(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】空中像表示装置、取引装置、および空中像表示装置における空中像結像制御方法
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20221109BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20221109BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20221109BHJP
G07D 11/60 20190101ALI20221109BHJP
【FI】
G02B30/56
G06F3/01 570
G06F3/0346 422
G07D11/60
(21)【出願番号】P 2019031082
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹崎 卓哉
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040944(JP,A)
【文献】特開2010-262228(JP,A)
【文献】国際公開第2017/125984(WO,A1)
【文献】特開2016-006447(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042830(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0188548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56
G06F 3/01
G06F 3/0346
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示部と、
再帰性反射材を有する再帰性反射部と、ビームスプリッターとで構成され、前記表示部に表示される画像を、前記ビームスプリッターおよび前記再帰性反射部により空間に投射することで空中像として結像させる空中結像機構と、
前記ビームスプリッターに対して前記再帰性反射材を移動させる移動機構と
を有
し、
前記移動機構は、
前記ビームスプリッターの面に対して前記再帰性反射材が配置される角度方向に前記再帰性反射材を移動させる
ことを特徴とする空中像表示装置。
【請求項2】
前記再帰性反射部は、
前記再帰性反射材と前記ビームスプリッターとの間に配置される四分の一波長板をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の空中像表示装置。
【請求項3】
前記移動機構は、
前記ビームスプリッターの面に対して前記再帰性反射材がなす角度を変える
ことを特徴とする請求項1に記載の空中像表示装置。
【請求項4】
前記表示部と前記再帰性反射部は、
前記ビームスプリッターを挟んで互いに反対側の位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の空中像表示装置。
【請求項5】
前記空中結像機構により結像された前記空中像を反射させる反射板
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の空中像表示装置。
【請求項6】
取引を行う利用者を撮像する撮像部と、
再帰性反射材を有する再帰性反射部と、ビームスプリッターとで構成され、表示部に表示される画像を、前記ビームスプリッターおよび前記再帰性反射部により空間に投射することで空中像として結像させる空中結像機構と、
前記撮像部によって撮像された画像から前記利用者の位置を認識する利用者認識部と、
前記利用者認識部によって認識された利用者の位置に応じて前記ビームスプリッターに対して前記再帰性反射材を移動させることで、前記空中結像機構によって結像される前記空中像が前記利用者により視認可能な領域を調節する移動機構と
を有
し、
前記移動機構は、
前記ビームスプリッターの面に対して前記再帰性反射材が配置される角度方向に前記再帰性反射材を移動させる
ことを特徴とする取引装置。
【請求項7】
空中像表示装置における空中像結像制御方法であって、
前記空中像表示装置は、
画像を表示する表示部と、
再帰性反射材を有する再帰性反射部と、ビームスプリッターとで構成され、前記表示部に表示される画像を、前記ビームスプリッターおよび前記再帰性反射部により空間に投射することで空中像として結像させる空中結像機構と、を有し、
前記ビームスプリッター
の面に対して
前記再帰性反射材が配置される角度方向に前記再帰性反射材を移動させることで、前記空中結像機構が前記空中像を結像する位置を変更する
ことを特徴とする空中像結像制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中像表示装置、取引装置、および空中像表示装置における空中像結像制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特殊なメガネ等を装着せずに三次元空間内に映像表示可能な空中表示技術が注目されている。三次元空間内に像を表示する方法の一つとして、非特許文献1に記載の、再帰反射を用いたAIRR(Aerial Imaging by Retro-Reflection)という方式が知られている。
