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特許7174131判定装置、判定方法及び判定用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法及び判定用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221109BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20221109BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20221109BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/00 A
G01S17/931
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021170759
(22)【出願日】2021-10-19
(62)【分割の表示】P 2019509010の分割
【原出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2022009231
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2017072480
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】野口 良司
(72)【発明者】
【氏名】松丸 誠
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄悟
(72)【発明者】
【氏名】永田 宏
(72)【発明者】
【氏名】竹村 到
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-095562(JP,A)
【文献】特開2008-186384(JP,A)
【文献】特開2003-065740(JP,A)
【文献】特開2012-192862(JP,A)
【文献】特開2017-015409(JP,A)
【文献】特開2017-015601(JP,A)
【文献】特表2018-530825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0015201(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0144847(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0300053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60R 21/00 - 21/13
G09B 29/00 - 29/14
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 1/00 - 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を取得する第1取得手段と、
前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜を検出する検出手段と、
前記照射対象に対応する領域の地面の勾配に関する閾値であって、前記車両が進入する交差点における各進行方向のそれぞれにある前記傾斜の種別を判断するための閾値を示す閾値情報を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から取得する第2取得手段と、
前記検出された傾斜と、前記閾値情報と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を判定する判定手段と、
を備え、
前記傾斜の種別は、前記傾斜が前記地面の傾斜であるか、前記物の傾斜であるか、の種別であることを特徴とする判定装置。
【請求項2】
車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を取得する第1取得手段と、
前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜及び反射率を検出する検出手段と、
前記照射対象に対応する領域の地面に関する閾値を示す閾値情報としての、前記地面の勾配に関する第1閾値、及び前記反射率に関する第2閾値を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から取得する第2取得手段と、
前記第1閾値と前記検出された傾斜との比較と、前記第2閾値と前記検出された反射率との比較と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする判定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の判定装置において、
前記車両の移動の速度を示す速度情報を取得する第3取得手段を更に備え、
前記判定手段は、前記検出された傾斜が、前記取得した速度情報により示される前記速度に対応する補正係数で前記閾値情報により示される閾値を補正した値以上である場合に、前記照射対象が前記物であると判定することを特徴とする判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の判定装置において、
前記補正係数は前記速度が速いほど小さく、
前記判定手段は、前記検出された傾斜が、前記補正係数を前記閾値に乗じた値以上である場合に、前記照射対象が前記物であると判定することを特徴とする判定装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の判定装置において、
前記補正係数は前記速度が遅いほど大きく、
前記判定手段は、前記検出された傾斜が、前記補正係数を前記閾値に乗じた値以上である場合に、前記照射対象が前記物であると判定することを特徴とする判定装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の判定装置において、
前記車両の移動の速度を示す速度情報を取得する第3取得手段を更に備え、
前記記録媒体には、前記車両の速度に応じて、前記地面についての一又は複数の閾値が記録され、
