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特許7174194ロボットシステム及びロボットシステムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ロボットシステム及びロボットシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20221109BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20221109BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20221109BHJP
   B24C 1/10 20060101ALI20221109BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20221109BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J9/22 A
B05B12/00 A
B24C1/10 Z
B24C5/02 C
B23K9/12 331K
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022502250
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2021036454
(87)【国際公開番号】W WO2022071585
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2020167845
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝戸 達健
(72)【発明者】
【氏名】磯田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】勝部 優仁
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-216183(JP,A)
【文献】特開平10-058363(JP,A)
【文献】特開平06-262548(JP,A)
【文献】特開平06-262547(JP,A)
【文献】特開昭63-300880(JP,A)
【文献】特開昭61-100809(JP,A)
【文献】特開平02-287705(JP,A)
【文献】特開平06-051824(JP,A)
【文献】特開昭64-040290(JP,A)
【文献】特開2001-287179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0157776(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B05B 12/00
B24C 1/00 - 11/00
B23K 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドエフェクタを備えたロボットと、
位置及び姿勢を移動可能である位置姿勢指示部を含む操作部と、
前記位置姿勢指示部の位置及び姿勢に応じて前記ロボットに前記エンドエフェクタを移動させ、当該エンドエフェクタにワークの被加工面に対して非接触で加工を行わせる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記位置姿勢指示部の位置及び姿勢に応じて前記エンドエフェクタを移動させる際に、第1制御と第2制御とのうちの少なくとも一方を実行し、
前記制御部は、前記第1制御では、前記エンドエフェクタに設定される所定軸上における前記エンドエフェクタと制御被加工面との距離を一定に維持しつつ前記位置姿勢指示部の位置及び姿勢に応じた位置及び姿勢に前記ロボットに前記エンドエフェクタを移動させ、
前記制御被加工面は、前記ワークの被加工面、又は前記ワークの仮想の被加工面であり、
前記制御部は、前記第2制御では、前記エンドエフェクタの前記所定軸と前記制御被加工面との交点における前記制御被加工面の法線に対する前記エンドエフェクタの前記所定軸の角度を一定角度に維持しつつ前記位置姿勢指示部の位置に応じた位置に前記ロボットに前記エンドエフェクタを移動させる、ロボットシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記エンドエフェクタが前記制御被加工面から所定の距離範囲に位置し、且つ、前記制御被加工面に対する前記エンドエフェクタの向きが所定の向き範囲にある場合に、前記第1制御及び前記第2制御の少なくともいずれかを行う、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
エンドエフェクタを備えたロボットと、
操作部と、
前記操作部の操作に基づいて前記エンドエフェクタを移動させ、当該エンドエフェクタにワークの被加工面に対して非接触で加工を行わせる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記操作部の操作に基づいて前記エンドエフェクタを移動させる際に、前記エンドエフェクタと、前記ワークの被加工面又は前記ワークの仮想の被加工面である、制御被加工面との距離を一定にする第1制御と、前記制御被加工面に対する前記エンドエフェクタの角度を一定角度にする第2制御とのうちの少なくとも一方を実行し、
前記制御部は、前記エンドエフェクタが前記制御被加工面から所定の距離範囲に位置し、且つ、前記制御被加工面に対する前記エンドエフェクタの向きが所定の向き範囲にある場合に、前記第1制御及び前記第2制御の少なくともいずれかを行う、ロボットシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記エンドエフェクタが前記ワークの被加工面に加工を行う間、前記第1制御及び前記第2制御の少なくともいずれかを行う、請求項1乃至3のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記操作部は、前記エンドエフェクタの位置及び姿勢を示す位置姿勢指示部と、
前記位置姿勢指示部の位置及び姿勢を検出する位置姿勢検出部と、
前記加工を操作するための加工指示部と、
を備える、請求項1乃至4のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記ワークの3次元データを記憶しており、
前記制御部は、前記ワークの3次元データと前記エンドエフェクタの位置とに基づいて前記第1制御を行い、又は、前記ワークの3次元データと前記エンドエフェクタの姿勢とに基づいて前記第2制御を行う、請求項1乃至5のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記第1制御及び前記第2制御にそれぞれ用いられる前記エンドエフェクタの位置及び前記エンドエフェクタの姿勢が、それぞれ、前記位置姿勢検出部が検出した前記位置姿勢指示部の位置及び姿勢であり、
前記第1制御及び前記第2制御における前記制御被加工面が、前記ワークの仮想の被加工面である、請求項5に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記ロボットシステムは、前記エンドエフェクタを移動させ且つ当該エンドエフェクタに前記加工を行わせるために前記制御部が出力する制御信号を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は記憶モード及び再生モードを有し、
