(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】スライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
B60N2/08
(21)【出願番号】P 2019011147
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(73)【特許権者】
【識別番号】517251797
【氏名又は名称】株式会社TF-METAL
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 幸佑
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-048059(JP,A)
【文献】特開2010-100077(JP,A)
【文献】米国特許第6772985(US,B2)
【文献】特開2005-7982(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第1423963(GB,A)
【文献】国際公開第2016/208496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートをスライド可能に支持するスライド装置において、
固定レールと、
シートが固定されるとともに、前記固定レールに対してスライド可能な可動レールと、
前記可動レールに保持され、スライド方向と略直交する方向に変位可能なロックプレートであって、前記固定レールと係合して当該可動レールのスライドを規制するロック位置と当該規制が解除された非ロック位置との間で変位するとともに、当該変位方向と交差する板面を有する板状のロックプレートと、
前記ロックプレートを前記ロック位置に維持する弾性力を発揮するバネ部材であって、前記板面に前記弾性力を作用させるバネ部材と
を備え
、
前記ロックプレートが、前記バネ部材に対して前記変位方向及び前記スライド方向のいずれとも直交する方向に変位することを規制する第3規制部及び第4規制部を備え、
前記第3規制部及び前記第4規制部それぞれは、前記ロックプレートに設けられた第1フック部及び第2フック部により構成されており、
前記第1フック部は、前記バネ部材を三方から囲むように接触するとともに、一方が開放された第1凹部を有して構成され、
前記第2フック部は、前記バネ部材を三方から囲むように接触するとともに、一方が開放された第2凹部を有して構成されているスライド装置。
【請求項2】
前記第1フック部には、前記第1凹部の開口部に連通するとともに、当該開口部の開口方向と交差する方向に延びる第1案内溝が設けられ、
前記第2フック部には、前記第2凹部の開口部に連通するとともに、当該開口部の開口方向と交差する方向に延びる第2案内溝が設けられている請求項
1に記載のスライド装置。
【請求項3】
前記バネ部材は、
当該バネ部材に対して前記ロックプレートが前記スライド方向第1の向きに変位することを規制する第1規制部、及び
当該バネ部材に対して前記ロックプレートが前記スライド方向第2の向きに変位することを規制する第2規制部
を有する請求項1
又は2に記載のスライド装置。
【請求項4】
シートをスライド可能に支持するスライド装置において、
固定レールと、
シートが固定されるとともに、前記固定レールに対してスライド可能な可動レールと、
前記可動レールに保持され、スライド方向と略直交する方向に変位可能なロックプレートであって、前記固定レールと係合して当該可動レールのスライドを規制するロック位置と当該規制が解除された非ロック位置との間で変位するとともに、当該変位方向と交差する板面を有する板状のロックプレートと、
前記ロックプレートを前記ロック位置に維持する弾性力を発揮するバネ部材であって、前記板面に前記弾性力を作用させるバネ部材と
を備え
、
前記バネ部材は、
前記板面に前記弾性力を作用させる作用部、
当該バネ部材に対して前記ロックプレートが前記スライド方向第1の向きに変位することを規制する第1規制部、及び
当該バネ部材に対して前記ロックプレートが前記スライド方向第2の向きに変位することを規制する第2規制部であって、前記作用部を挟んで前記第1規制部と反対側に位置する第2規制部
を有するスライド装置。
【請求項5】
前記ロックプレートが、前記バネ部材に対して前記変位方向及び前記スライド方向
のいずれとも直交する方向に変位することを規制する第3規制部及び第4規制部を備える請求項
4に記載のスライド装置。
【請求項6】
前記第3規制部及び前記第4規制部それぞれは、前記ロックプレートに設けられた第1フック部及び第2フック部により構成されており、
前記第1フック部は、前記バネ部材を三方から囲むように接触するとともに、一方が開放された第1凹部を有して構成され、
前記第2フック部は、前記バネ部材を三方から囲むように接触するとともに、一方が開放された第2凹部を有して構成されている請求項
5に記載のスライド装置。
【請求項7】
前記第1フック部には、前記第1凹部の開口部に連通するとともに、当該開口部の開口方向と交差する方向に延びる第1案内溝が設けられ、
前記第2フック部には、前記第2凹部の開口部に連通するとともに、当該開口部の開口方向と交差する方向に延びる第2案内溝が設けられている請求項
6に記載のスライド装置。
【請求項8】
前記バネ部材は、
前記第1規制部から前記第1の向きに延びて当該延び方向先端側が前記可動レールに固定された第1バネ部、及び
前記第2規制部から前記第2の向きに延びて当該延び方向先端側が前記可動レールに固定された第2バネ部
を有する請求項
3ないし7のいずれか1項に記載のスライド装置。
【請求項9】
前記第1規制部及び前記第2規制部は、前記バネ部材の一部が折り曲げられた折曲部により構成されている請求項
3ないし8のいずれか1項に記載のスライド装置。
【請求項10】
前記第1規制部及び前記第2規制部は、共に前記ロックプレートに接触した状態で当該ロックプレートの変位を規制している請求項
3ないし
9のいずれか1項に記載のスライド装置。
【請求項11】
前記バネ部材は、1本の金属製線材が予め決められた所定形状に折り曲げられて構成されている請求項1ないし
