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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/11597 20170101AFI20221109BHJP
【FI】
H01L27/11597
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019053681
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020155644
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】藤井 章輔
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1872122(KR,B1)
【文献】特開2018-195767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0337055(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03413332(EP,A2)
【文献】特開2005-166836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/11597
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層間絶縁層とゲート電極層とが第1の方向に交互に積層された積層体と、
前記積層体の中に設けられ、前記第1の方向に延びる半導体層と、
前記半導体層と前記ゲート電極層との間に設けられた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記ゲート電極層との間に設けられた導電層と、
前記導電層と前記ゲート電極層との間に設けられ、強誘電体を含む第2の絶縁層と、
を備え、
前記第1の方向に隣り合う2つの前記導電層は、前記層間絶縁層を間に挟んで離間し、
前記ゲート電極層の前記第1の方向の第1の厚さは、前記導電層の前記第1の方向の第2の厚さより小さく、
前記第2の絶縁層は、前記導電層と前記ゲート電極層との間の第1の領域と、前記ゲート電極層と前記層間絶縁層との間の第2の領域と、を有し、
前記第1の領域が前記強誘電体を含み、前記第2の領域が常誘電体を含む、半導体記憶装置。
【請求項2】
層間絶縁層とゲート電極層とが第1の方向に交互に積層された積層体と、
前記積層体の中に設けられ、前記第1の方向に延びる半導体層と、
前記半導体層と前記ゲート電極層との間に設けられた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記ゲート電極層との間に設けられた導電層と、
前記導電層と前記ゲート電極層との間に設けられ、強誘電体を含む第2の絶縁層と、
を備え、
前記第1の方向に隣り合う2つの前記導電層は、前記層間絶縁層を間に挟んで離間し、
前記ゲート電極層の前記第1の方向の第1の厚さは、前記導電層の前記第1の方向の第2の厚さより小さく、
前記第2の絶縁層は、前記導電層と前記ゲート電極層との間の第1の領域と、前記ゲート電極層と前記層間絶縁層との間の第2の領域と、を有し、
前記第1の領域が直方晶系の結晶を含み、前記第2の領域が単斜晶系の結晶を含む、半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第2の絶縁層は酸化ハフニウムを含む請求項1又は請求項いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第1の厚さをd1(nm)、前記第2の厚さをd2(nm)とした場合に、下記不等式が成立する請求項記載の半導体記憶装置。
d2≧d1+10・・・(式)
【請求項5】
前記第1の絶縁層は、前記半導体層と前記層間絶縁層との間に設けられる請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記第1の方向に直交する第2の方向の前記導電層の幅は、略一定である請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記導電層は、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、窒化チタン、窒化タングステン、窒化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、及び、炭化タンタルからなる群から選ばれる少なくとも一つの材料を含む請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
第1の方向に離間して配置された複数のゲート電極層と、
前記第1の方向に延びる半導体層と、
前記半導体層と前記ゲート電極層との間に設けられた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記ゲート電極層との間に設けられた導電層と、
前記導電層と前記ゲート電極層との間に設けられ、強誘電体を含む第2の絶縁層と、
を備え、
前記第1の方向に隣り合う2つの前記導電層は離間し、
