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特許7174106付加製造中にマルチノズル押出機を動作させるためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】付加製造中にマルチノズル押出機を動作させるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20221109BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20221109BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20221109BHJP
   B29C 64/232 20170101ALI20221109BHJP
   B29C 64/236 20170101ALI20221109BHJP
   B29C 64/241 20170101ALI20221109BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20221109BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221109BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221109BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221109BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/118
B29C64/209
B29C64/232
B29C64/236
B29C64/241
B29C64/295
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021087236
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2021194914
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】16/898,062
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・エー・マンテル
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジー.・リン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・オニール
(72)【発明者】
【氏名】プリヤンカ・ディー.・グジラプ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジェイ.・ニストロム
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-523068(JP,A)
【文献】特開2020-001075(JP,A)
【文献】特表2020-509949(JP,A)
【文献】特開2020-015308(JP,A)
【文献】特開2019-064090(JP,A)
【文献】特開2018-086829(JP,A)
【文献】特開2019-188801(JP,A)
【文献】国際公開第2020/040719(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0015674(US,A1)
【文献】特開2017-105178(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130515(WO,A1)
【文献】特開2019-142089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0266244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
製造中に物体を支持するように構成されたプラットフォームと、
複数のノズルを有する押出機と、
前記押出機に動作可能に接続された少なくとも1つのアクチュエータであって、前記少なくとも1つのアクチュエータは、前記プラットフォームと平行なXーY平面内で前記押出機を移動させることと、前記XーY平面に対して垂直な軸を中心に前記押出機を回転させることと、前記XーY平面に対して垂直な前記軸に沿った、前記押出機と前記プラットフォームとの間の距離を変化させることと、を行うように構成された、少なくとも1つのアクチュエータと、
前記押出機及び前記少なくとも1つのアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラであって、
物体の水平スライスデータ及び前記物体を形成するための数値制御プログラミング命令を受信することと、
前記数値制御プログラミング命令を修正して、物体形成中に前記物体と隣接する層に連結スワスを形成することと
前記数値制御プログラミング命令を修正して、前記少なくとも1つのアクチュエータを動作させて、前記押出機を前記X-Y平面内で移動させることと、
前記押出機が前記X-Y平面内で移動している間に前記押出機を動作させて、隣接するスワスが間隙によって分離された複数のスワスを有する第1の層を形成し、複数のスワスを有する第2の層を形成することであって、前記第2の層における前記複数のスワスの各スワスが、前記第1の層における隣接するスワス間の前記間隙と同じ方向に延在し、前記第2の層における前記複数のスワスの各スワスが、前記第1の層における前記隣接するスワスを分離している前記間隙を充填すること、及び前記間隙を形成する前記隣接するスワスの各部分の一部分を覆うことの両方を行う、形成することと、
前記数値制御プログラミング命令を修正して、前記押出機を動作させて、間隙によって分離されたスワスの少なくとも2つのゾーンを有する第3の層を形成することであって、スワスの少なくとも1つのゾーンにおける前記間隙の長手方向軸が、スワスの他のゾーンにおける前記間隙の長手方向軸と位置合わせされている、形成することと、
前記少なくとも2つのゾーンを接続するスワスを形成することであって、前記少なくとも2つのゾーンを接続する前記スワスは、前記少なくとも2つのゾーンを接続する前記スワスの長手方向軸が、前記少なくとも2つのゾーンにおける前記間隙の前記長手方向軸に対して垂直であるように配向されている、形成することと、を行うように構成された、コントローラと、を含む、装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記数値制御プログラミング命令を修正して、前記第1の層の形成中に前記ノズルから放出される熱可塑性材料の量よりも多い熱可塑性材料の量が前記押出機の前記ノズルから放出されるように、前記第2の層の形成中に前記押出機を動作させるように更に構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラが、
