(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】周囲温度における血小板の安定化
(51)【国際特許分類】
A61K 35/19 20150101AFI20221109BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221109BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221109BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20221109BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20221109BHJP
A01N 1/02 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61K35/19 A
A61K47/12
A61K47/26
A61K31/197
A61K47/18
A61P7/04
A61K38/16
A01N1/02
(21)【出願番号】P 2020021414
(22)【出願日】2020-02-12
(62)【分割の表示】P 2016571743の分割
【原出願日】2015-06-09
【審査請求日】2020-03-12
(32)【優先日】2014-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515345724
【氏名又は名称】バイオマトリカ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】デスハーネ,ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン,スティーブン,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】アーレント,ビクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ディアズ,ポール
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-512968(JP,A)
【文献】国際公開第94/022885(WO,A1)
【文献】特表2014-506319(JP,A)
【文献】特開平09-087183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K35/00-35/768
A61K47/00-47/69
A61P1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度における1つ以上の血小板の実質的に安定した保存のための製剤であって、
前記製剤は、
(i)pH緩衝液;
(ii)抗凝血剤;および
(iii)ハロゲン化された二糖類誘導体;
を含み、
前記ハロゲン化された二糖類誘導体は、二塩素化または三塩素化した二糖類であり、
前記ハロゲン化された二糖類誘導体が、スクラロース(1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド)、三塩素化したマルトース、1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-6-O-モノドデカノアート-α-D-ガラクトピラノシド、1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-6-O-モノテトラデカノアート-α-D-ガラクトピラノシド、またはこれらの混合物であり、
前記製剤のpHが、4.0~9.0の範囲内であり、
前記1つ以上の血小板は少なくとも6時間の間安定化される、製剤。
【請求項2】
前記製剤のpHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記抗凝血剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒルジン、ヘパリンまたはクエン酸ナトリウムである、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
1つ以上の血小板をさらに含む、請求項1~3の何れか1項に記載の製剤。
【請求項5】
前記1つ以上の血小板が、血液サンプル中に存在し、
前記血液サンプルが、前記製剤に対して、前記血液サンプルに対する前記製剤が1:10~1:20の比率の範囲内となるように添加された血液サンプルである、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記pH緩衝液が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、スルホサリチル酸、スルホイソフタル酸、シュウ酸、ホウ酸塩、トリス-HCl、CAPS(3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸)、CAPSO(3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸)、EPPS(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸)、MES(2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸)、MOPSO(3-モルフォリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、PIPES(1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸)、TAPS(N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸)、TAPSO(2-ヒドロキシ-3-[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸)、TES(N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-2-アミノエタンスルホン酸)、ビシン(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、トリシン(N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン)、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、およびビス-トリス(2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)からなる群から1種以上選択されるpH緩衝液を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の製剤。
【請求項7】
前記pH緩衝液が、トリス-HCl、クエン酸または2xリン酸緩衝生理食塩水を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の製剤。
【請求項8】
前記抗凝血剤が、ヒルジンであり、
前記pH緩衝液が、トリス-HClであり、
前記製剤のpHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項1~7の何れか1項に記載の製剤。
【請求項9】
前記抗凝血剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、
前記pH緩衝液が、クエン酸であり、
前記製剤のpHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項1~7の何れか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記抗凝血剤が、クエン酸ナトリウムであり、
前記pH緩衝液が、クエン酸であり、
前記製剤のpHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項1~7の何れか1項に記載の製剤。
【請求項11】
前記製剤のpHが、5.0~6.0の範囲内である、請求項1~10の何れか1項に記載の製剤。
【請求項12】
1つ以上の血小板が添加された後における、前記ハロゲン化された二糖類誘導体の濃度が、0.1~50mMである、請求項1~11の何れか1項に記載の製剤。
【請求項13】
1つ以上の血小板が添加された後における、前記ハロゲン化された二糖類誘導体の濃度が、1.0~50mMである、請求項1~11の何れか1項に記載の製剤。
【請求項14】