10のいずれか1項に記載のスライド装置。
【請求項12】
操作力を受けて初期位置から変位する操作部材であって、前記ロックプレートに操作力を作用させて当該ロックプレートを前記非ロック位置に変位させる操作部材と、
前記バネ部材に一体化された復帰バネであって、変位した前記操作部材を前記初期位置に復帰させるための弾性力を発揮する復帰バネと
を備える請求項1ないし
11のいずれか1項に記載のスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートをスライド可能に支持するスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のスライド装置は、固定レール、可動レール、ロックレバー及びスプリング等を有して構成されている。ロックレバーは、複数の係止爪が設けられたレバー状の部材である。
【0003】
当該ロックレバーは、長手方向中間部が可動レールに回転可能に支持された状態でロック位置と非ロック位置との間を揺動変位する。ロック位置は、複数の係止爪がが、可動レール及び固定レールに係合する位置である。非ロック位置は当該係合が解除された位置である。
【0004】
スプリングは、ロックレバーをロック位置に維持する弾性力をロックレバーに作用させるレバー状のバネである。具体的には、当該スプリングは、当該スプリングの長手方向中間部が可動レールに支持された状態で、当該長手方向端部にてロックレバーを押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、特許文献1に記載の構成と異なる簡素な構成のスライド装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
シートをスライド可能に支持するスライド装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、固定レール(11)と、シートが固定されるとともに、固定レール(11)に対してスライド可能な可動レール(12)と、可動レール(12)に保持され、スライド方向と略直交する方向に変位可能なロックプレート(13)であって、固定レール(11)と係合して当該可動レール(12)のスライドを規制するロック位置と当該規制が解除された非ロック位置との間で変位するとともに、当該変位方向と交差する板面(13A)を有する板状のロックプレート(13)と、ロックプレート(13)をロック位置に維持する弾性力を発揮するバネ部材(14)であって、板面(13A)に弾性力を作用させるバネ部材(14)とである。
【0008】
これにより、当該スライド装置に係るロックプレート(13)は、スライド方向と略直交する方向において、ロック位置と非ロック位置との間を変位する。当該スライド装置に係るバネ部材(14)は、特許文献1と異なりロックプレート(13)の板面(13A)に弾性力を付与する。こため、ロックプレート(13)は、安定的に作動する。
【0009】
なお、当該スライド装置は、以下の構成であってもよい。
バネ部材(14)は、当該バネ部材(14)に対してロックプレート(13)がスライド方向第1の向きに変位することを規制する第1規制部(14D)、及び当該バネ部材(14)に対してロックプレート(13)がスライド方向第2の向きに変位することを規制する第2規制部(14E)を有することが望ましい。これにより、ロックプレート(13)がスライド方向に変位することが規制されるので、ロックプレート(13)の作動が安定的し得る。
【0010】
さらに、バネ部材(14)は、第1規制部(14D)から第1の向きに延びて当該延び方向先端側が可動レール(12)に固定された第1バネ部(14B)、及び第2規制部(14E)から第2の向きに延びて当該延び方向先端側が可動レール(12)に固定された第2バネ部(14C)を有することが望ましい。これにより、ロックプレート(13)の作動が安定的し得る。
【0011】
第1規制部(14D)及び第2規制部(14E)は、バネ部材(14)の一部が折り曲げられた折曲部により構成されていることが望ましい。これにより、スライド装置の製造原価上昇が抑制され得る。
【0012】
第1規制部(14D)及び第2規制部(14E)は、共にロックプレート(13)に接触した状態で当該ロックプレート(13)の変位を規制していることが望ましい。これにより、ロックプレート(13)の変位が確実に規制され得るので、ロックプレート(13)の作動が安定的し得る。
【0013】
ロックプレート(13)が、バネ部材(14)に対して変位方向及びスライド方向に直交する方向に変位することを規制する第3規制部(13C)及び第4規制部(13D)を備えることが望ましい。これにより、ロックプレート(13)の作動が安定的し得る。
【0014】
第3規制部(13C)及び第4規制部(13D)それぞれは、ロックプレート(13)に設けられた第1フック部(13C)及び第2フック部(13D)により構成されており、第1フック部(13C)は、バネ部材(14)を三方から囲むように接触するとともに、一方が開放された第1凹部(13E)を有して構成され、第2フック部(13D)は、バネ部材(14)を三方から囲むように接触するとともに、一方が開放された第2凹部(13F)を有して構成されていることが望ましい。これにより、ロックプレート(13)の作動が確実に安定的し得る。
【0015】
第1フック部(13C)には、第1凹部(13E)の開口部に連通するとともに、当該開口部の開口方向と交差する方向に延びる第1案内溝(13G)が設けられ、第2フック部(13D)には、第2凹部(13F)の開口部に連通するとともに、当該開口部の開口方向と交差する方向に延びる第2案内溝(13H)が設けられていることが望ましい。これにより、第1フック部(13C)及び第2フック部(13D)からバネ部材(14)が抜けてしまうことが抑制され得る。
【0016】
バネ部材(14)は、1本の金属製線材が予め決められた所定形状に折り曲げられて構成されていることが望ましい。これにより、バネ部材(14)の製造原価上昇が抑制され得る。
【0017】
