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特許7173908カルシウム含有排水の処理方法及び処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】カルシウム含有排水の処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20221109BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20221109BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20221109BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C02F1/58 J
C02F5/00 620B
C02F5/10 620A
C02F5/10 620B
C02F1/52 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019053111
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020151672
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】西村 隆司
(72)【発明者】
【氏名】若菜 正宏
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-016341(JP,A)
【文献】特開昭55-079095(JP,A)
【文献】特開2015-112593(JP,A)
【文献】特開2014-014779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/58- 1/64
B01D 21/01
C02F 1/52- 1/56
C02F 5/00- 5/14
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムを含有する排水に、スケール防止剤を添加して均一化処理する工程と、
均一化処理後の排水に、炭酸塩を添加して炭酸カルシウムを生成させる工程と、
炭酸カルシウム生成後の排水に、凝集剤を添加して凝集フロックを生成させる工程と、
凝集フロックを含む排水を、固液分離せずに直接、脱水処理して、炭酸カルシウムを含む脱水ケーキと、脱水ろ液とを得る工程と、
当該脱水ろ液を中和処理する工程と、
を含むことを特徴とするカルシウム含有排水の処理方法。
【請求項2】
前記炭酸カルシウム生成後の排水に凝集剤を添加する際、及び/又は前記凝集フロックを含む排水を脱水処理する前に、スケール防止剤を排水に追添加することを含むことを特徴とする請求項1に記載のカルシウム含有排水の処理方法。
【請求項3】
前記スケール防止剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のカルシウム含有排水の処理方法。
【請求項4】
前記脱水処理は、遠心分離型脱水機、ベルトプレス型脱水機、又はスクリュープレス型脱水機を用いて行われることを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のカルシウム含有排水の処理方法。
【請求項5】
前記カルシウムを含有する排水は、100mg/L以上6000mg/L以下のカルシウム濃度を有する高濃度カルシウム含有排水であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載のカルシウム含有排水の処理方法。
【請求項6】
カルシウムを含有する排水にスケール防止剤を添加して均一化処理する調整槽と、
当該調整槽に接続されているスケール防止剤供給手段と、
調整後の排水に炭酸塩を添加して炭酸カルシウムを生成させる混和槽と、
炭酸カルシウムを含む排水に凝集剤を添加して凝集フロックを生成させる凝集槽と、
凝集フロックを含む排水を、固液分離せずに直接、脱水処理する脱水機と、
脱水処理により得られる脱水ろ液を中和処理する中和槽と、
当該凝集槽からの凝集フロックを含む排水を当該脱水機に直接送るラインと、
を具備することを特徴とするカルシウム含有排水の処理装置。
【請求項7】
前記混和槽、及び/又は前記凝集槽から前記脱水機へと前記凝集フロックを含む排水を直接送るラインに接続されているスケール防止剤供給手段をさらに具備することを特徴とする請求項に記載のカルシウム含有排水の処理装置。
【請求項8】
前記脱水機は、脱水処理中の振動の変化を検出する振動計を具備することを特徴とする請求項又はに記載のカルシウム含有排水の処理装置。
【請求項9】