1つ以上の血小板が添加された後における、前記ハロゲン化された二糖類誘導体の濃度が、1.0~30mMである、請求項1~11の何れか1項に記載の製剤。
【請求項15】
アドニトール、グリコール、グリセロール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、およびイノシトール、並びに、これらの混合物からなる群から選択されるポリオールを含む、請求項1~14の何れか1項に記載の製剤。
【請求項16】
五炭糖ポリオールまたは六炭糖ポリオールを含む、請求項1~14の何れか1項に記載の製剤。
【請求項17】
前記五炭糖ポリオールが、アドニトールである、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
請求項1~
7および12~17の何れか1項に記載の製剤を含む、採血管。
【請求項19】
血液サンプルを採取した後における、前記ハロゲン化された二糖類誘導体の濃度が、0.1~50mMである、請求項18に記載の採血管。
【請求項20】
血液サンプルを採取した後における、前記ハロゲン化された二糖類誘導体の濃度が、1.0~50mMである、請求項18に記載の採血管。
【請求項21】
血液サンプルを採取した後における、前記ハロゲン化された二糖類誘導体の濃度が、1.0~30mMである、請求項18に記載の採血管。
【請求項22】
1つ以上の血小板を含む血液サンプルが内部に存在し、
前記血液サンプルは、前記血液サンプルに対する前記製剤の比率が1:10~1:20の範囲内となるように採取された血液サンプルである、請求項18に記載の採血管。
【請求項23】
前記抗凝血剤が、ヒルジンであり、
前記pH緩衝液が、トリス-HClであり、
前記製剤のpHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項18に記載の採血管。
【請求項24】
前記抗凝血剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、
前記pH緩衝液が、クエン酸であり、
前記製剤のpHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項18に記載の採血管。
【請求項25】
前記抗凝血剤が、クエン酸ナトリウムであり、
前記pH緩衝液が、クエン酸であり、
前記製剤のpHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項18に記載の採血管。
【請求項26】
周囲温度において1つ以上の血小板を実質的に安定して保存する方法であって、
被検体からの1つ以上の血小板を、請求項1~
7および12~17の何れか1項に記載の製剤と混合して混合物とする工程と、
前記混合物を周囲温度において少なくとも6時間の間保存する工程と、を含む方法。
【請求項27】
前記1つ以上の血小板が、前記被検体からの血液サンプル中に存在する血小板であるか、または、前記被検体からの血液サンプルから単離された血小板である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記1つ以上の血小板が、血液サンプル中に存在し、
前記血液サンプルが、前記血液サンプルに対する前記製剤が1:10~1:20の比率の範囲内となるように、前記製剤に添加された血液サンプルである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記抗凝血剤が、ヒルジンであり、
前記pH緩衝液が、トリス-HClであり、
前記製剤のpHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記抗凝血剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、
前記pH緩衝液が、クエン酸であり、
前記製剤のpHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記抗凝血剤が、クエン酸ナトリウムであり、
前記pH緩衝液が、クエン酸であり、
前記製剤のpHが、5.0~8.0の範囲内である、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2014年6月10日に出願された米国仮特許出願第62/010,151号の利益を主張し、当該文献は参照によってその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、周囲温度における1つ以上の血小板の安定化に一般に関する。本発明は特に、周囲温度における1つ以上の代謝的に活性な血小板の実質的に安定した保存のための製剤、組成物、製品、キット、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
全血は、細胞、核酸、タンパク質、および様々な他の分析物の複合の混合物である。血液構成成分は特に、限定されないが以下を含む:白血球(単球、リンパ球、および顆粒球)、赤血球、血小板、および、循環腫瘍細胞などの細胞;循環する遊離DNA(cfDNA)などの核酸分子;リポタンパク質、アルブミンおよび血清タンパク質などのポリペプチド、および他の様々な分析物。
【0004】
血小板または栓球は、血液の凝結の際に重要な役割を果たす無核細胞である。血小板は、哺乳動物の血液中で循環し、止血に関係する、小さな、盤状の細胞である。血小板は、血液凝固および組織再生の促進を支援する多種多様な成長因子を分泌する。
【0005】
健康な個人内で循環する血小板のレベルは、約(150-400)×103毎立方ミリメートルの生理的な範囲内に制御される。最適以下のレベルの血小板(血小板減少症)は過度の出血を引き起こす場合があり、一方で、最適な濃度を超えるレベルは凝血(thromboli)(血餅)の形成を引き起こす場合があり、これは、血管を塞ぎ、脳卒中、肺塞栓または心筋梗塞のリスクを引き上げる可能性がある。
【0006】
循環する血小板は、典型的には不活性化された状態で存在し、血管管腔を覆う内皮細胞により引き起こされる因子によって、不活性化された状態で維持される。この内皮の層の破壊または損傷に際して、血小板はコラーゲンまたはフォンヴィレブランド因子に接触し、それによって血小板を活性化し、血小板の凝集(すなわち、血餅)をもたらす。この活性化と凝集は、同様にトロンビンの酵素活性によって、またはADPの存在下で生じ得る。活性化に際して、血小板は、血餅の形成を助長し、繊維芽細胞の動員の促進を促すことで創傷治癒を促進する成長因子およびフィブリノゲンを含む、アルファ顆粒および密顆粒の内容物を放出する。活性化された血小板は、それらのより球状/星状である形状によって不活性化された血小板から、識別することが可能である。
【0007】
全血の採取中多数の成長因子および血小板の他の細胞内の成分の活性化、凝集、および/または放出は、これらの細胞の定量化および解析を著しく妨害することがある。周囲温度において不活性化された血小板を維持するための様々な抗凝血剤を追加しても、24時間の時点で不活性化した血小板の約13-52%しか維持されず、全血小板の正確な定量分析はこの時点で実質的に不可能である。したがって、研究、診断、および治療目的のために血小板の保存および輸送に十分な時間にわたって、周囲温度で血小板を安定させる、改善された製剤および方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の製剤、組成物、および方法は、周囲温度において血小板の安定化を有利に提供し、これらの細胞は機能を維持して、血液採取後の少なくとも24時間の間は活性化する能力を保持し、研究、診断、および潜在的な治療への適用のための実質的に安定した血小板の保存および輸送の時間を著しく増大する。いくつかの実施形態において、周囲温度における1つ以上の血小板の実質的に安定した保存のための製剤が本発明で開示され、それにより1つ以上の血小板は少なくとも6時間の間安定化される。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は不活性化された状態で安定化される。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は血液サンプル中に存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は血液サンプル中に不活性化された状態で存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は血液サンプルから単離されている。いくつかの実施形態では、血小板の少なくとも90%は不活性化された状態で少なくとも6時間の間安定化される。いくつかの実施形態では、血小板の少なくとも90%は不活性化された状態で少なくとも9時間の間安定化される。