(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】本体及びそれに取り付けられた付属装置を使用する杭基礎工事における動力管理方法
(51)【国際特許分類】
E02D 7/26 20060101AFI20221109BHJP
E02D 7/20 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
E02D7/26
E02D7/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019028340
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】10 2018 104 331.7
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501190549
【氏名又は名称】リープヘル-ヴェルク ネンツィング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュラッター ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ジュッセル パトリック
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-083719(JP,A)
【文献】実開昭57-051740(JP,U)
【文献】特開2007-032060(JP,A)
【文献】特開2003-027877(JP,A)
【文献】実開昭57-147389(JP,U)
【文献】特開昭60-055112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング孔を掘削するための本体と、ケーシングを同時に地中に導入するために前記本体に取り付けられた付属装置とを使用する杭基礎工事における動力管理方法であって、
前記付属装置用のエネルギーの少なくとも一部が前記本体によって供給される方法において、
前記本体の制御部によって、
地盤掘削深さとケーシング深さとの間の深さの差分を考慮して前記本体から前記付属装置へのエネルギー流を動的に調整
し、
前記ケーシング深さが前記地盤掘削深さよりも少なくとも限度量分大きい場合、前記付属装置への前記エネルギー流は制限されること、及び/又は、
前記地盤掘削深さが前記ケーシング深さよりも少なくとも限度量分大きい場合、前記付属装置への前記エネルギー流が増大又は最大化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記本体及び/又は前記付属装置の現在の必要動力を考慮しながら前記エネルギー流が調整される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付属装置への前記エネルギー流が制限されるか、又は、完全に停止され、段階的又は連続的に制限が行われる
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記本体の前記制御部は、通信インターフェースを介して前記付属装置に動力低減の要求を送信する
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記要求には、前記付属装置の実行されるべき作業ステップに関する指示、具体的には、実行されるべき作業ステップ及び/又は実行されるべきではない作業ステップに関する特定及び/又は推奨が含まれる
ことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記付属装置及び/又は前記本体の作業ステップの処理時間は、前記エネルギー流の動的調整によって能動的に制御される
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記深さの差分が、前記エネルギー流の動的調整により
、下限値よりも高く、若しくは、上限値よりも低く、又は、下限値よりも高く且つ上限値よりも低く保持される
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記地盤掘削深さとケーシング深さとの間の深さの差分に応じて前記付属装置に出力されるべき平均動力比率を定義する前記深さの差分の関数として、コスト関数Uが定義される
