IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許7173896運転支援装置、運転支援方法、および運転支援プログラム
<>
  • 特許-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援プログラム 図1
  • 特許-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援プログラム 図2
  • 特許-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援プログラム 図3
  • 特許-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援プログラム 図4
  • 特許-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援プログラム 図5
  • 特許-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、および運転支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20221109BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20221109BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20221109BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221109BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20221109BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20221109BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20221109BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/00 180
H02J3/46
H02J3/00 130
H02J3/38 120
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J7/35 K
G06Q50/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019032321
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020137379
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小澤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正春
(72)【発明者】
【氏名】高木 一成
(72)【発明者】
【氏名】福丸 峻佑
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-158435(JP,A)
【文献】特開2014-195346(JP,A)
【文献】特開2019-013143(JP,A)
【文献】特開2017-153274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-10/10
G06Q30/00-30/08
G06Q50/00-50/20
G06Q50/26-99/00
G16Z99/00
H02J3/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統における電力の需給バランスを保つために出される出力抑制指示に対する発電プラント側の対応を提案するよう構成された運転支援装置であって、
前記発電プラントから前記電力系統の内部に送電可能な電力の制限値を受信するよう構成された受信部と、
前記制限値に対応する負荷よりも高負荷で前記発電プラントを運転した場合に生じる余剰電力を、前記電力系統の外部の他の送電先に送電する1以上の第1対応プランを採用した場合の利益である代替利益を試算するよう構成された代替利益試算部と、
前記代替利益の試算結果に基づいて、出力情報を生成するよう構成された出力情報生成部と、を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記1以上の第1対応プランは、前記余剰電力を用いて、前記発電プラントが設置された施設内の自家消費電力を増大させることを含むことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記他の送電先は、蓄電池を含み、
前記1以上の第1対応プランは、前記蓄電池に前記余剰電力を送電することを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記1以上の第1対応プランは、前記発電プラントが設置された施設外にある他プラントに前記余剰電力を送電することを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記出力情報生成部は、
前記代替利益の試算結果に基づいて、前記1以上の第1対応プランのいずれかを採用するか否かを判定するよう構成されたプラン判定部を、有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記制限値に従って前記発電プラントの負荷を抑制する第2対応プランを採用した場合の抑制時利益を試算するよう構成された抑制時利益試算部を、さらに備え、
前記出力情報生成部は、前記代替利益の試算結果および前記抑制時利益の試算結果に基づいて出力情報生成されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記発電プラントは、複数種類の電源を有しており、
前記出力情報生成部は、前記第2対応プランを採用した場合において、前記複数種類の電源の各々の発電コストに基づいて、負荷を抑制する対象となる前記電源を判定するよう構成された対象電源判定部を有することを特徴とする請求項6に記載の運転支援装置。
【請求項8】
電力需要および再生エネルギーの発電量の各々の予測結果に基づいて、前記出力抑制指示が出されるタイミングを予測する指示予測部を、さらに備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項9】
電力系統における電力の需給バランスを保つために出される出力抑制指示に対する発電プラント側の対応を提案するよう構成された運転支援方法であって、
前記発電プラントから前記電力系統の内部に送電可能な電力の制限値を受信する受信ステップと、
前記制限値に対応する負荷よりも高負荷で前記発電プラントを運転した場合に生じる余剰電力を、前記電力系統の外部の他の送電先に送電する1以上の第1対応プランを採用した場合の利益である代替利益を試算する代替利益試算ステップと、
