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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】機械学習装置および機械学習方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4155 20060101AFI20221109BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20221109BHJP
   B24B 27/00 20060101ALN20221109BHJP
   B24B 49/10 20060101ALN20221109BHJP
   B24B 49/16 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
G05B19/4155 V
B25J13/00 Z
B24B27/00 A
B24B49/10
B24B49/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019072018
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2020170391
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】工藤 修司
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-138504(JP,A)
【文献】特開平3-49846(JP,A)
【文献】特開2018-156151(JP,A)
【文献】特開2018-138327(JP,A)
【文献】特開2020-170391(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0057830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4155
B25J 13/00
B24B 27/00
B24B 49/00-49/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨加工装置の研磨加工による加工対象物の表面品質を判定する機械学習装置であって、
少なくとも研磨加工による加工音および前記加工対象物の材質を含む状態情報を取得する状態取得部と、
学習モデルを有し、前記学習モデルを用いて前記状態情報から研磨加工による前記表面品質の良否を判定する判定部と、
オペレータにより入力された研磨加工による前記表面品質の良否を示すラベルを取得するラベル取得部と、
前記状態情報および前記ラベルに基づいて、前記学習モデルを修正する学習部と、
を備える、機械学習装置。
【請求項2】
請求項1に記載の機械学習装置であって、
前記学習モデルは、複数のパラメータを有し、
前記学習部は、複数の前記パラメータを更新することにより前記学習モデルを修正する、機械学習装置。
【請求項3】
請求項2に記載の機械学習装置であって、
前記学習モデルは、ニューラルネットワークである、機械学習装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の機械学習装置であって、
前記状態取得部は、研磨加工により発生する振動、前記研磨加工装置のモータのトルク、および、前記加工対象物に対する前記研磨加工装置の工具の回転速度の少なくとも1つをさらに取得する、機械学習装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の機械学習装置であって、
前記研磨加工装置は多関節ロボットを備え、
前記状態取得部は、前記多関節ロボットのモータのトルク、および、前記多関節ロボットの動作速度の少なくとも1つをさらに取得する、機械学習装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の機械学習装置であって、
前記機械学習装置は、前記研磨加工装置の制御装置に設けられている、機械学習装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の機械学習装置であって、
前記状態取得部は、前記研磨加工装置毎に前記状態情報を取得し、
前記判定部は、複数の前記研磨加工装置の各々に対して、研磨加工による前記表面品質の良否を判定する、機械学習装置。
【請求項8】
請求項7に記載の機械学習装置であって、
前記機械学習装置は、複数の前記研磨加工装置の制御装置のいずれか1つに設けられている、機械学習装置。
【請求項9】
請求項1~5、7のいずれか1項に記載の機械学習装置であって、
前記機械学習装置は、前記研磨加工装置の制御装置とは別の演算装置である、機械学習装置。
【請求項10】
研磨加工装置の研磨加工による加工対象物の表面品質を判定する機械学習方法であって、
少なくとも研磨加工による加工音および前記加工対象物の材質を含む状態情報を取得する状態取得ステップと、
学習モデルを用いて前記状態情報から研磨加工による前記表面品質の良否を判定する判定ステップと、