熱可塑性材料が前記第1の層における前記隣接するスワス間の前記間隙を充填するための付加的な時間を提供するために、前記間隙が延在する前記同じ方向に前記押出機が移動する際に、前記押出機の移動を遅くするように前記少なくとも1つのアクチュエータを動作させるように更に構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラが、
別のアクチュエータを動作させて、前記押出機が、前記間隙が延在する前記同じ方向に移動する際に、固体押出材料が、前記押出機に動作可能に接続されたヒータに送給される速度を増加させて、前記第1の層における前記隣接するスワス間の前記間隙を充填するための付加的な熱可塑性材料を提供するように更に構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラが、
前記数値制御プログラミング命令を修正して、前記第2の層における前記スワスの形成中に前記押出機を移動させて、前記第1の層の上に固体層として前記第2の層を形成するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラが、
前記数値制御プログラミング命令を修正して、前記第2の層における前記スワスの形成中に、前記第1の層における前記スワスの形成中に前記押出機が移動された方向である方向に前記押出機を移動させるように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラが、
ヒータを動作させて、前記第1の層における前記間隙を充填する、前記第2の層における前記スワスを形成する前に、熱可塑性材料を加熱するように更に構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記ヒータが、前記押出機の外部にあり、前記コントローラが、間隙のいずれかの側で前記スワスに向かって熱を方向付けるように前記ヒータを動作させる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ヒータが、前記押出機内の熱可塑性材料を加熱するように構成されており、前記第1の層における前記スワスを形成するために、前記コントローラが、前記ヒータを動作させて、前記押出機内の前記熱可塑性材料を、前記押出機の前記ノズルから放出される前記熱可塑性材料の温度よりも高い温度まで加熱する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
付加製造システムを動作させるための方法であって、
コントローラを用いて、物体の水平スライスデータ及び前記物体を形成するための数値制御プログラミング命令を受信することと、
前記コントローラを用いて前記数値制御プログラミング命令を修正して、前記物体の隣接する層に連結スワスを提供することと、
前記修正された数値制御プログラミング命令を使用して、前記コントローラを用いて複数のノズルを有する押出機に動作可能に接続された少なくとも1つのアクチュエータを動作させて、プラットフォームと平行であるX-Y平面内で前記押出機を移動させ、前記X-Y平面に対して垂直な軸を中心に前記押出機を回転させ、前記X-Y平面に対して垂直な前記軸に沿った、前記押出機と前記プラットフォームとの間の距離を変化させることと、
前記修正された数値制御プログラミング命令を使用して、前記コントローラを用いて前記押出機を動作させて、前記プラットフォーム上での前記物体の形成中に、前記物体の前記隣接する層に前記連結スワスを形成することと、を含み、
前記数値制御プログラミング命令の前記修正が、
前記コントローラが前記押出機に動作可能に接続された前記少なくとも1つのアクチュエータを動作させて、前記押出機に対向するプラットフォームに平行な前記X-Y平面内で前記押出機を移動させ、前記押出機が前記X-Y平面内で移動されている間に前記押出機を動作させて、隣接するスワスが間隙によって分離されている複数のスワスを有する第1の層を形成し、複数のスワスを有する第2の層を形成するように、前記コントローラを用いて前記数値制御プログラミング命令を修正することを更に含み、前記第2の層の前記形成は、前記第2の層における前記複数のスワスの各スワスが前記第1の層における隣接するスワス間の前記間隙と同じ方向に延在し、前記第2の層における前記複数のスワスの各スワスが前記第1の層における前記隣接するスワスを分離している前記間隙を充填すること、及び前記間隙を形成する前記隣接するスワスの各部分の一部分を覆うことの両方を行うこと、及び
前記押出機を動作させて、間隙によって分離されたスワスの少なくとも2つのゾーンを有する第3の層を形成することであって、スワスの少なくとも1つのゾーンにおける前記間隙の長手方向軸が、スワスの他のゾーンにおける前記間隙の長手方向軸と位置合わせされている、形成すること、及び前記少なくとも2つのゾーンを接続するスワスを形成することであって、前記少なくとも2つのゾーンを接続する前記スワスは、前記少なくとも2つのゾーンを接続する前記スワスの長手方向軸が、前記少なくとも2つのゾーンにおける前記間隙の前記長手方向軸に対して垂直であるように配向されている、形成すること、を行う、方法。
【請求項11】
前記数値制御プログラミング命令の前記修正が、
前記第1の層の形成中に前記ノズルから放出される熱可塑性材料の量よりも多い熱可塑性材料の量が前記押出機の前記ノズルから放出されるように、前記コントローラが前記第2の層の形成中に前記押出機を動作させるように、前記コントローラを用いて前記数値制御プログラミング命令を修正することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記数値制御プログラミング命令の前記修正が、
付加的な熱可塑性材料が前記第1の層における前記隣接するスワス間の前記間隙を充填する時間を提供するために、前記間隙が延在する前記同じ方向に前記押出機が移動する際に、前記押出機の移動を遅くするように前記コントローラが前記少なくとも1つのアクチュエータを動作させるように、前記数値制御プログラミング命令を修正することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記数値制御プログラミング命令の前記修正が、
