(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】水抜き部材
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20221109BHJP
B62D 25/20 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
B60J5/04 T
B62D25/20 E
(21)【出願番号】P 2018219801
(22)【出願日】2018-11-23
【審査請求日】2021-07-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】杉本 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晶子
【審査官】草野 顕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-299691(JP,A)
【文献】特開2014-083965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を構成する車体構成部材に、該車体構成部材の内外方向へ貫通するように形成された開口部に合わせて配置されるベース部と、
前記車体構成部材の内側から外側への排水を許容するように設けられた水抜き孔の開口面に相対するように前記ベース部に設けられ、該車体構成部材の内側に配置される遮音部と、を備え、
前記遮音部は、
前記ベース部から前記車体構成部材の内側へ向けて立ち上がるように形成された支持部と、
前記支持部に連ねて設けられ、前記ベース部を前記内外方向に貫通するように形成された前記水抜き孔の開口面にかぶさるように配置される被覆部と、を有し、
前記被覆部は、前記支持部から離れるにつれて前記ベース部に近づくまたは該ベース部と平行するように形成され、該支持部に連なる根元と反対側の端縁の少なくとも一部が、前記車体構成部材から離れるように配置され、
前記被覆部における前記車体構成部材から離れる前記端縁と前記ベース部との間に、前記車体構成部材の内側において前記水抜き孔に通じる排水経路となる排水通過部が、該水抜き孔と異なる向きに
常に開口している
ことを特徴とする水抜き部材。
【請求項2】
車体を構成する車体構成部材に、該車体構成部材の内外方向へ貫通するように形成された開口部に合わせて配置されるベース部と、
前記車体構成部材の内側から外側への排水を許容するように設けられた水抜き孔の開口面に相対するように前記ベース部に設けられ、該車体構成部材の内側に配置される遮音部と、を備え、
前記遮音部は、
前記ベース部から前記車体構成部材の内側へ向けて立ち上がるように形成された支持部と、
前記支持部に連ねて設けられ、前記ベース部を前記内外方向に貫通するように形成された前記水抜き孔の開口面にかぶさるように配置される被覆部と、を有し、
前記被覆部は、
その中央部に連なる前記支持部から離れるにつれて前記ベース部に近づく傘状に形成され、該支持部に連なる根元と反対側の端縁の少なくとも一部が、前記車体構成部材から離れるように配置され、
前記被覆部における前記車体構成部材から離れる前記端縁と前記ベース部との間に
、前記車体構成部材の内側において前記水抜き孔に通じる排水経路となる排水通過部が、該水抜き孔と異なる向きに開口している
ことを特徴とする水抜き部材。
【請求項3】
車体を構成する車体構成部材に、該車体構成部材の内外方向へ貫通するように形成された開口部に合わせて配置されるベース部と、
前記車体構成部材の内側から外側への排水を許容するように設けられた水抜き孔の開口面に相対するように前記ベース部に設けられ、該車体構成部材の内側に配置される遮音部と、を備え、
前記遮音部は、
前記ベース部から前記車体構成部材の内側へ向けて立ち上がるように形成された支持部と、
前記支持部に連ねて設けられ、前記ベース部を前記内外方向に貫通するように形成された前記水抜き孔の開口面にかぶさるように配置される被覆部と、を有し、
前記被覆部は、前記支持部から離れるにつれて前記ベース部に近づくまたは該ベース部と平行するように形成され、該支持部に連なる根元と反対側の端縁の少なくとも一部が、前記車体構成部材から離れるように配置され、
前記被覆部における前記車体構成部材から離れる前記端縁と前記ベース部との間に、前記車体構成部材の内側において前記水抜き孔に通じる排水経路となる排水通過部が、該水抜き孔と異なる向きに開口し、
