(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤、並びに該コーティング剤のコーティング層を有する紙基材、プラスチック基材、容器及び包装材
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20221109BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221109BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20221109BHJP
B32B 25/06 20060101ALI20221109BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/63
C09D7/62
B32B25/06
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2022528643
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2021043095
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2020203289
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】大門 晃
(72)【発明者】
【氏名】寺川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】中村 都詩
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 敏生
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-305008(JP,A)
【文献】特開2002-294128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00,101/00-201/10
B32B 25/06
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)、抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)、沈降防止剤(C)、及び有機溶剤を含有し、前記沈降防止剤(C)を、前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)に対して0.1~50.0質量%含有する紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤であって、
前記バインダー樹脂(A)が、ウレタン系樹脂/塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂/繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂/繊維素系樹脂、アクリル系樹脂/繊維素系樹脂、又は塩化ビニル系樹脂/繊維素系樹脂、から選ばれる組み合わせであることを特徴とする紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤。
但し前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)が銀担持ゼオライトであり、前記沈降防止剤(C)が脂肪酸アマイドである。
【請求項2】
イソシアネート化合物(E)を含有する請求項
1に記載の紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のコーティング剤を紙基材及びフィルムにコーティングした紙基材又はプラスチック基材。
【請求項4】
前記紙基材又はプラスチック基材が、印刷インキ層を更に有する請求項
3に記載の紙基材又はプラスチック基材。
【請求項5】
請求
3又は4に記載の紙基材又はプラスチック基材を使用した容器、包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装用グラビアインキやフレキソインキとして使用可能な紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な基材表面への機能性付与が求められており、プラスチック材料、成形品、紙基材、フィルム基材、包装材等の表面特性の改良に必要とされている。これらの機能を基材表面に付与する方法として、表面に各種機能を有する高分子フィルム等を貼り付けるという方法が、広く知られている。しかし、この方法は、フィルム張り付けに手間がかかり、基材との密着性、加工性も不充分な場合が多く、またコスト的にも高価であった。
一方、これらの基材表面への機能性付与として、コーティングによりこれらの機能を発現させる方法も知られている。コーティング法は成形や加工前の基材はもとより、成型後や加工後の基材へ、所望する部分のみへの付与も可能であることから利便性が高い、一方で
フィルムに比べて機能性、耐性が劣る場合も多い。
基材として、特に食品包装や生活コーティング消費材に多用されるポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム等のフィルム基材は、撥水、撥油、防汚、帯電防止、反射防止、擦り傷防止等といった物理的機能性の他、最近では衛生的機能、例えば抗菌性、防カビ性、抗ウイルス性、消臭性といった機能も所望される。
【0003】
一方、抗菌や防カビ、消臭機能を有する化合物として、ゼオライト粒子、シリカゲル粒子、アルミナ粒子、リン酸塩粒子等を担体として、これらの担体粒子に銀化合物を担持させた化合物が知られている。例えば銀担持ゼオライトを抗菌剤として使用した例としては、紙用コーティング剤や紙用ヒートシール剤(例えば特許文献1、2参照)や、フィルム製造時にインラインコーティングとして使用するインラインコーティング剤が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、汎用の銀担持ゼオライトは比重が約2g/cm3以上もあり、コーティング剤として配合した場合、早期に沈殿を起こすためハンドリングが悪いことや、コーティング方法として例えばグラビアコート法等を用いた場合には、基材へ銀担持ゼオライトそのものが転移しにくい、といった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-203600号公報
【文献】特開2017-040013号公報
【文献】WO09/062617
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、銀担持ゼオライト等の抗菌剤や防カビ剤を使用した抗菌性あるいは防カビ性を有する紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤であって、塗工適性に優れるコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、バインダー樹脂(A)、抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)、沈降防止剤(C)、及び有機溶剤を含有し、前記沈降防止剤(C)を、前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)に対して特定量含有する紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤を提供するものである。
【0008】
即ち本発明は、バインダー樹脂(A)、抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)、沈降防止剤(C)、及び有機溶剤を含有し、前記沈降防止剤(C)を、前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)に対して0.1~50.0質量%含有する紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤に関する。
【0009】
また、本発明は、前記バインダー樹脂(A)が、繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、又は塩化ビニル系樹脂を含有する紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤に関する。
【0010】
