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特許7173823触感を有する印刷物の印刷方法及び印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】触感を有する印刷物の印刷方法及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/10 20060101AFI20221109BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20221109BHJP
   B41M 7/02 20060101ALI20221109BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20221109BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221109BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20221109BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20221109BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B41M1/10
B41M3/06 C
B41M7/02
B05D1/28
B05D7/24 303A
B05D7/24 303E
B05D1/36 Z
B05D3/00 F
B05D3/00 D
B32B27/18 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018196715
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020062833
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】川原田 美登里
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-111928(JP,A)
【文献】特開2009-029089(JP,A)
【文献】特開2009-241539(JP,A)
【文献】特開2017-177405(JP,A)
【文献】特開2003-205589(JP,A)
【文献】特開2001-162758(JP,A)
【文献】国際公開第2008/129667(WO,A1)
【文献】国際公開第1999/017936(WO,A1)
【文献】特許第5704272(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0161588(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00-7/02
B05D 1/00-7/26
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくともバインダー樹脂及び樹脂ビーズを含有するニス(A)と、少なくともバインダー樹脂及び滑剤を含有するニス(B)を、グラビア版を用いて印刷を行う印刷方法であって、
前記樹脂ビーズの直径μmと、ニス(A)の膜厚μmと、ニス(B)の膜厚μmと、グラビア版の版深μmとが、式(1)で算出される値が3~20の範囲であり、式(2)で算出される値が0.15~1.1の範囲である触感を有する印刷物の印刷方法であって、前記ニス(A)が脂肪酸アマイドをニス(A)固形分全量の5~11質量%含有することを特徴とする触感を有する印刷物の印刷方法。

【数1】
(1)

【数2】
(2)
【請求項2】
前記樹脂ビーズの直径が5~40μmである請求項1に記載の、触感を有する印刷物の印刷方法。
【請求項3】
前記ニス(A)が含有するバインダー樹脂が、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、硝化綿、セルロースエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂から成る群から選ばれる何れか1つ以上である請求項1又は2に記載の触感を有する印刷物の印刷方法。
【請求項4】
請求項1~の何れか1つに記載の触感を有する印刷物の印刷方法で得た印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やフィルム基材の印刷物表面に塗布し、凹凸の触感を付与するニスと印刷物表面の傷防止のニスの2種のニスを用い、グラビア版を用いて印刷を行う印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商業印刷分野の中でも主にパッケージ分野に於いては、印刷物の美粧化、表面保護を目的として、印刷物にコーティング剤を塗布する所謂ニス塗り加工や、ニスを塗布された印刷物を鏡面のステンレス板で加熱、加圧して印刷物に鏡面光沢を付与するプレス加工、及び印刷物にポリプロピレン、ポリエステル等のフィルムを貼合させるラミネート加工等各種の表面加工が施されている。