前記被覆部の前記端縁のうち、前記車体構成部材から離れる離間端縁よりも延長して形成された延長端縁と前記ベース部との間に、該車体構成部材を内外方向両側から挟んで該車体構成部材に取り付けられる
ことを特徴とする水抜き部材。
【請求項4】
車体を構成する車体構成部材に、該車体構成部材の内外方向へ貫通するように形成された開口部に合わせて配置されるベース部と、
前記車体構成部材の内側から外側への排水を許容するように設けられた水抜き孔の開口面に相対するように前記ベース部に設けられ、該車体構成部材の内側に配置される遮音部と、を備え、
前記遮音部に設けられて、前記車体構成部材の内側において前記水抜き孔に通じる排水経路となる排水通過部が、該水抜き孔と異なる向きに開口し、
前記遮音部は、
前記ベース部を貫通する通孔に繋がる中空部を有する形状に形成され、該ベース部から前記車体構成部材の内側へ向けて立ち上がる支持部と、
前記支持部に連ねて設けられ、前記通孔および前記中空部により構成される前記水抜き孔にかぶさるように配置される被覆部と、を有し、
前記支持部における前記ベース部に連なる根元側に、該支持部の壁を貫通して前記中空部に繋がる前記排水通過部が形成され、
前記支持部および前記ベース部が、前記開口部の開口縁に前記車体構成部材の内外方向両側から当接することで、該車体構成部材に取り付けられる
ことを特徴とする水抜き部材。
【請求項5】
車体を構成する車体構成部材に、該車体構成部材の内外方向へ貫通するように形成された開口部に合わせて配置されるベース部と、
前記車体構成部材の内側から外側への排水を許容するように設けられた水抜き孔の開口面に相対するように前記ベース部に設けられ、該車体構成部材の内側に配置される遮音部と、を備え、
前記遮音部に設けられて、前記車体構成部材の内側において前記水抜き孔に通じる排水経路となる排水通過部が、該水抜き孔と異なる向きに開口し、
前記遮音部は、
前記ベース部を貫通する通孔に繋がる中空部を有する形状に形成され、該ベース部から前記車体構成部材の内側へ向けて立ち上がる支持部と、
前記支持部に連ねて設けられ、前記通孔および前記中空部により構成される前記水抜き孔にかぶさるように配置される被覆部と、を有し、
前記支持部における前記ベース部に連なる根元側に、該支持部の壁を貫通して前記中空部に繋がる前記排水通過部が形成され、
前記被覆部は、その少なくとも一部が、前記排水通過部よりも前記支持部から張り出すように形成されている
ことを特徴とする水抜き部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体を構成する車体構成部材から排水するための水抜き部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、例えばドアであれば、ガラス窓の隙間などから雨水が入ることがあるので、侵入した水を排出するため、ドアの底部に排水孔が設けられている(例えば、特許文献1参照)。排水孔は、排水孔に嵌め合わせてドアパネルに取り付けられた逆止弁によって塞がれており、排水孔を介して外部の騒音等が入ることを防止している。そして、逆止弁は、ドアの内部に水が溜まると、水に押されて弁体が外側へ開くことで排水孔を開放し、排水孔からの排水を許容するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の逆止弁は、ある程度の量の水が溜まらないと弁体が開かないので、少量の水が溜まった状態が続く不都合がある。また、逆止弁の弁体が開くためのスペースを、ドアの外側に確保する必要があるという難点もある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、コンパクトで、常時排水することができ、かつ遮音性に優れる水抜き部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る水抜き部材は、
車体を構成する車体構成部材に、該車体構成部材の内外方向へ貫通するように形成された開口部に合わせて配置されるベース部と、
前記車体構成部材の内側から外側への排水を許容するように設けられた水抜き孔の開口面に相対するように前記ベース部に設けられ、該車体構成部材の内側に配置される遮音部と、を備え、
前記ベース部および前記遮音部の間または該遮音部に設けられて、前記車体構成部材の内側において前記水抜き孔に通じる排水経路となる排水通過部が、該水抜き孔と異なる向きに開口していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る水抜き部材によれば、コンパクトで、水を常時抜くことができ、かつ遮音性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る水抜き部材を、上側から示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の水抜き部材を示す側面図である。
