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特許7173832油性インクジェットインク及び油性インクジェットインクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】油性インクジェットインク及び油性インクジェットインクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20221109BHJP
   C09D 11/36 20140101ALI20221109BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20221109BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/36
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018204133
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2019172956
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018061854
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信介
(72)【発明者】
【氏名】北ノ原 光子
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 光
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 祥史
(72)【発明者】
【氏名】▲清▼水 麻奈美
(72)【発明者】
【氏名】江▲崎▼ 直史
(72)【発明者】
【氏名】松沢 智洋
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-342388(JP,A)
【文献】特開2006-056943(JP,A)
【文献】特開2017-088843(JP,A)
【文献】特開2017-218472(JP,A)
【文献】特開2008-248220(JP,A)
【文献】特開2015-212018(JP,A)
【文献】特開2012-017436(JP,A)
【文献】特開2004-263181(JP,A)
【文献】特開2010-168455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/30
C09D 11/36
B41M 5/00
B41J 2/01
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、
ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂と、
非水系溶剤と、を含有し、
前記非水系溶剤が、シリコーンオイルを含み、前記シリコーンオイルが、変性シリコーンオイルを含む、油性インクジェットインク。
【請求項2】
前記シリコーンオイルが、アルキル変性シリコーンオイルを含む、請求項に記載の油性インクジェットインク。
【請求項3】
前記非水系溶剤が、シリコーンオイルを非水系溶剤全量に対して10~100質量%含む、請求項1又は2に記載の油性インクジェットインク。
【請求項4】
色材及び樹脂を含む着色樹脂粒子と、
ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂と、
非水系溶剤と、を含有する、油性インクジェットインク。
【請求項5】
前記着色樹脂粒子の前記樹脂が、酸性樹脂を含む、請求項に記載の油性インクジェットインク。
【請求項6】
前記油溶性樹脂において、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位の量が、前記油溶性樹脂の全構成単位に対して、10~40質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
【請求項7】
前記油溶性樹脂が、塩基性基を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
【請求項8】
前記油溶性樹脂が、炭素数8~18のアルキル基及び/又はβ-ジカルボニル基有する、請求項1~のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
【請求項9】
色材と、
ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂と、
非水系溶剤と、を含有し、
前記油溶性樹脂が、β-ジカルボニル基を有する、油性インクジェットインク。
【請求項10】
非水系溶剤、及び、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂を含む連続相と、水、色材、及び水分散性樹脂を含む分散相とを含む油中水型エマルションを作製する工程と、
前記油中水型エマルションから前記水を除去する工程とを含む、油性インクジェットインクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、油性インクジェットインク及び油性インクジェットインクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた記録媒体に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。非水系インクは、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインク(溶剤系インク)と、主溶媒が低揮発性あるいは不揮発性の有機溶剤である油性インク(オイル系インク)に分類できる。ソルベントインクは主に有機溶剤の蒸発によって記録媒体上で乾燥するのに対して、油性インクは記録媒体への浸透が主となって乾燥する。
【0003】
インクジェットインクの吐出性能については、特許文献1は、顔料と分散剤と非水系溶媒とを含有し、非水系溶媒の全重量の50%以上は、炭素数24以上36以下のエステル系溶媒である、インクジェット用非水系インク組成物によって、高い吐出安定性が得られることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-154149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の開示するインクでは、非水系溶媒全重量の50%以上が炭素数24以上36以下のエステル系溶媒であるが、高炭素数のエステル系溶剤によりインクが高粘度となる傾向があり、このため、インクジェットノズルからの吐出性能については、改善の余地がある。
本発明の一目的は、吐出性に優れた油性インクジェットインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、色材と、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂と、非水系溶剤と、を含有する、油性インクジェットインクが提供される。
本発明の他の実施形態によれば、非水系溶剤、及び、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂を含む連続相と、水、色材、及び水分散性樹脂を含む分散相とを含む油中水型エマルションを作製する工程と、前記油中水型エマルションから前記水を除去する工程とを含む、油性インクジェットインクの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、吐出性に優れた油性インクジェットインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはなく、様々な修正や変更を加えてもよいことは言うまでもない。以下、油性インクジェットインクを、単に「インク」又は「油性インク」と称する場合がある。
【0009】
本発明の実施形態の油性インクジェットインクは、色材と、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂と、非水系溶剤と、を含有する、油性インクジェットインクである。
【0010】
この油性インクジェットインクは、吐出性に優れる。特定の理論に拘束されるものではないが、この理由として、以下のように考えられる。
シロキサン結合(Si-O-Si)は、炭素-炭素結合に比べ、結合エネルギー、原子間距離、及び結合核が大きく、らせん型の分子構造をとる。このため、ポリジメチルシロキサン構造では、メチル基が外側に配向する構造となり、分子間力が小さくなると考えられる。ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂を用いることで、この効果により、樹脂の分子量を下げることなく、インクを低粘度化することができると考えられる。これにより油溶性樹脂による色材等の分散性を維持しつつ、インクを低粘度化でき、吐出性能を確保することができると考えられる。
【0011】
クリアファイル、特にポリプロピレン(PP)製のクリアファイルを用いて、油性インクによる印刷物を挟み込む場合、印刷物のインク成分、特に非水系溶剤成分が揮発して、クリアファイルに接触すると、クリアファイルの内側の面が大きく変性し、クリアファイルの外側の面に対して膨潤ないし収縮して、クリアファイルが変形することがある。
本実施形態の油性インクジェットインクによれば、クリアファイル変形も抑制することもできる。
【0012】
インクは、色材として顔料、染料、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料;及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
顔料の分散形態は、例えば、顔料が後述する着色樹脂粒子に含まれ、この着色樹脂粒子を分散剤で分散させた分散体であってもよく、顔料分散剤を顔料表面に直接吸着させて分散させた分散体であってもよい。顔料を含む着色樹脂粒子は、例えば、顔料が油溶性樹脂で被覆されたいわゆるカプセル顔料であってもよい。
【0014】
顔料の平均粒子径としては、吐出安定性と保存安定性の観点から、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下である。
顔料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることが一層好ましい。
【0015】
染料としては、当該技術分野で一般に用いられているものを任意に使用することができる。例えば、油溶性染料を用いてもよく、油溶性染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
染料は、インク全量に対し、通常0.01~20質量%であり、画像濃度とインク粘度の観点から、1~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることが一層好ましい。
【0017】
ローラ転写汚れの低減の観点から、インクは、色材及び樹脂を含む着色樹脂粒子(以下、単に「着色樹脂粒子」と称する場合がある。)を含むことが好ましい。インクジェット印刷では、インクジェットプリンタ内において印刷直後の印刷物をローラで搬送した際に、印刷直後の印刷物上のインクが、インクジェットプリンタの、駆動ローラまたは従動ローラ等のローラ面に付着し、このローラ面からその後に搬送されてくる記録媒体にインクが付着して、汚れ(「ローラ転写汚れ」)が生じることがある。色材及び樹脂を含む着色樹脂粒子を含むインクとすることで、ローラ転写汚れを低減することができる。
【0018】
着色樹脂粒子は、色材として、顔料、染料、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0019】
着色樹脂粒子が顔料を含む場合、着色樹脂粒子に含まれる顔料としては、例えば、上述の顔料から1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、油中水(W/O)型エマルションの油中乾燥法を用いた方法で着色樹脂粒子を含む油性インクジェットインクを製造する場合、顔料は、水に分散させた水分散体の形態で好ましく用いることができる。顔料としては、顔料表面に、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、スルホ基等の水に対する可溶化基等を結合させ、顔料自体が水中に分散するようにした自己分散顔料を使用してもよい。例えば、自己分散顔料の水分散体を好ましく用いることができる。または、顔料を、例えば、後述する水溶性非イオン性分散剤等の顔料分散剤を用いて水中に分散させることも好ましい。水分散体を用いた場合、水分散体に含まれる水は、インクの製造工程で除去されることが好ましい。
【0020】
着色樹脂粒子が染料を含む場合、着色樹脂粒子に含まれる染料としては、裏抜けの低減の観点から、インクに含まれる非水系溶剤には溶解しにくいか又は溶解しないものが好ましく、また、油中水(W/O)型エマルションの油中乾燥法を用いた方法で油性インクジェットインクを製造する場合、水に溶解または分散する染料を用いることが好ましい。
着色樹脂粒子に含まれる染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等のうち水溶性の染料および還元等により水溶性になった水溶性染料を好ましく用いることができる。また、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、ニトロ系等の分散染料も好ましく用いることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
着色樹脂粒子に含まれる樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルシリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ローラ転写汚れの低減の観点から、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂が好ましく、ウレタン樹脂がより好ましい。
ウレタン樹脂は、ウレタン基を有する。一般にウレタン樹脂のウレタン基は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応により得ることができるが、ウレタン樹脂は、貯蔵安定性の観点から、ポリイソシアネートとして脂肪族ポリイソシアネートを用いたものが好ましい。ローラ転写汚れの低減の観点から、ウレタン樹脂としては、ウレタン基のほかにウレア基をさらに有するウレタンウレア樹脂が好ましい。
ウレタン樹脂の例には、ウレタン(メタ)アクリル樹脂も含まれるが、これは、(メタ)アクリル樹脂の例にも含まれる。
(メタ)アクリルは、メタクリル、アクリル、またはこれらの組み合わせを含むことを意味し、(メタ)アクリル樹脂は、メタクリル単位を含む樹脂、アクリル単位を含む樹脂、またはこれらの単位をともに含む樹脂を意味する。
【0022】
着色樹脂粒子に含まれる樹脂としては、酸性樹脂、塩基性樹脂、非イオン性樹脂の何れも用いることができるが、ローラ転写汚れの低減及びインク貯蔵安定性の観点から、酸性樹脂がより好ましい。酸性樹脂としては、酸性の官能基を有する樹脂であってもよいし、インクの製造において、原料として、酸性水分散性樹脂を用いることでもよい。酸性樹脂としては、酸性の官能基を有する樹脂が好ましく、酸性の官能基としては、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。
着色樹脂粒子に含まれる樹脂としては、酸性ウレタン樹脂、酸性(メタ)アクリル樹脂が好ましく、酸性ウレタン樹脂がより好ましく、酸性ウレタンウレア樹脂がさらに好ましい。
