(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】多層スタックの計測
(51)【国際特許分類】
G01B 11/14 20060101AFI20221109BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20221109BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20221109BHJP
G01B 9/02 20220101ALI20221109BHJP
【FI】
G01B11/14 G
G01B11/26 G
G01B11/24 D
G01B9/02
(21)【出願番号】P 2020545097
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 US2019019827
(87)【国際公開番号】W WO2019168982
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-11-06
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598176743
【氏名又は名称】ザイゴ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ZYGO CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】デック、レスリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】デ グルート、ピーター ジェイ.
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-506972(JP,A)
【文献】特開2011-2467(JP,A)
【文献】特表2008-501118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/14
G01B 11/26
G01B 11/24
G01B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
低コヒーレンス撮像干渉計システムを使用して試験試料について取得された試料干渉データを電子プロセッサに供給することであって、前記試験試料は、スタック内に配置された複数の層を含み、前記試料干渉データは、複数の干渉信号を含み、前記複数の干渉信号の各干渉信号は、前記試験試料上の異なる位置についての低コヒーレンス干渉信号に対応する、前記供給すること、
前記電子プロセッサが、前記試料干渉データからの前記複数の干渉信号のうちの少なくとも1つの干渉信号を周波数領域に変換すること、
前記試料干渉データからの前記周波数領域の変換された少なくとも1つの干渉信号の非線形位相変化を特定することであって、特定された非線形位相変化は、前記試験試料によって測定ビームに導入された分散の結果であ
り、
前記非線形位相変化は、前記変換された少なくとも1つの干渉信号の位相にフィットする関数を取得することにより特定される、前記特定すること、
前記周波数領域の試料干渉データから特定された非線形位相変化を除去して、補償された干渉データを生成すること、を備える方法。
【請求項2】
前記試験試料に入射するように、測定ビーム経路に沿って前記測定ビームを方向付けること、
参照表面に当たるように、参照ビーム経路に沿って参照ビームを方向付けることであって、前記測定ビームおよび前記参照ビームは、共通の光源によって放射された光から得られ、前記光は、複数の波長を含み、前記試験試料は、少なくとも複数の波長に対して部分的に透過性を有する、前記参照ビームを方向付けること、
前記参照ビームおよび前記測定ビームが前記参照表面および前記試験試料にそれぞれ当たった後に前記参照ビームと前記測定ビームとを合成して出力ビームを形成すること、
前記出力ビームを複数の検出素子を含む検出器アレイに方向付けること、
前記検出器アレイからの前記複数の干渉信号を記録すること、を備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周波数領域の試料干渉データから前記非線形位相変化を特定することは、
前記周波数領域の複数の干渉信号の少なくとも一部分の平均位相変化を取得すること、
を含み、
前記平均位相変化は、前記複数の干渉信号の前記一部分の前記周波数領域における異なる前記複数の干渉信号のすべてについての複数の位相変化の平均であり、
前記変換された少なくとも1つの干渉信号の位相にフィットする関数を取得することは、
前記平均位相変化にフィットする関数を取得すること、を含み、
前記特定された非線形位相変化を除去することは、
前記周波数領域の試料干渉データから関数を除去することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記平均位相変化にフィットする関数は、二次形式を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記平均位相変化にフィットする関数は、2よりも大きい次数の多項式を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
補償された干渉データを変換して時間領域に戻すことであって、前記時間領域の補償された干渉データは、複数の補償された干渉信号を含む、前記時間領域に戻すこと、
前記電子プロセッサが、前記時間領域の補償された干渉測定データを処理して、前記試験試料に関する情報を決定すること、を備える請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記時間領域の補償された干渉データを処理して前記試験試料に関する情報を決定することは、
前記試験試料内の第1の界面と第2の界面との間の距離を決定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記試験試料内の第1の界面と前記第2の界面との間の距離を決定することは、
前記複数の補償された干渉信号の各補償された干渉信号について、前記試験試料内の第1の界面に対応する第1の強度ピークと、前記試験試料内の第2の界面に対応する第2の強度ピークと、を特定すること、
前記複数の補償された干渉信号の各補償された干渉信号について、特定された第1の強度ピークが生じる位置と特定された第2の強度ピークが生じる位置との間の間隔を導出すること、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各補償された干渉信号について導出された間隔に基づいて、前記第1の界面と前記第2の界面との間の平行度のレベルを決定することを備える請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記時間領域の補償された干渉データを処理して前記試験試料に関する情報を決定することは、前記試験試料内の第1の界面の平面度を決定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記時間領域の補償された干渉計データを処理して前記試験試料に関する情報を決定することは、前記試験試料内の第1のプレートの厚さを決定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記時間領域の補償された干渉計データを処理して前記試験試料に関する情報を決定することは、前記試験試料内の薄膜層の厚さを決定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記試験試料内の2つのプレートがギャップによって離間され、
前記時間領域の前記補償された干渉計データを処理して前記試験試料に関する情報を決定することは、前記2つのプレート間のギャップの厚さを決定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記ギャップの3次元マップを生成することをさらに備える請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ギャップの平均厚さを決定することをさらに備える請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記スタックの初期走査を実行して前記スタック内の少なくとも1つの候補界面位置に関する情報を特定すること、
前記試験試料内の少なくとも1つの候補界面位置に関する情報に基づいて、前記測定ビームの焦点面に隣り合う前記スタックの第1の界面を位置付けるように、干渉計対物レンズおよび前記試験試料のうちの少なくとも1つを再配置すること、
前記第1の界面が前記焦点面を通過するように前記干渉計対物レンズおよび前記試験試料のうちの少なくとも1つを移動させながら、前記試料干渉データを取得すること、を備える請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記初期走査を実行することは、
前記干渉計対物レンズおよび前記試験試料のうちの少なくとも1つを相対的に移動させること、
前記干渉計対物レンズおよび前記試験試料のうちの少なくとも1つを相対的に移動させる間に、前記検出器アレイから複数の干渉信号を記録することであって、前記複数の干渉信号の各干渉信号は、前記試験試料上の異なる位置に対応し、干渉フリンジ周波数のサブナイキスト周波数でサンプリングされる、前記複数の干渉信号を記録すること、
前記複数の干渉信号から、少なくとも1つの候補界面位置を決定すること、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記初期走査を実行することは、
前記干渉計対物レンズに対する第1の位置に前記試験試料を配置すること、
前記干渉計対物レンズおよび前記試験試料のうちの少なくとも1つの相対的な第1の移動を実行すること、
前記第1の移動中に、前記検出器アレイからの第1の複数の干渉信号を記録すること、
前記干渉計対物レンズに対する第2の位置に前記試験試料を配置すること、
前記干渉計対物レンズおよび前記試験試料のうちの少なくとも1つを相対的な第2の移動を実行すること、
前記第2の移動中に、前記検出器アレイからの第2の複数の干渉信号を記録すること、
前記第1の複数の干渉信号および前記第2の複数の干渉信号から、前記少なくとも1つの候補界面位置を決定すること、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記スタック内に配置された前記複数の層のうちの少なくとも1つの層は、ガラス板である、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記スタックは、第1のプレートと、前記第1のプレートの第1の表面上に形成された誘電体膜と、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記スタックは、第1のプレートと、前記第1のプレートの第1の表面上に形成された第1の回折格子と、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の回折格子は、光を前記第1のプレート内、前記第1のプレート外、またはその両方に結合させるように構成されたで光カプラある、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記スタックは、前記第1のプレートの第2の表面上に第2の回折格子を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の回折格子は、光を前記第1のプレート内、前記第1のプレート外、またはその両方に結合させるように構成された光カプラである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記共通の光源は、白色光源を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記試料干渉データからの非線形位相変化は、前記低コヒーレンス撮像干渉計システムによって観察される波数の範囲において特定される、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