【
図3】第1実施形態の水抜き部材を示す底面図である。
【
図4】第1実施形態の水抜き部材を、ドアパネルに取り付けた状態で示す断面図である。なお、水抜き部材は、
図3のA-A線に対応した位置で切断している。
【
図5】第2実施形態の水抜き部材を、上側から示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態の水抜き部材を示す側面図である。
【
図7】第2実施形態の水抜き部材を示す平面図である。
【
図9】第3実施形態の水抜き部材を、上側から示す斜視図である。
【
図10】第3実施形態の水抜き部材を示す断面図である。
【
図11】第3実施形態の水抜き部材の変更例を、上側から示す斜視図である。
【
図12】第3実施形態の水抜き部材の変更例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る水抜き部材につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。以下の説明では、水抜き部材を、車体構成部材の1つであるドアの底部に設けられた開口部に取り付ける場合を例示する。水抜き部材のドアへの取り付け状態を基準として、水抜き部材の方向を指称する。
図4に示すように、ドア10を貫通する開口部18の貫通方向に基づいてドア(車体構成部材)10の内外方向をいい、該内外方向における内側が上側であり、該内外方向における外側が下側である。
【実施例】
【0010】
(第1実施形態)
図4に示すように、車両における車体を構成するドア(車体構成部材)10は、車両外側のドアアウター12と車室側のドアインナー14と組み合わせて構成されており、ドア10の内部に空間がある。ドア10を閉じた際にサイドシル16に対面するドア10の底面は、ドアインナー14における水平方向へ延びる底板14aで構成されており、該底板14aの該上下方向(車体構成部材の内外方向)へ貫通する開口部18が形成されている。そして、ドア10の底板14aには、円形状の開口部18に嵌め合わせて水抜き部材20が取り付けられている。
【0011】
図1および
図2に示すように、第1実施形態に係る水抜き部材20は、ドア10の開口部18に合わせて配置されるベース部22と、ドア10の内側から外側への排水を許容するように設けられた水抜き孔24に合わせて、ベース部22に設けられた遮音部26とを備えている。
図4に示すように、ベース部22および遮音部26の間には、ドア10の内側において水抜き孔24に通じる排水経路となる排水通過部38が、水抜き孔24と異なる向きに開口するように設けられている。第1実施形態では、ドア10の内側において上向きに開口する水抜き孔24に対して、排水通過部38がドア10の内側において横向きに開口しており、水が排水通過部38を横向きに流れた後に水抜き孔24を落下する排水経路になっている。水抜き部材20は、遮音部26を開口部18からドア10の内側に差し込んで、遮音部26がドア10の内側に配置されるように取り付けられる。水抜き部材20は、エチレンプロピレンジエン(EPDM)等のエラストマーなど、柔軟で弾力性を有する素材が用いられており、型成形によってベース部22と遮音部26とが一体的に形成される。
【0012】
図1、
図2および
図4に示すように、ベース部22は、円形状の開口部18よりも大きい円形状に形成されたベース本体28と、ベース本体28から上側へ突出する開口挿通部30と、開口挿通部30の上縁からベース本体28と平行に張り出す鍔部32とを備えている。開口挿通部30は、開口部18と同じ円形状で、開口部18に合わせた寸法で形成されており、ベース本体28からの突出高さが、開口部18が形成された底板14aの板厚と同じである。鍔部32は、ベース本体28よりも一回り小さい円形状であり、ベース本体28よりも薄く形成されている。ベース部22は、ベース本体28、開口挿通部30および鍔部32の中心が互いに揃っている。
図4に示すように、ベース部22は、鍔部32および開口挿通部30を開口部18に通して、ドア10の内側に配置される鍔部32と、ドア10の外側に配置されるベース本体28との間に開口部18の開口縁を挟んで、底板14aに取り付けられる。このように、第1実施形態の水抜き部材20は、ベース部22によって開口部18の開口縁を上下方向両側から挟んで、ドア10に取り付けられる。
