(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】積層フィルム、該積層フィルムの製造方法及び薄膜付フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20221109BHJP
【FI】
B32B7/06
(21)【出願番号】P 2018226243
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】羽根 友子
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 治
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525243(JP,A)
【文献】特開平07-220975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フィルムと、
前記第1フィルムの第1面上に形成された薄膜と、
前記第1フィルムにおいて前記第1面と反対側の第2面上に形成された第2フィルムと、
前記第2フィルムにおいて、前記第1フィルムとは反対側の面に形成され、前記第1フィルムと同じ材料の第3フィルムと、
を備え、
前記第1フィルムと前記第3フィルムとは、厚みが略同じであり、
前記第1フィルム及び前記第3フィルムの膜厚は、それぞれ約7μm以上75μm以下であり、
前記第2フィルムは、粘着剤を介さずに前記第2面上に形成されており、前記第2面から剥離可能である、積層フィルム。
【請求項2】
前記第2フィルムは、前記第2面において前記第1フィルムに直接的に積層されている、請求項
1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記第2フィルムは、前記第2面から界面剥離可能である、請求項1
または請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
共押出法により第1
、第2及び第3フィルムを
この順で積層することによって積層フィルムを製造するステップと、
前記積層フィルムのうち前記第1フィルム上に薄膜を形成するステップと、
を含み、
前記第1及び第3フィルムは、同じ材料で、且つ略同じ厚さであり、
前記第1及び第3フィルムの厚さは、約7μm以上75μm以下であり、
前記積層フィルムにおいて、前記第1及び第2フィルムは、粘着剤を介さずに積層されており、
前記第2フィルムは、前記第1フィルムから剥離可能である、積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
共押出法により第1
、第2及び第3フィルムを
この順で積層することによって積層フィルムを製造するステップと、
前記積層フィルムのうち前記第1フィルム上に薄膜を形成するステップと、
を含み、
前記第1及び第3フィルムは、同じ材料で、且つ略同じ厚さであり、
前記第1及び第3フィルムの厚さは、約7μm以上75μm以下であり、
前記積層フィルムにおいて、前記第1及び第2フィルムは、粘着剤を介さずに積層されており、
前記第2フィルムは、前記第1フィルムから剥離可能であり、
前記第1フィルムから前記第2フィルムを剥離することによって薄膜付フィルムを製造するステップをさらに含む、薄膜付フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、該積層フィルムの製造方法及び薄膜付フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平7-68690号公報(特許文献1)は、透明導電性フィルムを開示する。この透明導電性フィルムは、第1のプラスチックフィルム基体と、第2のプラスチックフィルム基体とを含む。第1のプラスチックフィルム基体の一方の面には、透明導電性を有する薄膜が形成されている。第1のプラスチックフィルム基体の他方の面には、粘着剤層を介して第2のプラスチックフィルム基体が貼り合わされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている透明導電性フィルムにおいては、第2のプラスチックフィルム基体が粘着剤層を介して第1のプラスチックフィルム基体に貼り合わされている。すなわち、透明導電性フィルムの製造過程で、粘着剤層を介したフィルムの貼合わせ工程を行なう必要がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、粘着剤を介したフィルムの貼合わせ工程を行なうことなく容易に製造可能な積層フィルム、該積層フィルムの製造方法及び薄膜付フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う積層フィルムは、第1フィルムと、薄膜と、第2フィルムとを備える。薄膜は、第1フィルムの第1面上に形成されている。第2フィルムは、第1フィルムにおいて第1面と反対側の第2面上に形成されている。第2フィルムは、粘着剤を介さずに上記第2面上に形成されており、上記第2面から剥離可能である。