システムであって、
複数の波長にわたって光を放射するように構成された低コヒーレンス光源と、
前記光源からの光を受光し、前記光の一部分を参照ビームとして参照ビーム経路に沿って参照表面に方向付けし、前記光の別の部分を測定ビーム経路に沿って測定ビームとして試験試料に方向付けし、前記参照表面および前記試験試料からそれぞれ反射された後に前記参照ビームおよび前記測定ビームを出力ビームに合成するように構成された干渉計対物レンズと、
前記干渉計対物レンズからの出力ビームを受光し、前記試験試料に関する情報を含む試料干渉データを生成するように配置された検出器アレイであって、前記試料干渉データは、複数の干渉信号を含み、前記複数の干渉信号の各干渉信号は、前記試験試料上の異なる位置についての低コヒーレンス干渉信号に対応する、前記検出器アレイと、
前記検出器アレイと通信する電子プロセッサであって、前記試料干渉データからの前記複数の干渉信号のうちの少なくとも1つの干渉信号を周波数領域に変換するように構成される前記電子プロセッサと、を備え、
前記電子プロセッサは、前記試料干渉データからの前記周波数領域の変換された少なくとも1つの干渉信号の非線形位相変化を特定し、前記非線形位相変化は、前記試験試料によって前記測定ビームに導入された分散の結果であり、特定された非線形位相変化を前記試料干渉データから除去して、補償された干渉データを生成するようにさらに構成され
ており、
前記非線形位相変化は、前記変換された少なくとも1つの干渉信号の位相にフィットする関数を取得することにより特定される、システム。
【請求項28】
前記電子プロセッサは、
前記周波数領域の複数の干渉信号の少なくとも一部分の平均位相変化を取得すること、
を実行するようにさらに構成されており、
前記平均位相変化は、前記複数の干渉信号の前記一部分の前記周波数領域における異なる前記複数の干渉信号のすべてについての複数の位相変化の平均であり、
前記変換された少なくとも1つの干渉信号の位相にフィットする関数を取得することは、
前記平均位相変化にフィッティングを適用すること、
を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記平均位相変化に対するフィッティングは、二次形式を有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記平均位相変化に対するフィッティングは、2よりも大きい次数の多項式である、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記電子プロセッサは、
補償された干渉データを変換して時間領域に戻すことであって、前記時間領域の補償された干渉データは、複数の補償された干渉信号を含む、前記時間領域に戻すこと、
前記時間領域の補償された干渉測定データを処理して、前記試験試料に関する情報を決定すること、をさらに実行するように構成される、請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
前記試験試料に関する情報は、前記試験試料内の第1の界面と第2の界面との間の距離を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記試験試料内の前記第1の界面と前記第2の界面との間の距離を決定するために、前記電子プロセッサが、前記時間領域の補償された干渉データを処理することは、
前記複数の補償された干渉信号の各補償された干渉信号について、前記試験試料内の第1の界面に対応する第1の強度ピークと、前記試験試料内の第2の界面に対応する第2の強度ピークと、を特定すること、
前記複数の補償された干渉信号の各補償された干渉信号について、特定された第1の強度ピークが生じる位置と特定された第2の強度ピークが生じる位置との間の間隔を導出すること、を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記試験試料に関する情報は、前記試験試料内の第1の界面の平面度を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項35】
前記試験試料に関する情報は、前記試験試料内の第1のプレートの厚さを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項36】
前記試験試料内の2つのプレートがギャップによって離間され、前記試験試料に関する情報は、前記2つのプレート間のギャップの厚さを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項37】
前記試験試料に関する情報は、前記試験試料内の薄膜層の厚さを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項38】
前記干渉計対物レンズは、マイケルソン干渉計対物レンズを含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項39】
前記干渉計対物レンズは、ミラウ干渉計対物レンズ、リンニク干渉計対物レンズ、または広視野対物レンズを含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項40】
前記低コヒーレンス光源は、白色光源を含む、請求項27に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層スタックの計測に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブル仮想現実および/または拡張現実(VR/AR)を可能にするための物理デバイスは、典型的には、複数の平行なプレートを含むスタックを用いる。スタック内の複数の平行なプレートは、デバイスがユーザの眼の前に配置されたときに、デバイスの周辺部からの光情報が眼に運ばれて、正常な視界を妨げることなくデータまたは画像のオーバーレイを生成するように導波路として作用するように、それらの表面に適用される特徴およびコーティングを有し得る。いくつかの場合では、スタックは、各プレートが異なる色の光(たとえば、赤、緑、青)を案内する平行に配置された多くのプレートを採用する。高品質の画像を維持するには、特に、プレート間の良好な平行度を達成し、特定の表面が望ましい平面度を確保し、製造中にプレート間の特定の離間距離を維持することが重要である。しかしながら、スタック内の表面または特徴から反射される望ましくない光の影響により、そのようなパラメータの測定は困難な場合がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、多層スタックの計測に関する。
概して、幾つかの態様では、本開示の主題は、低コヒーレンス撮像干渉計システムを使用して試験試料について取得された試料干渉データを電子プロセッサに供給することであって、前記試験試料は、スタック内に配置された複数の層を含む、前記供給すること、前記電子プロセッサが、試料干渉データを周波数領域に変換すること、前記周波数領域の試料干渉データから非線形位相変化を特定することであって、非線形位相変化は、前記試験試料によって測定ビームに導入された分散の結果である、前記特定すること、前記周波数領域の試料干渉データから特定された非線形位相変化を除去して、補償された干渉データを生成すること、を含む方法で具体化され得る。
【0004】
方法の実装態様は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。例えば、幾つかの実装形態では、方法は、前記試験試料に入射するように、測定ビーム経路に沿って前記測定ビームを方向付けること、参照表面に接触するように、参照ビーム経路に沿って参照ビームを方向付けることであって、前記測定ビームおよび前記参照ビームは、共通の光源によって放射された光から得られ、前記光は、複数の波長を含み、前記試験試料は、少なくとも複数の波長に対して部分的に透過性を有する、前記参照ビームを方向付けること、前記参照ビーム及び前記測定ビームが前記参照面及び前記試験試料にそれぞれ接触した後に前記参照ビームと前記測定ビームとを合成して出力ビームを形成すること、前記出力ビームを複数の検出素子を含む検出器アレイに方向付けること、前記検出器アレイから複数の干渉信号を記録することであって、前記複数の干渉信号の各干渉信号は、前記試験試料上の異なる位置に対応し、前記試料干渉データは、複数の干渉信号を含む、前記複数の干渉信号を記録すること、を含む。
【0005】
幾つかの実装形態では、前記周波数領域の試料干渉データから前記非線形位相変化を特定することは、前記周波数領域の複数の干渉信号の少なくとも一部分の平均位相変化を取得すること、前記平均位相変化にフィットする関数を取得すること、を含み、前記特定された非線形位相変化を除去することは、前記周波数領域の試料干渉データから関数を除去することを含む。前記平均位相変化にフィットする関数は、二次形式を有し得る。前記平均位相変化にフィットする関数は、2よりも大きい次数の多項式を有し得る。
【0006】
幾つかの実装形態では、方法は、補償された干渉データを変換して時間領域に戻すことであって、前記時間領域の補償された干渉データは、複数の補償された干渉信号を含む、前記時間領域に戻すこと、前記電子プロセッサが、前記時間領域の補償された干渉測定データを処理して、前記試験試料に関する情報を決定すること、を含む。前記時間領域の補償された干渉データを処理して前記試験試料に関する情報を決定することは、前記試験試料内の第1の界面と第2の界面との間の距離を決定することを含む。前記試験試料内の第1の界面と前記第2の界面との間の距離を決定することは、前記複数の補償された干渉信号の各補償された干渉信号について、前記試験試料内の第1の界面に対応する第1の強度ピークと、前記試験試料内の第2の界面に対応する第2の強度ピークと、を特定すること、前記複数の補償された干渉信号の各補償された干渉信号について、特定された第1の強度ピークが生じる位置と特定された第2の強度ピークが生じる位置との間の間隔を導出すること、を含み得る。方法は、各補償された干渉信号について導出された間隔に基づいて、前記第1の界面と前記第2の界面との間の平行度のレベルを決定することをさらに含み得る。前記時間領域の補償された干渉データを処理して前記試験試料に関する情報を決定することは、前記試験試料内の第1の界面の平面度を決定することを含み得る。前記時間領域の補償された干渉計データを処理して前記試験試料に関する情報を決定することは、前記試験試料内の第1のプレートの厚さを決定することを含み得る。前記時間領域の補償された干渉計データを処理して前記試験試料に関する情報を決定することは、前記試験試料内の薄膜層の厚さを決定することを含み得る。前記試験試料内の2つのプレートがギャップによって離間されてもよく、前記時間領域の前記補償された干渉計データを処理して前記試験試料に関する情報を決定することは、前記2つのプレート間のギャップの厚さを決定することを含む。方法は、前記ギャップの3次元マップを生成することをさらに含み得る。方法は、前記ギャップの平均厚さを決定することをさらに含み得る。
【0007】
