(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20221109BHJP
E06B 3/16 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/16
(21)【出願番号】P 2021081565
(22)【出願日】2021-05-13
(62)【分割の表示】P 2017063049の分割
【原出願日】2017-03-28
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 康生
(72)【発明者】
【氏名】福井 淳央
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108835(JP,A)
【文献】実公昭56-003503(JP,Y2)
【文献】実公昭64-001436(JP,Y2)
【文献】特開2016-056555(JP,A)
【文献】特開2016-151125(JP,A)
【文献】特開2008-190238(JP,A)
【文献】特開2015-169023(JP,A)
【文献】特開2016-098536(JP,A)
【文献】特開2016-204937(JP,A)
【文献】特開2016-023529(JP,A)
【文献】特開2016-108909(JP,A)
【文献】特開2014-198959(JP,A)
【文献】特開2009-287256(JP,A)
【文献】特開2009-041329(JP,A)
【文献】特開2016-108793(JP,A)
【文献】特開2016-041892(JP,A)
【文献】特開2014-196648(JP,A)
【文献】特開2011-214358(JP,A)
【文献】特開2009-287259(JP,A)
【文献】特開2009-228321(JP,A)
【文献】特開2009-102875(JP,A)
【文献】特開2005-133512(JP,A)
【文献】特開2003-041815(JP,A)
【文献】特開2001-090446(JP,A)
【文献】特開2004-225295(JP,A)
【文献】特開2009-299433(JP,A)
【文献】特開2009-299437(JP,A)
【文献】特開2009-299438(JP,A)
【文献】特開2009-299439(JP,A)
【文献】特開2009-299440(JP,A)
【文献】特開2012-062675(JP,A)
【文献】特開2016-079722(JP,A)
【文献】特開2016-030989(JP,A)
【文献】特開2014-214562(JP,A)
【文献】特開平09-004286(JP,A)
【文献】特許第2775598(JP,B2)
【文献】特許第3996860(JP,B2)
【文献】特許第5658079(JP,B2)
【文献】実公平04-027978(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、前記枠体内に引き違い可能に配置された内障子および外障子とを備えた建具であって、
前記枠体は、上枠、下枠および左右の縦枠によって構成され、
前記内障子は、上框、下框、戸先縦框および内召合せ框によって形成された框体の内方に面材を配置して構成され、
前記外障子は、上框、下框、戸先縦框および外召合せ框によって形成された框体の内方に面材を配置して構成され、
前記内召合せ框および前記外召合せ框のうちの少なくとも一つは、上端から下端まで貫通した中空部が形成された形材によって構成され、
前記中空部の上端部および下端部には、前記建具の見込み方向において室内側熱膨張耐火材および室外側熱膨張耐火材が向かい合って配置され、
前記中空部の上端部および下端部
のそれぞれにおける前記室内側熱膨張耐火材および前記室外側熱膨張耐火材の対向位置から上下方向に外れた位置に可燃性部材が配置されている
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記形材の上端部および下端部のうちの少なくとも一方には、可燃性部材が装着され、
前記室内側熱膨張耐火材および前記室外側熱膨張耐火材は、前記建具の見込み方向において前記可燃性部材を間に挟んで配置されている
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具において、
前記形材を補強する補強材が前記中空部に配置され、
前記室内側熱膨張耐火材および前記室外側熱膨張耐火材のうちの少なくとも一方は、前記補強材に取り付けられている