【0013】
図1および
図3に示すように、ベース部22には、円形状の水抜き孔24が、該ベース部22における開口部18に対応する位置を上下方向に貫通するように形成されている。第1実施形態のベース部22には、該ベース部22の上下方向に通る中心周りに一定間隔で並べて、複数(本実施形態では4つ)の水抜き孔24が設けられている。
【0014】
図1および
図2に示すように、遮音部26は、ベース部22から上側(車体構成部材の内側)へ向けて立ち上がるように形成された支持部34と、支持部34に連ねて設けられ、水抜き孔24にかぶさるように配置される被覆部36とを備えている。支持部34は、円柱形状であり、ベース部22の中心に設けられて、複数の水抜き孔24の中央に配置されている。被覆部36は、支持部34から離れるにつれてベース部22に近づくまたはベース部22と平行するように形成するとよく、
図4に示すように第1実施形態では、被覆部36が支持部34から離れるように張り出すにつれて、ベース部22に近づくように傾斜している。被覆部36は、支持部34に連なる根元と反対側の端縁の少なくとも一部が、ドアインナー14の内面から離れるように配置されており、第1実施形態では、被覆部36の端縁全周に亘って、底板14aの内面から離れている。これにより、被覆部36における底板14aから離れる端縁と底板14a(ベース部22)との間に、排水通過部38が水平方向(板状のベース部22の板面が広がる方向)に開口するように設けられている。そして、排水通過部38を通る水の流れの向きと水抜き孔24を通る水の流れの向きが異なっている。
【0015】
図3に示すように、被覆部36は、その端縁が水平方向において水抜き孔24の内側開口よりも水平方向外側に位置する大きさで形成されて、支持部34を中心として配置された複数の水抜き孔24の内側開口に対応して、支持部34を中心とする平面視円形状に形成されている。被覆部36は、開口部18の直径と同じ大きさであっても、開口部18の直径よりも大きく形成しても、開口部18の直径よりも小さく形成しても何れであってもよいが、水抜き孔24に被さる大きさとされる。遮音部26は、ベース部22を上下方向に貫通するように形成された水抜き孔24の内側開口を、被覆部36によって上側(車体構成部材の内側)から覆う傘状に形成されている。
【0016】
水抜き部材20は、遮音部26を開口部18に通して、ベース部22における鍔部32とベース本体28との間に開口部18の開口縁を挟むだけの作業で、ドア10に簡単に取り付けることができる。水抜き部材20は、水抜き孔24が弁体などで塞がれず、水抜き孔24が常時開口しているので、ドア10の内側に入った水を、水抜き孔24から外部へ適時に排出することができる。このように、水抜き部材20によれば、ドア10の内側に水が溜まることを回避できるので、水が溜まることに起因するサビやカビの発生、電気部品への悪影響などを防止することができる。
【0017】
水抜き部材20は、ドア10の内側で水抜き孔24に繋がる排水通過部38が、遮音部26の存在によって水抜き孔24と異なる向きに開口しており、水抜き孔24から排水通過部38を通ってドア10の内側に向かう経路が曲がっている。従って、水抜き部材20は、水抜き孔24が常に開口している構成であっても、騒音がドア10の内側へ入射し難い。具体的には、水抜き部材20は、水抜き孔24の内側開口にかぶるように設けられた遮音部26の被覆部36によって、水抜き孔24から入射してくる外部の騒音を反射して、ドア10の内側に入射してくる騒音を減らすことができる。しかも、水抜き部材20を開口部18に取り付けて、水抜き部材20の水抜き孔24から排水する構成とすることで、ドア10の内外方向に通じる孔の開口面積が小さくなるから、ドア10の内側への音の入射を防止できる。このように、水抜き部材20は、水を常時抜くことができ、かつ遮音性に優れている。
【0018】
水抜き部材20は、ドア10に取り付けた際に、遮音部26がドア10の内側に配置されて、ベース部22において平板状のベース本体28だけが、ドア10の外側に配置されるようになっており、非常にコンパクトである。また、水抜き部材20は、背景技術で説明したような水抜き孔24を開閉する弁体を有していないので、弁体が開くためのスペースをドア10の下側(外側)に必要としない。このように、水抜き部材20は、取り付け対象であるドア10の外側に大きなスペースを要しないので、例えば、ドア10の底面とサイドシル16の上面とを近づけることができるなど、様々なメリットがある。
【0019】
