(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】歩行動作補助装置
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20221109BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20221109BHJP
A61F 2/68 20060101ALI20221109BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20221109BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61H3/00 B
A61H1/02 R
A61F2/68
B25J11/00 Z
B25J13/00 Z
(21)【出願番号】P 2019009158
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】青木 晋
(72)【発明者】
【氏名】牧原 幸伸
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-213246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
A61H 1/02
A61F 2/68
B25J 11/00
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、
前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、
前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、
前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、
前記駆動アームの駆動側枢支軸線回りの揺動位置を検出可能な回転センサと、
一歩行周期中の歩行動作状態を検出する歩行動作状態検出センサと、
前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記歩行動作状態検出センサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データの一方に適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、下腿最大伸展時に前記回転センサから入力される検出信号を基準値として認識し、前記回転センサから入力される基準値以外の検出信号に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき一方の補助力制御データを選択することを特徴とする歩行動作補助装置。
【請求項2】
ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、
前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、
前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、
前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、
前記駆動アームの駆動側枢支軸線回りの揺動位置を検出可能な回転センサと、
一歩行周期中の歩行動作状態を検出する歩行動作状態検出センサと、
ユーザーに異常の有無を告知する告知手段と、
前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記歩行動作状態検出センサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを、前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち人為操作によって選択された補助力制御データに適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、下腿最大伸展時に前記回転センサから入力される検出信号を基準値として認識し、前記回転センサから入力される基準値以外の検出信号に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを判断し、前記使用すべき補助力制御データが人為操作によって選択されている補助力制御データと異なる場合には前記告知手段を介してユーザーに異常を告知するように構成されていることを特徴とする歩行動作補助装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記回転センサからの信号に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、前記電動モータを作動停止させることを特徴とする請求項2に記載の歩行動作補助装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記回転センサからの信号に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、人為操作によって選択された補助力制御データの代わりに前記回転センサからの信号に基づき使用すべきと判断した補助力制御データを採用し、当該補助力制御データに前記算出歩行動作タイミングを適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の歩行動作補助装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記歩行動作補助装置の主電源がオフからオンへ切り換えられた後に前記回転センサから入力される基準値以外の最初の検出信号に基づき、前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき一方の補助力制御データを選択することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の歩行動作補助装置。
【請求項6】
前記回転センサは、前記基準値がゼロ点位置として設定されたアブソリュート型ロータリエンコーダとされていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の歩行動作補助装置。
【請求項7】
人為操作可能な基準スイッチを備え、
前記制御装置は、前記基準スイッチのオン状態時に前記回転センサから入力される検出信号を前記基準値と認識することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の歩行動作補助装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記回転センサから入力される検出信号に基づき前記駆動アームの駆動側枢支軸線回りの角加速度を算出し、前記角加速度が所定のしきい値を超えた時点を前記下腿フレームの最大伸展位置と認識し、その時点で入力された前記回転センサの検出信号を前記基準値と認識することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の歩行動作補助装置。
【請求項9】
前記下腿フレームが最大伸展位置に位置したことを直接又は間接的に検出する最大伸展位置検出センサを備え、
前記制御装置は、前記最大伸展位置検出センサが最大伸展位置を検出した際に前記回転センサから入力される検出信号を前記基準位置と認識することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の歩行動作補助装置。
【請求項10】
ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、
前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、
前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、
前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、
下腿最大伸展時に前記駆動アームが駆動側枢支軸線回りに位置する揺動位置を基準位置とした場合に、前記駆動アームが基準位置から駆動側枢支軸線回り第1及び第2方向の何れの方向に回動しているかを検出する回動方向検出機構と、
一歩行周期中の歩行動作状態を検出する歩行動作状態検出センサと、
前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記歩行動作状態検出センサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データの一方に適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記回動方向検出機構の検出結果に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを選択することを特徴とする歩行動作補助装置。
【請求項11】
ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、
前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、
前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、
前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、
下腿最大伸展時に前記駆動アームが駆動側枢支軸線回りに位置する揺動位置を基準位置とした場合に、前記駆動アームが基準位置から駆動側枢支軸線回り第1及び第2方向の何れの方向に回動しているかを検出する回動方向検出機構と、
一歩行周期中の歩行動作状態を検出する歩行動作状態検出センサと、
ユーザーに異常の有無を告知する告知手段と、
前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記歩行動作状態検出センサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち人為操作によって選択された補助力制御データに適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記回動方向検出機構の検出結果に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを判断し、前記使用すべき補助力制御データが人為操作によって選択されている補助力制御データと異なる場合には前記告知手段を介してユーザーに異常を告知するように構成されていることを特徴とする歩行動作補助装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記回動方向検出機構の検出結果に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、前記電動モータを作動停止させることを特徴とする請求項11に記載の歩行動作補助装置。
【請求項13】
前記制御装置は、前記回動方向検出機構の検出結果に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、人為操作によって選択された補助力制御データの代わりに前記回動方向検出機構の検出結果に基づき使用すべきと判断した補助力制御データを採用し、当該補助力制御データに前記算出歩行動作タイミングを適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行うことを特徴とする請求項11に記載の歩行動作補助装置。
【請求項14】
前記回動方向検出機構は、前記駆動アームが基準位置から駆動側枢支軸線回り第1及び第2方向へ回動したことをそれぞれ検出する第1及び第2回動センサを有していることを特徴とする請求項10から13の何れかに記載の歩行動作補助装置。
【請求項15】
前記回動方向検出機構は、前記駆動アームと共に駆動側枢支軸回りに回動する被検出体と、前記被検出体との間の距離を検出する距離センサとを有し、
前記被検出体は、前記駆動アームが基準位置から駆動側枢支軸線回り第1方向へ回動する際に前記距離センサによって検出される第1領域と、前記駆動アームが基準位置から駆動側枢支軸線回り第2方向へ回動する際に前記距離センサによって検出される第2領域とを含み、
前記第1及び第2領域は、前記距離センサからの離間距離が異なっていることを特徴とする請求項10から13の何れかに記載の歩行動作補助装置。
【請求項16】
前記歩行動作状態検出センサは、ユーザーの大腿の前後揺動角度である股関節角度に関連する角度関連信号を検出可能とされており、
前記制御装置は、前記歩行動作状態検出センサからサンプリングタイミング毎に入力される前記角度関連信号に基づいて前記一のサンプリングタイミングでの大腿位相角を算出し、前記大腿位相角に基づいて歩行周期中の歩行動作タイミングを算出するように構成されていることを特徴とする請求項1から15の何れかに記載の歩行動作補助装置。
【請求項17】
ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、
前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、
前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、
前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、
ユーザーの大腿揺動角度を検出する大腿ジャイロセンサと、
ユーザーの下腿揺動角度を検出する下腿ジャイロセンサと、
