(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】喫煙品に含有させるための材料
(51)【国際特許分類】
A24B 15/30 20060101AFI20221109BHJP
A24B 15/12 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A24B15/30
A24B15/12
(21)【出願番号】P 2020538058
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 GB2019050073
(87)【国際公開番号】W WO2019138240
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-07-20
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500252844
【氏名又は名称】ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BRITISH AMERICAN TOBACCO (INVESTMENTS) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ベニング、ジョスリン
(72)【発明者】
【氏名】テスファッツィオン、ビニアム
(72)【発明者】
【氏名】コバーン、スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ランス、アリス
(72)【発明者】
【氏名】コーツ、ステファン
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-523556(JP,A)
【文献】国際公開第2016/110689(WO,A1)
【文献】特開2015-091767(JP,A)
【文献】ROEMER, E. et al.,Scientific assessment of the use of sugars as cigarette tobacco ingredients: A review of published and other publicly available studies,Critical Reviews in Toxicology,Informa Healthcare USA, Inc.,2012年,Volume 42, Issue 3,244-278
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 3/12- 3/14
A24B 15/00-15/42
A24D 1/00- 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙品の使用時に発生する1つ以上のタバコ特有ニトロサミン類(TSNA類)の量を減少させる方法であって、喫煙品に組み込むための喫煙材に
アラビノース、ラムノース、ガラクトース、グルクロン酸、アロース、アルトローズ、グルコース、マンノース、グロース、イドース、タロース、プシコース、ソルボース、タガトース、リキソース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、および転化糖の内の1つ以上を含む1つ以上の単離された糖類を加えることを含む方法。
【請求項2】
喫煙品の使用の際に発生する主流煙中の1つ以上のタバコ特有ニトロサミン類(TSNA類)の量を減少させるための
アラビノース、ラムノース、ガラクトース、グルクロン酸、アロース、アルトローズ、グルコース、マンノース、グロース、イドース、タロース、プシコース、ソルボース、タガトース、リキソース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、および転化糖の内の1つ以上を含む1つ以上の単離された糖類の使用であって、1つ以上の単離された糖類が喫煙品内に組み込むための喫煙材に加えられる使用。
【請求項3】
1つ以上の単離された糖類は溶液としてまたは粒状物の形体で加えられることを特徴とする請求項
1記載の方法または請求項
2記載の使用。
【請求項4】
喫煙材はタバコを含むことを特徴とする請求項1
または3記載の方法または請求項2
または3記載の使用。
【請求項5】
1つ以上の単離された糖類はタバコに加えられることを特徴とする請求項
4記載の方法または使用。
【請求項6】
1つ以上の単離された糖類は3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%(w/w)の量で喫煙材に加えられることを特徴とする請求項1、3、
4または
5いずれか1項記載の方法または請求項2乃至
5いずれか1項記載の使用。
【請求項7】
1つ以上の単離された糖類を喫煙材に加えることにより、1つ以上のTSNA類の量を、対照喫煙品と比較して少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%または少なくとも45%減少させることを特徴とする請求項1、3、4、
5または
6記載の方法または請求項2乃至
6いずれか1項記載の使用。
【請求項8】
喫煙品に含有させるための喫煙材であって、タバコと、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸、アロース、アルトローズ、グロース、イドース、タロース、プシコース、ソルボース、タガトース、リキソース、リボース、リブロース、およびキシルロースからなる群から選択される1つ以上の単離された糖類とを含む喫煙材。
【請求項9】
1つ以上の単離された糖類はタバコに加えられることを特徴とする請求項
8記載の喫煙材。
【請求項10】
1つ以上の単離された糖類はタバコに溶液としてまたは粒状物の形体で加えられることを特徴とする請求項
9記載の喫煙材。
【請求項11】
喫煙材は3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%の1つ以上の単離された糖類(w/w)を含むことを特徴とする請求項
8乃至
10いずれか1項記載の喫煙材。
【請求項12】
喫煙品に含有させるための喫煙シート材であって、このシート材は充填材と、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸、アロース、アルトローズ、グロース、イドース、タロース、プシコース、ソルボース、タガトース、リキソース、リボース、リブロース、およびキシルロースからなる群から選択される1つ以上の単離された糖類とを含む喫煙シート材。
