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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】避雷接地装置及び避雷接地方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 13/00 20060101AFI20221109BHJP
   F03D 80/30 20160101ALI20221109BHJP
   H01R 4/66 20060101ALI20221109BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H02G13/00 040
F03D80/30
H01R4/66 A
H01R43/00 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019029649
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020137301
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】502040041
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】田代 富士男
(72)【発明者】
【氏名】勝岡 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛志
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-255431(JP,A)
【文献】特開2005-302399(JP,A)
【文献】特開2005-62080(JP,A)
【文献】特開平8-227784(JP,A)
【文献】特開2011-149412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 13/00
H01R 4/66
H01R 43/00
F03D 80/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電機の避雷のための避雷接地装置であって、
前記風力発電機を制御する電気設備を接地させる電気接地と、
前記風力発電機に落雷した際に流れる雷電流を逃すように接地させる避雷接地と、
前記電気接地と前記避雷接地とを接続する少なくとも1巻以上のループコイルと、を備え、
前記ループコイルは、落雷時に前記避雷接地側に流れる雷電流から流入する電流により生じる電磁力により切断され、前記避雷接地と前記電気接地とを遮断する、
避雷接地装置。
【請求項2】
前記避雷接地は、地中の地表面側において前記地表面と略平行に環状に形成された第1環状部を備える、
請求項1に記載の避雷接地装置。
【請求項3】
前記第1環状部は、放射状に設けられた複数の第1電極部を備える、
請求項2に記載の避雷接地装置。
【請求項4】
前記第1電極部は、前記第1電極部の軸線方向と直交方向に突出して形成された複数の針状体を備える、
請求項3に記載の避雷接地装置。
【請求項5】
前記電気接地は、地中において前記避雷接地より下方に所定距離離間して設けられ、前記地表面と略平行に環状に形成された第2環状部または、略鉛直方向に設けられた少なくとも1個以上の第2電極部を備える、
請求項2から4のうちいずれか1項に記載の避雷接地装置。
【請求項6】
前記第2電極部は、前記風力発電機に設けられた複数のコンクリート杭内の鉄筋に接続されている、
請求項5に記載の避雷接地装置。
【請求項7】
前記第2電極部は、前記風力発電機に設けられた複数の鋼管杭に接続されている、
請求項5に記載の避雷接地装置。
【請求項8】
前記第2電極部は、前記風力発電機の設置において形成されたボーリング孔に設けられる、
請求項5に記載の避雷接地装置。
【請求項9】
前記避雷接地は、地表面から0.6~0.8メートルの深さに設けられている、
請求項1から8のうちいずれか1項に記載の避雷接地装置。
【請求項10】
前記電気接地は、地表面から3から5メートルの深さに設けられている、
請求項1から9のうちいずれか1項に記載の避雷接地装置。
【請求項11】
風力発電機の避雷のための避雷接地方法であって、
前記風力発電機を制御する電気設備を電気接地により接地する工程と、
前記風力発電機に落雷した際に流れる雷電流を逃すように避雷接地により接地する工程と、
前記電気接地と前記避雷接地とを少なくとも1巻以上のループコイルで接続する工程と、