また、本発明は、前記バインダー樹脂が、ウレタン系樹脂/塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂/繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂/繊維素系樹脂、アクリル系樹脂/繊維素系樹脂、又は塩化ビニル系樹脂/繊維素系樹脂、から選ばれる組み合わせである紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤に関する。
【0011】
また、本発明は、前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)が銀担持ゼオライトである紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤に関する。
【0012】
また、本発明は、前記沈降防止剤(C)が脂肪酸アマイドである紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤に関する。
【0013】
また、本発明は、イソシアネート化合物(E)を含有する紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤に関する。
【0014】
また、本発明は、前記コーティング剤を紙基材及びフィルムにコーティングした紙基材又はプラスチック基材に関する。
【0015】
また、本発明は、前記紙基材又はプラスチック基材が、印刷インキ層を更に有する紙基材又はプラスチック基材に関する。
【0016】
また、本発明は、紙基材又はプラスチック基材を使用した容器、包装材に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、銀担持ゼオライト等の抗菌剤や防カビ剤を使用し且つ塗工適性に優れる抗菌性や防カビ性のコーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(言葉の定義)
本発明において「部」とは全て「質量部」を示し、「コーティング剤全量」とは、有機溶剤等の揮発性成分をすべて含んだインキの全量を示し、「コーティング剤固形分全量」とは、揮発性成分を含まない、不揮発性成分のみの全量を示す。
【0019】
(バインダー樹脂(A))
本発明の紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤に使用するバインダー樹脂(A)としては、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチロネート(CAB)などセルロース系樹脂等の繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。
【0020】
(繊維素系樹脂)
繊維素系樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートその他のセルロースエステル樹脂、ニトロセルロース(硝化綿ともいう)、ヒドロキシアルキルセルロース、およびカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、およびニトロセルロースが好ましい。特に好ましくはニトロセルロースである。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。本発明のポリウレタン樹脂(A)の併用では、耐ブロッキング性、耐擦傷性その他のインキ被膜物性が向上することが期待できる。
ニトロセルロース(硝化綿)は、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましい。
【0021】
ニトロセルロース(硝化綿)を使用する事で、顔料への高い分散性が得られる事から、特に表刷り用コーティング剤として使用すれば、印刷インキ塗膜の強度を向上させることができ好適である。前記ニトロセルロース(硝化綿)としては、窒素含有量が10~13質量%、平均重合度30~500が好ましく、より好ましくは窒素含有量が10~13質量%、平均重合度45~290である。
【0022】
ニトロセルロース(硝化綿)の添加量としては、インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0023】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂としては、例えば多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得ることができる有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドである。特に、重合脂肪酸および/またはダイマー酸を含有する酸成分と、脂肪族および/または芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂であることが好ましく、更には一級および二級モノアミンを一部含有するものが好ましい。
ポリアミド樹脂の原料で使用される多塩基酸としては、以下に限定されるものではないが、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、重合脂肪酸などが挙げられ、その中でもダイマー酸あるいは重合脂肪酸に由来する構造を主成分(ポリアミド樹脂中に50質量%以上)含有するポリアミド樹脂が好ましい。ここで、重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸(ダイマー酸)、三量化重合脂肪酸等を含むものである。なお、ダイマー酸あるいは重合脂肪酸を構成する脂肪酸は大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来など天然油に由来するものを好適に挙げることができ、オレイン酸およびリノール酸から得られるものが好ましい。
多塩基酸には、モノカルボン酸を併用することもできる。併用されるモノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
【0024】
多価アミンとしては、ポリアミン、一級または二級モノアミンなど挙げることができる。ポリアミド樹脂に使用されるポリアミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミンを挙げることができ、脂環族ポリアミンとしては、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。また、芳香脂肪族ポリアミンとしてはキシリレンジアミン、芳香族ポリアミンとしてはフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等を挙げることができる。さらに、一級及び二級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどを挙げることができる。
ポリアミド樹脂の添加量としては、インキ全量に対し、0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0025】
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得たポリウレタン樹脂であれば特に限定されない。ポリオールとしては例えば、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4―ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの飽和または不飽和の低分子ポリオール類(1)、これらの低分子ポリオール類(1)と、セバシン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオール類(2);環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類、を開環重合して得られるポリエステルポリオール類(3);前記低分子ポリオール類(1)などと、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(4);ポリブタジエングリコール類(5);ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(6);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(7)などが挙げられる。
【0026】
ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