幾つかの実装形態では、方法は、前記スタックの初期走査を実行して前記スタック内の少なくとも1つの候補界面位置に関する情報を特定すること、前記試験試料内の少なくとも1つの候補界面位置に関する情報に基づいて、前記測定ビームの焦点面に隣り合う前記スタックの第1の界面を位置付けるように、前記干渉計対物レンズおよび前記試験試料のうちの少なくとも1つを再配置すること、前記第1の界面が前記焦点面を通過するように前記干渉計対物レンズおよび前記試験試料のうちの少なくとも1つを移動させながら、前記試料干渉データを取得すること、をさらに含み得る。前記初期走査を実行することは、前記干渉計対物レンズおよび前記試験試料のうちの少なくとも1つを相対的に移動させること、前記移動させる間に、前記検出器アレイから複数の干渉信号を記録することであって、前記複数の干渉信号の各干渉信号は、前記試験試料上の異なる位置に対応し、干渉フリンジ周波数のサブナイキスト周波数でサンプリングされる、前記複数の干渉信号を記録すること、前記複数の干渉信号から、少なくとも1つの候補界面位置を決定すること、を含み得る。前記初期走査を実行することは、前記干渉計対物レンズに対する第1の位置に前記試験試料を配置すること、前記干渉計対物レンズ及び前記試験試料のうちの少なくとも1つの相対的な第1の移動を実行すること、前記第1の移動中に、前記検出器アレイからの第1の複数の干渉信号を記録すること、前記干渉計対物レンズに対する第2の位置に前記試験試料を配置すること、前記干渉計対物レンズ及び前記試験試料のうちの少なくとも1つを相対的な第2の移動を実行すること、前記第2の移動中に、前記検出器アレイからの第2の複数の干渉信号を記録すること、前記第1の複数の干渉信号及び前記第2の複数の干渉信号から、前記少なくとも1つの候補界面位置を決定すること、を含み得る。
【0008】
幾つかの実装形態では、前記スタック内の少なくとも1つの層は、ガラス板である。
幾つかの実装形態では、前記スタックは、第1のプレートと、前記第1のプレートの第1の表面上に形成された誘電体膜と、を含む。
【0009】
幾つかの実装形態では、前記スタックは、第1のプレートと、前記第1のプレートの第1の表面上に形成された第1の回折格子と、を含む。前記第1の回折格子は、光を前記第1のプレート内、前記第1のプレート外、またはその両方に結合させるように構成された光カプラであり得る。前記スタックは、前記第1のプレートの第2の表面上に第2の回折格子を含み得る。前記第2の回折格子は、光を前記第1のプレート内、前記第1のプレート外、またはその両方に結合させるように構成された光カプラであり得る。いくつかの実装形態では、前記スタックは、複数のプレートを含んでもよく、回折格子は、前記スタックの複数のプレートの1つまたは複数の表面上に形成され得る。
【0010】
幾つかの実装形態では、前記共通の光源は、白色光源を含む。
幾つかの実装形態では、前記試料干渉データからの非線形位相変化は、前記低コヒーレンス撮像干渉計システムによって観察される波数の範囲において特定される。
【0011】
概して、幾つかの態様では、本開示の主題は、複数の波長にわたって光を放射するように構成された低コヒーレンス光源と、前記光源からの光を受光し、前記光の一部分を参照ビームとして参照ビーム経路に沿って参照表面に方向付けし、前記光の別の部分を測定ビーム経路に沿って試験試料に方向付けし、前記参照表面及び前記試験試料からそれぞれ反射された後に前記参照ビーム及び前記測定ビームを合成するように構成された干渉計対物レンズと、前記干渉計対物レンズからの出力ビームを受光し、前記試験試料に関する情報を含む試料干渉データを生成するように配置された検出器であって、前記試料干渉データは、複数の干渉信号を含み、前記複数の干渉信号の各干渉信号は、前記試験試料上の異なる位置に対応する、前記検出器と、前記検出器アレイと通信する電子プロセッサであって、前記試料干渉データを周波数領域に変換するように構成される前記電子プロセッサと、を含むシステムで具体化され得る。前記電子プロセッサは、前記周波数領域の試料干渉データから非線形位相変化を特定し、前記非線形位相変化は、前記試験試料によって前記測定ビームに導入された分散の結果であり、特定された非線形位相変化を前記試料干渉データから除去するようにさらに構成される。
【0012】
システムの実装形態は、以下の複数の特徴のうちの1つ又は複数を含み得る。例えば、幾つかの実装形態では、前記電子プロセッサは、前記周波数領域の複数の干渉信号の少なくとも一部分の平均位相変化を取得すること、前記平均位相変化にフィッティングを適用すること、を実行するようにさらに構成される。前記フィッティングは、二次形式を有し得る。前記フィッティングは、2よりも大きい次数の多項式であり得る。前記電子プロセッサは、補償された干渉データを変換して時間領域に戻すことであって、前記時間領域の補償された干渉データは、複数の補償された干渉信号を含む、前記時間領域に戻すこと、前記時間領域の補償された干渉測定データを処理して、前記試験試料に関する情報を決定すること、をさらに実行するように構成され得る。前記試験試料に関する情報は、前記試験試料内の第1の界面と第2の界面との間の距離を含み得る。前記試験試料内の前記第1の界面と前記第2の界面との間の距離を決定するために、前記電子プロセッサが、前記時間領域の補償された干渉データを処理することは、前記複数の補償された干渉信号の各補償された干渉信号について、前記試験試料内の第1の界面に対応する第1の強度ピークと、前記試験試料内の第2の界面に対応する第2の強度ピークと、を特定すること、前記複数の干渉信号の各補償された干渉信号について、特定された第1の強度ピークが生じる位置と特定された第2の強度ピークが生じる位置との間の間隔を導出すること、を含み得る。前記試験試料に関する情報は、前記試験試料内の第1の界面の平面度を含み得る。前記試験試料に関する情報は、前記試験試料内の第1のプレートの厚さを含み得る。前記試験試料内の2つのプレートがギャップによって離間されてもよく、前記試験試料に関する情報は、前記2つのプレート間のギャップの厚さを含む。前記試験試料に関する情報は、前記試験試料内の薄膜層の厚さを含み得る。
【0013】
幾つかの実装形態では、前記干渉計対物レンズは、マイケルソン干渉計対物レンズを含む。
幾つかの実装形態では、前記干渉計対物レンズは、ミラウ干渉計対物レンズ、リンニク干渉計対物レンズ、または広視野対物レンズを含む。
【0014】
幾つかの実装形態では、前記低コヒーレンス光源は、白色光源を含む。
様々な態様および実装は、以下の特徴および/または利点のうちの1つ以上を有し得る。例えば、幾つかの実装形態では、本明細書において開示された技術を用いて、試験試料自体によって生じる分散などの収差を補償することができる。いくつかの実装形態において、本明細書において開示された技術は、例えば、厚い材料層を有する試験試料に起因する分散、多数の層を有する試験試料に起因する分散、層間にギャップを有する多数の層を有する試験試料に起因する分散、および/または試験試料内の表面特徴(例えば、カプラーまたは回折格子)に起因する分散を含む、試験試料に起因する非線形分散を補償するために使用されることができる。本明細書において開示される技術は、例えば、試験試料内の層の屈折率または試験試料の表面特徴、試験試料内の層の厚さまたは試験試料の表面特徴、および/または試験試料内の層間隔および複数の層の相対的配置を含む、試験試料の特性に関する先験的な知識を必要としないという点で有利であり得る。また、本明細書において開示された技術は、試験試料の測定を行う前に、非線形性を補償するために試験試料の較正を行う必要がないので、有利であり得る。1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明において記載される。他の特徴および利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、走査型白色光干渉(scanning white light interferometry : SWLI)信号の一例である。
【
図2】
図2は、SWLI信号と薄膜を含む対応する試験試料との一例である。
【
図3】
図3は、ミラウ型走査干渉計の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、光学デバイスの一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、多層スタックを有する光学デバイスの表面トポグラフィーを測定するためのプロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、分散を補償するための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【
図7A】
図7Aは、ガラス板の表面についての時間領域干渉信号を示すプロットである。
【
図7B】
図7Bは、ガラス板の表面についての時間領域干渉信号を示すプロットである。
【
図8】
図8は、干渉信号のスペクトルピーク周辺の位相変化を示すプロットである。
【
図9A-9B】
図9Aおよび
図9Bは、それぞれ、分散補償の前後にガラス板の裏面から観察される画素干渉信号を示す図である。
【
図10】
図10は、高速走査を実行して取得された干渉信号を示すプロットである。
【
図11A】
図11Aは、分散補償の前に干渉計システム内の検出器によって観察される時間領域干渉信号を示すプロットである。
【
図12A】
図12Aは、複数のガラス板のスタック内の第1の表面のトポグラフィーマップである。
【
図12B】
図12Bは、複数のガラス板のスタック内の第2の表面のトポグラフィーマップである。
【
図13】
図13は、
図12Aおよび12Bにおいてマッピングされた第1の表面と第2の表面との間のギャップ厚を示す3次元マップである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、低コヒーレンス干渉計から取得された低コヒーレンス干渉信号150の一例を示すプロットである。低コヒーレンス干渉信号150は、物体の単一の点、例えば単一の反射性界面を有するシリコン・ウェハの点から取得された複数の検出強度値を含む。強度値は、物点(object point)から反射された光と干渉計の参照物体から反射された光との間の光路長差(optical path length difference : OPD)の関数として変化する。干渉信号150は、OPDを走査することによって、例えば、光学部品および/または物体を移動させて、物体から反射する光又は参照光が進む光路を変えることによって得られる低コヒーレンス走査光干渉(coherence scanning light interferometry : CSI)信号である。
【0017】
図1では、強度値は、OPDの変化に相関する関数走査位置としてプロットされ、複数のフリンジ(fringe)152を有する干渉パターン151をマッピングする。フリンジ152は、低コヒーレンス包絡線(low coherence envelope)154に従って最大値の両側で減衰している。低コヒーレンス包絡線がない場合には、干渉パターンのフリンジは通常、広範囲の光路差にわたって同様の振幅を有する。低コヒーレンス包絡線154自体は、そのような干渉信号内には明確に現れることはないが、説明のために示されている。OPD軸に沿った干渉パターンの場所は、一般的に、ゼロ(zero)OPDの位置、例えば、物体の点から反射された光と参照物体から反射された光との間のゼロOPDに対応する走査位置または空間位置に関連付けられる。ゼロOPD走査位置は、各物点の相対的な高さ、および干渉計に対する各物点の位置に影響を与える物体自体の方向および位置を表す物体トポグラフィー(object topography)の関数である。いくつかの実施形態では、干渉信号はまた、材料の介在層によって生じる分散および吸収等の試験試料に関連する寄与を含む。
