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特許7173817炭酸ガス除去用の気泡発生部を有する培養装置
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  • 特許-炭酸ガス除去用の気泡発生部を有する培養装置 図1
  • 特許-炭酸ガス除去用の気泡発生部を有する培養装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】炭酸ガス除去用の気泡発生部を有する培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20221109BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018191610
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020058286
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-067679(JP,A)
【文献】特開2008-182899(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002492(WO,A1)
【文献】特開2005-348672(JP,A)
【文献】特開平08-163981(JP,A)
【文献】特開2014-018174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0052578(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養物と培地とが容れられる培養容器と、
該培養容器内に挿入される、炭酸ガス除去用の気体を発生させるための気泡発生部と、
該培養容器内に設けた、該培養容器内に容れられる培養物と培地とからなる内容物から、前記気泡発生部が挿入される所望の形状の空間部分を仕切る、全体、又は、一部が培養物は通過せず、培地のみ通過可能なメッシュ状体により構成された仕切壁とよりなり、
前記仕切壁は、上下方向に延びる、上部が開口した有底の筒体よりなり、
該筒体の上部は、前記培養容器内の液面よりも高い位置に設けられることを特徴とする炭酸ガス除去用の気泡発生部を有する培養装置。
【請求項2】
培養物と培地とが容れられる培養容器と、
該培養容器内に挿入される、炭酸ガス除去用の気体を発生させるための気泡発生部と、
該培養容器内に設けた、該培養容器内に容れられる培養物と培地とからなる内容物から、前記気泡発生部が挿入される所望の形状の空間部分を仕切る、全体、又は、一部が培養物は通過せず、培地のみ通過可能なメッシュ状体により構成された仕切壁とよりなり、
前記仕切壁は、垂設した面状体よりなり、
該面状体の上部は、前記培養容器内の液面よりも高い位置に設けられることを特徴とする炭酸ガス除去用の気泡発生部を有する培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気(エアー)などの炭酸ガス除去用の気体を発生させる炭酸ガス除去用の気泡発生部を有する培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
培養容器内で、例えば、動植物の細胞や菌体や微生物等の培養物を、培養液等の培地内で培養する際、培養物の増殖時等に炭酸ガスが発生し、この炭酸ガスが、培地中に蓄積し、該培地中の炭酸ガス濃度が高くなると、培養物の増殖等に悪影響を与える場合がある。
【0003】
そのため、従来においては、培養容器内の培養物や培地などの内容物中に、空気(エアー)などの炭酸ガス除去用(炭酸ガス移動用)の気体を発生させて、該気体が気泡状に内容物中を上昇する間に、該気体中に、前記内容物中の炭酸ガスを移動(吸着)させて、該気体と共に炭酸ガスを、液面から上方の空間部に放出し、そして、培養容器外に排出するようにしていた。
【0004】
図2は、前記従来の気泡発生部を有する培養装置1を示し、2は、前記培養装置1の培養容器であり、該培養容器2は、例えば、垂設された有底の筒体の容器からなり、該培養容器2内には、動植物の細胞や菌体や微生物等の培養物と、培養液等の培地とが容れられている。
【0005】
