(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用添加剤、導電性高分子分散液、電解液及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20221109BHJP
H01G 9/035 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H01G9/028 G
H01G9/035
(21)【出願番号】P 2019534589
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2018029129
(87)【国際公開番号】W WO2019027019
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2017151989
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017152197
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】田邊 史行
(72)【発明者】
【氏名】内橋 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】芝 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝夫
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-017188(JP,A)
【文献】特開2015-010118(JP,A)
【文献】特開2014-101224(JP,A)
【文献】特開2014-041888(JP,A)
【文献】特開2017-115052(JP,A)
【文献】特開平04-229611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層を備える電解コンデンサに用いられる電解コンデンサ用添加剤であって、親水性基を有する重合体(A)を含有し、重合体(A)の親水性基の濃度が重合体(A)の重量に基づき
2~18ミリモル/
gであり、重合体(A)の溶解度パラメーターが12
~20(cal/cm
3)
1/2
であ
り、
重合体(A)が、前記親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を構成モノマーとする重合体であり、
前記親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)が、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー、酸性基を有する(メタ)アクリルモノマー、塩基性基を有する(メタ)アクリルモノマー、及び、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーへのアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテル、からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに付加するアルキレンオキシドが炭素数2~3のアルキレンオキシドであり、
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーが、炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、前記炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのラクトン付加物及び前記炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのアルキレンオキシド付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
酸性基を有する(メタ)アクリルモノマーが、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーへの酸無水物付加物および(メタ)アクリル酸へのラクトン付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
塩基性基を有する(メタ)アクリルモノマーが、炭素数3~20の(メタ)アクリルアミド及び炭素数4~12のアミノアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
重合体(A)を構成する親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)の合計重量の割合が、重合体(A)を構成する全てのモノマーの重量に基づき50~100重量%である電解コンデンサ用添加剤。
【請求項2】
固体電解質層を備える電解コンデンサに用いられる電解コンデンサ用添加剤であって、親水性基を有する重合体(A)を含有し、重合体(A)の親水性基の濃度が重合体(A)の重量に基づき2~18ミリモル/gであり、重合体(A)の溶解度パラメーターが12~20(cal/cm
3
)
1/2
であり、
重合体(A)が、前記親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を構成モノマーとする重合体であり、
前記親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)が、(メタ)アクリル酸と、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーへの酸無水物付加物および(メタ)アクリル酸へのラクトン付加物からなる群から選択される少なくとも1種とであり、
重合体(A)を構成する親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)の合計重量の割合が、重合体(A)を構成する全てのモノマーの重量に基づき50~100重量%である電解コンデンサ用添加剤。
【請求項3】
前記重合体(A)が、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)と、親水性基を有さないエチレン性不飽和モノマーとの共重合体である、請求項1または2に記載の電解コンデンサ用添加剤。
【請求項4】
重合体(A)の数平均分子量が、1,000~500,000である請求項1~
3のいずれか一項に記載の電解コンデンサ用添加剤。
【請求項5】
重合体(A)のガラス転移点が、-100~80℃である請求項1~
4のいずれかに記載の電解コンデンサ用添加剤。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載された電解コンデンサ用添加剤を含有する導電性高分子分散液。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれかに記載された電解コンデンサ用添加剤を含有する電解液。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれかに記載された電解コンデンサ用添加剤を含有する電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用添加剤、導電性高分子分散液、電解液及び電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子製品の小型化に伴い、小型大容量の高周波用コンデンサが求められている。このようなコンデンサとして、等価直列抵抗(以下、ESRと略す)が小さく、周波数特性に優れている電解コンデンサの開発が進められている。電解コンデンサは、アルミニウム及びタンタル等からなる陽極箔と、陽極箔上に形成された酸化アルミニウム及び酸化タンタル等の誘電体層と、陰極箔とを含む。中でも、誘電体層上に陰極材として導電性高分子を含む固体電解質層が形成された電解コンデンサは、固体電解コンデンサとよばれている。
【0003】
固体電解コンデンサは導電性高分子を用いるため、電解液を用いた電解コンデンサよりも低いESRを達成できる。
しかし、固体電解コンデンサは、電解液のような誘電体の修復を担う物質を含まないため、漏れ電流が大きく、耐電圧も低いことから、保障電圧を高くすることができないという問題点があった。
【0004】
この問題点を解決するため、特許文献1では誘電体表面をポリビニルアルコールで覆うことで漏れ電流を抑えようとする技術が開示されている。また、特許文献2ではアクリル酸及びビニルフェノール等の共重合体を固体電解質層に導入することで耐電圧を向上させられる技術が開示されている。しかし、これらの技術では、漏れ電流の低減も、耐電圧向上効果も十分ではなかった。
【0005】
また、AV機器や自動車電装機器においては、高信頼化の要求がますます高まっている。そのため、固体電解コンデンサにおいても低ESR化といった性能に加え、低漏れ電流、耐ショート性能の向上が必要になってきている。
こうした要望に対し、電解質材料としてポリピロール、ポリアニリン及びポリチオフェン等の導電性ポリマーといった固体電解質以外に、誘電体である陽極酸化皮膜の欠陥部の修復作用に優れた電解液を合わせて用いる、いわゆるハイブリッド型電解コンデンサが提案されている(例えば、特許文献3、4)。
【0006】
これらのハイブリッド型電解コンデンサは、導電性ポリマーの固体電解質の隙間に電解液が入り込み、誘電体酸化皮膜と電解質との接触度合が向上する。そのため、静電容量が増大し、ESRが低減すると共に、電解液の作用により、誘電体酸化皮膜の欠陥部の修復ができ、漏れ電流も小さく、ショートを抑制できる。
しかし、従来のハイブリッド型電解コンデンサでは、漏れ電流の抑制、特に高温環境下における漏れ電流の抑制が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-102255号公報
【文献】国際公開第2015/133121号
【文献】特開平11-186110号公報
【文献】特開2014-195116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、固体電解質層を備える電解コンデンサの漏れ電流を低減させ、耐電圧を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、固体電解質層を備える電解コンデンサに用いられる電解コンデンサ用添加剤であって、親水性基を有する重合体(A)を含有し、重合体(A)の親水性基の濃度が重合体(A)の重量に基づき18ミリモル/g以下であり、重合体(A)の溶解度パラメーターが12(cal/cm3)1/2以上である電解コンデンサ用添加剤である。また本発明は、前記の電解コンデンサ用添加剤を含有する導電性高分子分散液、前記の電解コンデンサ用添加剤を含有する電解液、及び前記の電解コンデンサ用添加剤を含有する電解コンデンサである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば漏れ電流が少なく、耐電圧に優れた電解コンデンサ用添加剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の電解コンデンサ用添加剤は、固体電解質層を備える電解コンデンサに用いられる電解コンデンサ用添加剤であって、親水性基を有する重合体(A)を含有し、重合体(A)の親水性基の濃度が重合体(A)の重量に基づき18ミリモル/g以下であり、重合体(A)の溶解度パラメーターが12(cal/cm3)1/2以上である電解コンデンサ用添加剤である。
