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特許7174038ビーム形成ベースのマルチアンテナ・デバイスの無響および非無響環境におけるオーバーザエア校正と試験
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ビーム形成ベースのマルチアンテナ・デバイスの無響および非無響環境におけるオーバーザエア校正と試験
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20221109BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20221109BHJP
   H04B 7/0456 20170101ALI20221109BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20221109BHJP
   G01R 29/10 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H04B7/08 982
H04L27/26 114
H04B7/0456 300
H04B7/06 982
H04B7/06 986
G01R29/10 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020511489
(86)(22)【出願日】2017-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2017071250
(87)【国際公開番号】W WO2019037847
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ランドマン,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シャーマー,クリストファー
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-099861(JP,A)
【文献】特表2006-504370(JP,A)
【文献】特開2012-142964(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0230380(US,A1)
【文献】国際公開第2017/135389(WO,A1)
【文献】特表2011-507000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/08
H04L 27/26
H04B 7/0456
H04B 7/06
G01R 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイス(100)のマルチアンテナトランシーバのアンテナを無線で校正するための方法(280)であって、
前記被試験デバイス(100)とデバイス試験装置(130)との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信(282)するステップであって、前記第1シグナリング情報は前記被試験デバイス(100)又は前記デバイス試験装置(130)によって送信される、ステップと、
前記第1シグナリング情報に応答して、前記被試験デバイス(100)と前記デバイス試験装置(130)との間で基準信号を無線で送信(284)するステップであって、
-前記マルチアンテナトランシーバの1つのアクティブアンテナポートと、特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータに設定され、かつ前記マルチアンテナトランシーバのアンテナを校正する間、設定された特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータが固定状態で維持されるビーム形成ネットワーク(104)とを使用し、又は
-前記マルチアンテナトランシーバの1つのRFポートと、特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータに設定され、かつ前記マルチアンテナトランシーバのアンテナを校正する間、設定された特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータが固定状態で維持されるビーム形成ネットワーク(104)とを使用し、
前記基準信号は前記被試験デバイス(100)又は前記デバイス試験装置(130)によって送信される、ステップと、
前記デバイス試験装置(130)のアンテナと前記被試験デバイス(100)のアンテナとの間の第1の相対方位に関するアンテナパターンの振幅及び位相のうち少なくとも1つを測定(286)するステップと、
前記デバイス試験装置(130)のアンテナと前記被試験デバイス(100)のアンテナとの間の相対方位を、前記第1の相対方位から第2の相対方位へと変更(288)するステップと、
基準信号を無線で送信するステップと、アンテナパターンの振幅及び位相のうち少なくとも1つを測定するステップと、相対方位を変更するステップとを、所定の終了基準に到達するまで反復して繰り返すステップ(289)と、
を含む方法(280)。
【請求項2】
前記被試験デバイス(100)のマルチアンテナトランシーバは、複数のアンテナポート(110)と複数のRFポート(112)とを有するビーム形成ネットワーク(104)を含む、
請求項1に記載の方法(280)。
【請求項3】
前記方法は、
前記被試験デバイス(100)から前記デバイス試験装置(130)へと第2シグナリング情報を無線で送信することを含み、前記第2シグナリング情報は測定されるべき前記アンテナポート(110)又はRFポート(112)を示している、
請求項1又は2に記載の方法(280)。
【請求項4】
前記方法は、
前記デバイス試験装置(130)から前記被試験デバイス(100)へと第3シグナリング情報を無線で送信することを含み、前記第3シグナリング情報は測定されたアンテナパターンを示している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法(280)。
【請求項5】
被試験デバイス(100)のマルチアンテナ受信器のデジタル受信器モジュールを無線で校正/試験する方法(290)であって、前記マルチアンテナ受信器は複数のアンテナポート(110)と複数のRFポート(112)とを有するアナログ・ビーム形成ネットワーク(104)を含み、前記マルチアンテナ受信器のデジタル受信器モジュールは前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の複数のRFポート(112)と接続されており、前記方法は、
被試験デバイス(100)とデバイス試験装置(130)との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信(291)するステップであって、前記第1シグナリング情報は前記被試験デバイス(100)又は前記デバイス試験装置(130)によって送信される、ステップと、
前記第1シグナリング情報に応答して、前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)を特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータに設定し、かつ前記マルチアンテナ受信器のデジタル受信器モジュールを校正/試験する間に使用される校正/試験モードにおいて、前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の動作パラメータを固定状態で維持する、ステップと、
前記第1シグナリング情報に応答して、前記デバイス試験装置(130)から前記被試験デバイス(100)へと無線で送信される基準信号を使用して、前記被試験デバイス(100)のマルチアンテナ受信器のアクティブアンテナポート(110)又はRFポート(112)と前記デバイス試験装置(130)のアンテナポート(134)との間のチャネル伝達関数行列を推定(292)し、推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報を、前記被試験デバイス(100)から前記デバイス試験装置(130)へ無線で送信するステップと、
前記被試験デバイス(100)と前記デバイス試験装置(130)との間でプリコードされた送信要求を示す第2シグナリング情報を無線で送信(293)するステップであって、前記第2シグナリング情報は前記被試験デバイス(100)又は前記デバイス試験装置(130)によって送信される、ステップと、
前記被試験デバイス(100)の前記マルチアンテナ受信器の各アクティブアンテナポート(110)又はRFポート(112)で独立して基準信号を受信可能な、前記デバイス試験装置(130)と前記被試験デバイス(100)との間の干渉のないチャネルを取得するために、前記第2シグナリング情報に応答して、推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報に基づいて選択され又は決定されたプリコーダ行列を使用して、前記デバイス試験装置(130)から前記被試験デバイス(100)へとプリコードされた基準信号を無線で送信(294)する、ステップと、
を含む方法(290)。
【請求項6】
前記方法は、
前記デバイス試験装置(130)と前記被試験デバイス(100)との間のマルチパス伝播チャネルをシミュレートするために、マルチパス伝播チャネルモデルを使用して、前記デバイス試験装置から前記被試験デバイスへ前記プリコードされた基準信号を送信するために使用されるプリコーダ行列を変更するステップと、
前記被試験デバイス(100)から前記デバイス試験装置(130)へと第3シグナリング情報を無線で送信するステップであって、前記第3シグナリング情報は、通常の動作モードにおける前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)を前記マルチパス伝播チャネルに適応させるために、前記被試験デバイス(100)がシミュレートされたマルチパス伝播チャネルに対応して通常の動作モードにおいて前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)に適用するであろう、特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータを示しており、前記被試験デバイス(100)は、前記マルチアンテナ受信器のデジタル受信器モジュールを校正/試験する間に使用される校正/試験モードにおいて、前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の動作パラメータを固定状態で維持すること、
を含む請求項5に記載の方法(290)。
【請求項7】
前記方法は、
前記デバイス試験装置(130)と前記被試験デバイス(100)との間のマルチパス伝播チャネルをシミュレートするために、マルチパス伝播チャネルモデルを使用して、前記デバイス試験装置から前記被試験デバイスへ前記プリコードされた基準信号を送信するために使用されるプリコーダ行列を変更するステップを含み、
前記被試験デバイス(100)は、前記マルチアンテナ受信器のデジタル受信器モジュールを校正/試験する間に使用される校正/試験モードにおいて、前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の動作パラメータを固定状態で維持する、
請求項5に記載の方法(290)。
【請求項8】
前記方法は、
前記マルチアンテナ受信器のデジタル受信器モジュールの性能を特定する性能メトリックを測定することを含む、
請求項5~7のいずれか1項に記載の方法(290)。
【請求項9】
前記方法は、
前記マルチアンテナ受信器のデジタル受信器モジュールの性能を特定する性能メトリックを測定するために、前記デバイス試験装置(130)から前記被試験デバイス(100)へ無線で送信される基準信号の送信パラメータを変更することを含む、
請求項8に記載の方法(290)。
【請求項10】
前記方法は、
前記被試験デバイス(100)のアナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の1グループのアンテナポート(110)を活性化して、アクティブアンテナポート(110)を取得する一方で、前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の他のアンテナポート(110)を非活性化することを含む、
請求項5~9のいずれか1項に記載の方法(290)。
【請求項11】
被試験デバイス(100)のマルチアンテナ送信器のデジタル送信器モジュールを無線で校正/試験する方法(290)であって、前記マルチアンテナ送信器は複数のアンテナポート(110)と複数のRFポート(112)とを有するアナログ・ビーム形成ネットワーク(104)を含み、前記マルチアンテナ送信器のデジタル送信器モジュールは前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の複数のRFポート(112)と接続されており、前記方法は、
前記被試験デバイス(100)とデバイス試験装置(130)との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップであって、前記第1シグナリング情報は前記被試験デバイス(100)又は前記デバイス試験装置(130)によって送信される、ステップと、
前記第1シグナリング情報に応答して、前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)を特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータに設定し、かつ前記マルチアンテナ送信器のデジタル送信器モジュールを校正/試験する間に使用される校正/試験モードにおいて、前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の動作パラメータを固定状態で維持する、ステップと、
前記第1シグナリング情報に応答して、前記被試験デバイス(100)から前記デバイス試験装置(130)へと無線で送信される基準信号を使用して、前記被試験デバイス(100)のマルチアンテナ送信器のアクティブアンテナポート又はRFポート(112)と前記デバイス試験装置(130)のアンテナポート(134)との間のチャネル伝達関数行列を推定するステップと、
推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報を使用して、イコライザ行列を選択又は推定(236)するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記方法は、
前記被試験デバイス(100)と前記デバイス試験装置(130)との間のマルチパス伝播チャネルをエミュレートするために、イコライズされた基準信号を前記被試験デバイスから受信するために使用されるイコライザ行列を変更するステップであって、前記被試験デバイスから前記デバイス試験装置へと送信される前記基準信号はマルチパス伝播チャネルモデルを使用している、ステップと、
前記被試験デバイス(100)から前記デバイス試験装置(130)へと第3シグナリング情報を無線で送信するステップであって、前記第3シグナリング情報は、通常の動作モードにおける前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)を前記マルチパス伝播チャネルに適応させるために、前記被試験デバイス(100)がエミュレートされたマルチパス伝播チャネルに対応して通常の動作モードにおいて前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)に適用するであろう、特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータを示しており、前記被試験デバイス(100)は、前記マルチアンテナ送信器のデジタル送信器モジュールを校正/試験する間に使用される校正/試験モードにおいて、前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の動作パラメータを固定状態で維持する、ステップと、
を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、
前記マルチアンテナ送信器のデジタル送信器モジュールの性能を特定する性能メトリックを測定することを含む、
