(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】液剤を投薬する計量システムを有するポンプ・エンジン
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20221109BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20221109BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61M5/168 518
A61M5/142 500
A61M5/142 522
A61M5/145 500
A61M5/145 504
A61M5/168 506
A61M5/168 520
(21)【出願番号】P 2021020962
(22)【出願日】2021-02-12
(62)【分割の表示】P 2019150446の分割
【原出願日】2013-08-15
【審査請求日】2021-03-15
(32)【優先日】2012-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲアリー サール
(72)【発明者】
【氏名】ローマン トゥンケル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム イー.トーメイ ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ピー.レオンシュズィック
(72)【発明者】
【氏名】デービッド ピー.ポラック
(72)【発明者】
【氏名】ポール ナウマン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス フォクト
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特許第6839240(JP,B1)
【文献】国際公開第2011/082272(WO,A2)
【文献】国際公開第2004/032994(WO,A2)
【文献】特表2012-506279(JP,A)
【文献】特表平09-512075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/142
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤を貯蔵し、全体にわたって第1の断面積を有する第1のタンク、及び、前記第1の断面積の範囲内でプランジャを移動するためのポンプ・エンジンと、
前記第1のタンクから受け取られた液剤を貯蔵し、全体にわたって前記第1の断面積より小さい第2の断面積を有する第2のタンクであって、当該第2のタンクの最大貯蔵容量が、使用者にとって安全なまたは害の無い服用量である、前記第2のタンク、及び、前記第2のタンクの第2の断面積の範囲内でプランジャを移動するための流体駆動体と、
第1のタンクから第2のタンクへの液剤の流れを制御するように構成され、前記第1のタンクから前記第2のタンクへの流体が移動することを許容し、前記第1のタンクから前記液剤を受け取るために、前記第2のタンクの容量を増加するように構成される第1の弁と、
前記流体駆動体が前記第2のタンクから流体を駆動するときに、第2のタンクから注入部位への液剤の流れを制御するように構成されている第2の弁と、
を備え、
前記第1の弁は、選択的に、開かれるかまたは閉じられ、第1のタンクから第2のタンクへ前記液剤を入れ、および、前記第2の弁は、選択的に、開かれるかまたは閉じられ、第2のタンクから注入部位へ液剤を投薬し、
注入部位への液剤の流量を制御する第3の弁をさらに備え、
注入ポンプ・システム内の閉塞圧または背圧を検出する1以上のセンサ、
注入ポンプ・システムの送出ラインの気泡の有無を検出する1以上のセンサ、
注入ポンプ・システムの第2のタンクの充満状態を検出する1以上のセンサ、
注入ポンプ・システムの漏れを検出する1以上のセンサ、および/または
注入ポンプ・システムの液剤の流量を測定する1以上のセンサ、
をさらに備え
、
第2のタンクの液剤の量が低レベルであるときまたは許容レベルであるときを制御器に知らせ、第2のタンクの液剤の量が低レベルであるとき、制御器は、ポンプ・エンジンを作動させ、第2のタンクを満たし、第2のタンクが許容レベルに到達したとき、ポンプ・エンジンを停止させる第2のセンサをさらに備え、
前記第2のセンサは、前記第2のタンクのプランジャの位置を検出するように構成されている位置センサであることを特徴とする液剤を投薬する注入ポンプ・システム。
【請求項2】
第1の弁は、逆止弁であり、第2の弁は、方向制御弁であることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項3】
第2のタンク、流体駆動体、第1の弁、第2の弁、第3の弁および流体接続器が計量システムを構成することを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項4】
第3の弁は、液剤が注入部位へ流れる調節可能なオリフィスを備えている流量調節弁であることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項5】
第1の弁、第2の弁および第3の弁を備えているマイクロ電気機械システム(MEMS)用チップ・ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項6】
流体ラインの圧力を感知し、監視し、第2のタンクが許容レベルにまで満たされたときを制御器に知らせ、該制御器が、第2のタンクが許容レベルに到達したとき、ポンプ・エンジンを停止させる第1のセンサをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項7】
第1のセンサは、圧力センサであることを特徴とする請求項6に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項8】
