IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メディジーン イミュノテラピーズ ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7174144HA-1特異的T細胞受容体およびその使用
<>
  • 特許-HA-1特異的T細胞受容体およびその使用 図1
  • 特許-HA-1特異的T細胞受容体およびその使用 図2
  • 特許-HA-1特異的T細胞受容体およびその使用 図3
  • 特許-HA-1特異的T細胞受容体およびその使用 図4A
  • 特許-HA-1特異的T細胞受容体およびその使用 図4B
  • 特許-HA-1特異的T細胞受容体およびその使用 図5A
  • 特許-HA-1特異的T細胞受容体およびその使用 図5B
  • 特許-HA-1特異的T細胞受容体およびその使用 図6
  • 特許-HA-1特異的T細胞受容体およびその使用 図7
  • 特許-HA-1特異的T細胞受容体およびその使用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】HA-1特異的T細胞受容体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20221109BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221109BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/725 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021506469
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019071099
(87)【国際公開番号】W WO2020030631
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】18187539.4
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517419917
【氏名又は名称】メディジーン イミュノテラピーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ソメルマイヤー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ブラッハー,アリン
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/058002(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/120428(WO,A2)
【文献】特開2017-169566(JP,A)
【文献】特開2017-007977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C12N 1/00-38
C12N 5/00-28
C07K 14/00-19/00
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイナー組織適合性抗原1(HA-1)のアレルバリアントに特異的な、単離されたT細胞受容体(TCR)であって、
配列番号25のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号27の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、並びに
配列番号28のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号30の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖を含む、前記単離されたTCR。
【請求項2】
アミノ酸配列である配列番号2またはその断片を特異的に認識する、請求項1に記載の単離されたTCR。
【請求項3】
アミノ酸配列である配列番号4またはその断片を認識しない、請求項1または2に記載の単離されたTCR。
【請求項4】
前記TCRの認識モチーフが、配列番号127に示される配列を少なくとも含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離されたTCR。
【請求項5】
配列番号31と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号32と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の単離されたTCR。
【請求項6】
配列番号31のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号32のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の単離されたTCR。
【請求項7】
配列番号33のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号34のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の単離されたTCR。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のTCRの機能性部分を含む単離されたポリペプチドであって、前記機能性部分が、配列番号31のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号32のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載のTCRを含む多価TCR複合体。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載のTCRをコードするかまたは請求項8に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含むベクター。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載のTCRを発現する細胞。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載のTCR、請求項8に記載のポリペプチド、請求項9に記載の多価TCR複合体、請求項10に記載の核酸、請求項11に記載のベクター、または請求項12に記載の細胞を含む医薬組成物。
【請求項14】
がんの処置のための、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイナー組織適合性抗原1(HA-1)の1つのアレル形態に特異的に結合する単離されたT細胞受容体(TCR)およびTCRの機能性部分を含むポリペプチドに関する。さらに、多価TCR複合体、TCRをコードする核酸、TCRを発現する細胞およびTCRを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、医薬として使用するためのTCR、特に、がんの処置において使用するためのTCRに関する。
【背景技術】
【0002】
この50年の間、重篤な再生不良性貧血および白血病などの多数の悪性疾患および非悪性疾患の一連の処置として、骨髄移植(BMT)および造血幹細胞移植(HSCT)を使用することに成功してきた。BMTまたはHSCTでは、致死量以下の全身照射または高用量の細胞毒性薬のいずれかによって患者自身の造血細胞系が破壊された後、患者は、健康なドナーから造血細胞(すなわち、造血幹細胞)を受ける。ドナーの幹細胞は、ドナーの骨髄に由来するかまたはドナーの動員された造血幹細胞の幹細胞移植の一部であってもよい。移植された細胞が非自己起源、すなわち、健康で、遺伝的に非同一なドナーに由来するため、この手法は、同種異系と呼ばれる。
【0003】
同種異系BMTまたはHSCTの1つの不成功の態様は、宿主による移植片の拒絶によるものであり、これは宿主対移植片病(HvGD)としても知られ、致死量以下の照射または細胞毒性医薬の移植前レジメンの間の破壊を逃れた患者の残留免疫細胞が、移植されたドナー細胞を「異物」として特定し、次に、免疫応答を誘発して、移植された骨髄または造血幹細胞の拒絶をもたらすものである。
【0004】
BMT/HSCTの不成功の別のさらにより深刻な形態は、いわゆる移植片対宿主病(GvHD)であり、これは、事実上、患者(レシピエント)の体細胞に対する、ドナーから移植された骨髄または造血幹細胞に由来する移植された免疫細胞の反応である。GvHDは、主に、すべての有核体細胞および血小板によって発現したMHC分子における差異に起因する。MHCは、主要組織適合性複合体分子を表し、これについて、2つの主要なクラスが知られている。細胞質タンパク質のペプチド断片を提示または示すMHCクラスI分子は、GvHDにおいて主要な役割を果たす。ヒトでは、MHCは、HLA複合体(ヒト白血球抗原複合体)とも称され、第6染色体上に位置する。
【0005】
HLA複合体は、多遺伝子性であり、かつ高度に多形性の遺伝子に基づき、このことは、1つの集団の異なる個体において多くの異なるアレル(同じ遺伝子の別の形態)が存在することを意味する。ヒト細胞はそれぞれ、6つの異なるMHCクラスIアレル(各親からの1つのHLA-A、-B、および-Cアレル)、さらに6から8つのMHCクラスIIアレルを発現する。BMTおよびHSCTの設定では、MHC分子それ自体が抗原として作用することができ、すなわち、これらは、ドナーの免疫細胞によって「異物」として特定され得る。よって、GvHD応答は、主に、ドナーとレシピエントのHLA/MHC分子発現の不適合に基づく。したがって、GvHDのリスクを最も低くするために、MHCクラスIおよびクラスIIの表現型に関して不適合の量が最も少なくなるようにドナーを選択することが最も重要である。
【0006】
MHCI/II遺伝子型に関して、ドナーと患者が可能な限り緊密に適合している場合でさえ、全患者の50%より多くがGvHDに依然として罹患する。患者がGvHDを発症するのを防止する1つの可能な方法は、ドナーのT細胞はドナーのレパートリーと異なる患者のHLA分子を認識することによってGvHDを誘発するため、例えば、抗CD3モノクローナル抗体または成熟T細胞に対して特異的な他の抗体を使用して、移植片からT細胞を除去することである。BMTとHSCTは、現在、HLA適合設定において行われているが、GvHDは依然として多数の患者において生じており、この問題を克服する必要性が生じている。
【0007】
これは、HLA遺伝子とは独立して遺伝する、いわゆるマイナー組織適合性抗原(MiHA)における不適合に起因するようである。近年、多数のMiHAが特定されており(Frontiers in Immunology, Vol. 7, Article 100, March 2016)、これらは、男性に特異的なY染色体(H-Y抗原)または他の染色体(常染色体MiHA)によってコードされている場合がある。常染色体MiHAのうち、HA-1、2、3、4および5と称される抗原は、発見された最初の抗原であり、これらのすべては、HLA-A1(HA-3)の文脈またはHLA-A2(HA-1、2、4および5)の文脈のいずれかで提示される。HA-1のMiHAを規定するSNPバリアント(一塩基多型)は、HLA-A2を発現する患者の69%で発現され、一方、HA-2は集団の95%、HA-4は16%およびHA-5は約7%において検出され得ることも知られている。対照的に、HLA-A1の文脈で提示されるHA-3は、HLA-A1を発現する患者の88%に見られる(N Engl J Med. 1996 Feb 1;334(5):281-5)。
【0008】
HA-1は、ほとんど、造血細胞と癌細胞においてのみ発現されるため、養子T細胞療法(ACT)に対する有望な腫瘍特異的標的となる。以前に、HLA-A2で拘束されたHA-1に特異的な細胞傷害性Tリンパ球(T細胞)を単離または生成することに成功している(Haematologica. 2005 Oct;90(10):1415-21)。HA-1は、アミノ酸配列VLHDDLLEA(配列番号2)を有するノナペプチドの形態のエピトープを含み(Science. 1998 Feb 13;279(5353):1054-7)、HMHA1(KIAA0223)遺伝子(rs番号:rs1801284)のアレル(SNPバリアント)に由来する。HMHA1遺伝子座は2つのアレル、HA-1HおよびHA-1Rを含み、これらは2つのヌクレオチドが異なり、単一のアミノ酸置換を生じる。第2のノナペプチドエピトープ、すなわちVLRDDLLEA(配列番号4;Science 13 Feb 1998: Vol. 279, Issue 5353, pp. 1054-1057)は、HLA-A02:01によってあまり効率的に提示されない。アレル多型およびメンデルの分離パターンにより、個体は、HA-1H/Hに関してホモ接合性であるか、HA-1H/Rに関してヘテロ接合性であるかまたはHA-1R/Rに関してホモ接合性であるかのいずれかであり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、MiHA HA-1の唯一のアレルバリアントに特異的に結合するT細胞受容体の提供であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、HA-1の1つのみのアレルバージョン、すなわちHA-1に対して特異的であるT細胞受容体(TCR)に関する。本発明の具体的実施形態では、HLA-A2分子によって提示される、またはHLA-A2分子の文脈でのHA-1に対する結合特異性を有するT細胞受容体が開示される。本発明は、医薬として使用するための、または悪性腫瘍の治療において使用するためのTCRにも関する。例えば、BMT/HSCT患者が、HA-1 Hアレルについてホモ接合性である(好適なMHC/HLA分子上にペプチドVLHDDLLEAを提示する)、すなわち患者がHA-1H/Hであるか、またはヘテロ接合性、すなわちHA-1H/Rであるかのいずれかであり、およびドナーが、Rアレルに関してホモ接合性、すなわちHA-1R/Rであり、かつドナーT細胞の一部が単離され、本発明のTCRのうちの1つを形質導入され、よって、HA-1アレルに対する特異性を有するTCRを発現し、および形質導入されたドナーT細胞が患者に注入され、およびそれ以外の点では患者とドナーがHLA同一であるかまたはHLA適合である設定で、TCRを使用することができる。HA-1に特異的なTCRを発現する注入された組換えドナーT細胞によって、好適なMHC/HLA分子の文脈でHA-1を発現する患者のいずれかの残留造血器腫瘍細胞が検出および枯渇(細胞毒性活性によって)される。腫瘍の再燃中に再出現する患者の腫瘍細胞の枯渇を可能にするために、このようなHA-1特異的ドナーT細胞を将来の注入のために保存することも予想される。本発明の別の態様は、BMT/HSCTのために計画された患者のプレコンディショニング処置のための本発明のTCRまたは本発明のTCRを発現する組換えT細胞の使用である。本発明のTCRまたはこのようなHA-1特異的TCRを発現する組換えT細胞のこのような使用によって、本発明のTCRの組換え発現により、患者の造血細胞に対してアロ反応性であり、よって、HLA-A2に関連してHA-1を提示する免疫細胞を撲滅するであろうこのような組換えT細胞の注入によって、致死量以下の照射が、置き換えられるかまたはサポートされ得ることになる。T細胞は、BMT/HSCTのドナーに由来し得る。
【0011】
本発明によるTCRは、単離および/または精製され、可溶性であるかまたは膜に結合してもよい。
【0012】
一部の実施形態では、TCRのアミノ酸配列は、1つまたは複数の表現型に影響しない(phenotypically silent)置換を含んでもよい。さらに、本発明のTCRは標識され得る。有用な標識は当技術分野で公知であり、任意選択で様々な長さのリンカーを介して、通常の方法を使用してTCRまたはTCRバリアントに連結され得る。用語「標識」または「標識基」は、任意の検出可能な標識を指す。さらに、またはあるいは、アミノ酸配列は、治療剤または薬物動態改変部分を含むように改変され得る。治療剤は、免疫エフェクター分子、細胞毒性剤および放射性核種からなる群から選択されてもよい。免疫エフェクター分子は、例えば、サイトカインであってもよい。薬物動態改変部分は、少なくとも1つのポリエチレングリコール繰り返し単位、少なくとも1つのグリコール基、少なくとも1つのシアリル基またはそれらの組合せであってもよい。
【0013】
TCR、特に本発明によるTCRの可溶性形態は、例えば、免疫原性を低下させる、流体力学的サイズ(溶液中のサイズ)溶解度および/もしくは安定性を増加させる(例えば、タンパク質分解に対する保護を増強させることによって)ならびに/または血清中半減期を延長するために、追加の機能性部分を付加することによって改変され得る。他の有用な機能性部分および改変には、患者の体内で本発明のTCRを有するエフェクター宿主細胞を遮断するかまたは活性化するために使用され得る「自殺」または「安全スイッチ」が含まれる。
【0014】
グリコシル化パターンが変更されたTCRも本発明において予想される。
【0015】
薬物または治療実体、例えば、TCR、特に本発明のTCRの可溶性形態に対して小分子化合物を添加することも考えられる。
【0016】
TCR、特に本発明のTCRの可溶性形態は、それぞれの分子(タグ)の特定、追跡、精製および/または単離を補助する追加のドメインを導入するためにさらに改変され得る。
【0017】
一部の実施形態では、TCRは一本鎖タイプのものであり、ここで、TCRα鎖とTCRβ鎖は、リンカー配列によって連結されている。
【0018】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されているTCRの機能性部分を含むポリペプチドを指し、機能性部分は、配列番号:配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40、配列番号50および配列番号60からなる群から選択されるアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
