(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物、光導波路用感光性フィルム、光導波路、および、光電気混載基板
(51)【国際特許分類】
C08G 59/24 20060101AFI20221109BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20221109BHJP
C08G 59/38 20060101ALI20221109BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20221109BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221109BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08G59/24
G02B6/12 371
C08G59/38
C08G59/68
H05K1/03 610L
H05K1/02 T
(21)【出願番号】P 2018231451
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一聡
(72)【発明者】
【氏名】大田 真也
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084440(JP,A)
【文献】特開2015-091910(JP,A)
【文献】特開2010-230944(JP,A)
【文献】特開2010-034207(JP,A)
【文献】特開2009-029842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
G02B 6/12
H05K 1/03
H05K 1/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布して、フォト加工によってパターニングして光導波路を形成するための光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物であって、
下記式(1)で表される水素添加型脂環式エポキシ樹脂を含有することを特徴とする、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物。
【化1】
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を示す。R2は、-CH
2-、-C(CH
3)H-、-C(CH
3)
2-および-SO
2-からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を示す。Aは、炭素数4以上の分岐アルキル基を置換基として2つ以上有するアリーレン基を示す。Bは、下記式(2)で示される2価の基、または、エーテル結合を示す。nは、正数を示す。)
【化2】
(式中、R3は、置換基を有してもよいアルキレン基を示す。pは、1または2である。mは、0または1である。)
【請求項2】
前記水素添加型脂環式エポキシ樹脂が、下記式(3)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物。
【化3】
(式中、nは、正数を示す。)
【請求項3】
3つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂、および、光カチオン重合開始剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物。
【請求項4】
前記光導波路に含まれるクラッドを形成するために用いられることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物。
【請求項5】
前記光導波路に含まれるコアを形成するために用いられることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板に塗布してなることを特徴とする、光導波路用感光性フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の光導波路用感光性フィルムの硬化体であることを特徴とする、光導波路。
【請求項8】
電気回路基板と、
請求項7に記載される光導波路とを備えることを特徴とする、光電気混載基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物、光導波路用感光性フィルム、光導波路、および、光電気混載基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光導波路は、各種光学用途に用いられることが知られている。
【0003】
例えば、ガラス板などの基板の表面にエポキシ樹脂組成物を塗布し、その後、フォト加工して、パターンを形成して得られる光導波路が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
また、電気回路が形成された基板(電気回路基板)の表面にエポキシ樹脂組成物を塗布し、その後、フォト加工して、パターンを形成して得られる光導波路が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-9150号公報
【文献】特開2018-100357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、光導波路は、用途および目的によって、基板との優れた密着性が要求される。特許文献1および2では、エポキシ樹脂にシランカップリング剤を添加する処方も開示されている。しかし、この処方では、上記要求を十分に満足できないという不具合がある。
【0007】
本発明は、基板に対する密着性に優れる光導波路と、それを作製するための光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物および光導波路用感光性フィルムと、光導波路を備える光電気混載基板とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、基板に塗布して、フォト加工によってパターニングして光導波路を形成するための光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物であって、下記式(1)で表される水素添加型脂環式エポキシ樹脂を含有する、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を含む。
【0009】
【0010】
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を示す。R2は、-CH2-、-C(CH3)H-、-C(CH3)2-および-SO2-からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を示す。Aは、炭素数4以上の分岐アルキル基を置換基として2つ以上有するアリーレン基を示す。Bは、下記式(2)で示される2価の基、または、エーテル結合を示す。nは、正数を示す。)
【0011】
【0012】
(式中、R3は、置換基を有してもよいアルキレン基を示す。pは、1または2である。mは、0または1である。)
本発明[2]は、前記水素添加型脂環式エポキシ樹脂が、下記式(3)で表される、[1]に記載の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を含む。
【0013】
【0014】
(式中、nは、正数を示す。)
本発明[3]は、3つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂、および、光カチオン重合開始剤をさらに含有する、[1]または[2]に記載の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を含む。
