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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】コンクリート片の剥落防止工法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/02 20060101AFI20221109BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20221109BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221109BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20221109BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20221109BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20221109BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20221109BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C09D175/02
C09D5/00 D
C09D7/61
C09D163/00
C09D175/04
C09D175/08
E01D22/00 B
E04G23/02 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018226630
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020090566
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000105648
【氏名又は名称】コニシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】古池 敏行
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043740(JP,A)
【文献】特開2013-139559(JP,A)
【文献】特開2004-060197(JP,A)
【文献】特開2010-144401(JP,A)
【文献】特開2017-180081(JP,A)
【文献】特開昭58-134160(JP,A)
【文献】特開平06-049410(JP,A)
【文献】特開2009-150085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/02
E04G 23/02
E01D 22/00
C09D 5/00
C09D 163/00
C09D 175/04
C09D 175/08
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート躯体の表面側にプライマー層を形成した後、該プライマー層上に弾性樹脂層を形成し、次いで、該弾性樹脂層上に補強層を形成するコンクリート片の剥落防止工法であって、
前記補強層は、化1で表されるイソシアヌレート化合物、化2で表される末端基を複数個持つイソシアネートプレポリマー及び化3で表されるジアミン化合物を含む塗装材を塗布して形成することを特徴とするコンクリート片の剥落防止工法。
【化1】
(化1中、R1、R2及びR3は、炭素数3~20の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基である。)
【化2】
(化2中、R4は炭素数3~20の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基であり、Xは、O、NH及びNRよりなる群から選ばれた基であり、Rは窒素原子を含むことのある炭素数3~20の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基である。)
【化3】
(化3中、R5及びR6は炭素数1~4の炭化水素基又は炭素数1~4のアルキルチオ基である。)
【請求項2】
プライマー層は、1液型エポキシ樹脂又は1液型ウレタン樹脂を塗布することによって形成される請求項1記載のコンクリート片の剥落防止工法。
【請求項3】
弾性樹脂層は、1液湿気硬化型ウレタン樹脂を塗布することによって形成される請求項1記載のコンクリート片の剥落防止工法。
【請求項4】
イソシアヌレート化合物がイソホロンジイソシアネートの三量体である請求項1記載のコンクリート片の剥落防止工法。
【請求項5】
イソシアネートプレポリマーが、ポリエーテルポリオールと脂環式ジイソシアネートとを反応させて得られたものである請求項1記載のコンクリート片の剥落防止工法。
【請求項6】