具体的実施形態では、機能性部分は、TCRα可変鎖および/またはTCRβ可変鎖を含む。
【0020】
具体的実施形態は、本明細書に記載されている少なくとも2つのTCRを含む多価TCR複合体を指す。より具体的な実施形態では、前記TCRのうちの少なくとも1つに、治療剤が付随する。
【0021】
一部の実施形態は、エフェクター細胞、特に機能性ポリペプチドまたは機能性多価ポリペプチドのような免疫エフェクター細胞上に発現される本発明のTCRを指し、ここで、IFN-γ分泌は、HLA-A02:01にコードされた分子によって提示されるアミノ酸配列である配列番号2に結合した際にTCRを発現する前述のエフェクター細胞において誘導される。
【0022】
ここで、HLA-A02:01にコードされた分子による提示は、ペプチド、特にエピトープがMHC分子の結合溝に結合することを意味する。
【0023】
エピトープを提示するMHC分子は、HLA-A02アレルのうちの1つ、例えば、HLA-A02:01またはHLA-A02:06アレル、好ましくはHLA-A02:01アレルによってコードされていてもよい。
【0024】
エフェクター細胞上に発現された本発明のTCRの、HLA-A02:01にコードされた分子によって提示される配列番号2のアミノ酸配列に対する結合によって誘導されるIFN-γ分泌は、10-7[M]のHA-1ペプチドの濃度において、HLA-A02:01にコードされた分子によって提示される配列番号4に対する結合と比較した場合、少なくとも3倍高い、例えば10倍高い、20倍高い、100倍高い場合がある。
【0025】
よって、HA-1バリアントを認識するために、HA-1と比較して、少なくとも1,000、好ましくは少なくとも5,000、より好ましくは少なくとも8,000、最も好ましくは少なくとも10,0000倍高いペプチド濃度が、HA-1-TCRトランスジェニックT細胞のすべてに対して必要とされる。
【0026】
具体的実施形態では、例えばTCRトランスジェニックT細胞対T2細胞の比が2:1である場合、エフェクター細胞上に発現された本発明のTCRの、HLA-A02:01にコードされた分子によって提示される配列番号2のアミノ酸配列に対する結合によって誘導されるIFN-γ分泌は、10-7[M]のHA-1ペプチド濃度において、500pg/mlより多く、例えば1000pg/mlより多く、より好ましくは2000pg/mlより多く、最も好ましくは3000pg/mlより多くてもよい。
【0027】
サイトカインおよびケモカインの放出、例えばIFN-γ分泌は、T細胞抗体固定化磁気ビーズを使用して、配列番号2もしくは配列番号4のアミノ酸配列を発現するようにK562細胞(Greiner et al. 2006, Blood. 2006 Dec 15;108(13):4109-17)を形質導入し、それぞれ、調査されるTCRを発現するCD8濃縮および/もしくはCD8非濃縮PBMCと共にインキュベートするin vitroアッセイ、またはVLHDDLLEAペプチド(配列番号2)もしくはペプチドVLRDDLLEA(例えば、配列番号4)のいずれかを外部から負荷したT2細胞を使用し、次に、調査されるTCRを発現するCD8濃縮および/もしくはCD8非濃縮PBMCと共インキュベートするin vitroアッセイによって、測定することができる。
【0028】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されているTCRをコードするかまたは上記のポリペプチドをコードする核酸を指す。
【0029】
本発明のさらなる態様は、上記の本出願の核酸を含むプラスミドまたはベクターを指す。好ましくは、ベクターは、発現ベクターまたは細胞、特に真核生物の細胞の形質導入もしくはトランスフェクションに好適なベクターである。ベクターは、例えば、レトロウイルスベクター、例えば、ガンマーレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであってもよい。
【0030】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されているTCRを発現する細胞を指す。細胞は、単離されてもよく、または天然に存在しなくてもよい。
【0031】
本発明の別の態様は、上記の核酸または上記のプラスミドもしくはベクターを含む細胞を指す。より詳細には、細胞は:
a)少なくとも1つの上記の核酸を含む発現ベクター、または
b)本明細書に記載されているTCRのアルファ鎖をコードする核酸を含む第1の発現ベクター、および本明細書に記載されているTCRのベータ鎖をコードする核酸を含む第2の発現ベクター
を含んでもよい。
【0032】
細胞は、末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)であってもよい。典型的には、細胞は、免疫エフェクター細胞、特にT細胞である。他の好適な細胞型として、ガンマ-デルタT細胞、NK細胞およびNK様T細胞が挙げられる。
【0033】
別の態様は、HA-1に対する特異性を媒介する、本明細書に記載されているTCRの一部に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を指す。具体的実施形態では、HA-1特異性を媒介するTCRの一部は、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57のアルファ鎖のCDR3ならびに/または配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40、配列番号50および配列番号60のベータ鎖のCDR3を含む。
【0034】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されているTCR、本明細書に記載されているポリペプチド、本明細書に記載されている多価TCR複合体、本明細書に記載されている核酸、本明細書に記載されているベクター、本明細書に記載されている細胞、または本明細書に記載されている抗体を含む医薬組成物を指す。
【0035】
典型的には、医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む。
【0036】
本発明の別の態様は、医薬として使用するための、特にHLA適合骨髄および/または幹細胞移植の設定においてがんの処置、特に血液がんの処置において使用するための、本明細書に記載されているTCR、本明細書に記載されているポリペプチド、本明細書に記載されている多価TCR複合体、本明細書に記載されている核酸、本明細書に記載されているベクター、本明細書に記載されている細胞、または本明細書に記載されている抗体を指し、ここで、患者は、HLA適合ドナーからアロ骨髄および/または幹細胞移植を以前に受けたことがあり、ドナーは、HA-1陰性(よって、HA-1ホモ接合性および/またはHLA-A2陰性)であり、患者(ホモ接合性のHA-1またはヘテロ接合性のHA-1H/RかつHLA-A2陽性)は、血液がん細胞の再発もしくは再燃を患っているかまたは予防措置(患者は、再燃/再発の兆候なしに移植後に処置される)を受けている。血液がん細胞の再発を患っている患者は、移植後に患者またはドナーからCD8T細胞を単離し、このような単離されたCD8T細胞にex vivoで本発明によるTCRを形質導入することによって処置される。血液がんは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫(HL)、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)、混合表現型急性白血病(MPAL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞性多形型リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、中枢神経
系リンパ腫、CD37+樹状細胞リンパ腫、リンパ形質性リンパ腫(lymphoplasmatic lymphoma)、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織(MALT組織)の節外辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、悪性化の可能性が不明なB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、移植後リンパ増殖性障害からなる群から選択されてもよい。他の血液がんまたは障害は、骨髄異形成障害を含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】様々なHA-1反応性TCRを形質導入したCD8T細胞のHA-1-MHC多量体結合を示す図である。CD8 T細胞を健康なドナーのPBMCから単離し、6つの異なるHA-1-TCRおよびHA-1を認識しない1つの対照TCRを形質導入した。形質導入したCD8 T細胞を、形質導入に関するマーカーとしてマウス定常ベータ領域を使用するFACSによって濃縮した。これらの細胞の増殖後に、これらをHA-1-MHC多量体ならびにCD8およびマウス定常ベータ領域(mCb)に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。集団をCD8/mCb細胞上でゲート化し、多量体/CD8の染色を示す。
図2】HA-1TCRトランスジェニックT細胞が、HLA-A2上に提示されたHA-1ペプチドを認識することを示すグラフである。HA-1ペプチドを外部から負荷したT2細胞またはHA-1エピトープをコードするHMHA1遺伝子の一部を形質導入したK562/HLA-A2細胞と、トランスジェニックT細胞を共培養した。陰性対照として、対照ペプチドを負荷したT2細胞および形質導入されていないK562/HLA-A2細胞をそれぞれ使用した。標準ELISAによって共培養上清中のIFN-γ濃度を測定することによって標的細胞の認識を分析した。
図3】HA-1-TCRトランスジェニックT細胞の機能性アビディティを示すグラフである。(A)段階的濃度のHA-1ペプチド(10-11M~10-5M)またはHA-1ペプチド(10-8M~10-5M)を外部から負荷したT2細胞と、トランスジェニックT細胞を共培養した。(B)HA-1-TCRトランスジェニックT細胞のHA-1ペプチドに対する機能性アビディティを国際公開第2018058002号パンフレットに記載されているように、HA-1特異的TCR(TCR2)を形質導入したT細胞と比較した。本発明によるTCR1~6(TCR_1、TCR_2、TCR_3、TCR_4、TCR_5、TCR_6)に関するデータは、図3Aおよび3Bにおけるものと同じである。
図4A】未改変標的細胞上で、生理学的レベルのHA-1を認識するHA-1-TCRトランスジェニックT細胞の能力を示すグラフである。HA-1陽性(LCL1~5)またはHA-1陰性(LCL6~7)のいずれかである様々なリンパ芽球様細胞株(LCL)と、トランスジェニックT細胞を共培養した。(A)標準ELISAによって共培養上清中のIFN-γ濃度を測定することによって、サイトカイン放出を分析した。対照TCRを発現するT細胞を陰性対照として使用した。(B)蛍光マーカーを安定して形質導入したLCLに対する細胞毒性を2時間ごとに共培養物の写真を撮影することによって、IncuCyte(登録商標) ZOOM(Essen BioScience)を用いて測定した。形質導入されていないCD8 T細胞を陰性対照として使用した。
図4B】未改変標的細胞上で、生理学的レベルのHA-1を認識するHA-1-TCRトランスジェニックT細胞の能力を示すグラフである。HA-1陽性(LCL1~5)またはHA-1陰性(LCL6~7)のいずれかである様々なリンパ芽球様細胞株(LCL)と、トランスジェニックT細胞を共培養した。(A)標準ELISAによって共培養上清中のIFN-γ濃度を測定することによって、サイトカイン放出を分析した。対照TCRを発現するT細胞を陰性対照として使用した。(B)蛍光マーカーを安定して形質導入したLCLに対する細胞毒性を2時間ごとに共培養物の写真を撮影することによって、IncuCyte(登録商標) ZOOM(Essen BioScience)を用いて測定した。形質導入されていないCD8 T細胞を陰性対照として使用した。
図5A】腫瘍細胞株上に提示されるHA-1を認識するHA-1-TCRトランスジェニックT細胞の能力を示すグラフである。トランスジェニックT細胞を様々なHA-1陽性腫瘍細胞株と共培養した。(A)標準ELISAによって共培養上清中のIFN-γ濃度を測定することによって、サイトカイン放出を分析した。(B)蛍光マーカーを安定して形質導入した腫瘍細胞株に対する細胞毒性を2時間ごとに写真を撮影することによって、IncuCyte(登録商標) ZOOMを用いて測定した。
図5B】腫瘍細胞株上に提示されるHA-1を認識するHA-1-TCRトランスジェニックT細胞の能力を示すグラフである。トランスジェニックT細胞を様々なHA-1陽性腫瘍細胞株と共培養した。(A)標準ELISAによって共培養上清中のIFN-γ濃度を測定することによって、サイトカイン放出を分析した。(B)蛍光マーカーを安定して形質導入した腫瘍細胞株に対する細胞毒性を2時間ごとに写真を撮影することによって、IncuCyte(登録商標) ZOOMを用いて測定した。
図6】国際公開第2018058002号パンフレットに記載されているように、TCR2と比較した、HA-1陽性腫瘍細胞株を認識および溶解(殺滅)する、TCR_3またはTCR_4を発現するT細胞の能力を示すグラフである。(A)トランスジェニックT細胞を様々なHA-1陽性腫瘍細胞株と共培養した。標準ELISAによって共培養上清中のIFN-γ濃度を測定することによって、サイトカイン放出を分析した。(B)HA-1陽性腫瘍細胞株に対する細胞毒性をフローサイトメトリーによって分析した。腫瘍細胞株のうちのHA-1陰性/GFP陽性K562細胞とHA-1陽性/mCherry陽性細胞を1:1の比で混合し、TCRトランスジェニックT細胞と共培養した。45時間後のmCherry陽性(HA-1陽性)細胞対GFP陽性(HA-1陰性)細胞の比を計算し、対照TCRに関して測定した比に対して正規化した。数値が低いほど、T細胞の細胞毒性によるHA-1陽性腫瘍細胞の溶解を示す。
図7】国際公開第2018058002号パンフレットに記載されているように、TCR2と比較したTCR_3とTCR_4の認識モチーフの分析を示すグラフである。HA-1ペプチド、セリンで連続して置換したそれぞれ個々のアミノ酸残基を有するペプチド、または対照ペプチドを外部から負荷したT2細胞と、トランスジェニックT細胞を共培養した。
図8】様々なTCR定常領域の比較を示す。TCR_3を、マウス、最小限にマウス化した、またはヒトのTCR定常領域のいずれかを用いてクローニングした。(A)トランスジェニックT細胞を様々なHA-1陽性腫瘍細胞株と共培養した。標準ELISAを使用して、共培養上清中のIFN-γ濃度を測定することによって、サイトカイン放出を分析した。HA-1陽性腫瘍細胞株に対する細胞毒性をフローサイトメトリーによって分析した。腫瘍細胞株のうちのHA-1陰性/GFP陽性K562細胞とHA-1陽性/mCherry陽性細胞を1:1の比で混合し、TCRトランスジェニックT細胞と共培養した。45時間後、mCherry陽性(HA-1陽性)細胞対GFP陽性(HA-1陰性)細胞の比を計算し、対照TCRに関して測定した比に対して正規化した。数値が低いほど、HA-1陽性腫瘍細胞の溶解を示す。(B)様々なHA-1陰性(OMW、BER)およびHA-1陽性(FH22、SLE005、SPO-010、BM16、BSM)LCL(リンパ芽球様細胞株)と、トランスジェニックT細胞を共培養した。標準ELISAによって共培養上清中のIFN-γ濃度を測定することによって、サイトカイン放出を分析した。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の詳細な記載
本発明が、その好ましい実施形態のうちのいくつかについて詳細に説明される前に、以下の一般的定義を提供する。
【0039】
以下に例示的に記載されるように、本発明は、本明細書において具体的に開示されていないいずれかの要素(単数または複数)、制限(単数または複数)の非存在下で、好適に実践され得る。
【0040】
本発明は、特定の実施形態に関しておよび特定の図を参照して記載されるが、本発明はそれらにではなく特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0041】
本記載および特許請求の範囲において用語「含む(comprising)」が使用される場合、それは他の要素を排除しない。本発明の目的のために用語「からなる(consisting of)」は、用語「を構成する(comprising of)」の好ましい実施形態であると考えられる。以下で、群が少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態だけからなる群を開示するとも理解される。
【0042】
本発明の目的のために用語「得られた(obtained)」は、用語「得ることができる(obtainable)」の好ましい実施形態であると考えられる。以下で、例えば抗体が具体的な供給源から得ることができると定義される場合、これはこの供給源から得られる抗体を開示するとも理解される。
【0043】
不定冠詞または定冠詞が単数名詞、例えば「a」、「an」または「the」を参照して使用される場合、これは、他に具体的に述べられている場合を除いてその名詞の複数を含む。本発明の文脈において、用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者が問題となる特質の技術的効果をまだ確保すると理解する正確さの区間を記す。用語は、±10%、好ましくは±5%の示された数値からの偏差を典型的には示す。
【0044】