【0003】
AIRR方式による空中表示の構成では、光源と、ビームスプリッター(ハーフミラー)と、再帰性反射材とを備えている。光源から出た光の一部がビームスプリッターによって反射される。反射光は再帰性反射材に入射し、入射方向と同じ方向に反射される。その反射光はビームスプリッターを透過し、ビームスプリッターに対して光源とは面対称の位置に空中像を形成する。このとき、空中像が見えるのは、利用者の視点位置からビームスプリッターを通して再帰性反射材が見える範囲に限られるという特徴がある。
【0004】
一方で、暗証番号等の機密情報の入力を目的とした暗証番号入力装置は、常に機密情報詐取による犯罪行為に対抗する手段を講じるための改善が進められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】H. Yamamoto,Y. Tomiyama,S.Suyama,“Floating aerial LED signage based on aerial imaging by retro-reflection (AIRR),” Optics Express,Vol. 22,No. 22,pp. 26919 - 26924(2014)
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在の暗証番号入力装置は、入力の詐取を防止することを目的とした覗き見防止カバー等を併用することが一般的である。しかし、一方で、覗き見防止カバーにカメラを設置されることにより、暗証番号を詐取する犯罪が発生している。また、暗証番号入力装置の鍵盤面に、鍵盤を模したデータ取得機能を有するフィルムを貼り付けることにより、暗証番号を詐取する犯罪が発生している。
【0008】
このような機密情報詐取による犯罪行為に対抗する手段として、暗証番号を入力する鍵盤面を三次元空間に空中像として表示する方法がある。空中像は視認できる範囲が狭いため覗き見を防止することができる。また、物理的な表示面がないためカメラの設置やフィルムの貼り付けを防止することもできる。
【0009】
一方で、空中像を視認できる範囲が狭いということは、身長によっては見えない場合があるなど、利用者の視認性・利便性が損なわれるという問題もある。空中像を視認できる範囲を広げる方法として、特許文献1に記載のように、より広い角度から観察可能とする表示装置および空中像の表示方法が提案されている。
【0010】
しかし、この方法は対象利用者の視点以外にも空中像を視認できる範囲が広がってしまうため、覗き見を防止することが困難となる。この状態で入力を行った場合、周囲から押した数字が見え、容易に入力を搾取できてしまうため、暗証番号を扱う装置として実用化するには安全性を欠く。
【0011】
本発明の目的は、空中像の表示装置において、表示された暗証番号等の機密情報を保護しつつ、利用者の視認性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため本発明においては、空中像表示装置は、例えば、画像を表示する表示部と、再帰性反射材を有する再帰性反射部と、ビームスプリッターとで構成され、前記表示部に表示される画像を、前記ビームスプリッターおよび前記再帰性反射部により空間に投射することで空中像として結像させる空中結像機構と、前記ビームスプリッターに対して前記再帰性反射材を移動させる移動機構とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、空中像の表示装置において、表示された暗証番号等の機密情報を保護しつつ、利用者の視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1の空中像表示装置の構成を示す図である。
【
図2A】実施例1において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【
図2B】実施例1において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【
図3】実施例1の空中像表示装置の別の構成を示す図である。
【
図4】実施例2の空中像表示装置の構成を示す図である。
【
図5A】実施例2において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【
図5B】実施例2において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【
図6】実施例3の空中像表示装置の構成を示す図である。
【
図7A】実施例3において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【
図7B】実施例3において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【
図8】実施例4の空中像表示装置の構成を示す図である。
【
図9A】実施例4において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【
図9B】実施例4において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【
