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特許7173827超速硬性組成物、セメント組成物、コンクリート組成物及び吹付け施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】超速硬性組成物、セメント組成物、コンクリート組成物及び吹付け施工方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/08 20060101AFI20221109BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20221109BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20221109BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20221109BHJP
   C04B 28/04 20060101ALI20221109BHJP
   E21D 11/10 20060101ALN20221109BHJP
   C04B 103/14 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
C04B22/08 Z
C04B22/14 A
C04B22/08 A
C04B22/10
C04B22/06 Z
C04B22/08 B
C04B28/04
E21D11/10 D
C04B103:14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018199444
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020066543
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】室川 貴光
(72)【発明者】
【氏名】荒木 昭俊
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】三島 俊一
(72)【発明者】
【氏名】石井 泰寛
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/077216(WO,A1)
【文献】特開昭53-031725(JP,A)
【文献】特開平03-012350(JP,A)
【文献】特開平05-097491(JP,A)
【文献】特開2016-130206(JP,A)
【文献】特開2011-084440(JP,A)
【文献】特開2004-323356(JP,A)
【文献】特開昭60-042263(JP,A)
【文献】特開2013-177279(JP,A)
【文献】特開2011-001203(JP,A)
【文献】特開平10-101397(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154890(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/056716(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C04B 103/14
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量基準で、CaOが40~55%、Alが40~55%、及びSiOが1~7%の範囲にあるCaO-Al-SiO系化合物を含み、非晶質度が70%以上であるクリンカー粉末と、ケイ酸塩とを含み、
前記クリンカー粉末が、1000℃で焼きなました後の真密度Daと焼きなます前の真密度Dbとの関係において、0.800≦Da/Db<1.000を満たし、
前記ケイ酸塩を、前記クリンカー粉末100質量部に対して、0.5~20質量部含有する、超速硬性組成物。
【請求項2】
水酸化物、炭酸塩、ミョウバン類、前記ミョウバン類以外の硫酸塩、及び硝酸塩から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1に記載の超速硬性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の超速硬性組成物を配合してなるセメント組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のセメント組成物に水を加えて練り混ぜてなるコンクリート組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の超速硬性組成物を空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付ける、吹付け施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建築分野で使用される超速硬性組成物、それを用いたセメント組成物、コンクリート組成物及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木、建築分野では、合理化施工の要求が高まっており、使用する材料として、早期に供用を可能とする材料が求められている。その一例として、超速硬性材料が挙げられる。
