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  • 特許-シラン官能化イオン液体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】シラン官能化イオン液体
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20221109BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20221109BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20221109BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20221109BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20221109BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20221109BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20221109BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20221109BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221109BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M6/16 A
H01M12/06 G
H01G11/62
H01G11/60
H01G11/64
H01M10/052
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021144180
(22)【出願日】2021-09-03
(62)【分割の表示】P 2018524243の分割
【原出願日】2016-12-14
(65)【公開番号】P2022003638
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】62/266,761
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/266,767
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/266,773
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518157229
【氏名又は名称】ノームズ テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】モガンティ,スルヤ
(72)【発明者】
【氏名】トレス,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】アバーテ,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】シニクロピ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ズー,シャオジン
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0207176(US,A1)
【文献】特開2010-209299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0333374(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102372732(CN,A)
【文献】特開2009-286699(JP,A)
【文献】特開2002-260729(JP,A)
【文献】特開2002-222740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0288031(US,A1)
【文献】特開2002-208433(JP,A)
【文献】特表2015-514717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/00-11/86
H01M6/00-6/22
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01M12/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギー貯蔵デバイスのための電解質であって、該電解質は、
非プロトン性の有機溶媒と、
金属の塩と、
添加剤と、
イオン化合物のアニオンおよびイオン化合物のカチオンを含むイオン化合物と、
を含み、
ここでイオン化合物のカチオンは、シラン官能基を含む官能基、および以下の式で表される化学式(II)のイオン化合物のカチオンに結合している第2の官能基に結合しており、
【化1】
ここで、第2の官能基は、ハロゲン化物、酸素、窒素、硫黄、リン、エステル、エーテル、ケトン、カルボニル、アルコキシアルカン、アルケン、アリール、ニトリル、シロキサン、スルホン、チオール、フェノール、ヒドロキシル、アミン、イミド、アルデヒド、カルボン酸、アルキン、炭酸塩、もしくは無水物を含む官能性部分を表し、ここで、その部分における炭素または水素原子のいずれかは、ハロゲン化物、酸素、窒素、硫黄、リン、アルカン、エステル、エーテル、ケトン、カルボニル、アルコキシアルカン、アルケン、アリール、ニトリル、シロキサン、スルホン、チオール、フェノール、ヒドロキシル、アミン、イミド、アルデヒド、カルボン酸、アルキン、炭酸塩、もしくは無水物でさらに置換され、ここで、イオン化合物のカチオンは、オニウム、スルホニウム、ホスホニウム、または窒素、酸素、ケイ素もしくは硫黄から選択される環員子として1から3のヘテロ原子を持つ任意の5または6員の複素環を含み、
、R、Rは、各々独立してメチル基、またはC-Cアルキル基、アルケニル基、アリール基もしくはアルキニル基であり、
Lは、メチレン基、またはC-Cアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エステル基、カルボニレン基、フェニレン基、もしくはアリレン基であるリンカーであって、リンカーの-C-を置き換えるP、ハロゲン化物、Si、B、S、OまたはN原子に対する結合を随意に含むが、化学式(II)のシラン官能基に対する直接的なOの結合を除く、リンカーであり、