請求項11~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、
前記マルチアンテナ送信器のデジタル送信器モジュールの性能を特定する前記性能メトリックを測定するために、前記被試験デバイス(100)から前記デバイス試験装置へ無線で送信される基準信号の送信パラメータを変更することを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、
前記被試験デバイス(100)のアナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の1グループのアンテナポート(110)を活性化して、アクティブアンテナポート(110)を取得する一方で、前記アナログ・ビーム形成ネットワーク(104)の他のアンテナポート(110)を非活性化することを含む、
請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
コンピュータ又はプロセッサ上で作動するとき、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラム。
【請求項17】
被試験デバイス(100)であって、
複数のアンテナポート(110)と複数のRFポート(112)とを有するビーム形成ネットワーク(104)と、
前記ビーム形成ネットワーク(104)の複数のアンテナポート(110)に接続された複数のアンテナ(102)と、
前記ビーム形成ネットワーク(104)の複数のRFポート(112)に接続されたRFモジュール(106)と、
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成されたプロセッサと、
を含む被試験デバイス(100)。
【請求項18】
前記被試験デバイス(100)はユーザ装置又は基地局である、
請求項17に記載の被試験デバイス(100)。
【請求項19】
デバイス試験装置(130)であって、
複数のアンテナポート(134)と複数のRFポートとを有するビーム形成ネットワーク(136)と、
前記ビーム形成ネットワーク(136)の複数のアンテナポート(134)に接続された複数のアンテナ(132)と、
前記ビーム形成ネットワーク(136)の複数のRFポートに接続されたRFモジュールと、
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成されたプロセッサと、
を含むデバイス試験装置(130)。
【請求項20】
前記デバイス試験装置(130)はユーザ装置、基地局又は専用のデバイス試験装置である、
請求項19に記載のデバイス試験装置(130)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、被試験デバイスのマルチアンテナトランシーバを無線で校正する方法に関連し、詳細には、被試験デバイスのビーム形成ネットワーク及び/又はトランシーバモジュール(Rxモジュール及び/又はTxモジュール)を無線で校正する方法に関する。いくつかの実施形態は、無響環境および非無響環境における、ハイブリッド・アナログ/デジタル・ビーム形成ベースのマルチアンテナ・デバイスの校正および試験に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のアンテナを備えた無線通信デバイスは、全体的な性能および適合性に関して校正および試験されなければならない。
【0003】
デバイス試験のための周知の方法は、デバイスのアンテナが被試験デバイス(device under test:DUT)から切り離され、デバイス試験装置(device tester)がDUTに直接接続される、いわゆる導通試験(conducted test:CT)である。このような導通試験では、DUTとデバイス試験装置との間で無線伝送は行われない。このような簡易な方法での試験セットアップは、デバイス試験中におけるDUTのアンテナ放射パターンを考慮していない。その導通試験の主な欠点は、全ての信号が「事実上」同じ方向に作用するので、DUTで実施されるあらゆる種類のビーム形成/ビーム処理アルゴリズムを評価できないことである。さらに、この試験ではDUTのアンテナが現れないので、方向依存性または周波数依存性の信号増幅または減衰を感知できないこともある。
【0004】
導通試験の1つの拡張は、いわゆる2ステージ法(two-stage method:TSM)[非特許文献1]であり、図1a、図1bおよび図2を参照されたい。詳細には、図1aおよび図1bは、それぞれ小型デバイスおよび大型デバイスのためのアンテナ測定原理の概略図を示す。図2は、TSMのための校正/試験セットアップ10の概略図を示す。このセットアップでは、DUT12のアンテナ放射パターンがアンテナ測定室内において第1ステージで測定され(図1aおよび図1b)、そのアンテナ測定室では所望の方位及び仰角範囲がカバーされるようにDUTのアンテナが回転16される。DUT12のサイズが大きすぎて全ての所望の角度方向に回転することができない場合には、DUT12を回転させて方位角をカバーするためにターンテーブル上に載置することができ、仰角は、送信アンテナの動きにより、又はアンテナ円弧上でのアクティブアンテナの切り替えにより、カバーされる(図1参照)。TSMの第2ステージでは、デバイス試験装置(例えば、eNodeB)とDUT12との間の導通試験が実行される(図2参照)。上述の単純なCT(導通試験)セットアップとは対照的に、DUTのアンテナ放射パターンおよびMIMO伝搬チャネルがデジタルベースバンド信号に含まれる。
【0005】
TSMでは、チャネルエミュレータがデバイス試験装置/制御サイト(CS)18とDUT12との間の時間変化するMIMO伝播チャネルをエミュレートする。CSとDUTとの間の通信リンクが成功裡に確立されると、データスループット、受信信号強度等のような通信リンクの様々な性能メトリックが測定され、解析される。しかしながら、導通試験の主な欠点は、DUTアンテナ同志のアンテナ結合に起因する自己干渉効果(self-interference effects)が試験中に考慮され得ないことである。さらに、DUTの近傍にある他のデバイス又は非適合のラジオデバイス(non-conformant radio devices)から放射された信号に起因する典型的なインバンド干渉(in-band interferences)は、試験中に評価され得ない。
【0006】
放射された2ステージ法(RTS)(非特許文献2-5、図3参照)は、無響室内におけるTSMのオーバーザエア(over the air:OTA)を実行する。この手法により、自己干渉効果およびインバンド干渉効果の両方を評価することができる。TSMと同様に、DUTアンテナの放射パターンは、デバイス試験の前に測定される。RTSの手法では、CS18がO個のCSアンテナポート21/N個のOTAアンテナ22を介して位相コヒーレント信号を放射または受信する一方で、M個のアンテナポート19を備えたDUT12がそれら信号を受信または放射する。第1ステップでは、室24の伝播チャネル特性が測定され、チャネル行列
【数1】
に記憶される。この校正測定の期間中、DUTアンテナ(DUTのアンテナポート)19はDUT12から切り離される。測定されたチャネル行列HCに基づいてプリコーダ行列が計算され、直交チャネルを実現し、O個のCS-アンテナポート21/N個のOTAアンテナ22とM個のDUTアンテナポート19との間の室内伝搬特性の影響を除去するために、その行列がCSで送信信号に適用される。信号のプリコーディングには様々な手法が存在する。一例として、プリコーダ行列は、チャネル伝達行列HCのMoore-Penrose擬似逆行列によって計算できる。さらに、測定されたDUTアンテナ放射パターン(単数または複数)を含む現実的なMIMO伝搬チャネル行列HTを、CSで送信信号に組み込むことができる。次いで、CSとDUTとの間に通信リンクを確立し、その性能を評価することによって、デバイス試験が実行される。
【0007】
RTS法の拡張は、非無響環境において適用可能な、いわゆる無線・ケーブル・アプローチ(WLC)(図4、非特許文献7を参照)である。
【0008】
WLC記述:DUT12での受信信号(ダウンリンクの場合)は、以下のように与えられる。
【数2】
ここで、y(q)は周波数ビンq(q=1,...,Q)におけるDUT12のアンテナポート19での周波数依存の受信信号ベクトルであり、x(q)はCS22における周波数依存の放射信号であり、P(q)は周波数依存性のプリコーディング行列である。DUT12のアンテナポート19とCSポート21との間のチャネル行列HC(f)を測定するために、基準信号が送信され、プリコーディング行列P(q),q=1,...,Qが単位行列(identity matrices) に設定される。次いで、チャネル行列HCの擬似逆と、所望の伝搬チャネル行列HTとの乗算とによって、プリコーダ行列が次式により算出され得る。
【数3】
簡素化のため、周波数依存の表記は省略されていることに留意されたい。
【0009】
RTS(狭帯域)およびWLC(広帯域)の方法では、チャネル行列HCに対して以下の校正手順が適用される。CS18側のN個のOTAアンテナ22、DUTアンテナ20及び室24の伝搬チャネルの影響を測定するために、DUT12のバックエンドはDUTアンテナ20から切り離されなければならない。OTAアンテナ22およびDUTアンテナ20の特性を含む室24の伝搬チャネル特性を測定するために、DUT-アンテナポート19で、校正測定システムはケーブルを介して接続されなければならない。
【0010】
小型DUTについては、波面合成(WFS)またはMIMOマルチプローブ法(非特許文献10、11を参照)も、デバイス試験に適用することができる。これにより、目標伝搬チャネル特性により規定される1セットの平面波がエミュレートされる。このエミュレーションは、複数のOTAエミュレーションアンテナの配置により行われる。エミュレーションアンテナの個数および動作周波数は、平面波がエミュレートされ得るDUTの最大寸法を決定する。WFS法の欠点は、必要なエミュレーションアンテナの個数が多いことである。一例として、2次元アンテナ配置において1.5GHZの動作周波数の24個のエミュレーションアンテナがあれば、約0.7mの最大の電気的DUTサイズが可能になる。さらに、エミュレーションアンテナに供給する全ての信号パスは、WFSに対して位相コヒーレントでなければならない。上述の他の方法と比較して、特にDUTが大きい場合、WFSはハードウェア要件に関して最も高価なものである。さらに、この方法は、非無響環境では適用できない。この方法をここで触れた理由は、網羅のためであり、またこの方法が前述の方法のようにDUT校正を必要としないからである。
【0011】
図5は、各アプローチの進歩を示すことにより、既存の試験方法の概要を示す。四角形で示された方法は非無響環境で動作し、一方で、三角形で示された方法は無響環境でのみ使用することができる。図5に示すように、上述のTSM(図2参照)、RTS法(図3参照)およびWLC法(図4参照)は、DUTアンテナをアンテナポートから切り離し可能なDUTにのみ適している。WFS法は高度に集積されたデバイスに対して使用可能であるが、ハードウェア要件の点で非常に高価で複雑なものである。
【0012】
要約すると、高度に集積された通信デバイスのデバイスインタフェースは、利用可能でもアクセス可能でもない。結果として、デバイスの構成要素(例えばアンテナ、ビーム形成ネットワーク、ダウン/アップコンバータなど)の非破壊試験または校正は、不可能または非常に困難になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Agilent Technologies, “Incorporating self-interference into the two-stage method,” in 3GPP TSG RAN WG4 Meeting #66 MIMO OTA Ah hoc, Mar 2013, available: ftp://ftp.3gpp.org/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_AHs/TSGR4_66-AH-MIMO-OTA/Docs/R4-66AH-0012.zip.
【文献】Agilent Technologies, “Impact of path isolation on radiated second stage,” in 3GPP TSG RAN WG4 Meeting, #69, Nov 2013, available: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_69/docs/R4- 136799.zip.
【文献】M. Rumney, H. Kong, and Y. Jing, “Practical active antenna evaluation using the two-stage MIMO OTA measurement method,” in Antennas and Propagation (EuCAP), 2014 8th European Conference on, April 2014, pp. 3500-3503.
【文献】M. Rumney, H. Kong, Y. Jing, and X. Zhao, “Advances in antenna pattern-based MIMO OTA test methods,” in Antennas and Propagation (EuCAP), 2015 9th European Conference on, April 2015.
【文献】W. Yu, Y. Qi, “Method and Device for Testing Performance of Wireless Terinal”, United States Patent, No. US 9,614,627 B2, General Test Systems Inc., Apr. 4, 2017
【文献】European Telecommunications Standards Institute (ETSI), "Universal Mobile Telecommunications System (UMTS); LTE; Universal Terrestrial Radio Access (UTRA) and Evolved Universal Terrestrial radio Access (E-UTRA); Verification of radiated multi-antenna reception performance of User Equipment (UE) (3GPP TR 37.977 version 14.3.0 Release 14)", Technical Report, in 3GPP TR 37.977, v. 14.3.0 Release 14, March, 2003
【文献】C. Schirmer, M. Lorenz, W. A. T. Kotterman, R. Perthold, M. H. Landmann and G. Del Galdo, "MIMO over-the-air testing for electrically large objects in non-anechoic environments," 2016 10th European Conference on Antennas and Propagation (EuCAP), Davos, 2016, pp. 1-6. doi: 10.1109/EuCAP.2016.7481106
【文献】E. H. Moore, “On the reciprocal of the general algebraic matrix,” in Bulletin of the American Mathematical Society 26, 1920, pp. 394-395.
【文献】R. Penrose, “A generalized inverse for matrices,” in Proceedings of the Cambridge Philosophical Society 51, 1955, pp. 406-413.
【文献】P. Kyoesti, T. Jaemsae, and J.-P. Nuutinen, “Channel modelling for multiprobe Over-the-Air MIMO testing,” International Journal of Antennas and Propagation, vol. 2012, 2012.