【0012】
まず、前記の親水性基を有する重合体(A)について説明する。
前記の親水性基とは、特に限定されないが、例えば水酸基、酸性基、塩基性基及び炭素数2~3のオキシアルキレン基とすることができる。酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等が挙げられる。塩基性基としてはアミノ基、アンモニウム基等が挙げられる。炭素数2~3のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基及び1,2-又は1,3-オキシプロピレン基が挙げられる。
これらの親水基のうち、漏れ電流の観点から好ましくは水酸基及び酸性基であり、更に好ましくは水酸基である。
【0013】
親水性基を有する重合体(A)の親水性基の濃度は、重合体(A)の重量に基づき18ミリモル/g以下である。その上限について、好ましくは、13ミリモル/gであり、更に好ましくは10ミリモル/gであり、その下限について、好ましくは2ミリモル/gであり、更に好ましくは4ミリモル/gである。重合体(A)の親水性基の濃度が、18ミリモル/gを超えると分子間力が強くなり低温で析出するため、コンデンサの低温特性が悪化するという問題がある。
重合体(A)の親水性基の濃度は、構成モノマーの選択、重量比率で調整することができる。
重合体(A)の親水性基の濃度は、重合体(A)1g中に含有される前記親水性基の物質量(モル数)で定義される。重合体(A)の親水性基の濃度は、以下の方法で測定した。
【0014】
親水性基が水酸基である場合、重合体(A)の親水性基の濃度は、JIS K 0700:1992記載の方法で水酸基価を求め、以下の計算式によって算出される値である。
重合体(A)の親水性基の濃度(ミリモル/g)
=水酸基価(mgKOH/g)/56.1
【0015】
親水性基が酸性基である場合、重合体(A)の親水性基の濃度は、JIS K 0700:1992記載の方法で酸価を求め、以下の計算式によって算出される値である。
重合体(A)の親水性基の濃度(ミリモル/g)
=酸価(mgKOH/g)/56.1
【0016】
親水性基が塩基である場合、重合体(A)の親水性基の濃度は、JIS K 2501:2003記載の方法で塩基価を求め、以下の計算式によって算出される値である。
重合体(A)の親水性基の濃度(ミリモル/g)=塩基価/56.1
【0017】
親水性基が炭素数2~3のオキシアルキレン基である場合、重合体(A)の親水性基の濃度は以下の方法によって求めることができる。
重合体(A)を1モル/l水酸化ナトリウム水溶液中で100℃、2時間加水分解させ、オキシアルキレン基を含有するセグメントを重合体より分離した溶液を得る。この溶液をガスクロマトグラフィー質量分析法によって分析することで、オキシアルキレン基を含有するセグメントに含まれる構成単位の分子量及び構成単位中のオキシアルキレン基付加モル数を測定できる。以下の計算式で親水性基濃度を算出できる。
重合体(A)の親水性基の濃度(ミリモル/g)
=構成単位中のオキシアルキレン基付加モル数/構成単位の分子量
【0018】
重合体(A)の溶解度パラメーター(以下、SP値と略記する)は、12(cal/cm3)1/2以上である。好ましくは、12~20(cal/cm3)1/2であり、更に好ましくは12~17(cal/cm3)1/2である。重合体(A)のSP値が、12(cal/cm3)1/2未満であると酸化皮膜との親和性が低いため、耐電圧が低下するという問題がある。
重合体(A)のSP値は、構成モノマーのSP値、モル分率を適宜調整することにより調整することができる。重合体(A)のSP値を大きくするためには、構成モノマーとして高極性官能基を有するモノマーを用いればよい。
重合体(A)のSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14、No.2 P.147~154)に記載の方法で算出される値である。
重合体(A)のSP値は、重合体(A)を構成するモノマーそれぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれのモノマーのSP値を、構成モノマー単位のモル分率に基づいて平均した値である。
【0019】
前記の親水性基を有する重合体(A)は、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を構成単量体とする重合体であることが好ましい。
親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)としては、水酸基、酸性基、塩基性基及び炭素数2~3のオキシアルキレン基からなる群から少なくとも1種の基を有するエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。
【0020】
前記の親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)としては、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマー、親水性基を有するビニルモノマー、親水性基を有するスチレンモノマー等が挙げられる。
なお、本出願において、「(メタ)アクリル」の表記はアクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」の表記はアクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリロイロキシ」の表記はアクリロイロキシ及び/又はメタクリロイロキシを意味する。
【0021】
親水性基として水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)としては、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー、水酸基を有するビニルモノマー、水酸基を有するスチレンモノマー等が挙げられる。
【0022】
親水性基として水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのラクトン付加物、及び、前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0023】
前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4~12のモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、炭素数4~12のジヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び炭素数4~12のトリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
炭素数4~12のモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート及び8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
炭素数4~12のジヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
炭素数4~12のトリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールモノアクリレート等が挙げられる。
【0024】
前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに付加するラクトンとしては、炭素数2~12のラクトンが好ましく、アセトラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン及びラウロラクトン等が挙げられる。
前記のラクトンの付加モル数としては、1~15モルであることが好ましく、更に好ましくは1~5モルである。付加するラクトンは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのラクトン1~15モル付加物としては、6-ヒドロキシヘキサン酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、5-ヒドロキシドデカン酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのカプロラクトン5モル付加物等が挙げられる。
【0025】
前記の炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに付加するアルキレンオキシドとしては、炭素数2~10のアルキレンオキシドが好ましく、エチレンオキシド、1,2-又は1,3-プロピレンオキシド、1,2-、1,3-、1,4-又は2,3-ブチレンオキシド、3-メチルテトラヒドロフラン、1,2-デセンオキシド、スチレンオキシド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等が挙げられる。
前記のアルキレンオキシドの付加モル数としては、1~40モルであることが好ましい。付加するアルキレンオキシドは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへのアルキレンオキシド付加物としては、(メタ)アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(10-ヒドロキシデトキシ)エチル及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのエチレンオキシド30モル付加物等が挙げられる。
【0026】
親水性基として水酸基を有するビニルモノマーとしては、ビニルアルコール、アリルアルコール、4-ビニルオキシブタノール、4-ビニルオキシブタノール、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオール等が挙げられる。
【0027】
親水性基として水酸基を有するスチレンモノマーとしては、シンナミルアルコール、4-ヒドロキシベンザルアセトン等が挙げられる。
【0028】
