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特許7174011網膜およびCNS遺伝子治療用AAVベクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】網膜およびCNS遺伝子治療用AAVベクター
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20221109BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N7/01 ZNA
A61K31/7105
A61K31/711
A61K31/713
A61K48/00
A61P27/02
A61P27/06
A61P43/00 105
C12N15/864 100Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020108310
(22)【出願日】2020-06-24
(62)【分割の表示】P 2016564301の分割
【原出願日】2015-05-02
(65)【公開番号】P2020164540
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】61/988,131
(32)【優先日】2014-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/114,575
(32)【優先日】2015-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】エイブラハム・スカリア
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・サリヴァン
(72)【発明者】
【氏名】エム・リサ・スタネック
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/173129(WO,A1)
【文献】J Virol,2007年,Vol.81, No.20,p.11372-11380
【文献】Nat Med,2006年,Vol.12, No.8,p.967-971
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の眼に異種核酸を送達する際に使用するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子であって、
ここで、該rAAV粒子は、該個体の眼に該組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を硝子体投与するために製剤化され、
該rAAV粒子は、
a)AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてA586および/またはT589のアルギニンまたはリシンによる1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むAAVrh8Rカプシドタンパク質を含む、rAAVカプシド:
、および
b)該異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターゲノム
を含む、前記組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【請求項2】
ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づくものである、請求項1に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【請求項3】
前記1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、A586Rの置換を含む、請求項1または2に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【請求項4】
異種核酸は、神経栄養因子、抗アポトーシス因子、抗血管新生因子、および抗炎症因子からなる群から選択されるポリペプチドをコードする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【請求項5】
異種核酸は、次のもの:
Prph2、RPE65、AIPL1、GUCY2D、LCA5、CRX、CEP290、MYO 7a、Clarin、ABCA4、RDH12、IMPDH1、CRB1、LRAT、NMNAT1、TULP1、MERTK、RPGR、RP2、RPGRIP、CNGA3、CNGB3、GNAT2、GDNF、CNTF、FGF2、PEDF、EP
O、BCL2、BCL-X、NFκB、エンドスタチン、アンジオスタチン、sFlt、sPDGF-R、IL10、抗IL17、sIL17R、IL1-ra、抗TGFβ、sTNF-R I、sTNF-R IIおよびIL4
からなる群から選択されるポリペプチドをコードする、請求項4に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【請求項6】
異種核酸は、治療用核酸をコードする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【請求項7】
治療用核酸は、siRNA、shRNA、RNAi、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイムまたはDNAザイムである、請求項6に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【請求項8】
異種核酸は、網膜において発現されるプロモーター配列の制御下にある、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【請求項9】
プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、オプシンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターまたはニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである、請求項8に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【請求項10】
個体はヒトであり、そして
異種核酸は:
常染色体劣性重症早期発症型網膜変性(レーバー先天黒内障)、先天性色覚異常、シュタルガルト病、ベスト病、ドイン病、錐体ジストロフィー、網膜色素変性、X連鎖性網膜分離症、アッシャー症候群、加齢性黄斑変性、萎縮性加齢性黄斑変性、血管新生AMD、糖尿病黄斑症、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、嚢胞様黄斑浮腫、中心性漿液性網膜症、網膜剥離、眼内炎症、緑内障および後部ぶどう膜炎からなる群から選択される眼障害を処置するために使用される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年5月2日に出願した米国特許仮出願第61/988,131号および2015年2月10日に出願した米国特許仮出願第62/114,575号の優先権の利益を主張するものであり、前記仮出願の各々は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出内容は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている:コンピュータ読み取り可能な形式(CRF)の配列表(ファイル名:159792010440SEQLIST.txt、データ記録日:2015年4月29日、サイズ:85KB)。
【0003】
本発明は、眼およびCNSへの送達向上のための;例えば、網膜遺伝子治療向上およびCNS遺伝子療法向上のための、変異型組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターに関する。
【背景技術】
【0004】
網膜変性疾患は、アデノ随伴ウイルス(AAV)媒介遺伝子治療の有望な的である。AAVベクターは、網膜における長期遺伝子発現を媒介することができ、惹起しうる免疫応答が極小であるため、これらのベクターは眼への遺伝子送達の魅力的な選択肢となっている。網膜は、光受容器細胞、網膜色素性上皮細胞および網膜神経節細胞をはじめとする様々な細胞タイプで構成されている、眼球の後ろ側にある光を感知する組織である。AAV遺伝子治療ベクターの標的細胞タイプおよびベクター送達経路は、疾患の兆候に依存することになる。例えば、加齢性黄斑変性の第I相治験では、網膜神経節細胞への形質導入を実現するためにベクターの硝子体内送達が利用されており、網膜色素変性の1形態であるレーバー先天黒内障2型を有する患者の処置の最近の治験では、網膜色素性上皮細胞への形質導入にRPE65遺伝子の網膜下送達が用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Kaplitt,M.G.ら(2007)Lancet 369:2097~2105頁
【文献】Eberling,J.L.ら(2008)Neurology 70:1980~1983頁
【文献】Fiandaca,M.S.ら(2009)Neuroimage.47 補遺2:T27~35頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのような有用性にかんがみて、眼へのAAV送達を向上させるための新規薬剤および方法を開発する必要がある。
【0007】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクターは、神経遺伝子治療に好まれるベクター系にもなってきており、優れた安定性が複数の治験で記録されている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。しかし、神経障害の有効な処置は、罹患細胞集団へのAAVベクターの送達に関連する問題によって大きく妨げられてきた。この送達の問題点は
、中枢神経系(CNS)が関わる障害について特に問題になっている。したがって、CNSへのAAV送達を向上させることがさらに必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの態様において、本発明は、個体の眼に異種核酸を送達する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該個体の網膜下に投与することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型2(AAV2)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、眼またはCNSの細胞へのrAAV粒子による形質導入効率を増加させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、眼またはCNSの細胞へのrAAV粒子による形質導入効率を、例えば、野生型AAVカプシドタンパク質を含む参照rAAVカプシドと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加させる。いくつかの実施形態において、眼の細胞は、網膜細胞、光受容器細胞、網膜色素性上皮細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、ミュラー細胞および/または神経節細胞である。いくつかの実施形態において、CNSの細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして484、487、527、532、585または588位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号1のアミノ酸配列を含むAAV2のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号2、4および/または6に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、R532位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484およびR487位におけるまたはR585およびR588位における置換を含む。さらなる実施形態において、1つま
たはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484AおよびR487A置換またはR585AおよびR588A置換を含む。さらなる実施形態において、AAVカプシドは、AAV-2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換R585AおよびR588Aを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV6カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8Rカプシド、AAV9カプシド、またはAAVrh10カプシドを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533、586または589位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、AAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528または533位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。他の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有さないアミノ酸残基の、正電荷を有するアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、正電荷を有するアミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アラニン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528または533位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてR485、R488、R533またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、R533A置換を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV6もしくはAAV9カプシドを含み、1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV1、AAV6もしくはAAV9のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533、586および/もしくは589位におけるものであり;ならびに/またはrAAV粒子は、AAV8もしくはAAVrh10カプシドを含み、1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV8もしくはAAVrh10のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして487、490、535、588および/もしくは591位におけるものである
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、HSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシド、および治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする異種核酸を含むrAAVベクターを含む。いくつかの実施形態において、異種核酸は、抗酸化物質、神経栄養因子、抗アポトーシス因子、抗血管新生因子、および抗炎症因子からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。さらなる実施形態において、異種核酸は、次のものからなる群から選択されるポリペプチドをコードする:Prph2、RPE65、AIPL1、GUCY2D、LCA5、CRX、CEP290、MYO 7a、クラリン、ABCA4、RDH12、IMPDH1、CRB1、LRAT、NMNAT1、TULP1、MERTK、RPGR、RP2、RPGRIP、CNGA3、CNGB3、GNAT2、GDNF、CNTF、FGF2、PEDF、EPO、BCL2、BCL-X、NFκB、エンドスタチン、アンジオスタチン、sFlt、sPDGF-R、IL10、抗IL17、sIL17R、IL1-ra、抗TGFβ、sTNF-R I、sTNF-R II、およびIL4。他の実施形態において、異種核酸は、治療用核酸をコードする。さらなる実施形態において、治療用核酸は、siRNA、shRNA、RNAi、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイムまたはDNAザイムである。いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、自己相補型rAAVベクターである。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、HSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシド、および治療用ポリペプチドもしくは治療用核酸をコードする異種核酸を含み、前記異種核酸は、網膜において発現されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、1つまたはそれ以上の網膜細胞タイプにおける治療用ポリペプチドまたは治療用核酸の発現に好適なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、網膜細胞は、光受容器細胞、網膜色素性上皮細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、ミュラー細胞および/または神経節細胞である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、オプシンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、HSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシド、および個体の網膜への異種核酸の送達のための異種核酸を含む。いくつかの実施形態において、個体はヒトである。いくつかの実施形態において、異種核酸は、次のものからなる群から選択される眼障害を処置するために使用される:常染色体劣性重症早期発症型網膜変性(レーバー先天黒内障)、先天性色覚異常、シュタルガルト病、ベスト病、ドイン病、錐体ジストロフィー、網膜色素変性、X連鎖性網膜分離症、アッシャー症候群、加齢性黄斑変性、萎縮性加齢性黄斑変性、血管新生AMD、糖尿病黄斑症、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、嚢胞様黄斑浮腫、中心性漿液性網膜症、網膜剥離、眼内炎症、緑内障および後部ぶどう膜炎。
【0015】
いくつかの態様において、本発明は、個体の眼へのrAAV粒子の網膜下送達後の細胞へのrAAV形質導入を、野生型カプシドを含むrAAVでの細胞への形質導入と比較して向上させる方法であって、AAVカプシドタンパク質に、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置において、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を組み込むことを含み;該rAAV粒子は、rAAVカプシドタンパク質、および異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。
【0016】
他の態様において、本発明は、個体の眼へのrAAV粒子の網膜下送達後の異種核酸発現を向上させる方法であって、AAVカプシドタンパク質に、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置において、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を組み込むことを含み;該rAAV粒子は、rAAVカプシドタンパク質、および異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、形質導入が向上されたおよび/または異種核酸の発現が向上されたrAAV粒子は、AAV血清型2(AAV2)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。
【0018】
いくつかの実施形態において、形質導入が向上されたおよび/または異種核酸の発現が向上されたrAAV粒子は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして484、487、527、532、585または588位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号1のアミノ酸配列を含むAAV2のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号2、4および/または6に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484およびR487位におけるまたはR585およびR588位における置換を含む。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484AおよびR487A置換またはR585AおよびR588A置換を含む。さらなる実施形態において、AAVカプシドは、AAV-
2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換R585AおよびR588Aを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV6カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8Rカプシド、AAV9カプシド、またはAAVrh10カプシドを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、形質導入が向上されたおよび/または異種核酸の発現が向上されたrAAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533、586または589位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528または533位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。他の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有さないアミノ酸残基の、正電荷を有するアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、正電荷を有するアミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アラニン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528または533位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてR485、R488、R533またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、R533A置換を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、形質導入が向上されたおよび/または異種核酸の発現が向上されたrAAV粒子は、HSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシド、および治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする異種核酸を含むrAAVベクターを含む。いくつかの実施形態において、異種核酸は、抗酸化物質、神経栄養因子、抗アポトーシス因子、抗血管新生因子、および抗炎症因子からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。さらなる実施形態において、異種核
酸は、次のものからなる群から選択されるポリペプチドをコードする:Prph2、RPE65、AIPL1、GUCY2D、LCA5、CRX、CEP290、MYO 7a、クラリン、ABCA4、RDH12、IMPDH1、CRB1、LRAT、NMNAT1、TULP1、MERTK、RPGR、RP2、RPGRIP、CNGA3、CNGB3、GNAT2、GDNF、CNTF、FGF2、PEDF、EPO、BCL2、BCL-X、NFκB、エンドスタチン、アンジオスタチン、sFlt、sPDGF-R、IL10、抗IL17、sIL17R、IL1-ra、抗TGFβ、sTNF-R I、sTNF-R II、およびIL4。他の実施形態において、異種核酸は、治療用核酸をコードする。さらなる実施形態において、治療用核酸は、siRNA、shRNA、RNAi、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイムまたはDNAザイムである。いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、自己相補型rAAVベクターである。
【0021】
いくつかの実施形態において、形質導入が向上されたおよび/または異種核酸の発現が向上されたrAAV粒子は、HSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシド、および治療用ポリペプチドもしくは治療用核酸をコードする異種核酸を含み、前記異種核酸は、網膜において発現されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、1つまたはそれ以上の網膜細胞タイプにおける治療用ポリペプチドまたは治療用核酸の発現に好適なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、網膜細胞は、光受容器細胞、網膜色素性上皮細胞および/または神経節細胞である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、オプシンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。
【0022】
いくつかの実施形態において、形質導入が向上されたおよび/または異種核酸の発現が向上されたrAAV粒子は、HSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシド、および個体の網膜への異種核酸の送達のための異種核酸を含む。いくつかの実施形態において、個体はヒトである。いくつかの実施形態において、異種核酸は、次のものからなる群から選択される眼障害を処置するために使用される:常染色体劣性重症早期発症型網膜変性(レーバー先天黒内障)、先天性色覚異常、シュタルガルト病、ベスト病、ドイン病、錐体ジストロフィー、網膜色素変性、X連鎖性網膜分離症、アッシャー症候群、加齢性黄斑変性、萎縮性加齢性黄斑変性、血管新生AMD、糖尿病黄斑症、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、嚢胞様黄斑浮腫、中心性漿液性網膜症、網膜剥離、眼内炎症、緑内障および後部ぶどう膜炎。
【0023】
いくつかの態様において、本発明は、個体(例えばヒト)の眼障害を処置する方法であって、rAAV粒子を含む組成物の個体の網膜への送達を含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型2(AAV2)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を低
減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記方法は、個体(例えばヒト)の眼障害の処置に使用される異種核酸をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子の網膜下送達を含み、前記rAAV粒子は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして484、487、527、532、585または588位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号1のアミノ酸配列を含むAAV2のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号2、4および/または6に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484およびR487位におけるまたはR585およびR588位における置換を含む。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484AおよびR487A置換またはR585AおよびR588A置換を含む。さらなる実施形態において、AAVカプシドは、AAV-2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換R585AおよびR588Aを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV6カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8Rカプシド、AAV9カプシド、またはAAVrh10カプシドを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記方法は、個体(例えばヒト)の眼障害の処置に使用される異種核酸をコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子の網膜下送達を含み、前記rAAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533、586または589位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528または533位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。他の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有さないアミノ酸残基の、正電荷を有するアミノ酸残基に
よる置換を含む。いくつかの実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、正電荷を有するアミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アラニン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528または533位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてR485、R488、R533またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、R533A置換を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記方法は、rAAV粒子の網膜下送達を含み、前記rAAV粒子は、個体(例えばヒト)の眼障害の処置に使用される異種核酸をコードするrAAVベクター、およびHSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシドを含む。いくつかの実施形態において、異種核酸は、抗酸化物質、神経栄養因子、抗アポトーシス因子、抗血管新生因子、および抗炎症因子からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。さらなる実施形態において、異種核酸は、次のものからなる群から選択されるポリペプチドをコードする:Prph2、RPE65、AIPL1、GUCY2D、LCA5、CRX、CEP290、MYO 7a、クラリン、ABCA4、RDH12、IMPDH1、CRB1、LRAT、NMNAT1、TULP1、MERTK、RPGR、RP2、RPGRIP、CNGA3、CNGB3、GNAT2、GDNF、CNTF、FGF2、PEDF、EPO、BCL2、BCL-X、NFκB、エンドスタチン、アンジオスタチン、sFlt、sPDGF-R、IL10、抗IL17、sIL17R、IL1-ra、抗TGFβ、sTNF-R I、sTNF-R II、およびIL4。他の実施形態において、異種核酸は、治療用核酸をコードする。さらなる実施形態において、治療用核酸は、siRNA、shRNA、RNAi、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイムまたはDNAザイムである。いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、自己相補型rAAVベクターである。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記方法は、rAAV粒子の網膜下送達を含み、前記rAAV粒子は、個体(例えばヒト)の眼障害の処置に使用される異種核酸をコードするrAAVベクター、およびHSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシドを含み、前記異種核酸配列は、網膜において発現されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、1つまたはそれ
以上の網膜細胞タイプにおける治療用ポリペプチドまたは治療用核酸の発現に好適なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、網膜細胞は、光受容器細胞、網膜色素性上皮細胞および/または神経節細胞である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、オプシンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記方法は、rAAV粒子の網膜下送達を含み、前記rAAV粒子は、個体(例えばヒト)の眼障害の処置に使用される異種核酸をコードするrAAVベクター、およびHSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシドを含み、前記眼障害は、次のものからなる群から選択される:常染色体劣性重症早期発症型網膜変性(レーバー先天黒内障)、先天性色覚異常、シュタルガルト病、ベスト病、ドイン病、錐体ジストロフィー、網膜色素変性、X連鎖性網膜分離症、アッシャー症候群、加齢性黄斑変性、萎縮性加齢性黄斑変性、血管新生AMD、糖尿病黄斑症、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、嚢胞様黄斑浮腫、中心性漿液性網膜症、網膜剥離、眼内炎症、緑内障および後部ぶどう膜炎。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記方法は、rAAV粒子を含む組成物の網膜下送達を含み、前記rAAV粒子は、個体(例えばヒト)の眼障害の処置に使用される異種核酸をコードするrAAVベクター、およびHSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシドを含む。いくつかの実施形態において、組成物中の粒子の濃度は、約1×10DRP/ml~約1×1014DRP/mlである。いくつかの実施形態において、rAAV粒子の組成物は、個体の視覚機能の処置に有効である。いくつかの実施形態において、視覚機能は、微小視野測定、暗順応視野測定、視覚の動きの評価、視力、ERG、または読字評価によって評価される。いくつかの実施形態において、前記方法は、個体の視覚機能の向上をもたらす。いくつかの実施形態において、前記方法は、眼障害の進行に起因するヒトの視覚機能低下の進行の予防または減速をもたらす。
【0030】
いくつかの態様において、本発明は、個体の眼へのベクターの網膜下送達のためのシステムであって、a)有効量のrAAV粒子を含む組成物[ここで、i)該rAAV粒子のカプシドタンパク質は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、ii)該ベクターは、治療用ポリペプチドまたは治療用RNAをコードする異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含む];およびb)該rAAVの網膜送達のためのデバイスを含む、前記システムを提供する。いくつかの実施形態において、デバイスは、細径カニューレおよび注射器を含み、前記細径カニューレは、27~45ゲージである。いくつかの実施形態において、rAAV粒子の組成物は、注射器内に収容されている。いくつかの実施形態において、カニューレは、注射器に取り付けられている。いくつかの実施形態において、組成物中の粒子の濃度は、約1×10DRP/ml~約1×1014DRP/mlである。
【0031】
いくつかの実施形態において、システムのrAAV粒子は、HSPG結合を改変する(例えば、結合を低減または除去する)1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むAAV2カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、眼またはCNSの細胞へのrAAV粒子による形質導入効率を増加させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、眼またはCNSの細胞へのrAAV粒子による形質導入効率を、例えば、野生型AAVカプシドタンパク質を含む参照rAAVカプシドと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加させる。いくつかの実施形態において、眼の細胞は、網膜細胞、光受容器細胞、網膜色素性上皮細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、ミュラー細胞および/または神経節細胞である。いくつかの実施形態において、CNSの細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。
【0032】
いくつかの実施形態において、システムのrAAV粒子は、HSPG結合を改変する(例えば、結合を低減または除去する)1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むAAV2カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして484、487、527、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号1のアミノ酸配列を含むAAV2のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号2、4および/または6に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484およびR487位におけるまたはR585およびR588位における置換を含む。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484AおよびR487A置換またはR585AおよびR588A置換を含む。さらなる実施形態において、AAVカプシドは、AAV-2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換R585AおよびR588Aを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV6カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8Rカプシド、AAV9カプシド、またはAAVrh10カプシドを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、システムのrAAV粒子は、HSPG結合を改変する(例えば、結合を低減または除去する)1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むAAV2カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、
AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533、586または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。他の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有さないアミノ酸残基の、正電荷を有するアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、正電荷を有するアミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アラニン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてR485、R488、R533またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、R533A置換を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、システムのrAAV粒子は、HSPG結合を改変する(例えば、結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を有するAAVカプシド、および異種核酸を含むrAAVベクターを含む。いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、抗酸化物質、神経栄養因子、抗アポトーシス因子、抗血管新生因子、および抗炎症因子からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。さらなる実施形態において、異種核酸は、次のものからなる群から選択されるポリペプチドをコードする:Prph2、RPE65、AIPL1、GUCY2D、LCA5、CRX、CEP290、MYO 7a、クラリン、ABCA4、RDH12、IMPDH1、CRB1、LRAT、NMNAT1、TULP1、MERTK、RPGR、RP2、RPGRIP、CNGA3、CNGB3、GNAT2、GDNF、CNTF、FGF2、PEDF、EPO、BCL2、BCL-X、NFκB、エンドスタチン、アンジオスタチン、sFlt、sPDGF-R、IL10、抗IL17、sIL17R、IL1-ra、抗TGFβ、sTNF-R I、sTNF-R II、およびIL4。他の実施形態において、異種核酸は、治療用核酸をコードする。さらなる実施形態において、治療用核酸は、siRNA、RNAi、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイムまたはDNAザイムである。いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、自己相補型rAAVベクターである。
【0035】
いくつかの実施形態において、システムのrAAV粒子は、HSPG結合を改変する(
例えば、結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を有するAAVカプシド、および異種核酸を含むrAAVベクターを含み、前記異種核酸は、網膜において発現されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、1つまたはそれ以上の網膜細胞タイプにおける治療用ポリペプチドまたは治療用核酸の発現に好適なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、網膜細胞は、光受容器細胞、網膜色素性上皮細胞および/または神経節細胞である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、オプシンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。
【0036】
いくつかの実施形態において、HSPG結合を改変する(例えば、結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を有するAAVカプシド、および異種核酸を含むrAAVベクターを含むシステムのrAAV粒子は、個体の網膜への該異種核酸の送達に使用される。いくつかの実施形態において、個体はヒトである。いくつかの実施形態において、異種核酸は、次のものからなる群から選択される眼障害を処置するために使用される:常染色体劣性重症早期発症型網膜変性(レーバー先天黒内障)、先天性色覚異常、シュタルガルト病、ベスト病、ドイン病、錐体ジストロフィー、網膜色素変性、X連鎖性網膜分離症、アッシャー症候群、加齢性黄斑変性、萎縮性加齢性黄斑変性、血管新生AMD、糖尿病黄斑症、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、嚢胞様黄斑浮腫、中心性漿液性網膜症、網膜剥離、眼内炎症、緑内障および後部ぶどう膜炎。
【0037】
いくつかの態様において、本発明は、個体の中枢神経系(CNS)に異種核酸を送達する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該個体のCNSに投与することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体の中枢神経系(CNS)の細胞へのrAAV形質導入を、野生型カプシドを含むrAAVでの細胞への形質導入と比較して向上させる方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該個体のCNSに投与することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、個体の中枢神経系(CNS)における異種核酸の発現を向上させる方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該個体のCNSに投与することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つの
AAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。なおさらなる態様において、本発明は、個体の中枢神経系(CNS)の障害を処置する方法であって、rAAV粒子を含む組成物の有効量を該個体のCNSに投与することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。
【0038】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、異種核酸は、参照rAAVカプシドを含むrAAV粒子の異種核酸の発現レベルと比較して増加された発現レベルで発現される。いくつかの実施形態において、核酸の発現は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、参照rAAVカプシドを含むrAAV粒子と比較して低減された神経炎症をもたらす。いくつかの実施形態において、神経炎症は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型2(AAV2)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を、参照rAAVカプシドを含むrAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合と比較して低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を、参照カプシドを含むrAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合と比較して少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。いくつかの実施形態において、参照rAAVカプシドは、野生型rAAVカプシドまたはカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、参照rAAVカプシドは、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換がないrAAVカプシドまたはカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、眼またはCNSの細胞へのrAAV粒子による形質導入効率を増加させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、眼またはCNSの細胞へのrAAV粒子による形質導入効率を、例えば、野生型AAVカプシドタンパク質を含む参照rAAVカプシドと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加させる。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV6カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8Rカプシド、AAV9カプシド、またはAAVrh10カプシドを含む。