図10】実施例1~4を自動取引装置に適用した実施例5の装置の構成を示す図である。
【
図11】実施例5における再帰性反射部の移動制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12A】実施例5において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【
図12B】実施例5において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施例を詳述する。本明細書において、各図面の同一参照番号は、同一あるいは類似の構成または処理を示し、後出の実施例の説明では前出の実施例との差分のみを説明し、後出の説明が省略される場合がある。また、各実施例および各変形例は、本発明の技術思想の範囲内かつ整合する範囲内で一部または全部を組合せることができる。
【実施例1】
【0016】
<実施例1の空中像表示装置の構成>
図1、
図2A、および
図2Bを参照して、本発明の実施例1の構成について説明する。実施例1は、再帰性反射部を利用者から見て前後に移動させることにより空中像を視認できる角度を変更可能な空中像表示装置に関する。
【0017】
図1は、実施例1の空中像表示装置の構成を示す図である。
図1に示すように、空中像表示装置1は、空中結像機構2と、表示部本体3とを有し、空中に投射された空中像4を含む。
【0018】
図1、
図2A、および
図2Bにおいて、正系のXYZ座標系を定義する。このXYZ座標系において、ビームスプリッター6を透過した光が空中像4を結像し、空中像4の全体を視認可能な空中像視認可能領域8が形成される側を、X軸の正方向とする。また、このXYZ座標系において、
図1、
図2A、および
図2Bの紙面に向かう空中像表示装置1の幅手方向をY軸の正方向とする。また、このXYZ座標系において、
図1、
図2A、および
図2Bの紙面に向かって空中像表示装置1の上方向をZ軸の正方向とする。
図1、
図2A、および
図2Bは、空中像表示装置1のXZ平面における縦断面を示す。
【0019】
空中結像機構2は、再帰性反射部5と、ハーフミラーであるビームスプリッター6と、移動機構7とで構成される。空中結像機構2は、表示部本体3に表示された画像の光を、光の反射および透過を用いて空中像4として空中に結像させる機能を有する。ビームスプリッター6は、光束を分割する機能を有したシートを貼った面が再帰性反射部5と同じ側になるように配置する。空中像4に表示される映像は、表示部本体3に表示される映像と等価である。
【0020】
再帰性反射部5は、再帰性反射材16と、位相板の一種である四分の一波長板17とで構成され、四分の一波長板17は、再帰性反射材16と、ビームスプリッター6の間に配置される。四分の一波長板17は、光の位相を90°ずらすものであり、再帰性反射部5からビームスプリッター6への光を透過させるために用いる。
【0021】
再帰性反射部5は、表示部本体3およびビームスプリッター6と所定の角度をなすように移動機構7に取付けられ、移動機構7により、ビームスプリッター6に対する所定の角度を維持したまま、ビームスプリッター6の面に対して平行なX軸方向に移動可能である。
【0022】
表示部本体3から出た光は、ビームスプリッター6に入射すると、その偏光方向によって反射、あるいは透過される。反射した光は、再帰性反射材16に入射し、入射方向と同じ方向に反射される。このとき四分の一波長板17がなければ光の偏光方向は変わらないため、反射光はビームスプリッター6を透過できない。四分の一波長板17は、光が通過するときにその位相を90°ずらすが、再帰性反射材16とビームスプリッター6の間に配置されることで、光が往復で計2回、四分の一波長板17を通過するため、光の位相が180°ずれることになる。これにより偏光方向が変化し、再帰性反射材16からの反射光がビームスプリッター6を透過するようになる。
【0023】
例えば、表示部本体3から出る光がP偏光だった場合、ビームスプリッター6は、P偏光を反射、S偏光を透過するものを用いる。ビームスプリッター6での反射光は再帰性反射部5で反射する際、四分の一波長板17を2回通過することでS偏光となり、次にビームスプリッター6に入射したときに透過させることができる。
【0024】
図2Aは、実施例1において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
図2Bは、実施例1において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【0025】
図2Aおよび
図2Bは、空中像4を視認できる角度を変える一例として、上下方向の角度を制御する状態を示す。移動機構7によって再帰性反射部5の位置を空中像表示装置1の前後(X軸の正負方向)に移動させることで、空中像視認可能領域8を移動させ、空中像4が視認できる角度を制御する。同様の構成にて、再帰性反射部5を空中像表示装置1の左右(Y軸の正負方向)に移動させることにより、左右方向の視認できる角度を制御することが可能となる。この際、再帰性反射部5を空中像表示装置1の右(Y軸の正方向)に移動させると、左方向(Y軸の負方向)に視認角度が変化し、再帰性反射部5を空中像表示装置1の左(Y軸の負方向)に移動させると、右方向(Y軸の正方向)に視認角度が変化する。