前記第2取得手段は、前記取得した速度情報により示される前記速度に応じた前記閾値を前記記録媒体から取得し、
前記判定手段は、前記検出された傾斜が、前記第2取得手段により取得された前記閾値以上である場合に、前記照射対象が前記物であると判定することを特徴とする判定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の判定装置において、
前記光の出射方向の水平に対する角度を検出する角度検出手段を更に備え、
前記検出手段は、前記取得した受光情報と、前記検出された角度を示す角度情報と、に基づいて前記照射対象の前記傾斜を検出することを特徴とする判定装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の判定装置において、
前記閾値は、予め分割された領域に相当する前記地面ごとの当該閾値であることを特徴とする判定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の判定装置において、
前記領域は、前記車両の移動方向について一定間隔で分割された領域であることを特徴とする判定装置。
【請求項10】
請求項8に記載の判定装置において、
前記領域は、前記車両の移動方向における前記地面の傾斜の変化に対応した間隔で分割された領域であることを特徴とする判定装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の判定装置において、
前記閾値が、前記車両の移動方向を含んで予め設定された前記傾斜の種別を判断するための前記閾値であり、
当該傾斜の種別は、前記傾斜が前記地面の傾斜であるか、前記物の傾斜であるか、の種別であることを特徴とする判定装置。
【請求項12】
第1取得手段と、検出手段と、第2取得手段と、判定手段と、を備える判定装置において実行される判定方法であって、
車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を前記第1取得手段により取得する第1取得工程と、
前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜を前記検出手段により検出する検出工程と、
前記照射対象に対応する領域の地面の勾配に関する閾値であって、前記車両が進入する交差点における各進行方向のそれぞれにある前記傾斜の種別を判断するための閾値を示す閾値情報を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から前記第2取得手段により取得する第2取得工程と、
前記検出された傾斜と、前記閾値情報と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を前記判定手段により判定する判定工程と、
を含み、
前記傾斜の種別は、前記傾斜が前記地面の傾斜であるか、前記物の傾斜であるか、の種別であることを特徴とする判定方法。
【請求項13】
第1取得手段と、検出手段と、第2取得手段と、判定手段と、を備える判定装置において実行される判定方法であって、
車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を前記第1取得手段により取得する第1取得工程と、
前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜及び反射率を前記検出手段により検出する検出工程と、
前記照射対象に対応する領域の地面に関する閾値を示す閾値情報としての、前記地面の勾配に関する第1閾値、及び前記反射率に関する第2閾値を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から前記第2取得手段により取得する第2取得工程と、
前記第1閾値と前記検出された傾斜との比較と、前記第2閾値と前記検出された反射率との比較と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を前記判定手段により判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする判定方法。
【請求項14】
判定装置に含まれるコンピュータを、
車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を取得する第1取得手段、
前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜を検出する検出手段、
前記照射対象に対応する領域の地面の勾配に関する閾値であって、前記車両が進入する交差点における各進行方向のそれぞれにある前記傾斜の種別を判断するための閾値を示す閾値情報を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から取得する第2取得手段、及び、
前記検出された傾斜と、前記閾値情報と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を判定する判定手段、
として機能させる判定用プログラムであって、
前記傾斜の種別は、前記傾斜が前記地面の傾斜であるか、前記物の傾斜であるか、の種別であることを特徴とする判定用プログラム。
【請求項15】
判定装置に含まれるコンピュータを、
車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を取得する第1取得手段、
前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜及び反射率を検出する検出手段、
前記照射対象に対応する領域の地面に関する閾値を示す閾値情報としての、前記地面の勾配に関する第1閾値、及び前記反射率に関する第2閾値を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から取得する第2取得手段、及び、
前記第1閾値と前記検出された傾斜との比較と、前記第2閾値と前記検出された反射率との比較と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を判定する判定手段、
