(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】C型止め輪取付治具、及びそれを用いたC型止め輪の取付方法
(51)【国際特許分類】
B25B 27/20 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
B25B27/20 B
(21)【出願番号】P 2020003523
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 博康
(72)【発明者】
【氏名】中渡瀬 史旭
(72)【発明者】
【氏名】小山田 正人
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-337842(JP,A)
【文献】特開2001-079781(JP,A)
【文献】実開昭58-154074(JP,U)
【文献】実開昭60-091369(JP,U)
【文献】実開昭61-031670(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型止め輪を軸の軸溝に取り付けるのに用いるC型止め輪取付治具であって、
軸方向の一方側に行くにしたがって拡径するテーパ外周面を有する挿入ガイド部と、
前記挿入ガイド部の全てを収容可能な凹部を有する押込部と、
を備え、
前記押込部の開口側の端面で、前記テーパ外周面を囲むように配置したC型止め輪の端面を押圧することで、前記C型止め輪を前記テーパ外周面の拡径側に前記C型止め輪の内径を広げるように移動させ、
前記凹部の底部には、前記軸方向に延在する貫通孔が設けられ、
使用状態で、前記挿入ガイド部に固定又は係止される基準部、及び前記基準部に繋がって前記貫通孔に収容される収容部を有する連結部を備え、
前記使用状態において、前記押込部を前記収容部でガイドしながら前記連結部において前記貫通孔から突出する突出部の長さが長くなるように前記連結部に対して前記軸方向の一方側に移動させ、
前記挿入ガイド部は、軸方向の一方側のみが開口する内部室を備え、
前記内部室の軸方向の片側を閉鎖するガイド部閉端部を有し、
前記挿入ガイド部は、前記内部室と前記ガイド部閉端部における前記内部室側とは反対側の端面とを連通する閉端部貫通孔を備え、
前記連結部は、連結部紐で構成され、
前記基準部が、
貫通孔を有するブロック状部材を
含み、
前記連結部紐の一端部が、前記ブロック状部材の前記貫通孔の内周面に固着され、
前記連結部紐の一部は、前記閉端部貫通孔内に配置され、
前記ブロック状部材は、前記閉端部貫通孔を通過不可能になっている、
C型止め輪取付治具。
【請求項2】
前記ブロック状部材が、前記ガイド部閉端部の前記内部室側の端面に固着されている、請求項1に記載のC型止め輪取付治具。
【請求項3】
C型止め輪を軸の軸溝に取り付けるのに用いるC型止め輪取付治具であって、
軸方向の一方側に行くにしたがって拡径するテーパ外周面を有する挿入ガイド部と、
前記挿入ガイド部の全てを収容可能な凹部を有する押込部と、
を備え、
前記押込部の開口側の端面で、前記テーパ外周面を囲むように配置したC型止め輪の端面を押圧することで、前記C型止め輪を前記テーパ外周面の拡径側に前記C型止め輪の内径を広げるように移動させ、
前記凹部の底部には、前記軸方向に延在する貫通孔が設けられ、
使用状態で、前記挿入ガイド部に固定又は係止される基準部、及び前記基準部に繋がって前記貫通孔に収容される収容部を有する連結部を備え、
前記使用状態において、前記押込部を前記収容部でガイドしながら前記連結部において前記貫通孔から突出する突出部の長さが長くなるように前記連結部に対して前記軸方向の一方側に移動させ、
前記挿入ガイド部は、軸方向の一方側のみが開口する内部室を備え、
前記内部室の軸方向の片側を閉鎖するガイド部閉端部を有し、
前記挿入ガイド部は、前記内部室と前記ガイド部閉端部における前記内部室側とは反対側の端面とを連通する閉端部貫通孔を備え、
前記連結部は、連結部紐で構成され、
前記連結部紐の一部は、前記閉端部貫通孔内に配置され、
前記連結部紐の一端部にひとつ結びされた部分が存在し、
前記ひとつ結びされた部分が、前記閉端部貫通孔を通過できなくなっている、
C型止め輪取付治具。
【請求項4】
C型止め輪を軸の軸溝に取り付けるのに用いるC型止め輪取付治具であって、
軸方向の一方側に行くにしたがって拡径するテーパ外周面を有する挿入ガイド部と、
前記挿入ガイド部の全てを収容可能な凹部を有する押込部と、
を備え、
前記押込部の開口側の端面で、前記テーパ外周面を囲むように配置したC型止め輪の端面を押圧することで、前記C型止め輪を前記テーパ外周面の拡径側に前記C型止め輪の内径を広げるように移動させ、
前記凹部の底部には、前記軸方向に延在する貫通孔が設けられ、
使用状態で、前記挿入ガイド部に固定又は係止される基準部、及び前記基準部に繋がって前記貫通孔に収容される収容部を有する連結部を備え、
前記使用状態において、前記押込部を前記収容部でガイドしながら前記連結部において前記貫通孔から突出する突出部の長さが長くなるように前記連結部に対して前記軸方向の一方側に移動させ、
前記挿入ガイド部は、軸方向の一方側のみが開口する内部室を備え、
前記内部室の軸方向の片側を閉鎖するガイド部閉端部を有し、
前記挿入ガイド部は、前記内部室と前記ガイド部閉端部における前記内部室側とは反対側の端面とを連通する閉端部貫通孔を備え
前記連結部は、連結部紐で構成され、
前記連結部紐の一部は、前記閉端部貫通孔内に配置され、
前記連結部紐の一端部が前記内部室に固定されている、
C型止め輪取付治具。
【請求項5】
前記挿入ガイド部が前記軸方向のテーパ外周面の大径側にテーパ内周面を有し、
前記テーパ内周面の内径が、前記軸方向の大径側に行くにしたがって大きくなっている、請求項1から4のいずれか1つに記載のC型止め輪取付治具。
【請求項6】