【0026】
<実施例1の空中像表示装置の変形例>
なお、空中結像機構2の構成物の配置は、
図1の配置に限らない。
図3は、実施例1の空中像表示装置の別の構成を示す図である。例えば、
図3のように、再帰性反射部5および移動機構7を、ビームスプリッター6が配置されるXY平面に関して表示部本体3の反対側、つまり、空中像4が結像される利用者側の空間に配置してもよい。このとき、ビームスプリッター6は、光束を分割する機能を有したシートを貼った面が再帰性反射部5と同じ側になるように、
図1とは上下(Z軸の正負方向)の面を反転させて配置する。
【0027】
また、本実施例では、再帰性反射部5は、表示部本体3およびビームスプリッター6となす所定の角度を一定に維持しつつ、移動機構7により、ビームスプリッター6に対して平行なX軸方向に移動されるとした。しかし、これに限られず、再帰性反射部5がビームスプリッター6となす所定の角度を可変としてもよい。空中像視認可能領域8は、ビームスプリッター6を通して再帰性反射部5の反射面が視認可能な位置にある領域である。よって、空中像視認可能領域8が目的の位置となるように、ビームスプリッター6に対する再帰性反射部5の角度を可変としてもよい。
【実施例2】
【0028】
<実施例2の空中像表示装置の構成>
図4、
図5A、および
図5Bを参照して、本発明の実施例2の構成について説明する。以下の実施例2の説明では、実施例1と重複する説明を省略する。実施例2は、再帰性反射部を利用者から見て上下に移動させることにより空中像を視認できる角度を変更可能な空中像表示装置に関する。
【0029】
図4は、実施例2の空中像表示装置の構成を示す図である。
図4に示すように、空中像表示装置1は、再帰性反射部5を移動させる方向が上下であること以外は、実施例1と同様の構成とする。
【0030】
図4、
図5A、および
図5Bにおいて、実施例1と同様に、正系のXYZ座標系を定義する。すなわち、このXYZ座標系において、ビームスプリッター6を透過した光が空中像4を結像し、空中像4を視認可能な空中像視認可能領域8が形成される側を、X軸の正方向とする。また、このXYZ座標系において、
図4、
図5A、および
図5Bの紙面に向かう空中像表示装置1の幅手方向をY軸の正方向とする。また、このXYZ座標系において、
図4、
図5A、および
図5Bの紙面に向かって空中像表示装置1の上方向をZ軸の正方向とする。
図5、
図5A、および
図5Bは、空中像表示装置1のXZ平面における縦断面を示す。
【0031】
再帰性反射部5は、表示部本体3およびビームスプリッター6と所定の角度をなすように移動機構7に取付けられ、移動機構7により、ビームスプリッター6に対する所定の角度を維持したままZ軸方向に移動可能である。
【0032】
図5Aは、実施例2において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
図5Bは、実施例2において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
図5Aおよび
図5Bは、空中像4が視認できる角度を変える一例として、上下方向(Z軸方向)の角度を制御する状態を示す。移動機構7によって再帰性反射部5の位置を上下(Z軸方向)に移動させることで、空中像視認可能領域8を移動させ、空中像4が視認できる角度を制御する。
【0033】
また、実施例1と同様、空中結像機構2の構成物の配置は
図4の配置に限らず、例えば、再帰性反射部5を、ビームスプリッター6が配置されるXY平面に関して表示部本体3の反対側、つまり、空中像4が結像される利用者側の空間に配置してもよい。
【0034】
実施例2は、実施例1と同様の視認性能を確保しつつ、再帰性反射部5および移動機構7が、ビームスプリッター6よりも上方に配置されることから、実施例1と比較して、ビームスプリッター6よりも下方に空間をより確保できる。このため、空中像表示装置1を、より高い自由度で、筐体内に配置したり収蔵したりすることができる。
【実施例3】
【0035】
<実施例3の空中像表示装置の構成>
図6、
図7A、および
図7Bを参照して、本発明の実施例3の構成について説明する。以下の実施例3の説明では、実施例1~2と重複する説明を省略する。実施例3は、再帰性反射部を利用者から見て斜めに移動させることにより空中像を視認できる角度を変更可能な空中像表示装置に関する。
【0036】
図6は、実施例3の空中像表示装置の構成を示す図である。
図6に示すように、空中像表示装置1は、再帰性反射部5を移動させる方向が斜めであること以外は、実施例1と同様の構成とする。実施例3において、再帰性反射部5は、表示部本体3およびビームスプリッター6と所定の角度をなすように移動機構7に取付けられ、
図6、
図7A、および
図7Bに示す空中像表示装置1の断面視のXZ平面において、移動機構7により、所定の角度を維持しつつ所定の角度の方向に斜めに移動可能である。
【0037】
図7Aは、実施例3において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
図7Bは、実施例3において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【0038】
図7Aおよび