【請求項13】
充填材はバインダー、希釈剤および充填剤の内の1つ以上を含むことを特徴とする請求項
12記載の喫煙シート材。
【請求項14】
喫煙品に含有させるための喫煙材シートの調製方法であって、この方法は、充填材と1つ以上の単離された糖類とを含む溶液またはスラリーを調製することと、キャスティングすることと、乾燥させることとを含む方法。
【請求項15】
1つ以上の単離された糖類によって、喫煙材または喫煙シート材が組み込まれた喫煙品の使用時に発生する煙中の1つ以上のTSNA類の量が対照喫煙品と比較して減少していることを特徴とする請求項
8乃至
11いずれか1項記載の喫煙材または請求項
12または
13記載の喫煙シート材。
【請求項16】
請求項
8乃至
11いずれか1項記載の喫煙材または請求項
12または
13記載の喫煙シート材を含む喫煙品。
【請求項17】
1つ以上の単離された糖類によって、使用時発生する主流煙中の1つ以上のTSNA類の量が減少していることを特徴とする請求項
16記載の喫煙品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は喫煙品に1つ以上の糖類を含有させることに関する。
【背景技術】
【0002】
糖類は燃焼性製品にその味を良くするために使用される。通常、糖類は糖含有ケーシング液として加えられる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様では喫煙品の使用時に発生する1つ以上のタバコ特有ニトロサミン類(TSNAs)を減少させる方法が提供され、この方法は喫煙品内に組み込むための喫煙材に1つ以上の糖類を加えることを含む。
【0004】
本発明の第2の態様では喫煙品の使用の際に発生する主流煙中の1つ以上のタバコ特有ニトロサミン類(TSNA類)の量を減少させるために1つ以上の糖類を使用することが提供され、1つ以上の糖類が喫煙品内に組み込むための喫煙材に加えられる。
【0005】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、1つ以上の糖類はアラビノース、ラムノース、ガラクトース、グルクロン酸、アロース、アルトローズ、グルコース、マンノース、グロース、イドース、タロース、プシコース、フルクトース、スクロース、ソルボース、タガトース、リキソース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、転化糖およびそれらの単糖および二糖誘導体を含む誘導体の内の1つ以上を含む。
【0006】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、1つ以上の糖類は溶液としてまたは粒状物の形体で加えられる。
【0007】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、喫煙材はタバコを含む。
【0008】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、1つ以上の糖類はタバコに加えられる。
【0009】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、 1つ以上の糖類は約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%または約10%(w/w)の量で喫煙材に加えられる。
【0010】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、1つ以上のTSNA類の量は、対照喫煙品と比較して少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%または少なくとも約45%減少する。
【0011】
本発明の第3の態様では喫煙品に含有させるための喫煙材が提供され、この喫煙材はタバコとアラビノース、ラムノース、グルクロン酸、アロース、アルトローズ、グロース、イドース、タロース、プシコース、ソルボース、タガトース、リキソース、リボース、リブロース、キシルロースおよびそれらの単糖および二糖誘導体を含む誘導体からなる群から選択される1つ以上の単離された糖類とを含む。
【0012】
本発明の第3の態様による一部の実施態様では1つ以上の単離された糖類はタバコに加えられる。
【0013】
本発明の第3の態様による一部の実施態様では1つ以上の単離された糖類はタバコに溶液としてまたは粒状物の形体で加えられる。
【0014】
本発明の第3の態様による一部の実施態様では喫煙材は約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%または約10%(w/w)の1つ以上の単離された糖類を含む。
【0015】
本発明の第4の態様では本発明の第3の態様による喫煙材を含む喫煙品が提供される。
【0016】
本発明の第5の態様では喫煙品に含有させるための喫煙シート材が提供され、シート材は充填材と、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸、アロース、アルトローズ、グロース、イドース、タロース、プシコース、ソルボース、タガトース、リキソース、リボース、リブロース、キシルロースおよびそれらの単糖および二糖誘導体を含む誘導体からなる群から選択される1つ以上の単離された糖類とを含む。
【0017】
本発明の第5の態様による一部の実施態様では充填材は、バインダー、希釈剤および充填剤の内の1つ以上を含む。
【0018】
本発明の第6の態様では本発明の第5の態様による喫煙材シートの調製方法が提供され、この方法は充填材と1つ以上の単離された糖類とを含む溶液またはスラリーを調製、キャストそして乾燥させることを含む。
【0019】
一部の実施態様では 本発明の第3の態様による喫煙材または本発明の第5の態様による喫煙シート材が組み込まれた喫煙品の使用時に発生する煙中の1つ以上のTSNA類の量は対照喫煙品と比較して減少する。
【0020】
本発明の第7の態様では本発明の第3の態様による喫煙材または本発明の第5の態様による喫煙シート材を含む喫煙品が提供される。一部の実施態様では第7の態様による喫煙品は喫煙品の使用時に発生する主流煙中の1つ以上のTSNA類の量が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
添付図面を参照して本発明の実施態様をあくまで例示を目的として説明する。
【