【0003】
近年、従来の印刷物にない美粧性や機能を付与し、競合製品との差別化を図ろうとする試みが増える傾向となってきた。この理由は、紙器印刷物やフィルム製品のデザイン、機能や意匠性・美粧性が商品販売に与える影響が大きいからである。
【0004】
また機能については、紙、プラスチックフィルム、プラスチックシート等の基材を用い、手で触ったときの触感に加えて、耐摩擦性、耐傷性、耐熱性等の特性を付与することが行われている。
【0005】
一方で、手触りによる触感を付与する為のビーズ類の原材料について、その粒径がある程度大きくないと十分な触感が得られない事から、印刷時のニス層の膜厚が30~100μmを確保できるスクリーン印刷で印刷される傾向にある。しかし、大量に安価に、しかも触感のあるものを作成したい場合、生産効率の高いグラビア印刷方式で印刷することが好ましい。
しかし、ビーズ類の粒径が大きすぎるとグラビア版ではドクターでニス中のビーズ類がかきとられてしまい、塗膜中にビーズ類が残らない為に充分な触感が得られない傾向にあり、グラビア印刷方式で印刷する場合の困難さがあるのが現状である。
更に、手触りによる触感を付与する事ができても、印刷後の例えば印刷物の断裁、容器への立体成型等の後加工において耐摩耗性が弱く、実用性に欠けるものも少なくない。
こういった中、艶消し被覆組成物の検討がなされている(例えば、特許文献1)。
しかし、特許文献1は熱硬化型及び電子放射線硬化型の化粧材に関する発明である。
従って、手で触ったときの凹凸による触感に加えて、耐傷性、耐摩耗性等の特性を兼備した低温加熱乾燥処理する一般的なグラビア印刷方式による手法の確立が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-24744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、手触りによる凹凸の触感を持ちながら、耐傷性、耐摩耗性を兼備したニスをグラビア版を用いて印刷を行う印刷方法、及びその印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、基材上に、少なくともバインダー樹脂及び樹脂ビーズを含有するニス(A)と、少なくともバインダー樹脂及び滑剤を含有するニス(B)を、グラビア版を用いて印刷を行う印刷方法であって、
前記樹脂ビーズの直径μmと、ニス(A)の膜厚μmと、ニス(B)の膜厚μmと、グラビア版の版深μmとの関係が特定の数値範囲であることを特徴とする、触感を有する印刷物の印刷方法を見出した。
【0009】
すなわち本発明は、基材上に、少なくともバインダー樹脂及び樹脂ビーズを含有するニス(A)と、少なくともバインダー樹脂及び滑剤を含有するニス(B)を、グラビア版を用いて印刷を行う印刷方法であって、
前記樹脂ビーズの直径μmと、ニス(A)の膜厚μmと、ニス(B)の膜厚μmと、グラビア版の版深μmとが、式(1)で算出される値が3~20の範囲であり、式(2)で算出される値が0.15~1.1の範囲であることを特徴とする触感を有する印刷物の印刷方法。
【0010】
【数1】
(1)
【0011】
【数2】
(2)
【0012】
また本発明は、前記樹脂ビーズの直径が5~40μmである触感を有する印刷物の印刷方法に関する。
【0013】
また本発明は、前記ニス(A)が含有するバインダー樹脂が、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、硝化綿、セルロースエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂から成る群から選ばれる何れか1つ以上である触感を有する印刷物の印刷方法に関する。
【0014】
また本発明は、更に前記ニス(A)が脂肪酸アマイドを含有する触感を有する印刷物の印刷方法に関する。
【0015】
また本発明は、該触感を有する印刷物の印刷方法で得た印刷物に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の触感を有する印刷物の印刷方法は、手触りによる凹凸の触感を持ちながら、耐傷性、耐摩耗性を兼備したニスをグラビア版を用いて作製する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。尚、特記しない限り、明細書中の%及び部はすべて質量基準である。
【0018】
本発明の触感を有する印刷物の印刷方法では、基材上に、少なくともバインダー樹脂及び樹脂ビーズを含有するニス(A)と、少なくともバインダー樹脂及び滑剤を含有するニス(B)を、印刷する図柄になる小さい凹型の窪み(セル)からなるグラビア版を用いて印刷を行う。
ニス(A)は主に基材と密着しその印刷物に触感を付与する塗膜を形成するものであり、ニス(B)は主にニス(A)により形成された塗膜、及びニス(A)に含まれる樹脂ビーズと密着し、ニス(A)が形成する塗膜をニス(B)が形成する塗膜が全面的に覆う事で、印刷物の傷防止を目的とするものである。
【0019】