【0023】
着色樹脂粒子に含まれる樹脂は、インクの非水系溶剤への溶解性が、23℃においてインクの非水系溶剤100gに対して溶解できる樹脂の量として、1g以下であることが好ましい。樹脂の非水系溶剤への溶解性が低くなると、記録媒体内部に非水系溶剤が浸透する際に、着色樹脂粒子が非水系溶剤から離脱して記録媒体表面に存在しやすくなると考えられる。このため、インクの非水系溶剤への溶解性が、23℃においてインクの非水系溶剤100gに対して溶解できる樹脂の量として1g以下であるとき、裏抜け低減、及び画像濃度が得られやすい傾向がある。さらに、非水系溶剤中にウレタンウレア樹脂が溶けにくいことで、インクの低粘度化にも寄与しうる。
【0024】
着色樹脂粒子に含まれる樹脂の重量平均分子量は、樹脂の種類によっても異なるが、例えば、5,000~200,000が好ましく、10,000~150,000がより好ましい。例えば、ウレタン樹脂の重量平均分子量は、5,000~50,000が好ましく、10,000~30,000がより好ましい。(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、10,000~200,000が好ましく、30,000~150,000がより好ましい。
樹脂の重量平均分子量は、GPC法で標準ポリスチレン換算で求めた値である。
【0025】
例えば、油中水(W/O)型エマルションの油中乾燥法を用いた方法で、着色樹脂粒子を含む油性インクジェットインクを製造する場合等では、樹脂粒子に含まれる樹脂とするために、水分散性樹脂を用いることが好ましい。水分散性樹脂は、インクの製造において、例えば水などの液体に予め分散された分散体(水中油型(O/W)の樹脂エマルション)の形態で加えることが望ましい。水分散体を用いた場合、水分散体に含まれる水は、インクの製造工程で除去されることが好ましい。
水分散性樹脂は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が親水性の官能基を有するものでもよいし、樹脂粒子表面が親水性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。
【0026】
水分散性樹脂としては、酸性水分散性樹脂を用いることが好ましい。酸性水分散性樹脂は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有する酸性の官能基が粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面が酸性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。着色樹脂粒子が酸性樹脂を含む場合、着色樹脂粒子に含まれる酸性樹脂は、これらのいずれを用いて得られたものでもよい。酸性の官能基は、代表的にはカルボキシ基、スルホ基等であり、酸性の分散剤は、陰イオン界面活性剤等である。
【0027】
水分散性ウレタン樹脂の水分散体の市販品としては、例えば、三井化学株式会社製「WS5984」(商品名)、第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス150H」(商品名)等が挙げられ、水分散性ウレタン(メタ)アクリル樹脂の水分散体の市販品としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製「DAOTAN VTW1265」(商品名)等が挙げられ、水分散性(メタ)アクリル樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製「モビニール6750」(商品名)等が挙げられる。「WS5984」、「スーパーフレックス150H」、及び「DAOTAN VTW1265」のウレタン樹脂は、ウレア基を有するウレタンウレア樹脂である。
【0028】
着色樹脂粒子は、これらの樹脂を、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
着色樹脂粒子に含まれる樹脂の量は、適宜調整できる。
着色樹脂粒子に含まれる樹脂の量は、インク全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。一方、着色樹脂粒子に含まれる樹脂の量は、インク全量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。着色樹脂粒子に含まれる樹脂の量は、例えば、インク全量に対して、0.1~30質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましく、1~15質量%がより好ましく、3~10質量%がさらに好ましい。
【0030】
着色樹脂粒子に含まれる樹脂の量は、着色樹脂粒子全量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、着色樹脂粒子に含まれる樹脂の量は、着色樹脂粒子全量に対して、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。着色樹脂粒子に含まれる樹脂の量は、例えば、着色樹脂粒子全量に対して、1~70質量%が好ましく、5~70質量%がより好ましく、10~60質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。
【0031】
着色樹脂粒子に含まれる樹脂の量は、着色樹脂粒子中の色材の量に対して、質量比で、0.1~2.0であることが好ましく、0.2~1.0であることがより好ましい。
【0032】
着色樹脂粒子が顔料を含む場合、着色樹脂粒子は、例えばインクの製造工程等において顔料を分散させるための顔料分散剤をさらに含んでよい。上述したように、油中水(W/O)型エマルションの油中乾燥法を用いた方法で、色材として顔料を含む着色樹脂粒子を含む油性インクジェットインクを製造する場合、例えば、インクの製造において、このような顔料分散剤を用いて水中に顔料を分散させることが好ましい。好ましくは、着色樹脂粒子の色材は顔料を含み、着色樹脂粒子は顔料分散剤を含んでよい。
着色樹脂粒子に含まれてよいこのような顔料分散剤としては、例えば、水溶性塩基性(カチオン性)分散剤、水溶性酸性(アニオン性)分散剤、水溶性非イオン性分散剤等が挙げられる。例えば、油中水(W/O)型エマルションの油中乾燥法を用いた方法で油性インクジェットインクを製造する場合、水溶性非イオン性分散剤が好ましい。
【0033】
水溶性非イオン性分散剤は、親水基がイオン解離性をもたない分散剤である。水溶性非イオン性分散剤としては、例えば、分子内の主要な結合の仕方により、エステル型水溶性非イオン性分散剤、エーテル型水溶性非イオン性分散剤、エステル・エーテル型水溶性非イオン性分散剤が挙げられる。
エステル型水溶性非イオン性分散剤は、例えば、グリセリン、ソルビトール、しょ糖などの多価アルコールと脂肪酸がエステル結合した構造をもち、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびしょ糖脂肪酸エステルなどがある。
エーテル型水溶性非イオン性分散剤は、例えば、高級アルコール、アルキルフェノール、アリールフェノール、アリールアルキルフェノールなど水酸基をもつ原料に、主として酸化エチレンを付加させてつくることができ、例えば、ポリグリコールエーテル(例えば、アリールポリグリコールエーテル、アルキルポリグリコールエーテル)が挙げられる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールアルキルフェニルエーテルなどがある。
エステル・エーテル型水溶性非イオン性分散剤は、例えば、グリセリン、ソルビトールなどの多価アルコールと脂肪酸とからなるエステルに酸化エチレンを付加したものである。分子中にエステル結合とエーテル結合の両方を有している。例えば、脂肪酸ポリエチレングリコールエーテルエステルが挙げられる。
また、水溶性非イオン性分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸重合体、ポリシロキサン共重合体等を用いることもできる。
これらの水溶性非イオン性分散剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
水溶性非イオン性分散剤としては、脂肪酸ポリエチレングリコールエーテルエステル、ポリグリコールエーテル(例えば、アリールポリグリコールエーテル)等がより好ましい。
【0035】
水溶性非イオン性分散剤を用いることで、インクの作製工程において、顔料をより微細にすることができ、効率良く高分子化合物が顔料を覆うことにより、着色樹脂粒子の粒子径をコントロールすることが可能になり、画像濃度を向上させることができると考えられる。
また、水溶性非イオン性分散剤を用いるとき、着色樹脂粒子に含まれる樹脂が酸性樹脂である場合、顔料凝集を防ぎやすく、貯蔵安定性がさらに良好なインクを作製することができる傾向がある。
【0036】
水溶性非イオン性分散剤の市販品としては、例えば、Borchers製「BorchiGenDFN」(商品名)(アリルアルキルビフェニルポリグリコールエーテル)、「Borchigen 12」(商品名)(脂肪酸ポリエチレングリコールエーテルエステル)等が挙げられる。
【0037】
着色樹脂粒子は、これらの顔料分散剤を、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて含んでよい。
着色樹脂粒子中のこれらの顔料分散剤の量は、適宜設定できる。例えば、質量比で、顔料1に対し0.1~5の割合で配合することができ、好ましくは0.1~1である。これらの顔料分散剤の量は、インク全量に対し、例えば、0.01~10質量%であってよく、好ましくは0.01~5質量%である。
着色樹脂粒子が水溶性非イオン性分散剤を含むとき、水溶性非イオン性分散剤は、着色樹脂粒子中の顔料分散剤全量に対して、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましい。水溶性非イオン性分散剤の量は、例えば、質量比で、顔料1に対し0.1~5の割合で配合することができ、好ましくは0.1~1である。水溶性非イオン性分散剤の量は、例えば、インク全量に対し、例えば、0.01~10質量%であってよく、好ましくは0.01~5質量%である。
【0038】
インクが着色樹脂粒子を含む場合、インク中の着色樹脂粒子の平均粒子径は、50~300nmが好ましく、80~200nmがより好ましい。インク中の着色樹脂粒子の量は、インク全量に対する、着色樹脂粒子成分の固形分の量として、1~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。
着色樹脂粒子の平均粒子径は、動的散乱方式による体積基準の平均粒子径であり、例えば、株式会社堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB-500」等を用いて測定することができる。
【0039】
インクは、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂を含むことが好ましい。ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂は、分散剤としてインク中の顔料等の色材や着色樹脂粒子等を良好に分散させることができる。
油溶性樹脂は、油性インクに含まれる溶剤に溶解する樹脂であり、具体的には、1気圧20℃において樹脂と油性インクに含まれる非水系溶剤とを同容量で混合した場合に、二相に分かれることなく均一に溶解するものを意味する。
ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂を「油溶性樹脂A」と称する場合がある。
インクは、油溶性樹脂Aを1種単独で含んでもよく、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
【0040】
油溶性樹脂Aの側鎖に含まれるポリジメチルシロキサン構造としては、例えば、下記式で表される構造が挙げられる。
【化1】
【0041】
上記式において、nは0以上であり、0~100が好ましく、1~30がより好ましい。Rはアルキル基を表す。
【0042】
油溶性樹脂Aは、アクリル系ポリマーであるが、単独重合体又は共重合体のいずれでもよい。
油溶性樹脂Aが共重合体であるとき、共重合形式はとくに限定されない。例えば、油溶性樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー等のいずれであってもよい。
油溶性樹脂Aは、モノマー混合物の共重合体を用いて成るアクリル系ポリマーであることが好ましい。モノマー混合物の共重合体を用いて成るアクリル系ポリマーは、例えば、モノマー混合物の共重合体であってよく、または、例えば、モノマー混合物の共重合体に、側鎖が更に結合した共重合体であってもよい。モノマー混合物は、後述するモノマーa~gからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、モノマーa~eからなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。一例において、モノマー混合物は、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を含む基を有するモノマー(後述するモノマーa)を含んでもよい。他の一例において、モノマー混合物の共重合体に、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を更に結合させてもよい。
【0043】
油溶性樹脂Aは、炭素数8~18のアルキル基を有することが好ましい。炭素数8~18のアルキル基は、後述する非水系溶剤の石油系炭化水素溶剤と相溶性が高い。炭素数8~18のアルキル基の炭素数は、12~18がより好ましい。
【0044】
炭素数8~18のアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。具体的には、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、エチルヘキシル基等が挙げられ、これらは1種のみ含まれてもよく、複数種が含まれていてもよい。
【0045】
油溶性樹脂Aは、インクの低粘度化の観点から、β-ジカルボニル基を有することが好ましい。β-ジカルボニル基の好ましい例としてアセトアセチル基、プロピオンアセチル基等のβ-ジケトン基、アセトアセトキシ基、プロピオンアセトキシ基等のβ-ケト酸エステル基が挙げられる。これらは1種のみ含まれてもよく、複数種が含まれていてもよい。なお、β-ジカルボニル基は、後述するアミノ基と反応する官能基でもある。
【0046】
油溶性樹脂Aは、アミノ基と反応する官能基を有することが好ましい。アミノ基と反応する官能基は、アミノアルコール等との反応により、後述するウレタン結合を含む側鎖の形成に用いることができる。アミノ基と反応する官能基は、例えば、塩基性化合物との反応により、後述する塩基性基の導入等にも用いることができる。一方、未反応のアミノ基と反応する官能基は、顔料の吸着基としても作用すると考えられる。例えば、アミノ基と反応する官能基としては、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、及び前述のβ-ジカルボニル基を好ましく挙げることができ、エポキシ基、β-ジカルボニル基がより好ましい。エポキシ基は、グリシジル基の一部であってもよい。これらは1種のみ含まれてもよく、複数種が含まれていてもよい。
【0047】
油溶性樹脂Aは、芳香環含有基を有することが好ましい。芳香環含有基は、ベンゼン環を有することが好ましく、例えば、ベンジル基、フェニル基等が挙げられる。芳香環含有基は、顔料の吸着基として作用すると考えられる。これらは1種のみ含まれてもよく、複数種が含まれていてもよい。