ポリエーテルポリオールがポリプロピレングリコールであり、脂環式ジイソシアネートがイソホロンジイソシアネートである請求項5記載のコンクリート片の剥落防止工法。
【請求項7】
ジアミン化合物がジメチルチオトルエンジアミンである請求項1記載のコンクリート片の剥落防止工法。
【請求項8】
塗装材に充填材が含まれている請求項1記載のコンクリート片の剥落防止工法。
【請求項9】
補強層上に仕上層を形成する請求項1記載のコンクリート片の剥落防止工法。
【請求項10】
請求項1記載のコンクリート片の剥落防止工法に用いる塗装材を得るための塗装材キットであって、該塗装材キットは化1で表されるイソシアヌレート化合物及び化2で表される末端基を複数個持つイソシアネートプレポリマーを含む主材と、化3で表されるジアミン化合物を含む硬化材との組み合わせであることを特徴とする塗装材キット。
【化1】
(化1中、R1、R2及びR3は、炭素数3~20の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基である。)
【化2】
(化2中、R4は炭素数3~20の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基であり、Xは、O、NH及びNRよりなる群から選ばれた基であり、Rは窒素原子を含むことのある炭素数3~20の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基である。)
【化3】
(化3中、R5及びR6は炭素数1~4の炭化水素基又は炭素数1~4のアルキルチオ基である。)
【請求項11】
主材又は硬化材中に、充填材が含まれている請求項10記載の塗装材キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁、トンネル又は建築物等のコンクリート構造物の表面からコンクリート片が剥落するのを防止する工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート構造物の表面からコンクリート片が剥落するのを防止するために、コンクリート躯体表面に繊維シートを展張し、その上から硬化性樹脂を塗布して繊維シートに含浸させ、繊維シートを貼り付けることが行われている。しかるに、繊維シートを展張した状態で硬化性樹脂を塗布するという施工は、作業者にとって煩雑なものであった。このため、繊維シートを用いることなく、コンクリート躯体表面に塗装材を塗布して強靱な被膜を形成するという、コンクリート片の剥落防止工法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、アミン樹脂とイソシアネートプレポリマーとを混合した塗装材を、繊維シートを用いることなく、コンクリート躯体表面に塗布する工法が記載されている(特許文献1、請求項1)。しかしながら、アミン樹脂とイソシアネートプレポリマーとを混合してなる塗装材は、硬化が速いということがあった。すなわち、アミン樹脂とイソシアネートプレポリマーとを混合した直後の粘度が、30分経過後には2倍になってしまうのである(特許文献1、請求項3)。そして、塗装材の硬化が早いと、可使時間が短くなり、作業しにくいという欠点が生じるのである。
【0004】
【文献】特開2010-144401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、強靱な被膜を形成しうる塗装材の可使時間を延ばし、コンクリート片の剥落防止工法の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イソシアネートプレポリマーに、特定のイソシアヌレートと特定のジアミン化合物を配合して塗装材とすることにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、コンクリート躯体の表面側にプライマー層を形成した後、該プライマー層上に弾性樹脂層を形成し、次いで、該弾性樹脂層上に補強層を形成するコンクリート片の剥落防止工法であって、前記補強層は、化1で表されるイソシアヌレート化合物、化2で表される末端基を複数個持つイソシアネートプレポリマー及び化3で表されるジアミン化合物を含む塗装材を塗布して形成することを特徴とするコンクリート片の剥落防止工法に関するものである。
【化1】
(化1中、R1、R2及びR3は、炭素数3~20の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基である。)
【化2】
(化2中、R4は炭素数3~20の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基であり、Xは、O、NH及びNRよりなる群から選ばれた基であり、Rは窒素原子を含むことのある炭素数3~20の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基である。)
【化3】
(化3中、R5及びR6は炭素数1~4の炭化水素基又は炭素数1~4のアルキルチオ基である。)
