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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ピッキング装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20221109BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20221109BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B25J15/06 S
B25J13/08 A
B25J15/08 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018189865
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020059066
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 剛
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094110(WO,A1)
【文献】特開平02-070695(JP,A)
【文献】特開平09-239682(JP,A)
【文献】特開2012-171039(JP,A)
【文献】特開2015-147256(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094109(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/138261(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0063629(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052135(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/16-15/08
B66C 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状のワークをピッキングするピッキング装置であって、
前記ワークを吸着する吸着部と、
前記吸着部を移動させる移動部と、
前記ワークを撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像を処理して軸方向における前記ワークの両端の位置を検出する検出処理部と、
前記画像から検出された前記ワークの両端のうち一端を吸着位置に設定すると共に、他端を支点として前記ワークを立ち上げるように前記一端の円弧状の移動軌跡を設定する設定処理部と、
前記吸着部で前記ワークの前記吸着位置を吸着してから前記吸着部が前記移動軌跡に沿って移動して上昇するように前記吸着部と前記移動部とを制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記吸着部が前記移動軌跡に沿って移動して前記ワークが立ち上がる直前位置で一旦停止し、以降は前記吸着部が前記ワークを下方に押し付けるように移動してから上昇するように前記移動部を制御し、
前記吸着部が前記ワークを下方に押し付けるように移動する際に、前記吸着部が前記ワークから受ける反力を吸収する反力吸収部材を備える
ッキング装置。
【請求項2】
軸状のワークをピッキングするピッキング装置であって、
前記ワークを吸着する吸着部と、
前記吸着部を移動させる移動部と、
前記ワークを撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像を処理して軸方向における前記ワークの両端の位置を検出する検出処理部と、
前記画像から検出された前記ワークの両端のうち一端を吸着位置に設定すると共に、他端を支点として前記ワークを立ち上げるように前記一端の円弧状の移動軌跡を設定する設定処理部と、
前記吸着部で前記ワークの前記吸着位置を吸着してから前記吸着部が前記移動軌跡に沿って移動して上昇するように前記吸着部と前記移動部とを制御する制御部と、
を備え、
前記ワークは、前記他端を支点として立ち上げられた際に自立するように、前記他端の端面が平坦状に形成されており、
前記制御部は、前記吸着部が前記移動軌跡に沿って移動して前記ワークが立ち上がる直前位置で停止すると共に前記吸着部による吸着を解除するように前記吸着部と前記移動部とを制御し、