技術的用語は、それらの一般的な意味または当業者にとっての意味で使用される。具体的な意味が特定の用語によって伝えられる場合、用語の定義は以下にその用語が使用される文脈において与えられる。
【0045】
TCRバックグラウンド
TCRは、2つの異なる、別々のタンパク質鎖、すなわちTCRアルファ(α)鎖およびTCRベータ(β)鎖から構成される。TCRα鎖は、可変(V)、連結(J)および定常(C)領域を含む。TCRβ鎖は、可変(V)、多様性(D)、連結(J)および定常(C)領域を含む。TCRα鎖とTCRβ鎖の両方の再配列V(D)J領域は、超可変領域(CDR、相補性決定領域)を含有し、これらの中で、CDR3領域は、特異的エピトープ認識を決定する。C末端領域において、TCRα鎖とTCRβ鎖の両方は、疎水性膜貫通ドメインを含有し、短い細胞質側末端で終わる。
【0046】
典型的には、TCRは、1つのα鎖と1つのβ鎖のヘテロ二量体である。このヘテロ二量体は、ペプチドを提示するMHC分子に結合し得る。
【0047】
本発明の文脈における用語「可変TCRα領域」または「TCRα可変鎖」または「可変ドメイン」は、TCRα鎖可変領域を指す。本発明の文脈における用語「可変TCRβ領域」または「TCRβ可変鎖」は、TCRβ鎖可変領域を指す。
【0048】
TCR遺伝子座および遺伝子は、国際免疫遺伝学(IMGT)TCR学名命名法(IMGTデータベース、www. IMGT.org;Giudicelli, V., et al.,IMGT/LIGM-DB, the IMGT(登録商標) comprehensive database of immunoglobulin and T cell receptor nucleotide sequences, Nucl. Acids Res., 34, D781-D784 (2006). PMID: 16381979;T cell Receptor Factsbook, LeFranc and LeFranc, Academic Press ISBN 0-12- 441352-8)を使用して命名される。
【0049】
標的
本発明の第1の態様は、HA-1の1つのアレルバリアントに対して特異的な単離されたTCRに関する。このアレルバリアントは、一塩基多型のものである。
【0050】
特に、TCRは、配列番号2のアミノ酸配列(VLHDDLLEA)を特異的に認識する。
【0051】
典型的には、TCRは、主要組織適合複合体(MHC)分子によって提示される場合、抗原のペプチド断片を認識する。
【0052】
ヒト白血球抗原(HLA)系または複合体は、ヒトの主要組織適合複合体(MHC)タンパク質をコードする遺伝子複合体である。HLA-A02は、HLA-A遺伝子座における1つの特定のクラスI主要組織適合複合体(MHC)アレル群である。HLA-A02:01は、特異的なHLA-A02サブアレルである。
【0053】
よって、特定の実施形態では、TCRは、HLA-A02アレルによってコードされるMHC分子、好ましくはHLA-A02:01によってコードされる分子またはHLA-A02:06によってコードされる分子、より好ましくはHLA-A02:01によってコードされる分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列を特異的に認識する。
【0054】
TCRは、HA-1に対して高度に特異的であり、他のペプチド、特にアレルバリエーションHA-1に対して交差反応性を実質的に示さない。このことは、TCRがHA-1アレルバリエーションを認識しないことを意味する。言い換えれば、TCRは、配列番号4のアミノ酸配列を認識しない。交差反応性は、本明細書に記載されているように、IFN-γ分泌によって測定することができる。
【0055】
用語「に対して特異的な」は、本発明の文脈において、TCRが標的に特異的に結合していることを意味する。
【0056】
本明細書において使用される用語「アレルバリエーション」および「アレルバージョン」は、同一である。
【0057】
好ましい実施形態では、TCRの認識モチーフは、配列番号127に示される配列を少なくとも含む。具体的実施形態では、TCRの認識モチーフは、配列番号127に示す配列からなる。ここで、認識モチーフは、セリン置換によって決定することができる。
【0058】
モチーフの認識によって、例えば、IFN-γ分泌アッセイにおいて決定される、TCRの活性化に影響を及ぼすエピトープのアミノ酸が規定される。特に、結合エピトープにおけるアミノ酸残基の影響は、アミノ酸置換スキャン、例えば、セリンスキャンによって決定することができる。
【0059】
セリンスキャンでは、セリンによって連続的に置換されるそれぞれ個々のアミノ酸残基を有するエピトープペプチドが使用される。ペプチドによって、例えば、IFN-γ分泌によって決定されるTCR活性化が有意に低下する場合、置換された位置が認識モチーフに属することが示される。有意な低下は、置換されていないペプチド配列、すなわち置換されていないエピトープと比較して、少なくとも3分の1、好ましくは少なくとも5分の1、より好ましくは少なくとも10分の1にIFN-γ分泌が低下することであり得る。
【0060】
TCR特異的配列
TCRのTCRα鎖のCDR3は、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47および配列番号57からなる群から選択されるアミノ酸配列を有してもよい。
【0061】
TCRのTCRβ鎖のCDR3は、配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40、配列番号50および配列番号60からなる群から選択されるアミノ酸配列を有してもよい。
【0062】
一部の実施形態は、TCRα鎖およびTCRβ鎖を含む単離されたTCRに関し、
a) - TCRα鎖は、配列番号7の配列を有する相補性決定領域3(CDR3)を含み、
- TCRβ鎖は、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、または
b) - TCRα鎖は、配列番号17の配列を有するCDR3を含み、
- TCRβ鎖は、配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、または
c) - TCRα鎖は、配列番号27の配列を有するCDR3を含み、
- TCRβ鎖は、配列番号30のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、または
d) - TCRα鎖は、配列番号37の配列を有するCDR3を含み、
- TCRβ鎖は、配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、または
e) - TCRα鎖は、配列番号47の配列を有するCDR3を含み、
- TCRβ鎖は、配列番号50のアミノ酸配列を有するCDR3を含む、または
f) - TCRα鎖は、配列番号57の配列を有するCDR3を含み、
- TCRβ鎖は、配列番号60のアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0063】
より具体的な実施形態は、単離されたTCRに関し、TCRは、
a) - 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号10の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖、または
b) - 配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号17の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号20の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖、または
c) - 配列番号25のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号27の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号28のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号30の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖、
d) - 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖、または
e) - 配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号47の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号48のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号49のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号50の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖、または
f) - 配列番号55のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号57の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号58のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号59のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号60の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含む。
【0064】
好ましい実施形態は、CDRによって、特に上記のTCRαおよびTCRβ鎖のCDR3によって定義される単離されたTCRに関し、組換えTCR配列は、マウス化Cα領域およびCβ領域を含有するよう改変される。
【0065】
一部の実施形態は、単離されたTCRに関し、TCRは、
a)配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号12と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
b)配列番号21と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号22と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
c)配列番号31と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号32と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
d)配列番号41と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号42と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
e)配列番号51と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号52と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
f)配列番号61と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号62と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域
を含む。
【0066】
「少なくとも80%同一」、特に「少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する」は、本明細書において使用する場合、アミノ酸配列が、示されたアミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であることを含む。
【0067】
一部の実施形態では、TCRは、TCRα鎖およびTCRβ鎖を含み、
a) - 可変TCRα領域は、配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号12と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含むか、または
b) - 可変TCRα領域は、配列番号21と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号22と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含むか、または
c) - 可変TCRα領域は、配列番号31と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号32と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号30に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含むか、または
d) - 可変TCRα領域は、配列番号41と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号37に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号42と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号40に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含むか、または
e) - 可変TCRα領域は、配列番号51と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号47に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号52と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号50に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含むか、または
f) - 可変TCRα領域は、配列番号61と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号57に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号62と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号60に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含む。
【0068】
例示的な実施形態は、単離されたTCRを指し、TCRは、
a)配列番号11のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号12のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
b)配列番号21のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号22のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
c)配列番号31のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号32のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
d)配列番号41のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号42のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
e)配列番号51のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号52のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
f)配列番号61のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号62のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域
を含む。
【0069】
以下の表は、本発明の例示的なTCRの概要を示す
【0070】
【表1】
【0071】
実施例を見ると分かるように、本発明によるTCRは、HA-1に対して特異的であり、他のエピトープまたは抗原に対しては非常に低い交差反応性しか示さない。
【0072】
複数の配列間のパーセント同一性の決定は、好ましくは、Vector NTI Advance(商標) 10プログラム(Invitrogen Corporation、Carlsbad CA、USA)のAlignXアプリケーションを使用して達成される。このプログラムは、改変Clustal Wアルゴリズムを使用する(Thompson et al., 1994. Nucl Acids Res. 22: pp. 4673-4680;Invitrogen Corporation;Vector NTI AdvanceTM10 DNA and protein sequence analysis software. User's Manual, 2004, pp.389-662)。パーセント同一性の決定は、AlignXアプリケーションの標準パラメーターを用いて実施される。
【0073】
本発明によるTCRは、単離または精製される。「単離される」は、本発明の文脈において、TCRが、元々天然に存在した状況下で存在しないことを意味する。「精製される」は、本発明の文脈において、例えば、TCRが、他のタンパク質およびTCRが元々由来する細胞の非タンパク質部分を含まないかまたは実質的に含まないことを意味する。
