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特許7173929プレートフィン熱交換器の熱交換部及び熱交換システムの製造方法
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  • 特許-プレートフィン熱交換器の熱交換部及び熱交換システムの製造方法 図1
  • 特許-プレートフィン熱交換器の熱交換部及び熱交換システムの製造方法 図2
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  • 特許-プレートフィン熱交換器の熱交換部及び熱交換システムの製造方法 図5
  • 特許-プレートフィン熱交換器の熱交換部及び熱交換システムの製造方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】プレートフィン熱交換器の熱交換部及び熱交換システムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/06 20060101AFI20221109BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20221109BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20221109BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20221109BHJP
   B23K 31/02 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
F28F3/06 A
F28F3/08 301A
F28D9/02
B23K1/00 330J
B23K31/02 310C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019106063
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020200963
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】三橋 顕一郎
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-246472(JP,A)
【文献】国際公開第2008/023732(WO,A1)
【文献】特開2007-183071(JP,A)
【文献】特許第5128544(JP,B2)
【文献】特開2012-255646(JP,A)
【文献】特開2012-159218(JP,A)
【文献】特開2014-040945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/06
F28F 3/08
F28D 9/02
B23K 1/00
B23K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートフィン熱交換器の熱交換部であって、積層方向に間隔をおいて平行に配置される複数の仕切りプレートと、前記複数の仕切りプレートのうち前記積層方向に互いに隣接する仕切りプレート同士の間に配置されて当該仕切りプレートにろう付けされることにより当該仕切りプレート同士の間に前記仕切りプレートと平行な幅方向に並ぶ複数の流体流路を形成する複数のフィンプレートと、前記複数の仕切りプレートのうち前記積層方向に互いに隣接する仕切りプレート同士の間に形成される空間を塞ぐように前記複数のフィンプレートの前記幅方向の両外側に配置される複数の閉塞部材と、を備える熱交換部を製造するための方法であって、
前記複数の仕切りプレート、前記複数のフィンプレート及び前記複数の閉塞部材を用意する用意工程と、
前記複数の仕切りプレートと前記複数のフィンプレートとを交互に前記積層方向に積層するとともに、前記複数のフィンプレートの前記幅方向の両外側にそれぞれ前記閉塞部材を配置することにより、熱交換部組立体を組立てる組立工程と、
前記積層方向が上下方向に合致する姿勢で前記熱交換部組立体を炉の中に入れて加熱することにより前記複数のフィンプレートのそれぞれを当該フィンプレートに隣接する前記仕切りプレートに真空ろう付けによって接合する接合工程と、を含み、