親水性基として酸性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)としては、酸性基を有する(メタ)アクリルモノマー、酸性基を有するビニルモノマー、酸性基を有するスチレンモノマー等が挙げられる。
【0029】
親水性基として酸性基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、
カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー;
スルホ基を有する(メタ)アクリルモノマー;及び
ホスホ基を有する(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。
カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーへの酸無水物付加物、(メタ)アクリル酸へのラクトン付加物及び(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーへの酸無水物付加物としては、コハク酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル及びヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸へのラクトン付加物としては、2-((メタ)アクリロイロキシ)エタン酸、3-((メタ)アクリロイロキシ)プロパン酸、4-((メタ)アクリロイロキシ)ブタン酸、5-((メタ)アクリロイロキシ)ペンタン酸、6-((メタ)アクリロイロキシ)ヘキサン酸及び(メタ)アクリル酸へのカプロラクトン5モル付加物等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーへの酸無水物付加物の酸無水物としては、炭素数4~10の酸無水物が好ましい。
(メタ)アクリル酸へのラクトン付加物のラクトンとしては、前記の炭素数2~12のラクトンが好ましい。
(メタ)アクリル酸へのラクトン付加物としては、1~5モル付加物が好ましい。
スルホ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-スルホエチル及び2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
ホスホ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、リン酸2-((メタ)アクリロイロキシ)エチル等が挙げられる。
【0030】
親水性基として酸性基を有するビニルモノマーとしては、3-ペンテン酸、3-ヘキセン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸等が挙げられる。
【0031】
親水性基として酸性基を有するスチレンモノマーとしては、4-ビニル安息香酸、4-スチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0032】
親水性基として塩基性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)としては、塩基性基を有する(メタ)アクリルモノマー、塩基性基を有するビニルモノマー、塩基性基を有するスチレンモノマー等が挙げられる。
【0033】
親水性基として塩基性基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、炭素数3~20の(メタ)アクリルアミド、炭素数4~12のアミノアルキル(メタ)アクリレート及び炭素数4~12のアミノアルキル(メタ)アクリレートの四級アンモニウム塩等が挙げられる。
炭素数3~20の(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジベンジル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
炭素数4~12のアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルが挙げられる。
炭素数4~12のアミノアルキル(メタ)アクリレートの四級アンモニウム塩としては、(メタ)アクリル酸トリメチルエチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0034】
親水性基として塩基性基を有するビニルモノマーとしては、アリルアミン、N,N-ジメチルアリルアミン、N,N-ジエチルアリルアミン等が挙げられる。
【0035】
親水性基として塩基性基を有するスチレンモノマーとしては、4-アミノスチレン等が挙げられる。
【0036】
親水性基として炭素数2~3のオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)としては、炭素数2~3のオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリルモノマー、炭素数2~3のオキシアルキレン基を有するビニルモノマー及び炭素数2~3のオキシアルキレン基を有するスチレンモノマー等が挙げられる。
【0037】
親水性基として炭素数2~3のオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、水酸基を有する(メタ)アクリレートへのアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテル等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートへのアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテルのアルキレンオキシドの炭素数は、2~3である。
水酸基を有する(メタ)アクリレートへのアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテルのアルキルとしては、炭素数1~8のアルキルが好ましく、メチル、エチル、プロピル及びオクチル等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートへのアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテルとしては、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2-(2-オクトキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
【0038】
親水性基として炭素数2~3のオキシアルキレン基を有するビニルモノマーとしては、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
及び炭素数2~3のオキシアルキレン基を有するスチレンモノマーとしては、シンナミルアルコールの炭素数2~3のオキシアルキレン付加物及び4-ヒドロキシベンザルアセトンの炭素数2~3のオキシアルキレン付加物等が挙げられる。
【0040】
これらの親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)の内、耐電圧向上の観点から好ましいのは、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマーであり、更に好ましいのは、炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び炭素数4~12のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートへの無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸付加物であり、特に好ましいのは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート及びコハク酸2-(メタ)アクリロイロキシエチルである。
親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記の親水性基を有する重合体(A)は、前記の親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)と、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)以外のモノマー(親水性基を有さないエチレン性不飽和モノマー等)との共重合体であってもよい。
前記の親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)以外のモノマーの内、共重合性及び溶剤への溶解性の観点から好ましいものとしては、炭素数4~20のアルキル(メタ)アクリレート;炭素数8~20のスチレン化合物;炭素数3~20のアリル化合物及び酢酸ビニル等が挙げられ、更に好ましいのは、炭素数4~20のアルキル(メタ)アクリレートであり、特に好ましいのは、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルである。
炭素数4~20のアルキル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル及び(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。
炭素数8~20のスチレン化合物としては、スチレン及びパラメチルスチレン等が挙げられる。
炭素数3~20のアリル化合物としては、アリルメチルエーテル及びアリルブチルエーテル等が挙げられる。
これらの親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)以外のモノマーは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明における親水性基を有する重合体(A)のガラス転移点(以下、Tgと略記する)は、耐電圧の観点から、好ましくは-100~80℃であり、より好ましくは-100~40℃であり、更に好ましくは-100~20℃であり、特に好ましくは-100~5℃であり、最も好ましくは-100~0℃である。
本発明のTgは、示差走査熱量測定装置[セイコーインスツル(株)製の「DSC20」及び「SSC/580」等]を用いて「ASTM D3418-82」に準拠した方法で測定することができる。
【0043】
Tgを前記の範囲内にすることで、耐電圧が向上するメカニズムとしては以下のことが想定される。
Tgが前記の範囲内である親水性基を有する重合体(A)は、比較的柔軟性が高く、誘電体に存在する欠陥部へ浸透しやすくなるため、修復性が高まり、結果として漏れ電流が小さくなり耐電圧が高くなる。
【0044】
前記の親水性基を有する重合体(A)の数平均分子量(以降、Mnと略記する)は、耐電圧の観点から、1,000~500,000であることが好ましく、更に好ましくは2,000~200,000であり、特に好ましくは3,000~50,000であり、最も好ましくは3,000~30,000である。