前記撮像部は、前記吸着部による吸着が解除されて立ち上がった状態の前記ワークを再撮像し、
前記検出処理部は、前記撮像部により再撮像された画像を処理して、前記ワークをピッキングするために前記ワークの位置を再検出する
ピッキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ピッキング装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの状態を認識し、その認識結果に基づいてピッキング位置を決定してワークをピッキングする装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、ワークを吸着するハンドに複数の吸盤が設けられており、ワークをピッキングした際の各吸盤の吸着圧力に基づいてピッキング状態が安定しているか否かを判定し、不安定と判定すると吸盤による吸着位置を変更するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-132521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなワークのピッキング装置において、軸状のワークを軸方向が鉛直方向となる立ち姿勢でピッキングする場合がある。その場合、軸方向の上端が吸着されたワークがその吸着位置を支点に揺れて不安定な状態となることがある。しかし、軸状のワークを立ち姿勢でピッキングするための吸着位置は限られるため、上述した特許文献1ように吸着位置を変更することによりワークを安定させるのは困難である。このため、ワークの揺れが収まるのを待つ必要があり、時間的なロスが生じて作業効率が低下してしまう。
【0005】
本開示は、軸状のワークを立ち姿勢でピッキングする際にワークを速やかに安定させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のピッキング装置は、軸状のワークをピッキングするピッキング装置であって、前記ワークを吸着する吸着部と、前記吸着部を移動させる移動部と、前記ワークを撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された画像を処理して軸方向における前記ワークの両端の位置を検出する検出処理部と、前記画像から検出された前記ワークの両端のうち一端を吸着位置に設定すると共に、他端を支点として前記ワークを立ち上げるように前記一端の円弧状の移動軌跡を設定する設定処理部と、前記吸着部で前記ワークの前記吸着位置を吸着してから前記吸着部が前記移動軌跡に沿って移動して上昇するように前記吸着部と前記移動部とを制御する制御部と、を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示のピッキング装置は、画像から検出したワークの両端のうち一端を吸着位置に設定すると共に、他端を支点としてワークを立ち上げるように一端の円弧状の移動軌跡を設定する。そして、吸着部でワークの吸着位置を吸着させてから吸着部を移動軌跡に沿って移動させ上昇させる。これにより、吸着部でワークの一端を吸着してから直ちに真上に上昇するものに比して、ワークを立ち姿勢に近付けてから上昇することができるから、吸着位置を支点とするワークの振れ幅を抑えて、ワークが揺れるのを抑制することができる。このため、軸状のワークを立ち姿勢でピッキングする際にワークを速やかに安定させて、ワークを立ち姿勢として行う作業の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】作業システム10の概略説明図。
図2】把持ユニット50の斜視図。
図3】ボルト移載処理の一例を示すフローチャート。
図4】ピッキング動作処理の一例を示すフローチャート。
図5】ピッキング動作の一例を示す説明図。
図6】第1変形例のピッキング動作処理を示すフローチャート。
図7】第1変形例のピッキング動作を示す説明図。
図8】第2変形例のピッキング動作処理を示すフローチャート。
図9】第2変形例のピッキング動作を示す説明図。
図10】第3変形例のピッキング動作処理を示すフローチャート。
図11】第3変形例のピッキング動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は作業システム10の概略説明図であり、図2は把持ユニット50の斜視図である。作業システム10は、図1に示すように、システム制御部12と、ワーク撒布装置20と、ワーク移載装置40と、ワーク収容箱80とを備える。また、本実施形態では、ワークとしてボルト37を例示して説明する。なお、図1図2の左右方向がX軸方向であり、前後方向がY軸方向であり、上下方向がZ軸方向である。