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項3に記載の建具において、
前記補強材は、前記室内側熱膨張耐火材および前記室外側熱膨張耐火材のうちの一方が
取り付けられた補強見付け片部と、前記補強見付け片部の両側縁部に連続した一対の補強見込み片部とを有し、
前記形材は、前記室内側熱膨張耐火材および前記室外側熱膨張耐火材のうちの他方が取り付けられた見付け片部を有し、
前記補強材および前記見付け片部によって前記中空部が形成されている
ことを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項4に記載の建具において、
前記内召合せ框は、前記形材によって構成され、
前記一対の補強見込み片部のうちの一方には、クレセント錠がねじ止めされている
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時に枠材や框材の中空部を熱膨張耐火材によって閉塞する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠内に内障子および外障子が引き違い可能に配置されたサッシが知られている(特許文献1参照)。内障子および外障子は、上框、下框、戸先框、召合せ框およびガラスを框組みしてそれぞれ構成されている。
【0003】
各召合せ框には、上下方向に沿った中空部が形成されており、この中空部には補強材が設置されている。各召合せ框の中空部は、室内外の見付け片部と左右の見込み片部とによって形成されており、各補強材において室内外の見付け片部のうちの一方に寄り添った部分に加熱発泡材(熱膨張耐火材)が取り付けられている。
このサッシは、火災時に、補強材に取り付けられた熱膨張耐火材が発泡して各召合せ框の中空部を塞ぐ構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のサッシでは、各補強材において各召合せ框の室内外の見付け片部のうちの一方に寄り添った部分に取り付けられた熱膨張耐火材が火災時に発泡して、各召合せ框の中空部を塞ぐ構成とされている。このため、熱膨張耐火材が前記一方の見付け片部側から当該見付け片部に対向する他方の見付け片部側まで熱膨張して中空部を塞ぐこととなるので、熱膨張耐火材が他方の見付け片部側に到達するまで時間がかかり、可燃性部材のある箇所に火が入り込んで当該可燃性部材に引火するおそれがある。
なお、各召合せ框の中空部に限られず、各種の枠材や框材に形成された中空部に熱膨張耐火材を配置する場合にも、前述同様に時間がかかる。
【0006】
本発明の目的は、火災時に枠材や框材に形成された中空部を速やかに塞げる構成にできる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具は、枠体と、前記枠体内に配置された障子とを備えた建具であって、前記枠体は、上枠、下枠および左右の縦枠によって構成され、前記障子は、上框、下框および左右の縦框によって形成された框体の内方に面材を配置して構成され、前記左右の縦枠および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つは、上端から下端まで貫通した中空部が形成された形材によって構成され、前記中空部の上端部および下端部には、前記建具の見込み方向において室内側熱膨張耐火材および室外側熱膨張耐火材が向かい合って配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、火災時に枠材や框材に形成された中空部を速やかに塞げる構成にできる建具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る引き違い窓を示す横断面図。
【
図2】前記実施形態に係る引き違い窓を示す縦断面図。
【
図3】前記実施形態に係る引き違い窓の内召合せ框を示す側面図。
【
図4】
図3に示す内召合せ框の上端および下端を示す説明図。
【
図5】
図3に示す内召合せ框の上端および下端における熱膨張耐火材の熱膨張状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1,2において、本実施形態に係る建具としての引き違い窓1は、建物躯体50の開口部51に設置されるものである。引き違い窓1は、窓枠2(枠体)と、左右引き違い形式にスライド可能に窓枠2内に配置される内障子3および外障子4とを備えている。