【0045】
本発明における親水性基を有する重合体(A)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以降GPCと略記)を用いて以下の条件で測定する。
装置(一例) : 東ソー(株)製HLC-8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本〔東ソー(株)製〕
測定温度: 40℃
試料溶液: 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量: 100μl
検出装置: 屈折率検出器
基準物質: 東ソー(株)製標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(重量平均分子量: 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
【0046】
前記親水性基を有する重合体(A)を構成する親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)の重量割合は、耐電圧を向上させる観点から、前記親水性基を有する重合体(A)を構成する全てのモノマーの重量を基準として50~100重量%であることが好ましく、更に好ましくは、60~100重量%である。
前記親水性基を有する重合体(A)を構成する前記の必須構成モノマー以外のモノマーの重量割合は、耐電圧を向上させる観点から、前記親水性基を有する重合体(A)を構成する全てのモノマーの重量を基準として50重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、40重量%以下である。
【0047】
前記親水性基を有する重合体(A)は、前記の親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)と、必要に応じて親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)以外のモノマーを公知の方法で重合することで製造することができる。
例えば、前記親水性基を有する重合体(A)は、親水性基を有する(メタ)アクリルモノマー等の親水性基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を公知の方法(特開平5-117330号公報等に記載の方法等)で重合することで製造することができる。
また、重合の際に、重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
また、前記のビニルアルコールを構成モノマーとする重合体(A)は、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化を公知の方法で実施することで製造できる。
ポリ酢酸ビニルの部分ケン化体は、公知の方法で製造するほか、ゴーセネックスLL[日本合成化学工業(株)製]として、市場から入手することもできる。
【0048】
本発明の電解コンデンサ用添加剤は、親水性基を有する重合体(A)以外の成分を含んでいてもよく、重合体(A)以外の成分としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤等が挙げられる。
【0049】
酸化防止剤としては、リン酸化防止剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、チオエーテル酸化防止剤などが挙げられる。
リン酸化防止剤としては、2,2-メチレンビス(4,6-ジt-ブチルフェニル)オクチルホスファイト(旭電化社製;商品名:アデカスタブHP-10)、トリス(2,4-ジt-ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名:IRUGAFOS168)などが挙げられる。
ヒンダードフェノール酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1076)などが挙げられる。
【0050】
熱劣化防止剤としては、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4-ジ-t-アミル-6-(3’,5’-ジ-t-アミル-2’-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが挙げられる。
【0051】
本発明の電解コンデンサ用添加剤において、電解コンデンサ用添加剤の合計重量に対する親水性基を有する重合体(A)の重量割合は、耐電圧向上の観点から、好ましくは80~100重量%であり、更に好ましくは90~100重量%であり、特に好ましくは96~100重量%である。
本発明の電解コンデンサ用添加剤が前記の酸化防止剤を含有する場合、電解コンデンサ用添加剤の合計重量に対する前記の酸化防止剤の重量割合は、0.01~10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1~5重量%であり、特に好ましくは0.5~2重量%である。
本発明の電解コンデンサ用添加剤が前記の熱劣化防止剤を含有する場合、電解コンデンサ用添加剤の合計重量に対する前記の熱劣化防止剤の重量割合は、0.01~10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1~5重量%であり、特に好ましくは0.5~2重量%である。
【0052】
本発明の導電性高分子分散液は、電解コンデンサ用添加剤を含有する導電性高分子分散液である。導電性高分子分散液は、電解コンデンサ用添加剤以外に、溶剤(B)及び導電性高分子(C)を含有することが好ましい。
【0053】
溶剤(B)としては、水及び有機溶剤等が挙げられる。
有機溶剤としては、アルコール溶剤、アミド溶剤、エーテル溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、ニトリル溶剤、スルホキシド溶剤、スルホン溶剤等が挙げられる。これら有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルコール溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、モノブチルエーテル及びポリエチレングリコール(Mn:600以下)等が挙げられる。
アミド溶剤としては、N-メチルホルムアミド及びN,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
エーテル溶剤としては、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
ケトン溶剤としては、2-ブタノン、アセトン等が挙げられる。
エステル溶剤としては、酢酸エチル、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びδ-バレロラクトン等が挙げられる。
ニトリル溶剤としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル及びベンゾニトリル等が挙げられる。
スルホキシド溶剤としては、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド及びジエチルスルホキシド等が挙げられる。
スルホン溶剤としては、スルホラン、エチルメチルスルホン等が挙げられる。
これらの溶剤(B)の内、重合体(A)の溶解性の観点から好ましいのは、水、アルコール溶剤、スルホキシド溶剤及びスルホン溶剤であり、更に好ましいのは水、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びジメチルスルホキシドである。
溶剤(B)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0054】
導電性高分子(C)は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子で導電性を示す高分子である。導電性を示し本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール導電性高分子、ポリチオフェン導電性高分子、ポリアセチレン導電性高分子、ポリフェニレン導電性高分子、ポリフェニレンビニレン導電性高分子、ポリアニリン導電性高分子、ポリアセン導電性高分子、ポリチオフェンビニレン導電性高分子及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0055】
ポリチオフェン導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)等が挙げられる。
【0056】
ポリピロール導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)等が挙げられる。
【0057】
ポリアニリン導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0058】
これらの導電性高分子のうち、空気中での安定性及び耐熱性の観点からは、好ましくはポリピロール導電性高分子、ポリチオフェン導電性高分子及びポリアニリン導電性高分子であり、更に好ましくはポリチオフェン導電性高分子であり、導電性の観点から、特に好ましくはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である。
前記導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
前記導電性高分子は導電性向上のために、ドーパントとともに用いることができる。
ドーパントとしては、p-トルエンスルホン酸及びポリスチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0060】
導電性高分子分散液は、電解コンデンサ用添加剤を含む導電性高分子分散液である。電解コンデンサ用添加剤、溶剤(B)及び導電性高分子(C)以外に添加剤(D)を含んでいてもよい。
添加剤(D)としては、ポリエーテル及び界面活性剤等が挙げられる。電導度の観点から好ましくはポリエーテルであり、成膜性の観点から好ましくは界面活性剤である。
【0061】
ポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール[商品名「PEG-400」、三洋化成工業(株)製、Mn=400]、ポリエチレングリコール[商品名「PEG-600」、三洋化成工業(株)製、Mn=600]等が挙げられる。
【0062】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及びカチオン界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤のうち、保存安定性の観点からノニオン界面活性剤が好ましい。