前記ゲート電極層の前記第1の方向の第1の厚さは、前記導電層の前記第1の方向の第2の厚さより小さく、
前記第2の絶縁層は、前記導電層と前記ゲート電極層との間の第1の領域と、前記ゲート電極層の前記第1の方向に位置する第2の領域と、を有し、
前記第1の領域が前記強誘電体を含み、前記第2の領域が常誘電体を含む、半導体記憶装置。
【請求項9】
第1の方向に離間して配置された複数のゲート電極層と、
前記第1の方向に延びる半導体層と、
前記半導体層と前記ゲート電極層との間に設けられた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記ゲート電極層との間に設けられた導電層と、
前記導電層と前記ゲート電極層との間に設けられ、強誘電体を含む第2の絶縁層と、
を備え、
前記第1の方向に隣り合う2つの前記導電層は離間し、
前記ゲート電極層の前記第1の方向の第1の厚さは、前記導電層の前記第1の方向の第2の厚さより小さく、
前記第2の絶縁層は、前記導電層と前記ゲート電極層との間の第1の領域と、前記ゲート電極層の前記第1の方向に位置する第2の領域と、を有し、
前記第1の領域が直方晶系の結晶を含み、前記第2の領域が単斜晶系の結晶を含む、半導体記憶装置。
【請求項10】
前記第2の絶縁層は酸化ハフニウムを含む請求項8又は請求項9記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記第1の厚さをd1(nm)、前記第2の厚さをd2(nm)とした場合に、下記不等式が成立する請求項10記載の半導体記憶装置。
d2≧d1+10・・・(式)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体メモリが不揮発性メモリとして注目されている。特に、MFIS(Metal Ferroelectrics Insulator Semiconductor)構造やMFMIS(Metal Ferroelectrics Metal Insulator Semiconductor)構造の1トランジスタ型のメモリセルは、高集積化が可能となるため大容量の不揮発性メモリへの適用が期待される。
【0003】
強誘電体メモリでは、分極の不安定性に起因する電荷保持特性の劣化が問題となる。強誘電体メモリの分極の安定性を増大させ、強誘電体メモリの信頼性を向上することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9818468号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、信頼性の向上が可能な半導体記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体記憶装置は、層間絶縁層とゲート電極層とが第1の方向に交互に積層された積層体と、積層体の中に設けられ、第1の方向に延びる半導体層と、半導体層とゲート電極層との間に設けられた第1の絶縁層と、第1の絶縁層とゲート電極層との間に設けられた導電層と、導電層とゲート電極層との間に設けられ、強誘電体を含む第2の絶縁層と、を備え、第1の方向に隣り合う2つの導電層は、層間絶縁層を間に挟んで離間し、ゲート電極層の第1の方向の第1の厚さは、導電層の第1の方向の第2の厚さより小さく、前記第2の絶縁層は、前記導電層と前記ゲート電極層との間の第1の領域と、前記ゲート電極層と前記層間絶縁層との間の第2の領域と、を有し、前記第1の領域が前記強誘電体を含み、前記第2の領域が常誘電体を含む
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの回路図。
図2】実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの模式断面図。
図3】実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図。
図4】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図5】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図6】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図7】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図8】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図9】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図10】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図11】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図12】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図13】実施形態の半導体記憶装置の作用及び効果の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0009】