前記代替利益の試算結果に基づいて、出力情報を生成する出力情報生成ステップと、を備えることを特徴とする運転支援方法。
【請求項10】
電力系統における電力の需給バランスを保つために出される出力抑制指示に対する発電プラント側の対応を提案するよう構成された運転支援プログラムであって、
コンピュータに、
前記発電プラントから前記電力系統の内部に送電可能な電力の制限値を受信するよう構成された受信部と、
前記制限値に対応する負荷よりも高負荷で前記発電プラントを運転した場合に生じる余剰電力を、前記電力系統の外部の他の送電先に送電する1以上の第1対応プランを採用した場合の利益である代替利益を試算するよう構成された代替利益試算部と、
前記代替利益の試算結果に基づいて、出力情報を生成するよう構成された出力情報生成部と、実現させるための運転支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電プラントの運転支援に関し、特に、電力の需給バランスを保つための発電プラントの負荷抑制への対応時の運転支援に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統においては、電力利用量(電力需要)と発電量との需給バランスがくずれると、電力の周波数に乱れが生じる。電力の周波数が乱れると、発電設備への悪影響や、大規模停電に繋がるといった可能性があるため、電力系統においては需給バランスを保つことが重要である。近年では、再生可能エネルギーの拡大に伴い、例えば晴天時に太陽光による発電が計画値よりも大きくなることにより、電力系統全体での発電量が電力需要よりも大きくなるなど、発電量が過剰になることにより上記の需給バランスが大きく崩れる事象が散見されるようになっている。
【0003】
このように電力系統における発電量が電力需要よりも大きくなる場合には、需給バランスを調整するために優先給電ルールで予め定められた順番に従って、発電量の減少や電力利用量の増大などを行う。具体的には、優先給電ルールに従って、まずは、LNGや石炭、石油などの火力発電の発電量を減らし、揚水発電に使う水をくみあげる作業を行うことで電力需要を増やす。その後は、地域間連系線を使った他のエリアに電力を融通、バイオマス発電の出力制御となり、それでも対応できない場合には、太陽光発電、風力発電の出力を制御するというように、需給バランスの調整がなされる。また、一般電力会社などの電力会社は、発電量が電力需要よりも大きくなると、発電プラントを所有する発電事業者などに出力抑制指示を送ることにより発電量を減らすが、この出力抑制指示は、所定の期限(例えば前日の17時迄など)に送るように取り決められている。
【0004】
なお、上記は発電量が過剰になった場合についての調整であるが、電力需要のピークが発生する時期に電力需要を抑制することで需給バランスをとるデマンドレスポンスが知られており、様々な内容が提案されている(例えば特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6005034号公報
【文献】特許第6277129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、電力系統における発電量が過剰になることにより需給バランスが崩れる場合には、優先給電ルールに従って、電力会社側から火力等の発電プラント側に出力抑制指示が出される。電力会社側と発電プラント側との間では発電プラント側が応じられる発電の抑制量が事前に取り決めらており、電力系統において発電プラントは、上記の出力抑制指示による制限値までの送電(出力)が可能となる。しかしながら、出力抑制指示に応じて負荷を下げると、発電プラント側にとっては、設備の稼働率や発電効率の低下につながるため、発電プラントへの投資の回収の見通しに影響が出る。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、電力の需給バランスを保つために出される出力抑制指示に対する発電プラント側の対応を提案する運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る運転支援装置は、
電力系統における電力の需給バランスを保つために出される出力抑制指示に対する発電プラント側の対応を提案するよう構成された運転支援装置であって、
前記発電プラントから前記電力系統の内部に送電可能な電力の制限値を受信するよう構成された受信部と、
前記制限値に対応する負荷よりも高負荷で前記発電プラントを運転した場合に生じる余剰電力を、前記電力系統の外部の他の送電先に送電する1以上の第1対応プランを採用した場合の利益である代替利益を試算するよう構成された代替利益試算部と、
前記代替利益の試算結果に基づいて、出力情報を生成するよう構成された出力情報生成部と、を備える。
【0009】
発電量が過剰になることにより電力系統内の電力の需給バランスが崩れるような場合には、電力会社などの指示側から発電プラント側に対して、電力系統への出力(電力)の抑制指示が出される。しかし、この出力抑制指示に従って、計画値などから発電プラントの負荷を下げると、発電プラントの稼働率や発電効率が下がるため、初期の計画通りに利益が得られず、負荷低下分に応じた逸失利益が生じる。
【0010】
このため、本発明者らは、出力抑制指示に従って発電プラントの負荷を実際に下げる対応の他、発電プラントの負荷をできるだけ計画通りに維持した際に生じる電力系統に送電できない余剰電力を、電力系統以外の他の送電先に送電することにより利益(代替利益)を得るといった他の対応が可能であると考えた。この対応によれば、出力抑制を行った場合よりも、高い利益が得られる可能性がある。また、他の送電先の候補が複数ある場合に、その代替利益を最大化できる他の送電先に送電するようにすれば、出力抑制指示が出されなければ得られるはずだった逸失利益に対する損失額の最小化(利益の最大化)が可能になると考えた。
【0011】
上記(1)の構成によれば、出力抑制指示によって発電プラントから電力系統内に送電可能な電力が計画値よりも小さくなるような場合において、発電プラントの負荷を計画値で維持するなど、制限値よりも高負荷で発電プラントを運転した場合に生じる余剰電力を他の送電先に送電することにより期待される利益を試算する。これによって、余剰電力を送電することで所望の利益が期待できるような他の送電先を適切に選択することができる。また、試算結果に基づいて選択した他の送電先に余剰電力を送電することにより得られる利益によって、出力抑制指示への対応によって生じる逸失利益の補填を図ることができ、出力抑制指示への対応によって減少が見込まれる発電プラントを用いた事業の損失の最小化を図ることができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記1以上の第1対応プランは、前記余剰電力を用いて、前記発電プラントが設置された施設内の自家消費電力を増大させることを含む。
上記(2)の構成によれば、発電プラントが電力系統および生産プラントなどの自家設備への送電のために発電を行っている場合などにおいて、余剰電力を用いて生産プラントにおける生産力を高めるなどすることで、利益を増大させることができた場合の代替利益を算出する。これによって、余剰電力を用いて自家消費電力を増大させた場合に期待できる代替利益を試算することができる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)~(2)の構成において、