前記凹部が円筒内周面を含み、
前記円筒内周面の内径がaであって、テーパ外周面の最大外径がbであるとき、a>bが成立する、請求項1から5までのいずれか1つに記載のC型止め輪取付治具。
【請求項7】
前記押込部が弾性材料で構成され、
前記テーパ外周面の最大外径がbであって、前記テーパ外周面の最小外径がeであり、前記押込部に外力が付与されていない状態での前記凹部の内径がkであるとき、b>k>eが成立し、
前記押込部において前記凹部を画定している環状部に、周方向に間隔をおいて位置する複数のスリットが設けられ、
前記各スリットは、前記環状部の径方向の両側と前記軸方向の一方側に開口している、請求項1から5のいずれか1つに記載のC型止め輪取付治具。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載のC型止め輪取付治具を用いて前記軸の前記軸溝に前記C型止め輪を取り付けるC型止め輪の取付方法であって、
前記C型止め輪取付治具の前記押込部の開口側の端面で、前記テーパ外周面を囲むように配置した前記C型止め輪の端面を押圧することで、前記C型止め輪を前記テーパ外周面の拡径側に前記C型止め輪の内径を広げるように移動させた後、更に、前記押込部の前記端面で、前記C型止め輪の端面を押圧することで、前記C型止め輪を前記テーパ外周面から前記テーパ外周面に連なるように位置させた前記軸の外周面上に移動させ、更に、前記押込部の前記端面で、前記C型止め輪の端面を押圧することで、前記C型止め輪をその外周面上を前記軸の前記軸溝まで移動させる、C型止め輪の取付方法。
【請求項9】
前記挿入ガイド部の中心軸が前記軸の中心軸と略同一直線上に位置している状態で前記軸に対して前記挿入ガイド部が相対移動不可になるまで前記挿入ガイド部を前記軸に押圧することで、前記軸を前記テーパ外周面に連なるように位置させるようにし、
前記軸が前記テーパ外周面に連なっている状態での、前記挿入ガイド部の大径側の端と前記軸溝との軸方向の距離がfであり、前記挿入ガイド部の前記軸方向の寸法がgであり、前記押込部の前記凹部の前記軸方向の深さがhであるとき、f+g≦hが成立する、請求項8に記載のC型止め輪の取付方法。
【請求項10】
前記軸溝の軸方向の寸法がiであり、前記C型止め輪の軸方向の寸法がjであるとき、h+j<f+g+iが成立する、請求項9に記載のC型止め輪の取付方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか1つに記載のC型止め輪取付治具を用いて軸の軸溝にC型止め輪を取り付けるC型止め輪の取付方法であって、
前記押込部を前記収容部でガイドしながら前記貫通孔から突出する前記突出部の長さが長くなるように前記押込部を前記連結部に対して前記軸方向の一方側に移動させることで前記C型止め輪を前記軸溝側に移動させる、C型止め輪の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、C型止め輪取付治具、及びそれを用いたC型止め輪の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターは、通常、駆動ユニットで駆動側スプロケットを回転させ、ステップが連結されたステップチェーンを駆動側スプロケットと従動側スプロケットの間を循環移動させることによって、ステップを循環移動させる。また、駆動側スプロケットからの動力を手すり駆動装置へ伝達し、移動手すりをステップと同一方向に同一速度で移動させる。また、ステップが循環移動する際、ステップの踏板の両側に設けられた駆動ローラに駆動レール上を走行させ、踏板の両側に設けられた従動ローラに従動レール上を走行させることによって、ステップの所望の姿勢を実現している。エスカレーターでは、特許文献1に記載されているように、ローラを装着する軸における駆動ローラや従動ローラの外側にC型止め輪を配置することによって、当該軸から駆動ローラや従動ローラが脱落することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動ローラや従動ローラが摩耗等で劣化して取替えが必要になった場合には、例えば次の手法でC型止め輪を脱着させる。先ず、ステップの側方に設けられるスカートガードを外したり、
図10に示すように、エスカレーター下方側にある乗場の底板を外すことによって、ローラ11を視認可能な状態にする。その後、
図10に示すように、ローラ11の外側に鏡14を配置して、鏡14を介して
図11に示すローラ11の外側面を視認できる状態にする。
【0005】
その後、鏡14によって軸7に配置されたC型止め輪1の一対の止め輪孔2,2の位置を確認した後、その止め輪孔2,2にスナップリングプライヤ3(
図13参照)の孔差込部6(
図13参照)を差し込む。
【0006】
続いて、スナップリングプライヤ3からの力で一対の止め輪孔2,2間を押し拡げてC型止め輪1を拡径させる。そして、拡径しているC型止め輪1を軸7に設けられた止め輪溝から離脱させ、その後、C型止め輪1を軸7から外側に引き抜く。このようにして、C型止め輪1が軸7から外される。
【0007】
C型止め輪1が取り外される際、C型止め輪1は、拡径された不安定な状態(元の径に戻ろうとする力が掛かった状態)で軸7から外側に引き抜かれる。よって、C型止め輪1が引き抜かれる際、C型止め輪1がスナップリングプライヤから飛び出し易く、飛んでいってしまったC型止め輪1の捜索に時間及び労力を要することがある。
【0008】
更には、この方法では、C型止め輪1の拡径の度合いが保守作業員の感性に委ねられる。その結果、C型止め輪1が広げられすぎて塑性変形すると、C型止め輪1の内径が大きくなってしまい、再度装着した際に軸7との間に遊びが生じたりして、C型止め輪1の十分なローラ脱落防止機能が失われる可能性がある。
【0009】