第1の弁が閉じ、第2の弁が開いているときに、第2のタンクから注入部位への液剤の増分投与が起こり、第3の弁が、液剤の注入部位への流量を制御していることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項9】
第1の弁は、流れ制御弁であることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項10】
第1のタンクは、注射器タイプのタンクであることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項11】
第2のタンクの液剤の最大貯蔵容量は、使用者にとって安全なまたは害の無い服用量であることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項12】
第1のタンクの液剤の最大貯蔵容量は、第2のタンクの最大容量よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項13】
第2のタンク、流体駆動体、第1の弁、第2の弁および関連する流体接続器は、計量システムを構成することを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項14】
第1のタンクと第2のタンクとの間の流体ラインの圧力を感知し、監視し、第2のタンクが許容レベルにまで満たされたときを制御器に知らせ、第2のタンクが許容閾値に到達したとき、制御器は、ポンプ・エンジンが第1のタンクに圧力を加えることを妨げる第2のセンサ、
をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項15】
第1の弁および第2の弁は、それぞれ、流れ制御弁を備えることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項16】
第2のタンクに接続され、第2のタンクの充満状態に関するフィードバックを提供し、注入ポンプ・システムの閉塞を検出し、注入ポンプ・システムの背圧を検出し、および/または注入部位内への液剤の流量を検出する複数の圧力センサ、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項17】
前記第1の弁、前記第2の弁、前記第3の弁のいずれかまたは全てを備えているマイクロ電気機械システム(MEMS)用チップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項18】
MEMS用チップは、第2のタンクに接続されることを特徴とする請求項
17に記載の注入ポンプ・システム。
【請求項19】
MEMS用チップは、第1のセンサをさらに備えることを特徴とする請求項
17に記載の注入ポンプ・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略、インスリンやその他の液剤のための改良された投薬精度をもたらすポンプ・エンジンまたは流体駆動体のためのフェイルセーフ計量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、インスリン生成、インスリン作用または両方の不足に起因する高濃度の血糖を特徴とする疾病群である。糖尿病は、重大な健康障害や早すぎる死を引き起こす可能性がある。しかし、病気を抑え、障害のリスクを低下させるのに有効である、糖尿病を患う人々にとって周知の製品がある。
【0003】
糖尿病を患う人々にとっての治療法の選択肢は、特殊な食物、経口薬および/またはインスリン療法を含んでいる。糖尿病の治療法に対する主要目的は、障害の無い生活の可能性を増大化させるために、患者の血中ブドウ糖濃度(血糖値)を抑えることにある。しかしながら、良好な糖尿病管理を達成するとともに、その他の生活要求と環境のバランスを保つことは、必ずしも容易なことではない。
【0004】
現在、1型糖尿病の治療法に関し、毎日のインスリン療法の2つの基本モードがある。第1のモードは、通常、一日に3~4回の注入毎に、針の突き刺し(a needle stick)が不可欠である注射器やインスリン・ペンを含んでいる。これらの装置は、使用するのに簡単であり、コスト的にも比較的安い。その他の広く採用され、効果のある、糖尿病を管理するための治療方法には、インスリン・ポンプの使用がある。インスリン・ポンプは、膵臓の挙動をしっかりと再現するために、いろいろな割合での連続的な注入を提供することにより、使用者の血糖値を、使用者の個々の必要性に基づく目標範囲内に保持するのに役立つ。インスリン・ポンプを使用することにより、使用者は、インスリン注入が彼らにとってどのように役立っているのかに対し彼等の生活様式を合わせるというよりはむしろ、彼等のインスリン療法を彼等の生活様式に合わせることができる。
【0005】
従来のインスリン・ポンプは、1日24時間、皮膚の下に配置されるカニューレ(通常、中空の金属製針または可撓性のプラスチック製カテーテル)を通して、急速な、すなわち作用持続時間が短いインスリンを送出することができる。インスリンの服用量は、通常、基本的な割合で(at a basal rate)、かつ、大量の服用量で(in a bolus dose)投与される。基本的なインスリンが24時間にわたって連続的に送出され、食間および一晩中において安定した範囲内に血糖値を保つように努力する。いくつかのインスリン・ポンプは、昼と夜の異なる時間によって変化するようにインスリンの基本的な割合をプログラムすることができる。大量の服用量は、通常、使用者が食事を摂取するときに投与され、一般的に、摂取された炭水化物に釣り合わせるために、単一のさらなるインスリン注入をもたらす。いくつかの従来のインスリン・ポンプは、摂取された食事の量またはタイプに従って大量の服用量を使用者がプログラムすることを可能にする。従来のインスリン・ポンプは、また、使用者が修正のまたは追加の量のインスリンを注入し、使用者が食事量を計算しているときに低血糖値を補償することを可能にする。
【0006】