操作力を受けて初期位置から変位する操作部材(16)であって、ロックプレート(13)に操作力を作用させて当該ロックプレート(13)を非ロック位置に変位させる操作部材(16)と、バネ部材(14)に一体化された復帰バネ(16B)であって、変位した操作部材(16)を初期位置に復帰させるための弾性力を発揮する復帰バネ(16B)とを備えることが望ましい。これにより、スライド装置の製造原価上昇が抑制され得る。
【0018】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るスライド装置の分解図である。
【
図3】第1実施形態に係る固定レールを示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る可動レールを示す図である。
【
図5】第1実施形態に係るロックプレートの作動を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るロックプレートの作動を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係るバネ部材及びロックプレート等を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係るバネ部材を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係るバネ部材及びロックプレートを示す図である。
【
図10】第1実施形態に係るロックプレートを示す図である。
【
図11】第1実施形態に係る第1バネ部と可動レールとの固定構造を示す図である。
【
図12】第1実施形態に係る第1バネ部と可動レールとの固定構造を示す図である。
【
図13】第1実施形態に係る第1バネ部と可動レールとの固定構造を示す図である。
【
図14】第1実施形態に係る第1バネ部と可動レールとの固定構造を示す図である。
【
図15】第1実施形態に係る第1バネ部と可動レールとの固定構造を示す図である。
【
図16】第1実施形態に係る第2バネ部と可動レールとの固定構造を示す図である。
【
図17】第2実施形態に係るロックプレートを示す図である。
【
図18】第2実施形態に係るロックプレートと可動レールとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るスライド装置が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載したものである。
【0022】
したがって、当該スライド装置は、各図に付された方向に限定されるものではない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は断面図を示すものではない。
【0023】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0024】
(第1実施形態)
1.乗物用シートの概要(
図1参照)
本実施形態に係る乗物用シート1は、2つのスライド装置10及びシート本体2等を少なくとも備える。シート本体2は、シートクッション3及びシートバック5等を少なくとも有する。
【0025】
シートクッション3は、着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック5は着席者の背部を支持するための部位である。スライド装置10は、乗物用シート1のシート本体2をスライド可能に支持するための装置である。
【0026】
当該シート本体2は、2つのスライド装置10によりスライド可能に支持される。具体的には、第1のスライド装置10は、シート本体のシート幅方向一端側を支持する。第2のスライド装置10は、シート本体2のシート幅方向他端側を支持する。
【0027】
2.スライド装置の構成
2.1 スライド装置の概要
本実施形態では、2つのスライド装置10は同一構造である。以下の説明は、シート幅方向左端側に配置されたスライド装置10の説明である。スライド装置10は、
図2に示されるように、固定レール11、可動レール12、ロックプレート13、バネ部材14及び操作部材16等を少なくとも備える。
【0028】
<固定レール及び可動レール等>
固定レール11は、乗物に対して直接的又は間接的に固定される部材である。可動レール12は、シート本体2が固定されるとともに、固定レール11に対してスライド可能な部材である。
【0029】
本実施形態に係る可動レール12は、複数(16個)の鋼球15を介して固定レール11に支持されている。複数の鋼球15は、可動レール12と固定レール11とに転がり接触する球状の転動体の一例である。
【0030】
複数の保持器15Aは、各鋼球15が可動レール12に対して移動することを規制する。これにより、複数の鋼球15が可動レール12に対して移動することなく、可動レール12及び固定レール11と転がり接触できるので、当該可動レール12は、固定レール11に対してスライドできる。
【0031】
固定レール11のうち可動レール12の側面と対向する部位11A、11Bには、
図3に示されるように、櫛状部11Cが設けられている。各櫛状部11Cは、固定レール11の長手方向に沿って、複数の凸部及び凹部が交互に直列に設けられた部位である。
【0032】
なお、可動レール12の側面とは、当該可動レール12のスライド方向と略平行な面である。可動レール12は、固定レール11のうち部位11Aと部位11Bとの間の空間に収納された状態で当該固定レール11に対してスライドする。
【0033】
可動レール12のうち部位11A及び部位11Bそれぞれと対向する部位であって、当該可動レール12の長手方向中間部12A(
図2参照)には、
図4に示される櫛状部12B、12Cが設けられている。
【0034】
各櫛状部12B、12Cは、可動レール12の長手方向に沿って、凸部と凹部とが交互に直列に設けられた部位である。櫛状部11Cの凸部及び凹部と櫛状部12B、12Cの凸部及び凹部とは概ね合同である。
【0035】
櫛状部11C及び櫛状部12B、12Cの凸部は、下向きに突出した凸部により構成されている。換言すれば、櫛状部11C及び櫛状部12B、12Cの凹部は、下側が開放された凹部にて構成されている。
【0036】