前記第1の層における前記隣接するスワス間の前記間隙を充填するための付加的な熱可塑性材料を提供するために、前記間隙が延在する前記同じ方向に前記押出機が移動する際に、前記押出機に動作可能に接続されたヒータに送給される固体押出材料の量を増加させるように前記コントローラが別のアクチュエータを動作させるように、前記数値制御プログラミング命令を修正することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記数値制御プログラミング命令の前記修正は、
前記コントローラが前記第2の層における前記スワスの形成中に前記押出機を移動させて、前記第1の層の上に固体層として前記第2の層を形成するように、前記数値制御プログラミング命令を修正することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記数値制御プログラミング命令の前記修正が、
前記第2の層における前記スワスの形成中に、前記第1の層における前記スワスの形成中に前記押出機が移動された方向である方向に前記コントローラが前記押出機を移動させるように、前記数値制御プログラミング命令を修正することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記数値制御プログラミング命令の前記修正が、
前記第1の層における前記間隙を充填する、前記第2の層における前記スワスを形成する前に、前記コントローラがヒータを動作させて、熱可塑性材料を加熱するように、前記数値制御プログラミング命令を修正することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記数値制御プログラミング命令の前記修正は、
前記第1の層における前記スワスを形成するために、前記コントローラが前記ヒータを動作させて、前記押出機内の前記熱可塑性材料を、前記押出機の前記ノズルから放出される前記熱可塑性材料の温度よりも高い温度まで加熱するように、前記数値制御プログラミング命令を修正することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元物体印刷機に使用されるマルチノズル押出機、より具体的には、このような押出機を有する異なる構造の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、付加製造デバイスが、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する付加プロセスを使用する。これらの技術のいくつかは、ABSプラスチックなどの押出材料を熱可塑性材料へと軟化又は溶融させ、次いで所定のパターンで熱可塑性材料を放出する押出機を使用する。印刷機は、典型的に、様々な形状及び構造を有する三次元印刷物体を形成する熱可塑性材料の連続層を形成するように、押出機を動作させる。三次元印刷物体の各層が形成された後、熱可塑性材料は、冷却し、硬化して、層を三次元印刷物体の下層に接着する。この付加製造方法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
多くの既存の三次元印刷機は、単一のノズルを通して材料を押出する単一の押出機を使用する。印刷ヘッドは、所定の経路内で移動して、三次元印刷物体用のモデルデータに基づいて、三次元印刷物体の支持部材又は以前に堆積した層の選択された場所に構築材料を放出する。しかしながら、構築材料を放出するために単一のノズルのみを有する印刷ヘッドを使用することは、三次元印刷物体を形成するためにかなりの時間を要することが多い。加えて、より大きいノズル径を有する印刷ヘッドは、三次元印刷物体をより迅速に形成することができるが、より高度で巧妙な物体に関してより微細な形状に構築材料を放出する能力に欠け、一方でより狭い直径を有するノズルは、より微細な巧妙な構造を形成することができるが、三次元物体を構築するためにより多くの時間を必要とする。
【0004】
単一のノズル押出機の制限に対処するために、マルチノズル押出機が開発された。これらのマルチノズル押出機では、ノズルは、共通のフェースプレート内に形成され、ノズルを通って押出される材料は、1つ以上のマニホールドからもたらされ得る。単一のマニホールドを有する押出機では、ノズルの全てが同じ材料を押出するが、マニホールドから各ノズルへの流体経路は、ノズルを選択的に開放及び閉鎖するように動作するバルブを含むことができる。この能力により、材料を押出するノズルの数を変更し、及びどのノズルが材料を押出するかを選択することによって、ノズルから押出された熱可塑性材料のスワスの形状を変えることが可能になる。異なるマニホールドを有する押出機では、各ノズルは、ノズルを選択的に開放及び閉鎖するように操作され得るバルブを含む、マニホールドのうちの1つから対応するノズルへの流体経路で異なる材料を押出することができる。この能力により、スワス内の材料の組成、並びに、ノズルから押出された熱可塑性材料のスワスの形状を変化させることが可能になる。また、これらの変形例は、材料を押出するノズルの数、及びどのノズルが材料を押出するかを変更することによって達成される。これらのマルチノズル押出機は、異なる材料が、異なるノズルから押出され、異なる押出機本体の移動を調整する必要なく物体を形成するために使用され得ることを可能にする。これらの異なる材料は、異なる色、物理的特性、及び構成を有する物体を製造するための付加製造システムの能力を向上させることができる。また、材料を押出するノズルの数を変更することにより、生成されるスワスのサイズが変更されて、物体縁部などの精密な特徴部形成が必要とされるエリア内に狭いスワスを提供し、かつその内部領域などの物体のいくつかのエリアを迅速に形成するように広いスワスを提供することができる。
【0005】
押出3D印刷を使用する物体の製造における1つの課題は、時折生じる、Z方向の層間の接着における強度の欠如である。層間の接着が不十分であることにより、印刷部品の有用性が制限される。層内の接着の強度は、互いに直角に層内に押出成形物を形成することによって強化することができるが、このタイプの構造は、垂直方向又はZ方向には達成することができない。3D印刷物体のZ方向の層接着を改善することは有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
