(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
F02C 7/32 20060101AFI20221109BHJP
F01D 15/10 20060101ALI20221109BHJP
F02C 7/06 20060101ALI20221109BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
F02C7/32
F01D15/10 A
F02C7/06 D
F02C7/22 Z
(21)【出願番号】P 2021543001
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032361
(87)【国際公開番号】W WO2021039902
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2019157873
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大▲桑▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】柴山 義康
(72)【発明者】
【氏名】前里 晃
(72)【発明者】
【氏名】植田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正洋
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼本 建城
(72)【発明者】
【氏名】湯田 吉亮
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-023068(JP,A)
【文献】特開2014-015083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0245706(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0050806(US,A1)
【文献】特開2014-163407(JP,A)
【文献】特開2006-161653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/32
F01D 15/10
F02C 7/06
F02C 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、燃焼器及びタービンが回転軸に沿って並んで配置されたガスタービンエンジンであって、
前記圧縮機、前記燃焼器及び前記タービンが収容されるケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置され、前記回転軸に駆動される発電機と、
前記発電機で発電された電力を前記ケーシングの外部に送電する電力線と、
前記ケーシングの外部に配置され、前記電力線から送られる電力で駆動され、電動燃料ポンプを含む電動補機と、を備える、
前記ケーシングの外周面は、前記電動補機が設置される第1領域と、前記第1領域の後側に設けられた第2領域と、を有し、
前記第1領域は、前記第2領域よりも小径であり、
前記電動補機は、前方から見て第2領域の外周面よりも径方向内側に配置されている、ガスタービンエンジン。
【請求項2】
前記回転軸に沿って配置された第1軸受及び第2軸受と、
前記第1軸受を潤滑するオイルミストが流れる第1流路と、
前記第2軸受を潤滑するオイルミストが流れる第2流路と、を更に備え、
前記電動補機は、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気にオイルを混ぜて前記オイルミストを生成するオイルミスト生成装置を含む、請求項
1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
圧縮機、燃焼器及びタービンが回転軸に沿って並んで配置されたガスタービンエンジンであって、
前記圧縮機、前記燃焼器及び前記タービンが収容されるケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置され、前記回転軸に駆動される発電機と、
前記発電機で発電された電力を前記ケーシングの外部に送電する電力線と、
前記ケーシングの外部に配置され、前記電力線から送られる電力で駆動され、電動燃料ポンプを含む電動補機と、
前記回転軸に沿って配置された第1軸受及び第2軸受と、
前記第1軸受を潤滑するオイルミストが流れる第1流路と、
前記第2軸受を潤滑するオイルミストが流れる第2流路と、を備え、