ここで、図に示すX、Y、Z軸方向は互いに直交しており、本実施形態では、X軸方向は後述する左右の縦枠23,24の見付け方向に沿っており、Y軸方向は後述する上枠21および下枠22の見付け方向に沿っており、Z軸方向は引き違い窓1の見込み方向に沿っている。
【0011】
窓枠2は、上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24を枠組みして構成されている。
上枠21は、
図2に示すように、上枠材21A,21Bを断熱材6によって連結して構成されており、上枠材21Aには、上レール212,213が形成されており、上枠材21Aよりも室内側に位置した上枠材21Bには、上レール211が形成されている。上枠材21A,21Bは、アルミ押出形材によって形成されており、上枠材21Bには、樹脂製カバー251が装着されている。
【0012】
下枠22は、
図2に示すように、下枠材22A,22Bを断熱材6によって連結して構成されており、下枠材22Aには、下レール222,223が形成されており、下枠材22Aよりも室内側に位置した下枠材22Bには、下レール221が形成されている。下枠材22A,22Bは、アルミ押出形材によって形成されており、樹脂製カバー252,253が装着されている。下枠材22Aには中空部26が形成されている。
【0013】
窓枠2の上レール211および下レール221には、内障子3が左右方向にスライド可能に係合されている。窓枠2の上レール212および下レール222には、外障子4が左右方向にスライド可能に係合されている。
縦枠23,24は、
図1に示すように、引き違い窓1の見込み方向に沿って形成されており、各室内側部分に樹脂製カバー254,255が装着されている。
【0014】
内障子3は、アルミ押出形材および難燃性の樹脂押出形材が複合して形成された上框31、下框32、左右の縦框33,34およびガラスパネル等の面材35を框組みして構成されている。
図1において右側に示す縦框33は、内障子3における戸先縦框であり、
図1において左側に示す縦框34は、内召合せ框である。
【0015】
上框31は、
図2に示すように、アルミ製の上框材31Aと、上框材31Aよりも室内側に位置した樹脂製の上框材31Bとを備えている。
【0016】
上框材31Aは、上レール211が配置される上溝部を形成した上溝形成部311と、面材35の室外面に対向した対向片部312とを有している。また、上框材31Aには中空部313が形成されている。
上框材31Bは、上框材31Aの室内側部分に係合しており、面材35の室内面に対向した対向片部314を有している。
【0017】
また、上框31および面材35間にはガスケット9が介在されている。
【0018】
下框32は、
図2に示すように、アルミ製の下框材32Aと、下框材32Aよりも室内側に位置した樹脂製の下框材32Bとを備えている。
【0019】
下框材32Aは、下レール221が配置される下溝部を形成した下溝形成部321と、面材35の室外面に対向した対向片部322とを有している。下溝形成部321には戸車装置が装着されており、この戸車装置の戸車が下レール221に載置されている。
下框材32Bは、下框材32Aの室内側部分に係合しており、面材35の室内面に対向した対向片部324を有している。
【0020】
下框32および面材35間にはガスケット9が介在されている。
【0021】
縦框33(戸先縦框)は、
図1に示すように、アルミ製の縦框材33Aと、縦框材33Aよりも室内側に位置した樹脂製の縦框材33Bとを備えている。
【0022】
縦框材33Aは、室外見付け片部331と、室外見付け片部331に連続した見込み片部332,333と、見込み片部332,333に連続した係合見付け片部334とを有している。見込み片部333は、見込み片部332よりも縦框33の見付け方向において面材35側に位置している。室外見付け片部331のうち見込み片部333よりも縦框33の見付け方向内側に延出した部分は、面材35の室外面に対向した対向片部331Aとして構成されている。室外見付け片部331、見込み片部332,333および係合見付け片部334によって中空部335が形成されている。
縦框材33Bは、係合見付け片部334に係合しており、面材35の室内面に対向した対向片部336を有している。
【0023】
縦框33および面材35間にはガスケット9が介在されている。
さらに、室外見付け片部331および係合見付け片部334の各内面に沿って熱膨張耐火材10A,10Bがそれぞれ配置されている。熱膨張耐火材10A,10Bは、縦框材33Aの上端部および下端部にそれぞれ配置されており、熱膨張耐火材10A,10B同士は、縦框33の見込み方向において対向している。