【0007】
この積層フィルムにおいて、第2フィルムは、粘着剤を介さずに第1フィルムの第2面上に形成されている。すなわち、この積層フィルムの製造過程においては、粘着剤を介したフィルムの貼合わせ工程を行なう必要がない。したがって、この積層フィルムであれば、粘着剤を介したフィルムの貼合わせ工程を行なうことなく容易に製造することができる。
【0008】
上記積層フィルムにおいて、第1フィルムの膜厚は、75μm以下であってもよい。
【0009】
上記積層フィルムにおいて、第2フィルムは、上記第2面において上記第1フィルムに直接的に積層されていてもよい。
【0010】
上記積層フィルムにおいて、第2フィルムは、第2面から界面剥離可能であってもよい。
【0011】
本発明の他の局面に従う、積層フィルムの製造方法は、共押出法により第1及び第2フィルムを積層することによって積層フィルムを製造するステップと、積層フィルムのうち第1フィルム上に薄膜を形成するステップとを含む。積層フィルムにおいて、第1及び第2フィルムは、粘着剤を介さずに積層されている。第2フィルムは、第1フィルムから剥離可能である。
【0012】
この積層フィルムの製造方法においては、粘着剤を介したフィルムの貼合わせ工程が行なわれない。したがって、この積層フィルムの製造方法によれば、粘着剤を介したフィルムの貼合わせ工程を行なうことなく容易に積層フィルムを製造することができる。
【0013】
また、たとえば、第1フィルムの膜厚が薄い場合に、第2フィルムを積層する前に第1フィルム上に薄膜を形成すると、薄膜形成時に生じる熱の影響によって第1フィルム上にしわ、折れ、だれ又は穴あき等が入る可能性がある。本発明に従う積層フィルムの製造方法においては、第1フィルムに第2フィルムを積層した後に第1フィルムに薄膜が形成される。したがって、この積層フィルムの製造方法によれば、第1及び第2フィルムが一体化された、ある程度厚みのある積層フィルム上に薄膜が形成されるため、第1フィルムにしわ、折れ、だれ又は穴あき等が入る可能性を低減することができる。
【0014】
本発明の他の局面に従う、薄膜付フィルムの製造方法は、共押出法により第1及び第2フィルムを積層することによって積層フィルムを製造するステップと、積層フィルムのうち第1フィルム上に薄膜を形成するステップとを含む。積層フィルムにおいて、第1及び第2フィルムは、粘着剤を介さずに積層されている。第2フィルムは、第1フィルムから剥離可能である。上記薄膜付フィルムの製造方法は、第1フィルムから第2フィルムを剥離することによって薄膜付フィルムを製造するステップをさらに含む。
【0015】
本発明に従う薄膜付フィルムの製造方法においては、第1フィルムに第2フィルムを積層した後に第1フィルムに薄膜が形成される。すなわち、この製造方法においては、積層フィルム上における薄膜の形成時に第1フィルムにしわ、折れ、だれ又は穴あき等が入らない。その後、第1フィルムから第2フィルムが剥離されるため、この薄膜付フィルムの製造方法によれば、第1フィルムにおける、しわ、折れ、だれ又は穴あき等の外観の不具合が改善された薄膜付フィルムを製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、粘着剤を介したフィルムの貼合わせ工程を行なうことなく容易に製造可能な積層フィルム、該積層フィルムの製造方法及び薄膜付フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】積層フィルムの製造手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1変形例における積層フィルムの断面を示す図である。
【
図4】第2変形例における積層フィルムの断面を示す図である。
【
図5】薄膜付フィルムの製造手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
[1.概要]
図1は、本実施の形態に従う積層フィルム10の断面を示す図である。
図1に示されるように、積層フィルム10は、複数の層によって構成されており、具体的には、基材フィルム120(プラスチックフィルム)と、薄膜110と、剥離フィルム130(プラスチックフィルム)とを含んでいる。基材フィルム120の一方の面上には薄膜110が形成されており、基材フィルム120の他方の面上には剥離フィルム130が形成されている。各層の詳細については後程説明する。
【0020】