この問題は、軸7からC型止め輪1を外す際のみならず、駆動ローラや従動ローラを取り換えた後に、C型止め輪1を軸7の止め輪溝に嵌め込む際にも生じる。そのような背景において、軸7の止め輪溝に対するC型止め輪1の嵌め込みを、確実、安全かつ迅速に実行できれば、C型止め輪1の脱着に関し、C型止め輪1の飛び出しのリスクやC型止め輪1の塑性変形のリスクを半分にできるだけでなく、ローラ11の取替作業も短縮でき、大きな意義がある。
【0010】
次に、更により端的かつ分かり易く従来の問題について説明する。
図12は、C型止め輪1の構造を説明する図であり、
図13は、スナップリングプライヤ3を表す図である。また、
図14は、C型止め輪1の使用対象の部材を説明する模式図であり、
図15は、従来のC型止め輪1の取り付け方法を説明する模式図であり、
図16は、従来のC型止め輪1の取り付け方法についての問題的を説明する模式図である。
【0011】
図14を参照して、軸7にローラ11を軸段差部10まで圧入する。その後、
図15に示すように、ローラ11の軸受12が軸7から外れないように軸7の軸溝8にC型止め輪1を保持する。この時、C型止め輪1を取り付けるのに使用するのが
図13に示すスナップリングプライヤ3(
図15も参照)である。
【0012】
詳しくは、
図12に示すC型止め輪1の一対の止め輪孔2に
図13に示すスナップリングプライヤ3の一対の孔差込部6(
図15参照)を挿入し、一対のグリップ4(
図13参照)に力を加える。すると、支点5(
図13参照)を中心として孔差込部6が広がり、それに伴いC型止め輪1の止め輪孔2が矢印A方向(
図12参照)に広がり、C型止め輪1の内径が広くなる。その後、
図15を参照して、スナップリングプライヤ3によりC型止め輪1の内径を軸7の軸径より広げて軸7に挿入し、C型止め輪1が軸溝8の部分まで来たらグリップ4に加えていた力を緩める。これにより、C型止め輪1の弾性力によりC型止め輪1の内径が軸溝8の外径まで小さくなり、C型止め輪1が軸溝8内に保持される。
【0013】
係る背景において、
図16に示すように、エスカレーターの内部で作業する場合は、すぐ近くに壁などがあり作業空間が狭く、作業者はC型止め輪1を取り付ける時にその取り付け部が直視できないことが多い。このような作業環境の場合は鏡14を使い、鏡14に映る状況を見ながら作業者はスナップリングプライヤ3を使用してC型止め輪1を取り付ける。また、カメラで状況を映しその映像を見ながらC型止め輪1の取り付け作業することもある。
【0014】
このような作業環境の場合、作業者は鏡14を見たりカメラ映像を見て作業するためスナップリングプライヤ3の操作方向が逆になったり見えにくかったりしてC型止め輪1の取り付けに時間がかかる。また、軸溝8にC型止め輪1が確実に保持できたか直視できないため、C型止め輪1を手で押して軸溝8に確実に保持できたか確認する必要があり手間がかかる。更に、C型止め輪1を軸7に確実に取り付けようとしてC型止め輪1の止め輪孔2を軸7の軸径より大きく広げすぎて、C型止め輪1の弾性限界を超えて塑性変形させ、C型止め輪1の内径が軸溝8の溝径より大きくなりC型止め輪1の保持力が低下する場合もある。すなわち、軸7にC型止め輪1を取り付ける際に、作業者の技量差により、作業時間が変動したり、C型止め輪1の塑性変形し易さが変動する等、作業効率や取付性能にバラツキが生じるという問題がある。
【0015】
そこで、本開示の目的は、C型止め輪を短時間で取り付け易く、C型止め輪の取付時にC型止め輪が塑性変形することも略防止できるC型止め輪取付治具及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本開示に係るC型止め輪取付治具は、C型止め輪を軸の軸溝に取り付けるのに用いるC型止め輪取付治具であって、軸方向の一方側に行くにしたがって拡径するテーパ外周面を有する挿入ガイド部と、前記挿入ガイド部の全てを収容可能な凹部を有する押込部と、を備え、前記押込部の開口側の端面で、前記テーパ外周面を囲むように配置したC型止め輪の端面を押圧することで、前記C型止め輪を前記テーパ外周面の拡径側に前記C型止め輪の内径を広げるように移動させる。
【0017】
本開示によれば、C型止め輪の取付時にC型止め輪が作業スペースまで飛び出すことを略防止できるので、C型止め輪の捜索に時間を要することがない。更には、作業者の技量に関係なく挿入ガイド部とC型止め輪と押込部を組み合わせて保持した状態で挿入ガイド部を軸の軸端に押し当て、その状態で押込部を押すだけで短時間でC型止め輪を軸溝に挿入できる。また、C型止め輪を作業者が広げることがないため、C型止め輪の塑性変形による保持力低下も防止できる。更には、挿入ガイド部を軸端に当てて押込部を押すという単純な作業のため作業ミスも発生しない。したがって、作業者の技量に無関係に、C型止め輪を短時間で取り付け易く、C型止め輪の取付時にC型止め輪が塑性変形することも略防止できる。
【0018】
また、前記挿入ガイド部が前記軸方向のテーパ外周面の大径側にテーパ内周面を有してもよく、前記テーパ内周面の内径が、前記軸方向の大径側に行くにしたがって大きくなっていてもよい。
【0019】
本構成によれば、挿入ガイド部のテーパ内周面を軸の軸端に押し当てることができる。したがって、軸に対する挿入ガイド部の静止摩擦力を大きくでき、C型止め輪の取付作業中に挿入ガイド部を軸に対して安定に静止させることができる。
【0020】
また、前記凹部の底部には、前記軸方向に延在する貫通孔が設けられてもよく、使用状態で、前記挿入ガイド部に固定又は係止される基準部、及び前記基準部に繋がって前記貫通孔に収容される収容部を有する連結部を備えてもよく、前記使用状態において、前記押込部を前記収容部でガイドしながら前記連結部において前記貫通孔から突出する突出部の長さが長くなるように前記連結部に対して前記軸方向の一方側に移動させてもよい。
【0021】
