(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/20 K
(21)【出願番号】P 2022510296
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013851
(87)【国際公開番号】W WO2021192187
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】石井 剛史
(72)【発明者】
【氏名】木原 聖一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 究
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-123248(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179313(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と,
前記動力源から動力を受けて作動する複数のアクチュエータと,
前記複数のアクチュエータに対する前記動力の分配量を指示する複数の操作レバーと,
前記複数の操作レバーの操作状態を検出する複数の操作状態検出装置と,
前記動力源が出力する動力を制御するコントローラとを備え,
前記コントローラは,前記複数の操作状態検出装置によって検出された前記複数の操作レバーの操作状態に基づいて,前記複数の操作レバーの少なくとも1つか操作されている状態から前記複数の操作レバーの全てが操作されていない無操作状態に移行し前記複数の操作レバーの無操作時間が設定時間を経過したときに,前記動力源の動力低減制御を行い,前記動力低減制御を行っている状態で前記複数の操作レバーの少なくとも1つが操作されたときは前記動力低減制御を解除する建設機械において,
前記コントローラは,
前記少なくとも1つの操作レバーが前記無操作状態に移行するまでの操作時間が予め設定した監視時間より長い場合には,前記設定時間を第1設定時間とし,
前記少なくとも1つの操作レバーが前記無操作状態に移行するまでの操作時間が前記予め設定した監視時間よりも短い場合には,前記設定時間を前記第1設定時間よりも短い第2設定時間とすることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において,
前記コントローラは,
前記複数の操作状態検出装置によって検出された前記複数の操作レバーの操作状態に基づいて,前記複数の操作レバーが前記無操作状態であることを示す無操作状態情報と前記動力低減制御を行っていることを示す動力低減制御状態情報を生成し,
前記無操作状態情報と前記動力低減制御状態情報に基づいて前記動力低減制御を行っていない非動力低減時間を算出し,前記非動力低減時間を前記少なくとも1つの操作レバーの操作時間として用いることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において,
前記コントローラは,
前記少なくとも1つの操作レバーが操作されている状態から前記無操作状態に移行したとき,前記少なくとも1つの操作レバーが前記監視時間の間に前記無操作状態になった場合に,前記少なくとも1つの操作レバーの操作は誤操作であると判定することを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において,
下部走行体と,前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と,前記上部旋回体の前部に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機とを備え,
前記複数のアクチュエータは,前記上部旋回体を下部走行体に対して旋回させる旋回モータと,前記フロント作業機を駆動する第1,第2及び第3フロントアクチュエータとを含み,
前記複数の操作レバーは,前記第1及び第2フロントアクチュエータを動作させる操作レバーと,前記旋回モータと前記第3フロントアクチュエータを動作させる操作レバーを含むことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において,
前記動力源はエンジンと油圧ポンプを含み,
前記動力源は,前記エンジンによって前記油圧ポンプを駆動することで前記動力を発生させ,
前記コントローラは,前記エンジンの回転数を低減することで前記動力低減制御を行うことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1に記載の建設機械において,
前記動力源は電力供給装置と電動モータと油圧ポンプを含み,
前記動力源は,前記電力供給装置からの電力供給によって前記電動モータを駆動し,前記電動モータによって前記油圧ポンプを駆動することで前記動力を発生させ,
前記コントローラは,前記電動モータへの電力供給を低減して前記電動モータの回転数を低減することで前記動力低減制御を行うことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1に記載の建設機械において,
前記動力源は電力供給装置を含み,
前記アクチュエータは電動モータを含む電動アクチュエータであり,
前記動力源は,前記電力供給装置からの電力供給によって前記電動アクチュエータを駆動し,
前記コントローラは,前記電力供給装置から前記電動モータに供給される電力を低減して前記電動モータの回転数を低減することで前記動力低減制御を行うことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械に係わり,特に,操作レバーの無操作時に動力源が出力する動力を低減する動力低減制御を行う建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械において,動力源であるエンジンの燃料消費量を低減し,消費エネルギーを節約するため,操作レバーの無操作時にエンジンの回転数を低減してエンジンが出力する動力を低減するオートアイドル制御と呼ばれる動力低減制御を行う技術が,例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように操作レバーの無操作時に動力源であるエンジンが出力する動力を低減する動力低減制御(オートアイドル制御)を行う建設機械においては,操作レバーが操作されたときに動力低減制御を解除して通常の動力状態に復帰できるようにするのが一般的である。しかし,そのように動力低減制御を行った場合は,誤って操作レバーに手が当たったときなど,動力低減制御を解除する意図はないのに制御を解除し通常の動力状態に復帰してしまう。すなわち,本来エンジンを動力が低減された状態から通常の状態へと復帰させる必要がないにも拘らず,エンジンの動力低減制御を解除してしまうので,エンジンの消費エネルギーを節約する効果が低減するという問題がある。
【0005】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり,その目的は,操作レバーの無操作時には動力低減制御を行い,かつ誤操作により操作レバーを動かしてしまった場合に動力源の消費動力を抑制し,動力源の消費エネルギーを低減することができる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため,本発明は,動力源と,前記動力源から動力を受けて作動する複数のアクチュエータと,前記複数のアクチュエータに対する前記動力の分配量を指示する複数の操作レバーと,前記複数の操作レバーの操作状態を検出する複数の操作状態検出装置と,前記動力源が出力する動力を制御するコントローラとを備え,前記コントローラは,前記複数の操作状態検出装置によって検出された前記複数の操作レバーの操作状態に基づいて,前記複数の操作レバーの少なくとも1つか操作されている状態から前記複数の操作レバーの全てが操作されていない無操作状態に移行し前記複数の操作レバーの無操作時間が設定時間を経過したときに,前記動力源の動力低減制御を行い,前記動力低減制御を行っている状態で前記複数の操作レバーの少なくとも1つが操作されたときは前記動力低減制御を解除する建設機械において,前記コントローラは,前記少なくとも1つの操作レバーが前記無操作状態に移行するまでの操作時間が予め設定した監視時間より長い場合には,前記設定時間を第1設定時間とし,前記少なくとも1つの操作レバーが前記無操作状態に移行するまでの操作時間が前記予め設定した監視時間よりも短い場合には,前記設定時間を前記第1設定時間よりも短い第2設定時間とするものとする。
【0007】
このようにコントローラは,少なくとも1つの操作レバーが無操作状態に移行するまでの操作時間が予め設定した監視時間よりも短い場合には,設定時間を第1設定時間よりも短い第2設定時間とする。これにより誤操作により操作レバーを動かしてしまったとき,一旦は動力低減制御が解除され通常の動力状態に復帰するが,その後短時間で動力低減状態に戻る。このため誤操作により操作レバーを動かしてしまった場合に動力源の消費動力を抑制し,動力源の消費エネルギーを低減することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,操作レバーの無操作時には動力低減制御を行い,かつ誤操作により操作レバーを動かしてしまった場合に動力源の消費動力を抑制し,動力源の消費エネルギーを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態における建設機械(油圧ショベル)の外観を示す図である。
【
図2】第1の実施形態における駆動システムの構成を示す図である。
【
図3】第1の実施形態における操作レバー装置の操作レバーの可動方向と可動方向の定義を説明する図である。
【
図4】第1の実施形態における駆動システムの操作系の構成を示す図である。
【
図5】第1の実施形態におけるコントローラの機能を示すブロック図である。
【
図6】第1の実施形態における動力演算部の機能を示すブロック図である。
【
図7】第1の実施形態における第1レバー操作状態判定部の演算フローを示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態における第2レバー操作状態判定部の演算フローを示すフローチャートである。
【
図9】第1の実施形態におけるセンサ値と方向制御弁のメータイン開口面積の関係を示し,合わせて操作圧の閾値の定義を示す図である。
【
図10】第1の実施形態における第1レバー無操作時間計測部の演算フローを示すフローチャートである。
【
図11】第1の実施形態における第2レバー無操作時間計測部の演算フローを示すフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態における非動力低減時間計測部の演算フローを示すフローチャートである。
【
図13】第1の実施形態における動力低減判定部の演算フローを示すフローチャートである。
【
図14】第1の実施形態におけるレバーを操作した場合の操作圧と目標回転数の推移例を示すタイムチャートである。
【
図15】第2の実施形態における駆動システムの構成を示す図である。
【
図16】第2の実施形態におけるコントローラの機能を示すブロック図である。
【
図17】第2の実施形態における動力演算部の機能を示すブロック図である。
【
図18】第2の実施形態における動力低減判定部の演算フローを示すフローチャートである。
【
図19】第3の実施形態における駆動システムの構成を示す図である。
【
図20】第3の実施形態における駆動システムの操作系の構成を示す図である。
【
図21】第3の実施形態におけるレバーの
前後方向の傾きと電動モータの目標回転数の関係を示す図である。
【
図22】第3の実施形態におけるコントローラの機能を示すブロック図である。
【
図23】第3の実施形態におけるセンサ信号変換部が行う変換処理を説明する図である。
【
図24】第3の実施形態における動力演算部の機能を示すブロック図である。
【