前記ループコイルを落雷時に前記避雷接地側に流れる雷電流から流入する電流により生じる電磁力により切断させて前記避雷接地と前記電気接地とを遮断する工程と、を備える、
避雷接地方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電機に落雷した際に流れる雷電流を逃す避雷接地装置及び避雷接地方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギー需要の高まりにより風力発電機の需要が増加している。しかし、風力発電機は、見通しの良い立地に60-l00[m]程度の高さで建設されると共に、支持鉄塔やブレード自体が高さ方向に長尺に形成されているという独特な形状の影響により落雷の被害を受けやすいという特徴がある。そのため、風力発電機には落雷用の避雷接地が設けられている。
【0003】
風力発電機の落雷対策として例えば、特許文献1に記載された風力発電機の保護システムが知られている。この保護システムは、ブレードに設けられた導体リングと、発電機を収容するためのロータケースに導体リングに対向して設けられた酸化亜鉛形避雷素子とを備えており、酸化亜鉛形避雷素子は、導体リングとギャップを置いて配置されるように構成されており、風力発電機の電子部品に発生する誘導過電圧が増大することを防止している。
【0004】
また、特許文献2には、風力発電機の発電設備を落雷から保護する風力発電機が記載されている。この風力発電機は、発電機の収容箱に設けられた絶縁部と、絶縁部上に設けられた避雷針と、避雷針と接地部とを接続する導線とを備えており、導線を介して避雷針から受けた落雷により生じる電流を地面側に接地して、収容箱内部の発電機を落雷から保護している。
【0005】
また、特許文献3には、風力発電機の周波数変換装置を落雷から保護する風力発電機が記載されている。この風力発電機は、周波数変換装置と基礎との間に設けられた絶縁体と、周波数変換装置と接地とを接続する導線とをそなえており、落雷により生じる電流が大地に流れる際に、周波数変換装置の接地用の導線と周波数変換装置との間にループ回路が構成されることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-265938号公報
【文献】特開2004-225660号公報
【文献】特許第6019660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
風力発電機の設計基準では、接地抵抗が10[Ω]以下とされている。そして、この基準によれば、避雷接地と風力発電機の内部の発電装置及び通信機器等の電気設備類に用いられる電気接地とが区別されておらず共用されている場合が多い。風力発電機において避雷接地と電気接地を共用した場合、落雷時に発生する雷撃電流により電気設備類に過剰な電圧及び電流が誘導され、電気設備類が破壊される虞がある。しかしながら、特許文献1から3の文献は、避雷接地と電気接地を共用して落雷を受けた場合の電気設備類の保護について言及していない。
【0008】
本発明は、避雷接地と電気接地を共用化した風力発電機に落雷が生じた際に避雷接地と電気接地とを切り離して風力発電機の電気設備を保護することができる避雷接地装置及び避雷接地方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、風力発電機の避雷のための避雷接地装置であって、前記風力発電機を制御する電気設備を接地させる電気接地と、前記風力発電機に落雷した際に流れる雷電流を逃すように接地させる避雷接地と、前記電気接地と前記避雷接地とを接続する少なくとも1巻以上のループコイルと、を備え、前記ループコイルは、落雷時に前記避雷接地側に流れる雷電流から流入する電流により生じる電磁力により切断され、前記避雷接地と前記電気接地とを遮断する、避雷接地装置である。
【0010】
本発明によれば、避雷接地と電気接地を共用化した風力発電機に落雷が生じた際に、避雷接地と電気接地とを電気的に接続するループコイルに避雷接地側から落雷により生じた電流が電気接地側に流入する。このとき、ループコイルには、急激に流入する電流によりループコイルを切断する方向に電磁力が働き、ループコイルが切断される。ループコイルが切断されることにより、風力発電機の電気設備が雷電流から保護される。
【0011】
本発明は、前記避雷接地側に地中の地表面側において前記地表面と略平行に環状に形成された第1環状部を備えるように構成されていてもよい。
【0012】
本発明によれば、環状に形成された避雷接地が地表面側に設けられていることにより、地表面に雷の特性に合わせて雷電流を放射状に拡散させることができる。
【0013】
本発明は、前記第1環状部が放射状に設けられた複数の第1電極部を備えるように構成されていてもよい。