【0011】
システム制御部12は、システム全体を制御するものであり、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。システム制御部12は、ワーク撒布装置20やワーク移載装置40などと電気的に接続されており、これらの装置へ信号を出力し、これらの装置から信号を入力する。
【0012】
ワーク撒布装置20は、図1に示すように、多軸ロボットアーム21と、撒布ユニット22と、撒布制御部28とを備える。撒布ユニット22は、図示しない供給部から供給された複数のボルト37を採取してワーク収容箱80の作業用プレート81へ撒くユニットであり、多軸ロボットアーム21のアーム先端に取り付けられている。撒布ユニット22は、アクチュエータ25によって昇降可能なロッド24と、ロッド24の下端に固定された円柱状の吸着部23とを有する。吸着部23は、比較的強力な電磁石であり、磁力により複数のボルト37を一度に吸着する。吸着部23は、多軸ロボットアーム21やアクチュエータ25によって自由に水平動や上下動が可能である。撒布制御部28は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成され、ワーク撒布装置20の動作を制御する。
【0013】
ワーク移載装置40は、多軸ロボットアーム41と、把持ユニット50と、カメラ45と、照明46と、移載制御部48とを備える。把持ユニット50は、ワーク収容箱80の作業用プレート81に撒かれた複数のボルト37(図1参照)から1つのボルト37を磁力で吸着して把持するユニットであり、多軸ロボットアーム41のアーム先端に取り付けられている。把持ユニット50は、多軸ロボットアーム41によって自由に水平動や上下動が可能である。カメラ45と照明46は、多軸ロボットアーム41のアーム先端に固定されている。カメラ45は、作業用プレート81に撒かれた複数のボルト37などを撮像し、その画像を移載制御部48に出力する。照明46は、LEDなどの発光源が環状に配置されたリングライトであり、カメラ45と同軸に配置されている。移載制御部48は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成され、ワーク移載装置40の動作を制御する。
【0014】
ワーク移載装置40の把持ユニット50は、図2に示すように、アーム先端に取り付けられたL型部材51と、L型部材51に支持軸52を介して連結されたブラケット53とを有し、ブラケット53に設けられた吸着部55とチャック部60とを備える。ブラケット53には、上述したカメラ45や照明46(図2の1点鎖線参照)も支持されている。
【0015】
吸着部55は、ブラケット53の下部に上下方向に延在するように固定された軸状の電磁石として構成されている。吸着部55は、供給される電力に応じて電磁石が複数段階(例えば3段階)の磁力(吸着力)を生じるように構成されている。
【0016】
チャック部60は、所定の中心線(吸着部55の電磁石の中心軸)に対して左右対称に配置され上面視の形状がV字状の一対の把持爪62と、一対の把持爪62を開閉させる開閉機構65と、一対の把持爪62を昇降させる昇降機構70とを備える。一対の把持爪62は、それぞれ上下方向に延在するスプライン軸としてのシャフト63の下端に取り付けられている。開閉機構65は、ブラケット53の中央部にX軸方向に延在するように配設されたX軸レール66と、図示しないエアシリンダの駆動によりX軸レール66上を互いに接近または離間する左右一対のX軸スライダ67とを備える。一対のX軸スライダ67は、それぞれシャフト63がボールスプラインを介して上下動可能に挿通されている。昇降機構70は、ブラケット53の上部にロッド(ピストンロッド)72が上下方向(Z軸方向)に往復動するように配設されたエアシリンダ71と、ロッド72の下端に取り付けられX軸方向に延びる左右一対の長穴73aが形成された昇降板73とを備える。昇降板73の左右一対の長穴73aには、各シャフト63の上端が挿通されている。各シャフト63の上端は、昇降板73の上面側と下面側に設けられた支持具74,75により、長穴73aから抜けることなく且つ長穴73a内をX軸方向にスライド可能に支持される。
【0017】