【0007】
本発明に係る工法を順に説明する。まず、コンクリート躯体表面にプライマーを塗布して、プライマー層を形成する。プライマーとは下塗り塗料のことであり、コンクリート躯体表面に下地を形成し、この上に塗布する弾性樹脂層との接着性を高めるためのものである。プライマーの塗布量は任意であるが、一般的に0.05~0.2kg/m2程度である。プライマーとしては、従来公知の下塗り塗料が用いられる。たとえば、1液型又は2液型エポキシ樹脂、1液型又は2液型ウレタン樹脂、2液型アクリル樹脂等が用いられる。作業性の点で、1液型エポキシ樹脂又は1液型ウレタン樹脂を用いるのが好ましい。
【0008】
プライマー層を形成した後に、この層上に弾性樹脂を塗布し、弾性樹脂層を形成する。弾性樹脂層はクッション性を持つもので、コンクリート躯体表面に浮き等の変状が生じた場合に、その変状に基づいて生じる外部への応力を分散させ、弾性樹脂層の上に積層されている補強層の変位を少なくするためのものである。弾性樹脂としては、ウレタン樹脂や変成シリコーン樹脂等の比較的弾性のある樹脂が用いられる。具体的には、1液湿気硬化型ウレタン樹脂、1液湿気硬化型変成シリコーン樹脂又は1液湿気硬化型変成シリコーンエポキシ樹脂等が用いられる。特に、補強層との接着性の点で1液湿気硬化型ウレタン樹脂を用いるのが好ましい。弾性樹脂の塗布量も任意であるが、一般的に0.3~1.0kg/m2程度である。
【0009】
弾性樹脂層を形成した後に、弾性樹脂層上に塗装材を塗布することにより、補強層を形成する。本発明は、特に、この塗装材として特定のものを用いた点に特徴がある。本発明で用いる塗装材は、化1で表されるイソシアヌレート化合物(以下、単に「イソシアヌレート化合物」という。)、化2で表される末端基を複数個持つイソシアネートプレポリマー(以下、単に「イソシアネートプレポリマー」という。)及び化3で表されるジアミン化合物(以下、単に「ジアミン化合物」という。)を含むものである。
【0010】
イソシアヌレート化合物は、以下の化合物の三量体、すなわち三分子が縮合して生成したものである。具体的には、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシジルジイソシアネート等の三分子が環状に縮合して生成したイソシアヌレート化合物を用いることができる。これらのイソシアヌレート化合物は、NCO基が炭素数3~20の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を介して環を構成している窒素原子と結合しているため、反応性が低下し、塗装材の可使時間を延ばしうるものである。たとえば、NCO基が芳香族炭化水素基を介して環を構成している窒素原子と結合していると、反応性が高く、塗装材の可使時間を延ばすことができない。本発明では、特にイソホロンジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート化合物を用いるのが好ましい。
【0011】
イソシアヌレート化合物中に導入される脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基の炭素数は3~20である。この炭素数が3未満になると、反応性が低下しにくくなり、塗装材の可使時間を延ばすことができない。また、炭素数が20を超えると、補強層の強靱性が低下する。イソシアヌレート化合物の塗装材中の配合量は、イソシアネートプレポリマー100質量部に対して、10~60質量部程度である。イソシアヌレート化合物の配合量が10質量部未満であると、補強層の強靱性が低下する傾向が生じる。また、イソシアヌレート化合物の配合量が60質量部を超えると、補強層が脆くなる傾向が生じる。
【0012】
イソシアネートプレポリマーとしては、従来公知のものが用いられる。具体的には、活性水素を有するポリオール化合物、第一級アミン化合物又は第二級アミン化合物と、脂肪族又は脂環式ジイソシアネート化合物とを、錫触媒等の触媒の存在下又は触媒の無存在下、イソシアネート基が過剰の条件で反応して得られるものである。イソシアネート基が過剰の条件で生成されるので、得られるイソシアネートプレポリマーの末端にはNCO基が結合している。
【0013】
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子ポリオール化合物;ジメチロールブタン酸又はジメチロールプロピオン酸等のカルボキシル基を有するポリオール化合物;ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオール等の高分子ポリオール化合物を用いることができる。
【0014】