そして、手触りによる触感を持たせるべく樹脂ビーズを使用する事から、樹脂ビーズの直径と、ニス(A)の膜厚と、ニス(B)の膜厚と、印刷で使用するグラビア版の版深の、相互のサイズの関係が、本願発明の触感を有する印刷物の印刷方法において非常に重要となる。
前記版深は、直接ニス(A)、(B)各々が形成する膜厚に影響するからである。
【0020】
例えば、触感を付与するニス(A)の版深が必要以上に深い場合、ニス(A)に含まれる樹脂ビーズがニス(A)の塗膜表面に現れる事なく塗膜中に埋もれてしまい手触り感が得られ難い。
また、傷防止を付与するニス(B)の版深が必要以上に深くても、触感を付与するニス(A)の塗膜表面から一部分を飛び出した樹脂ビーズをすっかり覆い隠してしまい手触り感が得られ難い。
一方で、触感を付与するニス(A)の版深が極端に浅く、使用する樹脂ビーズの直径サイズが版深と同等か版深より大きい場合、印刷時にグラビア版のセル中に樹脂ビーズが充填される事なくドクターにより掻きとられる傾向にあり、ニス(A)の塗膜中に樹脂ビーズが残らない為に結果的に手触り感が得られ難い。
また、傷防止を付与するニス(B)の版深が必要以上に浅くても、ニス(A)の塗膜中の樹脂ビーズがニス(B)の塗膜表面を突き抜けて印刷物表面に現れ易くなる事から、樹脂ビーズが突起となって印刷物の耐傷性が低下する傾向と成り易い。
【0021】
これに対して本願においては、樹脂ビーズの直径と、ニス(A)の膜厚と、ニス(B)の膜厚と、印刷で使用するグラビア版の版深の、相互のサイズの関係について、
前記樹脂ビーズの直径μmと、ニス(A)の膜厚μmと、ニス(B)の膜厚μmと、グラビア版の版深μmとが、式(1)で算出される値が3~20の範囲であり、式(2)で算出される値が0.15~1.1の範囲
【0022】
【数3】
(1)
【0023】
【数4】
(2)

とする事により、ニス(A)中の樹脂ビーズが印刷時のドクターに掻き出される事なく、印刷表面に適度の突起を形成し、手触りによる凹凸の触感を持ちながら、耐傷性、耐摩耗性を保持する事が出来るものである。また、樹脂ビーズの素材、サイズ、添加量を好適に選択する事により、見た目の透明性をも制御する事ができるものである。
尚、前記樹脂ビーズの直径とは、その平均粒子径に基付くものであり、真球状の樹脂ビーズである事がより好ましい。
平均粒子径の測定は電子顕微鏡(SEM等)による観察を行い、樹脂ビーズが真球状の場合はその直径を、ビーズがレンズ状または略球状の場合は最長径(観察視野またはその写真上で、個々のビーズを平行な2本の線分で挟み込んだときの最長距離)および最短径(観察視野またはその写真上で、個々のビーズを平行な2本の線分で挟み込んだときの最短距離)を求め、その算術平均値をそのビーズの平均直径としてよい。さらにビーズ20個についての直径または平均直径を算術平均し、その値を平均粒子径としてよい。
【0024】
次に、本発明の触感を有する印刷物の印刷方法に使用する前記ニス(A)について説明する。ニス(A)には少なくとも、バインダー樹脂と樹脂ビーズを含有し、触感ニスとしての効能を有する。
ニス(A)を構成するバインダー樹脂としては、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、硝化綿、セルロースエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上が好ましく用いられる。これらの樹脂を単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。
【0025】
前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、二種類の方法で得ることができる。一つは塩化ビニルモノマー、酢酸ビニルモノマーおよびビニルアルコールを適当な割合で共重合して得られる。もう一つは、塩化ビニルと酢酸ビニルを共重合した後、酢酸ビニルを一部ケン化することにより得られる。塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのモノマー比率により樹脂被膜の性質や樹脂溶解挙動が決定される。即ち、塩化ビニルは樹脂被膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルは接着性や柔軟性を付与し、ビニルアルコールは極性溶剤への良好な溶解性を付与する。
【0026】
本発明の触感を有する印刷物の印刷方法のニス(A)として使用する場合、接着性、耐傷性、耐摩耗性に加えて、印刷適性も満足する必要があるため、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は適正なモノマー比率が存在する。即ち、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂100質量部に対し、塩化ビニルは80~95質量部が好ましい。80質量部以上であれば樹脂被膜の強靭さが保て、耐摩耗性が確保できる。95質量部以下であれば、樹脂被膜が硬くなりすぎず、接着性が低下し難い。また、ビニルアルコールから得られる水酸基価は50~200mgKOH/gが好ましい。50mgKOH/g以上であれば極性溶媒への溶解性が良好であり、印刷適性も安定し易い。200mgKOH/g以下であれば、耐水性の低下を抑制できる事から、印刷物の保管等、経時に伴う湿度の影響を受けにくく結果的に耐傷性、耐摩擦性等の耐久性が良好に保てる。