【0039】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、投与は、直接脊髄注射および/または脳内投与を含む。いくつかの実施形態において、脳内投与は、大脳、髄質、脳橋、小脳、頭蓋内腔、脳を覆っている髄膜、硬膜、くも膜、脳軟膜、脳を取り囲むくも膜下腔の脳脊髄液(CSF)、小脳の深部小脳核、大脳の脳室系、くも膜下腔、線条体、皮質、中隔、視床、視床下部、および脳実質からなる群から選択される部位に対するものである。いくつかの実施形態において、投与は、少なくとも1つの大脳側脳室への側脳室内注
射である。いくつかの実施形態において、投与は、頸部、胸部および/または腰部におけるくも髄腔内注射である。いくつかの実施形態において、投与は、線条体内注射である。いくつかの実施形態において、投与は、視床内注射である。いくつかの実施形態において、投与は、実質内注射である。いくつかの実施形態において、投与は、直接脊髄注射、頭蓋内および/または脳内投与を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、単一部位に対して投与される。
【0040】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、rAAV粒子は、定位送達によって送達される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、対流強化送達によって送達される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、CED送達システムを使用して投与される。いくつかの実施形態において、CED送達システムは、カニューレおよび/またはポンプを含む。いくつかの実施形態において、カニューレは、逆流防止カニューレまたは段付きカニューレである。いくつかの実施形態において、ポンプは、手動ポンプである。いくつかの実施形態において、ポンプは、浸透圧ポンプである。いくつかの実施形態において、ポンプは、注入ポンプである。
【0041】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、CNSの1つまたはそれ以上の細胞上で発現される。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。いくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、ニューロン上で発現される。
【0042】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞において発現される。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。いくつかの実施形態において、異種核酸は、ニューロンにおいて発現される。いくつかの実施形態において、異種核酸は、ニューロンにおいて排他的に発現される。
【0043】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして448、451、484、487、527、532、585および/または588におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして484、487、527、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号1のアミノ酸配列を含むAAV2のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR347、R350、K390、K395、R448、R451、R484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号2、4および/または6に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なく
とも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R347A、R350A、K390A、K395A、R448A、R451A、R484A、R487A、K527A、K532A、R585Aおよび/またはR588A置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484およびR487位におけるまたはR585およびR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484AおよびR487A置換またはR585AおよびR588A置換を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換R585AおよびR588Aを含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換K532Aを含む。
【0044】
1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533、586または589におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。他の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有さないアミノ酸残基の、正電荷を有するアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、正電荷を有するアミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アラニン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVPナンバリング1に基づいてナンバリングしてR485、R488、R533またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、R533A置換を含む。
【0045】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、CNS関連遺伝子をコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、酵素、神経栄養因子、CNS関連障害を有する個体において欠乏または突然変異ポリペプチド、抗酸化物質、抗アポトーシス因子、抗血管新生因子、および抗炎症因子、α-シヌクレイン、酸性β-グルコシダーゼ(GBA)、β-ガラクトシダーゼ-1(GLB1)、イズロン酸2-
スルファターゼ(IDS)、ガラクトシルセラミダーゼ(GALC)、マンノシダーゼ、α-D-マンノシダーゼ(MAN2B1)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、偽アリールスルファターゼA(ARSA)、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(GNPTAB)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)、ニーマン・ピックCタンパク質(NPC1)、酸性α-1,4-グルコシダーゼ(GAA)、ヘキソサミニダーゼβサブユニット、HEXB、N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(MPS3A)、N-α-アセチルグルコサミニダーゼ(NAGLU)、ヘパリンアセチル-CoA、α-グルコサミニダーゼN-アセチルトランスフェラーゼ(MPS3C)、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ(GNS)、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(NAGA)、β-グルクロニダーゼ(GUSB)、ヘキソサミニダーゼαサブユニット(HEXA)、ハンチンチン(HTT)、リソソーム酸性リパーゼ(LIPA)、アスパルチルグルコサミニダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、トリペンチジルペプチダーゼ、リソソーム膜貫通タンパク質、システイン輸送体、酸性セラミダーゼ、酸性α-L-フコシダーゼ、カテプシンA、α-L-イズロニダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ、酸性β-ガラクトシダーゼ、またはα-ノイラミダーゼからなる群から選択されるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、神経細胞アポトーシス抑制タンパク質(NAIP)、神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来成長因子(GDNF)、脳由来成長因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、GTP-シクロヒドロラーゼ(GTPCH)、アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)、抗酸化物質、抗血管新生性ポリペプチド、抗炎症性ポリペプチド、およびアスパルトアシラーゼ(ASPA)からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、治療用核酸は、siRNA、shRNA、RNAi、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイムまたはDNAザイムである。いくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞において発現されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、伸長因子1-αプロモーター(EF1-α)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターからなる群から選択されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞における治療用ポリペプチドまたは治療用核酸の発現に好適なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、脳の1つまたはそれ以上の細胞を含む。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。いくつかの実施形態において、脳の細胞はニューロンである。
【0046】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、rAAVベクターは、自己相補型rAAVベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、異種核酸をコードする第1の核酸配列と、該核酸の相補鎖をコードする第2の核酸配列とを含み、該第1の核酸配列は、その長さの大部分またはすべてにわたって該第2の核酸配列と鎖間塩基
対を形成することができる。いくつかの実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異AAV ITRによって連結されており、該突然変異AAV ITRは、D領域の欠失を含み、かつ末端切断配列の突然変異を含む。
【0047】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、個体はヒトである。
【0048】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの障害を処置するために使用される治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、CNSの障害は、リソソーム蓄積症(LSD)ハンチントン病、てんかん、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、大脳皮質基底核変性症(CBD)、大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD)、前頭側頭型認知症(FTD)、多系統委縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、または脳の癌である。いくつかの実施形態において、障害は、アスパルチルグルコサミン尿症、ファブリー、小児性バッテン病(CNL1)、古典的遅発型小児性バッテン病(CNL2)、若年性バッテン病(CNL3)、CNL4型バッテン、CNL5型バッテン、CNL6型バッテン、CNL7型バッテン、CNL8型バッテン、シスチン症、ファーバー、フコシドーシス、ガラクトシドシアリドーシス、ゴーシェ病1型、ゴーシェ病2型、ゴーシェ病3型、GM1ガングリオシドーシス、ハンター病、クラッベ病、αマンノシドーシス症、βマンノシドーシス症、マロトー・ラミー、異染性白質ジストロフィー症、モルキオA型、モルキオB型、ムコリピドーシス症II/III型、ニーマン・ピック病A型、ニーマン・ピック病B型、ニーマン・ピック病C型、ポンペ病、サンドホッフ病、サンフィリポ病A型、サンフィリポ病B型、サンフィリポC型、サンフィリポD型、シンドラー病、シンドラー・神崎、シアリドーシス、スライ病、テイ・サックス病、およびウォルマン病からなる群から選択されるリソソーム蓄積症である。いくつかの実施形態において、CNSの障害は、ハンチントン病またはパーキンソン病である。
【0049】
いくつかの態様において、本発明は、個体のハンチントン病を処置する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含む組成物の有効量を該個体の線条体に投与することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、ハンチンチンポリペプチドまたはその断片である。いくつかの実施形態において、ハンチンチンポリペプチドまたはその断片は、機能性ハンチンチンポリペプチドまたはその機能性断片である。いくつかの実施形態において、治療用核酸は、ハンチンチンに対するRNAiを含む。いくつかの実施形態において、RNAiは、miRNAである。
【0050】
いくつかの態様において、本発明は、個体のパーキンソン病を処置する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含む組成物の有効量を該個体の線条体に投与することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードす
る。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、TH、GTPCII、GDNF、BDNFおよび/もしくはAADC;またはその断片である。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、AADCまたはその断片である。
【0051】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、異種核酸は、参照rAAVカプシドを含むrAAV粒子の異種核酸の発現レベルと比較して増加された発現レベルで発現される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、参照rAAVカプシドを含むrAAV粒子と比較して低減された神経炎症をもたらす。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型2(AAV2)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を、参照rAAVカプシドを含むrAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合と比較して低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を、参照カプシドを含むrAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合と比較して少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。いくつかの実施形態において、参照rAAVカプシドは、野生型rAAVカプシドまたはカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、参照rAAVカプシドは、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換がないrAAVカプシドまたはカプシドタンパク質を含む。
【0052】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、rAAV粒子は、定位送達によって送達される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、対流強化送達によって送達される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、CED送達システムを使用して投与される。いくつかの実施形態において、カニューレは、逆流防止カニューレまたは段付きカニューレである。いくつかの実施形態において、CED送達システムは、カニューレおよび/またはポンプを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、CED送達システムを使用して投与される。いくつかの実施形態において、ポンプは、手動ポンプである。いくつかの実施形態において、ポンプは、浸透圧ポンプである。いくつかの実施形態において、ポンプは、注入ポンプである。
【0053】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、CNSの1つまたはそれ以上の細胞上で発現される。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。いくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、ニューロン上で発現される。
【0054】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞において発現される。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。いくつかの実施形態において、異種核酸は、ニューロンにおいて発現される。いくつかの実施形態において、異種核酸は、ニューロンにおいて排他的に発現される。
【0055】
1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリ
ングして484、487、527、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号1のアミノ酸配列を含むAAV2のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR347、R350、K390、K395、R448、R451、R484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号2、4および/または6に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R347A、R350A、K390A、K395A、R448A、R451A、R484A、R487A、K527A、K532A、R585Aおよび/またはR588A置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484およびR487位におけるまたはR585およびR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484AおよびR487A置換またはR585AおよびR588A置換を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換R585AおよびR588Aを含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換K532Aを含む。
【0056】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533、586または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528または533位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。他の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有さないアミノ酸残基の、正電荷を有するアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、正電荷を有するアミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アラニン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8
RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてR485、R488、R533またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、R533A置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV6カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8Rカプシド、AAV9カプシド、またはAAVrh10カプシドを含む。
【0057】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞において発現されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、伸長因子1-αプロモーター(EF1-α)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターからなる群から選択されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞における治療用ポリペプチドまたは治療用核酸の発現に好適なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、脳の1つまたはそれ以上の細胞を含む。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。いくつかの実施形態において、脳の細胞はニューロンである。
【0058】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、rAAVベクターは、自己相補型rAAVベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、異種核酸をコードする第1の核酸配列と、該核酸の相補鎖をコードする第2の核酸配列とを含み、該第1の核酸配列は、その長さの大部分またはすべてにわたって該第2の核酸配列と鎖間塩基対を形成することができる。いくつかの実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異AAV ITRによって連結されており、該突然変異AAV ITRは、D領域の欠失を含み、かつ末端切断配列の突然変異を含む。
【0059】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、個体はヒトである。
【0060】
いくつかの態様において、本発明は、上記態様のいずれかにおいて使用するためのキットであって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含み、該rAAV粒子は、a
)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記キットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体の中枢神経系(CNS)に異種核酸を送達するためのキットであって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含む組成物を含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記キットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体の中枢神経系(CNS)障害を処置するためのキットであって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を含む組成物を含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)CNS障害を処置するための異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記キットを提供する。
【0061】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、CNS障害は、ハンチントン病である。いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、ハンチンチンポリペプチドまたはその断片である。いくつかの実施形態において、ハンチンチンポリペプチドまたはその断片は、機能性ハンチンチンポリペプチドまたはその機能性断片である。いくつかの実施形態において、治療用核酸は、ハンチンチンに対するRNAiを含む。いくつかの実施形態において、RNAiは、miRNAである。いくつかの実施形態において、CNS障害は、パーキンソン病である。いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、TH、GTPCII、GDNF、BDNFおよび/もしくはAADC;またはその断片である。いくつかの実施形態において、治療用ポリペプチドは、AADCまたはその断片である。
【0062】
いくつかの態様において、本発明は、上記実施形態のいずれかにおいて使用するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体の中枢神経系(CNS)に異種核酸を送達するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子であって、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体の中枢神経系(CNS)の障害を処置するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子であって、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体のハンチントン病を処置するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子であって、a)ヘパラン硫酸プロ
テオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含み、線条体への送達用に製剤化される、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体のパーキンソン病を処置するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子であって、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含み、線条体への送達用に製剤化される、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体のハンチントン病を処置するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子であって、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含み、(例えば個体のCNSへの)単一部位送達用に製剤化される、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体のパーキンソン病を処置するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子であって、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含み、(例えば個体のCNSへの)単一部位送達用に製剤化される、前記rAAV粒子を提供する。
【0063】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、異種核酸は、参照rAAVカプシドを含むrAAV粒子の異種核酸の発現レベルと比較して増加された発現レベルで発現される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、参照カプシドを含むrAAVカプシドを含むrAAV粒子と比較して低減された神経炎症をもたらす。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型2(AAV2)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を、参照rAAVカプシドを含むrAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合と比較して低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を、参照カプシドを含むrAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合と比較して少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。いくつかの実施形態において、参照rAAVカプシドは、野生型rAAVカプシドまたはカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、参照rAAVカプシドは、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換がないrAAVカプシドまたはカプシドタンパク質を含む
【0064】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、CNSの1つまたはそれ以上の細胞上で発現される。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。いくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、ニューロン上で発現される。
【0065】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞において発現される。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。いくつかの実施形態において、異種核酸は、ニューロンにおいて発現される。いくつかの実施形態において、異種核酸は、ニューロンにおいて排他的に発現される。
【0066】
1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして484、487、527、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR347、R350、K390、K395、R448、R451、R484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号2、4および/または6に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含むrAAV粒子を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R347A、R350A、K390A、K395A、R448A、R451A、R484A、R487A、K527A、K532A、R585Aおよび/またはR588A置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484およびR487位におけるまたはR585およびR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484AおよびR487A置換またはR585AおよびR588A置換を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換R585AおよびR588Aを含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換K532Aを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV6カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8Rカプシド、AAV9カプシド、またはAAVrh10カプシドを含む。
【0067】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533、586または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。他の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有さないアミノ酸残基の、正電荷を有するアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、正電荷を有するアミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アラニン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして、R485、R488、R533またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号11に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有する1つまたはそれ以上のrAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、R533A置換を含む。
【0068】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞において発現されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、伸長因子1-αプロモーター(EF1-α)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターからなる群から選択されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞における治療用ポリペプチドまたは治療用核酸の発現に好適なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、脳の1つまたはそれ以上の細胞を含む。いくつかの実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞は、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、ニューロン、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞である。
【0069】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、rAAVベクターは、自己相補型rAAVベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、異種核酸をコードする第1の核酸配列と、該核酸の相補鎖をコードする第2の核酸配列とを含み、該第1の核酸配列は、その長さの大部分またはすべてにわたって該第2の核酸配列と鎖間塩基対を形成することができる。いくつかの実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異AAV ITRによって連結されており、該突然変異AAV ITRは、D領域の欠失を含み、かつ末端切断配列の突然変異を含む。
【0070】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、個体はヒトである。
【0071】
上記態様および実施形態のいくつかの実施形態において、rAAV粒子は、組成物中のものである。いくつかの実施形態において、組成物は、緩衝剤および/または医薬的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、キットまたはrAAV粒子は、rAAV粒子の組成物のCNSへの送達のための説明書をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットまたはrAAV粒子は、rAAV粒子の組成物の線条体への送達のための説明書をさらに含む。
【0072】
いくつかの態様において、本発明は、AAVrh8Rカプシドタンパク質を含むrAAV粒子であって、該AAVrh8Rカプシドタンパク質は1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、該rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を、野生型AAVrh8Rカプシドタンパク質を含むAAV粒子と比較して増加させる、または該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置におけるものである、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加させる。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして586位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてA586位における置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてA586RまたはA586K置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号10のrAAVカプシドタンパク質を含む。
【0073】
いくつかの態様において、本発明は、AAVrh8Rカプシドタンパク質を含むrAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を増加させる方法であって、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を該カプシドタンパク質に導入することを含み、該1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、該rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を、野生型AAVrh8Rカプシドタンパク質を含むAAV粒子と比較して増加させる、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加させる。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして586位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングしてA586位における置換を含む。いくつかの実施形態において
、アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてA586RまたはA586K置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号10のrAAVカプシドタンパク質を含む。
【0074】
いくつかの態様において、本発明は、個体の網膜に異種核酸を送達する方法であって、該個体に組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を硝子体内投与することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)該異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体の眼へのrAAV粒子の硝子体内送達後の細胞へのrAAV形質導入を、野生型カプシドを含むrAAVでの細胞への形質導入と比較して向上させる方法であって、AAVカプシドタンパク質に、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置において、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を組み込むことを含み;該rAAV粒子は、rAAVカプシドタンパク質、および異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体の眼へのrAAV粒子の硝子体内送達後の異種核酸発現を向上させる方法であって、AAVカプシドタンパク質に、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置において、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を組み込むことを含み;前記rAAV粒子は、rAAVカプシドタンパク質、および異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体の眼障害を処置する方法であって、rAAV粒子を含む組成物を個体の網膜に硝子体内送達することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体の眼へのベクターの硝子体内送達のためのシステムであって、a)有効量のrAAV粒子を含む組成物[ここで、i)該rAAV粒子のカプシドタンパク質は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における、またはアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、ii)該ベクターは、治療量ポリペプチドまたは治療用RNAをコードする異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含む];およびb)該rAAVの硝子体内送達のためのデバイスを含む、前記システムを提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAVrh8R、AAV1、AAV6、AAV8、AAV9またはAAVrh10血清型カプシドを含む。いくつかの態様において、本発明は、眼障害を処置するためのキットであって、a)rAAV粒子を含む組成物[ここで、該rAAV粒子は、i)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置にまたはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およ
びii)眼障害を処置するための異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む];およびb)硝子体内投与に好適な医薬品賦形剤を含む、前記キットを提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAVrh8R、AAV1、AAV6、AAV8、AAV9またはAAVrh10カプシドを含む。いくつかの態様において、本発明は、AAV1カプシドタンパク質を含むrAAV粒子であって、該AAV1カプシドタンパク質は1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、該rAAV粒子の眼の細胞への形質導入効率を、野生型AAV1カプシドタンパク質を含むAAV粒子と比較して増加させる、または該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置におけるものである、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、AAV6カプシドタンパク質を含むrAAV粒子であって、該AAV6カプシドタンパク質は1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、該rAAV粒子の眼の細胞への形質導入効率を、野生型AAV6カプシドタンパク質を含むAAV粒子と比較して増加させる、または該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置におけるものである、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、AAV8カプシドタンパク質を含むrAAV粒子であって、該AAV8カプシドタンパク質は1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、該rAAV粒子の眼の細胞への形質導入効率を、野生型AAV8カプシドタンパク質を含むAAV粒子と比較して増加させる、または該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置におけるものである、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、AAV9カプシドタンパク質を含むrAAV粒子であって、該AAV9カプシドタンパク質は1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、該rAAV粒子の眼の細胞への形質導入効率を、野生型AAV9カプシドタンパク質を含むAAV粒子と比較して増加させる、または該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置におけるものである、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、AAVrh10カプシドタンパク質を含むrAAV粒子であって、該AAVrh10カプシドタンパク質は1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、該rAAV粒子の眼の細胞への形質導入効率を、野生型AAVrh10カプシドタンパク質を含むAAV粒子と比較して増加させる、または該1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置におけるものである、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの態様において、本発明は、AAV3カプシドタンパク質を含むrAAV粒子であって、該AAV3カプシドは、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585または588に対応する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV6カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8Rカプシド、AAV9カプシド、またはAAVrh10カプシドを含む。いくつかの実施形態において、形質導入効率は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加される。
【0075】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子の
ヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を増加させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、眼または中枢神経系の細胞へのrAAV粒子の形質導入効率を、野生型AAVrh8Rカプシドタンパク質を含むAAV粒子と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加させる。いくつかの実施形態において、眼の細胞は、網膜細胞、光受容器細胞、網膜色素性上皮細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、ミュラー細胞および/または神経節細胞である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有さないアミノ酸残基の、正電荷を有するアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基を置き換えている。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アラニン、セリン、グルタミンまたはトレオニン残基のアルギニンまたはリシン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型rh8R(AAVrh8R)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして586および/または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてA586および/またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、A586RまたはA586K置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、T589RまたはT589K置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型1(AAV1)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV1のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして586および/または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、AAV1のVP1は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV1のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてS586および/またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV1のVP1に基づいてナンバリングして、S586RまたはS586K置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV1のVP1に基づいてナンバリングして、T589RまたはT589K置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型6(AAV6)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV6のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして586および/または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号13のアミノ酸配列を含むAAV6のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV6のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてS586および/またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV6のVP1に基づいてナンバリングして、S586R置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV6のVP1に基づいてナンバリングして、T589RまたはT589K置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型8(AAV8)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV8のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして588および/または591位におけるものである。いくつかの実施形態において、AAV8のVP1は、
配列番号14のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV8のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてQ588および/T591位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV8のVP1に基づいてナンバリングして、Q588RまたはQ588K置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV8のVP1に基づいてナンバリングして、T591R置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型9(AAV9)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV9のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして586および/または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、AAV9のVP1は、配列番号15のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV9のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてS586および/A589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV9のVP1に基づいてナンバリングして、S586RまたはS586K置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV9のVP1に基づいてナンバリングして、A589RまたはA589K置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型rh10(AAVrh10)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAVrh10のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして588および/または591位におけるものである。いくつかの実施形態において、AAVrh10のVP1は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAVrh10のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてQ588および/A591位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh10のVP1に基づいてナンバリングして、Q588RまたはQ588K置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh10のVP1に基づいてナンバリングして、A591RまたはA591K置換を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、AAV3カプシドタンパク質を含むrAAV粒子であって、該AAV3カプシドは、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、眼または中枢神経系の細胞へのrAAV粒子の形質導入効率を、野生型AAVrh8Rカプシドタンパク質を含むAAV粒子と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加させる。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV6カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8Rカプシド、AAV9カプシド、またはAAVrh10カプシドを含む。いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、抗酸化物質、神経栄養因子、抗アポトーシス因子、抗血管新生因子、および抗炎症因子からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。
さらなる実施形態において、異種核酸は、次のものからなる群から選択されるポリペプチドをコードする:Prph2、RPE65、AIPL1、GUCY2D、LCA5、CRX、CEP290、MYO 7a、クラリン、ABCA4、RDH12、IMPDH1、CRB1、LRAT、NMNAT1、TULP1、MERTK、RPGR、RP2、RPGRIP、CNGA3、CNGB3、GNAT2、GDNF、CNTF、FGF2、PEDF、EPO、BCL2、BCL-X、NFκB、エンドスタチン、アンジオスタチン、sFlt、sPDGF-R、IL10、抗IL17、sIL17R、IL1-ra、抗TGFβ、sTNF-R I、sTNF-R II、およびIL4。他の実施形態において、異種核酸は、治療用核酸をコードする。さらなる実施形態において、治療用核酸は、siRNA、shRNA、RNAi、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイムまたは
DNAザイムである。いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、自己相補型rAAVベクターである。いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、HSPGとの結合を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減もしくは除去する)1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、527、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含むカプシド、および治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする異種核酸を含み、前記異種核酸は、網膜において発現されるプロモーター配列の制御下にある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、1つまたはそれ以上の網膜細胞タイプにおける治療用ポリペプチドまたは治療用核酸の発現に好適なプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、網膜細胞は、光受容器細胞、網膜色素性上皮細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、ミュラー細胞および/または神経節細胞である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、オプシンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。いくつかの実施形態において、個体はヒトである。いくつかの実施形態において、異種核酸は、次のものからなる群から選択される眼障害を処置するために使用される:常染色体劣性重症早期発症型網膜変性(レーバー先天黒内障)、先天性色覚異常、シュタルガルト病、ベスト病、ドイン病、錐体ジストロフィー、網膜色素変性、X連鎖性網膜分離症、アッシャー症候群、加齢性黄斑変性、萎縮性加齢性黄斑変性、血管新生AMD、糖尿病黄斑症、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、嚢胞様黄斑浮腫、中心性漿液性網膜症、網膜剥離、眼内炎症、緑内障および後部ぶどう膜炎。いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、自己相補型rAAVベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、異種核酸をコードする第1の核酸配列と、該核酸の相補鎖をコードする第2の核酸配列とを含み、該第1の核酸配列は、その長さの大部分またはすべてにわたって該第2の核酸配列と鎖間塩基対を形成することができる。いくつかの実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異AAV ITRによって連結されており、前記突然変異AAV ITRは、D領域の欠失を含み、かつ末端切断配列の突然変異を含む。いくつかの実施形態において、個体はヒトである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、眼または中枢神経系の細胞へのrAAV粒子の形質導入効率を、野生型AAVrh8Rカプシドタンパク質を含むAAV粒子と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加させる。
【0076】
特許出願および公報を含めて、本明細書に引用するすべての参考文献は、それら全体が参照によって組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】ヘパラン硫酸プロテオグリカン結合に関与するカプシド残基、およびAAV2 HBKO突然変異体を生じさせるために導入した突然変異を示す図である。ナンバリングは、VP1アミノ酸配列に基づく。
図2】野生型AAV2粒子(AAV2 CBA-sFLT02)と比較して、HBKO突然変異型AAV2粒子(AAV2 HBKO CBA-sFLT02)で観察された培養中の293細胞への形質導入が減少したことを示す図である。CBAプロモーターを使用してFltの発現を駆動するベクターを有する野生型またはHBKO突然変異型AAV2粒子を注射した48時間後に培養培地中に存在する可溶性Flt(sFLT)の量を測定することによって形質導入をアッセイした。
図3】野生型AAV2粒子(AAV2 CBA-GFP)と比較して、HBKO突然変異型AAV2粒子(AAV2 HBKO CBA-GFP)で観察された培養中の293およびヒーラ細胞への形質導入が減少したこと示す図である。CBAプロモーターを使用してEGFPの発現を駆動するベクターを有する野生型またはHBKO突然変異型AAV2粒子を注射した48時間後に行った細胞の蛍光イメージングによって形質導入をアッセイした。
図4図4Aおよび4Bは、野生型AAV2またはHBKO突然変異型AAV2粒子の硝子体内注射(図4A)または網膜下注射(図4B)時に観察された形質導入を示す図である。Fltをコードするベクターの形質導入後の可溶性Flt(sFLT)の発現によって形質導入をアッセイした。注射したベクターゲノムの数を実験ごとに示す(10または10vg)。
図5】HBKO突然変異型AAV2粒子が硝子体内注射後にマウスの眼に形質導入できないことを示す図である。CBAプロモーターを使用してEGFPの発現を駆動するベクターを有する野生型(AAV2 CBA-GFP)またはHBKO突然変異型(AAV2 HBKO CBA-GFP)AAV2粒子の硝子体内注射をマウスに施し、蛍光顕微鏡法によって切片をイメージングした。
図6】HBKO突然変異型AAV2粒子(AAV2 CBA HBKO)が、網膜下注射後、野生型粒子(AAV2 CBA)と比較して形質導入の有意な増加をもたらすことを示す図である。CBAプロモーターを使用してFltの発現を駆動するベクターを有するAAV2粒子の注射後の可溶性Flt(sFLT)の発現によって形質導入をアッセイした。注射したベクターゲノムの数を示す(10または10vg)。
図7】HBKO突然変異型AAV2粒子(AAV2 HBKO CBA-GFP)が、網膜下注射後、野生型粒子(AAV2 CBA-GFP)と比較して、(表示を付けた通り)光受容器細胞への形質導入の有意な増加をもたらすことを示す図である。CBAプロモーターを使用してEGFPの発現を駆動するベクターを有するAAV2粒子での形質導入後のGFP発現の蛍光画像によって形質導入を測定した。
図8】HBKO突然変異型AAV2粒子(AAV2 RK HBKO)が、網膜下注射後、野生型粒子(AAV2 RK)と比較して光受容器への形質導入の有意な増加をもたらすことを示す図である。ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターを使用してFltの発現を駆動するベクターを有するAAV2粒子の注射後の可溶性Flt(sFLT)の発現によって形質導入をアッセイした。注射したベクターゲノムの数を示す(10または10vg)。
図9図9Aおよび9Bは、野生型マウスにおいてAAV2-EGFP(図9B)と比較した、AAV2HBKO-EGFP(図9A)の線条体内注射30日後のマウス脳におけるEGFP発現を示す図である。各パネルにおけるEGFPの発現をCBAプロモーターによって駆動し、蛍光顕微鏡法を用いて可視化した。
図10図10Aおよび10Bは、YAC128HDマウスにおいてAAV1-miRNA-Htt-GFP(図10B)と比較した、AAV2HBKO-miRNA-Htt-GFP(図10A)の線条体内注射30日後のマウス脳におけるGFP発現を示す図である。miRNA-Htt-GFPベクターは、ヒトHttを標的にする人工miRNAとGFPレポーターとを発現する構築物を指す。各パネルにおけるGFPの発現をCBAプロモーターによって駆動し、蛍光顕微鏡法を用いて3つの異なる倍率(表示を付けた通り、4X、10Xおよび20X)で可視化した。
図11A】未処置対照と比較して、AAV1-miRNA-HttおよびAAV2HBKO-miRNA-Httの注射30日後の線条体マウス脳パンチ片におけるヒトHTT mRNAレベルのqPCR分析を示す図である。
図11B】未処置対照と比較して、AAV1-miRNA-HttおよびAAV2HBKO-miRNA-Httの注射30日後の皮質マウス脳パンチ片におけるヒトHttタンパク質レベルのウエスタンブロット分析を示す図である。
図12図12A~12Cは、未処置対照(図12A)と比較した、AAV2HBKO-miRNA-Htt-GFP(図12B)またはAAV1-miRNA-Htt-GFP(図12C)の注射30日後のYAC128マウス線条体におけるIba1の発現を示す図である。
図13図13A~13Cは、未処置対照(図13A)と比較した、AAV2HBKO-miRNA-Htt-GFP(図13B)またはAAV1-miRNA-Htt-GFP(図13C)の注射30日後のYAC128マウス線条体におけるGFPの発現を示す図である。
図14】ヘパラン硫酸プロテオグリカン結合に関与するカプシド残基をAAV2カプシドとAAVrh8Rカプシド間で比較する図である。ナンバリングは、VP1アミノ酸配列に基づく。
図15】AAV2のヘパラン結合に関与している残基でのAAV2およびAAVrh8Rのアミノ酸アライメントを示す図である。AAVrh8Rアルギニンカプシド修飾の位置を丸で囲む。
図16図16Aは、野生型AAVrh8Rと比較して、AAVrh8R A586R突然変異体によって示されたヒーラ細胞へのin vitro形質導入向上を示す図である。AAVrh8RまたはAAVrh8Rアルギニン修飾ベクターでの感染48時間後の培養培地中のsFLT02によって形質導入モニターした。図16Bは、野生型AAVrh8Rと比較して、AAVrh8R R533A突然変異体によって示されたHeLaRC32細胞へのin vitro形質導入減少を示す図である。AAVrh8RまたはAAVrh8Rアルギニン修飾ベクターでの感染48時間後の培養培地中のsFLT02によって形質導入モニターした。
図17図17A~17Dは、野生型AAVrh8Rと比較して、AAVrh8R A586RおよびR533A突然変異体によって示されたin vitro形質導入レベルを示す図である。AAVrh8R A586R突然変異体(図17B)は、野生型AAVrh8R(図17A)と比較して、NS1細胞へのin vitro形質導入増加を示す。AAVrh8R R533A突然変異体(図17D)は、野生型AAVrh8R(図17C)と比較して、ヒーラ細胞へのin vitro形質導入減少を示す。AAVrh8RまたはAAVrh8Rアルギニン修飾ベクターでの感染48時間後の細胞におけるEGFP発現によって形質導入モニターした。
図18図18Aおよび18Bは、AAVrh8R A586RおよびR533A突然変異体によって示されたC57Bl6マウスにおける網膜下形質導入のレベルを示す図である。(図18A)AAVrh8R A586R突然変異体は、野生型AAVrh8Rと比較して網膜下形質導入減少を示す。AAV2ベクターも試験した。(図18B)AAVrh8R R533A突然変異体は、野生型AAVrh8Rおよびナイーブマウスと比較して網膜下形質導入増加を示す。AAVrh8RまたはAAVrh8Rアルギニン修飾ベクターの網膜下投与30日後にC57Bl6マウスの網膜溶解物中のsFLT02によって形質導入をモニターした。
図19】AAV2、AAVrh8RまたはAAVrh8R-A586Rベクターの硝子体内注射30日後のC57Bl6マウスの網膜溶解物中のsFLT02のレベルを示す図である。
図20】AAVrh8R、AAV1、AAV6、AAV8、AAV9およびAAVrh10とAAV2のヘパラン結合に関与する残基でのアミノ酸アラインメントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本明細書に記載するように、本発明者は、驚くべきことに、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、532、585および/または588に対応するrAAV粒子の修飾が、対象の眼またはCNSへの投与後の細胞への形質導入増加を明示することを発見した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、これらのrAAV粒子は、HSPGとの結合が低減もしくは除去された、またはカプシドの電荷が修飾さたので、該rAAV粒子の投与によって対象の眼もしくはCNSの細胞への形質導入が増加される結果となると考えられる。したがって、本発明は、個体の眼またはCNSに異種核酸を送達する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該個体の眼またはCNSに投与することを含み、該rAAV粒子は、a)
ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、HSPGとの結合の低減または除去をもたらす。
【0079】
いくつかの態様において、本発明は、個体の眼に異種核酸を送達する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該個体の網膜下に投与することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。
【0080】
いくつかの態様において、本発明は、個体の眼へのrAAV粒子の網膜下送達後の細胞へのrAAV形質導入を、野生型カプシドを含むrAAVでの細胞への形質導入と比較して向上させる方法であって、AAVカプシドタンパク質に、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を導入することを含み;該rAAV粒子は、rAAVカプシドタンパク質、および異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、HSPGとの結合の低減または除去をもたらす。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV2のVP1(配列番号1)に基づいてナンバリングして、rAAV2のR585AおよびR588A置換を含むカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAVrh8RのVP1(配列番号9)に基づいてナンバリングして、AAVrh8RのA586Rおよび/またはR533A置換を含むカプシドを含む。
【0081】
rAAV粒子の網膜下送達後の異種核酸の発現を向上させる方法であって、AAVカプシドタンパク質に、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を組み込むことを含み;該rAAV粒子は、rAAVカプシドタンパク質、および異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、HSPGとの結合の低減または除去をもたらす。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV2のVP1(配列番号1)に基づいてナンバリングして、rAAV2のR585AおよびR588A置換を含むカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAVrh8RのVP1(配列番号9)に基づいてナンバリングして、AAVrh8RのA586Rおよび/またはR533A置換を含むカプシドを含む。
【0082】
いくつかの態様において、本発明は、個体の眼へのrAAV粒子の網膜下送達後の異種核酸の発現を向上させる方法であって、AAVカプシドタンパク質に、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を導入することを含み;該rAAV粒子は、rAAVカプシドタンパク質、および異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。形質導入の向上は、野生型カプシドを含むrAAV粒子に匹敵する。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、HSPGとの結合の低減または除去をもたらす。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV2のVP1(配列番号1)に基づいてナンバリングして、rAAV2カプシドのR585AおよびR588A置換を含むカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAVrh8RのVP1(配列番号9)に基づいてナンバリングして、AAVrh8RのA586Rおよび/またはR533A置換を含むカプシドを含む。
【0083】
いくつかの態様において、本発明は、個体の眼障害を処置する方法であって、rAAV粒子の有効量を含む組成物の個体の網膜への送達を含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、HSPGとの結合の低減または除去をもたらす。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV2のVP1(配列番号1)に基づいてナンバリングして、rAAV2のR585AおよびR588A置換を含むカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAVrh8RのVP1(配列番号9)に基づいてナンバリングして、AAVrh8RのA586Rおよび/またはR533A置換を含むカプシドを含む。
【0084】
本発明はまた、個体の眼へのベクターの網膜下送達のためのシステムであって、a)rAAV粒子の有効量を含む組成物[ここで、i)該rAAV粒子のカプシドタンパク質は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、ii)該ベクターは、治療用ポリペプチドまたは治療用RNAをコードする異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含む];およびb)該rAAVの網膜送達のためのデバイスを含む、前記システムを提供する。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、HSPGとの結合の低減または除去をもたらす。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV2のVP1(配列番号1)に基づいてナンバリングして、rAAV2のR585AおよびR588A置換を含むカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAVrh8RのVP1(配列番号9)に基づいてナンバリングして、AAVrh8RのA586Rおよび/またはR533A置換を含むカプシドを含む。
【0085】
いくつかの態様において、本発明は、個体の中枢神経系(CNS)に異種核酸を送達する方法であって、該個体のCNSに組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を投与することを含む前記方法をさらに提供する。rAAV粒子は、(a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、および(b)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む。これらの方法は、個体のCNSへのrAAV粒子の送達後、例えば野生型カプシドを含むrAAVでの細胞への形質導入と比較して、細胞の異種核酸発現および/または細胞へのrAAV形質導入の向上を示す。さらに、本発明の方法は、特定の細胞(例えば、ニューロン)を感染させることができ、その上、広範かつ強い形質導入効率をなお達成することができる。そのようなrAAV粒子および方法は、ハンチントン病を含む(しかしこれに限定されない)CNS障害の処置に好適である。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、HSPGとの結合の低減または除去をもたらす。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV2のVP1(配列番号1)に基づいてナンバリングして、rAAV2のR585AおよびR588A置換を含むカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAVrh8RのVP1(配列番号9)に基づいてナンバリングして、AAVrh8RのA586Rおよび/またはR533A置換を含むカプシドを含む。
【0086】
本発明は、rAAV粒子を含むキットまたはrAAV粒子を含有する組成物を含むキットであって、該rAAV粒子は、(a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、および(b)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを有する、前記キットも提供する。これらのキットは、個体の眼またはCNSへの異種核酸の送達に有用であることはもちろん、個
体の眼またはCNS障害の処置(例えば、網膜症またはハンチントン病の処置)にも有用である。
【0087】
I.一般技術
本明細書に記載するまたは本明細書中で参照する技術および手順は一般によく理解されており、当業者によって、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2012);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら、2003);the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編、1995);Antibodies、A Laboratory Manual(Harlow and Lane編、1988);Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications(R.I.Freshney、第6版、J.Wiley and Sons、2010);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、Academic Press、1998);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、Plenum Press、1998);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、J.Wiley and Sons、1993~8頁);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1996);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、J.Wiley and Sons、2002);Immunobiology(C.A.Janewayら、2004);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company、2011)のような従来の方法論を用いて一般に利用される。
【0088】
II.定義
「ベクター」は、本明細書で用いる場合、in vitroまたはin vivoのい
ずれかで宿主細胞に送達される核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0089】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で用いる場合、任意の長さの重合体形態のヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、を指す。したがって、この用語は、一本鎖、二本鎖もしくは多鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基または他の天然、化学もしくは生化学修飾、非天然もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含む重合体を含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドの主鎖は、(RNAもしくはDNAにおいて通常見いだされるように)糖およびリン酸エステル基を含むことがあり、または修飾もしくは置換されている糖もしくはリン酸エステル基を含むこともある。あるいは、ポリヌクレオチドの主鎖は、ホスホルアミデートなどの合成サブユニットの重合体を含むことがあり、したがって、オリゴデオキシヌクレオシドホスホルアミデート(P-NH)または混合ホスホルアミデート-ホスホジエステルオリゴマーであることがある。加えて、二本鎖ポリヌクレオチドは、化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド生成物から、相補鎖の合成およびそれらの鎖の適切な条件下でのアニーリングによって、またはDNAポリメラーゼと適切なプライマーを使用する相補鎖のデノボ合成によって、得ることができる。
【0090】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体を指すために同義で用いており、最小長に限定されない。アミノ酸残基のそのような重合体は、天然アミノ酸残基を含有することもあり、または非天然アミノ酸残基を含有することもあり、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体および多量体を含むがこれらに限定されない。完全長タンパク質とそれらの断片の両方がこの定義に包含される。これらの用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化なども含む。さらに、本発明の目的では、「ポリペプチド」は、ネイティブ配列に対する修飾、例えば欠失、付加および置換(一般に、本質的に保存的なもの)を含むタンパク質を指すが、ただし、該タンパク質が所望の活性を維持することを条件とする。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発によるような意図的なものであることもあり、または偶然なもの、例えば、タンパク質を生産する宿主の突然変異もしくはPCR増幅に起因するエラーであることもある。
【0091】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、ウイルス由来でない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターの場合、組換え核酸には少なくとも1つの逆位末端反復配列(ITR)が隣接している。いくつかの実施形態において、組換え核酸には2つのITRが隣接している。
【0092】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」は、少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列(ITR)が隣接している1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、AAV由来でない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。そのようなrAAVベクターは、好適なヘルパーウイルスに感染しており(または好適なヘルパー機能を発現しており)、かつ、AAV repおよびcap遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCapタンパク質)を発現している宿主細胞中に存在する場合、複製され、感染性ウイルス粒子にパッケージングされる。rAAVベクターが、より大きいポリヌクレオチドに(例えば、染色体におけるもの、または別のベクター、例えば、クローニングもしくはトランスフェクションに使用されるプラスミドにおけるもの)に組み込まれている場合には、そのrAAVベクターは「プロベクター」と呼ばれることもがあり、該プロベクターは、AAVパッケージング機能および好適なヘルパー機能の存在下での複製およびカプシド封入によって「レスキュー」される。rAAVベクターは、プラスミド、直鎖状人工染色体を含む(しかしこれらに限定されない)多数の形態のいずれであってもよく、rAAVベクターを脂質と複合体化することができ、リポソームに封入することができ、およびウイ
ルス粒子、例えばAAV粒子、のカプシドに封入することができる。rAAVベクターをAAVウイルスカプシドにパッケージングして、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を生じさせることができる。
【0093】
「rAAVウイルス」または「rAAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質とカプシドに封入されたrAAVベクターゲノムとで構成されているウイルス粒子を指す。
【0094】
「異種」には、比較されるまたは導入されるもしくは組み込まれる実体の残部のものと遺伝子型的に異なる実体に由来するという意味がある。例えば、遺伝子工学技術によって異なる細胞タイプに導入されたポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである(および、発現されたとき、異種ポリペプチドをコードすることができる)。同様に、ウイルスベクターに組み込まれる細胞配列(例えば、遺伝子またはその一部分)は、そのベクターに対して異種ヌクレオチド配列である。
【0095】
用語「導入遺伝子」は、細胞に導入されるポリヌクレオチドであって、RNAに転写されること、ならびに場合により、適切な条件下で翻訳および/または発現されることが可能である前記ポリヌクレオチドを指す。複数の態様において、導入遺伝子は、その導入遺伝子が導入される細胞に所望の特性を付与するか、または所望の治療もしくは診断アウトカムを別様にもたらす。別の態様において、導入遺伝子は、miRNA、siRNAまたはshRNAなどの、RNA干渉を媒介する分子に翻訳されることもある。
【0096】
ウイルス力価に関して用いる場合の用語「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム当量」または「ゲノムコピー」は、感染性または機能性に関係なく、組換えAAV DNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。特定のベクター製剤中のゲノム粒子の数は、本明細書の実施例に記載のもの、または例えば、Clarkら(1999)Hum.Gene Ther.、10:1031~1039頁;Veldwijkら(2002)Mol.Ther.、6:272~278頁に記載のものなどの手順によって測定することができる。
【0097】
用語「ベクターゲノム(vg)」は、本明細書で用いる場合、ベクター、例えばウイルスベクター、の一連のポリヌクレオチド配列を含む1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを指すことができる。ベクターゲノムは、ウイルス粒子のカプシドに封入されていることもある。個々のウイルスベクターに依存して、ベクターゲノムは、一本鎖DNAを含むこともあり、二本鎖DNAを含むこともあり、または一本鎖RNAもしくは二本鎖RNAを含むこともある。ベクターゲノムは、特定のウイルスベクターと会合している内在性配列を含むこともあり、および/または組換え技術によって特定のウイルスベクターに挿入された異種配列を含むこともある。例えば、組換えAAVベクターゲノムは、プロモーター、スタッファー、目的の配列(例えば、RNAi)、およびポリアデニル化配列に隣接している、少なくとも1つのITR配列を含むことがある。完全ベクターゲノムは、ベクターのポリヌクレオチド配列の完全セットを含むことができる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの核酸力価を単位vg/mLで測定することもある。この力価の測定に好適な方法は、当技術分野において公知である(例えば、定量的PCR)。
【0098】
ウイルス力価に関して用いる場合の用語「感染単位(iu)」、「感染粒子」または「複製単位」は、例えば、McLaughlinら(1988)J.Virol.,62:1963~1973頁に記載されているような複製中心アッセイとしても公知の、感染中心アッセイによって測定されるような、感染性かつ複製可能な組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0099】
ウイルス力価に関して用いる場合の用語「形質導入単位(tu)」は、本明細書の実施
例に記載のもの、または例えば、Xiaoら(1997)Exp.Neurobiol.、144:113~124頁に記載のもの;もしくはFisherら(1996)J.Virol.、70:520~532頁に記載のもの(LFUアッセイ)などの機能性アッセイで測定されるような、機能性導入遺伝子産物の生産をもたらす感染性組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0100】
「逆位末端反復」または「ITR」配列は、当技術分野において十分に理解されている用語であり、反対向きであるウイルスゲノムの末端に見られる比較的短い配列を指す。
【0101】
当技術分野において十分に理解されている用語、「AAV逆位末端反復(ITR)」配列は、ネイティブ一本鎖AAVゲノムの両末端に存在するおおよそ145ヌクレオチドの配列である。ITRの最も外側の125ヌクレオチドは、異なるAAVゲノム間および単一のAAVゲノムの2つの末端間の異質性をもたらす、2つの二者択一配向のいずれかで存在することができる。最も外側の125ヌクレオチドは、自己相補性のいくつかのより短い領域(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と呼ばれる)も含有し、これらの領域が、ITRのこの部分の中での鎖内塩基対合の発生を可能にする。
【0102】
「末端切断配列」または「trs」は、ウイルスDNA複製中にAAV repタンパク質によって切断されるAAV ITRのD領域内の配列である。突然変異型末端切断配列は、AAV repタンパク質による切断を受けにくい。
【0103】
AAVの「ヘルパーウイルス」は、(欠陥パルボウイルスである)AAVの複製および宿主細胞によるパッケージングを可能にするウイルスを指す。多数のそのようなヘルパーウイルスが同定されており、それらにはアデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルス、例えばワクシニアが含まれる。アデノウイルスは、多数の異なるサブグループを包含するが、サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)が最もよく使用されている。ヒト、非ヒト哺乳動物および鳥類由来の非常の多くのアデノウイルスが公知であり、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。ATCCなどの寄託機関から同じく入手可能であるヘルペス科のウイルスとしては、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)が挙げられる。
【0104】
参照ポリペプチドまたは核酸配列に対する「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインし、必要に応じて、最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後の、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさない、該参照ポリペプチドまたは核酸配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一である候補配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージと定義する。アミノ酸または核酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、例えば、公的に入手可能なコンピューターソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987)、補遺30、セクション7.7.18、表7.7.1に記載されているものを使用する、およびBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを含む、当技術分野における技術の範囲内の様々な方法で達成することができる。アライメントプログラムの例は、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software、Pennsylvania)である。当業者は、比較される配列の完全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。本明細書の目的では、所与のアミノ酸配列Bに対しての、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対しての、それとの、またはそれに対する特定のアミノ酸配列同一性%を有するまたは含む所与の
アミノ酸配列Aと表現することができる)を次のように算出する:100×分数X/Y(ここで、Xは、配列アライメントプログラムによってそのプログラムのAとBのアライメントで同一マッチとしてスコアされるアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと同一でない場合、Bに対してのAのアミノ酸配列同一性%が、Aに対してのBのアミノ酸配列同一性%と同一にならないことは理解されるであろう。本明細書の目的では、所与の核酸配列Dに対しての、それとの、またはそれに対する所与の核酸配列Cの核酸同一性%(あるいは、所与の核酸配列Dに対しての、それとの、またはそれに対する特定の核酸配列同一性%を有するまたは含む所与の核配列Cと表現することができる)を次のように算出する:100×分数W/Z(ここで、Wは、配列アライメントプログラムによってそのプログラムのCとDのアライメントで同一マッチとしてスコアされるヌクレオチドの数であり、Zは、D中のヌクレオチドの総数である)。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと同一でない場合、Dに対してのCの核酸配列同一性%が、Cに対してのDの核酸配列同一性%と同一にならないことは理解されるであろう。
【0105】
「単離された」分子(例えば、核酸もしくはタンパク質)または細胞は、それが、その天然の環境の成分から同定および分離および/または回収されたことを意味する。
【0106】
「有効量」は、臨床結果(例えば、症状の改善、臨床エンドポイントの達成など)を含む、有益なまたは所望の結果を達成するために十分な量である。有効量を1回またはそれ以上の投与で投与することができる。病状の点からは、有効量は、疾患の改善、安定化、または発症遅延に十分な量である。
【0107】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、および齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、個体または対象はヒトである。
【0108】
本明細書で用いる場合、「処置」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的では、有益なまたは所望の臨床結果は、検出可能であろうと、検出不能であろうと、症状の軽減、疾患の程度の低下、安定化された(例えば、悪化しない)病状、疾患の拡大(転移)の予防、疾患進行の遅延または減速、病状の改善または緩和、および寛解(部分寛解であろうと、完全寛解であろうと)を含むが、これらに限定されない。「処置」は、処置を受けていない場合に予期される生存期間と比較して生存期間の延長も意味することができる。