【0003】
例えば、超速硬性材料として、超速硬性で優れた流動性をもつセメント系材料、吹付けコンクリート用急結剤、早期開放が可能な補修用モルタル、止水を目的とした超速硬性注入材等が挙げられる。(特許文献1~4参照)。
しかしながら、最近では、さらなる合理化施工の要求や、新たなニーズへの対応から、超速硬材料の要求性能が益々高まってきている。
【0004】
超速硬・高流動グラウトモルタルの要求性能としては、可使時間も重要な性能となる。施工時間や使用器具等の洗浄時間も考慮すると、最低でも10分以上、できれば15分以上の可使時間の確保が望ましい。しかしながら、可使時間を長く確保することは、硬化時間を遅らせることになるため、1時間などの短期材齢での要求強度を満たすことが困難となる。このため、従来の技術では、充分な可使時間を確保しつつ、低温において、初期材齢で必要な強度発現性を満たすことは困難であった。
【0005】
吹付けコンクリートの要求性能としては、付着したコンクリートの初期強度発現性と跳ね返り率が重要な性能となる。掘削した地山の崩落を防止するためには、10分などの短時間でより高い初期強度発現性が求められ、また、施工コストを考慮すると跳ね返り率は小さいことが望ましい。特に、低温環境下では、凝結性能が低下するため、必要な性能を満たさない場合があった。
【0006】
早期開放が可能な補修用モルタルの要求性能としては、1時間などの短時間に、開放できる強度発現が求められる場合がある。超速硬・高流動グラウトモルタルと同様に、可使時間を長く確保することは、硬化時間を遅らせることになるため、短期材齢での要求強度を満たすことが困難となる場合があった。
【0007】
止水を目的とした超速硬性注入材の要求性能は、水の流量が多くなるほど、短時間(数秒~数十分)で硬化し、その硬化体の強度も大きいほど止水効果として高い。しかし、超速硬・高流動グラウトモルタルと同様に、可使時間を確保しようとすると、硬化時間も遅れるため、十分な強度が得られない場合があった。
【0008】
短時間強度を確保する類似技術として、化学成分としてAlとCaOとSiOとTiOを合計で95質量%以上含有するアルミン酸カルシウムシリケートで、AlとCaOの含有モル比(CaO/Al)と、SiOとTiOの合計含有量と、SiOとTiOの含有モル比(SiO/TiO)を規定した速硬剤に関する技術が開示されている(特許文献5参照)。本技術は、低温になるほど顕著になる凝結の遅延化や可使時間不足といったアルミン酸カルシウムシリケートの凝結性を調整できるようにし、さらなる早期強度発現性の向上や低迷し易い長期強度発現性等の改善を行った技術であるが、1時間以下の短時間強度の向上効果については言及されていない。
【0009】
また、質量基準で、CaOが40~55%、Alが40~55%、及びSiOが1~7%の範囲にあるCaO-Al-SiO系化合物を含み、非晶質度が70%以上であり、かつ、1000℃で焼きなました後の真密度の値が、焼きなます前よりも0.01~0.2g/cmの範囲で小さいことを特徴とする超速硬性クリンカーに関する技術が開示されている(特許文献6参照)。本技術は、流動性に優れ、充分な可使時間を確保しつつ、温度依存性が小さく、長期強度や耐久性の観点からも信頼性の高い超速硬・高流動モルタル及びコンクリート組成物を調製できる技術である。しかし、急結性能の指標となる数十秒からの凝結特性や30分以下の短時間強度の高い増進効果について言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平03-12350号公報
【文献】特許第6207854号公報
【文献】特許第6180176号公報
【文献】特許第6116976号公報
【文献】特許第6071483号公報
【文献】特許第6033787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上から本発明は、短時間(例えば、1時間以内)の初期強度発現が良好で、吹付けコンクリートの急結剤として使用した際のリバウンド率低減にも寄与する超速硬性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、特定の物理的性質を持つクリンカー粉末に、ミョウバン類及び/又はケイ酸塩を配合した超速硬性材料を採用することにより、前記課題が解決できるとの知見を得て本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0013】
[1] 質量基準で、CaOが40~55%、Alが40~55%、及びSiOが1~7%の範囲にあるCaO-Al-SiO系化合物を含み、非晶質度が70%以上であるクリンカー粉末と、ミョウバン類及び/又はケイ酸塩とを含み、
前記クリンカー粉末が、1000℃で焼きなました後の真密度Daと焼きなます前の真密度Dbとの関係において、0.800≦Da/Db<1.000を満たす、超速硬性組成物。
[2] 水酸化物、炭酸塩、前記ミョウバン類以外の硫酸塩、及び硝酸塩から選ばれる1種又は2種以上を含有する[1に記載の超速硬性組成物。
[3] [1]又は[2]記載の超速硬性組成物を配合してなるセメント組成物。
[4] [3]に記載のセメント組成物に水を加えて練り混ぜてなるコンクリート組成物。