【0027】
前記硝化綿としては、セルロースを硝酸と硫酸との混酸で処理して得られる一般的なセルロースの硝酸エステルを使用できる。また、ニス(A)の粘度調整をすべくJIS K-6703(工業用ニトロセルロース)による異なる粘度規格品(例えばH20相当品とL1/4相当品)等、2種以上混合して用いてもよい。
【0028】
前記セルロースエステル樹脂としては、セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースプロピオネート(CP)、セルローストリアセテート(CAT)等の樹脂が挙げられるが、中でも、セルロースアセテートブチレート(CAB)樹脂(以下、「CAB樹脂」ということもある)が好ましい。これらの繊維素系樹脂は単独でも、ニスの粘度調整剤としても使用することができる他、CAB樹脂を使用することにより、透明度のある塗膜を形成することができる。
【0029】
上記CAB樹脂は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、16.5~53%のブチル化率を有することが好ましく、16.5~39%のブチル化率がより好ましい。CAB樹脂のブチル化率が16.5%以上であることにより、CAB樹脂は併用する有機溶剤中に溶解することができる。また、CAB樹脂のブチル化率が53%以下であることにより、CAB樹脂の併用する有機溶剤に対する溶解度が大きくなりすぎず、所望の粘度を得ることができる。
【0030】
前記ポリアミド樹脂としては、多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得ることができる熱可塑性ポリアミドであり、その軟化点は、100~130℃の範囲であることが好ましい。軟化点が100℃未満の場合、ニス皮膜の表面タック切れが悪く、グラビア印刷を行う際に巻き取りブロッキング性の低下などを招く傾向にあり、逆に130℃を越えた場合は、ニス皮膜が硬くなり、接着性を招くので好ましくない。
【0031】
前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、ジイソシアネート成分と、ジオール成分と、必要により多価アミン類などの鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂などが例示できる。前記ポリウレタン樹脂は、通常、これらの単量体成分の少なくとも一部として、親水性基を有する単量体成分を用いた反応により得られるポリウレタン樹脂であってもよい。
また、多価アミン類などの鎖伸長剤又は架橋剤で、架橋又は変性されていてもよく、例えば、多価アミン類によって変性されたポリウレタンポリ尿素樹脂であってもよい。
【0032】
前記(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルを必須成分として共重合した樹脂が挙げられる。
本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味する。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸オリゴエチレンオキシド、(メタ)アクリル酸オリゴプロピレンオキシド、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
中でも、メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体が形成する塗膜は固く、表面がさらっとしていてよく滑る仕上がりとなり好適である。
前記(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量として15,000~100,000が好ましく、更に好ましくは20,000~70,000の範囲である。
【0033】
前記ニス(A)に使用する樹脂ビーズとしては、ウレタン樹脂ビーズ、(メタ)アクリル樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズ等が挙げられるが、中でもウレタン樹脂ビーズが柔らかく柔軟性があるため耐摩耗性に優れる事から好ましく、特に真球状のウレタン樹脂ビーズがより好ましい。
【0034】
前記樹脂ビーズの直径が5~40μmである事が好ましく、平均粒子径が5~40μmである事がより好ましい。5μm以上であればニス(A)、(B)が形成する塗膜中に埋没し難く、ニス(B)塗膜表面に好適に露出する事で手触りによる触感を十分得る事が出来る。又、40μm以下であれば印刷時にグラビア版のセル中に樹脂ビーズが充填される事なくドクターにより掻きとられてしまう事が回避でき、またニス(B)塗膜表面から樹脂ビーズが突出して樹脂ビーズが擦れて脱落したり、印刷物の耐傷性が低下する傾向を抑制できる。
【0035】