また、本明細書中、便宜上「上」、又は、「下」という用語を用いる場合がある。「上」、又は、「下」とはあくまで図面内での相対的位置関係を示す用語であり、重力に対する位置関係を規定する用語ではない。
【0010】
本明細書中の半導体装置を構成する部材の化学組成の定性分析及び定量分析は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)により行うことが可能である。また、半導体装置を構成する部材の厚さ、部材間の距離等の測定には、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いることが可能である。また、半導体記憶装置を構成する部材の結晶系の同定には、例えば、ナノビーム回折法(Nano Beam Diffraction:NBD)を用いることが可能である。
【0011】
実施形態の半導体記憶装置は、層間絶縁層とゲート電極層とが第1の方向に交互に積層された積層体と、積層体の中に設けられ、第1の方向に延びる半導体層と、半導体層とゲート電極層との間に設けられた第1の絶縁層と、第1の絶縁層とゲート電極層との間に設けられた導電層と、導電層とゲート電極層との間に設けられ、強誘電体を含む第2の絶縁層と、を備え、第1の方向に隣り合う2つの導電層は、層間絶縁層を間に挟んで離間し、ゲート電極層の第1の方向の第1の厚さは、導電層の第1の方向の第2の厚さより小さい。
【0012】
実施形態の半導体記憶装置は、MFMIS構造のメモリセルトランジスタMTを有する3次元NANDフラッシュメモリである。
【0013】
図1は、実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの回路図である。
【0014】
実施形態の3次元NANDフラッシュメモリのメモリセルアレイ100は、図1に示すように複数のワード線WL(ゲート電極層)、共通ソース線CSL、ソース選択ゲート線SGS、複数のドレイン選択ゲート線SGD、複数のビット線BL(半導体層)、及び、複数のメモリストリングMSを備える。
【0015】
複数のワード線WLがz方向(第1の方向)に配置される。複数のビット線BLは、z方向に延びる。以下、z方向に直交するy方向を第2の方向と称し、z方向及びy方向に直交するx方向を第3の方向と称する。
【0016】
図1に示すように、メモリストリングMSは、共通ソース線CSLとビット線BLとの間に直列接続されたソース選択トランジスタSST、複数のメモリセルトランジスタMT、及び、ドレイン選択トランジスタSDTで構成される。ビット線BLとドレイン選択ゲート線SGDにより1本のメモリストリングMSが選択され、ワード線WLにより1個のメモリセルトランジスタMTが選択可能となる。
【0017】
図2は、実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの模式断面図である。図2は、図1のメモリセルアレイ100の中の、例えば点線で囲まれる一個のメモリストリングMSの中の複数のメモリセルの断面を示す。
【0018】
図2(a)は、メモリセルアレイ100のyz断面図である。図2(a)は、図2(b)のBB’断面である。図2(b)は、メモリセルアレイ100のxy断面図である。図2(b)は、図2(a)のAA’断面である。図2(a)中、破線で囲まれた領域が、1個のメモリセルMCである。
【0019】
図3は、実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図である。図3は、メモリセルの一部の拡大断面図である。
【0020】
メモリセルアレイ100は、図2図3に示すように、複数のワード線WL(ゲート電極層)、半導体層10、複数の層間絶縁層12、ゲート絶縁層14(第1の絶縁層)、金属層16(導電層)、強誘電体層18(第2の絶縁層)を備える。複数のワード線WLと複数の層間絶縁層12が積層体30を構成する。強誘電体層18は、強誘電体領域18a(第1の領域)と常誘電体領域18b(第2の領域)とを有する。
【0021】
ワード線WL及び層間絶縁層12は、例えば、図示しない半導体基板上に設けられる。
【0022】
ワード線WLと層間絶縁層12は、半導体基板の上に、z方向(第1の方向)に交互に積層される。ワード線WLは、z方向に離間して配置される。複数のワード線WLと複数の層間絶縁層12が積層体30を構成する。
【0023】
ワード線WLは、板状の導電体である。ワード線WLは、例えば、金属、金属窒化物、金属炭化物、又は、半導体である。ワード線WLは、例えば、タングステン(W)である。ワード線WLは、メモリセルトランジスタMTの制御電極として機能する。ワード線WLは、ゲート電極層の一例である。
【0024】
層間絶縁層12は、ワード線WLとワード線WLを分離する。層間絶縁層12は、例えば、酸化物、酸窒化物、又は、窒化物である。層間絶縁層12は、例えば、酸化シリコンである。
【0025】
半導体層10は、積層体30の中に設けられる。半導体層10は、z方向に延びる。半導体層10は、積層体30を貫通して設けられる。半導体層10は、例えば、円柱状である。
【0026】
半導体層10は、例えば、多結晶の半導体である。半導体層10は、例えば、多結晶シリコンである。半導体層10は、メモリセルトランジスタMTのチャネルとして機能する。