新規な付加製造装置は、Z方向において物体層間に連結構造を形成して、形成される物体の構造的完全性を改善する。装置は、製造中に物体を支持するように構成されたプラットフォームと、複数のノズルを有する押出機と、押出機に動作可能に接続された少なくとも1つのアクチュエータであって、少なくとも1つのアクチュエータは、プラットフォームと平行なXーY平面内で押出機を移動させることと、XーY平面に対して垂直な軸を中心に押出機を回転させることと、XーY平面に対して垂直な軸に沿った、押出機とプラットフォームとの間の距離を変化させることと、を行うように構成された、少なくとも1つのアクチュエータと、押出機及び少なくとも1つのアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラと、を含む。コントローラは、物体の水平スライスデータ及び物体を形成するための数値制御プログラミング命令を受信することと、数値制御プログラミング命令を修正して、物体形成中に物体と隣接する層内に連結スワスを形成することと、を行うように構成されている。
【0007】
新規な付加製造システムを動作させる方法は、Z方向において物体層間に連結構造を形成して、形成される物体の構造的完全性を改善する。方法は、コントローラを用いて、物体の水平スライスデータ及び物体を形成するための数値制御プログラミング命令を受信することと、コントローラを用いて数値制御プログラミング命令を修正して、物体の隣接する層内に連結スワスを提供することと、修正された数値制御プログラミング命令を使用して、コントローラを用いて、複数のノズルを有する押出機に動作可能に接続された少なくとも1つのアクチュエータを動作させて、プラットフォームと平行であるX-Y平面内で押出機を移動させ、X-Y平面に対して垂直な軸を中心に押出機を回転させ、X-Y平面に対して垂直な軸に沿った、押出機とプラットフォームとの間の距離を変化させることと、修正された数値制御プログラミング命令を使用して、コントローラを用いて押出機を動作させて、プラットフォーム上での物体の形成中に物体の隣接する層に連結スワスを形成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
Z方向における物体層の形成を交互に行って、物体のZ軸に沿った物体完全性を改善する連結構造を形成する付加製造装置の前述の態様及び他の特徴は、添付の図面と関連して以下の記載において説明される。
【0009】
図1】Z方向における物体層の形成を交互に行って、物体のZ軸に沿った物体完全性を改善する付加製造装置を示す。
【0010】
図2】Z軸に沿った物体完全性を改善する、1つのタイプの連結構造の側面図である。
【0011】
図3】Z軸に沿った物体完全性を改善する、別のタイプの連結構造の側面図である。
【0012】
図4】Z軸に沿った物体完全性を改善する、オフセットされた連結構造の側面図である。
【0013】
図5】XY平面内で方向を交互にして、Z軸に沿った物体完全性を改善する、別のタイプの連結構造の上面図である。
【0014】
図6図1のシステムを動作させるためのプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示されるデバイスの環境、並びにデバイスの詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号は同様の要素を表す。
【0016】
本明細書において使用される際、「押出材料」という用語は、付加製造システムにおいて押出機によって放出されるべき熱可塑性材料を形成するために、軟化又は溶融される固体材料を指す。押出材料としては、厳しく限定されるものではないが、印刷プロセス中に、三次元印刷物体の永久部分を形成する「構築材料」及び印刷プロセス中に構築材料の部分を支持する一時的な構造体を形成し、次いで印刷プロセスの完了後に任意選択的に除去される「支持材料」の両方が挙げられる。構築材料の例としては、限定されるものではないが、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrene,ABS)プラスチック、ポリ乳酸(polylactic acid,PLA)、脂肪族又は半芳香族ポリアミド(ナイロン)、懸濁した炭素繊維又は他の凝集材料を含むプラスチック、導電性ポリマー、及び押出機を通した放出に好適な熱可塑性材料を製造するために熱的に処理することができる任意の他の形態の材料が挙げられる。支持材料の例としては、限定されるものではないが、高衝撃ポリスチレン(high-impact polystyrene,HIPS)、ポリビニルアルコール(polyvinyl acetate,PVA)、及び熱処理後に押出することが可能な他の材料が挙げられる。いくつかの押出用印刷機では、固体押出材料は、「フィラメント」として一般に知られる連続的な細長い長さの材料として供給される。このフィラメントは、押出材料フィラメントをスプール又は他の供給源から引張り、押出機内のマニホールドに流体接続されるヒータにフィラメントを送給する1つ以上のローラによって固体形態で提供される。例解された実施例は、フィラメントとしてヒータに供給される押出材料を使用するが、粒子状又は球状ボール固体押出材料などの、他の押出材料供給を使用することもできる。ヒータは、押出材料フィラメントを軟化又は溶融させて、マニホールド内に流れる熱可塑性材料を形成する。ノズルとマニホールドとの間に位置付けられたバルブが開放されると、熱可塑性材料の一部がマニホールドからノズルを通って流れ、熱可塑性材料の流れとして放出される。本明細書において使用される際、固体押出材料に適用される「溶融」という用語は、押出材料の相を軟化又は変化させて、三次元物体印刷機の動作中に押出機内の1つ以上のノズルを通して、得られる熱可塑性材料の押出を可能にするために、固体押出材料の温度の任意の上昇を指す。本明細書において使用される際、「熱可塑性材料」という用語は、溶融された固体押出材料を意味する。当業者であれば分かるように、特定の非晶質押出材料は、印刷機の動作中に純粋な液体状態に遷移しない。
【0017】
本明細書において使用される際、「押出機」という用語は、単一の流体チャンバにおいて固体押出材料を溶融し、1つ以上のノズルに接続されたマニホールドに、溶融された押出材料を提供する印刷機の構成要素を指す。いくつかの押出機は、熱可塑性材料がノズルを選択的に通って流れることを可能にするように、電子的に操作され得るバルブアセンブリを含む。バルブアセンブリは、2つ以上のノズルが、接続されたノズルを通して熱可塑性材料を押出するために、マニホールドに独立して接続されることを可能にする。本明細書において使用される際、「ノズル」という用語は、押出機内のマニホールドに流体接続され、それを通って、熱可塑性材料が材料受容表面に向かって放出される、押出機のフェースプレート内のオリフィスを指す。動作中、ノズルは、押出機がプロセス方向に移動される経路に沿って熱可塑性材料の実質的に連続的な直線スワスを押出することができる。コントローラは、バルブアセンブリ内のバルブを動作させて、バルブアセンブリにどのノズルが接続されて、熱可塑性材料を押出するかを制御する。ノズルの直径は、熱可塑性材料のラインの幅に影響を及ぼす。異なる押出機の実施形態は、より広いオリフィスを有するオリフィスサイズの範囲を有するノズルを含み、より狭いオリフィスによって生成されるラインの幅よりも大きい幅を有するラインを生成する。