ことを特徴とする、請求項
1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記付属装置への前記エネルギー流は、前記本体の周期的掘削プロセスをさらに考慮しながら、平均動力値に、周期的な掘削プロセス中の現在の工程を特徴付ける重み付けパラメータを乗算することにより、前記平均動力比率に基づいて動的に設定される
ことを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記重み付けパラメータは、掘削工具の掘削及び引上げ中には小さく、前記掘削工具の降下及び土砂排出中に大きい
ことを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記付属装置は、ケーシング揺動装置として構成された前記付属装置の揺動角を、前記付属装置の現在の消費動力を考慮して、及び/又は、前記ケーシング深さ及び掘削深さの
少なくとも一方に応じて、設定する
ことを特徴とする、請求項1~1
0のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記付属装置は、前記ケーシング深さの経時変化を考慮しながら、前記ケーシングの進行速度を検出し、それに基づいて、前記通信インターフェースを介して前記本体から前記付属装置へのエネルギー流の増加を要求し、及び/又は、前記ケーシング上にチューブ部材をさらに載置する作業プロセスを開始する
ことを特徴とする、請求項
4又は5に記載の方法。
【請求項13】
ケーブル式掘削機又は掘削リグである本体と
、ケーシング揺動装置又はケーシング回転装置である少なくとも1つの付属装置とを備えるシステムであって、
前記本体及び前記付属装置は、請求項1~1
2のいずれか1項に記載の方法を実施するための少なくとも1つの制御部を有する
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔を掘削するための本体と、ケーシングを同時に地中に導入するために本体に取り付けられた付属装置とを使用する杭基礎工事における動力管理方法に関する。この方法では、付属装置用エネルギーの少なくとも一部が本体によって供給される。
【背景技術】
【0002】
ケーシング揺動装置又はケーシング回転装置として構成された付属装置を用いた、ハンマーグラブによる掘削の間、それ自体は独立している2つのユニットが杭施工において協働する。ケーブル式掘削機として構成された掘削機本体は、穴を掘削するためのハンマーグラブを備えている。同様にケーブル式掘削機に固定されたケーシング揺動装置又はケーシング回転装置は、一様な回動運動によって掘削に同期して地中に導入されるケーシングを締結する機能を有する。ケーシング揺動装置に必要なエネルギーは、典型的には、掘削機本体によって供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ケーブル式掘削機若しくは掘削リグのオペレータ、又は、ケーシング揺動装置若しくはケーシング回転装置のオペレータは、例えば、調整器を介してケーシング揺動装置又はケーシング回転装置へのエネルギー流を設定する。この方法の欠点は、エネルギー流が、いわば静的であり、散発的にのみ変更可能である点である。この場合、作業ステップ又は作業サイクルによっては、それぞれの作業に対して過度に大きい又は過度に小さいエネルギーがケーシング揺動装置に供給される。これにより、総エネルギー消費が不必要に増加するだけでなく、作業ルーチンの遅延も許容しなければならなくなる。
【0004】
したがって、上述した欠点を克服できる解決策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の構成による方法によって達成される。このカテゴリーの方法に基づき、本発明では、本体の制御部によって、本体から付属装置へのエネルギー流を動的に調整することが提案される。本体は、例えば、ボーリング孔を掘削するための対応するハンマーグラブ掘削機、又は、ケリードリルのような掘削リグを備えたケーブル式掘削機であってもよい。付属装置は、例えば、ケーシングを地中に導入するケーシング揺動装置又はケーシング回転装置である。