として機能させることを特徴とする判定用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、判定装置、判定方法及び判定用プログラムの技術分野に属する。より詳細には、地図に関連する判定を行う判定装置及び判定方法並びに当該判定用のプログラムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両におけるいわゆる自動運転に関する研究が盛んに行われている。自動運転の実現に当たって必要な技術の一つに、地面にある障害物の検出がある。このような障害物の検出に用いることができる技術の一つにLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)システムによる物体検出がある。LiDARシステムを用いた地面の障害物の検出では、例えば地面からの反射光から算出されたデータにより当該地面の部分の傾斜(勾配)を検出し、その傾斜が緩やかであれば地面からの反射光であると判定し、その傾斜が急であれば障害物からの反射光であると判定する。
【0003】
なお上記背景技術に関連する技術の一例としては、例えば下記特許文献1に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-95562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上述したLiDARシステムを用いた地面の障害物の検出では、上記傾斜により障害物か否かを判定するための閾値が必要となるが、地面の傾斜の状況は様々であり、当該閾値を地面の各点についてその都度一意に決定するのは困難である。即ち、当該閾値を小さくし過ぎると例えば坂道であってもそれを障害物と判定してしまうし、また当該閾値を大きくし過ぎると小さな障害物を地面と判定してしまうという問題点がある。
【0006】
そこで本願は、上記の各問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、地面の傾斜(勾配)を正確に判定することを可能とする判定装置及び判定方法並びに当該判定装置用のプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を取得する第1取得手段と、前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜を検出する検出手段と、前記照射対象に対応する領域の地面の勾配に関する閾値であって、前記車両が進入する交差点における各進行方向のそれぞれにある前記傾斜の種別を判断するための閾値を示す閾値情報を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から取得する第2取得手段と、前記検出された傾斜と、前記閾値情報と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を判定する判定手段と、を備え、前記傾斜の種別は、前記傾斜が前記地面の傾斜であるか、前記物の傾斜であるか、の種別であるように構成される。
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を取得する第1取得手段と、前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜及び反射率を検出する検出手段と、前記照射対象に対応する領域の地面に関する閾値を示す閾値情報としての、前記地面の勾配に関する第1閾値、及び前記反射率に関する第2閾値を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から取得する第2取得手段と、前記第1閾値と前記検出された傾斜との比較と、前記第2閾値と前記検出された反射率との比較と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を判定する判定手段と、を備える。
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項12に記載の発明は、第1取得手段と、検出手段と、第2取得手段と、判定手段と、を備える判定装置において実行される判定方法であって、車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を前記第1取得手段により取得する第1取得工程と、前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜を前記検出手段により検出する検出工程と、前記照射対象に対応する領域の地面の勾配に関する閾値であって、前記車両が進入する交差点における各進行方向のそれぞれにある前記傾斜の種別を判断するための閾値を示す閾値情報を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から前記第2取得手段により取得する第2取得工程と、前記検出された傾斜と、前記閾値情報と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を前記判定手段により判定する判定工程と、を含み、前記傾斜の種別は、前記傾斜が前記地面の傾斜であるか、前記物の傾斜であるか、の種別であるように構成される。
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項13に記載の発明は、第1取得手段と、検出手段と、第2取得手段と、判定手段と、を備える判定装置において実行される判定方法であって、車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を前記第1取得手段により取得する第1取得工程と、前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜及び反射率を前記検出手段により検出する検出工程と、前記照射対象に対応する領域の地面に関する閾値を示す閾値情報としての、前記地面の勾配に関する第1閾値、及び前記反射率に関する第2閾値を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から前記第2取得手段により取得する第2取得工程と、前記第1閾値と前記検出された傾斜との比較と、前記第2閾値と前記検出された反射率との比較と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を前記判定手段により判定する判定工程と、を含む。