前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記大腿ジャイロセンサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき大腿位相角を算出し、前記大腿位相角に基づいて歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データの一方に適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記大腿ジャイロセンサからの大腿揺動角度及び前記下腿ジャイロセンサからの下腿揺動角度に基づいて大腿に対する下腿の回動角度である膝関節角度を算出し、算出した膝関節角度が下腿最大伸展時の膝関節角度以外の場合に当該膝関節角度に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを選択することを特徴とする歩行動作補助装置。
【請求項18】
ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、
前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、
前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、
前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、
ユーザーの大腿揺動角度を検出する大腿ジャイロセンサと、
ユーザーの下腿揺動角度を検出する下腿ジャイロセンサと、
ユーザーに異常の有無を告知する告知手段と、
前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記大腿ジャイロセンサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき大腿位相角を算出し、前記大腿位相角に基づいて歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データの一方に適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記大腿ジャイロセンサからの大腿揺動角度及び前記下腿ジャイロセンサからの下腿揺動角度に基づいて大腿に対する下腿の回動角度である膝関節角度を算出し、算出した膝関節角度が下腿最大伸展時の膝関節角度以外の場合に当該膝関節角度に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを判断し、前記使用すべき補助力制御データが人為操作によって選択されている補助力制御データと異なる場合には前記告知手段を介してユーザーに異常を告知するように構成されていることを特徴とする歩行動作補助装置。
【請求項19】
前記制御装置は、前記算出した膝関節角度に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、前記電動モータを作動停止させることを特徴とする請求項18に記載の歩行動作補助装置。
【請求項20】
前記制御装置は、前記算出した膝関節角度に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、人為操作によって選択された補助力制御データの代わりに前記算出した膝関節角度に基づき使用すべきと判断した補助力制御データを採用し、当該補助力制御データに前記算出歩行動作タイミングを適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行うことを特徴とする請求項18に記載の歩行動作補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長下肢装具を装着したユーザーに対して歩行補助力を付与する歩行動作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脚の不自由な人や脳卒中等の為に麻痺を有する人の歩行補助用又はリハビリテーション用の器具として利用される長下肢装具に装着可能な歩行動作補助装置が従前から提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、前記長下肢装具は、ユーザーの大腿に装着される大腿側装着体と、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレームと、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体と、前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームとを含み、前記下腿フレームは、前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている。
【0004】
前記歩行動作補助装置は、ケーシングと、前記ケーシングに収容された電動モータと、前記電動モータによって駆動側枢支軸線回りに駆動される駆動アームと、ユーザーの大腿の前後揺動角度である股関節角度を検出する大腿姿勢検出手段と、前記電動モータの作動制御を司る制御装置とを備えている。
【0005】
前記ケーシングは、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚の何れに装着されている場合であっても、前記大腿フレームに装着可能とされている。
即ち、前記ケーシングは、前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が内側面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるように構成されている。
【0006】
前記制御装置には、前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを含む補助力制御データが予め記憶されており、前記制御装置は、前記大腿姿勢検出手段から入力される検出信号に基づき歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データの一方に適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行うように構成されている。
【0007】
ところで、前記従来の歩行動作補助装置には、左脚及び右脚を選択する選択スイッチが設けられており、前記制御装置は、左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データのうち、前記選択スイッチによって選択された左右方向に応じた前記補助力制御データを用いるように構成されている。
【0008】
この場合、万一、ユーザーが前記選択スイッチの操作ミスを行うと、即ち、前記歩行動作補助装置が左脚に装着されているにも拘わらず前記選択スイッチによって右脚が選択されると(若しくは、前記歩行動作補助装置が右脚に装着されているにも拘わらず前記選択スイッチによって左脚が選択されると)、前記下腿フレームに適切な方向及び大きさの補助力が付与されなくなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、長下肢装具に脱着可能とされたケーシングと、前記ケーシングに収容された電動モータと、前記電動モータによって作動的に駆動される駆動アームと、歩行動作状態を検出する歩行動作状態検出センサと、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記歩行動作状態検出センサの検出結果と左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データの一方とに基づき前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備えた歩行動作補助装置であって、前記長下肢装具が実際に装着されているユーザーの脚の左右と前記制御装置が前記電動モータの作動制御に用いている補助力制御データの左右とに相違が生じることを有効に防止し得る歩行動作補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の第1態様は、ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、前記駆動アームの駆動側枢支軸線回りの揺動位置を検出可能な回転センサと、一歩行周期中の歩行動作状態を検出する歩行動作状態検出センサと、前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記歩行動作状態検出センサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データの一方に適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、下腿最大伸展時に前記回転センサから入力される検出信号を基準値として認識し、前記回転センサから入力される基準値以外の検出信号に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき一方の補助力制御データを選択するように構成された歩行動作補助装置を提供する。
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の第2態様は、ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、前記駆動アームの駆動側枢支軸線回りの揺動位置を検出可能な回転センサと、一歩行周期中の歩行動作状態を検出する歩行動作状態検出センサと、ユーザーに異常の有無を告知する告知手段と、前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記歩行動作状態検出センサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを、前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち人為操作によって選択された補助力制御データに適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、下腿最大伸展時に前記回転センサから入力される検出信号を基準値として認識し、前記回転センサから入力される基準値以外の検出信号に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを判断し、前記使用すべき補助力制御データが人為操作によって選択されている補助力制御データと異なる場合には前記告知手段を介してユーザーに異常を告知するように構成されている歩行動作補助装置を提供する。
【0013】
前記第2態様において、好ましくは、前記制御装置は、前記回転センサからの信号に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、前記電動モータを作動停止させるように構成される。
【0014】
これに代えて、前記第2態様において、前記制御装置は、前記回転センサからの信号に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、人為操作によって選択された補助力制御データの代わりに前記回転センサからの信号に基づき使用すべきと判断した補助力制御データを採用し、当該補助力制御データに前記算出歩行動作タイミングを適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行うように構成され得る。
【0015】
前記第1及び第2態様の種々の構成において、好ましくは、前記制御装置は、前記歩行動作補助装置の主電源がオフからオンへ切り換えられた後に前記回転センサから入力される基準値以外の最初の検出信号に基づき、前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき一方の補助力制御データを選択するように構成される。
【0016】
一形態においては、前記回転センサは、前記基準値がゼロ点位置として設定されたアブソリュート型ロータリエンコーダとされる。
【0017】
他形態においては、前記回転センサは、インクリメンタル型ロータリエンコーダとされる。
【0018】
例えば、前記歩行動作補助装置に人為操作可能な基準スイッチを備え、前記制御装置は、前記基準スイッチのオン状態時に前記回転センサから入力される検出信号を前記基準値と認識するように構成される。
【0019】
これに代えて、前記制御装置が、前記回転センサから入力される検出信号に基づき前記駆動アームの駆動側枢支軸線回りの角加速度を算出し、前記角加速度が所定のしきい値を超えた時点を前記下腿フレームの最大伸展位置と認識し、その時点で入力された前記回転センサの検出信号を前記基準値と認識するように構成することも可能である。
【0020】
さらには、前記歩行動作補助装置に前記下腿フレームが最大伸展位置に位置したことを直接又は間接的に検出する最大伸展位置検出センサを備えることも可能である。
この場合、前記制御装置は、前記最大伸展位置検出センサが最大伸展位置を検出した際に前記回転センサから入力される検出信号を前記基準位置と認識するように構成される。
【0021】
前記目的を達成するために、本発明の第3態様は、ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、下腿最大伸展時に前記駆動アームが駆動側枢支軸線回りに位置する揺動位置を基準位置とした場合に、前記駆動アームが基準位置から駆動側枢支軸線回り第1及び第2方向の何れの方向に回動しているかを検出する回動方向検出機構と、一歩行周期中の歩行動作状態を検出する歩行動作状態検出センサと、前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記歩行動作状態検出センサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データの一方に適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記回動方向検出機構の検出結果に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを選択するように構成されている歩行動作補助装置を提供する。