前記制御部は、前記記憶モードにおいて、前記制御信号を時系列で前記記憶部に記憶させ、前記再生モードにおいて、前記記憶部に記憶された前記制御信号を前記ロボット及び前記エンドエフェクタに出力する、請求項1乃至6のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記エンドエフェクタによる前記加工が、前記エンドエフェクタからの加工用の物質又はエネルギーの前記ワークの被加工面への放出による加工である、請求項1乃至8のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記エンドエフェクタからの前記加工用の物質又はエネルギーの前記ワークの被加工面への放出による加工が、塗装ガンからの液状又は粉状の塗料の噴射による塗装、洗浄ノズルからの洗浄液の噴射による洗浄、噴射ノズルからの投射材粒体と空気又は水との混合物の噴射によるショットブラスト又はショットピーニング、電極からの電流の放出によるアーク溶接、及びバーナーからの火炎の放出による炙り加工のいずれかである、請求項9に記載のロボットシステム。
【請求項11】
エンドエフェクタを備えたロボットと、位置及び姿勢を移動可能である位置姿勢指示部を含む操作部とを備えたロボットシステムの制御方法であって、
前記位置姿勢指示部の位置及び姿勢に応じて前記ロボットに前記エンドエフェクタを移動させ、当該エンドエフェクタにワークの被加工面に対して非接触で加工を行わせ、
前記エンドエフェクタを移動させる際に、第1制御と第2制御とのうちの少なくとも一方を実行し、
前記第1制御では、前記エンドエフェクタに設定される所定軸上における前記エンドエフェクタと制御被加工面との距離を一定に維持しつつ前記位置姿勢指示部の位置及び姿勢に応じた位置及び姿勢に前記ロボットに前記エンドエフェクタを移動させ、
前記第2制御では、前記エンドエフェクタの前記所定軸と前記制御被加工面との交点における前記制御被加工面の法線に対する前記エンドエフェクタの前記所定軸の角度を一定角度に維持しつつ前記位置姿勢指示部の位置に応じた位置に前記ロボットに前記エンドエフェクタを移動させ、
前記制御被加工面は、前記ワークの被加工面、又は前記ワークの仮想の被加工面である、ロボットシステムの制御方法。
【請求項12】
エンドエフェクタを備えたロボットと操作部とを備えたロボットシステムの制御方法であって、
前記操作部の操作に基づいて前記エンドエフェクタを移動させ、当該エンドエフェクタにワークの被加工面に対して非接触で加工を行わせ、
前記エンドエフェクタを移動させる際に、前記エンドエフェクタと、前記ワークの被加工面又は前記ワークの仮想の被加工面である、制御被加工面との距離を一定にする第1制御と、前記制御被加工面に対する前記エンドエフェクタの角度を一定角度にする第2制御とのうちの少なくとも一方を実行し、
前記エンドエフェクタが前記制御被加工面から所定の距離範囲に位置し、且つ、前記制御被加工面に対する前記エンドエフェクタの向きが所定の向き範囲にある場合に、前記第1制御及び前記第2制御の少なくともいずれかを行う、ロボットシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本件出願は、2020年10月2日に日本特許庁に出願された特願2020-167845号の優先権を主張するものであり、その全体を参照することにより本件出願の一部をなすものとして引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ロボットシステム及びロボットシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、ロボットに塗装ガンを装着して被塗装物を塗装することが知られている。例えば、特許文献1に開示されたタイヤ内面塗装装置では、教示によって予め設定された塗装ガンの目標経路のデータと、距離センサにより計測される塗装ガンとタイヤの被塗装面との距離とに基づいて、ロボットに装着された塗装ガンとタイヤの被塗装面との距離を一定に維持しながら塗装を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-047834号公開特許公報
【発明の概要】
【0005】
塗膜の厚みの均一度は、少なくとも、塗装ガンの移動経路に依存する。従って、塗装ガンの移動経路は、実際のワークへの塗装状態を確認しながら決定することが望ましい。均一度としては、例えば、塗装むらの少なさが挙げられる。
【0006】
しかし、上記タイヤ内面塗装装置では、塗装面に平行な方向における塗装ガンの移動経路は、実際に塗装ガンとタイヤの被塗装面との距離を一定に維持しながら塗装ガンで塗装する状態において決定されておらず、予め設定されている。そのため、実際の塗装状態が、望ましい状態になる保証がない。
【0007】
また、ロボットによる塗装ガンを用いた塗装においては、被塗装面に対して一定の角度で塗装することが考えられる。しかし、この場合においても、塗装ガンの移動経路を塗装ガンで塗装する状態において決定しないと実際の塗装状態が望ましい状態になる保証がない。
【0008】
これらの問題点は、ロボットを用いて、ワークの被加工面に対して非接触で加工を行う場合にも共通する。そのような場合として、例えば、加工用の物質又はエネルギーをエンドエフェクタからワークの被加工面へ放出する加工が挙げられる。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ワークの被加工面に対して非接触で加工を行う場合に、実際の加工状態を向上させることが可能なロボットシステム及びロボットシステムの制御方法を提供することを目的としている。
【0010】
上記目的を達成するために、本開示のある形態に係るロボットシステムは、エンドエフェクタを備えたロボットと、操作部と、前記操作部の操作に基づいてエンドエフェクタを移動させ、当該エンドエフェクタにワークの被加工面に対して非接触で加工を行わせる制御部と、を備え、前記制御部は、前記操作部の操作に基づいてエンドエフェクタを移動させる際に、前記エンドエフェクタと、前記ワークの被加工面又は前記ワークの仮想の被加工面である、制御被加工面との距離を一定にする第1制御と、前記制御被加工面に対する前記エンドエフェクタの角度を一定角度にする第2制御とのうちの少なくとも一方を実行する。
【0011】
また、本開示の他の形態に係るロボットシステムの制御方法は、エンドエフェクタを備えたロボットと操作部とを備えたロボットシステムの制御方法であって、前記操作部の操作に基づいてエンドエフェクタを移動させ、当該エンドエフェクタにワークの被加工面に対して非接触で加工を行わせ、前記エンドエフェクタを移動させる際に、前記エンドエフェクタと、前記ワークの被加工面又は前記ワークの仮想の被加工面である、制御被加工面との距離を一定にする第1制御と、前記制御被加工面に対する前記エンドエフェクタの角度を一定角度にする第2制御とのうちの少なくとも一方を実行する。
【開示の効果】
【0012】