チャック部60の一対の把持爪62は、昇降機構70のエアシリンダ71の駆動により昇降板73およびシャフト63が上下動するのに伴って上下動し、開閉機構65のエアシリンダの駆動により一対のX軸スライダ67およびシャフト63が接近・離間するのに伴って開閉する。このため、把持ユニット50は、吸着部55に吸着された状態のボルト37を、チャック部60の一対の把持爪62により左右両側から挟んで、センタリングしながら把持するものとなる。
【0018】
ワーク収容箱80は、図1に示すように上方が開放された箱であり、作業用プレート81が水平に支持されている。ワーク収容箱80は、複数個(ここでは6個)が1つの収容台82に載せられている。収容台82は、フレーム14の上面に敷かれたレール84に沿って、退避位置(図1の点線参照)と処理位置(図1の実線参照)との間で図示しない駆動部によって移動可能となっている。本実施形態では、収容台82はフレーム14の上面の左右両側に1つずつ設けられている。
【0019】
パレット36は、図1に示すようにボルト37を整列した状態で載置する部材である。パレット36は、アクリル樹脂などの樹脂板の上面に、所定の着磁パターンで複数の磁極が着磁された片面多極着磁シートが貼り付けられており、磁性体であるボルト37の頭部38を磁力で保持する。パレット36は、ボルト37のサイズに応じて定められた位置にボルト37が載置される。パレット36は、コンベアベルト34によって搬入された後、ボルト37の移載位置で停止され、ボルト37が載置された後、搬出される。
【0020】
次に、こうして構成された本実施形態の作業システム10の動作、特に、ワーク収容箱80内のボルト37をパレット36へ整列して載置するボルト移載処理について説明する。このボルト移載処理に先立ち、ワーク撒布装置20によって、複数のボルト37がワーク収容箱80の作業用プレート81上へ撒かれて、ランダムな姿勢でばらばらに貯留されている。ワーク移載装置40は、把持ユニット50により、作業用プレート81上のボルト37を1つずつピッキングしてパレット36の所定位置に移動させ載置させる。
【0021】
図3は、ボルト移載処理の一例を示すフローチャートである。ボルト移載処理は、ワーク移載装置40の移載制御部48により実行される。この処理では、移載制御部48は、まず、作業用プレート81上の複数のボルト37をカメラ45で撮像し(S100)、撮像した画像を画像処理して複数のボルト37のうち1つのボルト37を認識してその両端の位置を検出する(S110)。次に、移載制御部48は、ボルト37の軸部39の先端を吸着部55による吸着位置に設定すると共に(S120)、ボルト37の頭部38を支点としてボルト37を立ち上げるための吸着部55の移動軌跡Rを設定する(S130)。続いて、移載制御部48は、ボルト37を把持ユニット50でピッキングするピッキング動作処理を実行する(S140)。そして、移載制御部48は、ボルト37をピッキングした把持ユニット50をパレット36上に移動させ(S150)、ボルト37をパレット36上の目標位置に載置して(S160)、ボルト移載処理を終了する。以下、S140のピッキング動作処理の詳細を説明する。図4はピッキング動作処理の一例を示すフローチャートであり、図5はピッキング動作の一例を示す説明図である。
【0022】
ピッキング動作処理では、移載制御部48は、まず、多軸ロボットアーム41により把持ユニット50を下降させて吸着部55にボルト37の先端の吸着位置を吸着させる(S200,図5A)。ここで、図5に示すように、移動軌跡Rは、ボルト37の頭部38を支点として軸方向が鉛直方向となるようにボルト37を立ち上げると共に立ち上げた際に頭部38が作業用プレート81から僅かに浮き上がった状態となる円弧状の移動軌跡として定められる。移動軌跡Rの始点即ち当初の吸着位置は、ボルト37における軸部39の先端に吸着部55の下端が上方から当接可能な位置(X0,Y0,Z0)として定められる。例えば、移載制御部48は、画像から検出した軸部39の先端位置に基づいてX座標の値X0やY座標の値Y0を定め、軸部39の径に応じた高さに基づいてZ座標の値Z0を定める。また、移動軌跡Rの終点位置は、軸部39の先端の中心が頭部38の頂点の中心の鉛直上方となってボルト37の軸方向が鉛直方向となる位置で、且つボルト37の頭部38が作業用プレート81の上面から僅かに浮き上がる位置(X1,Y1,Z1)として定められる。例えば、移載制御部48は、画像から検出した頭部38の頂点位置に立ち上げに伴うずれ量などを加味してX座標の値X1やY座標の値Y1を定め、ボルト37の全長と浮き上がり量とを加えた高さに基づいてZ座標の値Z1を定める。そして、移載制御部48は、ボルト37の全長に基づく円弧径で、始点位置(X0,Y0,Z0)と終点位置(X1,Y1,Z1)とを円弧状に滑らかに結ぶ移載軌跡Rを定める。なお、以下では、位置(X1,Y1,Z1)を鉛直位置P2とする。