【0022】
前記目的を達成するために、本発明の第4態様は、ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、下腿最大伸展時に前記駆動アームが駆動側枢支軸線回りに位置する揺動位置を基準位置とした場合に、前記駆動アームが基準位置から駆動側枢支軸線回り第1及び第2方向の何れの方向に回動しているかを検出する回動方向検出機構と、一歩行周期中の歩行動作状態を検出する歩行動作状態検出センサと、ユーザーに異常の有無を告知する告知手段と、前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記歩行動作状態検出センサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち人為操作によって選択された補助力制御データに適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記回動方向検出機構の検出結果に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを判断し、前記使用すべき補助力制御データが人為操作によって選択されている補助力制御データと異なる場合には前記告知手段を介してユーザーに異常を告知するように構成されている歩行動作補助装置を提供する。
【0023】
前記第4態様において、好ましくは、前記制御装置は、前記回動方向検出機構の検出結果に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、前記電動モータを作動停止させるように構成される。
【0024】
これに代えて、前記第4態様において、前記制御装置は、前記回動方向検出機構の検出結果に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、人為操作によって選択された補助力制御データの代わりに前記回動方向検出機構の検出結果に基づき使用すべきと判断した補助力制御データを採用し、当該補助力制御データに前記算出歩行動作タイミングを適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行うように構成され得る。
【0025】
前記第3及び第4態様の一形態においては、前記回動方向検出機構は、前記駆動アームが基準位置から駆動側枢支軸線回り第1及び第2方向へ回動したことをそれぞれ検出する第1及び第2回動センサを有するものとされる。
【0026】
前記第3及び第4態様の他形態においては、前記回動方向検出機構は、前記駆動アームと共に駆動側枢支軸回りに回動する被検出体と、前記被検出体との間の距離を検出する距離センサとを有するものとされる。
【0027】
この場合、前記被検出体は、前記駆動アームが基準位置から駆動側枢支軸線回り第1方向及び第2方向へ回動する際に前記距離センサによってそれぞれ検出される第1及び第2領域を含むものとされ、前記第1及び第2領域は、前記距離センサからの離間距離が異なるように構成される。
【0028】
本発明に係る歩行動作補助装置の種々の構成において、前記歩行動作状態検出センサは、ユーザーの大腿の前後揺動角度である股関節角度に関連する角度関連信号を検出可能とされる。
この場合、前記制御装置は、前記歩行動作状態検出センサからサンプリングタイミング毎に入力される前記角度関連信号に基づいて前記一のサンプリングタイミングでの大腿位相角を算出し、前記大腿位相角に基づいて歩行周期中の歩行動作タイミングを算出するように構成される。
【0029】
前記目的を達成するために、本発明の第5態様は、ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、ユーザーの大腿揺動角度を検出する大腿ジャイロセンサと、ユーザーの下腿揺動角度を検出する下腿ジャイロセンサと、前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記大腿ジャイロセンサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき大腿位相角を算出し、前記大腿位相角に基づいて歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データの一方に適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記大腿ジャイロセンサからの大腿揺動角度及び前記下腿ジャイロセンサからの下腿揺動角度に基づいて大腿に対する下腿の回動角度である膝関節角度を算出し、算出した膝関節角度が下腿最大伸展時の膝関節角度以外の場合に当該膝関節角度に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを選択するように構成されている歩行動作補助装置を提供する。
【0030】
前記目的を達成するために、本発明の第6態様は、ユーザーの大腿に装着される大腿装着体、前記大腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体及び前記下腿装着体を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレームを含み、前記下腿フレームが前記大腿フレームに対してユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線回りに揺動可能とされつつ、下腿最大伸展時における前記下腿フレームの装具側枢支軸線回りの揺動位置が前記下腿フレームの前記大腿フレームに対する装具側枢支軸線回り前方側への揺動端とされている長下肢装具に適用される歩行動作補助装置であって、前記長下肢装具がユーザーの左脚に装着されている際には第1姿勢が装着面を前記長下肢装具に対向させつつ駆動側枢支軸線を装具側枢支軸線と同軸上に位置させる連結可能姿勢とされ、且つ、前記長下肢装具がユーザーの右脚に装着されている際には前記第1姿勢からユーザーの体幹軸回りに180°回転された第2姿勢が前記連結可能姿勢とされるケーシングと、前記ケーシングに収容され、出力軸から軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力可能な電動モータと、前記出力軸の第1及び第2方向の出力によって駆動側枢支軸線回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向にそれぞれ揺動するように基端部が前記出力軸に作動連結され且つ前記ケーシングが前記長下肢装具に連結された状態において駆動側枢支軸線回りの揺動に応じて前記下腿フレームを装具側枢支軸線回りに押動するように先端部が前記下腿フレームに直接又は間接的に連結される駆動アームと、ユーザーの大腿揺動角度を検出する大腿ジャイロセンサと、ユーザーの下腿揺動角度を検出する下腿ジャイロセンサと、ユーザーに異常の有無を告知する告知手段と、前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出する際に用いる補助力制御データであって、前記長下肢装具がユーザーの左脚及び右脚に装着されている際にそれぞれ用いる左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有し、前記大腿ジャイロセンサからサンプリングタイミング毎に入力される検出信号に基づき大腿位相角を算出し、前記大腿位相角に基づいて歩行周期中の歩行動作タイミングを算出し、算出した歩行動作タイミングを前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データの一方に適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記大腿ジャイロセンサからの大腿揺動角度及び前記下腿ジャイロセンサからの下腿揺動角度に基づいて大腿に対する下腿の回動角度である膝関節角度を算出し、算出した膝関節角度が下腿最大伸展時の膝関節角度以外の場合に当該膝関節角度に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを判断し、前記使用すべき補助力制御データが人為操作によって選択されている補助力制御データと異なる場合には前記告知手段を介してユーザーに異常を告知するように構成されている歩行動作補助装置を提供する。
【0031】
前記第6態様において、好ましくは、前記制御装置は、前記算出した膝関節角度に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、前記電動モータを作動停止させるように構成される。
【0032】
これに代えて、前記第6態様において、前記制御装置は、前記算出した膝関節角度に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、人為操作によって選択された補助力制御データの代わりに前記算出した膝関節角度に基づき使用すべきと判断した補助力制御データを採用し、当該補助力制御データに前記算出歩行動作タイミングを適用して前記下腿フレームに付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータの作動制御を行うように構成され得る。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る歩行動作補助装置によれば、当該歩行動作補助装置が連結されている長下肢装具が実際に装着されているユーザーの脚の左右と当該歩行動作補助装置の制御装置が電動モータの作動制御に用いている補助力制御データの左右とに相違が生じることを有効に防止することができ、適切な歩行補助力を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1(a)及び(b)は、それぞれ、本発明に係る歩行動作補助装置が装着可能な左脚用長下肢装具及び右脚用長下肢装具の正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態1に係る歩行動作補助装置が左脚用長下肢装具に装着された状態をユーザー幅方向内方且つ前方から視た斜視図である。
【
図6】
図6は、前記歩行動作補助装置を装着面の側(ユーザー幅方向内方側)から視た分解斜視図である。
【
図7】
図7は、前記歩行動作補助装置及び前記左脚用長下肢装具をユーザー幅方向外方から視た分解斜視図である。
【
図8】
図8は、前記歩行動作補助装置及び前記左脚用長下肢装具の分解縦断面図である。
【
図9】
図9は、前記歩行動作補助装置における上部連結機構近傍の斜視図であり、前記上部連結機構の上部締結部材が締結位置に位置されている状態を示している。
【
図11】
図11は、
図9に対応した斜視図であり、前記上部締結部材が解放位置に位置されている状態を示している。
【
図13】
図13は、前記歩行動作補助装置における下部連結機構近傍の斜視図であり、前記下部連結機構の下部締結部材が締結位置に位置されている状態を示している。
【
図15】
図15は、
図13に対応した斜視図であり、前記下部締結部材が解放位置に位置されている状態を示している。
【
図16】
図16(a)及び(b)は、それぞれ、前記歩行動作補助装置が左脚用長下肢装具及び右脚用長下肢装具に装着された状態の斜視図である。
【
図17】
図17は、前記歩行動作補助装置の制御ブロック図である。
【
図18】
図18は、前記歩行動作補助装置における制御装置によって算出される股関節角度θ及び股関節角速度ωを一歩行周期に亘ってプロットすることによって得られるトラジェクトリ線図である。
【
図19】
図19は、歩行周期における動作タイミングと大腿位相角との関係を表す移送パターン関数のグラフである。
【
図20】
図20は、本発明の実施の形態2に係る歩行動作補助装置の模式側面図であって、前記歩行動作補助装置を左脚用長下肢装具に装着させる第1姿勢でユーザー幅方向内方側から視た状態を示している。
【
図21】
図23は、実施の形態2の第1変形例に係る歩行動作補助装置の模式側面図であって、前記歩行動作補助装置を左脚用長下肢装具に装着させる第1姿勢でユーザー幅方向内方側から視た状態を示している。
【
図22】
図22は、実施の形態2の第2変形例に係る歩行動作補助装置の模式側面図であって、前記歩行動作補助装置を左脚用長下肢装具に装着させる第1姿勢でユーザー幅方向内方側から視た状態を示している。
【
図23】
図23は、実施の形態2の第3変形例に係る歩行動作補助装置の模式側面図であって、前記歩行動作補助装置を左脚用長下肢装具に装着させる第1姿勢でユーザー幅方向内方側から視た状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
実施の形態1
以下、本発明に係る歩行動作補助装置の一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
本実施の形態に係る歩行動作補助装置100Aは、長下肢装具1を装着したユーザーに対して歩行補助力を提供するものであり、左脚用の長下肢装具1L及び右脚用の長下肢装具1Rの何れにも装着可能とされている。
【0036】
まず、前記長下肢装具1について説明する。
図1(a)及び(b)に、それぞれ、ユーザーの左脚に装着される左脚用及び右脚用長下肢装具1L、1Rの正面図を示す。
左脚用長下肢装具1L及び右脚用長下肢装具1Rは、ユーザーの体幹軸を通って前後方向に延びる中央垂直面を基準にして左右対称とされている。
【0037】
前記長下肢装具1は、脚の不自由な人や脳卒中等の為に麻痺を有する人が、歩行補助の為、又は、リハビリテーションの為に装着する器具であり、ユーザーの体格に合わせてオーダーメイドされるものである。