被覆部36は、その中央部に連なる支持部34から離れるにつれてベース部22に近づく傘状に形成されて、ベース部22を上下方向に貫通する水抜き孔24の上側を覆っている。このように構成することで、水抜き部材20は、被覆部36の端縁とドアインナー14における底板14aの内面との隙間(排水通過部38の開口)を狭くすることができ、支持部34から下方傾斜する被覆部36によって反射される音を、前記隙間から漏れ難くすることができる。従って、水抜き部材20の遮音性を向上することができる。
【0020】
(第2実施形態)
次に、
図5~
図8を参照して、第2実施形態に係る水抜き部材40を説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の機能の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0021】
図6に示すように、第2実施形態の水抜き部材40は、ベース部22と遮音部26とでドアインナー14の底板14aを挟んで、ドアインナー14に取り付けられている。
図8に示すように、第2実施形態のベース部22は、ベース本体28および開口挿通部30を備えているが、第1実施形態と異なり、鍔部32を備えていない。そして、第2実施形態のベース部22は、開口部18に嵌め込んだ開口挿通部30の上面が、ドアインナー14の内面に揃うか、またはわずかに低くなるように構成されている。ベース部22は、支持部34を囲うように配置された複数の水抜き孔24を有し、各水抜き孔24がベース部22を上下方向に貫通している。
【0022】
図5および
図6に示すように、第2実施形態では、遮音部26における被覆部36の端縁のうち、ドアインナー14における底板14aの内面から離れる離間端縁36aよりも延長して、延長端縁36bが形成されている。被覆部36における底板14aから離れる離間端縁36aと底板14a(ベース部22)との間に、排水通過部38が水平方向に開口するように設けられている。そして、延長端縁36bとベース部22のベース本体28との間に、底板14aを上下方向両側から挟んで、水抜き部材40がドアインナー14に取り付けられる。
図7に示すように、被覆部36の延長端縁36bは、支持部34と各水抜き孔24とを結ぶ仮想ラインの延長線からずらして配置されて、隣り合う水抜き孔24,24の間よりも外側に位置している。排水通過部38は、支持部34と各水抜き孔24とを結ぶ仮想ラインの延長線上に配置されている。
【0023】
第2実施形態の水抜き部材40によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。前述した第1実施形態の作用効果に加えて、第2実施形態の水抜き部材40は、被覆部36の延長端縁36bによって排水通過部38が狭くなっており、延長端縁36bによりドア10の内側への騒音の入射を防止できる。第2実施形態の水抜き部材40は、遮音部26の被覆部36とベース部22とでドアインナー14を挟んで取り付ける構成とすることで、ベース部22においてドアインナー14を挟むための構成である鍔部32を省略することができる。これにより、ドアインナー14の内側にわずかに出っ張る鍔部32を無くすことで、ベース部22に設けられた水抜き孔24に水が通り易くすることができる。また、ドアインナー14の内面に当たる被覆部36の延長端縁36bは、水抜き孔24と位置をずらして配置してあるので、延長端縁36bの存在によって水抜き孔24への水の流れを阻むことを回避できる。
【0024】
(第3実施形態)
次に、
図9および
図10を参照して、第3実施形態に係る水抜き部材50を説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同様の機能の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0025】
図9および
図10に示すように、第3実施形態の水抜き部材50において、遮音部26は、ベース部22からドア10の内側へ向けて立ち上がる支持部34を有している。支持部34は、ベース部22を貫通する通孔22aに繋がる中空部35を有する形状に形成されており、本実施形態の支持部34は円筒形状である。また、第3実施形態の遮音部26は、支持部34に連ねて設けられ、通孔22aおよび中空部35により構成される水抜き孔24にかぶさるように配置される被覆部36を有している。支持部34には、ベース部22に連なる根元側に、該支持部34の壁を貫通して中空部35に繋がる排水通過部38が形成されている。排水通過部38は、下側の開口縁がドアインナー14における底板14aの内面に上下位置がほぼ揃う直線状に形成されており、