【0018】
フリンジ152の振幅を変調する低コヒーレンス包絡線154の幅は、一般的に、検出された光のコヒーレンス長に対応する。コヒーレンス長を決定する要因の中には、たとえば、光源のスペクトル・バンド幅に関係付けられる時間コヒーレンス現象と、たとえば、物体を照明する光の入射角度の範囲に関係付けられる空間コヒーレンス現象がある。典型的には、コヒーレンス長は次の場合に減少する:(a)光源のスペクトル・バンド幅が大きくなる、および/または(b)入射角度の範囲が大きくなる。データを取得するために用いられる干渉計の構成に応じて、これらのコヒーレンス現象の一方もしくは他方が優勢になってもよく、またはそれらが両方とも全体のコヒーレンス長に実質的に寄与してもよい。干渉計のコヒーレンス長は、例えば、薄膜構造ではなく、単一の反射表面を有する物体から干渉信号を取得することによって決定されることができる。コヒーレンス長は、観察された干渉パターンを変調する包絡線の半値幅として表されることができる。
【0019】
図1から分かるように、干渉信号150は、コヒーレンス包絡線の幅よりも大きく、従って、検出された光のコヒーレンス長よりも大きく変化する光路差の範囲を有する光を検出した結果として生成される。概して、低コヒーレンス干渉信号は、検出された光のコヒーレンス包絡線によって振幅変調された複数の干渉フリンジを得た結果として生成される。例えば、干渉パターンは、観察される複数の干渉フリンジの振幅が互いに対して少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも50%だけ異なるOPDの範囲にわたって取得されてもよい。例えば、フリンジ98は、フリンジ99の最大振幅よりも約50%小さい最大振幅を有する。
【0020】
低コヒーレンス干渉計は、干渉計のコヒーレンス長に匹敵するかまたはそれよりも長いOPDの範囲にわたって干渉信号を検出するように構成されることができる。例えば、検出されるOPDの範囲は、コヒーレンス長よりも少なくとも2倍大きくてもよい(例えば、コヒーレンス長よりも約3倍以上、約5倍以上、約10倍以上、約50倍以上、または約100倍以上大きい)。いくつかの実施形態では、検出された光のコヒーレンス長は、物体の特徴の高さ変化のオーダーであり、例えば、数ミクロン以下だが検出された光の公称上の波長よりも大きいオーダーである。
【0021】
図2は、物体191から取得された例示的な干渉信号190を示す概略図であり、基板192およびその上にある層、例えば薄膜(thin film)193を含む。基板192および薄膜193によってそれらの間に界面194が規定される。薄膜193の外面195によって、物体とその周囲、例えば、空気、他のガス、または真空との間の界面が規定される。複数の界面は一般的に、物体の部分間の屈折率の変化によって規定される。物体は、他の層の中でも、複数の薄膜を含んでもよい。
【0022】
干渉信号190は、界面194から生じる第1の干渉パターン196および界面195から生じる第2の干渉パターン197を含む。第1の干渉パターン196と第2の干渉パターン197は重なり合っている。たとえば、干渉パターン(196、197)の最大値は、干渉計のコヒーレンス長よりも短いOPDだけ離され、パターン(196、197)はゼロ強度の領域によって離されていない。重なり合う干渉パターンは互いに歪め合うため、重なり合う干渉パターンは誤った結果をもたらす可能性がある。
【0023】
低コヒーレンス走査干渉計として構成できる干渉計の複数の例には、マイケルソン(Michelson)、リンニク(Linnik)およびミラウ(Mirau)干渉計が含まれるが、これらに限定されない。
図3は、マイケルソン型の走査干渉計を示す。ここでは、光源モジュール205は、照明光206をビームスプリッタ208に供給し、ビームスプリッタ208は、それをミラウ干渉対物レンズアセンブリ210に向ける。照明光206は、所望のコヒーレンス長を生成するスペクトル特性を有する広帯域光源(例えば、連続広帯域光源)からの広帯域光(例えば、白色光)を含み得る。広帯域光源の例は、特に、発光ダイオード、ハロゲンランプ、アーク(arc)、ランプ、超発光ダイオード(super luminescent diodes)または白熱光源を含むが、これらに限定されない。アセンブリ210は、対物レンズ211と、参照ミラー215を規定するその小さな中央部分に反射コーティングを有する参照平面(reference flat)212と、ビームスプリッタ213と、を含む。動作中、対物レンズ211は、参照平面212を介して試験試料220に向けて照明光を集束させる。ビームスプリッタ213は、集束光の第1の部分を参照ミラー215に反射して参照光222を規定し、集束光の第2の部分を試験試料220に透過して測定光224を規定する。次に、ビームスプリッタ213は、試験試料220から反射(または散乱)された測定光を、参照ミラー215から反射された参照光と再合成させ、対物レンズ211および結像レンズ230は、合成された光を結像して検出器(例えば、多画素カメラ)240上で干渉させる。検出器からの1つまたは複数の測定信号は、コンピュータ(図示せず)に送られる。
【0024】
図3の実施形態における走査は、ミラウ干渉対物レンズアセンブリ210に結合された圧電トランスデューサ(piezoelectric transducer : PZT)260を含み、この圧電トランスデューサは、カメラの各画素における走査干渉データを提供するために(例えば、I(ζ、h)、ここで、Iは信号強度を表す干渉データであり、ζは物体表面に直交する干渉計走査座標であり、hは表面高さである)、対物レンズ211の光軸に沿って試験試料220に対してアセンブリ210全体を走査するように構成される。代替的には、PZTアクチュエータ270によって示されるように、PZTは、アセンブリ210ではなく試験試料に連結されて(coupled)、それらの間の相対移動を提供してもよい。特定の実施形態では、走査は、対物レンズ211の光軸に沿って参照ミラー215およびビームスプリッタ213の一方または両方を対物レンズ211に対して移動させることによって提供され得る。
【0025】
光源モジュール205は、空間的に拡大される光源(spatially extended source)201と、レンズ202および203によって形成される望遠鏡(telescope)と、(レンズ203の後部焦点面と一致する)レンズ202の前部焦点面に配置された絞り(stop)204と、を含む。この構成は、ケーラー撮像(Koehler imaging)の一例であるミラウ干渉対物レンズアセンブリ210の瞳面245に空間的に拡大される光源を結像する。絞り204のサイズは、試験試料220上の照明野(illumination field)のサイズを制御する。いくつかの実施形態では、光源モジュールは、空間的に拡大される光源が、クリティカル撮像(critical imaging)として知られる試験試料上に直接結像される構成を含み得る。どちらのタイプの光源モジュールも、リンニク型走査干渉分光システムなどの他のタイプの干渉計を用いて使用されてもよい。
【0026】
図4は、本明細書において開示される干渉計などの走査干渉計を使用して分析されるデバイス300の一例を示す概略図である。デバイス300は、例えば、ユーザの眼の前に配置されたときに、AR/VRデバイスの周辺部(periphery)から画像光情報を運び、正常な視覚を妨げることなくデータまたは画像のオーバーレイを生成するために眼に光を向ける導波路構造として人工現実(artificial reality : AR)/仮想現実(virtual reality : VR)デバイスにおいて使用されてもよい。本明細書では試験試料とも呼称されるデバイス300は、スタック内に配置された複数の層を含む。この例では、複数の層は、プレート(plate)302、304、306、308を含む。第1のプレート302は、上部第1表面314および下部第2表面320を含み得る。同様に、第2のプレート304は、上部第1表面322および下部第2表面324を含み、第3のプレート306は、上部第1表面326および下部第2表面328を含み、第4のプレート308は、上部第1表面330および下部第2表面332を含み得る。
図4には4つのプレートが示されているが、より多いかまたはより少ない数のプレートがデバイス300内に配置されてもよい。プレートは、試料保持部312によって定位置に保持される。スタック内の1つ以上のプレートは、対応するギャップ(gap)(例えば、ギャップ310)によってスタック内の隣接するプレートから離間されてもよい。1つ以上のプレートのスタックはまた、スタックのいずれかの端に、またはスタック全体において個別のプレート上に形成された回折光学素子および/またはコーティング(coating)(図示せず)を含み得る。回折光学素子は、光を個別のプレートに結合する、および/または個別のプレートから結合する光カプラ(optical couplers)(例えば、ホログラフィック入力および出力カプラ(holographic input and out couplers))として用いられ、次に、光を移動させるための導波路として用いれれてもよい。
【0027】
いくつかの実装形態では、例えば、AR/VR用途では、デバイス300内の複数のプレートの平行度を特定および制御すること、ならびに、複数のプレートのうちの1つ以上の表面の平面度、複数のプレートのうちの1つ以上の表面粗さ、およびプレート間の距離(例えば、ギャップ厚)などの他のデバイス特性を測定および制御することが有用であり得る。CSIには、デバイス300などのスタックされたデバイスを測定するための計測技術としていくつかの利点がある。たとえば、CSIは連続広帯域光源(例えば、発光ダイオード、ハロゲンランプ、白熱光源)の使用に依存することが多いため、光学フィルタなどの標準的な光学コンポーネントを使用して入射光スペクトルを調整することは容易である。さらに、CSIにおいて、広帯域スペクトルは、ギャップによって離間された層を有する光デバイスにおいて特に懸念される光路差が光源のコヒーレンス長を超えるキャビティからの干渉を自然に抑制する。
【0028】
それにもかかわらず、CSIを使用して、デバイス300のようなギャップによって離間された複数の層を有する光学デバイスの表面トポグラフィーを測定することは、いくつかの理由から困難である可能性がある。例えば、界面が互いに近い場合、界面が近いことによって重なり合う干渉パターンが生成されて、干渉信号の歪みが生じることがある。場合によっては、複数の介在層(intervening layers)によって、信号分散および吸収の量が増加する。たとえば、複数のガラスプレートの比較的大きなスタックでは、吸収と散乱によって光が損失して、干渉信号内のピークの振幅を減衰させる。いくつかの場合では、分散は、スタック組立工程と同様に、適用された表面特徴および/またはコーティングから生じる応力(stresses)の結果であり得る。例えば、いくつかの実施態様では、複数のガラスは、ホログラフィック入出力カプラでコーティングされ、アセンブリに接着され、そのすべてによって、複数のプレートが曲げられ、場合によっては互いに接触されることさえあり得る。このような効果によって生じる分散は、測定された信号において位相遅延として現れることがある。分散が非線形である場合、正味の効果は、フリンジコントラストの損失および低コヒーレンス信号におけるコヒーレンス包絡線の広がりであり得る。複数の層のスタックが厚いほど、干渉計がスタック内をより深く走査するにつれて、分散の影響が悪化する。前述した信号非線形性は、スタック内のすべての介在層からの分散および表面特徴からの分散特性に依存し、そのような情報は、測定を実行する前には知ることができない可能性があるため、非線形性を補償するためにあらゆる種類の事前較正を実行することは困難である。