いくつかの実施形態では、血小板は不活性化された状態で少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、または少なくとも24時間の間安定化される。いくつかの実施形態では、製剤は以下を含む:(i)pH緩衝液;(ii)抗凝血剤;(iii)少なくとも1つの非還元糖またはポリオール;および(iv)機能性炭水化物(functionalized carbohydrate)。いくつかの実施形態では、製剤は、グリコール、グリセロール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、アドニトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、およびイノシトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリオールを含む。いくつかの実施形態では、ポリオールは五炭糖ポリオールまたは六炭糖ポリオールである。いくつかの実施形態では、五炭糖ポリオールはアドニトールである。いくつかの実施形態では、機能性炭水化物はスクラルファートまたはオクタ硫酸スクロースである。いくつかの実施形態では、機能性炭水化物はオクタ硫酸スクロースである。いくつかの実施形態では、非還元糖はスクロースまたはトレハロースである。いくつかの実施形態では、非還元糖はトレハロースである。いくつかの実施形態では、抗凝血剤はEDTAまたはヒルジンである。いくつかの実施形態では、pH緩衝液は2xリン酸緩衝生理食塩水またはトリスHClである。
【0009】
本発明の1つの態様では、周囲温度において血液サンプル中の不活性化された状態の1つ以上の血小板の実質的に安定した保存のための製剤が提供され、それにより1つ以上の血小板は少なくとも6時間の間不活性化された状態で安定化される。いくつかの実施形態では、血小板の少なくとも90%は少なくとも6時間の間不活性化された状態で安定化される。いくつかの実施形態では、血小板は不活性化された状態で少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、または少なくとも24時間の間安定化される。特定の実施形態では、製剤は(i)pH緩衝液、(ii)抗凝血剤、(iii)少なくとも1つの非還元糖またはポリオール、および(iv)機能性炭水化物を含む。いくつかの実施形態では、ポリオールは、グリコール、グリセロール、エリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、アドニトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトールイノシトールおよびその組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ポリオールは五炭糖ポリオールまたは六炭糖ポリオールである。いくつかの実施形態では、ポリオールはアドニトールである。いくつかの実施形態では、機能性炭水化物はスクラルファートまたはオクタ硫酸スクロースである。いくつかの実施形態では、機能性炭水化物はオクタ硫酸スクロースである。いくつかの実施形態では、非還元糖はスクロースまたはトレハロースである。いくつかの実施形態では、非還元糖はトレハロースである。いくつかの実施形態では、抗凝血剤はEDTAまたはヒルジンである。いくつかの実施形態では、抗凝血剤はEDTAであり、機能性炭水化物はスクラルファートまたはオクタ硫酸スクロースであり、および、非還元糖はスクロースまたはトレハロースである。また他の実施形態では、抗凝血剤はEDTAであり、機能性炭水化物はオクタ硫酸スクロースであり、および、非還元糖はトレハロースである。いくつかの実施形態では、pH緩衝液は2xリン酸緩衝生理食塩水またはトリスHClである。いくつかの実施形態では、ハロゲン化された二糖類誘導体および抗凝血剤を含む、周囲温度における1つ以上の血小板の実質的に安定した保存のための製剤が本発明において開示され、それにより1つ以上の血小板は少なくとも6時間の間安定化される。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は不活性化された状態で安定化される。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は血液サンプル中に存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は血液サンプル中に不活性化された状態で存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は血液サンプルから単離されている。いくつかの実施形態では、抗凝血剤はヒルジンである。いくつかの実施形態では、ハロゲン化された二糖類誘導体は、スクラロース(1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド)、トリクロロナート(trichloronated)マルトース、1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-6-O-モノドデカノアート-α-D-ガラクトピラノシド、1,6-シクロロ(sichloro)-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-6-O-モノテトラデカノアート-α-D-ガラクトピラノシド、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、製剤は、実質的にヒルジンおよびスクラロース(1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド)から成る。
【0010】
いくつかの実施形態では、ハロゲン化された二糖類誘導体を含む、周囲温度における血液サンプル中の不活性化された状態の1つ以上の血小板の実質的に安定した保存のための製剤が提供され、1つ以上の血小板は少なくとも6時間の間不活性化された状態で安定化される。いくつかの実施形態では、ハロゲン化された二糖類誘導体は、好ましくはスクラロース(1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド)トリクロロナートマルトース、1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-6-O-モノドデカノアート-α-D-ガラクトピラノシド、および1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-6-O-モノテトラデカノアート-α-D-ガラクトピラノシドから成る群から選択され、および、より好ましくは、ハロゲン化された二糖類誘導体はスクラロース(1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド)である。いくつかの実施形態では、製剤はさらに、抗凝血剤、好ましくはヒルジンを含む。いくつかの実施形態では、抗凝血剤はヒルジンである。いくつかの実施形態では、製剤は、実質的にヒルジンおよびスクラロース(1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド)からなる。
【0011】
いくつかの実施形態では、開示された製剤と混合された1つ以上の血小板を含む、実質的に安定して保存された1つ以上の血小板の組成物が、本明細書において開示される。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は血液サンプル中に存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は単離された血小板である。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は不活性化された状態である。
【0012】
いくつかの実施形態では、採血管内に収容される本明細書に記載された製剤を含む製品が本明細書において開示される。いくつかの実施形態では、採血管は真空の採血管である。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載されている製品および添付文書を含むキットが本明細書において開示される。
【0014】