図2】グルクロン酸、L-ラムノース、L-アラビノースまたはD-ガラクトースの5%溶液が加えられたブレンドAタバコを含む喫煙品によって達成される特定の検体の減少率を相当量の対照ブレンドAタバコを含む喫煙品と比較して示したグラフである。
【
図4】転化糖の5%または10%溶液またはL-アラビノースの10%溶液が添加されたブレンドAタバコを含む喫煙品によって達成される特定の検体の減少率を相当量の対照ブレンドAタバコを含む喫煙品と比較して示したグラフである。
【
図6】L-アラビノースの10%溶液が加えられたブレンドBタバコを含む喫煙品によって達成される特定の検体の減少率を相当量の対照ブレンドBタバコを含む喫煙品と比較して示したグラフである。
【
図8】L-アラビノースの10%溶液が加えられたブレンドCタバコを含む喫煙品によって得られる特定の検体の減少率を相当量の対照ブレンドCタバコを含む喫煙品と比較して示したグラフである。
【
図10】L-アラビノースの10%溶液が加えられたブレンドDタバコを含む喫煙品によって達成される特定の検体の減少率を相当量の対照ブレンドDタバコを含む喫煙品と比較して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
タバコを含む喫煙品から生じる煙は、同定されている成分が5000を超える複雑で動的な混合物である。これらの成分は紙巻きタバコの吸い口端から出る主流煙(MS)に存在し、また副流煙(SS)の成分としてパフの間に放出される。
【0023】
主流煙の成分の少なくとも一部、例えば、芳香族アミン、フェノール類、カルボニル類、多環式芳香族炭化水素、アクリロニトリル、トルエン、イソプレン、スチレン、およびベンゼン等の揮発性炭化水素、ピリジン等の含窒素複素環式化合物、N’-ニトロソアナバシン(NAB)、N’-ニトロソアナタビン(NAT)、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)およびN’-ニトロソノルニコニン(NNN)等のタバコ特有ニトロサミン類(TSNA類)、並びにアンモニア、シアン化水素、一酸化窒素、および一酸化炭素等の無機化合物のうちの1種類以上の濃度を低減することは研究目的になり得る。
【0024】
主流煙および/または副流煙成分を選択的に低減する方法としては、例えば、生物工学的方法によって、出発物質から特定の化合物の濃度を低減する方法、異なる種類のタバコを混合する、あるいは喫煙品に加える前にタバコを処理する方法、希釈剤または充填材を含ませることによって喫煙品中のタバコの量を低減する方法、喫煙品に通気を行い、周囲の空気を喫煙品に吸引してMSを希釈する方法、およびMS成分の除去を向上させるフィルターを使用する方法が挙げられる。さらに喫煙品内に吸着剤を加えることによって、紙巻きタバコの煙から成分を選択的に除去または減少させる試みがなされている。そのような材料の1つにアカシアゴムがあり、これは喫煙品の使用時に発生する主流煙中の1つ以上のTSNA類の量を減少させることが証明されている。
【0025】
典型的には味を良くするためにタバコおよび/または喫煙品に糖類を添加することは、知られており、これは特にバーレータバコの場合であり、糖類は乾燥時に消失する。通常、糖類は糖含有ケーシング液として加えられる。
【0026】
Roemer等による総説(Critical Reviews in Toxicology、2012、 42(3):244-278)は、紙巻きタバコのタバコ成分として糖類を使用することに関する文献を評価しており、糖類(スクロース、転化糖、ハチミツ、ブドウ糖果糖液糖(HFCS)および/または白糖または黒糖)を含有させた結果、主流煙の多くの成分、NNKおよびベンゾ[a]ピレンなどに変化が見受けられなかったことを示している。2つの研究は、HFCSまたはスクロースを含む紙巻きタバコではISO喫煙様式においてNNNが減少することが報告されているが、それらの違いはより集中的なHCI(Health Canada Intense)喫煙様式では明らかにならなかった。
【0027】
喫煙品から使用時に発生する主流煙の1つ以上のタバコ特有ニトロサミンの量は、喫煙品に含有させるための喫煙材に1つ以上の糖類を組み入れることによって減少させることができることが発見された。
【0028】
減少したものの多くはニコチンで観察されるものより多く、これはその減少が糖(類)によってタバコが単に希釈された以上の結果であることを示している。さらにタバコ特有ニトロサミン類のいくつかに見られた減少は、ニコチンを除いた乾燥粒状物 (NFDPM)に見られた減少による予測より大きかった。
【0029】
「NFDPM」という用語は、当業者に理解されるような試験方法を利用して測定される当業界の用語であり、高効率粒子フィルターに捕捉された主流煙粒子状物質の重量から、フィルター上のニコチンおよび水の重量を引いたものとして定義される。通常、紙巻きタバコ1本当たりのミリグラムの重量単位で表される。
【0030】
本発明の第1の態様では喫煙品の使用時に発生する1つ以上のタバコ特有ニトロサミン類(TSNAs)を減少させる方法が提供され、この方法は喫煙品内に組み込むための喫煙材に1つ以上の糖類を加えることを含む。
【0031】
本発明の第2の態様では喫煙品の使用の際に発生する主流煙中の1つ以上のタバコ特有ニトロサミン類(TSNA類)の量を減少させるために1つ以上の糖類を使用することが提供され、1つ以上の糖類が喫煙品内に組み込むための喫煙材に加えられる。
【0032】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、1つ以上の糖類はアラビノース、ラムノース、ガラクトース、グルクロン酸、アロース、アルトローズ、グルコース、マンノース、グロース、イドース、タロース、プシコース、フルクトース、スクロース、ソルボース、タガトース、リキソース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、転化糖およびそれらの単糖および二糖誘導体を含む誘導体の内の1つ以上を含む。
【0033】
一部の実施態様では糖類の内の1つ以上はD-異性体であってもよく、一部の実施態様では糖類の内の1つ以上はL-異性体であってもよく、一部の実施態様では1つ以上の糖類は、L-アラビノース、L-ラムノース、D-ガラクトース、D-グルクロン酸または転化糖の内の1つ以上を含む。一部の実施態様では糖はアラビノースまたはL-アラビノースである。
【0034】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、1つ以上の糖類は溶液としてまたは粒状物の形体で喫煙材に加えられる。本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、1つ以上の糖類は溶液として喫煙材に加えられる。