【0029】
本開示は、分散および/または干渉信号に対する他の悪影響をもたらす非線形性を補償しながら、そのような多層スタックの計測を実行する技術およびシステムに関する。概して、特定の態様では、本開示は、1)多層スタックを有する試験試料から得られた試料干渉データを周波数領域に変換すること、2)周波数領域の試料干渉データから非線形位相変化を特定すること(非線形位相変化は、試験試料によって測定ビームに導入された分散の結果である)、および3)特定された非線形位相変化を周波数領域の試料干渉データから除去して補償された干渉データを生成することを含む技術をカバーする。次いで、補償された干渉データは、時間領域に再び変換され、そこから表面トポグラフィー及び表面分離などの試験試料に関する情報が抽出されることができる。代替的にはまたは追加的には、計測データは、時間領域に変換して戻す前に、補償された干渉データから抽出されてもよい。
【0030】
図5は、
図3のミラウ干渉計などのCSI干渉計を使用して、デバイス300などの多層スタックを有する光学デバイスの表面トポグラフィーを測定するためのプロセス(500)の一例を示すフローチャートである。本明細書で説明されるように、ミラウ干渉計の光源201は、比較的広い帯域幅(例えば、約100nm以上)を有する光源を含む広帯域光源とすることができ、例えば、発光ダイオード、ハロゲンランプ、アークランプ、白熱光源などを含み得る。例えば、光源は、電磁スペクトル(例えば、白色光)の可視部分にあってもよい。
【0031】
光源201からの測定光は、例えばスタック内に配置された複数の層を有するデバイス300を含む試験試料220に入射するように、測定ビーム経路に沿って方向付けられる(502)。例えば、
図4に示されるように、測定光316は、光軸318に沿ってデバイス300の第1の表面314に方向付けられる。光軸318は、デバイス300の第1の表面314に対して垂直であり得る。光316がデバイス300を通過するとき、光316の一部は、異なる屈折率の領域間の各界面で反射する。
【0032】
本明細書において説明されるように、デバイス300の複数の層は、測定光の1つまたは複数の波長に対して少なくとも半透過性(semi-transparent)を有するプレートを含み得る。例えば、戻ってくる光によって所望の計測性能を達成するためにノイズに対して十分な信号を有する干渉信号が生成されることができるように、使用される光は、吸収または散乱からの損失が十分に小さいプレート材料および表面を通過することができる。プレートは、例えば、ガラスプレートを含み得る。スタック内の1つ以上のプレートは、
図3に示されるようにギャップによってスタック内の隣接するプレートから離間されてもよい。ギャップ厚(例えば、スタック内の2つの隣接するプレートの対向する表面間の平均距離)は、約数百ナノメートルから約数ミリメートル(例えば、少なくとも約100nmよりも大きい、少なくとも約1ミクロンよりも大きい、少なくとも約10ミクロンよりも大きい、少なくとも約100ミクロンよりも大きい、少なくとも約1ミリメートルよりも大きい)の間であってもよい。スタック内の1つまたは複数のプレートは、数百ミクロンから数十ミリメートルまたはそれ以上(例えば、少なくとも約100ミクロンよりも大きい、少なくとも約500ミクロンよりも大きい、少なくとも約1ミリメートルよりも大きい、少なくとも約5ミリメートルよりも大きい、少なくとも約10ミリメートルよりも大きい)の範囲の厚さを有してもよい。いくつかの実施態様では、複数のプレートは、1つまたは複数の異なる材料の単層または多層の薄膜(thin single- or multi-layer film)でコーティングされる。例えば、複数のプレートは、交互の屈折率を有する誘電体材料の単一膜または多層膜から形成された1つまたは複数の反射防止または高反射コーティングを含み得る。いくつかの実施態様では、プレートの表面は、特定の特徴を含むように改良される。例えば、プレートの表面は、エッチングされ、エンボス加工され、又はプレートの表面上に堆積された複数の格子(例えば、複数の回折格子)を使用するホログラフィック光カプラを含むように改良されてもよい。いくつかの実装形態では、プレートの第1の表面は第1の光カプラを含み、プレートの反対側の第2の表面は第2の光カプラを含む。光カプラは、光をプレート内に結合するか、プレートの外に結合するか、またはプレートの内外に結合するように用いられ得る。複数のプレートはそれぞれ、本明細書において記載されるような膜および/またはカプラを含み得る。
【0033】
再び
図3を参照すると、広帯域光源201からの光は、ビームスプリッタ213によって、1)参照ビーム経路の参照光222を規定するために参照ミラー215に集束される第1の部分と、2)測定ビーム経路の測定光224を規定するために試験試料220に集束される第2の部分とに分けられる。参照光222は、参照表面(例えば、参照フラット212)と接触するように参照ビーム経路に沿って方向付けされる(504)。そして、試験試料220から反射(又は散乱)された測定光は、参照ミラー215からの参照光と合成(506)されて出力光を形成する。結像レンズ230および対物レンズ211は、合成された光を結像して測定信号を生成するために複数の検出素子(例えば、多画素カメラ)を有する検出器アレイ240に干渉させる。幾つかの実装形態では、参照光及び測定光が等量のガラスを通過するようにビームスプリッタが製造されて、それによってコントラストの広がりに関連する分散を低減し得る。検出器からの1つまたは複数の測定信号は、コンピュータ(図示せず)に送られる。干渉は、2つの区間(leg)の光路の差が照明コヒーレンス長以内である場合に発生する。試験試料220の各表面から干渉を得るために、試験試料220の1つ以上の表面が順にコヒーレンス条件を満たすように、電動ステージを用いて、試験試料220および/または干渉計の構成要素が光軸318に沿って走査される(
図4を参照)。
【0034】
検出器アレイから複数の干渉信号が試料干渉データを提供するために記録され(508)、検出器アレイでは、複数の干渉信号の各干渉信号が試験試料上の異なる位置に対応し、異なる検出素子によって記録される。例示的な測定において、試験試料220は、試験試料220の公称表面法線(nominal surface normal)を干渉計の光軸318に位置合わせする手段を提供する調整可能なマウント内に保持される。位置合わせプロセスは、例えば、試験試料表面および参照表面から検出器240の検出素子上に光源反射(source reflection)を結像することを含み得る。一旦位置合わせされると、電動ステージは、干渉計に最も近いスタック表面が物体空間焦点面(object space focus plane)のすぐ外側(及び右側に)になるように設定される。ステージは、カメラが干渉画像を取得している間、一定の速度で干渉計に向かって一部を移動させる。各表面が等しい経路領域を通過するとき、干渉が生じ、カメラは、例えば、2つの波面からの干渉によって生成される面強度パターン(areal intensity pattern)を含むインターフェログラム(interferograms)を記録する。干渉計は、参照区間と試験区間との間の等しい光路条件を満たす物体面での最良のフォーカスが生じるように構成されてもよい。
【0035】
インターフェログラムは、様々なステージ位置で検出器によって取得されて1つ以上の電子プロセッサ(図示せず)に提供され(510)、続いて、1つ以上の電子プロセッサは、干渉信号に対して分散補償を実行し(512)、ピークコヒーレンスコントラスト検出方法(peak-coherence contrast detection methods)、最小二乗テンプレート分析(least-squares template analysis)、または周波数領域分析などのCSI方法を使用して補正された干渉信号を処理する。表面トポグラフィー分析を実行するためのCSI方法に関するさらなる情報は、例えば、米国特許第5,398,113号明細書、米国特許第5,953,124号明細書、米国特許第8,045,175号明細書および米国特許第7,522,288号明細書において見出され、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、走査速度、カメラ速度、および照明光の平均波長が既知であると仮定すると、各表面からのインターフェログラムを分析して、表面トポグラフィーを取得することができる。その取得が走査全体でインターフェログラムを継続的に取得する場合、すべての表面間の関係情報が保持されることができる。
【0036】
図6は、インターフェログラムの形状に影響を与える試験試料によって引き起こされる分散および他の影響を補償するために1つまたは複数のプロセッサによって実行され得る例示的なプロセス(600)を示すフローチャートである。第1のステップ(602)では、干渉計システムの1つまたは複数のプロセッサが、試料干渉測定データを時間領域から周波数領域に変換する。
【0037】
たとえば、理論に縛られることを望まない場合、離散的にサンプリングされた低コヒーレンス干渉信号Iは、以下のように周波数Kの範囲にわたる干渉パターンのインコヒーレント合計(incoherent sum)として表されることができる。
【0038】
【数1】
周波数の範囲は、干渉計システムの光源のスペクトル帯域幅と、非ゼロ開口数(NA)でのインコヒーレント照明の幾何学的効果の両方の結果である。式(1)では、ζは物体表面に対して垂直な干渉計走査座標であり、Nは走査中に取得されたサンプルの数であり、qはフーリエ係数であり、jは検出器アレイの要素のインデックスであり、z、vはそれぞれ走査位置ζと周波数Kのインデックスである。干渉信号Iの包絡線全体を含む走査範囲全体にわたる均一なサンプリングを仮定すると、逆の関係は以下のように表されることができる。
【0039】
【数2】
フーリエ係数は、例えば、干渉信号に対して順方向フーリエ変換を実行することによって取得され得る。フーリエ係数は、波数および対応する位相に関して干渉データを表す複素数の形で表されることができる。
【0040】
いくつかの場合では、干渉データを周波数領域に変換する前に、干渉データからDC成分が除去される。代替的にはまたは追加的には、試験試料の選択された表面に対応する複数の干渉信号は、それらが十分に離間されている場合に分離される。それらが分散に起因して時間領域において十分に分離されない場合、及び両方の表面で経験される分散が名目上同じである場合、分散補償は、時間領域分離を改善するために実行されることができる。一例として、所定の値を超える信号強度を有する干渉データからの干渉信号は、試験試料の選択された表面の界面に対応するものとして特定され得る。所定の値よりも大きい(またはそれ以上の)信号強度を有する干渉信号は、他の残りの干渉信号の値をゼロに設定することによって分離されることができる。代替的にはまたは追加的には、時間領域の干渉信号(例えば、分離された干渉信号)は、それらを周波数領域に変換する前に時間シフトされてもよい。例えば、各画素について、時間領域の信号データは、信号のピーク振幅がデータセットの最初に存在するように時間シフトされてもよい。これは、例えば、信号の一方の側から除去されたデータが信号の他方の側にコピーされる循環バッファ(circular buffer)(またはリングシフトレジスタ)技術を使用して達成されることができる。これにより、フーリエ成分の線形位相項(linear phase term)が除去される。
【0041】