図25】第3の実施形態における第1レバー操作状態判定部の演算フローを示すフローチャートである。
【
図26】第3の実施形態における第2レバー操作状態判定部の演算フローを示すフローチャートである。
【
図27】第3の実施形態における動力低減判定部の演算フローを示すフローチャートである。
【
図28】第1の実施形態の変形例における信号圧生成弁を備えた操作状態検出装置を示す図である。
【
図29】第1の実施形態の他の変形例における信号圧生成弁を備えた操作状態検出装置を示す図である。
【
図30】第1の実施形態における駆動システムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下,本発明の実施形態を図面に従い説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について,
図1から
図14を用いて説明する。
【0012】
~構成~
(油圧ショベル)
まず,本発明の第1の実施形態における建設機械の代表例である油圧ショベルについて説明する。
【0013】
図1は,本実施の形態における油圧ショベルの外観を示す図である。
【0014】
油圧ショベルは,下部走行体101と,下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体102と,上部旋回体の前部に上下方向に回動可能に取り付けられたスイング式のフロント作業機104を備え,フロント作業機104は,ブーム111,アーム112,バケット113から構成されている。上部旋回体102と下部走行体101は旋回輪215によって回転自在に接続され,上部旋回体102は下部走行体101に対し旋回モータ43の回転によって旋回可能である。上部旋回体102の前部にはスイングポスト103が取付けられ,このスイングポスト103にフロント作業機104が上下動可能に取付けられている。スイングポスト103はスイングシリンダ(図示せず)の伸縮により上部旋回体102に対して水平方向に回動可能であり,フロント作業機104のブーム111,アーム112,バケット113は,第1,第2,第3フロントアクチュエータであるブームシリンダ13,アームシリンダ23,バケットシリンダ33の伸縮により上下方向に回動可能である。下部走行体101の中央フレームには,右左の走行装置105a,105bと,ブレードシリンダ3hの伸縮により上下動作を行うブレード106が取付けられている。右左の走行装置105a,105bはそれぞれ駆動輪210a,210b,アイドラ211a,211b,履帯212a,212bを備え,右左の走行モータ3f,3gの回転を駆動輪210a,210bに伝え,履帯212a,212bを駆動することによって走行を行う。
【0015】
上部旋回体102には運転室108を形成したキャビン110が設置され,運転室108には,運転席122と,ブームシリンダ13,アームシリンダ23,バケットシリンダ33,旋回モータ43の駆動を指示する右左の操作レバー装置114,134とが設けられている。また,走行モータ3f,3g,ブレードシリンダ3h及び図示しないスイングシリンダに対しても同様な操作レバー装置が備えられ、これらの操作レバー装置も運転室108に設けられている。
【0016】
(駆動システム)
次に,本実施形態の建設機械(油圧ショベル)に搭載される駆動システムについて説明する。
図2は,本実施形態の駆動システムの構成を示す図である。
【0017】
図2において,駆動システムは,エンジン6(ディーゼルエンジン)と,メインの油圧ポンプ1及びパイロットポンプ51とを備え,油圧ポンプ1とパイロットポンプ51はエンジン6により駆動される。油圧ポンプ1は管路2と接続され,管路2にはリリーフ管路4を介してリリーフ弁3が取り付けられている。リリーフ弁3の下流側はタンク5に接続されている。管路2の下流には,管路8と管路9が接続されている。管路9には,管路11,21,31,41が並列に接続されている。管路11,21,31,41にはチェック弁10,20,30,40がそれぞれ配置されている。
【0018】
管路8と管路11の下流には方向制御弁12が接続され,方向制御弁12は,また,ブームシリンダ13のボトム側室と接続しているボトム管路13B,ブームシリンダ13のロッド側室と接続しているロッド管路13R,タンク5と接続しているタンク管路13T,センタバイパス管路13Cと接続されている。
【0019】
方向制御弁12はパイロット管路12bの圧力とパイロット管路12rの圧力によって駆動される。両パイロット管路の圧力が低い場合,方向制御弁12は中立位置にあり,管路8はセンタバイパス管路13Cと接続され,その他の管路は遮断されている。パイロット管路12bの圧力が高い場合は,方向制御弁12は図示上方に切り換えられ,管路11がボトム管路13Bと,タンク管路13Tがロッド管路13Rと接続され,管路8とセンタバイパス管路13Cは遮断される。パイロット管路12rの圧力が高い場合は,方向制御弁12は図示下方に切り換えられ,管路11がロッド管路13Rと,タンク管路13Tがボトム管路13Bと接続され,管路8とセンタバイパス管路13Cは遮断される。
【0020】
管路13Cと管路21の下流には,方向制御弁22が接続されている。方向制御弁22は,また,アームシリンダ23のボトム側室と接続しているボトム管路23B,アームシリンダ23のロッド側室と接続しているロッド管路23R,タンク5と接続しているタンク管路23T,センタバイパス管路23Cと接続されている。
【0021】
方向制御弁22はパイロット管路22bの圧力とパイロット管路22rの圧力によって駆動される。両パイロット管路の圧力が低い場合,方向制御弁22は中立位置にあり,センタバイパス管路13Cはセンタバイパス管路23Cと接続され,その他の管路は遮断されている。パイロット管路22bの圧力が高い場合は,方向制御弁22は図示上方に切り換えられ,管路21がボトム管路23Bと,タンク管路23Tがロッド管路23Rと接続され,センタバイパス管路13Cとセンタバイパス管路23Cは遮断される。パイロット管路22rの圧力が高い場合は,方向制御弁22は図示下方に切り換えられ,管路21がロッド管路23Rと,タンク管路23Tがボトム管路23Bと接続され,センタバイパス管路13Cとセンタバイパス管路23Cは遮断される。
【0022】
管路23Cと管路31の下流には,方向制御弁32が接続され,方向制御弁32は,また,バケットシリンダ33のボトム側室と接続しているボトム管路33B,バケットシリンダ33のロッド側室と接続しているロッド管路33R,タンク5と接続しているタンク管路33T,センタバイパス管路33Cと接続されている。
【0023】
方向制御弁32はパイロット管路32bの圧力とパイロット管路32rの圧力によって駆動される。両パイロット管路の圧力が低い場合,方向制御弁32は中立位置にあり,センタバイパス管路23Cはセンタバイパス管路33Cと接続され,その他の管路は遮断されている。パイロット管路32bの圧力が高い場合は,方向制御弁32は図示上方に切り換えられ,管路31がボトム管路33Bと,タンク管路33Tがロッド管路33Rと接続され,センタバイパス管路23Cとセンタバイパス管路33Cは遮断される。パイロット管路32rの圧力が高い場合は,方向制御弁32は図示下方に切り換えられ,管路31がロッド管路33Rと,タンク管路33Tがボトム管路33Bと接続され,センタバイパス管路23Cとセンタバイパス管路33Cは遮断される。
【0024】
管路33Cと管路41の下流には,方向制御弁42が接続され,方向制御弁42は,また,旋回モータ43の左回転側室と接続している左回転管路43L,旋回モータ43の右回転側室と接続している右回転管路43R,タンク5と接続しているタンク管路43T,センタバイパス管路43Cと接続されている。センタバイパス管路43Cはタンク5と接続されている。
【0025】
方向制御弁42はパイロット管路42lの圧力とパイロット管路42rの圧力によって駆動される。両パイロット管路の圧力が低い場合,方向制御弁42は中立位置にあり,センタバイパス管路33Cはセンタバイパス管路43Cと接続され,その他の管路は遮断されている。パイロット管路42lの圧力が高い場合は,方向制御弁42は図示上方に切り換えられ,管路41が左回転管路43Lと,タンク管路43Tが右回転管路43Rと接続され,センタバイパス管路33Cとセンタバイパス管路43Cは遮断される。パイロット管路42rの圧力が高い場合は,方向制御弁42は図示下方に切り換えられ,管路41が右回転管路43Rと,タンク管路43Tが左回転管路43Lと接続され,センタバイパス管路33Cとセンタバイパス管路43Cは遮断される。
【0026】
パイロットポンプ51は,パイロット管路52と接続されている。パイロット管路52から下流については,
図4を用いて後述する。
【0027】
なお,図示はしないが,油圧駆動システムには
図1に示した走行モータ3f,3g,ブレードシリンダ3h及び図示しないスイングシリンダに対しても同様な方向制御弁が備えられ,管路の接続および遮断を行えるようになっている。
【0028】
ここで,エンジン6と油圧ポンプ1は動力源を構成し,ブームシリンダ13,アームシリンダ23,バケットシリンダ33,旋回モータ43,走行モータ3f,3g,ブレードシリンダ3h及び図示しないスイングシリンダは動力源から動力を受けて作動する複数のアクチュエータを構成する。
図1に示した操作レバー装置114,134及び図示しないその他の操作レバー装置の複数の操作レバーはそれぞれ複数のアクチュエータに対する動力の分配量を指示し,方向制御弁12,22,32,42及び図示しないその他の方向制御弁は複数の操作レバーの指示に基づいて動力を複数のアクチュエータに分配する。
【0029】
(操作レバー装置)
次に,操作レバー装置の構成について
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は,第1の実施形態における操作レバー装置114,134の操作レバーの可動方向と可動方向の定義を説明する図である。
【0030】
図1を用いて説明したように,油圧ショベルの運転室108に右左の操作レバー装置114,134が設置され,オペレータは右手で操作レバー装置114の操作レバー14(第1操作レバー)を,左手で操作レバー装置134の操作レバー34(第2操作レバー)を操作する。操作レバー装置114,134は,それぞれ,1つの操作レバー14又は34で2つのアクチュエータを動作させることができる。操作レバー14,34はそれぞれ中立位置から操作可能であり,操作レバー14の前方向14b及び後方向14rの操作はブームシリンダ13のブーム下げとブーム上げの動作に対応し,操作レバー14の右方向24r及び左方向24bの操作はバケットシリンダ33のバケットダンプとバケットクラウドの動作に対応し,操作レバー34の右方向34b及び左方向34rの操作はアームシリンダ23のアームクラウドとアームダンプの動作に対応し,操作レバー34の前方向44l及び後方向44rの操作は旋回モータ43の右旋回と左旋回の動作に対応する。なお,本明細書において前方向,後方向,右方向,左方向とは車体である上部旋回体102の前方向,後方向,右方向,左方向を意味する。
【0031】
このように操作レバー装置114,134の操作レバー14,34は,中立位置から複数方向に操作可能でありかつ複数のアクチュエータ(ブームシリンダ13,アームシリンダ23,バケットシリンダ33,旋回モータ43)のうちの異なるアクチュエータを動作させる。
【0032】
図4は,駆動システムの操作系の構成を示す図である。
【0033】
図4において,操作レバー装置114,134は油圧パイロット方式であり,操作レバー装置114は,操作レバー14(第1レバー)により駆動されるブーム用のパイロット弁15b,15r及びバケット用のパイロット弁25b,25rを有し,操作レバー装置134は,操作レバー34(第2レバー)により駆動されるアーム用のパイロット弁35b,35r及び旋回用のパイロット弁45l,45rを有している。以下の説明において,操作レバーは単に「レバー」と言うことがある。
【0034】