本構成によれば、押込部を連結部でガイドできるので押込部の姿勢を安定させ易い。したがって、押込部で、C型止め輪を円滑に押圧できて、C型止め輪に効率的に力を付与することができる。
【0022】
また、前記連結部が、前記軸方向に延在する棒部材でもよく、前記棒部材の一方側の端部が、前記挿入ガイド部の前記軸方向の端面における径方向の中央部に固定されていてもよい。
【0023】
本構成によれば、C型止め輪取付治具を片手で操作し易くなる。更には、棒部材が、軸方向に直線状に延在するので、棒部材にガイドされる押込部も軸方向にまっすぐ押すことができるようになり、その結果、C型止め輪をまっすぐ押すことが出来るようになる。よって、C型止め輪を円滑に移動させることができ、作業時間を、短縮することができる。
【0024】
また、前記凹部が円筒内周面を含んでもよく、前記円筒内周面の内径がaであって、テーパ外周面の最大外径がbであるとき、a>bが成立してもよい。
【0025】
本構成によれば、C型止め輪を押込部で挿入ガイド部を超えて軸溝まで押圧することができる。
【0026】
また、前記押込部が弾性材料で構成され、前記テーパ外周面の最大外径がbであって、前記テーパ外周面の最小外径がeであり、前記押込部に外力が付与されていない状態での前記凹部の内径がkであるとき、b>k>eが成立し、前記押込部において前記凹部を画定している環状部に、周方向に間隔をおいて位置する複数のスリットが設けられ、前記各スリットは、前記環状部の径方向の両側と前記軸方向の一方側に開口してもよい。
【0027】
本構成によれば、テーパ外周面に沿って押込部の開口部を広げることができ、C型止め輪の取付の際にC型止め輪の内周側を押すことができる。したがって、C型止め輪の内周側部分の軸方向の変形を抑制できて、C型止め輪を円滑かつ効率的に移動させることができ、C型止め輪の作業効率を高くできる。
【0028】
また、本開示に係るC型止め輪の取付方法は、本開示のC型止め輪取付治具を用いて軸の軸溝にC型止め輪を取り付けるC型止め輪の取付方法であって、前記C型止め輪取付治具の前記押込部の開口側の端面で、前記テーパ外周面を囲むように配置した前記C型止め輪の端面を押圧することで、前記C型止め輪を前記テーパ外周面の拡径側に前記C型止め輪の内径を広げるように移動させた後、更に、前記押込部の前記端面で、前記C型止め輪の端面を押圧することで、前記C型止め輪を前記テーパ外周面から前記テーパ外周面に連なるように位置させた前記軸の外周面上に移動させ、更に、前記押込部の前記端面で、前記C型止め輪の端面を押圧することで、前記C型止め輪をその外周面上を前記軸の前記軸溝まで移動させる。
【0029】
本開示によれば、C型止め輪の取付時にC型止め輪が作業スペースまで飛び出すことを略防止できるので、C型止め輪の捜索に時間を要することがない。更には、作業者の技量に関係なく挿入ガイド部とC型止め輪と押込部を組み合わせて保持した状態で挿入ガイド部を軸の軸端に押し当て、その状態で押込部を押すだけで短時間でC型止め輪を軸溝に挿入できる。また、C型止め輪を作業者が広げることがないため、C型止め輪の塑性変形による保持力低下も防止できる。更には、挿入ガイド部を軸端に当てて押込部を押すという単純な作業のため作業ミスも発生しない。したがって、作業者の技量に無関係に、C型止め輪を短時間で取り付け易く、C型止め輪の取付時にC型止め輪が塑性変形することも略防止できる。
【0030】
また、前記挿入ガイド部の中心軸が前記軸の中心軸と略同一直線上に位置している状態で前記軸に対して前記挿入ガイド部が相対移動不可になるまで前記挿入ガイド部を前記軸に押圧することで、前記軸を前記テーパ外周面に連なるように位置させるようにし、前記軸が前記テーパ外周面に連なっている状態での、前記挿入ガイド部の大径側の端と前記軸溝との軸方向の距離がfであり、前記挿入ガイド部の前記軸方向の寸法がgであり、前記押込部の前記凹部の前記軸方向の深さがhであるとき、f+g≦hが成立してもよい。
【0031】
本構成によれば、押込部でC型止め輪を軸溝まで確実に押し込むことができる。
【0032】
また、前記軸溝の軸方向の寸法がiであって、前記C型止め輪の軸方向の寸法がjであるとき、h+j<f+g+iが成立してもよい。
【0033】
本構成によれば、押込部でC型止め輪を軸溝に押し込んだ後に、押込部がC型止め輪を軸溝の側面に押圧することを防止できる。したがって、C型止め輪がそのような押圧で損傷することを防止できる。
【0034】
また、前記押込部を前記収容部でガイドしながら前記貫通孔から突出する前記突出部の長さが長くなるように前記押込部を前記連結部に対して前記軸方向の一方側に移動させることで前記C型止め輪を前記軸溝側に移動させてもよい。
【0035】
本構成によれば、押込部を連結部でガイドできるので押込部の姿勢を安定させ易い。したがって、押込部で、C型止め輪を円滑に押圧できて、C型止め輪に効率的に力を付与することができ、C型止め輪を軸溝まで円滑に移動させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本開示に係るC型止め輪取付治具及びそれを用いたC型止め輪の取付方法によれば、C型止め輪を短時間で取り付け易く、C型止め輪の取付時にC型止め輪が塑性変形することも略防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本開示の一実施形態に係るC型止め輪取付治具の全体構成図である。
【
図3】上記C型止め輪取付治具の使用方法を説明するための斜視図である。
【
図4】上記C型止め輪取付治具と軸の関係を表す断面図である。
【
図5】C型止め輪を軸溝に取り付けた直後の上記C型止め輪取付治具の状態を示す図である。
【
図6】変形例のC型止め輪取付治具を示す断面図である。
【
図7】他の変形例のC型止め輪取付治具の断面図である。
【
図8】上記他の変形例のC型止め輪取付治具における押込部と挿入ガイド部の斜視図である。