【0018】
本明細書において使用される際、「マニホールド」という用語は、三次元物体印刷動作中に押出機内の1つ以上のノズルに送達するための熱可塑性材料の供給を保持する、押出機のハウジング内に形成された空洞を指す。本明細書で使用される際、「スワス」という用語は、押出機が三次元物体印刷動作中に材料受容表面上に形成する押出材料の任意のパターンを指す。一般的なスワスとしては、押出材料及び湾曲したスワスの直線的な直線配置が挙げられる。いくつかの構成では、押出機は、連続的な様式で熱可塑性材料を押出して、プロセス及びクロスプロセス方向の両方において押出材料の連続的な質量を有するスワスを形成し、一方で他の構成では、押出機は、断続的な様式で動作して、直線又は曲線経路に沿って配置される熱可塑性材料のより小さい群を形成する。三次元物体印刷機は、押出材料の異なるスワスの組み合わせを使用して様々な構造を形成する。加えて、三次元物体印刷機内のコントローラは、押出機を動作させて押出材料の各スワスを形成する前に、押出材料の異なるスワスに対応する物体画像データ及び押出機経路データを使用する。後述されるように、コントローラは、バルブアセンブリの動作、及び押出機の回転を任意選択的に調節して、三次元印刷動作中に、1つ以上のノズルを通って熱可塑性材料の複数のスワスを形成する。
【0019】
本明細書において使用される際、「プロセス方向」という用語は、押出機と押出機内の1つ以上のノズルから押出された熱可塑性材料を受容する材料受容表面との間の直線的な運動の方向を指す。湾曲したスワスの場合、曲線への接線がプロセス方向を特定する。材料受容表面は、付加製造プロセス中に三次元印刷物体又は部分的に形成された三次元物体の表面を保持する支持部材のいずれかである。本明細書に記載される例解的な実施形態では、1つ以上のアクチュエータは、支持部材の周りで押出機を移動させるが、代替的なシステム実施形態は、支持部材を移動させて、プロセス方向の相対運動を生成し、その間押出機は静止したままである。いくつかのシステムは、異なる運動軸に対する両方のシステムの組み合わせを使用する。
【0020】
本明細書において使用される際、「横断方向」という用語は、プロセス方向に垂直であり、押出機フェースプレート及び材料受容表面に平行な軸を指す。プロセス方向及びクロスプロセス方向は、押出機及び熱可塑性材料を受容する表面の移動の相対経路を指す。いくつかの構成では、押出機は、プロセス方向、クロスプロセス方向、又はその両方で延在することができるノズルのアレイを含む。押出機内の隣接するノズルは、クロスプロセス方向において所定の距離だけ分離される。いくつかの構成では、システムは、ラインがスワスを形成する際、押出機内のノズルから押出された熱可塑性材料のラインを分離する、対応するクロスプロセス方向距離を変更するために、押出機を回転させて、押出機内の異なるノズルを分離する有効なクロスプロセス方向距離を調節する。
【0021】
付加製造システムの動作中、押出機は、三次元物体印刷プロセス中に熱可塑性材料を受容する表面に対して、直線経路及び曲線経路の両方に沿ってプロセス方向に移動する。加えて、システム内のアクチュエータは、Z軸を中心に、押出機を任意選択的に回転させて、押出機が熱可塑性材料の各ライン間に所定の距離で熱可塑性材料の2つ以上のラインを形成するように、押出機内のノズルを分離する有効なクロスプロセス距離を調節する。本明細書において使用される際、「Z方向」という用語は、プロセス方向及びクロスプロセス方向が互いに直交する平面に対して垂直である移動の方向を指し、これは、本明細書において、X-Y平面と呼ばれることもある。押出機は、印刷物体の層内の二次元領域の外壁を形成するために外周の外側、及び熱可塑性材料を有する二次元領域の全て又は一部分を充填するために外周内部の両方に沿って移動する。
【0022】
図1は、以下により詳細に記載されるように、Z方向の層間に連結構造を形成するために、フェースプレート内のノズルを通して熱可塑性材料を押し出す押出機108を有する付加製造システム100を示す。印刷機100は、物体を形成するために平面運動を使用する印刷機として描写されるが、本明細書で記載されるように、他の印刷機アーキテクチャが、押出機及び押出機の回転を調整するように構成されたコントローラと共に使用されてもよい。これらのアーキテクチャは、デルタ-ボット、選択的コンプライアンスアセンブリロボットアーム(selective compliance assembly robot arm,SCARA)、多軸印刷機、非デカルト印刷機などが挙げられる。これらの代替的な実施形態における運動は、上記で定義したようなプロセス及びクロスプロセス方向を依然として有し、かつこれらの実施形態の押出機におけるノズル間隔は、クロスプロセス方向に関するノズル間隔を依然として画定する。図を簡略化するために1つのマニホールド216のみが図1内に示されているが、押出機108は、複数のマニホールド216を有することができる。一実施形態では、押出機108内の各マニホールド216は、異なる押出材料供給部110によって1対1の対応で送給される異なるヒータ208に動作可能に接続される。代替的に、各マニホールド216は、公知のように、複数の押出材料供給部110によって送給される複数のチャネル232を収容する単一のヒータ208に連結され得る。このような実施形態における各チャネルは、押出機108内のマニホールドに熱可塑性材料を供給して、各マニホールドが、他のマニホールドが受容される材料とは異なる材料を受容する。図1の押出機108では、各ノズル218は、各ノズルが同じ熱可塑性材料を押し出すように、押出機108内の単一のマニホールドに流体接続されている。異なるヒータによって供給される複数のマニホールドを有する実施形態では、ノズルの群は、異なるマニホールドに流体接続されており、そのため、群は、他のマニホールドに接続されたノズルの他の群から押し出された熱可塑性材料とは異なる熱可塑性材料を押し出すことができる。各ノズルからの熱可塑性材料の押出は、バルブアセンブリ204内のバルブを操作するコントローラ128によって選択的かつ独立して起動及び停止される。各ノズル218は、フェースプレート260で終端するため、ノズルから押出された熱可塑性材料は、拡散のためにフェースプレートによって操作することができる。
【0023】