【0023】
次に、移載制御部48は、移動軌跡Rに沿って所定速度で吸着部55を移動させ(S210)、ボルト37が立ち上がった立ち姿勢となる直前の鉛直直前位置P1に吸着部55が到達するのを待つ(S220)。移載制御部48は、S210では、吸着部55の下端が移動軌跡Rに沿って移動するように、多軸ロボットアーム41を制御して把持ユニット50を移動させる。また、鉛直直前位置P1は、図5Bに示すように、ボルト37の軸方向が鉛直方向となる若干手前の位置であり、鉛直方向とのなす角度θが例えば数度~十度程度の角度に定められている。また、移動軌跡Rの終点位置は、ボルト37の頭部38が僅かに浮き上がる位置としたから、鉛直直前位置P1は浮き上がり直前の位置となり、値Z1よりも例えば1mmなどの数mm程度低い位置となる。
【0024】
移載制御部48は、S220で鉛直直前位置P1に吸着部55が到達したと判定すると、吸着部55の移動を一旦停止させる(S230)。続いて、移載制御部48は、所定速度よりも遅い速度で移動軌跡Rに沿って吸着部55を移動させ(S240)、ボルト37が立ち姿勢となる鉛直位置P2に到達するのを待つ(S250)。このように、移載制御部48は、鉛直直前位置P1から鉛直位置P2まで吸着部55を移動軌跡Rに沿って低速移動させるのである。そして、移載制御部48は、S250で鉛直位置P2に吸着部55が到達したと判定すると、吸着部55を真上に上昇させてボルト37を吊り下げ状態とし(S260)、チャック部60の一対の把持爪62が下降してボルト37をチャックするように昇降機構70と開閉機構65とを制御して(S270)、ピッキング動作処理を終了する。
【0025】
鉛直位置P2では、頭部38が僅かに浮き上がった状態でボルト37が立ち姿勢となるが(図5C参照)、鉛直直前位置P1から鉛直位置P2まで吸着部55を低速移動させることで、吸着部55が鉛直位置P2に到達した際に慣性によってボルト37が大きく揺れるのを抑制することができる。このため、ワーク移載装置40は、S260で吊り下げ状態となったボルト37を速やかに安定した立ち姿勢とすることができるから、ボルト37の軸心がチャック部60のチャック中心とずれるのを防止することができる。また、ワーク移載装置40は、ボルト37の揺れが収まるのを待つ必要もないから、吊り下げ状態となったボルト37を速やかにチャックすることができる。また、ワーク移載装置40は、ボルト37の軸心のずれを防止することで、ボルト37の倒れや位置ずれを防止して、パレット36上の目標位置にボルト37を精度良く載置することができる。
【0026】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の吸着部55が本開示の吸着部に相当し、多軸ロボットアーム41が移動部に相当し、カメラ45が撮像部に相当し、図3のボルト移載処理のS110を実行する移載制御部48が検出処理部に相当し、ボルト移載処理のS120,S130を実行する移載制御部48が設定処理部に相当し、ボルト移載処理のS140を実行する移載制御部48が制御部に相当し、ワーク移載装置40がピッキング装置に相当する。
【0027】
以上説明したワーク移載装置40は、吸着部55でボルト37の吸着位置を吸着させてから吸着部55を移動軌跡Rに沿って移動させ上昇させる。これにより、ボルト37を立ち姿勢により近付けてから上昇させることができるから、吸着位置を支点とするボルト37の振れ幅を抑えてボルト37が揺れるのを抑制することができる。このため、ピッキングしたボルト37を速やかに立ち姿勢で安定させて作業効率を向上させることができる。
【0028】
また、吸着部55は移動軌跡Rに沿って所定速度で移動して鉛直直前位置P1で一旦停止し、鉛直位置P2まで低速移動してから上昇する。このため、上昇直前のボルト37の移動速度を落とすと共にボルト37を立ち姿勢として振れ幅が殆どない状態で吸着部55が上昇を開始するため、ボルト37が揺れるのをより確実に抑制することができる。
【0029】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0030】