そして、櫛状部11Cが設けられている範囲は、櫛状部12B、12Cが設けられている範囲より大きい。なお、本実施形態では、櫛状部12Bに設けられた凸部及び凹部の個数は、櫛状部12Cに設けられた凸部及び凹部の個数より多い。
【0037】
<ロックプレート>
ロックプレート13は、
図5に示されるように、可動レール12に保持され、当該可動レール12と共に固定レール11に対してスライド可能な部材である。当該ロックプレート13は、可動レール12に対して、スライド方向と略直交する方向(本実施形態では、上下方向)に変位可能である。
【0038】
すなわち、ロックプレート13は、ロック位置(
図5参照)と非ロック位置(
図6参照)との間で変位可能である。当該ロックプレート13は、当該変位方向(本実施形態では、上下方向)と交差する板面13Aを有する板状の部材である。
【0039】
ロック位置は、固定レール11と係合して可動レール12のスライドを規制する位置である。非ロック位置は、当該規制が解除され、可動レール12がスライド可能となる位置である。
【0040】
具体的には、ロックプレート13には、櫛状部11C及び櫛状部12B、12Cの凸部が貫通可能な貫通穴13Bが複数設けられている。ロックプレート13がロック位置に位置すると(
図5参照)、櫛状部11Cのいずれかの凸部及び櫛状部12B、12Cの凸部が複数の貫通穴13Bを貫通した状態となる。
【0041】
ロックプレート13がロック位置から下方側に変位して非ロック位置に位置すると(
図6参照)、当該ロックプレート13が櫛状部11C及び櫛状部12B、12Cから離間した状態となる。このため、可動レール12は、固定レール11に対してスライド可能となる。
【0042】
<バネ部材、操作部材>
バネ部材14は、
図7に示されるように、ロックプレート13をロック位置に維持する弾性力を発揮する。当該バネ部材14は、ロックプレート13の板面13Aに当該弾性力を作用させる。
【0043】
本実施形態に係るバネ部材14は、ロックプレート13に設けられた上下2つの板面13Aのうち非ロック位置側の板面13Aに上記弾性力を作用させる。つまり、当該バネ部材14は、ロックプレート13の下側板面13Aに上向きの弾性力を作用させる。
【0044】
操作部材16は、操作力を受けて初期位置(
図7の破線で示す位置)から変位する部材である。当該操作部材16は、当該操作力をロックプレート13に作用させて当該ロックプレート13を非ロック位置に変位させる。
【0045】
初期位置は、
図7の破線で示されるように、ロック位置にあるロックプレート13から操作部材16が離間した位置、又はロック位置にあるロックプレート13と操作部材16とが接触した位置をいう。
【0046】
2.2 バネ部材とロックプレートとの連結構造
バネ部材14は、
図8に示されるように、連結部14A、第1バネ部14B及び第2バネ部14C等を少なくとも有する。連結部14Aは、
図7に示されるように、ロックプレート13が連結された部位である。
【0047】
<連結部及びロックプレートの構成>
連結部14Aは、第1規制部14D、第2規制部14E及び作用部14F等を有して構成されている。第1規制部14Dは、ロックプレート13がバネ部材14に対してスライド方向第1の向きに変位することを規制する部位である。
【0048】
第2規制部14Eは、ロックプレート13がバネ部材14に対してスライド方向第2の向きに変位することを規制する部位である。なお、スライド方向第1の向きは、本実施形態では、シート後方向きに相当する。スライド方向第2の向きは、本実施形態では、シート前方向きに相当する。
【0049】
そして、第1規制部14D及び第2規制部14Eそれぞれは、
図9に示されるように、第1係止部13C及び第2係止部13Dそれぞれに接触した状態で係止固定されている。第1係止部13C及び第2係止部13Dは、ロックプレート13に設けられている。
【0050】
第1係止部13Cは、ロックプレート13のスライド方向一端側をバネ部材14に係止固定するための部位である。第2係止部13Dは、ロックプレート13のスライド方向他端をバネ部材14に係止固定するための部位である。
【0051】
つまり、第1規制部14Dは、第1係止部13Cに係止される第1被係止部として機能する。第2規制部14Eは、第2係止部13Dに係止される第2被係止部として機能する。さらに、第1係止部13C及び第2係止部13Dは、第3規制部及び第4規制部として機能する。
【0052】
第3規制部及び第4規制部は、ロックプレート13が、バネ部材14に対してロックプレート13の変位方向及びスライド方向に直交する方向(本実施形態では、シート幅方向)に変位することを規制する部位である。
【0053】
すなわち、本実施形態では、第1係止部13Cは第1フック部にて構成され、第2係止部13Dは第2フック部にて構成されている。第1フック部は、第1凹部13Eを有して構成された部位である。第1凹部13Eは、バネ部材14(第1規制部14D)を三方から囲むように接触するとともに、一方が開放された部位である。
【0054】
第2フック部、つまり第2係止部13Dは、第2凹部13Fを有して構成された部位である。第2凹部13Fは、バネ部材14(第2規制部14E)を三方から囲むように接触するとともに、一方が開放された部位である。
【0055】
第1フック部、つまり第1係止部13Cには、
図10に示されるように、第1案内溝13Gが設けられている。第1案内溝13Gは、第1凹部13Eの開口部に連通するとともに、当該開口部の開口方向D1と交差する方向に延びる溝状の開口である。
【0056】
第2係止部13Dには、第2案内溝13Hが設けられている。第2案内溝13Hは、第2凹部13Fの開口部に連通するとともに、当該開口部の開口方向D2と交差する方向に延びる溝状の開口である。
【0057】
つまり、第1フック部、つまり第1係止部13Cには、第1凹部13E及び第1案内溝13Gにより略L字状の溝状開口部が設けられている。第2フック部、つまり第2係止部13Dには、第2凹部13F及び第2案内溝13Hにより略L字状の溝状開口部が設けられている。
【0058】