【0063】
本発明の導電性高分子分散液において、導電性高分子分散液の重量に対する電解コンデンサ用添加剤の重量割合は、コンデンサ素子への含浸性の観点から0.1~30重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5~25重量%であり、特に好ましくは1~20重量%である。
本発明の電解液において、導電性高分子分散液の重量に対する溶剤(B)の重量割合は、導電性高分子の分散性の観点から50~99重量%であることが好ましく、更に好ましくは60~99重量%であり、特に好ましくは70~99重量%である。
本発明の導電性高分子分散液において、導電性高分子分散液の重量に対する導電性高分子(C)の重量割合は、導電性高分子の分散性の観点から0.5~10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.8~5重量%である。
本発明の電解液において、導電性高分子分散液の重量に対する前記の添加剤(G)の重量割合は、導電性高分子分散液への溶解度の観点から0.01~5重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.05~2重量%である。
【0064】
本発明の導電性高分子分散液は、例えば、重合体(A)及び導電性高分子(C)を溶剤(B)に分散させた分散液並びに必要に応じて添加剤(D)を、20~80℃の温度範囲で、公知の機械的混合方法(例えばメカニカルスターラーやマグネティックスターラーを用いる方法)を用いることによって均一混合することで、製造することができる。
【0065】
本発明の電解液は、電解コンデンサ用添加剤を含有する電解液である。電解液は、電解コンデンサ用添加剤以外に、前記の溶剤(B)を含有する。必要により、電解質(F)その他の添加剤(G)を添加することができる。
電解液として用いる溶剤(B)の内、重合体(A)の溶解性の観点から好ましいのは、水、アルコール溶剤、エステル溶剤、スルホキシド溶剤及びスルホン溶剤であり、更に好ましいのは水、エチレングリコール、γ-ブチロラクトン及びスルホランである。
溶剤(B)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0066】
本発明の電解液が含有する電解質(F)は、カチオン成分(F1)とアニオン成分(F2)とで構成され、カチオン成分(F1)としては、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、1-メチルイミダゾール、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム及び1-エチル-3-メチルイミダゾリニウム等が挙げられ、中でもアンモニア、ジメチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンが好ましく、更に好ましいのはジメチルエチルアミンである。
一方、アニオン成分(F2)としてはアジピン酸、アゼライン酸、1,6-デカンジカルボン酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸、リン酸及びそのエステル化物並びにホウ酸及びそのエステル化物等が挙げられ、中でもフタル酸か好ましい。
電解質(F)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0067】
また、(F1)と(F2)とのモル比は、固体電解質(後述の導電性ポリマー)に取り込まれているドーパントを脱ドープさせないという観点から、(F1)/(F2)が好ましくは0.3~1.0であり、更に好ましくは0.5~1.0である。
【0068】
その他の添加剤(G)としては、ニトロ化合物(o-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール及びp-ニトロフェノール等)、ホウ酸及びポバール等が挙げられる。
【0069】
本発明の電解液において、電解液の重量に対する重合体(A)の重量割合は、コンデンサ素子への含浸性の観点から5~70重量%であることが好ましく、更に好ましくは10~60重量%であり、特に好ましくは20~50重量%である。
本発明の電解液において、電解液の重量に対する溶剤(B)の重量割合は、コンデンサ素子のドライアップ抑制の観点から30~95重量%であることが好ましく、更に好ましくは40~90重量%であり、特に好ましくは40~80重量%である。
本発明の電解液において、電解液の重量に対する電解質(F)の重量割合は、誘電体層の化成性の観点から0~20重量%であることが好ましく、更に好ましくは5~15重量%である。
本発明の電解液において、電解液の重量に対する前記の添加剤(G)の重量割合は、電解液への溶解度の観点から0~5重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1~2重量%である。
【0070】
本発明の電解液は、例えば、重合体(A)及び溶剤(B)並びに必要に応じて電解質(F)及びその他の添加剤(G)を、20~80℃の温度範囲で、公知の機械的混合方法(例えばメカニカルスターラーやマグネティックスターラーを用いる方法)を用いることによって均一混合することで、製造することができる。
【0071】
本発明の電解コンデンサは、固体電解質層を備える電解コンデンサであって、電解コンデンサ用添加剤を含有する電解コンデンサである。本発明の電解コンデンサとしては、誘電体層及び固体電解質層を備える陽極箔に対向して、セパレータ(マニラ麻及びクラフト紙等)を介して陰極箔が配置することにより構成されたコンデンサ等が挙げられる。又はハイブリッド型電解コンデンサにおいては、前記の固体電解質の層が、電解コンデンサ用電解液を含有するコンデンサである。
【0072】
前記の陽極箔としては、導電性材料を用いることができる。
前記の導電性材料としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ及びこれらの合金等が挙げられる。
陽極箔は、エッチングにより多孔質化すること等の方法で、表面積を大きくしたものが好ましい。
【0073】
誘電体層は、陽極箔表面を化成処理等により陽極酸化することで形成されるため、陽極箔に用いられる導電性物質の酸化物が挙げられる。
例えば、陽極箔としてアルミニウムを用いた場合、陽極箔の表面に形成される誘電体層は、化成により生成する酸化アルミニウムである。
【0074】
誘電体層表面に形成される固体電解質層は、導電性高分子、ドーパント及び前記親水性基を有する重合体(A)並びに必要により添加剤(D)を含有する層である。
導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)及びポリピロール等が挙げられる。
また、ドーパントとしては、p-トルエンスルホン酸及びポリスチレンスルホン酸(PSS)等が挙げられる。
添加剤(D)としては、ポリエーテル及び界面活性剤等が挙げられる。
ポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール[商品名「PEG-400」、三洋化成工業(株)製、Mn=400]、ポリエチレングリコール[商品名「PEG-600」、三洋化成工業(株)製、Mn=600]等が挙げられる。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及びカチオン界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤のうち、保存安定性の観点からノニオン界面活性剤が好ましい。
【0075】
固体電解質層が含有する親水性基を有する重合体(A)の重量割合は、耐電圧の観点から、固体電解質層の重量を基準として、20~80重量%であることが好ましく、更に好ましくは30~60重量%であり、特に好ましくは40~50重量%である。
【0076】
本発明における固体電解質層は、以下の[I]及び[II]等の方法により形成することができる。
【0077】
[I]
以下の(1)に記載の方法により、固体電解質層を形成させる。
(1)
誘電体層を有する陽極箔を、前記の導電性高分子分散液[前記の親水性基を有する重合体(A)、導電性高分子(C)及びドーパント及び溶剤(B)(水等)を含有する溶液]に含浸し、その後乾燥させる方法によって、固体電解質層を形成させることができる。
【0078】
[I]による固体電解質層形成方法においては、上記の(1)の操作を複数回実施し、固体電解質層を複数層形成させても良い。
また、少なくとも1回上記の(1)の操作を実施するのであれば、(1)の操作に代えて以下の(2)及び/又は(3)の操作を実施してもよい。
また、(1)、(2)及び/又は(3)の操作を複数回実施する場合は、(1)、(2)又は(3)の各操作において、誘電体層を有する陽極箔に代えて、直前に(1)、(2)又は(3)の操作を実施して得た誘電体層及び固体電解質層を有する陽極箔を用いればよい。
(2)
誘電体層を有する陽極箔を、前記の導電性高分子分散液[導電性高分子(C)、ドーパント及び溶剤(B)(水等)を含有する溶液]に含浸し、その後乾燥させる方法によって、固体電解質層を形成させることができる。
また、前記の導電性高分子分散液は、必要により、ホウ酸及びホウ酸エステルを含有していても良い。
(3)
誘電体層を有する陽極箔を、固体電解質組成物[導電性高分子(C)を構成するモノマー(チオフェン、エチレンジオキシチオフェン及びピロール等)及びドーパントの溶液(水溶液等)]と、酸化剤(酸化鉄等)の溶液(水溶液等)とに交互に含浸する方法により、導電性高分子を構成するモノマーを重合させることで、固体電解質層を形成させることができる。
【0079】
[II]
上記の(2)又は(3)のいずれかの操作を最低1回実施し、陽極箔の誘電体層表面に固体電解質層(親水性基を有する重合体(A)を含有しない)を形成させる。
その後、誘電体層及び固体電解質層を有する陽極箔を、前記の親水性基を有する重合体(A)の溶液(水溶液等)に含浸し、その後乾燥させる方法によって、親水性基を有する重合体(A)を含有する固体電解質層を形成させることができる。
また、[II]による固体電解質層形成方法において、(2)及び(3)の操作に代えて、(1)の操作を実施しても良い。
【0080】
陰極箔としては、カーボンペーストと銀ペーストとの積層物及びアルミ箔等が挙げられる。
【0081】
本発明の電解コンデンサは、例えば以下の方法により製造できる。
まず、前記の方法で陽極箔としてのアルミニウムエッチド箔を化成処理し、アルミニウムエッチド箔の表面に誘電体層を形成させ、陽極箔と誘電体層とからなる陽極を作製する。
その後、陽極箔と陰極箔に電極用タブを接続し、セパレータを介して対向させ素子を作製する。そして、切断面や欠損部を修復するためホウ酸アンモニウム水溶液中で前記素子に250Vの電圧で修復化成を行い、コンデンサ素子を作製する。
