(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20221109BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221109BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/26 A
B60R11/02 W
(21)【出願番号】P 2019035847
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲司
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 陽平
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博史
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-188224(JP,A)
【文献】特開2019-158774(JP,A)
【文献】特開2009-236752(JP,A)
【文献】実開平5-47062(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0196438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と,
運搬機械へ作業対象物の積込みを行う作業具を一端側に有し,他端側が前記車体に取り付けられた作業腕と,
前記作業具を含む前記作業腕の姿勢を検出する姿勢検出装置と,
前記作業腕に作用する負荷を検出する負荷検出装置と,
前記運搬機械に対し作業指示を報知するための報知装置と,
前記姿勢と前記負荷に基づいて,前記作業腕によって前記運搬機械への前記作業対象物の運搬を行う運搬工程が行われたことを判定し,前記運搬工程中に前記作業対象物の荷重を計測し,前記姿勢または前記負荷に基づいて,前記作業腕によって前記運搬機械への前記作業対象物の積込を行う積込工程が行われたことを判定する制御装置と
を備えた作業機械において,
前記制御装置は,
前記報知装置を介した前記作業指示を検出し,
前記作業指示の検出時における前記作業機械の動作状態に基づいて,前記運搬機械に対する積込作業の開始と積込作業の終了とを判定し,
前記積込作業の開始から前記積込作業の終了までの間に計測された前記作業対象物の荷重を積算して前記運搬機械の積載量を演算し,
前記積込作業の終了時に前記積載量を外部端末に出力することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1の作業機械において,
前記制御装置は,前記積込作業として,前記作業腕によって前記運搬機械への前記作業対象物の運搬を行う運搬工程と,前記作業腕によって前記運搬機械への前記作業対象物の積込を行う積込工程とを,前記姿勢と前記負荷に基づいてそれぞれ判定し,前記作業指示の検出時における前記作業腕の動作状態に基づいて,前記積込作業の開始に対応した最初の積込工程と前記積込作業の終了に対応した最後の積込工程とを判定することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2の作業機械において,
前記車体は,左右に旋回可能な旋回体を有し,
前記制御装置は,前記作業指示が検出された運搬工程において前記旋回体が停止した場合には前記最初の積込工程が行われたと判定し,前記作業指示が検出された積込サイクルの運搬工程において前記旋回体が旋回している場合には前記最後の積込工程が行われたと判定することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項2の作業機械において,
前記作業具は前記作業対象物を掘削するためのバケットであり,
前記制御装置は,
前記作業指示の検出時における水平面を基準とした前記バケットの開口部の角度が所定の角度閾値以上のときに前記最初の積込工程が行われたと判定し,
前記最初の積込工程が行われたと判定された後に,前記作業指示の検出時における水平面を基準とした前記バケットの開口部の角度が前記角度閾値未満のときに前記最後の積込工程が行われたと判定することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項2の作業機械において,
前記作業具は前記作業対象物を掘削するためのバケットであり,
前記制御装置は,前記作業指示が検出された積込工程におけるバケット爪先の高さの最下点が所定の高さ閾値より小さい場合には前記最初の積込工程が行われたと判定し,前記作業指示が検出された積込サイクルの積込工程におけるバケット爪先の高さの最下点が前記高さ閾値より大きい場合には前記最後の積込工程が行われたと判定することを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項2の作業機械において,
前記制御装置は,
前記作業指示を第1積込サイクルの運搬工程で検出し,前記第1積込サイクルの1サイクル前の第2積込サイクルまでの積載量が積載閾値より小さい場合,または,前記作業指示を前記第1積込サイクルの運搬工程で検出し,前記第1積込サイクルの運搬工程の開始から前記作業指示の検出時までの経過時間が第1時間閾値より大きい場合,前記第1積込サイクルの運搬工程が前記最初の積込工程であると判定し,
前記作業指示を前記第1積込サイクルの運搬工程で検出し,前記第1積込サイクルの1サイクル前の第2積込サイクルまでの積載量が前記積載閾値以上の場合,かつ,前記作業指示を前記第1積込サイクルの運搬工程で検出し,前記第1積込サイクルの運搬工程の開始から前記作業指示の検出時までの経過時間が前記第1時間閾値以下の場合,前記第1積込サイクルの運搬工程で演算された運搬荷重を前記第1積込サイクルの積込工程において前記第2積込サイクルまでの積載量に積算して前記運搬機械の積載量を演算し,
前記作業指示を第3積込サイクルの積込工程で検出し,前記第3積込サイクルの運搬工程で演算された運搬荷重が荷重閾値より大きい場合,または,前記作業指示を前記第3積込サイクルの積込工程で検出し,前記第3積込サイクルの1サイクル前の第4積込サイクルの積込工程の開始から前記第3積込サイクルの積込工程の開始までの経過時間が第2時間閾値より小さい場合,前記第3積込サイクルの積込工程が前記最後の積込工程であると判定し,
前記作業指示を前記第3積込サイクルの積込工程で検出し,前記第3積込サイクルの運搬工程で演算された運搬荷重が前記荷重閾値以下の場合,または,前記作業指示を前記第3積込サイクルの積込工程で検出し,前記第3積込サイクルの1サイクル前の第4積込サイクルの積込工程の開始から前記第3積込サイクルの積込工程の開始までの経過時間が前記第2時間閾値以上の場合,前記第3積込サイクルの運搬工程で演算された運搬荷重を前記第4積込サイクルまでの積載量に積算して前記運搬機械の積載量を演算することを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1の作業機械において,
前記報知装置は,前記運搬機械への発進指示及び停止指示をスイッチ操作により行うホーンであることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,運搬機械に対する積込作業における運搬工程中に作業対象物の荷重を計測可能な作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルに代表される作業機械には,或る運搬機械(例えばダンプトラック)の荷台に作業対象物を繰り返し積み込んで,その運搬機械の荷台を作業対象物で一杯にする積込作業が行われることがある。先端にバケットが取り付けられた作業腕(作業装置)を有する油圧ショベルによる積込作業を例に挙げると,積込作業は複数の積込サイクルからなり,各積込サイクルは次の3つの工程,すなわち,作業対象物を掘削しバケット内部に充填する掘削工程と,掘削工程後に上部旋回体を旋回し運搬機械の荷台上にバケットを移動する運搬工程と,作業対象物を運搬機械の荷台に放出した後に掘削工程を開始する位置へバケットを移動する積込工程とからなる。なお,積込作業は作業対象物が積み込まれる運搬機械ごとに区別可能である。
【0003】
このような積込作業に関して,作業機械には,各積込サイクルにおける運搬工程中に作業対象物の荷重(運搬荷重とも称する)を計測し,或る運搬機械に対する積込作業中に計測した全ての運搬荷重を積算することで当該或る運搬機械への積載量(積載荷重とも称する)を演算する制御装置(コントローラ)を備えるものがある。運搬機械への積載量を計測し記録することで,作業現場の管理者はその運搬機械が作業現場から搬出した作業対象物の量を把握することができ,作業現場の生産量を監視することが可能となる。
【0004】
作業現場の生産量を適切に監視するためには,作業機械が演算した運搬機械への積載量と,その作業対象物が積載された運搬機械の情報とを対応付けて管理する必要がある。
【0005】
作業機械の作業量モニタリングシステムとして特許文献1には,作業機械が積算した荷重(積載量)を双方向通信可能な無線通信システムを介して運搬機械と作業現場のシステム端末機器に送信するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の作業量モニタリングシステムでは,作業機械から運搬機械や作業現場のシステム端末機器への積載量の送信や,次の運搬機械への積込作業に移行する際の積載量のリセットは,作業機械の操作者の手動操作により行われている。そのため、複数台の運搬機械に対する積込作業を連続で行う作業現場では,運搬機械が頻繁に入れ替わることもあり操作者の手動操作の失念や誤り等が発生し易く,各運搬機械への積載量を正しく演算することは難しいという課題がある。
【0008】
本発明は運搬機械への積載量を正確に演算できる作業機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために,本発明の作業機械は,車体と,運搬機械へ作業対象物の積込みを行う作業具を一端側に有し,他端側が前記車体に取り付けられた作業腕と,前記作業具を含む前記作業腕の姿勢を検出する姿勢検出装置と,前記作業腕に作用する負荷を検出する負荷検出装置と,前記運搬機械に対し作業指示を報知するための報知装置と,前記姿勢と前記負荷に基づいて,前記作業腕によって前記運搬機械への前記作業対象物の運搬を行う運搬工程が行われたことを判定し,前記運搬工程中に前記作業対象物の荷重を計測し,前記姿勢または前記負荷に基づいて,前記作業腕によって前記運搬機械への前記作業対象物の積込を行う積込工程が行われたことを判定する制御装置とを備えた作業機械において,前記制御装置は,前記報知装置を介した前記作業指示を検出し,前記作業指示の検出時における前記作業機械の動作状態に基づいて,前記運搬機械に対する積込作業の開始と積込作業の終了とを判定し,前記積込作業の開始から前記積込作業の終了までの間に計測された前記作業対象物の荷重を積算して前記運搬機械の積載量を演算し,前記積込作業の終了時に前記積載量を外部端末に出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば運搬機械への積載量を正確に演算できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る作業機械の構成例を示す外観図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る作業機械の制御装置のシステム構成を示す概略図である。
【
図3】作業機械が行う積込作業の一例を示す概観図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係る制御装置(コントローラ)において運搬機械2への積載量の演算と,作業指示信号と作業機械の姿勢に基づいて積込作業の開始と終了を判定する方法を示すフローチャートである。
【