【0035】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、喫煙材はタバコを含む。
【0036】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、1つ以上の糖類はタバコに加えられる。
【0037】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、1つ以上の糖類 約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%または約10%(w/w)の量で喫煙材に加えられる。
【0038】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、喫煙材内に組み込むための1つ以上の糖類は、1つ以上の単離された糖類である。
【0039】
「単離された」なる語は、純粋、実質的に純粋および/または混合されていない形体の糖を意味する。
【0040】
本発明の第1または第2の態様による一部の実施態様では、1つ以上のTSNA類の量は、対照喫煙品と比較して少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%または少なくとも約45%減少する。
【0041】
本発明の第3の態様では喫煙品に含有させるための喫煙材が提供され、この喫煙材はタバコとアラビノース、ラムノース、グルクロン酸、アロース、アルトローズ、グロース、イドース、タロース、プシコース、ソルボース、タガトース、リキソース、リボース、リブロース、キシルロースおよびそれらの単糖および二糖誘導体を含む誘導体からなる群から選択される1つ以上の単離された糖類とを含む。
【0042】
「単離された」なる語は、純粋である、実質的に純粋である、および/または混合されていない形体の糖を意味する。
【0043】
本発明の第3の態様による一部の実施態様では1つ以上の単離された糖類は溶液としてまたは粒状物の形体で喫煙材に加えられる。
【0044】
本発明の第3の態様による一部の実施態様では喫煙材はタバコを含む。本発明の第3の態様による一部の実施態様では1つ以上の単離された糖類はタバコに加えられる。一部のこのような実施態様では1つ以上の単離された糖類はタバコに溶液としてまたは粒状物の形体で加えられる。
【0045】
一部の実施態様ではタバコに加えられる1つ以上の単離された糖類の量は、得られる喫煙材の扱いおよび処理が簡単なまま維持される量である。1つ以上の単離された糖類が溶液としてタバコに加えられる一部の実施態様では、その溶液の濃度は、溶液の粘度がスプレーするのに充分低く、および/またはタバコが均一に溶液で浸されるが、得られる喫煙材を巻装するために要する時間が著しく長くなるのを避けるのに充分高くなるような濃度である。
【0046】
本発明の第3の態様による一部の実施態様では喫煙材は約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%または約10%(w/w)の1つ以上の単離された糖類を含む。
【0047】
一部の実施態様では第3の態様による喫煙材は、喫煙品などの燃焼性製品のタバコロッドに通常見られる部材の内の1つ以上をさらに含んでもよく、例えば、タバコ代替え品、充填材、希釈剤、バインダー、湿潤剤、風味料または風味剤またはエアロゾル発生材などがある。これらの部材はタバコおよび1つ以上の単離された糖類または1つ以上の糖類が加えられたタバコと混ぜられる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」なる用語は、喫煙材を希釈するために使用することができる材料を意味する。例えば、グリセリン、ソラネソール、ネオフィタジエン、3-メチルアニソール、オイゲノール、1-フェニル-1-ペンタノン、2,3-ジメチル-4-エチルアセトフェノン、ニコチン酸、ドコサン、ドトリアンタン、エイコサン、ネオフィタジエン、ヘンエイコサン、ヘントリアコンタン、ヘプタコサン、ヘキサコサン、ノナコサン、オクタコサン、ペンタコサン、ペンタトリアコンタン、スクアレン、テトラコサン、テトラトリアコンタン、トリアセチン、トリアコンタン、トリアコサンおよびトリトリアコンタンが挙げられる。
【0049】
本明細書中で使用する「エアロゾル発生材」なる用語は、喫煙品に組み込まれると、喫煙品を着火した際に直ぐにエアロゾルを生成または生成を促進させる物質を意味する。例としてはグリセリン、プロピレングリコールおよびトリエチレングリコールなどの多価アルコール、クエン酸トリエチル、トリアセチンまたは高沸点炭化水素などが挙げられる。
【0050】
一部の例では「希釈剤」および「エアロゾル発生材」なる用語は、同じ意味で使用できる。例えば、一部の物質または材料は喫煙材の希釈および喫煙材に組み込まれ、喫煙材が着火されると直ぐにエアロゾルを生成または生成を促進させるという両方の効果を有する。そのような材料の例としてはトリアセチンおよびグリセリンが挙げられる。
【0051】
本明細書中で使用する際の「風味」および「風味剤」なる用語は、各地の条例で許可されており、成人消費者が望む味や香りを製品に加えるのに用いることができる材料を指す。このような材料としては、抽出物(例えば、ユーカリ、カンゾウ、アジサイ、ホオノキの葉、カミツレ、フェヌグリーク、クローブ、メントール、ニホンハッカ、アニシード、シナモン、ハーブ、ヒメコウジ、サクランボ、ベリー、モモ、リンゴ、ドランブイ、バーボン、スコッチ、ウイスキー、スペアミント、ペパーミント、ラベンダー、カルダモン、セロリ、カスカリラ、ナツメグ、サンダルウッド、ベルガモット、ゼラニウム、ハチミツエキス、ローズ油、バニラ、レモン油、オレンジ油、カシア、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、イランイランノキ、セージ、ウイキョウ、ピメント、ショウガ、アニス、コリアンダー、コーヒー、ハッカ属のいずれかの種からのハッカ油など)、調味料、苦味受容体部位遮断剤、感覚受容器部位活性化剤または刺激剤、糖及び/または糖置換体(例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、サイクラミン酸塩、ラクトース、スクロース、グルコース、フルクトース、ソルビトール、マンニトールなど)や、木炭、クロロフィル、鉱物、植物息消臭剤などのその他の添加剤などが挙げられる。これら材料は模造品、合成または天然成分であってもよく、またはこれらのブレンドであってもよい。これら材料は、例えば油、液体、粉末などの任意の好適な形態であってもよい。