3は、気体発生装置であり、該気体発生装置3は、気泡状の気体を放出させる、例えば焼結金属等からなる気泡発生部(スパージャー)3aと、該気泡発生部3aに、空気(エアー)などの炭酸ガス除去用(炭酸ガス移動用)の気体を供給する気体供給部3bと、前記気泡発生部3aと前記気体供給部3bとを連結する管状の気体供給流路3cとよりなり、前記気泡発生部3aは、例えば、前記培養容器2内の底部付近に設けられる。
【0006】
そして、前記培養容器2内の内容物中の炭酸ガスを、該内容物から排出するためには、前記気体供給部3bからの気体を、前記気体供給流路3cを介して、前記気泡発生部3aに供給し、そして、該気泡発生部3aから、前記内容物中に、気泡状の気体を放出させる。これにより、前記気体が内容物中を上昇する間に、該気体に、前記内容物中の炭酸ガスが移動して、該気体と共に炭酸ガスが前記内容物の液面から上方の空間部に放出し、そして、前記培養容器2の天井部2aに形成された気体排出口4から、培養容器2外に排出されるようになる。
【0007】
なお、5は、前記培養容器2内の内容物を撹拌するための、例えば、上下動撹拌装置などの撹拌手段を示す。なお、該撹拌手段5は、省略してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭56-92783号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記培養容器2内の内容物中に、気泡を放出すると、該気泡がはじけた時に、前記内容物中の培養物を傷つけてしまうおそれがあった。
【0010】
本発明はこれらの問題点を解消する培養装置を提供できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成すべく、本発明の炭酸ガス除去用の気泡発生部を有する培養装置は、培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器内に挿入される、炭酸ガス除去用の気体を発生させるための気泡発生部と、該培養容器内に設けた、該培養容器内に容れられる培養物と培地とからなる内容物から、前記気泡発生部が挿入される所望の形状の空間部分を仕切る、全体、又は、一部が培養物は通過せず、培地のみ通過可能なメッシュ状体により構成された仕切壁とよりなり、前記仕切壁は、上下方向に延びる、上部が開口した有底の筒体よりなり、該筒体の上部は、前記培養容器内の液面よりも高い位置に設けられることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の炭酸ガス除去用の気泡発生部を有する培養装置は、培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器内に挿入される、炭酸ガス除去用の気体を発生させるための気泡発生部と、該培養容器内に設けた、該培養容器内に容れられる培養物と培地とからなる内容物から、前記気泡発生部が挿入される所望の形状の空間部分を仕切る、全体、又は、一部が培養物は通過せず、培地のみ通過可能なメッシュ状体により構成された仕切壁とよりなり、前記仕切壁は、垂設した面状体よりなり、該面状体の上部は、前記培養容器内の液面よりも高い位置に設けられることを特徴とする。

【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、培養容器内に培養物を傷つけずに、炭酸ガスを除去できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の炭酸ガス除去用の気体発生部を有する培養装置の縦断面図である。
図2】従来の炭酸ガス除去用の気体発生部を有する培養装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1を図1によって説明する。
【0018】
本発明においては、図1に示すように、前記従来の培養装置1の培養容器2において、該培養容器2内に、該培養容器2内に容れられる培養物と培地とからなる内容物から、前記気泡発生部3aが挿入される所望の形状(大きさ)の空間部分を仕切るための仕切壁6を設け、該仕切壁6により、前記培養容器2内を、培養物と培地とよりなる内容物が容れられる一方の部屋7と、前記所望の大きさの空間部分を形成する他方の部屋8に仕切られるようにし、また、該仕切壁6の全体、又は、一部を、培養物は通過せず、培地のみ通過可能な、例えば、ステンレス製のメッシュ状体(フィルター)9により形成する。
【0019】