図4B】本発明の実施形態に係る制御装置(コントローラ)において運搬機械2への積載量の演算と,作業指示信号と作業機械の姿勢に基づいて積込作業の開始と終了を判定する方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る制御装置において掘削工程,掘削工程,および積込工程の判定に用いる作業機械の姿勢と負荷を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施形態に係る制御装置において運搬荷重の演算モデルを示す作業機械の側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る作業機械の制御装置において積込作業の開始と終了の判定に用いるモデルを示す作業機械と運搬機械の側面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る作業機械の出力画面の一例を示す外観図である。
【
図9A】本発明の実施形態に係る作業機械が掘削工程における作業機械の停止時間を用いて積込作業の開始と終了の判定を行う方法を示すフローチャートである。
【
図9B】本発明の実施形態に係る作業機械が掘削工程における作業機械の停止時間を用いて積込作業の開始と終了の判定を行う方法を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態に係る作業機械が積込工程における作業具の高さを用いて積込作業の開始と終了の判定を行う方法を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態に係る作業機械が積込作業の開始と終了の判定に用いるモデルを示す作業機械と運搬機械の側面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る作業機械が積込サイクル内の各作業の実施時刻と積載量を用いて積込作業の開始と終了の判定を行う方法を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施形態に係る作業機械の制御装置による積込作業中に演算した運搬荷重と積載量と運搬フラグFcryと積込フラグFloadの演算結果を示すグラフである。
【
図14】本発明の実施形態に係る作業機械のシステム構成を示す概略図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る作業機械の制御装置が,積載期間判定部による積込作業の開始と終了の判定結果,および運搬機械積載期間推定部による積込作業の開始と終了の推定結果を用いて運搬機械の識別を行う方法を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の実施形態に係る作業機械の制御装置において,複数の運搬機械の積載期間の推定に用いるモデルを示す積込作業中の作業機械と運搬機械の位置関係を示す上面図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る作業機械の制御装置の積載期間判定部による積込作業の開始と終了の判定結果,および運搬機械積載期間推定部による積込作業の開始と終了の推定結果を示すグラフである。
【
図18】本発明の実施形態に係る作業機械のシステム構成を示す概略図である。
【
図19】本発明の実施形態に係る作業機械の制御装置が積込作業や運搬機械の交換に要する時間を判定し,作業時間が長大である場合は警告を出力する方法を示すフローチャートである。
【
図20】本発明の実施形態に係る作業機械の出力画面,および管理棟内に設置された管理者用の出力画面の一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。以下では,作業機械の荷重計測システムを構成する積込機械として油圧ショベルを,運搬機械としてダンプトラックを利用する場合について説明する。
【0013】
本発明が対象とする作業機械(積込機械)は,アタッチメント(作業具)としてバケットを有する油圧ショベルに限られず,グラップルやリフティングマグネット等,作業対象物の保持・解放が可能なものを有する油圧ショベルも含まれる。また,油圧ショベルのような旋回機能の無い作業腕を備えるホイールローダ等にも本発明は適用可能である。
【0014】
<第1実施形態>
図1は本実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図1の油圧ショベル1は,下部走行体10と,下部走行体10の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体11と,上部旋回体11の前方に搭載された多関節型の作業腕であるフロント作業装置12と,上部旋回体11を回動する油圧モータである旋回モータ19と,上部旋回体11に設けられ操作者が乗り込んでショベル1を操作する操作室(運転室)20と,操作室20内に設けられ,油圧ショベル1に搭載されたアクチュエータの動作を制御するための操作レバー(操作装置)22と,記憶装置(例えば,ROM,RAM),演算処理装置(例えばCPU)及び入出力装置を有し油圧ショベル1の動作を制御するコントローラ(制御装置)21によって構成されている。
【0015】
フロント作業装置12は,上部旋回体11に回動可能に設けられたブーム13と,ブーム13の先端に回動可能に設けられたアーム14と,アーム14の先端に回動可能に設けられたバケット(アタッチメント)15とを備えている。また,フロント作業装置12はフロント作業装置12を駆動するアクチュエータとして,ブーム13を駆動する油圧シリンダであるブームシリンダ16と,アーム14を駆動する油圧シリンダであるアームシリンダ17と,バケット15を駆動する油圧シリンダであるバケットシリンダ18を備えている。
【0016】
ブーム13,アーム14,バケット15の回動軸には夫々姿勢検出装置であるブーム角度センサ24,アーム角度センサ25,バケット角度センサ26が取り付けられている。これら角度センサ24,25,26からはブーム13,アーム14,バケット15夫々の回動角度を取得できる。また,上部旋回体11には旋回角速度センサ(例えば,ジャイロスコープ)27と傾斜角度センサ28が取り付けられており,それぞれ上部旋回体11の旋回角速度と上部旋回体11の前後方向の傾斜角度が取得できるように構成されている。角度センサ24,25,26,27,28の検出値からはフロント作業装置12の姿勢を特定する姿勢情報を取得できる。
【0017】
ブームシリンダ16およびアームシリンダ17にはそれぞれ負荷検出装置であるブームボトム圧センサ29,ブームロッド圧センサ30,アームボトム圧センサ31,アームロッド圧センサ32が取り付けられており,各油圧シリンダ内部の圧力が取得できるように構成されている。圧力センサ29,30,31,32の検出値からは各シリンダ16,18の推力,すなわちフロント作業装置12に与えられる駆動力を特定する駆動力情報や,各シリンダ16,18の負荷を特定する負荷情報を取得できる。なおバケットシリンダ18のボトム側とロッド側にも同様の圧力センサを設けてバケットシリンダ18の駆動力情報や負荷情報を取得することで各種制御に利用しても良い。
【0018】
なお,ブーム角度センサ24,アーム角度センサ25,バケット角度センサ26,傾斜角度センサ28,旋回角速度センサ27は,フロント作業装置12の姿勢情報を算出可能な物理量を検出できるものであれば他のセンサに代替可能である。例えば,ブーム角度センサ24,アーム角度センサ25及びバケット角度センサ26はそれぞれ傾斜角センサや慣性計測装置(IMU)に代替可能である。また,ブームボトム圧センサ29,ブームロッド圧センサ30,アームボトム圧センサ31,アームロッド圧センサ32は,ブームシリンダ16及びアームシリンダ17が発生する推力,すなわちフロント作業装置12に与えられる駆動力情報や各シリンダ16,17の負荷情報を算出可能な物理量を検出できるものであれば他のセンサに代替可能である。さらに推力,駆動力,負荷の検出に代えて又は加えて,ブームシリンダ16及びアームシリンダ17の動作速度をストロークセンサで検出したり,ブーム13及びアーム14の動作速度をIMUで検出したりすることでフロント作業装置12の動作を検出しても良い。
【0019】
操作室20の内部には,コントローラ21での演算結果(例えば,後述の荷重演算部50に演算されたバケット15内の作業対象物4の荷重値である運搬荷重やその積算値である運搬機械の積載量)などを表示するモニタ(表示装置)23と,フロント作業装置12と上部旋回体11の動作を指示するための操作レバー22とが備え付けられている。上部旋回体11の上面にはコントローラ21が外部のコンピュータ等の端末(例えば運搬機械であるダンプトラック2(
図3参照)に搭載されたコントローラや管理棟5(
図3参照)内に設置されたコンピュータ(不図示)や管理用モニタ45(
図20参照)等)と通信するための外部通信機42が取り付けられている。
【0020】
本実施形態のモニタ23は,タッチパネルを有しており,操作者がコントローラ21への情報の入力を行うための入力装置としても機能する。モニタ23としては例えばタッチパネルを有する液晶ディスプレイが利用可能である。
【0021】
操作レバー22は,ブーム13の上げ・下げ(ブームシリンダ16の伸縮)とバケット15のダンプ・クラウド(バケットシリンダ18の伸縮)をそれぞれ指示する第1レバー(図示せず)と,アーム14のダンプ・クラウド(アームシリンダ17の伸縮)と上部旋回体11の左・右旋回(油圧モータ19の左右回転)をそれぞれ指示する第2レバー(図示せず)を有する。第1,第2レバーはそれぞれ2複合のマルチ機能操作レバーで,第1レバーの前後操作がブーム13の上げ・下げ,左右操作がバケット15のクラウド・ダンプ,第2レバーの前後操作がアーム14のダンプ・クラウド,左右操作が上部旋回体11の左・右回転に対応している。レバーを斜め方向に操作すると,該当する2つのアクチュエータが同時に動作する。また,第1,第2レバーの操作量はアクチュエータ16-19の動作速度を規定する。
【0022】
また,上部旋回体11には,運搬機械(ダンプトラック)2に対して警笛による合図で作業指示(より具体的には,積込作業開始に伴う運搬機械2の停止指示と,積込作業の終了に伴う運搬機械2の発進指示)を報知するための報知装置であるホーン41と,油圧ショベル1以外の機械と作業対象物4の荷重に係る情報(運搬荷重や積載量)をやり取りするための通信装置の1つであるとともに,運搬機械2に関する動作や位置情報をやり取りするための運搬機械情報取得装置でもある外部通信機42と,複数のGNSS衛星からの信号を受信するためのアンテナ(測位情報取得装置)43をさらに備え,操作室20の内部にはスイッチ操作によりホーン41を動作させるホーンスイッチ(作業指示スイッチ)40をさらに備える。
【0023】
なお,作業指示に用いる合図は,上述したホーン41による警笛の鳴動のみに限らず,ライトの明滅や外部通信機42を介したブザー信号のように,運搬機械2の操作者に合図の有無を報知可能な構成であればよい。また,ホーンスイッチ40は,操作レバー22上に取り付けたスイッチや,操作室20の床面に取り付けたフットスイッチのように合図の有無を指示できるインタフェースとして構成されていれば他のハードウェアでも良い。
【0024】
―コントローラ21―
コントローラ21は,演算処理装置(例えばCPU),記憶装置(例えば,ROM,RAM等の半導体メモリ),インタフェース(入出力装置)によって構成されており,記憶装置内に予め保存されているプログラム(ソフトウェア)を演算処理装置で実行し,プログラム内で規定されている設定値とインタフェースから入力された信号に基づいて演算処理装置が演算処理を行い,インタフェースから信号(演算結果)を出力する。
【0025】
図2は本発明の油圧ショベル1の制御装置であるコントローラ21内部のシステム構成例を示す概略図である。コントローラ21内部のシステムはいくつかのプログラムの組み合わせとして実行され,インタフェースを介してセンサ24-32の信号,およびホーンスイッチ40の指示信号を入力し,演算処理装置で処理を実施した後,インタフェースを介して作業対象物4の荷重(運搬荷重)を演算しモニタ23に荷重値を表示するとともに,外部通信機42を介して運搬機械2への積載量を外部端末に送信するように構成されている。
【0026】