【0109】
本明細書で用いる場合、用語「予防的処置」は、個体が障害を有することまたは障害を有するリスクがあることが分かっているまたは疑われるが、その障害の症状をまったくまたは軽微にしか示していない場合の処置を指す。予防的処置を受ける個体は、症状発症前に処置されるだろう。
【0110】
本明細書で用いる場合、「治療」剤(例えば、治療用ポリペプチド、核酸または導入遺伝子)は、有益なまたは所望の臨床結果、例えば、上に記載した例示的臨床結果をもたらすものである。したがって、治療剤を上記の処置に使用することができる。
【0111】
用語「中心網膜」は、本明細書で用いる場合、外黄斑および/または内黄斑および/または中心窩を指す。用語「中心網膜細胞タイプ」は、本明細書で用いる場合、例えばRPEおよび光受容器細胞などの、中心網膜の細胞タイプを指す。
【0112】
用語「黄斑」は、周辺網膜と比較して高い相対濃度の光受容器細胞、特に杆体および錐
体を含有する、霊長類の中心網膜領域を指す。本明細書で用いる場合の用語「外黄斑」は、「周辺黄斑」も指すことがある。本明細書で用いる場合の用語「内黄斑」は、「中心黄斑」も指すことがある。
【0113】
用語「中心窩」は、周辺網膜および黄斑と比較して高い相対濃度の光受容器細胞、特に錐体を含有する、直径がおおよそ0.5mm以下の、霊長類の中心網膜内の小領域を指す。
【0114】
用語「網膜下腔」は、本明細書で用いる場合、網膜内の光受容器細胞と網膜色素上皮細胞の間の位置を指す。網膜下腔は、流体の任意の網膜下注射前などの、潜在空隙であることもある。網膜下腔は、潜在空隙に注射される流体を含有することもある。この場合、流体は、「網膜下腔と接触している」。「網膜下腔と接触している」細胞としては、RPEおよび光受容器細胞などの、網膜下腔に隣接する細胞が挙げられる。
【0115】
用語「ブレブ」は、本明細書で用いる場合、眼の網膜下腔内の液腔を指す。本発明のブレブは、単一の腔への流体の単回注射によって形成されることもあり、同じ腔への1つもしくはそれ以上の流体の複数回の注射によって形成されることもあり、複数の腔への複数回の注射によって形成されることもあり、または再配置されたときに網膜下腔の所望の部分に対する治療効果の達成に有用な全液腔を生じさせる、複数の腔への複数回の注射によって形成されることもある。
【0116】
「ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター」は、杆体および錐体光受容器細胞、ならびに網膜細胞株、例えばWERI Rb-1における発現を特異的に駆動する、ロドプシンキナーゼ遺伝子(例えば、GenBank Entrez Gene ID 6011によって表されるヒトRK)に由来するポリヌクレオチド配列を指す。本明細書で用いる場合、「ロドプシンキナーゼプロモーター」は、Khani,S.C.ら(2007)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.48(9):3954~61頁およびYoung,J.E.ら(2003)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.44(9):4076~85頁に記載されている配列などの、光受容器特異的発現を駆動するために十分な全プロモーター配列またはプロモーター配列の断片を指すこともある。いくつかの実施形態において、RKプロモーターは、転写開始部位を基準にして-112~+180に及ぶ。
【0117】
「ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター」は、ニワトリβ-アクチン遺伝子(例えば、GenBank Entrez Gene ID396526によって表されるニワトリ(Gallus gallus)βアクチン)に由来するポリヌクレオチド配列を指す。本明細書で用いる場合、「ニワトリβ-アクチンプロモーター」は、Miyazaki,J.ら(1989)Gene 79(2):269~77頁に記載されている配列などの、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー要素とニワトリβ-アクチン遺伝子のプロモーターならびに第1エクソンおよびイントロンとウサギβ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプターとを含有するプロモーターを指すこともある。本明細書で用いる場合、用語「CAGプロモーター」を同義で用いることがある。本明細書で用いる場合、用語「CMV初期エンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター」を同義で用いることがある。
【0118】
本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータそれ自体に関する実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0119】
本明細書で用いる場合、単数形の冠詞「a」、「an」および「the」は、別段の指
示がない限り、複数の言及対象を包含する。
【0120】
本明細書に記載する本発明の態様および実施形態が、「含む」、「からなる」および/または「から本質的になる」態様および実施形態を包含することは理解される。
【0121】
III.ウイルス粒子
ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)は、AAV2粒子の細胞受容体として作用することは当技術分野において公知である(Summerford,C.およびSamulski,R.J.(1998)J.Virol.72(2):1438~45頁)。AAV2粒子と細胞膜のHSPGとの結合は、該粒子を該細胞に付けるのに役立つ。他の細胞表面タンパク質、例えば、線維芽細胞増殖因子受容体およびαvβ5インテグリンも細胞感染を助長することができる。結合後、AAV2粒子は、クラスリン被覆ピットによる受容体依存性エンドサイトーシスをはじめとするメカニズムによって細胞に侵入することができる。AAV2粒子は、エンドソーム酸性化によって細胞内小胞から放出される。これによって、AAV2粒子は核周囲領域に、そしてその後、細胞核に移動することが可能になる。AAV3粒子がヘパランに結合することも公知である(Rabinowitz,J.E.ら(2002)J.Virol.76(2):791~801頁)。
【0122】
眼の障害のための遺伝子治療プロトコールは、眼の細胞(例えば、網膜の細胞)へのベクターの局所的送達を必要とする。これらの疾患において処置標的になる細胞としては、とりわけ、眼の1つまたはそれ以上の細胞(例えば、光受容器、眼のニューロンなど)を挙げることができる。本発明の方法およびキットは、特定のrAAVカプシド(例えば、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むもの)によって眼の細胞間での広範なベクターの分布が可能になるという発見に少なくとも一部は基づく。したがって、これらのカプシドは、個体の眼への異種核酸の送達、個体の眼へのrAAV粒子の送達後の細胞へのrAAV形質導入の向上、個体の眼へのrAAV粒子の送達後の異種核酸の発現の向上、および/またはrAAV粒子を使用する個体の眼の障害の処置に、特に有利であるだろう。
【0123】
同様に、CNSの障害の遺伝子治療プロトコールは、CNSの細胞へのベクターの局所的送達を必要とする。これらの疾患において処置標的になる細胞としては、とりわけ、脳の1つまたはそれ以上の細胞(例えば、ニューロン)を挙げることができる。本発明の方法およびキットは、特定のrAAVカプシド(例えば、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むもの)によってCNSの細胞間での広範なベクターの分布が可能になるという発見に少なくとも一部は基づく。したがって、これらのカプシドは、個体の中枢神経系(CNS)への異種核酸の送達、個体のCNSへのrAAV粒子の送達後の細胞へのrAAV形質導入の向上、個体のCNSへのrAAV粒子の送達後の異種核酸の発現の向上、および/またはrAAV粒子を使用する個体のCNSの障害の処置に、特に有利であるだろう。
【0124】
AAV(例えば、AAV2、AAVrh8Rなど)のカプシドが次の3つのカプシドタンパク質を含むことは公知である:VP1、VP2およびVP3。これらのタンパク質は、有意な量の重複アミノ酸配列および固有のN-末端配列を含有する。AAV2カプシドは、正二十面体対称に基づいて配置された60のサブユニットを含む(Xie,Q.ら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.99(16):10405~10頁)。VP1、VP2およびVP3は、1:1:10比で存在することが判明している。
【0125】
AAV2カプシドタンパク質とHSPGとの結合が塩基性AAV2カプシドタンパク質
残基と負電荷を有するグルコサミノグリカン残基との静電相互作用によって起こることは公知である(Opie,SRら(2003)J.Virol.77:6995~7006頁;Kern,Aら(2003)J.Virol.77:11072~11081頁)。これらの相互作用に関与する具体的なカプシド残基としては、R484、R487、K532、R585およびR588が挙げられる。これらの残基の突然変異がヒーラ細胞およびヘパランそれ自体とのAAV2結合を低減させることは証明されている(Opie,SRら(2003)J.Virol.77:6995~7006頁;Kern,Aら(2003)J.Virol.77:11072~11081頁;WO2004/027019
A2、米国特許第7,629,322号)。さらに、理論に拘束されることを望むものではないが、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、532、585または588に対応する残基の1つまたはそれ以上におけるアミノ酸置換は、HSPGと結合しないAAVカプシドタイプの形質導入特性を修飾することもあり、またはAAVカプシドタイプの形質導入特性をHSPGに結合するそれらの能力とは無関係に修飾することもあると考えられる。
【0126】
本発明の特定の態様は、個体の眼または中枢神経系(CNS)への異種核酸の送達であって、該個体の眼またはCNSに組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を投与することを含む前記送達に関する。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、本発明のrAAV粒子は、AAV血清型2(AAV2)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、本発明のrAAV粒子は、AAV血清型rh8R(AAVrh8R)カプシドを含む。
【0127】
本明細書に記載するように、カプシドタンパク質が、HSPGと相互作用する残基において、またはAAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、532、585もしくは588の1つまたはそれ以上の対応する残基において突然変異しているrAAV粒子は、有利な特性、例えば、発現向上および/または神経炎症低減を示す。したがって、いくつかの実施形態では、送達されたとき、rAAVベクターによってコードされている異種核酸は、参照rAAVカプシドタンパク質(例えば、野生型rAAVカプシドタンパク質)を含むrAAVカプシドを含むrAAV粒子の異種核酸の発現レベルと比較して増加された発現レベルで発現される。いくつかの実施形態において、核酸の発現は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%増加される。いくつかの実施形態において、送達されたとき、rAAV粒子は、参照rAAVカプシドタンパク質(例えば、野生型rAAVカプシドタンパク質)を含むrAAV粒子と比較して低減された神経炎症をもたらす。いくつかの実施形態において、神経炎症は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減される。好適な参照rAAVカプシドタンパク質としては、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換がない任意のカプシドタンパク質を挙げることができる(したがって、参照カプシドは、HSPGとの結合を改変しない1つまたはそれ以上の「バックグラウンド」置換を有することがある)。
【0128】
いくつかの実施形態において、本発明は、個体の眼に異種核酸を送達する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を該個体の網膜下腔に投与することを含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。
【0129】
いくつかの実施形態において、本発明のrAAV粒子は、AAV血清型2(AAV2)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1、VP2および/またはVP3のいずれか1つのアミノ酸残基の置換であり、該アミノ酸置換は、rAAV粒子とHSPGの相互作用を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減または除去する)。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1 AAV2のアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP2 AAV2のアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP3 AAV2のアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1とVP2とVP3の組み合わせのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1、VP2および/またはVP3のいずれか1つのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、配列番号1、3および/または5のカプシドタンパク質のいずれか1つのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、本発明のrAAV粒子は、配列番号2、4および/または6のカプシドタンパク質を含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明のrAAV粒子は、AAV血清型3(AAV3)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV3のVP1、VP2および/またはVP3のいずれか1つのアミノ酸残基の置換であり、該アミノ酸置換は、rAAV粒子とHSPGの相互作用を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減または除去する)。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1 AAV3のアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP2 AAV3のアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP3 AAV3のアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV3のVP1とVP2とVP3の組み合わせのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV3のVP1、VP2および/またはVP3のいずれか1つのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、配列番号7のカプシドタンパク質に対応するアミノ酸残基の置換である。
【0131】
いくつかの実施形態において、本発明のrAAV粒子は、例えば、米国特許登録前出願公開第20090317417号に記載されているような、AAV血清型rh8R(AAVrh8R)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1、VP2および/またはVP3のいずれか1つのアミノ酸残基の置換であり、該アミノ酸置換は、rAAV粒子とHSPGの相互作用を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減または除去する)。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1 AAVrh8Rのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP2 AAVrh8Rのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP3 AAVrh8Rのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1とVP2とVP3の組み合わせのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1、VP2および/またはVP3のいずれか1つのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、配列番号9によって例示されるカプシドタンパク質のアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、本発明のrAAV粒子は、配列番号10および/または11のカプシドタンパク質を含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を(野生型カプシドを含むrAAV粒子の結合と比較して)少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を(野生型カプシドを含むrAAV粒子の結合と比較して)約10%~約100%、約20%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約10%~約90%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、約50%~約70%、約60%~約70%、約10%~約60%、約20%~約60%、約30%~約60%、約40%~約60%、約50%~約60%、約10%~約50%、約20%~約50%、約30%~約50%、約40%~約50%、約10%~約40%、約20%~約40%、約30%~約40%、約10%~約30%、約20%~約30%、または約10%~約20%のうちのいずれか1つの%、低減させる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、野生型rAAV粒子の結合と比較して、rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの検出可能な結合をもたらさない。AAV粒子のHSPGとの結合を測定する手段は当技術分野において公知である;例えば、ヘパラン硫酸クロマトグラフィー媒体と結合させる手段、またはHSPGをその表面で発現することが公知の細胞と結合させる手段。例えば、Opie,SRら、(2003)J.Virol.77:6995~7006頁およびKern,Aら、(2003)J.Virol.77:11072~11081頁を参照されたい。
【0133】
いくつかの実施形態において、本発明は、治療用核酸の網膜下送達のためのrAAV粒子であって、該rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を低減または除去するカプシドタンパク質の1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、該1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして484、487、532、585または588位におけるものである、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1の484、487、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV2のVP2の484、487、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV2のVP3の484、487、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV2のVP1、AAV2のVP2、および/またはAAV2のVP3の、484、487、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、rAAV2のVP1は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0134】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV3のVP1の484、487、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV3のVP2の484、487、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV3のVP3の484、487、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV3のVP1、AAV3のVP2、および/またはAVV3のVP3の、484、487、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、rAAV2のVP1は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0135】
いくつかの実施形態において、本発明のAAV粒子は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして485、488、528、533、586または589位におけるものである1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含む。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有するアミノ酸残基の、正電荷を有さないアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、正電荷を有するアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。他の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有さないアミノ酸残基の、正電荷を有するアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、正電荷を有するアミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アラニン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングしてR533および/A586位における置換を含む。さらなる実施形態において、AAVカプシドは、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換A586RおよびR533Aを含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号10および/または11のrAAVカプシドタンパク質を含む。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有さないアミノ酸(例えば、正電荷を有する側鎖を含有しないアミノ酸)での、正電荷を有するアミノ酸残基(例えば、正電荷を有する側鎖を有するアミノ酸)の置換を含む。正電荷を有するアミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジンおよびリシンが挙げられる。正電荷を有さないアミノ酸残基の例としては、負電荷を有するアミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸)、電荷を有さない極性側鎖を有するアミノ酸(セリン、トレオニン、アスパラギンおよびグルタミン)、疎水性側鎖を有するアミノ酸(アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン)、グリシン、システインおよびプロリンが挙げられる。いくつかの実施形態において、AAVカプシドの正電荷を有する1つまたはそれ以上のアミノ酸残基は、疎水性アミノ酸残基により置換されている。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基の置換を含む。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。他の実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、正電荷を有
さないアミノ酸残基の、正電荷を有するアミノ酸残基による置換を含む。いくつかの実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、正電荷を有するアミノ酸残基により置換されている。さらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アラニン残基の置換を含む。さらにさらなる実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、アルギニンまたはリシン残基のアラニン残基による置換を含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、VP1、VP2および/またはVP3のR484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV2のVP1、VP2および/またはVP3のR484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、配列番号1に基づいてナンバリングして、AAV2のVP1、VP2および/またはVP3のR484、R487、K527、K532および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV2のVP1、VP2および/またはVP3の置換R484A、R487A、R585Aおよび/またはR588Aの1つまたはそれ以上を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV3のVP1、VP2および/またはVP3のR484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV3のVP1、VP2および/またはVP3の置換R484A、R487A、R585Aおよび/またはR588Aの1つまたはそれ以上を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号2、4および/または6のrAAVカプシドタンパク質を含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、VP1、VP2および/またはVP3のR485、R488、R533、A586および/またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、配列番号9に基づいてナンバリングして、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、VP1、VP2および/またはVP3のR485、R488、R533、A586および/またはT589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、AAV2のVP1、VP2および/またはVP3の置換R533Aおよび/またはA586Rの1つまたはそれ以上を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、配列番号10および/または11のrAAVカプシドタンパク質を含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、HSPGと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、HSPGとの結合を低減または除去する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、HSPGとの結合を低減または除去する1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、HSPGとの結合を低減または除去する1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484およびR487位における置換を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484およびR487位における置換を有する。いくつかの実施形
態において、AAVカプシドは、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR585およびR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR585およびR588位における置換を有する。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングして、置換R484AおよびR487Aを含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングして、置換R484AおよびR487Aを有する。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングして、置換R585AおよびR588Aを含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングして、置換R585AおよびR588Aを有する。
【0140】
ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)が体中の多くの組織において発現されることならびに細胞外マトリックス、細胞接着および細胞シグナル伝達において重要な役割を果たすことは公知である。いくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、CNSの1つまたはそれ以上の細胞上で発現される。特定の実施形態において、CNSの1つまたはそれ以上の細胞はニューロンである。
【0141】
いくつかの実施形態において、本発明は、治療用核酸のCNS送達のためのrAAV粒子であって、該rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を低減または除去するカプシドタンパク質の1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、347、350、390、395、448、451、484、487、527、532、585および/または588位におけるものである。本明細書で用いる場合、「AAV2のVP1に基づくナンバリング」は、AAV2のVP1の列挙されているアミノ酸に対応する列挙されているカプシドタンパク質のアミノ酸を指す。例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換が、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして347、350、390、395、448、451、484、487、527、532、585および/または588位におけるものである場合には、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1のアミノ酸347、350、390、395、448、451、484、487、527、532、585および/または588に対応する、列挙されているカプシドタンパク質のアミノ酸におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR347、R350、K390、K395、R448、R451、R484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2の484、487、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、AAV2のVP1、AAV2のVP2、および/またはAAV2のVP3の、484、487、532、585または588位におけるものである。いくつかの実施形態において、AAV2(例えば、rAAV2)のVP1は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0142】
いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484、R487、K527、K532、R585および/またはR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、本発明のrAAV粒子は、配列番号2、4および/または6のカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、rAAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484およびR487、またはR585およびR588位における置換を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R484AおよびR487A置換またはR585AおよびR588A置換を含む。いくつかの実施形態
において、AAVカプシドは、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換R585AおよびR588Aを含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドは、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、アミノ酸置換K532Aを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV2のVP1に基づいてナンバリングして、R347A、R350A、K390A、K395A、R448A、R451A、R484A、R487A、K527A、K532A、R585Aおよび/またはR588A置換を含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、本発明は、治療用核酸のCNS送達のためのrAAV粒子であって、該rAAV粒子のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合を低減または除去するカプシドタンパク質の1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む、前記rAAV粒子を提供する。いくつかの実施形態において、本発明のrAAV粒子は、例えば、米国特許登録前出願公開第20090317417号に記載されているような、AAV血清型rh8R(AAVrh8R)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1、VP2および/またはVP3のいずれか1つのアミノ酸残基の置換であり、該アミノ酸置換は、rAAV粒子とHSPGの相互作用を改変する(例えば、HSPGとの結合を低減または除去する)。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1 AAVrh8Rのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP2 AAVrh8Rのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP3 AAVrh8Rのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1とVP2とVP3の組み合わせのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1、VP2および/またはVP3のいずれか1つのアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、配列番号9によって例示されるカプシドタンパク質のアミノ酸残基の置換である。いくつかの実施形態において、本発明のrAAV粒子は、配列番号10および/または11のカプシドタンパク質を含む。
【0144】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型rh8R(AAVrh8R)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして586および/または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号9のアミノ酸配列を含むAAVrh8RのVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてA586および/T589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、A586R置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh8RのVP1に基づいてナンバリングして、T589RまたはT589K置換を含む。
【0145】
上で論じたように、理論に拘束されることを望むものではないが、AAV2のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてアミノ酸484、487、532、585または588に対応する残基における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、HSPGと結合しないAAVカプシドタイプの形質導入特性を修飾することもあり、またはAAVカプシドタイプの形質導入特性をHSPGに結合するそれらの能力とは無関係に修飾することもあると考えられる。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、図20に示すアミノ酸に対応する1つまたはそれ以上のアミノ酸を含む。例えば、いくつかの実施形態において、アミノ酸585および/または588(AAV2のVP1に基づくナンバリング)に対応する位置の1つまたはそれ以上のアミノ酸は、アルギニン残基に
よって置き換えられている(例えば、AAV1またはAAV6についてはS586および/またはT589;AAV9についてはS586および/またはA589;AAVrh8RについてはA586および/またはT589;AAV8についてはQ588および/またはT591;ならびにAAVrh10についてはQ588および/またはA591)。これらの修飾カプシドは、とりわけ、網膜を標的にする硝子体内形質導入の改善に使用することができる。他の実施形態において、アミノ酸484、487、527および/または532(AAV2のVP1に基づくナンバリング)に対応する位置の1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば、アルギニンまたはリシン)は、正電荷を有さないアミノ酸、例えばアラニンによって置き換えられている(例えば、AAV1またはAAV6については、R485、R488、K528および/またはK533;AAV9またはAAVrh8Rについては、R485、R488、K528および/またはR533;ならびにAAV8またはAAVrh10についてはR487、R490、K530および/またはR535)。これらの修飾カプシドは、とりわけ、網膜下またはCNS形質導入の向上に使用することができる。
【0146】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型1(AAV1)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV1のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして586および/または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、AAV1のVP1は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV1のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてS586および/T589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV1のVP1に基づいてナンバリングして、S586RまたはS586K置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV1のVP1に基づいてナンバリングして、T589R置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型6(AAV6)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV6のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして586および/または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号13のアミノ酸配列を含むAAV6のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV6のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてS586および/T589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV6のVP1に基づいてナンバリングして、S586RまたはS586K置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV6のVP1に基づいてナンバリングして、T589R置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型8(AAV8)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV8のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして588および/または591位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号14のアミノ酸配列を含むAAV8のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV8のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてQ588および/T591位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV8のVP1に基づいてナンバリングして、Q588RまたはQ588K置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV8のVP1に基づいてナンバリングして、T591R置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型9(AAV9)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV9のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして586および/または589位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号15のアミノ酸配列を含むAAV9のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAV9のVP1ナンバ
リングに基づいてナンバリングしてS586および/A589位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV9のVP1に基づいてナンバリングして、S586RまたはS586K置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAV9のVP1に基づいてナンバリングして、A589RまたはA589K置換を含む。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAV血清型rh10(AAVrh10)カプシドを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAVrh10のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングして588および/または591位におけるものである。いくつかの実施形態において、前記ナンバリングは、配列番号16のアミノ酸配列を含むAAVrh10のVP1に基づく。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上アミノ酸置換は、AAVrh10のVP1ナンバリングに基づいてナンバリングしてQ588および/A591位における置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh10のVP1に基づいてナンバリングして、Q588RまたはQ588K置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、AAVrh10のVP1に基づいてナンバリングして、A591R置換を含む。
【0147】
IV.処置方法
網膜疾患、例えば、LCA、網膜色素変性および加齢性黄斑変性のための遺伝子治療プロトコールは、網膜の細胞へのベクターの局所的送達を必要とする。これらの疾患において処置標的となる細胞は、網膜の光受容器細胞であるか、または網膜神経感覚上皮の下にあるRPEの細胞である。これらの細胞への遺伝子治療ベクターの送達は、網膜とRPE間の網膜下腔への注射を必要とする。いくつかの実施形態において、本発明は、rAAV遺伝子治療ベクターを網膜の細胞に送達する方法であって、rAAVベクターが、HSPGと相互作用する1つまたはそれ以上のアミノ酸残基の置換を含むAAVカプシドに封入されている、前記方法を提供する。
【0148】
いくつかの態様において、本発明は、個体のCNSの障害を処置する方法であって、rAAV粒子を含む組成物の該個体のCNSへの送達を含み、該rAAV粒子は、(a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、および(b)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。さらに、本明細書に記載する、個体の中枢神経系(CNS)に異種核酸を送達する方法、個体のCNSへのrAAV粒子の送達後の細胞へのrAAV形質導入を向上させる方法、および個体のCNSへのrAAV粒子の送達後の異種核酸の発現を向上させる方法は、例えば、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードするものなどの異種核酸を送達するために使用することができる。これらの方法は、とりわけ、CNSの障害の処置に使用することができる。いくつかの実施形態において、個体はヒトである。
【0149】
治療用ベクター
本発明は、眼障害の遺伝子治療の方法であって、治療用ベクターを含むrAAV粒子が個体の網膜に送達される、前記方法を提供する。rAAVカプシド(例えば、rAAV2、rAAVrh8Rなどの粒子)であって、HSPGと相互作用する該カプシドの1つまたはそれ以上のアミノ酸はrAAV粒子のHSPGとの結合を低減または除去するように置換されている、前記rAAVカプシドへのrAAVベクターの封入によって、網膜の細胞への形質導入向上を達成することができる。ベクターは、ポリペプチド(例えば、治療用もしくは診断用ポリペプチド)および/または治療用核酸をコードする、異種核酸を含むことがある。治療用もしくは診断用ポリペプチドおよび/または治療用核酸をコードする核酸は、標準的合成および組換え法を用いる、当技術分野において公知の方法を用いて