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項14に記載の発明は、判定装置に含まれるコンピュータを、車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を取得する第1取得手段、前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜を検出する検出手段、前記照射対象に対応する領域の地面の勾配に関する閾値であって、前記車両が進入する交差点における各進行方向のそれぞれにある前記傾斜の種別を判断するための閾値を示す閾値情報を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から取得する第2取得手段、及び、前記検出された傾斜と、前記閾値情報と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を判定する判定手段、として機能させる判定用プログラムであって、前記傾斜の種別は、前記傾斜が前記地面の傾斜であるか、前記物の傾斜であるか、の種別であるように構成される。
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項15に記載の発明は、判定装置に含まれるコンピュータを、車両から周囲に出射された光の照射対象からの反射光の受光により得られた受光情報を取得する第1取得手段、前記受光情報に基づき前記照射対象の傾斜及び反射率を検出する検出手段、前記照射対象に対応する領域の地面に関する閾値を示す閾値情報としての、前記地面の勾配に関する第1閾値、及び前記反射率に関する第2閾値を、当該閾値情報を地図情報に関連付けて記録している記録媒体から取得する第2取得手段、及び、前記第1閾値と前記検出された傾斜との比較と、前記第2閾値と前記検出された反射率との比較と、に基づき、前記照射対象が、地面であるか、前記地面上の物であるか、を判定する判定手段、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る判定装置の概要構成を示すブロック図である。
図2】第1実施例に係る地図データシステムの概要構成を示すブロック図である。
図3】第1実施例に係る地図データの構造を示す図であり、(a)は当該構造の第1例を示す図であり、(b)は当該構造の第2例を示す図であり、(c)は当該構造の第3例を示す図であり、(d)は当該構造の第4例を示す図であり、(e)は当該構造の第5例を示す図である。
図4】第1実施例に係る地図データ記録処理等を示すフローチャートであり、(a)は当該地図データ記録処理を示すフローチャートであり、(b)は第1実施例に係る地面判定処理の全体を示すフローチャートであり、(c)は当該地面判定処理の細部を示すフローチャートである。
図5】第2実施例に係る地面判定処理を示すフローチャートである。
図6】第3実施例に係る地図データ記録処理等を示すフローチャートであり、(a)は当該地図データ記録処理を示すフローチャートであり、(b)は第3実施例に係る地面判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本願を実施するための形態について、図1を用いて説明する。なお図1は、実施形態に係る判定装置の概要構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、実施形態に係る判定装置Sは、第1取得手段1と、検出手段2と、判定手段3と、第2取得手段4と、を備えて構成されている。
【0016】
この構成において第1取得手段1は、移動体から周囲に出射された光の地面からの反射光の受光により得られた受光情報を取得する。
【0017】
そして検出手段2は、第1取得手段により取得された受光情報に基づき光の反射点の傾斜を検出する。
【0018】
一方第2取得手段4は、傾斜の種別を判別するための閾値を示す閾値情報を、当該地面に対応する地図情報に関連付けて当該閾値情報を記録している記録媒体から取得する。
【0019】
これらにより判定手段3は、閾値情報により示される閾値と検出手段2により検出された傾斜との比較に基づき、光の反射点が、地面か、当該地面にある物か、を判定する。
【0020】
以上説明したように、実施形態に係る判定装置Sの動作によれば、地面からの反射光を受光して得られた受光情報に基づき反射点の傾斜を検出し、その傾斜と、地面に対応する地図情報に関連付けて記録されている閾値情報により示される閾値と、の比較に基づき、当該反射点が地面か物かを判定する。よって、傾斜の種別判別のために記録されている閾値との比較により、反射点が地面か物かを判定するので、複雑な処理を不要としつつ当該判定を正確に行うことができる。
【実施例
【0021】
次に、上述した実施形態に対応する具体的な実施例について、図2乃至図5を用いて説明する。なお以下に説明する各実施例は、車両に搭載されたLiDARシステムを用いた障害物検出に用いられる閾値に適用した場合の実施例である。
【0022】
また、図2は第1実施例に係る地図データシステムの概要構成を示すブロック図であり、図3は第1実施例に係る地図データの構造を示す図であり、図4は第1実施例に係る地図データ記録処理等を示すフローチャートであり、図5は第2実施例に係る地面判定処理を示すフローチャートであり、図6は第3実施例に係る地図データ記録処理等を示すフローチャートである。
【0023】
(I)第1実施例
次に、実施形態に係る第1実施例について、図2乃至図4を用いて説明する。
【0024】
図2に示すように、第1実施例に係る地図データシステムSSは、インターネット等のネットワークNWを介してデータの授受が可能な地図サーバ装置SVと、車両に搭載されている地面判定装置Cと、により構成されている。
【0025】
また地図サーバ装置SVには、地図管理用の車両に搭載されるか又は固定設置された一又は複数のLiDARセンサ10からのデータが入力されている。そして地図サーバ装置SVは、処理エリア決定部11と、地図データベース12と、グラフ・勾配計算部13と、物体認識部14と、識別器15と、処理エリア内勾配閾値決定部16と、により構成されており、処理エリア内勾配閾値決定部16は地図データベース17に接続されている。この地図データベース17は地図サーバ装置SVとは別個に設けられてもよいし、地図サーバ装置SV内に設けられてもよい。なお、上記処理エリア決定部11、グラフ・勾配計算部13、物体認識部14及び処理エリア内勾配閾値決定部16は、地図サーバ装置SVに備えられた図示しないCPU等を含むハードウェアロジック回路により実現されてもよいし、後述する第1実施例に係る地図データ記録処理に相当するプログラムを上記CPU等が読み出して実行することにより、ソフトウェア的に実現されるものであってもよい。