前記脱水機は、遠心分離型脱水機、ベルトプレス型脱水機、又はスクリュープレス型脱水機であることを特徴とする請求項6~8のいずれか1に記載のカルシウム含有排水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理型最終処分場などで発生する浸出水などのカルシウム含有排水の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業や一般生活で発生する廃棄物のうち、再利用や再資源化ができない廃棄物は、管理型最終処分場などの最終処分場で埋め立て処理される。管理型最終処分場では、かつては生ゴミなどの有機性廃棄物が直接埋め立てられることが多かったが、ハエ、ネズミ、カラスの繁殖など環境衛生面の問題や、有機物分解に伴う可燃性ガス発生など安全面の問題、また、埋立地延命のための搬入廃棄物の減量化の問題から、近年では焼却処理を経た焼却灰や焼却飛灰が埋め立てられることが主体となっている。焼却施設から排出される排ガス中に含まれ得るSO、NO、HClなどの酸性成分は酸性雨の要因となることから、焼却施設では煙道にアルカリ性の消石灰粉末を噴霧して中和除去している。そのため、焼却飛灰には多量のカルシウム塩と未反応の消石灰が含まれることから、管理型最終処分場で発生する浸出水もカルシウム濃度が高く、かつ高pHなものとなり、このことが浸出水処理施設の配管、ポンプ、生物処理槽などでスケール付着障害を発生させる原因となっている。
【0003】
浸出水処理施設の目的と機能は、埋立地内の浸出水集排水施設によって集められた浸出水を放流先の公共の水域及び地下水を汚染しないように処理することである。浸出水の水質は、埋立初期は高濃度であるが経時的に低濃度となるだけでなく、降水量によって大きく変動するため、安定した処理を行うための維持管理が重要となる。
【0004】
従来の浸出水の処理フローを図2に示す。浸出水(原水)は、調整槽10で均一化された後、混和槽20に送液され、炭酸ナトリウムが添加されて炭酸カルシウムが生成され、アルカリ剤及び凝集剤が添加され、次いで凝集槽30に送液され、高分子凝集剤が添加されて固化された後、沈殿槽40に送られ、炭酸カルシウムを含む汚泥が固液分離され、カルシウム濃度が低減された上澄液は中和槽50に送液され、酸またはアルカリが添加されて中和された後、生物処理、凝集沈殿処理、高度処理設備、脱塩処理などの後処理に供される。固液分離された炭酸カルシウムを含む汚泥は、汚泥貯留槽60に送られた後、1日のうち一定時間、脱水機70で脱水処理に供され、炭酸カルシウムを含む脱水ケーキと脱水ろ液とに分離され、カルシウム濃度が低減された脱水ろ液は調整槽10に返送される。
【0005】
混和槽20、凝集槽30及び中和槽50に添加する薬剤の量は、浸出水中に含まれるカルシウム濃度に依存するため、調整が難しく、薬剤コストが高くなっていた。また、原水と脱水ろ液の性状は大きく異なり、特に原水中のカルシウム濃度は脱水ろ液を添加することによって希釈されるため、脱水ろ液を調整槽10に戻す時間帯と戻さない時間帯とで原水の性状が大きく変動することになる。上述したように薬剤の添加量はカルシウム濃度に依存するため、薬剤添加量の調整はさらに難しくなり、薬剤コストが高くなるだけではなく、処理を不安定にする。さらに、調整槽、混和槽、凝集槽、沈殿槽、中和槽、汚泥貯留槽及び脱水機と必要な設備が多く、また、沈殿槽が大きいため装置規模が大型化するという問題があった。
【0006】
浸出水などカルシウムを含む原水の処理においては、原水中のカルシウムに由来するスケールの生成及び設備内壁への付着が問題となる。スケール生成及び付着を防止するために、平均粒径0.5mmの炭酸カルシウムのペレットを充填した流動床式晶析反応槽に流入させ、晶析反応槽ではアルカリ剤として炭酸ナトリウムを0.1mol/L添加するとともに、流入水量の4倍量を循環処理することにより槽内流速100m/m/hrで処理を行い、後段で生物処理、酸性凝集処理、ろ過処理、活性炭処理、滅菌処理を行ったところ、最終処理水のカルシウム濃度は20mg/Lとなり、凝集沈殿槽の汚泥引き抜き管の閉塞や、汚泥移送配管及びポンプ類の閉塞問題も解消されたとする技術が報告されている(特許文献1)。しかし、この報告は、原水中のカルシウム濃度が100mg/Lと低濃度であり、最近の高濃度のカルシウムを含有する浸出水の処理において同様の効果が得られることは示されていない。また、高濃度のカルシウムを含む浸出水の処理に適用する場合には、炭酸カルシウムの晶析法を用いると安定して結晶を生成させることが難しい上、薬剤の添加量も多量になることが予測され、薬剤コストが高くなるという問題を解決できない。
【0007】
それぞれ50~2000mg/Lのカルシウム及びマグネシウムを含有する原水に、炭酸根を添加してpH11以上のアルカリ条件下に炭酸カルシウム及び水酸化マグネシウムを析出させ、当該析出物を含む反応液を循環槽に受入れ、当該循環槽の流出液を精密ろ過膜分離装置で固液分離し、精密ろ過膜分離装置の濃縮水の一部を循環水として反応槽に返送して原水と混合して処理するとともに、残部を循環槽に返送する処理方法が提案されている(特許文献2)。しかし、濃縮水の一部を循環水として原水と混合して処理するため、原水中のカルシウム濃度は変動し、薬剤添加量の調整が困難で、処理が不安定になるという問題は解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-47062号公報
