(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】多層経口薄膜
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20221109BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/10
(21)【出願番号】P 2020560599
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2019051960
(87)【国際公開番号】W WO2019145524
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】102018101778.2
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・シュミッツ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・リン
【審査官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-050394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0290694(US,A1)
【文献】特開2009-120497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/70
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔粘膜に適用して有効成分を粘膜中に送達するための多層経口薄膜であって、一方が他方の上部に配置される同じサイズの少なくとも2つの層を含み、各層が少なくとも1種の水溶性ポリマーを含み、これらの少なくとも2つの層が、少なくとも1つのシールによって互いに連結され、該少なくとも1つのシールが、表面全体にわたって設けられず、該少なくとも1つのシール
は、一方が他方の上部に配置された少なくとも2つの層の少なくとも1つの重なった端部が
、唾液が個々の層の間を浸透できるよう、シールによって閉じられないようにして適用され、多層経口薄膜の少なくとも1つの層が、少なくとも1種の薬学的に有効な成分を含むことを特徴とする、前記多層経口薄膜。
【請求項2】
少なくとも1種の水溶性ポリマーが、ヒートシール可能なポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の多層経口薄膜。
【請求項3】
表面全体にわたって設けられるわけではない少なくとも1つのシールが、表面全体にわたって設けられるわけではないヒートシールを含むことを特徴とする、請求項2に記載の多層経口薄膜。
【請求項4】
少なくとも1種の水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、プルラン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコールおよび/またはこれらのコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層経口薄膜。
【請求項5】
少なくとも2つの層が、表面全体にわたって設けられるわけではない正確に1つのシールによって互いに連結されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の多層経口薄膜。
【請求項6】
少なくとも2つの層が、表面全体にわたって設けられるわけではない2つのシールによって互いに連結されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の多層経口薄膜。
【請求項7】
少なくとも1つのシールが、多層経口薄膜の表面の全面積の66%以下を覆うことを特
徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の多層経口薄膜。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の多層経口薄膜の製造方法であって、
a)少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む第1の層を準備する工程と、
b)少なくとも1種の水溶性ポリマーを含むさらなる層を準備する工程であって、第1の層およびさらなる層が同じサイズを有し、多層経口薄膜の少なくとも1つの層が、少なくとも1種の薬学的に有効な成分を含む工程と、
c)第1の層をさらなる層の上に配置する工程と、
d)第1の層とさらなる層とを互いに連結させるために、表面全体にわたって設けられるわけではない少なくとも1つのシールを実行する工程であって、該少なくとも1つのシールが、一方が他方の上部に配置された同じサイズの少なくとも2つの層の少なくとも1つの重なった端部がシールによって閉じられないようにして適用される工程と