【文献】C. Schirmer, M. Landmann,W. Kotterman, M. Hein, R. Thomae, G.Del Galdo, and A. Heuberger, “3D wave-field synthesis for testing of radio devices,” in Antennas and Propagation (EuCAP), 2014 8th European Conference on, April 2014, pp. 3394-3398.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、高度に集積された通信デバイスを非破壊で試験/校正するための効率的な方法を提供することである。
【0015】
この目的は、独立請求項によって解決される。
【0016】
有利な実施態様は、従属請求項に示されている。
【0017】
実施形態は、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器のビーム形成ネットワークを無線で校正/試験する方法を提供する(例えば、この方法は、マルチアンテナ受信器のアンテナポートの(受信方向)下流側にあるマルチアンテナ受信器の構成要素を校正/試験するために使用され得る)。この方法は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらに、この方法は、第1シグナリング情報に応答して、デバイス試験装置から被試験デバイスへと無線で送信される基準信号を使用して、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器のアクティブアンテナポートとデバイス試験装置のアンテナポートとの間のチャネル伝達関数行列を推定し、推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報を、被試験デバイスからデバイス試験装置へと送信するステップを含む。さらにこの方法は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間でプリコードされた送信要求を示す第2シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第2シグナリング情報は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらにこの方法は、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器のアクティブアンテナポートの各々で独立して基準信号を受信可能とする、デバイス試験装置と被試験デバイスとの間の干渉のないチャネルを取得するために、第2シグナリング情報に応答して、推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報に基づいて選択され又は決定されたプリコーダ行列を使用して、デバイス試験装置から被試験デバイスへとプリコードされた基準信号を無線で送信する、ステップを含む。
【0018】
さらなる実施形態は、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器のビーム形成ネットワークを無線で校正/試験する方法を提供する(例えば、この方法は、マルチアンテナ送信器のアンテナポートの(送信方向)上流側にあるマルチアンテナ送信器の構成要素を校正/試験するために使用され得る)。この方法は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらにこの方法は、第1シグナリング情報に応答して、被試験デバイスからデバイス試験装置へと無線で送信される基準信号を使用して、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器のアクティブアンテナポートとデバイス試験装置のアンテナポートとの間のチャネル伝達関数行列を推定するステップを含む。さらにこの方法は、推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報を使用して、イコライザ行列を選択又は推定するステップを含む。
【0019】
さらなる実施形態は、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器の受信モジュールを無線で校正/試験するための方法を提供する(例えば、この方法は、マルチアンテナ受信器のRFポートの(受信方向)下流側にあるマルチアンテナ受信器の構成要素を校正/試験するために使用され得る)。この方法は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらにこの方法は、第1シグナリング情報に応答して、デバイス試験装置から被試験デバイスへと無線で送信される基準信号を使用して、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器のRFポートとデバイス試験装置のアンテナポートとの間のチャネル伝達関数行列を推定し、推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報を被試験デバイスからデバイス試験装置へと送信する、ステップを含む。さらにこの方法は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間でプリコードされた送信要求を示す第2シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第2シグナリング情報は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらにこの方法は、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器のRFポートの各々で独立して基準信号を受信可能とする、デバイス試験装置と被試験デバイスとの間の干渉のないチャネルを取得するために、第2シグナリング情報に応答して、推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報に基づいて選択され又は決定されたプリコーダ行列を使用して、デバイス試験装置から被試験デバイスへと基準信号を無線で送信する、ステップを含む。
【0020】
さらなる実施形態は、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器の送信モジュールを無線で校正/試験する方法を提供する(例えば、この方法は、マルチアンテナ送信器のRFポートの(送信方向)上流側にあるマルチアンテナ送信器の構成要素を校正/試験するために使用され得る)。この方法は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらにこの方法は、第1シグナリング情報に応答して、被試験デバイスからデバイス試験装置へと無線で送信される基準信号を使用して、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器のRFポートとデバイス試験装置のアンテナポートとの間のチャネル伝達関数行列を推定するステップを含む。さらにこの方法は、推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報を使用して、イコライザ行列を選択又は推定するステップを含む。
【0021】
さらなる実施形態は、被試験デバイスのマルチアンテナトランシーバのアンテナを無線で校正/試験するための方法を提供する(例えば、この方法は、マルチアンテナトランシーバのアンテナポートの(送信方向)下流側または(受信方向)上流側にあるマルチアンテナトランシーバの構成要素を校正/試験するために使用され得る)。この方法は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間でアンテナ校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらにこの方法は、マルチアンテナトランシーバの1つのアクティブアンテナポート又はマルチアンテナトランシーバの1つのRFポートと固定のビーム形成ネットワークとを使用して、被試験デバイスとデバイス試験装置との間で基準信号を無線で送信するステップを含み、基準信号は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらにこの方法は、デバイス試験装置のアンテナと被試験デバイスのアンテナとの間の第1の相対方位に関する(フル・ポラリメトリック(full polarimetric)な)アンテナパターンの振幅及び位相のうち少なくとも1つを測定するステップを含む。さらにこの方法は、デバイス試験装置のアンテナと被試験デバイスのアンテナとの間の相対方位を、第1の相対方位から第2の相対方位へと変更するステップを含む。さらにこの方法は、基準信号を無線で送信するステップと、(フル・ポラリメトリックな)アンテナパターンの振幅及び位相のうち少なくとも1つを測定するステップと、相対方位を変更するステップとを、所定の終了基準に到達するまで反復して繰り返すステップを含む。
【0022】
さらなる実施形態は、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器のデジタル受信器モジュールを無線で校正/試験する方法を提供する。この方法は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらにこの方法は、第1シグナリング情報に応答して、デバイス試験装置から被試験デバイスへと無線で送信される基準信号を使用して、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器のアクティブアンテナポート又はRFポートとデバイス試験装置のアンテナポートとの間のチャネル伝達関数行列を推定するステップを含む。さらにこの方法は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間でプリコードされた送信要求を示す第2シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第2シグナリング情報は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらにこの方法は、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器の各アクティブアンテナポート又はRFポートで独立して基準信号を受信可能とする、デバイス試験装置と被試験デバイスとの間の干渉のないチャネルを取得するために、第2シグナリング情報に応答して、推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報に基づいて選択され又は決定されたプリコーダ行列を使用して、デバイス試験装置から被試験デバイスへと基準信号を無線で送信する、ステップを含む。それにより、マルチアンテナ受信器のアナログ・ビーム形成ネットワークは特定のビーム形成ネットワーク・パラメータに設定され、たとえ被試験デバイスとデバイス試験装置との間の伝播チャネルがマルチパス伝播チャネルをエミュレートするために変化しても、マルチアンテナ受信器のデジタル受信器モジュールを校正/試験する間、その設定されたビーム形成ネットワーク・パラメータに固定状態で維持される。この場合、第3シグナリング情報が被試験デバイスからデバイス試験装置へと無線で送信されてもよく、第3シグナリング情報は、通常の動作モードにおけるアナログ・ビーム形成ネットワークをマルチパス伝播チャネルに適応させるために、被試験デバイスがエミュレートされたマルチパス伝播チャネルに対応して通常の動作モードにおいてアナログ・ビーム形成ネットワークに適用するであろう、特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータを示している。
【0023】
さらなる実施形態は、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器のデジタル送信器モジュールを無線で校正/試験する方法を提供する。この方法は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス又はデバイス試験装置によって送信される。さらにこの方法は、第1シグナリング情報に応答して、被試験デバイスからデバイス試験装置へと無線で送信される基準信号を使用して、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器のアクティブアンテナポート又はRFポートとデバイス試験装置のアンテナポートとの間のチャネル伝達関数行列を推定するステップを含む。さらにこの方法は、推定されたチャネル伝達関数行列又はそれから導出された情報を使用して、イコライザ行列を選択又は推定するステップを含む。それにより、マルチアンテナ送信器のアナログ・ビーム形成ネットワークは特定のビーム形成ネットワーク・パラメータに設定され、たとえ被試験デバイスとデバイス試験装置との間の伝播チャネルがマルチパス伝播チャネルをエミュレートするために変化しても、マルチアンテナ受信器のデジタル送信器モジュールを校正/試験する間、その設定されたビーム形成ネットワーク・パラメータに固定状態で維持される。この場合、第3シグナリング情報が被試験デバイスからデバイス試験装置へと無線で送信されてもよく、第3シグナリング情報は、通常の動作モードにおけるアナログ・ビーム形成ネットワークをマルチパス伝播チャネルに適応させるために、被試験デバイスがシミュレートされたマルチパス伝播チャネルに対応して通常の動作モードにおいてアナログ・ビーム形成ネットワークに適用するであろう、特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータを示している。
【0024】
本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a】小型デバイスのためのアンテナ測定原理の概略図である。
図1b】大型デバイスのためのアンテナ測定原理の概略図である。
図2】2ステージ法のための校正/試験セットアップの概略図である
図3】無響室における放射された2ステージ法のための校正/試験セットアップの概略図である。
図4】非無響室における無線・ケーブル法のための校正/試験セットアップの概略図である。
図5】それぞれの利点を提示しながら既存の試験方法の概要を示す図である。
図6】一実施形態による、被試験デバイスのマルチアンテナトランシーバの概略ブロック図である。
図7a】一実施形態による、ビーム形成ネットワークのM個のアンテナポートの各アンテナポートを選択的に活性化または非活性化するよう構成された別個のスイッチブロックを備えるビーム形成ネットワークの概略ブロック図を示す。
図7b】一実施形態による、ビーム形成ネットワークのM個のアンテナポートの各アンテナポートを選択的に活性化または非活性化するよう構成された統合スイッチを有するビーム形成ネットワークの概略ブロック図を示す。
図8】一実施形態による、被試験デバイスのマルチアンテナトランシーバの構成要素を校正/試験するための校正/試験セットアップの概略ブロック図を示す。
図9】一実施形態による、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器のビーム形成ネットワークを無線で校正する方法のフローチャートを示す。
図10】一実施形態による、DUT BFN受信モード校正のための方法のフローチャートを示す。
図11】一実施形態による、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器のビーム形成ネットワークを無線で校正/試験する方法のフローチャートを示す。
図12】一実施形態による、DUT BFN送信モード校正のための方法のフローチャートを示す。
図13】一実施形態による、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器の受信モジュールを無線で校正/試験する方法のフローチャートを示す。