【0048】
油溶性樹脂Aは、ウレタン結合を含む側鎖を有してもよい。油溶性樹脂Aは、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖のほかに、さらに、ウレタン結合を含む側鎖を有してもよい。また、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を、ウレタン結合を利用してグラフトしてもよい。このような側鎖として、例えば、ウレタン結合を含む連結基を介してポリジメチルシロキサン構造が結合する側鎖が例示される。
【0049】
油溶性樹脂Aは塩基性基を有してもよい。インクが、色材及び樹脂を含む着色樹脂粒子を含む場合、着色樹脂粒子の分散安定性の向上の観点から、油溶性樹脂Aは塩基性基を含むことが好ましい。
塩基性基としては、例えば、アミノ基、アミド基、イミノ基、ピロリドン基、モルホリノ基、ニトリル基等が挙げられる。例えば、アミノ基の例としては、非置換アミノ基、及び、モノ又はジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基等)等の置換アミノ基が挙げられ、例えば、アルキル基等の置換基が、さらに水酸基、アリール基等の置換基等で置換されていてもよい。アミド基の例としても同様に非置換アミド基、及びモノ又はジアルキルアミド基(例えば、ジメチルアミド基等)等の置換アミド基が挙げられ、例えば、アルキル基等の置換基が、さらに水酸基、アリール基等の置換基等で置換されていてもよい。油溶性樹脂Aは、塩基性基を1種のみ、または2種以上含んでよい。
【0050】
油溶性樹脂Aは、その他、例えば、炭素数19以上のアルキル基等を有してよい。炭素数19以上のアルキル基としては、炭素数19~22のアルキル基が好ましく、例えば、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。油溶性樹脂Aは、炭素数19以上のアルキル基を1種のみ、または2種以上含んでよい。
【0051】
油溶性樹脂Aが塩基性基を有する場合、油溶性樹脂Aは、例えば、炭素数8~18のアルキル基、β-ジカルボニル基、アミノ基と反応する官能基、芳香環含有基、炭素数19以上のアルキル基等から選択される1種または2種以上をさらに有してよい。例えば、一実施形態において、インクの低粘度化の観点から、油溶性樹脂Aは、塩基性基と、炭素数8~18のアルキル基及び/またはβ-ジカルボニル基とを有することが好ましく、塩基性基、炭素数8~18のアルキル基及びβ-ジカルボニル基を有することがさらに好ましい。これらは同一の構成単位に含まれてもよく、互いに異なる構成単位に含まれてもよいが、異なる構成単位に含まれることが好ましい。
【0052】
油溶性樹脂Aは、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位を含み、さらに、炭素数8~18のアルキル基を有する構成単位、β-ジカルボニル基を有する構成単位、及びアミノ基と反応する官能基を有する構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。油溶性樹脂Aは、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位のほかに、さらに、ウレタン結合を含む側鎖を有する構成単位を有してもよい。油溶性樹脂Aは、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位が、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖中にウレタン結合を有してよく、このような側鎖として、例えば、ウレタン結合を含む連結基を介してポリジメチルシロキサン構造が結合する側鎖が例示される。
【0053】
油溶性樹脂Aは、塩基性基を有する構成単位を含んでもよい。インクが、色材及び樹脂を含む着色樹脂粒子を含む場合、着色樹脂粒子の分散安定性の向上の観点から、油溶性樹脂Aは、塩基性基を有する構成単位を含むことが好ましい。
油溶性樹脂Aは、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位と、塩基性基を有する構成単位とを含む樹脂であってよく、この場合、炭素数8~18のアルキル基を有する構成単位、β-ジカルボニル基を有する構成単位、及びアミノ基と反応する官能基を有する構成単位からなる群から選択される少なくとも1種とをさらに含むことが好ましい。油溶性樹脂Aは、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位と、塩基性基を有する構成単位と、炭素数8~18のアルキル基を有する構成単位及びβ-ジカルボニル基を有する構成単位からなる群から選択される少なくとも1種とを含むことがより好ましく、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位と、塩基性基を有する構成単位と、炭素数8~18のアルキル基を有する構成単位と、β-ジカルボニル基を有する構成単位とを含むことがさらに好ましい。
【0054】
塩基性基を有する単位は、後述する塩基性基を有するモノマーに由来する単位であってよいが、例えば、アミノ基と反応する官能基を有する単位等のアミノ基と反応する官能基に塩基性化合物を反応させて得ることもできる。
【0055】
油溶性樹脂Aは、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を含む基を有するモノマー(以下、「モノマーa」と称する場合がある。)を重合したアクリル系ポリマーであってよく、また、例えば、モノマーaとその他のモノマーとを含むモノマー混合物の共重合体であるアクリル系ポリマーであってよい。その他のモノマーとして、例えば、炭素数8~18のアルキル基を有するモノマー(以下、「モノマーb」と称する場合がある。)、β-ジカルボニル基を有するモノマー(以下、「モノマーc」と称する場合がある。)、アミノ基と反応する官能基を有するモノマー(以下、「モノマーd」と称する場合がある。)、芳香環含有基を有するモノマー(以下、「モノマーe」と称する場合がある。)、塩基性基を有するモノマー(「以下、モノマーf」と称する場合がある。)、及び、炭素数19以上のアルキル基を有するモノマー(「以下、モノマーg」と称する場合がある。)等が挙げられ、その他のモノマーは、例えば、これらからなる群から選択される少なくとも1種(例えば、モノマーb~eからなる群から選択される少なくとも1種、又は、モノマーb~gからなる群から選択される少なくとも1種等)を含んでよい。炭素数8~18のアルキル基、β-ジカルボニル基、アミノ基と反応する官能基、芳香環含有基、塩基性基、炭素数19以上のアルキル基については、上述の通りである。
【0056】
油溶性樹脂Aとしては、例えば、モノマーa~eからなる群から選択される少なくとも一種を含むモノマー混合物の共重合体を用いて成るアクリル系ポリマー;モノマーaと、モノマーbと、モノマーc及びモノマーdから選択される少なくとも1種とを含むモノマー混合物の共重合体を用いて成るアクリル系ポリマー;モノマーaと、モノマーbと、モノマーc及びモノマーdから選択される少なくとも1種と、モノマーfとを含むモノマー混合物の共重合体を用いて成るアクリル系ポリマー等が挙げられる。
【0057】
モノマーaとしては、ポリジメチルシロキサン構造を含む基を有する(メタ)アクリレート等のポリジメチルシロキサン構造を有する(メタ)アクリルモノマーを好ましく用いることができる。例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基に直接又は連結基を介してポリジメチルシロキサン構造が結合した化合物(例えば、メタクリル変性シリコーンオイル等の(メタ)アクリル変性シリコーンオイル)等が挙げられる。連結基としては特に限定されないが、例えば、アルキレン基等が挙げられ、炭素数2~6のアルキレン基が好ましく、炭素数2~4のアルキレン基がより好ましい。
モノマーaとして、例えば、下記式で表される化合物等が挙げられる。下記式において、xは2~6が好ましく、2~4が好ましい。nは0以上であり、0~100が好ましく、1~30がより好ましい。Rは水素原子又はメチル基を表す。R1´はアルキル基を表す。
【0058】
【化2】
【0059】
モノマーaの市販品としては、たとえば、信越化学工業株式会社製X-22-2404、X-22-174ASX、X-22-174BX等が挙げられる。「(メタ)アクリロイルオキシ基」は、「アクリロイルオキシ基」及び「メタクリロイルオキシ基」を包含する。「(メタ)アクリレート」は、「メタクリレート」及び「アクリレート」を包含する。モノマーaは、1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
【0060】
モノマーbとしては、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。炭素数8~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、パルミチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等を好ましく挙げることができる。これらは、1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
【0061】
モノマーcとしては、β-ジカルボニル基を有する(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミド等を好ましく用いることができる。たとえば、エステル鎖にβ-ジケトン基またはβ-ケト酸エステル基を含む(メタ)アクリレート、アミド鎖にβ-ジケトン基またはβ-ケト酸エステル基を含む(メタ)アクリルアミド等が好ましい例として挙げられる。より詳細には、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、ヘキサジオン(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を併用することができる。(メタ)アクリルアミドは「メタクリルアミド」及び「アクリルアミド」を包含する。
【0062】
モノマーdとしては、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート、ビニル基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。上記のモノマーcの例として挙げられたものも、モノマーdの例に含まれる。グリシジル基を有する(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられ、ビニル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ビニル(メタ)アクリレート、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。モノマーdは、1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
【0063】
モノマーeとしては、芳香環含有基を有する(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができ、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。モノマーeは、1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
【0064】
モノマーfとしては、例えば、塩基性基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等を用いることができ、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。モノマーfは、1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
モノマーfとしては、例えば、モノマーc又はモノマーdに塩基性化合物を付加したモノマーを用いてもよい。付加する塩基性化合物としては、ヒドロキシ基を有するアミン化合物(例えばアルカノールアミン等)が好ましい。ヒドロキシ基を有するアミン化合物としては、例えば、ベンジルエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。塩基性化合物としては、2級アミン化合物が好ましく、ジエタノールアミンが特に好ましい。モノマーdに塩基性化合物を付加したモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートのジエタノールアミン付加物、グリシジル(メタ)アクリレートのベンジルエタノールアミン付加物等が挙げられる。
なお、モノマーfを用いることで、油溶性樹脂Aに塩基性基を導入することができるが、塩基性基は、例えば、モノマーc又はモノマーdに由来する単位に、上述の塩基性化合物を付加することで油溶性樹脂Aに導入することもできる。
【0065】
モノマーgとしては、炭素数19以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。炭素数19のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベヘニル(メタ)アクリレート等を好ましく挙げることができる。モノマーgは、1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
【0066】
上記の各モノマーは、公知のラジカル重合により、容易に重合させることができる。反応系としては、溶液重合または分散重合で行うことが好ましい。重合反応の際には、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物等、公知の熱重合開始剤を使用することができる。その他にも、活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する光重合型開始剤を用いることができる。溶液重合に用いる重合溶媒には、例えば石油系炭化水素溶剤、極性溶剤等を使用できる。この重合溶媒は、そのままインクの非水系溶剤(後述)として使用できるもののなかから1種以上を選択することが好ましい。
【0067】
また、重合反応に際し、その他、通常使用される重合禁止剤、重合促進剤、分散剤等を反応系に添加することもできる。重合後の樹脂の分子量を後述の好ましい範囲とするために、重合時に連鎖移動剤を併用することが有効である。連鎖移動剤としては、例えば、n-ブチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン等のチオール類が用いられる。
【0068】
油溶性樹脂Aを合成する際の、具体的な反応条件および好適な反応フローの1例は以下のとおりである。
(1)合成用の容器内で、非水系溶剤を50~150℃に加温する。
(2)モノマーa、必要に応じて他のモノマー(例えば、モノマーb~gからなる群から選択される少なくとも1種を含む他のモノマー)、必要に応じて重合開始剤、および必要に応じて非水系溶剤を含む混合液を1~5時間かけて非水系溶剤に添加し、さらに1~5時間撹拌する。
(3)必要に応じて、非水系溶剤で希釈する。
このようなフローを含む合成方法により、油溶性樹脂Aが得られるが、油溶性樹脂Aの合成方法はこのような合成方法例に限定されるわけではない。
工程2の混合液において必要に応じて加える他のモノマーは、例えば、モノマーb~eからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。油溶性樹脂Aが塩基性基を含む場合、例えば、工程2の混合液は、モノマーfを含んでよい。