パイロット管路52の下流には,管路19,29,39,49とリリーフ弁53が並列に接続されている。リリーフ弁53の下流にはタンク5が接続されている。管路19,29,39,49には,絞り部94,95,96,97がそれぞれ設けられている。
【0035】
操作レバー装置114のパイロット弁15bは管路19と接続され,かつ管路18と管路16bとに接続されている。管路16bはパイロット管路12b(
図2参照)と接続されている。管路16b上には,圧力センサ17bが取り付けられている。管路18はタンク5と接続している。
【0036】
レバー14が中立位置にあるとき,パイロット弁15bは管路18と管路16bを接続し,管路19を遮断する。レバー14が前方向14bに操作されたとき,パイロット弁15bは管路19と管路16bを接続し,管路18を遮断する。このとき,レバー14の操作量に応じた圧力(操作圧)が管路16bに生成される。
【0037】
圧力センサ17bは管路16bの圧力を計測し,電気的に接続されているコントローラ50に信号を送信する。
【0038】
操作レバー装置114のパイロット弁15rは管路19と接続され,かつ管路18と管路16rとに接続されている。管路16rはパイロット管路12r(
図2参照)と接続されている。管路16r上には,圧力センサ17rが取り付けられている。管路18はタンク5と接続している。
【0039】
レバー14が中立位置にあるとき,パイロット弁15rは管路18と管路16rを接続し,管路19を遮断する。レバー14が後方向14rに操作されたとき,パイロット弁15rは管路19と管路16rを接続し,管路18を遮断する。このとき,レバー14の操作量に応じた圧力(操作圧)が管路16rに生成される。
【0040】
圧力センサ17rは管路16rの圧力を計測し,電気的に接続されているコントローラ50に信号を送信する。
【0041】
操作レバー装置114のパイロット弁25bは管路29と接続され,かつ管路28と管路26bとに接続されている。管路26bはパイロット管路32b(
図2参照)と接続されている。管路26b上には,圧力センサ27bが取り付けられている。管路28はタンク5と接続している。
【0042】
レバー14が中立位置にあるとき,パイロット弁25bは管路28と管路26bを接続し,管路29を遮断する。レバー14が左方向24bに操作されたとき,パイロット弁25bは管路29と管路26bを接続し,管路28を遮断する。このとき,レバー14の操作量に応じた圧力(操作圧)が管路26bに生成される。
【0043】
圧力センサ27bは管路26bの圧力を計測し,電気的に接続されているコントローラ50に信号を送信する。
【0044】
操作レバー装置114のパイロット弁25rは管路29と接続され,かつ管路28と管路26rとに接続されている。管路26rはパイロット管路32r(
図2参照)と接続されている。管路26r上には,圧力センサ27rが取り付けられている。管路28はタンク5と接続している。
【0045】
レバー14が中立位置にあるとき,パイロット弁25rは管路28と管路26rを接続し,管路29を遮断する。レバー14が右方向24rに操作されたとき,パイロット弁25rは管路29と管路26rを接続し,管路28を遮断する。このとき,レバー14の操作量に応じた圧力(操作圧)が管路26rに生成される。
【0046】
圧力センサ27rは管路26rの圧力を計測し,電気的に接続されているコントローラ50に信号を送信する。
【0047】
操作レバー装置134のパイロット弁35bは管路39に接続され,かつ管路38と管路36bとに接続されている。管路36bはパイロット管路22b(
図2参照)と接続されている。管路36b上には,圧力センサ37bが取り付けられている。管路38はタンク5と接続している。
【0048】
レバー34が中立位置にあるとき,パイロット弁35bは管路38と管路36bを接続し,管路39を遮断する。レバー34が右方向34bに操作されたとき,パイロット弁35bは管路39と管路36bを接続し,管路38を遮断する。このとき,レバー34の操作量に応じた圧力(操作圧)が管路36bに生成される。
【0049】
圧力センサ37bは管路36bの圧力を計測し,電気的に接続されているコントローラ50に信号を送信する。
【0050】
操作レバー装置134のパイロット弁35rは管路39に接続され,かつ管路38と管路36rとに接続されている。管路36rはパイロット管路22r(
図2参照)と接続されている。管路36r上には,圧力センサ37rが取り付けられている。管路38はタンク5と接続している。
【0051】
レバー34が中立位置にあるとき,パイロット弁35rは管路38と管路36rを接続し,管路39を遮断する。レバー34が左方向34rに操作されたとき,パイロット弁35rは管路39と管路36rを接続し,管路38を遮断する。このとき,レバー34の操作量に応じた圧力(操作圧)が管路36rに生成される。
【0052】
圧力センサ37rは管路36rの圧力を計測し,電気的に接続されているコントローラ50に信号を送信する。
【0053】
操作レバー装置134のパイロット弁45lは管路49に接続され,かつ管路48と管路46lとに接続されている。管路46lはパイロット管路42l(
図2参照)と接続されている。管路46l上には,圧力センサ47lが取り付けられている。管路48はタンク5と接続している。
【0054】
レバー34が中立位置にあるとき,パイロット弁45lは管路48と管路46lを接続し,管路49を遮断する。レバー34が前方向44lに操作されたとき,パイロット弁45lは管路49と管路46lを接続し,管路48を遮断する。このとき,レバー34の操作量に応じた圧力(操作圧)が管路46lに生成される。
【0055】
圧力センサ47l は管路46lの圧力を計測し,電気的に接続されているコントローラ50に信号を送信する。
【0056】
操作レバー装置134のパイロット弁45rは管路49に接続され,かつ管路48と管路46rとに接続されている。管路46rはパイロット管路42r(
図2参照)と接続されている。管路46r上には,圧力センサ47rが取り付けられている。管路48はタンク5と接続している。
【0057】
レバー34が中立位置にあるとき,パイロット弁45rは管路48と管路46rを接続し,管路49を遮断する。レバー34が後方向44rに操作されたとき,パイロット弁45rは管路49と管路46rを接続し,管路48を遮断する。このとき,レバー34の操作量に応じた圧力(操作圧)が管路46rに生成される。
【0058】
圧力センサ47rは管路46rの圧力を計測し,電気的に接続されているコントローラ50に信号を送信する。
【0059】
圧力センサ17b,17r,27b,27r,37b,37r,47l,47rは,操作レバー装置114,134の操作状態を検出する複数の操作状態検出装置を構成する。また,圧力センサ17b,17rは,操作レバー14の前後方向の操作状態を検出する第1操作状態検出装置を構成し,圧力センサ27b,27rは,操作レバー14の右左方向の操作状態を検出する第2操作状態検出装置を構成し,圧力センサ37b,37rは,操作レバー34の右左方向の操作状態を検出する第3操作状態検出装置を構成し,圧力センサ47l,47rは,操作レバー34の前後方向の操作状態を検出する第4操作状態検出装置を構成する。
【0060】
なお,図示はしないが,操作系には,操作レバー装置114,134以外の操作レバー装置に対しても同様な圧力センサ(操作状態検出装置)が設けられ,それらの操作レバーの操作状態に基づいて後述する動力低減制御が行えるようになっている。
【0061】
(駆動システムの続き)
図2に戻り,本実施形態の駆動システムはコントローラ50とスイッチ76と目標回転数指示装置77とを更に備えている。
【0062】
コントローラ50は,圧力センサ17b,17r,27b,27r,37b,37r,47l,47r,スイッチ76及び目標回転数指示装置77と電気的に接続されている。コントローラ50は圧力センサ17b~47rからのそれぞれの測定圧力の信号とスイッチ76からの信号と目標回転数指示装置77からの信号を受信し,それらの信号に基づいてエンジン6の制御用の目標回転数を演算し,コントローラ50と電気的に接続されているエンジン6の回転数制御装置7にその目標回転数の指令信号を送信する。回転数制御装置7はその目標回転数になるようにエンジン6を制御する。
【0063】
スイッチ76はON或いはOFFの信号をコントローラ50に送信することで,動力低減制御モードを設定するかどうかを切り換えるスイッチであり,スイッチ76の信号がOFFのときは動力低減制御モードが解除され,全ての操作レバーが無操作状態であってもエンジン6の駆動動力を低減しない。
【0064】
(コントローラ50)
次に,第1の実施形態におけるコントローラ50の機能について説明する。
図5は,コントローラ50の機能を示すブロック図である。
【0065】
まず,コントローラ50が行う制御の基本概念を説明する。
【0066】
コントローラ50は,圧力センサ17b,17r,27b,27r,37b,37r,47l,47r(複数の操作状態検出装置)によって検出された操作レバー14,34(複数の操作レバー)の操作状態に基づいて,操作レバー14,34の少なくとも1つが操作されている状態から操作レバー14,34の全てが操作されていない無操作状態に移行し操作レバー14,34の無操作時間が設定時間を経過したときに,エンジン6及び油圧ポンプ1(動力源)の動力低減制御を行い,動力低減制御を行っている状態で操作レバー14,34の少なくとも1つが操作されたときは動力低減制御を解除する。
【0067】
また,コントローラ50は,その特徴的な機能として,少なくとも1つの操作レバーが無操作状態に移行するまでの操作時間が予め設定した監視時間Tth0より長い場合には,上記設定時間を第1設定時間Tth1とし,少なくとも1つの操作レバーが無操作状態に移行するまでの時間が予め設定した監視時間Tth0より短い場合は,上記設定時間を第1設定時間Tth1よりも短い第2設定時間Tth2とする。
【0068】
また,コントローラ50は,圧力センサ17b,17r,27b,27r,37b,37r,47l,47r(複数の操作状態検出装置)によって検出された操作レバー14,34(複数の操作レバー)の操作状態に基づいて,操作レバー14,34が無操作状態であることを示す無操作フラグF14(t),F34(t)(無操作状態情報)と動力低減制御を行っていることを示す動力低減フラグF50(t)(動力低減制御状態情報)を生成し,無操作フラグF14(t),F34(t)と動力低減フラグF50(t)に基づいて動力低減制御を行っていない非動力低減時間を算出し,この非動力低減時間を操作レバー14,34の操作時間として用いる。
【0069】
更に,コントローラ50は,上記少なくとも1つの操作レバーが操作されている状態から操作レバー14,34のいずれも操作されていない無操作状態に移行したとき,その少なくとも1つの操作レバーが監視時間Tth0の間に無操作になった場合にその少なくとも1つの操作レバーの操作は誤操作であると判定する。
【0070】
以下にコントローラ50の上記基本概念の詳細を説明する。なお、以下においては、操作レバー14,34以外の操作レバーの操作状態に基づく動力低減制御の説明は割愛し、操作レバー14,34の操作状態で代表して動力低減制御を説明する。
【0071】
図5において,コントローラ50は,センサ信号変換部50a,定数・テーブル記憶部50b,動力演算部50cの各機能を有している。
【0072】
センサ信号変換部50aは,圧力センサ17b~47r及びスイッチ76から送られてくる信号を受信し,圧力情報及びスイッチフラグ情報に変換する。センサ信号変換部50aは変換した圧力情報及びスイッチフラグ情報を動力演算部50cに送信する。センサ信号変換部50aが変換した圧力情報は,パイロット弁15b~45rが駆動されることによって管路16b~46rに生成された圧力であり,
図5では,センサ値P17b(t),P17r(t),P27b(t),P27r(t),P37b(t),P37r(t),P47l(t),P47r(t)として示されている。センサ値P17b(t),P17r(t),P27b(t),P27r(t),P37b(t),P37r(t),P47l(t),P47r(t)は「操作圧」ということもある。また,センサ信号変換部50aが変換したスイッチ情報は,