例えば、上述した実施形態では、ピッキング動作処理において鉛直直前位置P1で一旦停止して所定速度よりも遅い速度に変更したが、停止することなく遅い速度に切り替えるものとしてもよい。また、鉛直位置P2まで吸着部55を移動軌跡Rに沿って移動させるものとしたが、これに限られず、以下の第1~第3変形例のようにしてもよい。なお、各変形例では、図4と同じ処理には同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0031】
図6は第1変形例のピッキング動作処理を示すフローチャートであり、図7は第1変形例のピッキング動作を示す説明図である。第1変形例では、移載制御部48は、S220,S230で鉛直直前位置P1に到達した吸着部55の移動を停止すると、吸着部55を真上に上昇させるS260の処理を行う。即ち、第1変形例では、吸着部55でボルト37の軸部39の先端を吸着し(図7A参照)、移動軌跡Rに沿って移動させて鉛直直前位置P1で一旦停止させてから(図7B参照)、吸着部55を真上に上昇させるのである(図7C参照)。第1変形例では、ワーク移載装置40は、ボルト37を立ち姿勢とする前に鉛直直前位置P1から吸着部55を上昇させるため、実施形態よりはボルト37が振れ易くなる。ただし、鉛直直前位置P1でもボルト37は殆ど立ち上がった状態であるから、ボルト37が大きく揺れるのを防止することができる。また、一旦停止した鉛直直前位置P1から吸着部55が上昇を開始することで、慣性によりボルト37が揺れるのを抑制することができる。したがって、ワーク移載装置40は、ボルト37を速やかに安定した立ち姿勢とすることができる。
【0032】
図8は第2変形例のピッキング動作処理を示すフローチャートであり、図9は第2変形例のピッキング動作を示す説明図である。第2変形例では、図9に示すように、ブラケット53(図9では図示略)に固定された固定部材57と吸着部55との間に配設されたスプリング58を備える。この第2変形例では、移載制御部48は、S220,S230で鉛直直前位置P1に到達した吸着部55の移動を停止すると、ボルト37を下方に押し付けるように吸着部55を水平方向に移動させて(S240a)、鉛直位置P2aに到達するのを待つ(S250a)。鉛直位置P2aは、鉛直位置P2とは異なり、ボルト37の頭部38が浮き上がることなく作業用プレート81に接触したままで立ち上がった状態とする位置である。このように、ワーク移載装置40は吸着部55を水平方向に移動させることにより、ボルト37が頭部38を作業用プレート81に押し付けられながら立ち姿勢となる(図9C参照)。即ち、ボルト37は、作業用プレート81と吸着部55とに挟まれて両端を支持されながら立ち姿勢となるから、S260で吊り下げ状態となったときに殆ど揺れることがないものとなる。したがって、ワーク移載装置40は、ボルト37を速やかに安定した立ち姿勢とすることができる。また、吸着部55はボルト37から反力を受けるが、スプリング58の収縮により僅かに上方に変位することで反力を吸収しつつスプリング58の付勢力によってボルト37を下方に押し付けることができる。なお、第2変形例では、スプリング58の収縮によってボルト37からの反力を吸収するものを例示したが、これに代えてあるいはこれに加えて、作業用プレート81をゴム板や弾力のある薄い樹脂板などで形成して下方に撓ませることで反力を吸収するものとしてもよい。
【0033】
図10は第3変形例のピッキング動作処理を示すフローチャートであり、図11は第3変形例のピッキング動作を示す説明図である。第3変形例では、移載制御部48は、S220,S230で鉛直直前位置P1に到達した吸着部55の移動を停止すると、吸着部55とボルト37とを引き離すように吸着部55を比較的速い速度で勢いよく上昇させて吸着を解除させる(S242)。鉛直直前位置P1ではボルト37は立ち姿勢に近い傾き姿勢であるから(図11B参照)、吸着部55の吸着力が作用しなくなると、ボルト37は重心に作用する力によって立ち姿勢に変化する(図11C参照)。このため、ボルト37は少ない姿勢変化量で大きく揺れることなく立ち姿勢に変化するから、ワーク移載装置40は、ボルト37を速やかに安定した立ち姿勢とすることができる。そして、移載制御部48は、立ち姿勢となったボルト37を再度撮像し(S244)、画像処理してボルト37の位置を再検出する(S246)。このため、移載制御部48は、再検出したボルト37の位置に合わせてS270で把持爪62を下降させてボルト37をチャックすることができるから、ボルト37の軸心がチャック中心とずれるのを防止することができる。
【0034】