【0015】
本発明[4]は、前記光導波路に含まれるクラッドを形成するために用いられる、[1]~[3]のいずれか一項に記載の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を含む。
【0016】
本発明[5]は、前記光導波路に含まれるコアを形成するために用いられる、[1]~[4]のいずれか一項に記載の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を含む。
【0017】
本発明[6]は、[1]~[5]のいずれか一項に記載の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板に塗布してなる、光導波路用感光性フィルムを含む。
【0018】
本発明[7]は、[6]に記載の光導波路用感光性フィルムの硬化体である、光導波路を含む。
【0019】
本発明[8]は、電気回路基板と、[7]に記載される光導波路とを備える、光電気混載基板を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板に塗布してなる本発明の光導波路用感光性フィルムの硬化体である本発明の光導波路は、基板に対する密着性に優れる。そのため、本発明の光導波路は、信頼性に優れる。
【0021】
従って、本発明の光電気混載基板は、上記した光導波路を備えるので、信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1A~
図1Dは、本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物から光導波路を形成する第1態様であり、
図1Aが、基板を準備する工程、
図1Bが、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板に塗布してアンダークラッド用感光性フィルムを形成して露光する工程、
図1Cが、アンダークラッド用感光性フィルムを現像して、アンダークラッドを形成する工程、
図1Dが、コアおよびオーバークラッドを形成して、光導波路を形成する工程を示す。
【
図2】
図2A~
図2Dは、本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物から光導波路を形成する第2態様であり、
図2Aが、基板にアンダークラッドおよびコアを形成する工程、
図2Bが、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板、アンダークラッドおよびコアに塗布してオーバークラッド用感光性フィルムを形成し、これを露光する工程、
図2Cが、続いて、オーバークラッド用感光性フィルムを現像して、オーバークラッドを形成して、光導波路を形成する工程を示す。
【
図3】
図3A~
図3Dは、本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物から光導波路を形成する第3態様であり、
図3Aが、基板にアンダークラッドを形成する工程、
図3Bが、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板およびアンダークラッドに塗布してコア用感光性フィルムを形成し、これを露光する工程、
図3Cが、コア用感光性フィルムを現像して、コアを形成する工程、
図3Dが、オーバークラッドを形成して、光導波路を形成する工程を示す。
【
図4】
図4は、本発明の光電気混載基板の一実施形態の平面図を示す。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、本発明の光電気混載基板の一実施形態およびその製造方法を説明する正断面図であり、
図6Aが、
図4のB-B線に沿う光電気混載基板、
図6Bが、
図6Aに示す光電気混載基板の製造方法を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物>
本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物は、基板に塗布して、フォト加工によってパターニングして光導波路を形成するための光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物である。
【0024】
この光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物は、下記式(1)で表される水素添加型脂環式エポキシ樹脂を含有する。
【0025】
【0026】
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を示す。R2は、-CH2-、-C(CH3)H-、-C(CH3)2-および-SO2-からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を示す。Aは、炭素数4以上の分岐アルキル基を置換基として2つ以上有するアリーレン基を示す。Bは、下記式(2)で示される2価の基、または、エーテル結合を示す。nは、正数を示す。)
【0027】
【0028】
(式中、R3は、置換基を有してもよいアルキレン基を示す。pは、1または2である。mは、0または1である。)
水素添加型脂環式エポキシ樹脂は、光導波路の基板に対する優れた密着性を担保する密着性成分であって、コアおよび/またはクラッドの主構成成分(材料)である。
【0029】
R1は、互いに同一または相違してもよい。R1として、好ましくは、水素原子が挙げられる。
【0030】
式(1)中、下記式(4)で示される構造は、水素添加型脂環式エポキシ樹脂における柔軟な部分であって、光導波路用感光性フィルムの弾性率を低下させて柔軟性を付与し、それによって、光導波路用感光性フィルムの基板への密着性の向上に寄与する。
【0031】
【0032】
R2として、好ましくは、-CH2-、-C(CH3)2-が挙げられ、より好ましくは、-C(CH3)2-が挙げられる。
【0033】
式(1)中、Aで表されるアリーレン基は、水素添加型脂環式エポキシ樹脂における剛直な部分であって、光導波路用感光性フィルムの高いガラス転移温度を確保し、それによって、光導波路用感光性フィルムの形状(形態)維持性を発現させる。
【0034】
Aで示されるアリーレン基は、互いに同一または相違してもよい。Aで示されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン、ナフチレンなどの炭素数6以上、12以下の炭素環式アリーレン基が挙げられ、好ましくは、フェニレンが挙げられる。
【0035】
Aで示されるアリーレン基に置換する炭素数4以上の分岐アルキル基として、例えば、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどの分岐ブチル、例えば、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチルなどの分岐ペンチル、例えば、tert-ヘキシルなどの分岐ヘキシル、例えば、tert-ヘプチルなどの分岐ヘプチル、例えば、tert-オクチルなどの分岐オクチルなどの炭素数4以上、炭素数8以下の分岐アルキル基が挙げられる。
【0036】
炭素数4以上の分岐アルキル基として、好ましくは、分岐ブチルが挙げられる。また、炭素数4以上の分岐アルキル基として、好ましくは、tert-アルキル基が挙げられる。
【0037】
炭素数4以上の分岐アルキル基として、より好ましくは、tert-ブチルが挙げられる。
【0038】
分岐アルキル基の置換数(置換基としての分岐アルキル基の数)は、1つまたは複数であってもよく、複数である場合には、互いに同一または相違してもよい。好ましくは、2つである。
【0039】
具体的には、Aとして、好ましくは、2,5-ジ(tert-ブチル)フェニレンが挙げられる。