第2係止部13Dは、第1係止部13Cに対して、ロックプレート13の変位方向及びスライド方向と直交する方向(本実施形態では、シート幅方向)にずれた位置に設けられている。さらに、本実施形態では、第1係止部13Cと第2係止部13Dとは、略回転対称の形状となっている。
【0059】
つまり、
図9において、第1凹部13Eの中心と第2凹部13Fの中心とを結ぶ仮想線分の中点を中心に、第1係止部13C及び第2係止部13Dが右向きに180度回転すると、回転前の第1係止部13Cと回転後の第2係止部13Dとが重なり、かつ、回転前の第2係止部13Dと回転後の第1係止部13Cとが重なる。
【0060】
<作用部>
作用部14Fは、
図7に示されるように、バネ部材14のうち、当該バネ部材14の弾性力を板面13Aに作用させる部位である。作用部14Fは、第1係止部13C側から第2係止部13D側に延びる直線状の部位である。
【0061】
そして、作用部14Fは、当該作用部14Fの一端側(
図7の右端側)から他端側(
図7の左端側)に至る範囲全域で板面13Aに前記弾性力を作用させるように構成されている。このため、本実施形態に係る作用部14Fがロックプレート13に弾性力を作用させる部位は、板面13Aにおいて、スライド方向に対して傾いた帯状の部位となる(
図9参照)。
【0062】
連結部14A、つまり第1規制部14D、第2規制部14E及び作用部14Fは、1本の金属製線材が予め決められた所定形状に折り曲げられて構成された一体成形品である。さらに、第1規制部14D及び第2規制部14Eは、バネ部材14を構成する金属線材の一部が折り曲げられた折曲部により構成された部位である。
【0063】
なお、第1規制部14D、つまり第1被係止部は、連結部14Aのうち作用部14Fと略直交する方向に延びた部位である。第2規制部14E、つまり第2被係止部は、連結部14Aのうち作用部14Fと略直交する方向に延びた部位である。
【0064】
<第1バネ部及び第2バネ部>
第1バネ部14Bは、
図8に示されるように、連結部14A(本実施形態では、第1規制部14D)から前記第1の向きに延びて当該延び方向先端側が可動レール12に固定された部位である。第2バネ部14Cは、連結部14A(本実施形態では、第2規制部14E)から前記第2の向きに延びて当該延び方向先端側が可動レール12に固定された部位である。
【0065】
なお、第1バネ部14B、第2バネ部14C及び連結部14Aは、1本の金属製線材が予め決められた所定形状に折り曲げられて成形された一体成形品である。そして、ロックプレート13に作用させる弾性力は、主に、第1バネ部14B及び第2バネ部14Cが弾性変形することにより発生する力である。
【0066】
第1バネ部14Bは、第2バネ部14Cに対してシート幅方向にずれている。本実施形態では、
図8に示されるように、第1バネ部14Bは、第2バネ部14Cに対してシート幅方向右側にずれている。
【0067】
<第1バネ部の固定構造>
第1バネ部14Bの延び方向先端側と可動レール12との固定構造部は、
図11に示されるように、第1バネ部14Bに設けられたテーパ部14G及び押圧バネ部14H等を有して構成されている。
【0068】
テーパ部14Gは、鋭角状に構成された部位であって、
図12に示されるように、可動レール12の部位12Dに設けられた穴部12Fに嵌り込んだ部位である。当該テーパ部14Gは、固定レール11の櫛状部11Cより下方側に位置している。なお、本実施形態に係るテーパ部14Gは、略V字状に折り曲げられた金属製の線材により構成されている。
【0069】
部位12Dは、スライド方向に延びる帯板状の部位であって、当該スライド方向及びロックプレート13の変位方向と略平行な第1壁部を構成する固定レール11の一部である。部位12Eは、部位12Dと離間した帯板状の部位であって、部位12Dと略平行な第2壁部を構成する固定レール11の一部である。
【0070】
穴部12Fは、
図13に示されるように、長穴にて構成されている。当該穴部12Fは、長径方向がスライド方向と一致し、かつ、短径方向寸法が上記線材の直径寸法より大きい長穴である。
【0071】
そして、穴部12Fの長径方向中間部には、当該穴部12Fの外縁から短径方向に突出した突起部12Gが設けられている。テーパ部14Gが穴部12Fに挿入された状態では、当該テーパ部14Gは、突起部12Gに引っ掛かるように係止された状態となる。
【0072】
押圧バネ部14Hは、
図11に示されるように、テーパ部14Gを穴部12Fに向けて押圧する弾性力を発揮する部位である。当該押圧バネ部14Hは、トーション部14J及び座部14K等を少なくとも有する。
【0073】
トーション部14Jは、テーパ部14Gから延出した線材にて構成された捻りばね部である。座部14Kは、トーション部14Jから延出して穴部12Fの長径方向と交差する方向に延びる略直線状の部位である。そして、座部14Kは、
図12に示されるように、部位12Eに接触している。
【0074】
なお、テーパ部14G及ぶ押圧バネ部14Hは、第1バネ部14Bを構成する金属製線材が予め決められた所定形状に折り曲げられて成形された一体成形品である。つまり、第1バネ部14Bとテーパ部14G及び押圧バネ部14Hとは、一体成形品である。
【0075】
第1バネ部14Bは、
図14に示されるように、第1支持部12H及び第2支持部12Jにより支持されている。第1支持部12H及び第2支持部12Jは、部位12Dに設けられた切り起こし片により構成されている。
【0076】
第1支持部12Hは、第1バネ部14Bの延び方向中間部を支持する。第2支持部12Jは、第1支持部12Hよりロックプレート13側にて第1バネ部14Bを支持するとともに、当該第1バネ部14Bがシート幅方向に変位することを規制する。ロックプレート13が非ロック位置に変位すると、第1バネ部14Bは、概ね第1支持部12Hを中心として弓なりに弾性変形する。
【0077】
<第2バネ部の固定構造>
第2バネ部14Cの延び方向先端側と可動レール12との固定構造部は、
図15に示されるように、第2バネ部14Cに設けられたテーパ部14L等を有して構成されている。テーパ部14Lは、鋭角状に構成された部位である。
【0078】