図14】一実施形態による、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器の送信モジュールを無線で校正/試験する方法のフローチャートを示す。
図15】一実施形態による、被試験デバイスのマルチアンテナトランシーバのアンテナを無線で校正/試験する方法のフローチャートを示す。
図16】一実施形態による、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器のデジタル受信器モジュールを無線で校正/試験する方法のフローチャートを示す。
図17】一実施形態による、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器のデジタル送信器モジュールを無線で校正/試験する方法のフローチャートを示す。
図18】本発明の手法に従って説明されたユニットまたはモジュールおよび方法のステップが実施され得るコンピュータシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明において、同じ若しくは同等の構成要素、又は、同じ若しくは同等の機能を有する構成要素は、同じ若しくは同等の参照番号で示されている。
【0027】
以下の説明では、本発明の実施形態のより完全な説明を提供するために、複数の詳細を説明する。しかしながら、本発明の実施形態がこれらの特定の詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他方、本発明の実施形態が不明瞭にならないように、周知の構造およびデバイスは、詳細ではなくブロック図形式で示されている。また、特に断りのない限り、以下に説明する異なる実施形態の特徴を互いに組み合わせることができる。
【0028】
本明細書では被試験デバイス(DUT)100と称する、無線通信デバイスのRF構成要素(例えばアンテナ、アンテナポート、RFポート、ビーム形成ネットワーク、Txモジュール(Tx=送信器)またはRxモジュール(Rx=受信器))を校正/試験する方法の実施形態を詳細に説明する前に、デバイスそのものについて図6図7a、図7bを参照して説明し、校正/試験のセットアップについて図8を参照して説明する。
【0029】
図6は、被試験デバイス100のマルチアンテナトランシーバ(送信器および/または受信器)の概略ブロック図を示す。被試験デバイス100のマルチアンテナトランシーバは、アンテナアレイ102と、ビーム形成ネットワーク104と、少なくとも1つのRFモジュール106とを備える。ビーム形成ネットワーク104は、M個のアレイポート(またはアンテナポート)110とP個のRFポート112とを含み、Mは2以上の自然数であり得(M≧2)、Pは2以上の自然数であり得る(P≧2)。アンテナアレイ102、又はより正確にはアンテナアレイ102のM個のアンテナは、ビーム形成ネットワーク104のM個のアレイポート110に接続可能であり、少なくとも1つのRFモジュール106は、ビーム形成ネットワーク104のP個のRFポート112に接続可能である。さらに、被試験デバイス100のマルチアンテナトランシーバ(送信器および/または受信器)は、デジタル信号処理を実行するように構成された少なくとも1つのトランシーバモジュール(例えば、少なくとも1つの送信器モジュール及び/又は少なくとも1つの受信器モジュール)を備えてもよい。少なくとも1つのトランシーバモジュールは、少なくとも1つのRFモジュール106に接続可能である。さらに、被試験デバイス100のマルチアンテナトランシーバ(送信器および/または受信器)は、少なくとも1つのRFモジュール106と少なくとも1つの(デジタル)トランシーバモジュールとの間に接続された、アナログ-デジタル変換器および/またはデジタル-アナログ変換器を備えていてもよい。
【0030】
実施形態では、ビーム形成ネットワーク104はアナログ・ビーム形成ネットワークでありうる。
【0031】
さらに、実施形態では、マルチアンテナトランシーバは、例えば少なくとも1つのトランシーバモジュールを使用して、デジタル・ビーム形成を実行するように構成され得る。換言すれば、マルチアンテナトランシーバは、アナログ部分とデジタル部分とを有するハイブリッド・ビーム形成ネットワークを備えることができる。これにより、ハイブリッド・ビーム形成ネットワークのアナログ部分は、ビーム形成ネットワーク104内で実装され得、ビーム形成ネットワークのデジタル部分は、少なくとも1つのトランシーバモジュール内で実装され得る。
【0032】
さらに、実施形態では、マルチアンテナトランシーバは、少なくとも1つのトランシーバモジュール内に実装されたデジタル・ビーム形成ネットワークのみを備えることもできる。その場合、各アンテナポートが正に1つのRFポートに接続されるように、すなわちM=Pとなるように、M個のアンテナポート110がP個のRFポート112に直接接続されてもよい。
【0033】
実施形態の以下の説明では、マルチアンテナトランシーバがハイブリッド・ビーム形成ネットワークを含むことが例示的に想定される。しかし、本発明は、このような実施形態に限定されるものではない。むしろ、以下の説明は、アナログ及び/又はデジタル・ビーム形成ネットワークにも適用可能である。
【0034】
実施形態では、アレイ102の複数のアンテナ素子間の相対的な振幅値および位相値は、アンテナアレイ102のビームを規定する。これらの相対的な位相値および振幅値は、ビーム形成ネットワーク(例えば少なくとも1つのRFモジュール106に実装されたアナログ・ビーム形成ネットワーク104および/またはデジタル・ビーム形成ネットワーク)によって生成され、そのビーム形成ネットワークは、アレイ102のアンテナ素子に接続された、例えば複数の移相器、制御可能な減衰器/Tx内のPA(PA=パワー増幅器)/Rx内のLNA(LNA=低ノイズ増幅器)、遅延ライン等を含み得る。ビーム形成ネットワーク104は、DUT100のM個のアンテナ素子102とP個の送信/受信(RF)モジュール106とにそれぞれ接続された、M個のアレイポート(またはアンテナポート)110とP個のRFポート112とを備えることができる(図6参照)。
【0035】
実施形態では、図7aおよび図7bに例として示すように、校正を目的としてビーム形成ネットワーク104にスイッチブロックを含むことができる。詳細には、図7aは、ビーム形成ネットワークのM個のアンテナポート110の各アンテナポートを選択的に活性化または非活性化するよう構成された、別個のスイッチブロック116を備えるビーム形成ネットワーク104の概略ブロック図を示し、図7bは、ビーム形成ネットワークのM個のアンテナポート110の各アンテナポートを選択的に活性化または非活性化するよう構成された、統合スイッチを有するビーム形成ネットワーク104の概略ブロック図を示す。換言すれば、図7aおよび図7bは、コントロール信号を用いた校正のためのスイッチブロックを含む、ビーム形成ネットワークの例を示す。スイッチブロック116内のスイッチは、コントロール信号によって制御可能であり、BFN104からアンテナポート110を選択的に切り離すことができる(図7a参照)。代替的に、スイッチブロックは、直接的にビーム形成ネットワーク104の一部であってもよい(図7b参照)。スイッチは、校正プロセスの期間中、単一のアレイポートmを単一のRFポートpに選択的に接続する役割を果たし得る。
【0036】
代替的に、スイッチブロックの代わりに、選択されたアンテナ素子における(DUT100の受信モードでの)LNAまたは(DUT100の送信モードでの)PAは、異なるアンテナ素子間の分離を増大させるために直接的にスイッチオフされ得る(スイッチオフは、LNAまたはPAに依存するが、例えば30db高い分離を意味し得る)。このような場合、各アンテナ素子にある各LNAもしくはPA、又は(例えばビーム形成ネットワーク104に含まれる)複数のLNAもしくはPAは、コントロール信号によって一括して開閉されて、「オン」(即ち、活性)または「オフ」(即ち、非活性または不活性)に制御され得る。LNA/PAが「オン」された場合、関連するアンテナ/BFNアレイポートからの信号は、増幅されてBFNアレイポート/アンテナに送られ得る。
【0037】
上記3つの構成により、校正プロセス期間中のアレイポート110またはアンテナ素子の所望でない結合を、除去または少なくとも低減することができる。
【0038】
図8は、被試験デバイス100のマルチアンテナトランシーバの構成要素を校正/試験するための、校正/試験セットアップの概略ブロック図を示す。図8に示すように、被試験デバイス100は、反響室120に配置または位置決めされることができ、デバイス試験装置(又は制御サイト)130は、被試験デバイス100の構成要素の校正/試験を実行するために使用され得る。
【0039】
図6に関して上述したように、被試験デバイス100のマルチアンテナトランシーバは、アンテナアレイ102、アナログ・ビーム形成ネットワーク104、および少なくとも1つのRFモジュール(図8には図示せず)を備えることができる。アナログ・ビーム形成ネットワーク104は、M個のアレイポート(またはアンテナポート)110とP個のRFポート112とを含む。アンテナアレイ102、またはより正確にはアンテナアレイ102のM個のアンテナは、ビーム形成ネットワーク104のM個のアレイポート110と接続可能である。スイッチ行列136も図8に示されているが、これはビーム形成ネットワーク内に直接実装することもでき(図6B参照)、または、例えばLNAもしくはPAを制御することによって実現することができる。
【0040】
制御サイト130は、この制御サイト130のプリコーダ(ビーム形成ネットワーク)136のN個のアンテナポート134に接続されたN個のアンテナ132を備えることができる。
【0041】
次に、被試験デバイス100のマルチアンテナトランシーバ(又は送信器もしくは受信器)の構成要素(例えばアンテナ、アンテナポート、RFポート、ビーム形成ネットワーク、TXモジュール(TX=送信器)またはRXモジュール(RX=受信器))の校正/試験方法を、図8に示す校正/試験セットアップを参照して説明する。
【0042】
DUT BFN受信モード校正
図9は、一実施形態に係る、被試験デバイス100のマルチアンテナ受信器のビーム形成ネットワークを無線で校正する方法200のフローチャートを示す。例えば、方法200は、マルチアンテナ受信器のアンテナポート110の(受信方向における)下流のマルチアンテナ受信器の構成要素(すなわちビーム形成ネットワーク104)を校正/試験するために使用されてもよい。
【0043】
方法(200)は、被試験デバイス100とデバイス試験装置130との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップを含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス100またはデバイス試験装置130によって送信される。
【0044】
例えば、校正要求は被試験デバイス100自身によって発生され得る。この場合、被試験デバイス100は、校正要求を有する第1シグナリング情報をデバイス試験装置130に送信してもよい。代替的に、デバイス試験装置130によって校正要求を発生することもできる。この場合、デバイス試験装置130は、第1シグナリング情報を受信する被試験デバイス100に対し、校正要求を有する第1シグナリング情報を送信してもよい。被試験デバイス100は、第1シグナリング情報を送信または受信するや否や、(通常動作モードとは異なる)校正モードに切り替えてもよい。
【0045】
例えば、第1シグナリング情報はBFN_CALIBRATION_REQUESTメッセージであってもよい。
【0046】
さらに、方法200は、第1シグナリング情報に応答して、被試験デバイス100のマルチアンテナ受信器のアクティブアンテナポート110とデバイス試験装置130のアンテナポート134との間のチャネル伝達関数行列を、デバイス試験装置130から被試験デバイス100に対して無線送信される基準信号を用いて推定し、その推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出される情報を、被試験デバイス100からデバイス試験装置130へ送信するステップ204を含む。
【0047】
例えば、推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出される情報は、BFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージを使用して、デバイス試験装置130へ送信されてもよい。
【0048】
実施形態では、ステップ204は、チャネル伝達関数行列を推定するために、ビーム形成ネットワーク104の各アクティブアンテナポート110をビーム形成ネットワークの正に1つのRFポート112に接続することを含み得る。
【0049】
実施形態では、ステップ204は、被試験デバイス100のビーム形成ネットワーク104の第1グループのアンテナポートを活性化して、アクティブアンテナポートを取得する一方で、ビーム形成ネットワーク104の他のアンテナポートを非活性にすることを含み得る。これにより、第1グループのアクティブアンテナポートとデバイス試験装置130のアンテナポート134との間のチャネルを記述するチャネル伝達関数行列が取得される。
【0050】
任意選択的に、ステップ204は、被試験デバイス100のビーム形成ネットワーク104の第2グループのアンテナポート110を活性化する一方で、ビーム形成ネットワーク104の他のアンテナポートを非活性化し、かつデバイス試験装置130から被試験デバイス100に対して無線で伝送される基準信号を用いて、被試験デバイスの第2グループのアンテナポートとデバイス試験装置のアンテナポートとの間のチャネル伝達関数行列を推定し、第2グループのアクティブアンテナポートとデバイス試験装置130のアンテナポート134との間のチャネルを記述するチャネル伝達関数行列を取得することを含み得る。これらのチャネル伝達関数行列は、(例えば以前に推定されたチャネル伝達関数行列と一緒に)デバイス試験装置130に送信されることもできる。
【0051】
さらに、方法200は、プリコードされた送信要求を示す第2シグナリング情報を、被試験デバイス100とデバイス試験装置130との間で無線送信するステップ206を含み、第2シグナリング情報は被試験デバイス100またはデバイス試験装置130によって送信される。
【0052】
例えば、第2シグナリング情報はOTA_PRECODING_REQUESTメッセージであってもよい。
【0053】
さらに、第2シグナリング情報は、第1グループのアクティブアンテナポートおよび第2グループのアクティブアンテナポートのような、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器のアクティブアンテナポートを示してもよい。
【0054】
さらに、方法200は、第2シグナリング情報に応答して、推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出される情報に基づいて選択されまたは決定されたプリコーダ行列を使用して、デバイス試験装置130から被試験デバイス100へとプリコードされた基準信号を無線送信し、被試験デバイス100のマルチアンテナ受信器の各アクティブアンテナポート110の各々で基準信号を独立して受信可能な、デバイス試験装置130と被試験デバイス100との間の干渉のないチャネル(又は直交チャネル)を取得する、ステップ208を含む。
【0055】
例えば、プリコーダ行列を選択し又は決定した後で、かつ被試験デバイス100に基準信号を送信する前に、デバイス試験装置130は、基準信号の次の送信を示すOTA_PRECODING_RESPONSEメッセージを送信してもよい。
【0056】