図7Bは、空中像4が視認できる角度を変える一例として、上下方向の角度を制御する状態を示す。移動機構7によって再帰性反射部5の位置を斜めに移動させることで、空中像視認可能領域8を移動させ、空中像4が視認できる角度を制御する。
【0039】
また、実施例1と同様、空中結像機構2の構成物の配置は
図6の配置に限らず、例えば、再帰性反射部5を、ビームスプリッター6が配置されるXY平面に関して表示部本体3の反対側、つまり、空中像4が結像される利用者側の空間に配置してもよい。
【0040】
実施例3は、実施例2と比較して、再帰性反射部5および移動機構7のZ軸方向のサイズをよりコンパクトにできる。また、実施例3における再帰性反射部5の1回の移動で、X軸方向およびZ軸方向の両方向に再帰性反射部5を移動させることができ、空中像視認可能領域8を効率よく調整することができる。
【実施例4】
【0041】
<実施例4の空中像表示装置の構成>
図8、
図9A、および
図9Bを参照して、本発明の実施例4の構成について説明する。以下の実施例4の説明では、実施例1~3と重複する説明を省略する。実施例4は、再帰性反射部を移動させることにより空中像を視認できる角度を変更可能な空中像表示装置において、結像に用いる光を反射させる鏡を有する場合の一例を示す。
【0042】
空中像表示装置1を実施例1~3の構成とは上下(Z軸方向)に反転させて配置した場合、空中像4を視認できる角度は下向きに広がるが、これは利用者の足元でしか空中像を視認できないということを表す。利用者の顔位置で空中像4を視認するには、空中像を視認できる角度を上向きにする必要があり、そのために鏡9等の反射板を用いて空中像を結像させる光を反射させる。
【0043】
図8は、実施例4の空中像表示装置の構成を示す図である。
図8は一例として、実施例3の空中像表示装置1を上下反転させて配置させたものであり、鏡9によって空中像を視認できる角度を上向きに変化させていることを示している。なお、
図8、
図9Aおよび
図9Bに示す座標軸は、
図6、
図7Aおよび
図7Bに示す実施例3の空中像表示装置1を基準にした座標軸と同一である。
【0044】
図9Aは、実施例4において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
図9Bは、実施例4において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
【0045】
図9Aおよび
図9Bは、空中像4の視認できる角度を変える一例として、上下方向の角度を制御する状態を示す。実施例3と同様に、移動機構7によって再帰性反射部5の位置を斜めに移動させることで、空中像視認可能領域8を移動させ、空中像4が視認できる角度を制御する。
【0046】
以上のように、実施例1~4によれば、空中像4が視認可能な空中像視認可能領域8は、ビームスプリッター6を通して再帰性反射部5が見える範囲に限られる。しかし、再帰性反射部5を移動させて、空中像視認可能領域8を調整することで、空中像4を様々な角度や高さ位置から視認可能とすることができる。
【0047】
さらに、空中像視認可能領域8の調整を、再帰性反射部5の移動機構7という簡素な機構で行い得るようにする。これにより、利用者の視認性および利便性を向上させつつ、対象外の利用者からも空中像4が見えてしまうといったセキュリティ上の問題発生を回避し、機密情報の表示や入力の安全性を高めることができる。
【実施例5】
【0048】
<空中像表示装置を適用した自動取引装置>
図10、
図11A、および
図11Bを参照して、本発明の実施例5の構成について説明する。実施例5は、実施例1~4の空中像表示装置を自動取引装置に応用した一例を示す。以下の実施例5の説明では、実施例1~4と重複する説明を省略する。なお、自動取引装置には、現金の自動取引を行うATM(Automatic Teller Machine)やCD(Cash Dispenser)をはじめとして、現金以外の紙葉類の自動取引を行う各種装置が含まれる。
【0049】
図10は、実施例1~4を自動取引装置に適用した実施例5の装置の構成を示す図である。
図10は一例として、実施例4の空中像表示装置1を搭載したものを示している。
【0050】
図10における正系のXYZ座標系は、
図8、
図9A、および
図9Bに示す実施例4の空中像表示装置1を基準にした座標軸と同一である。
図10は、自動取引装置10および空中像表示装置1のXZ平面における縦断面を示す。
図10に示すように、自動取引装置10は、空中像表示装置1と、カメラ11と、暗証番号表示入力部14と、利用者認識部15とを有する。
【0051】
カメラ11は、利用者画像を撮影し、その画像を利用者認識部15に送る。利用者認識部15は、カメラ11、空中像表示装置1、および暗証番号表示入力部14等を制御する、マイクロプロセッサ等の演算制御装置である。利用者認識部15は、カメラ11から受信した画像をもとに利用者位置を認識し、その位置情報を用いて、空中像表示装置1の移動機構7を制御して再帰性反射部5を移動させる。
【0052】
例えば、利用者認識部15は、カメラ11から受信した画像から認識した利用者の顔が、後述の暗証番号表示部12(空中像4)の空中像視認可能領域8に位置するようになるまで、移動機構7を制御して、再帰性反射部5を移動させる。
【0053】