前記電動補機は、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気にオイルを混ぜて前記オイルミストを生成するオイルミスト生成装置を含み、
前記第1軸受及び前記第2軸受は、前記回転軸に沿った前記発電機の両側に配置され、
前記第1流路は、前記オイルミストが前記第1軸受を潤滑した後に前記発電機を冷却するように前記オイルミストを導き、
前記第2流路は、前記オイルミストが前記第2軸受を潤滑した後に前記発電機を冷却するように前記オイルミストを導く
、ガスタービンエンジン。
【請求項4】
圧縮機、燃焼器及びタービンが回転軸に沿って並んで配置されたガスタービンエンジンであって、
前記圧縮機、前記燃焼器及び前記タービンが収容されるケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置され、前記回転軸に駆動される発電機と、
前記発電機で発電された電力を前記ケーシングの外部に送電する電力線と、
前記ケーシングの外部に配置され、前記電力線から送られる電力で駆動され、電動燃料ポンプを含む電動補機と、
前記回転軸に沿って配置された第1軸受及び第2軸受と、
前記第1軸受を潤滑するオイルミストが流れる第1流路と、
前記第2軸受を潤滑するオイルミストが流れる第2流路と、を備え、
前記電動補機は、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気にオイルを混ぜて前記オイルミストを生成するオイルミスト生成装置を含み、
前記オイルミスト生成装置は、前記圧縮機で圧縮された空気にオイルを吐出して前記第1流路に導かれる前記オイルミストを生成する第1電動潤滑オイルポンプと、前記圧縮機で圧縮された空気にオイルを吐出して前記第2流路に導かれる前記オイルミストを生成する第2電動潤滑オイルポンプと、を含み、
前記第1電動潤滑オイルポンプ及び前記第2電動潤滑オイルポンプは、前記ケーシングの外周面に沿って周方向に並んでいる
、ガスタービンエンジン。
【請求項5】
圧縮機、燃焼器及びタービンが回転軸に沿って並んで配置されたガスタービンエンジンであって、
前記圧縮機、前記燃焼器及び前記タービンが収容されるケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置され、前記回転軸に駆動される発電機と、
前記発電機で発電された電力を前記ケーシングの外部に送電する電力線と、
前記ケーシングの外部に配置され、前記電力線から送られる電力で駆動され、電動燃料ポンプを含む電動補機と、
前記回転軸に沿って配置された第1軸受及び第2軸受と、
前記第1軸受を潤滑するオイルミストが流れる第1流路と、
前記第2軸受を潤滑するオイルミストが流れる第2流路と、
前記発電機を冷却した前記オイルミストが流れる排出流路
と、を備え、
前記電動補機は、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気にオイルを混ぜて前記オイルミストを生成するオイルミスト生成装置を含み、
前記ケーシングは、前記圧縮機、前記燃焼器及び前記タービンが収容される内殻と、空気が通流するバイパス路を前記内殻との間に形成する外殻と、前記内殻から前記外殻に延びるストラットとを有し、
前記ストラットは、前記排出通路を流れる前記オイルミストを前記バイパス路に排出する排出口を有する
、ガスタービンエンジン。
【請求項6】
圧縮機、燃焼器及びタービンが回転軸に沿って並んで配置されたガスタービンエンジンであって、
前記圧縮機、前記燃焼器及び前記タービンが収容されるケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置され、前記回転軸に駆動される発電機と、
前記発電機で発電された電力を前記ケーシングの外部に送電する電力線と、
前記ケーシングの外部に配置され、前記電力線から送られる電力で駆動され、電動燃料ポンプを含む電動補機と、を備え、
前記圧縮機は、低圧圧縮機及び高圧圧縮機を含み、
前記タービンは、低圧タービン及び高圧タービンを含み、
前記回転軸は、前記低圧圧縮機及び前記低圧タービンに接続された低圧軸と、前記高圧圧縮機及び前記高圧タービンに接続された高圧軸と、を含み、
前記発電機は、ステータと、前記ステータの径方向内側に配置されたロータと、を有し、
前記高圧軸の前端部は、前記ロータの回転軸線上の中空空間に挿入され、前記ロータの後部に共回転するように連結され、
前記ロータの前部は、前記低圧軸に回転自在に支持されている
、ガスタービンエンジン。
【請求項7】
前記ケーシングは、前記圧縮機、前記燃焼器及び前記タービンが収容される内殻と、空気が通流するバイパス路を前記内殻との間に形成する外殻と、前記内殻から前記外殻に延びるストラットとを有し、