そしてイオン化合物のアニオンは、ハロゲン化物、硝酸塩、リン酸塩、イミド、ホウ酸塩、もしくはホスファジンを含み、
前記イオン化合物のアニオンがTFSIであり、前記イオン化合物のカチオンがメチルピロリジニウムである
ことを特徴とする電解質。
【請求項2】
非プロトン性の有機溶媒は、開鎖もしくは環状のカーボネート、カルボン酸エステル、亜硝酸エステル、エーテル、スルホン、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グライム、クラウンエーテル、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の電解質の調合物。
【請求項3】
金属の塩は、アルカリ金属カチオンの塩、またはアルミニウムもしくはマグネシウムを含む、請求項1に記載の電解質の調合物。
【請求項4】
アルカリ金属カチオンの塩はリチウムを含む、請求項3に記載の電解質の調合物。
【請求項5】
添加剤は、(1)硫黄含有化合物、(2)リン含有化合物、(3)ホウ素含有化合物、(4)ケイ素含有化合物、(5)不飽和の炭素-炭素結合を含む化合物、(6)カルボン酸無水物、または(7)それらの混合物、を含む請求項1に記載の電解質の調合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<相互参照>
本出願は、2015年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/266761号、2015年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/266767号、および2015年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/266773号の出願日における利益を主張し、それら全体は引用より本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示には、有機複素環カチオンがシラン部分に結合しているイオン液体、および、とりわけ、電気化学セルのための高機能で不燃性の動作温度範囲が広い電解質の調合物としてのイオン液体と炭酸エステルの使用が記載されている。
【背景技術】
【0003】
イオン液体は、イオンからのみ作られ、<100℃の融点を持つか、または周囲温度において理想的には液体である物質である。それらは、比較的好ましい電気化学的安定性および高イオン伝導性を示すので、リチウムおよびリチウムイオンバッテリーのための電解質内に取り入れられてきた。その潜在的な利点にもかかわらず、イオン液体は、多数の著しい不利益によりリチウムおよびリチウムイオンバッテリーのための電解質としては広く使用されてこなかった。電極材料としてLiMnOとLiTi12を使用するリチウムイオン電池は、電解質溶媒としてイオン液体を使用し、思いどおりのサイクル挙動(cycling behavior)を示すが、この電池の形態は、2.5Vの比較的小さな電圧に悩まされる。加えて、その電池は、高い粘度および電極材料に対するイオン液体の乏しい湿潤性により、低率の性能しか持たない。
【0004】
さらに、炭素系陰極材料およびイオン液体系電解質を使用して、リチウムイオン電池を繰り返いし使用する初期の実験は失敗していた。試験されたいかなるイオン液体サンプルも、黒鉛へのリチウムのインターカレーションが進行する低電位おいて還元された。イオン液体の還元は、二量体種(dimeric species)の形成により進行すると考えられている。しかしながら、商業的応用に関しては、リチウム金属は有利ではない。その表面の高い反応性により、リチウムは、特に高温において、潜在的に危険である。リチウムイオン電池で使用されるリチウム化された黒鉛電極を安定化する提案は、添加物を形成する少量の高活性なフィルムの混合物を含む。そのような添加物は、低電位の黒鉛の表面において電解質自体の継続的な還元を防ぐことができた。しかしながら、ほとんどの場合は、添加物はイオン液体電解質における貧しい溶解性に関する問題点を持つ。
【0005】
様々な試みは、イオン液体を変更する先行技術において公知である。Zhang et al.に対する米国特許第9,093,722号には、官能化されたイオン液体またはリチウムイオン電池が開示され、そのイオン液体は、ジシロキサン部分を有するカチオンを含む。
【0006】
Zhouに対する中国特許第103515118号には、ピリジンイオン液体およびアルキルトリメチルシランを含む電気二重層キャパシタのための電解質、および。アルキルトリメチルシランは、ピリジンイオン液体と、キャパシタのために一般的に使用されるPPおよびPEなどの隔膜材料との親和性を増大させることができることが開示されている。
【0007】
Theimann, et al.(J.Mater.Chem.C.,2014,2,2423-2430)に対する「Spray-coatable ionogels based on silane-ionic liquids for low voltage,flexible electrolyte-gated organic transistor」には、イミダゾリウムカチオンに結合しているケイ素アルコキシド(silicone alkoxide)官能基を有するイオン液体を含むイオンゲルが開示される。
【0008】
しかしながら、これらの文献は、電気化学セルの電解質調合物で使用される高機能および不燃性のイオン液体の必要性に対して取り組んでいない。したがって、高い機能性および低い燃焼性または不燃性を達成するために、改変したイオン液体の必要性が残されている。
【発明の概要】
【0009】
本開示の態様に従って:非プロトン性の有機溶媒と;アルカリ金属塩と;添加剤と;イオン化合物のアニオンおよびイオン化合物のカチオンを含むイオン化合物と;を含む電気エネルギー貯蔵デバイスのための電解質が提供され、ここでイオン化合物のカチオンは、化学式(I)のシラン官能基を含む官能基に結合しており、
【0010】
【化1】
【0011】
ここでイオン化合物のカチオンは、オニウム、スルホニウム、ホスホニウム、または窒素、酸素、ケイ素もしくは硫黄から選択される環員子として1から3のヘテロ原子を持つ任意の5または6員複素環を含み;R、R、Rは、各々独立してC-Cアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アルキニル基、もしくはアルキルシロキシ基であり;Lは、P、ハロゲン化物、Si、B、S、OまたはN原子に対する結合を随意にもち、化学式(I)のシラン官能基に対する直接的なOの結合を除く、C-Cアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、エステル基、カルボニル基、フェニル基、もしくはアリール基であるリンカーであり;そしてイオン化合物のアニオンは、ハロゲン化物、硝酸塩、リン酸塩、イミド、ホウ酸塩、もしくはホスファジンを含む。