【0026】
一方地面判定装置Cは、ネットワークNW及びLiDARセンサ20に接続されたグラフ・勾配計算部21と、処理エリア決定部22と、地図データベース23と、処理エリア内勾配閾値比較部24と、により構成されている。このとき、グラフ・勾配計算部21、処理エリア決定部22及び処理エリア内勾配閾値比較部24は、地面判定装置Cに備えられた図示しないCPU等を含むハードウェアロジック回路により実現されてもよいし、後述する第1実施例に係る地面判定処理に相当するプログラムを上記CPU等が読み出して実行することにより、ソフトウェア的に実現されるものであってもよい。
【0027】
なお上記の構成において、処理エリア内勾配閾値比較部24が、実施形態に係る「第1取得手段1」の一例に、「第2取得手段」の一例及び「判定手段3」の一例にそれぞれ相当し、グラフ・勾配計算部21が実施形態に係る「検出手段2」の一例に相当する。また、地図データベース17が本願に係る「記録媒体」の一例に相当する。
【0028】
以上の構成において地図サーバ装置SVの地図データベース12は、LiDARセンサ10からのデータとのマッチング用の地図データを記録している。そして地図サーバ装置SVの処理エリア決定部11は、当該マッチング用の地図データを地図データベース12から読み出しつつ、実施例に係る勾配データの生成の対象となる地図上のエリアを、予め設定された方法により決定する。このエリアの決定は手動で行われてもよい。
【0029】
次にグラフ・勾配計算部13は、LiDARセンサ10からのデータに基づき、例えば予め設定された注目点の四つの近傍(例えば、当該注目点を中心とした四方向(例えば上下左右それぞれの方向)の近傍)を繋いだグラフを作成し、当該各グラフそれぞれのエッジの勾配することを、全ての注目点において実行する。なお、このようなグラフ・勾配計算部13における計算方法について詳細には、例えば、論文「On the Segmentation of 3D LIDAR Point Clouds」ICRA,2011,The University of Sydney, B. Douillard et al」の「III. SEGMENTATION ALGORITHMS、C. Segmentation for Sparse Data、2) Mesh Based Segmentation」に記載されている。また以下の説明において、上述した勾配の計算方法を単に「実施例に係る勾配計算方法」と称する。一方物体認識部14は、識別器15を用いて、又は手動により、当該データが得られた対象が地面か障害物かを検出する。これにより処理エリア内勾配閾値決定部16は、処理エリア決定部11により決定されたエリアにおける地面の傾斜の種別判別のための閾値(即ち、そのエリアにおける傾斜の種別判別のための閾値)を決定し、当該決定した閾値を、当該エリアに相当する地図データに関連付けて地図データベース17に記録する。
【0030】
一方地面判定装置Cのグラフ・勾配計算部21は、LiDARセンサ20からのデータに基づき、例えば上記実施例に係る勾配計算方法により、各注目点における勾配を計算する。他方地図データベース23は、LiDARセンサ20からのデータとのマッチング用の地図データを記録している。そして処理エリア決定部22は、当該マッチング用の地図データを地図データベース23から読み出しつつ、実施例に係る傾斜(勾配)の検出の対象となる地図上のエリアを、予め設定された方法により決定する。そして処理エリア内勾配閾値比較部24は、地図サーバ装置SVの地図データベース17に記録されている上記閾値を、必要に応じてネットワークNWを介して取得しつつ、当該閾値とLiDARセンサ20からのデータを比較して、処理対象のエリアの傾斜(勾配)を検出する。
【0031】
次に、実施例に係る地図データベース17に記録されている、実施例に係る地図データのデータ構造について、図3を用いて説明する。
【0032】
図3に示すように、実施形態に係る地図データベース17では、地図としてのエリアごとに上記傾斜の種別判別のための閾値が記録されている。即ち、例えば図3(a)に例示するように、車両CCが進行する道路をその進行方向に等分したエリアA1乃至エリアA3ごとに、当該エリアA1乃至エリアA3それぞれに関連付けて上記閾値が記録されている。このとき、例えば図3(b)に示すように進行方向の長さが異なるエリアB1乃至エリアB4ごとに上記閾値が記録されていてもよいし、図3(c)に示すようにカーブに沿って分けられたエリアC1乃至エリアC3ごとに上記閾値が記録されていてもよいし、図3(d)に破線で示す交差点CRに対応して分けられたエリアD1乃至エリアD8ごとに上記閾値が記録されていてもよい。更には、図3(e)に例示するように道路Rに対して自由に分割されたエリアE1乃至エリアE6ごとに上記閾値が記録されていてもよい。
【0033】
次に、第1実施例に係る地図データ記録処理について、図4(a)を用いて説明する。図4(a)に示すように、第1実施例に係る地図データ記録処理は、例えば地図サーバ装置SVの電源スイッチがオンとされたタイミングで開始される。そして第1実施例に係る地図データ記録処理では、先ず処理エリア決定部11により処理対象となるエリアが決定されたか否かが確認される(ステップS1)。ステップS1の確認において当該エリアが決定されていない場合(ステップS1:NO)、処理エリア決定部11により、例えば図3にそれぞれ例示するエリアA1等のいずれかが選択される(ステップS2)。次に、処理対象のエリアが決定されたら(ステップS1:YES又はステップS2)、グラフ・勾配計算部13は、LiDARセンサ10からのデータに基づいて、上記実施例に係る勾配計算方法等を用いて、決定されたエリアについての当該データに基づく傾斜(上記勾配)を当該データごとに計算する(ステップS3)。次に物体認識部14は、識別器15を用いる方法又は目視等により、当該データが得られた対象が地面か障害物かを検出する(ステップS4)。そして処理エリア内勾配閾値決定部16は、地面か障害物かがステップS4により検出された上記対象についての上記データから計算された上記勾配に基づき、上記決定されたエリアにおける傾斜の種別判別のための上記閾値Aを、地面である上記対象の勾配の最大値≦閾値A<障害物である上記対象の勾配の最小値となるように決定する。この決定後の閾値Aは、当該エリアに関連付けて地図データベース17に記録される。