試料干渉データの周波数領域への変換に続いて、非線形位相変化が、周波数領域の試料干渉データから特定される(604)。本明細書において記載されるように、非線形位相変化は、試験試料の上または内部の複数の層および/または表面特徴によって測定ビームに導入された分散の結果であり得る。非線形位相変化の特定は、較正情報または試験試料の予測される特性からではなく、試料干渉データ自体から非線形位相変化を導出することを含む。非線形位相変化を特定することは、例えば、周波数領域における複数の干渉信号の少なくとも一部分の位相変化を取得すること(606)を含み得る。分散が空間的に独立であるか、または分散が空間的に独立であると仮定することができる場合、単一の検出素子または複数の検出素子からの干渉信号は、分散が一定であると予想される領域において測定された位相ノイズを低減するのに十分であり得る。分散の空間的独立性が仮定できない場合、分散は、各画素について個別に評価される。
【0042】
一例として、フーリエ変換されたデータにおける有用な情報の大部分は、フーリエ係数の相対的な大きさが大きい領域に含まれ得る。従って、複数の干渉信号の少なくとも一部分の位相変化を取得すること(606)は、1つまたは複数のプロセッサを用いて、十分に高い振幅を有する複数のフーリエ成分の一部分の位相を計算し、アンラップする(unwrap)こと、例えば、少なくとも所定の信号対雑音(signal to noise : S/N)比を有する波数においてフーリエ成分を選択することを含み得る。S/N比の選択は、記録されたデータに依存する。ノイズの多いデータ領域は、平均化または後処理と組み合わせて、ドロップアウト(測定されていないポイント)を回避するために低いS/N比を必要とする場合がある。クリーンなデータ領域は、許容可能な測定値を提供するために、より高いS/N比のみを必要とする場合がある。例えば、幾つかの実装形態では、許容可能な精度を有する非線形(分散)位相項は、「2」未満のフーリエ成分S/N比を使用して測定され得る。代替的には、幾つかの実装形態では、S/N比は「5」よりも大きくてもよい。試料干渉データからの位相変化は、低コヒーレンス撮像干渉計システムによって観察される波数の範囲にわたって特定され得る。有効範囲は、照明スペクトル帯域幅に依存する。例えば、より大きな帯域幅は、より大きな範囲を提供し得る。いくつかの実施態様では、位相変化を取得すること(606)は、複数の干渉信号の少なくとも一部分の平均(例えば、平均(mean)、モード(mode)、中央値(median))位相変化を導出することを含む。いくつかの実施態様では、位相変化は、(例えば、検出器の複数の画素素子にわたる)領域内の各位置について個別にかつ独立して導出されることができる。しかし、複数の位置を平均化することは、分散が領域全体で均一である場合に、測定誤差を低減するための有用な方法であり得る。干渉データ内の位相情報の評価に関する追加情報は、例えば、米国特許第5,398,113号明細書(例えば、9:44-10:54)及び米国特許第7,522,288号明細書(例えば、11:49-13:12)において見出され、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
非線形位相変化を特定することは、さらに、位相変化にフィットする(fit)関数を取得すること(608)を含み得る。例えば、上記で説明されたように、選択された波数に対する平均位相変化は、領域内の全ての画素又は一部分の画素に対して導出され得る。いくつかの実施態様では、複数の非線形位相変化が、試料表面全体における複数の領域について取得される。例えば、選択された波数にわたって複数の平均位相変化が導出されることができ、各平均は、試料表面の異なるそれぞれの領域に対応する異なる一部分の画素から導出される。幾つかの実装形態では、選択された波数は、対応する位相変化が導出される領域毎に異なることがある。材料の介在層によっておよび/または試験試料に誘起された応力によって引き起こされる分散は、多くの場合、二次位相(quadratic phase)の非線形性をもたらす場合がある。したがって、位相変化にフィットする関数(function)は、x2のような2次形式を有し得る。しかしながら、非線形位相変化は、2次以外の形式を有しても良い。さらに、「2」よりも大きい次数の多項式を有する関数、指数関数、対数関数、スプラインフィッティング(spline fits)、ガウスフィッティング(Gaussian fits)などのような他の関数を位相変化にフィッティングさせてもよい。
【0044】
非線形位相変化の特定に続いて、周波数領域における試料干渉データから特定された非線形位相変化が除去されて(610)、補償された干渉計データを生成する。例えば、特定された非線形位相変化を除去すること(610)は、各画素または一部分の画素について、試料干渉データからフィッティングされた関数データ(例えば、最良フィッティング)を取り除くことを含み得る。幾つかの実装形態では、特定された非線形位相情報がさらに分析されて、例えば(材料の屈折率は波数の非線形関数であるので)群速度屈折率(group-velocity refractive index)及び/又は層材料が既知の場合の厚さのような材料特性、並びに例えば吸収及び分散に影響する汚染物質のような材料欠陥を含む有用な情報を提供してもよい。
【0045】
非線形位相変化を除去した後、補償された試料干渉データを時間領域に戻すように変換し得る(612)。次いで、1つまたは複数のプロセッサは、本明細書において開示されるように、CSI方法を使用して表面のトポグラフィーマップ(topographical maps)などの計測情報を提供するために、補償されたインターフェログラムを処理し得る。CSIデータを使用してトポグラフィーマップを作成するための技術のさらなる例は、例えば、米国特許第5,953,124号明細書および米国特許第7,522,288号明細書において見出され、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。このように、干渉信号データ自体を用いて試験試料からの干渉信号への分散寄与を評価するので、介在物質に関する事前の知識(例えば、屈折率、分散特性または層の厚さ)は不要である。代替的にはまたは追加的には、トポグラフィーマップを含む計測情報は、(例えば、米国特許第5,398,113号明細書に記載されているもののようなものであり、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)周波数領域法を使用して、周波数領域における補償された干渉計データから導出されることができる。現在の実装形態では、分散特性は領域全体で同じであると仮定しているが、非線形項(例えば二次項)を領域の位置の関数として評価することによって、この手段は領域依存分散に拡張されることができる。
【0046】
一実施形態では、プロセッサは、補償された干渉データから、試験試料内の第1の界面と第2の界面との間の距離を決定することができる。第1の界面と第2の界面との間の距離を決定することは、例えば、補償された複数の干渉信号のうちの補償された各干渉信号について、試験試料における第1の界面(例えば、デバイス300の界面314,320,322,324,326,328,330または332のいずれか)に対応する第1の干渉パターンの第1の強度ピーク、および試験試料における異なる第2の界面(例えば、デバイス300のインターフェース314,320,322,324,326,328,330または332のいずれか)に対応する第2の干渉パターンの第2の強度ピークを特定することを含み得る。次いで、複数の干渉信号の補償された各干渉信号について、1つまたは複数のプロセッサは、第1の干渉パターンの特定された第1の強度ピークが生じる位置と、第2の干渉パターンの特定された第2の強度ピークが生じる位置との間の間隔を導出し得る。各信号は、界面に沿った異なる位置に対応する異なる検出素子(例えば、画素)から得られるので、その間隔は、第1の界面と第2の界面との間の平均距離を提供するために、異なる信号間で平均化され得る。この距離は、例えば、試験試料内の層間の平均ギャップ厚に対応し得る。例えば、距離は、試験試料内の第1のプレートと第2のプレートとの間の平均ギャップ厚であり得る(例えば、デバイス300におけるプレート302とプレート304との間のギャップ距離、デバイス300におけるプレート304とプレート306との間のギャップ距離、デバイス300におけるプレート306とプレート308との間のギャップ距離)。代替的には、距離は、試験試料内のプレート上に形成された層の平均厚さに対応し得る。例えば、距離は、試験試料内のプレートの表面上に形成された薄膜誘電体層の厚さに対応し得る。代替的には、距離は、試験試料内のプレートの厚さ(例えば、デバイス300のプレート302、304、306または308の厚さ)に対応し得る。
【0047】
いくつかの実装形態では、1つまたは複数のプロセッサは、補償された各干渉信号について導出された間隔に基づいて、第1の界面と第2の界面との間の平行度のレベルを決定し得る。例えば、1つ又は複数のプロセッサが使用されて、試験試料内の2つのプレート間のギャップ厚(例えば、デバイス300に示される複数のギャップ310のいずれか)がギャップ全体でどのように均一であるか又は不均一であるかを示すトポグラフィーマップとして、各検出素子(例えば、画素)の距離データを出力する。例えば、トポグラフィーマップは、第1および第2の界面の3次元表面トポグラフィー(areal surface topographies)の違いを示し得る。トポグラフィーマップはディスプレイに出力されてもよい。いくつかの実施態様では、1つ以上のプロセッサは、トポグラフィーマップから他の情報、例えば、第1の界面と第2の界面との間の二乗平均平方根差(root-mean-square difference)、第1の界面と第2の界面との間のピークと谷との差(peak-valley difference)、またはトポグラフィーマップの任意の他のパラメータ化を決定するように構成される。いくつかの実装形態において、1つまたは複数のプロセッサは、試験試料内の1つまたは複数の界面(例えば、デバイス300の界面314,320,322,324,326,328,330または332のいずれか)の平面度のレベルを決定することができる。例えば、試験試料における界面の表面形態は、干渉計システムの参照平面に対して得られてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書において開示された技術を使用して取得されるデータの量は非常に大きく、特に、試験試料が、それらの間にギャップを有する複数の比較的厚いプレートを含むように構成される場合、取得するのにかなりの時間がかかる可能性がある。例えば、8枚の厚さ0.5mmのプレートから成り、プレート間の間隔が50ミクロンのスタックを有する試験試料の場合、スタック全体の物理的厚さは4.35mmである。カメラフレーム当たりの波長の1/8(フリンジの1/4)および500nmの平均光源波長に等しい走査方向に沿ったCSIサンプリングレートに対して、7万を超えるカメラフレームが、スタック全体を走査して全ての表面を取得するために必要である。各画像が8ビットでデジタル化された500x500画素であるとすると、これは約17.5GBのデータに相当する。さらに、100Hzで動作するカメラの場合、このプロセスは、約700秒(11.7分)を必要とする。
【0049】