【文献】特許5906892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、浸出水などのカルシウムを含有する原水の処理において問題となるスケール生成及び付着を防止する従来技術の欠点を解消し、薬剤添加量の無駄を削減し、安定した処理運転を可能とする処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従来の処理方法及び処理装置で用いていた沈殿槽又は精密ろ過膜分離装置による固液分離及び脱水ろ液を返送して原水と混合することを行わずに、高濃度のカルシウムを含む原水を凝集させ、直接脱水処理し、脱水ろ液を中和処理した後、後段の処理に供することを特徴とする。
【0011】
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]カルシウムを含有する排水に、スケール防止剤を添加して均一化処理する工程と、
均一化処理後の排水に、炭酸塩を添加して炭酸カルシウムを生成させる工程と、
炭酸カルシウム生成後の排水に、凝集剤を添加して凝集フロックを生成させる工程と、
凝集フロックを含む排水を、固液分離せずに直接、脱水処理して、炭酸カルシウムを含む脱水ケーキと、脱水ろ液とを得る工程と、
当該脱水ろ液を中和処理する工程と、
を含むことを特徴とするカルシウム含有排水の処理方法。
[2]前記炭酸カルシウム生成後の排水に凝集剤を添加する際、及び/又は前記凝集フロックを含む排水を脱水処理する前に、スケール防止剤を排水に追添加することを含むことを特徴とする前記[1]に記載のカルシウム含有排水の処理方法。
[3]前記スケール防止剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを含むことを特徴とする前記[1]又は[2]に記載のカルシウム含有排水の処理方法。
[4]カルシウムを含有する排水にスケール防止剤を添加して均一化処理する調整槽と、
当該調整槽に接続されているスケール防止剤供給手段と、
調整後の排水に炭酸塩を添加して炭酸カルシウムを生成させる混和槽と、
炭酸カルシウムを含む排水に凝集剤を添加して凝集フロックを生成させる凝集槽と、
凝集フロックを含む排水を、固液分離せずに直接、脱水処理する脱水機と、
脱水処理により得られる脱水ろ液を中和処理する中和槽と、
当該凝集槽からの凝集フロックを含む排水を当該脱水機に直接送るラインと、
を具備することを特徴とするカルシウム含有排水の処理装置。
[5]前記混和槽、及び/又は前記凝集槽から前記脱水機へと前記凝集フロックを含む排水を直接送るラインに接続されているスケール防止剤供給手段をさらに具備することを特徴とする前記[5]に記載のカルシウム含有排水の処理装置。
[6]前記脱水機は、脱水処理中の振動の変化を検出する振動計を具備することを特徴とする前記[4]又は[5]に記載のカルシウム含有排水の処理装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理対象となるカルシウム含有排水(以下「原水」ともいう。)を沈殿分離することなく全量を脱水処理に供し、脱水ろ液を原水に返送することなく全量を後段の処理に供するため、原水の性状が安定し、適切な薬剤添加量を用いることができ、安定した処理が可能となる。
【0013】
また、本発明の処理装置は、従来の沈殿分離槽や精密濾過膜装置などの固液分離装置を用いないため、装置全体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の処理方法を実施する処理装置の概略説明図である。
図2】従来の処理方法を実施する処理装置の概略説明図である。
【好ましい実施形態】
【0015】
添付図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の処理方法を実施するための処理装置の概略説明図である。図1に示す処理装置は、カルシウムを含有する排水にスケール防止剤を添加して均一化処理する調整槽1と、調整槽1に接続されているスケール防止剤供給手段6及び61と、調整後の排水に炭酸塩を添加して炭酸カルシウムを生成させる混和槽2と、炭酸カルシウムを含む排水に凝集剤を添加して凝集フロックを生成させる凝集槽3と、凝集フロックを含む排水を脱水処理する脱水機4と、脱水処理により得られる脱水ろ液を中和処理する中和槽5と、凝集フロックを含む排水を凝集槽3から脱水機4に直接送るライン35を具備するが、従来の処理装置において必須であった沈殿槽や膜分離装置などの固液分離装置及び固液分離された汚泥を脱水前に貯留する汚泥貯留槽を含まない。
【0016】
