されており、第1台座部分55Aが幅方向に沿って延びている。
【0137】
そのため、第1台座部分55Aが長手方向に沿って延びる態様と比較して、第1台座部分55Aに対するカバー絶縁層5の熱収縮の影響を低減できる。
【0138】
その結果、複数のスライダ接続端子40と第1台座部分55Aとの相対的な位置精度の向上を確実に図ることができ、ひいては、複数のスライダ接続端子40と、第1台座部分55Aに支持されるスライダ7との相対的な位置精度の向上を確実に図ることができる。
【0139】
また、第1台座部分55Aは、厚み方向から見て複数のスライダ配線42と重なるように配置されている。そのため、第1台座部分55Aと、複数のスライダ配線42との効率的な配置を確保することができる。
【0140】
また、図7A図7Dに示すように、回路付サスペンション基板1の製造において、導体パターン4を被覆するように、ベース絶縁層3の厚み方向一方側に感光性樹脂層61を形成し、感光性樹脂層61を階調露光および現像した後、加熱硬化させて、配線被覆部分54および台座部分55を一体に備えるカバー絶縁層5を形成する。
【0141】
そのため、感光性樹脂層61の形成と、露光および現像と、加熱硬化とを繰り返す必要がなく、カバー絶縁層5を形成する工程において、階調露光および現像後の感光性樹脂層61を加熱硬化することにより、配線被覆部分54および台座部分55を一括して形成することができる。
【0142】
その結果、製造プロセスの短縮化を図ることができながら、配線被覆部分54および台座部分55の熱履歴を互いに一致させることができる。これによって、配線被覆部分54と台座部分55との相対的な位置精度が優れた回路付サスペンション基板1を円滑に製造することができる。
【0143】
また、図7Cに示すように、フォトマスク62は、感光性樹脂層61を階調露光するときに、第1光透過部63Aが感光性樹脂層61における台座部分55に対応する部分と向かい合い、第2光透過部63Bが感光性樹脂層61における配線被覆部分54に対応する部分と向かい合い、遮光部64が感光性樹脂層61におけるスライダ接続端子40を被覆する部分と向かい合うように、配置される。
【0144】
そのため、フォトマスク62越しに感光性樹脂層61を露光することにより、スライダ接続端子40を露出させることができながら、配線被覆部分54および台座部分55を一体に備えるカバー絶縁層5を円滑に形成することができる。
【0145】
また、1つのフォトマスク62が、第1光透過部63Aと、第2光透過部63Bと、遮光部64とを備えるので、第1光透過部63A、第2光透過部63Bおよび遮光部64の相互の位置精度の向上を図ることができ、ひいては、スライダ接続端子40、配線被覆部分54および台座部分55の相互の位置精度の向上を図ることができる。
【0146】
3.変形例
上記した実施形態では、図3に示すように、台座部分55が、厚み方向から見て、スライダ接続端子40と第1外部端子41Aとを接続するスライダ配線42と重なるように配置されているが、台座部分55の配置は、これに限定されない。図8に示すように、台座部分55は、端子と金属支持層2とを接続するグランド配線70と重なるように配置することもできる。
【0147】
上記した実施形態では、図1に示すように、台座部分55が、スライダ配線42と交差(直交)ように延びているが、台座部分55の形状は、これに限定されない。図9に示すように、第2台座部分55Bおよび第3台座部分55Cが、スライダ配線42に沿うように、長手方向に延びていてもよい。
【0148】
これら変形例によっても、上記の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、上記の実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0149】
1 回路付サスペンション基板
3 ベース絶縁層
4 導体パターン
5 カバー絶縁層
40 スライダ接続端子
42 スライダ配線
54 配線被覆部分
55 台座部分
55A 第1台座部分
60 積層体
61 感光性樹脂層
62 フォトマスク
63A 第1光透過部
63B 第2光透過部
64 遮光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9