前記電力線は、前記ストラットに沿って延びている、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のガスタービンエンジン。
【請求項8】
前記ストラットは、前記圧縮機の後方に配置されている、請求項
7に記載のガスタービンエンジン。
【請求項9】
前記圧縮機は、低圧圧縮機及び高圧圧縮機を含み、
前記タービンは、低圧タービン及び高圧タービンを含み、
前記回転軸は、前記低圧圧縮機及び前記低圧タービンに接続された低圧軸と、前記高圧圧縮機及び前記高圧タービンに接続された高圧軸と、を含み、
前記低圧圧縮機は、軸流圧縮機であり、
前記高圧圧縮機は、遠心圧縮機であり、
前記軸流圧縮機と前記遠心圧縮機とを繋ぐ筒体が、前記軸流圧縮機から前記遠心圧縮機に向けて縮径しており、
前記発電機は、前記筒体の内部において前記軸流圧縮機と前記遠心圧縮機との間に配置されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、燃焼器及びタービンが回転軸に沿って並んで配置されたガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用ガスタービンエンジンでは、そのケーシングの外周面に、発電機、燃料ポンプ、潤滑オイルポンプ等の補機及びアクセサリギヤボックス等が取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。補機は、エンジンの回転軸の回転動力を利用して機械的に駆動される。具体的には、ケーシング内の回転軸から動力伝達機構を介してケーシングの外部に回転動力が取り出され、その回転動力がアクセサリギヤボックスで減速されて補機に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスタービンエンジンには、機体搭載時の空気抵抗を抑える等のために、前面投影面積を極力小さくして小型化を図ることが求められる。しかし、現状のエンジンでは、ケーシングの外周面に設けられるアクセサリギヤボックスが大きいために、エンジンの前面投影面積が大きくなる。アクセサリギヤボックスの大きさは、補機を駆動するために必要な減速比を得るために必要な歯車の大きさでおおよそ決まり、小型化には限界がある。
そこで本発明は、必要な補機の駆動を行いつつもガスタービンエンジンの小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るガスタービンエンジンは、圧縮機、燃焼器及びタービンが回転軸に沿って並んで配置されたガスタービンエンジンであって、前記圧縮機、前記燃焼器及び前記タービンが収容されるケーシングと、前記ケーシングの内部に配置され、前記回転軸に駆動される発電機と、前記発電機で発電された電力を前記ケーシングの外部に送電する電力線と、前記ケーシングの外部に配置され、前記電力線から送られる電力で駆動され、電動燃料ポンプを含む電動補機と、を備える。
【0006】
前記構成によれば、発電機がガスタービンエンジンのケーシングの内部に配置され、発電された電力をケーシングの外部に導くので、発電機をケーシングの外部に配置していた場合に比べ、エンジンの前面投影面積を低減できる。また、ケーシングの外部に配置される燃料ポンプを含む補機が電動式であるため、エンジンから抽出した動力で駆動される機械駆動式であった場合に比べ、アクセサリギヤボックスを廃止でき、エンジンの前面投影面積を低減できる。従って、必要な補機の駆動を行いつつも、エンジンの小型化を図ることができる。
【0007】
本発明の他態様に係るガスタービンエンジンは、低圧圧縮機、高圧圧縮機、燃焼器、高圧タービン及び低圧タービンが回転軸に沿って並んで配置されたガスタービンエンジンであって、前記低圧圧縮機、前記高圧圧縮機、前記燃焼器、前記高圧タービン及び前記低圧タービンが収容されるケーシングと、前記ケーシングの内部に配置され、前記回転軸に駆動される発電機と、を備え、前記低圧圧縮機は、軸流圧縮機であり、前記高圧圧縮機は、遠心圧縮機であり、前記軸流圧縮機と前記遠心圧縮機とを繋ぐ筒体が、前記軸流圧縮機から前記遠心圧縮機に向けて縮径しており、前記発電機は、前記筒体の径方向内側において前記軸流圧縮機と前記遠心圧縮機との間に配置されている。
【0008】