図1に示す処理装置は、スケール防止剤供給手段6が、混和槽2にスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給手段62、及びライン35内の凝集フロックにスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給手段63を含むが、これらはカルシウム含有排水の性状に応じて付加しなくてもよい。
【0017】
図1に示す処理装置は、脱水機4に振動計7を設けている。振動計7は、スケール生成などにより脱水機4の負荷が大きくなりすぎる際に生じる脱水機4の異常振動を検知すると脱水機4の運転を停止する制御手段(図示せず)に接続されていることが好ましい。本発明においては、スケール生成は抑制されるものの、長時間の運転によってスケールが発生することは避けられない。そこで、脱水機4に振動計7を設けて、脱水機4の振動に基づいて正常運転または異常運転を判別し、スケール除去やスケール防止剤の注入条件の調整などのメンテナンスを行う。異常振動の判別は、加速度(m/s)、速度(mm/s)、変位(μmP-P)など一般的な因子を用いて、正常振動時との相対比較により行うことができる。
【0018】
図1に示す処理装置において、調整槽1内のカルシウムを含有する排水に、スケール防止剤供給手段6及び61からスケール防止剤が添加されて均一化処理される。均一化処理後の排水は、混和槽2に送られ、炭酸塩が添加されて炭酸カルシウムが生成される。混和槽2には、pH調整のためにアルカリが添加されてもよく、無機凝集剤が添加されてもよい。また、混和槽2内の排水に、スケール防止剤供給手段62を介してスケール防止剤が添加されてもよい。炭酸カルシウム生成後の排水は、凝集槽3に送られ、凝集剤が添加されて凝集フロックを生成させる。凝集槽3に添加する凝集剤は高分子凝集剤であることが好ましい。凝集フロックを含む排水は、ライン35を介して凝集槽3から脱水機4に直接送られ、脱水機4にて脱水処理され、炭酸カルシウムを含む脱水ケーキと、脱水ろ液とが得られる。ライン35内の脱水機4に送られる直前の凝集フロックを含む排水に、スケール防止剤供給手段63を介してスケール防止剤が添加されてもよい。脱水ろ液は、中和槽5に送られて、酸またはアルカリが添加されて中和処理される。中和処理後の処理水は、生物処理、凝集沈殿処理、砂ろ過、膜処理、脱塩処理などの後処理に供された後、公共の水域に放流される。本発明の処理方法では、従来の方法で必要であった凝集フロックを脱水する前の固液分離を行わず、分離液を生成させずに、凝集フロックを含む排水の全量を脱水処理するため、従来の方法のように脱水ろ液を調整槽に戻して原水を希釈することがなく、原水の性状の変動が少ない。
【0019】
スケール防止剤を添加することにより、炭酸カルシウムから形成されるスケールを軟質化させた状態に維持し、混和槽2、凝集槽3及び脱水機4並びにこれらの間の配管の内壁に付着することを防止し、脱水処理に供される凝集フロックを含む排水中のスケールを脱水ケーキ中に取り込んで脱水機から排出することができる。排水中のカルシウム濃度に応じて、調整槽1だけではなく、混和槽2内及び脱水機4の直前のライン5内でスケール防止剤を添加することが好ましい。
【0020】
スケール防止剤とは、スケールが生成して脱水機や配管への付着を防止する薬剤であり、中でも、生成したスケールを柔らかくして装置への付着を防止する「スケール軟質化剤」を特に好ましく用いることができる。スケール軟質化剤としては、(メタ)アクリル酸系ポリマーを好ましく用いることができる。(メタ)アクリル酸系ポリマーの分子量は特に限定されるものではないが、例えば重量平均分子量が2000~12000、好ましくは3000~9000程度の比較的低分子量であることが望ましい。(メタ)アクリル酸系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、(メタ)アクリル酸-マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸-スルホン酸系モノマー共重合体、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸-ヒドロキシアリロキシプロパンスルホン酸共重合体、及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)を好適に挙げることができる。(メタ)アクリル酸-スルホン酸系モノマー共重合体のスルホン酸系モノマー(スルホン酸基含有モノマー)としては、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシ-1-プロパンスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-ブテンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)、ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ヒドロキシエチリデンジスルホン酸(HEDP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTP)等を挙げることができる。これらの中でも、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、アクリル酸-メタクリル酸共重合体のナトリウム塩又はカリウム塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のナトリウム塩又はカリウム、アクリル酸-スルホン酸系モノマー共重合体のナトリウム塩又はカリウム塩が特に好ましい。これらのスケール軟質化剤は、1種もしくは2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0021】