前記他の送電先は、蓄電池を含み、
前記1以上の第1対応プランは、前記蓄電池に前記余剰電力を送電することを含む。
上記(3)の構成によれば、余剰電力を蓄電池に送電することで、EV車用の動力といった他エネルギーへの転換や売電等による代替利益を算出する。これによって、余剰電力を蓄電池に貯蔵することにより期待できる代替利益を試算することができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の構成において、
前記1以上の第1対応プランは、前記発電プラントが設置された施設外にある他プラントに前記余剰電力を送電することを含む。
上記(4)の構成によれば、余剰電力を他プラントに送電することで、売電による代替利益を算出する。これによって、余剰電力を他プラントに送電することにより期待できる代替利益を試算することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の構成において、
前記出力情報生成部は、
前記代替利益の試算結果に基づいて、前記1以上の第1対応プランのいずれかを採用するか否かを判定するよう構成されたプラン判定部を、有する。
上記(5)の構成によれば、代替利益の試算結果に基づいて、1または複数の第1対応プランのいずれかを採用するか否かを自動で判定する。例えば余剰電力を送電する複数の送電先の選択肢の中から最も高い代替利益が得られる送電先を自動で判定するなど、余剰電力の適切な送電先を判定択することができる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(5)の構成において、
前記制限値に従って前記発電プラントの負荷を抑制する第2対応プランを採用した場合の抑制時利益を試算するよう構成された抑制時利益試算部を、さらに備え、
前記出力情報生成部は、前記代替利益の試算結果および前記抑制時利益の試算結果に基づいて出力情報生成される。
【0017】
上記(6)の構成によれば、出力抑制指示に従って発電プラントの負荷を抑制した場合に補償金等が得られる場合に、この負荷抑制を実行した場合の利益(抑制時利益)を試算する。これによって、上述した代替利益および抑制時利益の両方の試算結果に基づいて、出力抑制指示に従って発電プラントの負荷を低減させるか、他の送電先に余剰電力を送電するかのいずれが有利であるかといった判断の容易化を図ることができる。
【0018】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記発電プラントは、複数種類の電源を有しており、
前記出力情報生成部は、前記第2対応プランを採用した場合において、前記複数種類の電源の各々の発電コストに基づいて、負荷を抑制する対象となる前記電源を判定するよう構成された対象電源判定部を有する。
【0019】
上記(7)の構成によれば、発電プラントが例えば石炭焚きボイラやガスエンジンなど複数の電源を備えている場合に、複数の電源の各々の発電コストに基づいて、発電プラントの全体としての出力を制限値以下にするのに適切な電源を選択する。これによって、出力抑制指示に従って負荷を低減させた場合の損失額の最小化を図ることができる。
【0020】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)~(7)の構成において、
電力需要および再生エネルギーの発電量の各々の予測結果に基づいて、前記出力抑制指示が出されるタイミングを予測する指示予測部を、さらに備える。
【0021】
上記(8)の構成によれば、出力抑制指示の受信を需要予測および再生エネルギーの発電量予測に基づいて予測する。出力抑制指示は前日の17時までなど、出力抑制期間の開始の直前までに出される場合がある。このような場合には、発電プラント側は火急の判断が迫られることになるが、上記の予測によって、実際に出力抑制指示を受信してから決断を下すまで時間を稼ぐことができ、判断をより慎重に行えるように図ることができる。また、制限値よりも出力を抑制するとその分だけ補償金等が得られる場合には、その調整を行うのに必要な時間を確保できるようになれば、その分増額された補償金等を得られるなど、出力抑制指示に従って負荷を低減させた場合の損失額の最小化を図ることができる。
【0022】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る運転支援方法は、
電力系統における電力の需給バランスを保つために出される出力抑制指示に対する発電プラント側の対応を提案するよう構成された運転支援方法であって、
前記発電プラントから前記電力系統の内部に送電可能な電力の制限値を受信する受信ステップと、
前記制限値に対応する負荷よりも高負荷で前記発電プラントを運転した場合に生じる余剰電力を、前記電力系統の外部の他の送電先に送電する1以上の第1対応プランを採用した場合の利益である代替利益を試算する代替利益試算ステップと、
前記代替利益の試算結果に基づいて、出力情報を生成する出力情報生成ステップと、を備える。
上記(9)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【0023】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る運転支援プログラムは、
電力系統における電力の需給バランスを保つために出される出力抑制指示に対する発電プラント側の対応を提案するよう構成された運転支援プログラムであって、
コンピュータに、
前記発電プラントから前記電力系統の内部に送電可能な電力の制限値を受信するよう構成された受信部と、
前記制限値に対応する負荷よりも高負荷で前記発電プラントを運転した場合に生じる余剰電力を、前記電力系統の外部の他の送電先に送電する1以上の第1対応プランを採用した場合の利益である代替利益を試算するよう構成された代替利益試算部と、
前記代替利益の試算結果に基づいて、出力情報を生成するよう構成された出力情報生成部と、実現させるための運転支援プログラムである。
上記(10)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、電力の需給バランスを保つために出される出力抑制指示に対する発電プラント側の対応を提案する運転支援装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る電力系統の構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る運転支援装置の機能を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る出力抑制指示から発電プラントの制御まで時系列を示すフロー図である。