本発明の触感を有する印刷物の印刷方法に使用する前記ニス(A)は更に沈降防止剤として脂肪酸アマイドを添加してもよい。樹脂ビーズと混合した際、樹脂ビーズをより均一に分散させた状態で効率的に基材に転移させる為の沈降防止の効果が得られる上、ニスの流動性を保持する効果も得られる。
前記沈降防止剤の添加量としては、固形分比率でニス(A)全量の5~11質量%が好ましい。
また、必要に応じてワックス、可塑剤等を添加してもよい。
【0036】
次に、本発明の触感を有する印刷物の印刷方法に使用する前記ニス(B)について説明する。ニス(B)には少なくとも、バインダー樹脂と滑剤を含有し、前記ニス(A)が形成する塗膜を全面に渡って覆う様に塗工する事で、傷防止ニスとしての効能を有する。
ニス(B)を構成するバインダー樹脂としては、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、硝化綿、セルロースエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上が好ましく用いられる。これらの樹脂を単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。
【0037】
尚、ニス(B)に使用できるバインダー樹脂である塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、硝化綿、セルロースエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂については、前記ニス(A)で記載したものと共通でよい。
【0038】
本発明の触感を有する印刷物の印刷方法に使用する前記ニス(B)は滑剤を含有する事を必須とする。
前記した様に、本発明の触感を有する印刷物の印刷方法では、ニス(A)中の樹脂ビーズが印刷時のドクターに掻き出される事なく、印刷表面に適度の突起を形成し、手触りによる触感を発現させる。仕上がった印刷物表面に樹脂ビーズにより生ずる僅かな凹凸を形成する事から、この僅かな凹凸が擦り傷を生じない様に表面を滑らせ、傷が生じ難くする目的で前記ニス(B)に滑剤を用いる。
前記滑剤としては、シリコン、各種ワックス類等が挙げられ、中でもシリコン、又はテフロンワックスが好ましい。
前記シリコンの添加量としては、固形分比率でニス(B)全量の0.5~2.5質量%が好ましい。0.5質量%以上であれば、滑性が確保でき印刷物表面から樹脂ビーズの剥離を抑制でき、2.5質量%以下であれば、耐磨耗性の低下を抑制できる傾向となり好ましい。
前記テフロンワックスの添加量としては、固形分比率でニス(B)全量の1質量%以下である事が好ましい。1質量%を超えると泡立ちが顕著となる傾向にある。これら滑剤は単独でも、複数組み合わせて使用してもよく、滑剤の添加量の総量としては、固形分比率でニス(B)全量の1~15質量%が好ましい。
【0039】
更に前記ニス(B)には、意匠性を持たせるべくよりマット感のある印刷物を作製する為にシリカを添加してもよい。シリカの添加量としては、固形分比率でニス(B)全量の10~30質量%が好ましい。中でも15質量%以上であれば、仕上がりがマット感のある印刷物が得られる傾向となり、20質量%以下であれば、耐摩耗性の低下が抑制できる傾向となり好ましい上、この範囲のシリカの添加量に応じてマット感の強弱を制御する事もできる。
また、耐摩耗性の低下を懸念してシリカの添加量を抑えてマット感を保持する目的で、体質顔料を併用してもよい。
【0040】
前記体質顔料としては、無機微粒子が挙げられる。前記無機微粒子は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、グラファイト、亜鉛華、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレイ(ChinaClay)、珪藻土、カオリン、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、バライト粉、砥の粉等の微粒子が挙げられ、これらの無機微粒子は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記無機微粒子は、固形分比率でニス(B)全量の10~50質量%が好ましい。
【0041】
更に前記ニス(B)には、耐熱性、密着性を付与する目的でチタンキレートを添加してもよい。特にバインダー樹脂としてポリアミド樹脂と硝化綿とを併用する場合や、ポリウレタン樹脂を用いる場合、チタンキレートを添加するとより耐熱性、密着性を向上させる事が出来る。前記チタンキレートの添加量としては、固形分比率でニス(B)全量の5~15質量%が好ましい。
【0042】
また、前記ニス(B)のバインダー樹脂として塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂や、(メタ)アクリル樹脂を使用する場合、耐熱性、密着性を付与する目的でイソシアネート硬化剤を添加してもよい。前記イソシアネート硬化剤の添加量としては、固形分比率でニス(B)全量の10~25質量%が好ましい。
【0043】