図2のコントローラ21の内部にはコントローラ21が実装しているプログラムの機能をブロック図で示している。コントローラ21は,フロント作業装置12の姿勢情報及びアクチュエータ16,17の負荷情報の少なくとも一方に基づいて積込サイクルにおける工程(換言するとフロント作業装置12の動作)(具体的には,掘削工程,運搬工程,積込工程)を判定し,作業対象物4の荷重値である運搬荷重を運搬工程中に演算(計測)する荷重演算部50と,ホーンスイッチ40の出力信号に基づいてホーン(報知装置)41を介した作業指示が出力されていることを検出する作業指示検出部53と,作業指示検出部53による作業指示の検出時における油圧ショベル1の動作状態に基づいて,或る運搬機械2に対する積込作業の最初の積込サイクルにおける積込工程が実行されたタイミング(積込作業の開始タイミング)と最後の積込サイクルにおける積込工程が実行されたタイミング(積込作業の終了タイミング)を判定する積載期間判定部54と,積載期間判定部54が最初の積込工程と判定したタイミングから最後の積込工程と判定したタイミングまでの間に荷重演算部50で演算(計測)された作業対象物4の運搬荷重を積算してそれを運搬機械2の積載量として演算する積載量演算部51と,荷重演算部50と積載量演算部51と積載期間判定部54の出力(演算結果)に基づいてモニタ23に表示する情報と外部通信機42に送信する情報を生成する出力情報生成部52とを備えている。
【0027】
―積載期間判定部54による処理―
次に本実施形態のコントローラ21における積載期間判定部54が,ホーン41から作業指示が出力されたときのフロント作業装置12の動作状態(バケット15の姿勢や高さ)に基づいて,1台の運搬機械2に対する積込作業の開始タイミング(最初の積込サイクルにおける積込工程のタイミング)と終了タイミング(最後の積込サイクルにおける積込工程のタイミング)を判定する方法について
図3乃至
図8を用いて説明する。
【0028】
図3は運搬機械(ダンプトラック)2に対する油圧ショベル1による積込作業の概観図である。油圧ショベル1は
図3に示すように,一般には,(1)掘削対象3を掘削しバケット15内部に作業対象物4を充填する「掘削工程」と,(2)掘削工程後に上部旋回体11を旋回して運搬機械2の荷台上にバケット15を移動する「運搬工程」と,(3)運搬工程後に荷台上にあるバケット15をダンプ操作して作業対象物4を運搬機械2の荷台に放出し,作業対象物4のある掘削開始位置へバケット15を移動する「積込工程」からなる積込サイクルを繰返し実施し,運搬機械2の荷台を作業対象物で満杯にして1台の運搬機械に対する積込作業を完了する。運搬機械2の荷台を作業対象物4で満杯にしたときの積載量を監視することで,作業現場の管理者は日毎,および作業開始日からの成果や進捗を把握できるようになる。
【0029】
コントローラ21(荷重演算部50)は,運搬工程の都度,バケット15で運搬中の作業対象物4の荷重値(運搬荷重)を演算する。そして,コントローラ21(積載量演算部51)は1台の運搬機械2に対する積込作業が終わる度に,作業対象物4の運搬荷重を積算して得た運搬機械2への積載量を,油圧ショベル1に設けた外部通信機42および管理棟5に設けた管理用通信アンテナ44を介して,管理棟5内に設置された不図示のコンピュータに送信する。このとき,1台の運搬機械2へ積載した作業対象物4以外の運搬荷重を誤って積算してしまうと(例えば,現在の運搬機械だけでなく1台前の運搬機械に対する積込作業における運搬荷重も誤って積算してしまうと),積載量が不正確になり,積載量を正しく出力することができなくなる。すなわち,コントローラ21は,1台の運搬機械に対して実施した積込工程における作業対象物5の荷重のみを積算すべきである。本発明では先述した油圧ショベル1の構成と,以下に説明する方法により,容易に運搬機械2へ積載した荷重のみを積算することが可能となる。
【0030】
図4A及び
図4B(
図4)はコントローラ21内部で実行されるプログラムの処理において,作業対象物4の運搬荷重の演算と,運搬機械2への積載量の演算と,作業指示信号と油圧ショベル1の姿勢に基づいて積込作業の開始と終了を判定する方法を示すフローチャートであり,
図5は荷重演算部50の処理において掘削工程,掘削工程,および積込工程の判定に用いる油圧ショベル1の姿勢と負荷を示すグラフであり,
図6は荷重演算部50の処理において運搬荷重の演算モデルを示す油圧ショベル1の側面図であり,
図7は積載期間判定部54の処理において積込作業の開始と終了の判定に用いるモデルを示す油圧ショベル1と運搬機械2の側面図である。
図4乃至
図7を用いて,荷重演算部50が運搬工程中に計測した運搬荷重を積載量演算部51が積算して運搬機械2の積載量を演算し,積載期間判定部54が作業指示検出部53の出力とセンサ24乃至28の出力から演算される油圧ショベル1の姿勢に基づいて積込作業の開始と終了を判定する方法について説明する。
【0031】
図4A及び
図4Bの各ステップはコントローラ21において予め定められたサンプリング周期で実行される。また,コントローラ21内の記憶装置(メモリ)には,積込作業において油圧ショベル1が実施している作業工程を示す状態量として,掘削フラグFdig,運搬フラグFcry,積込フラグFloadが内部に保持されている。なお,各フラグの初期状態は,掘削フラグFdigがOFF,運搬フラグFcryがOFF,積込フラグFloadがONである。さらに,コントローラ21内の記憶装置には油圧ショベル1が積込作業中であるか否かを示す状態量として積載中フラグFlwを保持している。積載中フラグFlwの初期値はOFFである。
【0032】
図4Aに示すフローチャートを開始すると,コントローラ21(荷重演算部50)はステップS100で,積込フラグFloadがONかつ,1サンプリング前のアームボトム圧センサ31の出力PrevPam(前回アームボトム圧)が予めメモリに設定されている閾値Th_Pam_digより小さく,かつ現在のアームボトム圧センサ31の出力Pam(現在アームボトム圧)が閾値Th_Pam_digより大きいか否かを判定する。油圧ショベル1はアームシリンダ17を押し出して掘削するため,
図5のアームシリンダボトム圧Pamのグラフに示すように,掘削している間はアームシリンダボトム圧Pamが大きくなるので,アームボトム圧が閾値Th_Pam_digより上回ったことを判定すると掘削工程を開始したと判断できる。掘削工程の開始が判定されなかった場合はステップS103まで処理をスキップし,掘削工程の開始が判定された場合は処理をステップS101に進め,掘削フラグFdigをON,および積込フラグFloadをOFFに設定してステップS102に進む。
【0033】
ステップS102では,コントローラ21(荷重演算部50)は後述するステップS108で演算され,メモリに保持されている運搬荷重Mを0にリセットし,ステップS103に進む。
【0034】
ステップS103では,コントローラ21(荷重演算部50)はメモリに保持されている掘削フラグFdigがONかつ,1サンプリング前のアームボトム圧センサ31の出力PrevPam(前回アームボトム圧)が予めメモリに設定されている閾値Th_Pam_cryより高く,かつ現在のアームボトム圧センサ31の出力Pam(現在アームボトム圧)が閾値Th_Pam_cryより小さいか否かを判定する。
図5のアームシリンダボトム圧Pamのグラフに示すように,掘削工程が終了するとアームシリンダボトム圧Pamは小さくなるので,アームボトム圧が閾値Th_Pam_cryより下回ったことを判定すると掘削工程が終了し,運搬工程が開始されたと判断できる。掘削工程の開始が判定されなかった場合はステップS105まで処理をスキップし,掘削工程の開始が判定された場合は処理をステップS104に進め,運搬フラグFcryをON,および掘削フラグFdigをOFFに設定し, 運搬フラグFcryをONにした時刻からの時間tplの計測を開始して,ステップS105に進む。なお,閾値Th_Pam_digと閾値Th_Pam_cryに関して,
図6に示した例は一例に過ぎず,油圧ショベル1が掘削工程以外の作業中における平均的な圧力以上の範囲の中で,掘削工程の開始と終了を判定できる任意の値を設定する。
【0035】
ステップS105では,コントローラ21(荷重演算部50)は運搬フラグFcryがONとなっているか否か判定する。運搬フラグFcryがONではない場合は処理をステップS109までスキップし,運搬フラグFcryがONの場合は処理をステップS106に進める。
【0036】
ステップS106では, コントローラ21(荷重演算部50)は運搬フラグFcryがONになってから経過した時間tplが時間閾値Th_tpl以上となっているか否かを判定する。時間閾値Th_tplを経過していない場合は処理をステップS107に進める。
【0037】
ステップS107では,コントローラ21(荷重演算部50)は瞬時の作業対象物4の荷重(作業対象物荷重)Mlを演算し,これを時系列順に記録する。瞬時の作業対象物荷重Mlは公知の方法により演算する。例えば,
図6に示すように,ブーム13の回動軸周りに作用し,ブームシリンダ16の推力により発生するトルクと,フロント作業装置12の重力と旋回遠心力により発生するトルクと,作業対象物4の重力と旋回遠心力により発生するトルクの釣合を利用する。ブームシリンダ16の推力Fcylはブームボトム圧センサ29の出力信号をPbm1,ブームロッド圧センサ30の出力信号をPbm2,ブームシリンダ16の受圧面積をA1,A2として,以下の式(1)で算出される。
Fcyl=A1・Pbm1-A2・Pbm2・・・(1)
【0038】
ブームシリンダ16が発生するトルクTbmは,ブーム回動軸とブームシリンダ16の推力の作用点を結んだ線分の長さをLbm,ブームシリンダ16の推力Fcylと線分Lbmと推力の方向が成す角度をθcylとして以下の式(2)で算出される。
Tbm=Fcyl・Lbm・sin(θcyl) …(2)
【0039】
フロント作業装置12の重力により発生するトルクTgfrは,フロント作業装置12の重心重量をMfr,重力加速度をg,ブーム回動軸とフロント重心までの前後方向の長さをLfr,ブーム回動軸とフロント重心を結ぶ線分と水平面が成す角度をθfrとして以下の式(3)で算出される。
Tgfr=Mfr・g・Lfr・cos(θfr) …(3)
【0040】
フロント作業装置12が旋回遠心力により発生するトルクTcfrは,上部旋回体12の旋回中心とフロント重心までの前後方向の長さをRfr,旋回角速度をωとして以下の式(4)で算出される。
Tcfr=Mfr・Rfr・ω2・Lfr・sin(θfr) …(4)
【0041】
なお,Mfr,Lfr,Rfr,θfrは予め設定された上部旋回体12,ブーム13,アーム14,バケット15それぞれの長さ,重心位置,重量と,ブーム角度センサ24,アーム角度センサ25,バケット角度センサ26から出力される角度信号から算出される。作業対象物が重力により発生するトルクTglは,作業対象物荷重をMl,ブーム回動軸とバケット重心までの前後方向の長さをLl,ブーム回動軸と作業対象物重心を結ぶ線分と水平面が成す角度をθlとして以下の式(5)で算出される。
Tgl=Ml・g・Ll・cos(θl) …(5)
【0042】
作業対象物が旋回遠心力により発生するトルクTclは,上部旋回体12の旋回中心とバケット重心までの前後方向の長さをRlとして以下の式(6)で算出される。
Tcl=Ml・Rl・ω2・Ll・sin(θl) …(6)
【0043】
式(2)乃至(6)に示した,ブーム13の回動軸周りに作用する各トルクの釣合を変形して作業対象物荷重Mlに関して展開すると,作業対象物の荷重Mlは以下の式(7)で算出される。
Ml=(Tbm-Tgfr-Tcfr)/
(Ll・(g・cos(θl)+Rl・ω2・sin(θl))) …(7)
【0044】
式(1)乃至(7)による作業対象物荷重の演算では,センサのノイズや油圧回路の特性などにより,作業対象物の荷重Mlは常に変動し一定の値とならないので,時間tplが時間閾値Th_tplに達するまでの間にステップS107で記録した瞬時の作業対象物荷重Mlを平均化することで,運搬荷重Mとして確定する。
【0045】
ところで,ステップS106で運搬フラグFcryがONとなってから経過した時間tplが,予めメモリに保存されている時間閾値Th_tplより大きい場合はステップS108に進む。