【
図9】上記他の変形例のC型止め輪取付治具における押込部を用いてC型止め輪を押し込んでいる最中のC型止め輪取付治具の一部の断面図である。
【
図10】C型止め輪の止め輪孔にスナップリングプライヤの孔差込部を差し込むためにローラの外側に鏡を配置している状態を示す斜視図である。
【
図11】軸、ローラ及びC型止め輪からなる駆動ローラ脱落防止構造の斜視図である。
【
図14】C型止め輪の使用対象の部材を説明する模式図である。
【
図15】従来のC型止め輪の取り付け方法を説明する模式図である。
【
図16】従来のC型止め輪の取り付け方法についての問題的を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、本明細書で、「略」という文言を用いた場合、「大雑把に言って」という文言と同じ意味合いで用いており、「略~」という要件は、人がだいたい~のように見えれば満たされる。例を挙げれば、略円形という要件は、人がだいたい円形に見えれば満たされる。また、以下で説明する各物理量の単位としては、MKS単位系の単位が統一して採用されてもよく、それ以外の単位系が統一して採用されてもよい。
【0039】
図1は、本開示の一実施形態に係るC型止め輪取付治具15の全体構成図であり、
図2は、C型止め輪取付治具15の断面図である。先ず、
図1及び
図2を用いて、C型止め輪取付治具15の全体構成について説明する。
【0040】
図1に示すように、C型止め輪取付治具15は、挿入ガイド部16と、押込部21と、その間を連結させる連結部26とを備える。挿入ガイド部16、及び押込部21の夫々は、弾性変形しない材質又は弾性変形しにくい材質、例えば、金属、硬い樹脂、又は木材等で構成される。挿入ガイド部16は、ガイド部傾斜面17を有し、ガイド部傾斜面17は、押込部21から離れるにしたがって拡径するテーパ外周面になっている。ガイド部傾斜面17は、例えば、円錐外周面の一部で構成される。
【0041】
図2に示すように、挿入ガイド部16のガイド部閉端部19と、押込部21の押込部開口部23は、ガイド部傾斜面17の軸方向に対向可能になっており、挿入ガイド部16が、押込部開口部23より押込部21の内側に入り込むことが可能な構造となっている。
【0042】
挿入ガイド部16は、軸方向の一方側のみが開口する内部室30を備え、上記ガイド部閉端部19は、内部室30の軸方向の一方側を閉鎖する。また、挿入ガイド部16は、内部室30とガイド部閉端部19における押込部21側の端面19aとを連通する貫通孔31を備える。C型止め輪取付治具15は、基準部の一例としてのガイド部連結固定部20を有する。ガイド部連結固定部20は、内部室30内に位置する。
【0043】
詳しくは、本実施例では、連結部26は、連結部紐27で構成される。ガイド部連結固定部20は、貫通孔を有するブロック状部材を含み、連結部紐27の一端部がブロック状部材の貫通孔の内周面に接着剤等で固着される。ブロック状部材は、貫通孔31を通過不可能になっている。ブロック状部材は、ガイド部閉端部19の内部室30側の端面19bに固着される必要がないが、連結部紐27の一部が、貫通孔31内に収容され、ブロック状部材が、ガイド部閉端部19の内部室30側の端面19bに溶接や接着剤等で固着されると、連結部紐27の取り扱い性が良好なものとなって好ましい。
【0044】
なお、C型止め輪取付治具15は、ガイド部連結固定部20を有さなくてもよく、単に、連結部紐27の一部を貫通孔31内に収容すると共に、連結部紐27の一端部をガイド部閉端部19の内部室30側の端面19bに接着剤で固着する構成でもよい。又は、連結部紐27の一端部は、ガイド部閉端部19の内部室30側の端面19bに固着されていなくてもよく、単に、連結部紐27の一部を貫通孔31内に収容すると共に、連結部紐27の一端部にひとつ結びを形成し、連結部紐27の一端部が貫通孔31を通過できなくしてもよい。
【0045】
連結部紐27の他端は、押込部21の押込部閉端部24の押込部連結ガイド穴25を通過可能になっており、押込部21が連結部26に対して相対移動できるようになっている。詳しくは、本実施例では、押込部21は、円筒部39の軸方向の一方側のみが円板状の押込部閉端部24で塞がれた形状を有する。すなわち、押込部21は、円筒部39と押込部閉端部24で画定された凹部47を有する。また、押込部閉端部24には、軸方向に延在する貫通孔で構成される押込部連結ガイド穴25が設けられる。連結部紐27の他端は、円筒部39の内部を通過した後、押込部連結ガイド穴25も通過可能になっている。連結部紐27の他端は、押込部21に固定されず、押込部21から離脱可能になっている。なお、本開示では、押込部21が円筒部39を有しているが、押込部は、円筒外周面でない外周面を有してもよい。
【0046】
押込部21の円筒部39の円筒内周面39aの内径をa(
図2参照)とし、ガイド部傾斜面17の最大外径をb(
図2参照)とし、軸7における軸溝8よりも先端側に位置する部分の最大外径をc(
図15参照)とし、外力が作用していないC型止め輪1の内径をd(
図12(a)参照)とし、ガイド部傾斜面17の最小外径をe(
図2参照)とするとき、次の式(1)が成立するようになっている。
a>b≧c>d>e・・・(1)
【0047】
図3は、C型止め輪取付治具15の使用方法を説明するための斜視図であり、
図4は、C型止め輪取付治具15と軸7の関係を表す断面図であり、
図5は、C型止め輪1を軸溝8に取り付けた直後のC型止め輪取付治具15の状態を示す図である。次に、C型止め輪取付治具15の使い方を、主に
図3~
図5を用いて説明する。
【0048】
先ず、
図3に示すように、C型止め輪1の内周面が挿入ガイド部16のガイド部傾斜面17における小径側の外周面を取り囲むようにC型止め輪1を配置すると共に、ガイド部連結固定部20を内部室30内に配置し、更に、連結部紐27が、貫通孔31、凹部47、押込部連結ガイド穴25を通過している状態にする。