[5] [1]又は[2]に記載の超速硬性組成物を空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付ける、吹付け施工方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、短時間(例えば、1時間以内)の初期強度発現が良好で、吹付けコンクリートの急結剤として使用した際のリバウンド率低減にも寄与する超速硬性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する、「部」や「%」は、特に規定のない限り質量基準である。また、本発明のコンクリート組成物とは、ペースト、モルタル、及びコンクリートを総称するものである。
【0016】
[1.超速硬性組成物]
本発明の超速硬性組成物は、質量基準で、CaOが40~55%、Alが40~55%、及びSiOが1~7%の範囲にあるCaO-Al-SiO系化合物を含み、非晶質度が70%以上であるクリンカー粉末と、ミョウバン類及び/又はケイ酸塩とを含む。
【0017】
通常、非晶質物質を焼きなまして結晶化させると、真密度の値は大きくなるのが一般的である。これは分子配列が不規則な状態から規則正しい状態に変化することに起因する。本発明においては、クリンカー粉末が、1000℃で焼きなました後の真密度Daと焼きなます前の真密度Dbとの関係において、0.800≦Da/Db<1.000を満たすことを特徴とする。
Da/Db<0.800であると、短時間での強度発現性が低下してしまい、Da/Db≧1.000であると、短時間での良好な強度発現性が得られない。
Da/Dbは、0.900≦Da/Db≦0.999を満たすことが好ましく、0.950≦Da/Db≦0.998を満たすことがより好ましい。
なお、焼なます雰囲気や熱処理などは実施例に記載のとおりである。
【0018】
本発明における真密度とは、粒子間の空隙、あるいは粒子中の気孔を考慮せず、原子欠損、転位、及び微少不純物を考慮した理想状態での物質の単位体積当りの質量を指す。
【0019】
本発明におけるCaO-Al-SiO系化合物は、非晶質度が70%以上であるにもかかわらず、1000℃で焼きなました後の真密度の値が、焼きなます前よりも小さくなるという珍しい化合物である。非晶質度は、好ましくは80%以上である。
【0020】
ここで、本発明における非晶質度とは、以下のように定義する。
すなわち、対象物質を1000℃で焼なますが、具体的には2時間熱処理した後、毎分5℃の冷却速度で徐冷して結晶化させる。そして、結晶化させたものを粉末X線回折法により測定し、結晶鉱物のメインピークの面積Sを求める。次いで、焼きなます前の物質の結晶のメインピーク面積S0を求め、以下の式により非晶質度Xを求める。
X(%)=100×(1-S0/S)
なお、焼なます雰囲気などは実施例に記載のとおりである。
【0021】
本発明に係るCaO-Al-SiO系化合物は、CaOが40~55%、Alが40~55%、SiOが1~7%の範囲にあり、CaOが43~53%、Alが43~53%、SiOが2~6%の範囲にあることが好ましい。この成分範囲にないと、可使時間を確保しても、短時間の初期強度発現が良好とならず、温度依存性が小さくなる。また、長期強度や耐久性の観点、及び美観の観点からも信頼性の高い材料になり難い。
【0022】
CaO原料としては、生石灰、石灰石、消石灰などが挙げられる。
Al原料としては、ボーキサイトやアルミ残灰などが挙げられる。
SiO原料としては珪石などが挙げられる。
なお、一般の工業原料には、MgO、Fe、TiO、KO、NaO等の不純物が含まれている。これらの不純物は、CaO-Al-SiO系化合物の非晶質化を助長する面もあり、これらの総量は、10%以下の範囲で存在しても差し支えない。
【0023】
CaO-Al-SiO系化合物は、限られた条件でしか得ることができない。CaO原料と、Al原料と、SiO原料とを配合し、1600℃以上、好ましくは1650~2000℃で熱処理し、急冷することが必要である。1600℃未満の熱処理温度では得られないし、冷却速度が急冷条件を満たさない場合にも得られない。この2つの条件をともに満たすことが必要である。
【0024】
本発明では、1000K/秒以上の冷却速度で冷却することが好ましい。特に、原料を1600℃以上で加熱して溶融した状態の流動体を急冷する直前の温度が1400℃程度であるが、この状態から1000℃までの冷却速度が好ましくは1000K/秒以上、より好ましくは2000K/秒~100000K/秒の速度で冷却される。
【0025】
本発明では、熱処理する際の雰囲気が還元雰囲気であることが好ましい。ここで、還元雰囲気とは、窒素雰囲気中で炉内に一酸化炭素が発生し、かつ、酸欠状態のことである。
開放系では、その濃度を正確に測定することは難しいが、電炉内にある溶融物の上方で計測した場合には、一酸化炭素の濃度は、1体積%以上の計測値が得られる。また、同様に酸素濃度を計測すると、少なくとも10体積%以下、通常は6体積%以下である。大気中の酸素濃度は21体積%であることから、電炉内は酸欠状態となっている。
【0026】
本発明に係るクリンカー粉末は、粉砕処理により、粉末度がブレーン比表面積で好ましくは4000~9000cm/g、より好ましくは4500~8000cm/gの粉末状にするのが良好である。粉末度が、ブレーン比表面積で4000~9000cm/g以上であることで、充分な超速硬性が得られやすくなったり、低温での強度発現性が充分となったりする。