積層フィルム10のユーザは、たとえば、積層フィルム10のうち剥離フィルム130を剥離する。より具体的には、剥離フィルム130は、基材フィルム120に対して界面剥離する。ユーザは、たとえば、剥離後の薄膜付フィルム(薄膜110と基材フィルム120とを含むフィルム)をタッチパネル用の透明電極に用いたり、太陽電池用の透明電極に用いたりする。なお、薄膜付フィルムの用途はこれらに限定されない。
【0021】
積層フィルム10においては、基材フィルム120と剥離フィルム130とが粘着剤を介さずに積層されている。この理由について、次に説明する。仮に、基材フィルム120と剥離フィルム130とが粘着剤によって接合されているとする。さらに、この積層フィルムの製造過程においては、まず基材フィルム120と剥離フィルム130とが粘着剤によって接合された後に、基材フィルム120上に薄膜110が形成されるとする。基材フィルム120上における薄膜110の形成は、たとえばスパッタリングによって行なわれる。
【0022】
この場合には、スパッタリングを行なうために粘着剤を含む積層フィルムが真空槽(加工機)中に配置されることになり、真空槽中においては粘着剤に起因するガスが発生する。このガスによって、真空槽内に汚れが生じる。その結果、真空槽を用いて製造される積層フィルムの品質が低下する。
【0023】
また、仮に、基材フィルム120と剥離フィルム130とが粘着剤によって接合されているとする。さらに、この積層フィルムの製造過程においては、基材フィルム120上に薄膜110が形成された後に、基材フィルム120と剥離フィルム130とが粘着剤によって接合されるとする。
【0024】
この場合に基材フィルム120の膜厚が薄いと、基材フィルム120上に薄膜110を形成するときに、薄膜形成時に生じる熱の影響によって基材フィルム120上にしわ、折れ、だれ又は穴あき等が入る可能性がある。
【0025】
本実施の形態に従う積層フィルム10においては、基材フィルム120と剥離フィルム130とが粘着剤を介さずに直接的に積層されている。したがって、基材フィルム120と剥離フィルム130とを積層した後に基材フィルム120上に薄膜110を形成したとしても、真空槽中において粘着剤に起因するガスが発生しない。その結果、真空槽が汚れず、積層フィルム10の品質を維持することができる。
【0026】
また、基材フィルム120と剥離フィルム130とが積層された後に基材フィルム120上に薄膜110が形成される場合には、フィルム(基材フィルム120と剥離フィルム130とを含む)がある程度の膜厚を有することになるため、薄膜形成時に生じる熱によって基材フィルム120にしわ、折れ、だれ又は穴あき等が入る可能性を低減することができる。
【0027】
さらに、本実施の形態に従う積層フィルム10であれば、粘着剤を介したフィルムの貼合わせ工程を行なう必要がないため、容易に製造することができる。以下、積層フィルム10における各層の詳細な説明、積層フィルム10の製造方法について順に説明する。
【0028】
[2.各層の詳細な説明]
<2-1.基材フィルム>
基材フィルム120は、たとえば、ポリオレフィンを含有する。ポリオレフィンとしては、オレフィン類の単独重合体、相互共重合体、他の共重合可能なモノマー(たとえば、他のビニル系モノマー)との共重合体を例示することができる。具体的には、たとえば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、これらの相互共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド系樹脂等を例示することができる。好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。なお、基材フィルム120の膜厚は、たとえば、0.1μm以上75μm以下であることが好ましく、0.5μm以上50μm以下であることがより好ましく、1μm以上25m以下であることがさらに好ましい。
【0029】
ポリアミド系樹脂としては、たとえば、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、非晶質ポリアミド、ポリアミドエラストマーを挙げることができ、脂肪族ポリアミドが好ましい。
【0030】
