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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20221109BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20221109BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20221109BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20221109BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20221109BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/80 C
H01M4/64 A
H01M10/052
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021005124
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109678
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】有賀 稔之
(72)【発明者】
【氏名】谷内 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】大田 正弘
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-150204(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111659(WO,A1)
【文献】特開2012-160320(JP,A)
【文献】特開2020-107441(JP,A)
【文献】特開2012-186141(JP,A)
【文献】特開2020-184413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 4/80
H01M 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極集電体を構成する金属多孔体の孔内に電極合材が充填されている正極と、
樹脂多孔体の孔内に固体電解質が充填されている第1の固体電解質層と、
電極集電体を構成する金属多孔体の孔内に電極合材が充填されている負極と、が交互に積層されている二次電池。
【請求項2】
前記電極集電体の一端側において、前記電極合材が充填されていない合材未充填領域が存在し、
前記第1の固体電解質層の一端側において、前記固体電解質が充填されていない電解質未充填領域が存在し、
前記合材未充填領域と前記電解質未充填領域とが対向し、互いに絡み合っている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記合材未充填領域と前記電解質未充填領域とが、圧着接合されている、請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記金属多孔体の孔内で、前記電極合材層と第2の固体電解質層とが面状に積層されており、
前記第1の固体電解質層と、前記第2の固体電解質層とが対向して積層されている、請求項1から3のいずれか一つに記載二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高エネルギー密度を有する二次電池として、リチウムイオン二次電池が幅広く普及している。電解質が固体である固体電池の場合には、正極と負極との間に固体電解質が存在するセル構造を有する。この単セルが複数積層されて固体のリチウムイオン二次電池を構成する。
【0003】
固体電池の場合、正極活物質又は負極活物質を含有する電極合材と、固体電解質とは、リチウムイオンなどのイオン伝導性を維持する観点から十分な密着性が求められる。充放電時に膨張と収縮を繰り返すことで密着性が緩むと、リチウムの電析が生じてイオン伝導性が低下する。
【0004】
この点に関して、例えば下記の特許文献1には、緻密構造の固体電解質層の両面を多孔質の固体電解質で挟んで、多孔質の孔内に合材を充填することで、電極合材と固体電解質とを一体化する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-226666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においても多孔質の固体電解質と電極合材との密着性は不十分であって、更なる改善が求められている。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、電極合材と固体電解質との密着性を向上し、密着性の低下によるリチウムの電析を抑制してイオン伝導性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、正負極に、金属多孔体の孔内部に電極合材を充填した電極を用いる一方、樹脂多孔体の孔内部に固体電解質を充填した固体電解質層を用い、両者を積層することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 電極集電体を構成する金属多孔体の孔内に電極合材が充填されている正極と、
樹脂多孔体の孔内に固体電解質が充填されている第1の固体電解質層と、
電極集電体を構成する金属多孔体の孔内に電極合材が充填されている負極と、が交互に積層されている二次電池。
【0010】
(1)の発明によれば、金属多孔体の電極と、樹脂多孔体の固体電解質層とを積層することで、対向して接する多孔体同士の表面凹凸によって絡み合いが生じて層間の密着性が高まるので、充放電中の体積変化に対する追随を可能とすることができ、リチウムの電析を抑制できる。