【0038】
図1(a)及び(b)に示すように、前記長下肢装具1は、ユーザーの大腿に装着される大腿装着体11と、前記大腿装着体11を支持した状態で略上下方向に延びる大腿フレーム20と、ユーザーの下腿に装着される下腿装着体31と、前記下腿装着体31を支持した状態で略上下方向に延びる下腿フレーム40とを有している。
【0039】
前記大腿装着体11及び前記下腿装着体31は、それぞれ、ユーザーの大腿及び下腿に装着可能とされる限り種々の形態を取り得る。
本実施の形態においては、前記大腿装着体11は、ユーザーの大腿が挿入可能で且つ大腿にフィットするような大きさの装着孔を有する筒状とされている。
同様に、前記下腿装着体31は、ユーザーの下腿が挿入可能で且つ下腿にフィットするような大きさの装着孔を有する筒状とされている。
【0040】
本実施の形態においては、
図1(a)及び(b)に示すように、前記大腿フレーム20は、前記大腿装着体11のユーザー幅方向Wの外方側において略上下方向に延びる第1大腿フレーム20(1)と、前記大腿装着体11のユーザー内方側において略上下方向に延びる第2大腿フレーム20(2)とを有している。
【0041】
同様に、前記下腿フレーム40は、前記下腿装着体31のユーザー幅方向Wの外方側において略上下方向に延びる第1下腿フレーム40(1)と、前記下腿装着体31のユーザー幅方向Wの内方側において略上下方向に延びる第2下腿フレーム40(2)とを有している。
【0042】
図2に、
図1におけるII部拡大斜視図を示す。
また、
図3に、
図2の分解斜視図を示す。
なお、
図3においては、理解容易化の為に構成部材の一部の図示を省略している。
さらに、
図4に、
図2の縦断斜視図を示す。
【0043】
図1~
図4に示すように、前記下腿フレーム40は、装具側回動連結部50を介して前記大腿フレーム20にユーザーの膝関節と同軸上の装具側枢支軸線X回り揺動可能に連結されている。
【0044】
前述の通り、本実施の形態においては、前記大腿フレーム20は前記第1及び第2大腿フレーム20(1)、20(2)を有し、前記下腿フレーム40は前記第1及び第2下腿フレーム40(1)、40(2)を有している。
【0045】
この場合、前記第1下腿フレーム40(1)の上端部が前記第1大腿フレーム20(1)の下端部に第1装具側回動連結部50(1)を介して装具側枢支軸線X回り揺動可能に連結され、前記第2下腿フレーム40(2)の上端部が前記第2大腿フレーム20(2)の下端部に第2装具側回動連結部50(2)を介して装具側枢支軸線X回り揺動可能に連結される。
【0046】
詳しくは、
図2~
図4に示すように、前記大腿フレーム20は、上下方向に延びるフレーム本体21cと、前記フレーム本体21cの下端部のユーザー幅方向Wの両側にピン連結又は溶接等によって固着された一対の連結片21a、21bとを有しており、対応する前記下腿フレーム40の上端部が前記一対の連結片21a、21bの間に介挿されている。
【0047】
前記一対の連結片21a、21bには装具側枢支軸線Xと同軸上に大腿フレーム取付孔20aが設けられており、前記下腿フレーム40には装具側枢支軸線Xと同軸上に下腿フレーム取付孔40aが設けられている。
【0048】
前記装具側回動連結部50は、前記大腿フレーム取付孔20a及び前記下腿フレーム取付孔40aによって形成される装具側フレーム取付孔に挿通されて、対応する前記大腿フレーム20及び前記下腿フレーム40同士を装具側枢支軸線X回り回動可能に連結する装具側連結具51を有している。
【0049】
図2~
図4に示すように、前記装具側連結具51は、前記装具側フレーム取付孔内において互いに対して分離可能に螺合される雌ネジ部材52及び雄ネジ部材55を有している。
【0050】
前記雌ネジ部材52は、ユーザー幅方向一方側から前記装具側フレーム取付孔に挿入される筒部53と、前記筒部53のユーザー幅方向一方側から前記装具側フレーム取付孔より径方向外方へ延在されるフランジ部54とを有しており、前記筒部53には自由端側に開くネジ穴が形成されている。
【0051】
一方、前記雄ネジ部材55は、ユーザー幅方向他方側から前記ネジ穴に螺入される雄ネジが形成された筒部56と、前記筒部56のユーザー幅方向他方側から前記装具側フレーム取付孔より径方向外方へ延在されたフランジ部57とを有している。
【0052】
図2~
図4に示すように、本実施の形態においては、前記雌ネジ部材52が前記大腿装着体11に挿入されるユーザーの大腿の側から前記装具側フレーム取付孔に挿入されており、前記雄ネジ部材55がユーザーの大腿とは反対側から前記雌ネジ部材52に螺合されている。
【0053】
なお、
図3及び
図4中の符号54aは、前記フランジ部53に設けられた径方向外方突起であり、前記内側連結片21bに形成された凹部22(
図3参照)に係合することで、前記雌ねじ部材52が前記内側連結片21b(即ち、前記大腿フレーム20)に対して軸線回り相対回転不能に保持されるようになっている。
【0054】
本実施の形態においては、ユーザーの下腿の最大伸展時における前記下腿フレーム40の装具側枢支軸線X回りの揺動位置が、前記下腿フレーム40の前記大腿フレーム20に対する装具側枢支軸線X回り前方側への揺動端とされている。
【0055】
詳しくは、
図3に示すように、前記下腿フレーム40の上端面は、(前記大腿フレーム20に対向する端面)は装具側枢支軸線X回り一方側から他方側へ行くに従って装具側枢支軸線Xからの径方向距離が増大するような傾斜面とされており、前記大腿フレーム20の下端面25(前記下腿フレーム40に対向する端面)は前記下腿フレーム40の上端面45に対応した傾斜面とされている。
【0056】
斯かる構成により、下腿最大伸展時においては、前記下腿フレーム40は、前記大腿フレーム20に対して装具側枢支軸線X回り一方側(ユーザーの下腿が大腿に対して屈曲する方向)へのみ回動が許容され、他方側(ユーザーの下腿が大腿に対して伸展する方向)への回動は禁止されるようになっている。
【0057】
本実施の形態においては、前記長下肢装具1は、
図1~
図4に示すように、さらに、前記下腿フレーム40の前記大腿フレーム20に対する装具側枢支軸線X回り双方向の回動を禁止する為のロック部材70を有している。
【0058】
前記ロック部材70は、前記大腿フレーム20及び前記下腿フレーム40を囲繞して両フレーム20、40を連結し、前記下腿フレーム40が前記大腿フレーム20に対して装具側枢支軸線X回りに相対回転することを防止するロック状態(
図2に示す状態)と、前記大腿フレーム20及び前記下腿フレーム40の連結を解除し、前記下腿フレーム40が前記大腿フレーム20に対して装具側枢支軸線X回りに相対回転することを許容する解除状態とを取り得るように構成されている。
【0059】
なお、本実施の形態においては、前記ロック部材70は、前記第1大腿フレーム20(1)及び前記第1下腿フレーム40(1)に作用する第1ロック部材70(1)と、前記第2大腿フレーム20(2)及び前記第2下腿フレーム40(2)に作用する第2ロック部材70(2)とを有している。
【0060】
本実施の形態においては、
図1に示すように、前記長下肢装具1は、さらに、ユーザーが足を載置する足フレーム60を有している。
この場合、前記下腿フレーム40は、下端部が前記足フレーム60に連結される。
【0061】
以下、本実施の形態に係る歩行動作補助装置100Aについて説明する。
図5に、前記歩行動作補助装置100Aが前記左脚用長下肢装具1Lに装着された状態をユーザー幅方向内方且つ前方から視た斜視図を示す。
また、
図6に、前記歩行動作補助装置100Aを装着面の側から視た分解斜視図を示す。
さらに、
図7及び
図8に、それぞれ、前記歩行動作補助装置100A及び前記左脚用長下肢装具1Lをユーザー幅方向外方且つ前方から視た分解斜視図、及び、分解縦断面図を示す。
【0062】
図5~
図8に示すように、前記歩行動作補助装置100Aは、前記長下肢装具1Lに着脱可能に連結されるケーシング110と、前記ケーシング110に収容される電動モータ130と、前記電動モータ130によって作動的に揺動駆動される駆動アーム150と、前記駆動アーム150の揺動位置を検出する回転センサ160と、一歩行周期中の歩行動作状態を検出する歩行動作状態検出センサ170と、前記電動モータ130の作動制御を司る制御装置500とを備えている。
【0063】
前記ケーシング110は、前記電動モータを支持するフレーム115と、前記フレーム115及び前記電動モータ130を囲繞するカバー120とを有している。
【0064】
前記フレーム115は、前記ケーシング110が前記長下肢装具1に装着された状態において略上下方向に延びる上下方向延在壁117と、前記上下方向延在壁117から略水平に延びる水平方向延在壁119とを有している。
【0065】
前記カバー120は、前記第1大腿フレーム20(1)と対向する装着面112を形成する下カバー122と、前記下カバー122に着脱可能に連結される上カバー125であって、前記下カバー122と共働して前記フレーム115及び前記電動モータ130を収容する収容空間を形成する上カバー125とを有している。
【0066】
本実施の形態においては、前記上下方向延在壁117が前記下カバー122の内面にボルト等の締結部材によって連結されることで、前記フレーム115が前記カバー120の収容空間内に固定されている。
【0067】
なお、本実施の形態においては、前記上カバー125は、前記下カバー122に着脱可能に連結される第1上カバー125aと、前記第1上カバー125aに着脱可能に連結される第2上カバー125bとを有している。
【0068】
前記電動モータ130は、モータ本体132と、前記モータ本体132に連結された出力軸135とを有しており、前記出力軸135から軸線回り一方側の第1方向及び軸線回り他方側の第2方向の双方向の回転動力を出力し得るように構成されている。
【0069】
本実施の形態においては、前記モータ本体132は、前記水平方向延在壁119に載置された状態で前記フレーム115に支持されており、前記出力軸135は前記水平方向延在壁119より下方へ延在されている。
【0070】
図6及び
図7に示すように、本実施の形態に係る前記歩行動作補助装置100Aは、さらに、バッテリ等の前記電動モータ130の動力源190を有している。
前記動力源190は、前記電動モータ130の上方に位置するように前記上下方向延在壁117に支持されている。
【0071】
前記駆動アーム150は、前記出力軸135に作動連結され、前記出力軸135の第1及び第2方向の回転出力に応じて、駆動側枢支軸線Y回り一方側の第1方向及び他方側の第2方向へ揺動する。
【0072】
図8に示すように、本実施の形態においては、前記駆動アーム150は、伝動ギヤ機構140を介して前記出力軸135に作動連結されている。
【0073】
前記伝動ギヤ機構140は、前記出力軸135に相対回転不能に支持された駆動側ベベルギヤ142と、前記駆動側ベベルギヤ142と噛合された状態で駆動側枢支軸線Y上に配置された従動側ベベルギヤ144とを有している。
【0074】
前記従動側ベベルギヤ144は、ユーザー幅方向Wに関し、前記出力軸135より前記長下肢装具1に近接する側に配置されている。
そして、前記駆動アーム150の基端部が前記従動側ベベルギヤ144に連結されており、これにより、前記出力軸135の出力に応じて前記駆動アーム150が駆動側枢支軸線Y回りに揺動するようになっている。
【0075】
なお、
図8に示すように、前記下カバー122にはアクセス開口123が設けられており、前記従動側ベベルギヤ144及び前記駆動アーム150の基端部は前記アクセス開口123を介して連結されている。
【0076】
前記駆動アーム150の先端部は、前記歩行動作補助装置100Aを前記長下肢装具1に装着させた状態において前記第1下腿フレーム40(1)に作動連結され、前記駆動アーム150の駆動側枢支軸線Y回りの揺動に応じて前記第1下腿フレーム40(1)を装具側枢支軸線X回りに押動するようになっている。
この前記駆動フレーム150の先端部及び前記第1下腿フレーム40(1)の作動連結構成については後述する。
【0077】
本実施の形態においては、
図8に示すように、前記従動側ベベルギヤ144には、駆動側枢支軸線Y回り相対回転不能に被検出軸146が連結されており、前記回転センサ160は前記被検出軸146の軸線回りの回転角度を検出するように配置されている。
【0078】
次に、前記歩行動作補助装置100Aの前記長下肢装具1への装着構造について説明する。
本実施の形態に係る前記歩行動作補助装置100Aは、上部、下部及び上下中間部の3箇所で前記長下肢装具1に着脱自在に装着される。
【0079】
詳しくは、前記歩行動作補助装置100Aは、上部連結機構220、下部連結機構260及び中間連結機構250を有している。
【0080】
図8に示すように、前記中間連結機構250は、前記長下肢装具1に設けられたボールスタッド251と、前記歩行動作補助装置100Aに設けられ、前記ボールスタッド251がボールジョイントされる収容凹部258とを有している。
【0081】
図8に示すように、前記ボールスタッド251は、前記長下肢装具1の装具側枢支軸線Xと同軸上に立設され、前記歩行動作補助装置100Aに向けて延びる軸部252と、前記軸部252の先端部に設けられた球頭部255とを有している。
【0082】
本実施の形態においては、前記ボールスタッド251は、前記装具側連結具51を利用して、前記長下肢装具1に立設されている。
【0083】
詳しくは、
図4及び
図8に示すように、前記ボールスタッド251は、前記装具側連結具51における前記雌ネジ部材52及び前記雄ネジ部材55のうちユーザー幅方向外方側に位置する外方側ネジ部材(本実施の形態においては、前記雄ネジ部材55)に代えて、前記雌ネジ部材52及び前記雄ネジ部材55のうちユーザー幅方向内方側に位置する内方側ネジ部材(本実施の形態においては、前記雌ネジ部材52)にネジ連結されることで、前記長下肢装具1に立設されている。
【0084】