【0074】
一部の実施形態では、TCRのアミノ酸配列は、1つまたは複数の表現型に影響しない置換を含んでもよい。
【0075】
「表現型に影響しない置換」は、「保存的アミノ酸置換」とも称される。「保存的アミノ酸置換」の概念は、当業者によって理解されており、好ましくは、正電荷残基(H、K、およびR)をコードするコドンは、正電荷残基をコードするコドンで置換され、負電荷残基(DおよびE)をコードするコドンは、負電荷残基をコードするコドンで置換され、中性極性残基(C、G、N、Q、S、T、およびY)をコードするコドンは、中性極性残基をコードするコドンで置換され、中性非極性残基(A、F、I、L、M、P、V、およびW)をコードするコドンは、中性非極性残基をコードするコドンで置換されることを意味する。これらのバリエーションは、自発的に生じてもよく、ランダム突然変異誘発によって導入されてもよく、または定方向突然変異誘発によって導入されてもよい。これらの変化は、これらのポリペプチドの本質的な特性を破壊することなくなされ得る。当業者は、バリアントアミノ酸および/またはそれらをコードする核酸を容易かつ日常的にスクリーニングし、これらのバリエーションがリガンド結合能を実質的に低下させるかまたは破壊するかどうかを当技術分野で公知の方法によって決定することができる。
【0076】
当業者は、TCRをコードする核酸も改変され得ることを理解する。核酸配列全体における有益な改変は、配列のコドン最適化を含む。発現したアミノ酸配列内に保存的置換をもたらす変更がなされ得る。これらのバリエーションは、機能に影響を及ぼさないTCR鎖のアミノ酸配列の相補性決定領域および非相補性決定領域においてなされ得る。通常、付加と欠失は、CDR3領域において行うべきではない。
【0077】
本発明の一部の実施形態によれば、TCRのアミノ酸配列は、検出可能な標識、治療剤または薬物動態改変部分を含むように改変される。
【0078】
検出可能な標識に関する非限定的な例は、放射標識、蛍光標識、核酸プローブ、酵素および造影試薬である。TCRに付随し得る治療剤としては、放射性化合物、免疫調節薬、酵素または化学療法剤が挙げられる。治療剤は、化合物が標的部位でゆっくり放出され得るように、TCRに連結したリポソームによって封入され得る。このことによって、体内での輸送中の損傷が避けられ、TCRの関連する抗原提示細胞への結合後に、治療剤、例えば、毒素が最大の効果を有することが保障される。治療剤の他の例は、
【0079】
ペプチド細胞毒素、すなわちリシン、ジフテリア毒素、シュードモナス細菌外毒素A、DNaseおよびRNaseなどの、哺乳動物の細胞を殺滅する能力を有するタンパク質またはペプチドである。小分子細胞毒性剤、すなわち700ダルトン未満の分子量を有する、哺乳動物の細胞を殺滅する能力を有する化合物。このような化合物は、細胞毒性作用を有することが可能な毒性金属を含有し得る。さらに、これらの小分子細胞毒製剤は、プロドラッグ、すなわち細胞毒性剤を放出するために、生理的条件下で、崩壊されるかまたは変換される化合物も含むことが理解されるべきである。このような薬剤としては、例えば、ドセタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、メイタンシン誘導体、ラシェルマイシン、カリチアマイシン、エトポシド、イフォスファミド、イリノテカン、ポルフィマーナトリウム フォトフリンII、テモゾロミド、トポテカン、グルクロン酸トリメトレキサート、ミトキサントロン、オーリスタチンE、ビンクリスチンおよびドキソルビシン;放射性核種、例えば、ヨウ素131、レニウム186、インジウム111、イットリウム90、ビスマス210および213、アクチニウム225およびアスタチン213が挙げられる。例えば、キレート剤、免疫刺激薬としても知られる免疫賦活剤、すなわち、免疫応答を刺激する免疫エフェクター分子によって放射性核種をTCRまたはその誘導体に付随させ得る。例示的な免疫賦活剤は、IL-2およびIFN-γなどのサイトカイン、抗T細胞またはNK細胞決定基抗体(例えば、抗CD3、抗CD28または抗CD16)を含む抗体またはその断片;抗体様結合特性を有する代替タンパク質足場;スーパー抗原、すなわちポリクローナルT細胞活性化および大量のサイトカイン放出をもたらすT細胞の非特異的活性化を引き起こす抗原、およびその変異体;IL-8、血小板因子4、メラノーマ成長刺激タンパク質などのケモカイン、補体活性化因子;異種タンパク質ドメイン、同種タンパク質ドメイン、ウイルス/細菌タンパク質ドメイン、ウイルス/細菌ペプチドである。
【0080】
ヒトTリンパ球における抗原受容体分子(T細胞受容体分子)は、細胞表面でCD3(T3)分子複合体と非共有結合により会合している。この複合体の抗CD3モノクローナル抗体による撹乱により、T細胞活性化が誘導される。よって、一部の実施形態は、抗CD3抗体、または前記抗CD3抗体の機能性断片またはバリアントと会合した(通常は、アルファまたはベータ鎖のNまたはC末端への融合により)本明細書に記載されているTCRを指す。本明細書に記載の組成物および方法において使用するのに好適な抗体断片およびバリアント/アナログとしては、ミニボディ、Fab断片、F(ab’)2断片、dsFvおよびscFv断片、Nanobodies(商標)(Ablynx(Belgium)、ラクダ科動物(例えば、ラクダまたはラマ)抗体に由来する合成単一免疫グロブリン可変重鎖ドメインを含む分子)ならびにドメイン抗体(親和性成熟単一免疫グロブリン可変重鎖ドメインまたは免疫グロブリン可変軽鎖ドメインDomantis(Belgium)を含む)またはアフィボディ(操作されたタンパク質A足場アフィボディ(Sweden)を含む)もしくはアンチカリン(操作されたアンチカリンPieris(Germany)を含む)などの抗体様結合特性を示す代替タンパク質足場が挙げられる。
【0081】
治療剤は、好ましくは、免疫エフェクター分子、細胞毒性剤および放射性核種からなる群から選択され得る。好ましくは、免疫エフェクター分子はサイトカインである。
【0082】
薬物動態改変部分は、例えば、少なくとも1つのポリエチレングリコール繰り返し単位、少なくとも1つのグリコール基、少なくとも1つのシアリル基またはそれらの組合せであってもよい。少なくとも1つのポリエチレングリコール繰り返し単位、少なくとも1つのグリコール基、少なくとも1つのシアリル基は、当業者に公知のいくつかの方法によって付随させ得る。好ましい実施形態では、ユニットはTCRに共有結合により連結される。本発明によるTCRは、1つまたはいくつかの薬物動態改変部分によって改変されてもよい。特に、TCRの可溶性形態は、1つまたはいくつかの薬物動態改変部分によって改変される。薬物動態改変部分は、治療薬の薬物動態プロファイルに対する有益な変化、例えば、血漿中半減期の改善、免疫原性の低減または増強、および溶解度の改善を達成し得る。
【0083】
本発明によるTCRは、可溶性であっても、または膜に結合していてもよい。用語「可溶性」は、例えば、治療剤を抗原提示細胞に送達するための標的化剤として使用するための、可溶性形態である(すなわち、膜貫通ドメインまたは細胞質ドメインを有さない)TCRを指す。安定性のために、可溶性αβヘテロ二量体TCRは、好ましくは、例えば、国際公開第03/020763号パンフレットに記載されているように、それぞれの定常ドメインの残基間に導入されたジスルフィド結合を有する。本発明のαβヘテロ二量体に存在する定常ドメインの一方または両方は、C末端(単数または複数)で、例えば、最大15、または最大10もしくは最大8もしくはそれより少ないアミノ酸で切断されてもよい。養子治療において使用するために、αβヘテロ二量体TCRは、例えば、細胞質ドメインと膜貫通ドメインの両方を有する全長鎖としてトランスフェクトされてもよい。TCRは、それぞれアルファ定常ドメインとベータ定常ドメインの間に天然に見られるものに対応するジスルフィド結合を含有してもよく、さらにまたはあるいは非天然ジスルフィド結合が存在してもよい。
【0084】
よって、TCR、特に本発明によるTCRの可溶性形態は、例えば、免疫原性を低下させる、流体力学的サイズ(溶液中のサイズ)溶解度および/もしくは安定性を増加させる(例えば、タンパク質分解に対する保護を増強させることによって)ならびに/または血清中半減期を延長するために、追加の機能性部分を付加することによって改変され得る。
【0085】
他の有用な機能性部分および改変には、患者の体内で本発明のTCRを有するエフェクター宿主細胞を遮断するために使用され得る「自殺」または「安全スイッチ」が含まれる。1つの例は、Gargett and Brown Front Pharmacol. 2014; 5: 235に記載された誘導性カスパーゼ9(iCasp9)「安全スイッチ」である。簡潔には、その二量体化がAP1903/CIPなどの小分子二量体化薬に依存し、改変されたエフェクター細胞においてアポトーシスの急速な誘導をもたらすカスパーゼ9ドメインを発現させるために、エフェクター宿主細胞は周知の方法によって改変される。この系は、例えば、欧州特許第2173869号明細書に記載されている。他の「自殺」「安全スイッチ」に関する例は、当技術分野において公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、CD20の発現とそれに続く抗CD20抗体を使用する枯渇、切断されたEGFRの発現とそれに続く抗EGFR抗体を使用する枯渇(Wang et al, Blood, 2011 Aug 4;118(5):1255-63)またはmycタグ(Kieback et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Jan 15;105(2):623-8)がある。
【0086】
グリコシル化パターンが変更されたTCRも本明細書において予想される。当技術分野で公知であるように、グリコシル化パターンは、アミノ酸配列に依存し(例えば、以下で議論される特定のグリコシル化アミノ酸残基の存在または非存在)および/またはタンパク質が産生される宿主細胞もしくは生物に依存し得る。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N連結またはO連結されている。N連結は、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。結合分子へのN連結グリコシル化部位の付加は、アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)から選択される1つまたは複数のトリペプチド配列を含有するように、アミノ酸配列を変更することによって、従来より達成されている。O連結グリコシル化部位は、1つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基の出発配列への付加またはそれによる置換によって導入され得る。
【0087】
TCRのグリコシル化の別の手段は、グリコシドのタンパク質への化学的連結または酵素的連結によるものである。使用される連結方式によって、糖類は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えば、システインのスルフヒドリル基、(d)遊離ヒドロキシル基、例えば、セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンのヒドロキシル基、(e)芳香族残基、例えば、フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に結合され得る。同様に、脱グリコシル化(すなわち、結合分子上に存在する炭水化物部分の除去)は、例えば、TCRをトリフルオロメタンスルホン酸に曝露することによって化学的に、またはエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを用いることによって酵素的に達成され得る。
【0088】
小分子化合物などの薬物をTCR、特に本発明のTCRの可溶性形態に付加することも考えられる。連結は、共有結合、または静電力によるなど非共有結合的相互作用によって達成され得る。当技術分野で公知の様々なリンカーは、薬物コンジュゲートを形成するために用いることができる。
【0089】
TCR、特に本発明のTCRの可溶性形態は、それぞれの分子(タグ)の特定、追跡、精製および/または単離を補助する追加のドメインを導入するためにさらに改変され得る。よって、一部の実施形態では、TCRα鎖またはTCRβ鎖は、エピトープタグを含むように改変されてもよい。
【0090】
エピトープタグは、本発明のTCRに組み込むことができるタグの有用な例である。エピトープタグは、特異的抗体の結合を可能にし、したがって、患者の体内の可溶性TCRもしくは宿主細胞または培養(宿主)細胞の結合および移動の特定および追跡を可能にするアミノ酸の短いストレッチである。エピトープタグと、故にタグ付けされたTCRの検出は、いくつかの異なる技法を使用して達成され得る。
【0091】
タグは、前記タグに対して特異的な結合分子(抗体)の存在下で細胞を培養することによって、本発明のTCRを有する宿主細胞の刺激および増殖のためにさらに用いることができる。
【0092】
一般的に、TCRは、一部の事例では、TCRの標的抗原との親和性およびオフレートを改変する様々な変異で改変され得る。特に、変異は、親和性を増加させるおよび/またはオフレートを低下させる場合がある。よって、TCRの少なくとも1つのCDRおよびその可変ドメインフレームワーク領域が変異し得る。
【0093】
しかし、好ましい実施形態では、TCRのCDR領域は、改変されないかまたは実施例におけるTCR受容体に関するようにin vitro親和性成熟を受けない。このことは、CDR領域が天然に存在する配列を有することを意味する。これは有利であり得る。in vitro親和性成熟によって、TCR分子に対する免疫原性がもたらされ得るからである。これより、治療効果および処置を低下または不活性化する抗薬物抗体の産生がもたらされ、ならびに/または有害作用が誘導される場合がある。
【0094】
変異は、1つまたは複数の置換、欠失または挿入であってもよい。これらの変異は、当技術分野で公知の任意の好適な方法、例えば、Example in Sambrook, Molecular Cloning - 4th Edition (2012) Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている、ポリメラーゼ連鎖反応、制限酵素に基づくクローニング、ライゲーションに依存しないクローニング手順によって導入され得る。
【0095】
交差反応性のリスクを伴う理論的に予測できないTCR特異性は、内因性TCR鎖と外因性TCR鎖の間の誤対合に起因して生じ得る。TCR配列の誤対合を避けるために、組換えTCR配列は、いくつかの異なる形質導入されたTCR鎖の正しい対合を効率的に増強することが示された技術である、マウス化Cα領域およびCβ領域を含有するように改変されてもよい。TCRのマウス化(すなわち、アルファおよびベータ鎖ヒト定常領域をそれらのマウスのカウンターパートによって交換すること)は、宿主細胞におけるTCRの細胞表面での発現を改善するために通常適用される技法である。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、マウス化TCRは、CD3共受容体とより効率的に会合する;および/または優先的に互いに対合し、所望の抗原特異性のTCRを発現するようex vivoで遺伝子改変されているが、それらの「オリジナルの」、すなわち内因性のTCRを依然として保持および発現するヒトT細胞上で混合TCRを形成しにくいと考えられる。
【0096】
マウス化TCRの発現の改善を代表する9つのアミノ酸が特定されており(Sommermeyer and Uckert, J Immunol. 2010 Jun 1; 184(11):6223-31)、TCRアルファおよび/またはベータ鎖定常領域におけるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つまたはすべてをそれらのマウスのカウンターパート残基で置換することが予測される。この技法は、「最低限のマウス化(minimal murinization)」とも称され、細胞表面の発現を増強するという利点をもたらすが、同時に、アミノ酸配列における「外来の」アミノ酸残基の数を低減し、それによって、免疫原性のリスクを低減する。よって、一部の実施形態では、TCR配列は、最小限のマウス化CαおよびCβ領域を含有するように改変されてもよい。
【0097】
一部の実施形態は、本明細書に記載されている単離されたTCRを指し、TCRは、一本鎖タイプのものであり、TCRα鎖およびTCRβ鎖は、リンカー配列によって連結している。
【0098】
好適な一本鎖TCR形態は、可変TCRα領域に対応するアミノ酸配列によって構成された第1のセグメント、TCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合した可変TCRβ領域に対応するアミノ酸配列によって構成された第2のセグメント、および第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。あるいは、第1のセグメントは、TCRβ鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成されていてもよく、第2のセグメントは、TCRα鎖定常領域細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRα鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成されていてもよい。上記一本鎖TCRは、第1の鎖と第2の鎖の間にジスルフィド結合をさらに含んでもよく、リンカー配列の長さとジスルフィド結合の位置は、第1のセグメントと第2のセグメントの可変ドメイン配列が実質的にネイティブTCRにおけるのと同様に変異によって配向されるようなものである。より具体的には、第1のセグメントは、TCRα鎖定常領域細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRα鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成されていてもよく、第2のセグメントは、TCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成されていてもよく、かつジスルフィド結合は、第1の鎖と第2の鎖の間にもたらされてもよい。リンカー配列は、TCRの機能を損なわない任意の配列であってもよい。