【0046】
ステップS108では,コントローラ21(荷重演算部50)は瞬時の作業対象物荷重Mlの記録に基づき,瞬時の作業対象物荷重Mlの合計を運搬フラグFcryがONとなってから経過した時間tplで除することで瞬時の作業対象物荷重Mlの平均である運搬荷重Mを演算,出力しステップS109に進む。
【0047】
ステップS109では,コントローラ21(荷重演算部50)は運搬フラグFcryがONかつ,1サンプリング前のバケット角度センサ26の出力であるアーム‐バケット間の相対角度Prevθbk(前回バケット角)が予め設定されている閾値Th_θbk_loadより小さく,かつ現在のバケット角度センサ26の出力θbk(現在バケット角)が閾値Th_θbk_loadより大きいか否かを判定する。
図6のアーム14とバケット15の相対角度θbkのグラフに示すように油圧ショベル1は,積込時はバケット15内の土砂を放出するようアーム14とバケット15の間を広げるため,アーム14とバケット15の相対角度θbkが大きくなるので,アーム14とバケット15の相対角度θbkが閾値Th_θbk_loadより上回ったことを判定することにより掘削工程を終了し,積込工程を開始したと判断できる。
【0048】
ステップS109で積込工程の開始が判定されなかった場合はステップS113まで処理をスキップする。逆にステップS109で積込工程の開始が判定された場合は処理をステップS110に進め,コントローラ21(積載量演算部51)は積込フラグFloadをON,および運搬フラグFcryをOFFに設定しステップS111に進む。なお,閾値Th_θbk_loadに関して
図6に示した例は一例に過ぎず,油圧ショベル1の積込工程中におけるアーム‐バケット間の相対角度θbkの範囲の中で,積込工程の開始を判定できる任意の値を設定することが可能である。
【0049】
ステップS111で,コントローラ21(積載量演算部51)は積載中フラグFlwがONとなっているか否か判定する。積載中フラグFlwがONの場合は油圧ショベル1が運搬機械2に積込作業を実施しているとして,ステップS112において荷重の積算値MtotalにステップS108で演算した運搬荷重Mを加算する。一方,ステップS111で積載中フラグがOFFの場合は,ステップS112をスキップし,ステップS113に処理を進める。
【0050】
ステップS113で,コントローラ21(作業指示検出部53)は, ホーンスイッチ40(ホーン41)を介して運搬機械2に対して作業指示Fhornがあったか否かを判定する。作業指示がなかった場合(FhornがOFFの場合)は,処理をステップS100に戻し,再度ステップS100以降の演算を実行するようにコントローラ21内部のプロクラムは動作し,作業指示があった場合(FhornがONの場合)は処理をステップS114に進める。
【0051】
ステップS114で,コントローラ21(積載期間判定部54)は,運搬フラグFcryがONかつ,センサ24乃至センサ28の出力より演算した水平面を基準としたバケット5の開口部の角度θab(以下,「バケット絶対角度θab」と称することがある)が,予めメモリに記録されている角度閾値Th_θab以上か否かを判定する。なお,バケット絶対角度θabは,例えばセンサ24乃至センサ28の出力を全て足し合わせることで演算でき,本稿ではバケット15がクラウド(バケット15を操作室20の方向に巻き込む)される方向を正としており,
図7に示すようにバケット15の回動中心から鉛直上方を12時としたときの9時の方向を0とし,そこから反時計回り方向に向かって角度が単調に増加する設定としている。
図7の(a)に示すように,積込作業を開始する前は運搬機械2が積込工程を行う場所に油圧ショベル1に向かって後進する。その際,油圧ショベル1は最初の積込工程を始められるように作業対象物4を保持した状態で運搬機械2の方向を向き,運搬機械2が積込工程に適した位置に到達した段階で,ホーン41を介して運搬機械2へ停止するよう合図を送る。そのため,油圧ショベル1が掘削工程中であり,かつバケット絶対角度θabが作業対象物4を保持可能な角度閾値Th_θab以上のときに作業指示があった場合は,積込作業の開始(最初の積込サイクルにおける積込工程が実施される状況)であると判断できる。
【0052】
ステップS114で運搬フラグFcryがONかつバケット絶対角度θabが閾値Th_θab以上の場合は,コントローラ21(積載期間判定部54)は,積込作業の開始であると判定し,ステップS115に進む。ステップS115では積載中フラグFlwをONとすることで,積込作業が開始されたと判定し,処理をステップS100に戻す。一方,ステップS114において条件を満たしていなかった場合(すなわち積込作業中か積込作業の終了する状況)はステップS116に進む。
【0053】
ステップS116では,コントローラ21(積載期間判定部54)は,積込フラグFloadがONかつ,バケット絶対角度θabが予めメモリに記録されている角度閾値THh_θabより小さいか否かを判定する。
図7の(b)に示すように,積込作業の終了後は運搬機械2が積込工程を行った場所から離れるように前進する。その際,油圧ショベル1は最後の積込工程を終えた後に作業対象物4を開放した状態で,ホーン41を介して運搬機械2へ発進するよう合図を送る。そのため,油圧ショベル1が積込工程中であり,かつバケット絶対角度θabが作業対象物4を開放状態とする角度閾値Th_θabより小さい場合に作業指示があった場合は,積込作業の終了(最後の積込サイクルにおける積込工程が実施される状況)であると判断できる。ステップS116で積込フラグFloadがONかつバケット角度θabが閾値Th_θabより小さい場合は,コントローラ21(積載期間判定部54)は,積込作業の終了であると判定し,ステップS117に進む。
【0054】
ステップS117で,コントローラ21(積載期間判定部54)は積載中フラグFlwをOFFとすることで積込作業が終了したと判定した後,コントローラ21(出力情報生成部52)は外部通信機42を介して積載量Mtotalを送信し(ステップS118),コントローラ21(積載量演算部51)は積載量Mtotalをリセットし(ステップS119),ステップS100に処理を戻す。なお,ステップS116で条件を満たしていなかった場合はステップS100に処理を戻す。
【0055】
図8は本発明の作業機械の出力装置の1つであるモニタ23の出力画面を示す外観図で,
図8の上部に示した画面は積込作業が開始されたと判定された時(すなわち,
図4BのステップS115で積載中フラグFlwがONに設定されたとき)の出力画面で,
図8下部に示した画面は積込作業が終了したと判定された時(すなわち,
図4BのステップS117で積載中フラグFlwがOFFに設定されたとき)の出力画面である。
図8を用いて出力情報生成部52の出力,および運搬荷重の計測結果に係る表示内容について説明する。
【0056】
図8に示すようにモニタ23の画面上には,コントローラ21内の記憶装置に記憶された運搬機械2の目標積載量(kg)が表示される目標積載量表示部90と,積載量演算部51から出力される運搬機械2への積載量Mtotalが表示される積載量表示部91と,積載量演算部51から出力される積載量Mtotalと目標積載量の差分である残り積載量が表示される残り積載量表示部92と,荷重演算部50から出力される運搬荷重Mが表示される運搬荷重表示部93と,積載期間判定部54から出力される積載期間判定に基づく注意喚起表示が表示される注意喚起表示部94とが配置されている。出力情報生成部52はこれら各部90-94の表示(数値と文字列)をコントローラ21の演算結果や記憶情報に基づいて所定周期で更新している。なお,
図4BのフローではステップS118で積載量Mtotalを外部端末に送信した直後に積載量Mtotalをゼロリセットしているが,モニタ23の画面上の積載量をゼロリセットするタイミングは
図4Bのフローと異ならせても良い。そのため,
図8の下部の画面における積載量表示部92の積載量はゼロとなっていない。
【0057】
出力情報生成部52は,
図8の上部の画面に示すように積込作業が開始された場合は積込作業の開始を喚起し,運搬機械2に過剰に積載する過積載を防ぐように注意喚起表示を表示する。また,出力情報生成部52は,
図8の下部の画面に示すように,積込作業が終了した場合は積込作業の終了を喚起し,次の積込作業に移行するように促す文字列を注意喚起表示部94に表示する。
【0058】
-動作・効果-
上記のように構成した油圧ショベル1において積込作業が開始されると,コントローラ21は,最初の積込サイクルの掘削工程のタイミングでステップS100においてYESと判定し,掘削フラグをONにし(ステップS101),運搬荷重Mをゼロリセットする(ステップS102)。続いてコントローラ21は,最初の積込サイクルの運搬工程のタイミングでステップS103においてYESと判定し,運搬フラグをONにし(ステップS104),運搬工程を開始した時刻からの経過時間tplの計測を行う。時間tplが閾値Th_tplに達するまでの間,コントローラ21は瞬時荷重Mlを繰り返し演算し(ステップS107),時間tplが閾値Th_tplに達したら,瞬時荷重Mlの平均値を演算してそれを運搬荷重Mとする(ステップS108)。このとき油圧ショベル1は
図7の(a)に示すようにバケット15の開口を略水平に保持した状態で運搬機械2の到着を待っているため,コントローラ21はステップS109においてNOと判定してステップS113に処理を進める。
【0059】
その後,油圧ショベル1のオペレータは運搬機械2の到着に合わせてホーン41を鳴らして停止の合図(作業指示)を出力する。ホーン41による作業指示を検出されるとコントローラ21はステップS113からステップS114に処理を進め,ステップS114においてYESと判定して積載中フラグをONにする(ステップS115)。油圧ショベル1がバケット15のダンプ操作をして運搬機械2の荷台に対する作業対象物の積み込み(すなわち,最初の積込サイクルの積込工程)を開始すると,コントローラ21はステップS109においてYESと判定し,積込フラグFloadをONにする(ステップS110)。続くステップS111の判定では積載中フラグFlwはONであるためステップS112に進み,ステップS108で演算した運搬荷重Mが積載量Mtotal(=ゼロ)に積算される。
【0060】
以後は,運搬機械2の荷台が一杯になるまで複数の積込サイクルが油圧ショベル1によって実行される。その際,コントローラ21は各運搬工程で運搬荷重Mを演算するとともに(ステップS108),各積込工程で運搬荷重Mを積算して積載量Mtotalを演算する。
【0061】
その後,
図7の(b)に示すように最後の積込サイクルの積込工程によって運搬機械2の荷台を作業対象物4で一杯にしたら,油圧ショベル1のオペレータはホーン41を鳴らして運搬機械に対する発進の合図(作業指示)を出力する。この作業指示を検出したコントローラ21はステップS113からステップS114に処理を進めるが,最初の積込サイクルと異なり運搬フラグFcryがOFFなのでステップS116に処理を進める。ステップS116では,積込フラグFloadがONでバケット絶対角度θabが閾値より小さいためステップS117に進む。これによりコントローラ21は積載中フラグをOFFに設定し(ステップS117),積載量Mtotalを外部端末に送信し(ステップS118),積載量Mtotalをゼロリセットし(ステップS119),次の運搬機械2に対する積込作業に移行する。
【0062】
以上のように本実施形態では,ステップS114で,油圧ショベル1から運搬機械2への作業指示が出力された時における積込サイクルの工程とフロント作業装置12の動作状態とを対比することで,1台の運搬機械2に対する積込作業の開始と終了を容易に判定でき,積込作業の開始と終了の間のみ運搬荷重Mを積算するので積載量を正確に演算することができる。
【0063】
なお,
図4BのステップS114において,積込作業の開始タイミングの判定精度を向上するために,バケット絶対角度θabの大きさに加えて運搬フラグFcryがONか否かも考慮したが,運搬フラグFcryを考慮対象から除外してバケット絶対角度θabのみで判定しても良い。同様に