【0014】
本発明によれば、第1環状部が放射状に設けられた複数の第1電極部を備えることにより、地表面において雷電流を放射状に容易に拡散させることができる。
【0015】
本発明は、前記第1電極部が前記第1電極部の軸線方向と直交方向に突出して形成された複数の針状体を備えるように構成されていてもよい。
【0016】
本発明によれば、第1電極部が複数の針状体を備えることにより、地表面において雷電流を更に容易に拡散させることができる。
【0017】
本発明は、前記電気接地が地中において前記避雷接地より下方に所定距離離間して設けられ、前記地表面と略平行に環状に形成された第2環状部または、略鉛直方向に設けられた少なくとも1個以上の第2電極部を備えるように構成されていてもよい。
【0018】
本発明によれば、電気接地が地中において避雷接地より下方に所定距離離間して設けられていることにより、地表面側で避雷接地により拡散された雷電流が電気接地側に流れ込むことが防止され、電気設備を保護することができる。また、電気接地は、第2環状部や第2電極部を備えることにより、基礎の工法や地盤の性状に合わせて設計をすることができる。
【0019】
本発明は、前記第2電極部は、前記風力発電機に設けられた複数のコンクリート杭内の鉄筋に接続されているように構成されていてもよい。
【0020】
本発明によれば、風力発電機の基礎を支持するコンクリート杭を形成している鉄筋をアース棒として用いることができる。
【0021】
本発明は、前記風力発電機に設けられた複数の鋼管杭に接続されているように構成されていてもよい。
【0022】
本発明によれば、風力発電機の基礎を支持する鋼管杭をアース棒として用いることができる。
【0023】
本発明は、前記風力発電機の設置において形成されたボーリング孔に設けられるように構成されていてもよい。
【0024】
本発明によれば、風力発電機を設置する前の地盤調査で形成されたボーリング孔を有効利用することができる。
【0025】
本発明は、前記避雷接地は、地表面から0.6~0.8メートルの深さに設けられているように構成されていてもよい。
【0026】
本発明によれば、避雷接地が地表面から浅い位置において雷電流を拡散することができる。
【0027】
本発明は、前記電気接地が地表面から3から5メートルの深さに設けられているように構成されていてもよい。
【0028】
本発明によれば、地表面側で避雷接地により拡散された雷電流が電気接地に到達して電気設備に回り込むことが防止される。
【0029】
本発明は、風力発電機の避雷のための避雷接地方法であって、前記風力発電機を制御する電気設備を電気接地により接地する工程と、前記風力発電機に落雷した際に流れる雷電流を逃すように避雷接地により接地する工程と、前記電気接地と前記避雷接地とを少なくとも1巻以上のループコイルで接続する工程と、前記ループコイルを落雷時に前記避雷接地側に流れる雷電流から流入する電流により生じる電磁力により切断させて前記避雷接地と前記電気接地とを遮断する工程と、を備える避雷接地方法である。
【0030】
本発明によれば、避雷接地と電気接地を共用化した風力発電機に落雷が生じた際に、避雷接地と電気接地とを電気的に接続するループコイルに避雷接地側から雷電流をループコイルが切断されることにより遮断して風力発電機の電気設備を雷により生じる電流から保護することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、避雷接地と電気接地を共用化した風力発電機に落雷が生じた際に避雷接地と電気接地とを切り離して風力発電機の電気設備を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態に係る風力発電機の構成を示す側面図である。
図2】避雷接地装置の構成を示す図である。
図3】避雷接地装置が備えるループコイルの構成を示す正面図である。
図4】避雷接地装置が備えるループコイルの構成を示す側面図である。
図5】避雷接地装置が備える避雷接地の構成を示す平面図である。
図6】避雷接地に設けられた放電索の構成を示す図である。
図7】避雷接地装置が備える電気接地の構成を示す平面図である。
図8】電気接地の他の構成を示す図である。
図9】電気接地として用いるコンクリート杭の構成を示す図である。
図10】電気接地の他の構成を示す図である。
図11】ループコイルに働く電磁力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る避雷接地装置Sについて説明する。
【0034】