【0027】
さらに、クリンカー粉末の粒子径は分級処理によって調整することが好ましい。超速硬性クリンカーの粒子径は1.0μm未満の含有率が10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。また、30μm超の含有率は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
クリンカー粉末の粒子径が前記範囲であると、長さ変化率、流動性、初期強度発現、表面平滑性などを達成することが容易になる。
【0028】
粉砕方法は特に限定されるものではなく、市販のものが使用可能であり、ボールミルやローラーミルが使用可能である。また分級方法も特に限定されるものではないが、コアンダ効果を利用した気流分級機でクリンカーの粒度を制御することが望ましい。
【0029】
コアンダ効果を利用する気流分級装置とは、エジェクター等で加速された粉砕品を、空気をキャリアガスとしてノズルから分級室内に噴射すると、粒子の受ける慣性力の違いによって、径の小さい粒子ほど近くのコアンダブロックに沿って流れ、径の大きい粒子ほど遠くへ飛ばされる性質を利用したものである。当該装置は、粒子径別に複数の分級物を捕集できるように、分級エッジを具備した分級エッジブロックが複数個設けられた気流分級装置である。このような分級装置には、多くの特許文献(例えば特開平7-178371号公報等)があり、また多くの市販品があるので、それらを用いることができる。市販品を例示すれば、株式会社マツボー社製、商品名「エルボジェット」、セイシン企業社製、商品名「クラッシール」などである。
【0030】
本発明のミョウバン類とは、例えば1時間以内という短時間強度を増進する効果を有する。ミョウバン類としては、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、さらに、カリウムミョウバン石、アルミニウムミョウバン石、鉄ミョウバン石等のミョウバン石が挙げられ、これらは通常結晶水を有しているがこれらを50~600℃で加熱した焼成物も使用できる。
【0031】
ミョウバン類の粉末度は、特に限定するものではないが、1mm篩いを95%以上通過するものが好ましく、450μm篩いを80%以上通過するものが更に好ましく、150μm篩いを70%以上通過するものが更に好ましい。
【0032】
ミョウバン類の使用量は、クリンカー粉末100質量部に対して、3~40質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。3~40質量部であることで、短時間強度を増進させることができる。
【0033】
ケイ酸塩は、短時間強度を増進する効果を示すが、ミョウバン類と併用することでさらに短時間強度を増進する効果を示す。ケイ酸塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウムのオルソケイ酸塩、メタケイ塩、セスキケイ塩等が挙げられるが、なかでもメタケイ酸ナトリウムが好ましい。また、ケイ酸塩としては、ケイ酸ソーダ1号[NaSi(NaO・2SiO:n=2)]、ケイ酸ソーダ2号[NaSi12(NaO・2.5SiO:n=2.5)]、ケイ酸ソーダ3号[NaSi(NaO・3SiO:n=3)]、及びケイ酸ソーダ4号[NaSi(NaO・4SiO:n=4)]等も挙げられる。
ケイ酸塩とはミョウバン類と併用する場合、これらの質量比(ケイ酸塩/ミョウバン類)は0.1~1が好ましく、0.1~0.7がより好ましい。
【0034】
ケイ酸塩としては、水和物であっても無水物であっても特に限定はされないが、水和水の数は9以下が好ましく、5以下がより好ましく、無水和物の使用がさらに好ましい。
【0035】
ケイ酸塩の粉末度は、特に限定するものではないが、450μm篩いを95%以上通過するものが好ましく、150μm篩いを80%以上通過するものが更に好ましく、90μm篩いを50%以上通過するものが更に好ましい。
【0036】
ケイ酸塩の使用量は、クリンカー粉末100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましく、3~15質量部がより好ましい。0.5質量部以上であることで、さらなる短時間強度を増進する効果が得られやすくなり、30質量部以下であることで長期強度発現性を良好に維持できる。
【0037】
本発明では、水酸化物、炭酸塩、既述のミョウバン類以外の硫酸塩、及び硝酸塩から選ばれる1種又は2種以上を併用することが好ましい。
【0038】
水酸化物としては、アルカリ土類金属の水酸化物である水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、カルシウムカーバイドと水の反応によってアセチレンガスを発生させて副生した消石灰を含む残渣、アルカリ金属水酸化物である水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、卑金属の水酸化物である水酸化アルミニウムが使用できる。これらの中で水酸化カルシウムの使用が好ましい。
【0039】