本開示は、ワークの被加工面に対して非接触で加工を行う場合に、実際の加工状態を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施形態1に係る塗装ロボットシステムの構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、図1のロボット及び位置・姿勢センサの配置を模式的に示す平面図である。
図3図3は、図1の塗装ロボットシステムの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4図4は、ガン距離一定制御の概要を示す斜視図である。
図5図5は、ガン面直制御の概要を示す平面図である。
図6図6は、ワークのCADデータのロボット座標系への設定の一例を示す模式図である。
図7図7は、ロボットの特定制御の内容の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、ロボットのガン距離一定制御の内容の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、ガン距離一定制御の内容及び塗装ガンの位置に関する補正許容位置範囲を示す平面図である。
図10図10は、塗装ガンの向きに関する補正許容角度範囲を示す平面図である。
図11図11は、ロボットのガン面直制御の内容の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、変形例1の特定制御の内容の一例を示す平面図である。
図13図13は、実施形態2の特定制御の内容の一例を示す平面図である。
図14図14は、変形例2の特定制御の内容の一例を示す平面図である。
【開示を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の具体的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の図は、本開示を説明するための図であるので、本開示に無関係な要素が省略される場合、誇張等のために寸法が正確でない場合、簡略化される場合、複数の図において互いに対応する要素の形態が一致しない場合等がある。また、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0015】
(実施形態の概要)
本開示の実施形態のロボットシステムは、エンドエフェクタを備えたロボットと、操作部と、操作部の操作に基づいてエンドエフェクタを移動させ、当該エンドエフェクタにワークの被加工面に対して非接触で加工を行わせる制御部と、を備える。制御部は、操作部の操作に基づいてエンドエフェクタを移動させる際に、エンドエフェクタと、ワークの被加工面又はワークの仮想の被加工面である、制御被加工面との距離を一定にする第1制御と、前記制御被加工面に対する前記エンドエフェクタの角度を一定角度にする第2制御とのうちの少なくとも一方を実行する。ここで、第2制御における「一定角度」は、エンドエフェクタによる加工に好適な角度が選択される。例えば、塗装ガンを用いた塗装加工では、90度が選択される。もちろん、他の加工では、他の角度が選択されてもよい。
【0016】
前記操作部は、前記エンドエフェクタの位置及び姿勢を示す位置姿勢指示部と、前記位置姿勢指示部の位置及び姿勢を検出する位置姿勢検出部と、前記加工を操作するための加工指示部と、を備える。
【0017】
以下では、第1及び第2制御における制御被加工面がワークの実際の加工面である形態を、実施形態1において説明し、第1及び第2制御における制御被加工面がワークの仮想の加工面である形態を、実施形態2において説明する。
【0018】
(実施形態1)
[構成]
{ハードウェアの構成}
図1は、本開示の実施形態1に係るロボットシステムの構成の一例を示す模式図である。図2は、図1のロボット1及び位置・姿勢センサ4の配置を模式的に示す平面図である。
【0019】
図1を参照すると、本実施形態1では、ロボットシステムは、例えば、塗装ロボットシステム100である。この塗装ロボットシステム100は、ロボット1と、位置姿勢指示部の一例である指示器2と、制御部の一例であるシステム制御器3と、位置姿勢検出部の一例である位置・姿勢センサ4と、特定制御スイッチ5と、記憶部の一例である記憶器7と、を備える。ロボット1のエンドエフェクタ装着部であるEF装着部1aには、エンドエフェクタの一例である塗装ガン6が装着される。指示器2と位置・姿勢センサ4とが、操作部の一例である操作器8を構成している。
【0020】
ここで、塗装ロボットシステム100は、本開示の実施形態に係るロボットシステムの一例である。このロボットシステムでは、エンドエフェクタによる加工が、エンドエフェクタからの加工用の物質又はエネルギーの前記ワークの被加工面への放出による加工である。以下では、エンドエフェクタからの加工用の物質又はエネルギーのワークの被加工面への放出による加工である放出加工として、塗装ガン6からの塗料の噴射による塗装が例示される。しかし、放出加工は、これ以外の放出加工であってもよい。また、以下の塗装ガン6からの塗料の噴射による塗装の開示内容を、これ以外の放出加工に、適宜、適用することによって、当該放出加工を行うロボットシステムを実現することができる。ロボットシステムは、全て、原理が、エンドエフェクタから物質又はエネルギーをワークの被加工面へ放出することによって加工を行うという点で共通するからである。
【0021】
ここで、加工用の「物質又はエネルギー」は特に限定されない。「加工用の物質」として、液体、気体、粉状又は粒状の固体、火炎等が例示される。「加工用のエネルギー」として、電流、電磁波、光、音波等が例示される。電磁波として、電波、放射線等が例示される。光には、紫外線及び赤外線が含まれる。音波として、超音波等が例示される。「加工」は、被加工面に、少なくとも物理的変化又は化学的変化を生じさせることを意味する。物理的変化として、被加工面の形状の変化、硬さの変化、色の変化、特性の変化等が例示される。被加工面の形状の変化として、凹部の形成、被加工面の剥離、被覆層の形成、溶融変形等が例示される。溶融変形には溶接が含まれる。特性の変化として導電性、磁性等の変化が例示される。化学的変化として、酸化、還元、化合、重合、分解等が例示される。物質又はエネルギーの「放出」として、物質又はエネルギーの、放射、噴射、吐出、流出等が例示される。
【0022】
また、「エンドエフェクタの物質又はエネルギーの放出の向き」は、例えば、物質又はエネルギーの主要放出方向、エンドエフェクタの物質又はエネルギーの放出口の中心線の延在方向又は法線の方向とされる。以下では、塗装ガン6が「エンドエフェクタ」であり、塗料が加工用の物質であり、塗料の噴射が、「物質の放出」であり、塗装ガン6の塗料の噴射の向きが、「エンドエフェクタの物質の放出の向き」である。以下では、簡略化のために、「塗装ガン6の塗料の噴射の向き」を「塗装ガン6の向き」と呼ぶ。
【0023】
また、以下では、第1制御の一例である「EF距離一定制御」を「ガン距離一定制御」と呼び、第2制御の一例である「EF面直制御」を「ガン面直制御」と呼ぶ。
【0024】
また、以下では、塗装ガン6の位置及び姿勢を指示する指示部と当該指示した塗装ガン6の位置及び姿勢を検出するセンサ部とが、それぞれ、指示器2と位置・姿勢センサ4とに分離された操作器8が例示される。しかし、当該指示部とセンサ部とが一体化された操作器8を用いてもよい。
【0025】