実施形態では、ステップ208は、被試験デバイス100のビーム形成ネットワーク104の第1グループのアンテナポートを活性化し、アクティブアンテナポートを取得する一方で、ビーム形成ネットワーク104の他のアンテナポートを非活性化することができる。これにより、第1グループのアクティブアンテナポート110に対応するプリコーダ行列を使用して、プリコードされた基準信号をデバイス試験装置130から被試験デバイス100へ送信可能となり、基準信号を第1グループのアクティブアンテナポート110の各ポートで独立して受信可能とする、干渉のないチャネル(または直交チャネル)が取得される。
【0057】
任意ではあるが、ステップ208は、被試験デバイス100のビーム形成ネットワーク104の第2グループのアンテナポートを活性化する一方で、ビーム形成ネットワーク104の他のアンテナポートを非活性化することを含み得る。これにより、第2グループのアクティブアンテナポート110に対応するプリコーダ行列を使用して、プリコードされた基準信号をデバイス試験装置130から被試験デバイス100へ送信可能となり、基準信号を第2グループのアクティブアンテナポート110の各ポートで独立して受信可能にする、干渉のないチャネル(または直交チャネル)が取得される。
【0058】
実施形態では、ステップ208は、受信された基準信号を使用し、かつ特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータ(例えば、移相器および/または減衰器のための特定の値)を使用して、ビーム形成ネットワークの周波数応答を特徴付けることを含み得る。例えば、ビーム形成ネットワークの周波数応答を特徴付けるために、特定のチャネル帯域幅にわたってRFポート上で振幅および/または位相の測定を実行してもよい。ビーム形成ネットワークの周波数応答を特徴付けた後、被試験デバイス100は、任意選択的に、第3シグナリング情報(例えばBFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージ)をデバイス試験装置130へ送信してもよい。
【0059】
次に、DUT BFN受信モード校正の様々なステップをさらに詳細に説明する。
【0060】
実施形態では、制御サイト(CS)130は、BFN_CALIBRATION_REQUEST(第1シグナリング情報)メッセージをDUT100へ送信することにより、そのBFN104を校正するためにDUT100をトリガーしてもよい。DUT100がE-UTRA接続状態にあり、そのようなコマンドを受信すると、そのDUTは校正モードに入り、ステップ1に移動する。なお、DUT100は、それ自身(CSからの指示(BFN_CALIBRATION_REQUESTメッセージ)なし)でも、BFN104校正を開始できることに注目されたい。
【0061】
実施形態では、ステップ1において、DUT100は、そのBFN104のL(L≦P)個のアクティブアレイポート110を選択し、残りのアレイポート110をスイッチオフしてもよい。DUT100は、特定の位相(例えば0°)およびゲイン(例えば0dB)を、BFN104の移相器および減衰器LNAに対してそれぞれ設定してもよい。活性化された各アレイポートmが正に1つのRFポートpに接続されると仮定する。これにより、最大でP個のアンテナポートを同時に活性化することが可能であろう。この場合、L=Pとなる。これは、DUT100におけるスイッチングブロックおよびBFN104の実現可能な実装に依存することに留意されたい。L個のアクティブアレイポート110を選択するためのアルゴリズムと、移相器および減衰器のための特定の設定とは、DUT100の実装(例えば最大ゲイン、減衰なし、位相0°)に依存している。
【0062】
選択されたm番目のアクティブDUT100アレイポート110に対し、DUT100は、N個のOTA照射アンテナ132を介してCS130によって送信された基準信号(例えばCSI-RS(BS-UEリンク)またはSRS(UE-BSリンク))を用いて、O個のCSアンテナポート(O≧L)とm番目のアクティブDUTアレイポートとの間のチャネル伝達行列
(選択された周波数ビンq=1,…,Qについて)を推定してもよい。
【0063】
異なる基準信号またはCSポート134の最大数がNよりも小さい場合、
におけるN個のチャネルの測定に、連続的な切り替え方式を適用することができる。チャネル伝達行列
は、DUTアンテナ102及びOTAアンテナ132の応答を含む無響/非無響の環境120の伝播特性
と、周波数依存性のDUT100のBFN104の特性
とから成り、次式の通りである。
【数4】
【0064】
上記の手順(ステップ1)は、校正を必要とするDUTアレイポート110の全てのグループについて繰り返すことができる。チャネル測定/推定の後、DUT100は、O個のCSアンテナポート134とM個のDUTアレイポート110との間の全てのチャネルについて熟知していてもよい。O個のCSアンテナポート134とM個のDUTアレイポート110との間のチャネル伝達行列は、次式により与えられる。
【数5】
【0065】
ここで、Fcal(q),q=1,…,Qは、fm(q),m=1,…,Mを有する選択された設定のためのDUTのBFN104係数を含む対角行列であり、次式の通りである。
【数6】
【0066】
上記の手順が終了すると、DUT100は、式(2)の中の測定されたMIMOチャネル行列に関する情報を含む報告(BFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージ)を生成してもよく、それらをアップリンクセッションを介してCS130に送信する。
【0067】
実施形態では、ステップ2において、DUT100は、DUTがそのBFN104の校正を実行できるように、CS130によってプリコードされた信号の送信(OTA_PRECODING_REQUESTメッセージ(第2シグナリング情報))を要求してもよい。DUT100のアレイポート110の個数がCSアンテナポート134の個数よりも多くなり得るので、DUT100は、現在のDUT BFN校正ステップに関与する実際のDUT100のアレイポート110に関する情報(OTA_PRECODING_REQUESTメッセージ)を、CS130に通知してもよい。これらのDUTアレイポート110の個数は、CSアンテナポート134の個数以下である必要もあり得ることに留意されたい。CS130がこのような要求を受信すると、CSは、関与するDUTアレイポート110について、チャネル伝達行列
に基づいて1セットのプリコーダ行列
を計算してもよい。信号プリコーディングのための様々な手法が存在する。一例として、プリコーダ行列は、チャネル伝達行列のMoore-Penrose擬似逆行列[非特許文献8、9]によって計算することができる。
【数7】
ここで、c(q)は、特定のパワー制約を満たすスカラーである。
【0068】
プリコーダ行列は、CS130で、O個のCSアンテナポート134/N個のOTAアンテナ132を介して送られる基準シーケンスに対して適用され得る。CS130における信号プリコーディングの目的は、CS130によって送信された基準信号を各DUTアレイポート110で独立して受信可能とする、干渉のないダウンリンクチャネルを創造することである。プリコーダ行列を基準信号に適用した後、CS130は、DUT100がそのBFN104の校正を開始し得ることを示すOTA_PRECODING_RESPONSEメッセージをDUT100に送信することによって、DUT100に通知してもよい。
【0069】
実施形態では、ステップ3において、選択されたDUT100のアレイポート110についてBFN104の校正が第2ステージで行われる。DUT100は、校正に関与するアレイポート110を選択してもよく、残りのアレイポートをスイッチオフし、特定の校正手順に関して、BFN104の移相器および減衰器に対して特定の値を設定する。有利なことは、関与するDUTアレイポート110は、ステップ2からの選択されたDUTアレイポート110と同じであることに留意されたい。
【0070】
各設定について、DUT100は、BFN104の周波数応答を特徴付けるために、特定のチャネル帯域幅にわたってRFポート112上で振幅および位相の測定を実行してもよい。校正手順の詳細なステップ(特定の位相値およびゲイン値の設定)は、DUT100の構成に依存することに留意されたい。BFN104の周波数応答を決定するために使用される測定期間もまた、DUT100の構成に依存する。
【0071】
DUT100が測定を終了したとき、DUT100は、現在の校正ステップに関する情報を含む、BFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージをCS130へ送信してもよい。さらに、DUTは、残りのDUTアレイポート110の校正を実行できるように、プリコーダ行列を変更するための要求をCS130送信してもよい(ステップ2を参照)。
【0072】
実施形態では、CS130は、ステップ1の期間中、選択されたアクティブアレイポート、及び移相器と減衰器との設定について、DUTに通知してもよい。
【0073】
実施形態では、CS130は、ステップ1において、選択されたアンテナポートについてのチャネル伝達行列を、DUT BFN104の移相器および減衰器のための異なる設定を用いて再推定するように、DUT100に対して要求を送信してもよい。このようにして、式(4)におけるチャネル逆転を適用するとき、LNAの飽和効果を低減できるとともに、異なる伝送ストリーム間の改善された分離を達成することができる。
【0074】
実施形態では、最適なDUT100方位の選択も、上記の手順に含めることができる。CS130は、送信ストリーム間の分離を改善し、アンテナパターンにおけるヌル(nulls)を回避するために、DUT100方位の変更を要求(可能であれば、DUTポジショナに制御コマンドを送信)することができる。
【0075】
実施形態では、CS130は、ステップ1の期間中、アンテナポート110を選択的にスイッチオフし、特定のゲイン値および位相値をそれぞれBFN104の減衰器および移相器に設定するように、DUT100に要求してもよい。
【0076】
図10は、DUT BFN受信モード校正のための方法210のフローチャートを示す。第1ステップ211では、第1シグナリング情報(例えばBFN_CALIBRATION_REQUESTメッセージ)がDUT100からCS130へ、またはCS130からDUT100へ送信され得る。第2ステップ212では、N個の直交シーケンスが、N個のOTA照射アンテナ132を介してCS130からDUT100へ送信され得る。第3ステップ213において、DUT100は、L個のアクティブアンテナポート110を選択し、そのBFN104を構成し、チャネル行列を推定する。第4ステップ214では、DUT100は、O個のCSアンテナポート134とM個のDUTアレイポート110との間の推定されたチャネルを有するBFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージを、CS130へ送信してもよい。第5ステップ215では、DUT100は、校正用の選択されたL個のDUTアレイポート110(L≦O)を示す第2シグナリング情報(例えばOTA_PRECODING_REQUESTメッセージ)をCS130に送信してもよい。第6ステップ216において、CS130はプリコーダ行列を計算し、それを直交シーケンスに適用してもよい。第7ステップ217では、CS130は、OTA_PRECODING_RESPONSEメッセージとプリコードされた直交シーケンスとをDUT100へ送信してもよい。第8ステップ218において、DUT100は、第2シグナリング情報(例えばOTA_PRECODING_REQUESTメッセージ)に示されたものと同じアクティブアンテナポートを選択し、残りのアンテナポートをスイッチオフし、そのBFN103を校正してもよい。第9ステップ219において、DUT100はそのBFN104の周波数応答を計算してもよい。第10ステップ220では、DUT100は、BFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージをCS130へ送信してもよい。第11ステップ221では、DUT100は、そのBFN104がM個のすべてのアレイポート110について校正されたかどうかを判定してもよい。M個の全てのアレイポート110についてBFN104が校正された場合には、校正/試験が終了し、そうでない場合には、ステップ5~11が繰り返される。
【0077】
DUT BFN送信モード校正
図11は、一実施形態に係る、被試験デバイス100のマルチアンテナ送信器のビーム形成ネットワークを無線で校正/試験する方法230のフローチャートを示す。例えば、方法230は、マルチアンテナ送信器のアンテナポート110の(送信方向における)上流のマルチアンテナ送信器の構成要素(すなわちビーム形成ネットワーク104)を校正/試験するために使用されてもよい。
【0078】
方法230は、被試験デバイス100とデバイス試験装置130との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップ232を含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス100またはデバイス試験装置130によって送信される。
【0079】
例えば、校正要求は被試験デバイス100自身によって発生され得る。この場合、被試験デバイス100は、校正要求を有する第1シグナリング情報をデバイス試験装置130へ送信してもよい。代替的に、デバイス試験装置130によって校正要求を発生することもできる。この場合、デバイス試験装置130は、第1シグナリング情報を受信する被試験デバイス100に対して、校正要求を有する第1シグナリング情報を送信してもよい。被試験デバイス100は、第1シグナリング情報を送信または受信するや否や、校正モード(通常動作モードとは異なる)に切り替えることができる。
【0080】
例えば、第1シグナリング情報はBFN_CALIBRATION_REQUESTメッセージであり得る。
【0081】
実施形態では、ステップ232は、被試験デバイス100とデバイス試験装置130との間で第2シグナリング情報(例えば、BFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージ)を無線で送信することを含み、このBFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージは、被試験デバイス100またはデバイス試験装置130によって送信される。このBFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージは、所要の測定精度、ビーム形成ネットワークの構成、被試験デバイス100のアンテナポートの個数及び/又はデバイス試験装置のアンテナポート134の個数のような、後続のステップで使用されるパラメータを示し得る。
【0082】
さらに、方法230は、第1シグナリング情報に応答して、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器のアクティブアンテナポート110とデバイス試験装置のアンテナポート134との間のチャネル伝達関数行列を、被試験デバイス100からデバイス試験装置130に無線で送信された基準信号を用いて推定するステップ234を含む。
【0083】
例えば、基準信号は、校正の開始を示すBFN_CALIBRATION_STARTメッセージと一緒に、被試験デバイス100からデバイス試験装置110へと送信され得る。
【0084】
実施形態では、ステップ234は、チャネル伝達関数行列を推定するために、ビーム形成ネットワーク104の各アクティブアンテナポート110を、ビーム形成ネットワークの正に1つのRFポート112に接続することを含み得る。
【0085】
実施形態では、ステップ234は、被試験デバイス100のビーム形成ネットワーク104の第1グループのアンテナポートを活性化してアクティブアンテナポートを取得する一方で、ビーム形成ネットワーク104の他のアンテナポートを非活性化することを含み得る。これにより、第1グループのアクティブアンテナポートとデバイス試験装置130のアンテナポート134との間のチャネルを記述するチャネル伝達関数行列が取得される。