前記組立工程では、前記熱交換部組立体の積層高さが前記炉の許容高さの1/2以下に設定され
前記用意工程で用意される前記複数の仕切りプレートの板厚は、前記流体流路に流される流体の圧力に基づいて算定される理論必要板厚の1.3倍以上に設定される、プレートフィン熱交換器の熱交換部の製造方法。
【請求項2】
複数の熱交換部を備えた熱交換システムを製造するための方法であって、請求項記載のプレートフィン熱交換器の熱交換部の製造方法により前記熱交換システムを構成する複数の熱交換部を製造する工程と、前記熱交換システム全体の処理量が予め設定された必要処理量を満たすように当該熱交換システムを構成する前記熱交換部の個数を決定して当該個数の前記熱交換部を互いに並列に接続する工程と、を含む、熱交換システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレートフィン熱交換器の熱交換部及び当該熱交換部を備えた熱交換システムを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに異なる流体同士の間で熱交換を行わせるための熱交換器として、いわゆるプレートフィン式のものが知られている。例えば特許文献1に記載される熱交換器は、図5及び図6に示されるような熱交換部100を備える。当該熱交換部100は、複数の仕切りプレート102と、複数のフィンプレート104と、複数の閉塞部材106と、を有する。前記複数の仕切りプレート102は、図5及び図6の上下方向に相当する積層方向に互いに間隔をおいて平行に配置される。前記複数のフィンプレート104のそれぞれは波状に形成され、互いに隣接する仕切りプレート102同士の間に配置されて複数の流体流路を形成する。前記複数の閉塞部材106は、前記フィンプレート104の幅方向両外側にそれぞれ配置され、互いに隣接する仕切りプレート102同士の間の空間を前記積層方向と直交する幅方向(図6では左右方向及び奥行方向)の両側の位置で閉塞する。前記複数のフィンプレート104のそれぞれは、前記複数の流体流路内を流れる流体の熱を当該フィンプレート104に隣接する一対の仕切りプレート102にそれぞれ伝熱するように当該仕切りプレート102に例えばろう付けによって接合される。
【0003】
前記熱交換部100では、前記複数のフィンプレート104のうち前記積層方向に互いに隣接するフィンプレート104により形成される流体流路の方向が互いに直交するように、当該複数のフィンプレート104が配置されている。具体的に、上から数えて偶数段に配置されるフィンプレート104は第1の幅方向(図6では左右方向)に並ぶ複数の第1流体流路r1を形成するように配置され、当該フィンプレート104の前記第1の幅方向の両外側にそれぞれ前記閉塞部材106が配置されている。同様に、上から数えて奇数段に配置されるフィンプレート104は前記第1の幅方向と直交する第2の幅方向(図6では奥行方向)に並ぶ複数の第2流体流路r2を形成するように配置され、当該フィンプレート104の前記第2の幅方向の両外側にそれぞれ前記閉塞部材106が配置されている。
【0004】
この熱交換部100において、前記複数の第1流体流路r1に第1の流体が流されると同時に、前記複数の第2流体流路r2に第2の流体が流されることにより、それぞれの仕切りプレート102を媒介としてその上下両側(積層方向の両側)を流れる第1の流体と第2の流体との間の熱交換が行われる。例えば、前記第2の流体の温度が前記第1の流体の温度よりも低い場合、当該第1の流体は当該第2の流体との熱交換によって冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-167580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記熱交換部100と同様の熱交換部を有するプレートフィン熱交換器において、当該熱交換部に流される流体(例えば前記第1の流体または前記第2の流体)の温度又は流量が急激に変動した場合、これに起因する大きな熱変位の差によって前記熱交換部に大きな熱応力が発生し、これにより破損が生じるおそれがあるという課題が存在する。
【0007】