図1に示されるように、風力発電機100は、回転自在な風車20と、風車20を支持する風車タワー1と、風車タワー1を支持する基礎2とを備える。風車タワー1は、例えば、頂部に向かうほど断面が減少する円柱状に形成された鉄塔である。風車タワー1の基端には、コンクリートで形成された基礎2が設けられている。基礎2は、地表面Eより下方の地中に根入れされるように設けられている。基礎2は、例えば、平面視して円形や多角形等の風車タワー1と同心をなす回転対象の形状に形成されている。
【0035】
風車タワー1の上端部には、風車20が回転自在に軸支されている。風車20は、正面視してハブ20Aを中心に放射状に均等に配置された複数のブレード21を備える。各ブレード21の短手方向の断面は、翼断面形状に形成されている。各ブレード21は、ハブ20Aに対して迎え角が付けられている。これにより各ブレード21は、向かい風を受けた際に風向と直交方向する一方向に力が与えられ、風車20を所定方向に回転させる。ハブ20Aには、風車20の回転軸22が連結されている。回転軸22には、発電機23のシャフトが連結されている。発電機23は、風車20の回転により誘導電圧を発生することにより発電する。
【0036】
図2に示されるように、避雷接地装置Sは、風力発電機100に適用される避雷のための装置である。避雷接地装置Sは、風力発電機100に落雷した際に流れる雷電流を逃すように接地させる避雷接地3と、風力発電機100の電気設備を接地させる電気接地5と、電気接地5と避雷接地3とを電気的に接続する少なくとも1巻以上のループコイル7とを備える。
【0037】
避雷接地3は、風車タワー1に電気的に接続された地中電極である。避雷接地3は、大地を基準電位点とするように地中に設けられている。
【0038】
避雷接地3は、地表面Eに近い深さの地中に設けられていることが望ましい。避雷接地3は、例えば、地表面Eから0.6~0.8[m]程度の深さに設けられている。避雷接地3は、例えば、平面視して環状に形成されている。避雷接地3の形状等の詳細な構成については後述する。避雷接地3と風車タワー1とは、銅などの導体により形成された導線3Aにより電気的に接続されている。
【0039】
導線3Aは、接続状態や配線対象部分の形状に合わせて適宜曲げられている。これにより、避雷接地3は、風力発電機100に落雷した際に風車タワー1に流れる雷サージ電流を大地側に逃すように構成されている。導線3Aとループコイル7との接続部には、銅製の矩形の板状体に形成された避雷接地用ターミナル4が設けられている。避雷接地用ターミナル4は、導線3A等の端部が電気的に接続された接続端子である。避雷接地用ターミナル4は、設置対象物に絶縁して取り付けられている。
【0040】
電気接地5は、風車タワー1の発電機23を制御する制御装置や通信装置等の電気設備(不図示)に接続された地中電極である。電気接地5は、大地を基準電位点とするように地中に設けられている。電気接地5は、避雷接地3から放電された電流が回り込まないように避雷接地3と離間していることが望ましい。電気接地5は、地中において避雷接地3より下方に所定距離離間して設けられている。
【0041】
電気接地5は、例えば、地表面Eから3~5[m]程度の深さの位置に設けられている。電気接地5は、例えば、平面視して風車タワー1と同心をなす環状に形成されている。電気接地5の形状等の詳細な構成については後述する。電気接地5と電気設備とは、銅などの導体により形成された導線5Aにより電気的に接続されている。
【0042】
導線5Aは、接続状態や配線対象部分の形状に合わせて適宜曲げられている。これにより、電気接地5は、電気設備に流れる過剰な電流を大地側に逃すように構成されている。導線5Aとループコイル7との接続部には、銅製の矩形の板状体に形成された電気接地用ターミナル6が設けられている。電気接地用ターミナル6は、導線5A等の端部が電気的に接続された接続端子である。電気接地用ターミナル6は、設置対象物に絶縁して取り付けられている。
【0043】
図3及び図4に示されるように、ループコイル7は、避雷接地用ターミナル4と電気接地用ターミナル6とを電気的に接続する。ループコイル7は、例えば、22[mm]以下の所定の断面積(例えば、14[mm])の銅製の導線(IV線)で形成されている。ループコイル7は、例えば、避雷接地用ターミナル4と電気接地用ターミナル6とに電気的に接続する一対の直線部7A,7Bと、一対の直線部7A,7Bとの間を電気的に接続するループ状のループ部7Cとを備える。
【0044】