前記ボールスタッド251及び前記内方側ネジ部材のネジ連結は種々の構成によって現出され得る。
例えば、前記ボールスタッド251に、軸線方向に貫通する段付き軸線孔を形成することができる。前記段付き軸線孔は、前記球頭部255が位置する側に開口する大径孔と、軸線方向に関し前記球頭部とは反対側に開口する小径孔と、前記大径孔及び前記小径孔をつなぐ段部とを有するものとされる。そして、前記段付き軸線孔に挿通され且つ前記内方側ネジ部材にネジ連結されるボルト等の締結部材を介して前記ボールスタッド251及び前記内方側ネジ部材を連結させることができる。
【0085】
斯かる構成によれば、前記ボールスタッド251を既存の長下肢装具1に対して、装具側枢支軸線Xと同軸上に容易に立設させることができる。
【0086】
本実施の形態においては、
図8に示すように、前記収容凹部258は前記駆動アーム150の基端部に形成されている。
斯かる構成によれば、前記歩行動作補助装置100Aのユーザー幅方向に関する小型化を図りつつ、装具側枢支軸線X及び駆動側枢支軸線Yを確実に同軸上に位置させることができる。
【0087】
図9に、前記歩行動作補助装置100Aが前記第1大腿フレーム20(1)に連結されている状態での前記上部連結機構220近傍の斜視図を示す。
なお、
図9において、前記第1大腿フレーム20(1)を二点鎖線で示している。
【0088】
図9に示すように、前記上部連結機構220は、前記装着面112にユーザー幅方向内方側へ延びるように設けられた上部回動軸222と、前記上部回動軸222に軸線回り回動可能に支持された上部締結部材225とを備えている。
【0089】
図10に、前記上部締結部材225を断面状態とした前記上部連結機構220近傍の斜視図を示す。
【0090】
図10に示すように、前記上部締結部材225は、前記上部回動軸222に支持された軸受部227と、前記軸受部227から径方向外方へ延在されたカム部229とを有している。
【0091】
前記カム部229は、外周面と前記上部回動軸222の軸線との間の径方向距離が前記上部回動軸222の軸線回り一方側へ行くに従って長くなるように構成されている。
【0092】
図9及び
図10に示すように、前記上部連結機構220は、さらに、前記上部回動軸222との間に前記第1大腿フレーム20(1)が介在され得る距離だけ前記上部回動軸222からユーザー前後方向に離間された位置で前記装着面112に設けられた上部受け止め部材246を備えている。
【0093】
本実施の形態においては、前記上部連結機構220は、ユーザー幅方向内方側へ延びるように前記装着面112に設けられた上部受け止め軸247を備えており、前記上部受け止め軸247に支持された弾性ローラ248が前記上部受け止め部材246として作用している。
【0094】
図11及び
図12に、それぞれ、
図9及び
図10に対応した斜視図であって、前記上部締結部材225が前記上部回動軸222回り所定の解放位置に位置されている状態の斜視図を示す。
【0095】
図11及び
図12に示すように、前記上部締結部材225が前記上部回動軸222回り解放位置に位置された状態においては、前記歩行動作補助装置100Aを前記長下肢装具1に近接させる方向へ移動させることにより前記上部締結部材225及び前記上部受け止め部材246の間のスペース内に前記第1大腿フレーム20(1)を位置させることができ且つ前記第1大腿フレーム20(1)が前記スペース内に位置されている状態において前記歩行動作補助装置100Aを前記長下肢装具1から離間させる方向へ移動させることにより前記スペースから前記第1大腿フレーム20(1)を退出させることができるようになっている。
【0096】
さらに、前記スペース内に前記第1大腿フレーム20(1)が位置されている状態において前記上部締結部材225を前記上部回動軸222回りに解放位置(
図11及び
図12)から締結位置(
図9及び
図10)へ回動させると、前記カム部229が前記上部受け止め部材246と共働して前記第1大腿フレーム20(1)をユーザー前後方向に関し狭持し、これにより、前記歩行動作補助装置100Aの上部が前記第1大腿フレーム20(1)に連結された状態が現出される。
【0097】
図9~
図12に示すように、本実施の形態においては、前記上部締結部材225は、さらに、前記軸受部227から径方向外方へ延びる操作アーム230を有している。
【0098】
前記操作アーム230は、自由端と前記上部回動軸222の軸線との間の径方向長さが、前記カム部229の径方向最外端と前記上部回動軸222の軸線との間の径方向長さよりも大となるように、構成されている。
【0099】
斯かる構成により、前記操作アーム230を介して前記上部締結部材225を前記上部回動軸222回りに容易に回動させることを可能としつつ、前記第1大腿フレーム20(1)及び前記歩行動作補助装置100Aの上部に意に反した外力が付加した場合に、前記カム部229を介して前記上部締結部材225が前記上部回動軸222回りに回動されて前記歩行動作補助装置100Aの上部及び前記第1大腿フレーム20(1)の連結状態が解除されることを有効に防止することができる。
【0100】
また、
図9及び
図11に示すように、本実施の形態においては、前記上部締結部材225は、前記カム部229よりユーザー幅方向内方側において前記軸受部227から径方向外方へ延びる係合アーム232を有している。
【0101】
前記係合アーム232は、前記上部締結部材225及び前記上部受け止め部材246の間のスペース内に位置されている状態の前記第1大腿フレーム20(1)より、ユーザー幅方向内方側に位置するように、前記上部締結部材225に備えられている。
【0102】
前記係合アーム232には、前記上部締結部材225が前記上部回動軸222回りに解放位置から締結位置へ回動操作されて前記カム部229が前記上部受け止め部材246と共働して前記第1大腿フレーム20(1)をユーザー前後方向に関し狭持している状態において、前記上部受け止め軸247のうち前記上部受け止め部材246よりユーザー幅方向内方側へ延在した部位に係合する係合溝233が設けられており、前記係合溝233に前記上部受け止め軸247の内方延在部位が係入されることによって、前記歩行動作補助装置100Aの上部及び前記第1大腿フレーム20(1)の意に反したユーザー幅方向への相対移動が防止されるようになっている。
【0103】
なお、
図9~
図12における符号234は、前記第1大腿フレーム20(1)を前記上部締結部材225及び前記上部受け止め部材246の間のスペース内に位置させた状態で、前記上部締結部材225を狭持位置に位置させた際において、前記第1大腿フレーム20(1)及び前記歩行動作補助装置100Aの装着面112の間のユーザー幅方向に関する隙間を埋める為のスペーサであり、好ましくは、ゴム体とされる。
【0104】
次に、前記下部連結機構260について説明する。
図13に、前記歩行動作補助装置100Aが前記第1下腿フレーム40(1)に連結されている状態での前記下部連結機構260近傍の斜視図を示す。
なお、
図13においては、前記第1下腿フレーム40(1)を二点鎖線で示している。
【0105】
図5~
図8及び
図13に示すように、本実施の形態においては、前記駆動アーム150の先端部には、ユーザー前後方向に沿った回動軸205回り揺動可能とされた揺動部材200が設けられており、前記下部連結機構260は前記揺動部材200に設けられている。
【0106】
斯かる構成を備えることにより、前記上部連結機構220及び前記中間連結機構250と前記下部連結機構260とのユーザー幅方向に関する相対位置を適宜変更させることが可能となり、ユーザーの体格に応じてオーダーメイドされる種々の形状の長下肢装具1に適切な状態で前記歩行動作補助装置100Aを取り付けることが可能となる。
【0107】
即ち、前記長下肢装具1は、ユーザーの体格に合わせてオーダーメイドされるものであり、前記第1下腿フレーム40(1)に対する前記第1大腿フレーム20(1)のユーザー幅方向W(
図1参照)に関する傾斜角度及び/又は曲り形状は、長下肢装具1毎に相違する。
【0108】
この点に関し、前記駆動アーム150の先端部に前記揺動部材200をユーザー幅方向揺動可能に連結させ、前記揺動部材200に前記下部連結機構260を設けることにより、前記第1下腿フレーム40(1)に対する前記第1大腿フレーム20(1)のユーザー幅方向Wに関する傾斜角度及び/又は曲り形状が異なる種々の長下肢装具1に対して、前記歩行動作補助装置100Aを適切に装着させることができる。
【0109】
前記下部連結機構260は、前記上部連結機構220と実質的に同一構成を有している。
具体的には、
図13に示すように、前記下部連結機構260は、ユーザー幅方向内方側へ延びるように前記揺動部材200に設けられた下部回動軸262と、前記下部回動軸262に軸線回り回動可能に支持された下部締結部材265とを備えている。
【0110】
図14に、前記下部締結部材265を断面状態とした前記下部締結機構260近傍の斜視図を示す。
【0111】
図14に示すように、前記下部締結部材265は、前記下部回動軸262に支持された軸受部267と、前記軸受部267から径方向外方へ延在されたカム部269とを有している。
【0112】
前記カム部269は、外周面と前記下部回動軸262の軸線との間の径方向距離が前記下部回動軸262の軸線回り一方側へ行くに従って長くなるように構成されている。
【0113】
図13及び
図14に示すように、前記下部連結機構260は、さらに、前記下部回動軸262との間に前記第1下腿フレーム40(1)が介在され得る距離だけ前記下部回動軸262からユーザー前後方向に離間された位置で前記揺動部材200に支持された下部受け止め部材286を備えている。
【0114】
本実施の形態においては、前記下部連結機構260は、ユーザー幅方向内方側へ延びるように前記揺動部材200に設けられた下部受け止め軸287を備えており、前記下部受け止め軸287に支持された弾性ローラ288が前記下部止め部材286として作用している。
【0115】
図15に、
図13に対応した斜視図であって、前記下部締結部材265が前記下部回動軸262回り所定の解放位置に位置されている状態の斜視図を示す。
【0116】
図15に示すように、前記下部締結部材265が前記下部回動軸262回り解放位置に位置された状態においては、前記歩行動作補助装置100Aを前記長下肢装具1に近接させる方向へ移動させることにより前記下部締結部材265及び前記下部受け止め部材286の間のスペース内に前記第1下腿フレーム40(1)を位置させることができ且つ前記第1下腿フレーム40(1)が前記スペース内に位置されている状態において前記歩行動作補助装置100Aを前記長下肢装具1から離間させる方向へ移動させることにより前記スペースから前記第1下腿フレーム40(1)を退出させることができるようになっている。
【0117】
さらに、前記スペース内に前記第1下腿フレーム40(1)が位置されている状態において前記下部締結部材265を前記下部回動軸262回りに解放位置(
図15)から締結位置(
図13及び
図14)へ回動操作させると、前記カム部269が前記下部受け止め部材286と共働して前記第1下腿フレーム40(1)をユーザー前後方向に関し狭持し、これにより、前記歩行動作補助装置100Aの下部が前記第1下腿フレーム40(1)に連結された状態が現出される。
【0118】
図13~
図15に示すように、本実施の形態においては、前記下部締結部材265は、さらに前記軸受部267から径方向外方へ延びる操作アーム270を有している。
【0119】
前記操作アーム270は、自由端と前記下部回動軸262の軸線との間の径方向長さが、前記カム部269の径方向最外端と前記下部回動軸262の軸線との間の径方向長さよりも大となるように、構成されている。
【0120】
斯かる構成により、前記操作アーム270を介して前記下部締結部材265を前記下部回動軸262回りに容易に回動させることを可能としつつ、前記第1下腿フレーム40(1)及び前記歩行動作補助装置100Aの下部に意に反した外力が付加した場合に、前記カム部269を介して前記下部締結部材265が前記下部回動軸262回りに回動されて前記歩行動作補助装置100Aの下部及び前記第1下腿フレーム40(1)の連結状態が解除されることを有効に防止することができる。
【0121】
また、
図13~
図15に示すように、本実施の形態においては、前記下部締結部材265は、前記カム部269よりユーザー幅方向内方側において前記軸受部267から径方向外方へ延びる係合アーム272を有している。
【0122】
前記係合アーム272は、前記下部締結部材265及び前記下部受け止め部材286の間のスペース内に位置されている状態の前記第1下腿フレーム40(1)より、ユーザー幅方向内方側に位置するように、前記下部締結部材265に備えられている。
【0123】
前記係合アーム272には、前記下部締結部材265が前記下部回動軸262回りに解放位置から締結位置へ回動操作されて前記カム部269が前記下部受け止め部材286と共働して前記第1下腿フレーム40(1)をユーザー前後方向に関し狭持している状態において、前記下部受け止め軸287のうち前記下部受け止め部材286よりユーザー幅方向内方側へ延在した部位に係合する係合溝273が設けられており、前記係合溝273に前記下部受け止め軸287の内方延在部位が係入されることによって、前記歩行動作補助装置100Aの下部及び前記第1下腿フレーム40(1)の意に反したユーザー幅方向への相対移動が防止されるようになっている。
【0124】
なお、前記下部連結機構260にも、前記第1下腿フレーム40(1)を前記下部締結部材265及び前記下部受け止め部材286の間のスペース内に位置させた状態で、前記下部締結部材265を狭持位置に位置させた際において、前記第1下腿フレーム40(19)及び前記揺動部材200の間のユーザー幅方向に関する隙間を埋める為のスペーサ274が設けられる。
【0125】
斯かる構成の前記歩行動作補助装置100Aは、第1姿勢(
図16(a))によって左脚用長下肢装具に装着可能とされると共に、第1姿勢からユーザーの体幹軸回り180°回転された第2姿勢(