【0006】
本発明によれば、本体の制御部により、付属装置と本体との間のエネルギーの分配を動的に調整して、これら付属装置と本体の稼働率及び作用効果が最適化される。これは、主として、本体によって付属装置に供給される油圧エネルギー又は空気圧エネルギーに関わる。しかしながら、本発明の方法は、特定の種類のエネルギーに限定されるものではなく、電気エネルギーのエネルギー管理にも等しく使用することができる。
【0007】
本体及び/又は付属装置の現在の必要動力を考慮しながらエネルギー流が調整されることが好適である。制御部がプロセスルーチンを把握していること、又は、制御部が本体若しくは付属装置の今後の作業ステップを把握していることが重要である。周期的プロセスでは、過去のサイクルからこの情報を学習することもできる。例えば、これら2つの動力消費装置のうちの一方が常にサイクルの同じ部分でエネルギー的にその限界まで到達する場合、及び、同時に他方の動力消費装置が全エネルギーを必要としない場合には、動的適応を学習できる。これにより、これに続く作業ステップに関するこの情報に基づいて、エネルギー流を動的に調整できる。具体的には、杭施工のための総エネルギー消費量は、ボーリング孔を掘削する本体の必要動力と、ケーシングを導入する付属装置の必要動力とから構成される。これらのユニットに対して実行される各周期的作業ステップの特徴は、必要動力が可変であることである。したがって、エネルギー消費量の少ない作業ステップの実行中には、より少ないエネルギーを付属装置に供給して、代わりに本体において余剰エネルギーを利用できるようにすることが好適である。一方、付属装置において大量のエネルギーを必要とするプロセスが実行される場合、及び、本体が比較的少ない動力しか必要としない場合には、付属装置へのエネルギー流を最大化することが好適である。これにより、個々の作業ステップをより迅速に直接実行することができ、これにより全体の処理時間を最適化できる。本体又は付属装置への余剰エネルギーの不必要な供給が防止されるか又は少なくとも低減されるので、杭基礎工事プロセス中の総必要エネルギー量も最適化できる。
【0008】
動的調整によって、付属装置へのエネルギー流を制限するか、又は、特定の状況下でエネルギー流を完全に停止することが考えられる。例えば、段階的に制限が行われ得る。しかしながら、エネルギー流を可能な限り細かく調節できるように、連続的に制限することも考えられる。
【0009】
請求項に記載されているように、エネルギー流の制御は、本体の制御部によって行われる。しかしながら、プロセス性能の一部を外部の制御部(例えば、付属装置の制御部)に行わせることも同様に考えられる。本体と付属装置との間には、通信インターフェースが設けられて、本体と付属装置の間のエネルギー流の動的調整のためのプロセスに関連する情報の交換を可能にすることが重要である。
【0010】
同様に、通信インターフェースを介して動力低減又は動力増加の要求を本体と付属装置の間で交換する可能性もある。例えば、本体又は本体の制御部が、通信インターフェースを介してエネルギー消費を低減するように付属装置に要求することにより、本体の動力比率が確実に高くなるようにすることが考えられる。逆に、付属装置は、通信インターフェースを介して本体から付属装置へのエネルギー流の増加を要求することもできる。
【0011】
このような付属装置に対する動力低減の要求は、実行されるべき付属装置の作業ステップについての指示及びこれらの作業ステップの特定を含んでもよい。これに関し、本体は、付属装置に対して実行されるべき複数の作業ステップを特定するか、又は、1つ以上の作業ステップを推奨することが考えられる。このような推奨は、本体自体の必要動力に基づいたものであることが重要である。比較的大量の動力を必要とする場合、上記の特定又は推奨には、省エネルギーのための作業ステップを含む。また、逆に、本体側で余剰エネルギーを現時点で利用可能である場合、エネルギー消費量が大きい作業ステップを実施することが推奨又は特定される。
【0012】
個々の作業ステップの処理時間は、エネルギー流の動的調整によって直接影響を受け得るか、又は、制御され得る。このことは、付属装置及び本体の両方の作業ステップに関する。付属装置のねじ込み動作は、具体的には、例えば、エネルギーの追加的供給によって加速できる。逆に、動力低減により、それぞれの作業ステップに遅延が発生するか、又は、減速される。