【0024】
縦框34(内召合せ框)は、
図1,3,4に示すように、アルミ製の縦框材34Aと、縦框材34Aを室内側から覆って位置した樹脂製の縦框材34Bとを備えている。
なお、
図4(A)は縦框34の上端を示した図(後述する溝形成部材38およびキャップ部材37は図示省略)であり、
図4(B)は縦框34の下端を示した図(樹脂製のガイド部材39およびキャップ部材37は図示省略)である。
【0025】
縦框材34Aは、
図1,4に示すように、室外見付け片部341と、室外見付け片部341に連続した見込み片部342,343と、見込み片部342,343に連続した中空の係合枠部344とを有している。見込み片部343は、見込み片部342よりも縦框34の見付け方向において面材35側に位置している。
室外見付け片部341のうち見込み片部343よりも縦框34の見付け方向内側に延出した部分は、面材35の室外面に対向した対向片部341Aとして構成されている。室外見付け片部341には、後述する縦框44(外召合せ框)の係合片部444Bに係合可能な係合片部341Bが形成されている。また、室外見付け片部341および見込み片部342の連続部分には、縦框材34Bが係合する係合溝部346が形成されている。
室外見付け片部341、見込み片部342,343および係合枠部344によって中空部345が形成されている。この中空部345には、上下方向に沿った補強材36が配置されている。
補強材36は、
図4に示すように、見込み片部342,343に沿った一対の補強見込み片部361,362と、両側縁部が補強見込み片部361,362の室内端部に連続した補強見付け片部363とを有して断面略コ字状に形成されている。補強見込み片部361には、クレセント錠15がねじ止めされている。
この補強材36は、室外見付け片部341とともに中空部345を溝形成部材38、ガイド部材39やビスキャップ353が配置された箇所に応じた箇所に区切った中空部空間を形成している。
【0026】
縦框材34Bは、係合枠部344の見付け面に沿った室内見付け片部347と、室内見付け片部347に連続した見込み片部348,349とを有している。見込み片部348は、縦框材34Aの見込み片部342に沿って配置されているとともにその室外端部が係合溝部346に係合されている。見込み片部349の室外端部は面材35の室内面に対向して配置されているとともに係合枠部344に係合している。この縦框材34Bは、縦框材34Aの見込み片部342および係合枠部344を覆って配置されている。
なお、縦框34および面材35間にはガスケット9が介在されている。
【0027】
室外見付け片部341の内面および補強材36の補強見付け片部363の室外側の面に沿って熱膨張耐火材11A,11Bがそれぞれ配置されている。
熱膨張耐火材11A,11Bは、
図3に示すように縦框34の上端部側および下端部にそれぞれ配置されている。上方の熱膨張耐火材11A,11Bは、
図4(A)に示すように、縦框34の見込み方向において互いに対向して配置されている。下方の熱膨張耐火材11A,11Bは、
図4(B)に示すように、縦框34の見込み方向において互いに対向して配置されている。
【0028】
縦框34の上側の小口には、
図3に示す樹脂製の溝形成部材38および樹脂製のキャップ部材37が取り付けられている。溝形成部材38は、中空部345に嵌め込まれており、キャップ部材37は溝形成部材38よりも室内側部分において上側の小口を閉塞している。溝形成部材38によって形成された溝部には上レール211が配置される。上側の熱膨張耐火材11A,11Bは、縦框34の見込み方向において溝形成部材38に対向して配置されている。
【0029】
縦框34の下側の小口には、
図3に示す樹脂製のガイド部材39およびキャップ部材37が取り付けられている。ガイド部材39は、中空部345を形成している見込み片部342に嵌装されており、キャップ部材37は、ガイド部材39よりも室内側部分において下側の小口を閉塞している。
また、縦框材34Aの見込み片部342には、ビスが挿通される孔部が形成されており、各孔部には樹脂製のビスキャップ353が装着されている。上側の熱膨張耐火材11A,11Bは、縦框34の上側の小口から下方に延びてビスキャップ353を間にして対向して配置されている。下側の熱膨張耐火材11A,11Bは、縦框34の下側の小口から上方に延びてビスキャップ353を間に挟んで配置されている。