前記構成によれば、遠心圧縮機を用いて高圧圧縮機の小型化を図りながら、低圧圧縮機を軸流圧縮機として発電機の配置を工夫することで、エンジン全体を効果的に小型化できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガスタービンエンジンにおいて、必要な補機の駆動を行いつつもエンジンの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る航空機用ガスタービンエンジンの断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すガスタービンエンジンの前方から見た正面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すガスタービンエンジンの発電機及びその近傍を模式的に表した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明では、「前方」はエンジン内で空気が流れる方向における上流側を意味し、「後方」は、エンジン内で空気が流れる方向における下流側を意味する。即ち、「前方」は、エンジンの回転軸の軸線方向において、ファンが設けられている側を意味し、「後方」は、エンジンの回転軸の軸線方向において、ファンが設けられている側と反対側を意味する。「径方向」は、エンジンの回転軸の回転軸線に直交する方向を意味する。「周方向」は、エンジンの回転軸の回転軸線周りの方向を意味する。また、本願明細書において「航空機」は、ガスタービンにより発生する推進力によって飛行する飛行機や無人の飛翔体等を含む概念としている。
【0012】
図1は、実施形態に係る航空機用ガスタービンエンジン1の断面図である。
図2は、
図1に示すガスタービンエンジン1の前方から見た正面図である。なお、本実施形態では航空機用ガスタービンエンジンであるが、特に限定されるものではない。
図1に示すように、航空機用ガスタービンエンジン1は、回転軸2、ファン3、圧縮機4、燃焼器5、タービン6及びケーシング7を備える。回転軸2は、ガスタービンエンジン1の前後方向に延びる。ファン3は、回転軸2の前部に接続され、回転軸2と共に回転する。圧縮機4、燃焼器5及びタービン6は、この順に前方から後方に向けて回転軸2に沿って並んでいる。ケーシング7は、回転軸2の回転軸線と一致する軸線を有する筒状物であり、回転軸2、ファン3、圧縮機4、燃焼器5及びタービン6を収容している。
【0013】
具体的には、ガスタービンエンジン1は、二軸ガスタービンエンジンである。圧縮機4は、低圧圧縮機13と、低圧圧縮機13の後方に配置された高圧圧縮機14とを有する。例えば、低圧圧縮機13が軸流圧縮機であり、高圧圧縮機14は遠心圧縮機である。但し、低圧圧縮機13及び高圧圧縮機14の種類はこれに限られない。タービン6は、低圧タービン15と、低圧タービン15の前方に配置された高圧タービン16とを有する。回転軸2は、低圧圧縮機13を低圧タービン15に連結する低圧軸11と、高圧圧縮機14を高圧タービン16に連結する高圧軸12とを有する。高圧軸12は、内部に中空空間を有する筒状軸である。低圧軸11は、高圧軸12の中空空間に挿通されている。低圧タービン16は、低圧軸11を介してファン3に連結されている。
【0014】
ケーシング7は、内殻17、外殻18及びストラット19を有する。内殻17は、略円筒形状を有し、圧縮機4、燃焼器5及びタービン6を収容する。外殻18は、略円筒形状を有し、内殻17から径方向外側に離間した状態で内殻17と同心円状に配置されている。内殻17と外殻18との間には、円筒状のバイパス路Bが形成されている。ファン3により吸い込まれた空気の一部は、バイパス路Bを通流して後方に排出される。
【0015】
ストラット19は、内殻17から外殻18に径方向に延び、内殻17を外殻18に連結する。ストラット19は、低圧圧縮機13の後方に配置されている。具体的には、ストラット19は、低圧縮機13と高圧圧縮機14との間の位置に設けられている。なお、ストラット19よりも前方には他のストラットは存在しないが、他のストラットを設けてもよい。
【0016】
低圧圧縮機13(軸流圧縮機)と高圧圧縮機14(遠心圧縮機)とを繋ぐ筒体20は、低圧圧縮機13から高圧圧縮機14に向けて縮径している。筒体20は、低圧圧縮機13から高圧圧縮機14に向かう圧縮空気の流路の内周縁を画定する。ケーシング7の内部には、発電機21が配置されている。具体的には、発電機21は、筒体20の内部に配置されている。発電機21は、筒体20に収容された状態で低圧圧縮機13と高圧圧縮機14との間に配置されている。発電機21は、回転軸2に接続され、回転軸2によって駆動されて発電する。発電機21の回転軸線は、回転軸2の回転軸線と一致している。
【0017】
発電機21には、送電用の電力線23が接続されている。電力線23は、発電機21から径方向外方に延びて外殻18の外部に到達している。電力線23は、ストラット19に沿って延びている。具体的には、電力線23は、ストラット19の内部空間を径方向に通過している。発電機21で発電された電力は、電力線23を介してケーシング7(の外殻18)の外部に配置された複数の電動補機24に供給される。
【0018】