【0012】
本開示の別の態様に従って、化学式(II)のイオン化合物のカチオンに結合している第2の官能基を有する電解質のためのイオン化合物が提供され、
【0013】
【化2】
【0014】
ここで、第2の官能基は、ハロゲン化物、酸素、窒素、硫黄、リン、アルカン、エステル、エーテル、ケトン、カルボニル、アルコキシアルカン、アルケン、アリール、ニトリル、シラン、スルホン、チオール、フェノール、ヒドロキシル、アミン、イミド、アルデヒド、カルボン酸、アルキン、炭酸塩、もしくは無水物を含む官能性部分を表し、ここで、その部分における炭素または水素原子のいずれかが、ハロゲン化物、酸素、窒素、硫黄、リン、アルカン、エステル、エーテル、ケトン、カルボニル、アルコキシアルカン、アルケン、アリール、ニトリル、シラン、スルホン、チオール、フェノール、ヒドロキシル、アミン、イミド、アルデヒド、カルボン酸、アルキン、炭酸塩、もしくは無水物でさらに置換される。
【0015】
本開示の別の態様に従って、イオン化合物に結合している第2の官能基を有する電解質のためのイオン化合物が提供され、ここで第2の官能基は、化学式(III)の第2のシラン官能基を含む。
【0016】
【化3】
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電解質1-3のための電圧プロファイルのグラフである。
図2】電解質1-3のためのサイクル当たりの放電容量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施形態において、本開示は、非プロトン性の有機溶媒と;アルカリ金属塩と;添加剤と;アニオンおよびカチオンを含むイオン液体化合物と;を含む電気エネルギー貯蔵デバイスための電解質を対象とし、ここでカチオンは化学式(I)に従って記載されるシラン官能基に結合しており、
【0019】
【化4】
【0020】
そこでは、カチオンは、オニウム、スルホニウム、ホスホニウム、および窒素、酸素、ケイ素もしくは硫黄から選択された環員子として1から3のヘテロ原子を持つ任意の5もしくは6員の複素環から選択されるイオン化合物のカチオンを表し;R、R、Rは、独立してC-Cアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アルキニル基、もしくはアルキルシロキシ基であり;Lは、P、ハロゲン化物、Si、B、S、OまたはN原子に対する結合を随意にもち、化学式(I)のシラン官能基に対する直接的なOの結合を除く、C-Cアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、エステル基、カルボニル基、フェニル基、もしくはアリール基であるリンカーであり;そしてアニオンは、ハロゲン化物、硝酸塩、リン酸塩、イミド、ホウ酸塩、およびホスファジンから選択されるイオン化合物のアニオンを表す。
【0021】
電解質の調合で使用される適切な非プロトン性の有機溶媒は、1つ以上の開鎖もしくは環状のカーボネート、カルボン酸エステル、亜硝酸エステル、エーテル、スルホン、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グライム、クラウンエーテル、およびそれらの混合物を含む。
【0022】
適切なアルカリ金属塩のカチオンは、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、およびマグネシウム、好ましくはリチウムを含む。
【0023】
電解質調合物の適切な添加剤は、(1)硫黄含有化合物、(2)リン含有化合物、(3)ホウ素含有化合物、(4)ケイ素含有化合物、(5)不飽和の炭素-炭素結合を含む化合物、(6)カルボン酸無水物、および、(7)それらの混合物、を含む。
【0024】
一実施形態において、本開示は、有機複素環カチオンがシランおよび様々な電気活性な部分を含むイオン液体、および電気化学セルのための高機能で不燃性の動作温度範囲が広い電解質製剤としてのイオン液体と炭酸エステルの使用に関する。
【0025】
一実施形態において、イオン液体化合物は、アニオンおよびカチオンを含み、ここでカチオンは、シランおよび化学式(II)に従って記載される官能基に結合しており、
【0026】
【化5】
【0027】
ここでカチオンは、オニウム、スルホニウム、ホスホニウム、および窒素、酸素、ケイ素、もしくは硫黄から選択された環員子として1から3のヘテロ原子を持つ任意の5もしくは6員の複素環から選択されるイオン化合物のカチオンを表し;R、R、Rは、独立してC-Cアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アルキニル基、もしくはアルキルシロキシ基であり;Lは、P、ハロゲン化物、Si、B、S、OまたはN原子に対する結合を随意にもち、化学式(II)のシラン官能基に対する直接的なOの結合を除く、C-Cアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、エステル基、カルボニル基、フェニル基、もしくはアリール基であるリンカーであり;ここで、第2の官能基は、ハロゲン化物、酸素、窒素、硫黄、リン、アルカン、エステル、エーテル、ケトン、カルボニル、アルコキシアルカン、アルケン、アリール、ニトリル、シラン、スルホン、チオール、フェノール、ヒドロキシル、アミン、イミド、アルデヒド、カルボン酸、アルキン、炭酸塩、および無水物から選択される官能性部分を表し、ここで、その部分における炭素または水素原子のいずれかが、ハロゲン化物、酸素、窒素、硫黄、リン、アルカン、エステル、エーテル、ケトン、カルボニル、アルコキシアルカン、アルケン、アリール、ニトリル、シラン、スルホン、チオール、フェノール、ヒドロキシル、アミン、イミド、アルデヒド、カルボン酸、アルキン、炭酸塩、および無水物でさらに置換され;そしてアニオンは、ハロゲン化物、硝酸塩、リン酸塩、イミド、ホウ酸塩、およびホスファジンから選択されるイオン化合物のアニオンを表す。
【0028】
一実施形態において、本開示には、有機複素環カチオンがジシラン部分を含むイオン液体、および電気化学セルのための高機能で不燃性の動作温度範囲が広い電解質製剤としてのイオン液体と炭酸エステルの使用が記載される。
【0029】
一実施形態において、イオン液体化合物は、アニオンおよびカチオンを含み、ここでカチオンは化学式(III)に従って記載されるジシラン官能基に結合しており、