当該テーパ部14Lは、可動レール12の部位12Eに設けられた穴部12Kに嵌り込んだ部位である。なお、本実施形態に係るテーパ部14Lは、略V字状に折り曲げられた金属製の線材により構成されている。穴部12Kは、長径方向がスライド方向と一致する長穴である。
【0079】
第2バネ部14Cは、第1支持部12L及び第2支持部12Mにより支持されている。第1支持部12L及び第2支持部12Mは、部位12Eに設けられた切り起こし片により構成されている。
【0080】
第1支持部12Lは、第1バネ部14Bの延び方向中間部を支持する。第2支持部12Mは、第1支持部12Lよりロックプレート13側にて第2バネ部14Cを支持するとともに、当該第2バネ部14Cがシート幅方向に変位することを規制する。ロックプレート13が非ロック位置に変位すると、第2バネ部14Cは、概ね第1支持部12Lを中心として弓なりに弾性変形する。
【0081】
<操作部材>
操作部材16は、操作力を受けて初期位置(
図7参照)から操作位置(
図16参照)に変位可能である。操作部材16には、
図16に示されるように、押圧部16Aが設けられている。押圧部16Aは、操作部材16が操作位置にあるときに、ロックプレート13に操作力を作用させる部位である。
【0082】
そして、
図9に示されるように、ロックプレート13の板面13Aと平行な仮想平面に投影された押圧部16A(二点鎖線の斜線が付された範囲)は、当該仮想平面に投影された作用部14Fを横断するように、当該投影された作用部14Fと交差する方向に延びている。
【0083】
換言すれば、仮想平面に投影された押圧部16Aの一部は、仮想平面に投影された作用部14Fと重なり、かつ、仮想平面に投影された作用部14Fを挟んで一方側(紙面上側)及び他方側(紙面下側)にも仮想平面に投影された押圧部16Aが存在する。
【0084】
図16に示される復帰バネ16Bは、操作位置にある操作部材16を初期位置に復帰させるための弾性力を発揮する。当該復帰バネ16Bは、
図15に示されるように、バネ部材14に一体化されている。つまり、復帰バネ16Bとバネ部材14とは、1本の金属製線材が予め決められた所定形状に折り曲げられて構成された一体成形品である。
【0085】
なお、本実施形態に係る復帰バネ16Bには係止部16Cが設けられている。係止部16Cは、操作部材16に係止される部位である。当該係止部52Bが操作部材16に係止されると、復帰バネ16Bは、テーパ部14Lを穴部12Kに向けて押圧する弾性力を発揮可能となる。
【0086】
可動レール12に設けられた支点部12Nは、操作部材16の揺動支点を構成する。つまり、操作部材16は支点部12Nを中心に揺動可能である。なお、支点部12Nは、可動レール12の一部が切り起こされた切り起こし片により構成されている。
【0087】
3.本実施形態に係るスライド装置の特徴
3.1 スライド装置の概略構成に関して
本実施形態に係るスライド装置10に係るロックプレート13は、スライド方向と略直交する方向において、ロック位置と非ロック位置との間を変位する。当該スライド装置10に係るバネ部材14は、特許文献1と異なりロックプレート13の板面13Aに弾性力を付与する。こため、ロックプレート13は、安定的に作動する。
【0088】
バネ部材14は、当該バネ部材14に対してロックプレート13がスライド方向第1の向きに変位することを規制する第1規制部14D、及び当該バネ部材14に対してロックプレート13がスライド方向第2の向きに変位することを規制する第2規制部14Eを有している。これにより、ロックプレート13がスライド方向に変位することが規制されるので、ロックプレート13の作動が安定的し得る。
【0089】
3.2 バネ部材及びロックプレート等に関して
バネ部材14は、第1規制部14Dから第1の向きに延びて当該延び方向先端側が可動レール12に固定された第1バネ部14B、及び第2規制部14Eから第2の向きに延びて当該延び方向先端側が可動レール12に固定された第2バネ部14Cを有する。これにより、ロックプレート13の作動が安定的し得る。
【0090】
第1規制部14D及び第2規制部14Eは、バネ部材14の一部が折り曲げられた折曲部により構成されている。これにより、スライド装置10の製造原価上昇が抑制され得る。
【0091】
第1規制部14D及び第2規制部14Eは、共にロックプレート13に接触した状態で当該ロックプレート13の変位を規制している。これにより、ロックプレート13の変位が確実に規制され得るので、ロックプレート13の作動が安定的し得る。
【0092】
ロックプレート13は、バネ部材14に対して変位方向及びスライド方向に直交する方向に変位することを規制する第3規制部をなす第1係止部13C及び第4規制部なす第2係止部13Dを備える。これにより、ロックプレート13の作動が安定的し得る。
【0093】
第1フック部をなす第1係止部13Cは、バネ部材14を三方から囲むように接触するとともに、一方が開放された第1凹部13Eを有して構成されている。第2フック部をなす第2係止部13Dは、バネ部材14を三方から囲むように接触するとともに、一方が開放された第2凹部13Fを有して構成されている。これにより、ロックプレート13の作動が確実に安定的し得る。
【0094】
第1フック部をなす第1係止部13Cには、第1凹部13Eの開口部に連通するとともに、当該開口部の開口方向と交差する方向に延びる第1案内溝13Gが設けられている。第2フック部をなす第2係止部13Dには、第2凹部13Fの開口部に連通するとともに、当該開口部の開口方向と交差する方向に延びる第2案内溝13Hが設けられている。これにより、第1係止部13C及び第2係止部13Dからバネ部材14が抜けてしまうことが抑制され得る。
【0095】
バネ部材14は、1本の金属製線材が予め決められた所定形状に折り曲げられて構成されている。これにより、バネ部材14の製造原価上昇が抑制され得る。
変位した操作部材16を初期位置に復帰させるための弾性力を発揮する復帰バネ16Bは、バネ部材14に一体化されている。これにより、スライド装置10の製造原価上昇が抑制され得る。
【0096】
3.3 バネ部材とロックプレートとの連結構造等に関して