【0040】
Bは、互いに同一または相違してもよい。Bとしては、好ましくは、上記式(2)で示される2価の基が挙げられる。
【0041】
式(2)中、R3で示されるアルキレン基としては、例えば、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、iso-プロピレン、ブチレン、iso-ブチレン、sec-ブチレン、ペンチレン、iso-ペンチレン、sec-ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレンなどの炭素数1以上8以下のアルキレン基が挙げられる。好ましくは、炭素数2以上6以下のアルキレン基、より好ましくは、炭素数3以上5以下のアルキレン基、さらに好ましくは、ブチレンが挙げられる。
【0042】
アルキレン基に置換してもよい置換基としては、例えば、アルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなどの炭素数1以上3以下のアルキル基、より好ましくは、メチルが挙げられる。
【0043】
置換基(置換数)は、1つまたは複数であり、好ましくは、1つである。
【0044】
式(2)中、mが0の場合には、pが2であり、mが1の場合には、pが1である。また、2つのpは、互いに同一である。
【0045】
好ましくは、mが1であり、pが1である。
【0046】
式(1)中、nは、好ましくは、1以上、2以下であり、とりわけ好ましくは、1である。
【0047】
具体的には、水素添加型脂環式エポキシ樹脂としては、好ましくは、下記式(5)で表され、より好ましくは、下記式(6)で表される。
【0048】
【0049】
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を示す。R2は、-CH2-、-C(CH3)H-、-C(CH3)2-および-SO2-からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を示す。R4は、炭素数4以上の分岐アルキル基を示す。R3は、置換基を有してもよいアルキレン基を示す。nは、正数である。)
【0050】
【0051】
(R2は、-CH2-、-C(CH3)H-、-C(CH3)2-および-SO2-からなる群から選択される少なくとも1つの2価の基を示す。R4は、炭素数4以上の分岐アルキル基を示す。R5は、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。nは、正数である。)
上記した式(5)および(6)中、R1、R2およびnは、上記した式(1)で説明したものと同様である。R4で示される炭素数4以上の分岐アルキル基は、上記した式(1)中のAで説明したものと同様である。R3は、式(2)で説明したものと同様である。R5は、R3で説明した置換基と同様である。
【0052】
さらに好ましくは、水素添加型脂環式エポキシ樹脂は、下記式(3)で示される。
【0053】
【0054】
(式中、nは、正数を示す。)
水素添加型脂環式エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、300g/eq以上、好ましくは、500g/eq以上、また、例えば、1000g/eq以下、好ましくは、700g/eq以下である。
【0055】
また、水素添加型脂環式エポキシ樹脂の性状は、特に限定されず、例えば、固形状、半固形状および液状のいずれであってもよい。好ましくは、固形状である。
【0056】
なお、上記した「固形状」、「半固形状」および「液状」は、常温、つまり、25℃における性状を意味する。
【0057】
光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物の固形分(後述する有機溶媒を除くものであり、光導波路用感光性フィルム(フィルム)において樹脂を構成する主成分)における水素添加型脂環式エポキシ樹脂の含有割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、15質量%以上である。水素添加型脂環式エポキシ樹脂の含有割合が上記した下限以上であれば、光導波路の基板に対する密着性を向上させることができる。
【0058】
また、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物の固形分における水素添加型脂環式エポキシ樹脂の含有割合は、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。水素添加型脂環式エポキシ樹脂の含有割合が上記した上限以下であれば、その他のエポキシ樹脂を十分な含有割合で含有することができ、光導波路に好適な機能を付与することができる。例えば、その他のエポキシ樹脂として多官能エポキシ樹脂(後述)を光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物が含有すれば、高パターニング性を光導波路に付与でき、その他のエポキシ樹脂として2官能エポキシ樹脂(後述)を光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物が含有すれば柔軟性を光導波路に付与できる。
【0059】
この光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物は、3つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂、および、光カチオン重合開始剤をさらに含有することができる。
【0060】
3つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂は、水素添加型脂環式エポキシ樹脂と架橋する架橋性成分であって、光導波路を硬化物として形成するために光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物に好適に配合される。
【0061】
多官能エポキシ樹脂としては、例えば、芳香族ポリグリシジルエーテル(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含む)、脂環族ポリグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルエーテルなどのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。好ましくは、芳香族ポリグリシジルエーテル、脂環族ポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0062】
芳香族ポリグリシジルエーテルとして、例えば、芳香族トリグリシジルエーテルなどが挙げられる。具体的には、芳香族トリグリシジルエーテルとしては、例えば、下記式(7)で示される3官能エポキシ樹脂(例えば、商品名:TECHMORE VG3101L、プリンテック社製)などが挙げられる。
【0063】
【0064】
脂環族ポリグリシジルエーテルとしては、例えば、下記の一般式(8)で表される多官能エポキシ樹脂(例えば、商品名:EHPE3150、ダイセル社製)が挙げられる。
【0065】
【0066】
なお、一般式(8)で表される脂環族トリグリシジルエーテルとして、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサンの付加物が例示される。
【0067】
多官能エポキシ樹脂の性状は、特に限定されず、例えば、固形状、半固形状および液状のいずれであってもよい。多官能エポキシ樹脂の性状として、好ましくは、固形状である。多官能エポキシ樹脂が固形状であれば、その軟化点が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、また、例えば、110℃以下、好ましくは、100℃以下である。