図4BのステップS116についても積込フラグFloadを考慮対象から除外しても良い。
【0064】
また,
図4BのステップS118では,積載量Mtotalを外部端末に送信したが,外部端末の送信に代えてコントローラ21内の記憶装置や油圧ショベル1に搭載された他の記憶装置に積載量Mtotalを記憶するに留め,外部端末への送信は省略してもよい。
【0065】
<変形例1>
ところで,
図4BのステップS114乃至ステップS119で示した積込作業の開始と終了の判定方法は前述した方法に限定されるものではなく,異なる形式で実施されていても良い。
【0066】
本変形例では,コントローラ21は,作業指示が検出された積込サイクルの運搬工程において上部旋回体11が停止した場合には1台の運搬機械2に対する積込作業における最初の積込工程が行われた(積込作業が開始した)と判定し,作業指示が検出された積込サイクルの運搬工程において上部旋回体11が停止しなかった場合(すなわち上部旋回体11が旋回している場合)には1台の運搬機械2に対する積込作業における最後の積込工程が行われた(積込作業が終了した)と判定する。以下,この場合の詳細について説明する。
【0067】
図9A及び
図9Bは,本変形例において,運搬工程中の油圧ショベル1の停止期間を計測して積込作業の開始と終了の判定を行う方法を示すフローチャートである。
図9A及び
図9Bを用いて,積込作業の開始と終了の判定方法について説明する。
図9Aのフローチャートは
図4AにおけるステップS105とステップS106の間に挿入され,
図9Bのフローチャートは
図4BにおけるステップS114乃至ステップS119に代替するものである。
【0068】
図4AのステップS105にて運搬フラグFcryがONであったと確認された場合,コントローラ21(積載期間判定部54)は
図9AのステップS120において,旋回角速度センサ27によって計測される上部旋回体11の角速度ωが速度閾値Th_ωstopより小さく,かつバケット角度θabが角度閾値Th_θabより大きいか否かを判定する。条件に該当する場合は,コントローラ21は,ステップS121においてメモリに保持されているカウントCstopに1を加算した後,処理を
図4AのステップS106に戻す。条件に該当しなかった場合は,何もせず処理を
図4AのステップS106に戻す。その後,
図4A及び
図4Bの処理ステップS106乃至ステップS113を実施する。
【0069】
次に,
図4BのステップS113においてホーンスイッチ40から運搬機械2へ作業指示があったと判定された場合,コントローラ21は,
図9BのステップS122でステップS121により演算されたカウントCstopが閾値Th_Cstopより大きいか否かを判定する。閾値Th_Cstopとして例えば1を設定できる。
【0070】
油圧ショベル1は通常,積込作業の効率を上げるため,掘削工程後は直ちに運搬工程へと移行し,さらに運搬工程中に入力した上部旋回体11の旋回を停止することなく積込工程へと移行する。カウントCstopが閾値Th_Cstop(例えば1)より大きいということは,運搬工程中に油圧ショベル1が上部旋回体11の旋回を止め,積込工程に移行することなく運搬機械2の入場を待機していたと判断できる。
【0071】
そこで,ステップS122の条件に該当する場合は,コントローラ21は積込作業が開始されたとしてステップS115に処理を進め,そうでない場合は積込作業が終了されたとしてステップS117に処理を進める。
【0072】
なお,メモリに保持されているカウンタCstopは,
図4AのステップS102における運搬荷重Mを0にリセットすると同時に0にリセットする。
【0073】
なお,上述の掘削工程中における停止判定は上部旋回体11の旋回速度のみに限定されるものではなく,旋回に起因するバケット15の回動速度や,操作レバー22による旋回操作量の積分値などを用いても良いことは明白である。
【0074】
<変形例2>
本変形例では,コントローラ21は,作業指示が検出された積込サイクルの積込工程におけるバケット爪先の高さHbkの最下点PrevHbkが所定の高さ閾値TH_Hbkより小さい場合には最初の積込工程が行われた(積込作業が開始した)と判定し,作業指示が検出された積込サイクルの積込工程におけるバケット爪先の高さの最下点PrevHbkが高さ閾値TH_Hbkより大きい場合には最後の積込工程が行われた(積込作業が終了した)と判定する。
【0075】
図10は積込工程中の油圧ショベル1のバケット爪先の高さを計測して積込作業の開始と終了の判定を行う方法を示すフローチャートであり,
図11は積込作業の開始と終了の判定に用いるモデルを示す油圧ショベル1と運搬機械2の側面図である。
図10および
図11を用いて,積込作業の開始と終了の判定方法について説明する。
【0076】
図10のフローチャートは
図4BにおけるステップS113乃至ステップS119を代替するものである。
図4BのステップS109またはステップS112にて積込工程の開始確認が終了した後,コントローラ21(積載期間判定部54)はステップS130で積込フラグFloadがON,かつ水平面に対するバケット絶対角度θabが予めメモリに記録されている閾値Th_θab_loadより大きいか否かを判定する。
図11に示すように閾値Th_θab_loadは,運搬機械2の上で作業対象物4を開放するようにバケット15を動作させる際の動作完了より僅かに大きい値としているので,ステップS130による判定では作業対象物4を開放する動作を開始してから終了するまでの期間を抽出している。条件に合致しない場合は処理をステップS113までスキップし,条件に合致する場合は処理をステップS131に進める。
【0077】
ステップS131では,コントローラ21はバケット爪先の高さHbkを演算する。Hbkはコントローラ21のメモリに予め記録されている油圧ショベル1とフロント作業装置12の寸法,およびブーム角度センサ24,アーム角度センサ25,バケット角度センサ26の信号を用いて演算し,下部走行体10の底面を0,油圧ショベル1の上部方向を正とする。
【0078】
ステップS131でHbkを演算した後,ステップS132ではコントローラ21はHbkが後述するステップS133でメモリに保持されているPrevHbkより小さいか否かを判定する。PrevHbkには高さ閾値よりも大きい初期値(本実施形態では0)が決められている。HbkがPrevHbkよりも大きい場合は処理をステップS113までスキップし,小さい場合はステップS133にてメモリに保持しているPrevHbkをHbkにて上書きし,処理をステップS113に進める。このステップS132およびステップS133の処理では,
図12に示すように,積込工程において作業対象物4を開放する動作(バケットダンプ動作)を開始してから終了するまでの期間におけるバケット15の爪先高さHbkの最下点を抽出することが行われている。
【0079】
ステップS113では,コントローラ21はホーンスイッチ40から運搬機械2へ作業指示Fhornがあったか否かを判定する。作業指示があった場合はステップS134で作業指示があったことを保持する指示保持フラグTempFhornをONに設定し,そうでない場合は処理をS135に進める。
【0080】
ステップS135ではコントローラ21は指示保持フラグTempFhornがONか否かを判定し,ONとなっていない場合は処理をステップS100までスキップさせ,ONである場合は処理をステップS136に進める。
【0081】
ステップS136ではコントローラ21は水平面に対するバケット絶対角度θabが予めメモリに記録されている閾値Th_θab_loadより大きいか否かを判定する。すなわち,作業対象物4を開放する動作を終了しているか否かを判定する。条件に該当しない場合は処理をステップS100までスキップさせ,該当する場合は処理をステップS137に進める。
【0082】
ステップS137では,コントローラ21は積込工程中にメモリに保持されたPrevHbkが予めメモリに記録されている高さ閾値Th_Hbkより小さいか否かを判定する。
図11の(a)に示すように,積込作業の開始時(最初の積込工程)は運搬機械2に掘削対象物4が入っておらず,油圧ショベル1は掘削対象物4の落下による運搬機械2へのダメージが小さくなるように,なるべく低い位置から掘削対象物4を開放する。一方で
図11の(b)に示すように,積込作業の終了時(最後の積込工程)は運搬機械2に掘削対象物4が入っているため,油圧ショベル1は積込作業の開始時よりも高い位置から掘削対象物4を開放する。そのため,積込工程中のバケット爪先高さHbkの最下点であるPrevHbkは,積込作業の最初と最後で大きさが異なる。
【0083】
ステップS137でPrevHbkが閾値Th_Hbkより小さい,すなわち積込作業の開始と判定した場合は処理をステップS115に進め,積載中フラグFlwをONとした後,ステップS112を実行し積載量Mtotalに運搬荷重Mを加算し,処理をステップS138に進める。なお,ステップS135とステップS136の処理により積載中フラグFlwがONとなるタイミングが遅れ,最初の積込工程における
図4BのステップS111が実施されないことに対して補償するために,ステップS115の後にステップS112を実施している。
【0084】
一方,ステップS137でPrevHbkが閾値Th_Hbkより大きい,すなわち積込作業の終了と判定した場合は,処理をステップS117に進め,積載中フラグFlwをOFFに設定し,続いてステップS118で積載量Mtotalの送信,ステップS119で積載量Mtotalを0にリセットし,処理をステップS138に進める。
【0085】
ステップS138では,コントローラ21は,指示保持フラグTempFhornをOFFに設定するとともにPrevHbkを初期値(=0)にリセットし,処理をステップS100に戻す。
【0086】
<第2実施形態>
第1実施形態では,運搬機械2を停止する作業指示(ホーン41)は運搬工程で出力され,運搬機械2を発進する作業指令は積込工程で出力されたが,油圧ショベル1のオペレータによっては,運搬機械2を停止する作業指示を運搬工程の後に続く積込工程で出力し,運搬機械2を発進する作業指令を積込工程の前の運搬工程で出力することがある。このような場合にも積載量が正確に演算されるようにする必要がある。
【0087】
(1)そこで本実施形態のコントローラ21は,作業指示を第1積込サイクルの運搬工程で検出し,第1積込サイクルの1サイクル前の第2積込サイクルまでの積載量Mtotalが積載閾値Th_Mtotalより小さい場合,または,作業指示を第1積込サイクルの運搬工程で検出し,第1積込サイクルの運搬工程の開始から作業指示の検出時までの経過時間tcryが第1時間閾値Th_tcryより大きい場合,第1積込サイクルの運搬工程が最初の積込工程であると判定する(後述の
図12のステップS142からステップS149へのルート)。
【0088】
(2)また,本実施形態のコントローラ21は,作業指示を第1積込サイクルの運搬工程で検出し,第1積込サイクルの1サイクル前の第2積込サイクルまでの積載量Mtotalが積載閾値Th_Mtotal以上の場合,かつ,作業指示を第1積込サイクルの運搬工程で検出し,第1積込サイクルの運搬工程の開始から作業指示の検出時までの経過時間tcryが第1時間閾値Th_tcry以下の場合,第1積込サイクルの運搬工程で演算された運搬荷重Mを第1積込サイクルの積込工程において第2積込サイクルまでの積載量Mtotalに積算して運搬機械の積載量Mtotalを演算する(後述の
図12のステップS142からステップS143,S144へのルート)。
【0089】
(3)また,本実施形態のコントローラ21は,作業指示を第3積込サイクルの積込工程で検出し,第3積込サイクルの運搬工程で演算された運搬荷重Mが荷重閾値Th_Mより大きい場合,または,作業指示を第3積込サイクルの積込工程で検出し,第3積込サイクルの1サイクル前の第4積込サイクルの積込工程の開始から第3積込サイクルの積込工程の開始までの経過時間tloadが第2時間閾値Th_tloadより小さい場合,第3積込サイクルの積込工程が最後の積込工程であると判定する(後述の