本発明ではグラビア印刷機による印刷中において前記ニス(B)が泡立つことを防止するため、必要に応じて消泡剤を添加してもよい。特に耐熱性を上げる目的に滑剤としてテフロンワックスを併用している場合、テフロンワックスによる泡立ちを抑制する事ができ、消泡剤との併用が好ましい。消泡剤としてはシリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤等が挙げられるが、シリコン系消泡剤が好ましくその添加量としては、固形分比率でニス(B)全量の0.5~1.0質量%が好ましい。
【0044】
本発明の触感を有する印刷物の印刷方法に使用する有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合しても用いることができる。
【0045】
本発明の触感を有する印刷物の印刷方法に使用するニス(A)、及びニス(B)は、各樹脂、樹脂ビーズ、その他添加剤などを有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。
【0046】
前記ニス(A)、ニス(B)を製造するにあたって使用する分散機としては、一般に使用される、例えば、ミキサー、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0047】
本発明の触感を有する印刷物の印刷方法に使用する基材としては、特に限定は無く、例えばカタログ、ポスター、チラシ、書籍、雑誌、ダイレクトメール、パンフレット等の印刷物に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙や、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージに用いられる厚紙等の用紙を用いる事ができる。
また、基材としてプラスチックフィルムも好適であり、前記プラスチックフィルムとしてはポリプロピレン(PP)が中心となり使用されているが、特に限定は無く、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂に代表される生分解性樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。
これらのフィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良く、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。
また、フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていれば更に基材密着性を向上させる事ができ好ましい。また、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
また印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷などの既知の版を使用する印刷方式で印刷できるが、特にグラビア版を用いたグラビア印刷方式で印刷することが好ましい。グラビア印刷に用いられるシリンダーは、彫刻タイプ、腐食タイプ等公知のものが用いられる。
【0048】
また、本発明の触感を有する印刷物の印刷方法に使用するニス(A)、(B)としては、25℃でその粘度が離合社製ザーンカップ#3にて12~80秒であればよく、より好ましくは13~55秒、更に好ましくは15~50秒である。ミリパスカル秒で粘度を示すと、25℃にて、30~400(mPa・s)の範囲であればよく、より好ましくは45~240(mPa・s)の範囲であればよく、更に好ましくは55~220(mPa・s)の範囲である。
尚、本発明の触感を有する印刷物の印刷方法に使用する前記ニス(A)、ニス(B)は通常グラビア印刷された直後に40℃~80℃の乾燥炉にて乾燥される事が好ましい。
【実施例
【0049】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
尚、本発明におけるGPCによる数平均分子量、及び重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、樹脂ビーズの平均粒子径は、平均粒子径測定法として日立製作所製操作型電子顕微鏡S-3400Nを用いて測定した度数分布の状況から算出した。
ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲-80~450℃、昇温温度10℃/分の条件下、DMA法で実施した。
【0050】
(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂系:ニスベースIの調製)
バインダー樹脂として、ソルバインA(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、樹脂モノマー組成が質量%で塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=92/3/5、数平均分子量35,000、ガラス転移温度76℃、日信化学工業株式会社製)を酢酸エチルで固形分25%溶液とし、これをニスベースIとした。