オペレータにより入力された研磨加工による前記表面品質の良否を示すラベルを取得するラベル取得ステップと、
前記状態情報および前記ラベルに基づいて、前記学習モデルを修正する学習ステップと、
を含む、機械学習方法。
【請求項11】
請求項10に記載の機械学習方法であって、
前記学習モデルは、複数のパラメータを有し、
前記学習ステップは、複数の前記パラメータを更新することにより前記学習モデルを修正する、機械学習方法。
【請求項12】
請求項11に記載の機械学習方法であって、
前記学習モデルは、ニューラルネットワークである、機械学習方法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の機械学習方法であって、
前記状態取得ステップは、研磨加工により発生する振動、前記研磨加工装置のモータのトルク、および、前記加工対象物に対する前記研磨加工装置の工具の回転速度の少なくとも1つをさらに取得する、機械学習方法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の機械学習方法であって、
前記研磨加工装置は多関節ロボットを備え、
前記状態取得ステップは、前記多関節ロボットのモータのトルク、および、前記多関節ロボットの動作速度の少なくとも1つをさらに取得する、機械学習方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項に記載の機械学習方法であって、
前記状態取得ステップは、前記研磨加工装置毎に前記状態情報を取得し、
前記判定ステップは、複数の前記研磨加工装置の各々に対して、研磨加工による前記表面品質の良否を判定する、機械学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨加工装置の研磨加工による加工対象物の表面品質を判定する機械学習装置および機械学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨加工においては、加工対象物の表面品質を目視で判断して、表面品質が不良と判断された場合に、研磨が不十分であることから再加工を行うことが行われている。再加工の実施を防ぐためには、表面品質が良好な品質となることが保証できる研磨深さまで加工対象物に対して研磨加工を行わせる方法がある。しかし、この場合、無駄な研磨加工が実施され過研磨になってしまうおそれがある。下記に示す特許文献1においては、最適な研磨終点を検出するために研磨装置の揺動アームのトルクを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-144227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アームのトルクのみを用いる特許文献1の手法では、研磨加工の良否を適切に判定するには不十分であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、研磨加工による加工対象物の表面品質の良否を適切に判定することができる機械学習装置および機械学習方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、研磨加工装置の研磨加工による加工対象物の表面品質を判定する機械学習装置であって、少なくとも研磨加工による加工音および前記加工対象物の材質を含む状態情報を取得する状態取得部と、学習モデルを有し、前記学習モデルを用いて前記状態情報から研磨加工による前記表面品質の良否を判定する判定部と、オペレータにより入力された研磨加工による前記表面品質の良否を示すラベルを取得するラベル取得部と、前記状態情報および前記ラベルに基づいて、前記学習モデルを修正する学習部と、
を備える。
【0007】
本発明の第2の態様は、研磨加工装置の研磨加工による加工対象物の表面品質を判定する機械学習方法であって、少なくとも研磨加工による加工音および前記加工対象物の材質を含む状態情報を取得する状態取得ステップと、学習モデルを用いて前記状態情報から研磨加工による前記表面品質の良否を判定する判定ステップと、オペレータにより入力された研磨加工による前記表面品質の良否を示すラベルを取得するラベル取得ステップと、前記状態情報および前記ラベルに基づいて、前記学習モデルを修正する学習ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、研磨加工による加工対象物の表面品質の良否を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態における研磨加工装置および機械学習装置の概略構成図である。
図2】ニューラルネットワークの構成を示す図である。
図3】実施の形態における機械学習方法を説明するフローチャートである。
図4】変形例1における研磨加工装置および機械学習装置の概略構成図である。
図5】変形例2における複数の研磨加工装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る機械学習装置および機械学習方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0011】