図5では,スイッチフラグ情報はスイッチフラグFsw(t)として示されている。スイッチフラグFsw(t)は,スイッチ76がONのときはFsw(t)=true(有効),OFFのときはFsw(t)=false(無効)になる。
【0073】
定数・テーブル記憶部50bは,計算に必要な定数やテーブルを記憶しており,それらの情報を動力演算部50cに送信する。定数・テーブル記憶部50bに記憶されている定数には上記監視時間Tth0,第1設定時間Tth1,第2設定時間Tth2が含まれる。
【0074】
動力演算部50cは,センサ信号変換部50aから送信される圧力情報やスイッチフラグ情報と,目標回転数指示装置77から送信される目標回転数情報と,定数・テーブル記憶部50bから送信される定数情報(監視時間Tth0,第1設定時間Tth1,第2設定時間Tth2)やテーブル情報を受信し,エンジン6の目標回転数を演算する。そして,動力演算部50cは回転数制御装置7に制御用の目標回転数を出力する。
【0075】
(動力演算部50c)
次に,第1の実施形態における動力演算部50cの機能について説明する。
図6は,動力演算部50cの機能を示すブロック図である。なお,コントローラ50のサンプリング時間はΔtであるとする。
【0076】
図6において,動力演算部50cは,レバー14操作状態判定部50c-1,レバー34操作状態判定部50c-2,レバー14無操作時間計測部50c-3,レバー34無操作時間計測部50c-4,動力低減判定部50c-5,遅れ要素50c-6,非動力低減時間計測部50c-7の各機能を有している。
【0077】
レバー14操作状態判定部50c-1は,センサ値P17b(t),P17r(t),P27b(t),P27r(t)からレバー14が操作されているかどうかを判定し,レバー14無操作フラグF14(t)を出力する。レバー14操作状態判定部50c-1は,レバー14が無操作であると判定するとレバー14無操作フラグF14(t)をtrueに,レバー14が操作されていると判定するとレバー14無操作フラグF14(t)をfalseに,それぞれ設定する。このレバー14無操作フラグF14(t)(以下単にフラグ情報F14(t)ということがある)は,レバー14無操作時間計測部50c-3と,非動力低減時間計測部50c-7に送信される。
【0078】
レバー34操作状態判定部50c-2は,センサ値P37b(t),P37r(t),P47l(t),P47r(t)からレバー34が操作されているかどうかを判定し,レバー34無操作フラグF34(t)を出力する。レバー34無操作状態判定部50c-2は,レバー34が無操作であると判定するとレバー34無操作フラグF34(t)をtrueに,レバー34が操作されていると判定するとレバー34無操作フラグF34(t)をfalseに,それぞれ設定する。このレバー34無操作フラグF34(t)(以下単にフラグ情報F34(t)ということがある)は,レバー34無操作時間計測部50c-4と非動力低減時間計測部50c-7に送信される。
【0079】
レバー14無操作時間計測部50c-3はフラグ情報F14(t)に基づいてレバー14無操作時間Tu14(t)を計測し,レバー14無操作時間Tu14(t)(以下単に時間情報Tu14(t)ということがある)を動力低減判定部50c-5に送信する。
【0080】
レバー34無操作時間計測部50c-4はフラグ情報F34(t)に基づいてレバー34無操作時間Tu34(t)を計測し,レバー34無操作時間Tu34(t)(以下単に時間情報Tu34(t)ということがある)を動力低減判定部50c-5に送信する。
【0081】
非動力低減時間計測部50c-7は,フラグ情報F14(t)及びフラグ情報F34(t)と,遅れ要素50c-6により生成された1ステップ前の動力低減フラグF50(t-Δt)に基づいて非動力低減時間TF50(t)を計測し,非動力低減時間TF50(t)(以下単に時間情報TF50(t)ということがある)を動力低減判定部50c-5に送信する。
【0082】
動力低減判定部50c-5は,時間情報Tu14(t),Tu34(t)及び時間情報TF50(t)と,スイッチフラグFsw(t)と,目標回転数指示装置77から送信される目標回転数とに基づいて制御用の目標回転数を低減するかどうかを判定し,その判定結果に基づいて制御用の目標回転数と動力低減フラグF50(t)を出力する。また,動力低減判定部50c-5は,目標回転数を低減すると判定すると動力低減フラグF50(t)をtrueに設定し,目標回転数を低減しないと判定すると動力低減フラグF50(t)をfalseに設定する。
【0083】
(レバー14操作状態判定部50c-1)
次に,第1の実施の形態におけるレバー14操作状態判定部50c-1の機能について説明する。
図7は,レバー14操作状態判定部50c-1の演算フローを示すフローチャートである。この演算フローは,例えばコントローラ50が動作している間,サンプリング時間Δtごと繰り返し処理される。
【0084】
ステップS101においてレバー14操作状態判定部50c-1の演算がスタートする。
【0085】
ステップS102において,レバー14操作状態判定部50c-1はセンサ値P17b(t)が閾値Pth以下かを判定する。センサ値P17b(t)が閾値Pth以下であった場合はYesと判定し,ステップS103の処理へと進む。センサ値P17b(t)が閾値Pthより大きかった場合はNoと判定し,ステップS107の処理へと進む。
【0086】
ステップS103において,レバー14操作状態判定部50c-1はセンサ値P17r(t)が閾値Pth以下かを判定する。センサ値P17r(t)が閾値Pth以下であった場合はYesと判定し,ステップS104の処理へと進む。センサ値P17r(t)が閾値Pthより大きかった場合はNoと判定し,ステップS107の処理へと進む。
【0087】
ステップS104において,レバー14操作状態判定部50c-1はセンサ値P27b(t)が閾値Pth以下かを判定する。センサ値P27b(t)が閾値Pth以下であった場合はYesと判定し,ステップS105の処理へと進む。センサ値P27b(t)が閾値Pthより大きかった場合はNoと判定し,ステップS107の処理へと進む。
【0088】
ステップS105において,レバー14操作状態判定部50c-1はセンサ値P27r(t)が閾値Pth以下かを判定する。センサ値P27r(t)が閾値Pth以下であった場合はYesと判定し,ステップS106の処理へと進む。センサ値P27r(t)が閾値Pthより大きかった場合はNoと判定し,ステップS107の処理へと進む。
【0089】
ステップS106において,レバー14操作状態判定部50c-1は,レバー14は操作されていないと判定してレバー14無操作フラグF14(t)をtrueに設定する。そして,レバー14無操作時間計測部50c-3と動力低減判定部50c-5にそのフラグ情報を送信する。
【0090】
ステップS107において,レバー14操作状態判定部50c-1は,レバー14は操作されていると判定してレバー14無操作フラグF14(t)をfalseに設定する。そして,レバー14無操作時間計測部50c-3と,動力低減判定部50c-5にそのフラグ情報を送信する。
【0091】
(レバー34操作状態判定部50c-2)
次に,第1の実施形態におけるレバー34操作状態判定部50c-2の機能について説明する。
図8は,レバー34操作状態判定部50c-2の演算フローを示すフローチャートである。この演算フローは,例えばコントローラ50が動作している間,サンプリング時間Δtごと繰り返し処理される。
【0092】
ステップS201においてレバー34操作状態判定部50c-2の演算がスタートする。
【0093】
ステップS202において,レバー34操作状態判定部50c-2はセンサ値P37b(t)が閾値Pth以下かを判定する。センサ値P37b(t)が閾値Pth以下であった場合はYesと判定し,ステップS203の処理へと進む。センサ値P37b(t)が閾値Pthより大きかった場合はNoと判定し,ステップS207の処理へと進む。
【0094】
ステップS203において,レバー34操作状態判定部50c-2はセンサ値P37r(t)が閾値Pth以下かを判定する。センサ値P37r(t)が閾値Pth以下であった場合はYesと判定し,ステップS204の処理へと進む。センサ値P37r(t)が閾値Pthより大きかった場合はNoと判定し,ステップS207の処理へと進む。
【0095】
ステップS204において,レバー34操作状態判定部50c-2はセンサ値P47l(t)が閾値Pth以下かを判定する。センサ値P47l(t)が閾値Pth以下であった場合はYesと判定し,ステップS205の処理へと進む。センサ値P47l(t)が閾値Pthより大きかった場合はNoと判定し,ステップS207の処理へと進む。
【0096】
ステップS205において,レバー34操作状態判定部50c-2はセンサ値P47r(t)が閾値Pth以下かを判定する。センサ値P47r(t)が閾値Pth以下であった場合はYesと判定し,ステップS206の処理へと進む。センサ値P47r(t)が閾値Pthより大きかった場合はNoと判定し,ステップS207の処理へと進む。
【0097】
ステップS206において,レバー34操作状態判定部50c-2は,レバー34は操作されていないと判定してレバー34無操作フラグF34(t)をtrueに設定する。そして,レバー34無操作時間計測部50c-4と動力低減判定部50c-5にそのフラグ情報を送信する。
【0098】
ステップS207において,レバー34操作状態判定部50c-2は,レバー14は操作されていると判定してレバー34無操作フラグF34(t)をfalseに設定する。そして,レバー34無操作時間計測部50c-4と動力低減判定部50c-5にそのフラグ情報を送信する。
【0099】
(閾値Pthの定義)
上述したセンサ値の閾値Pthの定義を,
図9を用いて説明する。
図9は,センサ値P17b(t)あるいはP17r(t)と方向制御弁12のメータイン開口面積の関係を示している。また,センサ値P17b(t)あるいはP17r(t)は「操作圧」と表記している。
【0100】
図9において,操作圧P17b(t)あるいはP17r(t)がPthの値になるまではメータイン開口は開かないので,油圧シリンダ(ブームシリンダ)13は作動しない。この関係は,他の方向制御弁についても同じである。操作状態判定部50c-1,50c-2はそのメータイン開口が開く圧力値Pthを閾値として用いている。
【0101】
(レバー14無操作時間計測部50c-3)
次に,第1の実施形態におけるレバー14無操作時間計測部50c-3の機能について説明する。
図10は,レバー14無操作時間計測部50c-3の演算フローを示すフローチャートである。この演算フローは,例えばコントローラ50が動作している間,サンプリング時間Δtごと繰り返し処理される。
【0102】
ステップS301において,レバー14無操作時間計測部50c-3の演算がスタートする。
【0103】
ステップS302において,レバー14無操作時間計測部50c-3はレバー14無操作フラグF14(t)がtrueであるかを判定する。レバー14無操作フラグF14(t)がtrueであった場合はYesと判定し,ステップS303の処理へと進む。レバー14無操作フラグF14(t)がfalseであった場合はNoと判定し,ステップS304の処理へと進む。
【0104】
ステップS303において,レバー14は操作されていないので,レバー14無操作時間計測部50c-3は,保持していた1ステップ前のレバー14無操作時間Tu14(t-Δt)にサンプリング時間Δtを足した値を新たなレバー14無操作時間Tu14(t)として設定する。そして,動力低減判定部50c-5にその情報を送信する。
【0105】
ステップS304において,レバー14は操作されているので,レバー14無操作時間計測部50c-3は,レバー14無操作時間Tu14(t)を0に設定する。そして,動力低減判定部50c-5にその情報を送信する。