【0052】
一部の実施態様では 本発明の第3の態様による喫煙材が組み込まれる喫煙品の使用時に発生する煙中の1つ以上のTSNA類の量は、対照喫煙品と比較して減少する。一部の実施態様では本発明の第3の態様による喫煙材が組み込まれる喫煙品の使用時に発生する煙中の1つ以上のTSNA類の量は、対照喫煙品と比較して少なくとも約35%、少なくとも約40%または少なくとも約45%減少する。
【0053】
本発明の第3の態様による一部の実施態様では喫煙材は、1つ以上の単離された糖類に加えてアカシアゴムを含む。
【0054】
いくつかのこのような実施態様ではアカシアゴムは粒状物または片の形状であってもよい。一部のこのような実施態様ではアカシアゴムの片または粒は、直径が20μm~5mm、100μm~4mm、0.1mm~3.5mm、0.5mm~2mm、0.6mm~1.8mmまたは0.7mm~1mmであってもよい。特定の実施態様において粒子の直径は、約0.8mm(800μm)である。一部の実施態様では粒子または片は実質的にアカシアゴムを含むまたはアカシアゴムからなる。
【0055】
別の実施態様ではアカシアゴムは喫煙材の1つ以上の面にコーティングとして形成してもよい。一部の実施態様ではアカシアゴムは喫煙材のタバコ上にコーティングとして供される。
【0056】
一部の実施態様では喫煙材はアカシアゴムを喫煙材750mg当たり10mg~675mg、50mg~300mg、または約150、160、170、180、190、200、210、220または230mgの量で含む。
【0057】
一部の実施態様では本発明の第1または第2の態様による喫煙材に1つ以上の糖を加えることまたは本発明の第3の態様による喫煙材に1つ以上の単離された糖類を含有させることで、達成するTSNAの減少量に影響を与えることなく喫煙材中のアカシアゴムの量を減少させることができる。一部のこのような実施態様ではアカシアゴムの量の少なくすることで喫煙材の取り扱い性および味を向上させることができる。
【0058】
第3の態様による喫煙材は紙巻きタバコなどの喫煙品に組み込んでもよい。その結果、第4の態様において本発明の第3の態様による喫煙材を含む喫煙品が提供される。
【0059】
本発明による喫煙品は、喫煙品について知られている任意のサイズ即ち寸法に対応させてもよい。これとは別に本発明による喫煙品は、喫煙材からなる内方のコアと外方の環帯とを含む同軸のコアを含んでもよく、第3の態様による喫煙材を内方コアまたは外方環帯のどちらか一方または両方に組み込んでもよい。そのような態様では喫煙品は、内側コアおよび外側環状体のための同じまたは異なるラッパー材を含んでもよい。
【0060】
喫煙品は、典型的には吸い口端にフィルターと、喫煙材を含むロッドと、ロッドを包む紙とを含む。
【0061】
本発明による喫煙品は当業界で知られているあらゆるフィルター構造を含んでもよい。喫煙品用のフィルターは、典型的には繊維状セルロースアセテート、ポリプロピレン材料、ポリエチレン材料、またはギャザードペーパー材料のうちの1種類以上を含む。
【0062】
図1を参照すると、フィルター2と、一方の端部がフィルター2の端部に当接するようにフィルター2と位置合わせされた実質的に円筒形のタバコロッド3とを含む喫煙品1が示されている。タバコロッド3は、喫煙材と1つ以上の単離された糖類の位置を明示するために切り欠き領域を有する。タバコロッド3は、従来の方法でチッピング紙によってフィルター2に接合される。
【0063】
本発明の第5の態様では喫煙品に含有させるための喫煙シート材が提供され、シート材は充填材と、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸、アロース、アルトローズ、グロース、イドース、タロース、プシコース、ソルボース、タガトース、リキソース、リボース、リブロース、キシルロースおよびそれらの単糖および二糖誘導体を含む誘導体からなる群から選択される1つ以上の単離された糖類とを含む。
【0064】
第5の態様による一部の実施態様では喫煙シート材は、重量で少なくとも5%、6%、7%、8%、9%または10%の単離された糖類を含む。
【0065】
第5の態様による一部の実施態様では喫煙シート材は、少なくとも5%、10%,15%または20%の充填材を含む。第5の態様による一部の実施態様では喫煙シート材は、重量で20%~95%の充填材を含む。第5の態様による一部の実施態様では喫煙シート材は、重量で約25%、30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%の充填材を含む。
【0066】
「重量で」という用語は、喫煙シート材の重量で、を意味する。一部の実施態様では得られたシートは、過度に脆くはなく、従って取扱いおよび加工処理が容易になる。
【0067】
一部の実施態様では充填材は、バインダー、希釈剤、および無機充填剤等の充填剤の内の1つ以上を含む。
【0068】
バインダーの例としてはアルギン酸塩、ペクチン、セルロース化合物および親水コロイド系化合物が挙げられる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」なる用語は、喫煙材を希釈するために使用することができる材料を意味する。例えば、グリセリン、ソラネソール、ネオフィタジエン、3-メチルアニソール、オイゲノール、1-フェニル-1-ペンタノン、2,3-ジメチル-4-エチルアセトフェノン、ニコチン酸、ドコサン、ドトリアンタン、エイコサン、ネオフィタジエン、ヘンエイコサン、ヘントリアコンタン、ヘプタコサン、ヘキサコサン、ノナコサン、オクタコサン、ペンタコサン、ペンタトリアコンタン、スクアレン、テトラコサン、テトラトリアコンタン、トリアセチン、トリアコンタン、トリアコサンおよびトリトリアコンタンが挙げられる。
【0070】
充填剤の例としては、炭酸カルシウム、パーライト、バーミキュライト、珪藻土、コロイドシリカ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムおよび炭酸マグネシウムが挙げられる。
【0071】