いくつかの実施形態では、周囲温度において1つ以上の血小板を実質的に安定して保存する方法が本明細書において開示され、該方法は以下を含む:被験体からの1つ以上の血小板を、本明細書において提供される製剤と混合する工程であって、1つ以上の血小板は少なくとも6時間の間安定化される工程。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は不活性化された状態で安定化される。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は被験体からの血液サンプルである。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は被験体からの血液サンプル中の不活性化された状態で安定化される。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は被験体からの血液サンプルから単離される。いくつかの実施形態では、血小板の少なくとも90%は少なくとも6時間の間不活性化された状態で安定化される。いくつかの実施形態では、血小板の少なくとも90%は少なくとも9時間の間不活性化された状態で安定化される。いくつかの実施形態では、方法はさらに、血小板の凝集を促進する活性化剤を加えることによって、1つ以上の不活性化された状態の血小板を活性化させる工程を含む。いくつかの実施形態では、活性化剤はADPである。いくつかの実施形態では、方法はさらに、血小板の凝集を促進する活性化剤を加えることによって、1つ以上の血小板を活性化させる工程を含む。いくつかの実施形態では、活性化剤はADPである。いくつかの実施形態では、被験体は動物である。いくつかの実施形態では、被験体は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0015】
いくつかの実施形態では、被験体からの1つ以上の血小板を本明細書において提供される製剤と混合する工程を含む、周囲温度において血液サンプル中の1つ以上の不活性化した状態の血小板を実質的に安定して保存する方法が本明細書において開示され、それにより1つ以上の血小板は不活性化された状態で少なくとも6時間の間安定化される。いくつかの実施形態では、血小板の少なくとも90%は少なくとも6時間の間不活性化された状態で安定化される。いくつかの実施形態では、血小板は不活性化された状態で少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、または少なくとも24時間の間安定化される。いくつかの実施形態では、被験体からの採取後に不活性化された状態で1つ以上の血小板を実質的に安定させるために、血液サンプルが被験体から採取される時に、血液サンプルは安定化製剤と混合される。いくつかの実施形態では、方法はさらに、活性化剤を加えることによって1つ以上の血小板を活性化させる工程を含む。いくつかの実施形態では、活性化剤はADPである。該方法のさらなる実施形態では、被験体は動物であり、より好ましくは哺乳動物であり、さらにより好ましくはヒトである。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本発明は、周囲温度における1つ以上の血小板の実質的に安定した保存のための製剤、組成物、製品、キット、および方法に関する。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は、不活性化されているが活性化が可能な状態で、血液サンプル中で保存される。1つの態様では、本明細書において記載された製剤は、不活性化された、代謝的に活性の血小板の完全性を有利に維持し、該血小板は、その後に活性化のために分析され得るか、患者の血液凝固の促進のため治療への適用に使用され得る。
【0017】
本明細書および添付された特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上そうではないと明確に指示しない限り、複数の内容も含む。したがって、例えば「方法」への言及は、本開示等を読んだ当業者たちに明らかになるであろう本明細書において記載された1つ以上の方法および/またはタイプの工程などを含む。
【0018】
量、一時的な継続期間などのような測定可能な値について言及する際本明細書において使用される「約」は、指定された値から±20%、または±10%、または±5%、または±1%の変動を包含するように意味し、これは、そのような変動は開示された組成物に対して、または開示された方法を実行するために適している。
【0019】
別段定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において引用された特許、特許出願、および出版物は全て、参照によってそれらの全体が組み込まれる。
【0020】
いくつかの実施形態では、周囲温度における代謝的に活性な血小板の実質的に安定した保存のために、製剤が提供される。いくつかの実施形態では、血小板は血液サンプルから単離される。いくつかの実施形態では、血小板は血液サンプル中に存在する。いくつかの実施形態では、血小板は不活性化されている。特定の実施形態では、血小板安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、非還元糖、ポリオール、および機能性炭水化物を含む。特定の他の実施形態では、血小板安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、ポリオール、および機能性炭水化物を含む。特定の他の実施形態では、安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、非還元糖、および機能性炭水化物を含む。またさらなる別の実施形態では、安定化製剤はハロゲン化された二糖類誘導体、および抗凝血剤を含む。またさらなる別の実施形態では、安定化製剤はハロゲン化された二糖類誘導体、抗凝血剤およびpH緩衝液を含む。製剤は、周囲温度において、血液サンプル中の不活性化された、代謝的に活性な血小板の、少なくとも60%、70%、80%、または90%を、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、または少なくとも24時間安定化させることが可能である。
【0021】
本明細書において使用される用語「周囲温度」は、一般の屋内の室温を指す。いくつかの実施形態では、周囲温度は15から32℃である。いくつかの実施形態では、周囲温度は20から27℃である。
【0022】
本発明の別の態様では、周囲温度における血液サンプル中の不活性化された、代謝的に活性な血小板の実質的に安定した保存のための製剤が提供される。特定の実施形態では、血小板安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、非還元糖、ポリオール、および機能性炭水化物を含む。特定の他の実施形態では、血小板安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、ポリオール、および機能性炭水化物を含む。特定の他の実施形態では、安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、非還元糖、および機能性炭水化物を含む。またさらなる別の実施形態では、安定化製剤は、ハロゲン化された二糖類誘導体および抗凝血剤を含む。またさらなる実施形態では、安定化製剤はハロゲン化された二糖類誘導体、抗凝血剤、およびpH緩衝液を含む。製剤は、周囲温度において、血液サンプル中の不活性化された、代謝的に活性な血小板のうち、少なくとも60%、70%、80%、または90%を、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、または少なくとも24時間安定化させることが可能である。
【0023】
別の態様では、全血の調製中において実質的に安定した1つ以上の不活性化された血小板を生成するために血液サンプルが血小板安定化製剤と混合された組成物が本明細書において提供される。さらに他の実施形態では、本発明の安定化製剤と混合される、精製または実質的に精製された1つ以上の血小板を含む組成物が提供される。
製剤試薬
A.pH緩衝液
特定の実施形態によれば、本明細書において記載された、1つ以上の血小板の実質的に安定した保存のための製剤および組成物は、1つ以上のpH緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、pH緩衝液は、pH緩衝液が存在する水溶液のような溶液のpHの変化に抵抗する能力について当該技術分野で知られている、多くの化合物のいずれかである。安定した保存用の組成物に含まれる1つ以上のpH緩衝液の選択は、本明細書における開示および当該技術分野における日常的な業務に基づいて行なわれ、また、維持することが望ましいpH、生体サンプルの条件、利用される溶剤の状態、使用される製剤の他の成分、および他の基準を含む様々な因子によって影響され得る。例えば、典型的に、pH緩衝液は、緩衝液の特徴であるプロトン解離定数(pKa)約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0のpH単位の範囲内のpHで利用される。