糖尿病の治療のその他の方法にわたって、従来のインスリン・ポンプの多くの利点がある。インスリン・ポンプは、単一の注入よりはむしろゆっくりと時間をかけてインスリンを送出し、したがって、通常、米国糖尿病協会により推奨される血糖の範囲内に変動が留まることになる。従来のインスリン・ポンプは、患者が耐えなければならない針の突き刺しの数を減少させ、また、使用者にとって糖尿病の管理をより容易に且つ有効にし、使用者の生活の質を向上させ得る。通常、患者は、多数の直接注射(MDIs)であるかポンプであるかにかかわらず、目覚めると、患者は、空腹時血糖剤(FBGM)を飲み、また、食事中または食後の血液中の糖を検査し、補正服用量が必要とされているかどうかを測定する。さらに、患者は、寝る前に血液中の糖を検査し、例えば、簡単な食事の摂取後に、補正服用量が必要とされているかどうかを測定する。
【0007】
一般的に、インスリン・ポンプには、2つのタイプ、従来型ポンプとパッチ型ポンプがある。
【0008】
従来型ポンプは、インスリンをポンプ内のタンクから使用者の皮膚内に搬送する、通常、注入セット、管セットまたはポンプ・セットと称される使い捨て可能な構成要素の使用を必要とする。注入セットは、通常、ポンプ接続器、長い管、および中空の金属製注入針または可撓性のプラスチック製カテーテルが延在するハブ(a hub)またはベース(a base)から成る。ベースは、使用中、皮膚表面上にベースを保持する接着剤を有する。ベースは、手で、または、手動または自動挿入装置を用いて皮膚に張り付けられる。多くの場合、挿入装置は、使用者が運んだり、用意したりするのに必要とされる別個の独立型の装置である。
【0009】
インスリン・ポンプの別のタイプは、パッチ型ポンプである。従来型の注入ポンプと注入セットとの組み合わせとは違って、パッチ型ポンプは、注入部位に接着して取り付けられる、単一のハウジング内に大部分または全ての(流体タンクやポンピング機構を含んでいる)流体要素を合体させている統合装置であって、別個の注入(管)セットの使用を必要としない。パッチ型ポンプは、皮膚にしっかりと付着し、インスリン(または、その他の薬剤)が入れられ、統合された皮下にあるカニューレを介して、ある期間にわたって、インスリンを送出する。いくつかのパッチ型ポンプは、他のものは、全て内蔵されているのに対して、(ブランド名オムニポッド(OmniPod)でインスレット株式会社(Insulet Corporation)より販売された一つの装置のように)別個の制御装置と無線で交信する。これらの装置は、通常、タンクが空になった場合、あるいは、他に面倒なことが起きた場合、頻繁に、例えば、3日毎に取り替えられる必要がある。
【0010】
代表的なインスリン・パッチ型ポンプ100が
図1に示されている。パッチ型ポンプは、通常、3日分である、ポンプ装置の継続期間中に必要な総服用量を保持する単一のタンク110を利用する。ポンプ・エンジン120またはその他の流体駆動体は、通常、例えば、プランジャのような補助的要素を介するか、または、タンク110の直接的な変形によって、単一のタンク110に直接的に力を加える。このことが、タンク110から流体ライン112およびカニューレ111を通して患者の皮下(SC)組織内にインスリンが流れ出ることを引き起こす。
【0011】
別のタイプのパッチ型ポンプ200においては、簡単な形の流体駆動体は、
図2に示されるように、予め負荷を加えられたバネ220である。予め負荷を加えられたバネ220を利用するインスリン・パッチ型ポンプにおいては、皮下組織内へのインスリンの連続した流量は、流体ライン212またはカニューレ211内の目盛り付き制限オリフィスおよび予め負荷を加えられたバネ220によりタンク210に加えられたバネ力によってのみ制御される。
【0012】
このタイプのポンプの欠点は、結果として流量の低下を招くバネの進路に沿うバネ力の低下およびポンプ・エンジンの有効期限が終わるまでバネ力の変化を含んでいる。さらに、このタイプのインスリン・ポンプは、「フェイルセーフ機構」、すなわち患者がうっかりとタンクの容量を全て受け入れてしまうことやタンクの中身を全て送出してしまうことを防止する手段を欠いている。
【0013】
あるいは、別のタイプのパッチ型ポンプ300においては、皮下組織内へのインスリンの流量は、
図3に示されるように、オン・オフ弁のような方向制御弁330を流体ライン312に組み込み、必要なときにカニューレ311を介して注入を提供することにより不連続になり得る。しかしながら、弁330は、流体駆動体320とともに使用される場合、依然として開位置に失敗し、結果として、薬剤の全服用量が患者内に注入されることを許容する単一障害点(a single point failure)を招く。例えば、
図3に示される弁330が失敗した場合、流路は、開のままであり、加圧されたタンク310は、患者内に完全に注入される。
【0014】
図4は、糖尿病の治療のための別のパッチ型ポンプ400を例示している。示されている流体駆動体は、ポンプ・エンジンまたはモータ420である。このような装置は、通常、
図4に示されるように、注射器式タンク410から注入部位へ流体ライン412およびカニューレ411を通って少しずつ増加する服用量分前進させる機構のような、ステッピングモータまたは同様に動くその他の装置である。例示される装置は、1型糖尿病および2型糖尿病の両方に対するインスリン療法の広く行き渡った方法である多数の毎日注射(MDIs)に比べてインスリン療法の優れた形態を提供する。業界における基本的な送出に関する最近の傾向は、目標の期間にわたって少しずつ増加する服用量分を送り込み、それにより、連続的な注入に近づくことにある。少しずつ増加する服用量は、また、小児科の応用に、より適している。
【0015】
投薬の精度は、やはり、ポンプ・エンジンの最近の傾向に対する関心ではある。IEC60601-2-24のような適用規格は、約2マイクロメータ(μm)/ステップという極めて小さい線形変換でプランジャを押す従来の容積型ポンプにとって困難である目標値の(+/-)5%以内である投薬精度を要求する。
【0016】
注入に関し、注射器のプランジャの同じ線形変換がより小さな服用量をもたらすように、より高い精度が、注射器の直径を減少させることによりもたらされる。例えば、
図5Aに例示されるように、内径D1が0.338インチ(8.5852mm)である3/10ccの注射器510のプランジャの同じ漸増移動は、3mlの注射器520と比べて同じ漸増移動に対して1/8の服用量を、または、