ロックプレート13は、第1係止部13C及び第2係止部13Dによりバネ部材14に係止固定されているので、当該ロックプレート13は、バネ部材14に安定的に固定された状態となる。したがって、ロックプレート13の作動が安定する。
【0097】
バネ部材14のうち弾性力を板面13Aに作用させる作用部14Fは、第1係止部13C側から第2係止部13D側に延びる直線状の部位であって、当該作用部14Fの一端側から他端側に至る範囲全域で板面13Aに弾性力を作用させるように構成されている。これにより、当該スライド装置10では、弾性力が安定的にロックプレート13に作用し得る
バネ部材14は、第1係止部13Cに係止される第1被係止部をなす第1規制部14Dであって、作用部14Fと略直交する方向に延びる第1規制部14D、及び第2係止部13Dに係止される第2被係止部なす第2規制部14Eであって、作用部14Fと略直交する方向に延びる第2規制部14Eを有する。
【0098】
これにより、スライド装置10では、ロックプレート13が第1規制部14D及び第2規制部14Eにより挟まれた状態となるので、当該ロックプレート13がスライド方向に変位することが規制され得る。
【0099】
板面13Aと平行な仮想平面に投影された操作部材16の押圧部16Aは、当該仮想平面に投影された作用部14Fを横断するように、当該投影された作用部14Fと交差する方向に延びている。
【0100】
これにより、当該スライド装置10では、ロックプレート13に作用する操作力の作用点と弾性力の作用点とが大きくずれてしまうことが抑制され得る。したがって、当該スライド装置10では、ロックプレート13が安定的に作動する。
【0101】
3.4 第1バネ部の固定構造部について
第1バネ部14Bの延び方向先端側を可動レール12に固定するための固定構造部は、バネ部材14に設けられた鋭角状に構成されたテーパ部14Gであって、可動レール12に設けられた穴部12Fに嵌り込んだテーパ部14G、及びテーパ部14Gを穴部12Fに向けて押圧する弾性力を発揮する押圧バネ部14Hを有して構成されている。
【0102】
そして、テーパ部14Gが押圧バネ部14Hにより穴部12Fに向けて押圧されているので、当該固定構造部では、バネ部材14の延び方向一端側の位置が自動的調整された状態で可動レール12に固定される。
【0103】
テーパ部14Gは、略V字状に折り曲げられた金属製の線材により構成され、穴部12Fの長径方向中間部には、当該穴部12Fの外縁から短径方向に突出した突起部12Gが設けられている。これにより、当該スライド装置10は、テーパ部14Gが穴部12Fから脱落することが抑制される。
【0104】
押圧バネ部14Hは、テーパ部14Gから延出した線材にて構成されたトーション部14J、及びトーション部14Jから延出して穴部12Fの長径方向と交差する方向に延びる略直線状の座部14Kを有している。
【0105】
そして、座部14Kは、可動レール12のうち穴部12Fが設けられた部位12Dと対向する部位12Eに接触している。これにより、テーパ部14Gが穴部12Fを中心として、例えば短径方向に揺動変位した場合であっても、当該揺動を効果に抑制することが可能となり得る。
【0106】
(第2実施形態)
本実施形態に係るスライド装置10は、ロックプレート13にストッパ機能を付加したものである。以下の説明は、上述の実施形態に係るスライド装置10との相違点に関する説明である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0107】
<ストッパ機能の構成>
図17に示されるように、固定レール11には、少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)の規制部11D、11Eが設けられている。ロックプレート13には、規制部11D、11Eに接触可能な被当接部13J、13Kが設けられている。
【0108】
そして、(a)規制部11Dと被当接部13Jとが接触したとき、(b)規制部11Eと被当接部13Kとが接触したときに、及び(c)規制部11D、11Eと被当接部13J、13Kとが共に接触したときのうち、いずれか状態が発生したときに可動レール12のスライド変位が規制される。
【0109】
そして、被当接部13J、13Kは、
図18に示されるように、ロックプレート13が非ロック位置にあるときに規制部11D、11Eと接触可能な状態となる位置に設けられている。
【0110】
つまり、ロックプレート13がロック位置になるときには、規制部11D、11Eと被当接部13J、13Kとは接触しない構成である。なお、本実施形態では、可動レール12がシート後方に向けてスライドしたときに、規制部11D、11Eと被当接部13J、13Kとが接触し得る。
【0111】
規制部11D、11Eの下端側には、隙間11F、11Gが設けられている。当該隙間11F、11Gは、ロックプレート13が規制部11D、11Eと干渉することなく、スライド方向に変位可能とするための隙間である。
【0112】
なお、隙間11F、11Gの隙間寸法T1、T2は、ロックプレート13の板厚寸法より大きい寸法である。本実施形態に係る規制部11D、11Eは、固定レール11の一部が切り起こされた切り起こし片により構成されている。
【0113】
<本実施形態に係るスライド装置の特徴>
本実施形態に係るスライド装置では、非ロック時においては、ロックプレート13と固定レール11の規制部11D、11Eとが接触することにより、可動レール12のスライドが規制される。
【0114】
規制部11D、11Eの下端側には、隙間11F、11Gが設けられている。これにより、作業者は、ロックプレート13を規制部11D、11Eより下げることにより、スライド装置の組立作業及び分解作業を容易に行うことが可能となり得る。
【0115】
(その他の実施形態)
第1実施形態では、櫛状部12Bに設けられた凸部及び凹部の個数は、櫛状部12Cに設けられた凸部及び凹部の個数より多かった。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。
【0116】