各変形例では、鉛直直前位置P1を実施形態と同じ位置としたが、これに限られず、実施形態と異なる鉛直直前位置を用いるものとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、吸着部55を上下方向(Z軸方向)に昇降不能としチャック部60の把持爪62を上下方向に昇降可能としたが、これに限られず、吸着部55と把持爪62とが上下方向に相対的に昇降可能であればよい。また、把持ユニット50が吸着部55による吸着とチャック部60によるチャックとを行うものとしたが、これに限られず、吸着部55による吸着のみを行うものとして、ピッキング動作処理のS270を省略してもよい。また、第3実施例において、吸着部55(電磁石)の下端面を平坦状に形成し、吸着部55の下端面とボルト37の軸部39の先端面とを面接触させるように吸着するようにしてもよい。こうすれば、S244,S246でボルト37の位置を再検出することで、確実な面接触が可能となり、ボルト37を安定して吊り下げることができる。
【0036】
上述した実施形態では、ワークとしてボルト37を例示したが、円筒状や円柱状など軸状のワークであれば如何なる形状のワークとしてもよい。
【0037】
ここで、本開示のピッキング装置は、以下のように構成してもよい。例えば、本開示のピッキング装置において、前記制御部は、前記吸着部が前記移動軌跡に沿って所定速度で移動して前記ワークが立ち上がる直前位置で一旦停止し、以降は前記吸着部が前記所定速度よりも遅い速度で前記移動軌跡に沿って移動してから上昇するように前記移動部を制御するものとしてもよい。こうすれば、上昇する直前のワークの移動速度を落とすと共にワークの振れ幅が殆どない状態でワークの上昇を開始することができるから、ワークが揺れるのをより抑制することができる。
【0038】
本開示のピッキング装置において、前記制御部は、前記吸着部が前記移動軌跡に沿って移動して前記ワークが立ち上がる直前位置で一旦停止し、以降は前記吸着部が真上に上昇するように前記移動部を制御するものとしてもよい。こうすれば、一旦停止した直前位置から上昇を開始することができるから、ワークが揺れるのをより抑制することができる。
【0039】
本開示のピッキング装置において、前記制御部は、前記吸着部が前記移動軌跡に沿って移動して前記ワークが立ち上がる直前位置で一旦停止し、以降は前記吸着部が前記ワークを下方に押し付けるように移動してから上昇するように前記移動部を制御するものとしてもよい。こうすれば、ワークの他端を支持する支持部と吸着部との間でワークを挟んで安定させた状態でワークの上昇を開始することができるから、ワークが揺れるのをより抑制することができる。
【0040】
本開示のピッキング装置において、前記制御部は、前記吸着部が前記移動軌跡に沿って移動して前記ワークが立ち上がる直前位置で停止すると共に前記吸着部による吸着を解除するように前記吸着部と前記移動部とを制御し、前記撮像部は、前記吸着部による吸着が解除されて立ち上がった状態の前記ワークを再撮像し、前記検出処理部は、前記撮像部により再撮像された画像を処理して、前記ワークをピッキングするために前記ワークの位置を再検出するものとしてもよい。こうすれば、立ち上がった状態のワークを、位置ずれなどを防止しつつ適切にピッキングすることができるから、ワークを速やかに安定させると共に作業精度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示は、ワークをピッキングするロボットアームなどの装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 作業システム、12 システム制御部、14 フレーム、20 ワーク撒布装置、21 多軸ロボットアーム、22 撒布ユニット、23 吸着部、24 ロッド、25 アクチュエータ、28 撒布制御部、34 コンベアベルト、36 パレット、37 ボルト、38 頭部、39 軸部、40 ワーク移載装置、41 多軸ロボットアーム、45 カメラ、46 照明、48 移載制御部、50 把持ユニット、51 L型部材、52 支持軸、53 ブラケット、55 吸着部、57 固定部材、58 スプリング、60 チャック部、62 把持爪、63 シャフト、65 開閉機構、66 X軸レール、67 X軸スライダ、70 昇降機構、71 エアシリンダ、72 ピストンロッド、73 昇降板、73a 長穴、74,75 支持具、80 ワーク収容箱、81 作業用プレート、82 収容台、84 レール、P1 鉛直直前位置、P2,P2a 鉛直位置、R 移動軌跡。
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