【0106】
(レバー34無操作時間計測部50c-4)
次に,第1の実施形態におけるレバー34無操作時間計測部50c-4の機能について説明する。
図11は,レバー34無操作時間計測部50c-4の演算フローを示すフローチャートである。この演算フローは,例えばコントローラ50が動作している間,サンプリング時間Δtごと繰り返し処理される。
【0107】
ステップS401においてレバー34無操作時間計測部50c-4の演算はスタートする。
【0108】
ステップS402において,レバー34無操作時間計測部50c-4はレバー34無操作フラグF34(t)がtrueであるかを判定する。レバー34無操作フラグF34(t)がtrueであった場合はYesと判定し,ステップS403の処理へと進む。レバー34無操作フラグF34(t)がfalseであった場合はNoと判定し,ステップS404の処理へと進む。
【0109】
ステップS403において,レバー34は操作されていないので,レバー34無操作時間計測部50c-4は,保持していた1ステップ前のレバー34無操作時間Tu34(t-Δt)にサンプリング時間Δtを足した値を新たなレバー34無操作時間Tu34(t)として設定する。そして,動力低減判定部50c-5にその情報を送信する。
【0110】
ステップS404において,レバー34は操作されているので,レバー34無操作時間計測部50c-4はレバー34無操作時間Tu34(t)を0に設定する。そして,動力低減判定部50c-5にその情報を送信する。
【0111】
(非動力低減時間計測部50c-7)
次に,第1の実施形態における非動力低減時間計測部50c-7の機能について説明する。
図12は,非動力低減時間計測部50c-7の演算フローを示すフローチャートである。この演算フローは,例えばコントローラ50が動作している間,サンプリング時間Δtごと繰り返し処理される。
【0112】
ステップS1401において,非動力低減時間計測部50c-7の演算がスタートする。
【0113】
ステップS1402において,非動力低減時間計測部50c-7は1ステップ前の動力低減フラグF50(t-Δt)がfalseであるかを判定する。動力低減フラグF50(t-Δt)がfalseであった場合はYesと判定し,ステップS1403の処理へと進む。動力低減フラグF50(t-Δt)がtrueであった場合はNoと判定し,ステップS1407の処理へと進む。
【0114】
ステップS1403において,非動力低減時間計測部50c-7はレバー14無操作フラグF14(t)がtrueであるかを判定する。レバー14無操作フラグF14(t)がtrueであった場合はYesと判定し,ステップS1404の処理へと進む。レバー14無操作フラグF14(t)がfalseであった場合はNoと判定し,ステップS1406の処理へと進む。
【0115】
ステップS1404において,非動力低減時間計測部50c-7はレバー34無操作フラグF34(t)がtrueであるかを判定する。レバー34無操作フラグF34(t)がtrueであった場合はYesと判定し,ステップS1405の処理へと進む。レバー34無操作フラグF34(t)がfalseであった場合はNoと判定し,ステップS1406の処理へと進む。
【0116】
ステップS1406において,動力低減フラグF50(t-Δt)がfalseで動力低減状態でなく,レバー14無操作フラグF14(t)及びレバー34無操作フラグF34(t)の少なくとも一方がtrueではない(レバー14,34の少なくとも1つが操作されている)ので,非動力低減時間計測部50c-7は1ステップ前の非動力低減時間TF50(t-Δt)にサンプリング時間Δtを足した値を新たな非動力低減時間TF50(t)として設定する。そして,動力低減判定部50c-5にその情報を送信する。
【0117】
ステップS1405において,動力低減フラグF50(t-Δt)がfalseで動力低減状態でないときに,レバー14無操作フラグF14(t)及びレバー34無操作フラグF34(t)の両方がtrueとなった(レバー14,34の両方が無操作となった)とき,非動力低減時間計測部50c-7は1ステップ前の非動力低減時間TF50(t-Δt)を新たな非動力低減時間TF50(t)として設定し,1ステップ前の非動力低減時間TF50(t-Δt)を非動力低減時間TF50(t)として保持する。そして,動力低減判定部50c-5にその情報を送信する。
【0118】
ここで,ステップS1405において設定される非動力低減時間TF50(t)(1ステップ前の非動力低減時間TF50(t-Δt))は,レバー14,34の少なくとも1つが操作され(動力低減制御が解除され)たときからレバー14,34の両方が無操作となる(再び動力低減制御が行われる)までの操作時間を意味する。
【0119】
ステップS1407において,動力低減フラグF50(t-Δt)がfalseではなく動力低減状態であるので,非動力低減時間計測部50c-7は非動力低減時間TF50(t)を0に設定する。そして,動力低減判定部50c-5にその情報を送信する。
【0120】
(動力低減判定部50c-5)
次に,第1の実施形態における動力低減判定部50c-5の機能について説明する。
図13は,動力低減判定部50c-5の演算フローを示すフローチャートである。この演算フローは,例えばコントローラ50が動作している間,サンプリング時間Δtごと繰り返し処理される。
【0121】
ステップS501において動力低減判定部50c-5の演算はスタートする。
【0122】
ステップS502において,動力低減判定部50c-5はスイッチフラグFsw(t)がtrueかを判定する。スイッチフラグFsw(t)がtrueであった場合はYesと判定し,ステップS503の処理へと進む。スイッチフラグFsw(t)がfalseであった場合はNoと判定し,ステップS509の処理へと進む。
【0123】
ステップS503において,動力低減判定部50c-5は,非動力低減時間TF50(t)がレバー14又は34の予め設定した誤操作の監視時間Tth0以上かを判定する。非動力低減時間TF50(t)が監視時間Tth0以上であった場合はYesと判定し,ステップS504の処理へと進む。非動力低減時間TF50(t)が監視時間Tth0より小さい場合はNoと判定し,ステップS505の処理へと進む。非動力低減時間TF50(t)は,前述したように操作レバー14,34の操作開始時からの操作時間に相当する。なお、非動力低減時間TF50(t)を操作時間として用いるのではなく、圧力センサ17b~47rのセンサ値P17b(t),P17r(t),P27b(t),P27r(t),P37b(t),P37r(t),P47l(t),P47r(t)(操作圧)を直接用いてレバー14,37の操作時間を算出し、その操作時間を用いてもよい。
【0124】
ステップS504において,動力低減判定部50c-5は,レバー14無操作時間Tu14(t)とレバー34無操作時間Tu34(t)との小さい方の値が通常の動力低減制御時間である第1設定時間Tth1以上かを判定する。レバー14無操作時間Tu14(t)とレバー34無操作時間Tu34(t)との小さい方の値が第1設定時間Tth1以上であった場合はYesと判定し,ステップS506の処理へと進む。レバー14無操作時間Tu14(t)とレバー34無操作時間Tu34(t)との小さい方の値が第1設定時間Tth1より小さい場合はNoと判定し,ステップS507の処理へと進む。
【0125】
ステップS505において,動力低減判定部50c-5は,レバー14無操作時間Tu14(t)とレバー34無操作時間Tu34(t)との小さい方の値が第2設定時間Tth2以上かを判定する。レバー14無操作時間Tu14(t)とレバー34無操作時間Tu34(t)との小さい方の値が第2設定時間Tth2以上であった場合はYesと判定し,ステップS508の処理へと進む。レバー14無操作時間Tu14(t)とレバー34無操作時間Tu34(t)との小さい方の値が第2設定時間Tth2より小さい場合はNoと判定し,ステップS509の処理へと進む。
【0126】
なお,第2設定時間Tth2は通常の動力低減制御時間である第1設定時間Tth1よりも短く設定されている。第1設定時間Tth1は例えば3~5秒であり,第2設定時間Tth2は例えば0.5~2秒である。
【0127】
また,監視時間Tth0は,レバー14又は34の誤操作であるとみなせる時間の最大値に設定され,これにより監視時間Tth0の間,レバー14又は34の操作時間(非動力低減時間TF50(t))を監視し,操作時間が監視時間Tth0よりも短い場合に誤操作と判定することができる。
【0128】
レバー14又は34の誤操作とみなせる操作時間の最大値は,事前に操作時間のデータを収集することにより決めることができる。第1設定時間Tth1が例えば3~5秒であり,第2設定時間Tth2が例えば0.5~2秒である場合,監視時間Tth0は例えば1~2.5秒である。
【0129】
ステップS506とステップS508において,動力低減判定部50c-5は同じ処理を行う。すなわち,ステップS506とステップS508において,動力低減判定部50c-5は,動力低減フラグをtrueに設定すると同時に,エンジン6の制御用の目標回転数を目標回転数指示装置77によって指示される通常の目標回転数よりも低い動力低減制御用の目標回転数に設定する。そして,回転数制御装置7にその目標回転数を送信する。回転数制御装置7はエンジン6に供給される燃料の量を減らすことでエンジン6の回転数を低下させる。このように動力低減判定部50c-5は,ステップS506とステップS508において動力低減制御を行う。
【0130】
ステップS507とステップS509において,動力低減判定部50c-5は同じ処理を行う。すなわち,ステップS507とステップS509において,動力低減判定部50c-5は,動力低減フラグF50(t)をfalseに設定すると同時に,エンジン6の制御用の目標回転数を目標回転数指示装置77によって指示される通常の目標回転数に設定する。そして,回転数制御装置7にその目標回転数を送信する。回転数制御装置7はエンジン6に供給される燃料の量を増やすことでエンジン6の回転数を上昇させる。このように動力低減判定部50c-5は,ステップS507とステップS509において動力低減制御を解除する。
【0131】
~動作~
次に,第1の実施形態における操作圧と目標回転数の推移例を,
図14を用いて説明する。
図14は,レバー14,34を操作した場合の操作圧と目標回転数の推移例を示すタイムチャートである。
図14の上のグラフはレバー14による操作圧P17b(t)の時間変化を,中央のグラフはレバー34による操作圧P37b(t)の時間変化を,下のグラフは目標回転数の時間変化を,それぞれ示している。横軸は全グラフとも時間(秒)である。また上のグラフと中央のグラフには,操作圧の閾値Pthも記載してある。
【0132】
時刻t0において,レバー14を前方向14bに,レバー34を右方向34bにそれぞれ操作している。そのため,操作圧P17b(t)と操作圧P37b(t)の両方が閾値Pthを超えており,図示しないその他の操作圧は0である。このとき,
図13のステップS507の処理が行われ(S502→S503→S504→S507),エンジン6の制御用の目標回転数は目標回転数指示装置77によって指示された通常の値Nhに設定されている。すなわち,動力低減制御(オートアイドル制御)は解除されている。
【0133】
時刻t0から時刻t1まで,操作圧P17b(t),P37b(t)はともに閾値Pthより大きい。このときも,
図13のステップS507の処理が行われ(S502→S503→S504→S507),目標回転数は通常の値Nhに設定されている。
【0134】
時刻t1にて,レバー14,34の両方が中立に戻され,操作圧P17b(t),P37b(t)の両方が閾値Pthよりも小さい値となっている。そのため,時刻t1から第1設定時間Tth1を経過するまではステップS507の処理が行われ(S502→S503→S504→S507),エンジン6の制御用の目標回転数は通常の値Nhに設定され,通常の動力制御が行われる。その後,時刻t1から第1設定時間Tth1を経過すると,時刻t1aにおいて