一対の直線部7A,7Bは、上方に起立すると共に、軸線方向が平行となるように対向して配置されている。一対の直線部7A,7Bは、軸線方向が水平方向であるように配置されていてもよい。一対の直線部7A,7Bの基端は、それぞれ避雷接地用ターミナル4と電気接地用ターミナル6とに電気的に接続されている。一対の直線部7A,7Bの先端は、ループ部7Cに電気的に接続されている。一対の直線部7A,7Bは、長さLが0.1~0.2[m]程度に形成されている。
【0045】
ループ部7Cは、直径が10[cm]程度の1.5巻のループコイルが形成されている。ループ部7Cの上部は、結束バンドH等で束ねられている。ループ部7Cは、一対の直線部7A,7Bが形成されるように避雷接地用ターミナル4と電気接地用ターミナル6との上方において設置対象物に対し自立している。ループコイル7において、直線部7A,7Bの配置関係やループ部7Cに巻き数は上記実施例に限らない。ループコイル7の電気的な性質については後述する。
【0046】
次に、避雷接地3の詳細な構成について説明する。地中に浸入する雷電流は、地表面から深度が浅い場所を放射状に拡散する性質があることが知られている。そのため、避雷接地3は、雷電流を拡散し易い形状に形成されている。また、雷電流は、例えば、25~1M[Hz]の周波数であり、特に接地の設計においては高周波の雷電流に対応した設計が求められる。
【0047】
図5に示されるように、避雷接地3は、平面視して風車タワー1と同心をなすように環状に形成されたループ部3R(第1環状部)を備える。ループ部3Rは、地中の地表面側において地表面Eと略平行に環状に形成されている。ループ部3Rは、地中において基礎2の上方において、平面視して基礎2の周囲を取り囲むように環状に形成されている。ループ部3Rは、例えば半径が基礎2の径方向の端部から0.5~2[m]程度大きくなるように形成されている。
【0048】
ループ部3Rと風車タワー1の表面とは、導線3Aにより電気的に接続されている。ループ部3Rは、風車タワー1の表面を流れる雷サージ電流を地中に放電する。ループ部3Rには、平面視して外方に向かって放射状に均等に突出するように4個の放電索3S(第1電極部)が設けられている。放電索3Sの数は、4個だけでなく、地面の雷電流に対するキャパシタンスに応じて適宜増減されてもよい。
【0049】
放電索3Sは、水平面内に配置されるように設けられている。放電索3Sは、金属製で棒状に形成された地中電極である。ループ部3Rと複数の放電索3Sの基端とは、電気的に接続されている。放電索3Sは、ループ部3Rに流れる雷サージ電流を更に地中に拡散して放電するように設けられている。
【0050】
図6に示されるように、放電索3Sには、多数の針状体3Nが設けられている針付電極であってもよい。針状体3Nは、放電索3Sの軸線方向Pと直交方向に放射状に突出して形成されている。放電索3Sに多数の針状体3Nが形成されていることにより、雷サージに対して複数の針状体3Nのそれぞれの先端部から放電が行われる。このため、複数の針状体3Nが形成された放電索3Sは、針状体3Nが設けられていない放電索3Sに比してサージインピーダンスが低減される。
【0051】
次に、電気接地5の詳細な構成について説明する。
【0052】
図7に示されるように、電気接地5は、平面視して風車タワー1と同心をなすように環状に形成されたループ部5R(第2環状部)を備える。ループ部5Rは、地中の地表面側において地表面Eと略平行に環状に形成されている。ループ部5Rは、地中において基礎2の下方において、平面視して基礎2の周囲を取り囲むように環状に形成されている。ループ部5Rは、例えば半径が基礎2の径方向の端部から0.5~2[m]程度大きくなるように形成されている。ループ部5Rと風車タワー1の電気設備とは、導線5Aにより電気的に接続されている。ループ部5Rは、電気設備に生じる過剰な電流を地中に放電する地中電極である。
【0053】
電気接地5は、ループ部5Rだけでなく、少なくとも1個以上のアース棒5S(第2電極部)により形成されていてもよい。アース棒5Sは、金属製で棒状に略鉛直方向に沿って形成された地中電極である。アース棒5Sと導線5Aとは、銅線5Dにより電気的に接続されている。アース棒5Sと導線5Aとは、例えば溶接により接続されている。
【0054】
図8及び図9に示されるように、アース棒5Sは、基礎2を支持するための複数のコンクリート杭が用いられてもよい。コンクリート杭は、高さ方向に複数の鉄筋が配筋されて形成されている。導線5Aと複数のコンクリート杭内部の鉄筋とを電気的に接続することにより、各コンクリート杭がアース棒5Sとして形成される。上記鉄筋は金属製のメッシュであってもよい。アース棒5Sにより地中に雷電流が入力されると、アース棒5Sを中心に下方に行くほど電位が低下する等電位面が形成される。
【0055】