【0068】
多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、100g/eq以上、好ましくは、150g/eqであり、また、例えば、500g/eq以下、好ましくは、250g/eq以下である。
【0069】
これら多官能エポキシ樹脂は、単独使用または併用することができる。
【0070】
光導波路用エポキシ樹脂組成物の固形分における多官能エポキシ樹脂の含有割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。また、多官能エポキシ樹脂の含有割合は、水素添加型脂環式エポキシ樹脂100質量部の固形分に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下である。
【0071】
光カチオン重合開始剤は、光照射により酸を発生する光酸発生剤であって、光照射(例えば、紫外線照射)により光導波路用感光性フィルム(後述)を硬化させる。つまり、光カチオン重合開始剤は、光導波路用感光性フィルムをフォト加工によってパターニングして光導波路を形成するために光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物に好適に配合される。
【0072】
光カチオン重合開始剤として、例えば、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-クロロフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのヘキサフルオロアンチモン系スルホニウム塩、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-クロロフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe-ヘキサフルオロホスフェートなどのヘキサフルオロリン酸系スルホニウム塩などが挙げられる。光カチオン重合開始剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0073】
光カチオン重合開始剤として、好ましくは、ヘキサフルオロアンチモン系スルホニウム塩が挙げられ、より好ましくは、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。
【0074】
光カチオン重合開始剤の含有割合は、水素添加型脂環式エポキシ樹脂および多官能エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.25質量部以上、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0075】
但し、本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物は、加熱によって水素添加型脂環式エポキシ樹脂(および多官能エポキシ樹脂)のエポキシ基に作用して硬化反応を促進するような酸無水物化合物やイミダゾール化合物などの加熱型エポキシ硬化剤を、光カチオン重合開始剤に代えて含有することが不適である。このような加熱型エポキシ硬化剤は、フォト加工によって所望の(光導波路に適した精細な)パターニングをすることができない。例えば、光導波路用エポキシ樹脂組成物の塗布後の乾燥加熱などにより、意図せず、硬化が進行してしまったり、あるいは、フォト加工で硬化が進行せず、その後の露光後加熱によって、光導波路用フィルムにおける露光部分および未露光部分の両方の硬化が進行する。従って、光導波路用フィルムが、感光性を有することができない。つまり、加熱型エポキシ硬化剤を含有する光導波路用エポキシ樹脂組成物は、フォト加工可能な感光性組成物ではなく、本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物ではない。
【0076】
なお、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物は、水素添加型脂環式エポキシ樹脂および多官能エポキシ樹脂以外の、他のエポキシ樹脂をさらに含有することもできる。
【0077】
他のエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ基を2つ含有する2官能エポキシ樹脂が挙げられる。
【0078】
2官能エポキシ樹脂は、上記した水素添加型脂環式エポキシ樹以外の2官能エポキシ樹脂であって、例えば、光導波路に可撓性を付与する可撓性成分である。
【0079】
そのような2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂が挙げられ、好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。また、2官能エポキシ樹脂としては、例えば、YX-7180BH40(三菱ケミカル社製)、jER1002(三菱ケミカル社製)で例示される固形状のエポキシ樹脂(好ましくは、固形状のビスフェノール型エポキシ樹脂)、例えば、jER-1002(三菱ケミカル社製)、EXA4816(DIC社製)で例示される液状のエポキシ樹脂(好ましくは、液状のビスフェノール型エポキシ樹脂)が挙げられる。なお、2官能エポキシ樹脂として、例えば、フルオレン型エポキシ樹脂、好ましくは、液状のフルオレン型エポキシ樹脂を例示することもできる。フルオレン型エポキシ樹脂は、光導波路(具体的には、コア(後述))の屈折率を高めるために光導波路用エポキシ樹脂組成物に配合される。
【0080】
これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0081】
また、2官能エポキシ樹脂としては、好ましくは、半固形状または固形状のエポキシ樹脂が挙げられる。半固形状または固形状のエポキシ樹脂であれば、多官能エポキシ樹脂が液状である場合には、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を塗布して形成される光導波路用感光性フィルムの形状保持性を担保することができる。
【0082】
2官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、100g/eq以上、1000g/eq以下である。
【0083】
光導波路用エポキシ樹脂組成物の固形分における2官能エポキシ樹脂の含有割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。また、2官能エポキシ樹脂の含有割合は、水素添加型脂環式エポキシ樹脂および多官能エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0084】
なお、この光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物は、必要に応じて、さらに有機溶媒や酸化防止剤、その他の添加剤などを含有することができる。
【0085】
光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物が有機溶媒を含有すれば、光導波路用感光性フィルム形成用ワニス(以下、ワニスとする。)として調製できる。
【0086】
有機溶媒として、例えば、エステル化合物(例えば、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルアセテートなど)、ケトン化合物(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ブタノンなど)、エーテル化合物(例えば、ジグライム、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチルフラン、ジメトキシエタンなど)などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。なお、有機溶媒としては、上記したエポキシ樹脂(具体的には、2官能エポキシ樹脂)に予め配合されたものも含まれる。有機溶媒として、好ましくは、エステル化合物、ケトン化合物が挙げられる。有機溶媒の含有割合は、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物に対して、例えば、10質量%以上、例えば、50質量%以下である。