いくつかの実装形態では、取得スループットは、スタック内の少なくとも1つの候補界面位置に関する情報を特定するために、より高い移動速度で初期高速走査(initial quick scan)を実行することによって増大され得る。試験試料内の少なくとも1つの候補界面位置に関する情報に基づいて、干渉計対物レンズおよび/または試験試料は、測定ビームの焦点面に隣接するスタックの少なくとも1つの候補界面を配置するように再配置されてもよい。次に、少なくとも1つの候補界面がより遅い速度で焦点面を通過し、及び/又は試料干渉データがより高い取得速度で取得されるように、干渉計対物レンズおよび/または試験試料を移動させることによって、より詳細な情報を得ることができる。
【0050】
例えば、幾つかの実装形態では、高速走査は、「サブナイキスト(Sub-Nyquist)」取得を用いて実行されてもよい。サブナイキスト取得は、典型的には、奇数整数倍(3、5、7、...)(サブナイキスト倍数)だけ標準CSI取得を超えてCSI走査速度および照明強度を増加させると同時に、カメラをシャッターして同じ逆数の倍数(1/3、1/5、1/7、...)だけフレームインテグレーション(frame integration)を減少させることを含む。その効果は、干渉をまばらにサンプリングすることにより、サブナイキスト倍数による取得時間とデータ量を削減しつつ、シャッターと強度の増加により干渉信号のコントラスト損失を最小限に抑えるというものである。このタイプの取得に対して支払われる代償は、状況によっては許容できるトレードオフである環境感度と測定ノイズの増加である。高速走査を実行することに関する追加情報は、例えば、米国特許第5,398,113号明細書及びHigh-speed non-contact profiler based on scanning white light interferometry, L. Deck and P. de Groot, Appl. Opt. 33(31), 7334-7338 (1994)において見出され、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
高速初期走査を用いて得られたデータから、スタック内の少なくとも1つの候補界面位置が特定され得る。少なくとも1つの候補界面は、ピーク局所振幅を有する干渉信号の複数の部分の位置を特定することによって特定され得る。例えば、試験試料が、隣り合うプレート間にギャップを有する複数のプレートから構成され、プレート間のギャップ間隔を決定することに関心があるが、プレート表面に関する他の関連情報は関心がない場合、高速走査(例えば、サブナイキスト走査)を、最初に試験試料全体に実行して、全ての界面のステージ位置(stage location)を特定することができる。界面に対応するステージ位置は、振幅が極大に達する時間領域干渉信号内の位置に存在する。ほぼ予想されるプレートギャップ距離だけ離間された信号振幅の最大値は、プレートの候補表面として記録され得る。続いて、特定されたギャップを囲む複数の表面は、初期走査よりも遅い速度で(例えば、ナイキスト周波数以上の速度で)進行する標準的な走査を用いて測定され、スタック内の2つの異なるプレートの対向する表面をカバーする新たな干渉信号が記録されることができる。次に、本明細書において開示された分散補償技術は、新たに記録された信号に対して実行され、CSI分析は補正されたデータに適用されて2つの表面のより正確な位置を取得することができる。複数の走査表面が、干渉データが単一の取得走査によって取得されるほど十分に近い場合、ギャップ厚の変化は、複数の表面位置に対応する複数の走査位置間(すなわち、信号振幅の複数の局所ピーク(local peaks))の差分を差し引くことによって決定されてもよい。ピークが存在しないことが分かっている走査部分のrms変動が得られた場合、ピークを特定するために必要な振幅の大きさを推定することが可能である。rms変動は、「バックグラウンド(background)」の統計的特性の概念を提供する。ピークは、例えば、バックグラウンドを超える標準偏差のある特定された倍数でなければならない信号、例えば、「4」または「6」の値として定義され得る。
【0052】
いくつかの実施態様では、候補表面のより正確な分析を行うことができるように、初期走査データは、候補表面の位置を迅速に特定するために用いられる。例えば、本明細書において記載されるような初期高速走査に続いて、特定された候補表面が干渉計システムの焦点面の近くに位置付けられるように、干渉計および/または試験試料を再配置することができる。この新しい位置から、初期走査よりも遅い速度で(例えば、ナイキスト周波数以上の速度で)進行する標準的な走査が実行されて、新しい干渉信号を記録し得る。次に、本明細書に開示された分散補償技術は、新たに記録された信号に対して実行され、CSI分析が補正されたデータに適用されて、候補表面に関する情報を取得して出力し得る。初期高速走査は、候補表面の最初の特定に使用されるものとして上述され、その後、候補表面の第2の走査が実行されて、より詳細な情報を得ることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、高速走査は、第2の追加走査を実行する必要なしに、候補表面に関する十分な詳細を提供してもよい。
【0053】
代表的なアプリケーション
本明細書において記載された低コヒーレンス干渉測定方法およびシステムは、以下の表面分析問題のいずれかに使用されることができる:3次元表面トポグラフィー、テクスチャー測定(texture measurement)、表面形状測定、複数の表面の関係測定(厚さと平行度)、表面欠陥検出、簡単な薄膜;多層薄膜;層間のギャップを有するスタックされた多層物体;回折やその他の複雑な干渉効果を発生させる鋭いエッジや表面の特徴;未分解表面粗さ(unresolved surface roughness);例えば、他の点では平滑な表面上のサブ波長幅溝(sub-wavelength width groove)などの未分解表面特徴;異種材料;表面の偏光依存特性;干渉現象の入射角に依存した摂動(perturbation)をもたらす表面または変形可能な表面特徴の撓み(deflection)、振動または運動。薄膜の場合、関心のある可変パラメータは、膜厚、膜の屈折率、基板の屈折率、またはそれらの何らかの組み合わせであってもよい。次に、例示的なアプリケーションを説明する。
【0054】
AR/VR光学デバイス
本明細書において説明されるように、AR/VRアプリケーションは、複数の平行なプレートを含む複数のスタックを使用し、スタック内の平行なプレートは、デバイスがユーザの眼の前に配置されたときに、デバイスの周辺部からの光情報が眼に運ばれて、正常な視界を妨げることなくデータまたは画像のオーバーレイを生成するように、導波路として作用するように、それらの表面に適用される特徴およびコーティングを有する。高品質の画像を維持するには、特に、プレート間の良好な平行度を達成し、特定の表面が望ましい平面度を確保し、製造中にプレート間の特定の分離距離を維持することが重要である。いくつかの場合では、これらの光学デバイスに使用される複数のプレートは比較的厚く、干渉計の走査が光学プレートの奥深くまでプローブするために分散効果が生じる。
【0055】
例えば、
図7Aおよび7Bは、6.25mmの厚さを有する平行ガラス板についての単一検出画素から得られた時間領域干渉信号を描写するプロットである。
図7A~7Bに示されたデータを取得するために使用された干渉計システムは、米国特許第8,045,175号明細書において開示された干渉計構成などの広視野対物レンズ構成であり、その主題はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。干渉計システムは、500ミクロン/秒の速度まで一様な移動を提供するステッピングモータステージ(stepper motor stage)を採用した。光源は、460nmの平均波長および約25nmの半値全幅を有する10Wでデンタルブルー(Dental Blue)の発光ダイオードであった。光源は、3.5ミクロンのシグマ(sigma)を有するほぼガウス形状の分散が無いコントラストエンベロープを提供した。
【0056】
図7Aおよび7Bは、それぞれ、光学プレートの前面および裏面に対する干渉計システムの検出器の単一画素から取得される時間領域干渉計データに対応する。すなわち、干渉計は、前面から裏面に向かってガラス板を走査する。横軸はサンプル番号を表し且つ(各サンプル信号の「0」にリセットされる初期位置を有する)走査位置に対応し、縦軸は信号強度を表す。
図7Aの総走査長は40ミクロンであったが、
図7Bでは、分散の広がりを考慮して走査長は120ミクロンであった。
図7Bから明らかなように、裏面測定は、干渉信号のコヒーレンス幅を著しく広げるが、前面に対応する
図7Aに示される信号は、より明確な干渉パターン包絡線を示す。
図7Bのコヒーレンス幅の広がりは、ガラス板の前面と裏面との間に介在するガラスの分散に起因するものである。
図7Bに示される裏面信号のサンプル500の周りで観察されるより小さいコヒーレンスピークは、光源の空間コヒーレンス特性に起因するものであり、弱く反射する表面を表すものではない。
【0057】
本明細書において開示された技術を用いて、複数の信号は周波数領域に変換されて、位相変化の非線形部分を特定して除去した。例えば、
図8は、裏面干渉信号のスペクトルピーク(spectral peak)(ビン0)の周りの位相変化を示すプロットである。
図8の横軸はスペクトル波数ビン(spectral wavenumber bin)に対応し、縦軸はラジアンの位相に対応する。
図8から明らかなように、裏面干渉信号は、スペクトルピークを中心に二次位相変化を示した。位相変化は、ガラス板の表面と裏面との間に介在するガラスからの分散に起因する。位相変化は、周波数領域信号から差し引く二次関数800にフィットさせた。
【0058】
次に、分散補正周波数領域信号が逆フーリエ変換されて、時間領域補正干渉信号を取得した。
図9Aおよび
図9Bは、分散補償の前後にガラス板の裏面から観察される画素干渉信号を示す図である。
図9Bに示すように、干渉パターン包絡線は狭くなり、分散補償は空間コヒーレンスピークにほとんど影響を与えない。
【0059】
本明細書において説明されるように、いくつかの場合では、光学プレート間のギャップの位置に対応する位置など、多層スタック内の界面を迅速に特定するために、初期高速走査が実行されることができる。例示的な走査は、
図4に示されるデバイス300と同様の構造を有する光学デバイス上で実行された。
図7A~7Bについて実行された実験に関して上述したものと同じシステムが用いられて、高速走査データを取得した。デバイス300は、4枚のプレートを有するスタックを示すが、以下の実験で使用されるスタックは、ガラスの6枚の平行なプレートを有し、その各々は数百ミクロン程度の厚さを有していた。隣り合うプレートは、少なくとも10ミクロンのギャップによって互いに離間された。スタックの第1の側(例えば、装置300の表面314)から開始して、スタックは、最初に、高速走査を用いて干渉計の焦点面を通過させて移動された。特に、高速走査は、約140ミクロン/秒を超える速度(例えば、可視波長光で動作する干渉計のナイキスト限界の2倍でサンプリングする100Hzのカメラの典型的な走査速度の約20倍の速度)で実行されて、スタック内の複数のガラス板の表面に対応する複数の位置を特定するためにスタックの小さな領域において干渉データを取得した。
【0060】
図10は、高速走査を実行して得られた干渉信号を示すプロットである。横軸は走査位置をミリメートルで表し、縦軸は干渉信号の振幅を表す。