【0034】
その後、次のエリアについての閾値決定を行うか否かが判定され(ステップS6)、当該閾値決定を引き続き行う場合は(ステップS6:YES)、上記ステップS1以降の処理が繰り返される。一方ステップS6の判定において、処理を終了する場合は(ステップS6:NO)そのまま当該処理を終了する。
【0035】
次に、第1実施例に係る地面判定処理について、図4(b)を用いて説明する。
【0036】
図4(b)に示すように、第1実施例に係る地面判定処理は、例えば地面判定装置Cの電源スイッチがオンとされたタイミングで開始される。そして第1実施例に係る地面判定処理では、先ず地図サーバ装置SVの地図データベース17から必要な上記閾値のデータを取得済みであるか否かが判定される(ステップS10)。ステップS10の判定において当該閾値のデータが取得されていない場合(ステップS10:NO)、地図サーバ装置SVの地図データベース17にアクセスして当該必要な閾値のデータが取得される(ステップS11)。必要な閾値のデータが取得されたら(ステップS10:YES又はステップS11)、次に第1実施例に係る地面判定処理が実行される(ステップS12)。その後、第1実施例に係る地面判定処理を終了するか否かが、例えば地面判定装置Cが搭載されている車両が目的地に到達したか否かを判定すること等により判定される(ステップS13)。ステップS13の判定において当該地面判定処理を終了する場合は(ステップS13:YES)、そのまま当該地面判定処理を終了し、一方引き続き実行する場合は(ステップS13:NO)上記ステップS10以降の処理が繰り返される。
【0037】
次に、上記ステップS12の地面判定処理について、図4(c)を用いて説明する。図4(c)に示すように、ステップS13の地面判定処理では、先ず処理エリア内勾配閾値比較部24が、一つの上記注目点(地面上の注目点)(i)について上記閾値が関連付けられているか否かを判定する(ステップS120)。ステップS120の判定において現在の注目点(i)について上記閾値が関連付けられていない場合(ステップS120:NO)、処理エリア内勾配閾値比較部24は、次の注目点(i+1)について地面判定処理を行うか否かを判定する(ステップS121)。ステップS121の判定において次の注目点(i+1)について地面判定処理を行う場合(ステップS121:YES)、処理エリア内勾配閾値比較部24は上記ステップS120に戻って当該次の注目点(i+1)について地面判定処理を繰り返す。一方ステップS120の判定において次に地面判定処理を行うべき注目点がない場合(ステップS121:NO)、処理エリア内勾配閾値比較部24は上記ステップS13に戻る。他方ステップS120の判定において現在の注目点(i)について上記閾値が関連付けられている場合(ステップS120:YES)、処理エリア内勾配閾値比較部24は、注目点(i)の傾斜がその閾値より小さいか否かを判定し(ステップS122)、注目点(i)の傾斜がその閾値より小さい場合(ステップS122:YES)、処理エリア内勾配閾値比較部24はその注目点(i)が地面であると判定し(ステップS123)、上記ステップS121に移行する。一方ステップS122の判定において、注目点(i)の傾斜がその閾値以上である場合(ステップS122:NO)、処理エリア内勾配閾値比較部24はその注目点(i)に障害物があると判定し(ステップS124)、上記ステップS121に移行する。
【0038】
以上それぞれ説明したように、第1実施例に係る地面判定処理によれば、地面からの反射光を受光して得られたデータに基づいて反射点の傾斜を検出し、その傾斜と、地面に対応する地図データに関連付けて記録されている閾値と、の比較に基づいて、当該反射点が地面か物かを判定する。よって、傾斜の種別判別のために記録されている閾値との比較により、反射点が地面か物かを判定するので、複雑な処理を不要としつつ当該判定を正確に行うことができる。
【0039】
また上記閾値が、予め分割されたエリアに相当する地面ごと閾値であるので、エリアごとのきめ細かい閾値を用いて、地面か否かを正確に判定することができる。
【0040】
このとき、閾値が決定されるエリアが、車両の移動方向について一定間隔で分割された領域である場合は(図3(a)参照)、移動方向について一定間隔できめ細かく閾値を決定/記録することができる。
【0041】
また、閾値が決定されるエリアを、車両の移動方向における地面の傾斜の変化に対応した間隔で分割されたエリアとすれば、移動方向について地面の傾斜の変化(即ち地面の起伏)に対応してきめ細かく閾値を決定/記録することができる。
【0042】
更に、LiDARセンサ10により既定の角度範囲内にある地面からの反射光に基づいて、当該地面にある物の判別等を地図サーバ装置SVにおいて実行する場合は、既定の角度範囲の地面の勾配を正確に検出するための閾値を、地図データに関連付けて記録することができる。
【0043】
更にまた、車両が進入する交差点CR内の各進行方向のそれぞれにある地面の勾配検出のための閾値が決定されている場合は(図3(d)参照)、当該各進行方向それぞれにある地面についての判定を正確に行うことができる。
【0044】
また、地面の傾斜の変化に応じて当該地面についての複数の閾値が決定されている場合には、当該地面か否かの判定をより適切に行うことができる。ここで、上記地面の傾斜の変化に応じて複数の閾値が決定されている場合の例としては、例えば、地面の傾斜変化がないエリアでは、そのエリアについて単一の閾値が決定され、地面の傾斜変化が一定値以上に激しいエリアでは、そのエリア内の傾斜変化に応じて複数の閾値が当該エリアについて決定されている場合が挙げられる。
【0045】
更にまた、車両が移動する場合の既定の制限速度に応じて当該地面についての複数の閾値を決定されている場合にも、当該地面か否かの判定をより適切に行うことができる。ここで、上記制限速度に応じて複数の閾値を決定されている場合の例としては、例えば、車両の移動速度が速いときには、できるだけ小さな障害物を検出する必要があり、車両の移動速度が遅いときには障害物の検出設定条件を緩和可能にするという事情を考慮し、同じ一つのエリアに、そのエリアについての車両の制限速度に応じた閾値が決定されている場合が挙げられる。更に、制限速度と閾値との関係の一例としては、制限速度が時速80キロメートルの場合は当該閾値を0.7と決定され、制限時速が時速20キロメートルの場合は当該閾値を1.0と決定されることが挙げられる。