【0011】
(2) 前記電極集電体の一端側において、前記電極合材が充填されていない合材未充填領域が存在し、
前記第1の固体電解質層の一端側において、前記固体電解質が充填されていない電解質未充填領域が存在し、
前記合材未充填領域と前記電解質未充填領域とが対向し、互いに絡み合っている、請求項1に記載の二次電池。
【0012】
(2)の発明によれば、更に、電極集電体の一端部において、合材未充填領域と前記電解質未充填領域とが対向し、互いに絡み合うことで、対向して接する多孔体同士の表面凹凸によって絡み合いが更に生じて層間の密着性が高まるので、充放電中の体積変化に対する追随を可能とすることができ、リチウムの電析を抑制できる。
【0013】
(3) 前記合材未充填領域と前記電解質未充填領域とが、圧着接合されている、請求項2に記載の二次電池。
【0014】
(3)の発明によれば、合材未充填領域と前記電解質未充填領域とを圧着することで、更に接合強度と追従性を増すことができ密着性が高まるので、充放電中の体積変化に対する追随を可能とすることができ、リチウムの電析を抑制できる。
【0015】
(4) 前記金属多孔体の孔内で、前記電極合材層と第2の固体電解質層とが面状に積層されており、
前記第1の固体電解質層と、前記第2の固体電解質層とが対向して積層されている、請求項1から3のいずれか一つに記載二次電池。
【0016】
(4)の発明によれば、金属多孔体の孔内部で、電極合材層と固体電解質層とを面状に積層することで、電極合材層と固体電解質層との密着性を向上できるので、更に充放電中の体積変化に対する追随を可能とすることができ、リチウムの電析を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の二次電池の第1実施形態を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の製造方法を示す工程図である。
図3】第2実施形態の製造方法を示す工程図である。
図4】変形例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の内容は以下の実施形態の記載に限定されない。なお、以下の実施形態においては、固体のリチウムイオン電池を例に説明するが、本発明はリチウムイオン電池以外の電池にも適用できる。
【0019】
[第1実施形態]
<リチウムイオン二次電池の全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係る図1のリチウムイオン二次電池100は、固体電池であり、正極10と、固体電解質層30と、負極20と、が交互に積層配置された電極積層体である。電極積層体のそれぞれの電極の集電体の一端から正極タブ11及び負極タブ21がそれぞれ延出され、図1はタブ集束前の状態を示す図であり、集束部は省略している。
【0020】
以下、それぞれを構成する部材について説明する。
<正極及び負極>
この実施形態においては、正極10と負極20は、それぞれ、互いに連続した孔部(連通孔部)を有する金属多孔体により集電体を構成している。
【0021】
それぞれの集電体の孔部には、電極活物質を含む電極合材(正極合材、負極合材)がそれぞれ充填配置されている合材充填領域である。逆に言うと、正極タブ11と負極タブ21は電極合材が充填配置されていない合材未充填領域である。
【0022】
(集電体)
集電体は、互いに連続した孔部を有する金属多孔体により構成される。互いに連続した孔部を有することで、孔部の内部に電極活物質を含む正極合材、負極合材を充填することができ、電極層の単位面積あたりの電極活物質量を増加させることができる。上記金属多孔体としては、互いに連続した孔部を有するものであれば特に制限されず、例えば発泡による孔部を有する発泡金属、金属メッシュ、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属不織布等の形態が挙げられる。
【0023】
金属多孔体に用いられる金属としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、チタン、銅、銀等が挙げられる。これらの中では、正極を構成する集電体としては、発泡アルミニウム、発泡ニッケル及び発泡ステンレスが好ましく、負極を構成する集電体としては、発泡銅及び発泡ステンレスを好ましく用いることができる。
【0024】
金属多孔体の集電体を用いることで、電極の単位面積あたりの活物質量を増加させることができ、その結果、リチウムイオン二次電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。また、正極合材、負極合材の固定化が容易となるため、従来の金属箔を集電体として用いる電極とは異なり、電極合材層を厚膜化する際に、電極合材層を形成する塗工用スラリーを増粘する必要がない。このため、増粘に必要であった有機高分子化合物等の結着剤を低減することができる。従って、電極の単位面積当たりの容量を増加させることができ、リチウムイオン二次電池の高容量化を実現することができる。
【0025】
(電極合材)
正極合材、負極合材は、それぞれ、集電体の内部に形成される孔部に配置される。正極合材、負極合材は、それぞれ正極活物質、負極活物質を必須として含んでいる。
【0026】
(電極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、LiCoO、Li(Ni5/10Co2/10Mn3/10)O2、Li(Ni6/10Co2/10Mn2/10)O2、Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li(Ni1/6Co4/6Mn1/6)O2、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO、硫化リチウム、硫黄等が挙げられる。