【0030】
【化6】
【0031】
ここでカチオンは、オニウム、スルホニウム、ホスホニウム、および窒素、酸素、ケイ素、もしくは硫黄から選択された環員子として1から3のヘテロ原子を持つ任意の5もしくは6員の複素環から選択されるイオン化合物のカチオンを表し;R、R、Rは、独立してC-Cアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アルキニル基、もしくはアルキルシロキシ基であり;Lは、P、ハロゲン化物、Si、B、S、OまたはN原子に対する結合を随意にもち、化学式(III)のシラン官能基に対する直接的なOの結合を除く、C-Cアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、エステル基、カルボニル基、フェニル基、もしくはアリール基であるリンカーであり;そしてアニオンは、ハロゲン化物、硝酸塩、リン酸塩、イミド、ホウ酸塩、およびホスファジンから選択されるイオン化合物のアニオンを表す。
【0032】
以下の用語は、文脈により明白に他のものとして示されない限り、全体にわたって下記のように使用される。
【0033】
アルキル基は、他に示されない限り、1から14の炭素を有する直鎖と分枝鎖の飽和炭化水素基を含む。例えば、Cのアルキル基は、1、2、3、4、5、または6の炭素原子を有するアルキル基を含む。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1から12の炭素原子、1から10の炭素原子、1から8の炭素原子、1から6の炭素原子、1、2、3、または4の炭素原子を有する。直鎖アルキル基の例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、およびn-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、およびn-テトラデシル基などの基を含む。分枝鎖アルキル基の例は、限定されないが、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、および2、2-ジメチルプロピル基を含む。アルキル基は非置換であるか、または1つ以上のヒドロキシル基もしくはハロゲン基で随意に置換されることもある。
【0034】
アルキレン基は、本明細書において定義されるように、二価のアルキル基であって;すなわち、それらは本発明の化合物に対して2点の結合部を有する。
【0035】
アリール基は、6から14の炭素原子を含む環状の芳香族炭化水素であって、ヘテロ原子を含まない。本明細書においてアリール基は、単環の環構造、二環の環構造、および三環の環構造を含み、縮合環を含む。したがって、アリール基は、限定されないが、フェニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、インデニル基、インダニル基、ペンタレニル基、およびナフチル基を含む。いくつかの実施形態において、アリール基は、基の環部において、6から12の炭素原子、あるいはさらに6から10の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、アリール基は、フェニルまたはナフチルである。アリール基はさらに、縮合した芳香族脂肪族環系、例えばインダニル、テトラヒドロナフチルなどを含むこともある。アリール基は、非置換であるか、または随意に1つ以上のアルキル基、ハロ基、もしくは1つ以上のハロゲンで置換されることもある。いつくかの実施形態において、アリール基は、1、2、もしくは3のアルキル基、および/または1から5のハロゲンで置換される。
【0036】
アニオンは、四フッ化ホウ素、アルミン酸塩、(オキサラト)ボレート、ジフルオロ(オキサラト)ボレート、六フッ化リン、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、ビス(アルキルスルホニル)アミド、過塩素酸塩、ビス(フルオロアルキルスルホニル)アミド、ビス(アリールスルホニル)アミド、アルキルフルオロリン酸塩、(フルオロアルキルスルホニル)(フルオロアルキルカルボニル)アミド、ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキル硫酸塩、アリール硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、次亜塩素酸塩、カチオン交換樹脂のアニオン部位、およびそれらのいずれか2以上の混合物の基を含む。いくつかの実施形態において、イオン液体の対イオン、Xは、[CFCO;[CCO;[ClO;[BF;[AsF;[PF;[PF(C;[PF;[CFSO;[N(CFSO;[C(CFSO;[N(SO;アルキルフルオロリン酸塩;[B(C;[BF;[B1212-k2-;[(B1010-k′2-;またはそれらのいずれか2以上の混合物の群を含み、ここで、Yはハロゲンであり、kは0から12の整数であり、k′は1から10の整数である。好ましくは、アニオンはビストリフルイミド、またはビス(トリフルオロエチル)スルホニド(sulfonide)(「TFSI」)である。
【0037】
本発明のイオン液体は、好ましくは、自由水を持たない非水性か、または実質的に非水性であり、当技術分野において公知の様々な方法によって合成されることもある。例えば、カチオンのホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、もしくは第四級アンモニウム系のイオン液体を調製するために、対応するホスファイト、1-置換のイミダゾール、ピリジン、または第三級アミンを、アルキル化条件の下で、適切な求電子試薬と反応させ、その後適切なリチウム塩と反応させてもよい。適切な求電子試薬は、リンカーベアリング(linker bearing)、例えばハロゲン化物、メシラート、トリフラート、類似の脱離基を持つシラン部分を含む。オキサゾリウムおよびチアゾリウム(thizolium)系イオン液体の調製は、同様であるが、しかし求電子試薬と反応する前に、適切な塩基、例えば、アルカリ金属水素化物を持つ対応するオキサゾールまたはチアゾールの脱プロトン反応を必要とする。
【0038】
一実施形態において、本開示は、非プロトン性の有機溶媒と;アルカリ金属塩と;添加剤と;アニオンおよびカチオンを含むイオン液体化合物と;を含む電気エネルギー貯蔵デバイスのための電解質を対象とし、ここでカチオンは上記化学式に記載されるシラン官能基に結合しており、そしてアニオンは、ハロゲン化物、硝酸塩、リン酸塩、イミド、ホウ酸塩、およびホスファジンから選択されるイオン化合物のアニオンを表す。イオン液体およびイオン化合物における、シランで修飾されたカチオン対アニオンの重量比は、約4:1から1:4であり、好ましくは約2.5:1から1:2.5である。