【0086】
任意選択的に、ステップ234は、被試験デバイス100のビーム形成ネットワーク104の第2グループのアンテナポート110を活性化する一方で、ビーム形成ネットワーク104の他のアンテナポートを非活性化すること、及び、被試験デバイス100からデバイス試験装置130に無線で送信される基準信号を使用して、被試験デバイス100の第2グループのアンテナポートとデバイス試験装置のアンテナポート134との間のチャネル伝達関数行列を推定し、第2グループのアクティブアンテナポート110とデバイス試験装置130のアンテナポート134との間のチャネルを記述するチャネル伝達関数行列を取得すること、を含み得る。
【0087】
実施形態では、ステップ234は、チャネル伝達関数行列の推定が終了したことを示す第3シグナリング情報を、デバイス試験装置130から被試験デバイス100へ無線で送信することを含み得る。
【0088】
例えば、第3シグナリング情報はBFN_CALIBRATION_FINISHEDメッセージであってもよい。
【0089】
さらに、方法230は、推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出された情報を用いて、イコライザ行列を選択または推定するステップ236を含む。
【0090】
実施形態では、ステップ236は、校正データ要求を示す第4シグナリング情報を、被試験デバイス100からデバイス試験装置130へ無線で送信することを含み得る。ここで、イコライザ行列またはそれから導出された情報は、第4シグナリング情報に応答して、デバイス試験装置130から被試験デバイス100に送信される。
【0091】
例えば、第4シグナリング情報はBFN_CALIBRATION_DATA_REQUESTメッセージであってもよい。さらに、イコライザ行列またはそれから導出された情報は、BFN_CALIBRATION_DATA_RESPONSEメッセージを使用して、デバイス試験装置130から被試験デバイス100へ送信され得る。
【0092】
続いて、DUT BFN送信モード校正の異なるステップをさらに詳細に説明する。
【0093】
実施形態では、CS130は、BFN104校正要求メッセージ(BFN_CALIBRATION_REQUESTメッセージ(第1シグナリング情報))をDUT100へ送信してもよい。このメッセージは、CSアンテナポート134構成に関する情報を含み得る。代替的に、BFN校正は、BFN_CALIBRATION_REQUESTメッセージをCS130へ送信することで、DUT100によって直接トリガーされてもよい。DUT100またはCS130のいずれかがDUT校正を開始する場合、CS130とDUT100との間で以下の校正情報が(BFN_CALIBRATION_REQUESTメッセージおよび/またはBFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージを使用して)シグナリングされてもよい。例えば、校正情報は、CS130による測定ごとに満たされるべき所要の測定精度を含んでもよい。さらに、校正情報は、BFN構成(PとMの間のリンクの数、たとえば減衰器ステップ、移相器ステップ、PAゲインステップの数などリンク当たりの可能な設定の数)を含んでもよい。さらに、校正情報は、DUT100およびCS130におけるアンテナポート110、134の個数を含んでもよい。さらに、校正情報は、チャネル帯域幅を含んでもよい(典型的には、全てに割り当てられたチャネルを用いたBFN周波数応答の測定(全チャネル帯域幅にわたるCSI-RSまたはSRSの測定)を意図することに留意されたい)。
【0094】
実施形態では、DUT100/CS130はBFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージを受信してもよく、ここで、DUT100およびCS130は以下のステップを実行できる。
【0095】
実施形態では、例えば第1ステップにおいて、DUT100が各測定u(u=1,…,U)のためにL個のアクティブアレイポート110を選択し、残りのアレイポート110をスイッチオフしてもよい。このとき、各活性化アレイポートは正に1つのRFポート112と接続される。DUT100は、特定の位相値およびゲイン値を有するBFN104を構成してもよい。アレイポートおよびBFN設定(位相およびゲインの値)の選択は、DUT100実装に依存する。
【0096】
実施形態では、例えば第2ステップにおいて、BFN104を構成した後、DUT100は、(複数の)活性化DUTアレイポート110について(複数の)基準シーケンスを送信し、BFN_CALIBRATION_STARTメッセージ(特定の測定のための活性化DUTアレイポートのラベリングを含む)をCS130へ送信してもよい。
【0097】
実施形態では、例えば第3ステップにおいて、CS130は、DUT100から送られた受信シーケンスについて測定を行い、L個の活性化DUTアレイポート110とO個のCSアンテナポート134/N個のOTAアンテナ132との間の広帯域チャネル行列を推定してもよい。m番目のアクティブDUTアレイポートのチャネル伝達行列
は、q番目の周波数ビンにおける、無響室または非無響室の伝搬特性
と、選択された設定についての周波数依存性のDUT及びOTAアンテナ応答とBFN104の特性
とから構成される。
【数8】
【0098】
実施形態では、例えば第4ステップにおいて、チャネル推定段階の後、CS130は、DUT100のアンテナポート110およびBFN104設定の選択されたセットアップについての測定が終了したことを示すBFN_CALIBRATION_FINISHEDメッセージを、DUT100に送信してもよい。
【0099】
実施形態では、例えば第5ステップにおいて、DUTがBFN_CALIBRATION_FINISHEDメッセージを受信したとき、DUTは任意選択的に他のセットのアクティブDUTアレイポートとBFN設定とを選択する。
【0100】
実施形態では、例えば第6ステップにおいて、ステップ1~5を全てのDUTアレイポート110およびBFN104設定について繰り返すことができる。
【0101】
実施形態では、例えば第7ステップにおいて、全ての測定が完了した後、DUT100はCS130に対し、CS130が収集された校正データをDUT100へ提供すべきことを示す、BFN_CALIBRATION_DATA_REQUESTメッセージを送ってもよい。
【0102】
実施形態では、BFN_CALIBRATION_DATA_REQUESTメッセージがある場合には、例えば第8ステップにおいて、CS130は、1セットのイコライザ行列W(q),q=1,...,Qを計算し、それらを推定されたチャネルに適用する。イコライザ行列W(q),q=1,...,Qは、RF経路、位相値およびゲイン値を持つ特定のBFN104構成s(s=0,...,S)についてのO個のCSアンテナポート134とK個のDUTアレイポート110(K≦O)との間の推定チャネル行列
【数9】
に基づいている。ここで、
は、特定のBFN構成sについてのBFN104の周波数応答を含む対角行列である。イコライザ行列は、MMSE、ZFまたは他の目的関数に基づいて計算され得る。なお、イコライザは、RF経路、位相値およびゲイン値を持つ特定のBFN構成
について計算される必要があることに留意されたい。この構成は、CS130自身によって選択されることができ、又は任意ではあるが、DUT100によってCS130へとシグナリングされてもよい。ここで、s番目のセットアップについてのBFN104の周波数応答を含むBFN校正行列が、次式によって与えられる。
【数10】
【0103】
実施形態では、例えば第9ステップにおいて、対角行列
が校正に関与する全てのセットアップおよびDUTアンテナポート110について計算されることができ、報告(BFN_CALIBRATION_DATA_RESPONSEメッセージ)の中でDUT100に送信され得る。
【0104】
図12は、DUT BFN送信モード校正のための方法240のフローチャートを示す。第1ステップ241では、第1シグナリング情報(例えばBFN_CALIBRATION_REQUESTメッセージ)を、DUT100からCS130へ、またはCS130からDUT100へ送信できる。また、第1ステップ241では、第2シグナリング情報(例えばBFN_CALIBRATION_RESPONSEメッセージ)を、DUT100からCS130へ、またはCS130からDUT100へ送信され得る。第2ステップ242では、DUT100は、アクティブアンテナポート110を選択し、残りのアンテナポートをスイッチオフし、BFN104を構成できる。第3ステップ243において、DUTは、BFN_CALIBRATION_STARTメッセージをCS130に送信し、基準シーケンス(例えばCSI-RS、SRS)を送信できる。第4ステップ244では、CS130は、アクティブDUTアンテナポート110とO個のCSアンテナポート134との間のチャネル行列を推定することができる(測定#1)。第5ステップ245において、CS130は、第3シグナリング情報(BFN_CALIBRATION_FINISHEDメッセージ)をDUT100へ送信できる。任意の第6ステップ246において、DUT100は、異なるアクティブアンテナポート110を選択し、残りのアンテナポートをスイッチオフして、BFN104を構成できる。任意な第7ステップ247において、DUT100は、BFN_CALIBRATION_STARTメッセージをCS130に送信し、基準シーケンス(例えばCSI-RS、SRS)を送信することができる。任意選択的な第8ステップ248において、CS130は、アクティブDUTアンテナポート110とO個のCSアンテナポート134との間のチャネル行列を推定できる(測定#U)。任意選択的な第9ステップ249において、CS130は、第3シグナリング情報(BFN_CALIBRATION_FINISHEDメッセージ)をDUT100に送信できる。第10ステップ250において、DUT100は、第4シグナリング情報(BFN_CALIBRATION_DATA_REQUESTメッセージ)をCS130へ送信できる。第11ステップ251では、CS130は、DUT BFN104の周波数応答を計算できる。第12ステップ252では、CS130は、DUT BFNの応答を有する第5シグナリング情報(BFN_CALIBRATION_DATA_RESPONSEメッセージ)をDUT100に送信できる。
【0105】
DUT Rxモジュールの校正/試験
図13は、一実施形態に係る、被試験デバイス100のマルチアンテナ受信器の受信モジュールを無線で校正/試験する方法260のフローチャートを示す。例えば、方法260は、マルチアンテナ受信器のRFポート112の(受信方向における)下流側のマルチアンテナ受信器の構成要素(すなわち受信モジュール106)を校正/試験するために使用され得る。
【0106】
方法260は、被試験デバイスとデバイス試験装置との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップ262を含み、第1シグナリング情報は被試験デバイスまたはデバイス試験装置によって送信される。
【0107】
例えば、校正要求は被試験デバイス100自身によって発生され得る。この場合、被試験デバイス100は、校正要求を有する第1シグナリング情報をデバイス試験装置130へ送信してもよい。代替的に、デバイス試験装置130によって校正要求を発生することもできる。この場合、デバイス試験装置130は、第1シグナリング情報を受信する被試験デバイス100に対して、校正要求を有する第1シグナリング情報を送信してもよい。被試験デバイス100は、第1シグナリング情報を送信または受信するや否や、校正モード(通常動作モードとは異なる)に切り替えてもよい。
【0108】
例えば、第1シグナリング情報はDUT_RX_CHANNEL_MEASUREMENT_REQUESTメッセージであり得る。
【0109】
さらに、方法260は、第1シグナリング情報に応答して、被試験デバイス100のマルチアンテナ受信器のRFポート112とデバイス試験装置130のアンテナポート134との間のチャネル伝達関数行列を、デバイス試験装置130から被試験デバイス100に無線で送信される基準信号を用いて推定し、推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出される情報を被試験デバイス100からデバイス試験装置130に送信する、ステップ264を含む。
【0110】
例えば、推定されたチャネル伝達関数行列またはそこから導出された情報は、DUT_RX_CHANNEL_MEASUREMENT_RESPONSEメッセージを使用して、デバイス試験装置130に送信され得る。
【0111】
実施形態では、ステップ264は、被試験デバイス100のビーム形成ネットワーク104の一グループのアンテナポートを活性化して、アクティブアンテナポートを取得する一方で、ビーム形成ネットワーク104の他のアンテナポートを不活性にすることを含み得る。さらに、ステップ264は、アクティブアンテナポート110をRFポート112に接続することを含み得る。
【0112】
実施形態では、ステップ264は、ビーム形成ネットワークの移相器および減衰器の値のような、特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータを設定することをさらに含み得る。
【0113】
さらに、方法260は、被試験デバイス100とデバイス試験装置130との間でプリコードされた送信要求を示す第2シグナリング情報を無線で送信するステップ266を含み、第2シグナリング情報は被試験デバイス100またはデバイス試験装置130によって送信される。
【0114】
例えば、第2シグナリング情報はRECEIVER_SENSITIVITY_MEASUREMENTメッセージであり得る。
【0115】
さらに、方法260は、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器の各RFポートで独立して基準信号を受信可能にする、デバイス試験装置と被試験デバイスとの間で干渉のないチャネルを取得するために、第2シグナリング情報に応答して、推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出された情報に基づいて選択または決定されたプリコーダ行列を使用して、デバイス試験装置から被試験デバイスに基準信号を無線で送信する、ステップ268を含む。
【0116】
実施形態では、ステップ268は、被試験デバイス100の性能を特定するメトリックを測定することを含み得る。
【0117】
続いて、DUT Rxモジュールの校正/試験の様々なステップをさらに詳細に説明する。
【0118】
実施形態では、例えば第1ステップにおいて、DUT100/CS130は、受信器試験要求(DUT_RX_CHANNEL_MEASUREMENT_REQUESTメッセージ)をCS130/DUT100に送信してもよい。
【0119】
実施形態では、例えば第2ステップにおいて、DUT100は、そのBFN104を構成し、複数のアクティブDUTアレイポート100を選択し、そのBFN104の移相器および減衰器のための値を設定し得る(各アレイポート(m)がここで単一のRFポートPFに接続される必要はない)。
【0120】
実施形態では、例えば第3ステップにおいて、DUT100は、CS130によって送信されて受信された基準シーケンス(例えばCSI_RSまたはSRSシーケンス)について測定を実行し、O個のCSアンテナポート100とDUT100のP個のRFポート112との間のチャネル行列D(q)を推定できる。推定されたチャネル行列は、
【数11】
によって与えられ、ここで
は、q番目の周波数ビンにおけるBFN104の周波数応答であり、Pは活性化されたRFポート(P≦M)112の個数である。
【0121】
実施形態では、例えば第4ステップにおいて、DUT100は、測定されたマルチアンテナチャネル行列
に関する情報を含む報告(DUT_RX_CHANNEL_MEASUREMENT_RESPONSEメッセージ)を生成し、それらをアップリンクセッションを介してCSへ送信できる。