図1及び2に示すように、ケーシング7の外周面は、電動補機24が設置される第1領域18aと、第1領域18aの後側に設けられた第2領域18bとを有する。第1領域18aは、第2領域18bよりも小径である。第1領域18aは、前後方向(回転軸線方向)において、少なくとも低圧圧縮機13に対応する位置に設けられている。第2領域18bは、前後方向(回転軸線方向)において、少なくとも燃焼器5に対応する位置に設けられている。電動補機24は、前方から見て第2領域18bの外周面よりも径方向内側に配置されている。なお、第1領域18a及び第2領域18bを互いに接続する領域は、例えば、後方に向けて徐々に拡径する傾斜領域とし得る。
【0019】
複数の電動補機24は、外殻18の第1領域18aの外周面に沿って配置されている。電動補機24は、電力線23から送られる電力により動作する。電動補機24は、電動燃料ポンプ34、オイルミスト生成装置35及びコントローラ36を含む。電動燃料ポンプ34は、燃料タンク(図示せず)の燃料を燃焼器5に供給する。オイルミスト生成装置35は、圧縮機4で圧縮された圧縮空気にオイルを混ぜてオイルミストを生成する。コントローラ36は、所定のセンサデータ及び外部指令に応じて電動燃料ポンプ34及びオイルミスト生成装置35を制御する。
【0020】
オイルミスト生成装置35は、例えば、潤滑オイルタンク(図示せず)のオイルを圧縮機4から抽気された圧縮空気に混ぜる第1電動潤滑オイルポンプ35A及び第2電動潤滑オイルポンプ35Bを有する。第1電動潤滑オイルポンプ35A及び第2電動潤滑オイルポンプ35Bは、ケーシング7の外殻18の外周面に沿って周方向に並んでいる。第1電動潤滑オイルポンプ35A及び第2電動潤滑オイルポンプ35Bには、抽気流路27が接続されている。抽気流路27は、圧縮機4から抽出された圧縮空気が流れる流路である。例えば、抽気流路27は、高圧圧縮機14で圧縮された圧縮空気を高圧圧縮機14と高圧タービン16との間から抽出する。その場合、抽気流路27は、バイパス路Bを前後方向に通過してオイルミスト生成装置35に接続される。
【0021】
第1電動潤滑オイルポンプ35Aは、抽気流路27から供給された圧縮空気に微量のオイルを吐出してオイルミストを生成し、当該オイルミストが第1流路28に導かれる。第2電動潤滑オイルポンプ35Bは、抽気流路27から供給された圧縮空気に微量のオイルを吐出してオイルミストを生成し、当該オイルミストが第2流路29に導かれる。即ち、第1流路28及び第2流路29には、低圧圧縮機13の下流かつ高圧圧縮機14の上流の圧縮空気が流入する。
【0022】
発電機21の前後方向両側には、回転軸2に沿って第1軸受25及び第2軸受26が配置されている。第1軸受25は低圧軸11を支持し、第2軸受26は高圧軸12を支持する。第1流路28は、オイルミストを第1軸受25に供給して第1軸受25を潤滑する。第2流路29は、オイルミストを第2軸受26に供給して第2軸受26を潤滑する。第1流路28は、オイルミストが第1軸受25を潤滑した後に発電機21を冷却するようにオイルミストを導く。第2流路29は、オイルミストが第2軸受26を潤滑した後に発電機21を冷却するようにオイルミストを導く。
【0023】
発電機21を冷却したオイルミストは、排出流路30に導かれる。排出流路30の入口は、発電機21のハウジング33(
図3参照)の内部に連通している。排出流路30の出口は、ストラット19の排出口19aに連通している。ストラット19の排出口19aは、バイパス路Bに向けて開放されている。即ち、排出流路30を流れたオイルミストはバイパス路Bに排出される。なお、抽気流路27、第1流路28、第2流路29及び排出流路30は、例えば、パイプ、ケーシング、ハウジング等によって形成することができる。
【0024】
図3は、
図1に示すガスタービンエンジン1の発電機21及びその近傍を模式的に表した拡大断面図である。
図3に示すように、発電機21は、ロータ31と、ロータ31の径方向外側に配置されたステータ32と、それらを収容するハウジング33とを有する。ロータ31の回転軸線Xは、回転軸2の回転軸線と一致している。高圧軸12の前端部は、ロータ31の回転軸線X上の中空空間に挿入され、ロータ31の後部に共回転するように連結されている。例えば、高圧軸12の前端部は、ロータ31に内周面に直接的に接続(例えば、スプライン結合)されている。高圧軸12の前端は、回転軸線Xの方向において発電機21の内部で終端している。ロータ31の前部は、ロータ軸受22を介して低圧軸11に回転自在に支持されている。
【0025】