基礎2を支持する杭は、コンクリート杭の他、鋼管杭で形成されていてもよい。鋼管杭は、地中に打ち込まれる鋼製の杭である。鋼管杭が地中に打ち込まれた後、内部にコンクリートが注入される。導線5Aと複数の鋼管杭とを溶接を用いて電気的に接続することにより、各鋼管杭がアース棒5Sとして形成される。
【0056】
図10に示されるように、アース棒5Sは、基礎2周辺の地盤調査時に設けられたボーリング孔を利用して形成されていてもよい。ボーリング調査が行われると、土層がコア抜きされてボーリング孔が形成される。このボーリング孔に例えば鋼管を挿入して、この鋼管に導線5Aを電気的に接続する。そうすると、鋼管がアース棒5Sとして形成される。
【0057】
上述したコンクリート杭、鋼管杭、及び鋼管を用いた杭状の電気接地5は、地中の地下水位面に接していればより良好な放電特性を有する。上述した電気接地5は、風力発電機100の基礎2の工法や設置対象地盤の性状に応じて適宜ループ状、又は杭状のいずれかのパターンが選択される。
【0058】
次に、ループコイル7の特性について説明する。
【0059】
ループコイル7は、落雷時に避雷接地3側に流れる雷電流から電気接地5側に流入する電流により一対の直線部7A,7Bにローレンツ力が働く。
【0060】
図11に示されるように、ループコイル7に落雷時に避雷接地3側に流れる雷電流から電流が流入すると、一対の直線部7A,7Bに互いに逆方向の電流が流れる。一般的に、互いに平行な一対の電線に向きが異なる電流が流れる場合、一対の電線の間には互いに離間する方向に電磁力Fが加わる。そうすると、ループコイル7において、雷電流により一対の直線部7A,7Bに互いに離間する方向の力が瞬間的に生じる。
【0061】
また、ループ部7Cにも、向きが異なる電流が流れるので、ループが互いに離間する方向、即ち放射状にローレンツ力が瞬間的に生じる。そうすると、ループコイル7は、雷電流が流入すると略同時にループ部7Cがローレンツ力により切断されると共に、一対の直線部7A,7Bが互いに離間する。また、ループ部7Cには、雷電流と反対方向に誘導される誘導起電力が生じ、雷電流の増加を妨害する。そのため、ループ部7Cに瞬間的に高周波で大電流値を有する雷電流が流入すると、ループ部7Cがインダクタとなってショートして焼き切れる場合もある。
【0062】
従って、ループコイル7は、避雷接地3側に流れる雷電流から流入する電流により生じる力により切断され、避雷接地3と電気接地5とを電気的に遮断する。電気接地5は、避雷接地3と地中において離間して設置されており、且つ、地中の避雷接地3により雷電流が地表面付近を拡散していくことから、地中の避雷接地3から電気接地5に雷電流が流入することが防止され、電気設備が保護される。
【0063】
避雷接地3と電気接地5とが電気的に切り離された状態では、直ちに風力発電機の稼働に支障が生じることはないが、電気設備と風車タワー1との間に電位差が生じると電気設備に放電されたり、風力発電機内部で作業する作業者に放電されたりして悪影響が発生する虞がある。ループコイル7は、例えば、センサやカメラ等により監視され、常時または所定のタイミングで切断状態が検出される。ループコイル7は、切断が検出された場合、新たなループコイル7と交換される。
【0064】
上述した避雷接地装置Sによれば、避雷接地と電気接地を共用化した風力発電機に落雷が生じた際に避雷接地と電気接地とを切り離して風力発電機の電気設備を保護することができる。また、避雷接地装置Sによれば、雷電流が地中で拡散する特性に合わせて避雷接地3がループ状に形成される共に放射状に複数の放電索3Sが設けられていることにより、サージインピーダンスを低減することができる。更に避雷接地装置Sによれば、電気接地5が避雷接地3よりも下方に設けられているため、避雷接地3で拡散した雷電流が電気接地5に流れ込むことが無く、電気設備を確実に保護することができる。
【0065】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、避雷接地装置Sは、風力発電機だけでなく、通信用の基地局等の塔状構造物に適用してもよい。ループコイル7は、複数個が設けられていてもよく、使用中のループコイル7が切断された場合、他のループコイル7に切り替えて使用するように回路を設定してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 風車タワー
2 基礎
3 避雷接地
4 避雷接地用ターミナル
5 電気接地
6 電気接地用ターミナル
7 ループコイル
20 風車
21 ブレード
22 回転軸
23 発電機
100 風力発電機
S 避雷接地装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11