【0024】
pH緩衝液の非限定的な例は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、スルホサリチル酸、スルホイソフタル酸、シュウ酸、ホウ酸塩、CAPS(3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸)、CAPSO(3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸)、EPPS(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸)、MES(2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸)、MOPSO(3-モルフォリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、PIPES(1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸)、TAPS(N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸)、TAPSO(2-ヒドロキシ-3-[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸)、TES(N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-2-アミノエタンスルホン酸)、ビシン(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、トリシン(N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン)、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、およびビス-トリス(2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)を含む。いくつかの実施形態では、表1において示されるもののいずれも、約4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0のpHを有する。
B.ポリオール
同様に、本明細書において記載されるように、特定の実施形態は、周囲温度における全血サンプル中の、生存している不活性化された血小板の実質的に安定した保存のために、組成物中に少なくとも1つのポリオールを含む。ポリオールは2つ以上の水酸基を含んでいる多価アルコールであり、一般的な公式H(CHOH)nHを有し、その際のnは2から7(7も含む)より選択した整数である。ポリオールは鎖長が異なり、大半のポリオールは五炭糖(5つの炭素糖)および六炭糖(6つの炭素糖)に由来している5-または6の炭素鎖を有する;一方で、より短い、およびより長い炭素鎖ポリオールも存在する。代表的なポリオールは、限定されないが、グリコール、グリセロール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、アドニトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、およびイノシトールを含む。実質的に安定した保存用の組成物に含まれる1つ以上の特定のポリオールの選択は、本明細書における開示および当該技術分野における日常的な業務に基づいて行なわれ、他の製剤の成分を含む様々な因子に影響され得る。いくつかの実施形態では、製剤に存在するポリオールは五炭糖ポリオールである。いくつかの実施形態では、ポリオールはアドニトールである。いくつかの実施形態では、ポリオールは20-100mMの間、または25-75mMの間の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、ポリオールは五炭糖ポリオールであり、20-100mMの間、または25-75mMの間の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、ポリオールはアドニトールであり、20-100mMの間、または25-75mMの間の濃度で存在する。
C.二糖類誘導体
特定の実施形態では、表1中のものを含む周囲温度における全血サンプル中の1つ以上の不活性化された血小板の実質的に安定した保存のための製剤または組成物は、少なくとも1つのハロゲン化された二糖類誘導体を含む。いくつかの実施形態では、ハロゲン化された二糖類誘導体は、二塩素化または三塩素化した二糖類である。いくつかの実施形態では、そのような二塩素化または三塩素化した二糖類は、単独でまたは緩衝液のみの存在下で、思いがけず、不活性化された血小板を実質的に安定して保存することが出来る。ハロゲン化された二糖類誘導体は、例えば、米国の特許公開第2014/0065062号を確認されたい、および、スクラロース(1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド)、三塩素化したマルトース、1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-6-O-モノドデカノアート-α-D-ガラクトピラノシド、および1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-6-O-モノテトラデカノアート-α-D-ガラクトピラノシドを含む。実質的に安定した保存の組成物に含まれる1つ以上のハロゲン化された二糖類誘導体の選択は、本明細書における開示および当該技術分野における日常的な業務に基づいて行なわれ、他の製剤の成分を含む様々な因子に影響され得る。いくつかの実施形態では、機能性炭水化物はスクラロースであり、約1.0-50.0mMで存在する。いくつかの実施形態では、機能性炭水化物はスクラロースであり、約10.0-30.0mMで存在する。いくつかの実施形態では、機能性炭水化物はスクラロースであり、約25.0mMで存在する。
D.機能性炭水化物
本明細書において記載されたいくつかの実施形態では、表1中のものを含む製剤は機能性炭水化物を含む。典型的な機能性炭水化物はスクラルファートまたはオクタ硫酸スクロースを含み、また、本明細書の開示から、当業者は、利用される組成物の他の成分によって変動することもあるが、生存している、活性化が可能な血小板の安定した保存用の製剤および組成物で使用される他の機能性炭水化物を選択してもよいことを、認識するだろう。いくつかの実施形態では、表1で明らかにされるものを含む、本発明の製剤および組成物における機能性炭水化物の濃度は、約0.005-1.0mMである。いくつかの実施形態では、表1で明らかにされるものを含む、本発明の製剤および組成物における機能性炭水化物の濃度は、約0.25-0.5mMである。
E.非還元糖
いくつかの実施形態では、周囲温度における血小板の実質的に安定した保存のための製剤および組成物は、少なくとも1つの非還元糖を含む。いくつかの実施形態では、周囲温度における全血サンプル中の生存している不活性化された血小板の、実質的に安定した保存のための製剤および組成物は、少なくとも1つの非還元糖を含む。本明細書において使用されるように、「非還元糖」は機能的なアルデヒド基を欠く炭水化物分子を指す。典型的な非還元糖はスクロースおよびトレハロースを含む。いくつかの実施形態では、非還元糖はスクロースである。いくつかの実施形態では、非還元糖はトレハロースである。いくつかの実施形態では、トレハロースは約1.0-50mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、トレハロースは約10.0-30mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、トレハロースは約25mMの濃度で存在する。
F.抗凝血剤
いくつかの実施形態では、抗凝血剤は本明細書において記載される製剤または組成物に含まれる。このような抗凝血剤は、当該技術分野で既知である。典型的な抗凝血剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒルジン、ヘパリン、およびクエン酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、抗凝血剤はヒルジンである。いくつかの実施形態では、ヒルジンは約1.0-50μg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、ヒルジンは約1.0-25μg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、ヒルジンは約10-20μg/mLの濃度で存在する。