【0069】
油溶性樹脂Aが、ウレタン結合を含む側鎖を有する場合、上述のように、油溶性樹脂Aは、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖のほかに、さらに、ウレタン結合を含む側鎖を有してもよく、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖が、ウレタン結合を含んでもよい。
側鎖のウレタン結合は、例えば、アミノ基と反応する官能基を有するアクリル系ポリマー(以下、「アクリル系ポリマーP」と称する場合もある。)のアミノ基と反応する官能基と、アミノアルコールと多価イソシアネート化合物との反応により導入することができる。また、アミノ基と反応する官能基は、アミノアルコール等との反応に用いられない場合は、上述のように、顔料の吸着基として作用すると考えられる。
ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖がウレタン結合を含む場合、例えば、アミノ基と反応する官能基を用いて導入されたウレタン結合を含む連結基に、ポリジメチルシロキサン構造を結合させてもよい。
【0070】
アクリル系ポリマーPは、例えば、上述のモノマーdを重合したアクリル系ポリマーであってよく、また、例えば、モノマーdとその他のモノマーとを含むモノマー混合物の共重合体であるアクリル系ポリマーであってよい。その他のモノマーとしては、例えば、上述の、モノマーa、モノマーb、モノマーc、モノマーe、モノマーf、モノマーg等が挙げられ、その他のモノマーは、例えば、これらからなる群から選択される少なくとも1種(例えば、モノマーa、b、c及びeからなる群から選択される少なくとも1種、又は、モノマーa、b、c、e、f及びgからなる群から選択される少なくとも1種等)を含んでよい。
これらの各成分は、公知のラジカル重合により、容易に重合させることができる。反応系、重合開始剤、重合溶媒、反応系に添加する重合禁止剤、重合促進剤、分散剤、連鎖移動剤等については、既述の説明が適用される。
【0071】
油溶性樹脂Aがウレタン結合を含む側鎖を有する場合(ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖が、ウレタン結合を含む場合を含む)、側鎖のウレタン結合は、例えば、アクリル系ポリマーPのアミノ基と反応する官能基と、後述するアミノアルコールと多価イソシアネート化合物と、必要に応じて多価アルコールとの反応により導入することができる。また、さらに、ポリジメチルシロキサン構造を含む多価アルコール化合物を用いると、側鎖に、ウレタン結合を有する連結基を介してポリジメチルシロキサン構造を結合させることもできる。
【0072】
アミノ基と反応する官能基にアミノアルコールが反応して結合し、アミノアルコールのヒドロキシ基に、多価イソシアネート化合物のイソシアン酸エステル基(R1N=C=O)が付加反応すると、カルバミン酸エステル構造R1NHCOORを形成し、ウレタン結合が導入される。ここでRは、アミノ基と反応する官能基に結合したアミノアルコール部を示す。多価アルコールは、多価イソシアネート化合物との反応により一分子中のウレタン基の個数を増やすことが出来る。ポリジメチルシロキサン構造を含む多価アルコール化合物は、ウレタン結合を介してポリジメチルシロキサン構造を側鎖にグラフトすることが出来る。
【0073】
アミノアルコールとしては、モノメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等を例示できる。これらのアミノアルコールは、複数種を組み合わせて用いることもできる。
【0074】
アミノアルコールは、アミノ基と反応する官能基に対して、0.05~1モル当量で反応させることが好ましく、0.1~1モル当量で反応させることがより好ましい。アミノアルコールが1モル当量より少ない場合は、アミノ基と反応する官能基が未反応で残ることになるが、残ったアミノ基と反応する官能基は、上述のように、顔料の吸着基として作用すると考えられる。
【0075】
多価イソシアネート化合物としては、1,6-ジイソシアネートへキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネート等の脂肪族系、脂環式系、芳香族系のものが挙げられ、複数種を使用することもできる。多価イソシアネート化合物は、ヒドロキシ基との反応でウレタン基を導入する際に未反応原料などが残らないようにするために、仕込んだ原料に含まれるヒドロキシ基に対してほぼ当量(0.98~1.02モル当量)で反応させることが好ましい。
【0076】
多価アルコールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール等を用いることができる。 多価アルコールは、仕込んだイソシアネート基に対して、ほぼ当量(0.98~1.02モル当量)、で反応させることが好ましい。
【0077】
ポリジメチルシロキサン構造を含む多価アルコール化合物としては、例えば、カルビノール変性シリコーンオイル(市販品としては、例えば信越化学工業株式会社製KF-6000等)等を用いることができる。ポリジメチルシロキサン構造を含む多価アルコール化合物は、仕込んだイソシアネート基に対してほぼ当量(0.98~1.02モル当量)で反応させることが好ましい。
【0078】
油溶性樹脂Aがウレタン結合を含む側鎖を有する場合、油溶性樹脂Aを合成する際の、具体的な反応条件および好適な反応フローの一例は以下のとおりである。
(1´)合成用の容器内で、非水系溶剤を50~150℃に加熱する。
(2´)モノマーd、必要に応じて他のモノマー(例えば、モノマーa、モノマーb、モノマーc、モノマーe、モノマーf及びモノマーgからなる群から選択される少なくとも1種を含む他のモノマー)、必要に応じて重合開始剤、及び必要に応じて非水系溶剤を含む混合液を1~5時間かけて、非水系溶剤に添加し、その後、さらに1~3時間撹拌を続け、アクリル系ポリマーPが得られる。
(3´)合成用の容器内で、アクリル系ポリマーPを50~150℃に加熱後、アミノアルコールを添加し、1~2時間撹拌する。
(4´)多価イソシアネート、必要に応じて多価アルコール及び/又はポリジメチルシロキサン構造を含む多価アルコール化合物、及び、必要に応じてウレタン化触媒を1時間かけて添加し、1~5時間撹拌する。
(5´)必要に応じて、非水系溶剤で希釈する。
【0079】
このようなフローを含む合成方法によって、ウレタン結合を含む側鎖を有した油溶性樹脂Aが得られるが、油溶性樹脂Aがウレタン結合を含む側鎖を有する場合の油溶性樹脂Aの合成方法はこのような合成方法例に限定されるわけではない。なお、工程2´で、他のモノマーの1つとしてモノマーaを用いることで、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖と、さらに、ウレタン結合を含む側鎖とを有する油溶性樹脂Aを得ることができる。また、工程4´でポリジメチルシロキサン構造を含む多価アルコール化合物を用いることで、ウレタン結合を含む連結基を介してポリジメチルシロキサン構造が結合する側鎖を有する油溶性樹脂Aが得られる。
ウレタン化触媒としては、例えば、カルボン酸ビスマス塩を用いることができる。
工程2´の混合液において必要に応じて加える他のモノマーは、例えば、モノマーa、モノマーb、モノマーc及びモノマーeからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。油溶性樹脂Aが塩基性基を含む場合、例えば、工程2´の混合液は、モノマーfを含んでよい。
【0080】
油溶性樹脂Aが塩基性基を含む場合、例えば、上記に説明した方法のいずれかにおいて、モノマー混合物にモノマーfを含める方法で製造することができる。例えば、上記の反応フローのいずれかにおいて、モノマー混合物にモノマーfを含める方法で製造してもよい。
油溶性樹脂Aが塩基性基を含む場合、塩基性基は、アミノ基と反応する官能基と上述の塩基性化合物との反応で導入してもよい。この場合、油溶性樹脂Aは、例えば、上述のポリマーPのアミノ基と反応する官能基と上述の塩基性化合物を反応させて得られたものであってもよい。また、例えば、モノマーaと、モノマーbと、モノマーc及びモノマーdから選択される少なくとも1種とを含むモノマー混合物の共重合体のアミノ基と反応する官能基と上述の塩基性化合物とを反応させて得られたものであってよい。
【0081】
印刷物の良好な画像濃度を得る観点及び裏抜け低減の観点から、油溶性樹脂Aの全構成単位に対して、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位は、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。良好な画像濃度を得る観点、裏抜け低減の観点及び貯蔵安定性の観点から、油溶性樹脂Aの全構成単位に対して、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
油溶性樹脂Aの全構成単位に対して、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位は、例えば、2~80質量%であってよく、5~70質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
油溶性樹脂Aの全構成単位に対する、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位の量は、油溶性樹脂Aを構成する原料化合物の合計量に対する、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位を構成する原料化合物の合計量の割合(質量%)として求めることができる。
【0082】
また、印刷物の良好な画像濃度を得る観点及び裏抜け低減の観点から、油溶性樹脂Aの全構成単位に対して、側鎖にポリジメチルシロキサン構造を有する構成単位が、5~70質量%、より好ましくは10~40質量%であり、且つ、後述する非水系溶剤がシリコーンオイルを含むことが好ましい。
【0083】
油溶性樹脂Aが塩基性基を有する構成単位を含む場合、油溶性樹脂Aの全構成単位に対して、塩基性基を有する構成単位の量は、1~40質量%が好ましく、2~30質量%がより好ましく、5~20質量%がさらに好ましい。油溶性樹脂Aが塩基性基を有する構成単位を含む場合、油溶性樹脂Aの全構成単位に対して、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位の量は、上記範囲であってよいが、例えば、1~60質量%であってもよく、2~40質量%が好ましく、4~30質量%がより好ましい。
【0084】
油溶性樹脂Aが炭素数8~18のアルキル基を有する構成単位及び/又は炭素数19以上のアルキル基を有する構成単位を含む場合、油溶性樹脂Aの全構成単位に対して、これらの構成単位の量(両者を含む場合はその合計量)は、5~70質量%が好ましい。
【0085】
油溶性樹脂Aが炭素数8~18のアルキル基を有する構成単位を含む場合、油溶性樹脂Aの全構成単位に対して、炭素数8~18のアルキル基を有する構成単位の量は、1~70質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましい。
【0086】
油溶性樹脂Aがβ-ジカルボニル基を有する構成単位及び/又はアミノ基と反応する官能基を有する構成単位を含む場合、油溶性樹脂Aの全構成単位に対して、β-ジカルボニル基を有する構成単位及びアミノ基と反応する官能基を有する構成単位の量(両者を含む場合はその合計量)は、10~40質量%が好ましい。
油溶性樹脂Aの全構成単位に対する、各構成単位の量は、油溶性樹脂Aを構成する原料化合物の合計量に対する、それぞれの構成単位を構成する原料化合物の合計量の割合(質量%)として求めることができる。
【0087】
油溶性樹脂Aの分子量(重量平均分子量)は、特に限定されないが、インクジェットインクに用いる場合には、インクの吐出性の観点から5000~50000程度であることが好ましく、10000~30000程度であることがより好ましい。重量平均分子量は、GPC法で測定されるスチレン換算の重量平均分子量である。
油溶性樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は、常温以下であることが好ましく、さらには0℃以下であることがより好ましい。これにより、インクが記録媒体上で定着する際に、常温で成膜を促進させることができる。
【0088】
油溶性樹脂Aは、例えば、質量比で、色材1に対し、0.1~5の割合で配合することができ、好ましくは0.1~1である。例えば、インクに顔料が含まれる場合、油溶性樹脂Aは、例えば、質量比で、顔料1に対し、0.1~5の割合で配合することができ、好ましくは0.1~1である。また、インクが着色樹脂粒子を含む場合、油溶性樹脂Aは、例えば、質量比で、着色樹脂粒子1に対し、0.1~5の割合で配合することができ、好ましくは0.1~1である。
【0089】
油溶性樹脂Aのインク全量に対する含有量は、顔料又は着色樹脂粒子等の分散性を確保する観点から0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量以上であることがさらに好ましい。一方、油溶性樹脂Aの含有量は、インクの粘度及び高温環境下での保存安定性の観点から、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%であることがさらに好ましい。例えば、インク全量に対する油溶性樹脂Aの含有量は、0.01~20質量%が好ましく、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、1~8質量%であることがさらに好ましく、2~8質量%であることがさらに好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましい。
【0090】
油溶性樹脂Aを含む樹脂成分の含有量は、例えば、インク粘度の上昇を防止し、吐出性能をより改善する観点から、インク全量に対し10質量%以下であることが好ましい。油溶性樹脂Aを含む樹脂成分の含有量は、インク全量に対し、例えば、7質量%以下であってよく、5質量%以下であってもよい。
【0091】
インクが顔料を含む場合、及び、インクが着色樹脂粒子を含む場合、インクは、他の分散剤を含んでもよい。他の分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
【0092】
他の分散剤の市販品例としては、例えば、アイ・エス・ピー・ジャパン株式会社製「アンタロンV216(ビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体)、V220(ビニルピロリドン・エイコセン共重合体)」(いずれも商品名);日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、16000、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、24000、28000」(いずれも商品名); BASFジャパン株式会社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46、47、48、49、4010、4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名);楠本化成株式会社製「ディスパロンKS-860、KS-873N4(ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名);第一工業製薬株式会社製「ディスコール202、206、OA-202、OA-600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名);ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK2155、9077」(いずれも商品名);クローダジャパン株式会社製「HypermerKD2、KD3、KD11、KD12」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0093】