【0039】
別の態様に従って、エネルギー貯蔵デバイスで使用される電解質が提供され、その電解質は、本明細書に記載されるような常温のイオン液体を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、電解質はイオン液体に加えてリチウム塩も含む。様々なリチウム塩は使用されることもあり、例えばLi[CFCO;];Li[CCO];Li[ClO];Li[BF];Li[AsF];Li[PF];Li[PF(C];Li[PF];Li[CFSO];Li[N(CFSO];Li[C(CFSO];Li[N(SO];リチウムアルキルフルオロリン酸;Li[B(C];Li[BF];Li[B1212-j];Li[B1010-j’j’];またはそれらのうちのいずれか2以上の混合物を含み、ここで、Zはそれぞれ独立して(independently at each occurrence)ハロゲンであり、jは、0から12の整数であり、k′は1から10の整数である。
【0041】
いくつかの実施形態において、リチウム塩の濃度は、約0.01Mから約1.5Mまで、約0.05Mから約1.2Mまで、または約0.4Mから約1.0Mまでのイオン液体の範囲にある。イオン電解質塩の濃度が約0.01Mよりも低い場合、結果として生じる非水電解質のイオン導電性は、電解質内のキャリアイオンの不十分な数により低下する傾向がある。
【0042】
リチウムイオン電池のための調合物などの本発明の電解質のいくつかの用途において、非プロトン性溶媒は、粘度を低下させ伝導度を増大させる本発明のイオン液体と結合する。非プロトン性溶媒は、交換可能なプロトンを持たず、そして環状の炭酸エステル、直鎖の炭酸エステル、リン酸エステル、オリゴエーテル置換シロキサン/シラン、環状エーテル、鎖状エーテル、ラクトン化合物、鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン化合物などを含む。これらの溶媒は、別々に使用されてもよいし、またはそれらの少なくとも2つが混合された状態で使用されてもよい。電解質系を形成するための非プロトン性溶媒またはキャリアの例は、限定されないが、炭酸ジメチル、エチルメチルカーボネート、炭酸ジエチル、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、炭酸ジプロピル、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(ペンタフルオロプロピル)カーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ペンタフルオロエチルメチルカーボネート、ヘプタフルオロプロピルメチルカーボネート、パーフルオロブチルメチルカーボネート、トリフルオロエチルエチルカーボネート、ペンタフルオロエチルエチルカーボネート、ヘプタフルオロプロピルエチルカーボネート、パーフルオロブチルエチルカーボネート、等、フッ素化したオリゴマー、ジメトキシエタン、トリグライム、ジメチルビニレンカーボネート、テトラエチレングリコール、ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、スルホン、およびガンマ-ブチロラクトンを含む。非プロトン性溶媒は、電解質の総質量の約5重量%から約85重量%で存在する。イオン液体または化合物は、電解質の総質量の約0.1重量%から約85重量%、好ましくは、電解質の総質量の約20から75重量%で存在する。
【0043】
いくつかの実施形態において、電解質はさらに、電極が分解しないよう保護するために電極を安定化させる添加剤を含む。したがって、本技術の電解質は、陰極の表面上に不動態皮膜を形成するために陰極の表面上で還元するか重合しうる、電極を安定化させる添加剤を含みうる。同様に、電解質は、陽極の表面上に不動態皮膜を形成するために陽極の表面上で酸化するか重合しうる、電極を安定化させる添加剤を含みうる。いくつかの実施形態において、本発明の電解質はさらに、電極を安定化させる添加剤の2つのタイプの混合物を含む。添加剤は典型的に、約0.001から約8重量%の濃度で存在する。
【0044】
いつくかの実施形態において、電極を安定化させる添加剤は、少なくとも1つの酸素原子を含み、少なくとも1つのアリール基、アルケニル基、もしくはアルキニル基を含む、置換もしくは非置換の、直鎖、分岐、もしくは環状の炭化水素である。そのような電極を安定化させる添加剤から形成された不動態化膜は、その添加剤が少なくとも1つの酸素原子を含む、置換アリール化合物、または置換もしくは非置換のヘテロアリール化合物から形成されることもある。代替的に、2つの添加剤の組み合わせが使用されることもある。いつくかの実施形態において、1つの添加剤は、金属イオンの浸出を防止するために正極上で不動態化膜を形成するために選択される。別の添加剤は、負極における金属イオンの還元を防止するか、減少させるために負極表面を不動態化するために選択されうる。
【0045】
代表的な電極を安定化させる添加剤は、1,2-ジビニルフロエート、1,3-ブタジエンカーボネート、1-ビニルアゼチジン-2-オン、1-ビニルアジリジン-2-オン、1-ビニルピペリジン-2-オン、1ビニルピロリジン-2-オン、2,4-ジビニル-1,3-ジオキサン、2アミノ-3ビニルシクロヘキサノン、2-アミノ-3-ビニルシクロプロパノン、2アミノ-4-ビニルシクロブタノン、2-アミノ-5-ビニルシクロペンタノン、2-アリールオキシ-シクロプロパノン、2-ビニル-[1,2-]オキサゼチジン、2ビニルアミノシクロヘキサノール、2-ビニルアミノシクロプロパノン、2ビニルオキセタン、2-ビニルオキシ-シクロプロパノン、3-(N-ビニルアミノ)シクロヘキサノン、3,5-ジビニルフロエート、3-ビニルアゼチジン-2-オン、3ビニルアジリジン2オン、3ビニルシクロブタノン、3ビニルシクロペンタノン、3ビニルオキサジリジン、3ビニルオキセタン、3-ビニルピロリジン-2-オン、4,4ジビニル-3ジオキソラン2-オン、4ビニルテトラヒドロピラン、5-ビニルピペリジン-3-オン、アリルグリシジルエーテル、ブタジエンモノオキシド、ブチルビニルエーテル、ジヒドロピラン-3-オン、ジビニルブチルカーボネート、ジビニルカーボネート、ジビニルクロトネート、ジビニルエーテル、ジビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンシリケート、ジビニルエチレンスルファート、ジビニルエチレンサルファイト、ジビニルメトキシピラジン、ジビニルメチルホスフェート、ジビニルプロピレンカーボネート、エチルホスフェート、メトキシ-o-テルフェニル、メチルホスフェート、オキセタン-2-イル-ビニルアミン、オキシラニルビニルアミン、ビニルカーボネート、ビニルクロトネート、ビニルシクロペンタノン、ビニルエチル-2-フロエート、ビニルエチレンカーボネート、ビニルエチレンシリケート、ビニルエチレンスルファート、ビニルエチレンサルファイト、ビニルメタクリレート、ビニルホスフェート、ビニル-2-フロアート、ビニルシクロプロパノン、酸化ビニルエチレン、β-ビニル-γ-ブチロラクトン、またはそれらのいずれか2以上の混合物を含む。