【0049】
次に、挿入ガイド部16を、
図3に矢印Bに示す方向に移動させ、続いて、
図4に示すように、軸7の軸端9に対向するように挿入ガイド部16のガイド部開口部18を対峙させ、挿入ガイド部16の円錐台内周面30a(
図2参照)を軸端9の円錐台外周面9a(
図3参照)に当接させる。詳しくは、
図2に示すように、挿入ガイド部16は、内部室30の開口側に開口に行くにしたがって拡径するテーパ内周面としての円錐台内周面30aを有し、
図3に示すように、軸端9は、外周側に軸方向の先端側に行くにしたがって小径となる円錐台外周面9aを有する。また、円錐台内周面30aが含まれる円錐外周面の頂角と、円錐台外周面9aが含まれる円錐外周面の頂角は、略一致する。よって、円錐台内周面30aを円錐台外周面9aに当接させることができる。
【0050】
図4を参照して、円錐台内周面30aを円錐台外周面9aに当接させた状態で、挿入ガイド部16の大径側(拡径側)の端と、軸溝との軸方向の距離をfとし、挿入ガイド部16の軸方向の寸法をgとし、押込部21の円筒部39の軸方向の寸法をhとしたとき、次の式(2)が成立するようになっている。
f+g≦h・・・(2)
【0051】
次に、連結部26の他端部を持って押込部21を連結部26に対してC型止め輪1側に矢印C側に移動させ、押込部21の開口側の端面21aをC型止め輪1に押し当てる。これにより、挿入ガイド部16とC型止め輪1と押込部21が一体となる。更に、連結部26の他端部を持って押込部21を連結部26に対してC型止め輪1側に矢印C方向に移動させると、C型止め輪1が押込部21の押込部開口部23の端面21aで軸溝8側に押圧され、軸方向の軸溝8側に移動する。ガイド部傾斜面17の外径は、軸溝8側に行くにしたがって拡径しているので、この移動の際、C型止め輪1は、その周方向の空隙35(
図11参照)が徐々に広がると共に内径が徐々に広がるように変形する。そして、C型止め輪1の内径は、最終的にガイド部傾斜面17の最大外径b(
図2参照)まで広がる。
【0052】
更に、押込部21でC型止め輪1を押圧すると、
図5に示すように、C型止め輪1は、挿入ガイド部16から軸7に遷移して軸7上を軸溝8側に移動する。そして、C型止め輪1が軸溝8に到達すると、C型止め輪1の弾性力によりC型止め輪1の内径が小さくなりC型止め輪1が軸溝8内で保持される。
【0053】
なお、(1)式において、b=c(
図2、
図15参照)、つまり、ガイド部傾斜面17の最大外径が軸7における軸溝8よりも先端側に位置する部分の最大外径をcと同一になっていると、C型止め輪1の弾性変形を最小に抑制できるため、C型止め輪1の塑性変形を防止できて好ましい。
【0054】
更には、
図4を参照して、軸溝8の軸方向の寸法をiとし、
図12(b)を参照して、C型止め輪1の軸方向の寸法をjとしたとき、次の式(3)が成立すると、押込部21が内部に納まった挿入ガイド部16により矢印C方向への移動を制限されて、軸溝8に嵌入した状態のC型止め輪1を更に軸方向に押圧できなくなる。したがって、C型止め輪1が、軸溝8に嵌入した後、軸溝8の一方側の側面に更に押し付けられることがないので、C型止め輪1の破損を防止できて好ましい。
h+j<f+g+i・・・(3)
【0055】
次に、変形例の連結部26について説明する。
図1~
図5では連結部26を連結部紐27で構成した。ここで、連結部紐27を持って、挿入ガイド部16と押込部21の間にC型止め輪1を挿入して、押込部21を挿入ガイド部16側に軸方向に移動させる場合、連結部紐27を持つ必要があるのに加え、押込部21を押し込む必要があるため、両手がふさがることになる。更には、押込部21でC型止め輪1を押圧してC型止め輪1をガイド部傾斜面17に沿って大径側に移動させる場合、C型止め輪1が若干傾く可能性があり、作業者によってはC型止め輪取付治具15をスムーズに操作できない可能性もある。
【0056】
連結部26が連結部紐27でも作業は行うことができる。しかし、本作業を行う狭い作業環境では、片手で操作できる方が作業効率を良くし易い。そこで、
図6、すなわち、変形例のC型止め輪取付治具115を示す断面図に示すように、連結部126を剛体であって軸方向に直線状に延在する棒部材128で構成した上で、棒部材128の軸方向の一方側端部を挿入ガイド部116の軸方向の他方側の端面120における径方向の中央部に固定し、更に、棒部材128の一部を押込部連結ガイド穴125に収容させると共に、棒部材128の軸方向の他方側端部を、押込部連結ガイド穴125から軸方向の他方側に突出させるようにしてもよい。
【0057】
この変形例では、連結部126が挿入ガイド部116と一体に構成される剛体の棒部材128であるので、押込部121の押込部連結ガイド穴125の内面を、棒部材128でガイドできることにより、挿入ガイド部116に対する押込部121の相対位置を安定に制限できて、人が棒部材128を持たずに作業を行うことができ、C型止め輪取付治具115を片手で操作し易くなる。更には、棒部材128が、軸方向に直線状に延在するので、棒部材128にガイドされる押込部121も軸方向にまっすぐ押すことができるようになり、その結果、C型止め輪1をまっすぐ押すことが出来るようになる。よって、C型止め輪1の挙動を安定させることができるので、作業時間を短縮できる。なお、連結部126を棒部材128で構成した場合における押込部121の押込部閉端部124の軸方向の厚さを、連結部26を連結部紐27で構成した場合における押込部21の押込部閉端部24の軸方向の厚さよりも厚くすると、押込部121が棒部材128からの力で破損しにくくなって好ましい。
【0058】
次に、変形例の押込部221について説明する。上述の押込部21の場合、押込部21が、弾性変形しにくい材料で構成されているので、C型止め輪1は、挿入ガイド部16のガイド部傾斜面17に沿って内径が広がっていくが、押込部開口部23の内径a(