図5Bに例示されるように、内径D2が0.110インチ(2.794mm)である3mlの注射器520の8倍の精度をもたらす。3/10ccの注射器510のより高い精度は、服用量の誤差を削除するかまたは減少させ、2型糖尿病を患う患者にしばしば処方されるU200インスリンやU500インスリンのような高濃度の薬剤の使用を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第5,858,001号明細書
【文献】米国特許第5,858,005号明細書
【文献】米国特許第5,957,895号明細書
【文献】米国特許第6,074,369号明細書
【文献】米国特許第6,551,276号明細書
【文献】米国特許第6,589,229号明細書
【文献】米国特許第6,656,158号明細書
【文献】米国特許第6,740,059号明細書
【文献】米国特許第6,852,104号明細書
【文献】米国特許第6,960,192号明細書
【文献】米国特許第7,052,251号明細書
【文献】米国特許第7,109,878号明細書
【文献】米国特許第7,128,727号明細書
【文献】米国特許第7,226,278号明細書
【文献】米国特許第7,250,037号明細書
【文献】米国特許第7,303,549号明細書
【文献】米国特許第7,678,079号明細書
【文献】米国特許第7,857,131号明細書
【文献】米国特許第8,021,334号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0097381号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0048563号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0062778号明細書
【文献】欧州特許第2,019,206号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、小さな注射器直径を有する改善された服用量精度を組み込み、且つ不注意による薬剤の過剰投与を受け入れることから患者を守る、流体駆動体またはポンプ・エンジンに対するフェイルセーフ計量システムの必要性がある。
【0019】
さらに、パッチ型ポンプのような完全に使い捨て可能なポンプ装置を含む、流体駆動体またはポンプ・エンジンで作動する低コストの計量システムの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的は、上記問題点およびその他の問題点に実質的に取り組むことにあり、インスリンまたはその他の液剤を送出する注入ポンプのためのフェイルセーフ計量システムと組み合わせてより高度の注入精度を提供することにある。
【0021】
本発明の別の目的は、インスリン注入ポンプの計量システムのタンク内の、安全なまたは害のない服用量の薬剤に予め負荷をかけ、加圧するだけで患者の不注意による過剰投与に取り組むことにある。
【0022】
本発明の別の目的は、より高濃度の薬剤の使用を可能とするとともに、ポンプ・エンジンの精度に対する業界の要求に従う計量システムを提供することにある。
【0023】
本発明の別の目的は、連続的注入に近い微細な漸増服用量を可能にする計量システムを提供することにある。
【0024】
本発明の別の目的は、低レベルのまたは質の悪い精度を有するポンプ・エンジンを含むどのようなタイプの流体駆動体またはポンプ・エンジンとも注入ポンプ装置の一部として統合され得る低コストの計量システムを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】インスリン注入用パッチ型ポンプの基本的な要素からなる例示的な実施形態を示している。
【
図2】ポンプ・エンジンとして予め負荷をかけられたバネを有するインスリン注入用パッチ型ポンプの例示的な実施形態を示している。
【
図3】予め負荷をかけられたバネのポンプ・エンジンおよび方向制御弁を有するインスリン注入用パッチ型ポンプの例示的な実施形態を示している。
【
図4】ポンプ・エンジンとしてステッピングモータを有するインスリン注入用パッチ型ポンプの例示的な実施形態を示している。
【
図5A】3/10cc注射器の例示的な実施形態の断面図および端面図を示している。
【
図5B】3mlの注射器の例示的な実施形態の断面図および端面図を示している。
【
図6】主ポンプ・エンジンに接続されている本発明のインスリン注入計量システムの例示的な実施形態を示している。
【
図7】マイクロ電気機械システム(MEMS)用チップに組み込まれた、本発明のインスリン注入計量システムの例示的な実施形態を示している。
【
図8】MEMS用チップを組み込んでいる、本発明のインスリン注入計量システムの代わりの例示的な実施形態を示している。
【
図9】MEMS用チップチップを組み込んでいる、本発明のインスリン注入計量システムの別の例示的な実施形態を示している。
【
図10】MEMS用チップチップを組み込んでいる、本発明のインスリン注入計量システムの別の例示的な実施形態を示している。
【
図11】MEMS用アクチュエータを組み込んでいる、本発明のインスリン注入計量システムの別の例示的な実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付された図面と併せて読むことで、本発明の代表的な実施形態の種々の目的、利点および新規な特徴が、以下の詳細な説明から容易に理解されるだろう。
【0027】
図面全体にわたって、同じ参照番号は、同じ要素、特徴および構造に言及していることが理解されるだろう。
【0028】
本発明の実施形態は、インスリンやその他の液剤に対し、改善されたインスリン投与精度をもたらすポンプ・エンジンまたは流体駆動体のためのフェイルセーフ計量システムに関する。
【0029】
本発明に係るフェイルセーフ計量ポンプ・システム600の構成要素の例示的な実施形態が
図6に示されている。