【0013】
ケーシング処理がボーリング孔の同時掘削と同期することが、杭基礎(具体的には、杭基礎工事中の最適なエネルギー消費)にとって特に重要である。例えば、ケーシングの掘削が先行して行われる場合、ケーシングが衝突する虞があり、これにより資材の損傷及びコストが生じる可能性がある。ただし、ケーシングがあまりにも先行している場合、内側の側面摩擦が大きくなり過ぎて、エネルギーコストが高くなる可能性がある。したがって、両プロセスの進行はほぼ同じに維持されるべきである。あるいは、ケーシング深さは、一定の間隔で掘削深さに対してわずかに先行するべきである。
【0014】
この関係により、地盤掘削の深さとケーシング深さとの間の差分を監視することが好適となり、求められた差分は、エネルギー流の動的調整における別のステップにおいて考慮される。この深さの差分は、動力分配の能動的な影響によって、特に、下限値よりも高く、若しくは、上限値よりも低く、又は、下限値よりも高く且つ上限値よりも低く維持される。
【0015】
ケーシング深さが掘削深さよりも少なくとも限度量だけ大きい場合に、付属装置へのエネルギー流が制限されることが特に有利である。逆に、掘削深さが現在のケーシング深さよりも少なくとも限度量だけ大きい場合には、付属装置へのエネルギー流を増加させるか又は最大化することが好適であり得る。深さ差分と動力分配との間のこのような関係をコスト関数によってマッピングすることが特に有利であり得る。これにより、例えば、深さ差分に応じて付属装置に出力されるべき平均動力比率が求められる。
【0016】
上述したように、付属装置の作業プロセス及び/又は本体の作業プロセスは、周期的に発生する個別のステップに分割できる。これらのステップも、必要動力がそれぞれ異なる。動力管理の最適化においては、エネルギー流の動的調整において、完全な作業サイクル中に個々のステップの性能又は将来の性能を考慮に入れることが特に有利である。本体へのエネルギー流は、本体の周期的掘削プロセスをさらに考慮しながら、平均動力比率に基づいて動的に設定することがここでは好適である。この設定は、好ましくは、完全な作業サイクルの現在の個々のステップを特徴付ける重み付けパラメータと平均動力値とを乗算することによって行うことができる。このような重み付けパラメータは、具体的には、本体の掘削工具を降下させる間及び掘削工具から土砂排出する間よりも、掘削工具で掘削する間及び掘削工具を引上げる間で、より小さくなる可能性がある。本体の掘削及び引上げプロセスのエネルギー消費が比較的多いので、適切な重み付けを選択することにより、本体での掘削中及び引上げ中に、より小さい動力比率(例えば、1未満の重み係数)が付属装置に付与される。逆に、本体の掘削工具の降下の間及び土砂排出の間の必要動力ははるかに少ない。そのため、より高い重み係数(例えば、約1)を選択することにより、付属装置に余剰エネルギーを供給できる。
【0017】
典型的なケーシング揺動装置の設計の幾何学的形状に起因して、2つの揺動シリンダが特定位置にあるとき、動力伝達の効率が最適化される。両方向における大きなずれにより効率が低下する。ケーシングの前部での有効揺動角は、ケーシングのねじれに起因して、ケーシングの深さが非常に大きい場合に特に小さくなる。この背景に関し、動作中、又は、ケーシング深さが大きくなるにつれて、この揺動角を動的に設定することも同様に好適である。ここでは、付属装置の現在の消費動力を考慮しながら、及び/又は、ケーシング深さ又は掘削深さに応じて、揺動角を動的に設定することが付属装置については好適であることが分かっている。これにより、前述の値を考慮して最適及び最大揺動角を設定できるので、ケーシング揺動装置の作業プロセスや効果を理想的に設定することができる。
【0018】
現在の作業場所での土壌強度はさらに重要である。土壌強度は、付属装置又は本体の設定を最適化するためにも考慮され得る要因である。ケーシング揺動装置の駆動が不十分な場合に、接触圧力を改善するために、具体的には、チューブ部材をさらに取り付けることができる。このような場合、ケーシング揺動装置が、通信インターフェースを介して、ケーシングの処理のために、本体からのより多くのエネルギーを具体的に要求することも考えられる。ケーシング揺動装置は、例えば、ケーシング深さの経時変化を考慮しながら、現在の進行速度を設定することができる。