図16(b))によって右脚用長下肢装具に装着可能とされる。
【0126】
次に、前記歩行動作補助装置100Aの制御構造について説明する。
図17に、前記歩行動作補助装置100Aの制御ブロック図を示す。
前記歩行動作補助装置100Aは、前記歩行動作状態検出センサ170として、大腿姿勢検出手段を有しており、前記制御装置500は、大腿位相角に基づいて歩行周期中の歩行状態を認識し、当該歩行状態に適した歩行補助力が付与されるように前記電動モータ130の作動制御を行うように構成されている。
【0127】
即ち、前記歩行動作補助装置100Aは、補助力を付与する部位である下腿では無く、下腿とは異なる部位である大腿の動きを検出し、この大腿の動きに基づいて補助力付与対象部位である下腿に対して歩行補助力を付与するように構成されている。
【0128】
前記大腿姿勢検出手段は、ユーザーの大腿の前後揺動角度である股関節角度に関連する角度関連信号を検出可能とされている。
【0129】
そして、
図17に示すように、前記制御装置200は、前記角度関連信号に基づいて大腿位相角を算出する大腿位相角算出手段550と、前記大腿位相角を歩行周期中の歩行状態(歩行動作タイミング)に変換する歩行動作タイミング算出手段560と、前記歩行動作タイミングにおいて出力すべきトルク値を算出する補助トルク算出手段570と、前記電動モータの作動制御を司る電動モータ制御手段580として作用する。
【0130】
具体的には、
図17に示すように、前記制御装置500は、前記大腿姿勢検出手段510や人為操作部材等から入力される信号に基づいて演算処理を実行する制御演算手段を含む制御部501と、制御プログラムや制御データ等を記憶するROM,設定値等を電源を切っても失われない状態で保存し且つ前記設定値等が書き換え可能とされた不揮発性記憶手段及び前記演算部による演算中に生成されるデータを一時的に保持するRAM等を含む記憶部502とを有している。
【0131】
前記大腿姿勢検出手段510は、一歩行周期中において、予め定められた所定サンプリングタイミング毎に前記角度関連信号を検出する。
【0132】
前記大腿姿勢検出手段510は、大腿の前後揺動角度(股関節角度)を直接又は間接的に検出し得る限り、ジャイロセンサ、加速度センサ、ロータリーエンコーダ、さらには、筋電流や筋肉の堅さを測定するセンサ等の種々の形態を有し得る。
【0133】
例えば、前記大腿姿勢検出手段510が加速度センサのみを有するように構成することも可能であり、この場合には、股関節角度を算出することなく、前記加速度センサの加速度(もしくは位置)と速度から歩行中の大腿位相角を算出することができる。
【0134】
なお、本実施の形態においては、前記大腿姿勢検出手段510は、大腿の前後揺動角速度を検出可能な3軸角速度センサ(ジャイロセンサ)511を有するものとされており、前記大腿位相角算出手段550が、前記3軸角速度センサ511によって検出される大腿の角速度を積分することで、大腿の前後揺動角度である股関節角度を算出するように構成されている。
【0135】
なお、本実施の形態に係る歩行動作補助装置には、
図17に示すように、3軸加速度センサ515が備えられており、前記大腿位相角算出手段550は、静止時に前記3軸加速度センサ515によって検出される鉛直軸を基準とした股関節角度(大腿の前後揺動角度)を算出するように構成されている。
【0136】
これに代えて、前記3軸加速度センサ515を有さないように構成することも可能である。
この場合には、前記大腿位相角算出手段550によって算出される股関節角度(大腿の前後揺動角度)は、前記歩行動作補助装置1の主電源がオンされた時点を基準とした大腿前後揺動角度となる。
【0137】
従って、この場合には、前記大腿位相角算出手段550は、ハイパスフィルターを用いて股関節角度(大腿の前後揺動角度)の基準が、その大腿前後揺動角度の中央値となるように補正することができる。
【0138】
若しくは、前記大腿位相角算出手段550は、ハイパスフィルターを用いる代わりに、算出した股関節角度(大腿の前後揺動角度)の正方向最大値と負方向最大値との偏差を検出し、前記偏差に基づき股関節角度(大腿の前後揺動角度)の基準が、その大腿前後揺動角度の中央値となるように補正することができる。
【0139】
ロータリーエンコーダによって体幹軸に対する大腿の前後揺動角度を検出し、この検出値を股関節角度として用いることも可能であるが、本実施の形態においては、前記3軸角速度センサ511によって検出される角速度に基づいて股関節角度を算出することにより、前記歩行動作補助装置の設計自由度を向上させている。
【0140】
即ち、ロータリーエンコーダによって股関節角度(体幹軸に対する大腿前後揺動角度)を検出する場合には、胴体に固定された胴体側検出子と、大腿と一体的に揺動するように大腿に固定された大腿側検出子との相対移動角度を検出する必要があり、従って、前記固体側検出子及び前記大腿側検出子がそれぞれ胴体及び大腿に対して位置ズレしないように、前記両検出子を装着する必要がある。
【0141】
これに対し、前記3軸角速度センサ511によって検出される角速度に基づいて股関節角度を算出する方法によれば、前述のような制限を受けることが無く、前記歩行動作補助装置の設計自由度を向上させることができる。
【0142】
前述の通り、本実施の形態に係る歩行動作補助装置においては、前記大腿姿勢検出手段510は、前記3軸角速度センサ511に加えて、3軸加速度センサ515を有している。
【0143】
この場合、前記大腿位相角算出手段550は、前記3軸角速度センサ511からの角速度データに基づき算出される第1オイラー角の高周波成分と前記3軸加速度センサ515からの加速度データに基づき算出される第2オイラー角の低周波成分とを合算して合算オイラー角を算出し、前記合算オイラー角から算出される股関節角度と前記股関節角度から算出される股関節角速度とに基づいて大腿位相角を算出するように構成される。
【0144】
詳しくは、
図17に示すように、前記大腿位相角算出手段550は、サンプリングタイミング毎に前記3軸角速度センサ511からセンサ座標軸を基準とした角速度データを入力し、前記角速度データを所定の変換式を用いてセンサ座標軸とグローバル座標軸(鉛直方向を基準とする空間座標軸)との相関を示す角速度データ(オイラー角速度)に変換する。
そして、前記大腿位相角算出手段550は、前記角速度データ(オイラー角速度)を積分することで前記第1オイラー角を算出する。
【0145】
好ましくは、前記大腿位相角算出手段550は、静止時に前記3軸角速度センサ511から入力される角速度データを用いて、所定サンプリングタイミング毎に前記3軸角速度センサ511から入力されるセンサ座標軸を基準とした角速度データのドリフト除去を行うことができる。
【0146】
また、前記大腿位相角算出手段550は、サンプリングタイミング毎に前記3軸加速度センサ515からセンサ軸を基準とした加速度データをローパスフィルタ520を介して入力し、静止時に入力される加速度データと重力加速度とに基づき、前記ローパスフィルタ520を介して入力された前記加速度データから、センサ座標軸とグローバル座標軸(鉛直方向を基準とする空間座標軸)との相関を示す前記第2オイラー角を算出する。
【0147】
そして、前記大腿位相角算出手段550は、ハイパスフィルター530を介して得られる前記第1オイラー角の高周波成分とローパスフィルタ535を介して得られる前記第2オイラー角の低周波成分とを合算して得られる前記合算オイラー角及び大腿の向きを示す単位ベクトルから、股関節角度θを算出する。
【0148】
好ましくは、前記大腿位相角算出手段550は、前記加速度センサ515からの加速度データに基づきヒールコンタクトを検出し、ヒールコンタクト検出時には前記3軸角速度センサ511からの角速度データから算出される補正オイラー角を前記合算オイラー角に加えることで、ドリフト除去を図ることができる。
【0149】
大腿位相角φは下記アルゴリズムによって算出される。
前記大腿位相角算出手段550は、サンプリングタイミング毎に、股関節角度θを算出すると共に、これを微分して股関節角速度ωを算出する。
【0150】
例えば、前記大腿位相角算出手段550は、歩行周期基準タイミングから第k番目のサンプリングタイミングSk(kは1以上の整数)での股関節角度θkを算出すると、これを微分して当該サンプリングタイミングSkでの股関節角速度ωkを算出する。
【0151】
そして、前記大腿位相角算出手段550は、前記サンプリングタイミングSkでの股関節角度θk及び股関節角速度ωkに基づき、前記サンプリングタイミングSkでの大腿位相角φk(=-Arctan(ωk/θk))を算出する。
【0152】
前記歩行動作補助装置100Aにおいては、前記大腿位相角算出手段550は、角度関連信号に基づいて股関節角度θ及び股関節角速度ωを算出すると、この股関節角度θ及び股関節角速度ωによって画される大腿動作状態を位相角平面上にプロットしてトラジェクトリ線図を作成するように構成されている。
【0153】
図18に、股関節角度θ及び股関節角速度ωによって画される大腿動作状態(歩行状態)を一歩行周期に亘ってプロットすることによって得られるトラジェクトリ線図を示す。
図18に示すように、股関節角度θ及び股関節角速度ωによって定まる大腿位相角φは、一歩行周期において0~2πの間で変化する。
【0154】
詳しくは、大腿が鉛直軸より前方及び後方に位置されている状態の股関節角度をそれぞれ「正」及び「負」とし、大腿が前方及び後方へ向けて揺動されている状態の股関節角速度をそれぞれ「正」及び「負」とする。
【0155】
この条件で、股関節角度が「正」の方向に最大で且つ股関節角速度が「ゼロ」の状態(
図18の点P0)の位相角を0とすると、
図18の歩行領域A1(股関節角度θが「正」の方向に最大で且つ股関節角速度ωが「ゼロ」の状態から股関節角度θが「ゼロ」で且つ股関節角速度ωが「負」の方向に最大となる状態までの歩行領域)は位相角0~π/2に相当する。
【0156】
また、
図18中の歩行領域A2(股関節角度θが「ゼロ」で且つ股関節角速度が「負」の方向に最大の状態から股関節角度が「負」の方向に最大で且つ股関節角速度が「ゼロ」となる状態までの歩行領域)は位相角π/2~πに相当する。
【0157】
さらに、
図18中の歩行領域A3(股関節角度θが「負」の方向に最大で且つ股関節角速度ωが「ゼロ」の状態から股関節角度θが「ゼロ」で且つ股関節角速度ωが「正」の方向に最大となる状態までの歩行領域)は位相角π~3π/2に相当する。
【0158】
また、
図18中の歩行領域A4(股関節角度θが「ゼロ」で且つ股関節角速度が「正」の方向に最大の状態から股関節角度が「正」の方向に最大で且つ股関節角速度が「ゼロ」となる状態までの歩行領域)は位相角3π/2~2πに相当する。
【0159】
一歩行周期当たりに複数のサンプリングタイミングが含まれるように前記大腿姿勢検出手段510のサンプリングタイミングが定められており、前記大腿位相角算出手段550は、サンプリングタイミング毎に大腿位相角φを算出する。
【0160】
本実施の形態においては、前記大腿位相角算出手段550は、股関節角度θk及び股関節角速度ωkによって画されるトラジェクトリ線図上のプロット点Pkのベクトル長(トラジェクトリ線図の原点(即ち、股関節角度θ及び股関節角速度ωがゼロの点)とプロット点Pkとの間の距離)が所定の閾値を越えているか否かを判断し、前記ベクトル長が所定の閾値を越えていると、股関節角度θk及び股関節角速度ωkに基づく大腿位相角φkを算出して、大腿位相角φkを前記歩行動作タイミング算出手段560に送信する。
【0161】
これに対し、前記ベクトル長が所定の閾値以下の場合には、前記大腿位相角算出手段550は、アクチュエータ作動禁止信号を出力する。
斯かる構成を備えることにより、歩行動作が開始されていないにも拘わらず、前記歩行動作補助装置100が作動することを有効に防止することができる。
【0162】
即ち、前記歩行動作補助装置100Aを装着したユーザーが歩行動作を開始する前に、意に反して微少な範囲で姿勢変動を起こす場合がある。特に、ユーザーが片麻痺等を有する場合には、そのような事態が生じ易い。
【0163】
前記大腿位相角算出手段550が前記構成を備えていれば、このような微少な姿勢変動はベクトル長の短いベクトルとして検出される。
従って、股関節角度θk及び股関節角速度ωkによって画されるベクトルVk(
図18参照)のベクトル長が所定の閾値を越えている場合にのみ、歩行動作が行われていると判断することにより、歩行動作が開始されていないにも拘わらず、意に反して前記アクチュエータユニット100が作動することを有効に防止することができる。
【0164】
前記歩行動作タイミング算出手段560は、大腿位相角φと歩行周期中の歩行動作タイミングとの関係を規定した位相パターン関数を有しており、前記大腿位相角算出手段550から送られてくる一のサンプリングタイミングでの大腿位相角φを前記位相パターン関数に適用して前記一のサンプリングタイミングが歩行周期中のどの歩行動作タイミングにあたるか(一歩行周期を100%とした場合に、大腿位相角φのサンプリングタイミングがどのタイミングに相当するか)を算出する。
【0165】
さらに、前記歩行動作タイミング算出手段560は、歩行周期が完了する毎に、当該完了した歩行周期における大腿位相角φと前記大腿位相角φに対応した歩行動作タイミングとが関連付けられた最新位相角データと、その時点で記憶している過去位相角データとを含む有効位相角データに対して最小二乗法によって最新の位相パターン関数を算出し、算出した最新の位相パターン関数を上書き保存する。
【0166】
詳しくは、
図19に示すように、前記歩行動作タイミング算出手段560には、初期状態において、前記位相パターン関数として、初期位相パターン関数φ(x)(C0)が保存されている。
この初期位相パターン関数φ(x)(C0)はユーザー毎に作成され、予め前記歩行動作タイミング算出手段560に記憶されている。
【0167】