次に、前記の[I]又は[II]の方法において、コンデンサ素子ごと、前記の導電性高分子分散液、前記の固体電解質組成物及び酸化剤の溶液等に浸すことで、コンデンサ素子中の誘電体層を有する陽極箔について、誘電体層表面に、固体電解質層を形成させる。
以上の方法により、電解コンデンサが作製される。
【0082】
前記の固体電解質としては、ポリチオフェン及びポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン等並びにポリピロール等の導電性ポリマーが挙げられる。
この導電性ポリマーはドーパントが組み込まれており、ドーパントは導電性を発現する役割を担っている。
前記のドーパントとしては、p-トルエンスルホン酸及びポリスチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0083】
陰極箔としては、カーボンペーストと銀ペーストとの積層物及びアルミ箔等が挙げられる。
【0084】
本発明の電解コンデンサの具体的な構成としては、以下の構成が挙げられる。
コンデンサ素子と、一対のリード線と、外装体とを有する。一対のリード線は、それぞれ、コンデンサ素子に接続されている。外装体はリード線を他方の端部を外部に導出するようにして、コンデンサ素子を封入している。
外装体は、筒状のケースと、封口体とで構成されており、このケースには後述の方法で電解液を含有させたコンデンサ素子を収納し、封口体にはリード線をそれぞれ挿通させる貫通孔に通し、ケースの外周面に設けた絞り加工部で圧縮することによって封止する。
【0085】
本発明のコンデンサ素子は、表面に誘電体層を有する陽極箔と、この陽極箔の誘電体層に接触した固体電解質の層とを有する。
陽極箔はアルミニウム箔をエッチング処理により、粗面化し、更にその表面に誘電体層である陽極酸化皮膜を化成処理することによって形成される。
次に、誘電体層を有する陽極箔と陰極箔とセパレータを積層して巻回することでコンデンサ素子(固体電解質の層なし)が構成される。
【0086】
そして、コンデンサ素子(固体電解質の層なし)中の陽極箔と陰極箔との間に、固体電解質の層を作製することで、本発明におけるコンデンサ素子を得ることができる。
固体電解質の層の作製方法としては、以下の(1)及び(2)等が挙げられる。
(1)
コンデンサ素子(固体電解質の層なし)を、前記の固体電解質の分散溶液[固体電解質を溶剤(水等)に分散させた溶液]に含浸し、その後乾燥させる方法によって、コンデンサ素子中の誘電体層表面に、固体電解質の層を形成させることができる。
(2)
コンデンサ素子(固体電解質の層なし)を、固体電解質組成物[固体電解質を構成するモノマー(チオフェン、エチレンジオキシチオフェン及びピロール等)、ドーパント及び溶剤(水等)の混合物]と、酸化剤(酸化鉄等)の溶液(水溶液等)とに交互に含浸する方法により、固体電解質を構成するモノマーを重合させることで、コンデンサ素子中の誘電体層表面に、固体電解質層を形成させることができる。
【0087】
以上のようにして形成されたコンデンサ素子を本発明の電解コンデンサ用電解液に浸し、前記の電解液をコンデンサ素子に真空含浸させることで、コンデンサ素子が備える固体電解質の層の隙間に、本発明の電解コンデンサ用電解液が入り込み、本発明の電解コンデンサが作製される。
【実施例】
【0088】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下において部は重量部を表す。
また、下記の親水性基を有する重合体(A)及び比較用重合体(RA)のMnは、以下の条件のGPCにより測定した。
装置:東ソー(株)製 HLC-8120
カラム:TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量:100μl
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(重量平均分子量: 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
【0089】
また、下記の親水性基を有する重合体(A-1~24)及び比較用重合体(RA-1、2)のTgは、示差走査熱量測定装置[セイコーインスツル(株)製の「DSC20」及び「SSC/580」等]を用いて「ASTM D3418-82」に準拠した方法で測定した。
【0090】
<実施例1:親水性基を有する重合体(A-1)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-1)の作製>
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、トルエン[和光純薬工業(株)製]30重量部、アクリル酸[和光純薬工業(株)製]9.5重量部(132ミリモル(以下、mmolと記載する))及び2-ヒドロキシエチルアクリレート[和光純薬工業(株)製]4.6重量部(40mmol)を投入し、攪拌下で80℃まで加熱した。ここにアゾビスイソブチロニトリル[和光純薬工業(株)製]0.9重量部をトルエン重量5部に溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃を維持したまま、更に3時間攪拌下で加熱した。その後、0.5kPaの減圧下において100℃に加熱することでトルエンを留去し、親水性基を有する高分子重合体(A-1)を合成し、重合体(A-1)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-1)を作製した。重合体(A-1)のMnは5,600であり、Tgは56℃であった。
【0091】
<実施例2:親水性基を有する重合体(A-2)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-2)の作製>
実施例1において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-2)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-2)を作製した。重合体(A-2)のMnは5,300であり、Tgは11℃であった。
【0092】
<実施例3:親水性基を有する重合体(A-3)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-3)の作製>
実施例1において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-3)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-3)を作製した。重合体(A-3)のMnは5,500であり、Tgは4℃であった。
【0093】
<実施例4:親水性基を有する重合体(A-4)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-4)の作製>
実施例1において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-4)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-4)を作製した。重合体(A-4)のMnは6,100であり、Tgは-2℃であった。
【0094】
<実施例5:親水性基を有する重合体(A-5)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-5)の作製>
実施例1において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-5)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-5)を作製した。重合体(A-5)のMnは4,600であり、Tgは-40℃であった。
【0095】
<実施例6:親水性基を有する重合体(A-6)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-6)の作製>
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、トルエン[和光純薬工業(株)製]30重量部及び2-ヒドロキシエチルアクリレート14.1重量部(121mmol)を投入し、攪拌下で80℃まで加熱した。ここにアゾビスイソブチロニトリル[和光純薬工業(株)製]0.9重量部をトルエン5部に溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃を維持したまま、更に3時間攪拌下で加熱した。その後、0.5kPaの減圧下において100℃に加熱することでトルエンを留去し、親水性基を有する重合体(A-6)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-6)を作製した。重合体(A-7)のMnは6,100であり、Tgは-15℃であった。
【0096】
<実施例7:親水性基を有する重合体(A-7)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-7)の作製>
実施例6において、アゾビスイソブチロニトリル0.9重量部を1.8重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-7)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-7)を作製した。重合体(A-7)のMnは2,500であり、Tgは-15℃であった。
【0097】
<実施例8:親水性基を有する重合体(A-8)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-8)の作製>
実施例6において、トルエン30部をメチルエチルケトン[和光純薬工業(株)製]30重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-8)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-8)を作製した。重合体(A-8)のMnは3,100であり、Tgは-15℃であった。
【0098】
<実施例9:親水性基を有する重合体(A-9)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-9)の作製>
実施例6において、アゾビスイソブチロニトリル0.9重量部を0.4重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-9)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-9)を作製した。重合体(A-9)のMnは15,000であり、Tgは-15℃であった。
【0099】