図1の実施形態では、バルブアセンブリ204は、押出機108内のマニホールドと、押出機108内のマニホールドに接続されたノズルの各々との間にバルブを位置決めする。バルブアセンブリ204は、コントローラ128に動作可能に接続されているため、コントローラは、押出機108内の複数のノズルから熱可塑性材料を押出するためのバルブを開放及び閉鎖するように、アクチュエータを動作させることができる。具体的には、コントローラ128は、押出機108内のバルブに接続されたアセンブリ204内の異なるアクチュエータを起動及び停止させて、ノズルから熱可塑性材料を押出し、三次元印刷物体の各層に異なる熱可塑性材料のスワスを形成する。
【0024】
図1のシステム100はまた、押出機108内のマニホールドに接続される各ヒータ208のための押出材料分配システム212を含む。別個の供給部110からの押出材料は、システム100の動作中に所定の範囲内でヒータに接続されたマニホールド内の熱可塑性材料の圧力を維持する速度で、ヒータ208に送給される。分配システム212は、押出機108のマニホールド内の熱可塑性材料の圧力を調整するのに好適な一実施形態である。先で考察された代替的な実施形態では、複数の押出材料分配システム212は、複数の押出材料供給部110とヒータ208内のチャネル232のうちの1つとの間で1対1の対応で動作可能に接続される。加えて、両方の実施形態では、コントローラ128は、分配システム212が供給部によって供給部110からヒータに送給された固体押出材料を搬送する速度を制御するために、各分配システム212のためのアクチュエータに動作可能に接続される。ヒータ208は、駆動ローラ224を介してヒータ208に送給される押出材料220を軟化又は溶融させる。アクチュエータ240は、ローラ224を駆動し、コントローラ128に動作可能に接続されているため、コントローラは、アクチュエータがローラ224を駆動する速度を調整することができる。ローラ224の反対側の別のローラは、フリーホイーリングであるため、ローラ224が駆動される回転速度に従う。図1が、フィラメント220をヒータ208に移動させるための機械的ムーバとして、電気機械アクチュエータ及びドライバローラ224を使用する送給システムを描写する一方で、分配システム212の代替的な実施形態は、回転オーガ又はねじの形態の機械的ムーバを動作させるために、1つ以上のアクチュエータを使用する。オーガ又はねじは、供給部110からの固体押出材料を、押出材料粉末又はペレットの形態でヒータ208に移動させる。
【0025】
図1の実施形態では、ヒータは、コントローラ128に動作可能に接続された、電気抵抗加熱要素などの1つ以上の加熱要素228を含むステンレス鋼から形成された本体を有する。コントローラ128は、加熱要素228を選択的に電流に接続して、ヒータ208内のチャネル(1つ又は複数)内の押出材料220のフィラメントを軟化又は溶融させるように構成されている。図1は、固体フィラメント220として固相の押出材料を受容しているヒータ208を示す一方で、代替的な実施形態では、ヒータは、粉末又はペレット化された押出材料として固相の押出材料を受容することができる。冷却フィン236は、ヒータから上流のチャネル内の熱を減衰させる。冷却フィン236又はその付近のチャネル内で固体のままである押出材料の一部は、熱可塑性材料がマニホールド216への接続部ではなく任意の開口部からヒータから出ることを防止する封止部をチャネル内に形成し、これは、マニホールドに入るときに押出材料が熱可塑性状態に維持される温度を維持する。押出機108はまた、押出機内のマニホールド内の熱可塑性材料のために高温を維持するように、付加的な加熱要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、熱絶縁体は、押出機108の外部の部分を被覆して、押出機のマニホールド内の温度を維持する。また、ノズルの周囲の領域は、材料を熱可塑性状態に維持する温度で維持され、そのため、材料がフェースプレート内の開口部に進行する際、凝固を開始しない。
【0026】
マニホールド216内の熱可塑性材料の流体圧力を所定の範囲内に維持し、押出材料への損傷を回避し、ノズルを通る押出速度を制御するために、スリップクラッチ244は、供給部110からヒータにフィラメントを送給する各アクチュエータ240の駆動シャフトに動作可能に接続される。本明細書において使用される際、「スリップクラッチ」という用語は、物体を、設定点として知られる所定のレベルまで移動させるために、物体に摩擦力を加えるデバイスを指す。摩擦力のための所定の設定点についての範囲を超えるとき、デバイスはスリップし、そのためもはや物体に摩擦力を適用することはない。スリップクラッチは、ローラ224によってフィラメント220に及ぼされる力が、どのくらい頻繁に、どのくらい速く、又はどのくらい長くアクチュエータ240が駆動されるかを問わず、フィラメントの強度に対応する、設定点についての範囲内に留まることを可能にする。このほぼ一定の力は、アクチュエータ240をフィラメント駆動ローラ224の最速の予測される回転速度よりも速い速度で駆動するか、又はエンコーダホイール248をローラ224上に置き、センサ252で回転速度を感知することによって維持することができる。センサ252によって生成された信号は、ローラ224の角度回転を示し、コントローラ128はこの信号を受信して、ローラ224の速度を特定する。コントローラ128は、アクチュエータ240に提供される信号を調節して、アクチュエータの速度を制御するように更に構成されている。コントローラがアクチュエータ240の速度を制御するように構成されているとき、コントローラ128はアクチュエータ240を動作させ、その結果、その平均速度はローラ224の回転よりもわずかに速い。この動作は、駆動ローラ224上のトルクが常にスリップクラッチトルクの関数であることを確実とする。
【0027】
コントローラ128は、ローラ224の回転速度にわたってアクチュエータ出力軸のわずかに速い速度を特定するコントローラに接続された、メモリ内に記憶された設定点を有する。本明細書において使用される際、「設定点」という用語は、コントローラが構成要素を動作させて、設定点に対応するパラメータを設定点の周りの所定の範囲内に維持するために使用する、パラメータ値を意味する。例えば、コントローラ128は、アクチュエータ240を動作させる信号を変更して、設定点の周りの所定の範囲内の出力信号によって特定された速度で出力軸を回転させる。アクチュエータの命令された速度に加えて、バルブアセンブリ204内で開放及び閉鎖されるバルブの数、及びクラッチ用のトルク設定点もまた、フィラメント駆動システム212の動作に影響を及ぼす。ローラ224の得られた回転速度は、センサ252によって生成された信号によって特定される。コントローラ128内の比例積分微分(proportional-integral-derivative,PID)コントローラは、メモリ内に記憶された差動設定点を参照してこの信号からの誤差を識別し、コントローラによって出力された信号を調節して、アクチュエータ240を動作させる。代替的に、コントローラ128は、スリップクラッチのトルクレベルを変更することができ、又はコントローラ128は、トルクレベルを変更し、かつコントローラがアクチュエータを動作させる信号を調節することの両方ができる。