本発明は、このような熱応力を軽減することが可能なプレートフィン熱交換器の熱交換部の製造方法及び当該熱交換部を備えた熱交換システムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく前記熱応力が発生する原因について精査を行い、その結果、当該課題を解決するために次の手段が有効であることを見出すに至った。
【0009】
(A)積層高さの寸法の制限
前記のような熱交換部では、当該熱交換部の部位によって、導入される流体の温度に追従する速度に差があるため、一時的に熱変形量に大きな差が生じ、これにより過大な熱応力が発生する。例えば図5及び図6に示される熱交換部100では、通常、薄肉のフィンプレート104に比べてその幅方向の両側に配置される閉塞部材106の質量が大きいため、当該フィンプレート104が当該閉塞部材106よりも高い速度で熱変形する。従って、熱交換部100を流れる流体の温度によって当該熱交換部100が急激に冷却または加熱されると、一時的にフィンプレート104の熱変形量と閉塞部材106の熱変形量との間に著しい差が生じる。しかも、この熱変形量の差は段数に比例して積算されるため、前記積層方向の中央位置(例えば図6に示される構造では上下方向の中央位置)から離れるに従って前記熱変形量の差は大きくなる。従って、この距離を抑えること、つまり、熱交換部全体の積層方向の寸法である積層高さを抑えること、が熱応力の軽減を可能にする。
【0010】
通常、プレートフィン熱交換器の熱交換部は、例えば図6に示されるように仕切りプレートとフィンプレート及び閉塞部材が交互に積層された状態で専用の炉の中に入れられて加熱されることにより前記フィンプレートと前記仕切りプレートとがろう付けされる。このときの前記熱交換部の積層高さ(積層方向の寸法)は、通常、前記炉の許容高さ(当該炉内に挿入することが可能な前記熱交換部の積層高さの最大寸法)とほぼ同等に設定され、このことが、前記熱交換部をそれぞれ含むプレートフィン熱交換器の必要台数を削減し、経済的な設計を可能にする。しかしながら、前記熱交換部の積層高さを敢えて前記炉の許容高さよりも著しく小さく抑える(具体的には当該許容高さの半分以下にする)ことが、前記の熱応力の軽減を可能にする。
【0011】
(B)熱交換部における密度の均一化
前記のように、複数のフィンプレートと複数の仕切りプレートとが積層方向に交互に配置され、かつ、それぞれのフィンプレートの幅方向の両側に大きな厚さ寸法を有する閉塞部材が配置された熱交換部では、当該熱交換部の幅方向の両外側部分すなわち複数の閉塞部材が積層方向に並ぶ部分と、当該両外側部分に挟まれた内側部分すなわち前記複数のフィンプレートが積層方向に並ぶ部分と、の間で、導入される流体の温度に追従する速度に差が生じる。この温度追従速度の差は、前記両外側部分における密度と前記内側部分における密度との差を小さくすることによって、縮めることが可能である。
【0012】
前記密度差を縮めるには、前記複数の仕切りプレートの板厚を大きくすること、換言すれば、流体を流すための流路である隙間を形成するフィンプレートが占有する空間を相対的に小さくすること、が有効である。すなわち、前記仕切りプレートの実際の板厚を敢えて理論必要板厚よりも著しく大きくする(具体的には当該理論必要板厚の1.3倍以上にする)ことも、熱応力の軽減を可能にする。ここにおいて前記理論必要板厚は、前記フィンプレートが形成する流路に流される流体の圧力により算定される板厚である。
【0013】
本発明は、このような観点からなされたものである。本発明により提供されるのは、プレートフィン熱交換器の熱交換部を製造するための方法であって、前記熱交換部は、積層方向に間隔をおいて平行に配置される複数の仕切りプレートと、前記複数の仕切りプレートのうち前記積層方向に互いに隣接する仕切りプレート同士の間に配置されて当該仕切りプレートにろう付けされることにより当該仕切りプレート同士の間に前記仕切りプレートと平行な幅方向に並ぶ複数の流体流路を形成する複数のフィンプレートと、前記複数の仕切りプレートのうち前記積層方向に互いに隣接する仕切りプレート同士の間に形成される空間を塞ぐように前記複数のフィンプレートの前記幅方向の両外側に配置される複数の閉塞部材と、を備える。前記方法は、前記複数の仕切りプレート、前記複数のフィンプレート及び前記複数の閉塞部材を用意する用意工程と、前記複数の仕切りプレートと前記複数のフィンプレートとを交互に前記積層方向に積層するとともに、前記複数のフィンプレートの前記幅方向の両外側にそれぞれ前記閉塞部材を配置することにより、熱交換部組立体を組立てる組立工程と、前記積層方向が上下方向に合致する姿勢で前記熱交換部組立体を炉の中に入れて加熱することにより前記複数のフィンプレートのそれぞれを当該フィンプレートに隣接する前記仕切りプレートに真空ろう付けによって接合する接合工程と、を含む。