を含む、前記方法。
【請求項9】
表面全体にわたって設けられるわけではない、工程d)で実行する少なくとも1つのシールが、表面全体にわたって設けられるわけではないヒートシールであることを特徴とする、請求項8に記載の多層経口薄膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の多層経口薄膜を含む薬物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層経口薄膜、その製造方法、および薬物としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
経口薄膜は、口腔中に直接入れる、または口腔粘膜に対して配置させてその場で溶解させる、薬学的に有効な成分を含む薄膜である。詳細には、粘膜、特に口腔粘膜に適用されると、有効成分を直接粘膜中に送達する、有効成分含有ポリマー薄膜である。これらの経口薄膜は、一般的に、外側が粘着性でない。口腔粘膜への非常に良好な血液供給は、血流中への有効成分の迅速な伝達を確保する。この送達システムは、有効成分の大部分が粘膜によって吸収されるという利点を持ち、したがって、欠点となり得る、一般的に液体と一緒に投与される、従来の有効成分の錠剤の剤形で生じる初回通過代謝が回避される。有効成分は、膜中で溶解、乳化または分散される。また、好適な有効成分は、経口薄膜が口内で溶解したら、飲み込むこともでき、したがって、消化管を介して吸収される。
【0003】
従来技術から公知の経口薄膜は、単位面積当たりの最大重量、したがって含まれる薬学的に有効な成分の量が、その製造中に経口薄膜を乾燥することによって決定されるという欠点を有する。経口薄膜の単位面積当たりの重量が高いほど、より多くの薬学的に有効な成分をその中に含むことができるが、結果として経済的でなくなる時間まで経口薄膜の乾燥時間は延長される。この欠点は、実際には、上昇した乾燥温度によって打ち消すことができるが、薬学的に有効な成分は、望ましくない熱負荷に晒される。加えて、単位面積当たりの重量が高い経口薄膜は、比較的長い崩壊時間を有し、用途によっては望ましくないことがある。
【0004】
上記の問題は、原則として、多層経口薄膜によって解決することができる。
【0005】
多層経口薄膜は、従来技術から公知である。
【0006】
特許文献1は、有効成分含有層と、有効成分含有層中の有効成分と相溶しない物質を含む層とを含み、これらの2つの層が、これらの2つの層の間に位置するさらなる保護層によって分離される、多層経口薄膜を開示している。
【0007】
特許文献2は、有効成分含有層が、2つの水膨潤性ポリマー層に囲まれている、多層経口薄膜を開示している。
【0008】
しかしながら、単位面積当たりの重量が比較的低い個々の層が複数で接着して結合または積層し、複合構造を形成する、公知の多層経口薄膜には、多くの欠点がある。一方では、多量の好適な接着剤を層間に使用しなければならないことがある。他方では、このような多層系は、まず、第1の層を製造し、これを乾燥したら、この第1の層の上に第2の層を積層して製造することができる。第1の層上で第2の層が乾燥したら、次いで第3の層を必要に応じて積層することができる。実際、多層薄膜は、このような方法によって生成することができるが、既存の層の上にさらなる層を積層することによってのみ可能である。ひいては、これは、薬学的に有効な成分が、多重塗装プロセスによる強力な熱負荷を受けるという欠点を有する。加えて、積層によって作製される複合構造は、特に経口薄膜の個々の層が粘着性でない場合、不安定であることが多く、容易に分解する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2011/134846A1
【文献】US2013/0017235A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の従来技術の欠点を解決することにある。とりわけ、本発明の目的は、単位面積当たりの重量が比較的低い個々の層が互いに固定して連結されることで、個々の層を経済的に許容される時間で乾燥することができ、薬学的に有効な成分が受ける熱負荷が低くて済む、複数の該個々の層から構成される多層経口薄膜を提供することである。加えて、多層経口薄膜は、口腔内おける適用の場合、比較的速く溶解する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、請求項1に記載の多層経口薄膜であって、一方の層が他方の層の上部に配置される少なくとも2つの層を含み、各層が少なくとも1種の水溶性ポリマーを含み、前記少なくとも2つの層が、少なくとも1つのシールによって互いに連結され、前記少なくとも1つのシールが、表面全体にわたって設けられるわけではない、多層経口薄膜によって対処される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この構造の多層経口薄膜は、多数の層を使用することにより、長い乾燥時間を必要とせず、または薬学的に有効な成分を熱負荷に強いる必要なく、全経口薄膜に対する薬学的に有効な成分の量を増加することができることを特徴とする。とりわけ、可能な限り最大限まで、経口薄膜を、比較的長時間、特に約20分超にわたって、経口薄膜の乾燥に通常使用される温度、特に約70℃超の温度に晒して乾燥することを防止することが可能である。