また、以下では、エンドエフェクタによる加工を操作するための加工指示部がトリガ2aであり、このトリガ2aが、指示器2に設けられた操作器8が例示される。しかし、加工指示部は、操作器8と分離して設けられてもよい。加工指示部は、例えば、システム制御器3のディスプレイに表示されてもよい。
【0026】
次に、これらの要素の配置を説明する。図2を参照すると、ロボット1及び被塗装物であるワークWは、例えば、密閉された塗装室13の内部に配置される。なお、図2には、図を見やすくするために、ロボット1の代わりに手首部であるEF装着部1aが示されている。参照符号10は、塗装ガン6から噴出される塗料を示す。塗装室13の1つの側壁が透明な仕切り板12で構成され、この透明な仕切り板12に隣接して制御エリアが形成されている。
【0027】
制御エリアにおけるワークW及び塗装ガン6が見える場所に操作位置が想定されている。この操作位置に特定制御スイッチ5が配置され、且つ、この操作位置の周囲に複数の位置・姿勢センサ4が配置されている。ここでは、位置・姿勢センサ4の数は、3つである。操作者11は、この操作位置に位置して、ワークW及び塗装ガン6を見ながら、指示器2を一方の手に持ち、塗装ガン6を操作すべく指示器2を動かす。ここでは、一方の手は、例えば右手である。この指示器2の位置及び姿勢を位置・姿勢センサ4が検出する。また、操作者11は、特定制御スイッチ5を他方の手で操作し、ガン距離一定制御及びガン面直制御の少なくともいずれかを指令する。ここでは、他方の手は、例えば左手である。なお、以下では、ガン距離一定制御及びガン面直制御を「特定制御」と総称する。
【0028】
システム制御器3は、例えば、塗装室13以外の適宜な場所に配置される。システム制御器3は、例えば、制御エリアの操作位置に近接して配置されてもよい。なお、システム制御器3を小型化するとともに図3に示されたロボット制御器9と一体化してもよい。この場合、一体化したシステム制御器3をロボット1の基台の内部に配置してもよい。
【0029】
記憶器7は、任意の場所に配置され得る。ここでは、システム制御器3の内部に配置される。
【0030】
以下、これらの要素を詳しく説明する。
【0031】
<ロボット1>
ロボット1は、塗装ガン6を移動させる要素である。従って、ロボット1は、塗装ガン6を装着できるものであればよい。ロボット1として、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット、パラレルリンクロボット、直交座標型ロボット等が例示される。
【0032】
以下では、ロボット1が6軸の垂直多関節ロボットである場合が例示される。ロボット1のEF装着部1aに塗装ガン6が装着される。EF装着部1aは、塗装ガン6が装着される装着部の一例である。ロボット1が他のタイプである場合は、塗装ガン6の装着部の呼称が変わり得る。
【0033】
ロボット1にとって、塗装ガン6は、EF装着部1aに装着される各種のエンドエフェクタの一種であるので、塗装ガン6の位置及び姿勢は、塗装ガン6の装着部であるEF装着部1aの位置及び姿勢を制御することによって制御される。従って、以下では、EF装着部1aの位置及び姿勢の制御を説明するが、EF装着部1aの位置及び姿勢を制御することは、塗装ガン6の位置及び姿勢を制御することと同義である。また、「EF装着部1aの向き」は、EF装着部1aに装着された塗装ガン6の向きと同義である。
【0034】
<指示器2>
指示器2は、塗装ガン6の位置及び姿勢を示し、且つ、塗装ガン6の塗料の噴射を操作するための要素である。指示器2は、ここでは、塗装ガン6の形状を簡略化して模擬したガン形状に形成されている。これによって、指示器2の位置及び姿勢によって、塗装ガン6の位置及び姿勢を示すことができる。但し、指示器2の形状は、ガン形状でなくてもよい。例えば、任意の形状の指示器2にマーカを設け、当該マーカを位置・姿勢センサ4が検出することによって、指示器2の位置及び姿勢を特定できるようにしてもよい。
【0035】
指示器2には、ここでは、塗装ガン6の塗料の噴射を操作するためにトリガ2aが設けられている。トリガ2aは、原位置に復帰するように付勢されつつ押し込み可能に構成されている。操作者11が指でトリガ2aを押し込むことにより塗装ガン6から塗料が噴射される。操作者11がトリガ2aから指を放すと、塗装ガン6からの噴射が停止される。また、トリガ2aの押し込み量に応じて塗料の噴射量が増減する。塗料の噴射量は、例えば、単位時間当たりの噴射量であってもよい。
【0036】
<システム制御器3>
システム制御器3は、塗装ガン6が位置・姿勢センサ4で検出された指示器2の位置及び姿勢に応じた位置及び姿勢を取るようロボット1の動作を制御する基本制御を行い、且つ、塗装ガン6の塗料の噴射に関する指示器2の操作に応じて塗装ガン6の塗料の噴射を制御する。また、システム制御器3は、基本制御の中において、塗装ガン6とワークWの被塗装面fとの距離を一定にするガン距離一定制御及び塗装ガン6の向きをワークWの塗装面に垂直にするガン面直制御の少なくともいずれかを行う。被塗装面fは、被加工面の一例である。
【0037】
具体的には、システム制御器3は、位置・姿勢センサ4で検出された指示器2の位置及び姿勢データとワークWの3次元データとワークWの位置データとに基づいて、ロボット1及び塗装ガン6の制御信号を生成し、これらを図3に示されたロボット制御器9に送信する。位置及び姿勢データは、位置・姿勢信号を意味する。
【0038】
ワークWの3次元データは、予め、図3に示されたシステム制御器3の記憶器7に記憶されている。ワークWの3次元データとして、ワークWのCADデータ、ワークWの実測データ等が例示される。
【0039】
システム制御器3は、図3に示されたプロセッサPrとメモリMeとを有する演算器で構成される。図3のモード切替スイッチ31は、この演算器において、メモリMeに格納された制御プログラムをプロセッサPrが実行することによって実現される機能ブロックである。この演算器は、具体的には、例えば、マイクロコントローラ、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等で構成される。これらは、集中制御を行う単独の演算器で構成されてもよく、分散制御を行う複数の演算器で構成されてもよい。
【0040】
ここで、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、「器」及び「部」は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、「器」及び「部は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアは、ハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0041】
<位置・姿勢センサ4>
位置・姿勢センサ4は、操作器の位置及び姿勢を検出する要素である。従って、位置・姿勢センサ4は、指示器2の位置及び姿勢を検出できるセンサであればよい。
【0042】
位置・姿勢センサ4として、例えば、複数の距離センサを組み合わせるタイプA、立体カメラの一例である3Dカメラを用いるタイプB、深度カメラを用いるタイプC、並びに、3軸加速度センサ、ジャイロセンサ、及び地磁気センサを組み合わせるタイプDが挙げられる。
【0043】
タイプAによれば、例えば、複数の赤外線距離センサが検出した距離データを組み合わせて解析することにより、指示器2の位置及び姿勢を取得することができる。