【0019】
本発明による方法に加えて、本発明は、本体(具体的には、ケーブル式掘削機又は掘削リグ)と、少なくとも1つの付属装置(好ましくは、ケーシング揺動装置又はケーシング回転装置)とを含むシステムにも関する。付属装置及び本体は、本発明による方法を実施するための少なくとも1つの制御部を備えている。この方法の制御は、具体的には、主に本体の制御部によって行われる。したがって、このシステムは、本発明による方法を参照して上記で詳細に説明したものと同じ利点及び特性によって特徴付けられる。このため、繰り返しの説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本体とケーシング揺動装置とを含む本発明によるシステムの側面図である。
【
図3】ケーシング深さと掘削深さとの間の深さの差分に依存するコスト関数を説明するためのグラフである。
【
図4a】掘削深さ及びケーシング深さを経時的に示すグラフである。
【
図4b】掘削深さ及びケーシング深さを経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のさらなる利点及び特性を、図面に例示する実施形態を参照してより詳細に説明する。
【0022】
ケーシング揺動装置(VRM)とケーブル式掘削機(ハンマーグラブによる掘削)又は掘削リグ(ケリー掘削)とを組み合わせて行われる杭施工は、補助手段によって、エネルギー(燃料消費)及び所要時間について最適化されるべきである。ここで、補助手段は、VRMと本体との間のエネルギー分配を動的に調整して、これらの2つの機械の稼働率及び作用効果を最適化するものである。
【0023】
VRMを使用してハンマーグラブによる掘削を行う際には、それ自体独立した2つのユニット(すなわち、ケーブル式掘削機1及びケーシング揺動装置として構成されたケーブル式掘削機の付属装置)が協働して、杭施工を行う。
図1に一例として示されるように、旋回可能な上部構造と、ブーム2と、グラブ3とを備えるケーブル式掘削機1は、穴の掘削を行う。ケーブル式掘削機には、ベースプレート201と、ベースプレート201に対する距離を調節可能なテーブル301とを備えたケーシング揺動装置が取り付けられている。このケーシング揺動装置によって、以下のようにして、ケーシング100を地中に圧入することができる。すなわち、テーブル301を、例えば、クランプシリンダによってケーシング100に係止する。続いて、ベースプレート201を上昇させることにより、ケーシング100、テーブル301、及びベースプレート201の重量力が下方に作用する。静止摩擦を克服するために、別のステップでテーブル301を、例えば、水平揺動(いわゆるケーシング揺動装置の場合)させて、又は、連続回転させて(いわゆるケーシング回転装置の場合)動かす。この相互作用によりケーシング100を地中に降下させながら、ケーブル式掘削機1で、ケーシング100内の土砂を掘削する。
【0024】
図2a及び
図2bには、ケーシング揺動装置をより詳細に示す。
図2a及び
図2bは、ケーシング揺動装置をケーシング100とともに示す側面図及び平面図である。テーブル301は、例えば、クランプによってケーシング100に固定することができる。ベースプレート201は、リフトシリンダによって、接続点211と311の間及び接続点212と312の間で上昇させることができる。テーブル301は、2つの揺動シリンダの同期運動によって、接続点313と413の間及び接続点314と414の間でベースプレート201に対して回動運動を行うことができる。剛性ステアリングロッドは、一方ではテーブル301の接続点321に関節式に取り付けられており、他方では、要素401の接続点421に関節式に取り付けられている。ケーシング100のy軸回りの傾斜は、ステアリングシリンダの動きによって設定することができる。このステアリングシリンダは、一方ではステアリングロッドに接続点415で関節式に取り付けられ、他方ではベースプレート201に接続点215で関節式に取り付けられている。ケーシング100のx軸回りの傾斜は、2つのリフトシリンダの上昇高さを異ならせることによって設定できる。回動中心413,414及び421は、ガイド401によって、ベースプレート201に固定的に連結された構造体202に対して水平に変位させることができる。テーブル301の傾斜は、具体的には、所望の杭傾斜にテーブル301を合わせることができるように、傾斜計501によって検出可能である。傾斜伝達装置又は角度伝達装置502は、具体的には、ケーシング深さを求めるために、ステアリングロッドの位置を検出する。