周囲温度における血小板の安定化のための典型的な製剤
いくつかの実施形態では、本発明の製剤、組成物、および方法は、少なくとも6時間の間、周囲温度において血小板の実質的に安定した保存を有利に提供する。いくつかの実施形態では、本発明の製剤、組成物および方法は、周囲温度における血液サンプル中の、自然循環型の、不活性化された状態の血小板の実質的に安定した保存を有利に提供し、ここで細胞は、少なくとも6時間の間、採取後に活性化される能力を保持する。他の実施形態では、血小板の少なくとも90%は、少なくとも6時間の間不活性化された状態で安定化される。他の実施形態では、血小板は、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、または少なくとも24時間の間、不活性化された状態で安定化される。
【0025】
特定の実施形態では、周囲温度での血小板の実質的に安定した保存のための製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、非還元糖、ポリオール、および機能性炭水化物を含む。特定の実施形態では、安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、ポリオール、および機能性炭水化物を含む。特定の実施形態では、血小板の実質的に安定した保存のための製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、非還元糖、および機能性炭水化物を含む。いくつかの実施形態では、血小板の実質的に安定した保存のための製剤は、ハロゲン化した二糖類誘導体および抗凝血剤を含み、さらにpH緩衝液も含むことがある。いくつかの実施形態では、被験体から血液サンプルを採取する前に、採血用の管、入れ物、または、容器上で抗凝血剤を噴霧して乾燥させる。いくつかの実施形態では、抗凝血剤は、本明細書に記載された製剤に直接加えられる。
【0026】
特定の実施形態では、pH緩衝液はトリス-HClであり、ポリオールは五炭糖アルコールであり、非還元糖はトレハロースであり、抗凝血剤はEDTAまたはヒルジンであり、機能性炭水化物はオクタ硫酸スクロースである。特定の実施形態では、pH緩衝液はトリス-HClであり、ポリオールはアドニトールであり、非還元糖はトレハロースのD+異性体であり、抗凝血剤はEDTAまたはヒルジンであり、機能性炭水化物はオクタ硫酸スクロースである。特定の実施形態では、pH緩衝液はトリ-HClであり、ポリオールはアドニトールであり、非還元砂糖はトレハロースのD+異性体であり、抗凝血剤はヒルジンであり、機能性炭水化物はオクタ硫酸スクロースである。いくつかの実施形態では、二糖類誘導体はハロゲン化された二糖類であり、抗凝血剤はヒルジンである。いくつかの実施形態では、ハロゲン化された二糖類はスクラロースであり、抗凝血剤はヒルジンである。
【0027】
いくつかの実施形態では、周囲温度の不活性化された血小板の実質的に安定した保存のための製剤は、表1に提供される典型的な製剤を含む。
【0028】
【0029】
いくつかの実施形態では、表1の典型的な製剤(A-F)は、供給元から市販で入手可能な材料を使用して調製され、こうした製剤の調製は本明細書で開示される方法と当業者に知られている他の方法を用いて達成される。
【0030】
いくつかの実施形態では、あらかじめ秤にかけておいた固形成分が角瓶などの適切な容器に加えられ、それに対して水性成分が加えられる。固形成分が完全に溶けきるまで反応混合物を例えば振盪させて撹拌し、その後、適切な酸、例えば、塩酸を用いて、混合物のpHを所望のpHに調節する。その後、結果として生じる製剤を、例えば、0.22ミクロンのフィルタを用いて殺菌し、室温で保存する。
【0031】
1つの実施例において、20X式Aの50mLの調製物を以下のように調製する:15.2034grのアドニトール(Calbiochem、カタログ#121739)と1.251gのオクタ硫酸スクロースカリウム塩(Toronto Research Chemicals、カタログ#S69900)を角瓶に加える。30mLの容量の水を加え、その後、2.5mLのトリス-HCl(Invitrogen カタログ#15567-027)を加える。最終的な容量が50mLになるまで、追加の水をqcで製剤に加える。完全に溶けるまで混合物を振盪させ、塩酸を加えて7.51になるまでpHを調整する。溶液を真空下で無菌ろ過することで(0.22μmの細孔径)、結果として生じる製剤が得られる。
【0032】
別の実施例において、20X式Bの50mLの調製物を以下のように調製する:7.5994gのアドニトール、9.4997gのD-(+)-トレハロース二水和物(Fluka、カタログ#90210)、および1.25gのオクタ硫酸スクロースカリウム塩を角瓶に加える。30mLの容量の水を加え、その後、2.5mLのトリス-HCl(Invitrogen カタログ#15567-027)を加える。最終的な容量が50mLになるまで、追加の水をqcで製剤に加える。完全に溶けるまで混合物を振盪させ、塩酸を加えて7.51になるまでpHを調整する。溶液を真空下で無菌ろ過することで(0.22μmの細孔径)、結果として生じる製剤が得られる。
【0033】
別の実施例において、20X式Cの50mLの調製物を以下のように調製する:9.5003gのD-(+)-トレハロース二水和物、および1.2502gのオクタ硫酸スクロースカリウム塩を角瓶に加える。30mLの容量の水を加え、その後、2.5mLのトリス-HCl(Invitrogen カタログ#15567-027)を加える。最終的な容量が50mLになるまで、追加の水をqcで製剤に加える。完全に溶けるまで混合物を振盪させ、塩酸を加えて7.52になるまでpHを調整する。溶液を真空下で無菌ろ過することで(0.22μmの細孔径)、結果として生じる製剤が得られる。
【0034】
別の実施例において、20X式Dの50mLの調製物を以下のように調製する:7.5994gのアドニトール、9.5003gのD-(+)-トレハロース二水和物、および0.625gのオクタ硫酸スクロースカリウム塩。30mLの容量の水を加え、その後、2.5mLのトリス-HCl(Invitrogen カタログ#15567-027)を加える。最終的な容量が50mLになるまで、追加の水をqcで製剤に加える。完全に溶けるまで混合物を振盪させ、塩酸を加えて7.51になるまでpHを調整する。溶液を真空下で無菌ろ過することで(0.22μmの細孔径)、結果として生じる製剤が得られる。
【0035】
別の実施例において、20X式Eの50mLの調製物を以下のように調製する:9.9997gのスクラロース(Sigma カタログ#69293)を角瓶に加える。30mLの容量の水を加え、その後、2.5mLのトリス-HCl(Invitrogen カタログ#15567-027)を加える。最終的な容量が50mLになるまで、追加の水をqcで製剤に加える。十分に溶けるまで混合物を振盪させ、塩酸を加えて7.54なるまでpHを調整する。溶液を真空下で無菌ろ過することで(0.22μmの細孔径)、結果として生じる製剤が得られる。
【0036】
別の実施例において、20X式Fの50mLの調製物を以下のように調製する:9.9993gのスクラロース(Sigma カタログ#69293)を角瓶に加える。最終的な容量が50mLになるまで、水をqcで製剤に加える。十分に溶けるまで混合物を振盪させ、7.54のpHを有する溶液を提供する。溶液を真空下で無菌ろ過することで(0.22μmの細孔径)、結果として生じる製剤が得られる。
(精製された安定化した血小板)
いくつかの実施形態では、周囲温度で血液サンプル中の1つ以上の実質的に安定化させた血小板は、当業者により使用された周知の方法を用いて精製される。血液を血小板から取り除くための装置とキットは周知である(例えば、米国特許第5,234,593号、第6,315,706号、および第7,708,152号を参照)。特定の実施形態では、バッグ中での採血後に調製されたバッグPC(濃縮血小板)、および血液成分採取装置を用いて得られたアフェレーシスPCを使用して、血小板を精製する。こうした方法は遠心分離を使用して血液から血小板を分離する。いくつかの実施形態では、実質的に安定化させた、無処置の、代謝的に活性な生細胞は、天然の野性型膜タンパク質と受容体に対して生成された抗体を使用して、アフィニティークロマトグラフィーまたは蛍光標識細胞分取(FACS)分析によって有利に精製され、該方法は、こうした細胞タンパク質を変性させる他の保存用製剤を使用しては起こり得ない。
【0037】