以上に説明した構成によれば、発電機21がガスタービンエンジン1のケーシング7の内部に配置され、発電された電力をケーシング7の外部に導くので、発電機21をケーシング7の外部に配置していた場合に比べ、ガスタービンエンジン1の前面投影面積を低減できる。また、ケーシング7の外部に配置される補機24が電動式であるため、補機がガスタービンエンジンから抽出した動力で駆動される機械駆動式であった場合に比べ、アクセサリギヤボックスを廃止でき、ガスタービンエンジン1の前面投影面積を低減できる。従って、必要な補機24の駆動を行いつつも、ガスタービンエンジン1の小型化を図ることができる。
【0026】
また、ケーシング7の外殻18のうち電動補機24が設置される第1領域18aが縮径されているため、前方から見てケーシング7からの電動補機24の径方向外側への突出量が低減され、ガスタービンエンジン1の前面投影面積を低減できる。
【0027】
また、ケーシング7の外部にオイルミスト生成装置35を配置し、そのオイルミスト生成装置35を電動式にするため、ガスタービンエンジンから抽出した動力で潤滑オイル供給装置を機械駆動していた場合に比べ、アクセサリギヤボックスを廃止でき、ガスタービンエンジン1の前面投影面積を低減できる。
【0028】
また、第1軸受25、発電機21及び第2軸受26がこの順に前から並んだ構成において、オイルミストが第1軸受25及び第2軸受26を先に潤滑した後に発電機21を冷却するので、オイルミストが単に前から後に向けて(第1軸受25から発電機21を経て第2軸受26に向けて)流れる場合に比べ、第2軸受26に供給されるオイルミストが高温化することを防止できる。
【0029】
また、オイルミスト生成装置35は、(1つのみの潤滑オイルポンプではなく)複数の電動潤滑オイルポンプ35A,35Bを有するので、個々の電動潤滑オイルポンプ35A,35Bを小径化できる。その小径化された複数の電動潤滑オイルポンプ35A,35Bがケーシング7の外周面に沿って周方向に並ぶので、前方から見てケーシング7からの電動潤滑オイルポンプ35A,35Bの径方向外側への突出量が低減され、ガスタービンエンジン1の前面投影面積を低減できる。また、第1軸受25及び第2軸受26の潤滑にオイルジェットではなくオイルミストを用いるため、電動潤滑オイルポンプ35A,35Bの吐出量を極小化できてポンプを小型化できる。
【0030】
また、オイルミスト生成装置35に供給される抽気流路27は、高圧圧縮機14と高圧タービン16との間の部分に接続されており、抽気流路27に流入する圧縮空気は高温であるが、抽気流路27がバイパス路Bで冷却されるため、オイルミスト生成装置35に到達する抽気が高温化することが防止される。そのため、オイルミストが高温化することが防止されて、発電機21を好適に冷却できる。
【0031】
また、発電機21が高圧軸12に駆動されるので、発電機21はアイドリング状態でも安定して電力を発生させることができる。また、ロータ31の前部は低圧軸11に支持されるので、高圧軸12を長尺化せずに済み、ガスタービンエンジン1の重量増を防止できる。また、高圧軸12の前端部12aがロータ31の中空空間に挿入されてロータ31に連結されるので、複雑な動力伝達構造を不要にできる。
【0032】
また、ストラット19には排出口19aが形成されており、第1軸受25及び第2軸受26を潤滑した後に発電機21を冷却したオイルミストが排出口19aからバイパス路Bに排出される。そのため、オイルミストがバイパス空気とともに後方に噴出され、ガスタービンエンジン1の推進力に寄与できる。
【0033】
また、電力線23は、内殻17から外殻18に延びるストラット19に沿って延びているので、発電機21で発電された電力をケーシング7の外部に簡易に導くことができる。また、ストラット19は、低圧圧縮機13の後方に配置されているので、ストラットをファン3の近傍に設ける場合に比べ、空力性能を向上できる。
【0034】
また、発電機21は、筒体20の内部において軸流圧縮機(低圧圧縮機13)と遠心圧縮機(高圧圧縮機14)との間に配置されているので、遠心圧縮機を用いて高圧圧縮機14の小型化を図りながら、低圧圧縮機13を軸流圧縮機として発電機21の配置を工夫することで、ガスタービンエンジン1の全体を効果的に小型化できる。
【符号の説明】
【0035】
1 ガスタービンエンジン
2 回転軸
3 ファン
4 圧縮機
5 燃焼器
6 タービン
7 ケーシング
11 低圧軸
12 高圧軸
13 低圧圧縮機
14 高圧圧縮機
15 低圧タービン
16 高圧タービン
17 内殻
18 外殻
18a 第1領域
18b 第2領域
19 ストラット
19a 排出口
20 筒体
21 発電機
23 電力線
24 電動補機
25 第1軸受
26 第2軸受
27 抽気流路
28 第1流路
29 第2流路
30 排出流路
31 ロータ
32 ステータ
34 電動燃料ポンプ
35 オイルミスト生成装置
35A 第1電動潤滑オイルポンプ
35B 第2電動潤滑オイルポンプ
B バイパス路