【0025】
杭施工のためのエネルギー消費は、ボーリング孔を掘削するための本体(ケーブル式掘削機、掘削リグ)の必要動力と、ケーシング100を導入するためのVRMの必要動力とから構成される。ケーシング100は、VRMによって地中に向けて回動される。この回動は、ねじ込み動作に連動して、ケーシング100の重量力とVRMの重量力を利用して行われる。VRMの地中に向けたねじ込み動作は、側面摩擦及び先端摩擦のせいで、非常に多くのエネルギーを消費する。先端摩擦は、地盤の特性とケーシング100の設計の特性とによって共同的に決定される。側面摩擦は、ケーシング100の表面に沿った地盤に対するケーシング100の相対移動によって生じる。側面摩擦は2つの成分を有する。1つ目は、ケーシング100の外側における摩擦であり、2つ目は、ケーシング100の内側における摩擦である。深さが増すにつれてケーシング100と地盤との接触面積が大きくなるので、外側の摩擦は、掘削が進行するにつれて大きくなる。ただし、ケーシング100の内側の摩擦は、掘削の進行を通してケーシング100のリードが小さく維持されるので、解消されると言ってもよい。
【0026】
掘削された土砂等は、ケーブル式掘削機1(ハンマーグラブによる掘削)又は掘削リグによって、ケーシング100から除去される。掘削工具3を引上げる際に、ケーブル式掘削機1又は掘削リグの必要動力が最大になりやすい。ボーリング孔が深くなるにつれて、引上げ高さが高くなるので、より多くのエネルギーが必要となるとともにより長い時間が必要になる。
【0027】
必要動力は、本体とVRMとの間のエネルギー流を動的に調整することによって最適化できる。ここでは、例えば、本体によってこの調整を制御できる。本体は、エネルギー流を完全に停止し、最大化し、又は、連続的に調整することができる。これに代えて、本体は、通信インターフェースを介してVRMの必要動力の変更を要求することができる。又は、本体は、例えば、特定の作業ステップを実行してはいけないこと、又は特定の作業ステップが推奨されないこと(具体的には、追加の動力パックエネルギー源を有するVRMの作動中には推奨されないこと)を特定できる。
【0028】
以下の場合について、プロセスが最適化される。
【0029】
(必要エネルギーが大きい場合)
・本体は、例えば、掘削工具3及び掘削された土砂等を引上げるために多くのエネルギーを消費しなければならないタイミングを判定し、VRMへのエネルギー流を減少させるか、又は、必要な期間にわたって停止させる(VRMにおける損失を完全になくす)。
【0030】
(必要エネルギーが小さい場合)
・本体は、本体が実行すべき作業のエネルギー消費が小さいタイミングを判定し、VRMへのエネルギー流を増加させるか、又は、VRMをでき得る限り長い時間にわたって作動させる。
【0031】
(進行がアンバランスな場合)
・現場の状況に起因して考えられる前提条件は、例えば、ボーリング孔を掘削するよりも前には、ケーシング100が常にある最低量になっていることである。例えば、ケーシング100よりも掘削が先行する場合、ケーシング100が衝突して損傷やコストが発生する可能性がある。しかしながら、ケーシング100が先行し過ぎる場合には、内側の側面摩擦が大きくなり過ぎる。したがって、この進行は、所定の差で、ほぼ同じ速度で行われる。
・本体1が、掘削に対してケーシング100の進行が大き過ぎると判定した場合には、掘削の進行がケーシング100の「範囲」に戻るまで、VRMへのエネルギー流が低減又は停止される。その結果、この期間、より多くの動力が本体によって利用可能になり、それによって掘削がより速く行われる。さらに、ケーシング100のリードが小さくなることに起因して側面摩擦が小さくなるので、ケーシング100の地中に向かってのねじ込み動作に必要な総動力量は少なくなる。
【0032】
(揺動角が好ましくない場合)