【0044】
タイプBによれば、例えば、1以上の3Dカメラが撮像した奥行の情報を含む画像を解析することにより、指示器2の位置及び姿勢を取得することができる。
【0045】
タイプCによれば、例えば、1以上のTOFカメラが撮像した深度付き画像を解析することにより、指示器2の位置及び姿勢を取得することができる。
【0046】
タイプDによれば、指示器2に取り付けられた3軸加速度センサによって、指示器2の位置及び姿勢を取得することができる。また、指示器2に、3軸加速度センサに加えて、ジャイロセンサ及び地磁気センサを取り付け、それらの出力を組み合わせて解析することによって、高精度で指示器2の位置及び姿勢を取得することができる。
【0047】
ここでは、位置・姿勢センサ4として、タイプBが用いられる。この場合、例えば、指示器2に、当該指示器2の位置及び姿勢を3Dカメラの撮像画像から特定するためのマーカが付されてもよい。
【0048】
<特定制御スイッチ5>
特定制御スイッチ5は、ガン距離一定スイッチ5aと、ガン面直スイッチ5bとを備える。例えば、ガン距離一定スイッチ5aを回すとガン距離一定制御ON信号が出力され、ガン距離一定スイッチ5aを戻すと、ガン距離一定制御ON信号が消滅する。また、ガン面直スイッチ5bを回すとガン面直制御ON信号が出力され、ガン面直スイッチ5bを戻すと、ガン面直制御ON信号が消滅する。
【0049】
<塗装ガン6>
塗装ガン6は、特に限定されない。ここでは、塗装ガン6は、塗料の噴射量を変えることができる。塗料は、例えば、液体、気体、粉体、及びこれらの1以上の混合物のいずれであってもよい。
【0050】
<記憶器7>
記憶器7は、ワークWの3次元データを記憶する。また、記憶器7は、システム制御器3がロボット1の動作及び塗装ガン6の塗料の噴射を制御するためにロボット1及び塗装ガン6にそれぞれ出力するロボット制御信号及び塗装ガン制御信号を時系列で記憶する。記憶器7は、ここでは、システム制御器3を構成するメモリMeで構成されていて、システム制御器3の内部に構築されている。
【0051】
記憶器7は、システム制御器3の外部に独立した要素として設けられてもよい。例えば、記憶器7は、ティーチングペンダントで構成されていてもよい。
【0052】
{制御系統の構成}
図3は、図1の塗装ロボットシステム100の制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0053】
図3を参照すると、塗装ロボットシステム100は、さらに、モード切替スイッチ31を備える。モード切替スイッチ31は、例えば、図1に示されたシステム制御器3が備えるディスプレイに表示される。モード切替スイッチ31は、記憶モードと再生モードを互いに切り替えるモード切替信号をシステム制御器3に出力する。
【0054】
指示器2は、トリガ2aの押し込み量に応じた塗装ガン6における塗料の噴射量を表す噴射信号をシステム制御器3に出力する。
【0055】
位置・姿勢センサ4は、検出した指示器2の位置及び姿勢を表す位置・姿勢信号をシステム制御器3に出力する。
【0056】
特定制御スイッチ5は、ガン距離一定スイッチ5a及びガン面直スイッチ5bの操作に応じて、それぞれ、ガン距離一定制御ON信号及びガン面直制御ON信号をシステム制御器3に出力する。
【0057】
ロボット1は、入力されるロボット制御信号及び塗装ガン制御信号に従って、それぞれ、ロボット1及び塗装ガン6の動作を制御するロボット制御器9を備える。
【0058】
システム制御器3は、位置・姿勢センサ4から入力される位置・姿勢信号に基づいてロボット制御信号をロボット1のロボット制御器9に出力し、ロボット1の動作を介して、塗装ガン6の位置及び姿勢を制御する。
【0059】
また、システム制御器3は、指示器2から入力される噴射信号に基づいて塗装ガン制御信号をロボット1のロボット制御器9に出力し、ロボット制御器9を介して、塗装ガン6の塗料の噴射のON/OFF及び噴射量を制御する。
【0060】
また、システム制御器3は、ロボット1の動作を基本制御している最中に、特定制御スイッチ5からガン距離一定制御ON信号又はガン面直制御ON信号が入力されると、ガン距離一定制御又はガン面直制御を行う、すなわち、ガン距離一定制御又はガン面直制御をONする。
【0061】
さらに、システム制御器3は、モード切替スイッチ31からモード切替信号が入力されると、ロボット1の動作における記憶モードと再生モードとを相互に切り替える。そして、システム制御器3は、記憶モードにおいては、自身が出力するロボット制御信号及び塗装ガン制御信号を時系列で記憶器7に記憶させる。そして、システム制御器3は、再生モードにおいて、記憶器7から時系列で記憶されたロボット制御信号及び塗装ガン制御信号を順次読み出してロボット1及び塗装ガン6に出力する。
【0062】
<ガン距離一定制御>
次に、ガン距離一定制御について説明する。図4は、ガン距離一定制御の概要を示す斜視図である。
【0063】
図4を参照すると、ガン距離一定制御では、ロボット1のEF装着部1aが、ワークWの被塗装面fから一定の距離を維持するように、ロボット1の動作が制御される。ロボット1のEF装着部1aが、ワークWの被塗装面fから一定の距離に維持される結果、塗装ガン6が、ワークWの被塗装面fから一定の距離に維持される。その一方、ロボット1の塗装ガン6が装着されたEF装着部1aは、EF装着部1aの向きに垂直な方向においては、指示器2の位置に応じた位置に移動するよう制御される。ガン距離一定制御は、指示器2のトリガ2aが押し込まれている期間に渡って行われる。
【0064】
<ガン面直制御>
次に、ガン面直制御について説明する。図5は、ガン面直制御の概要を示す平面図である。図5において、EF装着部1aにおける点線は、指示器2の姿勢に応じた塗装ガン6の姿勢を示し、実線はガン面直制御された塗装ガン6の姿勢を示す。指示器2の姿勢に応じた塗装ガン6の姿勢は、基本制御における姿勢を意味する。
【0065】
図5を参照すると、ガン面直制御では、塗装ガン6の向きが、ワークWの被塗装面fに対して垂直になるように、ロボット1の動作が制御される。その一方、塗装ガン6のEF装着部1aの位置P0は制約されず、塗装ガン6は任意の方向に移動可能である。ガン面直制御は、指示器2のトリガ2aが押し込まれている期間に渡って行われる。
【0066】
<ワークWのCADデータの設定>
図6は、ワークWのCADデータのロボット座標系への設定の一例を示す模式図である。
【0067】
図6を参照すると、例えば、ワークWの3次元データとして、ワークWのCADデータがシステム制御器3の記憶器7に格納される。その際に、ロボット1の座標系に、原点Oから見たワークWの座標が設定される。この原点から見たワークWの位置は、例えば、メジャー等で実測される。
【0068】
[動作]
次に、以上のように構成された塗装ロボットシステム100の動作を説明する。塗装ロボットシステム100の動作は、塗装ロボットシステム100の制御方法を意味する。
【0069】
{記憶モード}
まず、記憶モードについて説明する。記憶モードでは、システム制御器3が、以下に述べる動作において、自身が出力するロボット制御信号及び塗装ガン制御信号を時系列で記憶器7に記憶させる。
【0070】
<基本制御>