前述したキャップ部材37、溝形成部材38、ガイド部材39およびビスキャップ353は、可燃性部材である。
【0030】
外障子4は、上框41、下框42、左右の縦框43,44およびガラスパネル等の面材45を框組みして構成されている。上框41、下框42および縦框43は、アルミ押出形材および難燃性の樹脂押出形材が複合して形成されており、縦框44は、アルミ押出形材によって形成されている。
図1において左側に示す縦框43は、外障子4における戸先縦框であり、
図1において右側に示す縦框44は、外召合せ框である。
【0031】
上框41は、
図2に示すように、アルミ製の上框材41Aと、上框材41Aよりも室内側に位置した樹脂製の上框材41Bとを備えている。
【0032】
上框材41Aは、上レール212が配置される上溝部を形成した上溝形成部411と、面材45の室外面に対向した対向片部412とを有している。また、上框材41Aには中空部413が形成されている。
上框材41Bは、上框材41Aの室内側部分に係合しており、面材45の室内面に対向した対向片部414を有している。
【0033】
上框41および面材45間にはガスケット9が介在されている。
【0034】
下框42は、
図2に示すように、アルミ製の下框材42Aと、下框材42Aよりも室内側に位置した樹脂製の下框材42Bとを備えている。
【0035】
下框材42Aは、下レール222が配置される下溝部を形成した下溝形成部421と、面材45の室外面に対向した対向片部422とを有している。下溝形成部421には戸車装置が装着されており、この戸車装置の戸車が下レール222に載置されている。
下框材42Bは、下框材32Aの室内側部分に係合しており、面材45の室内面に対向した対向片部424を有している。
【0036】
下框42および面材45間にはガスケット9が介在されている。
【0037】
縦框43(戸先縦框)は、
図1に示すように、アルミ製の縦框材43Aと、縦框材43Aよりも室内側に位置した樹脂製の縦框材43Bとを備えている。
【0038】
縦框材43Aは、室外見付け片部431と、室外見付け片部431に連続した見込み片部432,433と、見込み片部432,433に連続した係合見付け片部434とを有している。見込み片部433は、見込み片部432よりも縦框43の見付け方向において面材45側に位置している。室外見付け片部431のうち見込み片部433よりも縦框43の見付け方向内側に延出した部分は、面材45の室外面に対向した対向片部431Aとして構成されている。室外見付け片部431、見込み片部432,433および係合見付け片部434によって中空部435が形成されている。
縦框材43Bは、係合見付け片部434に係合しており、面材45の室内面に対向した対向片部436を有している。
【0039】
縦框43および面材45間にはガスケット9が介在されている。
さらに、室外見付け片部431および係合見付け片部434の各内面に沿って熱膨張耐火材10A,10Bがそれぞれ配置されている。熱膨張耐火材10A,10Bは、縦框材43Aの上端部および下端部にそれぞれ配置されており、熱膨張耐火材10A,10B同士は、縦框43の見込み方向において対向している。
【0040】
縦框44(外召合せ框)は、
図1に示すように、室外見付け片部441と、室外見付け片部441に連続した見込み片部442,443と、見込み片部442,443に連続した室内見付け片部444とを有している。見込み片部443は、縦框44の見付け方向において見込み片部442よりも面材45側に位置している。室外見付け片部441は、面材45の室外面に対向した対向片部441Aを有しており、室内見付け片部444は、面材45の室内面に対向した対向片部444Aを有している。室内見付け片部444には、前述した縦框34の係合片部341Bに係合する係合片部444Bが形成されている。
室外見付け片部441、見込み片部442,443および室内見付け片部444によって中空部445が形成されている。この中空部445には、上下方向に沿った補強材46が配置されている。
補強材46は、見込み片部442,443に沿った補強見込み片部461,462と、補強見込み片部461,462の室外端部に連続した補強見付け片部463とを有して断面略コ字状に形成されている。
なお、縦框44には、クレセント錠15が掛かる錠受け16が取り付けられている。
【0041】
縦框44および面材45間には、ガスケット9が介在されている。
さらに、補強見付け片部463の室内面に沿って熱膨張耐火材11Aが配置されており、室内見付け片部444の内面に沿って熱膨張耐火材11Bが配置されている。