【0099】
本発明の文脈において、「機能性」TCRαおよび/またはβ鎖融合タンパク質は、例えば、少なくとも実質的な生物学的活性を維持する、アミノ酸の付加、欠失または置換によって改変されたTCRまたはTCRバリアントを意味することになる。TCRのαおよび/またはβ鎖の場合には、このことは、両方の鎖が、その生物学的機能、特に前記TCRの特異的ペプチド-MHC複合体への結合、および/または特異的ペプチド:MHC相互作用の際の機能的シグナル伝達を発揮するT細胞受容体(改変されていないαおよび/もしくはβ鎖を有するかまたは別の発明の融合タンパク質αおよび/またはβ鎖を有する)を形成することが可能なままであることを意味することになる。
【0100】
具体的実施形態では、TCRは、機能性TCRαおよび/またはβ鎖融合タンパク質であるよう改変されてもよく、ここで、前記エピトープタグは、6から15アミノ酸、好ましくは9から11アミノ酸の長さを有する。別の実施形態では、TCRは、機能性TCRαおよび/またはβ鎖融合タンパク質であるように改変されてもよく、ここで、前記TCRαおよび/またはβ鎖融合タンパク質は、いずれも離れて配置されているかまたはタンデムに直接配置されている2つ以上のエピトープタグを含む。融合タンパク質の実施形態は、融合タンパク質がその生物学的活性(単数または複数)(「機能性」)を維持する限り、2、3、4、5またはさらに多くのエピトープタグを含有し得る。
【0101】
好ましいのは、本発明による機能性TCRαおよび/またはβ鎖融合タンパク質であり、ここで、前記エピトープタグは、以下に限定されないが、CD20もしくはHer2/neuタグ、または他の従来のタグ、例えば、myc-タグ、FLAG-タグ、T7-タグ、HA(ヘマグルチニン)-タグ、His-タグ、S-タグ、GST-タグ、もしくはGFP-タグから選択され、myc、T7、GST、GFPタグは、既存の分子に由来するエピトープである。対照的に、FLAGは、高い抗原性のために設計された合成エピトープタグである(例えば、米国特許第4,703,004号明細書および同第4,851,341号明細書を参照されたい)。高品質の試薬をその検出に使用することが可能であるため、mycタグが好ましくは使用され得る。エピトープタグは、当然のことながら、抗体による認識の他に、1つまたは複数の追加の機能を有してもよい。これらのタグの配列は文献に記載されており、当業者に周知である。
【0102】
TCR断片およびバリアント
本発明の別の態様は、本明細書に記載されているTCRの機能性部分を含むポリペプチドを指す。機能性部分は、配列番号:配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47 配列番号57、配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40 配列番号50および配列番号60からなる群から選択されるアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0103】
具体的実施形態では、ポリペプチドは、例えば、可溶性形態のTCR単独の機能性部分であってもよい。あるいは、ポリペプチドは、他のドメインと組み合わされてもよい。
【0104】
機能性部分は、TCRの抗原への、特に抗原-MHC複合体への結合を媒介し得る。
【0105】
一実施形態では、機能性部分は、本明細書に記載されているTCRα可変鎖および/またはTCRβ可変鎖を含む。
【0106】
TCRバリアント分子、すなわちTCRの機能性部分を含むポリペプチドを他のドメインと組み合わせる分子は、TCR受容体の結合特性を有してもよいが、エフェクター細胞(T細胞以外)のシグナル伝達ドメイン、特にNK細胞のシグナル伝達ドメインと組み合わされてもよい。したがって、一部の実施形態は、エフェクター細胞、例えば、NK細胞のシグナル伝達ドメインと組み合わせた、本明細書に記載されているTCRの機能性部分を含むタンパク質を指す。
【0107】
「結合」は、標的と特異的かつ非共有結合により会合、一体化または結合する能力を指す。
【0108】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されている少なくとも2つのTCRを含む多価TCR複合体を指す。この態様の一実施形態では、少なくとも2つのTCR分子が、リンカー部分を介して連結し、多価複合体を形成する。好ましくは、複合体は水溶性であるため、リンカー部分はそれに従って選択されるべきである。リンカー部分は、形成された複合体の構造的多様性が最小限になるように、TCR分子上の規定の位置に結合可能であることが好ましい。本態様の一実施形態は、本発明のTCR複合体によって提供され、ここで、ポリマー鎖またはペプチドリンカー配列は、TCRの可変領域配列内に位置していない各TCRのアミノ酸残基間に伸びている。本発明の複合体は、医学において使用するためのものであってもよく、リンカー部分は、それらの医薬適合性、例えば、それらの免疫原性に関して選択されるべきである。上記の望ましい基準を満たすリンカー部分の例は、当技術分野、例えば、抗体断片を連結する技術分野において公知である。
【0109】
リンカーの例は、親水性ポリマーおよびペプチドリンカーである。親水性ポリマーに関する例は、ポリアルキレングリコールである。このクラスの最も一般的に使用されるものは、ポリエチレングリコールまたはPEGに基づく。しかし、他のものは、他の好適な、必要に応じて置換された、ポリプロピレングリコールを含むポリアルキレングリコール、およびエチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体に基づく。ペプチドリンカーは、アミノ酸の鎖から構成され、単純なリンカー、またはその上にTCR分子が結合し得る多量体ドメインを生成するように機能する。
【0110】
一実施形態は、多価TCR複合体を指し、ここで、前記TCRの少なくとも1つに、治療剤が付随している。
【0111】
サイトカインおよびケモカインの放出
一部の実施形態は、本明細書に記載されている単離されたTCR、本明細書に記載されているポリペプチド、本明細書に記載されている多価TCR複合体を指し、ここで、IFN-γ分泌は、エフェクター細胞上に発現された本発明のTCRの、HLA-A02:01によってコードされた分子により提示される配列番号2のアミノ酸配列に対する結合によって誘導される。
【0112】
エフェクター細胞上で発現される本発明のTCRの、HLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列への結合によって誘導されるIFN-γ分泌は、HLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列に結合する場合、10-7[M]のHA-1ペプチド濃度において、HLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号4への結合と比較して、少なくとも3倍多く、好ましくは少なくとも10倍多く、より好ましくは少なくとも20倍多く、さらにより好ましくは少なくとも50倍多く、最も好ましくは少なくとも100倍多くてもよい。
【0113】
エフェクター細胞上で発現される本発明のTCRの、HLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列への結合によって誘導されるIFN-γ分泌は、HLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列に結合する場合、10-6[M]のHA-1ペプチド濃度において、HLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号4への結合と比較して、少なくとも3倍多く、好ましくは少なくとも10倍多く、より好ましくは少なくとも20倍多く、さらにより好ましくは少なくとも50倍多く、最も好ましくは少なくとも100倍多くてもよい。
【0114】
エフェクター細胞上で発現される本発明のTCRの、HLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列への結合によって誘導されるIFN-γ分泌は、HLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列に結合する場合、10-5[M]のHA-1ペプチド濃度において、HLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号4への結合と比較して、少なくとも3倍多く、例えば10倍多く、好ましくは少なくとも10倍多く、例えば少なくとも20倍多く、少なくとも50倍多く、少なくとも100倍多くてもよい。
【0115】
よって、HA-1バリアントを認識するために、HA-1と比較して、少なくとも1,000、好ましくは少なくとも5,000、より好ましくは少なくとも8,000、最も好ましくは少なくとも10,0000倍高いペプチド濃度が、HA-1-TCRトランスジェニックT細胞のすべてに対して必要とされる。
【0116】
具体的実施形態では、例えば、TCRトランスジェニックT細胞対T2細胞の比が2:1である場合、エフェクター細胞上で発現される本発明のTCRの、HLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列への結合によって誘導されるIFN-γ分泌は、10-7[M]のHA-1ペプチド濃度において、500pg/mlより多く、例えば1000pg/mlより多く、より好ましくは2000pg/mlより多く、最も好ましくは3000pg/mlより多くてもよい。
【0117】
「エフェクター細胞」は、末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)であってもよい。典型的には、エフェクター細胞は、免疫エフェクター細胞、特にT細胞である。他の好適な細胞型は、ガンマ-デルタT細胞およびNK様T細胞を含む。
【0118】
本発明は、HLA-A02:01によってコードされた分子またはHLA-A02:06によってコードされた分子によって、好ましくはHLA-A02:01によってコードされた分子またはHLA-A02:06によってコードされた分子によって提示される、配列番号2の標的アミノ酸配列またはそのHLA-A2結合形態、好ましくは配列番号2に結合するTCRまたはその断片を特定するための方法であって、候補TCRまたはその断片を、HLA-A02:01によってコードされた分子またはHLA-A02:06によってコードされた分子によって、好ましくはHLA-A02:01によってコードされた分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列またはそのHLA-A02結合形態、好ましくは配列番号2と接触させることと、候補TCRまたはその断片が標的に結合するかどうかおよび/または免疫応答を媒介するかどうかを決定することとを含む方法にも関する。
【0119】
候補TCRまたはその断片が免疫応答を媒介するかどうかは、例えば、サイトカイン分泌、例えば、IFN-γ分泌の測定によって決定することができる。上述のように、サイトカイン分泌は、アミノ酸配列である配列番号2をコードするivtRNAをトランスフェクトされたK562細胞(または他のAPC)が調査されるTCRまたはTCRの断片を含む分子を発現するCD8+濃縮PBMCと共にインキュベートされるin vitroアッセイによって測定することができる。
【0120】
核酸、ベクター
本発明の別の態様は、本明細書に記載されているTCRをコードする核酸または本明細書に記載されているTCRをコードするポリヌクレオチドをコードする核酸に関する。
【0121】
以下の表は、各ペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を示す:
【0122】
【表2-1】
【0123】
【表2-2】
【0124】
【表2-3】
【0125】
「核酸分子」は、一般的に、DNAまたはRNAのポリマーを意味し、一本鎖または二本鎖であってもよく、天然源から合成または得られてもよく(例えば、単離および/または精製されてもよく)、天然、非天然または改変されたヌクレオチドを含有してもよく、および天然、非天然または改変されたヌクレオチド間の連結、例えば、未改変オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見られるホスホジエステルの代わりに、ホスホロアミデート連結またはホスホロチオエート連結などを含有してもよい。好ましくは、本明細書に記載の核酸は組換え体である。本明細書で使用される場合、用語「組換え体」は、(i)天然もしくは合成核酸セグメントを、生細胞中で複製し得る核酸分子に連結することによって、生細胞の外側で構築される分子、または(ii)上記(i)に記載されたものの複製から得られる分子を指す。本発明の目的として、複製は、in vitro複製であっても、またはin vivo複製であってもよい。核酸は、当技術分野で公知の、または市販の(例えば、Genscript、Thermo Fisherおよび同様の会社からの)手順を使用して、化学合成および/または酵素的ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Sambrook et al.を参照されたく、核酸は、天然に存在するヌクレオチドまたは分子の生物学的安定性を増加させるか、またはハイブリダイゼーションの際に形成される二本鎖の物理的安定性を高めるように設計された様々な改変ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して化学的に合成され得る。核酸は、組換えTCR、ポリペプチド、もしくはタンパク質、またはその機能性部分もしくは機能性バリアントのいずれかをコードする任意のヌクレオチド配列を含み得る。
【0126】
本開示は、単離または精製された核酸のバリアントであって、バリアント核酸が、本明細書に記載のTCRをコードするヌクレオチド配列と、少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なヌクレオチド配列を含む、バリアントも提供する。このようなバリアントヌクレオチド配列は、HA-1抗原を特異的に認識する機能性TCRをコードする。
【0127】
本開示は、本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列または本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む単離または精製された核酸も提供する。
【0128】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェンシーな条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシーな条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能な程度に濃い量で、標的配列(本明細書に記載のいずれかの核酸のヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシーな条件には、ヌクレオチド配列に適合したほんの僅かな小さな領域(例えば、3~10塩基)を偶然有するランダム配列から、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、または散在する僅かな不適合を含有するに過ぎないポリヌクレオチドを区別する条件が含まれる。このような相補性の小領域は、14~17塩基またはそれより多い塩基の完全長の相補体よりも容易に融解し、高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーションにより、それらの区別が容易になる。比較的高ストリンジェンシーな条件としては、例えば、約50~70℃の温度で、約0.02~0.1MのNaClまたはそれと同等なものによって提供されるような、低塩条件および/または高温条件が挙げられる。このような高ストリンジェンシーな条件は、存在するとしても、ヌクレオチド配列と鋳型または標的鎖との間の不適合をほとんど許容せず、本明細書に記載のTCRのいずれかの発現を検出するのに特に好適である。ホルムアミド添加量を増加させることによって、条件をよりストリンジェントにし得ることは一般的に認識されている。
【0129】
本明細書の他の箇所で既に記載されているように、TCRをコードする核酸は改変されてもよい。核酸配列全体における有用な改変は、コドン最適化であり得る。発現したアミノ酸配列内に保存的置換をもたらす変更がなされ得る。これらのバリエーションは、機能に影響を及ぼさないTCR鎖のアミノ酸配列の相補性決定領域および非相補性決定領域においてなされ得る。通常、付加と欠失は、CDR3領域において起こらない。別の実施形態は、本明細書に記載されているTCRをコードする核酸を含むベクターを指す。
【0130】
ベクターは、好ましくは、プラスミド、シャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターもしくは粒子および/または遺伝子治療において使用されるベクターである。
【0131】