例えば、第1回目の歩行周期C1中において、前記大腿位相角算出手段550が一のサンプリングタイミングSkでの大腿位相角としてφkを算出し、前記歩行動作タイミング算出手段560に送信したとする。
【0168】
この時点では第1回目の歩行周期C1が完了していないから、前記歩行動作タイミング算出手段560は、前記位相パターン関数として、前記初期位相パターン関数φ(x)(C0)を有している。
【0169】
従って、前記歩行動作タイミング算出手段560は、
図19に示すように、前記大腿位相角算出手段550から送られてきた大腿位相角φkを前記初期位相パターン関数φ(x)(C0)に適用して、前記一のサンプリングタイミングSkに対応した保存周期歩行動作タイミングtkを算出し、前記補助トルク算出手段570に送信する。
【0170】
前記歩行動作タイミング算出手段560は、斯かる処理を第1回目の歩行周期C1が完了するまで繰り返す。
なお、一歩行周期の完了は、例えば、股関節角度θ及び股関節角速度ωによって画される大腿位相角φが予め設定されている歩行周期基準角に戻ったか否かによって判断することができる。
【0171】
前記歩行動作タイミング算出手段560は、第1回目の歩行周期C1が完了すると、当該完了した第1回目の歩行周期C1中において前記大腿位相角算出手段550から受信した大腿位相角と前記大腿位相角に対応した歩行動作タイミングとが関連付けられた状態の最新位相角データを、その時点で記憶している過去位相角データ(この例においては、初期位相パターン関数φ(x)(C0)によって生成される移送角データ)に加えて、その時点で有効な有効位相角データを生成し、前記有効位相角データに対して最小二乗法を用いて、最新位相角パターン関数(この例においては、第1歩行周期完了時位相パターン関数φ(x)(C1))を算出し、前記最新位相角パターン関数を上書き保存する。
【0172】
具体的には、前記歩行動作タイミング算出手段560は、第1歩行周期C1が完了すると、その時点で有効な前記有効位相角データに対し最小二乗法によって、
φ(x)(C1)=a0(1)+a1(1)x+a2(1)x2+・・・+am(1)xm
の係数パラメータを算出し、前記φ(x)(C1)を大腿位相角の位相パターン関数として保存する。上式において、mは正の整数である。
【0173】
そして、前記歩行動作タイミング算出手段560は、第2歩行周期C2中においては、その時点で記憶している第1歩行周期完了時位相パターン関数φ(x)(C1)を用いて、保存周期歩行動作タイミングtkを算出する。
【0174】
第2歩行周期C2が完了すると、前記歩行動作タイミング算出手段560は、その時点で有効な前記有効位相角データに対し最小二乗法によって、
φ(x)(C2)=a0(2)+a1(2)x+a2(2)x2+・・・+am(2)xm
の係数パラメータを算出し、前記φ(x)(C2)を大腿位相角の位相パターン関数として上書き保存する。
【0175】
そして、前記歩行動作タイミング算出手段560は、第3歩行周期C3中においては、その時点で記憶している第2歩行周期完了時位相パターン関数φ(x)(C2)を用いて、保存周期歩行動作タイミングを算出する。
【0176】
前記歩行動作タイミング算出手段560は斯かる処理を繰り返す。
なお、前記有効位相角データは、その時点で完了している全ての歩行周期における位相角データを含むものとすることも可能であるし、これに代えて、前記歩行動作タイミング算出手段560における記憶容量に応じて、直近の所定回数(例えば、100回)の歩行周期における位相角データだけに制限することも可能である。
【0177】
本実施の形態においては、前記歩行動作タイミング算出手段560は下記構成を備えることによって、異常な位相角データが位相角パターン関数の算出時の有効位相角データに含まれることを防止している。
【0178】
即ち、前記歩行動作タイミング算出手段560は、前記大腿位相角算出手段550から受け取った一のサンプリングタイミングSkでの大腿位相角φkに基づき算出される現在周期歩行動作タイミングTkと、前記大腿位相角φkをその時点で記憶している前記位相パターン関数φ(x)に適用して算出される保存周期歩行動作タイミングtkとの差異ΔTを算出する。
【0179】
ここで、前記現在周期歩行動作タイミングTkは、
Tk=(φk/2π)×100(%)
によって算出される。
【0180】
前記差異ΔTの絶対値が所定閾値以下の場合には、前記歩行動作タイミング算出手段560は、歩行周期完了時において新たな位相パターン関数φ(x)を算出する際に用いる有効位相角データとして、前記現在周期歩行動作タイミングTkを記憶する。
【0181】
即ち、前記差異ΔTの絶対値が所定閾値以下の場合には、前記歩行動作タイミング算出手段560は、一の歩行周期完了時に最新位相パターン関数を算出する際に、当該一の歩行周期において前記大腿位相角算出手段550から受信した大腿位相角φに関連付ける歩行動作タイミングとして、前記現在周期歩行動作タイミングTkを記憶する。
【0182】
これに対し、前記差異ΔTの絶対値が所定閾値を越える場合には、前記歩行動作タイミング算出手段560は、歩行周期完了時において最新位相パターン関数を算出する際に用いる有効位相角データとして、前記保存周期歩行動作タイミングtkを記憶する。
【0183】
即ち、前記差異ΔTの絶対値が所定閾値を越える場合には、前記歩行動作タイミング算出手段560は、一の歩行周期完了時に最新位相パターン関数を算出する際に、当該一の歩行周期において前記大腿位相角算出手段550から受信した大腿位相角φに関連付ける歩行動作タイミングとして、前記保存周期歩行動作タイミングtkを記憶する。
【0184】
斯かる構成を備えることにより、何らかの理由によって異常値となった現在周期歩行動作タイミングTkが位相パターン関数算出時の対象データ(有効位相角データ)に含まれることを有効に防止することができる。
【0185】
前記補助トルク算出手段570は、前記制御装置500に保存されている、歩行周期中の歩行動作タイミングと出力すべきトルク値との関係を規定した補助力制御データに、前記歩行動作タイミング算出手段560から送られてくる歩行動作タイミングtkを適用して、サンプリングタイミングSkにおいて出力すべきトルク値を算出する。
【0186】
前述の通り、本実施の形態に係る前記歩行動作補助装置100Aは、左脚用長下肢装具1L及び右脚用長下肢装具1Rの何れにも装着可能とされている。
従って、前記制御装置500は、補助力制御データとして、前記歩行動作補助装置100Aが左脚用長下肢装具1L及び右脚用長下肢装具1Rに装着されている場合にそれぞれ使用される左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データを有している。
なお、左脚用補助力制御データ及び右脚用補助力制御データの選択方法については、後述する。
【0187】
前記駆動体制御手段580は、前記補助トルク算出手段570によって算出されたトルク値の補助力を出力するように、前記駆動体の作動制御を実行する。
【0188】
このように、前記歩行動作補助装置100Aは、大腿位相角φに基づいて歩行周期中の歩行状態(歩行動作タイミング)を算出し、前記歩行状態に応じた補助力を出力するように構成されている。
従って、歩行周期中の歩行状態に適した補助力を出力することができる。
【0189】
また、前記歩行動作補助装置100Aは、一のサンプリングタイミングでの大腿位相角φをその時点で記憶されている位相パターン関数に適用して、当該一のサンプリングタイミングの歩行状態(歩行動作タイミング)を算出するように構成されている。
従って、歩行周期中にイレギュラーな歩行動作が生じたとしても、修正された状態の補助力を出力することができる。
【0190】
また、前記歩行動作補助装置100Aにおいては、前記大腿位相角算出手段550は、股関節角度θ及び股関節角速度ωによって画されるトラジェクトリ線図上のプロット点のベクトル長が所定の閾値を越えている場合にのみ、股関節角度θ及び股関節角速度ωに基づく大腿位相角φを算出して、大腿位相角φを前記歩行動作タイミング算出手段に送信する一方で、前記ベクトル長が所定の閾値以下の場合には、アクチュエータ作動禁止信号を出力する。
【0191】
従って、前記歩行動作補助装置100Aを装着したユーザーが意に反して姿勢変動を起こした場合に、歩行動作を開始していないにも拘わらず、前記歩行動作補助装置100Aが歩行補助力を出力することを有効に防止することができる。
【0192】
さらに、前記歩行動作補助装置100Aは、前述の通り、大腿位相角φに基づき一の歩行周期中における歩行状態(歩行動作タイミング)を認識した上で、前記駆動体110によって下腿に対して歩行補助力を付与するように構成されている。
従って、脳卒中等によって片麻痺を有するユーザーに対しても的確な歩行補助力を供給することができる。
【0193】
即ち、電動モータ等の駆動体によって歩行補助力を付与するように構成された従来の歩行補助装置は、前記駆動体によって補助力が付与される制御対象部位自体の動きを検出し、その検出結果に基づき前記駆動体の作動制御を行うように構成されている。
【0194】
例えば、大腿に対して歩行補助力を供給する従来の歩行補助装置においては、大腿の動きの検出結果に基づき、大腿に対して歩行補助力を付与する駆動体の作動制御を行うものとされている。
また、下腿に対して歩行補助力を供給する従来の歩行補助装置においては、下腿の動きの検出結果に基づき、下腿に対して歩行補助力を付与する駆動体の作動制御を行うものとされている。
【0195】
しかしながら、脳卒中等の為に片麻痺を有する患者の場合、大腿の歩行動作(股関節回りの前後揺動動作)は比較的正常に行えるものの、下腿の歩行動作(膝関節回りの前後揺動動作)は正常に行えないことが多い。
【0196】
このような患者に対して下腿への歩行補助力を付与しようとすると、前記従来の歩行補助装置においては、正常な歩行動作を行えない下腿の動きに基づいて、下腿に対して歩行補助力を提供する駆動体の作動制御を行うことになり、的確な歩行補助力を提供することができないおそれがある。
【0197】
これに対し、本実施の形態に係る前記歩行動作補助装置100Aは、前述の通り、大腿位相角φに基づいて、下腿に対して歩行補助力を付与する前記電動モータ130の作動制御を行うように構成されている。
従って、ユーザーが脳卒中等によって片麻痺を有する場合であっても、下腿に対して的確な歩行補助力を供給することができる。
【0198】
次に、前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データの選択方法について説明する。
【0199】
本実施の形態においては、前記制御装置500は、前記第1下腿フレーム40(1)が装具側枢支軸線X回り前方側への揺動端に位置している際(即ち、下腿最大伸展時)に前記回転センサ160から入力される検出信号を基準値として認識し、前記回転センサ160から入力される基準値以外の検出信号に基づき前記第1下腿フレーム40(1)の揺動可能方向を認識し、これに応じて、前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを自動的に選択するように構成されている。
【0200】
斯かる構成を備えた前記歩行動作補助装置100Aによれば、装着されている脚の左右と前記制御装置500が補助力を算出する際に用いるべき補助力制御データの左右とが異なる事態が生じることを有効に防止することができ、適切な歩行補助力を提供することができる。
【0201】
本実施の形態においては、前記回転センサ160としてアブソリュート型ロータリエンコーダが用いられている。
前記アブソリュート型ロータリエンコーダは前記基準値に対応した位置をゼロ点位置として設定される。
【0202】
これに代えて、前記回転センサ160としてインクリメンタル型ロータリエンコーダを用いることも可能である。
【0203】
前記回転センサ160として前記インクリメンタル型ロータリエンコードが備えられている構成(以下、インクリメンタル型ロータリエンコーダ構成という)の一形態(第1形態)においては、前記歩行動作補助装置100Aに人為操作可能な基準スイッチが備えられる。
【0204】
この場合、前記制御装置500は、前記基準スイッチのオン状態時に前記回転センサ160から入力される検出信号を前記基準値と認識するように構成される。
【0205】
前記インクリメンタル型ロータリエンコーダ構成の他形態(第2形態)においては、前記制御装置500は、前記回転センサ160(前記インクリメンタル型ロータリエンコーダ)から入力される検出信号に基づき前記駆動アーム150の駆動側枢支軸線Y回りの角加速度を算出し、前記角加速度が所定のしきい値を超えた時点を前記第1下腿フレーム40(1)の最大伸展位置と認識し、その時点で入力された前記回転センサ160の検出信号を前記基準値と認識するように構成される。
【0206】
詳しくは、前述の通り、下腿最大伸展時には、前記第1下腿フレーム40(1)の上端傾斜面45(
図3参照)が前記第1大腿フレーム20(1)の下端傾斜面25(
図3参照)に当接することで、前記第1下腿フレーム40(1)は前記第1大腿フレーム20(1)に対してそれ以上前方への揺動が禁止される。
【0207】
ここで、前記第1下腿フレーム40(1)と共に揺動する前記駆動アーム150の角速度変化の割合(角加速度)を考えると、下腿が大腿に対して屈曲している状態から伸展して最大伸展状態となる際に、前記駆動アーム150の角速度が瞬間的にゼロとなり、その時点において前記駆動アーム150の角速度の変化割合(角加速度)が最も大きくなると考えられる。
【0208】
従って、前記所定のしきい値を、下腿最大伸展時の前記駆動アーム150の角加速度よりは低く、且つ、下腿最大伸展時以外の前記駆動アーム150の角速度よりは高くなるように設定することで、下腿最大伸展時を検出することができる。
この所定のしきい値は、ユーザー毎に実際に歩行実験することによって知ることができる。
【0209】
前記インクリメンタル型ロータリエンコーダ構成のさらに他の形態(第3形態)においては、前記歩行動作補助装置100Aに、前記第1下腿フレーム40(1)が最大伸展位置に位置したことを直接又は間接的に検出する最大伸展位置検出センサが備えられる。