あるいは、例えば、利用者認識部15は、カメラ11から受信した画像から顔認識した結果をもとに利用者の身長を推定する。そして、利用者認識部15は、推定した利用者の身長をもとに、所定のテーブルを参照する等して、利用者の顔が暗証番号表示部12(空中像4)の空中像視認可能領域8に位置するような再帰性反射部5の移動制御位置を取得する。例えば、所定のテーブルにおいて、各身長に再帰性反射部5の各移動制御位置が対応付けられているとする。そして、利用者認識部15は、取得した移動制御位置に基づいて移動機構7を制御し、再帰性反射部5を移動させて暗証番号表示部12(空中像4)の空中像視認可能領域8を移動させることで、利用者の顔が空中像視認可能領域8に位置するようにする。
【0054】
暗証番号表示入力部14は、暗証番号表示部12(空中像4)と、暗証番号入力部13で構成される。暗証番号入力部13は、利用者が暗証番号表示部12に対して行った操作を検知する機能を有する。例えば、暗証番号入力部13は、暗証番号表示部12に“0”、および“1”~“9”の10個の数字を含むキーパッド面が表示される場合、このキーパッド面が含まれる面または空間における各キーパッドに該当する座標を取得することで各キーパッドに対する操作を検知する。操作の検知方法は、2つのカメラによる三角測量の原理を用いた方法や赤外線センサを用いた方法等が挙げられるが、これに限らない。
【0055】
<自動取引装置における再帰性反射部の移動制御処理>
図11は、実施例5における再帰性反射部の移動制御処理の一例を示すフローチャートである。自動取引装置10における再帰性反射部5の移動制御処理は、利用者認識部15により、暗証番号の入力受付開始時等の所定契機で実行される。
【0056】
先ず、ステップS11では、利用者認識部15は、暗証番号表示部12に空中像4の表示を開始する。本実施例では、利用者認識部15は、暗証番号表示部12に、暗証番号入力のためのキーパッドを表示するとする。
【0057】
次に、ステップS12では、利用者認識部15は、カメラ11により、画像を撮影する。次に、ステップS13では、利用者認識部15は、ステップS12で撮影した画像中の顔位置を、顔認識等の処理を用いて検知する。
【0058】
次に、ステップS14では、利用者認識部15は、ステップS13で検知した顔位置が暗証番号表示部12(空中像4)の空中像視認可能領域8の範囲内に存在するか否かを判定する。ステップS13で検知した顔位置が暗証番号表示部12(空中像4)の空中像視認可能領域8の範囲内に存在する場合(ステップS14Yes)、利用者認識部15は、ステップS16に処理を移す。一方、ステップS13で検知した顔位置が暗証番号表示部12(空中像4)の空中像視認可能領域8の範囲内に存在しない場合(ステップS14No)、利用者認識部15は、ステップS15に処理を移す。
【0059】
ステップS15では、利用者認識部15は、移動機構7を制御して、再帰性反射部5を移動させる。ステップS15が終了すると、利用者認識部15は、ステップS16にYそりを移す。ステップS16では、利用者認識部15は、ステップS11で開始した暗証番号表示部12への空中像4の表示を終了するか否かを判定する。ステップS11で開始した暗証番号表示部12への空中像4の表示を終了する場合(ステップS16Yes)、利用者認識部15は、自動取引装置10における再帰性反射部5の移動制御処理を終了する。一方、ステップS11で開始した暗証番号表示部12への空中像4の表示を終了しない場合(ステップS16No)、利用者認識部15は、ステップS12に処理を移す。
【0060】
図12Aは、実施例5において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
図12Bは、実施例5において再帰性反射部を移動させたときに視認できる角度の一例を示す図である。
図11Aおよび
図11Bから分かるように、暗証番号表示部12の視認できる角度を変える一例として、上下方向の角度を制御する状態を示す。空中像表示装置1の移動機構7によって、再帰性反射部5の位置を移動させることで、空中像4が視認できる角度や鉛直方向の高さを制御できる。
【0061】
実施例5によれば、空中像表示装置1を備えた自動取引装置10において、表示された暗証番号等の機密情報を保護しつつ、利用者の視認性を確保することができる。
【0062】
なお、実施例5では、自動取引装置10における暗証番号入力の際に空中像表示装置1を用いる例を示したが、これに限られず、情報の表示のみで、表示に応じた入力を要求されない場合であっても、実施例5は適用可能である。
【0063】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加や、削除、置換、統合、もしくは分散をすることが可能である。また実施例で示した各構成や各処理は、処理効率あるいは実装効率に基づいて適宜分散または統合してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 空中像表示装置
2 空中結像機構
3 表示部本体
4 空中像
5 再帰性反射部
6 ビームスプリッター
7 移動機構
8 空中像視認可能領域
9 鏡
10 自動取引装置
11 カメラ
12 暗証番号表示部(空中像)
13 暗証番号入力部
14 暗証番号表示入力部
15 利用者認識部
16 再帰性反射材
17 四分の一波長板