図12のステップS147からステップS150へのルート)。ただし,積載閾値Th_Mtotalは荷重閾値Th_Mより大きく,第1時間閾値Th_tcryは第2時間閾値Th_tloadより小さい。
【0090】
(4)また,本実施形態のコントローラ21は,作業指示を第3積込サイクルの積込工程で検出し,第3積込サイクルの運搬工程で演算された運搬荷重Mが荷重閾値Th_M以下の場合,または,作業指示を第3積込サイクルの積込工程で検出し,第3積込サイクルの1サイクル前の第4積込サイクルの積込工程の開始から第3積込サイクルの積込工程の開始までの経過時間Tloadが第2時間閾値Th_tload以上の場合,第3積込サイクルの運搬工程で演算された運搬荷重Mを第4積込サイクルまでの積載量Mtotalに積算して運搬機械2の積載量Mtotalを演算する(後述の
図12のステップS147からステップS148,S149へのルート)。
【0091】
以下,上記(1)-(4)の制御を実現するためのコントローラ21の構成の詳細について説明する。
【0092】
図12はコントローラ21が,積込作業内の各工程の実施時刻と積載量を用いて積込作業の開始と終了の判定を行う方法を示すフローチャートであり,
図13は油圧ショベル1による積込作業中に演算した運搬荷重と積載量と運搬フラグFcryと積込フラグFloadの演算結果を示すグラフである。なお,
図13のグラフの横軸は時間,縦軸は荷重Mと積載量Mtotalの大きさを示しており,運搬荷重Mを細線,積載量Mtotalを太線で示している。また,グラフ中の縦破線に,積込フラグFload,および運搬フラグFcryがONとなった時刻を示している。なお,
図13上段は先の実施形態における1回の積込作業における運搬荷重Mと積載量Mtotalの推移を示し,
図13中段は積込作業の開始において積込工程(積込1)が作業指示(作業指示2)より早く実施され,さらに積込作業の終了において作業指示(作業指示3)が積込工程(積込4)より早く実施されたために積載量Mtotalが不足している状態を示しており,
図13下段は本実施形態により
図13中段にて発生する積載量Mtotalの不足が補正された状態を示している。
図12,および
図13を用いて,積込作業の開始と終了の判定方法について説明する。
【0093】
図12のフローチャートは
図4BにおけるステップS114乃至ステップS119を代替するものである。なお,コントローラ21は,ステップS103,およびステップS109において各フラグの処理を実施した時刻を記録しメモリに保持しているものとする。
【0094】
図4BのステップS113で運搬機械2への作業指示があった場合に,コントローラ21(積載期間判定部54)は,ステップS140において運搬フラグFcryがONであるか否かを判定する。運搬フラグFcryがONである場合は処理をステップS141に進め,そうでない場合は処理をステップS145に進める。
【0095】
ステップS141では,コントローラ21は,バケット絶対角度θabが,予めメモリに記録されている閾値Th_θabより大きいか否かを判定する。水平面に対するバケット絶対角度θabが閾値Th_θabより大きい場合は処理をステップS142に進め,そうでない場合は処理をステップS154に進める。
【0096】
ところで,ステップS140とステップS141では,
図4BにおけるステップS114と同様に作業指示が出力された時の状態とバケット15の姿勢から積込作業の開始であるか否かを判定している。
図13上段の作業指示2に示すように積込作業の開始時は,油圧ショベル1が掘削工程中に運搬機械2が進入してくるのを待機しており,運搬機械2に作業指示として停止の合図を出力した後に積込工程を開始する。そのため,コントローラ21(積載期間判定部54)は運搬1を判定して運搬フラグFcryがONの状態で,かつ水平面に対するバケット絶対角度θabが閾値Th_θabより大きい状態で作業指示2が入力されているので,積込作業の開始と判定する。
【0097】
-課題1-
ところで,作業現場によっては積込作業の終了時において,運搬機械2の操作者が作業指示に気付いてから運搬機械2を発進させるまでに要する時間を見越し,油圧ショベル1の操作者が積込工程を開始する前,すなわち運搬工程中に作業指示を出力することがある。その場合,
図13中段の作業指示3に示すように,積込4を判定して積込フラグFloadがONとなる前に作業指示3が入力されるので,
図4BにおけるステップS114の処理では,積載中フラグがONとなり,実際は積込作業の終了であるにも関わらず積込作業の開始と誤って判定されてしまう。
【0098】
-対応1-
そこで,本実施形態におけるコントローラ21(積載期間判定部54)は,ステップS142で積載量Mtotalが予めコントローラ21内のメモリに記録されている閾値Th_Mtotalより小さい,または運搬フラグFcryがONとなってから経過した時間tcryが予めメモリに記録されている閾値Th_tcryより大きいか否かを判定する。
図13下段の作業指示3に示すように,積載量Mtotalが閾値Th_Mtotlaより大きく,かつ運搬4が判定され運搬フラグFcryがONとなってから作業指示3が出力されるまでに経過した時間tcryが閾値Th_tcryより短い場合は,積込作業の最後において積込工程を実施する前に作業指示が出されたと判定する。
【0099】
ステップS142の条件に該当しない,すなわち積込作業の最後において積込工程を実施する前に作業指示が出されたと判定された場合は,コントローラ21(積載期間判定部54)は処理をステップS143で積込フラグFloadがONと設定されるまで待機する。すなわち,ステップS143において
図4AにおけるステップS108の判定を繰返し実施し,判定条件を満たさない限りステップS108の判定を繰り返し実行し,判定条件に達した場合に積込フラグFloadをONと設定して,処理をステップS144に進める。積載量演算部51はステップS144で,積載量Mtotalに運搬荷重値Mを積算してステップS151に処理を進める。
【0100】
コントローラ21(積載期間判定部54)は,ステップS142において条件に該当した場合は,積込作業の開始であるとして処理をステップS149に進め,
図4BのステップS115の処理と同様に積載中フラグをONにして処理をステップS100に戻す。
【0101】
コントローラ21(積載期間判定部54)は,ステップS140で運搬フラグFcryがOFFであった場合,処理をステップS145に進め,ステップS145において積込フラグFloadがONであるか否かを判定する。積込フラグFloadがONである場合はステップS146に処理を進め,そうでない場合は処理をステップS144に進める。
【0102】
ステップS146では,コントローラ21(積載期間判定部54)は,水平面に対するバケット絶対角度θabが,予めメモリに記録されている閾値Th_θabより小さいか否かを判定する。水平面に対するバケット絶対角度θabが閾値Th_θabより小さい場合はステップS147に進み,そうでない場合は処理をステップS154に進める。
【0103】
ステップS145とステップS146では,
図4BにおけるステップS116と同様に作業指示が出力された時の状態とバケット15の姿勢から積込作業の終了であるか否かを判定している。
図13上段の作業指示3に示すように積込作業の終了時は,油圧ショベル1が積込工程を開始した後に,運搬機械2に作業指示として発進の合図を出力し,積込作業を完了する。そのため,積載期間判定部54は積込4を判定して積込工程中であることを示す積込フラグFloadがONの状態,かつ水平面に対するバケット絶対角度θabが閾値Th_θabより小さい状態で作業指示3が入力されるので,積込作業の終了と判定する。
【0104】
-課題2-
ところで,作業現場によっては積込作業の開始時において,油圧ショベル1が運搬機械2を待機している時間を少しでも削減するために,運搬機械2が移動している最中に積込作業を開始する,すなわち積込工程中に作業指示を出力することがある。その場合,
図13中段の作業指示2に示すように,積込1を判定して積込フラグFloadがONとなった後に作業指示2が入力されるので,
図4BにおけるステップS115の処理では,積載中フラグFlwがOFFとなり,実際は積込作業の開始であるにも関わらず積込作業の終了と誤って判定されてしまう。
【0105】
-対応2-
そこで,本実施形態におけるコントローラ21(積載期間判定部54)は,ステップS147で積載量Mtotalが予めメモリに記録されている閾値Th_Mより大きい,または前回積込フラグFloadがONとなってから今回の積込フラグFloadがONとなるまでに経過した時間tloadが予めメモリに記録されている閾値Th_tloadより小さいか否かを判定する。
図13下段の作業指示2に示すように,積載量Mtotalが閾値Th_Mより小さく,かつ前回積込4を判定し積込フラグFloadがONとなった後,積込1を判定し再度積込フラグFloadがONとなるまでに経過した時間tloadが長い場合は,積込作業の最初において,積込工程が開始された後に作業指示が出されたと判定する。
【0106】
ステップS147の条件に該当しない場合,すなわち積込作業の最初において,積込工程が開始された後に作業指示が出されたと判定した場合は,コントローラ21(積載期間判定部54)は処理をステップS148に進める。ステップS148ではコントローラ21(積載量演算部51)は積載量Mtotalに運搬荷重値Mを加算しステップS149に処理を進める。
【0107】
コントローラ21(積載期間判定部54)は,ステップS147において条件に該当し場合は,積込作業の終了であるとして処理をステップS150に進め,
図4Bの処理と同様に積載中フラグFlwをOFFにした後,ステップS151で,出力情報生成部52と外部通信機42を介して積載量Mtotalを送信するように指示を出力する。ステップS151の後,ステップS152で積載量演算部51に積載量Mtotalをリセットするように指示を出力して,ステップS100に処理を戻す。
【0108】
ステップS153に処理が進んだ場合は,警告および積載中フラグをON,またはOFFのどちらに設定するかを確認する画面をモニタ23に出力する。ステップS140乃至ステップS142,およびステップS145乃至ステップS147における判定で,積込作業の開始または終了以外のタイミングで作業指示が出力されたものと判定し,油圧ショベル1の操作者に判断を委ねることで,誤判定により積載量が誤って演算されることが防止できる。
【0109】
なお,時間の閾値である閾値Th_tloadは,油圧ショベル1が行う1回の掘削工程,掘削工程,積込工程,リーチング作業に要する平均的な時間以上となる範囲の中で,運搬機械2に対する待機の有無を判定できる任意の値を設定する。閾値Th_tcryは,油圧ショベル1が行う掘削工程の平均的な時間以上の範囲の中で,運搬機械2に対する待機の有無を判定できる任意の値を設定する。また,運搬荷重の閾値である運搬閾値Th_Mは,油圧ショベル1が1回の積込工程で運搬機械2に積載する平均的な積載量(運搬荷重)以下となる範囲の中で,積込作業の開始を判定できる任意の値を設定する。積載閾値Th_Mtotalは,油圧ショベル1が1回の積込工程で運搬機械2に積載する平均的な積載量以上から油圧ショベル1が1回の積込作業において運搬機械2に積載する平均的な積載量以下となる範囲の中で,積込作業の終了を判定できる任意の値を設定する。このように積込作業における各作業の開始時刻による判定を行うことにより,作業指示が出力されるタイミングが早い,または遅い現場においても,積込作業の開始と終了の判定を容易に行い,積載量を正確に演算することができる。
【0110】
以上のように積込作業の開始と終了の判定は,バケット15の水平面に対する絶対角度θbkのみによって判定されなくてもよく,油圧ショベル1の姿勢や動作状態,各作業の開始時刻など,他の条件を用いたり,条件を組み合わせたりするように構成されていてもよい。
【0111】
<第3実施形態>
本実施形態では,油圧ショベル1の周囲に運搬機械2が複数台存在する場合に,コントローラ21が演算している積載量Mtotalをその複数台の運搬機械2のどの運搬機械2の積載量とするかを決定する手順について