上述の他の分散剤がインクに含まれる場合、油溶性樹脂Aと上述の他の分散剤の合計量は、例えば、インクに顔料を含む場合は、質量比で、顔料1に対し、0.1~5とすることができ、好ましくは0.1~2であり、より好ましくは0.1~1である。インクに着色樹脂粒子を含む場合は、例えば、質量比で、着色樹脂粒子1に対し、0.1~5とすることができ、好ましくは0.1~2であり、より好ましくは0.1~1である。また、油溶性樹脂Aと上述の他の分散剤の合計量は、インク全量に対し、0.01~20質量%で配合することが好ましく、より好ましくは0.01~10質量%であり、例えば、0.01~5質量%であってもよい。
【0094】
非水系溶剤としては、非極性有機溶剤、極性有機溶剤のいずれも使用できる。非水系溶剤としては、シリコーンオイルを用いてもよい。なお、本実施形態において、非水系溶剤には、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0095】
非極性有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができる。市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN-10、カクタスノルマルパラフィンN-11、カクタスノルマルパラフィンN-12、カクタスノルマルパラフィンN-13、カクタスノルマルパラフィンN-14、カクタスノルマルパラフィンN-15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN-16、テクリーンN-20、テクリーンN-22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJXTGエネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれもエクソンモービル社製);モレスコホワイトP-40、モレスコホワイトP-60、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-80、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-120、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-200、モレスコホワイトP-260、モレスコホワイトP-350P(いずれも株式会社MORESCO製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJXTGエネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれもエクソンモービル社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましく、250℃以上がさらに好ましく、300℃以上がさらに好ましく、350℃以上が一層好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
【0096】
極性有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等を好ましく挙げることができる。
例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2-オクチルデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル等の1分子中の炭素数が13以上、好ましくは16~30の脂肪酸エステル系溶剤;
イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール(1-オクタデカノール)、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等の1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12~20の高級アルコール系溶剤;
ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14~20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましく、300℃以上がさらに好ましく、350℃以上が一層好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤、沸点が300℃以上の非水系溶剤、及び、沸点が350℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
【0097】
これらの石油系炭化水素溶剤及び極性溶剤は、クリアファイル変形抑制の観点からは、初留点又は沸点が高いことが好ましい。一方、初留点又は沸点が高く、揮発性が低い非水系溶剤は、インク粘度を高くする傾向がある。本実施形態のインクによれば、初留点が高い石油系炭化水素溶剤及び/又は沸点が高い極性溶剤を用いた場合にも、良好な吐出性を得やすい。
【0098】
シリコーンオイルは、1分子内にケイ素原子及び炭素原子を有し、23℃において液体状の化合物である。
シリコーンオイルとしては、シリル基を有する化合物、シリルオキシ基を有する化合物、シロキサン結合を有する化合物等を用いることができ、特にポリシロキサン化合物を好ましく用いることができる。
【0099】
シリコーンオイルとしては、例えば、鎖状シリコーンオイル、環状シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等を用いることができる。
鎖状シリコーンオイルは、ケイ素数が2~30の鎖状ポリシロキサンであることが好ましく、2~20がより好ましく、3~10が一層好ましい。鎖状シリコーンオイルとしては、例えば、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン等の直鎖ジメチルシリコーンオイル、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン等の分岐ジメチルシリコーンオイルが挙げられる。
環状シリコーンオイルとしては、ケイ素数が5~9の環状ポリシロキサンであることが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン、オクタデカメチルシクロノナシロキサン等の環状ジメチルシリコーンオイルを好ましく用いることができる。
【0100】
変性シリコーンオイルとしては、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルの一部のケイ素原子に各種有機基を導入したシリコーンオイルを用いることができる。変性シリコーンオイルとしては、すべてのケイ素原子が炭素原子またはシロキサン結合の酸素原子のいずれかとのみ結合していることが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、非反応性シリコーンオイルであることが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、その構成原子がケイ素原子、炭素原子、酸素原子、水素原子のみからなることが好ましい。
【0101】
変性シリコーンオイルとしては、例えば、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる少なくとも1つのメチル基が、アルキル基、カルボン酸エステル結合含有基、芳香環含有基、及びエーテル結合含有基からなる群から選択される1種以上によって置換された化合物を用いることができる。
また、変性シリコーンオイルとしては、例えば、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる、少なくとも1つのケイ素原子にアルキレン基を介してさらに別の鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルのケイ素原子が結合する化合物を用いることができる。この場合、アルキレン基を介して結合する鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる、少なくとも1つのメチル基は、アルキル基、カルボン酸エステル結合含有基、芳香環含有基、及びエーテル結合含有基からなる群から選択される1種以上によって置換されていてもよい。
【0102】
変性シリコーンオイルとしては、例えば、アルキル変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルやアラルキル変性シリコーンオイル等のアリール変性シリコーンオイル、カルボン酸エステル変性シリコーンオイル、アルキレン変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
変性シリコーンオイルとしては、ケイ素数が2~20であることが好ましく、2~10がより好ましく、2~6がさらに好ましく、3~6が一層好ましい。
【0103】
アルキル変性シリコーンオイルとしては、例えば、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、エイコシル基等の炭素数2~20のアルキル基を、1分子中に1個、又は2個以上有するシリコーンオイルが挙げられる。
アルキル変性シリコーンオイルの有するアルキル基の炭素数は、4以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、8以上がより好ましい。アルキル変性シリコーンオイルの有するアルキル基の炭素数は、20以下が好ましく、16以下がより好ましく、12以下がさらに好ましい。
【0104】
アルキル変性シリコーンオイルの例としては、例えば、鎖状又は環状のジメチルシリコーンオイルに含まれる少なくとも1つのメチル基が、炭素数2以上(より好ましくは2~20)のアルキル基で置換されたもの、及び、後述する変性シリコーンオイルSであって、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基として炭素数4以上のアルキル基を有するもの、等が挙げられる。
【0105】
アリール変性シリコーンオイルとしては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等、又はこれらの少なくとも1個の水素原子がアルキル基に置換された官能基等を、1分子中に1個、又は2個以上有するシリコーンオイルが挙げられる。
【0106】
なかでも、フェニル変性シリコーンオイルとしては、例えば、ジフェニルジメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-フェニル-3-(トリメチルシリルオキシ)トリシロキサン等のメチルフェニルシリコーン等が挙げられる。
【0107】
カルボン酸エステル変性シリコーンオイルとしては、例えば、炭素数1~20のアルキル基を有するアルキルカルボニルオキシ基、炭素数1~20のアルコキシ基を有するアルコキシカルボニル基等を、1分子中に1個、又は2個以上有するシリコーンオイルが挙げられる。
【0108】
シリコーンオイルとしては、例えば、信越化学工業株式会社製「KF-96L-2CS」、「KF-96L-5CS」、「KF-96A-6CS」、「KF-56A」;東レ・ダウコーニング株式会社製「DC246Fluid」、「FZ-3196」;東京化成工業株式会社製「1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-フェニル-3-(トリメチルシリルオキシ)トリシロキサン」、「デカメチルシクロペンタシロキサン」、「ドデカメチルシクロヘキサシロキサン」等の市販品を用いてもよい。
【0109】
変性シリコーンオイルの一例には、1分子中のケイ素数が2~6であり、ケイ素原子に炭素原子が直接結合し、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基を有し、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる炭素数及び酸素数の合計が4~20であるシリコーンオイルが含まれる。以下、このシリコーンオイルを変性シリコーンオイルSとも記す。
【0110】
変性シリコーンオイルSは、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基として、下記の(A)~(D)からなる群から選択される1種以上を有することができる。
(A)炭素数4以上のアルキル基。
(B)炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基。
(C)炭素数6以上の芳香環含有基。
(D)炭素数4以上のアルキレン基。
【0111】
変性シリコーンオイルSは、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる炭素数及び酸素数の合計が4以上であることが好ましく、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは10以上である。これによって、ノズルプレート面へのインクの濡れ性を低下することができる。
変性シリコーンオイルSは、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる炭素数及び酸素数の合計が20以下であることが好ましく、より好ましくは16以下であり、さらに好ましくは12以下である。これによって、インクを低粘度として吐出性能を改善することができる。
変性シリコーンオイルSの1分子中に炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基が2個以上含まれる場合は、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基の炭素数及び酸素数の合計は、2個以上の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基の炭素数及び酸素数の合計である。
【0112】
変性シリコーンオイルSは、ノズルプレートへのインクの付着を防止する観点から、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる炭素数及び酸素数の合計が4~12であることが好ましい。
また、変性シリコーンオイルSは、インクを低粘度化して吐出性能を改善する観点から、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる炭素数及び酸素数の合計が8~20であることが好ましい。
【0113】
変性シリコーンオイルSの例には、下記一般式(X)で表される化合物であるシリコーンオイルが含まれる。
【化3】
【0114】
一般式(X)において、Rは、酸素原子、又はケイ素原子に炭素原子が直接結合する2価の有機基であり、Rは、それぞれ独立的に、ケイ素原子に炭素原子が直接結合する1価の有機基であり、m及びnは、それぞれ独立的に、0~4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0~2の整数であり、1分子中のケイ素数が2~6であり、R及びRのうち少なくとも1個は、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基であり、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる酸素数及び炭素数の合計が4~20である。