いくつかの実施形態において、電極を安定化させる添加剤は、F、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、メトキシ基、アリールオキシ基、またはそれらの組み合わせにより置換されたシクロトリホスファゼンであってもよい。例えば、添加剤は、(ジビニル)-(メトキシ)(トリフルオロ)シクロトリホスファゼン、(トリビニル)(ジフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン、(ビニル)(メトキシ)(テトラフルオロ)シクロトリホスファゼン、(アリールオキシ)(テトラフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン、(ジアリールオキシ)(トリフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン化合物、または2以上のそのような化合物の混合物であってもよい。いつくかの実施形態において、電極を安定化させる添加剤は、ビニルエチレンカーボネート、ビニルカーボネート、もしくは1,2-ジフェニルエーテルであるか、または、2以上のそのような化合物の混合物である。
【0046】
他の代表的な電極を安定化させる添加剤は、フェニ基、ナフチル基、アントラセニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、フラニル基、インドリル基、カルバゾイル基、イミダゾリル基またはチオフェニル基を含む化合物を含むこともある。例えば、電極を安定化させる添加剤は、アリールオキシピロール、アリールオキシエチレンスルファート、アリールオキシピラジン、アリールオキシ-カルバゾールトリビニルホスフェート、アリールオキシ-エチル-2-フロアート、アリールオキシ-o-テルフェニル、アリールオキシ-ピリダジン、ブチル-アリールオキシ-エーテル、ジビニルジフェニルエーテル、(テトラヒドロフラン-2-イル)-ビニルアミン、ジビニルメトキシビピリジン、メトキシ-4-ビニルビフェニル、ビニルメトキシカルバゾール、ビニルメトキシピペリジン、ビニルメトキシピラジン、ビニルメチルカーボネート-アリルアニソール、ビニルピリダジン、1-ジビニルイミダゾール、3-ビニルテトラヒドロフラン、ジビニルフラン、ジビニルメトキシフラン、ジビニルピラジン、ビニルメトキシイミダゾール、ビニルメトキシピロール、ビニルテトラヒドロフラン、2,4-ジビニルイソオキサゾール、3,4ジビニル-1-メチルピロール、アリールオキシオキセタン、アリールオキシフェニルカーボネート、アリールオキシピペリジン、アリールオキシ-テトラヒドロフラン、2-アリール-シクロプロパノン、2-ジアリールオキシ-フロエート、4-アリルアニソール、アリールオキシ-カルバゾール、アリールオキシ-2-フロエート、アリールオキシ-クロトネート、アリールオキシ-シクロブタン、アリールオキシ-シクロペンタノン、アリールオキシ-シクロプロパノン、アリールオキシ-シクロホスファゼン、アリールオキシ-エチレンシリケート、アリールオキシ-エチレンスルファート、アリールオキシ-エチレンサルファイト、アリールオキシ-イミダゾール、アリールオキシ-メタクリレート、アリールオキシ-ホスフェート、アリールオキシ-ピロール、アリールオキシキノリン、アリールオキシキノリン、ジアリールオキシエチレンカーボネート、ジアリールオキシフラン、ジアリールオキシメチルホスフェート、ジアリールオキシ-ブチルカーボネート、ジアリールオキシクロトネート、ジアリールオキシ-ジフェニルエーテル、ジアリールオキシ-エチルシリケート、ジアリールオキシ-エチレンシリケート、ジアリールオキシ-エチレンスルファート、ジアリールオキシエチレンサルファイト、ジアリールオキシ-フェニルカーボネート、ジアリールオキシ-プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジフェニルジアリールオキシシリケート、ジフェニルジビニルシリケート、ジフェニルエーテル、ジフェニルシリケート、ジビニルメトキシジフェニルエーテル、ジビニルフェニルカーボネート、メトキシカルバゾール、もしくは2,4-ジメチル-6-ヒドロキシ-ピリミジン、ビニルメトキシキノリン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ピリジン、ビニルピリジン、インドール、ビニルインドール、トリエタノールアミン、1,3-ジメチルブタジエン、ブタジエン、ビニルエチレンカーボネート、ビニルカーボネート、イミダゾール、ビニルイミダゾール、ピペリジン、ビニルピペリジン、ピリミジン、ビニルピリミジン、ピラジン、ビニルピラジン、イソキノリン、ビニルイソキノリン、キノキサリン、ビニルキノキサリン、ビフェニル、1,2-ジフェニルエーテル、1,2-ジフェニルエタン、oテルフェニル、N-メチルピロール、ナフタレン、またはいずれか2以上のそのような化合物の混合物であってもよい。いくつかの他の実施形態において、本発明の電解質は、非プロトン性のゲル状高分子のキャリア/溶媒を含む。適切なゲル状高分子キャリア/溶媒は、適切なイオン電解質塩が添加された、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファジン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリエーテルグラフトポリシロキサン、前述のものの誘導体、前述のものの共重合体、前述のものの架橋された網目構造体、前述のもの混成物などを含む。他のゲル状高分子キャリア/溶媒は、ポリ酸化プロピレン、ポリシロキサン、スルホン化ポリイミド、パーフルオロ化膜(Nafion(登録商標)樹脂)、ジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-ビス-(アクリル酸メチル)、ポリエチレングリコール-ビス(メタクリル酸メチル)、前述のものの誘導体、前述のものの共重合体、前述のものの架橋された網目構造体、前述のもの混成物由来の高分子マトリックスから調製されたものを含む。