【0122】
実施形態では、例えば第5ステップにおいて、CS130は、DUT100から受信されたチャネル伝達行列
に基づいて、1セットのプリコーダ行列
を計算できる。プリコーダ行列は、CS130で送信された信号に適用されることができ、その目的は、CS130からの(プリコードされた)送信信号をDUTの各RFポート112で独立して受信可能とする、等価的に理想的な干渉のないランク-Pのダウンリンクチャネルを生成することである。
【0123】
実施形態では、例えば第6ステップにおいて、CS130で信号プリコーディングを実行した後、CS130/DUT100は、DUT100によるある性能メトリックの測定を要求してもよい。DUT100は、第2ステップのようにBFN104を設定しなければならず、DUT100の残りの構成要素は、標準動作モードと同様に動作することができる。スループット、CQI、BLER等のような、DUT100の性能を特定するいくつかのメトリックが測定され得る。さらに、CS130は、DUT100の性能に対する影響を測定するために、送信パワー、変調方式、または他の任意のパラメータを変更することができる。例えば、DUT100は、P個のRSSI(受信信号強度インジケータ)を測定し、それらをCS130に返信することができる。CS130は、DUT100からある送信パワーに対応するP個の測定されたRSSI(RECEIVER_SENSITIVITY_MEASUREMENT)を受信した後に、送信パワーを段階的に低減させてもよい。
【0124】
DUT Txモジュールの校正/試験
図14は、一実施形態による、被試験デバイス100のマルチアンテナ送信器の送信モジュールを無線で校正/試験するための方法270のフローチャートを示す。例えば、方法270は、マルチアンテナ受信器のRFポート112の(送信方向において)上流のマルチアンテナ送信器の構成要素(即ち送信モジュール106)を校正/試験するために使用され得る。
【0125】
方法270は、被試験デバイス100とデバイス試験装置130との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線で送信するステップ272を含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス100またはデバイス試験装置130によって送信される。
【0126】
例えば、校正要求は被試験デバイス100自身によって発生され得る。この場合、被試験デバイス100は、校正要求を有する第1シグナリング情報をデバイス試験装置130に送信してもよい。代替的に、デバイス試験装置130によって校正要求を発生することもできる。この場合、デバイス試験装置130は、第1シグナリング情報を受信する被試験デバイス100に対し、校正要求を有する第1シグナリング情報を送信してもよい。被試験デバイス100は、第1シグナリング情報を送信または受信するや否や、校正モード(通常動作モードとは異なる)に切り替えてもよい。
【0127】
例えば、第1シグナリング情報はDUT_TX_CHANNEL_MEASUREMENT_REQUESTメッセージであってもよい。
【0128】
さらに、方法270は、第1シグナリング情報に応答して、被試験デバイス100からデバイス試験装置130に無線で送信される基準信号を用いて、被試験デバイス100のマルチアンテナ送信器のRFポート112とデバイス試験装置130のアンテナポート134との間のチャネル伝達関数行列を推定するステップ274を含む。
【0129】
例えば、推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出された情報は、第2シグナリング情報(DUT_RX_CHANNEL_MEASUREMENT_RESPONSEメッセージ)を使用してデバイス試験装置130に送信され得る。
【0130】
実施形態では、ステップ274は、被試験デバイス100のビーム形成ネットワーク104のあるグループのアンテナポートを活性化させて、アクティブアンテナポートを取得する一方で、ビーム形成ネットワーク104の他のアンテナポートを非活性にすることを含み得る。さらに、ステップ274は、アクティブアンテナポート110をRFポート112に接続することを含み得る。
【0131】
実施形態では、ステップ274は、ビーム形成ネットワークの移相器および減衰器の値のような、特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータを設定することをさらに含み得る。
【0132】
さらに、方法270は、推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出された情報を用いて、イコライザ行列を選択または推定するステップ272を含む。
【0133】
実施形態では、方法270は、選択されまたは推定されたイコライザ行列を使用して、被試験デバイスの送信性能(例えばスループット、CQI、BLER)を特定するメトリックを測定することをさらに含み得る。
【0134】
次に、DUT Txモジュールの校正/試験の異なるステップをさらに詳細に説明する。
【0135】
実施形態では、例えば第1ステップにおいて、DUT100/CS130は、送信器試験要求(DUT_TX_CHANNEL_MEASUREMENT_REQUESTメッセージ)をCS/DUTに送信してもよい。
【0136】
実施形態では、例えば第2ステップにおいて、DUT100は、そのBFN104を構成し、アクティブDUTアレイポートを選択できる(1つのアレイポート(m)が正に1つのRFポート(p)だけに接続されている必要はない)。
【0137】
実施形態では、例えば第3ステップにおいて、DUT100は、そのP個のRFポート112について(複数の)基準シーケンスを送信できる。
【0138】
実施形態では、例えば第4ステップにおいて、CS130は、DUT100から送られた受信シーケンスについて測定を実行し、P個のRFポート112とO個のCSアンテナポート134/N個のOTAアンテナポートとの間の広帯域チャネル行列U(q)を推定してもよい。推定されたチャネル行列は、
【数12】
で与えられ、ここで、
はq番目の周波数ビンにおけるBFN104の周波数応答であり、PはアクティブRFポート112の個数(P≦M)である。
【0139】
実施形態では、例えば第5ステップにおいて、チャネル推定段階の後、CS130はDUT100に対し、測定が終了したことをシグナリングするDUT_RX_CHANNEL_MEASUREMENT_RESPONSEメッセージを送信できる。
【0140】
実施形態では、例えば第6ステップにおいて、CS130は、推定されたチャネル
に基づいて1セットのイコライザ行列W(q),q=1,...,Qを計算でき、それらを受信信号に適用する。
【0141】
実施形態では、例えば第7ステップにおいて、DUT100/CS130は、次にCS130からある性能メトリックの測定を要求してもよい。DUT100は、ステップ2のようにBFN104を設定しなければならず、DUT100の残りの構成要素は標準動作モードと同様に動作できる。スループット、CQI、BLER等のような、DUT100の性能を特定するいくつかのメトリックは、CS130で測定することができる。さらに、CS130は、DUT100の性能に対する影響を測定するために、DUT100のTxパワー、変調方式、または他の任意のパラメータの変更を要求してもよい。
【0142】
無響室におけるDUT Rx/Txアンテナ校正
図15は、一実施形態による、被試験デバイス100のマルチアンテナトランシーバのアンテナ110を無線で校正/試験するための方法280のフローチャートを示す。例えば、方法280は、マルチアンテナ受信器のアンテナポートの(送信方向における)下流または(受信方向における)上流のマルチアンテナトランシーバの構成要素(即ちアンテナ)を校正/試験するために使用され得る。
【0143】
方法280は、被試験デバイス100とデバイス試験装置130との間で校正要求を示す第1シグナリング情報を無線送信するステップ282を含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス100またはデバイス試験装置130によって送信される。
【0144】
例えば、校正要求は被試験デバイス100自身によって発生され得る。この場合、被試験デバイス100は、校正要求を有する第1シグナリング情報をデバイス試験装置130に送信してもよい。代替的に、デバイス試験装置130が校正要求を発生することもでき、この場合、デバイス試験装置130は、第1シグナリング情報を受信する被試験デバイス100に対し、校正要求を有する第1シグナリング情報を送信してもよい。被試験デバイス100は、第1シグナリング情報を送信または受信するや否や、(通常動作モードとは異なる)校正モードに切り替えてもよい。
【0145】
さらに、方法280は、マルチアンテナトランシーバの1つ(例えば正に1つ)のアクティブアンテナポート110又はマルチアンテナトランシーバの1つのRFポート112と固定のビーム形成ネットワークとを使用して、被試験デバイス100とデバイス試験装置130との間で基準信号を無線送信するステップを含み、基準信号は被試験デバイス100またはデバイス試験装置130によって送信される。
【0146】
さらに、方法280は、デバイス試験装置のアンテナと被試験デバイスのアンテナとの間の第1の相対方位について、アンテナパターンの振幅および位相のうちの少なくとも1つを測定するステップ286を含む。例えば、ステップ286は、第1の方位についてフル・ポラリメトリック・アンテナパターンの振幅及び位相を測定することを含み得る。
【0147】
さらに、方法280は、被試験デバイス100のアンテナ102とデバイス試験装置130のアンテナ132との間の相対方位を、第2の相対方位へ変更するステップ288を含む。
【0148】
さらに、方法280は、基準信号を無線送信するステップと、アンテナパターンの振幅および位相(例えばフル・ポラリメトリック・アンテナパターンの振幅および位相)のうちの少なくとも1つを測定するステップと、所定の終了基準に達するまで相対方位を変更するステップとを反復的に繰り返す、ステップ289を含む。
【0149】
実施形態では、方法280は、測定されるべきアンテナポート110またはRFポート112の個数を示す第2シグナリング情報を、被測定デバイス100からデバイス試験装置130に対して無線で送信することをさらに含み得る。
【0150】
実施形態では、方法280は、測定されたアンテナパターンを示す第3シグナリング情報を、デバイス試験装置130から被試験デバイス100に無線送信することをさらに含み得る。
【0151】
次に、無響室におけるDUT Rx/Txアンテナ校正の異なるステップをさらに詳細に説明する。
【0152】
実施形態では、DUT BFN受信モード校正およびDUT BFN送信モード校正と同様に、BFNは、固定のBFN(例えばバトラー行列:Buttler matrix)を用いて、1つのアクティブアンテナポート110または1つのアクティブRFポート112に固定される。
【0153】
実施形態では、例えば第1ステップにおいて、アンテナポート校正要求(角度の分解能またはステップの数)がDUT100またはCS130によって発生され得る。
【0154】
実施形態では、例えば第2ステップにおいて、DUT100は、測定されるべきM個またはP個のポートの個数をフィードバックできる。
【0155】
実施形態では、例えば第3ステップにおいて、CS130/DUT100は、広帯域基準シーケンス(例えばCSI-RS、SRS)の送信を開始できる。
【0156】
実施形態では、例えば第4ステップにおいて、DUT100はi番目のステップの測定された応答を返送し得る。
【0157】
実施形態では、例えば第5ステップにおいて、ポジショナがCS130により新たな角度および極性(polarization)に設定された後、第3および第4ステップを繰り返すことができる。
【0158】
実施形態では、例えば第6ステップにおいて、CS130は、パターンまたはEADFとして完全なアンテナパターンをフィードバックできる。
【0159】
非無響室/静的伝播環境におけるDUT BFN試験(デジタル部分)
図16は、一実施形態による、被試験デバイス100のデジタル部分を無線で校正/試験する方法290のフローチャートを示す。
【0160】
方法290は、校正要求を示す第1シグナリング情報を、被試験デバイス100とデバイス試験装置130との間で無線送信するステップ291を含み、第1シグナリング情報は被試験デバイス100またはデバイス試験装置130によって送信される。
【0161】
例えば、校正要求は被試験デバイス100自身によって発生され得る。この場合、被試験デバイス100は、校正要求を有する第1シグナリング情報をデバイス試験装置130に送信できる。又は、デバイス試験装置130によって校正要求を発生することができる。この場合、デバイス試験装置130は、第1シグナリング情報を受信する被試験デバイス100に対し、校正要求を有する第1シグナリング情報を送信してもよい。被試験デバイス100は、第1シグナリング情報を送信または受信するや否や、校正モード(通常動作モードとは異なる)に切り替え可能である。
【0162】
例えば、第1シグナリング情報はDUT_CALIBRATION_REQUESTメッセージであってもよい。
【0163】
さらに、方法290は、第1シグナリング情報に応答して、デバイス試験装置から被試験デバイスに無線送信された基準信号を使用して、被試験デバイス100のマルチアンテナトランシーバのアクティブアンテナポート110/RFポート112とデバイス試験装置のアンテナポート134との間のチャネル伝達関数行列を推定するステップ292を含む。
【0164】
実施形態では、ステップ292は、被試験デバイス100のビーム形成ネットワーク104のあるグループのアンテナポートを活性化して、アクティブアンテナポート/RFポートを取得する一方で、ビーム形成ネットワーク104の他のアンテナポート110を非活性にすることを含み得る。
【0165】
実施形態では、ステップ292は、特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータをハイブリッド・ビーム形成ネットワークのアナログ部分に設定することを含み得る。特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータは、例えばビーム形成ネットワークの移相器および減衰器の値であってもよい。
【0166】
実施形態では、ステップ292は、推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出された情報を被試験デバイス100からデバイス試験装置130に無線送信することを含み得る。推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから得られる情報は、DUT_CALIBRATION_RESPONSEメッセージを使用して、被試験デバイス100からデバイス試験装置130に送信され得る。
【0167】
さらに方法290は、プリコードされた送信要求を示す第2シグナリング情報を被試験デバイスとデバイス試験装置との間で無線送信するステップ293を含み、第2シグナリング情報は被試験デバイスまたはデバイス試験装置によって送信される。
【0168】
さらに方法290は、被試験デバイスのマルチアンテナ受信器の各RFポートにおいて基準信号を独立して受信可能とする、デバイス試験装置と被試験デバイスとの間で干渉のないチャネルを取得するために、第2シグナリング情報に応答して、推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出された情報に基づいて選択または決定されたプリコーダ行列を使用して、デバイス試験装置から被試験デバイスに対して基準信号を無線送信する、ステップ294を含む。
【0169】