図14乃至
図17を用いて説明する。
【0112】
本実施形態のコントローラ21は,複数の運搬機械2からそれぞれ出力される複数の運搬機械の識別情報と位置情報を受信し,その受信した複数の運搬機械の識別情報と位置情報に基づいて,或る積込作業における最初の積込工程から最後の積込工程までの間に作業機械から所定の範囲内に最も長く存在した運搬機械を複数の運搬機械の中から1台選出し,その或る積込作業に関して演算した積載量をその選出された運搬機械のものとして外部端末に出力している。以下,この制御を実現するためのコントローラ21の構成の詳細について説明する。なお,積載量Mtotalの演算は,第1実施形態(変形例を含む)又は第2実施形態と同様に行われているものとし,ここでのその説明は省略する。
【0113】
図14は本実施形態に係るシステム構成を示す概略図である。この図に示すコントローラ21は,第1実施形態の構成に加えて,測位情報取得部56と,運搬機械情報取得部55と,運搬機械積載期間推定部57と,運搬機械識別部58を備えている。運搬機械情報取得部55は,外部通信機42から複数台の運搬機械2の識別情報IDtuckと位置情報Ptruckを取得する。測位情報取得部(受信機)56は,アンテナ(測位情報取得装置)43で受信された衛星信号に基づいて地理座標系における油圧ショベル1の位置Pshovelを演算する。運搬機械積載期間推定部57は,運搬機械情報取得部55によって取得された運搬機械2の位置情報と測位情報取得部56によって演算された油圧ショベル1の位置情報に基づいて運搬機械2と油圧ショベル1の相対距離Ltを演算し,その相対距離Ltを用いて運搬機械の積載期間を推定する。運搬機械識別部58は,積載期間判定部54が判定した油圧ショベル1の積載期間と,運搬機械積載期間推定部57が推定した運搬機械の積載期間を対比させて油圧ショベル1により作業対象物4を積載された運搬機械2を識別する。本実施形態の出力情報生成部52は運搬機械識別部58により判定された運搬機械の識別情報IDtruckと積載量Mtotalを同時に出力するように構成されている。
【0114】
図15はコントローラ21内部で実行されるプログラムの処理において,積込作業の判定と,運搬機械2の位置情報に基づいて推定される積載期間を用いて,油圧ショベル1が作業対象物を積載した運搬機械を識別する方法を示すフローチャートであり,
図16は,運搬機械積算期間推定部57において,運搬機械2A乃至2Cの積載期間の推定に用いるモデルを示す積込作業中の油圧ショベル1と運搬機械2A乃至2Cの位置関係を示す上面図であり,
図17は,積載期間判定部54により判定された油圧ショベル1の積載期間と,運搬機械積載期間推定部57により推定された運搬機械の積載期間を示すグラフである。なお,
図17のグラフの横軸は時間を示し,四角で囲った領域は判定,または推定された積載期間を示しており,
図17の進入,および退場と表示している箇所は推定結果ではなく,説明のために運搬機械の動作の区分けを表示している。また,グラフ内の最上段は積載期間判定部54によって判定された期間,2段目は運搬機械積載期間推定部57によって推定された運搬機械2Aの期間,3段目は運搬機械積載期間推定部57によって推定された運搬機械2Bの期間,4段目は運搬機械積載期間推定部57によって推定された運搬機械2Cの期間を示している。
【0115】
図15の各ステップはコントローラ21において予め定められたサンプリング周期で実行される。コントローラ21(運搬機械積載期間推定部57)は,ステップS160で運搬機械情報取得部55から複数台の運搬機械2の識別情報IDtuckと位置情報Ptruck(IDtuck),および測位情報取得部56から油圧ショベル1の位置Pshovelを取得し,油圧ショベル1と運搬機械2の相対距離Lt(IDtruck)を演算する。なお,運搬機械2の位置情報Ptruck(IDtuck)は各運搬機械2に搭載されたGNSS受信機で演算されており,運搬機械2の識別情報IDtuckは例えば各運搬機械2に搭載されたコントローラ内のメモリに記憶されており,油圧ショベル1(コントローラ21)はこれらの情報を運搬機械2から受信することで利用している。
【0116】
続いてステップS161で,1サンプリング前の相対距離PrevLtが予めメモリに設定されている閾値Th_Ltより大きく,かつ現在の相対距離Ltが閾値Th_Ltより小さい運搬機械2が存在するか否かを判定する。ここで閾値Th_Ltは
図16に示すように油圧ショベル1の現在位置Pshovelを中心とした円の半径であり,本実施形態ではこの円の内部に存在する運搬機械2の中から積載量Mtotalを関連付ける運搬機械2を選択する。ステップS161の上記条件に該当する運搬機械2があった場合,コントローラ21(運搬機械識別部58)はステップS162において,該当する運搬機械IDtruckが油圧ショベル1からの距離が閾値Th_Lt以内の円領域に位置していた期間を記憶するための記憶領域(バッファ領域)であるバッファBuf(IDtruck)をメモリ上に確保する。ステップS161で該当する運搬機械2が無い場合は何もせず処理をステップS163に進める。
【0117】
ステップS163でコントローラ21(運搬機械積載期間推定部57)は,1サンプリング前の相対距離Ltが予めメモリに設定されている閾値Th_Ltより大きく,かつ現在の相対距離Ltが閾値Th_Ltより小さい運搬機械2が存在するか否かを判定する。該当する運搬機械2があった場合,運搬機械識別部58はステップS164において,該当する運搬機械IDtruckのバッファBuf(IDtruck)をメモリ上から消去する。これにより相対距離Ltが閾値Th_Lt以下の運搬機械2のバッファBuf(IDtruck)のみがメモリ上に常に存在することになる。ステップS163で該当する運搬機械2が無い場合は何もせず処理をステップS165に進める。
【0118】
コントローラ21(運搬機械情報取得部55)は
図16に示すように複数の運搬機械2A乃至2Cの位置情報Ptruck(IDtuck)を取得しており,コントローラ21(運搬機械積載期間推定部57)は,予めメモリに記録されている閾値Th_Ltを半径とした円の内部に位置する運搬機械2を積載中であると推定するため,運搬機械2A乃至2Cは実際に積込作業中ではなくても,油圧ショベル1に接近することで積載期間中であると推定され得る。例えば,
図17に示すように,運搬機械2Aは,積載期間判定部54による積載終了1が判定される段階で,積込作業を終了し作業現場から退場し始めるが,閾値Th_Ltの範囲外に移動するまでに時間を要するため,運搬機械積載期間推定部57がステップS161とステップS163で行う油圧ショベル1と運搬機械2の相対位置のみによる積載期間の推定では,積載期間判定部54による積載開始2から積載終了2の間,すなわち運搬機械2Bの積込作業中に運搬機械Aの積載終了を推定してしまう。また,運搬機械2Cは,積載開始3が判定される段階で積込作業を開始するが,積込作業の開始前に運搬機械積載推定閾値の範囲内に進入しているため,運搬機械積載期間推定部57がステップS161とステップS163で行う油圧ショベル1と運搬機械2の相対位置のみによる積載期間の推定では,積載期間判定部54による積載開始2から積載終了2の間,すなわち運搬機械2Bの積込作業中に運搬機械Cの積載開始を推定してしまう。このように,運搬機械積載期間推定部57がステップS161とステップS163で行う油圧ショベル1と運搬機械2の相対位置PreveLt,Ltのみによって推定された積載期間は,積込作業の開始と終了時刻を精度よく出すことができず,推定期間に重畳が発生し得る。そこで本実施形態のコントローラ21では以下の処理を行っている。
【0119】
コントローラ21(運搬機械識別部58)は,ステップS165で積載中フラグFlwがONとなっているか否か判定し,ONとなっている場合はステップS166に進み,そうでない場合は処理をステップS169までスキップする。ステップS166では,1サンプリング前の積載中フラグPrevFlwがOFF,かつメモリに確保したBuf(IDtruck)の個数が1個であるか否か判定する。すなわち,ステップS165の条件と組み合わせると,積載中フラグがOFFからONに切り替わった瞬間のBuf(IDtruck)の個数が1個か否かを判定する。この条件に該当する場合はステップS167において該当するIDtruckを有する運搬機械2を積載中と設定する。ステップS166では積載期間判定部54が積込作業を開始したと判定した瞬間を抽出しているので,
図17の積載開始1に示すように,積載を開始した段階では運搬機械2Aのみが積載開始と推定されているため,運搬機械2Aを積載中であると設定する。積載作業を開始したタイミングで複数の運搬機械2が存在する場合(積載開始2および積載開始3における状態)は後述するステップS175において説明する。
【0120】
ステップS168では,コントローラ21内のメモリに確保されている全てのBuf(IDtruck)に1を加算した後,処理をステップS169に進める。
【0121】
ステップS169では,1サンプリング前の積載中フラグPrevFlwがON,かつ現在の積載中フラグFlwがOFFとなっているか否か判定する。該当する場合,すなわち積載中フラグがONからOFFに切り替わった瞬間が検出されたら処理をステップS170に進め,そうでない場合は処理をステップS160に戻す。
【0122】
ステップS170では,複数のBuf(IDtruck)の中で最大値であるIDtruckを抽出する。すなわち,或る運搬機械2に対する積込作業における最初の積込工程から最後の積込工程までの間に油圧ショベル1から所定の範囲(閾値Th_Lt)内に最も長く存在した運搬機械2を複数の運搬機械2の中から1台選出する。
図17の積載終了1では,Buf(IDtruck(A))とBuf(IDtruck(B))の2つがあるが,Buf(IDtruck(A))の方が加算している期間が長く(すなわち,Buf(IDtruck)が最大),積載開始1から積載終了1までの期間は運搬機械2Aに積載していたと識別できる。同様に
図17の積載終了2では,Buf(IDtruck(B))とBuf(IDtruck(C))の2つがあるが,Buf(IDtruck(B))の方が加算している期間が長く,積載開始2から積載終了2までの期間は運搬機械2Bに積載していたと識別できる。
【0123】
ステップS171では,抽出したIDtruckの個数が1より大きいか否かを判定し,該当する場合は処理をステップS172に進め,そうでない場合は処理をステップS174までスキップさせる。
【0124】
ステップS172では複数の運搬機械2を識別してしまったとして,モニタ23に該当する運搬機械2の識別情報IDtruckと,積載量の演算対象の運搬機械2の選択画面を表示し,油圧ショベル1の操作者に積載した運搬機械2を選択するよう促し,続くステップS173で油圧ショベル1の操作者により選択された識別情報IDtruckを取得し,処理をステップS174に進める。
【0125】
ステップS174では,抽出されたIDtruckと積載量Mtotalを出力情報生成部52と外部通信機42を介して送信するよう指示し,ステップS175に処理を進める。
【0126】
ステップS175では,抽出されたIDtruckに該当するメモリ上のバッファ領域Buf(IDtruck)を消去する。
図17の積載終了1では,Buf(IDtruck(A))とBuf(IDtruck(B))の2つがあるが,ステップS170でBuf(IDtruck(A))が抽出されるので,ステップS175においてBuf(IDtruck(A))は消去される。ここで,積載開始2におけるメモリ上のバッファ領域Buf(IDtruck)はBuf(IDtruck(B))のみとなる。すなわち,積載開始2におけるステップS166,およびステップS167の処理ではIDtruck(B)に該当する運搬機械2Bが積載中と設定される。
図17における積載終了2,および積載開始3の処理も同様である。ステップS175の処理を終了すると,処理をステップS160に戻し,再度一連の処理を実行する。
【0127】