「ベクター」は、核酸配列を、コードされたポリペプチドの合成が起こり得る好適な宿主細胞中に運ぶための能力を有する任意の分子または組成物である。典型的には、および好ましくは、ベクターは、所望の核酸配列(例えば、本発明の核酸)を組み込むために、当技術分野で公知の組換えDNA技法を使用して操作された核酸である。ベクターは、DNAまたはRNAを含んでもよく、および/またはリポソームを含んでもよい。ベクターは、プラスミド、シャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターもしくは粒子および/または遺伝子治療において使用されるベクターであってもよい。ベクターは、複製開始点として、宿主細胞における複製を可能とする核酸配列を含んでもよい。ベクターは、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子および当業者にとって公知の他の遺伝要素も含んでもよい。ベクターは、好ましくは、前記核酸の発現を可能にする配列に作動可能に連結した本発明による核酸を含む発現ベクターである。
【0132】
好ましくは、ベクターは発現ベクターである。より好ましくは、ベクターは、レトロウイルス、より具体的には、ガンマ-レトロウイルスまたはレンチウイルスのベクターである。
【0133】
細胞、細胞株
本発明の別の態様は、本明細書に記載されているTCRを発現する細胞を指す。
【0134】
一部の実施形態では、細胞は、単離されるかまたは天然に存在しない。
【0135】
具体的実施形態では、細胞は、本明細書に記載されているTCRをコードする核酸または前記核酸を含むベクターを含んでもよい。
【0136】
細胞中では、上記TCRをコードする核酸配列を含む上記ベクターが導入されてもよく、または前記TCRをコードするivtRNAが導入されてもよい。細胞は、T細胞などの末梢血リンパ球であってもよい。TCRのクローニングおよび外因性発現の方法は、例えば、Engels et al.(Relapse or eradication of cancer is predicted by peptide-major histocompatibility complex affinity. Cancer Cell, 23(4), 516-26. 2013)に記載されている。一次ヒトT細胞のレンチウイルスベクターによる形質導入は、例えば、Cribbs "simplified production and concentration of lentiviral vectors to achieve high transduction in primary human T cells" BMC Biotechnol. 2013; 13: 98に記載されている。
【0137】
用語「トランスフェクション」と「形質導入」は交換可能であり、外因性核酸配列が、宿主細胞、例えば、真核宿主細胞に導入されるプロセスを指す。核酸配列の導入または移入は、上述の方法に限定されないが、電気穿孔、微量注射、遺伝子銃送達、リポフェクション、スーパーフェクションおよびレトロウイルスまたは形質導入またはトランスフェクションに好適な他のウイルスによる上述の感染を含む任意の数の手段よって達成され得る。
【0138】
一部の実施形態は、
a)本明細書に記載されている少なくとも1つの核酸を含む発現ベクター、または
b)本明細書に記載されているTCRのアルファ鎖をコードする核酸を含む第1の発現ベクター、および本明細書に記載されているTCRのベータ鎖をコードする核酸を含む第2の発現ベクター
を含む細胞を指す。
【0139】
一部の実施形態では、細胞は、末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)である。細胞は、ナチュラルキラー細胞またはT細胞であってもよい。好ましくは、細胞はT細胞である。T細胞は、CD4+またはCD8+T細胞であってもよい。
【0140】
一部の実施形態では、細胞は、幹細胞様メモリーT細胞である。
【0141】
幹細胞様メモリーT細胞(TSCM)は、自己再生能および長期間存続する能力によって特徴付けられる、分化の程度の低いCD8+T細胞の亜集団である。in vivoでこれらの細胞がそれらの抗原に遭遇すると、これらは、一部の静止したままのTSCMと共に、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)および最終分化エフェクターメモリーT細胞(TEMRA)へとさらに分化する(Flynn et al., Clinical & Translational Immunology (2014))。これらの残っているTSCM細胞は、in vivoで耐性免疫記憶を構築する能力を示し、したがって、養子T細胞療法に関する重要なT細胞亜集団であると考えられる(Lugli et al., Nature Protocols 8, 33-42 (2013) Gattinoni et al., Nat. Med. 2011 Oct; 17(10): 1290-1297)。幹細胞メモリーT細胞亜集団にT細胞プールを限定するために、免疫磁気選択を使用することができる。(Riddell et al. 2014, Cancer Journal 20(2): 141-44)を参照されたい。
【0142】
TCRを標的とする抗体
本発明の別の態様は、HA-1に対する特異性を媒介する、本明細書に記載されているTCRの一部に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を指す。一実施形態では、HA-1に対する特異性を媒介するTCRの一部は、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47および配列番号57のアルファ鎖のCDR3ならびに/または配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40 配列番号50および配列番号60のベータ鎖のCDR3を含む。
【0143】
抗体またはその抗原結合断片は、TCRの活性をモジュレートし得る。抗体またはその抗原結合断片は、TCRのHA-1との結合をブロックする場合もあり、ブロックしない場合もある。抗体またはその抗原結合断片は、TCRの治療活性をモジュレートするため、または診断目的で使用され得る。
【0144】
医薬組成物、医学的処置およびキット
本発明の別の態様は、本明細書に記載されているTCRを含む医薬組成物、前記TCRの機能性部分を含むポリペプチド、本明細書に記載されている多価TCR複合体、TCRをコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記TCRを含む細胞、または本明細書に記載されているTCRの一部に特異的に結合する抗体を指す。
【0145】
本発明のこれらの活性成分は、好ましくは、許容される担体または担体材料と混合した用量で、このような医薬組成物によって、疾患が処置されるかまたは少なくとも緩和され得るように使用される。このような組成物は、(活性成分および担体に加えて)、当技術分野の公知の状態である充填材料、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤および他の材料を含み得る。
【0146】
用語「薬学的に許容される」は、活性成分の生体活性の有効性を妨げない、非毒性材料を定義する。担体の選択は、適用に依存する。
【0147】
医薬組成物は、活性成分の活性を増強するかまたは処置を補う追加の成分を含有してもよい。このような追加の成分および/または因子は、相乗効果を達成するかまたは有害もしくは望ましくない作用を最小限にするための、医薬組成物の一部であり得る。
【0148】
本発明の活性成分の製剤化または調製および適用/薬物治療のための技法は、"Remington's Pharmaceutical Sciences", Mack Publishing Co., Easton, PA, latest editionに公開されている。適当な適用は、非経口適用、例えば、筋肉内、皮下、髄内注射および髄腔内、直接脳室内、静脈内、節内、腹腔内または腫瘍内注射である。静脈内注射は、患者にとって好ましい処置である。
【0149】
好ましい実施形態によれば、医薬組成物は、注入または注射である。
【0150】
注射用組成物は、少なくとも1つの有効成分、例えば、TCRを発現する増殖T細胞集団(例えば、処置される患者に対して自己であるかまたは同種間である)を含む薬学的に許容される流体組成物である。有効成分は、通常、生理的に許容される担体中に溶解されるかまたは懸濁され、さらに、組成物は、乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤などの少量の1つまたは複数の非毒性補助剤を含んでもよい。本開示の融合タンパク質と共に使用するのに有用な、このような注射用組成物は従来的なものであり、適当な製剤は、当業者に周知である。
【0151】
典型的には、医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む。
【0152】
したがって、本発明の別の態様は、本明細書に記載されているTCR、前記TCRの機能性部分を含むポリペプチド、本明細書に記載されている多価TCR複合体、前記TCRをコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記TCRを含む細胞、または医薬として使用するための本明細書に記載されているTCRの一部に特異的に結合する抗体を指す。
【0153】
一部の実施形態は、本明細書に記載されているTCR、前記TCRの機能性部分を含むポリペプチド、本明細書に記載されている多価TCR複合体、前記TCRをコードする核酸、前記核酸を含むベクター、がんの処置において使用するための前記TCRを含む細胞を指す。
【0154】
一実施形態では、がんは、血液がんである。
【0155】
血液がんは、固形腫瘍を形成せず、したがって、体内に主に分散される血液のがんとも言われる。
【0156】
血液がんは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫(HL)、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)、混合表現型急性白血病(MPAL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞性多形型リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、中枢神経系リンパ腫、CD37+樹状細胞リンパ腫、リンパ形質性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織(MALT組織)の節外辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、悪性化の可能性が不明なB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、移植後リンパ増殖性障害からなる群から選択されてもよい。他の血液がんまたは障害は、骨髄異形成障害を含む。
【0157】
(i)本明細書に記載されている単離されたTCR、(ii)組換えTCRをコードする核酸を含むウイルス粒子、(iii)本明細書に記載されている組換えTCRを発現するよう改変された、T細胞またはNK細胞などの免疫細胞、(iv)本明細書に記載されている組換えTCRをコードする核酸のうちの1つまたは複数を含有する医薬組成物およびキットも本明細書において企図されている。一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の組換えTCRをコードするヌクレオチド配列を含むレンチウイルスベクター粒子(または組換えTCRを発現するよう、本明細書に記載のベクター粒子を使用して改変されたT細胞)を含む組成物を提供する。このような組成物は、本明細書にさらに記載されている本開示の方法において、対象に投与することができる。
【0158】
本明細書に記載されている改変T細胞を含む組成物は、公知の技法に従って、養子免疫療法のための方法および組成物において、または本開示に基づいて、当業者に明らかとなるそのバリエーションにおいて利用することができる。
【0159】
一部の実施形態では、細胞は、最初に、それらを培養培地から回収し、次いで、細胞を洗浄し、培地および投与に好適な容器系(「薬学的に許容される」担体)において、治療有効量で濃縮することによって製剤化される。好適な注入培地は、任意の等張培地製剤、典型的には、通常生理食塩水、Normosol R(Abbott)またはPlasma-Lyte A(Baxter)であってもよいが、水中5%のデキストロースまたは乳酸リンゲル液も利用することができる。注入培地にヒト血清アルブミンを補充してもよい。
【0160】
組成物中の有効治療のための細胞数は、典型的には、10より多い細胞、かつ最大10、10または10以下の細胞であり、1010より多い細胞でもよい。細胞数は、組成物が、その中に含まれる細胞の種類に応じて意図される最終的用途に応じて変わることになる。例えば、特定の抗原に対して特異的である細胞が望ましい場合、次いで、集団は、70%を超え、一般的には80%、85%および90~95%を超えるこのような細胞を含有することになる。本発明において提供される用途では、細胞は、一般的には1リットル以下の体積中にあり、500ml以下、さらには250mlまたは100ml以下であってもよい。したがって、所望の細胞の密度は、典型的には1ml当たり10を超える細胞であり、一般的には1ml当たり10を超え、一般的には1ml当たり10を超える。臨床的に関連する数の免疫細胞は、10、1010または1011の細胞に累積的に等しいかまたはそれを超える複数の注入物中に配分され得る。本発明において提供される医薬組成物は、種々の形態、例えば、固体、液体、粉体、水性、または凍結乾燥形態であってもよい。好適な医薬担体の例は、当技術分野において公知である。このような担体および/または添加剤は、従来の方法によって製剤化することができ、好適な用量で対象に投与することができる。安定化剤、例えば、脂質、ヌクレアーゼ阻害剤、ポリマーおよびキレート剤は、組成物を体内での分解から保護することができる。注射による投与が意図される組成物中には、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤および等張剤のうちの1つまたは複数が含まれてもよい。
【0161】
本明細書に記載されている組換えTCR、または本発明において提供される組換えTCRをコードするヌクレオチド配列を含むウイルスベクター粒子は、キットとしてパッケージングされてもよい。キットは、任意選択で、1つまたは複数の成分、例えば、使用説明書、デバイス、および追加の試薬、ならびに本方法を実践するためのコンポーネント、例えば、チューブ、容器およびシリンジを含んでもよい。例示的なキットは、組換えTCRをコードする核酸、組換えTCRポリペプチド、または本発明において提供されるウイルスを含んでもよく、任意選択で、使用説明書、対象においてウイルスを検出するためのデバイス、組成物を対象に投与するためのデバイス、および組成物を対象に投与するためのデバイスを含んでもよい。
【0162】
目的の遺伝子(例えば、組換えTCR)をコードするポリヌクレオチドを含むキットも本明細書において企図されている。目的の配列(例えば、組換えTCR)をコードするウイルスベクターおよび任意選択で免疫チェックポイント阻害剤をコードするポリヌクレオチド配列を含むキットも、本明細書において企図されている。
【0163】
本明細書において企図されるキットは、本明細書に開示されたTCRのうちのいずれか1つまたは複数をコードするポリヌクレオチドの存在を検出するための方法を実行するためのキットも含む。特に、このような診断キットは、適当な増幅プライマーおよび検出プライマーならびに本明細書に開示されたTCRをコードするポリヌクレオチドを検出するために、ディープシーケンシングを実施するための他の関連試薬のセットを含んでもよい。さらなる実施形態では、本発明におけるキットは、抗体または他の結合分子などの、本明細書に開示されたTCRを検出するための試薬を含んでもよい。診断キットは、本明細書に開示されたTCRをコードするポリヌクレオチドの存在を決定するため、または本明細書に開示されたTCRの存在を決定するための説明書も含有し得る。キットは、説明書を含有してもよい。説明書は、典型的には、キットに含まれる成分、対象の適切な状態を決定するための方法を含む投与のための方法、適切な投薬量、および適切な投与方法を説明する有形の表現を含む。説明書は、処置時間の持続期間にわたって対象をモニタリングするためのガイダンスも含み得る。
【0164】
本発明において提供されるキットは、本明細書に記載の組成物を対象に投与するためのデバイスも含み得る。医薬またはワクチンを投与するための、当技術分野で公知の種々のデバイスのいずれかが、本発明において提供されるキットに含まれてもよい。例示的なデバイスとしては、以下に限定されないが、皮下注射針、静脈注射針、カテーテル、無針注射デバイス、吸入器、および液体ディスペンサー、例えば、点眼器が挙げられる。典型的には、キットのウイルスを投与するためのデバイスは、キットのウイルスに対応するものであり、例えば、高圧注射用デバイスなどの無針注射用デバイスは、高圧注射によって損傷を受けなかったウイルスと共に、キット中に含まれてもよいが、典型的には、高圧注射によって損傷を受けたウイルスと共に、キット中に含まれることはない。
【0165】
本発明において提供されるキットは、化合物、例えば、T細胞活性化因子または刺激物質、またはTLRアゴニスト、例えば、対象に対するTLR4アゴニストを投与するためのデバイスも含んでよい。医薬を対象に投与するための、当技術分野で公知の種々のデバイスのいずれかは、本発明において提供されるキット中に含まれてもよい。例示的なデバイスとしては、皮下注射針、静脈注射針、カテーテル、無針注射、以下に限定されないが、皮下注射針、静脈注射針、カテーテル、無針注射デバイス、吸入器、および液体ディスペンサー、例えば、点眼器が挙げられる。典型的には、キットの、化合物を投与するためのデバイスは、化合物投与の所望の方法に対応するものであろう。
【実施例
【0166】
[実施例1]