【0027】
ゲート絶縁層14は、半導体層10とワード線WLとの間に設けられる。ゲート絶縁層14は、半導体層10と金属層16との間に設けられる。
【0028】
ゲート絶縁層14は、半導体層10の側面に沿って設けられる。ゲート絶縁層14は、半導体層10と層間絶縁層12との間にも設けられる。ゲート絶縁層14は、隣り合うメモリセルトランジスタMTの間で分断されることなく設けられる。
【0029】
ゲート絶縁層14は、例えば、酸化物、又は、酸窒化物である。ゲート絶縁層14は、例えば、酸化シリコンである。
【0030】
ゲート絶縁層14のy方向の厚さは、例えば、1nm以上10nm以下である。
【0031】
金属層16は、ゲート絶縁層14とワード線WLとの間に設けられる。金属層16は、ゲート絶縁層14と強誘電体層18との間に設けられる。
【0032】
z方向に隣り合う2つの金属層16は、層間絶縁層12を間に挟んで離間している。z方向に隣り合うメモリセルトランジスタMTの金属層16は、分断されている。
【0033】
金属層16は、例えば、金属、金属窒化物、又は、金属炭化物である。金属層16は、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、窒化チタン、窒化タングステン、窒化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、及び、炭化タンタルからなる群から選ばれる少なくとも一つの材料を含む。金属層16は、例えば、窒化チタンである。
【0034】
金属層16のy方向の厚さは、例えば、3nm以上15nm以下である。
【0035】
強誘電体層18は、金属層16とワード線WLとの間に設けられる。強誘電体層18は、例えば、金属層16及びワード線WLに接する。
【0036】
強誘電体層18は、強誘電体領域18a(第1の領域)と常誘電体領域18b(第2の領域)とを有する。強誘電体領域18aは、金属層16とワード線WLとの間に設けられる。常誘電体領域18bは、ワード線WLと層間絶縁層12との間に設けられる。常誘電体領域18bは、常誘電体領域18bは、ワード線WLのz方向に設けられる。例えば、層間絶縁層12に接する。強誘電体領域18aと常誘電体領域18bは、略同一の化学組成を有する。
【0037】
強誘電体層18は、強誘電体を含む。強誘電体領域18aは、強誘電体を含む。強誘電体領域18aは、直方晶系の結晶を含む。常誘電体領域18bは、常誘電体を含む。常誘電体領域18bは、単斜晶系の結晶を含む。
【0038】
強誘電体層18は、例えば、酸化ハフニウムを含む。強誘電体層18は、酸化ハフニウムを主成分とする。酸化ハフニウムを主成分とするとは、強誘電体層18に含まれる物質の中で、酸化ハフニウムのモル比率が最も高いことを意味する。酸化ハフニウムのモル比率は、例えば、90%以上である。
【0039】
強誘電体層18を構成する酸化ハフニウムは、例えば、シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロジム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、及び、バリウム(Ba)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含んでも良い。上記元素を含むことにより、酸化ハフニウムに強誘電性が発現しやすくなる。
【0040】
強誘電体領域18aは、例えば、強誘電体の酸化ハフニウムを含む。強誘電体領域18aは、例えば、直方晶系(Orthorhombic)の酸化ハフニウム結晶を含む。強誘電体領域18aは、例えば、直方晶系の酸化ハフニウムを主とする酸化ハフニウムである。酸化ハフニウムは、例えば、第三直方晶系(Orthorhombic III、空間群Pbc2 、空間群番号29番)を主とする酸化ハフニウムである。なお、直方晶系は斜方晶系とも称される。
【0041】
常誘電体領域18bは、例えば、常誘電体の酸化ハフニウムを含む。常誘電体領域18bは、例えば、単斜晶系(Monoclinic)の酸化ハフニウム結晶を含む。常誘電体領域18bは、例えば、単斜晶系の酸化ハフニウムを主とする酸化ハフニウムである。
【0042】
ワード線WLのz方向の第1の厚さ(図3中のd1)は、金属層16のz方向の第2の厚さ(図3中のd2)より小さい。
【0043】
強誘電体層18が、酸化ハフニウムを含む場合、ワード線WLのz方向の第1の厚さd1(nm)と、金属層16のz方向の第2の厚さd2(nm)との間には、例えば、下記不等式が成立する。
d2≧d1+10・・・(不等式)
【0044】
ワード線WLのz方向の第1の厚さd1は、例えば、5nm以上40nm以下である。金属層16のz方向の第2の厚さd2は、例えば、15nm以上50nm以下である。
【0045】
強誘電体層18のy方向の厚さは、例えば、5nm以上15nm以下である。
【0046】
金属層16のy方向の幅(図3中のw)は、略一定である。ワード線WLの半導体層10の側の端部の第1の方向には、金属層16は存在しない。ワード線WLと層間絶縁層12との間には、金属層16は存在しない。
【0047】