実施形態では、この方法は、ハイブリッド・ビーム形成ネットワークのアナログ部分を特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータに設定し、マルチアンテナトランシーバのデジタル部分の校正/試験の期間中、アナログ・ビーム形成ネットワーク104の動作パラメータを固定状態で維持することを含み得る。
【0170】
従って、本方法は、特定のアナログ・ビーム形成ネットワーク・動作パラメータを示す第3シグナリング情報を、被試験デバイスからデバイス試験装置へ無線送信することを含み得る。
【0171】
実施形態では、この方法は、マルチアンテナトランシーバのデジタル部分の校正/試験の期間中、DUTがハイブリッド・ビーム形成ネットワークのデジタル部分のビーム形成ネットワーク・動作パラメータを自由に変更できることを含み得る。
【0172】
従って、本方法は、ビーム形成ネットワーク104のアナログ部分の現在の及び/又は動作中のビーム形成ネットワーク・動作パラメータを示す第4シグナリング情報を、被試験デバイスからデバイス試験装置へと無線送信することを含み得る。
【0173】
実施形態では、この方法は、マルチアンテナトランシーバまたはRFモジュールのデジタル部分の性能を特定する性能メトリックを測定することを含み得る。従って、マルチアンテナ受信器またはRFモジュールのデジタル部分の性能を特定する性能メトリックを測定するために、デバイス試験装置から被試験デバイスに無線送信される信号の送信パラメータは変更され得る。
【0174】
次に、非無響室におけるDUT BFN試験(デジタル部分)の異なるステップをさらに詳細に説明する。
【0175】
実施形態では、例えば第1ステップにおいて、DUT100/CS130は受信器試験要求(DUT_CALIBRATION_REQUESTメッセージ)をCS130/DUT100に送信する。この要求はまた、DUT BFNについての所定の設定を含み得る。
【0176】
実施形態では、例えば第2ステップにおいて、DUT100は、BFN104を構成し、いくつかのアクティブDUTアレイポート110を選択でき、そのBFN104の移相器および減衰器の値を、(CS130からシグナリングされ得る)所定のセットに設定する。
【0177】
実施形態では、例えば第3ステップにおいて、DUT100は、受信された基準信号(例えばCSI_RSまたはSRSシーケンス)について測定を実行して、O個のCSアンテナポート134/N個のOTAアンテナ132とDUT100のP個のRFポート112との間のチャネル行列D(q)を推定してもよい。
【0178】
実施形態では、例えば第4ステップにおいて、DUT100は測定されたMIMOチャネル行列
に関する情報を含む報告(DUT_CALIBRATION_RESPONSEメッセージ)を生成し、アップリンクセッションまたは他のデータ交換インタフェースを介してCS130に送信する。
【0179】
実施形態では、例えば第5ステップにおいて、CS130はDUT100からの推定されたチャネル伝達行列
に基づいて、1セットのプリコーダ行列
を計算できる。プリコーダ行列はCS130で送信信号に適用されることができ、その目的は、CSからの(プリコードされた)送信信号を各RFポート112で独立して受信可能な、等価的に理想的な干渉のないランク-Pのダウンリンク/アップリンクチャネルを生成することである。CS130/DUT100は、例えばスループットのような性能メトリックの測定(DUT_PERFTEST_REQUEST)を送信/発生する。CS130は、送信/受信信号に対し、プリコーダ
【数13】
を適用できる。ここで、HTは、(例えば3GPPにおいて使用される任意のチャネルモデルのような)マルチパス伝搬チャネルの時間変化するフル・ポラリメトリック記述を表し、CS側のO個のアンテナのアンテナパターンと、DUT側のP個の結果的または予め定義されたアンテナ/ポートパターンとを含む。この動作モードでは、DUT100は、時刻tにおいて、選択されたBFN104設定に関する決定をCS130に返信する一方で、BFN104のアナログ部分を実際にステップ2のように維持してもよい。このようにして、P個の結果的なアンテナパターンをCS側のデータベースから算出または取得でき、それらを伝搬チャネル(行列HT)に埋め込むことができる。このようにして、HTは、BFN104に関するDUT100の決定に基づいて適応的に変更され得る。試験時間にわたって、CS130は、例えばパワー、変調、チャネルの特性などの送信パラメータを変更できる。この動作モード中、DUTのアナログBFNの設定を固定できない場合、P(q)を修正するために、DUT100からのフィードバック・アナログBFN設定をCS130で適用してもよい。
【0180】
換言すると、非無響室内のDUT BFN試験(デジタル部分)は、実環境において受信器(全体)を試験することを可能にする。実環境は、現実的な伝搬チャネル(例えば3GPPチャネルモデルなど)を用いて生成できる。これにより、このチャネルはBFN104を用いて形成されたビームを考慮可能となる。これは、DUTがBFN104に対して(通常)適用するであろう設定を示す、DUT100からのフィードバック情報を使用して計算することを含み得る。しかし、DUT100は、P個のRFポート112への無線ケーブル接続を維持するために、BFN104(ハイブリッド・ビーム形成ネットワークのアナログ部分)を固定状態で維持しなければならない。デジタル・ビーム形成は、実際には、DUT100においてRFポート112の後側(下流側)で形成される。
【0181】
換言すれば、非無響室におけるDUT BFN試験(デジタル部分)は、動作条件下でのDUTの試験、例えば実チャネルにおけるスループットに関する試験を可能にする。そのために、例えばP個のRFポートへのチャネル投影(channel projection)に起因して、DUT100(または、DUT上で動作し、DUTを制御するソフトウェア)がBFN104の設定の変更を正常に実行しようとしても、BFN104(アナログ・ビーム形成ネットワーク)は固定セッティングに設定される。しかし、適用しようとするアナログBFNのこれらの変更/設定は、CSにフィードバックされることができ、そのフィードバックはチャネル内の結果的なビームを含み得る。
【0182】
これまで非無響室/静的伝搬環境におけるDUT BFN試験(デジタル部分)を、受信器の場合について説明したが、以下で簡単に説明するように、送信器の場合についても同様である。
【0183】
17は、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器のデジタル送信器モジュールを無線で校正/試験する方法295のフローチャートを示す。方法295は、校正要求を示す第1シグナリング情報を、被試験デバイスとデバイス試験装置との間で無線送信するステップ296を含み、第1シグナリング情報は被試験デバイスまたはデバイス試験装置によって送信される。方法295は、第1シグナリング情報に応答して、被試験デバイスのマルチアンテナ送信器のアクティブアンテナポートまたはRFポートとデバイス試験装置のアンテナポートとの間のチャネル伝達関数行列を、被試験デバイスからデバイス試験装置に無線送信される基準信号を使用して推定するステップ297をさらに含む。方法295は、推定されたチャネル伝達関数行列またはそれから導出された情報を用いて、イコライザ行列を選択または推定するステップ298をさらに含む。
【0184】
従って、マルチパス伝搬チャネルをエミュレートするために被試験デバイスとデバイス試験装置との間の伝搬チャネルが変化する場合であっても、マルチアンテナ受信器のデジタル送信器モジュールを校正/試験する期間中、マルチアンテナ送信器のアナログ・ビーム形成ネットワークは、特定のビーム形成ネットワーク・パラメータに設定され、その設定された特定のビーム形成ネットワーク・パラメータに固定状態で維持される。その場合、第3シグナリング情報が被試験デバイスからデバイス試験装置に対して無線送信され得る。第3シグナリング情報は、通常の動作モードにおけるアナログ・ビーム形成ネットワークをマルチパス伝播チャネルに適応させるために、被試験デバイスがエミュレートされたマルチパス伝播チャネルに対応して通常の動作モードにおいてアナログ・ビーム形成ネットワークに適用するであろう、特定のビーム形成ネットワーク・動作パラメータを示している。
【0185】
さらなる実施形態
複数のアンテナを備えた無線通信デバイスは、全体的な性能および適合性に関して校正および検査されなければならない。これらのデバイスは、典型的には、デバイスインタフェースが利用可能でもアクセス可能でもないように、高度に集積されている。本明細書に記載された実施形態は、アナログ、デジタルおよびハイブリッドのビーム形成ネットワークを備えた集積されたDUTのための、任意の実験室環境における非破壊試験および校正手法を提供する。新たな試験および校正手法のためのフィードバック・スキームも提供する。
【0186】
本発明の様々な要素および特徴は、1つ以上の汎用または専用プロセッサによる指令の実行を通じて、アナログおよび/またはデジタル回路を使用するハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして実施され得る。例えば、本発明の実施形態は、コンピュータシステムまたは他の処理システムの環境において実施されてもよい。図18は、コンピュータシステム400の一例を示す。これらのユニット又はモジュールと、これらユニットによって実行される方法のステップは、1つ以上のコンピュータシステム400上で実行できる。コンピュータシステム400は、専用または汎用のデジタル信号プロセッサのような1つ以上のプロセッサ402を含む。プロセッサ402は、バスまたはネットワークのような通信インフラ404に接続されている。コンピュータシステム400は、メインメモリ406、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)と、二次メモリ408、例えばハードディスクドライブ及び/又はリムーバブルストレージドライブを含む。二次メモリ408は、コンピュータプログラム又は他の指令がコンピュータシステム400内にロードされることを許可してもよい。コンピュータシステム400は、コンピュータシステム400と外部デバイスとの間でソフトウェアおよびデータを伝送することを可能にするための通信インタフェース410をさらに含み得る。通信は、通信インタフェースによって扱われることが可能な電子、電磁、光、または他の信号の形態であってもよい。通信は、ワイヤまたはケーブル、光ファイバ、電話回線、携帯電話リンク、RFリンク、および他の通信チャネル412を使用してもよい。
【0187】
「コンピュータプログラム媒体」および「コンピュータ読み取り可能な媒体」という用語は、一般に、ハードディスクドライブにインストールされたリムーバブルストレージユニットまたはハードディスクなどの有形の記録媒体に言及するために使用される。これらのコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム400にソフトウェアを提供するための手段である。コンピュータ制御ロジックとも呼ばれるコンピュータプログラムは、メインメモリ406及び/又は二次メモリ408に記憶される。コンピュータプログラムは、通信インタフェース410を介して受信されてもよい。コンピュータプログラムは、実行されたとき、コンピュータシステム400が本発明を実施することを可能にする。特に、コンピュータプログラムは、実行されたとき、プロセッサ402が本明細書に記載された方法のいずれかのような本発明のプロセスを実施することを可能にする。したがって、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム400のコントローラを表現することができる。本発明の開示がソフトウェアを使用して実施される場合、ソフトウェアはコンピュータプログラムに格納され、リムーバブルストレージドライブ、コミュニケーションインターフェイス410のようなインタフェースを用いてコンピュータシステム400にロードされてもよい。
【0188】
ハードウェアまたはソフトウェアにおける実装は、デジタル記録媒体、例えば、クラウドストレージ、フロッピー(登録商標)ディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROMまたはフラッシュメモリを使用して実行することができ、それらには、それぞれの方法が実行されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働可能な)電子的に読み取り可能なコントロール信号が記憶されている。したがって、デジタル記録媒体はコンピュータ読み取り可能であってもよい。
【0189】
本発明によるいくつかの実施形態は、本明細書に記載された方法の1つが実行されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働でき、電子的に読み取り可能なコントロール信号を有するデータキャリアを含む。
【0190】
一般に、本発明の実施形態は、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で動作するときに方法の1つを実行するように動作するプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実装されてもよい。プログラムコードは、例えば機械読み取り可能キャリアに記憶されてもよい。
【0191】
他の実施形態は、本明細書に記載された方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを含み、機械読み取り可能キャリアに記憶される。換言すれば、本発明の方法の一実施形態は、したがって、コンピュータプログラムがコンピュータ上で動作するときに、本明細書に記載された方法の1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0192】
従って、本発明の方法のさらなる実施形態は、本明細書に記載の方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを記録したデータキャリア(またはデジタル記録媒体またはコンピュータ読み取り可能な媒体)である。従って、本発明の方法のさらなる実施形態は、本明細書に記載の方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号のシーケンスである。データストリームまたは信号のシーケンスは、例えばインターネットを介するなど、データ通信接続を介して伝送されるように構成されてもよい。さらなる実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するように構成されまたは適合された、例えばコンピュータ、またはプログラマブル・ロジックデバイスなどの処理手段を含む。さらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するコンピュータプログラムをインストールしたコンピュータを含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、プログラマブル・ロジックデバイス(例えばフィールドプログラマブル・ゲートアレイ)を用いて、本明細書に記載の方法の機能の一部または全部を行うことができる。いくつかの実施形態では、フィールドプログラマブル・ゲートアレイは、本明細書で説明される方法のうちの1つを実行するために、マイクロプロセッサと協働してもよい。一般に、これらの方法は、任意のハードウェア装置によって実行されることが好ましい。
【0194】
上記の実施形態は、本発明の原理を説明するためのものに過ぎない。本明細書に記載された構成および細部の修正および変形は、当業者には明らかであることが理解されよう。したがって、本発明の意図は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、本明細書の実施形態の記載および説明の方式で提示された特定の詳細によって限定されるものではない。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18