水酸化物の使用量は、クリンカー粉末100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、15~40質量部であることがより好ましい。5部未満では、短期の強度発現性の向上が認められない可能性があり、40質量部を越えると、効果が頭打ちになる可能性がある。
【0040】
炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。特に初期強度発現性に効果があるものとしては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムであり、これらを2種以上組み合わせることも可能である。
【0041】
炭酸塩の使用量は、クリンカー粉末100質量部に対して、0.5~30質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましい。0.5~30質量部であると、初期強度の改善効果が得られやすい。
【0042】
ミョウバン以外の硫酸塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムのアルカリ金属硫酸塩、カルシウム、マグネシウムの硫酸塩、硫酸アルミニウムが挙げられる。これらの中で、初期強度増進効果が高い硫酸カルシウムの使用が好ましい。
【0043】
ミョウバン以外の硫酸塩の使用量は、クリンカー粉末100質量部に対して、硫酸カルシウムの場合は50~200質量部が好ましく、その他の硫酸塩は0.5~30質量部が好ましい。50~200質量部であることで、初期強度増進の効果が得られやすくなる。
【0044】
硝酸塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムのアルカリ金属硝酸塩、カルシウム、マグネシウムのアルカリ土類硝酸塩が挙げられる。これらの中で強度増進効果が高い硝酸カルシウムの使用が好ましい。
【0045】
硝酸塩の使用量は、クリンカー粉末100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましい。0.5~20質量部であることで初期強度の増進効果が得られやすくなる。
【0046】
以上のような本実施形態に係る超速硬性組成物は、限定されるものではないが、主に吹付け工法にて使用される。
【0047】
[2.セメント組成物]
本発明のセメント組成物は、本発明の超速硬性組成物を配合してなる。具体的には、セメントと本発明の超速硬性組成物を配合してなる。
【0048】
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ、又は石灰石微粉等を混合した各種混合セメント、さらに、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメント等が挙げられる。これらの中では、練り混ぜ性及び強度発現性の点で、普通ポルトランドセメント又は早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0049】
本発明では、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、パルプスラッジ焼却灰等の混和材料、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、ポリマー、凝結調整剤、ベントナイト等の粘土鉱物、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0050】
本発明の超速硬性組成物のセメントに対する使用量は、セメント100質量部に対して、3~30部が好ましく、5~15部がより好ましい。3質量部以上であると、十分な初期強度増進効果が得られやすくなる。30質量部以下であると、良好な長期強度発現性得られやすくなる。
【0051】
本発明の超速硬性組成物とセメントの混合物であるセメント組成物に対する水の使用量は、水/セメント比で40~65%が好ましい。
【0052】
[3.コンクリート組成物]
本発明のコンクリート組成物は、本発明のセメント組成物に水を加えて練り混ぜてなる。具体的には、本発明の本発明のセメント組成物と水とを含むことでセメントペーストとなり、これに細骨材等をさらに含むことでモルタルとなり、さらに粗骨材等を含むことでコンクリートとなる。
【0053】
本発明で使用する骨材は、特に限定されるものではないが、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましい。骨材の最大寸法は、吹付けできれば特に限定されるものではない。細骨材としては、川砂、山砂、海砂、石灰砂、及び珪砂などが使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利などが使用可能であり、砕砂、砕石も使用可能である。また、予め乾燥した骨材や、軽量骨材も使用できる。
【0054】
骨材の使用量は、超速硬性組成物とセメントの混合物であるセメント組成物100質量部に対して、30~600質量部が好ましい。特に、モルタルとして使用する場合は50~300質量部が好ましく、コンクリートとして使用する場合は400~500質量部が好ましい。
【0055】
[4.吹付け施工方法]