、生じさせることができる。いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、診断用ポリペプチドをコードする。治療用ポリペプチドをコードする核酸の非限定的な例としては、次のものが挙げられる:網膜疾患の原因となることが公知の欠損または突然変異遺伝子の置換のための核酸、例えば、Prph2、RPE65、MERTK、RPGR、RP2、RPGRIP、CNGA3、CNGB3およびGNAT2。治療用ポリペプチドをコードする核酸の他の非限定的な例としては、神経栄養因子(例えば、GDNF、CNTF、FGF2、PEDF、EPO)、抗アポトーシス遺伝子(例えば、BCL2、BCL-X、NFκB)、抗血管新生因子(例えば、エンドスタチン、アンジオスタチン、sFlt)、および抗炎症因子(例えば、IL10、IL1-ra、TGFβ、IL4)をコードするものが挙げられる。眼障害のための他の治療用ポリペプチドとしては、Myo7a、ABCA4、REP1、GUCY2D、PDE6C、RS1、RPGRIP、Lpcat1、AIPL1、RDH12、CHMが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、コードされるポリペプチドは、ポリペプチドのヒト変異体である。
【0150】
本発明の核酸は、細胞内タンパク質であるポリペプチド、細胞膜に固定されているポリペプチド、細胞内に残存するポリペプチド、または本発明のベクターで形質導入された細胞によって分泌されるポリペプチドをコードすることがある。ベクターを受け取った細胞によって分泌されるポリペプチドについては;該ポリペプチドは、可溶性であることができる(すなわち、細胞に付着していない)。例えば、可溶性ポリペプチドは、膜貫通領域を欠き、細胞から分泌される。膜貫通ドメインをコードする核酸配列を同定および除去する技術は、当技術分野において公知である。
【0151】
本発明に従って投与することができるベクターには、RNA(例えば、RNAi、リボザイム、miRNA、siRNA、アンチセンスRNA)をコードする核酸を含むベクターであって、該RNAが、該ベクターの核酸から転写されたとき、本発明の病状に関連する異常なまたは過剰なタンパク質の翻訳または転写に干渉することによって眼障害を処置することができる、前記ベクターも含まれる。例えば、本発明の核酸は、異常なおよび/または過剰なタンパク質をコードするmRNAの高特異的除去または低減によって疾患を処置するRNAをコードすることもある。治療用RNA配列としては、様々な型の遺伝性網膜変性の際に発生するものなどの、異常なおよび/または過剰なタンパク質をコードするmRNAの高特異的除去または低減によって疾患を処置することができる、RNAi、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)および/またはリボザイム(例えば、ハンマーヘッド型リボザイムおよびヘアピンリボザイム)が挙げられる。治療用RNA配列によって処置することができる眼障害の非限定的な例としては、例えば、常染色体優性網膜色素変性(ADRP)および糖尿病性網膜症が挙げられる。本発明において使用することができる治療用RNA配列およびこれらの配列をコードする核酸の例としては、例えば米国特許第6,225,291号に記載されているものが挙げられ、前記特許文献の開示は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている。いくつかの実施形態において、治療用RNA配列は、miR-708である。いくつかの実施形態において、miR-708は、野生型ロドプシンをコードする核酸と、同じrAAVベクターの一部としてまたは第2のrAAVベクターの一部として、併用される。いくつかの実施形態において、野生型ロドプシンをコードする核酸には、ロドプシン遺伝子の3’非翻訳領域内に位置するmiR-708標的配列がない。miR-708および/またはロドプシンをコードするrAAVベクターは、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている米国特許仮出願第61/969,027号によって提供されている。
【0152】
本発明の特定の態様は、rAAV粒子(例えば、治療用ベクター)の使用に関し、該rAAV粒子は、(a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を
含むrAAVカプシド、および(b)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む。いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸をコードする。本明細書で用いる場合、治療用核酸は、本開示のいずれかの治療用核酸を発現することがあり、または本開示の治療用ポリペプチドをコードするいずれかの核酸を発現することがある。治療用核酸を使用して、例えば、障害(例えば、本明細書に記載する障害)の症状を改善すること、該障害の進行を予防もしくは遅延すること、および/または該障害の処置を行うことができる。
【0153】
rAAVカプシド(例えば、rAAV2、rAAVrh8Rなどの)であって、HSPGと相互作用する該カプシドの1つまたはそれ以上のアミノ酸はrAAV粒子のHSPGとの結合を低減または除去するように置換されている、前記rAAVカプシドへのrAAVベクターの封入によって、CNSの細胞への形質導入向上を達成することができる。ベクターは、ポリペプチド(例えば、治療用もしくは診断用ポリペプチド)および/または治療用核酸をコードする、異種核酸を含むことがある。治療用もしくは診断用ポリペプチドおよび/または治療用核酸をコードする核酸は、標準的合成および組換え法を用いる、当技術分野において公知の方法を用いて、生じさせることができる。いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、診断用ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、異種核酸は、CNS関連遺伝子をコードする。
【0154】
いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用核酸をコードする。いくつかの実施形態において、治療用核酸としては、限定ではないが、siRNA、shRNA、RNAi、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイムまたはDNAザイムを挙げることができる。したがって、治療用核酸は、ベクターの核酸から転写されたとき、本発明の障害に関連する異常なまたは過剰なタンパク質の翻訳または転写に干渉することによって本発明の障害(例えば、CNSの障害)を処置することができるRNAをコードすることもある。例えば、本発明の核酸は、異常なおよび/または過剰なタンパク質をコードするmRNAの高特異的除去または低減によって障害を処置するRNAをコードすることもある。治療用RNA配列としては、異常なおよび/または過剰なタンパク質をコードするmRNAの高特異的除去または低減によって障害を処置することができる、RNAi、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)および/またはリボザイム(例えば、ハンマーヘッド型リボザイムおよびヘアピンリボザイム)が挙げられる。
【0155】
いくつかの実施形態において、異種核酸は、治療用ポリペプチドをコードする。治療用ポリペプチドは、例えば、細胞内または生物体内に不在であるまたは低減されたレベルで存在するポリペプチドおよび/または酵素活性を供給することがある。あるいは、治療用ポリペプチドは、細胞内または生物体内での不均衡を間接的に解消するポリペプチドおよび/または酵素活性を供給することもある。例えば、代謝酵素または活性の欠乏に起因する代謝物の蓄積に関連した障害のための治療用ポリペプチドは、欠損している代謝酵素もしくは活性を供給することがあり、または代謝物の低減をもたらす代替代謝酵素もしくは活性を供給することもある。治療用ポリペプチドは、例えばドミナントネガティブポリペプチドとして作用することによって、ポリペプチド(例えば、過発現されるもの、機能獲得型突然変異によって活性化されるもの、またはその活性が別様に誤調節されるもの)の活性を低減させるために使用されることもある。
【0156】
いくつかの実施形態において、異種核酸は、酵素、神経栄養因子、CNS関連障害を有する個体における欠乏または突然変異ポリペプチド、抗酸化物質、抗アポトーシス因子、抗血管新生因子、および抗炎症因子から選択されるポリペプチドをコードする。そのようなポリペプチドを使用して、例えば、CNSの障害の際に低減される、不在である、もしくは誤調節されるポリペプチドおよび/もしくは酵素活性を供給すること、CNS障害の
原因および/もしくは症状を改善すること、ならびに/またはCNS障害に起因するCNSへの損傷(例えば、アポトーシス、炎症または他のタイプの細胞死)を軽減することによって、CNSの障害を処置することができる。治療用ポリペプチドをコードする核酸の非限定的な例としては、次のものが挙げられる:CNSの障害の原因となることが公知の欠損または突然変異遺伝子の置換のための核酸、例えば、Prph2、RPE65、MERTK、RPGR、RP2、RPGRIP、CNGA3、CNGB3およびGNAT2。治療用ポリペプチドをコードする核酸の他の非限定的な例としては、神経栄養因子(例えば、GDNF、CNTF、FGF2、PEDF、EPO)、抗アポトーシス遺伝子(例えば、BCL2、BCL-X、NFκB)、抗血管新生因子(例えば、エンドスタチン、アンジオスタチン、sFlt)、および抗炎症因子(例えば、IL10、IL1-ra、TGFβ、IL4)をコードするものが挙げられる。CNS障害のための他の治療用ポリペプチドとしては、Myo7a、ABCA4、REP1、GUCY2D、PDE6C、RS1、RPGRIP、Lpcat1、AIPL1、RDH12、CHMが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、コードされるポリペプチドは、ポリペプチドのヒト変異体である。いくつかの実施形態において、異種核酸は、神経細胞アポトーシス抑制タンパク質(NAIP)、神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来成長因子(GDNF)、脳由来成長因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、GTP-シクロヒドロラーゼ(GTPCH)、アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)、抗酸化物質、抗血管新生性ポリペプチド、抗炎症性ポリペプチド、および/またはアスパルトアシラーゼ(ASPA)をコードする。抗酸化物質の例としては、限定ではないが、SOD1;SOD2;カタラーゼ;サーチュイン1、3、4または5;NRF2;PGC1a;GCL(触媒性サブユニット);GCL(修飾因子サブユニット);アディポネクチン;グルタチオンペルオキシダーゼ1;およびニューログロビンが挙げられる。抗血管新生性ポリペプチドの例としては、限定ではないが、アンジオスタチン、エンドスタチン、PEDF、可溶性VEGF受容体、および可溶性PDGF受容体が挙げられる。抗炎症性ポリペプチドの例としては、限定ではないが、IL-10、可溶性IL17R、可溶性TNF-R、TNF-R-Ig、IL-1阻害剤、およびIL18阻害剤が挙げられる。CNSの障害を処置するために使用することができるこれらのクラスの他の例示的ポリペプチドは、下で提供する。
【0157】
本発明の核酸は、細胞内タンパク質であるポリペプチド、細胞膜に固定されているポリペプチド、細胞内に残存するポリペプチド、または本発明のベクターで形質導入された細胞によって分泌されるポリペプチドをコードすることがある。ベクターを受け取った細胞によって分泌されるポリペプチドについては;該ポリペプチドは、可溶性であることができる(すなわち、細胞に付着していない)。例えば、可溶性ポリペプチドは、膜貫通領域を欠き、細胞から分泌される。膜貫通ドメインをコードする核酸配列を同定および除去する技術は、当技術分野において公知である。
【0158】
いくつかの実施形態において、異種核酸は、プロモーターに作動可能に連結されている。例示的プロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーターおよびCK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAGプロモーター;Niwaら、Gene、1991、108(2):193~9頁)および伸長因子1-αプロモーター(EF1-α)プロモーター(Kimら、Gene、1990、91(2):217~23頁およびGuoら、Gene Ther.、1996、3(9):802~10頁)が挙げられるが、こ
れらに限定されない。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、またはニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターに連結されているサイトメガロウイルスエンハンサーを含む。プロモーターは、構成的、誘導性または抑制性プロモーターであることができる。いくつかの実施形態において、本発明は、CBAプロモーターに作動可能に連結されている本開示の異種導入遺伝子をコードする核酸を含む組換えベクターを提供する。例示的プロモーターおよび説明は、例えば、米国特許登録前出願公開第20140335054号において見つけることができる。
【0159】
構成的プロモーターの例としては、限定ではないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によりCMVエンハンサーを伴う)[例えば、Boshartら、Cell、41:521~530頁(1985)を参照されたい]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、13-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1aプロモーター[Invitrogen]が挙げられる。
【0160】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外部から供給される化合物によって、温度などの環境因子によって、もしくは特異的生理状態、例えば、急性期、細胞の特定の分化状態の存在によって、または複製細胞においてのみ、調節される。誘導性プロモーターおよび誘導性システムは、限定ではないがInvitrogen、ClontechおよびAriadを含む、様々な商業的供給源から入手することができる。多くの他のシステムが記載されており、当業者はそれらのシステムを容易に選択することができる。外部から供給されるプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーターシステム(WO98/10088);エクジソン昆虫プロモーター(Noら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346~3351頁(1996))、テトラサイクリン抑制性システム(Gossenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547~5551頁(1992))、テトラサイクリン誘導性システム(Gossenら、Science、268:1766~1769頁(1995)、またHarveyら、Curr.Opin.Chem.Biol.、2:512~518頁(1998)も参照されたい)、RU486誘導性システム(Wangら、Nat.Biotech.、15:239~243頁(1997)およびWangら、Gene Ther.、4:432~441頁(1997))およびラパマイシン誘導性システム(Magariら、J.Clin.Invest.、100:2865~2872頁(1997))が挙げられる。これに関連して有用であるだろうさらに他のタイプの誘導性プロモーターは、特異的生理状態、例えば、温度、急性期、細胞の特定の分化状態によって、または複製細胞においてのみ調節されるものである。
【0161】
別の実施形態では、導入遺伝子のネイティブプロモーターまたはその断片が使用されることになる。導入遺伝子の発現がネイティブ発現を模倣することを所望する場合、ネイティブプロモーターを使用することができる。ネイティブプロモーターは、導入遺伝子の発現を時間的にもしくは発生的に、または組織特異的様式で、または特異的転写刺激に反応して調節しなければならない場合に使用されることもある。さらなる実施形態において、他のネイティブ発現制御要素、例えば、エンハンサー要素、ポリアデニル化部位またはコザックコンセンサス配列も、ネイティブ発現を模倣するために使用されることがある。
【0162】
いくつかの実施形態において、調節配列は、組織特異的遺伝子発現能力を付与する。場合によっては、組織特異的調節配列は、組織特異的様式で転写を誘導する組織特異的転写因子に結合する。そのような組織特異的調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー
など)は、当技術分野において周知である。例示的組織特異的調節配列には次の組織特異的プロモーターが含まれるがこれらに限定されない:ニューロンプロモーター、例えばニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersenら、Cell.Mol.Neurobiol.、13:503~15頁(1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:5611~5頁(1991))、およびニューロン特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioliら、Neuron、15:373~84頁(1995))。いくつかの実施形態において、組織特異的プロモーターは、次のものから選択される遺伝子のプロモーターである:ニューロン核(NeuN)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、大腸腺腫症(APC)およびイオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba-1)。他の適切な組織特異的プロモーターは、当業者には明らかであるだろう。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ニワトリβ-アクチンプロモーターである。
【0163】
いくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞において発現されるプロモーター配列の制御下にある。上に列挙したプロモーター配列の多く(例えば、CBAプロモーター)がCNSの1つまたはそれ以上の細胞において発現されることは当技術分野において公知である。いくつかの実施形態において、プロモーター配列は、生物において遍在発現され、したがって、CNSへのその送達によってCNSの1つまたはそれ以上の細胞において発現することができる。他の実施形態では、CNSにおいてまたは1つもしくはそれ以上のCNS細胞のサブセットにおいて特異的に発現するプロモーター配列が使用されることもある。いくつかの実施形態において、異種核酸は、CNSの1つまたはそれ以上の細胞における治療用ポリペプチドまたは治療用核酸の発現に好適なプロモーターに作動可能に連結されている。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸を使用して、CNSの障害を処置することができる。
【0164】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、脳細胞において異種核酸を発現する。脳細胞は、限定ではないが、ニューロン(例えば、感覚ニューロン、運動ニューロン、介在ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、中型有棘ニューロン、コリン作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、錐体ニューロンなど)、グリア細胞(例えば、ミクログリア、マクログリア、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、上衣細胞、放射状グリアなど)、脳実質細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞を含む、当技術分野において公知のあらゆる脳細胞を指すことがある。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ニューロンにおいて異種核酸を発現する。いくつかの実施形態において、異種核酸は、ニューロンにおいて排他的に発現される(例えば、ニューロンにおいて発現され、CNSの他の細胞、例えばグリア細胞では発現されない)。
【0165】
いくつかの態様において、本発明は、例えば結果として対象がポリペプチド欠乏もしくはポリペプチド過多になる遺伝子欠損のような、哺乳動物における1つもしくはそれ以上の遺伝子欠損(例えば、遺伝性遺伝子欠損、体細胞遺伝子変異など)を予防もしくは処置する方法、または細胞および組織中のそのようなポリペプチドの欠乏に関連づけられるCNS関連障害を明示する対象の欠乏を処置するもしくは欠乏の重症度もしくは程度を低減させるための方法において使用するためのrAAVベクターを提供する。いくつかの実施形態において、方法は、医薬的に許容される担体中の、1つまたはそれ以上の治療用ペプチド、ポリペプチド、機能性RNA、阻害性核酸、shRNA、マイクロRNA、アンチセンスヌクレオチドなどをコードするrAAVベクターを、CNS関連障害を有するまたは有することが疑われる対象のCNS関連障害を処置するために十分な量で、十分な時間期間、対象に投与することを含む。
【0166】
rAAVベクターは、CNS関連障害を調節または処置するタンパク質または機能性RNAをコードする核酸を導入遺伝子として含むことがある。次のものは、CNS関連障害に関連する遺伝子の非限定的なリストである:神経細胞アポトーシス抑制タンパク質(NAIP)、神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来成長因子(GDNF)、脳由来成長因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、GTP-シクロヒドロラーゼ(GTPCH)、アスパルトアシラーゼ(ASPA)、スーパーオキシドジムスターゼ(SOD1)、抗酸化物質、抗血管新生性ポリペプチド、抗炎症性ポリペプチド、およびアミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)。例えば、パーキンソン病の処置に有用な導入遺伝子は、ドーパミン合成の律速酵素であるTHをコードする。TII補因子テトラヒドロビオプテリンを生成するGTPCIIをコードする導入遺伝子もパーキンソン病の処置に使用されることがある。GDNFもしくはBDNFをコードする、またはL-ドーパのDAへの変換を助長するAADCをコードする導入遺伝子もパーキンソン病の処置に使用されることがある。ALSの処置に有用な導入遺伝子は、次のものをコードすることがある:GDNF、BDNFまたはCNTF。また、ALSの処置に有用な導入遺伝子は、SOD1の発現を阻害する機能性RNA、例えば、shRNA、miRNAをコードすることがある。虚血の処置に有用な導入遺伝子は、NAIPまたはNGFコードすることがある。β-グルクロニダーゼ(GUS)をコードする導入遺伝子は、特定のリソソーム蓄積症(例えば、ムコ多糖症VII型(MPS VII))の処置に有用であるだろう。プロドラッグ活性化遺伝子、例えば、DNA合成を中断させ、細胞死をもたらす毒性ヌクレオチドにガンシクロビルを変換するHSV-チミジンキナーゼ、をコードする導入遺伝子は、特性の癌の処置に、例えば、前記プロドラッグと併用で投与すると、有用であるだろう。β-エンドルフィンなどの内因性オピオイドをコードする導入遺伝子は、疼痛の処置に有用であるだろう。抗酸化物質の例としては、限定ではないが、SOD1;SOD2;カタラーゼ;サーチュイン1、3、4または5;NRF2;PGC1a;GCL(触媒性サブユニット);GCL(修飾因子サブユニット);アディポネクチン;グルタチオンペルオキシダーゼ1;およびニューログロビンが挙げられる。抗血管新生性ポリペプチドの例としては、限定ではないが、アンジオスタチン、エンドスタチン、PEDF、可溶性VEGF受容体、および可溶性PDGF受容体が挙げられる。抗炎症性ポリペプチドの例としては、限定ではないが、IL-10、可溶性IL17R、可溶性TNF-R、TNF-R-Ig、IL-1阻害剤、およびIL18阻害剤が挙げられる。本発明のrAAVベクターに使用することができる導入遺伝子の他の例は、当業者には明らかであるだろう(例えば、Costantini L Cら、Gene Therapy(2000)7、93~109頁を参照されたい)。
【0167】
いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸は、CNSの障害を処置するために使用される。理論に拘束されることを望むものではないが、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸は、その機能獲得が障害と関連しているポリペプチドの発現および/もしくは活性を低減もしくは除去するために、またはポリペプチドの発現および/もしくは活性を向上させて、障害(例えば、その発現が同様のもしくは関連した活性を示す遺伝子の突然変異)と関連している欠損を補完するために使用することができると考えられる。本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸によって処置することができる発明の障害の非限定的な例(標的にされるまたは供給される例示的遺伝子を各障害のカッコ内に提供する)としては、脳卒中(例えば、カスパーゼ-3、Beclin1、Ask1、PAR1、HIF1α、PUMA、および/またはFukuda,A.M.およびBadaut、J.(2013)Genes(Basel)4:435~456頁に記載されている遺伝子のいずれか)、ハンチントン病(突然変異型HTT)、てんかん(例えば、SCN1A、NMDAR、ADK、および/またはBoison,D.(2010)Epilepsia 51:1659~1668頁に記載されている遺伝子のいずれか)、パーキンソン病(α-シヌクレイン)、ルー・ゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症としても公知;SOD1)、アルツハイマー病(タウ、アミロイド前駆体タンパク質)、大脳皮質基底
核変性症またはCBD(タウ)、大脳皮質基底核神経節変性症またはCBGD(タウ)、前頭側頭型認知症またはFTD(タウ)、進行性核上性麻痺またはPSP(タウ)、多系統委縮症またはMSA(α-シヌクレイン)、脳の癌(例えば、脳癌に関与する突然変異型または過発現癌遺伝子)、およびリソソーム蓄積症(LSD)が挙げられる。本発明の障害は、皮質の大領域、例えば、皮質の1つより多くの機能性領域、皮質の1つより多くの葉、および/または皮質全体が関与するものを含むことがある。本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸によって処置することができる本発明の障害の他の非限定的な例としては、外傷性脳損傷、酵素機能不全障害、精神障害(外傷後ストレス症候群を含む)、神経変性疾患、および認知障害(認知症、自閉症およびうつ病を含む)が挙げられる。酵素的機能不全障害としては、限定ではないが、白質ジストロフィー(カナバン病を含む)、および下に記載するリソソーム蓄積症のいずれかが挙げられる。
【0168】
いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸は、リソソーム蓄積症を処置するために使用される。当技術分野において一般に知られているように、リソソーム蓄積症は、リソソーム機能の欠損を特徴とするまれな遺伝性代謝障害である。そのような障害は、リソソームに蓄えられる細胞物質の病的蓄積につながる、適切なムコ多糖類、糖タンパク質および/または脂質代謝に必要な酵素の欠損に起因することが多い。本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸によって処置することができる本発明のリソソーム蓄積症の非限定的な例(標的にされるまたは供給される例示的遺伝子を各障害のカッコ内に提供する)としては、ゴーシェ病2型または3型(酸性β-グルコシダーゼ、GBA)、GM1ガングリオシドーシス(β-ガラクトシダーゼ-1、GLB1)、ハンター病(イズロン酸2-スルファターゼ、IDS)、クラッベ病(ガラクトシルセラミダーゼ、GALC)、マンノシドーシス症(マンノシダーゼ、例えばα-D-マンノシダーゼ、MAN2B1)、βマンノシドーシス症(β-マンノシダーゼ、MANBA)、異染性白質ジストロフィー症(偽アリールスルファターゼA、ARSA)、ムコリピドーシス症II/III型(N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ、GNPTAB)、ニーマン・ピック病A型(酸性スフィンゴミエリナーゼ、ASM)、ニーマン・ピック病C型(ニーマン・ピックCタンパク質、NPC1)、ポンペ病(酸性α-1,4-グルコシダーゼ、GAA)、サンドホッフ病(ヘキソサミニダーゼβサブユニット、HEXB)、サンフィリポ病A型(N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ、MPS3A)、サンフィリポ病B型(N-α-アセチルグルコサミニダーゼ、NAGLU)、サンフィリポ病C型(へパリンアセチル-CoA:α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ、MPS3C)、サンフィリポ病D型(N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ、GNS)、シンドラー病(α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、NAGA)、スライ病(β-グルクロニダーゼ、GUSB)、テイ・サックス病(ヘキソサミニダーゼαサブユニット、HEXA)、およびウォルマン病(リソソーム酸性リパーゼ、LIPA)が挙げられる。
【0169】
さらなるリソソーム蓄積症、ならびに各疾患に関連する欠損酵素を下の表1に収載する。いくつかの実施形態において、下の表に収載する疾患は、対応する酵素欠損を補完するまたは別様に補償する本発明の治療用ペプチドまたは治療用核酸によって処置される。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
ハンチントン病
上記のベクターが有利であるだろう疾患の一例は、突然変異型ハンチンチンタンパク質(mHTT)の伸長ポリグルタミン(ポリQ)反復配列をコードするCAG反復配列伸長突然変異によって引き起こされるハンチントン病(HD)である。HDは、単一対立遺伝子の突然変異の結果として生じる常染色体優性疾患であるので、DNAベースおよびRNAベースの治療の魅力的な標的である。AAVベクターは、核酸治療に理想的な送達システムを提供することができ、脳内のこれらのハンチンチン低下分子の長期にわたる継続的発現を可能にするであろう。
【0173】
本明細書に記載するように、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含有するrAAVカプシドタンパク質を有するrAAV粒子(例えば、治療用ベクター)の頭蓋内投与は、広範なニューロン形質導入を生じさせる。したがって、本発明の態様は、ハンチントン病の処置のために本明細書に記載する組換えウイルス粒子を使用して中枢神経系に異種核酸を送達する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、個体のハンチントン病を処置するための方法および組成物であって、本開示の医薬組成物(例えば、本開示の変異型ウイルス粒子を含む医薬組成物)を哺乳動物に投与することを含む前記方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物におけるhttの発現を阻害するための方法および組成物であって、本開示の医薬組成物(例えば、本開示の変異型ウイルス粒子を含む医薬組成物)を個体に投与することを含む前記方法および組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明は、ハンチントン病を有する個体の細胞におけるhttの蓄積を阻害するための方法および組成物であって、本開示の医薬組成物(例えば、本開示の変異型ウイルス粒子を含む医薬組成物)を個体に投与することを含む前記方法および組成物を提供する。
【0174】
いくつかの態様において、本発明は、個体のHDの症状を改善する方法および組成物であって、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子の有効量を該個体のCN
Sに投与することを含み、該rAAV粒子は、該個体におけるHTTの発現および/または蓄積を阻害するRNAiをコードするベクターを含む、前記方法および組成物を提供する。いくつかの実施形態において、HDの症状としては、舞踏病、硬直、制御できない体の動き、筋肉制御不能、協調運動障害、不穏状態、緩慢な目の動き、姿勢異常、不安定、失調性歩行、異常な表情、会話障害、咀嚼および/または嚥下困難、睡眠障害、発作、認知症、失認(例えば、計画、抽象思考、柔軟性、ルール習得、対人感受性、自己制御、注意、学習および記憶に関係する能力の低下)、うつ状態、不安、人格の変化、攻撃性、強制行動、強迫行動、性行動亢進、精神病、感情鈍麻、易怒性、自殺念慮、体重減少、筋萎縮、心不全、耐糖能低下、精巣萎縮および骨粗鬆症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
いくつかの態様において、本発明は、HDの進行を予防または遅延させる方法を提供する。常染色体優性HDは、遺伝子型判定することができる遺伝疾患である。例えば、HTTのCAG反復配列の数をPCRベースの反復配列サイズ測定によって判定してもよい。このタイプの診断は、(例えば、臨床症状の提示とともに)若年者もしくは成人の直接試験によって、(例えば、絨毛膜絨毛サンプリングもしくは羊水穿刺による)親スクリーニングもしくは親除外試験によって、または胎児の着床前スクリーニングによって、人生の任意の段階で行うことができる。加えて、脳をイメージングし、尾状核および/もしくは被殻の萎縮ならびに/または心室の肥大を探すことによって、HDを診断してもよい。HDの家族歴および/または臨床症状と併せて、これらの症状は、HDを示すだろう。
【0176】
HDの症状の改善を判定する手段は、当技術分野において公知である。例えば、統一ハンチントン病評価尺度(UHDRS)を用いて、運動機能、認知機能、行動異常性、および機能的能力を評価してもよい(例えば、Huntington Study Group(1996)Movement Disorders 11:136~42頁を参照されたい)。この評価尺度は、HD動作および日常生活尺度、マースデンおよびクインの舞踏病重症度尺度、身体障害および独立尺度、HD運動評価尺度(HDMRS)、HD機能的能力尺度(HDFCS)ならびに定量化神経学的検査(QNE)などの試験からの要素が組み込んで疾患病理の複数の面についての統一された包括的試験を提供するために開発された。HD症状改善の判定に有用な他の試験としては、限定ではないが、モントリオール認知評価、脳イメージング(例えば、MRI)、カテゴリー流暢性試験、トレイルメーキングテスト、マップサーチ、ストループ単語読み取り試験、加速タッピング課題、および記号数字モダリティー試験が挙げられる。
【0177】
本発明のいくつかの態様において、前記方法および組成物は、HDを有するヒトの処置に使用される。上で説明したように、HDは、常染色体優性様式で遺伝され、HTT遺伝子のCAG反復配列伸長によって引き起こされる。若年発症性HDは、ほとんどの場合、父方側からの遺伝である。ハンチントン病様表現型は、他の遺伝子座、例えば、HDL1、PRNP、HDL2、HDL3およびHDL4との相関関係も証明されている。GRIN2A、GRIN2B、MSX1、GRIK2およびAPOE遺伝子の突然変異をはじめとする他の遺伝子座は、HD症状の顕在化を変更することもあると考えられる。
【0178】
rAAV組成物
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に記載するrAAV粒子のいずれかを含む組成物を提供する。一般に、本発明の方法およびシステムに使用するための組成物は、場合により、医薬的に許容される賦形剤中の、ポリペプチドおよび/またはRNAをコードするrAAVベクターを含むrAAV粒子の有効量を含む。これらのウイルス粒子は、HSPGと相互作用する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、HSPGとのrAAV粒子結合を低減または除去するように置換されている、AAVカプシド(例えば、AAV2またはAAVrh8Rカプシド)を含む。当技術分野において周知であるように、医薬的に許
容される賦形剤は、薬理学的に有効な物質の投与を助長する比較的不活性な物質であり、溶液もしくは懸濁液として、エマルジョンとして、または使用前に液体に溶解もしくは懸濁させるのに好適な固体形態として供給することができる。例えば、賦形剤は、形状もしくは稠度を与えることができ、または希釈剤として作用することができる。好適な賦形剤としては、安定剤、湿潤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変えるための塩、封入剤、pH緩衝物質および緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。そのような賦形剤は、過度の毒性なく投与することができる、眼への直接送達に好適な任意の医薬品を含む。医薬的に許容される賦形剤としては、ソルビトール、様々なTWEEN化合物のいずれか、ならびに液体、例えば水、食塩水、グリセロールおよびエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。医薬的に許容される塩、例えば、無機酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など;および有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などを、そこに含めることができる。医薬的に許容される賦形剤の詳細な論考は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.、N.J.1991)において入手することができる。
【0179】
一般に、これらの組成物は、網膜下注射による投与用に製剤化される。したがって、これらの組成物を医薬的に許容されるビヒクル、例えば食塩水、リンゲル平衡塩類溶液(pH7.4)などと併用することができる。必須ではないが、場合によっては、前記組成物を、正確な量の投与に好適な単位剤形で供給してもよい。
【0180】
rAAVの網膜下送達方法
網膜下送達方法は、当技術分野において公知である。例えば、参照によって本明細書に組み入れられているWO2009/105690を参照されたい。簡単に言うと、rAAV粒子(例えば、rAAV2、rAAVrh8Rなどの粒子)を黄斑および中心窩の網膜下に送達するための一般的な方法は、以下のおおまかな概要によって説明することができる。この例は、前記方法の特定の特徴を説明することを意図したものに過ぎず、断じて制限を意図したものではない。
【0181】
一般に、rAAVベクターは、手術用顕微鏡を使用して直接観察しながら眼内(網膜下)注射される組成物の形態で送達することができる。いくつかの実施形態において、ベクターは、rAAV粒子のカプシドに封入され、該rAAV粒子は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する(例えば、HSPG結合を阻害または減少させる)1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、および異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む。この手順は、硝子体切開、続いての、網膜下腔への1回またはそれ以上の小さい網膜切開によって細いカニューレを使用するrAAVベクター懸濁液の注射を含む。
【0182】
簡単に言うと、注入カニューレを所定の位置に縫合して、手術の間ずっと(例えば食塩水の)注入により正常眼球容積を維持することができる。硝子体切除は、適切な口径(例えば、20~27ゲージ)のカニューレを使用して行われ、除去される硝子体ゲルの容量は、注入カニューレからの食塩水または他の等張液の注入によって置換される。硝子体切除は、(1)その皮質(後部硝子体膜)の除去がカニューレによる網膜の貫通を助長する;(2)その除去および流体(例えば食塩水)による置換が、ベクターの眼内注射に適応する腔を形成する、および(3)その制御された除去が、網膜裂孔および予定外の網膜剥離の可能性を低減させるため、行うと有利である。
【0183】
いくつかの実施形態では、適切な口径(例えば、27~45ゲージ)のカニューレを利用して、中心網膜の外側の網膜下腔にrAAV組成物を直接注射し、かくして網膜下腔にブレブを形成する。他の実施形態では、rAAV組成物の網膜注射の前に、少量(例えば
、約0.1~約0.5ml)の適切な流体(例えば、食塩水またはリンゲル液)を中心網膜の外側の網膜下腔に網膜下注射する。網膜下腔へのこの初回注射によって網膜下腔内に最初のブレブが構築され、これに起因してその最初のブレブの位置に網膜剥離が限局される。この最初の流体ブレブは、(rAAV送達前に注射面を規定することにより)網膜下腔へのrAAV組成物の標的送達を助長することができ、可能性のある脈絡膜へのrAAV投与を最小にすることができ、硝子体腔へのrAAV注射または逆流の可能性を最小にすることができる。いくつかの実施形態では、1つもしくはそれ以上のrAAV組成物および/または1つもしくはそれ以上のさらなる治療剤を含む流体を最初の流体ブレブに、同じまたはさらなる細径カニューレいずれかでの最初の流体ブレブへのこれらの流体の直接投与よって、さらに注射することができる。
【0184】
rAAV組成物および/または最初の少量の流体の眼内投与は、注射器に取り付けられた細径カニューレ(例えば、27~45ゲージ)を使用して行うことができる。いくつかの実施形態では、この注射器のプランジャーは、機械化デバイスによって、例えば、足踏みペダルを押し下げることによって駆動することができる。細径カニューレを、強膜切開により、硝子体腔を横断して、標的となる網膜の領域に従って各対象の網膜の所定の部位(しかし中心網膜の外側)に進ませる。直接見えるようにしながら、自然に閉じる拡大しない網膜切開で網膜剥離を限局させてベクター懸濁液を網膜神経感覚上皮下に機械的に注射する。上で述べたように、rAAV組成物を網膜下腔に直接注射して中心網膜の外側のブレブを形成することができ、または該ベクターを中心網膜の外側の最初のブレブに注射してそのブレブを膨張させる(そして網膜剥離領域を拡大する)ことができる。いくつかの実施形態では、rAAV組成物の注射後に別の流体がブレブに注射される。
【0185】
理論に拘束されることを望むものではないが、網膜下注射の速度および位置によって、黄斑、中心窩および/または下にあるRPE細胞を損傷させることがある局所的剪断力が生じる結果となることがある。剪断力を最小にするまたは回避する速度で網膜下注射を行ってもよい。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約15~17分にかけて注射される。いくつかの実施形態において、ベクターは、約17~20分にかけて注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約20~22分にかけて注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約35~約65μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約35μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約40μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約45μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約50μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約55μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約60μl/分の速度で注射される。いくつかの実施形態において、rAAV組成物は、約65μl/分の速度で注射される。ブレブの注射速度および時間が、例えば、中心網膜の細胞に接近するのに十分な網膜剥離を生じさせるために必要なrAAV組成物の容量またはブレブのサイズ、rAAV組成物を送達するために使用されるカニューレのサイズ、および本発明のカニューレの位置を安全に維持する能力によって左右されることがあることは、当業者には理解されるであろう。
【0186】
本発明のいくつかの実施形態において、網膜の網膜下腔に注射される組成物の容量は、約1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、75μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μlもしくは1mLのいずれか1つより多いか、またはそれらの間の任意の量である。
【0187】
いくつかの実施形態において、前記方法は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用
する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子であって、異種核酸をコードするベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量を、眼に(例えば、網膜下および/または硝子体内投与によって)投与することを含む。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも約、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、10×1012、11×1012、15×1012、20×1012、25×1012、30×1012、または50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012~6×1012、6×1012~7×1012、7×1012~8×1012、8×1012~9×1012、9×1012~10×1012、10×1012~11×1012、11×1012~15×1012、15×1012~20×1012、20×1012~25×1012、25×1012~30×1012、30×1012~50×1012、または50×1012~100×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012~10×1012、10×1012~25×1012、または25×1012~50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも約、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、10×10、11×10、15×10、20×10、25×10、30×10、または50×10形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×10~6×10、6×10~7×10、7×10~8×10、8×10~9×10、9×10~10×10、10×10~11×10、11×10~15×10、15×10~20×10、20×10~25×10、25×10~30×10、30×10~50×10、または50×10~100×10形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×10~10×10、10×10~15×10、15×10~25×10、または25×10~50×10形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも、約5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、10×1010、11×1010、15×1010、20×1010、25×1010、30×1010、40×1010、または50×1010感染単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも、約5×1010~6×1010、6×1010~7×1010、7×1010~8×1010、8×1010~9×1010、9×1010~10×1010、10×1010~11×1010、11×1010~15×1010、15×1010~20×1010、20×1010~25×1010、25×1010~30×1010、30×1010~40×1010、40×1010~50×1010、または50×1010~100×1010感染単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも、約5×1010~10×1010、10×1010~15×1010、15×1010~25×1010、または25×1010~50×1010感染単位/mLのいずれかである。