いくつかの実施形態では、精製された1つ以上の血小板はその後、分析または使用の前に、長期間、本明細書に記載された製剤で保存される。
(製品)
特定の実施形態では、適切な採血用の管、入れ物、または容器内に入れられる、本明細書で提供される製剤を含む製品が提供される。いくつかの実施形態では、製剤は、表1で説明されるものから選択される。いくつかの実施形態では、こうした製品は、採血時に1つ以上の血液成分を安定させることにより、1つ以上の血液成分の実質的に安定した保存のために使用される。特定の実施形態では、採血管は、あらかじめ決められた容量の全血を引き出すために大気圧未満の気圧を有する真空の採血管である。いくつかの実施形態では、こうした製品は本明細書に記載されるキットと方法で使用される。
(キット)
特定の実施形態では、本明細書に記載される製品と添付文書のいずれか1つを含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットの構成要素は、キットの内容物が殺菌・密閉されることで保存可能となるように、仕切り付きのプラスチック性のエンクロージャなどのパッケージング手段に入れられ、好ましくは密閉可能なカバーに入れられる。
(周囲温度で血液サンプル中の1つ以上の血小板の実質的に安定して保存するための方法)
本明細書では、いくつかの実施形態において、周囲温度で1つ以上の血小板を実質的に安定して保存するための方法が記載されている。いくつかの実施形態では、方法は、周囲温度で血液サンプル中の不活性化された状態の1つ以上の血小板を実質的に安定して保存するためのものである。
【0038】
特定の実施形態では、方法は少なくとも6時間、周囲温度で1つ以上の血小板の実質的に安定した保存のための製剤に血液サンプルを混合する工程を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板は血液サンプルから単離される。いくつかの実施形態では、1つ以上の血小板を不活性化状態で安定化させる。いくつかの実施形態では、血小板の少なくとも90%は少なくとも6時間、不活性化された状態のままである。他の実施形態では、血小板を、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、または少なくとも24時間、不活性化状態で安定化させる。特定の実施形態では、製剤は表1に記載される製剤の1つである。
【0039】
特定の実施形態では、方法は、生存している活性化可能な小板の実質的に安定した保存のための製剤に血液サンプルを混合する工程を含み、製剤はpH緩衝液、抗凝血剤、非還元糖、ポリオール、および機能性炭水化物を含む。特定の実施形態では、血小板安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、ポリオール、および機能性炭水化物を含む。特定の実施形態では、安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、非還元糖、および機能性炭水化物を含む。さらにまた別の実施形態では、安定化製剤はハロゲン化された二糖類誘導体と抗凝血剤を含む。さらにまた別の実施形態では、安定化製剤はハロゲン化された二糖類誘導体を含み、抗凝血剤はさらにpH緩衝液を含む。特定の実施形態では、製剤は表1に記載される製剤の1つである。
【0040】
特定の実施形態では、方法は、血液サンプル中の生存している活性化可能な血小板の実質的に安定した保存のための製剤に血液サンプルを混合する工程を含み、製剤はpH緩衝液、抗凝血剤、非還元糖、ポリオール、および機能性炭水化物を含む。特定の実施形態では、血小板安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、ポリオール、および機能性炭水化物を含む。特定の他の実施形態では、安定化製剤は、pH緩衝液、抗凝血剤、非還元糖、および機能性炭水化物を含む。さらにまた別の実施形態では、安定化製剤はハロゲン化された二糖類誘導体と抗凝血剤を含む。さらにまた別の実施形態では、安定化製剤はさらにpH緩衝液を含む。特定の実施形態では、製剤は表1に記載される製剤の1つである。
【0041】
採血用の管、バッグ、入れ物、および容器は、当該技術分野において周知であり、数十年にわたって医師により使用されている。1つ以上の血液成分の実質的に安定した保存のために採取された血液は、静脈穿刺または指先の穿刺など当業者により一般に使用される任意の方法または装置を使用して、被験体、ドナー、または患者から得られてもよい。いくつかの実施形態では、血液が静脈穿刺により採取されるとき、本明細書に記載される製剤は、ドナーまたは患者から血液サンプルを得る際に、採血管、例えば、真空の管(バキュテナー、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickenson)、またはVacuette、Greiner)の内部に位置付けられる。いくつかの実施形態では、安定化製剤は、既に得られていた全血サンプルに対して、好ましくは、それが引き抜かれる直後またはすぐ後に加えられる。
【0042】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、開示される製品とキットを使用する。
【0043】
以下の実施例は例証として与えられるもので、限定するものではない。
実施例1:周囲温度での少なくとも22時間にわたるヒトの血液サンプル中の不活性な血小板の安定化
この実施例は、周囲温度で22時間にわたって保存した後に活性化し続けることができる不活性化された血小板を安定化させるための本発明の製剤について記載する。
【0044】
市販で入手可能なヒルジンでコーティングした採血管(Roche Diagnostics)を使用して、6人の人間のドナーから保存血液サンプルを採取し、血液サンプルをプールして、採種後3時間以内に血液サンプルを処理した。各全血サンプルの300μLのアリコートを、表1の15μLの安定剤製剤A、B、C、またはDを含んで、1:20の比率でEppendorfチューブに移し、安定剤製剤の追加の前または後に、混合物を分析前にあらかじめ決められた時間にわたって周囲温度で維持した。各対照サンプルに等量の全血を加え、各サンプルを安定剤製剤のない状態で室温において保存し、試験サンプルと平行して処理した。
【0045】
300μLの各混合物と対照に対して、300μLのNaCl0.9%と20μLの提供されたADP溶液を加えて、血小板の活性化を促し、マルチプレート分析器(Roche Diagnostics)を用いてサンプルを分析した。製造者の指示に従ってマルチプレート分析器とADP試験を用いて、サンプル設置(時間0)直後に各条件の血小板活性を測定した。3時間、6時間、9時間、および22時間の時点で血小板活性を測定した。各条件下での血小板活性を時間0での測定値に標準化した。その後、6人のドナーからのデータを平均化した。データを表2に示す。
【0046】
【0047】
表2に示されるように、9時間のインキュベーション後、NF対照条件での血小板活性の平均の減少は、表2の製剤A、B、C、およびDのそれぞれ+15%、+14%、+1%、および-7%と比較して-23%であった。22時間のインキュベーション後も顕著な血小板活性が検出され、表2の製剤A、B、C、およびDのそれぞれの-9%、-8%、-26%、および-10%と比較して、-41%のNF対照条件下で血小板活性の平均値の減少が見られた。
【0048】
ハロゲン化された二糖類誘導体(スクラロース)を含む表1の製剤は、上に記載されるように特徴づけられ、少なくとも22時間にわたって全血中の安定的な血小板活性を有することも確認された(表3)。この研究では、表1に記載されるように、上記のような製剤を、採血の前にヒルジン真空採血管に入れた。
【0049】
【0050】
室温での血液インキュベーション中に、表1の式Fでの-3%と式Eでの-27%と比較して、NF対照条件下の血小板活性は22時間の時点で-40%減少した。
【0051】
文脈上特段の定めのない限り、本明細書と請求項を通して、単語「含む」およびその変異形態、「含む(comprises)」や「含むこと(comprising)」などは、「含むこと(including)」、「含むこと(containing)」、または「~を特徴とする(characterized by)」と交換可能に用いられ、包括的なまたは制約のない言葉であり、追加の列挙されていない要素または方法工程を除外しない。成句「~からなる」は、請求項で特定されていない任意の要素、工程、または成分を除外する。成句「~から本質的になる」は、指定された材料または工程や主題の発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えないものへ請求項の範囲を限定する。本開示はこうした成句の各々の範囲に対応する本発明の組成物や方法の実施形態を企図するものである。したがって、詳述された要素または工程を含む組成物または方法は、組成物または方法がそうした要素または工程から本質的になるまたはそうした要素または工程からなる、特定の実施形態を企図する。