実施形態のメモリセルでは、強誘電体層18に含まれる強誘電体の分極反転状態を、ワード線WLと半導体層10の間に印加する電圧によって制御する。強誘電体層18の分極反転状態により、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が変化する。メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が変化することで、メモリセルトランジスタMTのオン電流が変化する。例えば、閾値電圧が高くオン電流が低い状態をデータ“0”、閾値電圧が低くオン電流が高い状態をデータ“1”と定義すると、メモリセルは“0”と“1”の1ビットデータを記憶することが可能となる。
【0048】
次に、実施形態の半導体記憶装置の製造方法の一例について説明する。図4図5図6図7図8図9図10図11図12は、実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図である。図4図5図6図7図8図9図10図11図12は、それぞれ、図2(a)に対応する断面を示す。図4図5図6図7図8図9図10図11図12は、半導体記憶装置のメモリセルアレイ100の製造方法の一例を示す。
【0049】
最初に、図示しない半導体基板の上に、酸化シリコン層50と窒化シリコン層52とを交互に積層する(図4)。酸化シリコン層50と窒化シリコン層52により積層体30が形成される。酸化シリコン層50と窒化シリコン層52は、例えば、Chemical Vapor Deposition法(CVD法)により形成する。酸化シリコン層50の一部は、最終的に層間絶縁層12となる。
【0050】
次に、酸化シリコン層50と窒化シリコン層52に開口部54を形成する(図5)。開口部54は、例えば、リソグラフィ法とReactive Ion Etching法(RIE法)により形成する。
【0051】
次に、開口部54の内面に露出した窒化シリコン層52を、ウェットエッチングにより選択的に後退させる(図6)。ウェットエッチングには、例えば、リン酸溶液を用い、窒化シリコン層52を酸化シリコン層50に対して選択的にエッチングする。
【0052】
次に、窒化チタン膜56を、開口部54内、及び、窒化シリコン層52が後退した領域内に形成する(図7)。窒化チタン膜56は、例えば、Atomic Layer Deposition法(ALD法)により形成する。窒化チタン膜56の一部は、最終的に金属層16となる。
【0053】
次に、開口部54の内面の窒化チタン膜56を、エッチングにより除去する(図8)。窒化チタン膜56は、例えば、RIE法によりエッチングして除去する。
【0054】
次に、開口部54内に酸化シリコン膜58を形成する。そして、酸化シリコン膜58の上に多結晶シリコン膜60を形成し、開口部54を埋め込む(図9)。酸化シリコン膜58及び多結晶シリコン膜60は、例えば、CVD法により形成する。
【0055】
次に、図示しないエッチング用の溝を用いて、窒化シリコン層52をウェットエッチングより選択的に除去する(図10)。ウェットエッチングには、例えば、リン酸溶液を用い、窒化シリコン層52を酸化シリコン層50、窒化チタン膜56に対して選択的にエッチングする。
【0056】
次に、窒化シリコン層52が除去された領域に、酸化ハフニウム膜62を形成する(図11)。酸化ハフニウム膜62は、例えば、ALD法により形成する。酸化ハフニウム膜62は、最終的に強誘電体層18となる。
【0057】
次に、酸化ハフニウム膜62の上に、タングステン膜64を形成する(図12)。タングステン膜64は、例えば、CVD法により形成される。タングステン膜64は、最終的にワード線WLとなる。
【0058】
タングステン膜64の形成後に、結晶化アニールを行う。結晶化アニールにより、酸化ハフニウム膜62のタングステン膜64と窒化チタン膜56に挟まれた領域が強誘電体となる。この領域が、強誘電体領域18aとなる。一方、酸化ハフニウム膜62のタングステン膜64と酸化シリコン層50に挟まれた領域は常誘電体となる。この領域が、常誘電体領域18bとなる。
【0059】
以上の製造方法により、実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイ100が製造される。
【0060】
次に、実施形態の半導体記憶装置の作用及び効果について説明する。
【0061】
MFIS構造やMFMIS構造の1トランジスタ型のメモリセルでは、分極の不安定性に起因する電荷保持特性の劣化が問題になる。この原因は、絶縁層がゲート電極と半導体層との間に存在することにより生ずる減分極電界により、強誘電体層の中で反転できない分極ドメインが残るためと考えられる。強誘電体層の中で反転できない分極ドメインが存在すると、強誘電体層の分極が不安定になり、電荷保持特性が劣化すると考えられる。
【0062】
MFMIS構造は、ゲート電極と半導体層との間には、MFMキャパシタとMISキャパシタが直列に接続した構造である。MFMキャパシタの面積をMISキャパシタの面積よりも小さくすることで、減分極電界を弱め、電荷保持特性を向上させることが可能である。
【0063】
実施形態の半導体記憶装置の場合、ワード線WL/強誘電体層18/金属層16がMFMキャパシタを構成する。また、金属層16/ゲート絶縁層14/半導体層10がMISキャパシタを構成する。
【0064】