【0047】
塩を含む官能性のイオン液体および電解質溶液は、有機溶媒における電気伝導率および溶解性が高く、電気化学的デバイスのための電解質溶液としての使用に適する。電気化学的デバイスの例は、限定されないが、電気二重層コンデンサ、二次電池、顔料増感タイプの太陽電池、エレクトロクロミックデバイス、コンデンサなどである。電気化学的デバイスとして特に適切なものは、電気二重層コンデンサ、およびリチウムイオン電池などの二次電池である。
【0048】
さらに他の態様において、電気化学的デバイスが提供され、その電気化学的デバイスは、正極と;負極と;本明細書に記載されるようなイオン液体を含む電解質と;を含む。一実施形態において、電気化学的デバイスはリチウム二次電池である。いくつかの実施形態において、二次電池は、リチウム電池、リチウムイオン電池、リチウム‐硫黄電池、リチウム-空気電池、ナトリウムイオンバッテリー、またはマグネシウム電池である。いくつかの実施形態において、電気化学的デバイスはキャパシタなどの電気化学セルである。いくつかの実施形態において、キャパシタは非対称性のキャパシタまたはスーパーキャパシタである。いくつかの実施形態において、電気化学セルは一次電池である。いくつかの実施形態において、一次電池は、リチウム/MnO電池、またはLi/ポリ(カーボンモノフルオライド)電池である。いくつかの実施形態において、電気化学セルは太陽電池である。
【0049】
適切な正極は、限定されないが、リチウム金属酸化物、スピネル、カンラン石、炭素被覆カンラン石、LiFePO、LiCoO、LiNiO、LiNi1-xCoMet、LiMn0.4Ni0.4、LiMn0.3Co0.3Ni0.3、LiMn、LiFeO、Li1+x’NiαMnβCoγMet’δ2-z’z’、An’(XO(NASICON)、酸化バナジウム;過酸化リチウム、硫黄、ポリスルフィド、リチウムカーボンモノフルオライド(LiCFとしても知られている)、またはそれらのうちのいずれか2以上の混合物などの陰極を含み、ここで、Metは、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Mn、またはCoであり;Me’は、Mg、Zn、Al、Ga、B、Zr、またはTiであり;AはLi、Ag、Cu、Na、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、またはZnであり;BはTi、V、Cr、Fe、またはZrであり;XはP、S、Si、W、またはMoであり;0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦x’≦0.4、0≦α≦1、0≦β≦1、0≦γ≦1、0≦δ≦0.4、および0≦z’≦0.4であり;そして0≦h’≦3である。いつくかの実施形態にしたがって、スピネルは、Li1+xMn2-zMet’’’4-mX’の化学式を有するスピネル系マンガン酸化物であり、ここで、Met’’’は、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Ni、またはCoであり;X’はSまたはFであり;そしてここで、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦m≦0.5、および0≦n≦0.5である。他の実施形態において、カンラン石は、Li1+xFe1-zMet’’PO4-mX’の化学式を有し、ここで、Met’’は、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Ni、Mn、またはCoであり;X’はSまたはFであり;そしてここで、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦m≦0.5、および0≦n≦0.5である。
【0050】
適切な負極は、リチウム金属;黒鉛材料、非晶質炭素、LiTi12、スズ合金、ケイ素合金、金属間化合物、またはいずれか2以上のそのような材料の混合物などの陰極である。適切な黒鉛材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ、(MCMB)黒鉛繊維、および任意の非晶質炭素材料を含む。いくつかの実施形態において、負極および正極は、多孔質セパレータにより互いから離間される。
【0051】
リチウム電池のためのセパレータは、多くの場合微小孔性ポリマー膜である。膜を形成するための高分子の例は、以下のものを含む:ナイロン、セルロース、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオライド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、もしくは共重合体、またはいずれか2以上のそのような高分子の混成物。いくつかの例において、セパレータは電子ビーム処理を施したミクロポーラスポリオレフィンセパレータである。電子処理は、セパレータの変形温度を向上させ、したがってセパレータの高温性能を増強することができる。付加的に、または代替的に、そのセパレータはシャットダウンセパレータになることができる。シャットダウンセパレータは、電気化学セルが最大130℃までの温度で作動することを可能にするために130℃より高いトリガー温度を持つことができる。
【0052】
本開示はさらに、以下の特定の例に関して例示されるだろう。これらの例は例示として挙げられ、続く開示または特許請求の範囲を限定する意図はないことが理解されよう。
【0053】
実施例1-シリル官能性イオン液体の合成N-メチルトリメチルシリル_ピロリジン(NB2-107)の合成
【0054】
【化7】
【0055】
【表1】
【0056】
1.磁気撹拌子を備えた20mLのバイアルに、炭酸カリウム、ピロリジンおよびクロロメチルトリメチルシランを添加した。温度増加は観察されなかった。RTで混合物を撹拌し、全反応時間は5日とした。
2.反応が進行するとともに、遊離するHClが除去され塩化カリウム(2.1g)および炭酸水素カリウム(2.8g)が形成されるため、炭酸カリウムは徐々に消費された。
3.DCM(30mL)を添加し、その固体5.2gを真空濾過で採取した。溶媒を回転蒸発によって取り除いた。収量:粗製の薄い色の油(4.3g)(98%)。
4.HNMRによる特性評価:(CDCl3)δppm2.53(m、4H)、2.07(s、2H)、1.82(m、4H)、0.12(s、9H).