図2及び図3を参照すると、操作者11は、まず、システム制御器3のディスプレイに表示されたモード切替スイッチ31を操作して、ロボット1の動作を記憶モードにする。そして、操作者11は、操作位置に位置して、ワークW及び塗装ガン6を見ながら、指示器2を一方の手に持ち、塗装ガン6を操作すべく指示器2を動かす。この指示器2の位置及び姿勢を位置・姿勢センサ4が検出し、その検出信号である位置・姿勢信号に応じて、システム制御器3が、EF装着部1a、ひいては、塗装ガン6の位置及び姿勢が指示器2の位置及び姿勢に応じた位置及び姿勢になるようロボット1の動作を制御する。
【0071】
そして、操作者11が指示器2のトリガ2aを指で押し込むと、システム制御器3が、指示器2からの噴射信号に応じた噴射量の塗料10を塗装ガン6に噴射させる。システム制御器3は、指示器2のトリガ2aが押し込まれている期間に渡って、次に述べる特定制御を行う。
【0072】
<特定制御>
図7は、ロボット1の特定制御の内容の一例を示すフローチャートである。図7を参照すると、システム制御器3は、上述の基本制御の中で特定制御を行う。
【0073】
特定制御では、まず、ガン面直スイッチ5bがON信号を出力しているか否か判定する(ステップS1)。ガン面直スイッチ5bがON信号を出力していない場合(ステップS1でNO)、ステップS3に進む。
【0074】
ガン面直スイッチ5bがON信号を出力している場合(ステップS1でYES)、ガン面直処理(ガン面直制御)を行う(ステップS2)。
【0075】
次いで、システム制御器3は、ガン距離一定スイッチ5aがON信号を出力しているか否か判定する(ステップS3)。ガン距離一定スイッチ5aがON信号を出力していない場合(ステップS3でNO)、この特定制御を終了する。
【0076】
ガン距離一定スイッチ5aがON信号を出力している場合(ステップS3でYES)、ガン距離一定処理(ガン距離一定制御)を行う(ステップS4)。
【0077】
そして、システム制御器3は、この特定制御を終了する。
【0078】
システム制御器3は、この特定制御を、所定の制御間隔で繰り返す。
【0079】
<ガン距離一定制御>
図8は、ロボット1のガン距離一定制御の内容の一例を示すフローチャートである。図9は、ガン距離一定制御の内容及び塗装ガン6の位置に関する補正許容位置範囲21を示す平面図である。ロボット1のガン距離一定制御は、ロボット1のガン距離一定処理を意味する。
【0080】
図8及び図9を参照すると、ガン距離一定制御では、システム制御器3は、まず、位置・姿勢センサ4から入力される位置・姿勢信号からロボット1のEF装着部1aの位置P0及び向きを取得する(ステップS11)。ここで、EF装着部1aの向きは、既述のように、EF装着部1aに装着された塗装ガン6の向きと一致する。塗装ガン6の向きは、適宜、定義される。塗装ガン6の向きは、例えば、塗料の主吐出方向、塗料の吐出口の中心線の延在方向等と定義され得る。エンドエフェクタである塗装ガン6は、その向きがEF装着部1aのエンドエフェクタの向きを表す軸線に一致するように装着される。ここでは、塗装ガン6は、EF装着部1aの捩じり回転軸線に一致するように装着される。従って、EF装着部1aの向きは、EF装着部1aの捩じり回転軸線の延在方向を意味する。
【0081】
次いで、システム制御器3は、EF装着部1aの捩じり回転軸線とワークWの被塗装面fとの交点P1の位置を求める(ステップS12)。これにより、被塗装面fにおけるEF装着部1aとの距離の基準となる点P1が特定される。
【0082】
次いで、システム制御器3は、補正条件が満たされるか否か判定する(ステップS13)。ここで、「補正」は、塗装ガン6の基本制御における目標位置及び目標姿勢から特定制御であるガン距離一定制御及びガン面直制御における目標位置及び目標姿勢への変更を指す。エンドエフェクタである塗装ガン6がワークWの被塗装面fから大きく離れて位置し、あるいは、ワークWの被塗装面fから大きく外れた方向を向いている場合、操作者11がガン距離一定制御又はガン面直制御を行う意志がないと想定される。そこで、本実施形態では、操作者11のそのような意志に沿うために、補正が、所定の補正条件を満たす場合に制限される。
【0083】
補正条件は、塗装ガン6の位置に関する補正条件と塗装ガン6の姿勢に関する補正条件とを含む。
【0084】
図9を参照すると、システム制御器3には、EF装着部1aの位置に関する補正許容位置範囲21が設定されている。ここで、「設定されている」とは記憶器7に記憶されていることを意味する。補正許容位置範囲21は、適宜、設定される。補正許容位置範囲21は、ここでは、ワークWの被塗装面fから所定の距離範囲にある立体の領域として設定されている。所定の距離範囲は、所定距離Lcを含む。立体の領域は、ここでは直方体状である。システム制御器3は、位置・姿勢センサ4から入力される位置・姿勢信号から取得したEF装着部1aの位置P0が補正許容位置範囲21にある場合、EF装着部1aの位置に関する補正条件が満たされると判定する。
【0085】
図10は、EF装着部1aの向きに関する補正許容角度範囲を示す平面図である。図10を参照すると、システム制御器3には、EF装着部1aの向きに関する補正許容角度範囲22が設定されている。補正許容角度範囲22は、適宜、設定される。ここでは、補正許容角度範囲22は、ワークWの被塗装面fの法線23に対して所定の角度範囲にある円錐状の領域として設定されている。システム制御器3は、ワークWの被塗装面fの交点P1における被塗装面fに対するEF装着部1aの回動軸線の交差角と法線23との差角θを求め、当該差角θが補正許容角度範囲にある場合、EF装着部1aの姿勢に関する補正条件が満たされると判定する。
【0086】
システム制御器3は、これらのEF装着部1aの位置に関する補正条件及び姿勢に関する補正条件が満たされると判定すると、補正条件が満たされると判定する。
【0087】
システム制御器3は、補正条件が満たされないと判定する(ステップS13でNO)と、ガン距離一定制御を終了する。
【0088】
一方、システム制御器3は、補正条件が満たされると判定する(ステップS13でYES)と、EF装着部1aの回動軸線上の交点P1から所定距離Lcだけ離れた点(以下、一定距離点という)P2の位置を求める(ステップS14)。所定距離Lcは、塗装ガン6が被塗装面fを塗装するのに好適な距離となる、EF装着部1aと被塗装面fとの距離であり、操作者11の経験、実験、シミュレーション、計算等によって決定される。
【0089】
次いで、システム制御器3は、EF装着部1aを一定距離点P2に位置させる(ステップS15)。
【0090】
その後、システム制御器3は、ガン距離一定制御を終了する。
【0091】
<ガン面直制御>
図11は、ロボットのガン面直制御の内容の一例を示すフローチャートである。ガン面直制御は、ガン面直処理を意味する。
【0092】
図11を参照すると、ガン面直制御では、システム制御器3は、まず、位置・姿勢センサ4から入力される位置・姿勢信号からロボット1のEF装着部1aの姿勢として、EF装着部1aの向きを取得する(ステップS21)。
【0093】
次いで、システム制御器3は、補正条件が満たされるか否か判定する(ステップS22)。この補正条件が満たされるか否かの判定は、上述のガン距離一定制御の場合と同じであるので、その説明を省略する。
【0094】
システム制御器3は、補正条件が満たされないと判定する(ステップS22でNO)と、ガン面直制御を終了する。
【0095】