第一級アミン化合物又は第二級アミン化合物としては、エチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン又はペンタエチレンヘキサミン等の脂肪族ポリアミン;4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン又はノルボルナンジアミン等の脂環式ポリアミン;1,3-キシリレンジアミン又は1,4-キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;ポリオキシアルキレン骨格を有するポリアミンを用いることができる。
【0015】
脂肪族又は脂環式ジイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート化合物を生成するときに用いたものと同様のものが用いられる。本発明では、イソシアネートプレポリマーを得るのに、芳香族ジイソシアネート化合物を用いるのは好ましくない。芳香族ジイソシアネート化合物を用いて得られたイソシアネートプレポリマーは、可使時間を延ばしにくいからである。本発明では、イソシアネートプレポリマーを得るのに、ポリエーテルポリオールからなるポリオール化合物と脂環式ジイソシアネート化合物とを、錫触媒の存在下、イソシアネート基が過剰の条件で反応して得られるものを用いるのが好ましい。特に、ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアネートとを、錫触媒の存在下、イソシアネート基が過剰の条件で反応して得られるものを用いるのが最も好ましい。
【0016】
ジアミン化合物としては、ジエチルトルエンジアミンやジメチルチオトルエンジアミン等が用いられる。ジアミン化合物は硬化材として機能するものであり、イソシアヌレート化合物とイソシアネートプレポリマーとを反応させ、塗装材を硬化させるものである。ジアミン化合物として、本発明の如くトルエンジアミン構造を持つもの以外の化合物を用いると、塗装材の可使時間を延ばしにくくなるので、好ましくない。特に、本発明では、ジメチルチオトルエンジアミンを用いるのが最も好ましい。
【0017】
ジアミン化合物の塗装材中の配合量は、イソシアネートプレポリマー100質量部に対して、10~30質量部程度である。ジアミン化合物の配合量が10質量部未満であると、補強層の強靱性が低下する傾向が生じる。また、ジアミン化合物の配合量が30質量部を超えると、可使時間を延ばしにくくなる傾向が生じる。
【0018】
塗装材中には、イソシアヌレート化合物、イソシアネートプレポリマー及びジアミン化合物の他に、炭酸カルシウム又はカオリン等の充填材、疎水性シリカやフュームドシリカ等の揺変材を含有させてもよい。充填材の配合量は、イソシアネートプレポリマー100質量部に対して、20~60質量部程度である。また、揺変材の配合量は、イソシアネートプレポリマー100質量部に対して、5~20質量部程度である。また、顔料、染料、紫外線吸収剤又は難燃剤等の他の添加材を含有させてもよい。
【0019】
塗装材は、施工現場で、イソシアヌレート化合物、イソシアネートプレポリマー及びジアミン化合物を混合して調製する。施工現場までは、塗装材はキットして運搬される。キットは、硬化材であるジアミン化合物と、主材であるイソシアヌレート化合物及びイソシアネートプレポリマーとの組み合わせとなる。充填材等の添加材は、硬化材中に含有させてもよく、主材に含有させてもよい。そして、施工する際に、主材と硬化材とを均一に混合して塗装材とし、弾性樹脂層に塗布して補強層を形成する。塗装材の塗布量は任意であるが、一般的に0.5~1.5kg/m2程度である。塗布量が0.5kg/m2未満になると、補強層の強靱性が低下する傾向が生じる。また、塗布量が1.5kg/m2を超えると、補強層の強靱性は高くなるが、塗装材の使用量が多くなって合理的でない傾向となる。
【0020】
塗装材によって補強層を形成した後に、補強層上に仕上塗料を塗布して、仕上層を形成してもよい。仕上塗料としては、従来公知のものが用いられる。たとえば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂又はフッ素系樹脂等が用いられる。仕上塗料の塗布量は任意であるが、一般的に0.05~0.2kg/m2程度である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るコンクリート片の剥落防止工法は、弾性樹脂層の上に特定の塗装材を塗布して補強層を形成するものであり、特定の塗装材を用いているため、塗布する際の可使時間が長くなり、作業性が向上するという効果を奏する。また、弾性樹脂層と特定の補強層とが積層されてなる被膜よりなるため、弾性樹脂層による柔軟性と補強層による強靱性を具えており、コンクリート片の剥落をより防止しうるという効果を奏する。
【実施例
【0022】
[原料の準備]
(1)プライマー
プライマーとして、以下の三種を準備した。
(1a)コニシ株式会社製「ボンド VMプライマー」(1液型エポキシ樹脂)
(1b)コニシ株式会社製「ボンド シールプライマー♯9」(1液型ウレタン樹脂)
(1c)コニシ株式会社製「ボンド E810L」(2液型エポキシ樹脂)
【0023】
(2)弾性樹脂