このように作業機械(油圧ショベル)1により判定された積載期間と,運搬機械2の情報に基づいて推定された積載期間を対比させることで,積載を行った運搬機械2を精度よく識別することができ,積載量と積載した運搬機械2を対応付けることができるので,運搬機械2毎の積載量を精度よく管理することができる。
【0128】
なお,運搬機械2の識別方法は上述した方法に限定されるものではなく,異なる方法で識別しても良い。例えば,運搬機械積載期間推定部57が積載期間を推定する方法は油圧ショベル1と運搬機械2の測位情報のみに基づくものである必要はないことは明白である。例えば運搬機械2にRFタグを装着し,油圧ショベル1がRFリーダーを備えて,運搬機械2が接近していることを検知しても良いし,作業現場の出入口にゲート式の識別機を設け,ゲートで取得した運搬機械の入退出時刻情報を,ネットワークを介して油圧ショベル1が取得できるように構成されていても良い。
【0129】
<第4実施形態>
本実施形態では,油圧ショベル1(作業機械)が1台の運搬機械2に対する積込作業を終了して次の運搬機械2に対する積込作業の開始までに要した時間(運搬機械交換時間)を計測し,その時間中に油圧ショベル1が作業を行っていない期間(無作業時間)が長期間発生している場合はモニタ23等を介して油圧ショベル1のオペレータに警告を出力する方法について
図18乃至
図20を用いて説明する。
【0130】
本実施形態のコントローラ21は,或る運搬機械2に対する最後の積込工程から,その或る運搬機械の次の積込対象となる他の運搬機械に対する最初の積込工程までの所要時間を計測し,その所要時間が予め記憶されている設定値を超えた場合,油圧ショベル1の作業効率が低下していると判定し,その判定結果を外部端末に出力している。以下,この制御を実現するためのコントローラ21及びそれを含むシステムの構成の詳細について説明する。なお,積載量Mtotalの演算は,第1実施形態と同様に行われているものとし,その説明は省略する。第1実施形態の変形例や第2実施形態にも適用可能であることはいうまでもない。
【0131】
図18は本実施形態に係るシステム構成を示す概略図である。この図に示すコントローラ21は,第1実施形態に係る構成に加えて,運搬機械交換時間計測部60と,無作業時間判定部61を備えている。運搬機械交換時間計測部60は,積載期間判定部54が判定する積込作業の開始と終了判定に基づいて,1台の運搬機械2が積込作業を終了し,次の運搬機械2への入れ替りに要した運搬機械交換時間と,1台の運搬機械2に対する積込作業を完了に要した積込作業時間を計測する。無作業時間判定部61は,運搬機械交換時間計測部60が計測した運搬機械交換時間と積込作業時間に基づいて,油圧ショベル1が作業を行っていない無作業時間,積込作業時間,油圧ショベル1が行った全ての作業時間のいずれかが長い場合は出力情報生成部52へ警告を出力するよう指示する。
【0132】
図19は運搬機械交換時間計測部60が運搬機械交換時間と積込作業時間を計測し,無作業時間判定部61が油圧ショベル1の作業時間に関する警告を指示する方法を示すフローチャートである。なお,
図19のフローチャートは
図4BにおけるステップS115,またはステップS119の後に続けて実施される。また,コントローラ21は,作業の効率の指標として運搬機械交換時間と積込作業時間の長い積込作業を計数しており,運搬機械交換時間長大回数と積込サイクル作業時間長大回数を内部のメモリ(記憶装置)に保持している。
【0133】
ステップS114において積込作業の開始が判定され,ステップS115において積載中フラグFlwがONに設定されると,コントローラ21(運搬機械交換時間計測部)60はステップS180において積載中フラグFlwがONとなった時刻t_lw_onを保存する。
【0134】
ステップS116において積込作業の終了が判定され,ステップS119において積載量Mtotalがリセットされると,コントローラ21(運搬機械交換時間計測部60)はステップS182において積載中フラグFlwがOFFとなった時刻t_lw_offを保存する。
【0135】
続いてステップS181において現在時刻とステップS182において保存された時刻t_lw_offの差分を運搬機械交換時間t_wxtruckとして演算する。また,ステップS183において現在時刻とステップS180において保存された時刻t_lw_onの差分を積込作業時間t_lcycleとして演算し,処理をステップS184に進める。
【0136】
S184において,コントローラ21(無作業時間判定部61)はステップ運搬機械交換時間t_extruckが予めメモリに記録されている閾値Th_t_extruckより大きいか否かを判定し,大きい場合はステップS185において,メモリに保持されている運搬機械交換時間長大回数Nl_truckを1増加させステップS186に進み,小さい場合は何もせずステップS186に進む。
【0137】
続くステップS186において,コントローラ21は,積込作業時間t_lcycleが予めメモリに記録されている閾値Th_t_lcycleより大きいか否か判定し,大きい場合はステップS187において,積込作業時間長大回数Nl_cycleを1増加させてステップS188に進み,小さい場合は何もせずステップS188に進む。
【0138】
ステップS188では,コントローラ21は運搬機械交換時間長大回数Nl_truckが予めメモリに記録されている閾値Th_Nlongより大きいか否か判定し,大きい場合はステップS189に進み,そうでない場合はステップS190に進む。
【0139】
ステップS189では,コントローラ21は積込作業時間長大回数Nl_cycleが予めメモリに記録されている閾値Th_Nlongより大きいか否か判定し,ステップS189において回数が大きい場合はステップS191に進み,そうでない場合はステップS192に進む。
【0140】
ステップS190では,コントローラ21は積込作業時間長大回数Nl_cycleが予めメモリに記録されている閾値Th_Nlongより大きいか否か判定し,ステップS190において回数が大きい場合はステップS193に進み,そうでない場合は何もせず処理をステップS100に戻す。
【0141】
ステップS191では,コントローラ21は,運搬機械2の交換時間と積込作業に要する作業時間のどちらも長大であるという警告を油圧ショベル1のモニタ23と,管理棟5に設置されているコンピュータに接続された管理用モニタ45(
図20参照)とに出力する。ステップS192では,コントローラ21は運搬機械2の交換に要する時間が長く,油圧ショベル1が作業を行っていない時間が長いという警告をモニタ23,45に出力する。ステップS193では,コントローラ21は1台の運搬機械に対する積込作業の作業時間が長いという警告をモニタ23,45に出力する。
【0142】
なお,時間の閾値である閾値Th_t_extruckは,油圧ショベル1が行う掘削工程と掘削工程に要する時間の平均から1回の積込作業に要する時間の範囲の中で任意の値を設定し,閾値Th_t_lcycleは,油圧ショベル1が行う1回の積込作業に要する時間の平均以上の範囲の中で任意の値を設定する。また,積込作業の回数の閾値である閾値Th_Nlongは,油圧ショベル1が1日に行う平均的な積込作業以下となる範囲の中で,任意の値を設定する。
【0143】
図20は本実施形態における油圧ショベル1のモニタ23及び管理用モニタ45の出力画面を示す外観図で,
図20上部は油圧ショベル1の操作者に対して警告を出力した時のモニタ23の出力画面で,
図20下部は管理棟5に設置されているコンピュータに接続される管理用モニタ45の表示内容の一例を示す図である。
【0144】
図20において,油圧ショベル1のモニタ23上には,注意喚起表示部94にトラック待ちが発生していることを示すメッセージが表示されている。また,管理用モニタ45上には作業現場の地図上に重畳して複数の油圧ショベル1と複数の運搬機械2の現在位置がアイコンで表示されている。
図20に示す例では,作業場Bで積込を行っている油圧ショベル1の運搬機械交換時間が長大となり,トラック待ちの発生が推定されているというポップアップウィンドウ96が表示されている。ポップアップウィンドウ96に運搬機械交換時間(待機時間2:45)を同時に表示することで油圧ショベル1の状態を把握できるようになっている。運搬機械が積込場Bに来ておらず運搬期間の待ち時間が発生している場合,作業現場の管理者は運搬機械2の配置を調整することができる。
【0145】
以上のように積載期間判定部54の積載期間の判定を利用すると,1台の運搬機械2に対する積込作業に要した時間や,運搬機械の交換に要した時間を計測でき,全体の作業時間に対して,油圧ショベル1が実際に作業している時間や運搬機械2により油圧ショベル1が待機している時間を精度よく把握できるようになる。これにより作業時間が増大している要因を推定でき,作業現場の管理者は作業現場の機械をより詳細に管理することができる。
【0146】
なお,本発明は,上記の実施の形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば,本発明は,上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず,その構成の一部を削除したものも含まれる。また,ある実施の形態に係る構成の一部を,他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
【0147】
例えば,上記の各実施形態の説明に用いた油圧ショベル1は上部旋回体11,ブーム13,アーム14,バケット15を有しているが,作業機の構成はこれに限らず,例えばリフティングマグネット機のような異なる形態の作業機であっても良い。
【0148】
荷重演算部50による工程判定は上述したようにアームシリンダボトム圧とバケット角度を用いた方法に限定されるものではない。例えばリフティングマグネット機のような作業機械の場合,マグネットの吸着のON/OFF信号に基づいて運搬工程と積込工程を判定することは容易である。
【0149】
また,外部通信機42から入出力する情報は運搬機械2の積載量と位置情報に限定されるものではなく,例えば運搬機械2の目標積載量を出力するように構成してもよいことは明白である。
【0150】
運搬荷重の演算は
図6に示したモデルに基づく演算式に限定されるものではなく,異なる演算式を用いても良いことは明白である。例えば,ブーム13,アーム14,バケット15により構成されるフロント機構12の運動方程式を用いて荷重を演算してもよい。
【0151】
また,上記のコントローラ(制御装置)21に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は,それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また,上記のコントローラ21に係る構成は,演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることでコントローラ21の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は,例えば,半導体メモリ(フラッシュメモリ,SSD等),磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク,光ディスク等)等に記憶することができる。
【0152】
また,上記の各実施形態の説明では,制御線や情報線は,当該実施の形態の説明に必要であると解されるものを示したが,必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0153】
1…油圧ショベル
2…運搬機械
11…旋回体
12…フロント作業装置
15…バケット(作業具)
21…コントローラ
23…モニタ
42…外部通信機
45…管理用モニタ
24-28…角度センサ(姿勢検出装置)
29-32…圧力センサ(負荷検出装置)
40…ホーンスイッチ(作業指示スイッチ)
41…ホーン(報知装置)
50…荷重演算部
51…積載量演算部
52…出力情報生成部
53…作業指示検出部
54…積載期間判定部
55…運搬機械情報取得部
56…測位情報取得部(受信機)
57…運搬機械積載期間推定部
58…運搬機械識別部
60…運搬機械交換時間計測部
61…無作業時間判定部