[実施の形態]
図1は、実施の形態における研磨加工装置10および機械学習装置12の概略構成図である。
【0012】
研磨加工装置10は、研磨加工装置10の本体である多関節ロボット14と、多関節ロボット14を制御する制御装置16と、を備える。加工対象物18はベッド20の上に固定されている。
【0013】
多関節ロボット14は、ベース部24と、アーム26a、26b、26c、26dと、アーム26a、26b、26c、26dを連結する関節28a、28b、28cと、回転可能な研磨用の工具30と、を有する。関節28a、28b、28cは、自己が備えるモータ32により連結するアーム26a、26b、26c、26d同士の相対角度を変化させることができる。各モータ32にはそれぞれ電流検出器34および回転速度検出器(エンコーダ)36が設置され、電流検出器34は当該モータ32の駆動電流を検出し、回転速度検出器36は、当該モータ32の回転速度を検出する。工具30は、アーム26dに取り付けられており、加工対象物18を研磨するためにモータ38により回転駆動される。モータ38には回転速度検出器(エンコーダ)40が設置されている。また、ベース部24には、研磨加工により発生する振動を検出する振動センサ42が設置されている。
【0014】
さらに、研磨加工装置10には、研磨加工による加工音を検出する音センサ44が加工対象物18の傍に設置されている。
【0015】
制御装置16は、CPU等のプロセッサと、メモリとを有し、メモリに記憶されたプログラムを実行することで、本実施の形態の制御装置16として機能する。制御装置16は、多関節ロボット14の電流検出器34および回転速度検出器36、40などから取得したデータに基づいて、工具30を含めた多関節ロボット14の動作を制御する。さらに、制御装置16は、上記メモリ等の記憶部に状態情報を保持している。
【0016】
制御装置16が保持している状態情報は、加工対象物18の材質の情報を含んでいる。さらに、状態情報は、音センサ44、振動センサ42、電流検出器34および回転速度検出器36、40から制御装置16が取得したデータから得られる情報も含んでいる。具体的には、状態情報は、音センサ44が検出した研磨加工による加工音、電流検出器34が検出した電流値から得られるモータ32のトルク、回転速度検出器36が検出した回転速度から得られる多関節ロボット14の動作速度、および、回転速度検出器40の出力から得られる工具30の回転速度を含んでいる。本実施の形態においては、加工対象物18は固定されているとしているので、工具30の回転速度が、そのまま加工対象物18に対する工具30の回転速度になっている。しかし、工具30が固定されていて加工対象物18を回転させる研磨加工においては、状態情報に、加工対象物18に対する工具30の回転速度として、加工対象物18の回転速度を含ませればよい。さらに、状態情報は、多関節ロボット14以外に研磨加工装置10で使用されるモータ、例えばモータ38のトルクを含んでいてもよい。モータ38のトルクは、モータ38に電流検出器を設置すれば取得できる。そして、状態情報は、少なくとも研磨加工による加工音、および加工対象物18の材質を含んでいる。状態情報が多いほど、判定部52による加工対象物18の表面品質の良否判定の精度を高めることができる。
【0017】
機械学習装置12は、研磨加工装置10の研磨加工による加工対象物18の表面品質を判定する。機械学習装置12は、CPU等のプロセッサと、メモリとを有し、メモリに記憶されたプログラムを実行することで、本実施の形態の機械学習装置12として機能する。機械学習装置12は、状態取得部50と、判定部52と、操作部54と、ラベル取得部56と、学習部58と、表示部59とを備える。なお、図1では、機械学習装置12は制御装置16とは別の演算装置であるとして示してあるが、制御装置16に設けられていてもよい。
【0018】
状態取得部50は、制御装置16から状態情報を取得する。なお、状態取得部50は、状態情報の一部を多関節ロボット14から直接取得してもよい。
【0019】
判定部52は、学習モデル60を有しており、学習モデル60を用いて状態情報から研磨加工による加工対象物18の表面品質の良否を判定して、判定結果を表示部59に出力する。表示部59は、判定結果をオペレータに表示する。判定部52が有する学習モデル60は、限定されないが、複数の更新可能なパラメータを有している。学習モデル60については、後で詳述する。
【0020】
操作部54は、研磨加工による加工対象物18の表面品質の良否を判定したオペレータにより入力された表面品質の良否を示すラベルを受け付ける。オペレータは、研磨加工による加工対象物18の表面品質が良好であると判断した場合は「OK(良好)」のラベルを入力し、「OK」のラベルを操作部54が受け付ける。オペレータは、研磨加工による加工対象物18の表面品質が不良であると判断した場合は「NG(不良)」のラベルを入力し、「NG」のラベルを操作部54が受け付ける。
【0021】
ラベル取得部56は、操作部54が受け付けた加工対象物18の表面品質の良否を示すラベル「OK」または「NG」を取得する。
【0022】