【0014】
この方法の特徴として、前記組立工程では、前記熱交換部組立体の積層高さが前記炉の許容高さの1/2以下に設定される。前記積層高さは、前記熱交換部組立体の前記積層方向の寸法であり、前記炉の許容高さは、当該炉に入れられることが許容される熱交換部組立体の積層高さの最大値である。この特徴は、前記熱交換部組立体の積層高さを敢えて小さくすることにより、前記流体流路に流される流体の温度又は流量の急激な変化に起因して前記積層方向の両端部に発生する大きな熱応力を軽減することを可能にする。
【0015】
前記方法において、前記用意工程で用意される前記複数の仕切りプレートの板厚は、前記流体流路に流される流体の圧力に基づいて算定される理論必要板厚の1.3倍以上に設定されることが、好ましい。このように前記仕切りプレートの板厚を大きくして前記フィンプレートが形成する前記流体流路の占有面積割合を敢えて小さくすることが、前記複数の閉塞部材が前記積層方向に並ぶ両外側部分の密度と、前記両外側部分同士の間の部分であって前記フィンプレートが前記積層方向に並ぶ内側部分の密度と、の差を小さくすることを可能にする。このことは、前記流体流路に流体が流されたときに当該流体の温度に前記両外側部分が追従する速度と前記内側部分が追従する速度との差を小さくし、これにより、当該速度差に起因して発生する大きな熱応力を軽減することを可能にする。
【0016】
また本発明は、複数の熱交換部を備えた熱交換システムを製造するための方法を提供する。この方法は、前記のプレートフィン熱交換器の熱交換部の製造方法により前記熱交換システムを構成するための複数の熱交換部を製造する工程と、前記熱交換システム全体の処理量が予め設定された必要処理量を満たすように当該熱交換システムを構成する前記熱交換部の個数を決定して当該個数の前記熱交換部を互いに並列に接続する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、流体流路を流れる流体の温度又は流量の急激な変動に起因して発生する大きな熱応力を軽減することが可能なプレートフィン熱交換器の熱交換部及び当該熱交換部を備えた熱交換システムを製造するための方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係るプレートフィン熱交換器の斜視図である。
図2】前記プレートフィン熱交換器に含まれる熱交換部の下部を示す一部断面斜視図である。
図3】前記熱交換部の水平面に沿った断面を示す平面図である。
図4】互いに並列に接続された複数のプレートフィン熱交換器を備える熱交換システムの例を示すフローシートである。
図5】従来の熱交換器における熱交換部の分解斜視図である。
図6図5に示される熱交換部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図1図4を参照しながら説明する。
【0020】
図1図3は、本発明に係る製造方法によって製造されることが可能なプレートフィン熱交換器の一例である熱交換器HEを示す。当該熱交換器HEは、第1の流体F1及び第2の流体F2が当該熱交換器HEの内部を流れて互いに熱交換を行うことを可能にする構造を有する。具体的に、前記熱交換器HEは、熱交換部3と、第1入口ヘッダ21と、第1出口ヘッダ22と、第2入口ヘッダ23と、第2入口ヘッダ24と、上側流路形成部25と、下側流路形成部26と、を備え、前記熱交換部3は複数の流体流路30を形成する。当該複数の流体流路30は、前記第1の流体F1が流れる複数の第1流体流路30aと、前記第2の流体F2が流れる複数の第2流体流路30bと、を含む。
【0021】