脂肪族ポリアミドとしては、脂肪族ナイロン及びその共重合体を挙げることができる。具体的には、たとえば、ポリカプラミド(ナイロン-6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン-7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン-9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン-11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン-12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン-2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン-4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン-6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン-8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン-10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン-6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン-6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6/6,6/6,10)、6T-6Iナイロン、MXD-6ナイロンを挙げることができる。これらは1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
【0031】
<2-2.剥離フィルム>
剥離フィルム130は、上記基材フィルム120で挙げた樹脂を適宜選択できる。なお、剥離フィルム130の材料としては、基材フィルム120と剥離可能な樹脂を選択する必要がある。また、剥離フィルム130の膜厚は、10μm以上300μm以下が好ましく、25μm以上250μm以下がより好ましく、50μm以上200μm以下がさらに好ましい。
【0032】
<2-3.薄膜>
薄膜110は、たとえば、無機材料、有機材料又はそれらの混合物により形成することができる。無機材料は、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、錫、亜鉛、クロム、金、銀、シリコン、チタン、インジュウム、スズ、又は亜鉛の元素単一、或いはこれらの合金により形成することがきる。薄膜110は、これらの金属の中から1種を選択して単一金属から構成されてもよく、またこれらの金属の中の2種以上の組み合わせからなる合金または酸化物から構成されてもよい。また、有機材料は、電離放射線硬化型材料、熱硬化型材料により形成することができ、たとえば、アクリル系材料、ウレタン系材料、エポキシ系材料等を用いることができる。
【0033】
薄膜110の形成手段としては、一般的に用いられている薄膜形成技術が用いられ、たとえば、ドライコーティング法やウェットコーティング法で形成することができる。ドライコーティング法としては、化学的薄膜形成手段や物理的薄膜形成手段等が用いられる。化学的薄膜形成手段としては、メッキ法、CVD法等が挙げられる。また、物理的薄膜形成手段としては、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。また、ウェットコーティング法としては、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等が用いられる。なお、薄膜110の膜厚は、たとえば、0.1nm以上30μm以下が好ましく、0.5nm以上20nm以下がより好ましく、1nm以上10nm以下がさらに好ましい。
【0034】
[3.製造方法]
図2は、積層フィルム10の製造手順の一例を示すフローチャートである。
図2を参照して、本フローチャートに示される処理は、たとえば、積層フィルム10の製造装置によって実行される。製造装置は、たとえば、Tダイスと、冷却ロール(チルロール)と、ロール延伸機と、テンター延伸機とを含む。
【0035】
Tダイスは、基材フィルム120を構成する原料と、剥離フィルム130を構成する原料とを冷却ロール上に共押出しする(ステップS100)。これにより、フラットな積層フィルムが作成される。
【0036】
その後、該積層フィルムは、たとえば、20℃~180℃のロール延伸機によって1倍~6倍に縦延伸される。また、積層フィルムは、90℃~200℃の雰囲気のテンター延伸機によって1倍~12倍に横延伸される。さらに、積層フィルムは、60℃~260℃の雰囲気のテンター延伸機によって熱処理される。これにより、基材フィルム120及び剥離フィルム130が一体化された積層フィルムが作成される。すなわち、本実施の形態においては、粘着剤を用いることなく、基材フィルム120と剥離フィルム130とが一体化される。
【0037】
なお、積層フィルムの延伸方法は、必ずしも逐次二軸延伸である必要はなく、たとえば、同時二軸延伸であってもよい。また、積層フィルムは、必ずしも二軸延伸される必要はなく、たとえば、一軸延伸されるだけであってもよい。また、基材フィルム120及び剥離フィルム130が一体化された積層フィルムは、必要に応じて両表面又は片表面にコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理等が施されてもよい。