【0188】
いくつかの実施形態において、前記方法は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子の有効量を、個体(例えばヒト)の眼に(例えば、網膜下および/または硝子体内投与によって)投与することを含む。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、体重のkg当たり少なくとも約、1×10~約1×1013ゲノムコピーのいずれかである。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、体重のkg当たり約1×10~約1×1013ゲノムコピーのいずれかである。
【0189】
1つまたは複数(例えば、2、3もしくはそれ以上の)ブレブを形成することができる
。一般に、本発明の方法およびシステムによって形成されるブレブの全容量は、眼の流体容量、例えば典型的なヒト対象では約4ml、を超えることができない。個々のブレブ各々の合計容量は、中心網膜の細胞タイプを暴露するのに十分なサイズの網膜剥離を助長するために、および最適な操作に十分な依存度のブレブを生成するために、少なくとも約0.3ml、または少なくとも約5mlであることができる。本発明の方法およびシステムに従ってブレブを生成する際、眼の構造に対する損傷を回避するために適切な眼圧を維持しなければならないことは、当業者には理解されるであろう。個々のブレブ各々のサイズは、例えば、約0.5~約1.2ml、約0.8~約1.2ml、約0.9~約1.2ml、約0.9~約1.0ml、約1.0~約2.0ml、約1.0~約3.0mlであることがある。したがって、一例では、合計3mlのrAAV組成物懸濁液を注射するために、各々約1mlの3個のブレブを構築することができる。併せてすべてのブレブの合計容量は、例えば、約0.5~約3.0ml、約0.8~約3.0ml、約0.9~約3.0ml、約1.0~約3.0ml、約0.5~約1.5ml、約0.5~約1.2ml、約0.9~約3.0ml、約0.9~約2.0ml、約0.9~約1.0mlとなるだろう。
【0190】
ブレブの原位置の縁部の外側の標的網膜(例えば、中心網膜)領域に安全かつ効率的に形質導入するために、ブレブを操作して形質導入の標的領域にブレブを再配置してもよい。このブレブの操作は、ブレブの容量が生じさせるブレブの依存性によって、眼のブレブを有する位置を変えることによって、ヒトの頭と眼または1つもしくはそれ以上のブレブを有する眼とを位置合わせし直すことによって、および/または液空気置換を用いて行うことができる。これは、特に、中心網膜に関する。この領域は通常は網膜下注射による剥離に耐えるからである。いくつかの実施形態では、流空気置換を用いてブレブを再配置し;注入カニューレからの流体を空気によって、例えば、網膜表面への吹き込み空気によって、一時的に置換する。大量の空気が網膜表面から硝子体腔液を追い出すので、その硝子体腔内の流体はカニューレから流出することができる。硝子体腔液からの圧力の一時的な欠如に起因して、ブレブは移動し、眼の依存部に引き寄せられる。眼球を適切に配置することによって、隣接領域(例えば、黄斑および/または中心窩)を含むように網膜下rAAV組成物のブレブを操作する。場合によっては、ブレブの大部分は、流空気置換を使用しなくてもブレブを引き寄せさせるのに十分なものである。眼内の所望の位置にブレブを引き寄せさせるように対象の頭の位置を変えることによって、所望の位置へのブレブの移動をさらに助長してもよい。ブレブの所望の立体配置を達成したら、流体を硝子体腔に戻す。この流体は、適切な流体、例えば、作りたての食塩水である。一般に、網膜下rAAV組成物を網膜切開に対する網膜裂孔閉鎖術なしで、および眼内タンポナーデなしで、生体内原位置に放置してもよく、網膜は約48時間以内に自然に再付着することになる。
【0191】
治療用ポリペプチドまたはRNA配列を含むベクターの眼細胞(例えば黄斑および/または中心窩の、例えばRPEおよび/または光受容器細胞)への安全かつ効率的形質導入によって、形質導入された細胞が眼障害の処置に十分な量の治療用ポリペプチドまたはRNA配列を生成する本発明の方法は、眼障害を有する個体;例えばヒト、を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態において、眼細胞への形質導入は、HSPGと相互作用する(例えば、HSPGとの結合を阻害または除去する)アミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を含むAAVカプシドタンパク質を含むrAAV粒子(例えば、rAAV2、rAAVrh8Rなどの粒子)を使用することによって向上される。いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、HSPGとの結合低減;例えば、約10%、25%、50%、75%、100%を超える、またはこれらの間の任意の数まで低減される前記結合低減を明示する。いくつかの実施形態において、HSPGとのrAAV結合は、約5%~約100%、約10%~約50%、約10%~約30%、約25%~約75%、約25%~約50%、または約30%~約50%低減される。
【0192】
rAAV(いくつかの実施形態では、粒子の形態のもの)の有効量が治療目的に応じて投与される。例えば、低い形質導入パーセンテージによって所望の治療効果が達成できる場合には、処置の目的は、一般に、この形質導入レベルを満たすまたは超えることである。いくつかの例では、この形質導入レベルを、標的細胞のたった約1~5%、いくつかの実施形態では所望の組織タイプの細胞の少なくとも約20%、いくつかの実施形態では少なくとも約50%、いくつかの実施形態では少なくとも約80%、いくつかの実施形態では少なくとも約95%、いくつかの実施形態では所望の組織タイプの細胞の少なくとも約99%に形質導入することによって達成することができる。上で論じたように、HSPGと相互作用するrAAVカプシドの1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換は、rAAV形質導入を向上させる。参考のために、1回の注射で投与される粒子の数は、一般に、粒子約1×10~1×1014の間、粒子約1×10~1×1013の間、粒子約1×10~1×1012の間、または粒子約1×1011である。rAAV組成物は、同じ手技の間に、または数日、数週間、数カ月もしくは数年間隔を空けて、1回またはそれ以上の網膜下注射によって投与されることがある。いくつかの実施形態では、複数のベクターを使用してヒトを処置することもある。
【0193】
いくつかの実施形態では、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を有するrAAVカプシドを含むrAAVウイルス粒子の有効量の網膜への投与は、投与部位のまたは付近の光受容器細胞への形質導入を生じさせる。いくつかの実施形態では、光受容器細胞の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または100%のいずれかより多くが形質導入される。いくつかの実施形態では、光受容器細胞の約5%~約100%、10%~約50%、約10%~約30%、約25%~約75%、約25%~約50%、または約30%~約50%が形質導入される。HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を有するrAAVカプシドを含むAAVウイルス粒子によって形質導入された光受容器細胞を同定する方法は、当技術分野において公知であり;例えば、免疫組織化学、または高感度緑色蛍光タンパク質などのマーカーの使用を用いて、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を有するrAAVカプシドを含むウイルス粒子の形質導入を検出することができる。
【0194】
本発明のいくつかの実施形態において、前記方法は、眼障害を有する個体;例えば、眼障害を有するヒト、を処置するために、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を有するrAAVカプシドを含むウイルス粒子であるAAVウイルス粒子の有効量を、哺乳動物の網膜下(例えば、網膜下腔)に投与することを含む。いくつかの実施形態では、組成物を網膜下の1カ所またはそれ以上の位置に注射して、光受容器細胞において異種核酸を発現させる。いくつかの実施形態において、組成物は、網膜下の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10カ所または10カ所より多くの位置のいずれかの1つに注射される。
【0195】
いくつかの実施形態において、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を有するrAAVカプシドを含むrAAVウイルス粒子は、1カ所より多くの位置に同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、rAAVウイルス粒子の複数回の注射は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間または24時間を超えて間隔を空けない。
【0196】
硝子体内注射の方法
硝子体内注射の一般的な方法は、以下のおおまかな概要によって説明することができる。この例は、前記方法の特定の特徴を説明することを意図したものに過ぎず、断じて制限を意図したものではない。硝子体内注射の手技は、当技術分野において公知である(例えば、Peyman,G.A.ら(2009)Retina 29(7):875~912
頁、ならびにFagan,X.J.およびAl-Qureshi,S.(2013)Clin.Experiment.Ophthalmol.41(5):500~7頁を参照されたい)。
【0197】
簡単に言うと、硝子体内注射の対象に、瞳孔拡大、眼の消毒、および麻酔薬の投与によってその手技のための準備を施すことができる。当技術分野において公知のいずれの好適な散瞳薬を瞳孔拡大に使用してもよい。十分な瞳孔拡大を確認した後、処置することができる。消毒は、眼の消毒処置薬、例えば、ポビドン-ヨード(BETADINE(登録商標))などのヨウ素含有溶液を適用することによって果たすことができる。まぶた、まつげおよび任意の他の周囲の組織(例えば、皮膚)を清浄にするために同様の溶液を使用してもよい。いずれの好適な麻酔薬、例えばリドカインまたはプロパラカインを、いずれの好適な濃度で使用してもよい。麻酔薬は、限定ではないが、局所滴剤、ゲルまたはゼリー、および麻酔薬の結膜下適用をはじめとする、当技術分野において公知の任意の方法によって投与することができる。
【0198】
注射に先立ち、消毒した開瞼器を使用して、その領域からまつげをなくす。注射部位に注射器で印をつけてもよい。注射部位を患者の水晶体に基づいて選択してもよい。例えば、注射部位は、偽水晶体または無水晶体患者の場合は縁から3~3.5mm、有水晶体患者の場合は縁から3.5~4mmであることがある。患者は、注射部位とは反対の方を見ることができる。
【0199】
いくつかの実施形態において、前記方法は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子であって、異種核酸をコードするベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量を、眼に(例えば、網膜下および/または硝子体内投与によって)投与することを含む。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも約、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、10×1012、11×1012、15×1012、20×1012、25×1012、30×1012、または50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012~6×1012、6×1012~7×1012、7×1012~8×1012、8×1012~9×1012、9×1012~10×1012、10×1012~11×1012、11×1012~15×1012、15×1012~20×1012、20×1012~25×1012、25×1012~30×1012、30×1012~50×1012、または50×1012~100×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012~10×1012、10×1012~25×1012、または25×1012~50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも約、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、10×10、11×10、15×10、20×10、25×10、30×10、または50×10形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×10~6×10、6×10~7×10、7×10~8×10、8×10~9×10、9×10~10×10、10×10~11×10、11×10~15×10、15×10~20×10、20×10~25×10、25×10~30×10、30×10~50×10、または50×10~100×10形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×10~10×10、10×10~15×10、15×10~25×10、または25×10~50×10形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも、約5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、10×1010、11×1010、15×10
10、20×1010、25×1010、30×1010、40×1010、または50×1010感染単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも、約5×1010~6×1010、6×1010~7×1010、7×1010~8×1010、8×1010~9×1010、9×1010~10×1010、10×1010~11×1010、11×1010~15×1010、15×1010~20×1010、20×1010~25×1010、25×1010~30×1010、30×1010~40×1010、40×1010~50×1010、または50×1010~100×1010感染単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも、約5×1010~10×1010、10×1010~15×1010、15×1010~25×1010、または25×1010~50×1010感染単位/mLのいずれかである。
【0200】
いくつかの実施形態において、前記方法は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子の有効量を、個体(例えばヒト)の眼に(例えば、網膜下および/または硝子体内投与によって)投与することを含む。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、体重のkg当たり少なくとも約、1×10~約1×1013ゲノムコピーのいずれかである。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、体重のkg当たり約1×10~約1×1013ゲノムコピーのいずれかである。
【0201】
注射中に、針を強膜に垂直に挿入し、眼の中心に向けてもよい。針を、先端が網膜下腔ではなく硝子体腔内で終わるように挿入してもよい。当技術分野において公知のいずれの好適な注射量を使用してもよい。注射後、眼を抗生物質などの消毒薬で処置してもよい。眼をすすいで過剰な消毒薬を除去してもよい。
【0202】
網膜の構造およびrAAV送達の有効性を判定するための手段
網膜が複数の層を有することは公知である。網膜の細胞層としては、内境界膜、神経線維、神経節細胞、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、光受容器、および網膜色素上皮層を挙げることができる。硝子体の最近位にある層は、内境界膜である。この層は、グリアの1類である、ミュラー細胞を含有することができる。神経線維層は、視神経を構成する神経節細胞からの軸索を含有することができる。神経節細胞層は、神経節細胞およびアマクリン細胞を含むことができる。内網状層は、神経節およびアマクリン細胞の樹状突起と双極細胞の軸索の間のシナプスを含有することができる。内顆粒層は、アマクリン、双極および水平細胞の細胞核を含有することができる。外網状層は、水平細胞樹状突起と光受容器細胞突起の間のシナプスを含有することができる。外顆粒層は、光受容器細胞体を含有することができる。外または外部境界膜は、ミュラー細胞先端突起間およびこれらの突起と光受容器細胞内部セグメントの間の細胞結合、例えば接着結合およびデスモソームを含むことができる。杆体錐体層およびヤコブ膜としても公知である、光受容器層は、杆体および錐体を含む光受容細胞を含有することができる。硝子体の最遠位にある網膜層は、色素顆粒を含有する六角形の上皮細胞の層を含むことができる網膜色素上皮(RPE)である。
【0203】
網膜が多くの異なる細胞タイプを含有することも公知である。網膜ニューロンは、光受容器細胞、双極細胞、神経節細胞、アマクリン細胞および水平細胞を含むことができる。光受容器細胞は、光感受性である。それらの細胞は光を感知し、双極細胞および神経節細胞によって視神経にシグナルを伝達することによって応答することができる。光受容器細胞は、一般に微光条件で光を感知する杆体細胞、および一般に色を感知し、より明るい光を知覚する錐体細胞を含みうる。双極細胞は、光受容器細胞からの、およびアマクリンまたは神経節細胞上へのシナプスからの、インプットを受信することができる。神経節細胞
は、アマクリン細胞または水平細胞、および視神経からの軸索から、情報を受け取ることができる。水平細胞は、複数の光受容器からのインプットを統合し、光のレベルを調整することができる。アマクリン細胞は、双極細胞の調節を助け、神経節細胞へのインプットをもたらす、介在ニューロンである。網膜のグリア細胞は、ミュラー細胞、アストログリアおよびミクログリアを含むことができる。
【0204】
網膜下または硝子体内注射によるrAAV送達の有効性を、本明細書に記載のいくつかの基準によってモニターすることができる。例えば、本発明の方法を使用して対象の処置を行った後、本明細書に記載するものを含む1つまたはそれ以上の臨床パラメータによって、例えば、病状の1つまたはそれ以上の兆候または症状の改善および/もしくは安定化ならびに/または進行遅延について、対象を評価してもよい。そのような試験の例は当技術分野において公知であり、客観的測定はもちろん、主観的(例えば、対象によって報告される)測定も含む。例えば、対象の視覚機能に対する処置の有効性を測定するために、次のうちの1つまたはそれ以上を評価してもよい:対象の主観的な見え方の質または中心視機能の向上(例えば、対象の流暢に読む能力および顔を認識する能力の向上)、対象の視覚の動き(例えば、迷路を進むために必要な時間の減少)、視力(例えば、対象のLogMARスコアの向上)、微小視野測定(例えば、対象のdBスコアの向上)、暗順応視野測定(例えば、対象のdBスコアの向上)、微細マトリックスマッピング(例えば、対象のdBスコアの向上)、ゴールドマン視野測定(例えば、暗点領域(すなわち盲領域)のサイズ低減およびより小さい標的を解像する能力の向上)、フリッカー感度(例えば、ヘルツの向上)、自発蛍光、および電気生理学測定(例えば、ERGの向上)。いくつかの実施形態において、視覚機能は、対象の視覚の動きによって測定される。いくつかの実施形態において、視覚機能は、対象の視力によって測定される。いくつかの実施形態において、視覚機能は、微小視野測定によって測定される。いくつかの実施形態において、視覚機能は、暗順応視野測定によって測定される。いくつかの実施形態において、視覚機能は、ERGによって測定される。いくつかの実施形態において、視覚機能は、対象の主観的な見え方の質によって測定される。
【0205】
進行性変性視覚機能をもたらす疾患の場合、若年時に対象を処置することは、結果として疾患の進行を減速または静止させることができるばかりでなく、後天性弱視に起因する視覚機能低下を改善または予防することもできる。弱視は、2つのタイプのものであるだろう。たとえ数カ月の月齢まででも誕生時から全暗状態に置かれている非ヒト霊長類および子猫に関する研究において、動物は、後に光に曝露されたときでさえ、網膜によって送信される機能シグナルを有するにもかからわず、機能的に不可逆的に盲目である。この盲目は、神経連絡および皮質の「教育」が、刺激停止に起因して誕生時から発達が停止しているために起こる。この機能が回復することがあるのかどうかは不明である。網膜変性疾患の場合、正常視覚皮質回路網は、最初に「学習された」、または変性が有意な機能障害を生じさせる時点まで、発達上、適切であった。機能障害の眼におけるシグナル伝達の点から、視覚刺激の低下は、結果として脳がシグナルを解釈するまたはその眼を「使用する」ことができなくなる「後天性」または「学習性」機能障害(「後天性弱視」)を生じさせる。「後天性弱視」のこれらの症例では、進行の減速または病状の安定化に加えてより正常な機能の獲得をかつてはもたらすことができた弱視の眼の遺伝子治療の結果として網膜からのシグナル伝達改善があるのかどうかは不明である。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、年齢30歳未満である。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、年齢20歳未満である。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、年齢18歳未満である。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、年齢15歳未満である。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、年齢14歳未満である。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、年齢13歳未満である。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、年齢12歳未満である。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、年齢10歳未満である。いくつかの実施形態において、処置されるヒト
は、年齢8歳未満である。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、年齢6歳未満である。
【0206】
一部の眼障害には、あるタイプの細胞の機能向上が別のタイプの細胞の機能を向上させる「ナース細胞」現象がある。例えば、本発明のrAAVによる中心網膜のRPEへの形質導入は杆体の機能を向上させることができ、そしてまた、向上された杆体機能が、錐体機能向上をもたらす。したがって、あるタイプの細胞の処置は、別のタイプの細胞に関する機能向上をもたらすことができる。
【0207】
特定のrAAVベクターおよび組成物の選択は、個々のヒトの病歴ならびに処置される状態および個体の特徴を含むがこれらに限定されない、多数の異なる因子に依存する。そのような特徴の評価および適切な治療レジメンの設計は、最終的には、処方する医師の責任である。
【0208】
いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、遺伝性眼障害を有するが、臨床兆候または症状をまだ示していない。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、眼障害を有する。いくつかの実施形態において、処置されるヒトは、眼障害の1つまたはそれ以上の兆候または症状を示している。
【0209】
本発明のシステムおよび方法によって処置することができる目障害の非限定的な例としては、次のものが挙げられる:常染色体劣性重症早期発症型網膜変性(レーバー先天黒内障)、先天性色覚異常、シュタルガルト病、ベスト病、ドイン病、錐体ジストロフィー、網膜色素変性、X連鎖性網膜分離症、アッシャー症候群、加齢性黄斑変性、萎縮性加齢性黄斑変性、血管新生AMD、糖尿病黄斑症、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、嚢胞様黄斑浮腫、中心性漿液性網膜症、網膜剥離、眼内炎症、緑内障、後部ぶどう膜炎、全脈絡膜萎縮、およびレーバー遺伝性視神経委縮症。
【0210】
本発明の組成物(例えば、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つもしくはそれ以上の置換またはアミノ酸484、487、532、585もしくは588に対応する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上の置換を有するAAVカプシドを含む、網膜下または硝子体内送達のためのAAVウイルス粒子)を単独で使用することができ、または眼障害を処置するための1つもしくはそれ以上のさらなる治療剤と併用することができる。逐次投与間の間隔は、少なくとも数分、数時間もしくは数日(または、代替的に、数分、数時間もしくは数日未満)単位であることができる。
【0211】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のさらなる治療剤は、網膜下または硝子体に(例えば、硝子体内投与によって)投与されることがある。さらなる治療剤の非限定的な例としては、ポリペプチド神経栄養因子(例えば、GDNF、CNTF、BDNF、FGF2、PEDF、EPO)、ポリペプチド抗血管新生因子(例えば、sFlt、アンジオスタチン、エンドスタチン)抗血管新生性核酸(例えば、siRNA、miRNA、リボザイム)、例えば、VEGFに対する抗血管新生性核酸、抗血管新生性モルホリノ、例えば、VEGFに対する抗血管新生性モルホリノ、抗血管新生抗体および/または抗体断片(例えば、Fab断片)、例えば、VEGFに対する抗血管新生抗体および/または抗体断片が挙げられる。
【0212】
CNS送達のための方法
いくつかの実施形態において、本開示のヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子(例えば、AAV2、AAVrh8Rなどの粒子)の有効量の投与は、投与部位のまたは付近のニューロン(例えば、線条体ニューロン、例えば有棘ニューロン)への形
質導入を生じさせる。いくつかの実施形態では、ニューロンの約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または100%のいずれかより多くが形質導入される。いくつかの実施形態では、ニューロンの約5%~約100%、10%~約50%、約10%~約30%、約25%~約75%、約25%~約50%、または約30%~約50%が形質導入される。異種核酸を発現する組換えウイルス粒子によって形質導入されたニューロンを同定する方法は、当技術分野において公知である;例えば、免疫組織化学、RNA検出(例えば、qPCR、ノーザンブロッティング、RNA-seq、インサイツハイブリダイゼーションなど)、または高感度緑色蛍光タンパク質等の共発現マーカーの使用を用いて、発現を検出することができる。
【0213】
本発明のいくつかの実施形態において、前記方法は、哺乳動物、例えばヒト、を処置するために、本開示のヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子の有効量を哺乳動物の脳に投与することを含む。いくつかの実施形態では、組成物を脳内の1カ所またはそれ以上の位置に注射して、少なくともニューロにおいて本開示の異種核酸を発現させる。いくつかの実施形態において、組成物は、脳内の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10カ所または10カ所より多くの位置のいずれかの1つに注射される。いくつかの実施形態において、組成物は、線条体に注射される。いくつかの実施形態において、組成物は、背部線条体に注射される。いくつかの実施形態において、組成物は、被殻に注射される。いくつかの実施形態において、組成物は、尾状核に注射される。いくつかの実施形態において、組成物は、被殻におよび尾状核に注射される。いくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子は、定位固定注射によって個体のCNSに、例えば線条体に投与される。いくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子は、対流強化送達(CED);例えば、線条体へのCED、によって個体のCNSに投与される。
【0214】
rAAV粒子の投与を様々な経路によって行うことができる。いくつかの実施形態において、投与は、直接脊髄注射、および/または脳内投与を含む。いくつかの実施形態において、投与は、大脳、髄質、脳橋、小脳、頭蓋内腔、脳を覆っている髄膜、硬膜、くも膜、脳軟膜、脳を取り囲むくも膜下腔の脳脊髄液(CSF)、小脳の深部小脳核、大脳の脳室系、くも膜下腔、線条体、皮質、中隔、視床、視床下部、および脳実質から選択される部位に対するものである。いくつかの実施形態において、投与は、少なくとも1つの大脳側脳室への側脳室内注射を含む。いくつかの実施形態において、投与は、頸部、胸部および/または腰部におけるくも髄腔内注射を含む。いくつかの実施形態において、投与は、線条体内注射を含む。いくつかの実施形態において、投与は、視床内注射を含む。これらの投与経路に好適な様々な技術およびデバイス、例えばCEDおよび/または定位固定注射、を本明細書に記載する。
【0215】
いくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子は、脳の一方の半球に投与される。いくつかの実施形態において、組換えウイルス粒子は、脳の両方の半球に投与される。
【0216】
いくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子は、1カ所より多くの位置に同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、組換えウイルス粒子の複数回の注射は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間
、6時間、9時間、12時間または24時間を超えて間隔を空けない。
【0217】
いくつかの実施形態において、本発明は、CNSの障害を処置するための本開示のヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子を含む医薬組成物の有効量を投与することによってCNSの障害を有するヒトを処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1つまたはそれ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む。
【0218】
一般に本発明の組成物約1μL~約1mL(例えば、組成物約100μL~約500μL)を送達することができる。本発明のいくつかの実施形態において、線条体に注射される、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子の容量は、約1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、75μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μlもしくは1mLのいずれか1つもしくはそれより多いか、またはそれらの間の任意の量である。
【0219】
いくつかの実施形態において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子の第1の容量は脳の第1の領域に注射され、その変異型rAAV粒子の第2の容量は脳の第2の領域に注射される。例えば、いくつかの実施形態において、変異型rAAV粒子の第1の量は尾状核に注射され、組成物の第2の容量は被殻に注射される。いくつかの実施形態において、変異型rAAV粒子の1X容量は尾状核に注射され、変異型rAAV粒子の1.5X、2X、2.5X、3X、3.5Xまたは4X容量は被殻に注射され、ここでのXは、約1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、75μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μlもしくは1mLのいずれか1つもしくはそれより多い容量であるか、またはそれらの間の任意の量である。
【0220】
本発明の組成物(例えば、本開示のヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つもしくはそれ以上の位置における1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子)を単独で使用することができ、またはCNSの障害(例えば、HD)を処置するための1つもしくはそれ以上のさらなる治療剤と併用することができる。逐次投与間の間隔は、少なくとも数分、数時間もしくは数日(または、代替的に、数分、数時間もしくは数日未満)単位であることができる。
【0221】
いくつかの実施形態において、前記方法は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子であって、異種核酸をコードするベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量を、CNSに投与することを含む。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも約、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、10×1012、11×1012、15×1012、20×1012、25×1012、30×1012、または50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012~6×1012、6×1012~7×1012、7×1012~8×1012、8×1012~9×1012、9×1012~10×1012、10×1012~11×1012、11×1012~15×1012、15×1012~20×1012、20×1012~25×1012、25×1012~30×1012、30×1012~50×1012、または50×1012~100×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形
態において、組成物のウイルス力価は、約5×1012~10×1012、10×1012~25×1012、または25×1012~50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも約、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、10×10、11×10、15×10、20×10、25×10、30×10、または50×10形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×10~6×10、6×10~7×10、7×10~8×10、8×10~9×10、9×10~10×10、10×10~11×10、11×10~15×10、15×10~20×10、20×10~25×10、25×10~30×10、30×10~50×10、または50×10~100×10形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、約5×10~10×10、10×10~15×10、15×10~25×10、または25×10~50×10形質導入単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも、約5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、10×1010、11×1010、15×1010、20×1010、25×1010、30×1010、40×1010、または50×1010感染単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも、約5×1010~6×1010、6×1010~7×1010、7×1010~8×1010、8×1010~9×1010、9×1010~10×1010、10×1010~11×1010、11×1010~15×1010、15×1010~20×1010、20×1010~25×1010、25×1010~30×1010、30×1010~40×1010、40×1010~50×1010、または50×1010~100×1010感染単位/mLのいずれかである。いくつかの実施形態において、組成物のウイルス力価は、少なくとも、約5×1010~10×1010、10×1010~15×1010、15×1010~25×1010、または25×1010~50×1010感染単位/mLのいずれかである。
【0222】
いくつかの実施形態において、前記方法は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子の有効量を、個体(例えばヒト)のCNSに投与することを含む。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、体重のkg当たり少なくとも約、1×10~約1×1013ゲノムコピーのいずれかである。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、体重のkg当たり約1×10~約1×1013ゲノムコピーのいずれかである。
【0223】
いくつかの実施形態において、前記方法は、個体に対するヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む組換えウイルス粒子の有効量を、個体(例えばヒト)のCNSに投与することを含む。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の総量は、少なくとも約、1×10~約1×1014ゲノムコピーのいずれかである。いくつかの実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の総量は、約1×10~約1×1014ゲノムコピーのいずれかである。
【0224】
V.発現構築物
いくつかの態様において、本発明は、異種核酸を含むrAAVベクターの網膜下送達によって眼に異種核酸を送達する方法であって、該rAAVベクターは、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を含むrAAVカプシド(例えば、rAAV2カプシド、rAAVrh8Rカプシドなど)に封入されている、前記方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体のCNSの障害を処置する方法であって、該個
体のCNSへのrAAV粒子を含む組成物の送達を含み、該rAAV粒子は、(a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、および(b)異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、異種核酸(例えば、導入遺伝子)は、プロモーターに作動可能に連結されている。例示的プロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーターおよびCK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAGプロモーター;Niwaら、Gene、1991、108(2):193~9頁)および伸長因子1-αプロモーター(EF1-α)プロモーター(Kimら、Gene、1990、91(2):217~23頁およびGuoら、Gene Ther.、1996、3(9):802~10頁)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、プロモーターは、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、またはニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターに連結されているサイトメガロウイルスエンハンサーを含む。プロモーターは、構成的、誘導性または抑制性プロモーターであることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、眼の細胞において異種核酸を発現する能力がある。いくつかの実施形態において、プロモーターは、光受容器細胞またはRPEにおいて異種核酸を発現する能力がある。実施形態において、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、例えば、ヒトRKプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、オプシンプロモーター、例えば、ヒトオプシンプロモーターまたはマウスオプシンプロモーターである。
【0225】
本発明は、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を含むrAAVウイルス粒子へのパッケージングのために治療用ポリペプチドおよび/または核酸をコードする1つまたはそれ以上の核酸配列を導入するための組換えウイルスゲノムの使用を企図している。組換えウイルスゲノムとしては、治療用ポリペプチドおよび/または核酸の発現を確立するための任意の要素、例えば、プロモーター、ITR、リボソーム結合要素、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、イントロン、ポリAシグナル、および/または複製起点を挙げることができる。
【0226】
いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、自己相補型rAAVベクター、例えば、組換え自己相補性(本明細書では用語「自己相補型」と同義で用いることがある)ゲノムを含むものである。自己相補性ゲノムを有するAAVウイルス粒子、および自己相補性AAVゲノムの使用方法は、米国特許第6,596,535号、同第7,125,717号;同第7,465,583号;同第7,785,888号;同第7,790,154号;同第7,846,729号;同第8,093,054号;および同第8,361,457号;ならびにWang Z.ら、(2003)Gene Ther 10:2105~2111頁に記載されており、これらの参考文献の各々は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている。自己相補性ゲノムを含むrAAVは、その部分相補性配列(例えば、導入遺伝子の相補性コードおよび非コード鎖)によって二本鎖DNA分子を迅速に形成することになる。いくつかの実施形態において、ベクターは、異種核酸をコードする第1の核酸配列と、該核酸の相補鎖をコードする第2の核酸配列とを含み、該第1の核酸配列は、その長さの大部分またはすべてにわたって該第2の核酸配列と鎖間塩基対を形成することができる。
【0227】
いくつかの実施形態において、第1の異種核酸配列と第2の異種核酸配列は、突然変異ITR(例えば、右ITR)によって連結されている。いくつかの実施形態において、ITRは、ポリヌクレオチド配列5’-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG-3’(配列番号8)を含む。突然変異ITRは、末端切断配列を含むD領域の欠失を含む。結果として、AAVウイルスゲノムの複製中に、repタンパク質は、ウイルスゲノムを突然変異ITRで切断しないことになり、したがって、5’から3’の順序で以下のものを含む組換えウイルスゲノムは、ウイルスカプシドにパッケージングされることになる:AAV ITR、調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチド配列、突然変異AAV ITR、第1の異種ヌクレオチドに対して逆向きの第2のポリヌクレオチド配列、そして第3のAAV ITR。
【0228】
VI.ウイルス粒子およびウイルス粒子の生産方法
rAAVウイルス粒子
いくつかの態様において、本発明は、異種核酸を含むrAAVベクターの網膜下送達によって眼に異種核酸を送達する方法であって、該rAAVベクターは、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を含むrAAVカプシド(例えば、rAAV2、rAAVrh8Rなど)に封入されている、前記方法を提供する。いくつかの態様において、本発明は、個体のCNSへのrAAV粒子の送達に関する方法およびキットを提供する。
【0229】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、AAVベクターを含む。いくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、1つまたは2つのAAV逆位末端反復配列(ITR)が隣接している異種導入遺伝子を含む核酸を含む組換えAAV粒子である。核酸は、AAV粒子のカプシドに封入されている。AAV粒子は、カプシドタンパク質も含む。いくつかの実施形態において、核酸は、転写方向に成分が作動可能に連結されている目的(例えば、異種導入遺伝子)のコード配列、転写開始配列と転写終結配列とを含む制御配列を含み、それによって発現カセットを形成する。
【0230】
発現カセットは、その5’および3’末端に少なくとも1つの機能性AAV ITR配列が隣接している。「機能性AAV ITR配列」は、該ITR配列が、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングのために意図した通りに機能することを意味する。Davidsonら、PNAS、2000、97(7)3428~32頁;Passiniら、J.Virol.、2003、77(12):7034~40頁;およびPechanら、Gene Ther.、2009、16:10~16頁を参照されたい。これらの参考文献のすべては、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている。本発明のいくつかの態様を実施するために、組換えベクターは、カプシド封入に不可欠なAAVの配列のすべておよびrAAVによる感染のための物理的構造を少なくとも含む。本発明のベクターに使用するためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要がなく(例えば、Kotin、Hum.Gene Ther.、1994、5:793~801頁に記載の通り)、ヌクレオチドの挿入、欠失もしくは置換によって改変されていてもよく、またはいくつかのAAV血清型のいずれに由来するものであってもよい。AAVの40より多くの血清型が今では公知であり、新たな血清型、および既存の血清型の変異体が同定され続けている。Gaoら、PNAS、2002、99(18):11854~6頁;Gaoら、PNAS、2003、100(10):6081~6頁;およびBossisら、J.Virol.、2003、77(12):6799~810頁を参照されたい。
【0231】
任意のAAV血清型の使用が本発明の範囲内で考えられる。いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV
6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAV ITRなどであるAAV ITRを限定ではないが含む、AAV血清型に由来するベクターである。いくつかの実施形態において、AAV中の核酸は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVなどであるAAV ITRのIRを含む。特定の実施形態において、AAV中の核酸は、AAV2 ITRを含む。上で説明したように、rAAV粒子は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むカプシドをさらに含むことがある。
【0232】
いくつかの実施形態において、ベクターは、スタッファー核酸を含むことがある。いくつかの実施形態において、スタッファー核酸は、緑色蛍光タンパク質をコードすることがある。いくつかの実施形態において、スタッファー核酸は、プロモーターと、RNAiをコードする核酸との間に位置することがある。
【0233】