図6を参照すると、注入ポンプ・システムは、概略、ポンプ・エンジン620の形をしている流体駆動体、主タンク610、および、補助タンク640、少なくとも1つの逆止弁650、少なくとも1つの方向制御弁660、流量調節弁(an adjustable flow valve)670を含んでいる計量システム630を備えている。本明細書に記載される別の実施形態においては、流量調整弁670は、目盛り付きの制限オリフィス(a calibrated limiting orifice)に置き換えられる。さらに別の実施形態においては、逆止弁650は、方向制御弁670に置き換えられる。流体ライン612、613、614および615は、
図6に例示されるように、システムの種々の構成要素を接続している。
【0030】
本発明の例示的な実施形態のポンプ・エンジン620は、互換性がある。ポンプ・エンジン620は、バネで駆動されるポンプ、ステッピングモータで駆動されるポンプ、電気化学ポンプ、電気浸透ポンプ、または陽圧ポンプのいずれであってもよい。
【0031】
主タンク610、すなわち、マクロ・タンク(macro-reservoir)は、インスリンのような薬剤を貯蔵し、投薬する大量流体貯蔵室(a bulk fluid storage chamber)であり、3ml注射器を含み得る。主タンクのポンプ・エンジン620の投薬精度は、目標の服用量の(+/-)10%の範囲内のどこにあってもよい。
【0032】
補助タンク640、すなわち、マイクロ・タンク(micro-reservoir)は、補助タンク640内にある安全なまたは害のない服用量のインスリン薬剤を、予め負荷をかけ、加圧するだけで、不注意によるインスリンの送出を制限するために設けられる。予め負荷をかけられているバネ、ソレノイド、またはその他のタイプの流体駆動体であり得る流体駆動体641は、補助タンクから注入部位へ漸増の微小服用量(micro-doses)を送出する。
【0033】
逆止弁650は、補助タンクの送出サイクル中に、主タンクへ戻る流れを排除するために設けられている。代表的な実施形態においては、
図6に例示されるように、ポンプ・エンジン620は、プランジャ619に圧力を加え、インスリンを主タンク610から流体ライン615内に押し出し、インスリンが補助タンク640へ移動されるまで逆止弁650を開く。
【0034】
方向制御弁660は、補助タンク640をいっぱいに満たしたり、補助タンク640から投薬したりする場合に、流路の遮断を制御する。方向制御年660は、電気的に制御され、通常は、注入部位へのインスリンの意図的ではない送出を防止するように閉じられている。方向弁660の実施形態は、限定されるものではないが、仕切り弁のような遮断弁、ピンチ弁(pinch valves)、スプール弁(spool valves)などを含んでいる。
【0035】
通常は閉じている方向弁660が開くことは、インスリンが流量調節弁670で制御された流量で注入部位に流れることを可能にする。制御器(
図6には示されていない)は、方向制御弁660が流体駆動体641および流量調節弁670の開口/オリフィスによって補助タンク640内のインスリンに加えられている圧力に基づいて開いたままである継続期間を計算する。すなわち、制御器は、患者の服用必要量(the patient’s dose requirements)を流量や継続期間の設定(duration settings)に変換する。
【0036】
図6に示されるフェイルセーフ計量ポンプ・システム600の動作は、以下に説明される。
【0037】
補助タンク640の流体のレベルが低い場合に、ポンプ・エンジン620が作動し、インスリンを主タンク610から補助タンク640へ移動させる。逆止弁650が開位置にあり、流量調節弁670が閉位置にある場合、インスリンは、流体ライン613、614および615を通って主タンク610から補助タンク640内へ流れることが許容される。逆止弁650のような逆止弁は、通常、弁座のオリフィスを通る下流への流れを塞ぐような方法で、球体が弁座に係合する、バネで負荷がかけられているN/C(常閉)弁である。したがって、球体に対向するライン圧力が逆止弁の定格クラッキング圧力(the rated cracking pressure)を越えて増大すると、球体は、弁座から押しのけられ、弁座のオリフィスを通って下流に流れることを可能にする。ポンプ・エンジン620がプランジャ619を移動させ、流体ライン615に逆止弁650のクラッキング圧力および流体駆動体641により発生する流体ライン614/613の圧力より大きい正圧を作り出すと、逆止弁650の開閉が生じる。
【0038】
システム600のポンプ制御器がインスリンを供給する信号を受け取ると、方向制御弁660が開き、逆止弁650は、閉じた位置にあり、流量調節弁670により制御される流量で、流体ライン612および中空の金属性針または可撓性のプラスチック製カテーテル611を通って注入部位へ流れることを可能にする。流量調節弁670の実施形態は、限定されるものではないが、ダイアフラム弁などのような数%単位で開口部の直径を変化させることにより流れを調節する制御弁を含んでいる。
【0039】
この実施形態において、予め負荷がかけられているバネのような流体駆動体641により補助タンク640に加えられている圧力であるラインの圧力は、既知であり、注入の流れは、基本または大量の服用要求量によって調節される。送出される服用量は、ラインの圧力、方向制御弁660が開いている期間、および流量調節弁670の可変制限オリフィスの関数である。周囲温度や大気圧も、注入服用量の計算の因子となっており、服用量の精度をさらに向上させる。
【0040】
本発明の例示的な実施形態の補助タンク640を有する計量システム630の投与精度は、主タンクに対して選択されたポンプ・エンジンにもかかわらず目標服用量の(+/-)1%以内にある高水準の注入精度をもたらすとともに、計量システム630の補助タンク640内の安全なまたは害のない服用量の薬剤を予め負荷をかけ、加圧するだけで、患者の不注意による過剰投与を防止することができる。
【0041】