図13のステップS506の処理が行われ(S502→S503→S504→S506),エンジン6の制御用の目標回転数は動力低減制御(オートアイドル制御)の通常の値Nhよりも小さな値Nlに設定され,動力低減制御に移行する。その後,動力低減制御が行われ非動力低減時間TF50(t)が0になるため,
図13のステップS508の処理が行われ,動力低減制御が継続する(S502→S503→S505→S508)。
【0135】
時刻t2において,レバー34の誤操作により,操作圧P37b(t)が閾値Pthより大きくなっている。このとき,
図13のステップS509の処理が行われ(S502→S503→S505→S509),エンジン6の制御用の目標回転数は通常の値Nhに復帰し,動力低減制御が解除される。
【0136】
その後,時刻t3にてレバー34が中立に戻り,操作圧P37b(t)が低下し,操作圧P17b(t),P37b(t)の両方が閾値Pthよりも小さい値(無操作状態)となる。そのため,時刻t3から第2設定時間Tth2を経過するまではステップS509の処理が行われ(S502→S503→S505→S509),エンジン6の制御用の目標回転数は通常の値Nhに設定され続け,通常の動力制御が行われる。その後,時刻t3から第2設定時間Tth2秒を経過すると,時刻t3aにおいて
図13のステップS508の処理が行われる(S502→S503→S505→S508)。これによりエンジン6の制御用の目標回転数は動力低減制御(オートアイドル制御)の通常の値Nhよりも小さな値Nlに設定され,動力低減制御に移行する。
【0137】
なお,時刻t2から時刻t3までの時間は,レバー34の誤操作時間であり,誤操作の監視時間Tth0は誤操作であるとみなせる時間の最大値に設定されているため,ステップ503において誤操作時間を確実に監視し、第1設定時間Tth1よりも短い第2設定時間Tth2においてステップS508に移行し、動力低減制御を行うことができる。
【0138】
その後,時刻t4において,再びレバー34の誤操作により,操作圧P37b(t)が閾値Pthより大きくなっている。このときも,
図13のステップS509の処理が行われ(S502→S503→S505→S509),動力低減制御が解除される。
【0139】
その後,時刻t5にてレバー34が中立に戻り,操作圧P37b(t)が低下し,操作圧P17b(t),P37b(t)の両方が閾値Pthよりも小さい値(無操作状態)となる。そのため,この場合も,時刻t5から第2設定時間Tth2を経過するまではステップS509の処理が行われ(S502→S503→S505→S509),エンジン6の制御用の目標回転数は通常の値Nhに設定され続け,通常の動力制御が行われる。その後,時刻t5から第2設定時間Tth2を経過すると,時刻t5aにおいて
図13のステップS508の処理が行われ(S502→S503→S505→S508),エンジン6の制御用の目標回転数は動力低減制御(オートアイドル制御)の通常の値Nhよりも小さな値Nlに設定され,動力低減制御に移行する。
【0140】
なお,この場合の誤操作時間t4~t5は誤操作時間t2~t3よりも長いが,誤操作の監視時間Tth0は誤操作であるとみなせる時間の最大値に設定されているため,誤操作の間,ステップS503の判定は否定され続け,ステップ503において誤操作を確実に監視し、この場合も第1設定時間Tth1よりも短い第2設定時間Tth2においてステップS508に移行し、動力低減制御を行うことができる。
【0141】
その後,時刻t6において,オペレータが作業を意図してレバー14が操作され,時刻t7にてレバー34が中立に戻される。
【0142】
時刻t6では,操作圧P17b(t)が閾値Pthより大きくなっている。このとき,
図13のステップS509の処理が行われ(S502→S503→S505→S509),エンジン6の制御用の目標回転数は通常の値Nhに設定され,動力低減制御が解除される。
【0143】
時刻t6から時刻t7までの操作時間は作業を意図した操作時間であり,誤操作の監視時間Tth0よりも長い。このため時刻t6から監視時間Tth0を経過するまではステップS509の処理が行われ(S502→S503→S505→S509),エンジン6の制御用の目標回転数は通常の値Nhに設定され続け,通常の動力制御が行われる。時刻t6から監視時間Tth0秒経過すると,時刻t7までステップS507の処理が行われ(S502→S503→S504→S507),この場合も,エンジン6の制御用の目標回転数は通常の値Nhに設定され続け,通常の動力制御が行われる。
【0144】
その後,時刻t7にてレバー34が中立に戻されると,操作圧P17b(t)が低下し,操作圧P17b(t),P37b(t)の両方が閾値Pthよりも小さい値(無操作状態)となる。そのため,時刻t7から第1設定時間Tth1を経過するまではステップS507の処理が行われ(S502→S503→S504→S507),エンジン6の制御用の目標回転数は通常の値Nhに設定され続け,通常の動力制御が行われる。その後,時刻t7から第1設定時間Tth1を経過すると,時刻t7aにおいて
図13のステップS506の処理が行われ(S502→S503→S504→S506),エンジン6の制御用の目標回転数は動力低減制御(オートアイドル制御)の通常の値Nhよりも小さな値Nlに設定され,動力低減制御に移行する。その後,動力低減制御が行われ非動力低減時間TF50(t)が0になるため,
図13のステップS508の処理が行われ,動力低減制御が継続する(S502→S503→S505→S508)。
【0145】
~効果~
以上のように本実施の形態によれば,コントローラ50は,操作レバー14,34(複数の操作レバー)の少なくとも1つが操作されている状態から操作レバー14,34のいずれも操作されていない無操作状態に移行し,無操作状態に移行後の無操作時間が設定時間Tth1又はTth2を経過したときに,エンジン6及び油圧ポンプ1(動力源)が出力する動力を低減させる動力低減制御を行い,動力低減制御を行っている状態で操作レバー14,34の少なくとも1つが操作されたときは動力低減制御を解除し,エンジン6及び油圧ポンプ1が出力する動力を低減前の動力に復帰させる。
【0146】
これにより操作レバーの無操作時には動力低減制御を行い,かつ通常の動力状態への復帰時に,行いたい動作にスムーズに移行することができる。
【0147】
また,コントローラ50は,少なくとも1つの操作レバーが無操作状態に移行するまでの操作時間が予め設定した監視時間Tth0より長い場合には,設定時間を第1設定時間Tth1とし,少なくとも1つの操作レバーが無操作状態に移行するまでの操作時間が予め設定した監視時間Tth0より短い場合には,設定時間を第1設定時間Tth1よりも短い第2設定時間Tth2とする。このため誤操作により操作レバー14及び/又は34を動かしてしまったとき,一旦は動力低減制御が解除され通常の動力状態に復帰するが,その後短時間で動力低減状態に戻る。
【0148】
これにより誤操作により操作レバー14及び/又は34を動かしてしまった場合にエンジン6(動力源)の消費動力を抑制し,エンジン6の燃料消費量(消費エネルギー)を低減することができる。
【0149】
また,コントローラ50は,圧力センサ17b,17r,27b,27r,37b,37r,47l,47r(複数の操作状態検出装置)によって検出された操作レバー14,34の操作状態に基づいて無操作フラグF14(t),F34(t)(無操作状態情報)と動力低減フラグF50(t)(動力低減制御状態情報)を生成し,無操作フラグF14(t),F34(t)と動力低減フラグF50に基づいて非動力低減時間TF50(t)を算出し,この非動力低減時間TF50(t)を操作レバー14,34の操作時間として用いる。これによりコントローラ50の制御演算を簡素化することができる。
【0150】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について,
図15~
図18を用いて説明する。なお,本実施形態は第1の実施形態及び変形例2との相違部分を中心に説明し,第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0151】
まず,第2の実施形態における駆動システムの構成について説明する。
図15は,本実施形態の駆動システムの構成を示す図である。
【0152】
図15において,第2の実施形態及び変形例2の駆動システムが第1の実施形態と異なるのは,油圧ポンプ1が直流の電動モータ60Aによって駆動される点である。この電動モータ60Aはバッテリ62と電気的に接続されており,このバッテリ62から供給される電力によって駆動される。バッテリ62から出力される電力はバッテリ出力制御盤63によって制御され,バッテリ出力制御盤63はコントローラ50Aと電気的に接続されている。バッテリ出力制御盤63はコントローラ50Aから送信される目標バッテリ出力情報に基づいてバッテリ62が出力する電力を制御する。目標回転数指示装置77は目標電力指示装置77Aに置き換わっている。
【0153】
ここで,バッテリ62は電力供給装置を構成し,この電力供給装置と電動モータ60Aと油圧ポンプ1は動力源を構成する。また,当該動力源は,電力供給装置(バッテリ62)からの電力供給によって電動モータ60Aを駆動し,電動モータ60Aによって油圧ポンプ1を駆動することで動力を発生させる。
【0154】
次に,第2の実施形態におけるコントローラ50Aの機能について説明する。
図16は,コントローラ50Aの機能を示すブロック図である。
【0155】
コントローラ50Aは,電動モータ60Aへの電力供給を低減して電動モータ60Aの回転数を低減することで動力低減制御を行う。
【0156】
以下にコントローラ50Aの上記機能の詳細を説明する。
図16は,コントローラ50Aの機能を示すブロック図である。
【0157】
図16において,第2の実施形態におけるコントローラ50Aが第1の実施形態と異なるのは,動力演算部50cの代わりに動力演算部50cAを備え,動力演算部50cAは,センサ信号変換部50aから送信される圧力情報やスイッチフラグ,定数・テーブル記憶部50bから送信される定数情報やテーブル情報,及び目標電圧指示装置77Aから送信される目標電圧を受信し,バッテリ62の出力目標値である目標電流上限値を演算する点である。動力演算部50cAで演算された目標電流上限値はバッテリ出力制御盤63に送信され,バッテリ出力制御盤63はその値に基づいてバッテリ62の出力電流の上限値を制御する。
【0158】
次に,第2の実施形態における動力演算部50cAの機能について説明する。
図17は,動力演算部50cAの機能を示すブロック図である。
【0159】
図17において,第2の実施形態における動力演算部50cAが第1の実施形態と異なるのは,動力低減判定部50c-5の代わりに動力低減判定部50c-5Aを備え,動力低減判定部50c-5Aは目標電流上限値を出力する点である。動力低減判定部50c-5Aの入力は,目標回転数指示装置77が目標電力指示装置77Aに置き換わっている点を除いて動力低減判定部50c-5と同じである。
【0160】
次に,第2の実施形態における動力低減判定部50c-5Aの演算フローについて説明する。
図18は,動力低減判定部50c-5Aの演算フローを示すフローチャートである。
【0161】
図18において,第2の実施形態における動力低減判定部50c-5Aの演算フローが
図13に示す第1の実施形態における動力低減判定部50c-5の演算フローと異なるのは,ステップS506の代わりにステップS510の処理を,ステップS507の代わりにステップS511の処理を,ステップS508の代わりにステップS512の処理を,ステップS509の代わりにステップS513の処理をそれぞれ実行する点である。
【0162】
ステップS510において,動力低減判定部50c-5Aは,動力低減フラグF50(t)をtrueに設定すると同時に,制御用の目標電流上限値を通常の目標電流上限値よりも低い動力低減制御用の目標電流上限値に設定する。通常の目標電流上限値は目標電力指示装置77Aによって指示される目標電力をバッテリ62の定格電圧で割った値である。そして,バッテリ出力制御盤63に動力低減制御用の目標電流上限値を送信する。ステップS512もステップS510と同じ処理を行う。