すなわち、当該開示は、例えば、櫛状部12Bに設けられた凸部及び凹部の個数が、櫛状部12Cに設けられた凸部及び凹部の個数より少ない構成、又は櫛状部12Bに設けられた凸部及び凹部の個数と櫛状部12Cに設けられた凸部及び凹部の個数とが同数である構成等であってもよい。
【0117】
上述の実施形態に係るバネ部材14は、第1規制部14D(第1被係止部)及び第2規制部14E(第2被係止部)を有し、それら規制部14D、14Eは、直線状の作用部14Fに対して略直交する方向に延びていた。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。
【0118】
すなわち、当該開示は、例えば、第1規制部D(第1被係止部)14D及び第2規制部(第2被係止部)14Eが廃止された構成、又は第1規制部14D及び第2規制部14Eが作用部14Fに対して鋭角若しくは鈍角方向に交差する方向に延びた構成であってもよい。
【0119】
上述の実施形態では、第1係止部(第3規制部)13C及び第2係止部(第4規制部)13Dが設けられ、かつ、第1係止部13C及び第2係止部13Dは、ロックプレート13に設けられた第1フック部及び第2フック部により構成されていた。
【0120】
しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、第1係止部13C及び第2係止部13Dが廃止された構成、又は第1係止部13C及び第2係止部13Dそれぞれがフック部以外の形状にて構成されていてもよい。
【0121】
上述の実施形態では、第1係止部13C(第1フック部)及び第2係止部(第2フック部)13Dそれぞれには、第1案内溝13G及び第2案内溝13Hが設けられていた。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、第1案内溝13G及び第2案内溝13Hが廃止された構成であってもよい。
【0122】
上述の実施形態に係るバネ部材14は、1本の金属製線材が予め決められた所定形状に折り曲げられて構成されていた。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。
【0123】
上述の実施形態に係るバネ部材14には、復帰バネ16Bが一体化されていた。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、復帰バネ16Bがバネ部材14と別部材であってもよい。
【0124】
上述の実施形態に係る作用部14Fは、当該作用部14Fの一端側から他端側に至る範囲全域でロックプレート13の板面13Aに弾性力を作用させるように直線状に構成されていた。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、作用部14Fが蛇行したサーペンタイン状であってもよい。
【0125】
上述の実施形態では、板面13Aと平行な仮想平面に投影された操作部材16の押圧部16Aは、当該仮想平面に投影された作用部14Fを横断するように、当該投影された作用部14Fと交差する方向に延びていた。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。
【0126】
上述の実施形態に示された第1バネ部14Bと可動レール12との固定構造部は、テーパ部14G、及びテーパ部14Gを穴部12Fに向けて押圧する押圧バネ部14Hを有し、かつ、テーパ部14G及び押圧バネ部14Hは、バネ部材14と共に一体成形されていた。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。
【0127】
上述の実施形態に係る穴部12Fの長径方向中間部には、当該穴部12Fの外縁から短径方向に突出してテーパ部14Gに引っ掛かる突起部12Gが設けられていた。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、突起部12Gが廃止された構成であってもよい。
【0128】
上述の実施形態に係る作用部14Fは、第1係止部13C側から第2係止部13D側に延びる直線状の部位であった。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、矩形波状に屈曲した作用部14Fであってもよい。
【0129】
上述の実施形態に係る作用部14Fは、当該作用部14Fの一端側から他端側に至る範囲全域で板面13Aに弾性力を作用させるように構成されていた。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、当該作用部14Fの一部にて板面13Aに弾性力を作用させる構成であってもよい。
【0130】
上述の実施形態に係る第1バネ部14Bは、第2バネ部14Cに対してシート幅方向右側にずれていた。しかし、本明細書に係る開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、(a)第1バネ部14Bは、第2バネ部14Cに対してシート幅方向左側にずれた構成、(b)第1バネ部14Bが第2バネ部14Cと同一側に位置した構成等であってもよい。
【0131】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されるものではなく、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0132】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0133】
1… 乗物用シート 2… シート本体 3… シートクッション
5… シートバック 10… スライド装置 11… 固定レール
12… 可動レール 13… ロックプレート 13C… 第1係止部
13D… 第2係止部 13E… 第1凹部 13F… 第2凹部
13G… 第1案内溝 13H… 第2案内溝 13J… 被当接部
13K… 被当接部 14… バネ部材 14A… 連結部
14B… 第1バネ部 14D… 第1規制部 14E… 第2規制部
14F… 作用部 14C… 第2バネ部 14G… テーパ部
14H… 押圧バネ部 14J… トーション部 14K… 座部
14L… テーパ部 16… 操作部材 16A… 押圧部
16B… 復帰バネ