図10から分かるように、信号は、(デバイス300の表面314に類似する)測定ビームが入射するスタックの最初の表面に対応する約0.1mmにおける第1の局所ピーク振幅を含む。その第1のピークmmの後、局所ピーク振幅(例えば、約0.75mm、約1.4mm、約2.1mm、約2.75mm、および約3.4mmで)は、近くで離間した2つの表面を表す。実際、これらの位置における信号は、近くで離間した2つのピークを示し、各ピークはガラス板の表面に対応する。走査が一部の奥深くまで進むと、分散によって(例えば、2.75mmおよび3.4mmにおいて)2つのピークが一緒にぼやける。
【0061】
図10に示されるデータから複数のプレート表面を特定した後、短いCSI走査が各表面または一対の表面から干渉を取得することができるように、各表面または一対の表面の表面トポグラフィーが、各表面に試料ステージを再配置することによって取得された。
【0062】
例えば、ステージを、スタックの内側約2.75mmに位置する(それぞれプレート4および5の表面に対応する)第8および第9の表面の直前に再配置した後、長さ150ミクロンで、3XサブナイキストCSI走査(3X SubNyquist CSI scan)が実行されて、両方の表面から干渉を取得した。システムの平均波長は460nmであり、3Xサブナイキスト走査のカメラフレーム間のスキャン増分は172.5nmであった。
図11Aは、分散補償前に、近くで離間した2つの第8および第9の表面から干渉計システム内の検出器の1つの画素によって観察される生の(raw)時間領域干渉信号を示すプロットである。
図11Aに示されるように、分散補償の前に、各界面からの信号が一緒にマージされており、2つの表面からの干渉特徴を区別することを困難にしている。
図11Bは、本明細書において開示されるような分散補償を実行した後の同じ時間領域干渉信号を示すプロットである。
図11Bに示すように、異なる界面に対応するピークはすぐに特定されることができる。
図11Bに示されるデータから、表面分離は、約25ミクロンと特定され得る。
【0063】
いくつかの場合では、複数の表面を表す複数の信号が領域内の各画素について特定されて、CSIアルゴリズムを使用して分析される。例えば、
図10において約2.7mmで特定された2つの表面について、ピークコントラストアルゴリズム(peak contrast algorithm)が、表面についてのトポグラフィカラーマップを生成するために、所定の領域における各画素について採用された。
図12Aは、第1の表面(第4のガラス板の裏面に対応するスタック内の表面8)のトポグラフィーマップであり、
図12Bは、第2の表面(第5のガラス板の前面に対応するスタック内の表面9)のトポグラフィカラーマップである。表面8は、実際には、特徴の複雑な光学特性がコントラストエンベロープ(contrast envelope)をシフトさせるので、
図12Aの明らかな段部(step)1200として観察することができるインプリントされた(imprinted)特徴を含む。これらの2つの表面のデータは1回の走査で取得されたので、それらの相対的方位は保存され、それらの間のギャップがそれらの差分から計算されることができる。ギャップは、
図13に示されるような三次元マップで示されてもよく、ここで、z軸は、ギャップ厚に対応する。
【0064】
スタック内の他の表面または一対の表面も、計測対象の全ての表面が測定されるまで、本明細書において記載されるように測定されることができる。本明細書において開示された複数の走査は、第1の側から試験試料を照明し、次いで、焦点面を通過させて試験試料を移動させることによって実施されたが、いくつかの実施形態では、第1の側から試験試料/スタックを部分的に走査し、次いで、試験試料/スタックの反対の第2の側から試験試料/スタックを部分的に走査することが有利であり得る。これは、例えば、第1の走査の後、第2の走査を実行する前に、試料保持部内の試験試料/スタックの向きを反転することによって達成されることができる。この方法で走査を実行することは、表面および材料の透過特性が著しく悪く、試験試料/スタック全体にわたって単一走査を実行すると、試験試料/スタックの端部付近の複数の界面の近くで信号のノイズが多すぎる場合には有用であり得る。
【0065】
デジタル実装
本明細書において説明されるデータ処理の特徴は、デジタル電子回路において、又はコンピュータハードウェア、ファームウェア、又はこれらの組合せにおいて実装できる。特徴は、情報キャリアの中、例えば機械可読記憶装置の中に有形に具現化された、プログラム可能プロセッサにより実行されるためのコンピュータプログラム製品において実装でき、特徴は、プログラム可能なプロセッサが命令のプログラムを実行して入力データにより動作し、出力を生成することにより記載の実装の機能を実行することによって実行できる。記載の特徴は、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信し、それにデータ及び命令を送信するために連結された少なくとも1つのプログラム可能プロセッサを含むプログラム可能なシステム上で実行可能な1つ又は複数のコンピュータプログラムで実装できる。コンピュータプログラムは命令群を含み、この命令群は直接又は間接に、コンピュータにおいて特定の行動を実行するか、又は特定の結果をもたらすために使用できる。コンピュータプログラムは、コンパイル型又はインタプリト型言語を含む何れの形態のプログラミング言語でも書くことができ、スタンドアロン型プログラムとして、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、若しくはコンピューティング環境での使用に適したその他のユニットを含む、何れの形態でもデプロイされる(deployed)。
【0066】
命令のプログラムを実行するのに適したプロセッサには、例えば汎用及び特定用途マイクロプロセッサの両方並びにあらゆる種類のコンピュータの複数のプロセッサの1つが含まれる。概して、プロセッサはリードオンリメモリ又はランダムアクセスメモリ又はそれらの両方から命令及びデータを受信する。コンピュータは、命令を実行するためのプロセッサと、命令及びデータを記憶するための1つ又は複数のメモリと、を含む。一般に、コンピュータはまた、データファイルを記憶するための1つ又は複数の大容量記憶装置を含むか、又はそれと通信するように動作的に連結され、このような装置は、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク、及び光ディスクが含まれる。コンピュータプログラム命令及びデータを有形に具現化するのに適した記憶装置は、あらゆる形態の不揮発性メモリを含み、これには例えばEPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイス等の半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク、並びにCD-ROM及びDVD-ROMディスクが含まれる。プロセッサ及びメモリは、ASIC(特定用途集積回路)により補足され、又はその中に組み込まれることができる。これらの機能は、単一のプロセスにおいて実装されてもよいし、1つまたは複数の場所で複数のプロセッサ間で分散して実装されてもよい。例えば、これらの機能は、データ転送、記憶、および/または分析のためにクラウドテクノロジーを利用することができる。
【0067】
範囲
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されているように、単数形「a」、「an」および「the」は、「単一」という用語が使用されている場合等、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0068】
本明細書において使用される「適合された」および「構成された」という用語は、要素、構成要素、または他の主題が、所与の機能を実行するように構成および/または意図されることを意味する。したがって、用語「適合された」および「構成された」の使用は、所与の要素、成分、または他の主題が、単に所与の機能を実行する「~できる」ことを意味すると解釈されるべきではない。
【0069】
本明細書において使用される場合、「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」という語句は、2つ以上のエンティティのリストに関して、エンティティのリスト内の任意の1つまたは複数のエンティティを意味し、エンティティのリスト内に具体的にリストされた各エンティティの少なくとも1つに限定されない。例えば、「AおよびBの少なくとも一方」(または、等価的には、「AまたはBの少なくとも一方」、または、等価的には、「Aおよび/またはBの少なくとも一方」)は、A単独、B単独、または、AとBとの組み合わせを指す。
【0070】
本明細書において、第1のエンティティと第2のエンティティとの間に配置される「および/または」という用語は、(1)第1のエンティティ、(2)第2のエンティティ、および(3)第1のエンティティおよび第2のエンティティのうちの1つを意味する。「及び/又は」を付して列記された複数のエンティティは、同様に解釈されるべきであり、つまり、そのように結合されたエンティティのうちの「一つ以上」であると解釈されるべきである。他のエンティティは、任意選択的には、「及び/又は」節によって具体的に識別されたエンティティ以外に、それらの具体的に識別されたエンティティに関連しているかどうかにかかわらず、存在してもよい。
【0071】
本明細書には多くの具体的な実装の詳細が含まれているが、これらは何れの発明又は特許請求されているものの範囲も限定するものとは解釈されるべきではく、特定の発明の特定の実施形態に特有の特徴を説明するものと解釈されるべきである。
【0072】
本明細書において別々の実施形態に関して記載されている特定の特徴はまた、1つの実施形態に関連しても実装できる。反対に、1つの実施形態に関して記載されている各種の特徴はまた、複数の実施形態において別々にも、又は何れの適当な副結合においても実装できる。
【0073】
さらに、特徴は特定の組合せで機能すると上述され、さらには当初はそのように特許請求されている可能性があるが、特許請求されている組合せからの1つ又は複数の特徴は、場合によってはその組合せから削除でき、特許請求された組合せは副結合又は副結合の変形型に向けられてもよい。
【0074】
同様に、動作は図中で特定の順序で描かれているが、これは、そのような動作が図に示された特定の順序、又は逐次的な順序で実行されること、及び所望の結果を達成するには図示されたすべての動作が実行されることを要求していると理解すべきではない。特定の状況では、マルチタスキング及び平行処理が有利である可能性がある。さらに、前述の実施形態の中の各種のシステム構成要素の分離は、すべての実施形態においてそのような分離を要求していると理解されるべきではなく、記載されているプログラム構成要素及びシステムは一般に、1つのソフトウェア製品に一緒に統合し、又は複数のソフトウェア製品にパッケージできると理解されるべきである。
【0075】
それゆえ、主旨の特定の実施形態が説明されている。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。幾つかのケースでは、特許請求の範囲に記載された動作は異なる順序で実行でき、それでも所望の結果は得られる。さらに、添付の図面に描かれているプロセッサは、所望の結果を達成するために、図示された特定の順序、又は逐次的順序を必ずしも要求していない。特定の実装においては、マルチタスキング及び平行処理が有利である可能性がある。
【0076】
本発明の複数の実施形態について説明した。しかしながら、本発明の主旨と範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられてもよいことがわかるであろう。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。