【0163】
ステップS511において,動力低減判定部50c-5Aは,動力低減フラグF50(t)をfalseに設定すると同時に,制御用の目標電流上限値を目標電力指示装置77Aによって指示される目標電力から算出された通常の目標電流上限値に設定する。そして,バッテリ出力制御盤63にその通常の目標電流上限値を送信する。ステップS513もステップS511と同じ処理を行う。
【0164】
以上のように構成した第2の実施形態においては,動力源をバッテリ62(電力供給装置)と電動モータ60Aと油圧ポンプ1とで構成したものにおいて,第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち,操作レバーの無操作時には動力低減制御を行い,かつ通常の動力状態への復帰時に,行いたい動作にスムーズに移行することができるとともに,誤操作により操作レバー14及び/又は34を動かしてしまった場合に,電動モータ60Aの消費電力を抑制し,電動モータ60Aの電力消費量(消費エネルギー)を低減することができる。
【0165】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について,
図19から
図27を用いて説明する。本実施形態において動力低減は,駆動システムの電圧を下げることにより行う。
【0166】
まず,第3の実施の形態における駆動システムの構成について説明する。
図19は本実施形態の駆動システムの構成を示す図である。
【0167】
図19において,コントローラ50Bは,
図20に示す角度センサ72,角度センサ73,角度センサ74,角度センサ75と,スイッチ76及び目標電圧指示装置77Bと電気的に接続されており,これら角度センサ72~75とスイッチ76及び目標電圧指示装置77Bから角度情報,スイッチ情報及び目標電圧情報の信号を受信する。コントローラ50Bは,それらの信号に基づいてバッテリ62の出力目標値である制御用の目標電圧を演算し,コントローラ50Bと電気的に接続されているバッテリ出力制御盤63にその目標電圧を送信する。バッテリ出力制御盤63はその目標電圧になるようにバッテリ62の電圧を制御する。
【0168】
バッテリ62は,正極側電線81と負極側電線82とに接続され,正極側電線81と負極側電線82には,インバータ83,84,85,86が並列に接続されている。
【0169】
インバータ83は電動モータ87を駆動し,電動モータ87は更にシリンダ91(ブームシリンダ)を駆動する。シリンダ91は,ラックアンドピニオン機構などによって電動モータ87の回転運動を直線運動に変換し,伸縮を行う。インバータ83は角度センサ72から送信された信号を受信し,その情報に応じた回転数になるように電動モータ87を制御する。
【0170】
インバータ84は電動モータ88を駆動し,電動モータ88は更にシリンダ92(アームシリンダ)を駆動する。シリンダ92は,ラックアンドピニオン機構などによって電動モータ88の回転運動を直線運動に変換し,伸縮を行う。インバータ84は角度センサ73から送信された信号を受信し,その情報に応じた回転数になるように電動モータ88を制御する。
【0171】
インバータ85は電動モータ89を駆動し,電動モータ89は更にシリンダ93(バケットシリンダ)を駆動する。シリンダ93は,ラックアンドピニオン機構などによって電動モータ89の回転運動を直線運動に変換し,伸縮を行う。インバータ85は角度センサ74から送信された信号を受信し,その情報に応じた回転数になるように電動モータ89を制御する。
【0172】
インバータ86は電動モータ90(旋回モータ)を駆動する。インバータ86は角度センサ75から送信された信号を受信し,その情報に応じた回転数になるように電動モータ90を制御する。
【0173】
ここで,バッテリ62は電力供給装置であり,この電力供給装置は動力源を構成する。また,電動モータ87及びシリンダ91,電動モータ88及びシリンダ92,電動モータ89及びシリンダ93,電動モータ90は,それぞれ,電動アクチュエータであり,動力源からの動力を受けて作動する複数のアクチュエータを構成する。インバータ83,84,85,86は動力を複数のアクチュエータ(電動モータ87及びシリンダ91,電動モータ88及びシリンダ92,電動モータ89及びシリンダ93,電動モータ90)に分配する動力分配装置を構成する。
【0174】
次に,第3の実施形態における操作レバー装置の構成について,
図20及び
図21を用いて説明する。
【0175】
図20は,第3の実施形態における駆動システムの操作レバー装置の構成を示す図である。
【0176】
図20において,第3の実施形態における操作レバー装置が
図4に示す第1の実施形態の操作レバー装置と異なるのは,操作レバー装置114の代わりに操作レバー装置314を備え,操作レバー装置134の代わりに操作レバー装置334を備えている点である。操作レバー装置314,334は電気レバー方式であり,操作レバー装置314は,レバー14と,レバー14の前方向14b及び後方向14rの角度を検出する角度センサ72と,レバー14の左方向24b及び右方向24rの角度を検出する角度センサ73とを有している。操作レバー装置334は,レバー34と,レバー34の右方向34b及び左方向34rの角度を検出する角度センサ74と,レバー34の前方向44l及び後方向44rの角度を検出する角度センサ75とを有している。
【0177】
角度センサ72,73,74,75は,操作レバー装置314,334の操作状態を検出する複数の操作状態検出装置を構成する。
【0178】
角度センサ72,73,74,75はコントローラ50Bと電気的に接続され,コントローラ50Bに角度情報を送信する。
【0179】
また,角度センサ72はインバータ83に電気的に接続され,角度センサ73はインバータ85に電気的に接続され,角度センサ74はインバータ84に電気的に接続され,角度センサ75はインバータ86に電気的に接続され,それぞれ,インバータ83,85,84,86に角度情報を送信する。
【0180】
図21は,レバー14の前後方向14b,14rの傾き(角度)と電動モータ87の目標回転数の関係を示す図である。
図21に示すように,レバー14が前方向14bに傾くにしたがって電動モータ87の目標回転数が時計回り方向に大きくなる。また,無操作のときには電動モータ87の目標回転数は0になる。レバー14が後方向14rに傾くにしたがって電動モータ87の目標回転数が反時計回り方向に大きくなる。
【0181】
レバー14が右方向24r/左方向24b傾いたとき,レバー34が右方向34b/左方向34r及び前方向44l/後方向44rに傾いたときについても同様に電動モータ88,89,90の目標回転数が変化する。
【0182】
操作レバー装置314,334は,上記のような角度センサ72,73,74,75が検出する角度情報に基づいて,動力分配装置(インバータ83,84,85,86)に対して複数のアクチュエータ(電動モータ88及びシリンダ92,電動モータ89及びシリンダ93,電動モータ90)への動力の分配量を指示する。
【0183】
次に,第3の実施形態におけるコントローラ50Bの機能について説明する。
図22は,コントローラ50Bの機能を示すブロック図である。
【0184】
図22において,第3の実施形態におけるコントローラ50Bが第2の実施形態と異なるのは,センサ信号変換部50aの代わりにセンサ信号変換部50aBを備え,動力演算部50cAの代わりに動力演算部50cB備えている点である。
【0185】
センサ信号変換部50aBは,角度センサ72~75及びスイッチ76から送られてくる信号を受信し,角度情報及びスイッチフラグ情報に変換する。センサ信号変換部50aBは,変換した角度情報及びスイッチフラグ情報を動力演算部50cB送信する。
【0186】
定数・テーブル記憶部50bは,計算に必要な定数やテーブルを記憶しており,それらを動力演算部50cB送信する。
【0187】
動力演算部50cBは,センサ信号変換部50aBから送信される角度情報及びスイッチフラグ情報と,定数・テーブル記憶部50bから送信される定数情報及びテーブル情報と,目標電圧指示装置77Bから送信される目標電圧情報を受信し,バッテリ62の制御用の目標電圧を演算する。そして,動力演算部50cBはバッテリ出力制御盤63に制御用の目標電圧の指令信号を出力する。バッテリ出力制御盤63はその値に基づいてバッテリ62の電圧を制御する。
【0188】
次に,センサ信号変換部50aBにおけるセンサ信号の変換処理について説明する。
図23は,センサ信号変換部50aBが行う変換処理を説明する図であり,レバー14が前方向14b或いは後方向14rに傾いたときのものである。
【0189】
図23に示すように,センサ信号変換部50aBは,レバー14が前方向14bに傾くにつれてセンサ値A72(t)が大きくなるように変換する。また,無操作のときにはセンサ値A72(t)が0になるように変換する。レバー14が後方向14rに傾くとセンサ値A72(t)は負の値になる。レバー14が右方向24r/左方向24b傾いたとき,レバー34が右方向34b/左方向34r及び前方向44l/後方向44rに傾いたときについても同様である。センサ値A72(t)は
図21の電動モータ87の目標回転数に対応する値である。
【0190】
次に,第3の実施形態における動力演算部50cBの機能について説明する。
図24は,動力演算部50cBの機能を示すブロック図である。コントローラ50Bのサンプリング時間はΔtであるとする。
【0191】
図24において,第3の実施の形態にける動力演算部50cBが第2の実施形態と異なるのは,レバー14操作状態判定部50c-1の代わりにレバー14操作状態判定部50c-1Bを備え,レバー34操作状態判定部50c-2の代わりにレバー34操作状態判定部50c-2Bを備え,動力低減判定部50c-5Aの代わりに動力低減判定部50c-5Bを備える点である。
【0192】
次に,第3の実施形態におけるレバー14操作状態判定部50c-1Bの機能について説明する。
図25は,レバー14操作状態判定部50c-1Bの演算フローを示すフローチャートである。この演算フローは,例えばコントローラ50Bが動作している間,サンプリング時間Δtごと繰り返し処理される。
【0193】
レバー14操作状態判定部50c-1Bの演算フローが
図7に示す第1の実施形態におけるレバー14操作状態判定部50c-1の演算フローと異なるのは,ステップS102からステップS105の処理がなくなってステップS101からステップS110及びステップS111の処理に進む点である。
【0194】
ステップS110において,レバー14操作状態判定部50c-1Bは,センサ値A72(t)の絶対値が閾値Athより小さいかを判定する。センサ値A72(t)の絶対値が閾値Athより小さかった場合はYesと判定し,ステップS111の処理へと進む。センサ値A72(t)の絶対値が閾値Ath以上であった場合はNoと判定し,ステップS107の処理へと進む。
【0195】
ステップS111において,レバー14操作状態判定部50c-1Bは,センサ値A73(t)の絶対値が閾値Athより小さいかを判定する。センサ値A73(t)の絶対値が閾値Athより小さかった場合はYesと判定し,ステップS106の処理へと進む。センサ値A73(t) の絶対値が閾値Ath以上であった場合はNoと判定し,ステップS107の処理へと進む。
【0196】
ステップS106ではレバー14無操作フラグF14(t)をtrueに,ステップS107ではレバー14無操作フラグF14(t)をfalseに,それぞれ設定する。これらのフラグ情報は,レバー14無操作時間計測部50c-3と非動力低減時間計測部50c-7に送信される。
【0197】
次に,第3の実施形態におけるレバー34操作状態判定部50c-2Bの機能について説明する。
図26は,レバー34操作状態判定部50c-2Bの演算フローを示すフローチャートである。この演算フローは,例えばコントローラ50Bが動作している間,サンプリング時間Δtごと繰り返し処理される。