【0013】
とりわけ、本発明による多層経口薄膜は、シールが表面全体にわたって設けられるわけではないため、従来の経口薄膜と比較してかなり広い表面を有する。表面が広いため、本発明による多層経口薄膜は、口腔内における適用の場合に、ずっと速く溶解する。とりわけ、シールが表面全体にわたって設けられるわけではないため、唾液が個々の層の間を浸透し、それによって経口薄膜の溶解をより速める。
【0014】
水溶性ポリマーは、化学的に非常に異なる天然または合成ポリマーを含み、これらの共通の特徴は、水または水性媒体への溶解性である。この前提条件は、これらのポリマーが、水溶性に十分なほど多数の親水性基を有し、架橋されていないことである。親水性基は、非イオン性、アニオン性、カチオン性および/または双性イオンであり得る。
【0015】
シールは、多層経口薄膜の少なくとも2つの層(各層が少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む)を互いに連結できるようにする任意の可能な方法を意味すると理解される。例えば、これは、接着結合、エンボス加工、積層および/またはヒートシールによる連結を含むが、これらの例は網羅的ではない。
【0016】
表面全体にわたって設けられるわけではないシールは、多層経口薄膜の少なくとも2つの層が互いに結合する面積が、多層経口薄膜の層の片面より小さいことを意味すると理解される。この表面全体にわたって設けられるわけではないシールは、多層経口薄膜の表面上に1つもしくはそれ以上の連続する細片の形態、または1つもしくはそれ以上の離散した点におけるシールによって提供される。
【0017】
それぞれ少なくとも1種の水溶性ポリマーを含み得る少なくとも2つの層は、組成が同じであっても、異なっていてもよい。それぞれ少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む少なくとも2つの層はまた、サイズまたは面積が同じであっても、異なっていてもよい。加えて、少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む少なくとも2つの層は、単位面積当たりの重量が同じであっても、異なっていてもよい。
【0018】
一方が他方の上部に配置される少なくとも2つの層の重なった端部の少なくとも1つは、シールによって閉じられないことが好ましい。これは、唾液が、外部から個々の層の間を容易に浸透することができ、本発明による多層経口薄膜の溶解を速めるという利点がある。
【0019】
本発明による経口薄膜の少なくとも2つの層は、好ましくは、同じサイズまたは面積を有する。
【0020】
本発明による経口薄膜の少なくとも2つの層が、同じサイズまたは面積を有する場合、少なくとも2つの層は、適合するように一方が他方の上部に配置され、したがって少なくとも2つの層の端部が重なり、少なくとも2つの層のいずれも他方からはみ出ないことが好ましい。
【0021】
しかしながら、少なくとも2つの層が互いにずれて、適合するように一方が他方の上部に配置されない、本発明による経口薄膜の実施形態も考えられる。
【0022】
加えて、少なくとも2つの層が異なるサイズまたは面積を有する、本発明による経口薄膜の実施形態も考えられる。
【0023】
さらに、本発明による多層経口薄膜は、表面全体にわたって設けられるわけではない少なくとも1つのシールが、表面全体にわたって適用されるわけではないヒートシールを含むことを特徴とする。
【0024】
したがって、本発明による多層経口薄膜は、好ましくは、少なくとも1種のポリマーがヒートシール可能なポリマーを含むことを特徴とする。
【0025】
ヒートシールは、一方が他方の上部に配置された少なくとも2つの層の特定点での加熱および加圧による、多層経口薄膜の、一方が他方の上部に配置された少なくとも2つの層の連結を意味すると理解される。特定点で加熱することによって、多層経口薄膜の個々の各層中に供給された少なくとも1種のポリマーが溶解し、再び冷却されると、少なくとも2つの層の連結が固定する。特定点は、好ましくは、問題とするポリマーの融点またはガラス転移温度より高温まで加熱される。
【0026】
ヒートシールの通常の温度は、約50℃から200℃である。
【0027】
ヒートシール中、経口薄膜は、好ましくは、約5秒間、好ましくは約3秒間、特に好ましくは約2秒間またはそれ以下の間、約50℃から200℃の温度まで加熱される。