【0115】
一般式(X)において、Rは、酸素原子、又は炭素数及び酸素数の合計が4以上である2価の有機基であり、Rは、それぞれ独立的に、メチル基、又は炭素数及び酸素数の合計が4以上である1価の有機基であることが好ましい。
【0116】
好ましくは、一般式(X)において、Rは、酸素原子、又は炭素数4以上のアルキレン基であり、Rは、それぞれ独立的に、メチル基、炭素数4以上のアルキル基、炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基、又は炭素数6以上の芳香環含有基であり、R及びRのうち少なくとも1個は、炭素数4以上のアルキレン基、炭素数4以上のアルキル基、炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基、及び炭素数6以上の芳香環含有基からなる群から選択され、1分子中の炭素数4以上のアルキレン基、炭素数4以上のアルキル基、炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基、及び炭素数6以上の芳香環含有基に含まれる酸素数及び炭素数の合計が4~20である。
【0117】
変性シリコーンオイルSの例には、下記一般式(X-1)で表される化合物であるシリコーンオイルが含まれる。
【化4】
【0118】
一般式(X-1)において、Rは、それぞれ独立的に、ケイ素原子に炭素原子が直接結合する1価の有機基であり、nは、0~4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0又は1であり、1分子中のケイ素数が2~6であり、Rのうち少なくとも1個は、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基であり、1分子中の炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基に含まれる酸素数及び炭素数の合計が4~20である。
【0119】
一般式(X-1)において、Rは、それぞれ独立的に、メチル基、又は炭素数及び酸素数の合計が4以上である1価の有機基であることが好ましい。
一般式(X-1)において、Rのうち少なくとも1個は、炭素数4以上のアルキル基、炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基、及び炭素数6以上の芳香環含有基からなる群から選択されることが好ましい。
【0120】
変性シリコーンオイルSにおいて、炭素数4以上のアルキル基は、鎖状または脂環式であってよく、直鎖または分岐鎖のアルキル基であってよい。
このアルキル基の炭素数は4以上が好ましく、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上である。
このアルキル基の炭素数は20以下が好ましく、より好ましくは16以下、さらに好ましくは12以下である。
【0121】
炭素数4以上のアルキル基は、例えば、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、エイコシル基等を挙げることができる。
好ましくは、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基であり、より好ましくはデシル基、ドデシル基である。
【0122】
アルキル基を有する変性シリコーンオイルSには、例えば、上記一般式(X-1)において、Rは、それぞれ独立的に、メチル基、又はケイ素原子に炭素原子が直接結合し、炭素数及び酸素数の合計が4以上のアルキル基であり、nは、0~4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0又は1であり、1分子中のケイ素数が2~6であり、Rのうち少なくとも1個は、上記アルキル基であり、1分子中の上記アルキル基に含まれる酸素数及び炭素数の合計が4~20である化合物を好ましく用いることができる。
【0123】
アルキル基を有する変性シリコーンオイルSには、例えば、下記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
【化5】
【0124】
一般式(1)中、Rは、炭素数4~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、m及びnは、それぞれ独立的に0~2の整数であり、m+n≦2である。
【0125】
一般式(1)において、Rは、炭素数4~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。Rで表されるアルキル基の炭素数が4以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上であることで、ノズルプレートに対するインクの濡れ性を改善することができる。特に、10以上とすることで表面張力が上がり、濡れ性が改善する。
また、Rで表されるアルキル基の炭素数が20以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは12以下であることで、クリアファイル変形を防止するとともに、インクの高粘度化を抑えて、吐出性能を改善することができる。
一般式(1)において、m及びnがそれぞれ0であることが好ましい。
【0126】
変性シリコーンオイルSにおいて、カルボン酸エステル結合含有基は、主鎖のシロキサン結合のケイ素原子にアルキレン基を介してカルボン酸エステル結合が結合する-RBb-O-(CO)-RBaで表される基、または、-RBb-(CO)-O-RBaで表される基を好ましく用いることができる。
ここで、RBaは、炭素数1以上の、直鎖または分岐鎖であってよい、鎖状または脂環式のアルキル基であることが好ましい。また、RBbは、炭素数1以上の、直鎖又は分岐鎖であってよい、鎖状または脂環式のアルキレン基であることが好ましい。主鎖のシロキサン結合のケイ素原子とカルボン酸エステル結合を結ぶアルキレン基は、炭素数2以上であることがより好ましい。
【0127】
カルボン酸エステル結合含有基の炭素数及び酸素数の合計は、エステル結合(-O-(CO)-)の1個の炭素原子と2個の酸素原子と、アルキル基(RBa)の炭素数と、アルキレン基(RBb)の炭素数との合計になる。
【0128】
カルボン酸エステル結合含有基において、アルキル基(RBa)は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基等を挙げることができる。
好ましくは、ペンチル基、ヘプチル基、ノニル基、トリデシル基であり、より好ましくはヘプチル基、ノニル基である。
【0129】
カルボン酸エステル結合含有基において、アルキレン基(RBb)は、炭素数1~8の直鎖アルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソオクチレン基等を挙げることができる。好ましくは、エチレン基である。
【0130】
カルボン酸エステル結合含有基を有する変性シリコーンオイルSには、例えば、上記一般式(X-1)において、Rは、それぞれ独立的に、メチル基、又はケイ素原子に炭素原子が直接結合し、炭素数及び酸素数の合計が4以上であるカルボン酸エステル結合含有基であり、nは、0~4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0又は1であり、1分子中のケイ素数が2~6であり、Rのうち少なくとも1個は、上記カルボン酸エステル結合含有基であり、1分子中の上記カルボン酸エステル結合含有基に含まれる酸素数及び炭素数の合計が4~20である化合物を好ましく用いることができる。
【0131】
変性シリコーンオイルSにおいて、芳香環含有基は、主鎖のシロキサン結合のケイ素原子に芳香環が直接結合する-RCaで表される基、または、主鎖のシロキサン結合のケイ素原子にアルキレン基を介して芳香環が結合する-RCb-RCaで表される基を好ましく用いることができる。
ここで、RCaは、炭素数6以上の芳香環であることが好ましい。また、RCbは、炭素数1以上の、直鎖又は分岐鎖であってよい、鎖状または脂環式のアルキレン基であることが好ましい。
芳香環含有基が、主鎖のシロキサン結合のケイ素原子に芳香環が直接結合する-RCaで表される基である場合、主鎖のシロキサン結合からトリメチルシリルオキシ基等が側鎖として分岐していることが好ましい。芳香環含有基は、主鎖のシロキサン結合のケイ素原子にアルキレン基を介して芳香環が結合する-RCb-RCaで表される基であることがより好ましい。
【0132】
芳香環含有基において、芳香環部分(RCa)は、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等、又はこれらの少なくとも1個の水素原子がアルキル基に置換された官能基を挙げることができる。
芳香環含有基には、1個、又は2個以上の芳香環が含まれてもよいが、1分子中の炭素数6以上の芳香環含有基の炭素数が6~20であることが好ましい。
【0133】
芳香環含有基において、任意のアルキレン基(RCb)は、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソオクチレン基等を挙げることができる。
好ましくは、プロピレン基、メチルエチレン基、エチレン基である。
【0134】
芳香環含有基を有する変性シリコーンオイルSには、例えば、上記一般式(X-1)において、Rは、それぞれ独立的に、メチル基、又はケイ素原子に炭素原子が直接結合し、炭素数が6以上である芳香環結合含有基であり、nは、0~4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0又は1であり、1分子中のケイ素数が2~6であり、Rのうち少なくとも1個は、上記芳香環結合含有基であり、1分子中の上記芳香環結合含有基に含まれる炭素数の合計が6~20である化合物を好ましく用いることができる。
【0135】
変性シリコーンオイルSの一実施形態としては、2~6個のケイ素原子と、炭素数4以上のアルキレン基とを有する化合物であり、好ましくは、炭素数が4以上であるアルキレン基の両端の炭素原子のうち、一方の炭素原子にシロキサン結合が結合し、他方の炭素原子にシリル基又はシロキサン結合が結合する化合物である。
【0136】
炭素数4以上のアルキレン基は、鎖状または脂環式であってよく、直鎖または分岐鎖のアルキレン基であってよい。
【0137】
炭素数4以上のアルキレン基は、例えば、n-ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソオクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、ヘキサデシレン基、エイコシレン基等を挙げることができる。
好ましくは、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基であり、より好ましくは、オクチレン基、デシレン基である。
【0138】
アルキレン基を有する変性シリコーンオイルSには、例えば、上記一般式(X)において、Rは、炭素数が4以上であるアルキレン基であり、Rは、メチル基であり、m及びnは、それぞれ独立的に、0~4の整数であり、pは、それぞれ独立的に、0~2の整数であり、1分子中のケイ素数が2~6である化合物を好ましく用いることができる。
【0139】
上記した変性シリコーンオイルSは、これに限定されないが、以下の方法によって製造することができる。
例えば、シロキサン原料と、炭素数及び酸素数の合計が4以上である有機基とともに反応性基を有する反応性化合物とを、有機溶媒中で反応させることで、アルキル変性シリコーンオイルを得ることができる。シロキサン原料と反応性化合物とは、シロキサン原料の反応性基と反応性化合物の反応性基とがモル比で1:1~1:1.5で反応させることが好ましい。また、反応に際し、0価白金のオレフィン錯体、0価白金のビニルシロキサン錯体、2価白金のオレフィン錯体ハロゲン化物、塩化白金酸等の白金触媒等の触媒を好ましく用いることができる。
【0140】
シロキサン原料としては、例えば、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3,5,7,7,7-ノナメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,3,5,7,7,9,9,9-ウンデカメチルペンタシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン、1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-(トリメチルシリルオキシ)トリシロキサン、1,1,1,5,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7-オクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタメチル-3-(ジメチルシリルオキシ)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11-ドデカメチルヘキサシロキサン等を用いることができる。
【0141】
反応性化合物は、反応性基として炭素二重結合を有することが好ましい。
変性シリコーンオイルSにアルキル基を導入するためには、反応性化合物として、例えば、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン等の、炭素数が4以上であるアルケンを用いることができる。
また、アルケンの他にも、ビニルシクロヘキサン等のエチレン性不飽和2重結合を有する脂環式炭化水素を用いることができる。
【0142】
変性シリコーンオイルSにエステル結合含有基を導入するためには、反応性化合物として、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソブタン酸ビニル、ペンタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、イソオクタン酸ビニル、ノナン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、エイコサン酸ビニル、ヘキサン酸アリル等の、炭素数及び酸素数の合計が6以上である脂肪酸ビニル又は脂肪酸アリル化合物等を用いることができる。
【0143】
変性シリコーンオイルSに芳香環含有基を導入するためには、反応性化合物として、例えば、スチレン、4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、アリルベンゼン、1-アリルナフタレン、4-フェニル-1-ブテン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、1-ビニルナフタレン、α-メチルスチレン、2-メチル-1-フェニルプロペン、1,1-ジフェニルエチレン、トリフェニルエチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、シス-β-メチルスチレン、トランス-β-メチルスチレン、3-フェニル-1-プロペン等のビニル結合と炭素数6以上の芳香環とを有するアリール化合物等を用いることができる。
【0144】
変性シリコーンオイルSにアルキレン基を導入するためには、反応性化合物として、例えば、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,10-ウンデカジエン、1,13-テトラデカジエン、ヘキサデカジエン、エイコサジエン等の炭素数が4以上であるジエン化合物等を用いることができる。
【0145】
これらの非水系溶剤は、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0146】