学習部58は、状態取得部50が取得した状態情報と、ラベル取得部56が取得したラベルと、に基づいて、学習モデル60を修正する。具体的には、まず、状態情報に基づいて判定部52が学習モデル60を用いて加工対象物18の表面品質の良否を判定して判定結果を表示部59に出力する。学習部58は、判定部52が出力する判定結果が、ラベル取得部56が取得したラベルになるように、学習モデル60が有している複数のパラメータを更新することにより学習モデル60を修正する。
【0023】
以下では、学習モデル60について説明する。図2は、ニューラルネットワーク70の構成を示す図である。本実施の形態では、判定部52が有する学習モデル60はニューラルネットワーク70である。
【0024】
ニューラルネットワーク70は、入力素子Ii(i=1,2,…,n)、中間層素子(ニューロン素子)Mj(j=1,2,…,k)、出力素子O、入力素子と中間層素子との間の重み係数W(Wij(i=1,2,…,n),(j=1,2,…,k))、中間層素子と出力素子Oとの間の重み係数w(wj(j=1,2,…,k))、オフセットθj(j=1,2,…,k)およびオフセットθを有する。ここで、Wijは、入力素子Iiと中間層素子Mjとの間の重み係数であり、wjは、中間層素子Mjと出力素子Oとの間の重み係数である。煩雑になるので、図2では、Wijは一部のみ表記している。図2では、n=6、k=7の場合が示されているが、nおよびkの値はこれらに限定されない。重み係数W、wおよびオフセットθ、θjが学習モデル60の更新可能なパラメータである。
【0025】
入力素子Ii(i=1,2,…,n)のそれぞれへの入力Xi(i=1,2,…,n)に対して、各中間層素子Mj(j=1,2,…,k)は以下の数式(1)に従って出力値Yjを算出して出力する。各中間層素子Mjは、以下の出力値Yj(j=1,2,…,k)を出力する。
【0026】
【数1】
【0027】
ここで、fjは中間層素子Mjの活性化関数であり、通常は、シグモイド関数といった非線形関数が用いられる。そして、出力値Yj(j=1,2,…,k)に基づいて最終的に出力素子Oが出力する出力値Zは、以下の数式(2)に従って計算される。
【0028】
【数2】
【0029】
判定部52が、ニューラルネットワーク70を加工対象物18の表面品質の良否に使用する具体的な方法を以下で説明する。ここでは、n=6として、入力X1、X2、…、X6として状態情報の各々が入力素子Ii(i=1,2,…,6)に入力される。
【0030】
具体的には、入力X1は、研磨加工による加工音の音量または周波数特性を数値化した値であり、入力X2は、加工対象物18の材質の硬度等の物理量を数値化した値であり、入力X3は、研磨加工により発生する振動の大きさまたは周波数特性を数値化した値である。さらに、入力X4は、多関節ロボット14のモータ32のトルクであり、入力X5は、加工対象物18に対する工具30の回転速度であり、入力X6は、多関節ロボット14の動作速度である。入力X4は、いずれか1つのモータ32のトルクであるが、入力素子Iiの数nを増やせば、複数のモータ32、38のトルクを入力することができる。また、nを増やせば、さらに別の状態情報をニューラルネットワーク70に入力することが可能である。ただし、少なくとも加工音および加工対象物18の材質に関する数値はニューラルネットワーク70に入力する。
【0031】
判定部52は、数式(1)および(2)に基づいて算出した出力値Zを閾値により判定し、閾値以上の場合は加工対象物18の表面品質が良好であると判定して「OK」を出力し、閾値未満の場合は加工対象物18の表面品質が不良であると判定して「NG」を出力する。閾値は、0より大きく1より小さい値、例えば0.5などに設定しておく。
【0032】
学習部58による学習が開始される前の初期状態のニューラルネットワーク70においては、パラメータである重み係数W、wおよびオフセットθ、θjの値は未学習の数値、例えば乱数で生成した数値などになっている。したがって、上記状態情報に基づいた、加工対象物18の表面品質についての判定部52が出力する判定結果は正しい結果にはなっていない。
【0033】
学習部58によるニューラルネットワーク70の学習は以下のように実行される。まず、研磨加工装置10による加工対象物18に対する研磨加工を実際に実行して、制御装置16を介して状態取得部50が状態情報を取得し、当該状態情報に基づいて判定部52が「OK」または「NG」を出力する。そして、上記研磨加工による加工対象物18の表面品質のオペレータによる良否判定結果を受け付けた操作部54からラベル取得部56が表面品質の良否を示すラベル「OK」または「NG」を取得する。そして、学習部58は、判定部52が出力する「OK」または「NG」と、ラベル取得部56が取得したラベル「OK」または「NG」とが合致するように、重み係数W、wおよびオフセットθ、θjを更新する。
【0034】
より詳細には、例えば、ラベル取得部56が取得したラベル「OK」を出力素子Oの出力値Zに対する教師データ「1」とし、ラベル取得部56が取得したラベル「NG」を出力素子Oの出力値Zに対する教師データ「0」とする。そして、学習部58は、上記研磨加工による状態情報に基づいた出力値Zの値がそれぞれ教師データの値に近づくように、誤差逆伝搬法などの階層型ニューラルネットワークに対する一般的な学習方法により重み係数W、wおよびオフセットθ、θjを更新してゆく。