【0028】
ヒートシールに要するこれらの非常に短い時間の結果として、少なくとも1種の薬学的に有効な成分の熱負荷は、上述のより長時間での乾燥温度の場合より弱い。
【0029】
したがって、ヒートシール可能なポリマーは、特定点で加熱することによって融解または軟化することができ、したがって上下に配置された層への連結を作ることができるポリマーであると理解される。
【0030】
少なくとも1種の水溶性ポリマーは、好ましくは、ポリビニルアルコール、プルラン、ポリエチレンオキシドおよび/またはポリエチレングリコール、ならびにこれらのコポリマーを含む。
【0031】
これらのポリマーは、多数の薬学的に有効な成分と相溶性であり、それに加えて、本発明による多層経口薄膜を使用する治療を受ける患者への安全性が高いという利点を有する。
【0032】
加えて、記載のポリマーは、ヒートシール可能であるために好ましい。
【0033】
本発明による多層経口薄膜は、さらに好ましくは、多層経口薄膜の少なくとも1つの層が、少なくとも1種の薬学的に有効な成分を含むことを特徴とする。
【0034】
薬学的に有効な成分は、問題とする有効成分と特定の層を形成する材料との相溶性、さらに適切な場合には他の層を形成する材料との相溶性も考慮して、本発明による多層経口薄膜の中、原則として本発明による多層経口薄膜の各層の中に含まれる。
【0035】
本発明による多層経口薄膜は、1種の薬学的に有効な成分のみが含まれる事実に限定されない。そのため、異なる層の中に異なる薬学的に有効な成分が含まれる多層経口薄膜が考えられる。個々の層が、複数の薬学的に有効な成分を含有する可能性もある。
【0036】
本発明は、異なる層の中に異なる有効成分を含有する多層経口薄膜に関して特に有利である。本発明によれば、これらの異なる層は、すべて別々に製造され、表面全体にわたって設けられるわけではないシールによって、モジュール方式に従って互いに連結することができる。
【0037】
一般的には、経粘膜または経口投与に適した任意の薬学的に有効な成分が、本発明による多層経口薄膜中に含有される。
【0038】
少なくとも1種の薬学的に有効な成分は、好ましくは、本発明との関係における経口適用に適した薬学的に有効な成分からなる群から選択される薬学的に有効な成分である。これらは、例えば、抗アレルギー薬、抗不整脈薬、抗生物質、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、強心薬、利尿薬、抗高血圧薬、麻酔薬、神経筋遮断薬および性ホルモン(昇圧薬など)である。特定の例としては、アセトアミノフェン、アドレナリン、アルプラゾラム、アムロジピン、アナストロゾール、アポモルフィン、アリピプラゾール、アトルバスタチン、バクロフェン、ベンゾカイン、ベンゾカイン/メントール、ベンジダミン、ブプレノルフィン、ブプレノルフィン/ナロキソン、ブプレノルフィン/ナロキソン/セチリジン、セチリジン、クロルフェニラミン、クロミプラミン、デキサメタゾン、デキストロメトルファン、デキストロメトルファン/フェニレフリン、ジクロフェナク、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン/フェニレフリン、ドネベジル、ドロナビノール、エピネフリン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェンタニル、グリメピリド、GLP-1ペプチド、グラニセトロン、インスリン、インスリンナノ粒子、インスリン/GLP-1ナノ粒子、ケトプロフェン、ケトチフェン、カフェイン、レボセチリジン、ロペラミド、ロラタジン、メクリジン、メチルフェニデート、ミダゾラム、ミロデナフィル、モンテルカスト、多量体-001、ナロキソン、ニコチン、ニトログリセリン、オランザピン、オロパタジン、オンダンセトロン、オキシブチニン、ペクチン、ペクチン/メントール、ペクチン/アスコルビン酸、PediaSUNAT(アルテスネイトおよびアモジアキン)、ピロキシカム、フェニレフリン、プレドニゾロン、偽エフェドリン、リスペリドン、リバスティグミン、リザトリプタン、セレギリン、センナ配糖体、クエン酸シルデナフィル、シメチコン、スマトリプタン、タダラフィル、テストステロン、トリアムシノロンアセトニド、トリプタン、トロピカミド、ボグリボース、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、またはこれらの化合物の薬学的に許容される塩がある。非薬学的に有効な成分としては、本発明による剤形は、例えば、メントールなどの口腔衛生用の有効成分を含有し得る。また、薬学的に有効な成分は、異なる有効成分の混合物であってもよい。
【0039】
少なくとも1種の薬学的に有効な成分は、原則として、本発明による多層経口薄膜の層のうちの少なくとも1つの中に、少なくとも薬学的に有効な量で含有される。
【0040】