【0027】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、Si、SiO、および人工黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料等が挙げられる。
【0028】
(その他の成分)
電極合材は、電極活物質及びイオン伝導性粒子以外のその他の成分を任意に含んでいてもよい。その他の成分としては特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池を作製する際に用い得る成分であればよい。例えば、導電助剤、結着剤等が挙げられる。正極の導電助剤としては、アセチレンブラックなどが例示でき、正極のバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデンなどが例示できる。負極のバインダーとしては、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウムなどが例示できる。
【0029】
(正極及び負極の製造方法)
正極10及び負極20は、集電体としての互いに連続した孔部を有する金属多孔体の孔部に、電極合材を充填することにより得られる。まず、電極活物質、更に必要に応じてバインダーや助剤を、従来公知の方法にて均一に混合し、所定の粘度に調整された、好ましくはペースト状の電極合材組成物を得る。
【0030】
次いで、上記の電極合材組成物を電極合材として、集電体である金属多孔体の孔部に充填する。集電体に電極合材を充填する方法は、特に限定されず、例えば、プランジャー式ダイコーターを用いて、圧力をかけて、集電体の孔部の内部に電極合材を含むスラリーを充填する方法が挙げられる。上記以外に、ディップ方式により金属多孔体の内部にイオン伝導体層を含侵させてもよい。
【0031】
<固体電解質層>
図1に示すように、本発明においては、正極10と負極20との間に、樹脂多孔体の孔部内に電解質が充填されている第1の固体電解質層30が形成されている。
【0032】
第1の固体電解質層30を構成する固体電解質としては、特に限定されないが、例えば、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料、窒化物系固体電解質材料、ハロゲン化物系固体電解質材料等を挙げることができる。硫化物系固体電解質材料としては、例えばリチウムイオン電池であれば、LPS系ハロゲン(Cl、Br、I)や、LiS-P、LiS-P-LiI等が挙げられる。なお、上記「LiS-P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物系固体電解質材料を意味し、他の記載についても同様である。酸化物系固体電解質材料としては、例えばリチウムイオン電池であれば、NASICON型酸化物、ガーネット型酸化物、ペロブスカイト型酸化物等を挙げることができる。NASICON型酸化物としては、例えば、Li、Al、Ti、PおよびOを含有する酸化物(例えばLi1.5Al0.5Ti1.5(PO)を挙げることができる。ガーネット型酸化物としては、例えば、Li、La、ZrおよびOを含有する酸化物(例えばLiLaZr12)を挙げることができる。ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、Li、La、TiおよびOを含有する酸化物(例えばLiLaTiO)を挙げることができる。
【0033】
なお、後述する金属多孔体15の孔内に充填される第2の固体電解質層17も上記と同様の材料を用いることができる。
【0034】
<樹脂多孔体>
本発明においては、第1の固体電解質層30として、樹脂多孔体の孔部内に固体電解質が充填されていることを特徴としている。電極の金属多孔体と、樹脂多孔体が積層されることで、両者が互いに絡み合って密着性を増すことができ、充放電中の体積変化に対する追随を可能とする。
【0035】
樹脂多孔体としては、互いに連続した孔部を有する樹脂多孔体により構成される。互いに連続した孔部を有することで、孔部の内部に固体電解質を連続充填することができる。上記樹脂多孔体としては、互いに連続した孔部を有するものであれば特に制限されず、例えば発泡による孔部を有する発泡樹脂、樹脂メッシュ、樹脂不織布等の形態が挙げられる。
【0036】
樹脂多孔体に用いられる樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂やその共重合体、塩化ビニル、ポリスチレン、エラストマーなどの非オレフィン系樹脂やその共重合体が挙げられる。これらの中では、硬質樹脂が好ましく、硬質ポリプロピレン樹脂を用いることがより好ましい。
【0037】
樹脂多孔体の孔内に固体電解質を充填する方法としては、上記の金属多孔体の孔内に電極合材を充填する方法と同様の方法を用いることができる。
【0038】
<電池の構成>
[第1実施形態]
次に、第1実施形態の二次電池の製造方法について、図2を用いて具体的に説明する。図2は、本発明の二次電極の製造方法の一例を示す工程図である。
【0039】
まず、図2(a)に示すように、金属多孔体15で構成される面状の電極集電体と、金属多孔体15の孔内に電極合材が充填されている電極合材層(正極合材層)16とで、正極10を構成する。負極20も同様に構成できるため、図面に括弧書きで図番のみ付してその説明を省略する。
【0040】
この実施形態においては、正極10は、金属多孔体15の長手方向の一側辺から端縁16aまでが電極合材層16であり合材充填領域を形成し、端縁16aから金属多孔体15の他の側辺までが金属多孔体15のみの合材未充填領域である。合材未充填領域が延出されて正極タブ11(図2では図示せず)を構成している。