【0028】
スリップクラッチ244は、固定又は調節可能なトルク摩擦ディスククラッチ、磁気粒子クラッチ、磁気ヒステリシスクラッチ、フェロフルードクラッチ、空気圧クラッチ、又は永久磁気クラッチであり得る。磁気的に動作するクラッチタイプは、クラッチに電圧を印加することによって調節されたそれらのトルク設定点を有することができる。この特徴により、クラッチ上のトルク設定点が印刷条件を参照して変更されることを可能にする。「印刷条件」という用語は、物体の適切な形成のためにマニホールド内に必要とされる熱可塑性材料の量に影響を及ぼす、現在進行中の製造操作のパラメータを指す。これらの印刷条件としては、押出機に送給される押出材料のタイプ、押出機から放出される熱可塑性材料の温度、押出機がX-Y平面内で移動する速度、物体上に形成される特徴部の位置、押出機がプラットフォームに対して移動される角度などが挙げられる。
【0029】
図1に示される実施形態では、コントローラ128は、アクチュエータ150に1つ以上の信号を送信して、アクチュエータを動作させて、押出機のフェースプレートに対向するX-Y平面に平行に押出機108を移動させ、フェースプレート260に対向するビルドプラットフォームのX-Y平面に対して垂直であり、フェースプレートの中央ノズルを通るZ軸を中心に押出機108を回転させるように構成される。本明細書において使用される際、「構成された」という用語は、コントローラに関連して使用されるとき、コントローラによってアクセス可能なメモリ内に記憶されたプログラムされた命令を意味し、命令は、コントローラによって実行され、データを処理し、コントローラに動作可能に接続された1つ以上の構成要素を動作させることによって機能を実行する。押出機及びアクチュエータ150を制御するために、プログラムされた命令は、一実施形態では、gコードと呼ばれ、X軸、Y軸、及びZ軸における移動、バルブの動作、及びZ軸を中心とした押出機の回転のためのパラメータを含む。例えば、gコード命令は、G1 P511 X10.0 Y12.5 Z0.2 U180という形態を取り、これはコントローラがバルブを開放及び閉鎖して、511に対応するパターンに適合することを意味し、バイナリ値111111111に対応することにより、全てのノズルが開放され、押出機をX軸、Y軸、及びZ軸で座標10.0、12.5、0.2に移動させ、Z軸を中心に押出機を180度位置に回転させる。
【0030】
コントローラがシステム100を動作させるように実行する、gコード又は他の数値制御(NC)言語は、3Dスライサから取得される。3Dスライサは、典型的にはコンピュータ支援設計又はCADシステムである物体データソースから、形成される物体の表面に対応するデータを受信する。このようなソースからの物体表面データの共通フォーマットは、STLデータである。次いで、3Dスライサは、物体の3D水平スライスを生成し、これはまた、物体表面データ及びスライスを形成するのに必要なgコードからの、物体の内部に対応するデータも含む。システム100では、新規な3Dスライサ106は、以下により詳細に説明するように、Z方向における物体層の連結を強化する特徴部を有する水平スライスを生成する。代替的に、コントローラ128は、プログラム命令で構成することができ、命令は、コントローラによって実行されると、コントローラに、既知の3Dスライサから受信したgコードを修正させて、水平スライス内にZ方向連結特徴部を組み込む。
【0031】
物体層の形成の間に、コントローラ128はまた、アクチュエータ150内のZ軸アクチュエータを動作させて、押出機108又はプラットフォーム102をZ方向に移動させ、したがって、押出機108は、以前に形成された層の上に、別の層を形成することができる。システム100では、このZ方向距離は、層の水平スライスデータに対応する厚さを有する次の層を形成するのに十分な距離である。加えて、押出機108は、マルチノズル押出機であるため、押出機は、押出機がX-Y平面内で移動されるように配向されてもよく、ノズルによって放出される熱可塑性材料は、クロスプロセス方向に互いに接触し、ビーズではなく、放出された熱可塑性材料のリボンを形成する。これらのリボンは、X-Y平面における材料の隣接するリボン間の表面積接触を強化し、Z方向における物体の構造的完全性を改善する特徴部の充填を補助する。
【0032】
Z方向における物体の構造的完全性を改善する特徴部の一例を図2に示す。底層は、この例ではX方向と呼ばれる、プラットフォームを横切って押出機を移動させることによって印刷されたプラットフォーム102上の固体層204である。層が形成され、コントローラがZ軸アクチュエータを動作させて、押出機と直近に形成された層との間の垂直距離を調整した後、次の層208は、この例ではY方向と呼ばれる、図に示される平面内及び平面外に押出機を移動させることによって形成されるスワスで形成される。一実施形態では、各スワスは、名目上3.6mm幅であり、それらの間に間隙が残される。また、押出機又はプラットフォームをZ方向に移動させた後、次の層212は、間隙の上に形成されるスワスで形成される。このスワスは、前の層のスワスを被覆するだけでなく、前の層の隣接するスワスの間の間隙に入り、間隙を充填する余分な熱可塑性材料で形成される。この付加的な熱可塑性材料の量は、現在形成されている層と以前に形成された層との間に連結構造を形成する。付加的な熱可塑性材料は、T字形状のクロス部材を形成する前に付加的材料が間隙を充填するように、間隙に沿った押出機の移動を減速させることによってか、又はヒータに送給される固体押出材料の速度を増加させることによって提供される。連結構造は、層間の接合の面積を著しく増加させる。この増加した層接合の面積は、3つの方法で物体の垂直の構造的完全性を改善する。一例として、直近に形成された層と、直前に形成された層との間の接触の表面積は、大幅に増加する。別の例として、堆積される材料の量は、より多くなり、この熱可塑性材料は、境界面により多くの熱を加えて、間隙領域内の結合を補助する。最後に、層間の結合の方向は、ここで、以前に形成された層の表面上に材料を分配するだけで形成される場合よりも、X-Y平面においてより強くなる。マルチノズル押出機は、材料のリボンを形成することができるため、マルチパスプロセスで印刷される分離されたビーズよりも層の接着を促進する。層内の間隙の方向及び押出機が間隙を充填する際の押出機移動の方向を位置合わせする必要がある。押出機が間隙の方向に対して垂直に移動すると、放出された材料は、間隙を充填せず、層間の接合は、押出機が間隙方向と位置合わせされたときよりも弱くなる。