【0051】
(セルロースエステル樹脂系:ニスベースII―aの調製)
バインダー樹脂として、CAB381-0.1(セルロースアセテートブチレート、アセチル含量13.5%、ブチリル含量38%、ヒドロキシル含量1.3%、数平均分子量20,000、ガラス転移温度123℃、イーストマンケミカル社製)を溶剤酢酸エチルで固形分20%溶液とし、これをニスベースII-aとした。
【0052】
(セルロースエステル樹脂系:ニスベースII-bの調製)
バインダー樹脂として、CAB482-0.5(セルロースアセテートブチレート、アセチル含量13.5%、ブチリル含量38%、ヒドロキシル含量1.3%、数平均分子量30,000、ガラス転移温度130℃、イーストマンケミカル社製)を溶剤酢酸エチルで固形分20%溶液とし、これをニスベースII-bとした。
【0053】
(硝化綿系:ニスベースIIIの調製)
バインダー樹脂として、工業用硝化綿DHL120-170(硝化綿、不揮発分70%、JIS規格H20相当品、Nobel NC社製)と工業用硝化綿DLX8-13(硝化綿、不揮発分70%、JIS規格L1/4相当品、Nobel NC社製)を質量比率1:1に対して溶剤酢酸エチル/イソプロピルアルコール=質量比40/60で固形分29%溶液として、これをニスベースIIIとした。
【0054】
(ポリアミド樹脂系:ニスベースIVの調製)
バインダー樹脂として、ニューマイド838(ポリアミド樹脂、アミン価:1.2、軟化点:132℃、ハリマ化成株式会社製)とサンマイド563(脂肪族ポリアミド樹脂、アミン価:2、軟化点:110℃、エアプロダツクアンドケミカルズ社製)を質量比率1:1に対して溶剤メチルシクロヘキサン/メタノール/エチルアルコール=質量比60/18/22で固形分38%溶液として、これをニスベースIVとした。
【0055】
(ポリウレタン樹脂系:ニスベースVの調製)
バインダー樹脂として、バーノックECL-201(固形分40%、溶剤酢酸エチル/イソプロピルアルコール=質量比66.7/33.3 ポリウレタンポリ尿素樹脂、DIC株式会社製)をニスベースVとした。
【0056】
((メタ)アクリル樹脂系:ニスベースVIについて)
バインダー樹脂としてアクリディックWCL-476(メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体、固形分40%、溶剤酢酸プロピル/ノルマルプロピルアルコール=質量比1/1 Tg=75℃、重量平均分子量:27,000 DIC株式会社製)をニスベースVIとした。
【0057】
(ニス(A)の調整)
表1、2に示す配合に従って、ミキサーを使用して25℃で十分攪拌しニス(a1)~ニス(a12)を作製した。
樹脂ビーズとしては、下記6種類を使用した。
ビーズE:アートパールC400透明タイプ(真球状架橋ウレタン樹脂ビーズ、平均粒子径14μm、ガラス転移点-13℃、屈折率1.51、透明タイプ、根上工業株株式会社製)
ビーズF:アートパールC300透明タイプ(真球状架橋ウレタン樹脂ビーズ、平均粒子径21μm、ガラス転移点-13℃、屈折率1.51、透明タイプ、根上工業株株式会社製)
ビーズG:テクポリマーARX-30(真球状架橋ポリアクリル酸エステル樹脂ビーズ、平均粒子径30μm、真比重1.10、屈折率1.49、積水化成品工業株式会社製)
ビーズH:Texture5378(ポリエチレンビーズ、平均粒子径50μm、シャムロック・テクノロジー社製)
ビースI:テクポリマーSBX-4(スチレンジビニルベンゼン共重合体樹脂ビーズ、平均粒子径4μm、真比重1.06、屈折率1.59、積水化成品工業株式会社製)
ビーズJ:タフチックAR650ML(架橋(メタ)アクリル樹脂ビーズ、主成分ポリメタクリル酸メチル、平均粒子径80μm、東洋紡株式会社製)
ビーズK:エポスターMS(ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂ビーズ、
真比重1.4、屈折率1.66、平均粒子径3μm、株式会社日本触媒社製)

尚、表中の脂肪酸アマイド(沈降防止剤)としてはディスパロンPFA-220(脂肪酸アマイド固形分20%含むワックス、楠本化学株式会社製)、ワックスとしてはハイワックス220MP(ポリエチレンワックス、三井化学株式会社製)、可塑剤としてはエポサイザーW-100-EL(エポキシ化大豆油 DIC株式会社製)を使用した。
表中の数値は質量基準による部数、又は質量%を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
(ニス(B)の調整)
表3に示す配合に従って、ミキサーを用いて25℃で十分攪拌しニス(n1)~ニス(n4)を作製した。
表3に示す、シリコーン化合物、ワックス、可塑剤、シリカ、体質顔料、及びチタンキレートの詳細は下記の通りである。
シリコーン化合物:シリコンKP359 変性シリコーンオイル、信越化学(株)社製
ワックス:ミツイハイワックス220MP ポリエチレンワックス、三井化学(株)製
可塑剤:エポサイザーW100EL エポキシ化大豆油、酸価0.5KOHmg/g DIC(株)社製