一方、システム制御器3は、補正条件が満たされると判定する(ステップS22でYES)と、ワークWの被塗装面fに垂直になるEF装着部1aの姿勢を求める(ステップS23)。この処理は、EF装着部1aの姿勢のデータとワークWのCADデータとを用いて、適宜、行うことができる。ここでは、例えば、ワークWの被塗装面fの法線ベクトルを入力として、下記のように処理される。なお、下記処理において、ベクトル[0 1 0]は、基準となる単位ベクトルを示す。
【0096】
A.ベクトル[0 1 0]をロボット1のEF装着部1aの向きに向けるクォータニオンを求める。
【0097】
B.Aの処理で求めたクォータニオンを回転行列に変換する。
【0098】
C.ベクトル[0 1 0]を被塗装面fの法線ベクトルに向けるクォータニオンを求める。
【0099】
D.Cの処理で求めたクォータニオンを回転行列に変換する。
【0100】
E.Bの処理で求めた回転行列を、Dの処理で求めた回転行列に変換する変換行列を求める。
【0101】
F.Eの処理で求めた変換行列をロボット1のEF装着部1aの姿勢に掛け合わせ、補正後のロボット1のEF装着部1aの姿勢である面直姿勢とする。
【0102】
次いで、システム制御器3は、補正後のEF装着部1aの位置及び姿勢について、補正条件が満たされるか否か判定する(ステップS24)。この補正条件が満たされるか否かの判定は、上述のガン距離一定制御の場合と同じであるので、その説明を省略する。
【0103】
システム制御器3は、補正条件が満たされないと判定する(ステップS24でNO)と、ガン面直制御を終了する。
【0104】
一方、システム制御器3は、補正条件が満たされると判定する(ステップS24でYES)と、EF装着部1aの姿勢を、上記求めた面直姿勢に補正する(ステップS25)。
【0105】
その後、システム制御器3は、ガン面直制御を終了する。
【0106】
{再生モード}
図2及び図3を参照すると、操作者11は、システム制御器3のディスプレイに表示されたモード切替スイッチ31を操作して、ロボット1の動作を再生モードにする。すると、システム制御器3が、記憶器7から、時系列で記憶されたロボット制御信号及び塗装ガン制御信号を順次読み出してロボット1及び塗装ガン6に出力する。これにより、記憶モードにおいて、熟練の操作者によって1つのワークに対して行われた塗装作業が、同じ仕様の多数のワークについて自動的に行われる。
【0107】
以上に説明したように、本実施形態の塗装ロボットシステム100によれば、塗装ガン6とワークWの被塗装面fとの距離を一定にする制御及び塗装ガン6の向きをワークWの被塗装面fに垂直にする制御の少なくともいずれかを行う状態において、塗装を行いながら塗装ガン6の移動経路を決めることができる。
【0108】
また、熟練の操作者によって1つのワークに対して行われた塗装作業を、同じ仕様の多数のワークについて自動的に行うことができる。
【0109】
また、操作者11が、指示器2によって塗装ガン6の塗料の噴射を操作しながら指示器2を塗装ガン6に模して動かすことによって、実際の塗装ガン6を手に持って塗装するようにして、ワークへの塗装を行うことができる。
【0110】
{変形例1}
図12は、変形例1の特定制御の内容の一例を示す平面図である。図1を参照すると、変形例1では、ワークWの被塗装面fが、例えば、曲面である。また、システム制御器3が、特定制御として、ガン距離一定制御及びガン面直制御を行う。これ以外の点は、実施形態1と同様である。
【0111】
このような変形例1によっても、実施形態1と同様の効果が得られる。また、実施形態1及び変形例1から明らかなように、ワークWの被塗装面fの形状は特に限定されない。
【0112】
(実施形態2)
図13は、実施形態2の特定制御の内容の一例を示す平面図である。図13を参照すると、実施形態2では、実際のワークWsについて、仮想のワークWvが設定されている。実際のワークWsは、粗い被塗装面fsを有する。仮想のワークWvは、実際のワークWsの被塗装面fsを均した仮想の被塗装面fvを有し、且つ、この仮想の被塗装面fv以外の部分が実際のワークWsの表面に沿うように設定されている。従って、実際のワークWs及び仮想のワークWvを含む概念として「ワークW」が存在する。この「ワークW」の「被塗装面」を「制御被塗装面f」と称する。従って、実施形態1及び変形例1では、実際のワークWの被塗装面が制御被塗装面fである。
【0113】
仮想のワークWvは、例えば、CADデータで特定され、3次元データとして、記憶器7に記憶される。そして、システム制御器3が、仮想の被塗装面fvを制御被塗装面fとして、特定制御としてのガン距離一定制御及びガン面直制御を行う。これ以外の点は、実施形態1と同様である。
【0114】
実際のワークWsの実際の被塗装面fsが粗い場合において、当該実際の被塗装面fsに対する塗装ガン6の距離又は角度に基づいて、第1制御又は第2制御を行うと、塗装ガン6の位置及び姿勢が実際の被塗装面fsの状態に追随しきれなくなって乱れてしまい、好ましい塗装状態が得られなくなる可能性がある。
【0115】
本実施形態2によれば、実際の被塗装面fsを均した仮想の被塗装面fvがワークWに設定され、当該仮想の被塗装面fsに対して第1制御又は第2制御が行われるので、塗装ガン6の位置及び姿勢が仮想の被塗装面fsの状態に追随し、塗装ガン6の位置及び姿勢が乱れるのを防止することができる。
【0116】
{変形例2}
図14は、変形例2の特定制御の内容の一例を示す平面図である。図14を参照すると、変形例2では、仮想のワークWvの仮想の被塗装面fvが、実際のワークWsの実際の被塗装面fsを均した形状に設定されるだけはなく、仮想の被塗装面fvが、第2制御において、実際の被塗装面fsに所望の方角から塗装ガン6によって塗料が吹き付けられるように設定される。具体的には、仮想の被塗装面fvの法線が前記所望の方角を向くように当該仮想の被塗装面fvが設定される。これ以外の点は、実施形態2と同様である。
【0117】
このような変形例2によれば、実際の被塗装面fsに所望の方角から塗装ガン6によって塗料が吹き付けられるので、所望の塗装状態を得ることができる。
【0118】
(その他の実施形態)
上記実施形態において、記憶モード及び再生モードを省略し、ロボット制御信号及び塗装ガン制御信号を記憶しない他は記憶モードと同様の通常の動作モードのみ有するように塗装ロボットシステム100を構成してもよい。
【0119】
上記実施形態において、放出加工が、塗装以外の放出加工であってもよい。そのような放出加工として、例えば、洗浄ノズルからの洗浄液の噴射による洗浄、噴射ノズルからの投射材粒体と空気又は水との混合物の噴射によるショットブラスト又はショットピーニング、電極からの電流の放出によるアーク溶接、又は、バーナーからの火炎の放出による炙り加工が挙げられる。
【0120】
上記実施形態において、指示部とセンサ部とが一体化された操作器8を用いてもよい。そのような操作器8として、ジョイスティック、ロボット1と相似の形状を有するマスターロボットアーム、専用の操作器等が例示される。
【0121】
前記システム制御器は、前記エンドエフェクタが前記物質又はエネルギーを放出するように前記操作器が操作されている期間に渡って、前記EF距離一定制御及び前記EF面直制御の少なくともいずれかを行うように構成されていてもよい。
【0122】
この構成によれば、エンドエフェクタが物質又はエネルギーを放出しない場合には、エンドエフェクタを自由な移動経路及び姿勢の少なくともいずれかで移動させることができる。