実施形態の半導体記憶装置は、ワード線WLのz方向の第1の厚さ(図3中のd1)は、金属層16のz方向の第2の厚さ(図3中のd2)より小さい。したがって、ワード線WL/強誘電体層18/金属層16で構成されるMFMキャパシタの面積が、金属層16/ゲート絶縁層14/半導体層10で構成されるMISキャパシタの面積よりも小さくなる。よって、減分極電界を弱め、電荷保持特性を向上させることが可能となる。
【0065】
更に減分極電界を弱め、電荷保持特性を向上させる観点から、強誘電体層18の抗電界で決まるメモリウィンドウMWvを、強誘電体層18の分極量で決まるメモリウィンドウMWpよりも大きくすることが好ましい。すなわち、MWv≧MWpとすることが好ましい。
【0066】
抗電界で決まるメモリウィンドウMWvは、下記式(1)で表される。また、分極量で決まるメモリウィンドウMWpは、下記式(2)で表される。
【数1】

【数2】
【0067】
式(1)、式(2)において、Ecは抗電界、tFEは強誘電体層の膜厚、Prは残留分極、εは強誘電体層の誘電率、sはMFMキャパシタ面積/MISキャパシタ面積である。実施形態の半導体記憶装置の場合、sはd1/d2で近似できる。
【0068】
図13は、実施形態の半導体記憶装置の作用及び効果の説明図である。図13は、強誘電体層18が酸化ハフニウムの場合にMWv≧MWpを充足する条件を示す。Ec、tFE、Pr、εを網羅的に変化させて、MWv≧MWpを充足する条件を求めた。図13に示すように、ワード線WLのz方向の第1の厚さd1と、金属層16のz方向の第2の厚さd2が下記不等式を満たすことで、MWv≧MWpが充足される。
d2≧d1+10・・・(式)
【0069】
したがって、強誘電体層18が酸化ハフニウムの場合、ワード線WLのz方向の第1の厚さd1と、金属層16のz方向の第2の厚さd2が下記不等式を満たすことが、減分極電界を弱め、電荷保持特性を向上させる観点から好ましい。
d2≧d1+10・・・(式)
【0070】
実施形態の半導体記憶装置では、ゲート絶縁層14が隣り合うメモリセルトランジスタMTの間で分断されることなく設けられる。言い換えれば、金属層16の端部の両側にも、ゲート絶縁層14が存在する。このため、金属層16の端部から回り込む電界により、金属層16/ゲート絶縁層14/半導体層10で構成されるMISキャパシタの面積が実効的に大きくなる。したがって、隣り合うメモリセルトランジスタMTの間でゲート絶縁層14が分断される場合と比較して、MFMキャパシタ面積/MISキャパシタ面積が小さくなる。よって、減分極電界が弱まり、電荷保持特性が向上する。
【0071】
また、金属層16の端部でゲート絶縁層14が加工されていないため、隣り合うメモリセルトランジスタMTの間でゲート絶縁層14が分断される場合と比較して、ゲート絶縁層14の信頼性が向上する。
【0072】
実施形態の半導体記憶装置では、強誘電体層18のワード線WLと層間絶縁層12とに挟まれる領域が、常誘電体の常誘電体領域18bである。同一材料で形成される場合、常誘電体の誘電率は強誘電体の誘電率よりも低い。したがって、ワード線WLと層間絶縁層12とに挟まれる領域が、強誘電体である場合と比較すると、ワード線WL間の容量が低減され、ワード線WLの寄生容量が低減する。したがって、低消費電力かつ高速な半導体記憶装置が実現できる。
【0073】
実施形態の半導体記憶装置において、金属層16のy方向の幅(図3中のw)は、略一定であることが好ましい。ワード線WLの半導体層10の側の端部の第1の方向には、金属層16は存在しないことが好ましい。ワード線WLと層間絶縁層12との間には、金属層16は存在しないことが好ましい。上記構成により、MFMキャパシタ面積/MISキャパシタ面積の増加が抑制される。よって、減分極電界が弱まり、電荷保持特性が向上する。また、ワード線WL間の容量が低減され、ワード線WLの寄生容量が低減する。よって、低消費電力かつ高速な半導体記憶装置が実現できる。
【0074】
以上、実施形態の半導体記憶装置によれば、減分極電界が弱まり、電荷保持特性が向上する。よって、信頼性の向上が可能な半導体記憶装置が実現できる。
【0075】
実施形態では、強誘電体層18が酸化ハフニウムである場合を例に説明したが、強誘電体層18にその他の強誘電体、例えば。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、タンタル酸ビスマスストロンチウム(SBT)、チタン酸バリウム(BTO)、又は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いることも可能である。
【0076】
実施形態では、ワード線WLの間に、層間絶縁層12が設けられる場合を例に説明したが、ワード線WLの間は、例えば、空洞であっても構わない。
【0077】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
10 半導体層
12 層間絶縁層
14 ゲート絶縁層(第1の絶縁層)
16 金属層(導電層)
18 強誘電体層(第2の絶縁層)
18a 強誘電体領域(第1の領域)
18b 常誘電体領域(第2の領域)
30 積層体
WL ワード線(ゲート電極層)
図1
図2
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図13