【0033】
本明細書では、「連結スワス」という用語は、スワス間の間隙で形成される、1つの層内のスワス、及び間隙を充填し、間隙を形成するスワスの少なくとも一部分を被覆する次の層内のスワスを意味する。最も一般的には、1つの層内の1対のスワスの間に空間を残すことによって間隙が生成され、この間隙は、前の層内に残ったスワス及び間隙が形成されたときに移動した際と同じ方向に押出機を移動させることによって形成される、次の層内のスワスによって充填される。典型的には、多くの連結スワスは、層及び次の層内に配置される。連結スワスはまた、次の層と次の層に続く層との間に、作製することができる。領域内の間隙は、間隙を有さない下層のエリアの上方に配置され、そのため、異なる層内の間隙は、互いに交互になる。押出機を同じ方向に移動させることによって形成される連結スワスを有する層の数は、任意の数であり得るが、この数を比較的少数の層、例えば2~4層に維持することにより、押出機を層内の充填エリアに対して異なる方向に移動させることができる。この制約により、X-Y平面における連結スワスの第1の群に対して垂直である連結スワスの形成が可能となる。連結スワスの方向を交互にすることにより、更なる構造的完全性が得られる。
【0034】
図3を参照すると、底部の2つ層304及び308は、4つの連結スワス、及びこれらの連結スワスを覆う固体層312を示す。本明細書において使用される際、「固体層」という用語とは、プロセス及びクロスプロセス方向に連続的であり、したがって層内に開放空間又は間隙が存在しない、スワスで形成された層を意味する。この固体層は、図3に示される連結スワスに対して垂直な方向における、連結層の次の群の基盤を形成するのに役立つ。物体の形成中、最大効率は、全てのノズルが開放された状態で押出機を動作させて、可能な限り最も広いスワスを形成することによって達成される。しかしながら、固体最上層が形成される場合、図3に示すように、間隙を含む層と固体層との間に不整合が生じ得る。この状況に対処するために、間隙は、押出機の縁部におけるものではなく、押出機の中央のノズルによって形成されるスワスで充填され、したがって間隙を充填するスワスの縁部が、間隙を形成するスワスの縁部と位置合わせされることを回避する。
【0035】
9つのノズル押出機を有する実施形態の一実施例では、間隙を形成するスワスは、9つのノズルのうちの8つが開放されて形成される。ノズルが0.2mmの直径を有するので、この動作は、0.4mmの間隙を残す。したがって、各スワスは、3.2mmの幅を有し、押出機のマニホールドは、通常のフィラメント速度の8/9の速度でフィラメントを送給された。間隙充填スワスは、全ての9つのノズルが開放され、マニホールドが通常のフィラメント速度の10/9の速度で送給されて形成され、3.6mm幅を有するスワス、及び間隙を充填するために必要な付加的な熱可塑性材料が提供された。
【0036】
連結スワスが有効であるために、間隙を充填する材料は、間隙内に材料の流れを提供するのに十分な温度を維持する必要がある。この条件は、いくつかの方法で満たされ得る。一例として、外部ヒータは、部品が作製されているプラットフォームに熱を加えて、部品温度が、間隙が充填される前に材料凝固を促進しないようにすることができる。また、外部ヒータは、間隙を有する層の表面に向かって熱を方向付けるように位置付けて、間隙内への熱可塑性材料流れのために十分な温度を維持することができる。押出機のヒータはまた、押出機のノズルによって放出される材料の温度を、間隙充填に適切な材料の流れを行うレベルまで上昇させるように動作することもできる。システムで使用される材料の選択はまた、放出された材料が間隙を充填するのに十分な流れを提供することができる。特に、ナイロン、PEEK、PEKK、又はTPUなどの半結晶性材料は、非晶質遷移材料よりも凝固のためにより多くの時間を要するため有用である。
【0037】
別のアプローチは、各層のスワスが同じ方向に形成された、多くの連結層を形成することである。図4に示されるように、各層404、408、及び412のスワスは、押出機を双方向に移動させることによって形成され、1つの層のスワスは、前の層の間隙を充填する一方で、また、同じ前の層の固体スワス層の上に間隙を形成する。次いで、この構造の最上部は、固体層(図示せず)で覆われる。
【0038】
図5に示されるように、連結スワスのゾーンを使用して構造的完全性を向上させることができる。下層は、層504である。この層は、同じ方向に形成された間隙516を有する2つのゾーン508及び512を有し、これらのゾーンは、固体スワス520によって分離される。この層は、2つのゾーンの上に、固体である層524によって被覆されるが、層524は、層504内の間隙の方向に対して垂直である方向に延在する間隙528を有する。層524が層504を覆うとき、間隙528は、固体スワス520によって提供されるフロアを有する。層532は、90度回転した層504である。この層が層504と層524との組み合わせの上に形成される場合、層532における固体スワスのうちの1つが層524内の間隙を充填し、90度回転された以外は層524のような別の層のための間隙536を提供する。この交互パターンは、固体キャッピング層が連結構造を完成するまで継続することができる。
【0039】
押出機を動作させて、連結構造を形成するためのプロセスを図6に示す。プロセスは、コントローラに動作可能に接続されたメモリに記憶されたプログラム命令を実行するコントローラによって実行され、コントローラは、命令を実行すると、データを処理し、コントローラに動作可能に接続された構成要素を動作させて、プロセスの流れ図に記載されたタスクを形成する。
【0040】
プロセス600は、3Dスライサから水平スライス及びgコードを受信することによって開始する(ブロック604)。次いで、コントローラは、連結構造を組み込むように修正されるスライスを特定し、それらのスライスのためのgコードを修正して、対応する層内に間隙を形成するか、又は以前に形成された層内の間隙を充填する(ブロック608)。コントローラは、gコードを実行して、アクチュエータ及び押出機を動作させて、連結層を形成し(ブロック612)、連結構造が完了したとき(ブロック616)、コントローラは、押出機を動作させて、固体層を形成する(ブロック620)。
【0041】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される、様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6