図2参照)は変化しない。よって、押込部開口部23の端面は、C型止め輪1の軸方向の移動範囲の大部分において、C型止め輪1の端面の外周側を押圧することになる。しかしながら、本来なら、C型止め輪1においてガイド部傾斜面17と接するC型止め輪1の端面の内周側を押す方が、C型止め輪1の軸方向の内周側の変形を抑制できて、C型止め輪1を円滑かつ効率的に移動させることができる。
【0059】
図7は、そのような押込みを実現可能な押込部221を含む他の変形例のC型止め輪取付治具215の断面図であり、
図8は、そのような押込部221と挿入ガイド部16の斜視図であり、
図9は、そのような押込部221を用いてC型止め輪1を押し込んでいる最中のC型止め輪取付治具215の一部の断面図である。
【0060】
この変形例のC型止め輪取付治具215では、
図2を参照して、挿入ガイド部16の外周面の最大外径をbとし、挿入ガイド部16の外周面の最小外径をeとし、更に、
図7を参照して、押込部21に外力が付与されていない状態での凹部247の円筒内周面239aの内径をkとし、更には、
図12(a)を参照して、C型止め輪1の内径をdとするとき、次の式(4)が成立する。
b>d≧k>e・・・(4)
【0061】
この変形例では、b>kとなっている。したがって、kがbまで広がらないと押込部221でC型止め輪1を押すことができない。このため、
図8に示すように押込部221をゴム材等の弾性材料で構成し、押込部円周面222に周方向に間隔をあけて軸方向に延在するスリット229を複数設けることにより、押込部円周面222を内側から外側に広げることができるようにしている。各スリット229は、軸方向の一方側及び径方向の両側が開口している。これにより、
図9に示すように、ガイド部傾斜面17に沿って押込部開口部223を広げることができ、C型止め輪1の内周側を押すことができる。また、k>eの条件を満足している。したがって、押込部開口部223をガイド部傾斜面17における小径側の端部上に円滑に位置させることができる。
【0062】
以上、C型止め輪取付治具15は、C型止め輪1を軸7の軸溝8に取り付けるのに用いられる。また、C型止め輪取付治具15は、軸方向の一方側に行くにしたがって拡径するガイド部傾斜面(テーパ外周面)17を有する挿入ガイド部16と、挿入ガイド部16の全てを収容可能な凹部47を有する押込部21と、を備える。また、C型止め輪取付治具15では、押込部21の開口側の端面21aで、ガイド部傾斜面17を囲むように配置したC型止め輪1の端面を押圧することで、C型止め輪1をガイド部傾斜面17の拡径側にC型止め輪1の内径を広げるように移動させる。
【0063】
したがって、C型止め輪1の取付時にC型止め輪1が作業スペースまで飛び出すことを略防止できるので、C型止め輪1の捜索に時間を要することがない。更には、作業者の技量に関係なく挿入ガイド部16とC型止め輪1と押込部21を組み合わせて保持した状態で挿入ガイド部16を軸7の軸端9に押し当て、その状態で押込部21を押すだけで短時間でC型止め輪1を軸溝8に挿入できる。また、C型止め輪1を作業者が広げることがないため、C型止め輪1の塑性変形による保持力低下も防止できる。更には、挿入ガイド部16を軸端9に当てて押込部21を押すという単純な作業のため作業ミスも発生しない。したがって、作業者の技量に無関係に、C型止め輪1を短時間で取り付け易く、C型止め輪1の取付時にC型止め輪1が塑性変形することも略防止できる。
【0064】
また、挿入ガイド部16が軸方向のガイド部傾斜面17の大径側に円錐台内周面(テーパ内周面)30aを有してもよく、円錐台内周面30aの内径が、軸方向の大径側に行くにしたがって大きくなっていてもよい。
【0065】
本構成によれば、挿入ガイド部16の円錐台内周面30aを軸7の軸端9に押し当てることができる。したがって、軸7に対する挿入ガイド部16の静止摩擦力を大きくでき、C型止め輪1の取付作業中に挿入ガイド部16を軸に対して安定に静止させることができる。なお、挿入ガイド部は、ガイド部傾斜面の大径側に当該大径側に行くにしたがって拡径するテーパ内周面を有していると好ましいが、テーパ内周面を有さなくてもよい。
【0066】
また、凹部47の底部を構成する押込部閉端部24には、軸方向に延在する押込部連結ガイド穴(貫通孔)25が設けられてもよく、使用状態で、挿入ガイド部16に固定又は係止されるガイド部連結固定部(基準部)20、及びガイド部連結固定部20に繋がって押込部連結ガイド穴25に収容される収容部を有する連結部26を備えてもよい。そして、使用状態において、押込部21を上記収容部でガイドしながら連結部26において押込部連結ガイド穴25から突出する突出部59(
図2参照)の長さが長くなるように押込部21を連結部26に対して軸方向の一方側に移動させてもよい。
【0067】
本構成によれば、押込部21を連結部26でガイドできるので押込部21の姿勢を安定させ易い。したがって、押込部21で、C型止め輪1を円滑に押圧できて、C型止め輪1に効率的に力を付与することができる。
【0068】
また、連結部126が、軸方向に延在する棒部材128でもよく、棒部材128の一方側の端部が、挿入ガイド部116の軸方向の端面における径方向の中央部に固定されていてもよい。
【0069】
本構成によれば、C型止め輪取付治具115を片手で操作し易くなる。更には、棒部材128が、軸方向に直線状に延在するので、棒部材128にガイドされる押込部121も軸方向にまっすぐ押すことができるようになり、その結果、C型止め輪1をまっすぐ押すことが出来るようになる。よって、C型止め輪1を円滑に移動させることができ、作業時間を、短縮することができる。
【0070】
また、凹部47が円筒内周面39aを含んでもよく、円筒内周面39aの内径がaであって、ガイド部傾斜面17の最大外径がbであるとき、a>bが成立してもよい。