異なるAAV血清型を使用して、特定の標的細胞への形質導入を最適化する、または特定の標的組織(例えば、CNS組織)内の特定の細胞タイプを標的化する。rAAV粒子は、同じ血清型または混合血清型のウイルスタンパク質およびウイルス核酸を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、本発明のAAV2カプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV2 ITRを含むことができ、またはAAV2カプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV1 ITRを含むことができる。rAAV粒子の生産のためのAAV血清型のあらゆる組み合わせを、各々の組み合わせを本明細書においてはっきりと述べたかのごとく、本明細書において提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のAAV2カプシドを含むrAAV粒子を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のAAVrh8Rカプシドを含むrAAV粒子を提供する。
【0234】
AAV粒子の生産
トランスフェクション、安定した細胞株生産、ならびにアデノウイルス-AAVハイブリッド、ヘルペスウイルス-AAVハイブリッド(Conway,JEら(1997)J.Virology 71(11):8780~8789頁)およびバキュロウイルス-AAVハイブリッドを含む感染性ハイブリッドウイルス生産系をはじめとする、rAAVベクターを生産するための非常に多くの方法が当技術分野において公知である。rAAVウイルス粒子の生産のためのrAAV生産培養はすべて次のものを必要とする;1)例えば、ヒト由来細胞株、例えばヒーラ、A549もしくは293細胞、またはバキュロウイルス生産系の場合は昆虫由来細胞株、例えばSF-9を含む、安定した宿主細胞;2)野生型もしくは突然変異型アデノウイルス(例えば、温度感受性アデノウイルス)、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、またはヘルパー機能を提供するプラスミド構築物によって提供される、好適なヘルパーウイルス機能;3)AAV repおよびcap遺伝子および遺伝子産物;4)少なくとも1つのAAV ITR配列が隣接している導入遺伝子(例えば、治療用導入遺伝子);および5)rAAV生産を支援する好適な培地および培地成分。当技術分野において公知の好適な培地をrAAVベクターの生産に使用してもよい。これらの培地としては、限定ではないが、変性イーグル培地(MEM)、ダルベッコ変性エーグル培地(DMEM)、特注配合物、例えば、米国特許第6,566,118号に記載されているもの、および米国特許6,723,551に記載されているようなSF-900 II SFM培地を含む、Hyclone LaboratoriesおよびJRHによって生産されている培地が挙げられ、前記特許文献の各々は、その全体が、特に
、組換えAAVベクターの生産に使用するための特注培地配合物に関して、参照によって本明細書に組み入れられている。
【0235】
rAAV粒子は、当技術分野において公知の方法を用いて生産することができる。例えば、米国特許6,566,118号;同第6,989,264号;および同第6,995,006号を参照されたい。本発明を実施する場合、rAAV粒子を生産する宿主細胞としては、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、微生物細胞および酵母が挙げられる。宿主細胞は、AAV repおよびcap遺伝子が宿主細胞内に安定的に維持されるパッケージング細胞、またはAAVベクターゲノムが安定的に維持されるプロデューサー細胞である場合もある。例示的パッケージングおよびプロデューサー細胞は、293、A549またはヒーラ細胞に由来する。AAVベクターは、当技術分野において公知の標準的技術を用いてを精製され、製剤化される。
【0236】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、トリプルトランスフェクション法、例えば、下で提供する例示的トリプルトランスフェクション法によって生産されることがある。簡単に言うと、rep遺伝子およびカプシド遺伝子を含有するプラスミドをヘルパーアデノウイルスプラスミドと共に細胞株(例えば、HEK-293細胞)に(例えば、リン酸カルシウム法を用いて)トランスフェクトすることができ、ウイルスを採取し、場合により精製することができる。
【0237】
いくつかの実施形態において、rAAV粒子は、プロデューサー細胞株法、例えば、下で提供する例示的プロデューサー細胞株法(Martinら(2013)Human Gene Therapy Methods 24:253~269頁において言及されているものも参照されたい)によって生産されることもある。簡単に言うと、細胞株(例えば、ヒーラ細胞)に、rep遺伝子、カプシド遺伝子およびプロモーター-導入遺伝子配列を含むプラスミドを安定的にトランスフェクトすることができる。細胞株をスクリーニングして、rAAV生産のためのリードクローンを選択することができ、次いでそれを生産バイオリアクターに拡大し、ヘルパーとしてのアデノウイルス(例えば、野生型アデノウイルス)に感染させてrAAV生産を開始させることができる。その後、ウイルスを回収することができ、アデノウイルスを(例えば熱によって)不活性化することができ、および/または除去することができ、rAAV粒子を精製することができる。
【0238】
いくつかの態様では、本明細書に開示の任意のrAAV粒子を生産する方法を提供し、この方法は、(a)rAAV粒子が生産される条件下で宿主細胞を培養する工程であって、該宿主細胞は、(i)1つまたはそれ以上のAAVパッケージ遺伝子[ここで、該AAVパッケージング遺伝子の各々は、AAV複製および/またはカプシド封入タンパク質をコードする]と;(ii)少なくとも1つのAAV ITRが隣接している本明細書に記載の治療用ポリペプチドおよび/または核酸をコードする核酸を含むrAAVプロベクターと、(iii)AAVヘルパー機能とを含む、前記工程;および(b)前記宿主細胞によって生産されたrAAV粒子を回収する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのAAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAVなどであるAAV ITRからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記カプシド封入タンパク質は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、カプシド封入タンパク質は、AAV2カプシド封入タンパク質である。いくつかの実施形態において、カプシド封入タンパク質は、AAVrh8Rカプシド封入タンパク質である。
【0239】
本発明の好適なrAAV生産培養培地に、血清または血清由来組換えタンパク質を0.5%~20%(v/vまたはw/v)のレベルで補足してもよい。あるいは、当技術分野において公知であるように、rAAVベクターを、動物由来産物を含有しない培地と言われることもある無血清条件で生産してもよい。rAAVベクターの生産を支援するように設計された商用または特注培地に、限定ではないがグルコース、ビタミン、アミノ酸および/または増殖因子を含む、当技術分野において公知の1つまたはそれ以上の細胞培養成分を補足して、生産培養物中のrAAVの力価を増大させることもできることは、当業者には理解されるだろう。
【0240】
rAAV生産培養物を、用いる特定の宿主細胞に好適な様々な条件下(広い温度範囲にわたって、様々な時間長にわたってなど)で増殖させることができる。当技術分野において公知であるように、rAAV生産培養物は、例えばローラーボトル、中空繊維フィルター、マイクロキャリアおよび充填層または流動層バイオリアクターなどの、好適な付着依存性容器で培養することができる付着依存性培養物を含む。rAAVベクター生産培養物は、例えばスピナーフラスコ、撹拌タンクバイオリアクターおよび使い捨てシステム(例えば、Waveバッグシステム)をはじめとする様々な方法で培養することができる懸濁適応宿主細胞、例えばヒーラ、293およびSF-9細胞も含むことがある。
【0241】
本発明のrAAVベクター粒子をrAAV生産培養物から、該生産培養物の宿主細胞の溶解によって回収してもよいし、または該生産培養物からの使用済み培地の回収によって回収してもよいが、ただし、米国特許第6,566,118号においてより十分に説明されているような、インタクト細胞から培地にrAAV粒子を放出させる当技術分野において公知の条件下で、細胞を培養することを条件とする。細胞を溶解する好適な方法も当技術分野において公知であり、例えば、多重凍結/融解サイクル、超音波処理、顕微溶液化、ならびに化学物質、例えば界面活性剤/プロテアーゼ、での処理を含む。
【0242】
さらなる実施形態では、rAAV粒子を精製する。用語「精製された」は、本明細書で用いる場合、rAAV粒子が天然に存在するまたは元はそこから調製された場所に存在することもある他の成分の少なくとも一部がないrAAV粒子の製品を含む。したがって、例えば、ソース混合物、例えば培養溶解物または生産培養上清、からrAAV粒子を濃縮する精製技術を用いて、単離されたrAAV粒子を製造してもよい。濃縮は、様々な方法で、例えば、溶液中に存在するDNアーゼ耐性粒子(DRP)もしくはゲノムコピー(gc)の比率よって、または感染力よって、測定することができ、またはソース混合物中に存在する第2の、干渉する可能性のある物質、例えば、不純物[生産培養不純物もしくは工程内不純物(ヘルパーウイルス、培地成分などを含む)を含む]に関して測定することができる。
【0243】
いくつかの実施形態では、rAAV生産培養回収物を清澄化して、宿主細胞片を除去する。いくつかの実施形態において、生産培養回収物は、例えば、グレードDOHC Millipore Millistak+ HC Podフィルター、グレードA1HC Millipore Millistak+ HC Podフィルター、および0.2μmフィルターOpticap XL10 Millipore Express SHC親水性膜フィルターを含む、一連のデプスフィルターによる濾過によって清澄化される。当技術分野において公知の様々な他の標準的技術、例えば、遠心分離、または当技術分野において公知の0.2μmまたはそれより大きい孔径の任意の酢酸セルロースフィルターによる濾過によって、清澄化を果たすこともできる。
【0244】
いくつかの実施形態では、rAAV生産培養回収物をBenzonase(登録商標)でさらに処理して、生産培養物中に存在する一切の高分子量DNAを消化する。いくつかの実施形態において、Benzonase(登録商標)消化は、例えば、最終濃度1~2
.5単位/mLのBenzonase(登録商標)を周囲温度~37℃の範囲の温度で30分~数時間の期間を含む、当技術分野において公知の標準条件下で行われる。
【0245】
rAAV粒子を、次の精製工程の1つまたはそれ以上を用いて単離または精製してもよい:平衡遠心分離;フロースルー陰イオン交換濾過;rAAV粒子を濃縮するためのタンジェンシャルフロー濾過(TFF);アパタイトクロマトグラフィーによるrAAV捕捉;ヘルパーウイルスの熱不活化;疎水性相互作用クロマトグラフィーによるrAAV捕捉;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による緩衝液交換;ナノ濾過;および陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーによるrAAV捕捉。これらの工程を単独で用いてもよく、様々な組み合わせで用いてもよく、または異なる順序で用いてもよい。いくつかの実施形態において、前記方法は、下記の順序ですべての工程を含む。rAAV粒子を精製する方法は、例えば、Xiaoら、(1998)Journal of Virology 72:2224~2232頁;米国特許第6,989,264号および同第8,137,948号;ならびにWO2010/148143において見つけられる。
【0246】
治療用ポリペプチドおよび/または治療用核酸をコードする異種核酸を含むrAAV粒子であって、HSPGと相互作用するアミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を含むrAAVカプシドを含む前記rAAV粒子、ならびに医薬的に許容される担体を含む医薬組成物も本明細書において提供する。前記医薬組成物は、本明細書に記載する任意の投与方式;例えば網膜下投与によるもの、に好適であるだろう。
【0247】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載するrAAVと医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物は、ヒトへの投与に好適である。そのような担体は、当技術分野において周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、1035~1038頁および1570~1580頁を参照されたい)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載するrAAVと医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物は、眼注射に好適である。そのような医薬的に許容される担体は、滅菌液、例えば、水および油(石油、動物、植物または合成由来のもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱油などを含む)であることができる。食塩溶液ならびにデキストロース、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロール水溶液も、特に注射用溶液のために、液体担体として用いることができる。医薬組成物は、さらなる成分、例えば、保存薬、緩衝剤、等張化剤、抗酸化物質および安定剤、非イオン性湿潤または清澄化剤、増粘剤などをさらに含むことがある。本明細書に記載する医薬組成物を単一単位剤形でまたは複数投与量形態で包装することができる。前記組成物は、一般に、無菌かつ実質的に等張性の溶液として製剤化される。
【0248】
VII.システムおよびキット
本明細書に記載のrAAV組成物を、本明細書に記載の発明の方法の1つで使用するために設計されたシステム内に含めてもよい。
【0249】
網膜下送達
いくつかの実施形態において、本発明は、個体の眼へのベクターの網膜下送達のためのシステムであって、a)rAAV粒子の有効量を含む組成物[ここで、i)該rAAV粒子のカプシドタンパク質は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、ii)該ベクターは、治療用ポリペプチドまたは治療用RNAをコードする異種核酸と少なくとも1つのAAV末端反復配列とを含む];およびb)該rAAVの網膜送達のためのデバイスを含む、前記システムを提供する。
【0250】
一般に、前記システムは、27~45ゲージである細径カニューレと、1本またはそれ以上の(例えば、1、2、3、4またはそれ以上の)注射器と、本発明の方法での使用に好適な1つまたはそれ以上(例えば、1、2、3、4つまたはそれ以上)の流体とを含む。
【0251】
細径カニューレは、網膜下腔に注射されるベクター懸濁液および/または他の流体の網膜下注射に好適である。いくつかの実施形態において、カニューレは27~45ゲージである。いくつかの実施形態において、細径カニューレは35~41ゲージである。いくつかの実施形態において、細径カニューレは40または41ゲージである。いくつかの実施形態において、細径カニューレは41ゲージである。前記カニューレは、いずれの好適なタイプのカニューレであってもよく、例えば、de-Juan(登録商標)カニューレまたはEagle(登録商標)カニューレであってもよい。
【0252】
注射器は、いずれの好適な注射器であってもよいが、ただし、流体送達のためのカニューレへの接続が可能であることを条件とする。いくつかの実施形態において、注射器は、Accurus(登録商標)システム注射器である。いくつかの実施形態において、システムは、1本の注射器を有する。いくつかの実施形態において、システムは、2本の注射器を有する。いくつかの実施形態において、システムは、3本の注射器を有する。いくつかの実施形態において、システムは、4本またはそれ以上の注射器を有する。
【0253】
システムは、例えばフットペダルによって作動させることができる、自動インジェクションポンプをさらに含むことがある。
【0254】
本発明の方法での使用に好適な流体としては、本明細書に記載するもの、例えば、本明細書に記載の1つまたはそれ以上のベクターの有効量を各々が含む1つまたはそれ以上の流体、最初のブレブを形成するための1つまたはそれ以上の流体(例えば、食塩水または他の適切な流体)、および1つまたはそれ以上の治療剤を含む1つまたはそれ以上の流体が挙げられる。
【0255】
本発明の方法での使用に好適な流体としては、本明細書に記載するもの、例えば、本明細書に記載の1つまたはそれ以上のベクターの有効量を各々含む1つまたはそれ以上の流体、最初のブレブを形成するための1つまたはそれ以上の流体(例えば、食塩水または他の適切な流体)、および1つまたはそれ以上の治療剤を含む1つまたはそれ以上の流体が挙げられる。
【0256】
いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8mlより大きい。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、少なくとも約0.9mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、少なくとも約1.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、少なくとも約1.5mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、少なくとも約2.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8超~約3.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8超~約2.5mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8超~約2.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8超~約1.5mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.8超~約1.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.9~約3.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.9~約2.5mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約
0.9~約2.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.9~約1.5mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約0.9~約1.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約1.0~約3.0mlである。いくつかの実施形態において、ベクターの有効量を含む流体の容量は、約1.0~約2.0mlである。
【0257】
最初のブレブを形成するための流体は、例えば、約0.1~約0.5mlであることがある。いくつかの実施形態において、システム内のすべての流体の合計容量は、約0.5~約3.0mlである。
【0258】
いくつかの実施形態において、システムは、単一の流体(例えば、ベクターの有効量を含む流体)を含む。いくつかの実施形態において、システムは、2つの流体を含む。いくつかの実施形態において、システムは、3つの流体を含む。いくつかの実施形態において、システムは、4つまたはそれ以上の流体を含む。
【0259】
本発明のシステムは、さらにキットに包装されることがあり、該キットは、使用説明書をさらに含むことがある。いくつかの実施形態において、キットは、rAAV粒子の組成物の網膜下送達のためのデバイスをさらに含む。いくつかの実施形態において、使用説明書は、本明細書に記載する方法の1つに準じた説明書を含む。いくつかの実施形態において、使用説明書は、rAAV粒子のHSPGへの結合を改変、低減または除去する1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有するカプシドを含むrAAV粒子の網膜下送達のための説明書を含む。
【0260】
CNS送達
本発明は、個体のCNSに異種核酸を送達するためのキットであって、rAAV粒子を含む組成物を含み、該rAAV粒子は、(a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、および(b)異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記キットを提供する。個体のCNS障害を処置するためのキットであって、rAAV粒子を含む組成物を含み、該rAAV粒子は、a)ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、およびb)CNS障害を処置するための異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを含む、前記キットを本明細書においてさらに提供する。
【0261】
キットは、本発明のいずれのrAAV粒子またはrAAV粒子組成物を含んでもよい。例えば、キットは、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと相互作用する1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換(例えば、ヘパラン硫酸プロテオグリカンとのrAAV粒子の結合を低減させる1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、例えば、AAV2のVP1に基づいてナンバリングしてR484、R487、K527、K532、R585および/またはR588における置換)を含むrAAVカプシドタンパク質を含むrAAVカプシド、および異種核酸と少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列とを含むrAAVベクターを有する、rAAV粒子を含むことがある。
【0262】
いくつかの実施形態において、キットは、rAAV粒子の組成物のCNS送達のためのデバイスをさらに含む。CNS送達用(例えば、rAAV粒子を含む組成物の送達用)のデバイスは、当技術分野において公知であり、ポンプ(例えば、下で説明する、浸透圧および/または注入ポンプ)および注射デバイス(例えば、カテーテル、カニューレなど)
を用いることがある。場合により、イメージング技術を用いて、注射デバイスを誘導してもよく、および/または注入剤(例えば、rAAV粒子を含む組成物)の送達をモニターしてもよい。CNS送達は、定位固定注射による送達または対流強化送達(CED)を含むことがある。注射デバイスを対象のCNS組織に挿入することもある。当業者には、標的CNS組織内の注射デバイスの位置決めに好適な座標を決定することが可能である。いくつかの実施形態では、例えば、対象の脳のCTおよび/またはMRIイメージングによって得られる解剖学的マップによって位置決めを遂行して、標的CNS組織に注射デバイスを誘導する。
【0263】
いくつかの実施形態では、術中磁気共鳴イメージング(iMRI)および/または送達のリアルタイムイメージングを行うこともある。いくつかの実施形態では、デバイスを使用して、本発明の方法によってrAAV粒子を哺乳動物に投与する。iMRIは、手術中の患者のMRIベースのイメージング技術として当技術分野において公知であり、(例えば、rAAV粒子をCNSに送達するための)手術手技成功の確認に役立ち、組織の他の部分を損傷させるリスクを低減させる(さらな説明については、例えば、Fiandacaら(2009)Neuroimage 47 補遺2:T27~35頁を参照されたい)。いくつかの実施形態では、注入剤の組織分布をリアルタイムでモニターするために追跡剤(例えば、MRI造影補助剤)を注入剤(例えば、rAAV粒子を含む組成物)と共送達することもある。例えば、Fiandacaら、(2009)Neuroimage
47 補遺2:T27~35頁;米国特許登録前出願公開第2007/0259031号;および米国特許第7,922,999を参照されたい。追跡剤の使用によって送達中止の情報を得ることができる。当技術分野において公知の他の追跡およびイメージング手段を用いて注入剤分布を追跡調査してもよい。
【0264】
いくつかの実施形態では、rAAV粒子の送達のための当技術分野において公知のデバイスおよび方法を用いて標準的定位固定(本明細書では用語「定位」を同義で用いることがある)注射によってrAAV粒子を投与することがある。一般に、これらの方法は、注射デバイス、送達の標的となる組織領域を一連の座標(例えば、左右、背腹、および前後軸に沿ったパラメータ)に翻訳するための計画システム、および計画された座標に従って定位固定局在化するためのデバイス(例えば、プローブと、座標系との整列させる際に頭を所定の位置に固定するための構造とを場合により含む、定位固定デバイス)を使用することがある。MRI誘導手術および/または定位固定注射に有用であるだろうシステムの非限定的な例は、ClearPoint(登録商標)システム(MRI Interventions、Memphis、TN)である。
【0265】
CNSへのrAAV粒子送達の別の例および非限定的方法は、対流強化送達(CED)である。本明細書で用いる場合、用語「対流強化送達(CED)」は、静水圧が対流分布をもたらす速度での注入によるCNSへの治療剤の送達を指すことができる。いくつかの実施形態において、注入は、0.5μL/分より高い速度で行われる。しかし、頭蓋内圧が脳組織を傷つけないように好適なレベルで維持されるような任意の好適な流速を用いることができる。例えば、好適なカテーテルまたはカニューレ(例えば、段設計の逆流しないカニューレ)を使用することにより、標的CNS組織の少なくとも直近にカニューレの先端を位置決めする(例えば、該先端をCNS組織に挿入する)ことによって、CEDを遂行してもよい。カニューレを位置決めした後、ポンプに接続し、このポンプによって、治療剤はカニューレ先端を通って標的CNS組織に送達される。注入の間、カニューレの先端からの圧力勾配が維持される。いくつかの実施形態では、イメージング法、例えば、術中MRI(iMRI)または別のリアルタイムMRI技術により検出可能な追跡剤によって注入をモニターすることもある。
【0266】
CEDは、間質液の静水圧に打ち勝つ圧力下でのCNSへの注入剤(例えば、rAAV
粒子を含有する組成物)のポンピングに基づく。これは、注入剤をCNS周囲脈管構造と接触させ、該CNS周囲脈管構造が同様にポンプを利用して、注入剤を対流によって分配し、その送達度を向上させる(例えば、Hadaczekら、(2006)Hum.Gene Ther.17:291~302頁;Bankiewiczら、(2000)Exp.Neurol.164:2~14頁;Sanftner,LMら、(2005)Exp.Neurol.194(2):476~483頁;Forsayeth,JRら(2006)Mol.Ther.14(4):571~577頁;米国特許第6,953,575号;米国特許出願公開第2002/0141980号;米国特許出願公開第2007/0259031号;およびWO2010/088560を参照されたい)。
【0267】
いくつかの実施形態において、対流強化送達のためのデバイスは、浸透圧ポンプおよび/または注入ポンプを含む。浸透圧および/または注入ポンプは(例えば、ALZET(登録商標)Corp.、Hamilton Corp.、ALZA Inc.、在Palo Alto、Caから)市販されている。ポンプシステムは、埋め込み可能であることもある。例示的ポンプシステムは、例えば、米国特許第7,351,239号;同第7,341,577号;同第6,042,579号;同第5,735,815号;および同第4,692,147号において見つけることができる。逆流防止および段付きカニューレを含む、CED用の例示的デバイスは、WO99/61066およびWO2006/042090において見つけることができ、これらの特許文献は、それら全体が参照によって本明細書に組み入れられている。
【0268】
いくつかの実施形態において、対流強化送達のためのデバイスは、逆流防止カニューレ(例えば、逆流しない段設計カニューレ)を含む。さらなる説明および例示的逆流防止カニューレは、例えば、Krauzeら、(2009)Methods Enzymol.465:349~362頁;米国特許登録前出願公開第2006/0135945号;米国特許登録前出願公開第2007/0088295号;およびPCT/US08/64011において見つけることができる。いくつかの実施形態では、1本のカニューレしか使用しない。他の実施形態では、1本より多くのカニューレを使用する。いくつかの実施形態において、対流強化送達のためのデバイスは、カニューレを通して標的組織に注入剤を制御された速度で流入させるのに十分な圧力を生じさせるポンプと連結された逆流防止カニューレを含む。頭蓋内圧が脳組織を傷つけないように好適なレベルで維持されるような任意の好適な流速を用いることができる。
【0269】
いくつかの実施形態では、促進剤の使用によって注入剤の浸透がさらに増される。促進剤は、標的組織(例えば、CNS標的組織)への注入剤の送達をさらに促進することができる。促進剤の非限定的な例は、低分子量ヘパリンである(例えば、米国特許第7,922,999号を参照されたい)。
【0270】
いくつかの実施形態において、キットは、rAAV粒子の組成物のCNS送達のための説明書をさらに含む。本明細書に記載するキットは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注射器、および本明細書に記載するいずれかの方法を行うための説明書を伴う添付文書をはじめとする、商業的および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含むことがある。好適な包装材料も含むことがあり、該包装材料は、例えばバイアル(例えば、密封バイアル)、容器、アンプル、ボトル、ジャー、可撓性包装(例えば、密封マイラーまたはプラスチックバッグ)などをはじめとする、当技術分野において公知のいずれの包装材料であってもよい。これらの製造物品は、さらに滅菌および/または密封されることもある。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載する方法および/またはrAAV粒子のいずれかを使用して、本明細書に記載するCNSの障害を処置するための説明書を含む。キットは、個体のCNSへの注射に好適な医薬的に許容される担体、ならびに次のものの1つまたはそれ以上を含むことがある:緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、
注射器、および個体のCNSへの注射を行うための説明書を伴う添付文書。
【0271】
賦形剤
網膜下および/またはCNS送達に関するいくつかの実施形態において、キットは、緩衝剤および/または医薬的に許容される賦形剤をさらに含有する。当技術分野において周知であるように、医薬的に許容される賦形剤は、薬理学的に有効な物質の投与を助長する比較的不活性な物質であり、溶液もしくは懸濁液として、エマルジョンとして、または使用前に液体に溶解もしくは懸濁させるのに好適な固体形態として供給することができる。例えば、賦形剤は、形状もしくは稠度を与えることができ、または希釈剤として作用することができる。好適な賦形剤としては、安定剤、湿潤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変えるための塩、封入剤、pH緩衝物質および緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。そのような賦形剤は、過度の毒性なく投与することができる、眼への直接送達に好適な任意の医薬品を含む。医薬的に許容される賦形剤としては、ソルビトール、様々なTWEEN化合物のいずれか、ならびに液体、例えば水、食塩水、グリセロールおよびエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。医薬的に許容される塩、例えば、無機酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など;および有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などを、そこに含めることができる。医薬的に許容される賦形剤の詳細な論考は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.、N.J.1991)において入手することができる。
【0272】
網膜下および/またはCNS送達に関するいくつかの実施形態において、医薬的に許容される賦形剤は、医薬的に許容される担体を含むことがある。そのような医薬的に許容される担体は、滅菌液、例えば、水および油(石油、動物、植物または合成由来のもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱油などを含む)であることができる。食塩溶液ならびにデキストロース、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロール溶液も、特に注射用溶液のための、液体担体として用いることができる。さらなる成分、例えば、保存薬、緩衝剤、等張化剤、抗酸化物質および安定剤、非イオン性湿潤または清澄化剤、増粘剤なども使用されることがある。本明細書に記載するキットを単一単位剤形でまたは複数投与量形態で包装することができる。キットの内容物は、一般に、無菌かつ実質的に等張性の溶液として製剤化される。
【実施例
【0273】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに十分に理解されるであろう。しかし、これらの実施例を、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。本明細書に記載する実施例および実施形態が単に説明を目的としたものであること、ならびに様々な修飾または変更が、それらの実施例および実施形態を踏まえて当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれるはずであることが理解される。
【実施例1】
【0274】
HSPG結合に必要なアルギニン残基の突然変異は培養細胞株へのAAV2媒介形質導入を減少させる
AAV2遺伝子治療ベクターを眼の適応症の治験で現在使用中である。これらのベクターは、マウスおよび非ヒト霊長類において網膜神経節細胞およびミュラー細胞への形質導入を生じさせる結果となる硝子体内投与経路によって送達することができ、または網膜色素性上皮細胞および光受容器細胞を標的にする網膜下投与経路によって投与することができる。AAVの血清型によって、感染に使用される細胞表面受容体および共受容体が異なる。AAV2の初代細胞表面受容体がヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)であることは公知である(Summerford,C.およびSamulski,R.J.(1
998)J.Virol.72(2):1438~45頁)。AAV2によって網膜が形質導入されるメカニズムを理解することは、AAV遺伝子治療ベクターのさらなる開発のために重要である。
【0275】
網膜へのAAV2形質導入におけるHSPG結合の役割を調査するために、HSPG結合に必要であることが公知であるアルギニン残基の突然変異を有するカプシドタンパク質を用いてAAV2ベクター(AAV2 HBKO)を生成した。これらのベクターは、野生型AAV2と比較して、培養中の293およびヒーラ細胞への形質導入を有意に低減させる結果となった。驚くべきことに、マウスの眼に網膜下送達したAAV2HBKOベクターは、野生型AAV2と比較して形質導入の2-logの増加をもたらした。しかし、AAV2HBKOベクターを硝子体内送達したとき、明らかな形質導入はなかった。これらの結果は、HSPG結合に必要なアミノ酸の突然変異にはAAV2粒子の硝子体内注射後の形質導入に対して網膜下注射後の形質導入効率に逆の効果があることを示す。
【0276】
方法
AAV2アルギニン突然変異型プラスミドの構築
Quikchange Lightning Multi Site Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies)を使用してAAV2 rep/capプラスミド、pIM45BD、を突然変異させた。アルギニン585および588のアラニンへの変化を導入するためのPCR突然変異誘発プライマーを設計した。陽性突然変異体をシークエンシングによって確認した。
【0277】
rAAVベクターの生成
高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)または可溶性VEGF受容体ハイブリッド(sFLT02)を発現する組換えAAVベクターを、pIM45BDまたはpIM45BDR585A/R588A rep/capプラスミドおよびpAdHelperを使用する293細胞のトリプルトランスフェクションによって作製した。導入遺伝子は、ニワトリβ-アクチン(CBA)またはヒトロドプシンキナーゼプロモーター(RK)いずれかの制御下にあった。
【0278】
in vitro形質導入アッセイ
293またはヒーラ細胞を24ウェルプレートにプレーティングした(1~2×10細胞/ウェル)。プレーティングの24時間後、細胞を1×10vg/細胞(+)Ad5ts149に感染させた。感染48時間後、EGFP蛍光またはELISAいずれかによって形質導入効率を測定して、培地中のsFLT02を定量した(R&D Systemsによるヒト可溶性VEGF R1 ELISA)。
【0279】
動物
Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME)から得られる成体C57BL/6マウスを購入し、Genzymeのビバリウムで維持した。研究継続期間中、動物が食餌および水に自由に近づけるようにした。すべての手順は、施設内動物実験委員会によって承認された実験実施計画のもとで行った。
【0280】
硝子体内注射
酸素800mL/分をノーズコーン経由で動物に送達しながら行う3.5%イソルフランの使用によって、非活動状態を誘導し、維持した。33ゲージ斜角針が取り付けられたHamilton注射器(Hamilton Co.、Reno、NV)を使用して、被験物質1マイクロリットルを硝子体液に注射した。強膜を通して縁のおおよそ2mm下に針を誘導し、硝子体房に注意深く進ませて水晶体との接触を回避した。被験物質を1~2秒間にわたって送達した。注射後、針を、抜き取る前におおよそ5秒間、適所に保持した
。動物を麻酔から回復させた後、その動物のケージに戻した。
【0281】
網膜下注射
散瞳および調節麻痺をトロピカミド(Alcon、Fort Worth、TX)の局所適用で誘導した。酸素800mL/分をノーズコーン経由で動物に送達しながら行う3.5%イソルフランの使用によって、非活動状態を誘導し、維持した。リング状の先端を有する鉗子(World Precision Instruments、Sarasota、FL)を使用して眼を固定し、30ゲージ針を使用して強膜内の強膜の縁のおおよそ2mm下を予備切開した。切開部を通して33ゲージ鈍先端針を誘導し、先端が後ろの網膜神経感覚上皮を貫通するまで後方に進めた。被験物質1マイクロリットルを1秒にわたって送達した。針を、抜き取る前におおよそ5秒間、適所に保持した。動物を麻酔から回復させた後、その動物のケージに戻した。
【0282】
EGFPの組織学的検査
エピ蛍光顕微鏡を使用して、パラフィン包埋のために処理したホルマリン固定眼に関する生EGFPシグナルを観察した。
【0283】
結果
図1に示したような5つのカプシド残基はHSPGとのAAV2結合にとって重要であることが証明されている。これらの残基に次の2つのアミノ酸置換を有するAAV2突然変異体を構築した:R585AおよびR588A(ナンバリングは、VP1アミノ酸配列に基づく)。この突然変異体をHBKOと呼び、培養中の細胞へのその形質導入能力を試験した。
【0284】
ヒト細胞株を培養で増殖させ、野生型またはHBKO突然変異型AAV2粒子で形質導入した。形質導入効率を測定するために、偏在性CBAプロモーターを使用して可溶性Flt(ヒトVEGF受容体1)の発現を駆動する導入遺伝子を含むように両方のタイプのAAV2粒子のウイルスゲノムを修飾した。形質導入の48時間後、ELISAベースの免疫測定法を用いて形質導入効率を測定して、生産されたFltの量を定量した。図2は、HBKO突然変異体が、培養中のヒト293細胞への大きく減少した形質導入能力を示したことを明示している。同数のAAV2粒子と293細胞を使用すると、HBKO突然変異体は、野生型と比較して形質導入効率の99.6%低減を示した。
【0285】
複数のヒト細胞株においてこの効果を測定するために、上で説明したように293およびヒーラ細胞に形質導入した。これらのアッセイのために、CBAプロモーターからFltではなくEGFPを発現するようにベクターを修飾した。図3は、EGFP蛍光によって測定して、野生型AAV2が両方の細胞株に形質導入することができたことを示す。対照的に、HBKO突然変異体は、両方の細胞株への形質導入の劇的な減少を有した。これらの結果は、HBKO突然変異体が、培養中のヒト胚性腎および子宮頸癌細胞株への形質導入能力の劇的な低減を有することを確証する。
【実施例2】
【0286】
HSPG結合に必要なアルギニン残基の突然変異には、網膜下注射後のAAV2媒介形質導入に対して硝子体内注射後のAAV2媒介形質導入に逆の効果がある
硝子体内および網膜下注射したときに眼細胞に形質導入するHBKO突然変異型AAV2粒子の能力をマウスで試験した。図4Aおよび4Bは、硝子体内または網膜下注射時の野生型およびHBKO AAV2粒子の形質導入効率を比較する図である。これらの実験については、遍在性CBAプロモーターを使用してFltの発現を駆動する、導入遺伝子を有するAAV2粒子での形質導入時の可溶性Flt(sFLT)発現を測定することによって、形質導入効率をアッセイした。硝子体内注射を使用すると、HBKO突然変異体
は、細胞への形質導入能力の大きな低減を示した(図4A)。
【0287】
驚くべきことに、HBKO突然変異体は、網膜下注射後に形質導入増進を示した(図4B)。この増加は、注射したAAV2ベクターゲノムの量を10倍変化(表示を付けたとおり、10および10vg)させたときにも一貫して観察された。これらの結果は、培養細胞株でおよび硝子体内注射時に観察されたものとは対照的である。これらのデータは、異なるタイプの眼内注射による異なる眼細胞タイプおよび網膜層への形質導入を媒介する点でのHSPG結合能力の重要性を示している。
【0288】
網膜細胞への形質導入を可視化するために、偏在性CBAプロモーターからのEGFPを発現する導入遺伝子を有する野生型またはHBKO突然変異型AAV2粒子を使用した。図5に示すように、野生型AAV2粒子は、GFP蛍光によって実証されるように、硝子体内注射後に網膜に形質導入することができた。しかし、AAV2 HBKO突然変異体粒子は、硝子体内注射しても検出可能なGFP蛍光を示さなかった。これらの結果は、図4Aに提示したものと一致している。
【0289】
図6は、網膜下注射したときの野生型(AAV2 CBA)およびHBKO突然変異型(AAV2 CBA HBKO)AAV2粒子の形質導入効率を定量したものである。形質導入を測定するために、両方のAAV2粒子は、偏在性CBAプロモーターを使用してFltを発現する導入遺伝子を含むベクターゲノムを有した。図6に示すように、ベクターゲノムの2つの量を注射に使用した。これらの結果は、図4Bに示した観察を確証し、またHSPG結合に必要な残基を突然変異させることによって網膜下注射後の細胞へのAAV2の形質導入能力が増加されるという驚くべき発見を実証するものである。
【0290】
形質導入を可視化するために、偏在性CBAプロモーターからEGFPを発現する導入遺伝子を有する野生型またはHBKO突然変異型AAV2粒子を使用した。図7に示すように、網膜のGFP蛍光は、野生型と比較してHBKO突然変異型AAV2粒子で形質導入すると強化される。
【0291】
網膜下注射が光受容器細胞を有する細胞層を標的にすることは公知であるので、光受容器へのHBKO突然変異型AAV2粒子の形質導入能力を研究した。眼では、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターが、特異的に杆体および錐体細胞などの光受容器細胞における発現を駆動することは公知である(Khani,S.C.ら(2007)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.48(9):3954~61頁)。したがって、RKプロモーターを使用してFltの発現を駆動する導入遺伝子を有するベクターゲノムを用いて野生型およびHBKO突然変異型AAV2粒子を生成した。図8に示したように、HBKO突然変異型VAA2粒子は、野生型と比較して、網膜下注射後の光受容器細胞への形質導入増進を示した。この観察は、10倍異なる量(表示を付けたとおり、10および10vg)のベクターゲノムを注射したときにも一貫して観察された。これらの結果は、HSPG結合に必要な残基を突然変異させることによって、網膜注射後の網膜光受容器細胞へのAAV2粒子の形質導入能力が向上されるという驚くべき結果を実証するものである。これらの残基の突然変異は、AAV2媒介遺伝子治療のための光受容器細胞への可能性のある形質導入増進方法と言える。
【0292】
AAVは、パルボウイルス科のメンバーである、一本鎖、非包膜DNAウイルスである。AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6などを含む、AAVの異なる血清型は、異なる組織分布プロファイルを明示する。これらのAAVカプシドの多様な組織親和性が、肝臓、骨格筋、脳、網膜、心臓および脊髄へのin vitroとin vivo両方の広範な遺伝子導入用途にAAVベースのベクターを使用することを可能にした(Wu,Z.ら、(2006)Molecular Therapy、14:316~32
7頁)。宿主細胞へのウイルスの接着には、ウイルスカプシドと細胞受容体分子の特異的相互作用が必要である。AAV2カプシドがAAV2ベースの遺伝子治療用ベクターの細胞侵入を媒介するために一次および二次受容体としてヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、V5インテグリンおよびヒト線維芽細胞増殖因子受容体1を使用することは以前に証明されている(Summerford,C.およびR.J.Samulski(1998)J.Virology、72:1438~1445頁;Summerford,C.ら、(1999)Nat.Medicine、5:78~82頁;Qing,K.ら、(1999)Nat.Medicine、5:71~77頁)。AAV2カプシドタンパク質の突然変異分析によって、塩基性アミノ酸、すなわちアルギニンR484、R487、R585、R588およびリシンK532、の1群は、ヘパラン結合、および細胞へのin vitro形質導入、およびAAV2ベクターのin vivo肝臓形質導入に寄与することが証明されている。これらのアミノ酸残基の突然変異は、静脈内投与経路によるAAV2ベースのベクターの肝臓形質導入の大きな減少、ならびに心臓および骨格筋遺伝子導入の増加をもたらした(Kern,A.ら、(2003)J.Virology、77:11072~11081頁;Muller,O.J.ら、(2006)Cardiovascular Research、70:70~78頁)。
【0293】
ベクターの硝子体内投与経路と網膜下投与経路の両方による網膜へのAAV2ベクターの形質導入を用いて、これらの塩基性アミノ酸の役割を調査した。R585およびR588の突然変異は、HEK293細胞およびヒーラ細胞へのin vitro形質導入を有意に排除した(図2および3)。Dalkara Dら((2009)Molecular Therapy,17:2096~2102頁)は、硝子体内送達されたAAV2ベクターは、網膜の内境界膜に大量に存在するヘパラン硫酸プロテオグリカンと結合するため、外網膜に浸透することができないことを示唆している。本実施例によって示すように、硝子体内送達したとき、R585/R588突然変異ベクターは、野生型AAV2ベクターと比較して内網膜への形質導入能力が低く(図4Aおよび5)、これは、HSPGとの結合が網膜の硝子体内形質導入にとって重要であることを示唆している。AAV2ベースのベクターの網膜下送達は、主として網膜色素上皮(RPE)形質導入をもたらし、光受容器細胞形質導入を多少もたらす。驚くべきことに、R585/R588突然変異ベクターは、野生型AAV2ベクターより少なくとも10倍良好に外網膜に形質導入することが判明した(図4B、6および7)。光受容器特異的ロドプシンキナーゼプロモーター(RK)を使用すると、光受容器における導入遺伝子発現は、AAV2 R585/R588突然変異型ベクターで有意に増加される(図8)。AAV2カプシド上の塩基性アミノ酸残基の突然変異に基づくこれらのベクターは、様々な網膜障害の処置のための外網膜、特に光受容器細胞への形質導入に非常に有益であるだろう。