一部の実施態様ではバインダーはアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩および/またはアカシアゴムなどのゴムであり、希釈剤はグリセリンであり、充填剤はチョークである。その結果、一部の実施態様では充填材は、アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩、アカシアゴムなどのゴム、グリセリンおよびチョークの内の1つ以上を含む。一部の実施態様では充填材はアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩またはアカシアゴムなどのゴム、チョークおよびグリセリンを含む。
【0072】
一部の実施態様ではアルギン酸ナトリウムの量は、シート材の約5重量%~約15重量%である。一部の実施態様ではアカシアゴムの量は、シート材の約5重量%~約15重量%である。一部の実施態様ではチョークの量は、喫煙シート材の約10重量%~約50重量%である。一部の実施態様ではグリセリンの量は、喫煙シート材の約5重量%~約25重量%である。
【0073】
一部の実施態様ではアルギン酸ナトリウムの量は、喫煙シート材の約7.5重量%である。一部の実施態様ではアカシアゴムの量は、喫煙材シート材の約7.5重量%である。一部の実施態様ではチョークの量は、喫煙シート材の約40重量%である。一部の実施態様ではグリセリンの量は、喫煙シート材の約12.5重量%である。
【0074】
一部の実施態様では喫煙シート材は、さらにアカシアゴムまたはさらに追加のアカシアゴムを含む。一部のこのような実施態様では喫煙シート材は、約5、7.5、10、15、20、25、30、35、40、45、40、55、60、65、70、75、80または85重量%のアカシアゴムを含んでもよい。
【0075】
一部の実施態様では喫煙シート材は、タバコを含まないか、または重量で喫煙シート材の40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%または0.5%より多いタバコを含まない。
【0076】
一部の実施態様では喫煙シート材は、800μm、700μm、600μm、550μm、500μm、400μm、200μm、180μm、100μmまたは50μmより大きいサイズの実質的に固形または粒状物質を含まない。一部の実施態様では喫煙シート材は、550μmよりも実質的に大きいサイズの固形または粒状物質を含まない。一部の実施態様では喫煙シート材は、実質的に500μmを超える大きさの固体または粒状物を重量で5%、4%、3%、2%または1%を超えて含まない。
【0077】
第6の態様では 喫煙品に含有させる喫煙材シートの調製方法が提供され、この方法は、充填材と1つ以上の単離された糖類とを含む溶液またはスラリーを調製することと、溶液またはスラリーをキャスティングすることと、溶液またはスラリーを乾燥させることとを含む。
【0078】
一部の実施態様では溶液中の1つ以上の単離された糖類の量は、溶液の固形分の重量で少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%である。
【0079】
「固形分」なる用語は、喫煙材のシートを含む溶媒以外の成分(溶媒に分散可能か溶解可能であるかを問わず)のすべてを意味する。
【0080】
この溶液は、水性溶媒を用いて調製することができる。一部の実施態様では溶媒は、水であってもよい。一部の実施態様では水は、蒸留水または脱イオン水であってもよい。
【0081】
一部の実施態様では溶液は、充填材を更に含む。一部の実施態様では充填材は、バインダー、希釈剤、および無機充填剤等の充填剤のうちの1つ以上を含む。一部の実施態様ではバインダーは、アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩および/またはアカシアゴムなどのゴム、希釈剤はグリセリンであり、充填剤はチョークである。その結果、一部の実施態様では充填材は、アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩 および/または アカシアゴムなどのゴム、グリセリンおよびチョークの内の1つ以上を含む。一部の実施態様では充填材はアカシアゴムおよび/またはアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩、グリセリンおよびチョークを含む。
【0082】
一部の実施態様では溶液中のアルギン酸ナトリウムの量は、溶液の固形分の重量で約5%~約15%である。一部の実施態様では溶液中のアカシアゴムの量は、溶液の固形分の重量で約5%~約15%である。一部の実施態様では溶液中のチョークの量は、溶液の固形分の重量で約10%~約50%である。一部の実施態様ではグリセリンの量は、溶液の固形分の重量で約5%~約25%である。
【0083】
一部の実施態様では溶液中のアルギン酸ナトリウムの量は、溶液の固形分の重量で約7.5%である。一部の実施態様では溶液中のアカシアゴムの量は、溶液の固形分の重量で約7.5%である。一部の実施態様では溶液中のチョークの量は、溶液の固形分の重量で約40%である。一部の実施態様ではグリセリンの量は、溶液の固形分の重量で約12.5%である。
【0084】
一部の実施態様では溶液中のタバコの量は、溶液の固形分の重量で40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%または0.5%以下である。一部の実施態様では溶液は、タバコを含まない。
【0085】
溶液がバインダー、希釈剤、充填剤またはタバコ等の成分をさらに含み、これらの成分の1つ以上が溶媒に可溶性でない、若しくは部分的にしか溶解しない態様では、スラリーが形成される。溶媒が水である場合、スラリーは水性スラリーとなる。
【0086】
一部の実施態様では調製された溶液またはスラリーは、流延前に、800μm、700μm、600μm、550μm、500μm、400μm、200μm、180μm、100μm、または50μmより大きいサイズの固形または粒状物質を含まない。一部の実施態様では喫煙シート材は、550μmより大きいサイズの実質的に固形または粒状物質を含まない。一部の実施態様では 500μmより大きいサイズの固形または粒状物質の量は、溶液の固形分の重量で5%、4%、3%、2%または1%以下である。
【0087】
一部の実施態様では成分のうちの1種類以上の成分を、溶媒を用いて1つ以上の別個の溶液またはスラリーとして調製し、次いで混合することができる。あるいは、溶液またはスラリーは、成分のうちの1種類以上を溶媒に混合または配合し、次いで追加の成分を添加することによって調製することができる。成分および/または成分を含む溶液またはスラリーは、強力な混合手段、例えば高剪断混合手段を用いて調製することができる。
【0088】