【0041】
次に、図2(b)に示すように、樹脂多孔体35で構成される面状体と、樹脂多孔体35の孔内に充填される固体電解質37とで、第1の固体電解質層30を構成する。この実施形態においては、樹脂多孔体35の長手方向の両端側(図2(b)の左右両端側)を除く略中央領域に固体電解質37の充填領域が形成されており、固体電解質37による充填領域の両側には、樹脂多孔体35のみで構成される固体電解質37の電解質未充填領域が存在する。
【0042】
その後、図2(c)に示すように、固体電解質層30、正極10、固体電解質層30、負極20、固体電解質層30、を交互に積層していくことで、図1に示すリチウムイオン二次電池100が形成される。このとき、金属多孔体15の表面凹凸と、樹脂多孔体35の表面凹凸とが係合して一部が絡み合うことで、層間の密着性が向上して剥がれ難くなり、充放電中の体積変化に対する追随を可能とする。
【0043】
図2(d)は、図2(c)における接合箇所Pの拡大図であり、合材充填領域における金属多孔体15の表面凹凸と、電解質未充填領域における樹脂多孔体35の表面凹凸とが対向し、互いに絡み合っている状態を示す模式図である。これによって、電極と第1の固体電解質層30との接合が更に強固になり、リチウム電析を抑制できる。接合箇所Pはプレスなどによって圧着接合されていることが好ましい。
【0044】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態であり、固体電解質層30の構成は第1実施形態と同様であるが、正極10aの構成が異なっている。図3(a)の正極10aは、金属多孔体15で構成される面状の電極集電体と、金属多孔体15の孔内に電極合材が充填されている電極合材層(正極合材層)16と、金属多孔体15の孔内に固体電解質が充填されている第2の固体電解質層17とを備えている。電極合材層16と第2の固体電解質層17とは、金属多孔体15の孔内で面状に積層されている。図3(a)では、Z方向の上方に電極合材16が形成されており、下方に第2の固体電解質層17が形成されている。
【0045】
本発明における「面状」とは、金属多孔体15が図1におけるXY平面を有し、Z方向に所定の厚さを有する面状体であることを意味する。「面状に積層」とは、金属多孔体15の孔内で上下に(Z方向に)、電極合材16と第2の固体電解質層17とが積層されていることを意味する。
【0046】
このような正極10aは、例えば、金属多孔体15の表裏側からそれぞれ、電極合材層16と第2の固体電解質層17とを所定の粘度で塗工して、上下に塗り分けることで得ることができる。網目構造の金属多孔体15の孔内部に各層を充填することにより、金属多孔体15の弾性力を用いて、充放電中の体積変化に対する追随とする電極を得ることができ、リチウムの電析を抑制できる。
【0047】
このとき、図3(a)に示すように、断面視において、第2の固体電解質層17のタブ方向の端縁17aは、電極合材層16のタブ方向の端縁16aより伸びた位置にある。言い換えると、平面視において、少なくとも固体電解質層のタブ方向の端縁17aは、電極合材層のタブ方向の端縁16aを超える位置にある。これにより、集電体としてのタブの破断を効果的に防止できる。また、イオン経路が拡大されるため、エッジ部の電荷集中抑制による充放電安定性(サイクル特性向上等)が向上する。なお、図3(a)のように端縁17aは、端縁16aの位置を超えていればよく、たとえば、端縁17aは端縁16aを覆うように構成されていてもよい。
【0048】
この実施形態においては、図3(b)に示すように、互いに同一の電極10aと10bとを、電極合材層16同士が対向するようにプレスなどで接合し、正極10cを構成する。このように一対の同一電極を貼り合わせる構成とすることで、エネルギー密度を向上することができるので好ましい。
【0049】
一方、図3(c)に示す第1の固体電解質層30は、上記の第1実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0050】
最後に、図3(d)に示すように、第1の固体電解質層30と、正極10cと、第1の固体電解質層30と、負極20cと、第1の固体電解質層30と、を積層する。このように、正極と負極とを、独立した別体の第1の固体電解質層30を介して積層することにより、図1のリチウムイオン二次電池100を得ることができる。正極10cと同様に、負極20cは金属多孔体25の孔内で上下に電極合材層(負極合材層)26と第2の固体電解質層27(第2の固体電解質17と同一である)とが積層されている。また、第2の固体電解質層17(または27)と第一の固体電解質層30とが隣り合って接着することで、界面が安定して形成されるため、イオン導電性が向上し低抵抗化が図れることが期待できる。
【0051】
[第1実施形態の変形例]
図4は、正極10、負極20の合材未充填領域(金属多孔体15のみの領域)が、正極10、負極20の一端側でなく、両側に存在する点が図2(c)と異なっている。これにより、2ヶ所の接合箇所Pが、電極合材層および第1の固体電解質層を介して両側に形成される。電極合材層と第1の固体電解質層とがより強固に接合されるので好ましい。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 正極
10a 正極
10b 正極
10c 正極
11 正極タブ
15 金属多孔体(正極)
16 電極合材(正極合材)
16a 端縁
17 第2の固体電解質層(正極)
17a 端縁
20 負極
20c 負極
21 負極タブ
25 金属多孔体(負極)
26 電極合材(負極合材)
26a 端縁
27 第2の固体電解質層(負極)
27a 端縁
30 第1の固体電解質層
35 樹脂多孔体
37 固体電解質
100 リチウムイオン二次電池
図1
図2
図3
図4