前記第1入口ヘッダ21は、前記下側流路形成部26の下端に接合され、第1流体供給配管41を通じての第1の流体F1の供給を受け入れて前記複数の第1流体流路30aに分配するための空間を画定する。前記第1出口ヘッダ22は、前記上側流路形成部25の上端に接合され、前記複数の第1流体流路30aから排出される第1の流体F1を受け入れて第1流体排出配管42に導出するための空間を画定する。前記第2入口ヘッダ23は、前記上側流路形成部25の側面上部に接合され、第2流体供給配管43を通じての第2の流体F2の供給を受け入れて前記複数の第2流体流路30bに分配するための空間を画定する。前記第2出口ヘッダ24は、上側流路形成部26の側面のうち前記第2入口ヘッダ23と反対側に位置する側面の下部に接合され、前記複数の第2流体流路30bから排出される第2の流体F2を受け入れて第2流体排出配管44に導出するための空間を画定する。
【0022】
前記熱交換部3は、前記ケーシング2の上下方向の中央部に収容され、前記上側流路形成部25及び前記下側流路形成部26は前記ケーシング2の上部及び下部にそれぞれ収容される。前記上側流路形成部25は、複数の上側流路を形成する。当該複数の上側流路は、前記第2流体供給配管43から前記第2入口ヘッダ23に導入された第2の流体F2を前記複数の第2流体流路30bにそれぞれ分配する複数の第2分配流路と、前記複数の第1流体流路30aから排出される第1の流体F1をそれぞれ前記第1出口ヘッダ22に案内する第1導出流路と、を含む。前記下側流路形成部26は、複数の下側流路を形成する。当該複数の下側流路は、前記第1流体供給配管41から前記第1入口ヘッダ21に導入された第1の流体F1を前記複数の第1流体流路30aにそれぞれ分配する複数の第1分配流路と、前記複数の第2流体流路30bから排出される第2の流体F2をそれぞれ前記第2出口ヘッダ24に案内する第2導出流路と、を含む。
【0023】
このように構成された熱交換器HEにおいて、前記第1流体供給配管41を通じて前記第1入口ヘッダ21に供給される第1の流体F1は前記下側流路形成部26を通じて前記熱交換部3の前記複数の第1流体流路30a内にそれぞれ導入される。当該複数の第1流体流路30aをそれぞれ通過した前記第1の流体F1は、前記上側流路形成部25を通じて前記第1出口ヘッダ22に合流し、前記第1流体排出配管42を通じて排出される。一方、前記第2流体供給配管43を通じて前記第2入口ヘッダ23に供給される第2の流体F2は前記上側流路形成部25を通じて前記熱交換部3の前記複数の第2流体流路30b内にそれぞれ導入される。当該複数の第2流体流路30bをそれぞれ通過した前記第2の流体F2は、前記下側流路形成部26を通じて前記第2出口ヘッダ24に合流し、前記第2流体排出配管44を通じて排出される。
【0024】
前記熱交換部3は、前記複数の第1流体流路30a及び前記複数の第2流体流路30bが所定の積層方向に沿って交互に並ぶように当該第1及び第2流体流路30a,30bを形成し、これにより、当該第1流体流路30aを流れる第1の流体F1と当該第2流体流路30bを流れる第2の流体F2との間の熱交換を可能にする。具体的に、当該熱交換部3は、複数のフィンプレート32と、複数の仕切りプレート33と、複数のサイドバー34と、を含む。前記積層方向は、図1及び図2に示される使用状態ではこれらの図に両矢印ALで示される水平方向と合致するが、後述のように真空ろう付けのための炉に入れられる工程では図3に示されるように上下方向と合致する。
【0025】
前記複数の仕切りプレート33は、矩形状の板材により構成され、前記積層方向に間隔をおいて互いに平行な姿勢で配列されている。前記複数の仕切りプレート33のそれぞれは、第1面及びこれと反対側の第2面を有する平板状をなし、当該第1面と当該第2面との間での熱伝導を可能にする。
【0026】
前記複数のフィンプレート32は、前記複数の仕切りプレート33のうち前記積層方向に互いに隣接する仕切りプレート33同士の間に配置されて当該仕切りプレート33に接合され、これにより、当該仕切りプレート33同士の間に複数の第1流体流路30aまたは複数の第2流体流路30bを形成する。当該複数の第1流体流路30aまたは当該複数の第2流体流路30bは、前記積層方向と直交する幅方向(図2では矢印αにより示される水平方向、図3では左右方向)に並ぶ。具体的に、前記複数のフィンプレート32は、前記アルミニウム合金のように熱伝導が良好な材料により前記積層方向に波を打つ形状に形成された薄板材であり、その波の一方側の頂点部分が所定の仕切りプレート33の第1面にろう付けされ、他方側の頂点部分が前記仕切りプレート33の第1面と対向する仕切りプレート33の第2面にろう付けされる。