【0198】
レバー34操作状態判定部50c-2Bの演算フローが
図8に示す第1の実施形態におけるレバー34操作状態判定部50c-2の演算フローと異なるのは,ステップS202からステップS205の処理がなくなってステップS201からステップS210及びステップS211の処理に進む点である。
【0199】
ステップS210において,レバー34操作状態判定部50c-2Bは,センサ値A74(t)の絶対値が閾値Athより小さいかを判定する。センサ値A74(t)の絶対値が閾値Athより小さかった場合はYesと判定し,ステップS211の処理へと進む。センサ値A74(t)の絶対値が閾値Ath以上であった場合はNoと判定し,ステップS207の処理へと進む。
【0200】
ステップS211において,レバー34操作状態判定部50c-2Bは,センサ値A75(t)の絶対値が閾値Athより小さいかを判定する。センサ値A75(t)の絶対値が閾値Athより小さかった場合はYesと判定し,ステップS206の処理へと進む。センサ値A75(t)の絶対値が閾値Ath以上であった場合はNoと判定し,ステップS207の処理へと進む。
【0201】
ステップS206ではレバー34無操作フラグF34(t)をtrueに,ステップS207ではレバー34無操作フラグF34(t)をfalseに,それぞれ設定する。これらのフラグ情報は,レバー34無操作時間計測部50c-4と非動力低減時間計測部50c-7に送信される。
【0202】
このようにレバー14操作状態判定部50c-1Bは,センサ値A72(t)とセンサ値A73(t)からレバー14が操作されているかどうかを判定し,レバー14無操作フラグF14(t)を出力する。レバー34操作状態判定部50c-2Bは,センサ値A74(t)とセンサ値A75(t)からレバー34が操作されているかどうかを判定し,レバー34無操作フラグF34(t)を出力する。
【0203】
レバー14無操作時間計測部50c-3では,レバー14無操作時間Tu14(t)を計測し、この時間情報は,動力低減判定部50c-5Bに送信される。レバー34無操作時間計測部50c-4では,レバー34無操作時間Tu34(t)を計測し、この時間情報は,動力低減判定部50c-5Bに送信される。
【0204】
次に,第3の実施形態における動力低減判定部50c-5Bの演算フローについて説明する。
図27は,動力低減判定部50c-5Bの演算フローを示すフローチャートである。
【0205】
図27において,第3の実施形態における動力低減判定部50c-5Bの演算フローが
図18に示す第2の実施形態における動力低減判定部50c-5Aの演算フローと異なるのは,ステップS510の代わりにステップS520の処理を,ステップS511の代わりにステップS521の処理を,ステップS512の代わりにステップS522の処理を,ステップS513の代わりにステップS523の処理をそれぞれ実行する点である。
【0206】
ステップS520において,動力低減判定部50c-5Bは,動力低減フラグF50(t)をtrueに設定すると同時に,制御用の目標電圧を通常の目標電圧よりも低い動力低減制御用の目標電圧に設定する。通常の目標電圧は目標電圧指示装置77Bによって指示された目標電圧である。そして,バッテリ出力制御盤63に動力低減制御用の目標電圧を送信する。ステップS522もステップS520と同じ処理を行う。
【0207】
ステップS521において,動力低減判定部50c-5Bは,動力低減フラグF50(t)をfalseに設定すると同時に,制御用の目標電圧を目標電圧指示装置77Bによって指示された通常の目標電圧に設定する。そして,バッテリ出力制御盤63に通常の目標電圧を送信する。ステップS523もステップS521と同じ処理を行う。
【0208】
以上のように構成した第3の実施形態においては,動力源をバッテリ62(電力供給装置)で構成し,アクチュエータを電動モータ87~90を含む電動アクチュエータで構成したものにおいて,第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち,操作レバーの無操作時には動力低減制御を行い,かつ通常の動力状態への復帰時に,行いたい動作にスムーズに移行することができるとともに,誤操作により操作レバー14及び/又は34を動かしてしまった場合にバッテリ62の消費電力を低減し,バッテリ62の電力消費量(消費エネルギー)を低減することができる。
【0209】
<変形例1>
第1の実施形態においては,操作レバー装置114,134がパイロット弁を備える油圧パイロット方式であり,操作状態検出装置がパイロット弁によって生成された操作圧を検出する圧力センサ17b,17r,27b,27r,37b,37r,47l,47rである場合について説明したが,操作状態検出装置はそれ以外の構成であってもよい。
【0210】
例えば,
図2に示したパイロットポンプ51の吐出油をタンク5に導く1つ又は複数の信号圧生成管路を設け,この1つ又は複数の信号圧生成管路に複数の信号圧生成弁を配置し,この信号圧生成弁をパイロット弁によって生成された操作圧によって切換えて,この信号圧生成弁を開く,或いは閉じることで変化する信号圧生成管路の圧力を検出することで操作レバー装置の操作状態を検出してもよい。
【0211】
図28は,そのような信号圧生成弁を備えた操作状態検出装置の一例を示す図である。
【0212】
図28において,符号52aはパイロットポンプ51に接続されたパイロット管路52(
図2及び
図4参照)から分岐したパイロット管路であり,パイロット管路52aには絞り部66とチェック弁68を介して信号圧生成管路52bが接続され,信号圧生成管路52bの下流はタンク5に接続されている。信号圧生成管路52b上には常時開の信号圧生成弁78a,78b,78c,78dが直列に接続され,信号圧生成管路52bの信号圧生成弁78a,78b,78c,78dの上流に圧力センサ70が接続されている。
【0213】
信号圧生成弁78aは,
図4に示した管路16b,16rに生成され管路16b-1,16r-1に導かれた操作圧により切り換え可能であり,レバー14が操作され管路16b,16rのいずれかに操作圧が生成されると信号圧生成弁78aは閉じ,信号圧生成管路52bに信号圧が生成される。圧力センサ70はその圧力を計測し,コントローラ50に信号を送信する。
【0214】
信号圧生成弁78b,78c,78dも同様であり,それぞれ,
図4に示したレバー14が操作され,管路26b,26r,管路36b,36r,管路46b,46rのいずれかに操作圧が生成されると信号圧生成弁78b,78c,78dは閉じ,信号圧生成管路52bに信号圧が生成される。圧力センサ70はその圧力を計測し,コントローラ50に信号を送信する。
【0215】
コントローラ50は,圧力センサ70から送信された信号に基づき,レバー14とレバー34の少なくとも1つ操作されている状態かを判定する。
【0216】
図29は,信号圧生成弁を備えた操作状態検出装置の他の例を示す図である。
【0217】
図29において,チェック弁68の下流の信号圧生成管路52bには常時閉の信号圧生成弁79a,79b,79c,79dが並列に接続され,信号圧生成弁79a,79b,79c,79dの下流はそれぞれタンク5に接続されている。
【0218】
レバー14が操作されて管路16b,16rのいずれかに操作圧が生成され,その操作圧が管路16b-1,16r-1のいずれかに導かれると信号圧生成弁79aは開き,信号圧生成管路52bがタンク圧となる。圧力センサ70はその圧力を信号圧として計測し,コントローラ50に信号を送信する。
【0219】
信号圧生成弁79b,79c,79dも同様であり,それぞれ,レバー14が操作され,管路26b,26r,管路36b,36r,管路46b,46rのいずれかに操作圧が生成されると信号圧生成弁79b,79c,79dは開き,信号圧生成管路52bがタンク圧となる。圧力センサ70はその圧力を信号圧として計測し,コントローラ50に信号を送信する。
【0220】
コントローラ50は,圧力センサ70から送信された信号に基づき,レバー14とレバー34の少なくとも1つが操作されている状態かを判定する。
【0221】
操作状態検出装置を上記のような構成とすることにより,圧力センサ70が1つで済み,操作状態検出装置の構成及びコントローラ50の信号処理を簡素化することができる。
【0222】
また,操作状態検出装置の他の変形例として,操作レバー装置114,134が
図4に示すような油圧パイロット方式である場合においても,
図20に示した第3の実施形態のように操作レバー14,34に角度センサ72,73,74,75を設け,操作レバー14,34の角度を検出することで操作レバー装置114,134の操作状態を検出してもよい。
【0223】
<変形例2>
第1の実施形態においては,駆動システムの動力源をエンジン6を含む構成とし,第2の実施形態においては,駆動システムの動力源を直流の電動モータ60Aを含む構成としたが,エンジン6又は直流の電動モータ60Aに代え,交流の電動モータを含む構成としもよい。
図30はそのような駆動システムの変形例を示す図である。
【0224】
図30において,本変形例の駆動システムが第1の実施形態と異なるのは,油圧ポンプ1が交流の電動モータ60Bによって駆動され,油圧ポンプ1と交流の電動モータ60B及びバッテリ62とで駆動システムの動力源を構成し,電動モータ60Bをインバータ61によって制御している点である。インバータ61はコントローラ50と電気的に接続されている。
【0225】
コントローラ50は
図5に示したコントローラ50と同様の処理を行い,制御用の目標回転数を算出する。また,インバータ61はバッテリ62とも電気的に接続されており,コントローラ50からの目標回転数に基づいてバッテリ62の直流電流を三相の交流電流に変換し,電動モータ60Bはその交流電流により駆動される。
【0226】
このような構成においても,第1及び第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0227】
1:油圧ポンプ(動力源)
2:管路
3:リリーフ弁
4:リリーフ管路
5:タンク
6:エンジン(動力源)
7:回転数制御装置
8,9:管路
10,20,30,40:チェック弁
11,21,31,41:管路
12,22,32,42:方向制御弁(動力分配装置)
12r,12b,22r,22b,32r,32b,42r,42l:パイロット管路
13,23,33:シリンダ(アクチュエータ)
13B,23B,33B:ボトム管路
13R,23R,33R:ロッド管路
13T,23T,33T,43T:タンク管路
13C,23C,33C,43C:センタバイパス管路
14:操作レバー(第1操作レバー)
15r,15b,25r,25b,35r,35b,45r,45l:パイロット弁
16r,16b,26r,26b,36r,36b,46r,46l:管路
17r,17b,27r,27b,37r,37b,47l,47r:圧力センサ(操作状態検出装置)
18,28,38,48:管路
19,29,39,49:管路
34:操作レバー(第2操作レバー)
43:油圧モータ
43L:左回転管路
43R:右回転管路
50,50A,50B:コントローラ
51:パイロットポンプ
52:パイロット管路
53:リリーフ弁
60A:電動モータ(直流) (動力源)
60B:電動モータ(交流) (動力源)
61:インバータ
62:バッテリ(電力供給装置;動力源)
63:バッテリ出力制御盤
70:圧力センサ(操作状態検出装置)
72,73,74,75:角度センサ(操作状態検出装置)
76:スイッチ
77:目標回転数指示装置
77A:目標電力指示装置
77B:目標電圧指示装置
81:正極側電線
82:負極側電線
83,84,85,86:インバータ(動力分配装置)
87,88,89,90:電動モータ(アクチュエータ)
91,92,93:シリンダ(アクチュエータ)
94,95,96,97:絞り部
114,134:操作レバー装置
314,334:操作レバー装置
Tth0 監視時間
Tth1 第1設定時間
Tth2 第2設定時間