【0071】
本構成によれば、C型止め輪1を押込部21で挿入ガイド部16を超えて軸溝8まで押圧することができる。
【0072】
また、押込部221が弾性材料で構成され、ガイド部傾斜面17の最大外径がbであって、ガイド部傾斜面17の最小外径がeであり、押込部221に外力が付与されていない状態での凹部247の円筒内周面239aの内径がkであるとき、b>k>eが成立し、押込部221において凹部247を画定している環状部250(
図8参照)に、周方向に間隔をおいて位置する複数のスリット229が設けられ、各スリット229は、環状部250の径方向の両側と軸方向の一方側に開口してもよい。
【0073】
本構成によれば、ガイド部傾斜面17に沿って押込部221の開口部を広げることができ、C型止め輪1の取付の際にC型止め輪1の内周側を押すことができる。したがって、C型止め輪1の内周側部分の軸方向の変形を抑制できて、C型止め輪1を円滑かつ効率的に移動させることができ、C型止め輪1の作業効率を高くできる。
【0074】
また、本開示に係るC型止め輪1の取付方法は、本開示のC型止め輪取付治具15を用いて軸7の軸溝8にC型止め輪1を取り付ける。また、C型止め輪1の取付方法は、C型止め輪取付治具15の押込部21の開口側の端面21aで、ガイド部傾斜面17を囲むように配置したC型止め輪1の端面を押圧することで、C型止め輪1をガイド部傾斜面17の拡径側にC型止め輪1の内径を広げるように移動させた後、更に、押込部21の端面21aで、C型止め輪1の端面を押圧することで、C型止め輪1をガイド部傾斜面17からガイド部傾斜面17に連なるように位置させた軸7の外周面上に移動させ、更に、押込部21の端面21aで、C型止め輪1の端面を押圧することで、C型止め輪1をその外周面上を軸7の軸溝8まで移動させる。
【0075】
本開示によれば、C型止め輪1の取付時にC型止め輪1が作業スペースまで飛び出すことを略防止できるので、C型止め輪1の捜索に時間を要することがない。更には、作業者の技量に関係なく挿入ガイド部16とC型止め輪1と押込部21を組み合わせて保持した状態で挿入ガイド部16を軸7の軸端9に押し当て、その状態で押込部21を押すだけで短時間でC型止め輪1を軸溝8に挿入できる。また、C型止め輪1を作業者が広げることがないため、C型止め輪1の塑性変形による保持力低下も防止できる。更には、挿入ガイド部16を軸端9に当てて押込部21を押すという単純な作業のため作業ミスも発生しない。したがって、作業者の技量に無関係に、C型止め輪1を短時間で取り付け易く、C型止め輪1の取付時にC型止め輪1が塑性変形することも略防止できる。
【0076】
また、挿入ガイド部16の中心軸が軸7の中心軸と略同一直線上に位置している状態で軸7に対して挿入ガイド部16が相対移動不可になるまで挿入ガイド部16を軸7に押圧することで、軸7をガイド部傾斜面17に連なるように位置させるようにし、軸7がガイド部傾斜面17に連なっている状態での、挿入ガイド部16の大径側の端と軸溝8との軸方向の距離がfであり、挿入ガイド部16の軸方向の寸法がgであり、押込部21の凹部47の軸方向の深さがhであるとき、f+g≦hが成立してもよい。
【0077】
本構成によれば、押込部21でC型止め輪1を軸溝8まで確実に押し込むことができる。
【0078】
また、軸溝8の軸方向の寸法がiであって、C型止め輪1の軸方向の寸法がjであるとき、h+j<f+g+iが成立してもよい。
【0079】
本構成によれば、押込部21でC型止め輪1を軸溝8に押し込んだ後に、押込部21がC型止め輪1を軸溝8の側面に押圧することを防止できる。したがって、C型止め輪1がそのような押圧で損傷することを防止できる。
【0080】
また、押込部21を連結部26における収容部でガイドしながら連結部26において押込部連結ガイド穴25から突出する突出部59の長さが長くなるように押込部21を連結部26に対して軸方向の一方側に移動させることでC型止め輪1を軸溝8側に移動させてもよい。
【0081】
本構成によれば、押込部21を連結部26でガイドできるので押込部21の姿勢を安定させ易い。したがって、押込部21で、C型止め輪1を円滑に押圧できて、C型止め輪1に効率的に力を付与することができ、C型止め輪1を軸溝8まで円滑に移動させることができる。
【0082】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。例えば、上記実施形態では、挿入ガイド部16の外周面の全てがテーパ外周面(ガイド部傾斜面17)である場合について説明した。しかし、本開示のC型止め輪取付治具では、挿入ガイド部は、テーパ外周面(ガイド部傾斜面)と、その大径側の端につながると共に当該テーパ外周面の最大外径と略同じ外径を有する円筒外周面とを有してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 C型止め輪、 2 止め輪孔、 3 スナップリングプライヤ、 4 グリップ、 5 支点、 6 孔差込部、 7 軸、 8 軸溝、 9 軸端、 9a 円錐台外周面、 10 軸段差部、 11 ローラ、 12 軸受、 14 鏡、 15,115,215 C型止め輪取付治具、 16,116 挿入ガイド部、 17 ガイド部傾斜面、 18 ガイド部開口部、 19 ガイド部閉端部、 19a,19b 端面、 20 ガイド部連結固定部、 21,121,221 押込部、 21a 端面、 23,223 押込部開口部、 24,124 押込部閉端部、 25,125 押込部連結ガイド穴、 26,126 連結部、 27 連結部紐、 30 内部室、 30a 円錐台内周面、 31 貫通孔、 39 円筒部、 39a,239a 円筒内周面、 47,247 凹部、 59 突出部、 120 端面、 128 棒部材、 222 押込部円周面、 229 スリット、 250 環状部。