【0027】
前記サイドバー34は、前記複数の仕切りプレート33のうち前記積層方向に互いに隣接する仕切りプレート33同士の間に形成される空間を塞ぐように前記複数のフィンプレート32の前記幅方向の両外側に配置される。当該サイドバー34は、前記空間を塞ぐ閉塞部材として機能するとともに、前記積層方向に互いに隣接する仕切りプレート33同士を当該積層方向(図3では上下方向)に接続する接続部材としても機能する。当該サイドバー34は、前記第1及び第2流体流路30a,30bの長手方向と平行な方向(図3では奥行方向)に延びる棒材により構成され、矩形断面を有する。
【0028】
前記複数のフィンプレート32、前記複数の仕切りプレート33及び前記複数のサイドバー34のそれぞれは、熱伝導性の高い金属材料によって構成される。当該金属材料は、例えば、A3003等のアルミニウム合金、チタン、銅、ステンレス鋼である。
【0029】
この実施の形態に係る熱交換部3は一対の外側シート37をさらに含む。当該一対の外側シート37は、前記積層方向について前記熱交換部3の両外側部分をそれぞれ構成し、当該一対の外側シート37の内側に位置する前記複数のフィンプレート32、前記複数の仕切りプレート33及び前記複数のサイドバー34を外力から保護する。
【0030】
図3に示されるように、前記熱交換部3は、前記複数のサイドバー34が前記積層方向に並ぶ両外側部分3aと、当該両外側部分3a同士の間の部分であって前記複数のフィンプレート32が前記積層方向に配列される内側部分3bと、を有し、前記第1及び第2流体流路30a,30bは、前記内側部分3bにおいて前記複数の仕切りプレート33のうち隣接する仕切りプレート33同士の間の空間にそれぞれ形成され、かつ、当該空間内で波を打つ形状の前記フィンプレート32により前記幅方向に互いに区画される。前記第1及び第2流体流路30a,30bは前記積層方向に交互に並ぶように形成され、前記第1流体流路30aを流れる第1の流体F1と前記第2流体流路30bを流れる第2の流体F2との間で前記フィンプレート32及び前記仕切りプレート33での熱伝導を含む熱交換を可能にする。
【0031】
次に、この実施の形態において前記熱交換部3を製造するための方法を説明する。この方法は、以下の用意工程、組立工程及び接合工程を含む。
【0032】
(1)用意工程
この用意工程では、前記熱交換部3を構成する複数の構成部材が用意される。当該複数の構成部材は、この実施の形態では、前記複数の仕切りプレート33、前記複数のフィンプレート32、前記複数のサイドバー34、及び(この実施の形態では)一対の外側シート37を含む。前記複数の構成部材のそれぞれは、前記接合工程での真空ろう付けが可能となるように構成されている。具体的に、当該複数の構成部材のそれぞれは、前記接合工程での真空ろう付けのためのろう付け温度よりも高い融点を有する母材と、当該母材の表面上に積層されて前記ろう付け温度よりも低い融点を有する表面材と、で構成されていることが、好ましい。
【0033】
前記複数の仕切りプレート33の総数及びそれぞれの板厚t33は前記熱交換部3全体の積層高さ(前記積層方向の寸法)h3に直接影響する。また、当該仕切りプレート33の板厚t33は、前記内側部分3bにおいて空間(つまり第1及び第2流体流路30a,30b)を除く部材が占める割合、つまり当該内側部分3bの密度、に直接影響する。当該積層高さh3及び板厚t33については後に詳述する。
【0034】
(2)組立工程
この組立工程では、図3に示されるような姿勢すなわち前記積層方向が上下方向と合致する姿勢で、熱交換部組立体が組立てられる。具体的には、前記複数の仕切りプレート33と前記複数のフィンプレート32とが交互に前記積層方向に積層されるとともに、前記複数のフィンプレート32の前記幅方向(図3では左右方向)の両外側にそれぞれ前記サイドバー34が配置される。好ましくは、前記熱交換部組立体の組立状態を保持するために当該熱交換部組立体の上にウエイトが載せられる。
【0035】
(3)接合工程