【0210】
前記最大伸展位置検出センサは、例えば、下腿最大伸展時に前記駆動アーム150が位置すべき位置に、当該駆動アーム150が位置しているか否かを検出するマイクロスイッチや距離センサとされ得る。
【0211】
この場合、前記制御装置500は、前記最大伸展位置検出センサが最大伸展位置を検出した際に前記回転センサ160から入力される検出信号を前記基準位置と認識するように構成される。
【0212】
本実施の形態においては、前記制御装置500は、前記歩行動作補助装置100Aの主電源がオフからオンへ切り換えられた後に前記回転センサ160から入力される基準値以外の最初の検出信号に基づき、前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき一方の補助力制御データの選択を行うように構成されている。
【0213】
なお、本実施の形態に係る前記歩行動作補助装置100Aは、前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうちの使用すべき補助力制御データの選択を前記制御装置500が自動的に行うように構成されているが、これに代えて、前記補助力制御データの選択を人為操作によって行うと共に、この人為操作に誤操作が生じた場合にはユーザーに対して異常告知を行うように変形することも可能である。
【0214】
この変形例は、前記歩行動作補助装置100Aに比して、さらに、人為操作可能な左脚及び右脚選択スイッチと、ユーザーに異常の有無を告知するランプ又は警報等の告知手段とを備えている。
【0215】
前記変形例においては、前記制御装置500は、前記回転センサ160から入力される基準値以外の検出信号に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを判断すると共に、使用すべきと判断した補助力制御データが前記左脚及び右脚選択スイッチによって人為選択されている補助力制御データと異なる場合には前記告知手段を介してユーザーに異常を告知するように構成される。
【0216】
前記変形例において、好ましくは、前記制御装置500は、前記回転センサ160からの信号に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、前記電動モータ130を作動停止させるように構成され得る。
【0217】
これに代えて、前記制御装置500は、前記回転センサ160からの信号に基づき使用すべきと判断した補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、前記告知手段による異常の告知に加えて、人為操作によって選択された補助力制御データの代わりに前記回転センサ160からの信号に基づき使用すべきと判断した補助力制御データを採用し、当該補助力制御データに前記算出歩行動作タイミングを適用して前記第1下腿フレーム40(1)に付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータ130の作動制御を行うように構成することも可能である。
【0218】
実施の形態2
以下、本発明に係る歩行動作補助装置の他の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図20に、本実施の形態に係る歩行動作補助装置300Aの模式側面図であって、前記歩行動作補助装置300Aを左脚用長下肢装具1Lに装着させる第1姿勢でユーザー幅方向内方側から視た模式側面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付している。
【0219】
前記実施の形態1に係る歩行動作補助装置100Aは、前記回転センサ160の検出結果に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを選択するように構成されている。
【0220】
これに対し、本実施の形態に係る歩行動作補助装置300Aは回動方向検出機構を備えており、前記制御装置500は、前記回動方向検出機構の検出結果に基づき、前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを選択するように構成されている。
【0221】
前記回動方向検出機構は、前記下腿フレーム40が装具側枢支軸線X回り前方側への揺動端に位置されている際(即ち、下腿最大伸展時)に前記駆動アーム150が駆動側枢支軸線Y回りに位置する揺動位置を基準位置とした場合に、前記駆動アーム150が前記基準位置から駆動側枢支軸線Y回り一方側の第1方向R1及び他方側の第2方向R2へ回動したことをそれぞれ検出する第1及び第2回動センサ310、320を有している。
前記第1及び第2回動センサ310、320は、例えば、マイクロスイッチや距離センサとされ得る。
【0222】
斯かる構成を備えた本実施の形態に係る歩行動作補助装置300Aにおいても、前記実施の形態1におけると同様の効果を得ることができる。
【0223】
なお、前記回動方向検出機構は第1及び第2回動センサ310、320の2つのセンサによって前記駆動アーム150の回動方向を検出するように構成されている。
これに代えて、単一のセンサを有する回動方向検出機構によって前記駆動アームの回動方向を検出するように構成することも可能である。
【0224】
図21に、単一のセンサを有する回動方向検出機構を備えた、本実施の形態の第1変形例に係る歩行動作補助装置300Bの模式側面図であって、前記歩行動作補助装置300Bを左脚用長下肢装具1Lに装着させる第1姿勢でユーザー幅方向内方側から視た模式側面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1及び2におけると同一部材には同一符号を付している。
【0225】
図21に示すように、前記第1変形例300Bにおいては、前記回動方向検出機構は、前記駆動アーム150と共に駆動側枢支軸線Y回りに回動する連動アーム345と、トグルスイッチ型の回動センサ340とを有している。
【0226】
前記連動アーム345は、前記駆動アーム150の基端部から径方向外方へ延在されている。
【0227】
前記回動センサ340は、駆動側枢支軸線Yと平行なセンサ軸線Z回り回動可能とされた被検出アーム342と、前記被検出アーム342のセンサ軸線Z回りの回動方向を検出するセンサ本体341とを有している。
【0228】
前記被検出アーム342は、前記連動アーム345の駆動側枢支軸線Y回りの回動に応じてセンサ軸線Z回りに回動するように、前記連動アーム345の先端部に係合されている。
【0229】
斯かる構成を備えた第1変形例においても、本実施の形態におけると同様の効果を得ることができる。
【0230】
図22に、単一のセンサを有する回動方向検出機構を備えた、第2変形例に係る歩行動作補助装置300Cの模式側面図であって、前記歩行動作補助装置300Cを左脚用長下肢装具1Lに装着させる第1姿勢でユーザー幅方向内方側から視た模式側面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1及び2におけると同一部材には同一符号を付している。
【0231】
図22に示すように、前記第2変形例300Cにおいては、前記回動方向検出機構は、前記駆動アーム150と共に駆動側枢支軸線Y回りに回動する連動アーム355と、スライドスイッチ型又はスライド可変抵抗型のセンサ350とを有している。
【0232】
前記連動アーム355は、前記駆動アーム150の基端部から径方向外方へ延在されている。
前記連動アーム355には、当該連動アーム355の長手方向に沿った長孔が設けられている。
【0233】
前記センサ350は、基端部が前記歩行動作補助装置300Cの装着状態においてユーザー前後方向に移動可能に支持された被検出アーム352と、前記被検出アーム352の移動方向を検出するセンサ本体351とを有している。
【0234】
前記被検出アーム352の先端部には前記長孔に係入される係合ピンが設けられており、前記連動アーム355が前記駆動アーム150と共に駆動側枢支軸線Y回りに回動すると、前記長孔に係入されている前記係合ピンが、前記連動アーム355の回動方向に応じた方向に押動され、これにより、前記被検出アーム352が対応する方向へスライドする。
【0235】
前記センサ本体351は、スライドスイッチ又は可変抵抗センサとされており、前記被検出アーム352のスライド方向を検出する。
【0236】
斯かる構成を備えた第2変形例においても、本実施の形態におけると同様の効果を得ることができる。
【0237】
図23に、本実施の形態の第3変形例に係る歩行動作補助装置300Dの模式側面図であって、前記歩行動作補助装置300Dを左脚用長下肢装具1Lに装着させる第1姿勢でユーザー幅方向内方側から視た模式側面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1及び2におけると同一部材には同一符号を付している。
【0238】
前記第3変形例に係る歩行動作補助装置300Dは、前記歩行動作補助装置300Aに比して、前記回動方向検出機構に代えて、回動方向検出機構を有している。
【0239】
前記回動方向検出機構は、
図23に示すように、前記駆動アーム150と共に駆動側枢支軸線Y回りに回動する被検出体360と、前記被検出体360との間の距離を検出する距離センサ370とを有している。
【0240】
前記被検出体360は、前記駆動アーム150が基準位置から駆動側枢支軸線Y回り第1方向R1へ回動する際に検出領域に位置される第1領域360aと、前記駆動アーム150が基準位置から駆動側枢支軸線Y回り第2方向R2へ回動する際に検出領域に位置される第2領域360bとを含んでおり、前記第1及び第2領域360a、360bは、前記距離センサ370からの離間距離が異なっている。
【0241】
前記第3変形例300Dにおいては、前記距離センサ370との距離が異なるように第1及び第2領域を設け、前記第1及び第2領域と前記距離センサ370との間の距離差を利用して前記駆動アーム150の回動方向を認識するように構成されている。
【0242】
これに代えて、前記駆動アーム150が基準位置から駆動側枢支軸線Y回り第1方向へ回動する際に検出領域に位置される第1領域には第1の色(色彩や濃淡を含む)、第1のスリットパターン又は第1のバーコードパターンを設け、前記駆動アーム150が駆動側枢支軸線Y回り第2方向へ回動する際に検出領域に位置される第2領域には第2の色(色彩や濃淡を含む)、第2のスリットパターン又は第2のバーコードパターンを設け、色、スリットパターン又はバーコードパターンの違いをセンサによって検出することによって、前記駆動アーム150の回動方向を認識することも可能である。
【0243】
実施の形態3
以下、本発明に係る歩行動作補助装置のさらに他の形態について説明する。
本実施の形態に係る歩行動作補助装置は、前記実施の形態1に係る歩行動作補助装置100Aに比して、前記歩行動作状態検出センサ170としてユーザーの大腿揺動角度を検出する大腿ジャイロセンサを有し、且つ、前記回転センサ160に代えてユーザーの下腿揺動角度を検出する下腿ジャイロセンサを有している。
【0244】
本実施の形態においては、前記制御装置500は、前記大腿ジャイロセンサからの大腿揺動角度及び前記下腿ジャイロセンサからの下腿揺動角度に基づいて大腿に対する下腿の回動角度である膝関節角度を算出し、算出した膝関節角度が下腿最大伸展時の膝関節角度以外の場合に当該膝関節角度に基づき、当該歩行動作補助装置が現在装着されているユーザーの脚が左脚であるか又は右脚であるかを判断し、この判断に基づき前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき補助力制御データを選択するように構成されている。
【0245】
斯かる構成を備えた本実施の形態に係る歩行動作補助装置においても、前記実施の形態1及び2におけると同様の効果を得ることができる。
【0246】
当然ながら、前記実施の形態2及び本実施の形態3においても、前記制御装置500が前記左脚用補助力制御データ及び前記右脚用補助力制御データのうち使用すべき一方の補助力制御データを自動的に選択することに代えて、人為操作によって使用すべき補助力制御データを選択するように構成すると共に、前記制御装置500が、前記回動方向検出機構による検出結果又は前記ジャイロセンサからの信号を利用して算出される膝関節角度に基づき判断した使用すべき補助力制御データと人為操作によって選択された補助力制御データとが異なる場合には、ユーザーに異常告知、さらには、前記電動モータ130の駆動停止を行うように構成することも可能である。
若しくは、前記制御装置500が、ユーザーへの異常告知に加えて、前記回動方向検出機構による検出結果又は前記ジャイロセンサからの信号を利用して算出される膝関節角度に基づき使用すべきと判断した補助力制御データを、人為操作によって選択された補助力制御データに代えて採用し、採用した補助力制御データに前記算出歩行動作タイミングを適用して前記第1下腿フレーム40(1)に付与すべき補助力の方向及び大きさを算出し、算出した方向及び大きさの補助力が得られるように前記電動モータ130の作動制御を行うように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0247】
1L、1R 左脚用及び右脚用長下肢装具
11 大腿装着体
20(1)、20(2) 第1及び第2大腿フレーム
31 下腿装着体
40(1)、40(2) 第1及び第2下腿フレーム
100A、300A~300D 歩行動作補助装置
110 ケーシング
112 装着面
130 電動モータ
150 駆動アーム
160 回転センサ
170 歩行動作状態検出センサ
310、320 第1及び第2回動センサ
330 被検出体
330a、330b 第1及び第2領域
340 距離センサ
500 制御装置
X 装具側枢支軸線
Y 駆動側枢支軸線