本発明の計量システム注入ポンプ装置600の例示的実施形態は、限定されるものではないが、注入ポンプ装置内の閉塞圧または背圧を検出するセンサ、注入ポンプ装置の送出ライン内の気泡を検出するセンサ、補助タンク640の末端または補助タンク内に残っているインスリンを含む、注入ポンプ装置600の補助タンク640の充満状態(the fill status)を検出するセンサ、注入ポンプ装置600の漏れを検出するセンサ、およびインスリンまたはその他の薬剤の流量を測定するセンサを含み得る。
【0042】
図7を参照すると、本発明の別の例示的実施形態に係る注入ポンプ・システム700は、センサと
図6の実施形態に示されると同様に、逆止弁750、方向制御弁760、および流量調節弁770のような注入ポンプの計量システム730の要素とを組み合わせて、流体ライン713、714および715を介して主タンク710と補助タンク740を接続しているマイクロ電気機械システム(MEMS)用チップ705を作っている。
【0043】
これらの構成要素を組み合わせてMEMS用チップ705を作ることは、通常、小さな梱包のインスリン注入ポンプに必要とされる計量システム構成要素や検出素子の多くを提供するのに低コストであり、効果的な方法であり、したがって、注入ポンプ装置の外形寸法を小さくする。
【0044】
注入ポンプ・システム700においては、補助タンク740の流体レベルが低いと、ポンプ・エンジン720が作動し、タンク710内のプランジャ719を移動させることにより、インスリンを主タンク710から補助タンク740へ移動させる。逆止弁750が開位置にあり、流量調節弁770が閉位置にある場合、インスリンは、主タンク710から補助タンク740内に、流体ライン713、714および715を通って流れざるを得ない。システム700のポンプ制御器が、インスリンを供給する信号を受け取ると、方向制御弁760が開く一方、逆止弁750は、閉位置にあり、流体ライン712を介して加圧された補助タンク740から注入部位へのおよび中空の針またはカテーテル711へのインスリンの流れを可能にするとともに、流量調節弁770により流量が制御される。流体駆動体741は、補助タンク740から注入部位へ漸増の微小服用量を送出することができる。
【0045】
注入ポンプ・システム800は、注入ポンプ装置の計量システム要素をMEMSチップ805に組み込んでいる本発明の別の例示的な実施形態であり、
図8に示されている。
図8を参照すると、流体送出システム800は、概略、ポンプ・エンジン820、主タンク810および補助タンク840、流体駆動体841、流れ制御弁850、方向制御弁860、流量調節弁870、圧力センサ880および2つの位置センサ890、891を含んでいる計量システム830を備えている。
【0046】
本発明の例示的実施形態のポンプ・エンジン820は、互換性であり、バネ駆動ポンプ、ステッピングモータ駆動ポンプ、電気化学ポンプ、電気浸透ポンプ、または陽圧ポンプのいずれであってもよい。
【0047】
主タンク810すなわちマクロ・タンクは、インスリンまたはその他の薬剤を貯蔵し、投薬する大量流体貯蔵室であり、3mlの注射器からなっていてもよい。ポンプ・エンジン820の投与精度は、目標服用量の(+/-)10%の範囲内で変化する。
【0048】
計量システム830の補助タンク840すなわちマイクロ・タンクは、補助タンク840内の安全なまたは害のない服用量のインスリン薬剤を予め負荷をかけ、加圧するだけで不注意によるインスリンの送出を制限するように設けられる。予め負荷をかけられたバネ、ステッピングモータまたはその他の流体駆動体の形をしている流体駆動体841は、漸増の微小服用量を補助タンク840から送出する。1以上の位置センサ890、891が補助タンク840に接続されている。位置センサ890、891は、補助タンク840の充満状態に関し、ポンプ制御器にフィードバックを供給する。
【0049】
流れ制御弁850は、流体ライン813、814および815を通って主タンク810から補助タンク840へのインスリンの流れを制御する。流れ制御弁850が開き、主タンク810からのインスリンで補助タンク840を満たす。流れ制御弁850は、補助タンク840への部分的な送出を許容する。このことは、投与精度が増大することを可能とし、また、より大きな補助タンク840の随意選択を許容する。さらに、流れ制御弁850を使用することにより、バネ/弾性アクチュエータまたは膜のような簡単なポンプ・エンジンまたはガス・アクチュエータのような定加圧機構が、流体送出システム800で利用され得る。補助タンク840を再度満たすことは、患者への漸増の服用量の送出の間、すなわち、インスリンが患者に送出されていないときに起こる。
【0050】
方向制御弁860は、補助タンク840から投薬されるとき、流体ライン812と813との間の流路の遮断を制御する。方向制御弁860は、患者のインスリン要求を満足させるために必要とされる場合にのみ、また、流体ライン813から流体ライン812内への
図8に例示される弁860の矢印の方向にのみ、意図的でないインスリンの注入部位への送出を防止するために設けられている。
【0051】
方向制御弁860が開くことは、インスリンが流量調節弁870により制御された流量で注入部位へ流れることを可能とする。
【0052】
圧力センサ880は、ラインの圧力を感知し、監視するために使用され、ポンプ・エンジン820にさらなるインスリンを補助タンク840へ押し出すことを停止させるために、補助タンク840が満たされていることを確認するポンプ制御器に対し、信号を発生させことができる。単一の圧力センサ880は、圧減衰を検出するのに使用され、弁850、860および870を連続して開くことにより、単一のセンサ880は、流体システムにおいて、どこに漏れが存在するか、主タンク810および補助タンク840の充満状態、および部分的または完全な閉塞のどちらが存在するかを測定することができる。あるいは、位置センサ890、891がこの目的のために使用され得る。圧力センサ880は、システムの漏れを測定するために利用され得る。
【0053】
図8の本発明の例示的実施形態は、センサと流れ制御弁850、方向制御弁860、流量調節弁870および圧力センサのような計量システムの要素とを組み合わせて、タンク810と840を接続しているマイクロ電気機械システム(MEMS)用チップ805を作っている。
【0054】
計量システムの要素をMEMS用チップ805に組み込んでいる注入ポンプ・システムの動作は、継続して