HA-1-TCRトランスジェニックT細胞は、HA-1多量体に結合する。
HA-1反応性T細胞クローンを単離するためのin vitroでの主な手法を使用した。主な系は、抗原提示細胞としてHLA-A02:01陽性ドナーの成熟樹状細胞(mDC)を、および応答細胞として自己のCD8濃縮T細胞を使用する。ヒトHMHA1遺伝子(ARFAEGLEKLKECVLHDDLLEARRPRAHECL;配列番号126)の31個のアミノ酸をコードする、in vitroで転写されたRNA(ivtRNA)が、特定抗原の供給源としての役割を果たす。mDCへの電気穿孔後に、HMHA1をコードするivtRNAがタンパク質へと翻訳され、次にプロセシングされ、mDC上のHLA-A02:01分子によってペプチドとして提示される。同じドナーからのivtRNAがトランスフェクトされたmDCとのT細胞のin vitro共培養によって、対応するTCRの供給源としての役割を果たす抗原特異的T細胞のde novo誘導がもたらされる。抗原特異的T細胞は、様々な方法によって濃縮されてもよく、限界希釈またはFACSに基づく単一細胞選別によってクローニングされる。HA-1反応性T細胞クローンのTCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖の配列を次世代シーケンシングによって特定し、TCR定常領域をそれらのマウスカウンターパートと交換した後、レトロウイルスベクターpES.12-6中にクローニングする。健康なドナーのPBMCをフィコール勾配遠心分離によって単離する。CD8 T細胞を陰性磁気選択(Miltenyi)によって濃縮し、非組織培養24ウェルプレート中で、抗CD3および抗CD28 mAb(BD Pharmingen、Heidelberg、Germany)で刺激する。広宿主性レトロウイルス粒子を、HEK293T細胞の、レトロウイルスプラスミドをコードするそれぞれのTCRおよび2つの発現プラスミドによるトランスフェクションによって生成する。刺激後2日目に、CD8 T細胞に形質導入し、12日目に、形質導入されたCD8細胞を、形質導入のマーカーとしてマウスの定常ベータ領域を使用するFACSによって濃縮し、次いで、急速増殖プロトコールによって増殖させる(Riddell SR, Science, 1992 Jul 10;257(5067):238-41)。
【0167】
結果:
CD8 T細胞をHA-1反応性T細胞クローンから単離された6つの異なるTCRおよびHA-1を認識しない1つの対照TCRで形質導入した。単離されたTCRのヌクレオチド配列をGeneOptimizer(商標)アルゴリズム(ThermoFisher)を使用してコドン最適化し、定常領域をマウス化した。コドン最適化およびマウス化したTCRを本明細書に記載のすべてのさらなる実験に使用した。これらをHA-1-MHC多量体(immunAware)およびCD8に対する抗体およびマウス定常ベータ領域で染色した。HA-1-TCRトランスジェニックT細胞集団の1つを除いたすべてが、HA-1-MHC多量体に非常に効率的に結合した(>90%);TCR_6だけがより低いパーセンテージのHA-1-MHC多量体陽性細胞を示した(37%)。対照TCRに関しては、HA-1-MHC多量体染色は観察されなかった。これらの結果は、HA-1反応性T細胞クローンから単離されたTCRが、健康なドナーのT細胞においてトランスジーンとして発現され得ることを示す。(図1
【0168】
[実施例2]
HA-1-TCRトランスジェニックT細胞は、HA-1陽性標的細胞を認識する
TCRトランスジェニックT細胞のHA-1特異性を、以下のプロトコールに従って確認した:
【0169】
標的細胞として、T2細胞(HLA-A02:01pos)に、飽和量(10-5 M)の HA-1ペプチド(配列番号2)または対照ペプチドAstn1 P1268L(KLYGLDWAEL)を負荷する。さらに、K562細胞をHLA-A02:01およびHA-1エピトープをコードするHMHA1遺伝子の一部で形質導入する。HLA-A02:01のみで形質導入されたK562細胞を対照として使用する。20,000個のT細胞と10,000個の標的細胞を使用して、各標的細胞株をTCRトランスジェニックT細胞と、2:1の比で共培養する。20~24時間後、共培養上清のIFN-γ濃度を標準サンドイッチELISA(BDヒトIFN-γ ELISAセット)によって分析する。
【0170】
結果:
HA-1-TCRトランスジェニックT細胞は、HA-1を負荷したT2細胞とHMHA1を形質導入したK562細胞を認識したが、対照標的細胞はいずれも認識しなかった。対照TCRを発現するT細胞だけが、対照ペプチドを負荷したT2細胞を認識した。これらの結果は、HA-1反応性T細胞クローンから単離したTCRは、健康なドナーのT細胞にトランスフェクトされた場合に機能性であることを示す。(図2
【0171】
[実施例3]
HA-1-TCRトランスジェニックT細胞は、HA-1-ペプチドを負荷した標的細胞を認識しない
2つのバリアントHA-1およびHA-1を認識する際の差を分析するために、HLA-A02:01に負荷された2つのバリアントに対するHA-1-TCRトランスジェニックT細胞の機能性アビディティを分析した:
【0172】
T2細胞に、異なる濃度でHA-1ペプチド(10-11M~10-5M)とHA-1ペプチド(10-8M~10-5M)を外部から負荷し、20,000個のT細胞と10,000個のT2細胞を使用して、2:1の比でTCRトランスジェニックT細胞と共培養する。20~24時間後、共培養上清中のIFN-γ濃度を標準サンドイッチELISA(BDヒトIFN-γ ELISAセット)によって分析する。
【0173】
結果:
HLA-A02:01をコードした分子に負荷したHA-1ペプチドに対する最も高い機能性アビディティは、TCR_3とTCR_4によって示され、最も低い機能性アビディティはTCR_2によって示された。HA-1-TCRトランスジェニックT細胞の一部によるHA-1の非常に僅かな認識のみが、非生理学的な高いペプチド濃度(10-5M)で観察され、HA-1バリアントの認識については、HA-1と比較して少なくとも10,0000倍高いペプチド濃度が、HA-1-TCRトランスジェニックT細胞のすべてについて必要とされた。これらの結果は、HA-1-TCRが、HA-1バリアントに対して非常に特異的であることを示す。さらに、HLA-A02:01をコードした分子に負荷したHA-1ペプチドに対する機能性アビディティを国際公開第2018058002号パンフレットに記載されているTCR(TCR2)と比較した。本明細書に記載のTCRとは対照的に、このTCRは、HA-1ペプチドを10-6Mの濃度でも認識し、10-5Mの濃度では有意により多くのIFN-γを放出し、本明細書に記載のTCRのすべてが、国際公開第2018058002号パンフレットに記載されているTCRよりもより特異的であることを示す。(図3Aおよび3B)
【0174】
[実施例4]
HA-1-TCRトランスジェニックT細胞は、HA-1陽性LCLを認識する
未改変標的細胞における生理学的レベルのHA-1を認識するHA-1-TCRトランスジェニックT細胞の能力を分析するために、T細胞を様々はリンパ芽球様細胞株(LCL)と共培養し、TCRトランスジェニックT細胞のサイトカイン放出および細胞毒性を分析した:
【0175】
7つのLCLのDNAを単離し(Quick Extract DNA Extract Solution、Illumina)、HA-1をコードするHMHA1遺伝子の一部をPCRによって増幅させた。PCR産物をアガロースゲルから単離し、シーケンシング(Eurofins Genomics)に送る。シーケンシングの結果に基づき、LCLをHA-1陽性(HA-1H/HおよびHA-1H/R)またはHA-1陰性(HA-1R/R)群のいずれかに割り当てた。サイトカイン放出を分析するために、TCRトランスジェニックT細胞とLCLを、20,000個のT細胞と10,000個のT2細胞を使用して、2:1の比で共培養する。20~24時間後、共培養上清中のIFN-γ濃度を標準サンドイッチELISA(BDヒトIFN-γ ELISAセット)によって分析する。細胞毒性アッセイのために、蛍光マーカー遺伝子を形質導入した100,000個のTCRトランスジェニックT細胞と20,000個のLCLを用いて、エフェクター対標的比が5:1になるように共培養をセットアップする。蛍光標的細胞の減少(全積分強度(RCU×μm/イメージ、RCU=赤色の較正単位)は、肝細胞モニタリング(IncuCyte(登録商標) ZOOM)を使用して、20時間の全期間にわたって2時間ごとに測定する。
【0176】
結果:
すべてのHA-1-TCRトランスジェニックT細胞は、HA-1陽性LCL(LCL1~5)と共培養した場合、IFN-γを放出したが、HA-1陰性LCL(LCL6~7)とは共培養後も放出しなかった。対照TCRを発現するT細胞は、いずれのLCLも認識しなかった。さらに、HA-1陽性LCLは、HA-1-TCRトランスジェニックT細胞によって溶解された。形質導入されていないCD8 T細胞を陰性対照として使用し、これらはLCLを溶解しなかった。これらの結果は、HA-1-TCRが、HLA-A02:01をコードした分子に負荷されたHA-1を生理学的レベルで認識することができることを示す。(図4Aおよび4B)
【0177】
[実施例5]
HA-1H-TCRトランスジェニックT細胞は、HA-1H陽性腫瘍細胞株を認識する
腫瘍細胞株上に提示されたHA-1を認識するHA-1-TCRトランスジェニックT細胞の能力を分析するために、T細胞を様々なHA-1陽性腫瘍細胞株と共培養した。
【0178】
腫瘍細胞株のDNAを単離し(Quick Extract DNA Extract Solution、Illumina)HA-1をコードするHMHA1遺伝子の一部をPCRによって増幅した。PCR産物をアガロースゲルから単離し、次のシーケンシング(Eurofins Genomics)のためにゲルから抽出する。HA-1陽性(HA-1H/HおよびHA-1H/R)腫瘍細胞株を実験のために使用する。サイトカイン放出を分析するために、TCRトランスジェニックT細胞と腫瘍細胞株を20,000個のT細胞と10,000個のT2細胞を使用して、2:1の比で共培養する。20~24時間後、共培養上清中のIFN-γ濃度を標準サンドイッチELISA(BDヒトIFN-γ ELISAセット)によって分析する。細胞毒性アッセイのために、蛍光マーカー遺伝子を形質導入した100,000個のTCRトランスジェニックT細胞と20,000個の腫瘍細胞を用いて、約5:1のエフェクター対標的比になるように共培養をセットアップする。蛍光標的細胞の減少(全積分強度(RCU×μm/イメージ、RCU=赤色の較正単位)は、肝細胞モニタリング(IncuCyte(登録商標) ZOOM)を使用して、20時間の全期間にわたって2時間ごとに測定する。
【0179】
結果:
TCR_2以外のすべてのHA-1-TCRトランスジェニックT細胞は、腫瘍細胞株と共培養した場合、IFN-γを放出した。対照TCRを発現するT細胞は、腫瘍細胞株を認識しなかった。HA-1-TCRトランスジェニックT細胞は、腫瘍細胞株に対する細胞毒性活性も示す。サイトカイン放出データと一致して、TCR_2は、標的細胞をあまり効率的に溶解しなかった。形質導入されていないCD8 T細胞を陰性対照として使用した。(図5Aおよび5B)
【0180】
[実施例6]
TCR_3およびTCR_4を発現するT細胞は、以前に記載したTCRと同等レベルでHA-1陽性腫瘍細胞株を認識する
国際公開第2018058002号パンフレットに記載のTCR2を発現するT細胞に対して、HA-1-TCRトランスジェニックT細胞によるHA-1陽性腫瘍細胞株の認識を比較するために、20,000個のT細胞と10,000個の腫瘍細胞を共培養する。20時間後、共培養上清中のIFN-γ濃度を標準サンドイッチELISA(BDヒトIFN-γ ELISAセット)によって分析する。細胞毒性アッセイのために、10,000個のHA-1陰性/GFP陽性K562細胞およびmCherry発現腫瘍細胞株の10,000個の細胞を20,000個のTCRトランスジェニックT細胞と共培養する。45時間後、フローサイトメトリーによって試料を分析し、mCherry陽性(HA-1陽性)細胞のGFP陽性(HA-1陰性)細胞に対する比を計算し、対照TCRについて測定した比に対して正規化する。
【0181】
結果:
TCR_3およびTCR_4を発現するT細胞は、HA-1陽性腫瘍細胞株との共培養後に、国際公開第2018058002号パンフレットに記載のTCR2を発現するT細胞と同様の量のIFN-γを放出した(図6A)。TCR_3およびTCR_4を発現するT細胞は、様々な腫瘍細胞株に対して、TCR2と同等の細胞毒性活性も示す(図6B)。
【0182】
[実施例7]
TCR認識モチーフ
TCRの特異的認識モチーフの分析のために、セリン置換スキャンを実施する。エピトープの元々のアミノ酸のセリンによる単一置換によって、TCR媒介性認識に必須であるペプチド内の位置を特定することができる。認識モチーフを定義するために、様々なHA-1 TCR(TCR_3、TCR_4および国際公開第2018058002号パンフレットに記載されているTCR2)を発現するエフェクターT細胞をHA-1Hペプチド(配列番号2)、それぞれセリンで連続的に置換された個々のアミノ酸残基を有するペプチド、または対照ペプチドを負荷したT2細胞と共培養する。T2細胞に、飽和濃度(10-5M)のペプチドを別々に負荷し、洗浄し、1:1のE:Tでエフェクター細胞と共培養する。共培養の約20時間後に、上清を回収し、分泌されたIFN-γをELISAで分析する。対照TCRを発現するT細胞を陰性対照として使用する。
【0183】
結果:
TCR_3およびTCR_4は、より少ないペプチドしか認識されなかったTCR2(国際公開第2018058002号パンフレット)と比較して、セリンのより特異的な認識パターンを示す。
【0184】
様々なTCR定常領域の比較
様々なTCR定常領域の作用を比較するために、TCR_3をマウス定常領域、最小限にマウス化した(Sommermeyer and Uckert, 2010, J. Immunol.)定常領域およびヒト定常領域に関してクローニングする。様々なTCR定常領域に関するHA-1-TCRトランスジェニックT細胞によるHA-1陽性腫瘍細胞株またはLCLの認識を20,000個のT細胞、10,000個の腫瘍細胞の共培養によって試験する。20~24時間後、共培養上清中のIFN-γ濃度を標準サンドイッチELISA(BDヒトIFN-γ ELISAセット)によって分析する。細胞毒性アッセイのために、10,000個のHA-1陰性/GFP陽性K562細胞およびmCherry発現腫瘍細胞株の10,000個の細胞を20,000個のTCRトランスジェニックT細胞と共培養する。45時間後、フローサイトメトリーによって試料を分析し、mCherry陽性(HA-1陽性)細胞のGFP陽性(HA-1陰性)細胞に対する比を計算し、対照TCRについて測定した比に対して正規化する。
【0185】
結果:
予期された通り、HA-1-TCRトランスジェニックT細胞の反応性は、マウス化定常領域の代わりに最小限にマウス化されたTCR定常領域またはヒトTCR定常領域を使用する場合、僅かに低下する(図8AおよびB)。しかし、ヒトTCR定常領域に関してさえ、T細胞は、依然としてIFN-γを特異的に放出し、HA-1陽性標的細胞との共培養後に細胞毒性作用を示す。
【0186】
本記載は、以下の実施形態をさらに含む。
【0187】
実施形態1:マイナー組織適合性抗原1(HA-1)の1つのアレルバリアントに特異的な、単離されたT細胞受容体(TCR)。
【0188】
実施形態2.HA-1のアレルバリアントが、HA-1である、実施形態1に記載の単離されたTCR。
【0189】
実施形態3.アミノ酸配列である配列番号2またはその断片を特異的に認識する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0190】
実施形態4.アミノ酸配列である配列番号4またはその断片を認識しない、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0191】
実施形態5.TCRの認識モチーフが、配列番号127に示された配列を少なくとも含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0192】
実施形態6.配列番号2のアミノ酸配列のHLA-A2結合形態を特異的に認識する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0193】
実施形態7.HLA-A02:01にコードされた分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列を特異的に認識する、先行する実施形態のいずれかに記載の単離されたTCR。
【0194】
実施形態8.配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47および配列番号57からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域3(CDR3)を含むTCRα鎖を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の単離されたTCR。
【0195】
実施形態9.配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40 配列番号50および配列番号60からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0196】
実施形態10.
a) - 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号10の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖、または