【0087】
酸化防止剤として、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤などが挙げられる。添加剤としては、例えば、レベリング剤、消泡剤などが挙げられる。酸化防止剤および添加剤の割合は、適宜設定される。
【0088】
光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を調製するには、上記した各成分を配合して混合する。その際、必要により、例えば、40℃以上、好ましくは、80℃以上、また、例えば、120℃以下に加熱することができる。光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物が有機溶媒を含有する場合には、ワニスとして調製する。
【0089】
この光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物(好ましくは、ワニス)から調製される光導波路は、クラッド、および/または、コアを含む。また、クラッドは、アンダークラッドおよびオーバークラッドを含む。
【0090】
例えば、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板に塗布してなる光導波路用感光性フィルムを作製し、その硬化物である光導波路を得ることができる。
【0091】
より具体的には、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板に塗布してなるアンダークラッド用感光性フィルムを作製し、その硬化物であるアンダークラッドを作製することができる(後述する第1態様)。
【0092】
光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板に塗布してなるオーバークラッド用感光性フィルムを作製し、その硬化物であるオーバークラッドを作製することができる(後述する第2態様)。
【0093】
光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板に塗布してなるコア用感光性フィルムを作製し、その硬化物であるコアを作製することができる(後述する第3態様)。
【0094】
<第1態様>
次に、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物によってアンダークラッド用感光性フィルムおよびアンダークラッドを順に調製し、続いて、光導波路を形成する第1態様を、
図1A~
図1Dを参照して、説明する。
【0095】
【0096】
基板10は、平板形状(シート形状またはフィルム形状)を有し、具体的には、所定の厚みを有し、厚み方向に直交する方向(面方向)に延び、平坦な一方面15および他方面を有する。
【0097】
基板10の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、例えば、ポリイミドなどのポリマーが挙げられる。また、基板10の材料として、例えば、ステンレス、鉄、銅などの金属、例えば、ガラスなども挙げられる。基板10の厚みは、特に限定されず、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、10000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
【0098】
図1Bに示すように、続いて、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物(好ましくは、ワニス)を、基板10の一方面15の全面に、公知の塗布装置(アプリケーターなど)を用いて塗布する。
【0099】
続いて、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物がワニスであれば、加熱乾燥により、有機溶媒を除去する。加熱温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上であり、また、例えば、150℃以下である。加熱時間は、例えば、1分間以上であり、また、例えば、60分間以下である。
【0100】
これにより、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物から光導波路用感光性フィルムの一例としてのアンダークラッド用感光性フィルム12を、基板10の一方面15に形成(作製)する。
【0101】
アンダークラッド用感光性フィルム12は、光導波路1(後述)における光の伝送方向(
図1A~
図1Dにおける紙面奥行き方向)に沿って延びるフィルム形状を有し、厚み方向に対向する平坦な一方面および平坦な他方面(2つの主面)を有する。なお、このアンダークラッド用感光性フィルム12は、フォト加工によって、アンダークラッド2(
図1C参照)をするための感光性フィルムであって、アンダークラッド2の前駆体フィルムである。
【0102】
図1Bの仮想線および矢印で示すように、その後、フォトマスク25を介して、アンダークラッド用感光性フィルム12に紫外線を照射する。
【0103】
フォトマスク25は、アンダークラッド2に対応する透過部26と、紫外線を遮ることができる遮光部27とを有するパターンを有する。
【0104】
紫外線を上記したフォトマスク25を介してアンダークラッド用感光性フィルム12に照射することによって、紫外線は、透過部26を透過して、アンダークラッド用感光性フィルム12においてアンダークラッド2に対応する部分が露光(感光)される。
【0105】
紫外線の照射量は、例えば、10mJ/cm2以上、好ましくは、100mJ/cm2以上、例えば、20000mJ/cm2以下、好ましくは、10000mJ/cm2以下である。
【0106】
その後、必要により、露光後加熱を実施する。露光後加熱の温度は、例えば、70℃以上、好ましくは、90℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、150℃以下である。露光後加熱の時間は、例えば、10秒以上、好ましくは、5分以上、例えば、2時間以下、好ましくは、1時間以下である。
【0107】
これにより、アンダークラッド用感光性フィルム12における上記した部分が硬化(完全硬化)して、アンダークラッド2の潜像24(仮想線)が形成される。なお、アンダークラッド用感光性フィルム12における未露光部分、つまり、アンダークラッド用感光性フィルム12において遮光部27に対向する部分では、硬化が進行しない。
【0108】
図1Cに示すように、その後、現像によって、アンダークラッド用感光性フィルム12における未露光部分を除去する。これによって、アンダークラッド用感光性フィルム12をパターニングして、その硬化体であるアンダークラッド2を、基板10の一方面15に形成する。
【0109】
アンダークラッド2の屈折率は、例えば、1.560以下、好ましくは、1.554以下である。アンダークラッド2の厚みは、例えば、20μm以上であり、また、例えば、4000μm以下である。
【0110】
図1Dに示すように、その後、公知の方法によって、コア3およびオーバークラッド4を、アンダークラッド2の一方面に形成する。コア3は、アンダークラッド2の一方面において、所定のパターンに形成されている。コア3の屈折率は、アンダークラッド3の屈折率およびオーバークラッド4の屈折率(後述)よりも大きい。具体的には、コア3の屈折率は、例えば、1.575以上、好ましくは、1.580以上である。コア3の厚みは、例えば、10μm以上、2000μm以下である。