また、前記仕切壁6は、前記他方の部屋8が、前記培養容器2内に容れられた内容物の液面より上方の空間部10を介して、又は、介せずに、前記培養容器2に形成した気体排出口4に連通するように形成され、前記他方の部屋8内で発生した気体が、前記気体排出口4を介して、前記培養容器2外に排出されるようする。
【0020】
前記仕切壁6は、例えば、図1に示すように、上下方向に延びる、上部又は上端が開口した、有底の筒体より形成され、該筒体の開口した上部又は上端は、前記培養容器2内に容れられた内容物の液面より高い位置となるように、例えば、前記培養容器2又は、前記培養容器2に固定された前記気体供給流路3cに固定されて支持される。
【0021】
なお、前記筒体の上部開口部を、前記培養容器2の気体排出口4に、気密に接続するようにしてもよい。
【0022】
そして、前記仕切壁6により仕切られた、前記他方の部屋8内に前記気体発生装置3の気泡発生部3aが挿入されるようになる。
【0023】
また、前記仕切壁6により仕切られた一方の部屋7内に、例えば、前記撹拌手段5が設けられる。なお、撹拌手段5は省略する場合もある。
【0024】
なお、前記仕切壁6を、上下方向に延びる有底の筒体により形成する以外に、例えば、垂設した板体などの面状体(図示せず)により形成し、該垂設した面状体により、前記培養容器2内を、左右方向において、一方の部屋7と他方の部屋8とに仕切るようにしてもよい。
【0025】
また、前記仕切壁6を、例えば、横設した板体などの面状体(図示せず)により形成し、該横設した面状体により、上下方向において、一方の部屋7と他方の部屋8とに仕切るようにしてもよい。かかる場合、他方の部屋内に発生した気体が、例えば、前記培養容器2の天井部2aに設けた前記気体排出口4から排出されるよう、上側の部屋を前記他方の部屋8とするのが好ましい。
【0026】
次に、本発明の培養装置の作動及びその効果について説明する。
【0027】
例えば、培養物と培地とからなる内容物を、内容物供給管(図示せず)から、前記一方の部屋7内に、所望量、供給するようにする。なお、この際、容れられた内容物の液面が、前記仕切壁6の上端を越さないようにする。
【0028】
これにより、前記一方の部屋7内の内容物中、培地のみが、前記メッシュ状体9を介して、前記他方の部屋8内に浸入するようになり、前記一方の部屋7内には、培養物と培地とからなる内容物が容れられ、前記他方の部屋8には、培地のみが容れられるようになる。
【0029】
そして、培地のみが、前記メッシュ状体9を介して、前記一方の部屋7と前記他方の部屋8とを行き来するようになる。
【0030】
そして、前記培養容器2の一方の部屋7内の内容物を、例えば、前記撹拌手段5により撹拌しながら、所望の時間、培養物を培養する。
【0031】
そして、前記培養容器2内の内容物を前記上下動撹拌装置5により撹拌しながら、又は、撹拌を停止した後、前記培養容器2内の培地中に蓄積した炭酸ガスを除去するために、前記気体供給部3bからの気体を、前記気体供給流路3cを介して、前記気泡発生部3aに供給し、そして、該気泡発生部3aから、前記他方の部屋8内の内容物中に、気泡状の気体を放出させる。
【0032】
そして、前記気体が内容物中を上昇する間に、該気体に、前記内容物中の炭酸ガスが移動して、該気体と共に炭酸ガスが前記内容物の液面から上方の空間部10に放出し、そして、前記培養容器2の天井部2aに形成された気体排出口4から、培養容器2外に排出されるようになる。
【0033】
そして、前記他方の部屋8内の、炭酸ガスが除去された培地は、前記一方の部屋7内に浸入し、また、前記一方の部屋7の炭酸ガスが蓄積された培地は、前記他方の部屋8内に浸入し、そして、該培地内の炭酸ガスが除去されて、該炭酸ガスが除去された培地は、前記一方の部屋7内に浸入し、これが繰り返されることにより、前記培養容器2内の培地内の炭酸ガスが除去されるようになる。
【0034】
そして、前記炭酸ガス除去用の気泡は、前記他方の部屋8内のみで発生して、一方の部屋7内には、炭酸ガス除去用の気泡がないため、培養物に気泡が触れず、従って、培養物が傷つくことがなくなるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の培養装置は、医療品関係、食品関係等における培養装置に利用される。
【符号の説明】
【0036】
1 培養装置
2 培養容器
2a 天井部
3 気体発生装置
3a 気泡発生部
3b 気体供給部
3c 気体供給流路
4 気体排出口
5 撹拌手段
6 仕切壁
7 一方の部屋
8 他方の部屋
9 メッシュ状体
10 空間部


図1
図2