図4】本発明の一実施形態に係る運転支援装置の入出力を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る制限値を予測する場合のフローを示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る運転支援方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力系統7の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、電力系統7において、発電プラント71で発電された電力は、送電設備(送電ネットワーク72)に出力され、送電設備を介して変電所73に送電された後、変電所73で電圧調整された電力が配電ネットワーク74を通って、家庭や工場などの電力系統7内を流れる電力を使用する需要家75に供給される。上記の発電プラント71は、例えば火力発電所や、風力発電所、太陽光発電所、水力発電所、原子力発電所などとなる。一般には、火力発電所は、石炭、ガス、石油などの化石燃料やバイオマス燃料などの燃料を燃焼(専焼または混焼)させて発電を行うが、他の電源に比べて、使用する燃料量などの調整により出力(発電量)が調整し易い。他方、風力発電所および太陽光発電所は、太陽エネルギーや風力を用いて発電するため、発電量はその時々の天候によって左右される。また、水力発電所および原子力発電所はベースロード電源として利用される。なお、発電プラント71や、変電所73、需要家75はそれぞれ1以上(複数)存在していても良く、通常は複数存在するが、図1では簡略化のため省略している。
【0028】
このような電力系統7においては、電気(電力)の需給バランスを保つことが重要である。つまり、全ての発電プラント71から送電ネットワーク72に出力される発電量と、全ての需要家75に供給されて消費される電力量とのバランスを保つことが重要である。しかし、太陽光や風力などによる再生可能エネルギーの拡大に伴い、電力系統7全体での発電量が過剰になることによりこの需給バランスが大きく崩れる場合がある。例えば晴天時に太陽光により発電された発電量(電力)が計画値Epよりも過大となった場合には、他の発電所の発電量が計画値Epのままでは、電力系統7全体での発電量が電力需要よりも過大となる。
【0029】
このような場合には、例えば予め定められたルール(優先給電ルール)などに従って、各種の発電プラント71による発電量の抑制を行うなど、需給バランスを保つための措置が必要になる。具体的には、図1に示すように、電力会社9などの出力抑制の指示側から対象となる発電プラント71に出力抑制指示Rが出されると共に、発電プラント71は、出力抑制指示Rに従って、負荷を下げるなど、電力系統7(送電ネットワーク72)に出力(送電)する電力を調整する。
【0030】
しかしながら、出力抑制指示Rに従って、計画値Epなどから発電プラント71の負荷を下げると、発電プラント71の稼働率や発電効率が下がるため、初期の計画通りに利益が得られず、負荷低下分に応じた逸失利益が生じる。このため、本発明者らは、出力抑制指示Rに従って発電プラント71の負荷を実際に下げる対応の他、発電プラント71の負荷をできるだけ計画通りに維持した際に生じる電力系統7に送電できない余剰電力(Ep-L)を、電力系統以外の他の送電先8に送電することにより利益(代替利益)を得るといった他の対応が可能であると考えた。この対応によれば、出力抑制を行った場合よりも、高い利益が得られる可能性がある。また、他の送電先8の候補が複数ある場合に、それらのどの送電先に送電すれば、その代替利益を最大化できる他の送電先に送電するようにすれば、出力抑制指示が出されなければ得られるはずだった逸失利益に対する損失額の最小化(利益の最大化)が可能になると考えた。
【0031】
以下、上記を実現するための運転支援装置1を、図2図5を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る運転支援装置1の機能を示すブロック図である。
運転支援装置1は、電力系統7における電力の需給バランスを保つために出される出力抑制指示Rに対する発電プラント71側の対応を提案するよう構成された装置である。図2に示すように、運転支援装置1は、受信部2と、代替利益試算部3と、出力情報生成部5と、を備える。これらの機能部について、それぞれ説明する。
【0032】
なお、以下の説明では、発電プラント71は、予め定めた発電計画に従って火力発電を行うプラントであるものとして説明する。一般に、このような発電プラント71は、発電計画に従って燃料の調達や燃料使用を行い、例えば100%などの効率の高い運転が行われる。
また、運転支援装置1は、例えばコンピュータで構成されており、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリ、外部記憶装置などの記憶装置mを備えている。そして、主記憶装置にロードされたプログラム(運転支援プログラム)の命令に従ってCPUが動作(データの演算など)することで、運転支援装置1が備える後述するような各機能部を実現する。
【0033】
受信部2は、発電プラント71から電力系統7の内部に送電可能な電力の制限値Lを受信するよう構成された機能部である。この制限値Lは、発電プラント71が、送電ネットワーク72に送電可能な出力(電力)の上限値を判断するための情報である。制限値Lは、例えばαMW(メガワットなど)やαMWh(メガワット時など)というような、発電プラント71から送電ネットワーク72へ出力可能な電力や電力量の上限値であっても良い。あるいは、例えばα%抑制など、出力あるいは負荷の計画値Epに対する低減割合であっても良いし、出力α%、負荷α%などの、100%を基準とする出力割合や負荷割合であっても良い。なお、以下では、制限値Lの単位が発電プラント71の負荷と同じ単位であるものとする。
【0034】
また、上記の制限値Lは、例えば上述した出力抑制指示Rに含まれていても良い。この場合、受信部2は、出力抑制指示Rを受信することによって、制限値Lを受信する。ただし、制限値Lが出力抑制指示Rに含まれていなくても良い。例えば、受信部2は、出力抑制指示Rの受信を契機に、記憶装置mなどに予め記憶されている制限値L(固定値など)を読み込むことにより、制限値Lを受信(取得)しても良い。また、受信部2は、通信ネットワークを介して制限値Lを受信しても良いし、オペレータから入力された制限値Lを受信しても良い。なお、この出力抑制指示Rには、上記の制限値Lが適用される未来における期間(以下、出力抑制期間)が含まれていても良く、発電プラント71は、この出力抑制期間において制限値Lに応じて、送電ネットワーク72に出力する電力を制限値Lまたは制限値L以下の値に調整する必要がある。
【0035】
代替利益試算部3は、上記の制限値Lに対応する負荷よりも高負荷で発電プラント71を運転した場合に生じる余剰電力Eを、電力系統7の外部の他の送電先8に送電する1以上のプラン(以下、第1対応プランPa)を採用した場合の利益である代替利益を試算(算出)するよう構成された機能部である。上記の各第1対応プランPaは、上述した出力抑制期間における発電プラント71の出力を、計画値Epから制限値L以下に下げない場合に生じる、電力系統7に送信できない余剰電力Eを送電する他の送電先8の候補を定めたものである。
【0036】