非水系溶剤は、クリアファイル変形抑制の観点から、シリコーンオイルを含むことが好ましい。
シリコーンオイルは、吐出性能向上の観点から、アルキル変性シリコーンオイルを含むことが好ましい。アルキル変性シリコーンオイルは、インクの表面張力を向上させる傾向があり、吐出性を向上させやすい。
【0147】
クリアファイル変形抑制の観点から、非水系溶剤全量に対してシリコーンオイルを10質量%以上含むことが好ましく、15質量%以上含むことがより好ましい。また、非水系溶剤全量に対して、シリコーンオイルは、100質量%であってもよく、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0148】
インクは、画像濃度および裏抜け低減の観点から、非油溶性樹脂を含むことが好ましい。非油溶性樹脂は、インクの非水系溶剤に相溶性が低く、インクの非水系溶剤中で液滴状に分散することが好ましい。
非油溶性樹脂としては、アミノ基を有する非油溶性樹脂がこのましい。アミノ基を有する非油溶性樹脂は、アミノ基として1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、またはこれらの組み合わせを有することができるが、1級アミノ基及び/または2級アミノ基を有することが好ましい。
アミノ基を有する非油溶性樹脂の数平均分子量は、500以上であることが好ましく、600以上がより好ましい。また、アミノ基を有する非油溶性樹脂の数平均分子量は、15000以下が好ましい。
【0149】
アミノ基を有する非油溶性樹脂としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン等の塩基性高分子電解質またはそれらの誘導体を挙げることができ、特に、数平均分子量が200~20000のポリエチレンイミンを好適に使用することができる。ポリエチレンイミンの数平均分子量が200以上であると普通紙に対する高濃度化の効果が得られやすく、20000以下であると、良好な保存安定性が得られやすい。ポリエチレンイミンの数平均分子量は、300~2000であることがより好ましい。
【0150】
ポリエチレンイミンは、市販のものを用いることが可能であり、たとえば、株式会社日本触媒製SP-006、SP-012、SP-018、SP-200;BASF社製Lupasol FG、Lupasol G20 Waterfree、Lupasol PR8515等を好ましく挙げることができる。
【0151】
非油溶性樹脂の含有量は、顔料に対する質量比で0.01~0.5であることが好ましく、0.05~0.3であることがより好ましく、0.1~0.2であることがより好ましい。
インク総量に対して、非油溶性樹脂は、0.1~5質量%程度含まれていることが好ましく、0.5~2.0質量%であることが一層好ましい。
【0152】
上記各成分に加えて、本発明のインクには慣用の添加剤が含まれていてよい。
添加剤の例としては、界面活性剤、酸化防止剤、等が挙げられる。界面活性剤としては、例えばアニオン性、カチオン性、両性、もしくはノニオン性の界面活性剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、及びノルジヒドログアヤレチック酸等、が挙げられる。
【0153】
例えば、油中水型エマルションの油中乾燥法を用いた方法等でインクを製造する場合、インクの製造工程で水が用いられる場合があるが、水は、インクの製造工程で除去されることが好ましい。
インク中の水の量は、インク全量に対して1質量%以下が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0154】
インクの粘度は、インクジェット記録システム用の場合、吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5~30mPa・sであることが好ましく、5~15mPa・sであることがより好ましく、10mPa・s程度であることが、一層好ましい。
【0155】
インクの製造方法は特に限定されない。
例えば、顔料を含むインクの場合、インクは、顔料と油溶性樹脂Aと非水系溶剤と、必要に応じてその他の成分とを混合し、ボールミル、ビーズミル等の任意の分散手段を用いて顔料を分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。なお、その他の成分として、非油溶性樹脂のポリエチレンイミンを用いる場合、ポリエチレンイミンは汎用の非水系溶剤には、微溶もしくは難溶であることが多い。そのため、ビーズミルのようなシェアをかけることのできる装置を用い、シェアのかかった状態で混合させることが望ましい。使用する非水系溶剤に水溶性樹脂が可溶である場合は、このようなシェアは不要であるが、撹拌下で混合させることが好ましい。
【0156】
インクが、色材及び樹脂を含む着色樹脂粒子を含む場合は、インクの製造には、例えば、液中乾燥法を好ましく用いることができ、油中水(W/O)型エマルションの油中乾燥法を特に好ましく用いることができる。
【0157】
油中水型エマルションの油中乾燥法を用いた油性インクジェットインクの製造方法としては、例えば、非水系溶剤及び油溶性樹脂Aを含む連続相と、水、色材、及び、水分散性樹脂を含む分散相とを含む油中水型エマルションを作製する工程(以下、「工程1」という場合もある。)と、油中水型エマルションから水を除去する工程(以下、「工程2」という場合もある。)とを含む方法が挙げられる。
この製造方法において、非水系溶剤、油溶性樹脂A、色材及び水分散性樹脂については、上述のインクにおいて説明した通りである。水としては、水道水、イオン交換水、脱イオン水等を使用することができる。
【0158】
「工程1」において、連続相及び分散相は、他の成分を含んでよい。例えば、分散相は、顔料分散剤等をさらに含んでよい。分散相の顔料分散剤としては、例えば、上述のインクにおいて着色樹脂粒子に含まれてもよい成分として説明したとおりである。
【0159】
色材の量は、分散相全量に対して、1~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。色材の量は、油中水型エマルション全量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
水分散性樹脂の量(固形分量)は、分散相全量に対して、0.1~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。水分散性樹脂の量は、油中水型エマルション全量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
水の量は、分散相全量に対して、40~90質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。水の量は、油中水型エマルション全量に対して、1~50質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、10~40質量%がさらに好ましい。
【0160】
工程1で作製する油中水型エマルションにおいて、分散相に顔料分散剤が含まれるとき、その量は、分散相全量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。分散相の顔料分散剤の量は、油中水型エマルション全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。分散相の顔料分散剤として水溶性非イオン性分散剤が含まれるとき、水溶性非イオン性分散剤は、分散相の顔料分散剤全量に対して、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましい。
【0161】
油溶性樹脂Aの量は、連続相全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。油溶性樹脂Aの量は、油中水型エマルション全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
非水系溶剤の量は、連続相全量に対して、70~99質量%が好ましく、80~99質量%がより好ましい。非水系溶剤の量は、油中水型エマルション全量に対して、30~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。
【0162】
工程1において、油中水型エマルションは、例えば、上記の分散相と連続相とを混合、乳化させることにより製造することができる。
連続相と分散相は、あらかじめ別々に調製することが好ましい。次いで、連続相に分散相を添加し、乳化処理することが好ましい。乳化処理は、例えば、連続相に分散相を添加しながら、超音波ホモジナイザー等を用いて行ってもよく、また、例えば、連続相に分散相を添加後に行ってもよい。
工程1において、油中水型エマルションは、水を除去する前の状態の質量比として、油中水型エマルション全量に対して、分散相20~50質量%及び連続相80~50質量%であることが好ましい。
【0163】
工程2において、油中水型エマルションの分散相の水が除去される。これにより、水が除去された分散相成分を含む着色樹脂粒子が得られる。
水を除去する方法としては、例えば、減圧及び/又は加熱、又は、液体に気体を吹き込みバブリングすることで、蒸発を促進する方法、及びそれらを組み合わせて用いることができる。減圧及び/または加熱の条件としては、水が除去されるが、連続相の非水系溶剤は残るような条件を採用することができる。減圧には、例えばエバポレーターを用いることができる。加熱温度としては、30℃以上が好ましく、40~100℃がより好ましく、60℃~90℃がさらに好ましい。
工程2では、分散相の水は除去前の量に対して80質量%以上除去されることが好ましく、90質量%以上除去されることが好ましく、95質量%以上除去されることがさらに好ましく、99質量%以上除去されることがさらに好ましい。
【0164】
インクジェットインクを用いた印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
【0165】
記録媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
【0166】
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm~数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
【0167】
また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。
【0168】
本発明の実施形態は下記を含むが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
<1>色材と、
ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂と、
非水系溶剤と、を含有する、油性インクジェットインク。
<2>顔料と、
ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂と、
非水系溶剤と、を含有する、油性インクジェットインク。
<3>前記非水系溶剤が、シリコーンオイルを含む、<1>又は<2>に記載の油性インクジェットインク。
<4>前記シリコーンオイルが、アルキル変性シリコーンオイルを含む、<3>に記載の油性インクジェットインク。
<5>前記非水系溶剤が、シリコーンオイルを非水系溶剤全量に対して10~100質量%含む、<3>又は<4>に記載の油性インクジェットインク。
<6>前記油溶性樹脂において、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位の量が、前記油溶性樹脂の全構成単位に対して、10~40質量%である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
<7>前記色材及び樹脂を含む着色樹脂粒子を含む、<1>~<6>のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
<8>前記着色樹脂粒子の前記樹脂が、酸性樹脂を含む、<7>に記載の油性インクジェットインク。
<9>前記油溶性樹脂が、塩基性基を有する、<1>~<8>のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
<10>前記油溶性樹脂が、炭素数8~18のアルキル基及び/又はβ-ジカルボニル基をさらに有する、<1>~<9>のいずれか1項に記載の油性インクジェットインク。
<11>非水系溶剤、及び、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂を含む連続相と、水、色材、及び水分散性樹脂を含む分散相とを含む油中水型エマルションを作製する工程と、
前記油中水型エマルションから前記水を除去する工程とを含む、油性インクジェットインクの製造方法。
【実施例
【0169】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」である。
【0170】
<<実施例1~12及び比較例1~3>>
<インクの作製>
(樹脂溶液a~gの作製)
300ml四つ口フラスコに、イソノナン酸イソトリデシル(高級アルコール工業株式会社製)87.5gを仕込み、窒素ガスを通気し撹拌しながら、110℃まで昇温した。次に、温度を110℃に保ちながら、表1に示す組成のモノマー混合物100.0gに、イソノナン酸イソトリデシル16.7g、及びパーブチルO(t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日本油脂株式会社製))4gを混合した混合物を3時間かけて滴下した。その後、110℃に保ちながら1時間撹拌した後、パーブチルOを0.2g添加し、さらに110℃に保ちながら1時間撹拌し、固形分50質量%の樹脂溶液a~gを得た。表1中の各材料の配合量は「質量%」で示す。
【0171】
【表1】
【0172】
表1に記載の材料は下記の通りである。
SMA:ステアリルメタクリレート(新中村工業株式会社製)
EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製)
メタクリル変性シリコーンオイル1:X-22-2404(信越化学工業株式会社製)
メタクリル変性シリコーンオイル2:X-22-174ASX(信越化学工業株式会社製)
メタクリル変性シリコーンオイル3:X-22-174BX(信越化学工業株式会社製)
BZA:ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)
GMA:グリシジルメタクリレート(日油株式会社製)
AAEM:アセトアセトキシエチルメタクリレート(日本合成化学工業株式会社製)
【0173】
(樹脂溶液hの作製)
500ml四つ口フラスコに樹脂溶液g200.0gを仕込み、窒素ガスを通気し、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に、ジエタノールアミン(株式会社日本触媒製)2.8gを添加し、撹拌しながら110℃で1時間保持した後、ウレタン化触媒(和光純薬工業株式会社製ネオデカン酸ビスマス)を添加し、タケネート600(三井化学株式会社製1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)7.8gとKF-6000(信越シリコーン化学工業株式会社製カルビノール変性シリコーンオイル)14.0gとイソノナン酸イソトリデシル(高級アルコール工業株式会社製)87.0gとの混合物を1時間かけて滴下した。滴下後、110℃で4時間反応させ、冷却して、固形分40質量%の樹脂溶液hを得た。樹脂溶液hの製造に用いた上記材料(ウレタン化触媒を除く)の組成を表2に示す。表2において、「ジイソシアネート」は、「タケネート600」を示す。表2中の各材料の配合量の単位は「g」である。