この接合工程では、図3に示される姿勢、すなわち前記積層方向が上下方向に合致する姿勢、で前記熱交換部組立体が真空ろう付けのための炉の中に入れられて加熱され、これにより互いに接触する部材が真空ろう付けにより相互に接合される。当該接合は、前記複数のフィンプレート32のそれぞれの頂部とこれに隣接する仕切りプレート33との接合を含む。この接合工程により、前記複数の構成部材は相互に一体化され、前記熱交換部3が完成する。
【0036】
この実施の形態に係る製造方法は、さらに、次の特徴(A)及び特徴(B)を有する。
【0037】
特徴(A):前記組立工程では、前記熱交換部組立体の積層高さh3が前記炉の許容高さの1/2以下に設定される。前記積層高さh3は、前記熱交換部組立体の前記積層方向の寸法(図3では上下方向の寸法)であり、前記炉の許容高さは、当該炉に入れられることが許容される熱交換部組立体の積層高さh3の最大値である。
【0038】
特徴(B):前記用意工程で用意される前記複数の仕切りプレート33の板厚t33は、理論必要板厚toの1.3倍以上に設定される(t33≧1.3to)。前記理論必要板厚toは、前記サイドバー34のそれぞれに対して内側から与えられる流体の圧力に基づき強度的に求められる最低板厚であり、前記圧力は前記第1及び第2流体流路30a,30bに流される前記第1及び第2の流体F1,F2のそれぞれの圧力P1,P2に基づいて算定される。
【0039】
前記特徴(A)及び(B)は、いずれも、前記第1及び第2流体流路30a,30bに流される第1及び第2の流体F1,F2の温度又は流量の急激な変化に起因して前記積層方向についての前記熱交換部3の両端部(以下「積層方向両端部」と称する。)に発生する大きな熱応力を軽減することを可能にするものである。その理由は以下の通りである。
【0040】
前記熱交換器HEに前記第1の流体F1及び前記第2の流体F2が導入される際、これらの流体F1,F2の温度によっては前記複数の構成部材(仕切りプレート33、フィンプレート32、サイドバー34)に著しい熱変形(熱収縮または熱膨張)が生じる可能性がある。このとき、前記複数のサイドバー34が前記積層方向に並ぶ両外側部分3aと、当該両外側部分3aの間に位置する内側部分3bとの間で前記積層方向についての熱変形の速度に大きな差が生じ、これに起因して大きな熱応力が発生する。具体的に、前記内側部分3bでは、構成部材が存在しない空間である第1及び第2流体流路30a,30bが占める割合が大きく、これらを形成する複数のフィンプレート32は薄肉で変形しやすいため、それぞれが高い剛性を有する複数のサイドバー34が前記積層方向に密に並ぶ外側部分3aに比べ、前記内側部分3bがより高い速度で温度変化に追従して前記積層方向に熱変形する。従って、当該内側部分3bとその両外側の外側部分3aとの間には前記積層方向について著しい熱変形量の差が生じる。当該熱変形量の差は、前記仕切りプレート33に前記積層方向の歪み(撓み)を生じさせる。つまり、当該仕切りプレート33に曲げ応力(熱応力)を発生させる。
【0041】
前記熱変形量は、前記積層方向の中央位置(図3では上下方向の中央位置)からの段数の増加とともに蓄積されるため、当該中央位置から離れるに従って当該熱変形量の差が大きくなる。つまり、前記熱変形量の差は前記積層方向についての前記熱交換部3の両端部(図3では上下端部;以下「積層方向両端部」と称する。)において最大となる。従って、前記特徴(A)のように当該熱交換部3の積層高さh3を抑えることが、前記積層方向両端部において最大となる前記熱変形量の差を減少させ、これにより、当該積層方向両端部での過大な熱応力の発生を防ぐことを可能にする。
【0042】
通常、前記熱交換部3の積層高さh3は、前記炉の許容高さを超えない範囲内でなるべく大きな寸法に設定される。例えば、当該許容高さが1400mmである場合、前記積層高さh3は1400mmまたはこれよりも僅かに小さい寸法に設定される。このことは、一つの熱交換部3の処理量を極力大きくして熱交換器HEの必要台数を削減することを可能にする。しかしながら、前記特徴(A)は、これまでの常識を覆して前記積層高さh3を敢えて前記許容高さの1/2以下(例えば700mm)に設定することにより、大きな熱応力が繰り返し生じることによる熱交換器HEの寿命の短縮を抑えることを可能にする。
【0043】
また、前記両外側部分3aの熱変形量と前記内側部分3bの熱変形量との差は、両者の温度追従性に拠るところが大きく、当該温度追従性は両者の密度差にも依存する。従って、当該密度差を小さくすること、具体的には前記特徴(B)のように各仕切りプレート33の板厚t33を大きくして当該仕切りプレート33が前記内側部分3bにおいて占める割合を大きくすること、も熱応力の抑制に効果を有する。