弾性樹脂として、以下の二種を準備した。
(2a)コニシ株式会社製「ボンド AUクイック」(1液型ウレタン樹脂)
(2b)コニシ株式会社製「ボンド 変成シリコンコーク グレー」(1液型変成シリコーン樹脂)
【0024】
(3)イソシアヌレート化合物
イソシアヌレート化合物として、以下の三種と、本発明では用いられないイソシアヌレート化合物の一種を準備した。
(3a)住化コベストロウレタン株式会社製「デスモジュール Z4470 BA」(イソホロンジイソシアネートの三量体)
(3b)住化コベストロウレタン株式会社製「スミジュールN3300」(ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体)
(3c)三井化学株式会社製「スタビオD-370N」(1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの三量体)
(3d)三井化学株式会社製「タケネートD-204」(トルエンジイソシアネートの三量体;本発明では用いられいないイソシアヌレート化合物)
【0025】
(4)イソシアネートプレポリマー
イソシアネートプレポリマーとして、以下の二種と、本発明では用いられないイソシアネートプレポリマーの一種を準備した。
(4a)三井化学SKCポリウレタン株式会社製「アクトコールD1000」(分子量1000のポリプロピレングリコール)30質量部と、三井化学SKCポリウレタン株式会社製「アクトコールT3000D」(分子量3000のポリプロピレングリコール)70質量部と、イソホロンジイソシアネート36質量部とを均一に混合し、触媒である日東化成株式会社製「ネオスタン U-830」(ジオクチル錫)0.003質量部の存在下、80℃で2時間反応させて得られたイソシアネートプレポリマー
(4b)イソホロンジイソシアネート36質量部をヘキサメチレンジイソシアネート26質量部に変更した他は、上記(4a)と同一の条件で得られたイソシアネートプレポリマー
(4c)イソホロンジイソシアネート36質量部をモノメリックMDI(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)42質量部に変更し、かつ、無触媒下とした他は、上記(4a)と同一の条件で得られたイソシアネートプレポリマー(本発明では用いられないイソシアネートプレポリマー)
【0026】
(5)ジアミン化合物
ジアミン化合物として、以下の二種と、本発明でも用いられないジアミン化合物の一種を準備した。
(5a)アルベマール社製「エタキュア300」(ジメチルチオトルエンジアミン)
(5b)アルベマール社製「エタキュア100」(ジエチルトルエンジアミン)
(5c)エボニック社製「バーサリンクP1000」(ポリテトラメチレンオキシドジ-p-アミノ安息香酸エステル)(本発明では用いられいないジアミン化合物)
【0027】
(6)炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製「「NS#100」)
(7)疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製「アエロジルRY200S」)
【0028】
実施例1
コンクリート躯体表面に、プライマー(1a)を0.1kg/m2塗布し、プライマー層を形成した。プライマー層の上に、弾性樹脂(2a)を0.5kg/m2塗布し、弾性層を形成した。弾性層を形成した後、イソシアヌレート化合物(3a)32質量部、イソシアネートプレポリマー(4a)100質量部、ジアミン化合物(5a)23質量部、炭酸カルシウム(6)40質量部及び疎水性シリカ(7)10質量部を均一に混合して塗装材を調製した。この塗装材を弾性層の上に、1.0kg/m2塗布し、コンクリート躯体表面に被膜を設けて、剥落防止工法の施工を行った。
【0029】
実施例2
プライマー(1a)に代えて、プライマー(1b)を使用した他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。
【0030】
実施例3
プライマー(1a)に代えて、プライマー(1c)を使用した他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。
【0031】
実施例4
弾性樹脂(2a)に代えて、弾性樹脂(2b)を使用した他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。
【0032】
実施例5
実施例1で用いた塗装材に代えて、以下の塗装材を用いた他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。すなわち、この塗装材は、イソシアヌレート化合物(3b)17質量部、イソシアネートプレポリマー(4a)100質量部、ジアミン化合物(5a)21質量部、炭酸カルシウム(6)36質量部及び疎水性シリカ(7)9質量部を均一に混合して調製されたものである。
【0033】
実施例6