図8を参照しながら説明される。
【0055】
補助タンク840に接続されている位置センサ890、891により送られる電気信号に従って、補助タンク840の流体レベルが低い場合にはいつも、ポンプ制御器(
図8には示されていない)により、主タンク810を介してポンプ・エンジン820が一時的に作動し、流れ制御弁850を開くことで補助タンク840は、インスリンで満たされる。
【0056】
一旦、補助タンク840が一杯になると、補助タンク840の充満状態が、補充サイクルの期間により、または、圧力センサ880からのフィードバックにより、あるいは、補助タンク840に接続されている位置センサ890、891からの電気信号により、ポンプ制御器に対し確認される。位置センサ891からの信号がシステム800のポンプ制御器に伝達され、流れ制御弁850を閉じ、ポンプ・エンジン820は、インスリンを主タンク810から押し出すことを停止する。あるいは、検出された圧力が安定したとき、単独でまたは流体ライン813または814の下流に配置された第2の圧力センサ(不図示)と協力して補助タンク840が満たされているとき、圧力センサ880が同様の信号を発生し、ポンプ・エンジン820は、インスリンを主タンク810から押し出すことを停止することができる。
【0057】
補助タンク840は、補助タンクの1回の完全排気サイクルが患者に対し0.5μL/0.25μL送出するように、最も小さな漸増服用必要量、例えば、0.5μL/0.25μLと同じ大きさを有し得る。補助タンク840の小さな直径に起因して、注射器のプランジャの同じ線形変換が小さな服用量をもたらす場合、投与精度は、目標投与量の(+/-)1%の範囲内に改善される。さらに、補助タンク840の相対的に小さな形状に起因して、システムの不具合によって送出され得る最大投与量は、小さく、したがって、患者がインスリンの過剰服用量を受け取ることを防止するというフェイルセーフをもたらす。患者に、例えば、大量の、大きな服用量を送出するためには、(補助タンク840の体積以下の)多数の漸増服用量が要求される。
【0058】
補助タンク840からのインスリンの漸増投与は、インスリンが加圧された補助タンク840から注入部位へ流れ、流体ライン812を通って中空の針またはカテーテル811内へ流れることを可能にする方向制御弁860が開かれることにより促進される。インスリンの流量は、流量調節弁870により制御される。
【0059】
補助タンク840からのインスリン服用量の完全な送出が位置センサ890、891により感知されると、システム800のポンプ制御器は、方向制御弁860を閉じ、流れ制御弁850を開く。したがって、個々のサイクルの後、補助タンク840を満たすサイクルを繰り返す。さらに、流体ライン815における圧力センサの存在は、流体送出システム800が、感知された圧力が主タンク810のプランジャ819の変位または位置に比例していることから、薬剤がどのくらい主タンク810内に満たされていたかを測定することを可能にする。
【0060】
本発明の図示される別の実施形態と一致して、一度に一つの弁だけが開かれている必要がある。例えば、主タンク810から補助タンク840へインスリンを移動させるために、流れ制御弁850は、開かれ、方向制御弁860は、閉じられる。インスリンを患者に注入するために、流れ制御弁850は、閉じられ、方向制御弁850は開かれる。パッチ型ポンプ800の使用期間中には、弁850および860の両方が同時に開かれることは決してない。さらに、弁の機能を組み合わせることが可能である。例えば、方向制御弁660、760、860は、流量調節弁670、770、870の機能を達成し得るように、漸増的に調節可能であり得る。そのような実施形態においては、流量調節弁670、770、870を省略することができる。
【0061】
注射器型のタンクが
図6~8に示されているが、本発明に利用されるタンクは、剛体であってもよいしまたは可撓性であってもよい。また、その構造は、選択されたポンプ・エンジンにより変化し得る。
【0062】
MEMS用チップ内に注入ポンプ装置の計測システムの要素を組み込んでいる本発明のさらに別の例示的な実施形態が
図9および10に示されている。
図9は、加圧されたタンクとともにMEMS用チップに組み込まれている注入ポンプ装置のための計量システムを例示している。
図10は、線形アクチュエータにより満たされたり、空にされたりするマイクロ・タンクすなわち補助タンクとともにMEMS用チップに組み込まれている注入ポンプ装置のための計量システムを例示している。
【0063】
図9を参照すると、計量システム1000は、概略、主タンク7、エンジンまたは駆動体4を有するマイクロ・タンク3、圧力センサ2a、2b、制御器8、第1および第2N/C(常閉)流れ制御弁1aおよび1b、制御オリフィス5、および流体相互接続体すなわち流体ライン14~18を含んでいる。
図10は、また、主タンク7のためのポンプ・エンジン9またはその他の流体駆動体を示している。
【0064】
本発明の例示的実施形態におけるポンプ・エンジン9は、任意であり、互換性がある。また、ポンプ・エンジン9は、バネ駆動ポンプ、ステッピングモータ駆動ポンプ、電気化学ポンプ、電気浸透ポンプなどであり得る。
【0065】
主タンク7は、インスリン薬剤を貯蔵し、投薬する大量流体室であり、3mlの注射器型タンクからなっていてもよい。計量システムの補助タンクすなわちマイクロ・タンク3は、該マイクロ・タンク3内の安全なまたは害のない服用量のインスリン薬剤に、予め負荷をかけ、加圧するだけで、不注意によるインスリンの送出を制限するように設けられている。予め負荷がかけられたバネ4、またはその他の駆動体が、漸増の微小服用量をマイクロ・タンク3から注入部位へ送出する。
【0066】
1以上の圧力センサ2a、2bがマイクロ・タンク3に接続されている。圧力センサ2a、2bは、マイクロ・タンク3の充満状態に関してポンプ制御器8へフィードバックをもたらし、注入ポンプ装置の閉塞圧または背圧を検出し、注入装置の漏れを検出し、流体ライン17および18の圧力を測定することにより、注入ポンプ装置のインスリンの注入流量を検出する。
【0067】