b) - 配列番号15のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号17の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号20の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖、または
c) - 配列番号25のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号27の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号28のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号30の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖、
d) - 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖、または
e) - 配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号46のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号47の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号48のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号49のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号50の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖、または
f) - 配列番号55のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号56のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号57の配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、
- 配列番号58のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号59のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号60の配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0197】
実施形態11.TCRα鎖およびTCRβ鎖を含み、
a) - 可変TCRα領域が、配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号12と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含むか、または
b) - 可変TCRα領域は、配列番号21と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号22と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号20に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含むか、または
c) - 可変TCRα領域は、配列番号31と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号32と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号30に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含むか、または
d) - 可変TCRα領域は、配列番号41と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号37に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号42と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号40に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含むか、または
e) - 可変TCRα領域は、配列番号51と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号47に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号52と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号50に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含むか、または
f) - 可変TCRα領域は、配列番号61と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号57に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含み、
- 可変TCRβ領域は、配列番号62と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有し、配列番号60に示されるアミノ酸配列を有するCDR3領域を含む
先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0198】
実施形態12.
a)配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号12と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
b)配列番号21と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号22と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
c)配列番号31と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号32と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
d)配列番号41と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号42と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
e)配列番号51と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号52と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
f)配列番号61と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号62と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域
を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0199】
実施形態13 a)配列番号11のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号12のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
b)配列番号21のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号22のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
c)配列番号31のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号32のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
d)配列番号41のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号42のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
e)配列番号51のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号52のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、または
f)配列番号61のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号62のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域
を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0200】
実施形態14.TCRが精製される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0201】
実施形態15.そのアミノ酸配列が、1つまたは複数の表現型に影響しない置換を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0202】
実施形態16.そのアミノ酸配列が、検出可能な標識、治療剤または薬物動態修飾部分を含むよう改変されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0203】
実施形態17.治療剤が、免疫エフェクター分子、細胞毒性剤および放射性核種からなる群から選択される、実施形態16に記載の単離されたTCR。
【0204】
実施形態18.免疫エフェクター分子が、サイトカインである、実施形態17に記載の単離されたTCR。
【0205】
実施形態19.可溶性であるかまたは膜に結合している、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0206】
実施形態20.薬物動態修飾部分が、少なくとも1つのポリエチレングリコール繰り返し単位、少なくとも1つのグリコール基、少なくとも1つのシアリル基またはそれらの組合せである、実施形態16に記載の単離されたTCR。
【0207】
実施形態21.一本鎖タイプのものであり、TCRα鎖およびTCRβ鎖が、リンカー配列によって連結している、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0208】
実施形態22.TCRα鎖またはTCRβ鎖が、エピトープタグを含むように改変されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0209】
実施形態23.組換えTCR配列が、最小限にマウス化されたCα領域およびCβ領域を含有するように改変され得る、先行する実施形態のいずれか1つに記載の単離されたTCR。
【0210】
実施形態24.実施形態1から21のいずれかのTCRの機能性部分を含む単離されたポリペプチドであって、機能性部分が、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40、配列番号50および配列番号60のアミノ酸配列の少なくとも1つを含む、単離されたポリペプチド。
【0211】
実施形態25.機能性部分が、TCRα可変鎖および/またはTCRβ可変鎖を含む、実施形態24に記載の単離されたポリペプチド。
【0212】
実施形態26.実施形態1から23のいずれか1つで実現されている少なくとも2つのTCRを含む多価TCR複合体。
【0213】
実施形態27.前記TCRの少なくとも1つに治療剤が付随している、多価TCR複合体。
【0214】
実施形態28.IFN-γ分泌が、HLA-A02:01にコードされた分子によって提示される、配列番号2のアミノ酸配列に結合することによって誘導される、実施形態1から23に記載の単離されたTCR、実施形態24および25に記載のポリペプチドならびに実施形態25および26に記載の多価TCR複合体。
【0215】
実施形態29.実施形態1から22のいずれか1つに記載のTCRをコードするか、または実施形態24から25に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【0216】
実施形態30.核酸がコドン最適化されている、実施形態29に記載の核酸。
【0217】
実施形態31.実施形態29または30の核酸を含むベクター。
【0218】
実施形態32.発現ベクターである、実施形態31に記載のベクター。
【0219】
実施形態33.レトロウイルスベクターである、実施形態31または32に記載のベクター。
【0220】
実施形態34.レンチウイルスベクターである、実施形態31または32に記載のベクター。
【0221】
実施形態35.実施形態1から23に記載のTCRを発現する細胞。
【0222】
実施形態36.単離されるか、または天然に存在しない、実施形態34に記載の細胞。
【0223】
実施形態37.実施形態29または30に記載の核酸を含む細胞または実施形態31から35に記載のベクター。
【0224】
実施形態38.
a)実施形態29または30で実現されている少なくとも1つの核酸を含む発現ベクター、
b)実施形態1から23のいずれか1つで実現されているTCRのアルファ鎖をコードする核酸を含む第1の発現ベクター、および実施形態1から23のいずれか1つで実現されているTCRのベータ鎖をコードする核酸を含む第2の発現ベクター
を含む、実施形態35から37に記載の細胞。
【0225】
実施形態39.末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)である、実施形態35から38のいずれか1つに記載の細胞。
【0226】
実施形態40.T細胞である、実施形態35から38のいずれか1つに記載の細胞。
【0227】
実施形態41.HA-1の1つのアレルバリアントに対する特異性を媒介する、実施形態1から23に記載のTCRの一部に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【0228】
実施形態42.HA-1の1つのアレルバリアントに対する特異性を媒介するTCRの一部が、配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57のアルファ鎖のCDR3、および/または配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40、配列番号50および配列番号60のベータ鎖のCDR3を含む、実施形態40に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0229】
実施形態43.HA-1のアレルバリアントが、HA-1である、実施形態41または42に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0230】
実施形態44.実施形態1から22に記載のTCRを含む医薬組成物、実施形態24から25に記載のポリペプチド、実施形態27から28のいずれか1つに記載の多価TCR複合体、実施形態29もしくは30に記載の核酸、実施形態31から34に記載のベクター、実施形態35から40のいずれか1つに記載の細胞、または実施形態41から42に記載の抗体。
【0231】
実施形態45.少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、実施形態44に記載の医薬組成物。
【0232】
実施形態46.医薬として使用するための、実施形態1から23に記載のTCR、実施形態24から25に記載のポリペプチド、実施形態27から28のいずれか1つに記載の多価TCR複合体、実施形態29もしくは30に記載の核酸、実施形態31から34に記載のベクター、実施形態34から39のいずれか1つに記載の細胞、または実施形態41から43に記載の抗体。
【0233】
実施形態47.がんの処置において使用するための、実施形態1から23に記載のTCR、実施形態24から25に記載のポリペプチド、実施形態26から27のいずれか1つに記載の多価TCR複合体、実施形態29もしくは30に記載の核酸、実施形態35から40のいずれか1つに記載の細胞。
【0234】
実施形態48.がんが、血液がんである、実施形態45に記載の、使用するためのTCR、ポリペプチド、多価TCR複合体、核酸または細胞。
【0235】
実施形態49.血液がんが、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫(HL)、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)、混合表現型急性白血病(MPAL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞性多形型リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、中枢神経系リンパ腫、CD37+樹状細胞リンパ腫、リンパ形質性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織(MALT組織)の節外辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、悪性化の可能性が不明なB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、移植後リンパ増殖性障害および骨髄異形成障害からなる群から選択される、実施形態45に記載の、使用するためのTCR、ポリペプチド、多価TCR複合体、核酸または細胞。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
【配列表】
0007174144000001.app