この他の送電先8は、例えば電力系統7に属さない電力線などの送電設備85で接続される設備である。例えば、後述するような電力系統7を介さずに電力を送電することが可能な設備である自家設備81や、蓄電池82、他プラント83などであっても良い。また、代替利益は、例えば余剰電力Eを他の送電先8に送電することにより得られる収入(売電収入)から、その余剰電力Eを生み出すのに要したコスト(費用)を引いた額であっても良い。
【0037】
例えば、上記の制限値Lが、上述した出力抑制期間において発電プラント71から送電ネットワーク72への出力の計画値Epよりも小さい場合には、計画通りなど制限値Lよりも大きい値まで発電してしまうと、発電プラント71から送電ネットワーク72には制限値Lまでしか電力を出力できないため、余剰電力Eが生じることになる。代替利益試算部3は、このような、発電プラント71の負荷を制限値Lに従って抑制(低減。以下同様)しないことにより生じる余剰電力Eの少なくとも一部を上記の第1対応プランPaに従って他の送電先8に送電した場合に、これによって得られる見込みとなる代替利益の額を算出する。なお、各第1対応プランPaについての詳細は後述する。
【0038】
出力情報生成部5は、上述した代替利益試算部3によって試算された代替利益の試算結果Caに基づいて、出力情報Iを生成するよう構成された機能部である。この出力情報Iには、上述した余剰電力Eを送電すべき他の送電先8をどこにするかを決定するのに役立つ情報が含まれている。例えば、出力情報Iには、第1対応プランPa毎の利益額が含まれていても良い。あるいは、出力情報Iには、第1対応プランPa毎の、出力抑制指示Rが無い場合に出力抑制期間で得られるはずの利益額に対する損失額が含まれていても良い。出力情報Iには、第1対応プランPaが複数存在する場合において、その複数のうちのどの対応プランPを採用すべきかの情報(例えば、他の送電先8を示す情報)が含まれていても良い。出力情報Iには、これらのうちのの1以上の情報が含まれていても良い。
【0039】
このような出力情報Iを得ることによって、上述した余剰電力Eを送電すべき他の送電先8をどこにするかを、例えばユーザなどが余剰電力Eの送電先を適切に判断することが可能となる。さらに、不図示の送電先の切替装置を制御することによって、発電プラント71で発電した余剰電力Eを、送電ネットワーク72に加えて、他の送電先8にも送電することで、代替利益を得ることが可能となる。また、代替利益の試算結果Caを、送電先の切替装置(不図示)などに送信して切り替えるようにすれば、適切な送電先にも余剰電力Eが送電されるように自動で切り替えることが可能となる。なお、複数の第1対応プランPaの2以上の対応プランPを採用し、複数の他の送電先8に余剰電力Eを分配しても良い。
【0040】
図2に示す実施形態では、受信部2は、通信により、上記の制限値Lを有する出力抑制指示Rを受信するようになっている。また、受信部2は、代替利益試算部3に接続されており、受信した代替利益試算部3に出力する。代替利益試算部3は、出力情報生成部5に接続されており、受信部2から制限値Lが入力されると、この制限値Lに基づいて第1対応プランPa毎の代替利益を算出すると共に、この結果を出力情報生成部5に出力する。出力情報生成部5は、例えばディスプレイなどの表示装置12に接続されており、出力情報Iを表示装置12に出力する。これによって、出力情報Iがディスプレイに表示される。なお、表示装置12には、プリンタなど、画面上に情報を表示する装置以外の装置であっても良い。
【0041】
上記の構成によれば、出力抑制指示Rによって発電プラント71から電力系統7内に送電可能な電力が計画値Epよりも小さくなるような場合において、発電プラント71の負荷を計画値Epで維持するなど、制限値Lよりも高負荷で発電プラント71を運転した場合に生じる余剰電力Eを他の送電先8に送電することにより期待される利益を試算する。これによって、余剰電力Eを送電することで利益が期待できる他の送電先8を適切に選択することができる。また、代替利益の試算結果Caに基づいて選択した他の送電先8に余剰電力Eを送電することにより得られる利益によって、出力抑制指示Rへの対応によって生じる逸失利益の補填を図ることができ、出力抑制指示Rへの対応によって減少が見込まれる発電プラント71を用いた事業の損失の最小化を図ることができる。
【0042】
次に、上述した第1対応プランPaに関する幾つかの実施形態について、図2図4を用いて説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る運転支援装置1の入出力を示す図である。
【0043】
幾つかの実施形態では、上述した1以上の第1対応プランPaは、余剰電力Eを用いて、発電プラント71が設置された施設内の消費電力(自家消費電力)を増大させる対応プランPを含んでも良い。つまり、この第1対応プランPaを採用した場合には、余剰電力Eの送電先8は、上記の施設(自家設備81)となる。
【0044】
例えば、発電プラント71が、もともと、電力系統7、および、電力系統7を介することなく接続された生産プラント(自家設備81)に電力を供給するようになっているような場合には、余剰電力Eをこのような生産プラントに送電する。この場合、余剰電力Eによって、生産プラントの生産稼働率を上げることができれば、自家消費電力の増大分を余剰電力Eにより賄うことができると共に、生産プラントでより多く生産される製品の販売により、利益を得ることが可能となる。よって、増大可能な自家消費電力を求めると共に、自家設備81へ増大分への対応を指示しておき、出力抑制期間において、余剰電力Eを自家設備81へ送電する。
【0045】
この自家設備81を他の送電先8とする第1対応プランPaを採用した場合の代替利益は、例えば、増産によって得られる増産分の利益(増産利益)から、余剰電力Eの発電コスト(図4のa)を引くことで算出しても良い。この増産利益は、増産後の利益から増産前の利益を差し引いたものであるが、単位生産量あたりの工場内のエネルギー消費量(図4のc)と、生産量の増産分との乗算により求めても良い。生産量の増産分については、工場の生産余力、生産コスト、販売見込み量(図4のd)を考慮して算出しても良い。
【0046】
また、発電コスト(図4のa)は、例えば1MW(メガワット)、1kW(キロワット)などの単位電力量を発電するのに要する費用に、自家消費電力の増大分として用いられる電力量を乗算することで、算出しても良い。この発電コストは、燃料価格を考慮して算出しても良い(図4のj)。
【0047】
上記の構成によれば、発電プラント71が電力系統7および生産プラントなどの自家設備81への送電のために発電を行っている場合などにおいて、余剰電力Eを用いて生産プラントにおける生産力を高めるなどすることで、利益を増大させることができた場合の代替利益を算出する。これによって、余剰電力Eを用いて自家消費電力を増大させた場合に期待できる代替利益を試算することができる。
【0048】
また、幾つかの実施形態では、上述した1以上の第1対応プランPaは、蓄電池82に余剰電力Eを送電する対応プランPを含んでも良い。つまり、この第1対応プランPaを採用した場合には、余剰電力Eの送電先8は、蓄電池82となる。具体的には、例えば、NAS電池などの電力貯蔵システムの蓄電池82であっても良いし、EV(Electric Vehicle)車の蓄電池82であっても良い。