【0038】
その後、剥離フィルム130が形成されている面とは反対側の基材フィルム120の面上に、コーティングによって薄膜110が形成される(ステップS110)。これにより、積層フィルム10が完成する。
【0039】
[4.特徴]
以上のように、本実施の形態に従う積層フィルム10は、基材フィルム120と、薄膜110と、剥離フィルム130とを備える。薄膜110は、基材フィルム120の第1面上に形成されている。剥離フィルム130は、基材フィルム120において第1面と反対側の第2面上に形成されている。剥離フィルム130は、粘着剤を介さずに上記第2面上に形成されており、上記第2面から剥離可能である。
【0040】
したがって、基材フィルム120と剥離フィルム130とを積層した後に基材フィルム120上に薄膜110を形成したとしても、薄膜110の形成時(スパッタリング時)に粘着剤に起因するガスが発生しない。その結果、スパッタリングに用いられる真空槽が汚れず、積層フィルム10の品質を維持することができる。
【0041】
また、基材フィルム120と剥離フィルム130とが積層された後に基材フィルム120上に薄膜110が形成される場合には、フィルム(基材フィルム120と剥離フィルム130とを含む)がある程度の膜厚を有することになるため、薄膜形成時に生じる熱によって薄膜にしわ、折れ、だれ又は穴あき等が入る可能性を低減することができる。
【0042】
さらに、本実施の形態に従う積層フィルム10であれば、粘着剤を介したフィルムの貼合わせ工程を行なう必要がないため、容易に製造することができる。
【0043】
[5.変形例]
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。但し、以下の変形例は適宜組合せ可能である。
【0044】
<5-1>
上記実施の形態において、積層フィルム10は、基材フィルム120、薄膜110及び剥離フィルム130のみを含んでいた。しかしながら、積層フィルム10の構成は、これに限定されず、たとえば、他の層を含んでもよい。
【0045】
図3は、第1変形例における積層フィルム10Aの断面を示す図である。
図3に示されるように、積層フィルム10Aは、薄膜110、基材フィルム120及び剥離フィルム130の他に基材フィルム140を含んでいる。基材フィルム140は、基材フィルム120が形成されている面と反対側の剥離フィルム130の面上に形成されている。基材フィルム140は、たとえば、基材フィルム120と同様の構成である。剥離フィルム130の両面に同様の基材フィルムが形成されることによって、剥離フィルム130の上下面に加わる応力が安定するため、積層フィルム10Aのカールが抑制される。なお、積層フィルム10Aにおいては、基材フィルム120、剥離フィルム130及び基材フィルム140が共押出しによって一体化される。
【0046】
図4は、第2変形例における積層フィルム10Bの断面を示す図である。
図4に示されるように、積層フィルム10Bは、薄膜110、基材フィルム120、剥離フィルム130及び基材フィルム140の他に薄膜150を含んでいる。薄膜150は、剥離フィルム130が形成されている面と反対側の基材フィルム140の面上に形成されている。薄膜150は、たとえば、薄膜110と同様の構成である。積層フィルム10Bによれば、同時に二枚の薄膜付フィルム(薄膜110及び基材フィルム120を含む薄膜付フィルム、並びに、薄膜150及び基材フィルム140を含む薄膜付フィルム)を作成することができる。
【0047】
<5-2>
また、上記実施の形態においては、基材フィルム120の剥離フィルム130が設けられている面と反対側の面上に薄膜110が形成された。しかしながら、薄膜110が形成される位置はこれに限定されない。たとえば、薄膜110は、剥離フィルム130の基材フィルム120が設けられている面と反対側の面上に形成されてもよい。この場合には、薄膜110が形成された剥離フィルム130が、たとえば、タッチパネル用の透明電極や太陽電池用の透明電極に用いられる。
【0048】
すなわち、基材フィルム120が本発明の「第1フィルム」に対応するとともに剥離フィルム130が本発明の「第2フィルム」に対応してもよいし、基材フィルム120が本発明の「第2フィルム」に対応するとともに剥離フィルム130が本発明の「第1フィルム」に対応してもよい。また、薄膜110は、基材フィルム120の剥離フィルム130が設けられている面と反対側の面、及び、剥離フィルム130の基材フィルム120が設けられている面と反対側の面の両面上に形成されてもよい。
【0049】