薬学的に有効な成分は、多層経口薄膜の少なくとも1つの層の中に、1~60重量%の量で存在すれば好ましい。
【0041】
原則として、本発明による多層経口薄膜の個々の層を連結するための個々のシールの数は限定されず、個々のシールの面積の合計は、本発明による多層経口薄膜の面の面積より小さいものとする。
【0042】
少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む、一方が他方の上部に配置された少なくとも2つの層が、異なるサイズまたは面積を有する場合、シールの面積は、最も小さい層の面積より小さくなければならない。
【0043】
少なくとも2つの層は、表面全体にわたって設けられるわけではないシールによって互いに連結されることが好ましい。
【0044】
加えて、本発明による経口薄膜は、少なくとも2つの層が、表面全体にわたって設けられるわけではない2つのシールによって互いに連結されることを特徴とするならば好ましい。
【0045】
本発明による多層経口薄膜は、好ましくは、少なくとも1つのシールが、多層経口薄膜の表面の全面積の約66%以下を占めることを特徴とする。
【0046】
少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む少なくとも2つの層が、異なるサイズまたは面積を有する場合、%値は、最も小さな層の面積に関連する。
【0047】
シールの面積が小さいほど、これは、経口薄膜の個々の層が互いにしっかり連結されないという欠点を有する。シール面積が大きいほど、経口薄膜の全表面が減少するという欠点がある。
【0048】
表面全体にわたって適用されるわけではない少なくとも1つのシールの形態は限定されない。シールは、細片形態および/または点形態で適切に実行される。
【0049】
個々の層が、表面全体にわたって設けられるわけではない1つまたは2つのシールによって互いに連結される、本発明による多層経口薄膜の概略図を、
図1a~1eに示す。
【0050】
本発明による多層経口薄膜は、さらに好ましくは、少なくとも2つの非粘着性層それぞれが、20~300g/m2の単位面積当たりの重量を有することを特徴とする。
【0051】
単位面積当たりの重量が大きい場合、これは、特に長い乾燥時間の欠点を有し、経済的な観点から不利である。加えて、スキンの形成の結果、気泡が形成されることもある。単位面積当たりの重量が小さな膜の処理には、必然的に困難が伴う。
【0052】
加えて、透過促進剤、酸化防止剤、香味料、味覚マスキング剤、防腐剤、着色料、不活性充填剤などのような従来の添加剤を、本発明による多層経口薄膜の種々の層に含めてもよい。
【0053】
本発明はまた、上記の多層経口薄膜の製造方法であって、
a)少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む第1の層を準備する工程と、
b)少なくとも1種の水溶性ポリマーを含むさらなる層を準備する工程と、
c)第1の層をさらなる層の上に配置する工程と、
d)第1の層とさらなる層とを互いに連結させるために、表面全体にわたって設けられるわけではない少なくとも1つのシールを実行する工程と
を含む、方法にも関する。
【0054】
第1の層およびさらなる層が同じ組成を有する実施形態が考えられる。第1の層およびさらなる層が異なる組成を有する実施形態も考えられる。
【0055】
本発明による方法において、工程a)および/または工程b)で準備した層の少なくとも1つが、少なくとも1種の薬学的に有効な成分を追加として含むことがさらに好ましい。
【0056】
加えて、本発明による方法は、有利には、表面全体にわたって設けられるわけではない、工程d)で実施した少なくとも1つのシールが、表面全体にわたって設けられるわけではないヒートシールであることを特徴とする。
【0057】
可能な実施形態において、第1の層(a)は、さらなる層(b)と同じ組成を有する。
【0058】
さらなる可能な実施形態において、第1の層(a)は、さらなる層(b)と比べて異なる組成を有する。
【0059】
可能な実施形態において、第1の層(a)および/またはさらなる層(b)は、複数の層を既に含む。したがって、少なくとも3つの層を含む多層経口薄膜が得られる。
【0060】
原則として、少なくとも2つの層を有するが、任意の数の層をも有する多層経口薄膜が、本発明による方法によって製造することができる。
【0061】
本発明は、さらに、上記の方法によって得られる多層経口薄膜に関する。
【0062】
本発明はまた、薬物として使用するための、上記の多層経口薄膜または下記の方法によって得られる多層経口薄膜にも関する。
【0063】
以下、本発明を、非限定例を参照して説明していく。
【実施例】
【0064】
表面全体にわたって設けられず、本発明による多層経口薄膜中の個々の層を連結するために使用した特定のシールを、陰影によって概略的に強調している、本発明による可能な多層経口薄膜の概略図を、
図1a~1eに示す。