<実施例10:親水性基を有する重合体(A-10)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-10)の作製>
実施例6において、アゾビスイソブチロニトリル0.9重量部を0.2重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-10)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-10)を作製した。重合体(A-10)のMnは36,000であり、Tgは-15℃であった。
【0100】
<実施例11:親水性基を有する重合体(A-11)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-11)の作製>
実施例6において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例6と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-11)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-11)を作製した。重合体(A-11)のMnは5,600であり、Tgは-7℃であった。
【0101】
<実施例12:親水性基を有する重合体(A-12)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-12)の作製>
実施例6において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例6と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-12)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-12)を作製した。重合体(A-12)のMnは6,200であり、Tgは-40℃であった。
【0102】
<実施例13:親水性基を有する重合体(A-13)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-13)の作製>
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、トルエン[和光純薬工業(株)製]30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート12.7重量部(88.2mmol)及びブチルアクリレート1.4重量部(10.9mmol)を投入し、攪拌下で80℃まで加熱した。ここにアゾビスイソブチロニトリル[和光純薬工業(株)製]0.9重量部をトルエン5重量部に溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃を維持したまま、更に3時間攪拌下で加熱した。その後、0.5kPaの減圧下において100℃に加熱することでトルエンを留去し、親水性基を有する高分子重合体(A-13)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-13)を作製した。高分子重合体(A-13)のMnは5,800であり、Tgは-42℃であった。
【0103】
<実施例14:親水性基を有する重合体(A-14)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-14)の作製>
実施例13において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例13と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-14)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-14)を作製た。重合体(A-14)のMnは4,800であり、Tgは-40℃であった。
【0104】
<実施例15:親水性基を有する重合体(A-15)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-15)の作製>
実施例13において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-15)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-15)を作製た。重合体(A-15)のMnは6,300であり、Tgは16℃であった。
【0105】
<実施例16:親水性基を有する重合体(A-16)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-16)の作製>
実施例6において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例6と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-16)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-16)を作製した。重合体(A-16)のMnは5,800であり、Tgは165℃であった。
【0106】
<実施例17:親水性基を有する重合体(A-17)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-17)の作製>
実施例7において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例7と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-17)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-17)を作製した。重合体(A-17)のMnは6,500であり、Tgは-50℃であった。
【0107】
<実施例18:親水性基を有する重合体(A-18)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-18)の作製>
実施例13において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更した以外は実施例13と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-18)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-18)を作製した。重合体(A-18)のMnは4,100であり、Tgは65℃であった。
【0108】
<実施例19:親水性基を有する重合体(A-19)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-19)の作製>
実施例6において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更した以外は実施例6と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-19)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-19)を作製した。重合体(A-19)のMnは7,500であり、Tgは18℃であった。
【0109】
<実施例20:親水性基を有する重合体(A-20)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-20)の作製>
実施例6において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更した以外は実施例6と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-20)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-20)を作製した。重合体(A-20)のMnは3,600であり、Tgは30℃であった。
【0110】
<実施例21:親水性基を有する重合体(A-21)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-21)の作製>
実施例6において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更した以外は実施例6と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-21)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-21)を作製した。重合体(A-21)のMnは4,500であり、Tgは55℃であった。
【0111】
<実施例22:親水性基を有する重合体(A-22)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-22)の作製>
実施例1において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更した以外は実施例1と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-22)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-22)を作製した。重合体(A-22)のMnは4,200であり、Tgは10℃であった。
【0112】
<実施例23:親水性基を有する重合体(A-23)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-23)の作製>
実施例1において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更した以外は実施例1と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-23)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-23)を作製した。重合体(A-23)のMnは6,000であり、Tgは82℃であった。
【0113】
<実施例24:親水性基を有する重合体(A-24)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-24)の作製>
実施例1において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更した以外は実施例1と同様にして行い、親水性基を有する重合体(A-24)を含有する電解コンデンサ用添加剤(P-24)を作製した。重合体(A-24)のMnは6,500であり、Tgは75℃であった。
【0114】
<比較例1:親水性基を有さない重合体(RA-1)を含有する電解コンデンサ用添加剤(RP-2)の作製>