【0111】
オーバークラッド4は、アンダークラッド2の一方面において、コア3の側面(光の伝送方向および厚み方向に直交する幅方向において対向する両側面)、および、一方面を被覆するように、配置されている。オーバークラッド4の屈折率は、コア3の屈折率より低く、好ましくは、アンダークラッド2の屈折率と同様である。オーバークラッド4の厚みは、アンダークラッド2の厚みと同様である。
【0112】
コア3およびオーバークラッド4の材料としては、例えば、公知の光導波路用(感光性)材料が挙げられる。
【0113】
これにより、アンダークラッド2、コア3およびオーバークラッド4を備え、アンダークラッド2が基板10の一方面15に接触する光導波路1を製造する。なお、この光導波路1は、ストリップ型光導波路である。光導波路1の厚みは、例えば、40μm以上であり、また、例えば、8000μm以下である。
【0114】
そして、この光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板10に塗布してなるアンダークラッド用感光性フィルム12(光導波路用感光性フィルムの一例)の硬化体であるアンダークラッド2(光導波路の一例)は、基板10に対する密着性に優れる。
【0115】
そのため、このアンダークラッド2を備える光導波路1は、信頼性に優れる。
【0116】
(第1態様の変形例)
第1態様の変形例では、コア3および/またはオーバークラッド4の材料が、本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物であってもよい。変形例では、第1態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0117】
<第2態様>
第2態様において、第1態様およびその変形例と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第2態様は、特記する以外、第1態様およびその変形例と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1態様、第2態様およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0118】
次に、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物によってオーバークラッド用感光性フィルムおよびオーバークラッドを順に調製し、続いて、光導波路を形成する第2態様を、
図2A~
図2Cを参照して説明する。
【0119】
図2Aに示すように、まず、基板10を準備し、続いて、公知の光導波路用(感光性)材料から、公知の方法によってアンダークラッド2およびコア3を順に形成する。
【0120】
図2Bに示すように、次いで、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物(好ましくは、ワニス)を、基板10の一方面15と、アンダークラッド2の側面および一方面と、コア3の側面および一方面とに塗布する。
【0121】
続いて、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物がワニスであれば、加熱乾燥により、有機溶媒を除去する。
【0122】
これにより、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物から光導波路用感光性フィルムの一例としてのオーバークラッド用感光性フィルム14を、基板10の一方面15と、アンダークラッド2の側面および一方面と、コア3の側面および一方面と、に形成(作製)する。
【0123】
オーバークラッド用感光性フィルム14は、光導波路1における光の伝送方向(
図2A~
図2Cの紙面奥行き方向)に沿って延びるフィルム形状を有し、厚み方向に対向する平坦な一方面および他方面(2つの主面)を有する。なお、このオーバークラッド用感光性フィルム14は、フォト加工によって、オーバークラッド4を形成するための感光性フィルムであって、オーバークラッド4の前駆体フィルムである。オーバークラッド用感光性フィルム14の他方面の幅方向両端部は、光透過性基材フィルム1においてアンダークラッド2から露出する一方面15に接触している。
【0124】
次に、
図2Bの仮想線および矢印で示すように、フォトマスク25を介して、オーバークラッド用感光性フィルム14に紫外線を照射する。透過部26は、オーバークラッド4(
図2C参照)に対応するパターンを有する。
【0125】
紫外線を上記したフォトマスク25を介してオーバークラッド用感光性フィルム14に照射することによって、紫外線は、透過部26を透過して、オーバークラッド用感光性フィルム14においてオーバークラッド4に対応する部分が露光(感光)される。
【0126】
これにより、オーバークラッド用感光性フィルム14における上記した部分が硬化して、オーバークラッド4の潜像24(仮想線)が形成される。その後、露光後加熱を実施して、オーバークラッド用感光性フィルム14における上記した部分を硬化(完全硬化)させる。
【0127】
図2Cに示すように、その後、現像によって、未露光部分(オーバークラッド4の周囲の部分)を除去する。これにより、オーバークラッド用感光性フィルム14をパターニングして、その硬化体であるオーバークラッド4を、基板10の一方面15と、アンダークラッド2の側面および一方面と、コア3の側面および一方面と、に形成する。
【0128】
これによって、アンダークラッド2、コア3およびオーバークラッド4を備え、オーバークラッド4の幅方向両端部が基板10の一方面15に接触する光導波路1を製造する。
【0129】
そして、この光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板10に塗布してなるオーバークラッド用感光性フィルム14(光導波路用感光性フィルムの一例)の硬化体であるオーバークラッド4(光導波路の一例)は、基板10の一方面15に対する密着性に優れる。
【0130】
そのため、このオーバークラッド4を備える光導波路1は、信頼性に優れる。
【0131】
(第2態様の変形例)
第2態様の変形例では、アンダークラッド2および/またはコア3の材料が、本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物であってもよい。変形例では、第2態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0132】
好ましくは、アンダークラッド2およびオーバークラッド4の材料が、本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物である。この処方によれば、アンダークラッド2およびオーバークラッド4は、基板10の一方面15に接触しているため、これらを備える光導波路1は、信頼性により一層優れる。
【0133】
<第3態様>
第3態様において、第1態様、第2態様およびそれらの変形例と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第3態様は、特記する以外、第1態様、第2態様およびそれらの変形例と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1態様~第3態様およびそれらの変形例を適宜組み合わせることができる。
【0134】
次に、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物によってコア用感光性フィルムおよびコアを順に調製し、続いて、光導波路を形成する第3態様を、
図3A~
図3Dを参照して、説明する。
【0135】