【0035】
状態取得部50が取得した状態情報およびラベル取得部56が取得したラベルのセットを数多く用いて、学習部58がパラメータである重み係数W、wおよびオフセットθ、θjを更新するほど、判定部52の判定結果の精度は高くなる。しかし、学習をどこかで一旦停止する場合は、学習回数すなわちパラメータの更新回数に上限を設定したり、オペレータの指示で学習を停止するなどして、何らかの学習終了条件を学習部58に設定しておく。
【0036】
図3は、実施の形態における機械学習方法を説明するフローチャートである。
【0037】
まず、加工対象物18に対して多関節ロボット14が研磨加工を実行する(ステップS1)。
【0038】
そして、状態取得部50は、ステップS1の研磨加工を実行した制御装置16から状態情報を取得する(ステップS2)。
【0039】
次に、ステップS2で取得された状態情報に基づいて、判定部52が、ニューラルネットワーク70を用いて加工対象物18の表面品質の良否を判定し(ステップS3)、判定結果を出力する。
【0040】
さらに、ステップS1の研磨加工による加工対象物18の表面品質をオペレータが良否判定する。そして、オペレータによる判定結果であるラベルを受け付けた操作部54からラベル取得部56が表面品質の良否を示すラベル「OK」または「NG」を取得する(ステップS4)。
【0041】
そして、判定部52が出力した判定結果と、ラベル取得部56が取得したラベルとが合致するように、学習部58は、重み係数W、wおよびオフセットθ、θjを更新することにより学習モデル60(ニューラルネットワーク70)を修正する(ステップS5)。
【0042】
ステップS5の後、学習部58は、学習終了条件を満たすか否かを判定し(ステップS6)、学習終了条件を満たさない場合は(ステップS6:NO)、ステップS1に戻る。学習終了条件を満たす場合は(ステップS6:YES)、学習は終了である。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態の機械学習装置12および機械学習方法は、少なくとも研磨加工による加工音および加工対象物18の材質を含む状態情報に基づいて、機械学習を実行して研磨加工による表面品質の良否を判定する。これにより、研磨加工による加工対象物18の表面品質の良否を適切に判定することができる。
【0044】
なお、上記では、学習モデル60として中間層素子が一層のニューラルネットワーク70を用いて説明したが、中間層素子の層を複数有する多層ニューラルネットワークを使用してもよい。さらに、多層ニューラルネットワークに対してディープラーニングの手法を用いてもかまわない。また、学習モデル60としてニューラルネットワーク以外の学習モデルを使用してもかまわない。
【0045】
[変形例]
上記実施の形態は、以下のように変形してもよい。
【0046】
(変形例1)
図4は、変形例1における研磨加工装置10および機械学習装置12の概略構成図である。図4の研磨加工装置10および機械学習装置12の構成は図1と同様なので詳細は省いてある。変形例1においては、複数の研磨加工装置10が機械学習装置12に接続されている。
【0047】
機械学習装置12の状態取得部50は研磨加工装置10毎に状態情報を取得する。そして、機械学習装置12の判定部52は、複数の研磨加工装置10の各々に対して、研磨加工による表面品質の良否を判定する。
【0048】
複数の研磨加工装置10が全て同じ特性を有しているならば、1つの研磨加工装置10から状態情報を取得して、機械学習装置12の学習部58が学習モデル60の学習を実行する。学習の終了後には、判定部52が有する同一の学習モデル60を用いて、複数の研磨加工装置10の各々に対して、研磨加工による表面品質の良否を判定する。これにより、1つの研磨加工装置10を用いた学習結果を複数の研磨加工装置10で利用することが可能になる。
【0049】
また、複数の研磨加工装置10が全て同じ特性を有しているならば、複数の研磨加工装置10から状態情報を取得して機械学習装置12の学習モデル60の学習を実行してもよい。これにより、数多くの状態情報に基づいて機械学習装置12が学習を実行できるので、機械学習による表面品質の良否の判定精度を高めることが可能になる。
【0050】
(変形例2)
図5は、変形例2における複数の研磨加工装置10の概略構成図である。変形例1では、機械学習装置12は研磨加工装置10の制御装置16とは別の演算装置であるとしたが、変形例2では、変形例1の機械学習装置12が複数の研磨加工装置10の制御装置16のいずれか1つに設けられている。図5に示した1つの研磨加工装置10の制御装置16に設けられた機械学習装置12の状態取得部50は、機械学習装置12が設置されていない他の研磨加工装置10からも状態情報を取得する。そして、機械学習装置12の判定部52は、機械学習装置12が設置されている研磨加工装置10を含む複数の研磨加工装置10の各々に対して、研磨加工による表面品質の良否を判定する。