【0174】
(樹脂溶液iの作製)
500ml四つ口フラスコに樹脂溶液a200.0gを仕込み、窒素ガスを通気し、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に、ジエタノールアミン(株式会社日本触媒製)2.8gを添加し、撹拌しながら110℃で1時間保持した後、ウレタン化触媒(和光純薬工業株式会社製ネオデカン酸ビスマス)を添加し、タケネート600(三井化学株式会社製1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)7.8gと1,3-プロパンジオール(東京化成工業株式会社製)4.0gとイソノナン酸イソトリデシル(高級アルコール工業株式会社製)72.0gとの混合物を1時間かけて滴下した。滴下後、110℃で4時間反応させ、冷却して、固形分40質量%の樹脂溶液iを得た。樹脂溶液iの製造に用いた上記材料(ウレタン化触媒を除く)の組成を表2示す。
【0175】
【表2】
【0176】
(インクの作製)
表3及び4に示す処方の混合物を、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)を充填率85%にて充填したダイノーミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製)により滞留時間15分間の条件で分散することで、インクを作製した。
表3及び4において、「油溶性樹脂A固形分に対するポリジメチルシロキサン構造の割合」は、油溶性樹脂Aの全構成単位に対するポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位の量であり、油溶性樹脂Aを構成する原料化合物の合計量に対する、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する構成単位を構成する原料化合物の合計量の割合(質量%)として算出した数値である。
【0177】
表3及び4に示す材料は下記の通りである。表3及び4において、樹脂溶液a~iの量は、溶液としての量である。
カーボンブラック1:エボニックジャパン株式会社製NEROX600
カーボンブラック2:三菱ケミカル株式会社製MA8
S18000:日本ルーブリゾール株式会社製ソルスパース18000(脂肪酸アミン系分散剤)
ポリエチレンイミン:株式会社日本触媒製エポミンSP-018
脂肪酸エステル系溶剤:日清オイリオグループ株式会社製サラコス913(イソノナン酸イソトリデシル、沸点356℃)
高級アルコール系溶剤:高級アルコール工業株式会社製リソノール16SP(ヘキシルデカノール、沸点約>285℃)
シリコーンオイル1:信越化学工業株式会社製KF-96A-6CS(ジメチルシリコーンオイル、沸点約>350℃)
シリコーンオイル2:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製SILSOFT034(3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン(カプリリルメチコン)、沸点260℃)
石油系炭化水素溶剤:株式会社MORESCO製モレスコホワイトP-60(初留点168℃(10mmHg))
【0178】
<評価>
得られた各実施例及び比較例のインクを用いて下記の評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0179】
(吐出性能)
ライン式インクジェットプリンタ「オルフィスEX9050」(理想科学工業株式会社製)にインクを装填し、普通紙「理想用紙薄口」(理想科学工業株式会社製)に、主走査方向約51mm(ノズル600本)×副走査方向260mmのベタ画像を印刷することにより、印刷物を得た。
インクの不吐出による非印字部分は白いスジとなって観察されるが、この白スジが10枚の印刷物中にどの程度発生するかによって、吐出性能を以下の基準で評価した。
S:10枚の印刷物の白スジの合計が0~5本
A:10枚の印刷物の白スジの合計が6~9本
B:10枚の印刷物の白スジの合計が10本以上
【0180】
(インク貯蔵安定性)
各インクを密閉容器に入れ、70℃の環境下で4週間放置した。放置前のインク粘度「粘度の初期値」と、放置後のインク粘度「4週間後の粘度」とを測定し、粘度変化率を下記式から求めた。粘度変化率から、下記基準で貯蔵安定性を評価した。
インク粘度は、23℃における粘度であり、アントンパール社製MCR302(コーン角1℃、直径50mm)を用いて測定した。
粘度変化率=[(4週間後の粘度×100)/(粘度の初期値)]-100(%)
S:粘度変化率が±5%未満
A:粘度変化率が±5%以上10%未満
B:粘度変化率が±10%以上
【0181】
(クリアファイル変形)
ライン式インクジェットプリンタ「オルフィスEX9050」(理想科学工業株式会社製)にインクを装填し、普通紙「理想用紙薄口」(理想科学工業株式会社製)に、主走査方向約51mm(ノズル600本)×副走査方向260mmのベタ画像を印刷することにより、印刷物を得た。
得られた1枚の印刷物をPP(ポリプロピレン)製クリアファイルに挟み、室温で1週間放置後に、クリアファイルの変形量を確認して評価した。
クリアファイルの1枚のシートの厚さは0.2mmであった。
クリアファイルの変形量は、平らな面にクリアファイルを置き、この平面から、クリアファイルが変形し持ち上がった最大の高さを測定して求めた。
S:クリアファイルの変形量が1cm未満
A:クリアファイルの変形量が1cm以上5cm未満
B:クリアファイルの変形量が5cm以上
【0182】
(画像濃度及び裏抜け)
ライン式インクジェットプリンタ「オルフィスEX9050」(理想科学工業株式会社製)にインクを装填し、普通紙「理想用紙薄口」(理想科学工業株式会社製)に、主走査方向約51mm(ノズル600本)×副走査方向260mmのベタ画像を印刷することにより、印刷物を得た。
得られた印刷物の表面のOD値(画像濃度)及び裏面のOD値(裏抜け)を光学濃度計(マクベス社製「RD920」)で測定し、以下の基準で評価した。
表面OD値(画像濃度)
S:1.12以上
A:1.00以上1.12未満
B:1.00未満
裏面OD値(裏抜け)
S:0.08未満
A:0.08以上0.15未満
B:0.15以上
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【0185】
表3及び4からわかるように、ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有する油溶性樹脂を用いている実施例1~12は、比較例と比べて吐出性に優れていた。
【0186】
<<実施例13~22及び比較例4~5>>
<インクの作製>
(樹脂溶液1~5の作製)
300ml四つ口フラスコに、エキセパールM-OL(オレイン酸メチル、花王株式会社製)50gを仕込み、窒素ガスを通気し撹拌しながら、110℃まで昇温した。 次に、温度を110℃に保ちながら、表5に示す組成のモノマー混合物100.0gにエキセパールM-OL25g、及びパーブチルO(t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、日本油脂株式会社製))6gを混合した混合物を3時間かけて滴下した。その後、110℃に保ちながら1時間撹拌した後、パーブチルOを0.6g添加し、さらに110℃に保ちながら1時間撹拌した。固形分50質量%になるようエキセパールM-OLを追加し、樹脂溶液1~5を得た。表5中の各材料の配合量は質量%で表す。
【0187】
【表5】
【0188】
表5に記載の材料は下記の通りである。
VMA:ベヘニルメタクリレート(日油株式会社製)
LMA:ラウリルメタクリレート(花王株式会社製)
GMA:グリシジルメタクリレート(日油株式会社製)
AAEM:アセトアセトキシエチルメタクリレート(日本合成化学工業株式会社製)
ACMO:アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ株式会社製)
メタクリル変性シリコーンオイル3:X-22-174BX(信越化学工業株式会社製)
メタクリル変性シリコーンオイル2:X-22-174ASX(信越化学工業株式会社製)
【0189】
(樹脂溶液6~9の作製)
樹脂溶液1~4を用いて樹脂溶液6~9を作製した。
表6に示す通り、作製した樹脂溶液200gを500ml四つ口フラスコに仕込み、窒素ガスを通気し、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に、ジエタノールアミン(株式会社日本触媒製)7.4gを添加し、撹拌しながら110℃で1時間保持した後、固形分50質量%になるようエキセパールM-OL(オレイン酸メチル、花王株式会社製)を追加し、樹脂溶液6~9を得 た。表6において、表6中の各材料の量の配合量の単位は「g」である。
【0190】
【表6】
【0191】
(インクの作製)
実施例13~22及び比較例4のインクを下記のように製造した。
表7~9に、各インクの材料及びその配合量を、分散相の材料及び連続相の材料に分けて示す。
表7~9に示す配合量で、連続相の材料(油溶性樹脂Aの溶液又は比較の分散剤、及び非水系溶剤)を混合し連続相を調整した。
次に、表7~9に示す配合量で、分散相の材料のうち、色材、精製水、及び、顔料分散剤が含まれる場合は顔料分散剤を混合し、ビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、ダイノーミル Multi LAB)にて分散し、得られた分散液組成物に、表7~9に示す樹脂エマルションを表7~9に示す配合量で添加した後、マグネティックスターラーで撹拌した。これを分散相とした。
連続相をマグネティックスターラーで攪拌した状態で、この連続相に、上記のように予め混合しておいた分散相を滴下しながら、氷冷下、超音波ホモジナイザー「Ultrasonic processor VC―750」(ソニックス社製)を10分間照射し、油中水(W/O)型エマルションを得た。
得られたエマルションを、エバポレーターで減圧しながら、水を除去して、着色樹脂粒子分散体を得た。水の除去率は、ほぼ100質量%であった。この着色樹脂粒子分散体をそのままインクとして用いた。比較例4では、着色樹脂粒子分散体を作製できなかった。
実施例13~22及び比較例4~5のインクの、水除去後の組成を表10~12に示す。
【0192】
表7~12に示す材料は下記の通りである。表7~9に記載の各材料の配合量は質量部で表す。表10~12中に記載の各材料の配合量は質量%で示す。表7~12中の各材料の配合量は、揮発分が含まれる成分については、揮発分を含めた量である。表7~12において、樹脂溶液5~9の量は、揮発分を含む溶液としての量である。表7~9において、「樹脂エマルション」(ウレタン1~3)の量は、揮発分を含む量であるが、表10~12において、「樹脂」(ウレタン1~3)の量は、樹脂エマルションから水を除去した後の量である。
【0193】
カーボンブラック3:キャボットスペシャリティーケミカルズ製MOGAL L
ジメチルキナクリドン顔料:大日精化工業株式会社製CFR321-1(S)
銅フタロシアニンブルー顔料:クラリアントジャパン株式会社製PV Fast Blue BG
直接染料:オリヱント化学工業株式会社製Water Blue 3
【0194】
水溶性非イオン性分散剤1:Borchers製BorchiGen12(有効成分100%)
水溶性非イオン性分散剤2:Borchers製BorchiGenDFN(アリルアルキルビフェニルポリグリコールエーテル、有効成分100%)
【0195】
ウレタン1:ダイセル・オルネクス株式会社製DAOTAN VTW1265(酸性ウレタンウレア(メタ)アクリル樹脂の水分散体、有効成分36%)
ウレタン2:三井化学株式会社製WS5984(酸性ウレタンウレア樹脂の水分散体、有効成分40%)
ウレタン3:第一工業製薬株式会社製スーパーフレックス150H(酸性ウレタンウレア樹脂の水分散体、有効成分38%)
【0196】
S28000:日本ルーブリゾール株式会社製ソルスパース28000(ポリアミド系分散剤)(有効成分100質量%)
ES5600:東レ・ダウコーニング株式会社製ES-5600(セシルジグリセリルトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン(有効成分100質量%)
【0197】
石油系炭化水素溶剤1:株式会社MORESCO製モレスコホワイトP-60
脂肪酸エステル系溶剤1:オレイン酸メチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)
脂肪酸エステル系溶剤2:パルミチン酸エチルヘキシル(富士フイルム和光純薬株式会社製)
シリコーンオイル2:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製SILSOFT034(3-オクチルヘプタメチルトリシロキサン(カプリリルメチコン)、沸点260℃)
【0198】
<評価>
得られた各実施例及び比較例のインクを用いて、下記の評価を行った。結果を表10~12に示す。
【0199】
(吐出性能)
実施例1~12及び比較例1~3と同様の方法により、吐出性能を評価した。
【0200】
(インク貯蔵安定性)
実施例1~12及び比較例1~3と同様の方法により、インク貯蔵安定性を評価した。
【0201】
(クリアファイル変形)
実施例1~12及び比較例1~3と同様の方法により、クリアファイル変形を評価した。
【0202】
(画像濃度)
実施例1~12及び比較例1~3と同様の方法により、印刷物を得た。
【0203】
カーボンブラック3を含むインクを用いた印刷物については、光学濃度計(マクベス社製「RD920」)により、印刷物の表面のOD値(画像濃度)を測定し、以下の基準で画像濃度を評価した。
表面OD値(画像濃度)
S:1.12以上
A:1.00以上1.12未満
B:1.00未満
【0204】
ジメチルキナクリドン顔料、銅フタロシアニンブルー顔料又は直接染料を含むインクを用いた印刷物については、分光濃度・測色計(X-rite社製「eXact」)により、印刷物の表面の彩度を測定し、比較例5との差をもとめ、下記の評価基準で評価した。
なお、彩度は国際照明委員会によるCIE (1976)L*a*b*色空間の規定に従って、下記式により表わされる。
彩度c* ={(a*)+(b*)1/2
発色・彩度
S:比較例5との彩度の差が10以上
A:比較例5との彩度の差が3以上10未満
B:比較例5との彩度の差が3未満
【0205】
(裏抜け)
実施例1~12及び比較例1~3と同様の方法により、裏抜けを評価した。
【0206】
(ローラ転写汚れ)
インクジェットプリンタ「オルフィスGD9630」(理想科学工業株式会社製)にインクを装填し、普通紙「理想用紙マルチ」(理想科学工業株式会社製)100枚に、主走査方向約51mm(ノズル600本)×副走査方向260mmのベタ画像を印刷して、100枚の印刷物を得た。得られた100枚目の印刷物を目視で観察し、以下の基準で評価した。
S:画像周辺の汚染がほとんど見られない
A:画像周辺の汚染がわずかに見られる
B:画像周辺の汚染が見られる
【0207】
実施例1についても、上記同様にしてローラ転写汚れを評価したところ、結果はBであった。
【0208】
【表7】
【0209】

【表8】
【0210】
【表9】
【0211】
【表10】
【0212】
【表11】
【0213】
【表12】
【0214】
表10~12からわかるように、着色樹脂粒子を含む実施例13~22のインクも吐出性に優れていた。ポリジメチルシロキサン構造を含む側鎖を有するアクリル系ポリマーである油溶性樹脂Aを含まない比較例4及び5では、インクが作製できないか、吐出性能に劣っていた。