さらに、スケール軟質化剤は、ポリアクリルアミド及びその加水分解物、マレイン酸系重合体、イタコン酸系重合体、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸などを含むアクリル酸系の2成分系共重合体又は3成分系共重合体や、塩化第二鉄及びポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)などの鉄塩、硫酸アルミニウム及びポリ塩化アルミニウム(PAC)などのアルミニウム塩などの無機塩を含むことが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸-スルホン酸系モノマー共重合体と鉄塩との組み合わせ、ポリアクリル酸ナトリウムと鉄塩との組み合わせ、ポリアクリル酸ナトリウムとアルミニウム塩との組み合わせが好ましい。
【0022】
スケール防止剤の添加量は、排水のカルシウム濃度及び塩類濃度に応じて適宜設定することができるが、排水が1000mg/Lのカルシウムを含有する場合、10~1000mg/L、好ましくは10~500mg/L、より好ましくは10~300mg/Lのスケール防止剤(無機塩や他の高分子系スケール防止剤を含む場合は、これらを含めた総量)を添加することが望ましい。また、無機塩を併用する場合には、(メタ)アクリル酸系ポリマー100質量部に対して100~200質量部、好ましくは130~190質量部、より好ましくは150~180質量部の無機塩を添加することが望ましい。
【0023】
混和槽2で添加される炭酸塩としては、カルシウムとの置換によって炭酸カルシウムを形成できるものであればよく、たとえば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを用いることができる。
【0024】
混和槽2で添加される凝集剤としては、無機凝集剤が好ましく、例えば塩化第二鉄及びポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)などの鉄塩、硫酸アルミニウム及びポリ塩化アルミニウム(PAC)などのアルミニウム塩などを好適に用いることができる。
【0025】
混和槽2で添加されるアルカリはpH調整剤である。排水中のカルシウムイオンが炭酸カルシウムとして析出し、無機凝集剤が凝集作用を発揮できるpH8~11に調整することができるアルカリ成分及び添加量とすればよい。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを好適に用いることができる。
【0026】
凝集槽3で添加される凝集剤としては、高分子凝集剤が好ましく、例えば、カチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤、両性高分子凝集剤の1種または2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。
【0027】
脱水機としては、脱水処理に用いられる一般的な脱水機を制限なく用いることができ、例えば遠心分離型脱水機、ベルトプレス型脱水機、スクリュープレス型脱水機などを好適に挙げることができる。
【0028】
脱水処理後の脱水ケーキには、析出した炭酸カルシウムが含まれる。脱水ろ液には、スケール形成の原因となる炭酸カルシウムがほぼ含まれていないから、中和槽5以後の後処理設備においてスケールはほぼ形成されない。本発明によれば、排水中に含れていたカルシウムは脱水処理までにほぼ除去できるため、中和処理後に、生物処理、凝集沈殿処理、砂ろ過、膜処理、及び脱塩処理など一般的な後処理を制限なく行うことができる。特に本発明の方法では、脱水ろ液中のSS分は凝集沈殿法の処理水よりも高くなることもあるため、後処理設備はこれらの除去が可能な固液分離機能(固液分離機能を有する生物処理、凝集沈殿処理、砂ろ過、膜処理など)を少なくとも1つ以上有することが望ましい。
【0029】
本発明の処理方法及び処理装置によれば、カルシウム濃度が100mg/L以上6000mg/L以下、好ましくは500mg/L以上3000mg/L以下、より好ましくは1000mg/L以上3000mg/L以下の高濃度カルシウム含有排水を安定して処理することができる。
図1
図2