【0046】
更に、LiDARセンサ10が搭載されている地図管理用の車両(当該車両を、以下単に「管理用車両」と称する)が移動する場合の管理用車両自体の移動速度に応じて又は当該移動速度を参照して当該地面についての一又は複数の閾値が決定されている場合にも、当該地面か否かの判定をより適切に行うことができる。ここで、上記移動速度に応じて又は当該移動速度を参照して一又は複数の閾値が決定されている場合の例としては、例えば、上記制限速度に応じて複数の閾値が決定されている場合と同様の事情を考慮し、同じ一つのエリアに、そのエリアについての管理用車両の移動速度に基づいて複数の閾値が決定されている場合が挙げられる。より具体的には、一地点について管理用車両を複数回移動させ、当該移動ごとに閾値が決定されていることが考えられる。また、一地点についての管理用車両の移動は一回とし、当該一回の移動の移動速度に応じて閾値が一つ決定され、当該一地点についての他の閾値については当該移動速度に応じて決定された一の閾値に基づいて手動又は予め設定された計算手法により当該他の閾値が決定されていることが考えられる。そして、移動速度と複数の閾値との関係がテーブル化され、これを第1実施例に係る地面判定装置Cにより取得して傾斜の種別判別に用いるのが好適である。更に当該移動速度と閾値との関係の一例としては、上記制限速度の場合と同様に、管理用車両の移動速度が時速80キロメートルの場合は当該閾値が0.7と決定され、当該移動速度が時速20キロメートルの場合は当該閾値が1.0と決定されることが挙げられる。なお、移動速度に応じて又は移動速度を参照して地面についての一又は複数の閾値を決定する場合に、上記管理用車両の他に、LiDARセンサ20及び地面判定装置Cが搭載されている車両の移動速度に応じて又は当該移動速度を参照して、上記閾値を決定してもよい。
【0047】
更にまた、LiDARセンサ10からの出射光の出射方向の水平に対する角度(即ちLiDARセンサ10の鉛直方向の傾き)を用いて各傾斜を検出する場合には、地面の勾配をより正確に検出するための閾値を地図データに関連付けて記録することができる。
【0048】
なお、上述した第1実施例では、傾斜の種別判定を地面の勾配の値としての上記閾値Aを用いて行う構成としたが、これ以外に上記第1実施例の変形例として、当該閾値Aに加えて、上記出射光の(勾配を有する)地面からの反射率の値としての閾値を更に用いて傾斜の種別判定を行うように構成してもよい。なお以下の説明において、当該反射率の値としての閾値を「閾値B」と称する。
【0049】
より具体的に、先ず上記地図データ記録処理については、図4(a)のステップS5に加えて、LiDARセンサ10からのデータに基づき、上記閾値Bを、
地面である上記対象の反射率の最大値≦閾値B<障害物である上記対象の反射率の最小値
として決定し、これを上記エリアに関連付けて地図データベース17に記録する。このとき、上記閾値Bとしての反射率はLiDARセンサ10からの出射光の波長によって異なる。よって閾値Bは、使用したLiDARセンサ10からの当該出射光の波長とも関連付けられて地図データベース17に記録される。
【0050】
ここで、LiDARセンサ10及び上記LiDARセンサ20としては元々多種の波長の出射光を用いるため、複数種類の当該波長ごとの反射率としての閾値Bを決定して記録する必要がある。このため、例えば、LiDARセンサ10からの出射光の波長を変えて反射率のデータを収集して記録するか、或いは、本来の仕様(波長)の異なる複数のLiDARセンサ10で上記反射率のデータを収集するように構成するのが好ましい。更に、当該収集の際に、LiDAR10からの出射光の出射角度と対象までの距離とを関連付けて記録しておくのが好ましい。これは、当該出射角度及び距離は反射率の値である閾値Bに影響を与えるからである。
【0051】
次に、閾値Bについての上記地面判定処理としては、地面の勾配の値としての上記閾値Aとの関係に加えて、反射率の値としての上記閾値Bとの関係をも考慮して、対象たるエリアが地面であるか障害物が存在するかを判断する。より具体的には、図4(c)のステップS122の判定で「YES」となり、更に、所定の角度、距離及び波長の出射光を用いた場合の注目点(i)の反射率が閾値B未満であった場合、処理エリア内勾配閾値比較部24はその注目点(i)が地面であると判定する(図4(c)ステップS123参照)。これに対し、図4(c)のステップS122の判定で「NO」となり、更に、上記所定の角度等の出射光を用いた場合の注目点(i)の反射率が閾値B以上であった場合、処理エリア内勾配閾値比較部24はその注目点(i)に障害物があると判定する(図4(c)ステップS124参照)。
【0052】
以上説明したような第1実施例の変形例によれば、勾配の値としての上記閾値Aに加えて、反射率の値としての閾値Bを重畳的に用いて傾斜の種別判定を行うので、当該種別判定が誤判定となる可能性を下げることができる。
【0053】
(II)第2実施例
次に、実施形態に係る他の実施例である第2実施例について、図5を用いて説明する。図5は第2実施例に係る地面判定処理を示すフローチャートである。
【0054】
以下に説明する第2実施例では、地面判定処理として、車両の速度に応じた地面判定処理を行う。その他の第2実施例に係る構成及び処理(地図データ記録処理を含む)は第1実施例に係る構成及び処理と同一であるので、細部の説明は省略する。
【0055】