図3Aに示すように、まず、基板10を準備し、続いて、公知の光導波路用(感光性)材料から、公知の方法によってアンダークラッド2を形成する。
【0136】
図3Bに示すように、次いで、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物(好ましくは、ワニス)を、基板10の一方面15と、アンダークラッド2の側面および一方面とに塗布する。
【0137】
続いて、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物がワニスであれば、加熱乾燥により、有機溶媒を除去する。
【0138】
これにより、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物から光導波路用感光性フィルムの一例としてのコア用感光性フィルム13を、基板10の一方面15と、アンダークラッド2の側面および一方面とに形成(作製)する。
【0139】
コア用感光性フィルム13は、光導波路1における光の伝送方向(
図3A~
図3Dにおける紙面奥行き方向)に沿って延びるフィルム形状を有し、厚み方向に対向する一方面および他方面(2つの主面)を有する。なお、このコア用感光性フィルム13は、フォト加工によって、コア3をするための感光性フィルムであって、コア3の前駆体フィルムである。コア用感光性フィルム13の他方面の一部は、光透過性基材フィルム1においてアンダークラッド2から露出する一方面15に接触している。
【0140】
次に、
図3Bの仮想線および矢印で示すように、フォトマスク25を介して、コア用感光性フィルム13に紫外線を照射する。透過部26は、コア3に対応するパターンを有する。なお、コア3は、アンダークラッド2の一方面のみに形成される第1コア31(後述)、および、オーバークラッド4の一方面および側面と基板10の一方面15とにわたって形成される第2コア32(後述)を含む。
【0141】
紫外線を上記したフォトマスク25を介してコア用感光性フィルム13に照射することによって、紫外線は、透過部26を透過して、コア用感光性フィルム13においてコア3(後述する第1コア31および第2コア32)に対応する部分が露光(感光)される。
【0142】
これにより、上記した部分における光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物が硬化して、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物の硬化体であるコア3が潜像24(仮想線)として形成される。その後、露光後加熱を実施して、コア用感光性フィルム13における上記した部分を硬化(完全硬化)させる。
【0143】
図3Cに示すように、その後、現像によって、未露光部分(オーバークラッド4の周囲の部分)を除去する。つまり、コア用感光性フィルム13からコア3をパターニングする。
【0144】
これにより、第1コア31および第2コア32を含むコア3が形成される(パターニングされる)。
【0145】
第1コア31は、幅方向におけるアンダークラッド2の中間部の一方面に形成されている。
【0146】
第2コア32は、幅方向において、第1コア31と間隔を隔てて配置されている。第2コア32は、アンダークラッド2における幅方向両端部の一方面および側面と、基板10の一方面15とに連続して形成される。第2コア32は、例えば、断面視Z字形状を有する。第2コア32の幅方向外側部分の厚み方向他方面は、基板10の一方面15に接触している。
【0147】
図3Dに示すように、その後、オーバークラッド4を、基板10の一方面15に、アンダークラッド2およびコア3を被覆するように、公知の材料から形成する。
【0148】
これにより、アンダークラッド2と、コア3(第1コア31および第2コア32)と、オーバークラッド4とを備え、第2コア32が基板10の一方面15に接触する光導波路1を製造する。
【0149】
そして、この光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を基板10に塗布してなるコア用感光性フィルム13(光導波路用感光性フィルムの一例)の硬化体であるコア3(具体的には、第2コア32)(光導波路の一例)は、基板10に対する密着性に優れる。
【0150】
そのため、このコア3は、信頼性に優れる。
【0151】
<第3態様の変形例>
第3態様の変形例では、アンダークラッド2および/またはオーバークラッド4の材料が、本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物であってもよい。変形例では、第3態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0152】
好ましくは、アンダークラッド2、コア3およびオーバークラッド4の材料が、本発明の光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物である。
【0153】
この処方によれば、アンダークラッド2、コア3およびオーバークラッド4は、基板10の一方面15に接触しているため、これらを備える光導波路1は、信頼性に格段に優れる。
【0154】
<光電気混載基板>
次に、本発明の光電気混載基板の一実施形態を、
図4~
図6Aを参照して説明する。
【0155】
図4A~
図6に示すように、光電気混載基板7は、光の伝送方向に延びる略平板形状を有する。光電気混載基板7は、基板の一例としての電気回路基板8と、光導波路1とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0156】
図5に示すように、電気回路基板8は、金属支持層9と、ベース絶縁層16と、導体層17と、カバー絶縁層18とを備え、好ましくは、それらのみからなる。
【0157】
金属支持層9は、導体層17を補強する補強層である。金属支持層9は、電気回路基板8において、伝送方向の一端部に設けられる。金属支持層9の材料として、例えば、ステンレスなどの金属が挙げられる。金属支持層9は、後述する複数(3つ)のコア3に対応する複数(3つ)の開口部19を有する。開口部19は、金属支持層9を厚み方向に貫通する。
【0158】
ベース絶縁層16は、金属支持層9と導体層17とを絶縁する絶縁層であって、電気回路基板8の厚み方向における金属支持層9と導体層17との間に位置する。具体的には、ベース絶縁層16は、金属支持層9の厚み方向他方面に配置されている。ベース絶縁層16は、電気回路基板8の全体にわたって延びている。ベース絶縁層16の外形形状は、例えば、光電気混載基板7の外形形状と同一である。ベース絶縁層16の材料として、例えば、ポリイミドなどの樹脂が挙げられる。
【0159】
導体層17は、電気(電気信号)を、外部の回路基板(図示せず)および光素子(図示せず)間を伝送する信号層である。導体層17は、ベース絶縁層16の厚み方向他方面に配置されている。導体層17は、電気回路基板8において、伝送方向の一端部に設けられる。導体層17の材料としては、例えば、銅などの導体が挙げられる。
【0160】
図4および
図5に示すように、導体層17は、第1端子20と、第2端子22と、第1端子20と第2端子22とを電気的に接続する配線21とを有するパターン形状を有する。第1端子20は、後述する複数のコア3のそれぞれに対して2つ(1対)ずつ設けられる。第2端子22は、複数の第1端子20のそれぞれに対応して複数設けられ、配線21により各第1端子20と電気的に接続されている。
【0161】
カバー絶縁層18は、配線21を被覆し、第1端子20および第2端子22を露出するように、ベース絶縁層16の厚み方向他方面に配置される。カバー絶縁層18の材料として、例えば、ポリイミドなどの樹脂が挙げられる。
【0162】
図4および
図6Aに示すように、光導波路1としては、例えば、第1態様で例示したストリップ型光導波路が挙げられ、上記したアンダークラッド2、コア3およびオーバークラッド4を備える。