【0052】
明細書全体での「1つの実施形態」または「実施形態」または「態様」についての言及は、実施形態に関して記載された特定の特性、構造、または特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、明細書を通して様々な個所で「1つの実施形態において」または「実施形態において」といった成句が現れても、必ずしも同じ実施形態について言及しているわけでない。さらに、1つ以上の実施形態中の任意の適切な方法で特定の特性、構造、または特徴を組み合わせてもよい。
【0053】
さらなる実施形態を提供するために、上記の様々な実施形態を組み合わせることができる。上記の詳細な記載を考慮して、実施形態に対してあらゆる変更を行うことができる。一般に、以下の請求項において、用語は明細書と請求項で開示された特定の実施形態へ請求項を限定するものと解釈されてはならないが、こうした請求項が与えられる等価物の全範囲にわたってあらゆる実施形態を含むものと解釈されなければならない。従って、請求項は本開示によって限定されない。
【0054】
前述の記載から、本発明の特定の実施形態が例証目的のために本明細書で記載されてきたが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく様々な修正がなされることもあることが理解されよう。従って、本発明は添付の請求項を除いては限定されない。
【0055】
また、本発明は、以下の[1]~[42]に記載の発明であり得る。
[1]周囲温度における1つ以上の血小板の実質的に安定した保存のための製剤であって、1つ以上の血小板は少なくとも6時間の間安定化される、製剤。
[2]1つ以上の血小板は、不活性化された状態で安定化される、[1]に記載の製剤。
[3]1つ以上の血小板は、血液サンプル中に存在する、[1]または[2]に記載の製剤。
[4]1つ以上の血小板は、血液サンプルから単離される、[1]および[2]のいずれか1つに記載の製剤。
[5]血小板の少なくとも90%は、少なくとも6時間の間不活性化された状態で安定化される、[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の製剤。
[6]血小板の少なくとも90%は、少なくとも9時間の間不活性化された状態で安定化される、[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の製剤。
[7]製剤は、
(i)pH緩衝液;
(ii)抗凝血剤;
(iii)少なくとも1つの非還元糖またはポリオール;および
(iv)機能性炭水化物;
を含む、[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の製剤。
[8]製剤は、グリコール、グリセロール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、アドニトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトールイノシトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリオールを含む、[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の製剤。
[9]製剤は、五炭糖ポリオールまたは六炭糖ポリオールを含む、[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の製剤。
[10]五炭糖ポリオールは、アドニトールである、[9]に記載の製剤。
[11]機能性炭水化物は、スクラルファートまたはオクタ硫酸スクロースである、[7]乃至[10]のいずれか1つに記載の製剤。
[12]機能性炭水化物は、オクタ硫酸スクロースである、[7]乃至[10]のいずれか1つに記載の製剤。
[13]非還元糖は、スクロースまたはトレハロースである、[7]乃至[12]のいずれか1つに記載の製剤。
[14]非還元糖は、トレハロースである、[7]乃至[12]のいずれか1つに記載の製剤。
[15]抗凝血剤は、EDTAまたはヒルジンである、[7]乃至[14]のいずれか1つに記載の製剤。
[16]pH緩衝液は、2xリン酸緩衝生理食塩水またはトリス-HClである[7]乃至[15]のいずれか1つに記載の製剤。
[17]周囲温度における1つ以上の血小板の実質的に安定した保存のための製剤であって、該製剤は、ハロゲン化された二糖類誘導体および抗凝血剤を含み、1つ以上の血小板は少なくとも6時間の間安定化される、製剤。
[18]1つ以上の血小板は、不活性化された状態で安定化される、[17]に記載の製剤。
[19]1つ以上の血小板は、血液サンプル中に存在する、[17]または[18]に記載の製剤。
[20]1つ以上の血小板は、血液サンプルから単離されている、[17]および[18]のいずれか1つに記載の製剤。
[21]抗凝血剤は、ヒルジンである[17]乃至[20]のいずれか1つに記載の製剤。
[22]ハロゲン化された二糖類誘導体は、スクラロース(1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド)、トリクロロナートマルトース、1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-6-O-モノドデカノアート-α-D-ガラクトピラノシド、1,6-シクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-6-O-モノテトラデカノアート-α-D-ガラクトピラノシド、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、[17]乃至[21]のいずれか1つに記載の製剤。
[23]製剤は、本質的にヒルジンおよびスクラロース(1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-β-D-フルクトフラノシル-4-クロロ-4-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド)からなる、[17]に記載の製剤。
[24][1]乃至[23]のいずれか1つの製剤と混合させた1つ以上の血小板を含む、不活性化された状態で実質的に安定して保存された1つ以上の血小板の組成物。
[25]1つ以上の血小板は、血液サンプル中に存在する、[24]に記載の組成物。
[26]1つ以上の血小板は、単離された血小板である、[24]に記載の組成物。
[27]製品であって、
採血管内に収容された[1]乃至[23]のいずれか1つの製剤を含む、製品。
[28]採血管は、真空の採血管である、[20]に記載の製品。
[29][27]または[28]の製品、および添付文書を含む、キット。
[30]周囲温度において1つ以上の血小板を実質的に安定して保存する方法であって、該方法は:被検体からの1つ以上の血小板を、[1]乃至[23]のうちいずれか1つの製剤と混合する工程を含み、1つ以上の血小板は少なくとも6時間の間安定化される、方法。
[31]1つ以上の血小板は、不活性化された状態で安定化される、[30]に記載の方法。
[32]1つ以上の血小板は、被検体からの血液サンプル中に存在する、[30]または[31]に記載の方法。
[33]1つ以上の血小板は、被検体からの血液サンプルから単離される、[30]および[31]のいずれか1つに記載の方法。
[34]血小板の少なくとも90%は、少なくとも6時間の間不活性化された状態で安定化される、[30]乃至[33]のいずれか1つに記載の方法。
[35]血小板の少なくとも90%は、少なくとも9時間の間不活性化された状態で安定化される、[30]乃至[34]のいずれか1つに記載の方法。
[36]血小板の凝集を促進するために活性化剤を加えることによって、1つ以上の血小板を活性化させる工程をさらに含む、[30]乃至[35]のいずれか1つに記載の方法。
[37]活性化剤は、ADPである、[36]に記載の方法。
[38]血小板の凝集を促進するために活性化剤を加えることによって、1つ以上の血小板を活性化させる工程をさらに含む、[30]乃至[37]のいずれか1つに記載の方法。
[39]活性化剤は、ADPである、[38]に記載の方法。
[40]被検体は、動物である、[30]乃至[39]のいずれか1つに記載の方法。
[41]被検体は、哺乳動物である、[30]乃至[40]のいずれか1つに記載の方法。
[42]哺乳動物は、ヒトである、[41]に記載の方法。