溶液またはスラリーは、従来の手段で、例えば流延シート上に流延し、従来の手段および条件で、例えば約80℃の温度のオーブン中、約90分間、乾燥することができる。次いで、得られたシートを、従来の手段、例えば、調節庫を用いて、約60%の相対湿度、22℃で、約24時間まで、あるいは必要ならば、更に長く、例えば48時間まで状態を整えることができる。
【0089】
一部の実施態様では本発明の第5の態様による喫煙シート材が組み込まれる喫煙品の使用時に発生する煙中の1つ以上のTSNA類の量は、対照喫煙品と比較して減少する。一部の実施態様では本発明の第5の態様による喫煙シート材が組み込まれた喫煙品の使用時発生する煙中の1つ以上のTSNA類の量は、対照喫煙品と比較して少なくとも約35%、少なくとも約38%または少なくとも約40%または少なくとも約45%減少する。
【0090】
一部の実施態様では本発明の第5の態様による喫煙シート材に1つ以上の単離された糖類を含有させることで達成されるTSNA量の減少に影響を与えずに喫煙シート材中のアカシアゴムの量を減らすことができる。一部のこのような実施態様ではアカシアゴムの量を減らすことで喫煙シート材の取り扱い性および味を向上させることができ、その結果、それが組み込まれた喫煙材の取り扱い性および味を向上させることができる。
【0091】
1つ以上の単離された糖類を含む喫煙シート材は、紙巻きタバコなどの喫煙品に組み込んでもよい。その結果、第7の態様では第5の態様による喫煙シート材を含む喫煙品が提供される。
【0092】
第7の態様による一部の実施態様では喫煙シート材は、刻まれる、粉砕されるまたは喫煙品に組み込むために適当な大きさに小さくされる。サイズの縮小は、シュレッダー等の従来の手段を用いて達成することができる。細断されたシート材は、次いで、喫煙材のタバコおよび/または他の成分と混合し、喫煙品に組み込んでもよい。
【0093】
一部の実施態様では喫煙シート材はタバコロッド内に位置する。一部の実施態様では喫煙シート材はタバコロッド内に組み込むための喫煙材の1つ以上の他の部材に加えられるまたは混ぜられる。一部の実施態様では喫煙品の喫煙材ロッド内に組み込むための喫煙材は、約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%w/wの本発明の第5の態様による喫煙シート材を含む。
【0094】
別の実施態様では喫煙シート材は喫煙材の他の部材のラッパーまたはライナーとして設けてもよい。
【0095】
一部の実施態様では本発明の第7の態様による喫煙品は、喫煙品の使用時に発生する主流煙中の1つ以上のTSNA類の量が減少する。一部の実施態様では本発明の第7の態様による喫煙品によって達成される1つ以上のTSNA類の量の減少率は、対照喫煙品と比較して少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%または少なくとも約45%である。
【0096】
一部の実施態様では本発明の第5の態様による喫煙シート材を組み込むことでTSNAの減少量に影響を与えずに喫煙材にあらゆる形状で組み込まれるアカシアゴムの量を減少させることができる。一部のこのような実施態様ではアカシアゴムの量の減少は喫煙材の取り扱い性および味を向上させることができる。
【0097】
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明によって達成されるTSNA類の量に対する効果は糖類の燃焼生成物によるTSNA前駆体の除去の結果として生じ、これによりTSNA合成ルートが遮断されることを示唆している。その減少がNFDPMの減少から予想されたよりも減少したという観測結果は、喫煙品内で起こる複雑で動的な燃焼および/または熱分解プロセス内で相乗効果が生じている可能性を示している。さらにTSNA類の減少の多くがニコチンの減少より大きかったという観測結果は、糖によるタバコの単なる希釈の結果以上にTSNA類が減少することを示している。
【0098】
さらにいかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明における喫煙材内に1つ以上の糖類または1つ以上の単離された糖類を含有させることによって達成されるTSNA減少のメカニズムは、喫煙材内にアカシアゴムを含有させることによって達成されるTSNA減少のメカニズムと異なることを示唆している。異なる動力学がそれぞれの減少工程に関与し、結果として異なる排除機構または喫煙材の熱分解プロファイルの変化をもたらしていることを示唆している。
【0099】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されたものであり、本発明を限定するものではない。
【0100】
実施例1:処理されたタバコおよび対照タバコの調製
選択された糖または単離された糖の溶液を刻みくずタバコに加えて処理タバコを調製した。4つの異なるタバコのブレンドを使用し、それぞれA、B、CおよびDとした。
【0101】
タバコに対する溶液の比は、溶液の粘度がスプレーするのに充分低く、タバコが均一に溶液で浸されるが、処理されたタバコの乾燥時間が著しく長くなるほど濡れないようにするのに充分であった。
【0102】
【0103】
糖溶液の調製
逆浸透水が入った容器に表Aに記載した量の糖を加えた。混合物を糖が溶けるまで撹拌した(約5分間)。
【0104】
タバコの調製
刻まれたくずタバコを二重円すい形混合機(DCB)のような大きな回転容器に入れた。糖溶液を篩いを介してDCB上の圧力ポットアタッチメントに入れた。ポットを空気圧下に置き、管を介して溶液をDCBに移した。タバコ上に糖溶液を均一にコーティングするためにDCBを回転させている間、溶液が2つの微細スプレーノズルを介してDCBに入れられた。この工程を溶液が全て塗布されるまで続けた。
【0105】
得られたタバコからCOMASタバコドライヤーを使用して余分な水を取り除いた。タバコを計量し、タバコドライヤーの乾燥トレイに均等に分けた。刻みくずのサンプルも取り出し、おおよその乾燥時間を算出するために水分量を測定した。COMASの温度を典型的な37.5℃に設定した。
【0106】
水分を乾燥直後、ハロゲン湿度分析計を使用して測定し、その次の日に再度その量が安定した状態に維持されていることを確認するために測定した。タバコを水分が約12~14%(紙巻きタバコの製造の使用に推奨されるレベル)に達したときにドライヤーから取り除いた。次に処理タバコを紙巻きタバコに組み込んだ。
【0107】
対照