本発明の吹付け施工方法は、本発明の超速硬性組成物を空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付ける、吹付け施工方法である。
【0056】
本発明者らは、本発明の超速硬性組成物を吹付け工法用の急結剤として使用した場合、リバウンド率を低減できる新たな知見を見出した。これは、当該組成物の反応活性が高いため、骨材粒子表面を付着性に寄与するセメントペースト分で瞬時に覆うので連続的に吹き付けられたコンクリートは吹付け面に留まりやすくなる。よって、骨材分が吹付け時の衝突により分離しづらいのでリバウンドが減少すると推定できる。吹付け工法としては、要求される物性、経済性、施工性に応じて乾式吹付けや湿式吹付けが好ましい。
【0057】
本発明の吹付け工法においては、従来使用の吹付け設備等が使用可能である。具体的には、例えば、吹付けセメントコンクリートの圧送にはシンテック社製、商品名「MKW-25SMT」などが、また、超速硬性組成物の圧送には急結剤圧送装置「ナトムクリート」などがそれぞれ使用可能である。
【0058】
特に湿式吹付け工法としては、例えば、セメント、細骨材、粗骨材、及び水を加えて混練したコンクリートをポンプ圧送し、途中にY字管を設け、その一方から急結剤供給装置により圧送(空気搬送)した超速硬性組成物を合流混合して得られる吹付ける方法が挙げられる。
【0059】
当該吹付け工法における吹付け圧力は、0.2~0.5MPaが好ましく、吹付け速度は4~20m/hが好ましい。超速硬性組成物を圧送する圧送空気の圧力は、コンクリートが超速硬性組成物の圧送管内に混入した時に圧送管内が閉塞しないように、コンクリートの圧送圧力より0.01~0.3MPa大きいことが好ましい。
【実施例
【0060】
以下に、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。なお、特に記載しない限り、部及び%は質量基準である。
【0061】
「実験例1
下記のクリンカー粉末A~Oを用意した。
なお、クリンカー原料として、CaO原料には生石灰を、Al原料にはボーキサイト、SiO原料にはケイ石を使用した。
【0062】
<使用材料>
クリンカー粉末A:
真密度2.97g/cm、非晶質度95%、CaOが51%、Alが43%、SiOが3%、その他3%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度は8000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/gであり、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0063】
クリンカー粉末B:
真密度2.98g/cm、非晶質度95%、CaOが45%、Alが47%、SiOが4%、その他4%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度は8000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0064】
クリンカー粉末C:
真密度2.94g/cm、非晶質度95%、CaOが43%、Alが46%、SiOが7%、その他4%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度は8000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0065】
クリンカー粉末D:
真密度2.99g/cm、非晶質度95%、CaOが52%、Alが40%、SiOが4%、その他4%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度は8000K/秒とした。ブレーン比表面積5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0066】
クリンカー粉末E:
真密度2.95g/cm、非晶質度95%、CaOが50%、Alが46%、SiOが2%、その他2%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度は8000K/秒とした。ブレーン比表面積5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0067】
クリンカー粉末F:
真密度2.97g/cm、非晶質度95%、CaOが46%、Alが46%、SiOが4%、その他4%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度は8000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0068】
クリンカー粉末G:
真密度2.90g/cm、非晶質度95%、CaOが44%、Alが50%、SiOが3%、その他3%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度は8000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0069】
クリンカー粉末H:
真密度2.98g/cm、非晶質度95%、CaOが46%、Alが51%、SiOが1%、その他2%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度は8000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0070】
クリンカー粉末I:
真密度3.00g/cm、非晶質度95%、CaOが55%、Alが40%、SiOが3%、その他2%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度は8000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0071】
クリンカー粉末J:
真密度3.02g/cm、非晶質度95%、CaOが57%、Alが40%、SiOが2%、その他1%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度は8000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0072】
クリンカー粉末K:
真密度2.88g/cm、非晶質度95%、CaOが40%、Alが57%、SiOが2%、その他1%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が8000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0073】
クリンカー粉末L:
真密度2.97g/cm、非晶質度90%、CaOが45%、Alが47%、SiOが4%、その他4%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が7000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0074】
クリンカー粉末M:
真密度2.96g/cm、非晶質度80%、CaOが45%、Alが47%、SiOが4%、その他4%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が6000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0075】
クリンカー粉末N:
真密度2.95g/cm、非晶質度70%、CaOが45%、Alが47%、SiOが4%、その他4%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が5000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0076】
クリンカー粉末O:
真密度2.94g/cm、非晶質度50%、CaOが45%、Alが47%、SiOが4%、その他4%。クリンカー原料の加熱温度は1700℃、1400℃から1000℃までの冷却速度が4000K/秒とした。ブレーン比表面積は5000cm/g、粒子径1.0μm未満は1.0%、30μm超は1.0%である。
【0077】
<測定方法>
クリンカー粉末の非晶質度、真密度、ブレーン比表面積、粒子径が1.0μm未満、30μm超粒子の含有率については下記の方法で測定した。
【0078】
非晶質度:表1に示すクリンカー粉末を、酸素濃度3体積%、窒素濃度95体積%、一酸化炭素濃度2体積%の還元雰囲気で、1000℃で2時間焼きなました。すなわち、1000℃で2時間熱処理した後、毎分5℃の冷却速度で徐冷し結晶化させる。次いで、結晶化させたものを粉末X線回折法により測定し、結晶鉱物のメインピークの面積S0を求める。次いで、焼きなます前の物質の結晶のメインピーク面積Sから、X(%)=100×(1-S/S0)の式により非晶質度Xを求めた。結果を表1に併記した。
【0079】
真密度:表1に示すクリンカー粉末を、酸素濃度3体積%、窒素濃度95体積%、一酸化炭素濃度2体積%の還元雰囲気で、1000℃で2時間焼きなました。その後、毎分5℃の冷却速度で徐冷し結晶化させる。この焼きなまし前後の真密度をアルキメデスの原理に基づく気相置換法に準拠して、マルチピクノメーターにより測定した。結果を表1に併記した。
【0080】
ブレーン比表面積:JIS R5201-1997「セメントの物理試験方法」に準じて測定した。結果を表1に併記した。
【0081】
粒子径が1.0μm未満、30μm超粒子の含有率:HORIBA社製、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920を用いた。クリンカー粉末をエタノールに超音波分散させ、相対屈折率130a0001の条件で粒度分布を測定した。かかる粒度分布から1.0μm未満、30μm超粒子の含有率を求めた。結果を表1に併記した。
【0082】
【表1】
【0083】
表1において、クリンカー粉末A~I、L、M、及びNは、本発明に係るCaO-Al-SiO系化合物であって、非晶質度が70%以上で、かつ、1000℃で焼きなました後の真密度の値が、焼きなます前よりも小さく、CaOが40~55%、Alが40~55%、SiOが1~7%の範囲にある。一方、クリンカー粉末J、K、及びOは、1000℃で焼きなました後の真密度の値が、焼きなます前よりも小さくなっていない。
【0084】
「実験例2」