熱膨張耐火材11A,11Bは、縦框44の上端部および下端部にそれぞれ配置されている。各熱膨張耐火材11A,11Bは、縦框44の見込み方向において対向して配置されている。
【0042】
[本実施形態の作用]
以下、本実施形態に係る引き違い窓1の火災時における作用について説明する。
火災時に枠材や框材が温度上昇し、熱膨張耐火材10A,10Bおよび熱膨張耐火材11A,11Bも熱膨張温度に達すると発泡を開始して熱膨張する。
【0043】
内障子3の縦框33側の各熱膨張耐火材10A,10Bは、引き違い窓1の見込み方向において互いに接近し、中空部335の上端部および下端部を閉塞する。これにより、縦框33の中空部335に煙突効果による空気の流れが発生することを抑制できる。
【0044】
内障子3の縦框34の上端部における熱膨張耐火材11A,11Bは、
図5(A)に示すように熱膨張して引き違い窓1の見込み方向において互いに接近し、縦框材34Aおよび補強材36によって形成された中空部345の上端部を閉塞するとともに、溝形成部材38および上側のビスキャップ353を中空部345側から覆う。内障子3の縦框34の下端部における熱膨張耐火材11A,11Bは、
図5(B)に示すように熱膨張して引き違い窓1の見込み方向において互いに接近し、縦框材34Aおよび補強材36によって形成された中空部345の下端部を閉塞するとともに、ガイド部材39およびビスキャップ353を中空部345側から覆う。これにより、縦框34の中空部345に煙突効果による空気の流れが発生することを抑制し、中空部345において溝形成部材38、ガイド部材39やビスキャップ353に中空部345側から引火しないようにこれらを熱膨張耐火材11A,11Bによって覆える。
【0045】
外障子4の縦框43側の各熱膨張耐火材10A,10Bは、引き違い窓1の見込み方向において互いに接近し、中空部435の上端部および下端部を閉塞する。これにより、縦框43の中空部435に煙突効果による空気の流れが発生することを抑制する。
【0046】
外障子4の縦框44の上端部における熱膨張耐火材11A,11Bは、熱膨張して引き違い窓1の見込み方向において互いに接近し、縦框34の中空部445の上端部を閉塞する。外障子4の縦框44の下端部における熱膨張耐火材11A,11Bは、熱膨張して引き違い窓1の見込み方向において互いに接近し、縦框44の中空部445の下端部を閉塞する。これにより、縦框44の中空部445に煙突効果による空気の流れが発生することを抑制する。
【0047】
[本実施形態の効果]
(1)前記実施形態では、引き違い窓1は、窓枠2と、窓枠2内に配置された障子3(4)とを備え、窓枠2は、上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24によって構成され、障子3(4)は、上框31(41)、下框32(42)および左右の縦框33,34(43,44)によって形成された框体の内方に面材35(45)を配置して構成され、左右の縦框33,34(43,44)は、上端から下端まで貫通した中空部335,345(435,445)が形成された形材によって構成され、中空部335,345(435,445)の上端部および下端部には、引き違い窓1の見込み方向において室内側熱膨張耐火材10B,11Bおよび室外側熱膨張耐火材10A,11Aが向かい合って配置されていることを特徴とする。
上記構成を有するため、火災時に熱膨張温度に達した室内側熱膨張耐火材10B,11Bおよび室外側熱膨張耐火材10A,11Aが熱膨張して、引き違い窓1の見込み方向において互いに接近するので、例えば室内側熱膨張耐火材10B,11Bおよび室外側熱膨張耐火材10A,11Aのうちのいずれか一方だけを備え、この一方の熱膨張耐火材を熱膨張して枠材や框材の中空部を塞ぐ場合と比べ、中空部335,345(435,445)を速やかに塞ぐことができる。このため、中空部335,345(435,445)に可燃性部材が配置されていても、煙突効果による空気の流れが発生して当該可燃性部材に引火するおそれを低減できる。
(2)縦框34の上端部および下端部には、可燃性部材であるビスキャップ353が装着され、室内側熱膨張耐火材11Bおよび室外側熱膨張耐火材11Aは、引き違い窓1の見込み方向においてビスキャップ353を間に挟んで配置されている。
このような構成によれば、火災時に室内側熱膨張耐火材11Bおよび室外側熱膨張耐火材11Aが熱膨張して互いに接近することによって、ビスキャップ353を中空部345側から覆うことができ、中空部345においてビスキャップ353に引火するおそれをさらに低減できる。