【0044】
通常、前記仕切りプレート33の板厚t33は、前記理論必要板厚toを下回らない範囲内でなるべく小さな寸法に設定される。例えば、前記理論必要板厚toが1.55mmである場合、前記仕切りプレート33の板厚t33は1.55mmよりも僅かに大きい寸法(例えば1.6mm)に設定される。このことは、前記内側部分3bにおいて前記第1及び第2流体流路30a,30bが占める割合を増やして一つの熱交換部3の処理量を増やすことを可能にし、ひいては熱交換器HEの必要台数を削減することを可能にする。しかしながら、前記特徴(B)は、熱交換器自体の経済性を優先せず前記仕切りプレート33の板厚t33を敢えて前記理論必要板厚toの1.3倍以上(例えば2.4mm)に設定することにより、大きな熱応力が繰り返し生じることによる熱交換器HEの寿命の短縮を抑えることを可能にする。
【0045】
以上説明したように、前記特徴(A)及び(B)は、いずれも、一つの熱交換部3の処理可能量を減らして熱交換器HEの必要台数を増やすものであるが、その必要台数の熱交換器HEに対して第1及び第2の流体F1,F2をパラレルに供給することにより、台数を増やして必要処理量を確保することが可能である。例えば、前記炉の許容高さが1400mmであり、熱交換部3の積層高さh3を当該許容高さと略同等に設定したときの熱交換器H1の必要台数が3台である場合において、当該積層高さh3を敢えて700mmに抑えた場合、それぞれが前記熱交換部3を含む熱交換器HEの必要台数は2倍の6台に増えることになるが、その6台の熱交換器HEを相互並列に配置することにより、必要処理量を確保することが可能な熱交換システムを得ることが可能である。つまり、上述の製造方法により複数の熱交換部3を製造する工程と、熱交換システム全体の処理量が予め設定された必要処理量を満たすように前記熱交換部3の個数を決定して当該個数の前記熱交換部3を互いに並列に接続する工程と、を含む方法により、全体として前記必要処理量を満たすことが可能な熱交換システムを製造することが可能である。
【0046】
図4は、このようにして製造される熱交換システムの例を示す。この熱交換システムは、それぞれが前記熱交換部3を含む複数(この例では6個)の熱交換器HEと、前記第1流体供給配管41と、前記第1流体排出配管42と、前記第2流体供給配管43と、前記第2流体排出配管44と、を備える。前記第1流体供給配管41は、第1の流体F1の供給源に接続される第1主供給管41aと、当該第1主供給管41aから分岐して前記熱交換器HEのそれぞれの第1入口ヘッダ21に接続される複数の第1副供給管41bと、を有し、前記第1流体排出配管42は、前記熱交換器HEのそれぞれの第1出口ヘッダ22に接続される複数の第1副排出管42bと、当該複数の第1副排出管42bのそれぞれにつながって前記第1の流体F1を系外に導く第1主排出管42aと、を有する。同様に、前記第2流体供給配管43は、第2の流体F2の供給源に接続される第2主供給管43aと、当該第2主供給管43aから分岐して前記熱交換器HEのそれぞれの第2入口ヘッダ23に接続される複数の第2副供給管43bと、を有し、前記第2流体排出配管44は、前記熱交換器HEのそれぞれの第2出口ヘッダ24に接続される複数の第2副排出管44bと、当該複数の第2副排出管44bのそれぞれにつながって前記第2の流体F2を系外に導く第2主排出管44aと、を有する。
【0047】
なお、本発明において処理されるべき流体は第1及び第2の流体F1,F2に限定されない。本発明は、3種類以上の流体同士の熱交換を可能にする熱交換器の熱交換部の製造にも適用されることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
3 熱交換部
3a 外側部分
3b 内側部分
30 流体流路
30a 第1流体流路
30b 第2流体流路
32 フィンプレート
33 仕切りプレート
34 サイドバー(閉塞部材)
37 外側シート
HE 熱交換器
h3 積層高さ
t33 仕切りプレートの板厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6