実施例1で用いた塗装材に代えて、以下の塗装材を用いた他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。すなわち、この塗装材は、イソシアヌレート化合物(3c)15質量部、イソシアネートプレポリマー(4a)100質量部、ジアミン化合物(5a)20質量部、炭酸カルシウム(6)35質量部及び疎水性シリカ(7)9質量部を均一に混合して調製されたものである。
【0034】
実施例7
実施例1で用いた塗装材に代えて、以下の塗装材を用いた他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。すなわち、この塗装材は、イソシアヌレート化合物(3a)32質量部、イソシアネートプレポリマー(4b)100質量部、ジアミン化合物(5a)26質量部、炭酸カルシウム(6)40質量部及び疎水性シリカ(7)10質量部を均一に混合して調製されたものである。
【0035】
実施例8
実施例1で用いた塗装材に代えて、以下の塗装材を用いた他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。すなわち、この塗装材は、イソシアヌレート化合物(3a)32質量部、イソシアネートプレポリマー(4a)100質量部、ジアミン化合物(5b)22質量部、炭酸カルシウム(6)40質量部及び疎水性シリカ(7)10質量部を均一に混合して調製されたものである。
【0036】
比較例1
弾性樹脂を塗布しない他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。
【0037】
比較例2
実施例1で用いた塗装材に代えて、以下の塗装材を用いた他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。すなわち、この塗装材は、イソシアヌレート化合物(3d)51質量部、イソシアネートプレポリマー(4a)100質量部、ジアミン化合物(5a)26質量部、炭酸カルシウム(6)46質量部及び疎水性シリカ(7)11質量部を均一に混合して調製されたものである。
【0038】
比較例3
実施例1で用いた塗装材に代えて、以下の塗装材を用いた他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。すなわち、この塗装材は、イソシアヌレート化合物(3a)32質量部、イソシアネートプレポリマー(4c)100質量部、ジアミン化合物(5a)26質量部、炭酸カルシウム(6)40質量部及び疎水性シリカ(7)10質量部を均一に混合して調製されたものである。
【0039】
比較例4
実施例1で用いた塗装材に代えて、以下の塗装材を用いた他は、実施例1と同一の方法で剥落防止工法の施工を行った。すなわち、この塗装材は、イソシアヌレート化合物(3a)32質量部、イソシアネートプレポリマー(4a)100質量部、ジアミン化合物(5c)146質量部、炭酸カルシウム(6)40質量部及び疎水性シリカ(7)10質量部を均一に混合して調製されたものである。
【0040】
[可使時間の測定]
実施例1~8及び比較例1~4で調製した塗装材の可使時間を以下の方法で測定した。すなわち、調製した塗装材を23℃の環境下で1分間混合し、B型粘度形で初期粘度を測定した。その後、継続して粘度を測定し、初期粘度の1.5倍に到達するまでの時間を測った。実施例1~7及び比較例1で用いた塗装材は、30分以上経過しても初期粘度の1.5倍に到達しなかった。また、実施例8で用いた塗装材は、5~30分で初期粘度の1.5倍に到達した。比較例2及び3で用いた塗装材は、5分未満で初期粘度の1.5倍に到達した。さらに、比較例4で用いた塗装材は、粘度が上らずに翌日以降も硬化しなかった。この結果から明らかなように、比較例2の塗装材は、芳香族炭化水素基を持つイソシアヌレート化合物を用いているため、及び比較例3の塗装材は、芳香族炭化水素基を持つイソシアネートプレポリマーを用いているため、可使時間を延ばすことができなかった。また、比較例4の塗装材は、長鎖の炭化水素基を持つジアミン化合物を用いているため、硬化時間が長過ぎて、使用できないものであった。
【0041】
[押抜き強さの測定]
実施例1~8及び比較例1~4の剥落防止工法を、コンクリート躯体に適用せずにJSCE-K 533に記載された供試体に適用した。そして、JSCE-K 533に記載の方法で、50℃の環境下にて、供試体に形成された被膜に対して押抜き試験を行い、荷重-変位曲線を得た。そして、変位が10mm以上における最大荷重を求め、これを押抜き強さとした。実施例1及び3の剥落防止工法で得られた被膜の押抜き強さは2.0kN以上であり、実施例2及び4~8の剥落防止工法で得られた被膜の押抜き強さは1.5~2.0kNであり、比較例1の剥落防止工法で得られた被膜の押抜き強さは1.5kN未満であった。比較例1の剥落防止工法で得られた被膜は、弾性樹脂層を含んでいないため、変位による応力を分散しにくく、十分な押抜き強さを持つものが得られなかった。