【0051】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0052】
(第1の発明)
研磨加工装置(10)の研磨加工による加工対象物(18)の表面品質を判定する機械学習装置(12)であって、少なくとも研磨加工による加工音および加工対象物(18)の材質を含む状態情報を取得する状態取得部(50)と、学習モデル(60)を有し、学習モデル(60)を用いて状態情報から研磨加工による表面品質の良否を判定する判定部(52)と、オペレータにより入力された研磨加工による表面品質の良否を示すラベルを取得するラベル取得部(56)と、状態情報およびラベルに基づいて、学習モデル(60)を修正する学習部(58)と、を備える。
【0053】
これにより、研磨加工による加工対象物(18)の表面品質の良否を適切に判定することができる。
【0054】
学習モデル(60)は、複数のパラメータを有してもよい。学習部(58)は、複数のパラメータを更新することにより学習モデル(60)を修正してもよい。
【0055】
学習モデル(60)は、ニューラルネットワーク(70)でもよい。
【0056】
状態取得部(50)は、研磨加工により発生する振動、研磨加工装置(10)のモータ(32、38)のトルク、および、加工対象物(18)に対する研磨加工装置(10)の工具(30)の回転速度の少なくとも1つをさらに取得してもよい。これにより、加工対象物(18)の表面品質の良否判定の精度を高めることができる。
【0057】
研磨加工装置(10)は多関節ロボット(14)を備えてもよい。状態取得部(50)は、多関節ロボット(14)のモータ(32)のトルク、および、多関節ロボット(14)の動作速度の少なくとも1つをさらに取得してもよい。これにより、加工対象物(18)の表面品質の良否判定の精度を高めることができる。
【0058】
機械学習装置(12)は、研磨加工装置(10)の制御装置(16)に設けられていてもよい。
【0059】
状態取得部(50)は、研磨加工装置(10)毎に状態情報を取得してもよい。判定部(52)は、複数の研磨加工装置(10)の各々に対して、研磨加工による表面品質の良否を判定してもよい。これにより、学習結果を複数の研磨加工装置(10)で利用することが可能になる。また、機械学習による表面品質の良否の判定精度を高めることが可能になる。
【0060】
機械学習装置(12)は、複数の研磨加工装置(10)の制御装置(16)のいずれか1つに設けられていてもよい。
【0061】
機械学習装置(12)は、研磨加工装置(10)の制御装置(16)とは別の演算装置でもよい。
【0062】
(第2の発明)
研磨加工装置(10)の研磨加工による加工対象物(18)の表面品質を判定する機械学習方法であって、少なくとも研磨加工による加工音および加工対象物(18)の材質を含む状態情報を取得する状態取得ステップと、学習モデル(60)を用いて状態情報から研磨加工による表面品質の良否を判定する判定ステップと、オペレータにより入力された研磨加工による表面品質の良否を示すラベルを取得するラベル取得ステップと、状態情報およびラベルに基づいて、学習モデル(60)を修正する学習ステップと、を含む。
【0063】
これにより、研磨加工による加工対象物(18)の表面品質の良否を適切に判定することができる。
【0064】
学習モデル(60)は、複数のパラメータを有してもよい。学習ステップは、複数のパラメータを更新することにより学習モデル(60)を修正してもよい。
【0065】
学習モデル(60)は、ニューラルネットワーク(70)でもよい。
【0066】
状態取得ステップは、研磨加工により発生する振動、研磨加工装置(10)のモータ(32、38)のトルク、および、加工対象物(18)に対する研磨加工装置(10)の工具(30)の回転速度の少なくとも1つをさらに取得してもよい。これにより、加工対象物(18)の表面品質の良否判定の精度を高めることができる。
【0067】
研磨加工装置(10)は多関節ロボット(14)を備えてもよい。状態取得ステップは、多関節ロボット(14)のモータ(32)のトルク、および、多関節ロボット(14)の動作速度の少なくとも1つをさらに取得してもよい。これにより、加工対象物(18)の表面品質の良否判定の精度を高めることができる。
【0068】
状態取得ステップは、研磨加工装置(10)毎に状態情報を取得してもよい。判定ステップは、複数の研磨加工装置(10)の各々に対して、研磨加工による表面品質の良否を判定してもよい。これにより、学習結果を複数の研磨加工装置(10)で利用することが可能になる。また、機械学習による表面品質の良否の判定精度を高めることが可能になる。
【符号の説明】
【0069】
10…研磨加工装置 12…機械学習装置
14…多関節ロボット 16…制御装置
18…加工対象物 20…ベッド
24…ベース部 26a、26b、26c、26d…アーム
28a、28b、28c…関節 30…工具
32、38…モータ 34…電流検出器
36、40…回転速度検出器 42…振動センサ
44…音センサ 52…判定部
50…状態取得部 54…操作部
56…ラベル取得部 58…学習部
60…学習モデル 70…ニューラルネットワーク
Ii…入力素子 Mj…中間層素子
O…出力素子
図1
図2
図3
図4
図5