【0049】
この蓄電池82を他の送電先8とする第1対応プランPaを採用した場合の代替利益は、例えば、蓄電池82に蓄えた電力を販売した場合の収入から、蓄電コスト(図4のb)および余剰電力Eの発電コストを引くことで、算出しても良い。この蓄電池82に蓄電した電力の収入は、燃料価格(図4のj)や、販売を予定する例えば翌日における、対象の電力系統7や、それ以外の電力系統7(他地区)における電力需要の予測(図4のk)、翌日、3日後、7日後の予想売電価格(単位電力量あたりの価格)(図4のl)を考慮しても良い。また、上記の蓄電コストの算出にあたっては、蓄電池の導入費用(必要な容量を有する蓄電池82の購入費や、蓄電池を設置する敷地、設置費用)や、運用費用などを考慮しても良い。なお、蓄電コストは、蓄電池の貯蓄効率(図4のe)や、最大容量や空き容量などの蓄電池の状態(図4のf)を考慮して算出しても良い。
【0050】
また、この第1対応プランPaの採用が可能か否かを判断の上で、可能な場合に代替利益を算出しても良い。この判断は、空き容量といった蓄電装置の状態を考慮しても良い。例えば、余剰電力Eに比べて蓄電池82側の空き容量が少ない場合などには、この第1対応プランPaの代替利益は算出しないようにしても良い。これによって、実際には採用できないような状況で、採用を判定することを防止することが可能となる。
【0051】
上記の構成によれば、余剰電力Eを蓄電池82に送電することで、EV車用の動力といった他エネルギーへの転換や売電等による代替利益を算出する。これによって、余剰電力Eを蓄電池に82に貯蔵することにより期待できる代替利益を試算することができる。
【0052】
また、幾つかの実施形態では、上述した1以上の第1対応プランPaは、発電プラント71が設置された施設外にある他プラント83に余剰電力Eを送電する対応プランPを含んでも良い。つまり、この第1対応プランPaを採用した場合には、余剰電力Eの送電先8は、上記の他プラント83(近隣工場)となる。
【0053】
この他プラント83を他の送電先とする第1対応プランPaを採用した場合の代替利益は、例えば、他プラント83に余剰電力Eを売電することにより得られる収入(売電収入)から、余剰電力Eの発電コストを引くことで算出しても良い。この売電収入は、他プラント83への売電価格(単位電力量あたりの価格)(図4のm)と、売電する電力量(余剰電力Eの少なくとも一部)との乗算により算出しても良い。また、売電する電力量については、複数の電力量を用意し、売電量と売電収入との関係が分かるようにしても良い。
【0054】
上記の構成によれば、余剰電力Eを他プラント83に送電することで、売電による代替利益を算出する。これによって、余剰電力を他プラント83に送電することにより期待できる代替利益を試算することができる。
【0055】
次に、上述した出力情報生成部5に関する幾つかの実施形態について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る出力抑制指示Rから発電プラント71の制御まで時系列を示すフロー図である。
【0056】
幾つかの実施形態では、出力抑制指示Rに応じて発電プラント71の負荷を抑制する場合に、補償金や保険金など(以下、補償金等)の収入が得られるような場合には、その収入を試算しても良い。
すなわち、幾つかの実施形態では、図2に示すように、上記の制限値Lに従って発電プラント71の負荷を抑制するプラン(以下、第2対応プランPb)を採用した場合の利益(以下、抑制時利益)を試算するよう構成された抑制時利益試算部4を、さらに備えても良い。この場合、上述した出力情報生成部5は、上述した代替利益の試算結果Caおよび抑制時利益の試算結果Cbに基づいて出力情報Iを生成する。
【0057】
より具体的には、抑制時利益は、補償金等の収入額であっても良い。あるいは、発電プラント71の負荷を制限値L以下に低減すると、その分だけ燃料代などの運転費が節約できる場合が考えられる。よって、抑制時利益は、補償金等の収入額に、節約が見込まれる運転費を加えたものであっても良い。この際、運転費は、燃料価格(図4のj)や、気温変動に伴う予想発電効率(図4のh)や、負荷変動に伴う予想発電効率(図4のi)を考慮して、算出しても良い。
【0058】
また、補償金等の収入額は、例えば、補償金等が出力抑制期間の長短に応じて変わる場合には、出力抑制期間と、単位期間(例えば1日など)あたりの補償金額等とを乗算するなどの演算により算出されても良い。また、発電プラント71の負荷を制限値Lに対応する負荷よりも小さくすることより、より高額な補償金等が得られるといった場合には、補償金等の収入額は、複数の出力値に対してそれぞれ算出されても良い。
【0059】
上記の構成によれば、出力抑制指示Rに従って発電プラント71の負荷を抑制した場合に補償金等が得られる場合に、この負荷抑制を実行した場合の利益(抑制時利益)を試算する。これによって、上述した代替利益および抑制時利益の両方の試算結果に基づいて、出力抑制指示Rに従って発電プラントの負荷を低減させるか、他の送電先8に余剰電力Eを送電するかのいずれが有利であるかといった判断の容易化を図ることができる。
【0060】
また、幾つかの実施形態では、出力情報生成部5は、上述した代替利益の試算結果Caに基づいて、1以上の第1対応プランPaのいずれかを採用するか否かを判定するよう構成されたプラン判定部51を、有しても良い。つまり、プラン判定部51は、第1対応プランPaを採用しないことを判定しても良い。換言すれば、この場合は、第2対応プランPbの採用を判定することになる。あるいは、プラン判定部51は、1以上の第1対応プランPaのうちから採用する対応プランPを選択しても良い。
【0061】
すなわち、幾つかの実施形態では、図2に示すように、上記のプラン判定部51は、代替利益の試算結果Caに基づいて、1以上の第1対応プランPaのいずれかを採用するか否かを判定するよう構成されても良い。より詳細には、プラン判定部51は、予め定められた判定基準に従って、対応プランPを判定しても良い。この判定基準は、1以上の第1対応プランPaのうちの利益の試算値が最も高い対応プランPを判定するものであっても良い。また、第1対応プランPaの利益が所望値よりも低い場合には、第2対応プランPbを選択した方が良いとの判断もあり得る。よって、最も高い第1対応プラントPaの利益に対して閾値を設けても良く、この場合には、判定基準は、利益の試算結果が最も高く、かつ、所定値以上のプランを判定するものであっても良い。
【0062】
他の幾つかの実施形態では、上記のプラン判定部51は、図2図3に示すように、代替利益の試算結果Ca、および負荷抑制時の収入の試算結果Cbに基づいて、1以上の第1対応プランPaまたは第2対応プランPbのうちから判定基準を満たす対応プランPを判定するよう構成されても良い。図2図3に示す実施形態では、上述した出力情報生成部5は、代替利益の試算結果Caおよび抑制時利益の試算結果Cbに基づいて、1以上の第1対応プランPaまたは第2対応プランPbのうちの判定基準を満たす対応プランPを判定するようになっている。