【0123】
(実施形態による効果)
以上に説明したように、上記実施形態1及び2においては、エンドエフェクタ6を備えたロボット1と、操作部8と、前記操作部8の操作に基づいてエンドエフェクタ6を移動させ、当該エンドエフェクタ6にワークWの被加工面に対して非接触で加工を行わせる制御部3と、を備え、前記制御部3は、前記操作部8の操作に基づいてエンドエフェクタ6を移動させる際に、前記エンドエフェクタ6と、前記ワークWの被加工面fs又は前記ワークWの仮想の被加工面fvである、制御被加工面fとの距離を一定にする第1制御と、前記制御被加工面fに対する前記エンドエフェクタ6の角度を一定角度にする第2制御とのうちの少なくとも一方を実行する。
【0124】
この構成によれば、第1制御及び第2制御の少なくともいずれかを行いながら、操作部8の操作に基づいてエンドエフェクタ6を移動させ、当該エンドエフェクタ6にワークWの被加工面fsに対して非接触で加工を行わせることができるので、第1制御及び第2制御の少なくともいずれかによる実際のワークWへの加工状態を確認しながらエンドエフェクタ6の移動経路を決定することができる。その結果、操作者11が望ましいと思う加工状態を得ることができるため、エンドエフェクタ6を予め設定された経路で移動させながら、第1制御及び第2制御の少なくともいずれかを行う場合に比べて、実際の加工状態を向上させることができる。
【0125】
前記制御部3は、前記エンドエフェクタ6が前記ワークWの被加工面fsに加工を行う間、前記第1制御及び前記第2制御の少なくともいずれかを行ってもよい。
【0126】
この構成によれば、エンドエフェクタ6がワークWの被加工面fsを加工しない場合には、エンドエフェクタ6を自由な移動経路及び姿勢の少なくともいずれかで移動させることができる。
【0127】
前記操作部8は、前記エンドエフェクタ6の位置及び姿勢を示す位置姿勢指示部2と、前記位置姿勢指示部2の位置及び姿勢を検出する位置姿勢検出部4と、前記加工を操作するための加工指示部2aと、を備えてもよい。
【0128】
この構成によれば、エンドエフェクタ6の位置及び姿勢が、位置姿勢検出部4によって検出される位置姿勢指示部2の位置及び姿勢に応じた位置及び姿勢になるとともに加工指示部2aの操作に応じてエンドエフェクタ6による加工が制御されるので、操作者11は、加工指示部2aによってエンドエフェクタ6による加工を操作しながら位置姿勢指示部2をエンドエフェクタ6に模して動かすことによって、実際のエンドエフェクタ6を手に持って加工するようにして、ワークWへの加工を行うことができる。
【0129】
前記制御部3は、前記ワークWの3次元データを記憶しており、前記制御部3は、前記ワークWの3次元データと前記エンドエフェクタ6の位置とに基づいて前記第1制御を行い、又は、前記ワークWの3次元データと前記エンドエフェクタ6の姿勢とに基づいて前記第2制御を行ってもよい。ここで、「3次元データ」として、例えば、CADデータ、実測データ等が挙げられる。
【0130】
この構成によれば、ワークWの3次元データを用いた演算により第1制御及び第2制御を行うことができる。
【0131】
前記第1制御及び前記第2制御にそれぞれ用いられる前記エンドエフェクタ6の位置及び前記エンドエフェクタ6の姿勢が、それぞれ、前記位置姿勢検出部4が検出した前記位置姿勢指示部2の位置及び姿勢であり、前記第1制御及び前記第2制御における制御被加工面fが、前記ワークWの仮想の被加工面fvであってもよい。
【0132】
ワークWの実際の被加工面fsが粗い場合において、当該実際の被加工面fsに対するエンドエフェクタ6の距離又は角度に基づいて、第1制御又は第2制御を行うと、エンドエフェクタ6の位置及び姿勢が実際の被加工面fsの状態に追随しきれなくなって乱れてしまい、好ましい加工状態が得られなくなる可能性がある。この構成によれば、例えば、実際の被加工面fsを均した仮想の被加工面fvをワークWに設定すると、当該仮想の被加工面fsに対して第1制御又は第2制御が行われるので、エンドエフェクタ6の位置及び姿勢が仮想の被加工面fsの状態に追随し、エンドエフェクタ6の位置及び姿勢が乱れるのを防止することができる。
【0133】
前記ロボットシステム100は、前記エンドエフェクタ6を移動させ且つ当該エンドエフェクタ6に前記加工を行わせるために前記制御部3が出力する制御信号を記憶する記憶部7をさらに備え、前記制御部3は記憶モード及び再生モードを有し、前記制御部3は、前記記憶モードにおいて、前記制御信号を時系列で前記記憶部7に記憶させ、前記再生モードにおいて、前記記憶部7に記憶された前記制御信号を前記ロボット1及び前記エンドエフェクタ6に出力してもよい。
【0134】
この構成によれば、記憶モードにおいて、熟練の操作者11によって1つのワークWを加工し、その後、再生モードにおいて、同じ仕様の多数のワークWについて、自動的に熟練の操作者11と同様に加工を行うことができる。
【0135】
前記制御部3は、前記エンドエフェクタ6が前記制御被加工面fから所定の距離範囲に位置し、且つ、前記制御被加工面fに対する前記エンドエフェクタ6の向きが所定の向き範囲にある場合に、前記第1制御及び前記第2制御の少なくともいずれかを行ってもよい。
【0136】
エンドエフェクタ6がワークWの被加工面fsから大きく離れて位置し、あるいは、ワークWの被加工面fsから大きく外れた方向を向いている場合、操作者11が第1制御又は第2制御を行う意志がないと想定される。この構成によれば、そのような場合に、操作者11の意図に適切に沿うことができる。
【0137】
前記エンドエフェクタ6による前記加工が、前記エンドエフェクタ6からの加工用の物質又はエネルギーの前記ワークの被加工面への放出による加工であってもよい。
【0138】
この構成によれば、エンドエフェクタ6からの加工用の物質又はエネルギーの前記ワークWの被加工面fsへの放出による加工において、操作者11が望ましいと思う加工状態を得ることができる。
【0139】
前記エンドエフェクタ6からの前記加工用の物質又はエネルギーの前記ワークWの被加工面fsへの放出による加工が、塗装ガンからの液状又は粉状の塗料の噴射による塗装、洗浄ノズルからの洗浄液の噴射による洗浄、噴射ノズルからの投射材粒体と空気又は水との混合物の噴射によるショットブラスト又はショットピーニング、電極からの電流の放出によるアーク溶接、及びバーナーからの火炎の放出による炙り加工のいずれかであってもよい。
【0140】
この構成によれば、これらの加工において、操作者11が望ましいと思う加工状態を得ることができる。
【0141】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0142】
1 ロボット
1a EF装着部
2 指示器
2a トリガ
3 システム制御器
4 位置・姿勢センサ
5 特定制御スイッチ
6 塗装ガン
7 記憶器
8 操作器
9 ロボット制御器9
10 塗料
21 補正許容位置範囲
22 補正許容角度範囲
23 法線
31 モード切替スイッチ
100 塗装ロボットシステム
f 被塗装面、制御被塗装面
Lc 所定の一定距離
Me メモリ
O 原点
P0 EF装着部の位置
P1 交点
P2 一定距離点
Pr プロセッサ
W ワーク
θ 差角
図1
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