【0057】
Pyr11Si(CH3)3-TFSI(NB2-109)のイオン液体の合成
【0058】
【化8】
【0059】
【表2】
【0060】
四級化反応
1.磁気撹拌子、水冷コンデンサ、N2注入口、および熱電対を備えた250mLの三口フラスコに、N-メチルトリメチルシリルピロリジン(NB2-107)およびアセトニトリルを添加した。
2.RTで撹拌している間、ヨウ化メチルをその混合物に徐々に添加し、発熱の形跡に関して内部温度をモニタリングした。温度は33℃以下で維持した。
3.その混合物は徐々に淡黄色の溶液になった。全反応時間は約2時間だった。黄色の固体になるまで溶媒を回転蒸発によって取り除いた。収量:淡黄色固体4.5g(55%)
【0061】
メタセシス(TFSI)
1.磁気撹拌子を備えた100mLのキャップ付きボトルに、2つの別個の溶液として、ステップ1からのヨウ化物、およびリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを添加し、20mL脱イオン水に溶解する。その溶液は化合し、濁った沈殿物がすぐに形成され、その後に、淡黄色の油がフラスコの底部に沈殿する。その混合物をRTで1時間撹拌する。
2.水層を注ぎ出して、DCM(20mL)を添加し、全混合物を分液漏斗へと注ぐ。有機層を脱イオン水(2x20mL)で洗浄し、分離し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を回転蒸発により取り除き、高真空下の真空オーブン(5mbar、60℃)を用いポンプで吸い出す。収量:薄い色の油(6.0g)(88%)。
3.HNMRによる特性評価:(CDCl3)δppm3.58-3.51(m、4H)、3.09(d、5H)、2.29-2.26(m、4H)、0.28(s、9H).
【0062】
実施例2:電気化学的デバイスにおけるシリル官能化イオン液体の電解質
【0063】
3つの電解質調合物を、バイアル中の全ての電解質成分を組み合わせて、乾燥したアルゴンで満たされたグローブボックスにおいて調製し、塩が完全に溶解したことを確かなものにするために24時間撹拌した。比較用電解質1のために、1Mのリチウムヘキサフルオロホスフェート(「LiPF6」)を、エチレンカーボネート(「EC」)と結合させ、その中に、エチルメチルカーボネート(「EMC」)を溶解させた。比較用電解質2のために、1MのLiPF6を、EC、EMC、およびイオン液体である1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウムTFSI(「Pyr14TFSI」)と結合させた。電解質3のために、1MのLiPF6を、EC、EMC、およびシリル官能化イオン液体である1-メチル-トリメチルシリル-1-メチル-ピロリジニウムTFSIと結合させた。調製した電解質調合物を、表1に要約した。
【0064】
【表3】
【0065】
本明細書において調製された電解質調合物を、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物正極活物質、および負極活物質としての黒鉛を含むリチウムイオン高分子パウチ型電池において、電解質として使用した。各電池に、真空密閉しテストする前に、1.1gの電解質調合物を電池に加え、1時間浸漬した。その後、電池を4.2Vまで充電し、1回目のサイクルはC/15の速さで、5回のサイクルはC/5の速さで、そして電池が公称容量の80%に達するまでC/3速さで、2.5Vまで放電させた。電池は、C/5において200mAhの公称容量を持っていた。表2において、初充電に対する初充電および放電の差異の比率として定義される初期容量ロス(「iCL」)が、各電解質に関して表される。図1において、各電解質に依存する5回目のサイクルの電圧プロファイルが表される。図2において、サイクル当たりの、室温で測定された放電容量が表される。
【0066】
【表4】
【0067】
表2に示されるように、イオン液体を組み込むと、負極における界面の有機層を形成する電解質材料の分解に典型的には関連する、測定される初期容量ロス「iCL」が変化する。比較用電解質2に関する高いiCLは、負極または正極の材料のどちらか一方、この例においては負極と非互換性の材料を含む、電解質に特有のものである。しかしながら、電解質3により表されるようなピロリジニウムイオン液体のシリル部分を組み込むことで、比較用電解質1のiCLに匹敵する非常に低い初期容量ロスが結果としてもたらされる。
【0068】
比較用電解質1は、最先端技術として既知の材料を含む従来の市販の電解質である。図1は、イオン液体電解質を含むNCA-グラファイト200mAhパウチ型電池の放電プロファイルを示す。
【0069】
図1に示されるように、比較用電解質1はリチウムイオン電池の公称容量に達し、そして最先端技術として既知のピロリジニウムイオン液体を含む比較用電解質2は乏しい放電容量を表し、これによって、典型的なリチウムイオン電池における正極および負極材料との不適合性が示される。リチウムイオンパウチ型電池内の電解質の異なる輸送動力学(transport dynamics)により、電解質3は、比較用電解質1に対してわずかに低いが類似する放電容量を達成した。理論に束縛されるものではないが、本発明のイオン液体内のシリル官能基は、電解質3が比較用電解質1に匹敵することを可能にする。
【0070】
図2は、室温におけるサイクル寿命の、市販の電解質(比較用電解質1)と、IL系の従来の電解質(比較用電解質2)と、シリル官能化したIL系の電解質(電解質3)と、の間の比較を表す。図2において、それは留意される、関節の自然な治療特性シリル官能化イオン液体を含む電解質3は、比較用電解質2で表されるような従来のイオン液体の性能と比較して、リチウムイオン電池の優れた性能を持っていた。当技術分野において既知のリチウムイオン電池についての破損点は、始めの50サイクル内に故障する比較用電解質2を含む電池の公称容量の70から80%として規定される。電解質3は、比較用電解質1に類似する容量維持率および性能を表す。
【0071】
本発明の様々な実施形態が、本明細書で詳細に示され、記載されているが、様々な変更、追加、置換などが、本開示の精神から逸脱することなく行われ得、これらは、それ故、以下の請求項に定義されるように本開示の範囲内にあると考えられることが、当業者に明白となる。
図1
図2