【0063】
より詳細には、図2図3に示す実施形態では、図3に示すように、電力会社9(指示側)から発電プラント71に出力抑制指示Rが出されると(S30)、発電プラント71側において、運転支援装置1は、複数の第1対応プランPaの各々により得られる利益額、および、第2対応プランPbにより得られる利益額をそれぞれ算出する(S31)。そして、これらの利益額を比較し、どの対応プランPを採用するかを決定する(S32)。そして、送電ネットワーク72に対して制限値Lに従って電力を送電しつつ(S34)、決定した対応プランPに従って、余剰電力Eの送電先の切替(S33a)あるいは負荷の低減(S33b)を自動で行うようになっている。また、出力情報Iとして、表示装置12に、採用した対応プランP、および、その決定に至る根拠となる各利益額を表示するようになっている。
【0064】
上記の構成によれば、代替利益の試算結果Caに基づいて、複数の送電先の選択肢の中から最も高い代替利益が得られる送電先を判定するなど、余剰電力Eの適切な送電先8を判定することができる。
【0065】
また、幾つかの実施形態では、発電プラント71は、石炭焚きボイラや、ガスエンジンなど複数の電源を有していても良い。そして、上述した出力情報生成部5は、上記の第2対応プランPbを採用した場合において、複数種類の電源の各々の発電コスト(既出)に基づいて、負荷を抑制する対象となる電源(対象電源)を判定するよう構成された対象電源判定部52を、さらに備える。
【0066】
例えば、発電プラント71が、複数種類の電源で発電を行うことにより、送電ネットワーク72に出力する電力を賄う場合には、複数の電源のうちの少なくとも1つの電源の出力を抑制あるいは停止することによって、上記の制限値L以内に出力を抑制することが可能である。よって、複数種類の電源のうちの発電コストの高い電源からの出力を優先的に抑制することにより、上記の制限値Lを満たしつつ、発電プラント71の利益の観点から効率的に発電を行うことが可能となる。対象電源判定部52は、判定した各対象電源の負荷値あるいは発電する電力値も算出しても良い。この場合には、対象電源とこの算出値とをセットとして出力情報Iに含めても良い。
【0067】
上記の構成によれば、発電プラント71が例えば石炭焚きボイラやガスエンジンなど複数の電源を備えている場合に、複数の電源の各々の発電コストに基づいて、発電プラント71の全体としての出力を制限値L以下にするのに適切な電源を選択する。これによって、発電コストの高い電源の負荷を優先的に抑制するなど、出力抑制指示Rに従って負荷を低減させた場合の損失額の最小化を図ることができる。
【0068】
また、上述した実施形態では、運転支援装置1は、出力抑制指示Rが出されたのを契機に処理を行っている。他の幾つかの実施形態では、運転支援装置1は、出力抑制指示Rが出されることが予測される場合に、上述した処理を実行しても良い。図5は、本発明の一実施形態に係る制限値Lを予測する場合のフローを示す図である。
【0069】
すなわち、幾つかの実施形態では、図2図5に示すように、運転支援装置1は、電力需要および再生エネルギーの発電量の各々の予測結果に基づいて、出力抑制指示Rが出されるタイミングを予測するよう構成された指示予測部6を、さらに備える。出力抑制指示Rは前日の17時までなど、出力抑制期間の開始の直前までに出される場合がある。このような場合には、発電プラント71側は火急の判断が迫れることになるが、上記の予測によって、前もって対応方針の検討を進めることができるように図ることが可能となる。この場合、各種の予測は、過去実績データベースに記憶された過去の実績(過去実績)を用いて予測しても良い。
【0070】
具体的には、電力系統7における単位期間(例えば1日など)あたりの再生エネルギーの発電量および電力需要を所定期間にわたって予測した予測結果を取得し、単位期間毎に、再生エネルギーの発電量の予測値から電力需要の予測値を引いた値(過剰発電量)が所定の閾値(0以上)よりも大きい場合に、出力抑制指示Rが指示側から出されると判定しても良い。この所定の閾値は、過去実績や、指示側から得られる例えば出力抑制指示Rを出すと判断する基準などの情報に基づいて決定しても良い。そして、この場合の各発電プラント71に対する制限値Lは、過剰発電量と、その際に発電プラント71に指示された制限値Lとの過去実績に基づいて定めても良い。この際、制限値Lが発電プラント71毎に異なる場合には、制限値Lは、過剰発電量と、予測対象の発電プラント71における制限値Lとの関係の過去実績に基づいて定めても良い。
【0071】
また、上記の再生エネルギーの発電量および電力需要の予測結果は、周知な手法のいずれを採用しても良い。例えば、図4に示すように、再生エネルギーの発電量の予測は、発電量が環境条件によって変わる風力発電量、水力発電量、太陽光発電量などの合計であっても良く(図5のS49)、天気予報に基づいて予測しても良い。
【0072】
具体的には、水力発電の場合には、ベースロード電源として、過去実績に基づいて、水力発電量の予測値を算出しても良い(図5のS48)。
風力発電の場合には、天気予報から風速を抽出し(図5のS46)、この風速および過去実績に基づいて発電量を予測しても良い。例えば、過去実績として蓄積した風速の実績値と、その際の風力発電量の実績値との関係を学習(機械学習)するなどして作成した、風速から風力発電量を算出する風力発電量予測モデルを用いて、天気予報から抽出した風速(風速の予測値)から、風力発電量の予測値を算出しても良い(図5のS47)。
【0073】
太陽光発電の場合には、太陽からの光エネルギーを電気エネルギーに変換するため、日射量が多いほど発電量は多くなる。ただし、日射量が多くなると、それに伴って気温や、上記のエネルギーの変換を行うパネルの温度が上昇するため、発電効率が低下する。よって、日射量およびパネルの温度を天気予報に基づいて予測し、発電量を算出しても良い。より具体的には、例えば、所定期間分の天気予報から、単位期間あたりの日照時間および気温を抽出する(図5のS41)。また、天気予報における天気(晴れ、曇り、雨など)の情報に基づくなどして、単位期間毎の日射強度を予測する。そして、単位期間毎の日射強度と日照時間とを乗算することで、単位期間あたりの日射量を予測する(図5のS42)と共に、この日照量の予測結果と、天気予報から抽出される単位期間あたりの気温(図5のS44)とに基づいて、パネルの温度の予測を通して、太陽光発電量を予測する(図5のS45)。このようにして、太陽光発電により発電量を算出しても良い。
【0074】
他方、電力の需要予測については、天気予報、および電力使用量の過去実績に基づいて行っても良い。具体的には、電力使用量の過去実績は、環境実績と、電力使用量とを相互に対応づけた情報である。環境実績は、電力需要に影響を与える気象情報を含む環境情報の過去の実績である。例えば、天気、気温、湿度などの他、風速、日射量、日照時間、時期、季節などの情報を含んでも良い。つまり、電力使用量の過去実績は、過去におけるある環境実績で示される条件における電力使用量の実績を示す。電力使用量の過去実績は、地域情報を含んでいても良く、地域における特殊性をも考慮することが可能となる。
【0075】