【実施例3】
【0294】
線条体内AAV2HBKOベクター送達後の広範なGFP発現
AAV2カプシドに導入された部位特異的突然変異によって、ヘパリンと結合することができないAAV2 HBKO突然変異型ベクターを生成した。このHBKOベクターの形質導入プロファイルを野生型マウスモデルとHDマウスモデル(YAC128)の両方において単回線条体内注射を使用して評価した。
【0295】
方法
AAV2アルギニン突然変異型プラスミドの構築
Quikchange Lightning Multi Site Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies)を使用してAAV2 rep/capプラスミド、pIM45BD、を突然変異させた。残基585および588のアルギニンのアラニンへの変化を導入するためのPCR突然変異誘発プライマーを設計した。陽性突然変異体をシークエンシングによって確認した。
【0296】
AAVベクターの生産
以前に記載された(Xiaoら(1998)J.Virol.72:2224~2232頁)ようなヒト胎性腎癌293細胞(HEK-293)の(リン酸カルシウムを使用する)トリプルトランスフェクションよって、組換えAAVベクターを作製した。簡単に言うと、血清型2からのrep遺伝子と血清型1または2のいずれかからのカプシド遺伝子を含有するプラスミドをヘルパーアデノウイルスプラスミド(Stratagene、Palo Alto、CA)とともに使用した。導入遺伝子は、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターの制御下にあった。ウイルスをトランスフェクションの72時間後に収集し、以前に記載された(Xiaoら(1998)J.Virol.72:2224~2232頁)ようにカラム精製した。
【0297】
動物
すべての手順は、Genzyme、Sanofi Company(Department of Health and Human Services、NIH Publication 86~23)の施設内動物実験委員会によって承認された実験実施計画を用いて行った。使用したマウスは、YAC128マウス(純粋なFBV/NJバックグラウンドの128CAG反復配列を有する完全長ヒト突然変異型HTT導入遺伝子を内部に持つ酵母人口染色体)および野生型FVB/NJ同腹子マウス(Slowら(2003)Hum.Mol.Genet.12:1555~1567頁;Van Raamsdonkら(2005)Hum.Mol.Genet.14:3823~3835頁)を含んだ。YAC128マウスおよびFVB/NJ同腹子は、両方とも、Charles River Laboratoriesにおいて飼育されたGenzymeコロニーから得た。食餌および水を自由に入手できる昼夜12時間サイクルでマウスを維持した。すべての行動試験は、動物の昼サイクル中(AM8時~PM4時の間)に行った。すべての実験についてのn値を下の表2および3に示す。
【0298】
【表3】
【0299】
【表4】
【0300】
外科手術手技
3%イソフルランを使用して動物を麻酔し、定位固定枠内に配置した。以前に記載された(Stanekら(2014)Hum.Gene Ther.25:461~474頁)ように、頭蓋内注射を行った。簡単に言うと、10μl Hamilton注射器を使用して、線条体(十字縫合および硬膜から、AP、+0.50;ML、±2.00;DV、-2.5;切歯棒、0.0)に0.5μl/分の速度で組換えウイルスベクター 3μ
lを注射した。注入完了後1分間、針を所定の位置に残した。手術前1時間および手術後24時間、鎮痛のためにマウスにケトプロフェン(5mg/kg)を皮下投与した。
【0301】
動物灌流および組織採取
マウスの心臓をリン酸緩衝食塩水(PBS)で灌流させて血液を除去した。実験1については、脳を4%パラホルムアルデヒド、続いて30%スクロースで固定した後、冠状面に沿って切断した。クリオスタットを使用して、20μm冠状切片を切断した。実験2については、脳を正中線に沿って切断し、左半球を4%パラホルムアルデヒド、続いて30%スクロースで固定し、次いでクリオスタットを使用して20μm切片にした。マウス脳マトリックス(Harvard Apparatus、Holliston、MA)を使用して冠状軸に沿って(生化学アッセイに使用するための)右半球を切断し、3mm生検パンチを使用して線条体および皮質領域を解剖した。その後、脳組織を液体窒素で急速冷凍し、使用するまで-80℃で保存した。
【0302】
定量的リアルタイムPCR(TaqMan)
RNAレベルを定量的リアルタイムRT-PCRによって測定した。すべてのRT-PCR分析に線条体パンチ片を使用した。QIAGEN RNEasyミニキットを使用して全RNAを抽出し、その後、TaqMan(登録商標)One-Step RT-PCR Master Mix Kit(Applied Biosystems)をその製造業者の説明書に従って使用して逆転写し、増幅した。TaqMan定量的RT-PCR反応をABI PRISM(登録商標)7500 Real Time PCR System(Applied Biosystems)で行って分析した。HTT mRNAの発現レベルをヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)mRNAレベルに正規化した。マウス脳cDNAの5倍系列希釈物を使用して検量線を生成した。各試料を二度繰り返して実行した。検量線またはΔΔC法を用いることによって相対遺伝子発現を判定し、HPRT1 mRNAレベルに正規化した。ヒトHTTの検出については、次のプライマーを使用した:5’CTCCGTCCGGTAGACATGCT3’および5’CCATTTTGAGGGTTCTGATTTCC3’。マウスHTTの検出については、次のプライマーを使用した:5’TGCTACACCTGACAGCGAGTCT3’および5’ATCCCTTGCGGATCCTATCA3’。
【0303】
ウエスタンブロッティング
タンパク質レベルをウエスタンブロット分析によって測定した。すべてのウエスタンブロット分析に皮質パンチ片を使用した。T-Per溶解緩衝液(Pierce)中50mg/mlの最終濃度の組織であって、完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を含有する前記組織をホモジナイズした。10,000×gで6分間、4℃での遠心分離によってホモジネートを清澄にした。BSAアッセイ(Pierce)を使用することによってタンパク質濃度を測定した。ホモジネート20~30マイクログラムを3~8%Novexトリス-酢酸ゲルで分割し、次いでニトロセルロース膜に転写した。膜をマウス抗ハンチンチンモノクローナル抗体(Mab2166;1:2,000希釈、Millipore)およびウサギポリクローナル抗β-チューブリン抗体(1:750希釈、Santa Cruz Biotechnology)でプローブした。その後、膜を赤外二次抗体(1:20,000希釈、Rockland)とともにインキュベートし、Odyssey(LI-COR Biosciences)を使用して定量的蛍光によってタンパク質を可視化した。負荷変動を制御するために、Httタンパク質をβ-チューブリンに正規化し、未処置または食塩水処置動物に対するパーセンテージとして表した。分子量マーカーを使用してタンパク質の同一性を検証した。
【0304】
免疫組織化学
凍結脳切片を、アストロサイトを染色するためのウサギ抗GFAP抗体(1:2,50
0;DAKO、Glostrup、Germany)またはミクログリアを可視化するための抗Iba1抗体(1:500;WAKO Chemicals USA、Richmond、VA)で染色した。使用した二次抗体は、FITCまたはCy3と結合しているロバ抗種特異的抗体であった。Nikon Eclipse E800蛍光顕微鏡(Nikon、Melville、NY)を使用して切片を可視化した。
【0305】
統計
平均値を統計解析に使用した。データを平均±SEMとして表した。2群を使用した研究については、スチューデントt検定を統計比較に用いた。2群より多くの群の比較については、一元配置ANOVA、続いてチューキー多重比較事後検定(Prism GraphPad)を用いた。p<0.05を統計的有意差とみなした。
【0306】
結果
上に記載したように、実験1では野生型マウスにAAV2-eGFPおよびAAV2HBKO-GFPベクターを注射した(表2)。すべての動物を注射30日後に屠殺した。経口顕微鏡検査は、AAV2ベクターとAAV2HBKOベクターは両方とも形質導入ニューロンにおいてGFP導入遺伝子の発現を駆動することを明示した(図9Aおよび9B)。GFP発現は、AAV2の注射跡に限定され、ごくわずかしか注射部位を超えて広がらなかった(図9B)。しかし、旧来のAAV2と比較すると、AAV2HBKOは、より強く広範囲にわたるGFP発現を駆動し、注射部位を十分に超えて発現が観察された(図9A)。これらの結果は、AAV2HBKOを使用してCNSに送達される導入遺伝子の強く広範な発現を実証するものである。
【実施例4】
【0307】
YAC128マウス脳への線条体内注射後のAAV2HBKO媒介GFP発現とAAV1媒介GFP発現の比較
上に記載したように、実験2ではYAC128マウスにAAV2HBKOおよびAAV1血清型ベクターを注射した(表3)。これらのベクターは、ヒトHTTを標的にする人工miRNA、およびGFPレポーターの発現を駆動した。AAV1ベクターおよびAAV2HBKOベクターは両方とも、線条体への注射30日後に強いGFP分布を示した(図10Aおよび10B)。しかし、GFP発現パターンは、これら2つのベクター血清型間で顕著に異なるように見えた。GFPのAAV1発現(図10A)は、AAV2HBKO GFP発現(図10B)よりまだらで、均一性が低かった。ベクター形質導入は、ニューロンとグリア細胞、主としてアストロサイト、の両方に形質導入するAAV1血清型と比較して、AAV2HBKO脳では排他的にニューロンへの形質導入であるように見えた。これらの結果は、AAV2HBKOが、旧来のAAV1と比較して、非常に異なる発現および形質導入プロファイルを示したことを実証するものである。
【実施例5】
【0308】
YAC128マウスへのAAV2HBKO-miRNA-Htt注射はHTT mRNAの減少をもたらす
次に、YAC128マウスの線条体におけるHTT発現を発現停止させるmiRNAを発現するAAV1およびAAV2HBKOベクター血清型の能力を評価した。成体YAC128マウスにAAV2/1-miRNA-HttまたはAAV2HBKO-miRNA-HTTいずれかの両側線条体内注射を施し、処置30日後に脳を分析した。突然変異型ヒトHTT mRNAの線条体内レベルは、AAV2/1-miRNA-HttおよびAAV2HBKO-miRNA-Httを注射したマウスにおいて、未処置対象と比較して、有意に低減された(図11A)。皮質脳パンチ片のウエスタンブロット分析は、両方の処置群においてHtt低減傾向を示した;しかし、未処置対照試料のばらつきがデータの統計的有意性への到達を妨げた(図11B)。これらの結果は、AAV1およびAAV2
HBKOベクターを使用するRNAiによる遺伝子ノックダウンの効能を実証するものである。
【実施例6】
【0309】
YAC128マウスへのAAV2HBKO-miRNAHtt注射は神経炎症を引き起こさない
AAVの注射が神経炎症をもたらすかどうかを判定するために、神経炎症マーカーグリア線維性酸性タンパク質(GFAP、アストロサイトのマーカー)およびIba1(ミクログリアのマーカー)のレベルを処置30日後に検査した。AAV2HKO処置後、未処置の脳と比較して、Iba1レベルの著しい増加は観察されなかった(図12Aおよび12Bを参照されたい)。しかし、AAV2/1処置は、以前に観察された注射部位でのIba1レベルの増加を引き起こした(図12C)。注射30日後、処置した脳のいずれにおいても、未処置対照と比較して著しいGFAPレベルの増加は観察されなかった(図13A~13C)。これらの結果は、AAV2HBKOがヒトHTTに対するmiRNAの発現を駆動することができたこと、およびミクログリア活性化の不在下でAAV1血清型と比較してHTT低減を生じさせることができたことを示す。
【0310】
結論
現行のAAVベクター血清型は、単一部位投与後に脳内での限定的分布を示す(例えば、Christine,C.W.ら(2009)Neurology 73:1662~1669頁;Mandel,R.J.(2010)Curr.Opin.Mol.Ther.12:240~247頁)。本明細書の中で詳細に論じているように、本発明者らは、細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)との結合が低減されたAAVベクターの投与がCNSへのAAV形質導入を増進することを発見した。これらの結果は、広範なベクター分布が望まれるCNS遺伝子治療に対する、HSPG結合が修飾されたAAVの有用性を、実証するものである。さらに、本発明者らは、HSPG結合が低減されたAAV2ベクターが(排他的にニューロンを標的にするので)理想的な安全性プロファイルを示す上に、広範で強い形質導入効率を達成することも発見した。したがって、そのようなベクターは、実質内送達からの広範なニューロン形質導入を必要とするCNS適応症に有用である。
【実施例7】
【0311】
AAVrh8RおよびAAVrh8R突然変異型ベクターによるin vitroおよび網膜下形質導入
方法
AAVrh8Rアルギニン修飾プラスミドの構築
Quikchange Lightning Multi Site Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies)を使用してAAVrh8R rep/capプラスミドを突然変異させた。アラニン586のアルギニンへの変化(AAVrh8R-A586R)またはアルギニン533のアラニンへの変化(AAVrh8R-R533A)を誘導するためのPCR突然変異誘発プライマーを設計した。陽性突然変異体をシークエンシングによって確認した。
【0312】
rAAVベクターの生成
高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)または可溶性VEGF受容体ハイブリッド(sFLT02)を発現する組換えAAVベクターを、pAAVrh8R、pAAVrh8R-A586RまたはpAAVrh8R-R533A rep/capプラスミドおよびpAdHelperを使用する293細胞のトリプルトランスフェクションによって作製した。導入遺伝子は、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターの制御下にあった。
【0313】
in vitro形質導入アッセイ
ヒーラ、HeLaRC32またはNS1細胞を24ウェルプレートにプレーティングした(1~2×10細胞/ウェル)。プレーティングの24時間後、細胞を1×10vg/細胞~1×10vg/細胞(+)Ad5ts149に感染させた。感染48時間後、EGFP蛍光またはELISAいずれかによって形質導入効率を測定して、培地中のsFLT02を定量した(R&D Systemsによるヒト可溶性VEGF R1 ELISA)。
【0314】
動物。
Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME)から得られる成体C57BL/6マウスを購入し、ビバリウムで維持した。研究継続期間中、動物が食餌および水に自由に近づけるようにした。すべての手順は、施設内動物実験委員会によって承認された実験実施計画のもとで行った。
【0315】
網膜下注射。
散瞳および調節麻痺をトロピカミド(Alcon、Fort Worth、TX)の局所適用で誘導した。酸素800mL/分をノーズコーン経由で動物に送達しながら行う3.5%イソルフランの使用によって非活動状態を誘導し、維持した。リング状の先端を有する鉗子(World Precision Instruments、Sarasota、FL)を使用して眼を固定し、30ゲージ針を使用して強膜内の強膜の縁のおおよそ2mm下を予備切開した。切開部を通して33ゲージ鈍先端針を誘導し、先端が後ろの網膜神経感覚上皮を貫通するまで後方に進めた。被験物質1マイクロリットルを1秒にわたって送達した。針を、抜き取る前におおよそ5秒間、適所に保持した。動物を麻酔から回復させた後、その動物のケージに戻した。
【0316】
網膜溶解物中のsFLT02の定量。
R&D Systemsによるヒト可溶性VEGF R1 ELISAキットを使用して、マウス網膜溶解物中のsFLT02を測定した。
【0317】
結果
網膜へのAAVrh8形質導入におけるカプシド表面アルギニン残基の役割を調査するために、HSPG結合に関与するAAV2アルギニンに対応する残基の突然変異を有するカプシドタンパク質を用いてAAVrh8ベクターを生成した。図14は、HSPGとのAAV2結合にとって重要な5つのカプシド残基をAAVrh8R中の対応する残基と比較するものである。図15に示したように、これらの残基のアミノ酸置換:A586RおよびR533A(ナンバリングは、VP1アミノ酸ナンバリングに基づく)を各々が有する2つのAAVrh8R突然変異体を構築した。
【0318】
AAVrh8Rカプシドへのアルギニン残基の付加の、in vitro形質導入に対する効果を評価するために、ヒーラ細胞をAAVrh8R-sFLT02ベクター、またはA586位に付加されたアルギニン(AAVrh8R A586R)を有する修飾AAVrh8R-A586R-sFLT02ベクターのいずれかに、両方とも1×10DRP/細胞で感染させた。感染48時間後、細胞培養培地中のsFLT02を測定することによって形質導入効率を評価した。AAVrh8R-A586Rは、未修飾AAVrh8Rと比較して数倍高い形質導入を示した(図16A)。
【0319】
カプシドアルギニン除去のin vitro形質導入に対する効果を評価するために、HeLaRC32細胞をAAVrh8RまたはAAVrh8R-R533Aベクターに(両方とも1×10DRP/細胞)で感染させた。AAVrh8R-R533Aは、AAVrh8Rと比較して有意に低減された形質導入を有した(図16B)。
【0320】
形質導入効率の尺度としてEGFP発現を用いて同様の実験を行った。AAVrh8R-A586R-EGFPは、AAVrh8Rと比較してNS1細胞への実質的に向上された形質導入を示した(図17B図17Aと比較されたい)。逆に、AAVrh8R-R533A-EGFPベクターは、AAVrh8Rと比較してヒーラ細胞に対して低減された形質導入を有した(図17D図17Cと比較されたい)。
【0321】
まとめると、これらの実験は、AAVrh8Rカプシドへのアルギニンの付加はAAVrh8R in vitro形質導入を向上させるが、AAVrh8Rカプシドからのアルギニンの除去はin vitro形質導入を損なわせることを示唆している。これらの結果は、AAVrh8Rによるin vitro形質導入がカプシド上のアルギニン残基による影響を強く受けることを実証するものである。
【0322】
AAVrh8R網膜下形質導入に対するアルギニンの効果を判定するために、C57Bl6マウスに、CBAプロモーターからsFLT02を発現するAAVrh8R、AAVrh8R-A586RまたはAAVrh8R-R533Aを1×10DRP注射した。ベクター投与30日後にマウスを屠殺し、網膜溶解物中のsFLT02を測定した。
【0323】
マウス網膜へのAAVrh8R-A586R形質導入は、AAVrh8Rと比較して実質的に低減され、実際には、この同じ位置(R585)に同様にアルギニンを有するAAV2に匹敵した(図18A)。マウス網膜へのAAVrh8R-R533A形質導入は、AAVrh8Rと比較して向上された(図18B)。
【0324】
これらのデータは、AAVrh8Rの網膜下形質導入に対するカプシドアルギニンの影響を強調し、網膜下形質導入がAAVrh8Rカプシドからのアルギニンの除去によって向上されることを示唆している。これらの結果は、AAVrh8Rによる網膜下形質導入がカプシド上のアルギニン残基による影響を強く受けることを実証するものである。
【実施例8】
【0325】
AAVrh8Rの硝子体内形質導入は586位でのアルギニンの付加によって向上される方法
硝子体内注射
酸素800mL/分をノーズコーン経由で動物に送達しながら行う3.5%イソルフランの使用によって非活動状態を誘導し、維持した。33ゲージ斜角針が取り付けられたHamilton注射器(Hamilton Co.、Reno、NV)を使用して、被験物質1マイクロリットルを硝子体液に注射した。強膜を通して縁のおおよそ2mm下に針を誘導し、硝子体房に注意深く進ませて水晶体との接触を回避した。被験物質を1~2秒間にわたって送達した。注射後、針を、抜き取る前におおよそ5秒間、適所に保持した。動物を麻酔から回復させた後、その動物のケージに戻した。
【0326】
網膜溶解物中のsFLT02の定量
R&D Systemsによるヒト可溶性VEGF R1 ELISAキットを使用して、マウス網膜溶解物中のsFLT02を測定した。
【0327】
結果
AAVカプシドへのアルギニン付加の、硝子体内形質導入に対する効果を評価するために、C57Bl6マウスに、CBAプロモーターからsFLT02を発現する構築物を各々が有する、AAV2、AAVrh8R、またはAAVrh8R-A586Rを1×10DRP注射した。ベクター投与30日後にマウスを屠殺し、網膜溶解物中のsFLT02を測定した。マウス網膜へのAAVrh8R-A586R形質導入は、AAVrh8R
と比較して向上され、実際には、この同じ位置(R585)に同様にアルギニンを有するAAV2に匹敵した(図19)。このデータは、網膜への硝子体内形質導入をAAVカプシドへのアルギニンの付加によって向上させることができることを示している。これらの結果およびAAVカプシド間の配列相同性(図20)に基づくと、AAV1、AAV6、AAV8、AAV9およびAAVrh10カプシドを有するAAV粒子による網膜への硝子体内形質導入は、網膜形質導入を同様に向上させる可能性がある。
【0328】
配列
別段の断り書きがない限り、すべてのポリペプチド配列をN末端からC末端へと提示する。別段の断り書きがない限り、すべての核酸配列を5’から3’へと提示する。
【0329】
AAV2 VP1アミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDTLSEGIRQWWKLKPGPPPPKPAERHKDDSRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNEADAAALEHDKAYDRQLDSGDNPYLKYNHADAEFQERLKEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEPVKTAPGKKRPVEHSPVEPDSSSGTGKAGQQPARKRLNFGQTGDADSVPDPQPLGQPPAAPSGLGTNTMATGSGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSTWMGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSQSGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTQNDGTTTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTNTPSGTTTQSRLQFSQAGASDIRDQSRNWLPGPCYRQQRVSKTSADNNNSEYSWTGATKYHLNGRDSLVNPGPAMASHKDDEEKFFPQSGVLIFGKQGSEKTNVDIEKVMITDEEEIRTTNPVATEQYGSVSTNLQRGNRQAATADVNTQGVLPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPANPSTTFSAAKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYNKSVNVDFTVDTNGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号1)
【0330】
AAV2 VP1 HBKOアミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDTLSEGIRQWWKLKPGPPPPKPAERHKDDSRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNEADAAALEHDKAYDRQLDSGDNPYLKYNHADAEFQERLKEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEPVKTAPGKKRPVEHSPVEPDSSSGTGKAGQQPARKRLNFGQTGDADSVPDPQPLGQPPAAPSGLGTNTMATGSGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSTWMGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSQSGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTQNDGTTTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTNTPSGTTTQSRLQFSQAGASDIRDQSRNWLPGPCYRQQRVSKTSADNNNSEYSWTGATKYHLNGRDSLVNPGPAMASHKDDEEKFFPQSGVLIFGKQGSEKTNVDIEKVMITDEEEIRTTNPVATEQYGSVSTNLQAGNAQAATADVNTQGVLPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPANPSTTFSAAKFASFITQYSTGQVSV
EIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYNKSVNVDFTVDTNGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号2)
【0331】
AAV2 VP2アミノ酸配列
MAPGKKRPVEHSPVEPDSSSGTGKAGQQPARKRLNFGQTGDADSVPDPQPLGQPPAAPSGLGTNTMATGSGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSTWMGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSQSGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTQNDGTTTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTNTPSGTTTQSRLQFSQAGASDIRDQSRNWLPGPCYRQQRVSKTSADNNNSEYSWTGATKYHLNGRDSLVNPGPAMASHKDDEEKFFPQSGVLIFGKQGSEKTNVDIEKVMITDEEEIRTTNPVATEQYGSVSTNLQRGNRQAATADVNTQGVLPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPANPSTTFSAAKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYNKSVNVDFTVDTNGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号3)
【0332】
AAV2 VP2 HBKOアミノ酸配列
MAPGKKRPVEHSPVEPDSSSGTGKAGQQPARKRLNFGQTGDADSVPDPQPLGQPPAAPSGLGTNTMATGSGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSTWMGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSQSGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTQNDGTTTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTNTPSGTTTQSRLQFSQAGASDIRDQSRNWLPGPCYRQQRVSKTSADNNNSEYSWTGATKYHLNGRDSLVNPGPAMASHKDDEEKFFPQSGVLIFGKQGSEKTNVDIEKVMITDEEEIRTTNPVATEQYGSVSTNLQAGNAQAATADVNTQGVLPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPANPSTTFSAAKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYNKSVNVDFTVDTNGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号4)
【0333】
AAV2 VP3アミノ酸配列
MATGSGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSTWMGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSQSGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTQNDGTTTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTNTPSGTTTQSRLQFSQAGASDIRDQSRNWLPGPCYRQQRVSKTSADNNNSEYSWTGATKYHLNGRDSLVNPGPAMASHKDDEEKFFPQSGVLIFGKQGSEKTNVDIEKVMITDEEEIRTTNPVATEQYGSVSTNLQRGNRQAATADVNTQGVLP
GMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPANPSTTFSAAKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYNKSVNVDFTVDTNGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号5)
【0334】
AAV2 VP3 HBKOアミノ酸配列
MATGSGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSTWMGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSQSGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTQNDGTTTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTNTPSGTTTQSRLQFSQAGASDIRDQSRNWLPGPCYRQQRVSKTSADNNNSEYSWTGATKYHLNGRDSLVNPGPAMASHKDDEEKFFPQSGVLIFGKQGSEKTNVDIEKVMITDEEEIRTTNPVATEQYGSVSTNLQAGNAQAATADVNTQGVLPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPANPSTTFSAAKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYNKSVNVDFTVDTNGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号6)
【0335】
AAV3 VP1アミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWALKPGVPQPKANQQHQDNRRGLVLPGYKYLGPGNGLDKGEPVNEADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLKYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRILEPLGLVEEAAKTAPGKKRPVDQSPQEPDSSSGVGKSGKQPARKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPAAPTSLGSNTMASGGGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSQWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSQSGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKKLSFKLFNIQVKEVTQNDGTTTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLNRTQGTTSGTTNQSRLLFSQAGPQSMSLQARNWLPGPCYRQQRLSKTANDNNNSNFPWTAASKYHLNGRDSLVNPGPAMASHKDDEEKFFPMHGNLIFGKEGTTASNAELDNVMITDEEEIRTTNPVATEQYGTVANNLQSSNTAPTTRTVNDQGALPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKHPPPQIMIKNTPVPANPPTTFSPAKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYNKSVNVDFTVDTNGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号7)
【0336】
scAAVベクターの突然変異ITR
CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG(配列番号8)
【0337】
AAVrh8R VP1アミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYD
QQLKAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEGAKTAPGKKRPVEQSPQEPDSSSGIGKTGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPAAPSGLGPNTMASGGGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNGTSGGSTNDNTYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTTNEGTKTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQALGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLVRTQTTGTGGTQTLAFSQAGPSSMANQARNWVPGPCYRQQRVSTTTNQNNNSNFAWTGAAKFKLNGRDSLMNPGVAMASHKDDEDRFFPSSGVLIFGKQGAGNDGVDYSQVLITDEEEIKATNPVATEEYGAVAINNQAANTQAQTGLVHNQGVIPGMVWQNRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPADPPLTFNQAKLNSFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSTNVDFAVNTEGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号9)
【0338】
AAVrh8R A586R突然変異型VP1アミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEGAKTAPGKKRPVEQSPQEPDSSSGIGKTGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPAAPSGLGPNTMASGGGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNGTSGGSTNDNTYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTTNEGTKTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQALGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLVRTQTTGTGGTQTLAFSQAGPSSMANQARNWVPGPCYRQQRVSTTTNQNNNSNFAWTGAAKFKLNGRDSLMNPGVAMASHKDDEDRFFPSSGVLIFGKQGAGNDGVDYSQVLITDEEEIKATNPVATEEYGAVAINNQRANTQAQTGLVHNQGVIPGMVWQNRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPADPPLTFNQAKLNSFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSTNVDFAVNTEGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号10)
【0339】
AAVrh8R R533A mutant VP1アミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEGAKTAPGKKRPVEQSPQEPDSSSGIGKTGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPAAPSGLGPNTMASGGGAPMADNNEGADGVGNSSGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNGTSGGSTNDNTYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTTNEGTKTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMVPQYGYLTLNNGSQALGRSSFYCLEYF
PSQMLRTGNNFQFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLVRTQTTGTGGTQTLAFSQAGPSSMANQARNWVPGPCYRQQRVSTTTNQNNNSNFAWTGAAKFKLNGRDSLMNPGVAMASHKDDEDAFFPSSGVLIFGKQGAGNDGVDYSQVLITDEEEIKATNPVATEEYGAVAINNQAANTQAQTGLVHNQGVIPGMVWQNRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPADPPLTFNQAKLNSFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSTNVDFAVNTEGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号11)
【0340】
AAV1 VP1アミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEGAKTAPGKKRPVEQSPQEPDSSSGIGKTGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPATPAAVGPTTMASGGGAPMADNNEGADGVGNASGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSASTGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTTNDGVTTIANNLTSTVQVFSDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEEVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLNRTQNQSGSAQNKDLLFSRGSPAGMSVQPKNWLPGPCYRQQRVSKTKTDNNNSNFTWTGASKYNLNGRESIINPGTAMASHKDDEDKFFPMSGVMIFGKESAGASNTALDNVMITDEEEIKATNPVATERFGTVAVNFQSSSTDPATGDVHAMGALPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKNPPPQILIKNTPVPANPPAEFSATKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEVQYTSNYAKSANVDFTVDNNGLYTEPRPIGTRYLTRPL(配列番号12)
【0341】
AAV6 VP1アミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPFGLVEEGAKTAPGKKRPVEQSPQEPDSSSGIGKTGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPATPAAVGPTTMASGGGAPMADNNEGADGVGNASGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSASTGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTTNDGVTTIANNLTSTVQVFSDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLNRTQNQSGSAQNKDLLFSRGSPAGMSVQPKNWLPGPCYRQQRVSKTKTDNNNSNFTWTGASKYNLNGRESIINPGTAMASHKDDKDKFFPMSGVMIFGKESAGASNTALDNVMITDEEEIKATNPVATERFGTVAVNLQSSSTDPATGDVHVMGALPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPANPPAEFSATKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEVQYTSNYAKSANVDFTVDNNGL
YTEPRPIGTRYLTRPL(配列番号13)
【0342】
AAV8 VP1アミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWALKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLQAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEGAKTAPGKKRPVEPSPQRSPDSSTGIGKKGQQPARKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPAAPSGVGPNTMAAGGGAPMADNNEGADGVGSSSGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNGTSGGATNDNTYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLSFKLFNIQVKEVTQNEGTKTIANNLTSTIQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFTYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTQTTGGTANTQTLGFSQGGPNTMANQAKNWLPGPCYRQQRVSTTTGQNNNSNFAWTAGTKYHLNGRNSLANPGIAMATHKDDEERFFPSNGILIFGKQNAARDNADYSDVMLTSEEEIKTTNPVATEEYGIVADNLQQQNTAPQIGTVNSQGALPGMVWQNRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPADPPTTFNQSKLNSFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSTSVDFAVNTEGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号14)
【0343】
AAV9 VP1アミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWALKPGAPQPKANQQHQDNARGLVLPGYKYLGPGNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLKYNHADAEFQERLKEDTSFGGNLGRAVFQAKKRLLEPLGLVEEAAKTAPGKKRPVEQSPQEPDSSAGIGKSGAQPAKKRLNFGQTGDTESVPDPQPIGEPPAAPSGVGSLTMASGGGAPVADNNEGADGVGSSSGNWHCDSQWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNSTSGGSSNDNAYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTDNNGVKTIANNLTSTVQVFTDSDYQLPYVLGSAHEGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNDGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFSYEFENVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSKTINGSGQNQQTLKFSVAGPSNMAVQGRNYIPGPSYRQQRVSTTVTQNNNSEFAWPGASSWALNGRNSLMNPGPAMASHKEGEDRFFPLSGSLIFGKQGTGRDNVDADKVMITNEEEIKTTNPVATESYGQVATNHQSAQAQAQTGWVQNQGILPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGMKHPPPQILIKNTPVPADPPTAFNKDKLNSFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSNNVEFAVNTEGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号15)
【0344】
AAVrh10 VP1アミノ酸配列
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEGAKTAPGKKRPVEPSPQRSPDSSTGIGKKGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPIGEPPAGPSGLG
SGTMAAGGGAPMADNNEGADGVGSSSGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNGTSGGSTNDNTYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTQNEGTKTIANNLTSTIQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFEFSYQFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTQSTGGTAGTQQLLFSQAGPNNMSAQAKNWLPGPCYRQQRVSTTLSQNNNSNFAWTGATKYHLNGRDSLVNPGVAMATHKDDEERFFPSSGVLMFGKQGAGKDNVDYSSVMLTSEEEIKTTNPVATEQYGVVADNLQQQNAAPIVGAVNSQGALPGMVWQNRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPADPPTTFSQAKLASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSTNVDFAVNTDGTYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号16)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
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図19
図20
【配列表】
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