【0163】
アンダークラッド2は、金属支持層9の厚み方向一方面と、ベース絶縁層16において金属支持層9から露出する厚み方向一方面とに配置されている。コア3は、幅方向に互いに間隔を隔てて複数(3つ)整列配置されている。
【0164】
なお、コア3は、ミラー面23を有する。ミラー面23は、コア3が切り欠かれて形成されており、例えば、コア3の延びる方向に対して45度の角度をなす斜面である。ミラー面23は、厚み方向に投影したときに、金属支持層9の開口部19内に位置する。
【0165】
図6Bに示すように、この光電気混載基板7を製造するには、まず、電気回路基板8を製造し、その後、電気回路基板8の厚み方向一方面に光導波路1を作製する(作り込む)。
【0166】
光導波路1を作製するには、まず、光導波路用エポキシ樹脂感光性組成物を、電気回路基板8の厚み方向一方面の全面に塗布する。これにより、アンダークラッド用感光性フィルム12(仮想線)を、電気回路基板8の厚み方向一方面に形成する。
【0167】
その後、図示しないフォトマスクを介して、アンダークラッド用感光性フィルム12を露光し、続いて、露光後加熱および現像(パターニング)することによって、上記したパターンを有するアンダークラッド12(実線)を形成する。
【0168】
図6Aに示すように、その後、公知の方法によって、コア3およびオーバークラッド4を、アンダークラッド2の一方面に形成し、
図5に示すように、その後、コア3にミラー面23を形成する。
【0169】
なお、その後、必要により、
図6Aの破線で示すように、電気回路基板8の幅方向両端部5を伝送方向に沿って除去して(切り欠いて)、光導波路1の幅方向両端縁を光電気混載基板7から露出させる。
【0170】
そして、この光電気混載基板7は、第1の態様に相当する光導波路1を備えるので、アンダークラッド2の電気回路基板8の一方面に対する密着力に優れる。
【0171】
そのため、この光電気混載基板7は、上記した電気回路基板8を備えるので、信頼性に優れる。
【0172】
<一実施形態の変形例>
上記では、第1態様に相当する光導波路1を、電気回路基板8の一方面に作製したが、例えば、第2態様または第3態様に相当する光導波路1を、電気回路基板8の一方面に作製して、光電気混載基板7を製造することもできる。この変形例は、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0173】
また、光導波路1が設けられる基板の一例として電気回路基板8を例示したが、電気回路基板8以外の基板、例えば、電気回路を有さない基板(上記した基板10)であってもよい。
【実施例】
【0174】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0175】
各実施例および各比較例の成分を以下で詳説する。
水素添加型脂環式エポキシ樹脂:式(3)で表される。固形状。エポキシ当量540g/eq。
【0176】
【0177】
(式中、nは、1である。)
VG3101L:下記式(7)で表される固形状の芳香族トリグリシジルエーテル、軟化点60℃、エポキシ当量205~215g/eq(プリンテック社製)
【0178】
【0179】
EHPE3150:下記式(8)で表される脂環族ポリグリシジルエーテル、軟化点70~90℃、エポキシ当量170~190g/eq(ダイセル社製)
【0180】
【0181】
YX7180BH40:半固形状の2官能エポキシ樹脂の40質量%シクロヘキサノンおよびメチルエチルケトン(1/1)溶液(三菱ケミカル社製)
jER-1002:固形状の2官能エポキシ樹脂(ビスフェノールA型、エポキシ当量600~700g/eq)(三菱ケミカル社製)
EXA4816:液状の2官能エポキシ樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂、軟化点78℃、エポキシ当量403g/eq)(DIC社製)
オグソールPG100:固形状の2官能フルオレン型エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル社製)
KBM403:エポキシ系シランカップリング剤(信越シリコーン社製)
CPI-101A:光カチオン重合開始剤(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート)(新日本理化社製)
リカシッドMH700:加熱型エポキシ樹脂硬化剤(4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸)(質量比=70/30)
【0182】
実施例1~5および7、比較例1
遮光条件下、表1に示す各配合成分をその配合処方に従って同時に配合し、110℃で加熱しながら溶解させた。なお、YX7180BH40については、その固形分量が表1に記載の量となるように、配合した。
【0183】
その後、室温(25℃)まで冷却し、直径1.0μmのメンブランフィルタを用いて加熱加圧濾過して、ワニスを作製した。
<サンプルの作製>
図1Bに示すように、ステンレスからなる基板10の一方面15の全面にアプリケーターを用いてワニスを塗布し塗膜を調製し、続いて、塗膜を130℃で、10分間加熱することにより乾燥させて(有機溶媒を除去して)、厚み50μmの感光性フィルムを形成した。
【0184】
図1Bの仮想線で示すように、続いて、感光性フィルムの厚み方向一方側に、幅3mm×長さ40mmの矩形パターンを有する透過部26およびそれの周囲に位置する遮光部27を有するフォトマスク25を配置し、UV照射機[高圧水銀ランプ、全光線(バンドパスフィルタ無し)]にて4000mJ/cm
2(波長365nm積算)で露光(感光)した。これによって、後述するアンダークラッドサンプルの潜像24を形成した。
【0185】
続いて、露光後後加熱を、140℃で、10分間実施し、その後、現像液(γ-ブチロラクトン)で3分間現像した。
【0186】
図1Cに示すように、これにより、矩形状で、サイズが幅3mm×長さ40mmのアンダークラッドサンプルを、基板10の一方面15に作製した。
【0187】
実施例6
現像後に得られたサンプルをコアサンプルとした以外は、実施例1と同様に処理した。
【0188】
比較例2
実施例1と同様にして、アンダークラッドサンプルの作製を試みた。
【0189】
しかし、塗膜の乾燥加熱によって、熱硬化が進行してしまった。その後、フォト加工を実施しても、潜像は形成されず、その後、露光後加熱によって、基板10の一方面15の全面にアンダークラッドサンプルが形成された。つまり、このアンダークラッドサンプルは、サイズ幅3mm×長さ40mmの矩形パターンを有していなかった。
【0190】
評価
下記の項目を評価した。結果を表1に示す。
【0191】
<剥離試験(密着性評価)>
実施例1~7および比較例1のそれぞれのサンプル(アンダークラッドサンプル、コアサンプル)を、90度、速度10mm/分で、基板10の一方面15から剥離して、剥離強度を測定した。剥離強度を以下の基準で評価した。
〇:剥離強度が500mN/cm以上
△:剥離強度が200mN/cm以上、500mN/cm未満
×:剥離強度が200mN/cm未満
<フォト加工のパターニング性>
フォト加工における感光性フィルムのパターニング性を下記の基準で評価した。
○:フォトマスク25の透過部26と同一のパターンでサンプルを作製できた。
×:フォトマスク25の透過部26と同一のパターンでサンプルを作製できなかった。
【0192】
【符号の説明】
【0193】
1 光導波路
2 アンダークラッド(クラッドの一例)
3 コア
4 オーバークラッド(クラッドの一例)
7 光電気混載基板
8 電気回路基板
10 基板
12 アンダークラッド用感光性フィルム(光導波路用感光性フィルムの一例)
13 コア用感光性フィルム(光導波路用感光性フィルムの一例)
14 オーバークラッド用感光性フィルム(光導波路用感光性フィルムの一例)
32 第2コア