そして、電力使用量の過去実績における環境実績と電力使用量との関係を学習(機械学習)するなどして作成した、環境情報から電力使用量を算出する需要予測モデルを用いて、天気予報から抽出した情報から、電力需要の予測値を算出しても良い。例えば、図5に示すように、需要予測モデルは、環境実績の各情報の各々の日射量を算出し、算出した日射量の実績値および天気予報に含まれる少なくとも1つの情報と、電力使用量との関係を機械学習して、日射量等から電力需要の予測値を算出しても良い。図5に示す実施形態では、天気予報から天気を抽出し(図5のS41)て、日射量を予測した後(図5のS42)、天気予報および日射量から、需要予測モデルを用いて需要予測を算出するようになっている(図5のS43)。
【0076】
あるいは、電力需要は、電力系統7に接続された各需要家75の需要を積み上げたものであるが、需要家75毎に天気予報に応じた需要の傾向は異なる場合があることから、需要家75毎に需要を予測しても良い。具体的には、電力系統7に所属する各需要家75の所在地を、所在地の情報含む送電先情報を記憶する送電先情報データベースから取得すると共に、その所在地毎に天気予報を取得する。そして、各需要家75の所在地毎の天気予報の各々と、過去実績データベースに記憶されている環境実績との比較に基づいて、過去実績データベースからそれぞれ1以上の電力使用量を取得すると共に、電力系統7に属する需要家毎の電力使用量の合計を電力需要とする。この場合、所在地および天気予報の少なくとも1つの情報を検索キーに過去実績を検索するので、各需要家75について複数の実績が該当する場合があるが、この場合には平均等の統計処理を行っても良い。
【0077】
なお、上記の送電先情報は、幾つかの実施形態では、所在地の他、人員構成(年齢や性別など)、住宅のタイプ(戸建や集合など)、施設タイプ(商業施設や産業施設、規模等)などが含まれていても良い。例えば、戸建は気温や湿度が電力需要に比較的強く影響するといったことや、商業施設は夜間の電力需要が少ない、事業者(産業施設)は休日の電力需要が少ないなどの傾向が通常あることから、送電先情報の情報に上記の所在地以外の情報を含めることによって、電力需要をより精度良く予測することが可能となる。
【0078】
以下、上述した運転支援装置1が実行する処理に対応する運転支援方法について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る運転支援方法を示す図である。
【0079】
運転支援方法は、電力系統7における電力の需給バランスを保つために出される出力抑制指示Rに対する発電プラント71側の対応を提案する方法である。図6に示すように、運転支援方法は、受信ステップ(S1)と、代替利益試算ステップ(S2)と、出力情報生成ステップ(S42)と、を備える。なお、図6に示すように、運転支援方法は、抑制時利益試算ステップ(S3)、または、プラン判定ステップ(S41)の少なくとも一方を備えていても良い。図6に示す実施形態では、運転支援方法は、抑制時利益試算ステップ(S3)およびプラン判定ステップ(S41)の両方を、さらに備えている。
これらのステップについて、図6のステップ順に説明する。
【0080】
図6のステップS1において、受信ステップを実行する。受信ステップ(S1)は、上述した制限値Lを受信するステップである。この受信ステップ(S1)は、既に説明した受信部2が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。なお、既に述べたように、この制限値Lは、電力会社などの出力抑制の指示側が出力抑制指示Rを実際に出したことを契機に受信しても良い。あるいは、受信部2は、この出力抑制指示Rを受信すると予測した場合に受信しても良い。この場合には、この受信ステップ(S1)の前に、上述した指示予測部6の処理と同様の内容を行う指示予測ステップ(図5参照)を実行し、出力抑制指示Rを受信すると予測された場合に、受信ステップ(S1)を実行する。
【0081】
ステップS2において、代替利益試算ステップを実行する。代替利益試算ステップ(S2)は、上記の受信ステップ(S1)で制限値Lを受信したのを契機に、上述した1以上の第1対応プランPaを採用した場合の代替利益を試算するステップである。この代替利益試算ステップ(S2)は、既に説明した代替利益試算部3が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0082】
ステップS3において、抑制時利益試算ステップ(S3)を実行する。抑制時利益試算ステップ(S3)は、上記の受信ステップ(S1)で制限値Lを受信したのを契機に、上述した第2対応プランPbを採用した場合に受ける収入を試算するステップである。この抑制時利益試算ステップ(S3)は、既に説明した抑制時利益試算部4が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0083】
ステップS4において、出力情報生成ステップを実行する。出力情報生成ステップ(S42)は、代替利益試算ステップ(S2)によって試算された代替利益の試算結果Caに基づいて、出力情報Iを生成するステップである。この出力情報生成ステップ(S42)は、既に説明した出力情報生成部5が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。なお、図6に示すように、出力情報生成ステップ(S42)は、代替利益試算ステップ(S2)で試算した代替利益の試算結果Caに基づいて、1以上の第1対応プランPaのいずれかを採用するか否かを判定するステップ(プラン判定ステップ(S41))を、有していても良い。このプラン判定ステップ(S41)は、既に説明したプラン判定部51が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0084】
図6で示す実施形態では、ステップS41において、プラン判定ステップを実行し、1以上の代替利益の試算結果Ca、および負荷抑制時の収入の試算結果Cbに基づいて、1以上の第1対応プランPaまたは第2対応プランPbのうちから、最も利益が高い対応プランP(判定基準を満たす対応プランP)を判定する。そして、ステップS42において、ステップS41で判定した内容を含む出力情報Iを生成し、ステップS43で表示装置12に表示するようになっている。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0086】
1 運転支援装置
m 記憶装置
12 表示装置
2 受信部
3 代替利益試算部
4 抑制時利益試算部
5 出力情報生成部
51 プラン判定部
52 対象電源判定部
6 指示予測部
7 電力系統
71 発電プラント
72 送電ネットワーク
73 変電所
74 配電ネットワーク
75 需要家
8 送電先
81 自家設備
82 蓄電池
83 他プラント
85 送電設備
9 電力会社

R 出力抑制指示
L 制限値
I 出力情報
E 余剰電力
Ep 計画値
P 対応プラン
Pa 第1対応プラン
Pb 第2対応プラン
Ca 試算結果(代替利益)
Cb 試算結果(補償金等の収入)
図1
図2
図3
図4
図5
図6