また、基材フィルム120の少なくとも一方の面に有機材料と無機材料を混合したハイブリット層を形成してもよい。ハイブリット層の形成方法としては共押出法や薄膜コーティング法等が挙げられ、共押出法によれば基材フィルムとハイブリッド層とを同時に形成することができる。
【0050】
また、基材フィルム120の剥離フィルムを積層する面にフッ素系材料やシリコン系材料を含有する離型層を形成してもよい。離型層は、上記ハイブリッド層で挙げた方法で形成することができる。
【0051】
<5-3>
上記実施の形態においては、
図2に示されるフローチャートに従って積層フィルム10が製造された。さらに、積層フィルム10に基づいて、薄膜付フィルム(薄膜110及び基材フィルム120を含むフィルム)を製造することができる。
【0052】
図5は、薄膜付フィルムの製造手順を示すフローチャートである。
図5に示されるように、ステップS110において積層フィルム10が作成された後に、剥離フィルム130が剥離される(ステップS120)。これにより、薄膜付フィルムを製造することができる。
【0053】
[6.実施例]
以下、実施例について説明する。実施例1~4の各々においては、基材フィルムとしてポリメチルペンテン(東レ(株)製PA6(型番:CM1021T))、剥離フィルムとしてポリアミド(三井化学(株)製TPX樹脂(型番:MX004))、が用いられた。なお、実施例2のスパッタリングに用いられるターゲットとしては、10w%ITOが使用された。なお、10w%ITOは、セラミックスターゲットであって、錫が酸化インジウム中に10%の割合で混入したターゲットである。
【0054】
<6-1.実施例1>
ポリメチルペンテンとポリアミドとを共押出しすることによって、積層フィルムが作成された。さらに、この積層フィルムのポリメチルペンテン面上に、約70nmのCu薄膜がスパッタリングによって成膜された。成膜後の積層フィルムの膜厚は、50μmであった。
【0055】
成膜後にポリメチルペンテン面の表面を目視によって確認したところ、積層フィルムには、しわ・折れが確認されなかった。また、成膜後の積層フィルムからポリアミドフィルムを剥離したところ、Cuがスパッタリングによって良好に積層していることが確認された。なお、ポリアミドフィルムの剥離後の積層フィルムの膜厚は、7μmであった。
【0056】
<6-2.実施例2>
ポリメチルペンテンとポリアミドとを共押出しすることによって、積層フィルムが作成された。さらに、この積層フィルムのポリメチルペンテン面上に、約100nmの透明導電膜ITOがスパッタリングによって成膜された。成膜後の積層フィルムの膜厚は、50μmであった。
【0057】
成膜後にポリメチルペンテン面の表面を目視によって確認したところ、積層フィルムには、しわ・折れが確認されなかった。また、成膜後の積層フィルムからポリアミドフィルムを剥離したところ、ITOがスパッタリングによって良好に積層していることが確認された。なお、ポリアミドフィルムの剥離後の積層フィルムの膜厚は、7μmであった。
【0058】
<6-3.実施例3>
ポリメチルペンテンとポリアミドとを共押出しすることによって、積層フィルムが作成された。さらに、この積層フィルムのポリメチルペンテン面上に、アクリレート化合物を含有する紫外線硬化型塗料を塗布形成した。その後、紫外線を照射することによって3μmの有機薄膜が成膜された。成膜後の積層フィルムの膜厚は、53μmであった。
【0059】
成膜後にポリメチルペンテン面の表面を目視によって確認したところ、積層フィルムには、しわ・折れが確認されなかった。また、成膜後の積層フィルムからポリアミドフィルムを剥離したところ、有機薄膜が良好に積層していることが確認された。なお、ポリアミドフィルムの剥離後の積層フィルムの膜厚は、10μmであった。
【0060】
<6-4.実施例4>
ポリメチルペンテンとポリアミドとを共押出しすることによって、積層フィルムが作成された。さらに、この積層フィルムのポリメチルペンテン面上に、アクリレート化合物を含有する紫外線硬化型塗料を塗布形成した。その後、紫外線を照射することによって3μmの有機薄膜が成膜された。さらに、この積層フィルムの有機薄膜面上に、約100nmの透明導電膜ITOがスパッタリングによって成膜された。成膜後の積層フィルムの膜厚は、53μmであった。
【0061】
成膜後にポリメチルペンテン面の表面を目視によって確認したところ、積層フィルムには、しわ・折れが確認されなかった。また、成膜後の積層フィルムからポリアミドフィルムを剥離したところ、有機薄膜とITOが良好に積層していることが確認された。なお、ポリアミドフィルムの剥離後の積層フィルムの膜厚は、10μmであった。
【符号の説明】
【0062】
10,10A,10B 積層フィルム、110,150 薄膜、120,140 基材フィルム、130 剥離フィルム。