(3)縦框34(44)を補強する補強材36(46)が中空部345(445)に配置され、室内側熱膨張耐火材11Bは、補強材36(46)に取り付けられている。
このため、室内側熱膨張耐火材11Bを縦框33(34)の内面に直接に取り付ける場合と比べ、室内側熱膨張耐火材11Bを取り付けた補強材36(46)を中空部345(445)に挿入することによって当該室内側熱膨張耐火材11Bを中空部345(445)に簡単に配置できる。
(4)補強材36は、室内側熱膨張耐火材11Bが取り付けられた補強見付け片部363と、補強見付け片部363の両側縁部に連続した一対の補強見込み片部361,362とを有し、縦框34は、室外側熱膨張耐火材11Aが取り付けられた室外見付け片部341(見付け片部)を有し、補強材36および室外見付け片部341によって中空部345が形成されている。
このため、補強材36および縦框34の室外見付け片部341によって当該縦框34内のうち溝形成部材38、ガイド部材39やビスキャップ353等の可燃性部材がある位置に応じた箇所に中空部345を形成でき、この中空部345を補強見付け片部363および室外見付け片部341に取り付けられた室内側熱膨張耐火材11Bおよび室外側熱膨張耐火材11Aによって効率よく閉塞できる。
(5)内障子3は、左右方向にスライド可能に窓枠2内に配置され、左右の縦框33,34のうちの一方の縦框34は、前述した複合形材によって構成された内召合せ框(召合せ框)であり、一対の補強見込み片部361,362のうちの一方の補強見込み片部361には、クレセント錠15がねじ止めされている。
このため、室内側熱膨張耐火材11Bが取り付けられた補強材36を利用してクレセント錠15を固定できる。これにより、クレセント錠15を固定するための裏板などが不要となるので、引き違い窓1の組立てを簡略化できるとともに製造コストを削減できる。
【0048】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、引き違い窓1の見込み方向において室内側熱膨張耐火材11Bおよび室外側熱膨張耐火材11A間にビスキャップ353が配置されているが、これに限定されず、例えばビスキャップ353を中空部345側から覆わなくても引火する可能性が低い場合には、ビスキャップ353は、室内側熱膨張耐火材11Bおよび熱膨張耐火材11Aの対向位置から上下方向に外れた位置に配置されていてもよい。
【0049】
前記実施形態では、縦框34(44)の中空部345(445)に配置された補強材36(46)に熱膨張耐火材11B(11A)が貼り付けられているが、これに限られず、当該熱膨張耐火材11B(11A)を縦框34(44)に直接に貼り付けることによって中空部345(445)に配置してもよい。
【0050】
前記実施形態では、框材31~34、41~43は、アルミ押出形材および樹脂押出形材によって形成された複合形材によって構成されているが、これに限られず、例えばアルミ押出形材によって構成されていてもよい。
【0051】
前記実施形態では、内障子3の縦框33,34および外障子4の縦框43,44の各中空部335,345,435,445に室内側熱膨張耐火材10B,11Bおよび室外側熱膨張耐火材10A,11Aを引き違い窓1の見込み方向において向かい合わせて配置したが、これら框材の中空部に限られず、例えば、窓枠2の各枠材に上端および下端で開口した上下方向に沿った中空部に室内側熱膨張耐火材および室外側熱膨張耐火材を引き違い窓1の見込み方向において向かい合わせて配置してもよい。
【0052】
前記実施形態では、引き違い窓1を建具として説明したが、これのほか、中空部が形成された枠材や框材を備えていれば、片引き窓、固定窓、開き窓、戸、扉、ドアなどであってもよい。
【0053】
[本発明のまとめ]
本発明の建具は、枠体と、前記枠体内に配置された障子とを備えた建具であって、前記枠体は、上枠、下枠および左右の縦枠によって構成され、前記障子は、上框、下框および左右の縦框によって形成された框体の内方に面材を配置して構成され、前記左右の縦枠および前記左右の縦框のうちの少なくとも一つは、上端から下端まで貫通した中空部が形成された形材によって構成され、前記中空部の上端部および下端部には、前記建具の見込み方向において室内側熱膨張耐火材および室外側熱膨張耐火材が向かい合って配置されていることを特徴とする。
【0054】