・動力伝達の効率は、典型的なVRMの幾何学的形状に起因して、2つの揺動シリンダが特定位置にあるときに最適化される。両方向における大きなずれがあると、効率が低下する。
・ケーシング100は、回動方向の変更時に停止する。この場合、2つの揺動シリンダは静止摩擦を克服しなければならない。その場合にのみ、より小さい動摩擦が再び作用する。
・この場合に役割を果たす別の効果は、非常に深い位置では、ケーシング100の前部では、ケーシング100のねじれに起因して、有効揺動角が小さくなることである。
・したがって、これらの3つの制約により、ケーシング100の深さに依存する最適及び最大揺動角とも言える角度が存在する。よって、プロセスを最適化するために、ケーシング深さ及び掘削の深さを測定するとともにVRMの消費動力を追加的に測定することによって、最適及び最大揺動角を設定できる。
【0033】
(土壌強度が高い場合)
・VRMは、接触圧力を改善するためにさらなるチューブ部材を要求でき、又は、VRMの駆動が不十分な場合、本体からのより多くのエネルギー供給を要求できる。
【0034】
(必要条件)
・進行がアンバランスな場合の最適化のために、ケーシング深さ測定及び掘削深さ測定を行う。
・揺動角を最適化するために、揺動角の測定(ステアリングロッドの接続点のうちの1つ、又は、理想的という点では劣るが、揺動シリンダの接続点のうちの1つにおける回動角センサの角度の測定)を行う。
【0035】
(効果)
・優先すべき作業のためのエネルギーを多くする。すなわち、時間の最適化を行う。
・時間ゲインによって消費量が低減される(キーワード基礎負荷/損失)
・時間ゲインによって作業時間が短縮される
【0036】
-適用例-
本体1によってケーシング100上にチューブ部材をさらに配置するプロセスは面倒ではあるが、このプロセスにおいて、本体1は、非常にわずかなエネルギーしか必要としない。切削工具(グラブ)3をわきに寄せ、チューブ部材をケーブルに固定し、設置済みのケーシングの上に載置する。その後、残りのケーシングに係止する。特に、このプロセスの前半の間、ケーシング揺動装置は、非常に大量のエネルギーを利用できる。以下の実施例は、上記から導き出すことができる。
【0037】
・ケーシング揺動装置は、ケーシング100が具体的に地中何メートルかを測定している。掘削の深さも、ケーブル式掘削機1のケーブルの長さを測定することによって分かる。ケーシング揺動装置よりも上方のケーシングの残りの高さは、ケーブル長さとケーシング上端部との比較から判断できる。ここで、ケーシング100は、例えば、地中において20メートルの長さであり、掘削深さは19メートルである。ケーシングのうち4メートルが、地中に向けたねじ込みのためにまだ利用できる状態である。現場の状況に起因して、ケーシングは掘削よりも少なくとも1メートル先行していなければならない。VRMによる地中への回動のプロセスは、これに対応してより速くなるのに対して、ケーブル式掘削機1の掘削プロセスはより低速で実施される。ここで、効率的に時間を使用するために、2つの機械制御部は、ケーブル式掘削機1がチューブ部材をもう1つ載置するか、又は、これをオペレータに提案することを協働で行う。この場合、ケーブル式掘削機1は、エネルギーをほとんど必要としない。また、放出されたエネルギーによって、VRMはより速く進行することができる。付加的な効果として、ケーシングの重量は追加されたチューブ部材により増大し、それによって地中への圧入が促進される。
【0038】
掘削工具3を引上げる間、本体は非常に大量のエネルギーを必要とし、VRMの揺動も同様に多くのエネルギーを必要とする。このことから、別の適用例を導き出すことができる。
【0039】
・ケーブル式掘削機1は、掘削工具3をケーシング100内に進行させ、底部に土砂等が無くなるまで掘削を進める。次に、ケーブル式掘削機1は、掘削された土砂等でいっぱいになった掘削工具3を引上げなければならない。この状況は予めVRMに送信することができる。ケーブル式掘削機1が掘削工具3を引上げるとすぐに、VRMへのエネルギー供給を減少させることができる。VRMはこの時間を使って、ベースプレート201の上昇のようなエネルギー面でより好適な作業を行う。掘削工具3がケーシング上端部に到達するとすぐに、ケーブル式掘削機1は、引上げが完了したことをVRMに送信し、それに応じて、VRMへのエネルギー流を増加させる。これにより、VRMは、固定されたケーシングを最大のエネルギーで回動させることができる。