即ち図5に示す第2実施例に係る地面判定処理としては、第1実施例に係るステップS120の判定において現在の注目点(i)について上記閾値が関連付けられている場合(ステップS120:YES)、次に処理エリア内勾配閾値比較部24は、車両の速度に応じた地面判定処理を行うか否かを判定する(ステップS130)。そして車両の速度に応じた地面判定処理を行わない場合(ステップS130:NO)、処理エリア内勾配閾値比較部24は、第1実施例に係る地面判定処理と同様のステップS122以降の処理を行う。一方ステップS130の判定において車両の速度に応じた地面判定処理を行う場合(ステップS130:YES)、処理エリア内勾配閾値比較部24は、注目点(i)の傾斜がその閾値に速度に応じた補正値αを乗算した値より小さいか否かを判定し(ステップS131)、注目点(i)の傾斜がその乗算の結果より小さい場合は(ステップS131:YES)上記ステップS123に移行し、注目点(i)の傾斜がその乗算の結果以上である場合は(ステップS131:NO)上記ステップS124に移行する。このとき当該補正値αは、例えば、速度が大きくなるほど小さくなる値として予め設定される。具体的には、例えば時速20キロメートルまではα=1とされ、時速30キロメートルでα=0.9とされ、時速40キロメートルでα=0.8とされる。
【0056】
以上説明したように、第2実施例に係る地面判定処理によれば、第1実施例に係る地面判定処理による効果に加えて、車両が移動する速度に応じて地面を判定するので、正確に当該判定を行うことができる。
【0057】
また、車両の移動の速度に対応する補正値αを用いる場合には、車両の移動速度に応じて正確に当該判定を行うことができる。
【0058】
更に、補正値αが車両の移動の速度が速いほど小さい場合には、車両が高速で移動するほど、より小さい物を当該物として判定することができ、より安全な移動に資することができる。
【0059】
なお、補正値αを車両の移動の速度が遅いほど大きくすることも可能である。この場合には、車両が低速で移動する場合において、当該低速に対応した判定精度とすることができる。
【0060】
(III)第3実施例
次に、実施形態に係る更に他の実施例である第3実施例について、図6を用いて説明する。なお図6は第3実施例に係る地図データ記録処理等を示すフローチャートである。
【0061】
以下に説明する第3実施例では、第3実施例に係る地図サーバ装置における地図データ記録処理及び第3実施例に係る地面判定装置における地面判定処理として、当該地図サーバ装置に接続されたLiDARセンサの出射光の鉛直方向の傾きの角度(即ちピッチ角。以下同様。)θに応じた地図データ記録処理、及び当該地面判定装置に接続されたLiDARセンサの出射光のピッチ角θに応じた地面判定処理を行う。なお、第3実施例に係る構成及び処理について、第1実施例に係る構成及び処理と同一のものは、同一の部材番号又はステップ番号を付して、細部の説明は省略する。
【0062】
即ち図6(a)に示す第3実施例に係る地面データ記録処理としては、第1実施例に係るステップS1の判定又はステップS2において処理対象のエリアが決定されたら(ステップS1:YES又はステップS2)、次にグラフ・勾配計算部13は、上記ピッチ角θに応じた地図データ記録処理を行うか否かを判定する(ステップS30)。なおこの場合のピッチ角θは、例えばLiDARセンサ10に備えられた図示しない加速度センサ等により検出される。そして上記ピッチ角θに応じた地図データ記録処理を行わない場合(ステップS30:NO)、グラフ・勾配計算部13は、第1実施例に係る地図データ記録処理と同様のステップS3以降の処理を行う。一方ステップS30の判定において上記ピッチ角θに応じた地図データ記録処理を行う場合(ステップS30:YES)、グラフ・勾配計算部13は、例えば、上記実施例に係る勾配計算方法等を用いてLiDARセンサ10からのデータごとに計算された傾斜におけるパラメータzを上記ピッチ角θの余弦で除した値(即ち当該パラメータzに(1/cosθ)を乗じた値)とした場合の当該計算により得られる傾斜を、当該LiDARセンサ10からのデータに基づく補正傾斜として当該データごとに計算する(ステップS31)。その後は、当該補正傾斜を用いた上記ステップS4以降が実行される。
【0063】
一方図6(b)に示す第3実施例に係る地面判定処理としては、第1実施例に係るステップS120の判定において現在の注目点(i)について上記閾値が関連付けられている場合(ステップS120:YES)、次に処理エリア内勾配閾値比較部24は、上記ピッチ角θに応じた地面判定処理を行うか否かを判定する(ステップS140)。なおこの場合のピッチ角θは、例えば第3実施例に係る地面判定装置Cが搭載されている車両に備えられた図示しない加速度センサ等により検出される。そして上記ピッチ角θに応じた地面判定処理を行わない場合(ステップS140:NO)、処理エリア内勾配閾値比較部24は、第1実施例に係る地面判定処理と同様のステップS122以降の処理を行う。一方ステップS140の判定において上記ピッチ角θに応じた地面判定処理を行う場合(ステップS140:YES)、処理エリア内勾配閾値比較部24は、注目点(i)の傾斜を上記ピッチ角θにより補正した傾斜(より具体的には、例えば注目点(i)の傾斜におけるパラメータzを上記ピッチ角θの余弦で除した値(即ち当該パラメータzに(1/cosθ)を乗じた値)とした場合の当該傾斜)が注目点(i)に関連付けられている閾値より小さいか否かを判定し(ステップS141)、注目点(i)の当該補正後の傾斜が当該閾値より小さい場合は(ステップS141:YES)上記ステップS123に移行し、注目点(i)の当該補正後の傾斜が当該閾値の結果以上である場合は(ステップS141:NO)上記ステップS124に移行する。
【0064】
以上説明したように、第3実施例に係る地面判定処理によれば、第1実施例に係る地面判定処理による効果に加えて、LiDARセンサ20の出射光のピッチ角θに応じて地面を判定するので、正確に当該判定を行うことができる。
【0065】
なお、図4及び図5にそれぞれ示したフローチャートに相当するプログラムを、光ディスク又はハードディスク等の記録媒体に記録しておき、或いはインターネット等のネットワークを介して取得しておき、これらを汎用のマイクロコンピュータ等に読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータ等を各実施例に係る処理エリア内勾配閾値決定部16又は処理エリア内勾配閾値比較部24として機能させることも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 第1取得手段
2 検出手段
3 判定手段
4 第2取得手段
10、20 LiDARセンサ
17 地図データベース
24 処理エリア内勾配敷地比較部
C 地面判定装置
S 判定装置
SV 地図サーバ装置
SS 地図データシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6