本発明の建具によれば、火災時に熱膨張温度に達した室内側熱膨張耐火材および室外側熱膨張耐火材が熱膨張して、建具の見込み方向において互いに接近するので、例えば室内側熱膨張耐火材および室外側熱膨張耐火材のうちのいずれか一方だけを備え、この一方の熱膨張耐火材を熱膨張して枠材や框材の中空部を塞ぐ場合と比べ、中空部を速やかに塞ぐことができる。このため、可燃性部材が配置された中空部に煙突効果による空気の流れが発生して当該可燃性部材に引火するおそれを低減できる。
【0055】
本発明の建具では、前記形材の上端部および下端部のうちの少なくとも一方には、可燃性部材が装着され、前記室内側熱膨張耐火材および前記室外側熱膨張耐火材は、前記建具の見込み方向において前記可燃性部材を間に挟んで配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、火災時に室内側熱膨張耐火材および室外側熱膨張耐火材が熱膨張して互いに接近することによって、ビスキャップなどの可燃性部材を覆うことができ、中空部において可燃性部材に引火するおそれをさらに低減できる。
【0056】
本発明の建具では、前記形材を補強する補強材が前記中空部に配置され、前記室内側熱膨張耐火材および前記室外側熱膨張耐火材のうちの少なくとも一方は、前記補強材に取り付けられていることが好ましい。
このような構成によれば、室内側熱膨張耐火材や室外側熱膨張耐火材を形材の内面に直接に取り付ける場合と比べ、室内側熱膨張耐火材や室外側熱膨張耐火材を取り付けた補強材を中空部に挿入することによって当該室内側熱膨張耐火材や室外側熱膨張耐火材を中空部に簡単に配置できる。
【0057】
本発明の建具では、前記補強材は、前記室内側熱膨張耐火材および前記室外側熱膨張耐火材のうちの一方が取り付けられた補強見付け片部と、前記補強見付け片部の両側縁部に連続した一対の補強見込み片部とを有し、前記形材は、前記室内側熱膨張耐火材および前記室外側熱膨張耐火材のうちの他方が取り付けられた見付け片部を有し、前記補強材および前記見付け片部によって前記中空部が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、補強材および形材の見付け片部によって当該形材内のうち可燃性部材などがある位置に応じた箇所に中空部を形成でき、この中空部を補強見付け片部および形材の見付け片部に取り付けられた室内側熱膨張耐火材および室外側熱膨張耐火材によって効率よく閉塞できる。
【0058】
本発明の建具では、前記障子は、左右方向にスライド可能に前記枠体内に配置され、前記左右の縦框のうちの一方は、前記形材によって構成された召合せ框であり、前記一対の補強見込み片部のうちの一方には、クレセント錠がねじ止めされていることが好ましい。
このような構成によれば、室内側熱膨張耐火材および室外側熱膨張耐火材のうちの一方が取り付けられた補強材を利用してクレセント錠を固定できる。これにより、クレセント錠を固定するための裏板などが不要となるので、建具の組立てを簡略化できるとともに製造コストを削減できる。
【符号の説明】
【0059】
1…引き違い窓(建具)、10A,10B,11A,11B…熱膨張耐火材、15…クレセント錠、16…錠受け、2…窓枠(枠体)、21…上枠、211~213…上レール、21A,21B…上枠材、22…下枠、221~223…下レール、22A,22B…下枠材、23,24…縦枠、251~255…樹脂製カバー、26,313,335,345,413,435,445…中空部、36,46…補強材、3,4…障子、31,41…上框、311,411…上溝形成部、311A,321A,411A,421A…側片部、311B,411B…底片部、312,322,324,331A,336,341A,412,414,422,424,431A,436,441A,444A…対向片部、31A,31B,41A,41B…上框材、32,42…下框、321,421…下溝形成部、323A,423A…見付け片部、32A,32B…下框材,42A,42B…下框材、33,34,43,44…縦框、331,341,431,441…室外見付け片部、332,333,342,343,348,349,432,433,442,443…見込み片部、334,434…係合見付け片部、33A,33B,34A,34B,43A,43B…縦框材、341B,444B…係合片部、344…係合枠部、346…係合溝部、347,444…室内見付け片部、35,45…面材、353…ビスキャップ、361,362,461,462…補強見込み片部、363,463…補強見付け片部、37…キャップ部材、38…溝形成部材、39…ガイド部材、50…建物躯体、51…開口部、6…断熱材、9…ガスケット。