シリカ:サイリシア350 二酸化ケイ素、富士シリシア化学(株)社製
体質顔料:沈降性硫酸バリウム100、堺化学(株)社製
チタンキレート:オルガチックスTC-400 チタンテトラアセチルアセトネート
マツモトファインケミカル社製
【0061】
【表3】
【0062】
(ニス(A)及びニス(B)の粘度の調整)
表4、5に示す各々のニス(A)、ニス(B)について、各々下記のレジューサーを用いて各々所定の粘度に調整した。
ニスa1~a3、n1については、ダイレジューサーV No.20(酢酸エチル/トルエン/メチルエチルケトン=質量比40/35/25、DICグラフィックス(株)社製)を追加溶剤として25℃にてザーンカップ#3で、実施例1、2は20秒となる様に調整し、実施例3については25秒になる様に調整し、n1については30秒になる様に調整した。
ニスa4、a7~a11、n3~4については、ダイレジューサーPA No.20(トルエン/酢酸エチル/イソプロピルアルコール=質量比58/12/30、DICグラフィックス(株)社製)を用いて同様の要領にてニスの粘度を調整した。
ニスa5については、ファインラップVAレジューサー(酢酸プロピル/メチルエチルケトン/酢酸エチル/エチルグリコールモノノルマルプロピルエーテル=質量比45/30/20/5、DICグラフィックス(株)社製)を用いて同様の要領にてニスの粘度を調整した。
ニスa6については、ユニビアNTレジューサーNo.3K(酢酸プロピル/メチルエチルケトン/酢酸エチル/イソプロピルアルコール=質量比49/32/9/10、DICグラフィックス(株)社製)を用いて同様の要領にてニスの粘度を調整した。
ニスn4については、ファインラップPS 傷防止用レジューサーK(酢酸エチル/酢酸プロピル/イソプロピルアルコール=質量比20/15/65、DICグラフィックス(株)社製)を用いて同様の要領にてニスの粘度を調整した。
a12については、アクリディックWCL-476(メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体、固形分40%、酢酸プロピル/ノルマルプロピルアルコール=質量比1/1)DIC(株)社製を原液のまま使用した。
【0063】
(実施例1:印刷物の作製)
版深40μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機(DICエンジニアリング株式会社製)により、二軸延伸ポリプロピレンフィルムV(以下、OPPフィルム、東洋紡績株式会社製 P2161 厚さ20μm)のコロナ処理面側に、まずニス(A)としてa1ニスを印刷した後、次いでインラインにて版深22μmのグラビア版にてn1を印刷した後、24時間保管し印刷物を完成させた。
【0064】
(実施例2~9、比較例1~4)
実施例2、3についてはニス(A)としてのa2ニス、a3ニスを版深45μmのグラビア版を用いた他は、表4、5に従って実施例1と同様の手順にて印刷物を作製した。
【0065】
<評価方法>
(印刷物の評価方法1:手触りによる触感)
本発明の触感を有する印刷物の印刷方法で作製した印刷物表面の手触りによる凹凸の触感の評価として、被験者は、本研究と関係の無い従業員10名へのアンケート調査による評価方法を用いた。被験者は塗工面を手、指で触り、その「凹凸による触感」を10人中何人感じたか集計をとり、これを評価基準とした。

○:10人中8人以上が手触りによる触感を感じた。
×:10人中手触りによる触感を感じた者が2人以下であった。
【0066】
(印刷物の評価方法3:耐スクラッチ性)
得られた印刷物表面を、爪でニス塗工面を引掻き、塗膜の傷つき程度から
耐スクラッチ性を目視評価した。実用レベルは3以上である。

5:傷が全く生じない
4:僅かに傷を生じる
3:4と2の中位の傷を生ずる
2:傷を生じる
1:著しく傷が生じ、ニス塗膜が剥がれる現象が見らえる
【0067】
(印刷物の評価方法3:耐摩耗性)
得られた印刷物表面を学振型耐摩擦性試験機にて、上質紙を用いて荷重200gで往復100回摩擦し、ニス層の剥離度合いを目視判定した。
実用レベルは3以上である。

5:ニス塗膜が全く剥離しない
4:ニス塗膜がフィルムから面積比率で全体の15%未満の範囲で剥離する
3:ニス塗膜がフィルムから面積比率で全体の15%以上、30%未満の範囲で
剥離する
2:ニス塗膜がフィルムから面積比率で全体の30%以上、50%未満の範囲で
剥離する
1:ニス塗膜がフィルムから面積比率で全体の50%以上の範囲で剥離する
【0068】
表4、5に作製した各印刷物のニス(A)/(B)の組み合わせ構成、
ニス(A)、(B)の印刷に使用したグラビア版の版深、及び各膜厚(μm)、
式(1)、式(2)による計算結果、及び各印刷物の評価結果を示す。
尚、ニス(A)、(B)による各膜厚はデジタルマイクロスコープ電子顕微鏡で実測した平均値である。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
本発明の触感を有する印刷物の印刷方法で作製した印刷物は、手触りによる凹凸の触感を持たせつつ、耐スクラッチ性、耐摩耗性を兼備する結果となった。