図9に示すように排水通過部38を下側よりも上側の開口幅が狭くなるように形成するとよい。このように、第3実施形態では、遮音部26に、排水通過部38が、上下方向に貫通する水抜き孔24と異なる水平方向に開口するように設けられている。そして、ドア10の内側に開口する排水通過部38から中空部35および通孔22aを通って排水され、排水通過部38を通る水の流れの向きと水抜き孔24を通る水の流れの向きが異なっている。
図10に示すように、第3実施形態の水抜き部材50は、支持部34(排水通過部38の下側の開口縁)およびベース部22によって、開口部18の開口縁をドアインナー14における底板14aの上下方向両側から挟んで、ドアインナー14に取り付けられている。
【0026】
第3実施形態の水抜き部材50によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。第3実施形態の水抜き部材50は、ドア10の内側に開口する壁孔34aの貫通方向とベース部22を貫通してドア10の外側に開口する通孔22aの貫通方向とが異なっているので、外部の音が水抜き孔24を通ってドア10の内側に入射し難くすることができる。
【0027】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば、以下のように変更してもよい。
(1)前述した水抜き部材を適用する車体構成部材は、ドアに限らず、例えば、ボディとフロアパネルとの合わせ目を構成する部材や、サイドパネルや、アンダーカバーやその他の水抜きが必要とされる部材に適用可能である。
(2)水抜き部材は、上下方向に貫通する開口部に取り付ける構成に限らず、水平方向や斜め下方向に貫通する開口部に取り付ける構成であってもよい。
(3)実施例では、被覆部を支持部から離れるにつれてベース部に近づくように傾斜形成したが、これに限らず、被覆部全体が傾斜するのではなく、被覆部におけるベース部との対向面が、支持部から離れるにつれてベース部に近づく傾斜面であってもよい。また、被覆部全体または被覆部におけるベース部に対向する面を、ベース部と平行に形成してもよい。
(4)各実施形態の構成は相互に適用することができる。例えば、第1実施形態のベース部による車体構成部材の取り付け構造と第2実施形態の遮音部を用いた車体構成部材への登取り付け構造との両方で、車体構成部材に取り付けてもよい。
【0028】
(5)
図11および
図12に示す第3実施形態の変更例のように、遮音部26は、被覆部36の少なくとも一部を、ドア10の内側に開口する排水通過部38よりも支持部34から張り出すように形成してもよい。このような遮音部26は、排水通過部38の内側開口よりもドア10の内側に配置された被覆部36の張り出し部分によって、ドア10の内側への騒音の入射を防止できる。被覆部36における支持部34からの張り出し部分は、支持部34から離れるにつれてベース部22に近づくように形成しても、ベース部22と平行するように形成しても、何れであってもよい。変更例の被覆部36は、支持部34からの張り出し部分が、支持部34から離れるにつれてベース部22に近づくように傾斜し、被覆部36が全体として先細り形状になっている。これにより、遮音部26を開口部18へ差し込む際に、被覆部36がガイドの役割を果たすため、遮音部26を開口部18へ容易に差し込むことができる。
(6)
図11および
図12に示す第3実施形態の変更例において、被覆部36における支持部34からの張り出し部分を、排水通過部38の内側開口の開口面に相対するように配置するように変えてもよい。被覆部36の張り出し部分が、排水通過部38よりもドア10の内側に延在するだけでなく、被覆部36の張り出し部分が、排水通過部38よりもドア10の内側位置から排水通過部38の内側開口面に相対する位置までにかけてかぶさるように形成することで、ドア10の内側への騒音の入射を防止できる。
(7)
図9および
図11に示す第3実施形態およびその変更例では、支持部34を円筒形に形成したが、水抜き孔となる中空部を有する形状であれば、角筒状やその他の形状であってもよい。
(8)支持部は、ベース部および被覆部の間で一定の太さである形状に限らず、ベース部から被覆部に向かうにつれて細くなる形状など、その他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 車体構成部材(ドア),18 開口部,22 ベース部,22a 通孔,
24 水抜き孔,26 遮音部,34 支持部,35 中空部,
36 被覆部,36a 離間端縁,36b 延長端縁,38 排水通過部