対照タバコは、単純に対応する処理タバコを調製するために使用したのと同じ刻みくずタバコを同じ量含むものである。水だけで処理されたタバコを乾燥させた後は、同等の非処理のタバコと比較して発生した主流煙に影響がないことが以前に確立されていたので、何ら追加の処理を対照タバコには行わなかった。
【0108】
紙巻きタバコの製造:
キングサイズの紙巻きタバコをMk9自動化装置を使用して作製し、ロッドの硬度は約72%とした。紙巻きタバコは、標準的な27mmモノアセテートフィルター、シガレットペーパーおよびチッピング紙で構成した。
【0109】
喫煙様式および煙分析
紙巻きタバコを下記表Bに記載の詳細が説明されているHCI(Health Canada Intense)喫煙法を使用して喫煙した。
【0110】
【0111】
各紙巻きタバコの主流煙を分析した。5回の反復試験を行い、1回の反復試験につき5本のタバコを喫煙した。結果を対照に対する変化率で表した。
【0112】
実施例2A
上記実施例1および表1に記載の通りグルクロン酸、L-ラムノース、L-アラビノースまたはD-ガラクトースの5%溶液が加えられたタバコブレンドAから紙巻きタバコを調製した。ブレンドAを使用した対照も調製した。
【0113】
結果
図2および3は、グルクロン酸、L-ラムノース、L-アラビノースまたはD-ガラクトースの5%溶液が加えられたタバコブレンドAを含む紙巻きタバコは、同等の対照よりNNN、NAT、NAB およびNNKの量が少なかったことを明示している。
【0114】
また
図2および3は、L-ラムノース、L-アラビノースまたはD-ガラクトースの5%溶液が加えられたタバコブレンドAを含む紙巻きタバコは、同等の対照よりニコチンの量が減少したことを明示している。
【0115】
さらにグルクロン酸、L-ラムノース、L-アラビノースまたはD-ガラクトースの5%溶液が加えられたタバコブレンドAを含む紙巻きタバコでは、NNN、NATおよびNABの量がNFDPMで観察された減少量より大きく減少し、グルクロン酸、L-ラムノースおよびL-アラビノースの5%溶液が加えられたタバコブレンドAを含む紙巻きタバコではNNKの量は、NFDPMで観察された減少量より大きく減少した。
【0116】
実施例2B
転化糖の5%溶液または転化糖の10%溶液またはL-アラビノースの10%溶液が上記実施例1および表1に記載したように加えられたタバコブレンドAから紙巻きタバコを調製した。ブレンドAを使用した対照も調製した。
【0117】
結果
図4および5は転化糖の5%溶液または転化糖の10%溶液またはL-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドAを含む紙巻きタバコは、すべて同等の対照よりNNN、NAT、NAB、NNKおよびニコチンの量が減少したことを明示している。
【0118】
さらにNNN、NAT、NABおよびNNKの量は、転化糖の5%溶液または転化糖の10%溶液またはL-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドAを含む紙巻きタバコではNFDPMで観察された減少量より多く減少した。
【0119】
実施例2C
上記実施例1および表1に記載したようにL-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドBから紙巻きタバコを調製した。ブレンドBを使用した対照も調製した。
【0120】
結果
図6および7は、L-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドBを含む紙巻きタバコは、同等の対照よりNNN、NAT、NABおよびNNKの量が減少したことを明示している。
【0121】
さらにNNN、NAT、NABおよびNNKの量は、L-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドBを含む紙巻きタバコではNFDPMで観察された減少量より多く減少した。
【0122】
実施例2D
上記実施例1および表1に記載したようにL-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドCから紙巻きタバコを調製した。ブレンドCを使用した対照も調製した。
【0123】
結果
図8および9はL-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドCを含む紙巻きタバコは、同等の対照よりNNN、NAT、NABおよびNNKの量が減少したことを実証している。
【0124】
さらにNNN、NAT、NABおよびNNKの量は、L-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドCを含む紙巻きタバコではNFDPMで観察された減少量より多く減少した。
【0125】
実施例2E
上記実施例1および表1に記載したようにL-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドDから紙巻きタバコを調製した。ブレンドDを使用した対照も調製した。
【0126】
結果
図10および11は、L-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドDを含む紙巻きタバコは、同等の対照よりNNN、NAT、NAB、NNKおよびニコチンの量が減少したことを実証している。
【0127】
さらにNNN、NAT、NABおよびNNKの量は、L-アラビノースの10%溶液が加えられたタバコブレンドDを含む紙巻きタバコではNFDPMで観察された減少量より多く減少した。
【0128】
種々の問題の対処と技術の発展のため、本開示全体は種々の実施形態を例示的に示しており、これらの実施形態では特許請求された発明が実践され、喫煙品に含有させるための1つ以上の糖類および/または単離された糖類を含む喫煙材の優れた調製方法を提供することができる。本開示の利点および特徴は実施形態の単なる代表的な具体例であり、包括的でも排他的でもない。これらは特許請求された特徴の理解と教示の単なる補助に提供されている。当然だが、本開示の利点、実施形態、具体例、機能、特徴、構造、および/または他の側面は本開示を特許請求の範囲に規定されたとおりに限定するあるいは特許請求の範囲の均等物に限定すると考えるべきではなく、本開示の範囲および/または思想から乖離することなく他の実施形態を利用しても改変してもよいと考えるべきである。種々の実施形態は、開示された構成要素、成分、特徴、部品、工程、手段他の組合せを適切に備えても、これらで構成されても、基本的にこれらで構成されてもよい。また本開示は、現在は特許請求されていないが将来特許請求される可能性がある他の発明を含む。