クリンカー粉末100部に対し、ミョウバン、ケイ酸塩を表2、3に示す配合で混合した超速硬性組成物を調製し、一方でセメント800g、細骨材2000g、水400gのモルタルを調製し、そのモルタルに超速硬性組成物80gを加えて急結モルタル(コンクリート組成物)を調製し、流動性低下時間、凝結時間、圧縮強度を測定した。結果を表2及び表3に併記する。
【0085】
なお、使用材料及び各種試験方法は下記のとおりである。
「使用材料」
セメント:市販品、普通ポルトランドセメント、密度3.15g/cm
細骨材:新潟県姫川水系川砂、密度2.61g/cm
水:工業用水
ミョウバン:カリウムミョウバン12水和物、市販品、1mm篩いの通過率98%
ケイ酸塩:SiO/NaOモル比1.0で、450μm篩いの通過率97%、市販品、無水塩
【0086】
「試験方法」
流動性低下時間:調製したモルタルに超速硬性組成物を加えて、モルタルミキサーの高速モードで10秒間練り混ぜ後、急結モルタルの流動性が低下した時間を指触で測定した。
【0087】
凝結時間:調製したモルタルに超速硬性組成物を加えてから、素早くプロクター試験専用型枠へ型詰めし、超速硬性組成物を加えてからの凝結の始発時間、終結時間を測定した(ASTM C403に準じて測定)。
【0088】
圧縮強度:凝結時間と同様に急結モルタルを調製したときからの圧縮強度(N/mm)を測定した。材齢は10分、30分、8時間とした(JSCE D102に準じて測定)。
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
表2、3より、CaO-Al-SiO系化合物であって、非晶質度が70%以上で、かつ、1000℃で焼きなました後の真密度の値が、焼きなます前よりも小さいA、C、Iのクリンカー粉末を用いた超速硬性組成物は、凝結特性に優れ、短時間の強度発現性にも優れていることがわかる。
一方、1000℃で焼きなました後の真密度の値が、焼きなます前よりも小さくならないJ、K、Oのクリンカー粉末を用いた超速硬性組成物は、凝結速度が遅く、短時間の強度発現性も小さいことがわかる。
【0092】
「実験例3」
実験No.2-4の配合をベースに、表に示すようにクリンカー粉末100質量部に対して、水酸化物、炭酸塩、ミョウバン類以外の硫酸塩、硝酸塩を配合した以外は、実験例2と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0093】
なお、使用材料は下記のとおりである。
「使用材料」
水酸化物:水酸化カルシウム、市販品
炭酸塩:炭酸ナトリウム、市販品
ミョウバン類以外の硫酸塩A:硫酸アルミニウム、市販品
ミョウバン類以外の硫酸塩B:硫酸ナトリウム、市販品
硝酸塩:硝酸ナトリウム、市販品
【0094】
【表4】
【0095】
表4より、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ミョウバン類以外の硫酸塩、硝酸塩から選ばれる1種又は2種以上の物質をさらに組み合わせることで、さらに凝結速度を向上でき、短時間強度も向上できることがわかる。
【0096】
「実験例4」
セメント360kg、水216kg、細骨材1049kg、粗骨材(新潟県姫川水系6号砕石、密度2.67g/cm)716kgのコンクリートを調製した。シンテック社MKW-25SMTのコンクリートポンプで10m/hの設定でコンクリートをポンプ圧送し、途中で別系統からの圧縮空気と混合合流させて空気搬送した。さらに、吐出前3m地点で下記表5に示す粉状急結剤を搬送装置デンカNATMクリートでセメント100部に対して10部となるように、当該超速硬性組成物を空気搬送されたコンクリートと混合合流させて吹付けコンクリートとし、ノズル先より鉄板に吹付けた。吹付けてからの初期強度、長期強度、リバウンド率を表5に示す。
【0097】
「試験方法」
初期強度:JSCE-G561に準じて型枠に吹付けて、材齢10分、3時間、1日時点での引き抜き強度より、圧縮強度に換算し、初期強度を測定した。
【0098】
長期強度:JSCE-F561、JIS A1107に準じて型枠に吹付けて、材齢7日、28日時点でコアを採取して、圧縮強度を測定した。
【0099】
リバウンド率:掘削断面15mの模擬トンネルの円周方向45°~90°の範囲で幅1mの領域(予め吹付けコンクリートを施工し、硬化後に平滑になるように削り落とした面)に3分間吹付けときのはね返りを測定し、使用した吹付けコンクリートからのリバウンド率を下記式から求めた。
【0100】
式) リバウンド率=落下した吹付けコンクリート量(kg)/吹付けに使用した吹付けコンクリート量(kg)×100(%)とした。
なお、リバウンド率は、20%以下であることが好ましい。
【0101】
【表5】
【0102】
表5より、実施例のリバウンド率は20%以下を示しているが、比較例は30%前後のリバウンド率を示しており、本発明の超速硬性組成物を使用することでリバウンド率の低減に寄与できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の超速硬性組成物を用いると、優れた凝結特性、1時間以内の初期強度発現性を示す。また、吹付けコンクリート用の急結剤として使用することで、リバウンド率の低減に寄与できるので、トンネル建設時の吹付けコンクリート、法面の保護吹付け、コンクリート構造物の補修・補強吹付けに利用することができる。