実施例6において、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーを表1に記載のモノマーに変更したこと以外は実施例6と同様にして行い、比較用重合体(RA-1)を含有する電解コンデンサ用添加剤(RP-2)を作製した。重合体(RA-1)のMnは7,500であり、Tgは-70℃であった。
【0115】
親水性基を有するがTgの高い比較用重合体(RA-2)としてポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、JC-25、Tg:80℃)を用いた。
【0116】
上記の重合体(A-1)~(A-24)及び比較用重合体(RA-1)~(RA-2)について、構造、Mn及びTg等を表1にまとめた。なお、組成欄の数値の単位は重量部、カッコ書きの中はミリモルである。
また、使用したモノマーは以下の通りである。
アクリル酸[和光純薬工業(株)製]
メタクリル酸[和光純薬工業(株)製]
コハク酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)[東京化成工業(株)製]
コハク酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)[商品名「ライトエステルHO-MS(N)」、共栄社化学(株)製]
2-ヒドロキシエチルアクリレート[和光純薬工業(株)製]
2-ヒドロキシプロピルアクリレート[東京化成工業(株)製]
4-ヒドロキシブチルアクリレート[商品名「4-HBA」、大阪有機化学工業(株)製]
1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(CHDMMAと略記する)[商品名「ファンクリルFA-610A」、日立化成(株)製]
グリセリンモノアクリレート[商品名「ブレンマーGLM」、日油(株)製]
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMAと略記する)[東京化成工業(株)製]
N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド[東京化成工業(株)製]
アクリルアミド[東京化成工業(株)製]
2-ヒドロキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド2モル付加物(HEA 2EOと略記する)[商品名「ブレンマーAE90」、日油(株)製]
【0117】
【0118】
<実施例25~45及び比較例3~6:導電性高分子分散液の調製>
表2に記載の重量部数の組成で混合し、導電性高分子分散液(Q-1)~(Q-21)及び比較の導電性高分子分散液(RQ-1)~(RQ-4)を調製した。
【0119】
【0120】
表2に記載する化合物としては、以下のものを使用した。
PEDOT/PSS水分散液(以下において、同じものを意味する):ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)にポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープしたものの水分散液、ヘレウス社製、CleviosPH500、PEDOT/PSS水分散液の重量に基づくPEDOT及びPSSの合計重量(PEDOT/PSS濃度):1.4重量%
【0121】
<実施例46~68及び比較例7~10>
以下に記載の方法で、本発明の電解コンデンサ(S-1)~(S-23)及び比較用の電解コンデンサ(RS-1)~(RS-4)を作製した。
【0122】
<実施例46~66及び比較例7~10:固体電解コンデンサの作製1>
誘電体層を有する陽極箔(化成済みアルミ箔:JCC社製、115HC9‐323Vf)と陰極箔(未化成アルミ箔:JCC社製、80LJ11B)に電極用タブを接続し、セパレータとしてクラフト紙を介して対向させ素子を得た。切断面や欠損部を修復するためホウ酸アンモニウム水溶液中で前記素子に250Vの電圧で修復化成を行い、コンデンサ素子を得た。
次にPEDOT/PSS水分散液にコンデンサ素子を含浸し、150℃で30分間乾燥させ、誘電体層表面に固体電解質層を形成した。
続いて表2に記載の実施例25~45及び比較調製例3~7の導電性高分子分散液に含浸し、150℃で30分間乾燥させ、更に固体電解質層を形成した。
最後にコンデンサ素子をケースに格納し、カシメを行うことで、実施例46~66及び比較例7~10の電解コンデンサを得た。
【0123】
<実施例67:固体電解コンデンサの作製2>
誘電体層を有する陽極箔(化成済みアルミ箔:JCC社製、115HC9‐323Vf)と陰極箔(未化成アルミ箔:JCC社製、80LJ11B)に電極用タブを接続し、セパレータとしてクラフト紙を介して対向させ素子を得た。切断面や欠損部を修復するためホウ酸アンモニウム水溶液中で前記素子に250Vの電圧で修復化成を行い、コンデンサ素子を得た。
次に実施例30で調製した導電性高分子分散液(Q-6)にコンデンサ素子を含浸し、150℃で30分間乾燥させ、誘電体層表面に固体電解質層を形成した。
続いてPEDOT/PSS水分散液に含浸し、150℃で30分間乾燥させ、更に固体電解質層を形成した。 最後にコンデンサ素子をケースに格納し、カシメを行うことで、実施例67の固体電解コンデンサを得た。
【0124】
<実施例68:固体電解コンデンサの作製3>
誘電体層を有する陽極箔(化成済みアルミ箔:JCCVf323)と陰極箔(未化成アルミ箔:JCC社製、80LJ11B)に電極用タブを接続し、セパレータとしてクラフト紙を介して対向させ素子を得た。切断面や欠損部を修復するためホウ酸アンモニウム水溶液中で前記素子に120Vの電圧で修復化成を行い、コンデンサ素子を得た。
次に市販のPEDOT/PSS水分散液にコンデンサ素子を含浸し、150℃で30分間乾燥させ、誘電体層表面に固体電解質層を形成した。
また、再度、PEDOT/PSS水分散液に含浸し、150℃で30分間乾燥させ、更に固体電解質層を形成した。
続いて実施例6で製造した親水性基を有する重合体(A-6)の水溶液(固形分濃度:30重量%)に含浸し、150℃で30分間乾燥させた。
最後にコンデンサ素子をケースに格納し、カシメを行うことで、固体電解質層が親水性基を有する重合体1を含有する実施例68の固体電解コンデンサを得た。
【0125】
実施例46~68及び比較例7~10で得た固体電解コンデンサについて、「等価直列抵抗(ESR)」、「漏れ電流」及び「耐電圧」を下記方法で評価した。結果を表3に示す。
【0126】
【0127】
<ESR>
固体電解コンデンサについて、100kHzにおけるESR値を、LCRメーター(日置電機製LCRハイテスタ3532-50)を用いて測定した。
ESR値が低い程、動作の安定性に優れるコンデンサであることを示す。
<漏れ電流>
固体電解コンデンサに20Vの電圧を印可し、60秒後の漏れ電流を測定した。
<耐電圧>
上記の方法で得られた固体電解コンデンサに直流電源装置(高砂製作所製、GP0650-05R)で0.2mAの定電流モードで電圧を印加、自動昇圧し、放電により電圧が急落する直前の電圧を耐電圧とした。
【0128】
本発明の実施例46~68の電解コンデンサは、ESR変化率、漏れ電流及び耐電圧のいずれの項目も良好な結果となった。
一方、比較例7~10の比較用の電解コンデンサは、ESR変化率、漏れ電流及び耐電圧のうち、少なくともいずれか1つの項目が悪化した。
【0129】
<実施例69~80及び比較例11~12:電解液>
重合体(A)及び比較用の重合体(A’-1)、電解質(C)(ジメチルエチルアミン及びフタル酸)、溶媒(B)(エチレングリコール)を表4の配合部数(重量部)に従って混合し、電解液(R-1)~(R-12)及び比較例用の電解液(RR-1)~(RR-2)を作製した。
【0130】
次に、上記の電解液(R-1)~(R-12)及び比較例の電解液(RR-1)~(RR-2)を用いて、電解コンデンサ(S-24)~(S-35)及び比較例の電解コンデンサ(RS-5)~(RS-6)を以下の手順でそれぞれ作製した。
誘電体層を有する陽極箔(化成済みアルミ箔:JCC社製、115HC9‐323Vf)と陰極箔(未化成アルミ箔:JCC社製、80LJ11B)に電極用タブを接続し、セパレータとしてクラフト紙を介して対向させ素子を得た。切断面や欠損部を修復するためホウ酸アンモニウム水溶液中で前記素子に250Vの電圧で修復化成を行い、コンデンサ素子を得た。
次に市販のPEDOT/PSS水分散液にコンデンサ素子を含浸し、150℃で30分間乾燥させた。本操作を3回繰り返し、誘電体層表面に固体電解質層を形成した。
続いて表4に記載の電解液(R-1)~(R-12)及び比較例の電解液(RR-1)~(RR-2)を、それぞれ上記コンデンサ素子に50℃にて、1分間真空含浸(真空度:20mmHg)させた。
最後にコンデンサ素子をケースに格納し、カシメを行うことで、電解コンデンサ(S-24)~(S-35)及び比較例の電解コンデンサ(RS-5)~(RS-6)を得た。
【0131】
作製した電解コンデンサの初期特性と試験後の特性を、以下の方法で測定、評価した。結果を表4に示す。
【0132】
<初期評価>
初期評価として、静電容量、ESR、漏れ電流、耐電圧を計測した。
静電容量は120Hz、ESR値は100kHzで測定し、漏れ電流は定格電圧1分間印加後の値を計測した。
<静電容量>
固体電解コンデンサについて、120Hzにおける静電容量を、LCRメーター(日置電機製LCRハイテスタ3532-50)を用いて測定した。
<ESR>
固体電解コンデンサについて、100kHzにおけるESR値を、LCRメーター(日置電機製LCRハイテスタ3532-50)を用いて測定した。
<漏れ電流>
固体電解コンデンサに20Vの電圧を印可し、60秒後の漏れ電流を測定した。
<耐電圧>
上記の方法で得られた固体電解コンデンサに直流電源装置(高砂製作所製、GP0650-05R)で0.2mAの定電流モードで電圧を印加、自動昇圧し、放電により電圧が急落する直前の電圧を耐電圧とした。
【0133】
<加速試験後の評価>
溶剤(B)の揮発を加速することで加速試験を実施するために、ケースに格納せずにコンデンサ素子を開放した状態で125℃、500時間、恒温槽に放置した後に、初期評価と同様の評価を行った。
また、静電容量及びESRは、初期特性の値に基づく変化率を算出した。
【0134】
【0135】
本発明の実施例69~80の電解コンデンサは、初期特性も良好であり、加速試験でも良好な結果となった。
一方、比較例11及び12の比較用の電解コンデンサは、静電容量の変化率、ESR変化率、漏れ電流の項目で悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の電解コンデンサ用添加剤を含有する固体電解コンデンサは、ESRが低く、漏れ電流が少なく、耐電圧が高いため、高性能が要求される電気製品及び電子製品の部品として好適に使用できる。