・深さの分布が望ましくない場合(例えば、ケーシングが掘削よりもはるかに深く、それに応じてケーシングの内側における側面摩擦が非常に大きい場合)、極端な場合には、VRMへのエネルギー供給を掘削の継続時間にわたって完全に停止し得る。
【0040】
掘削工具3の引上げに必要な時間は、深さの増大にともなって着実に長くなる。したがって、深い位置から掘削による特定量の土砂等を除去するためには、より長い時間が必要である。この結果、本体の作業は、深い位置でよりゆっくりと進行する。しかし、ケーシング100を1メートル導入するのにVRMが必要とする時間は、深さが増しても、同程度に長くはならない。このことから、以下から導き出される。
【0041】
・掘削機1は、深さが増すにつれて、掘削をゆっくりと進めるだけである。これにより、ケーシング100のリードは連続的に大きくなる。これに起因して、ケーブル式掘削機1は、VRMへのエネルギー供給を制限して、ケーブル式掘削機1自体の作業により多くのエネルギーを利用できるようにする。
・深さの分布が望ましくない場合(例えば、ケーシングが掘削よりもはるかに深く、それに応じてケーシングの内側における側面摩擦が非常に高い場合)、極端な場合には、VRMへのエネルギー供給をときに完全に停止し得る(
図4bの例を参照)。
【0042】
-具体的な方法-
2つの異なる方法が並行して実行される。
【0043】
(プロセス最適化)
・VRMのオペレータは、最小の深さ差分D
minを設定する。ケーシング揺動とグラブ3による掘削とが同時に行われる場合、グラブ3はこの最小の深さ差分よりも下降してはならない(例えば、D
min=40cmの場合、ケーシング100は常にグラブ3よりも少なくとも40cm先行していなければならない)。D
maxはなく、ケーシング100は、グラブ3よりも所望に応じて先行していてもよい。
・コスト関数Uは、最小値D
0>D
minである場合の深さ差分Dの関数として定式化される。この点に関して
図3を参照されたい。エネルギー分配Rは、D
0において理想的である。
・DがD
0よりも小さい場合、ケーブル式掘削機1がVRMに供給する動力比率Rは大きくなる。これには2つの効果がある。VRMは、より多くの動力を受け取るのでより高速で回動し、それによりDが大きくなる。一方、ケーブル式掘削機1はより少ない動力を有し、したがって掘削速度を低下させ、この結果、Dが大きくなる。DがD
0よりも小さい場合、及び、VRMに供給されるエネルギーが既に最大である場合、例えば、チューブ部材をもう1つ載置することによって、ケーシングの重量を増加させて接触圧力を高くする必要がある。
・DがD
0よりも大きい場合、ケーブル式掘削機1がVRMに供給する動力比率Rは小さくなる。したがって、動力比率Rは、式(R=PVRM/P)に従って計算される。式中、PVRMは、プロセス最適化のためにVRMに供給される総動力Pの比率である。
・DがD
minに近づくと、VRMは停止されるべきである。
【0044】
(機械稼働率の最適化)
・ケーブル式掘削機1がVRMに供給する動力の平均比率の大きさは、上述のプロセス最適化によって設定される。別のシーケンスでは、このパラメータRに、ケーブル式掘削機1の周期的掘削プロセスを考慮に入れた別のパラメータR
cycが乗算される。動力分配は、例えば、Q=R×R
cycで得られる。したがって、R
cycは、ケーブル式掘削機1の稼働率が典型的には0と1との間の値の間隔内にあるので、VRMの動力比率の補正係数又は重み係数である。
・ケーブル式掘削機1は、掘削中及び引上げ中に、最大の動力を必要とする。この際、ケーブル式掘削機は多くの動力を受けるべきであり、VRMはこの期間、少ない動力を受ける。したがって、R
cycは、1よりも小さく、極端な場合には、R
cyc=0になる(VRMはもはや動力を受けない)。
・ケーブル式掘削機1は、グラブ3から土砂排出する間及びボーリング孔内へのグラブ3の降下中には、少ない動力を必要とする。このとき、VRMは、プロセスを減速させることなく、より高い動力比率を受けることができ、したがって、R
cyc≒1が選択される。
・
図4a、
図4b中の線と線の間隔が最小であるときが、エネルギー的に最適な状態である。