ポンプ制御器8は、圧力センサ2a、2bに連結し、流れ制御弁1aおよび1bのような本発明の計量システムの種々の構成要素を作動させる。ポンプ制御器8は、また、ホスト・コンピュータまたは無線制御器(不図示)に連結する。
【0068】
第1N/C流れ制御弁1aは、主タンク7からマイクロ・タンク3へのインスリンの流れを制御する。第1N/C流れ制御弁1aは、主タンク7からのインスリンでマイクロ・タンク3を満たすために開く。第2流れ制御弁1bは、マイクロ・タンク3から注入部位へ分配するとき流路の遮断を制御し、注入部位への意図的ではないインスリンの送出を防止する。
【0069】
流量調節弁からなり得る制御オリフィス5が、患者の皮下組織内へのインスリンの流量が計算されることを可能にするように設けられている。
【0070】
逆止弁(不図示)が任意に設けられ、マイクロ・タンクの送出サイクル中におけるマクロ・タンクすなわち主タンク7へ戻る流れを排除し得る。通常、そのような逆止弁は、N/C流れ制御弁1aがシステムの一部ではなかった場合にシステムに組み込まれる。
【0071】
図9および10のいずれもが、
図7および8に例示されている実施形態と同様の方法でMEMS用チップに組み込まれている計量システム1000、1001を例示している。該システム1000、1001においては、N/C流れ制御弁1aとマイクロ・タンク3との組み合わせが、マイクロ・タンク3内の安全なまたは害のない服用量のインスリン薬剤に予め負荷をかけ、これを加圧するだけで、注入ポンプ・エンジンが不注意によりインスリンを送出することから守っている。予め負荷をかけられたバネ、ソレノイド、またはその他の流体駆動体の形をした流体駆動体4は、目標の服用量の(+/-)1%以内にまで、注入部位へ送出されるインスリン服用量の精度を向上させるために、マイクロ・タンク3から収入側へ漸増の微小服用量を送出する。さらに、
図9および10に例示されている圧力センサ2a、2bは、マイクロ・タンク3の充満状態に関するフィードバックを提供し、注入ポンプ装置の閉塞圧または背圧を検出し、注入装置の漏れを検出し、また、注入ポンプ装置の注入流量を検出する。
【0072】
図11は、本発明のMEMS用チップに組み込まれ得る計量システムの別の実施形態を例示している。該実施形態においては、MEMS用アクチュエータが2位置仕切り弁11の出入り口を代えるために利用される。具体的には、電位が仕切り弁11のプレート(the plate)に加えられると、中央プレートが作動し、外側プレートに対して摺動する。中央プレートの位置により、仕切り弁11は、主タンクから補助タンクへかまたは補助タンクから注入部位へのどちらか1つに流れることを可能にする。しかしながら、電位がない場合、仕切り弁11の中央プレートは、
図11に示されるように、主タンクから補助タンクへ流れることを可能にするように位置合わせされる。仕切り弁11、圧力センサ2a、2b、2c、マイクロ・タンク3、エンジン4および付随する相互接続体は、カスタム・マニフォールド(a custom manifold)50またはMEMS用チップに組み込まれ得る。あるいは、仕切り弁11は、電力がない場合、全ての流れが遮断されるように、第3の位置を含み得る。
【0073】
本発明の別の実施形態においては、MEMS用アクチュエータは、単一の仕切り弁11に代えて、2つのN/C転移仕切り弁(N/C displacement gate valves)12a、12bを開き、主タンク7から補助タンク3へ及び補助タンク3から注入部位への流れの独立制御を可能にするために利用される。具体的には、電位がN/C仕切り弁12aのプレートに加えられると、その中央プレートが作動し、外側プレートに対して摺動する。このことにより、N/C仕切り弁12aは、主タンク7から補助タンク3への流路に位置が合わされ、該流路を開く。N/C仕切り弁12aから電力が取り去られると、中央プレートは、N/C位置へ移動する。補助タンク3から注入部位への流れを提供するために、N/C仕切り弁12bの中央プレートに電力が加えられ、中央プレートが、作動し、外側プレートに対して摺動する。このことより、仕切り弁12bの中央プレートは、補助タンク3から注入部位への流路に位置が合わされ、該流路を開く。しかしながら、電位がない場合、2つの仕切り弁12aおよび12bのプレートは、位置がずれ、このことが、流路を遮断し、注入部位への流れを停止する。
【0074】
したがって、本発明の例示的な実施形態は、インスリン注入ポンプのためのフェイルセーフ計量システムとの併用で高度の注入精度を提供し、患者の不注意による過剰投与を、インスリン注入ポンプの計量システムのタンク内の安全なまたは害のない服用量の薬剤を予め負荷をかけ、加圧するだけで防止し、ポンプ・エンジンの精度に対する業界の要求に従う限りは高濃度の薬剤の使用を許容し、連続注入に近い微細な漸増投与を可能にし、低精度のポンプ・エンジンを含むいかなるタイプのポンプ・エンジンとも交換が可能な低コストの計量システムを提供する。
【0075】
ポンプ・エンジン、流体アセンブリ、計量システム、カテーテル配備アセンブリ、流体タンクおよび制御システムを含む本明細書に開示される代表的なパッチ型ポンプの実施形態に使用される個々の構成要素は、当該技術分野において周知である既存設計や技術に基づいていてもよい。例えば、ポンプ・エンジン、流体アセンブリおよびステッピングモータを利用する計量システム、形状記憶合金(SMA)アクチュエータ、マイクロ電気機械システム(MEMS)用装置、および方向制御弁が使用され得る。流体タンクは、剛体であってもよいし、(例えば、移動可能なプランジャまたは予め負荷をかけられたバネにより加えられた力で)変形可能であってもよい。
【0076】
本発明の実施に際して使用され得る代表的な構成要素およびサブシステムが本明細書に参照により組み込まれている、上記米国特許文献やその他の外国特許文献に開示されている。
【0077】
本発明の特定の例示的な実施形態がその特定の好ましい実施形態を参照して本明細書に示され、説明されているけれども、添付されるクレームに定義されるような発明およびその等価物の精神および範囲を逸脱することなく形状や細部において種々の変更がなされ得ることが当業者により理解されるであろう。