また鎖伸長剤を使用することもできる。鎖伸長剤としては例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
ウレタン樹脂の重量平均分子量は10,000~100,000であることが好ましく、より好ましくは15,000~80,000の範囲である。
【0029】
ウレタン樹脂として、特に好ましくは、炭素数が7以上、かつカルボキシル基を2つ以上有するポリカルボン酸と水酸基を2個以上有する化合物とを反応原料とするポリエステルポリオールを、ポリイソシアネートと反応させたウレタン樹脂(A)である。
【0030】
炭素数が7以上、かつカルボキシル基を2つ以上有するポリカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの酸の無水物等の芳香族ジカルボン酸やピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸及びその無水物等のトリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸及びこれらの酸の無水物等を用いる事が出来る。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、セバシン酸、ダイマー酸を用いた場合、幅広い種類の各種フィルム基材への密着性が得られる点で好ましく、これらを単独で使用しても、併用してもよい。
【0031】
前記ポリエステルポリオールは、必要に応じて他の多価カルボン酸を使用してもよく、ポリエステルポリオールの製造に一般的に用いられる各種公知の多価カルボン酸を用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えばアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸等が挙げられる。
【0032】
また、近年環境問題への地球規模の意識が高まる中、地球温暖化に影響を及ぼす石油由来原料ではなく植物等のバイオマス資源由来の原料へ注目が高まっており、これらの原料を使用することも可能である。バイオマス資源由来の多価カルボン酸としては、こはく酸、無水こはく酸などが挙げられる。
【0033】
前記水酸基を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のグリコール;2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3,5-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐構造を有するグリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
また、多価カルボン酸同様、水酸基を2個以上有する化合物においても植物等のバイオマス資源由来の原料を使用することも可能である。バイオマス資源由来の水酸基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0035】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量としては、500~8,000の範囲であることが好ましく、800~7,000の範囲であることがより好ましく、900~6,000の範囲であることが更に好ましい。
【0036】
更に、前記ポリウレタン樹脂(A)の構成成分として、ポリエーテルポリオールをポリウレタン樹脂に対して1~40質量%の範囲で含有すればより好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のエーテルポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類等が挙げられる。前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量は100~3500であればより好ましい。
【0037】
本発明のリキッドインキ組成物で使用するポリウレタン樹脂(A)に必要に応じて使用される併用ポリオール、ポリイソシアネート化合物、鎖伸長剤、末端封鎖剤等は、前述のものをそのまま使用できる。
前記ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、10,000~100,000の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは15,000~95,000の範囲である。
【0038】
これらのウレタン樹脂の添加量としては、インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0039】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性モノマーが共重合したものであれば特段限定されない。重合性モノマーとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。重合法も特に限定なく公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合法等で得たものを使用することができる。
アクリル樹脂の重量平均分子量は5,000~200,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~100,000の範囲である。
また、アクリル樹脂の添加量としては、インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0040】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、アルコールとカルボン酸とを公知のエステル化重合反応を用いて反応させてなるポリエステル樹脂であれば特段限定されない。
アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビド等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能アルコールが好ましい。
カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、リノール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能カルボン酸が好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は500~6000であることが好ましい。さらに好ましくは1400~5500である
また、ポリエステル樹脂の添加量としては、インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0041】
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)
塩化ビニル系樹脂としては塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂が汎用的であり好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであれば、特段限定されない。分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中、酢酸ビニルモノマー由来の構造は1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上、更に基材への密着性、被膜物性、耐擦傷性等が良好となる。
また有機溶剤への溶解性の観点からビニルアルコール構造由来の水酸基を含むものも好ましい。水酸基価としては20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
また塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の添加量としては、インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0042】
(ロジン系樹脂)
ロジン系樹脂は、ロジン骨格を有する樹脂であれば特に限定されないが、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル、ロジンフェノール、重合ロジンなどが好ましい。軟化点(環球法による)が90~200℃であることが好ましい。
中でも、繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂が好ましい。特にバインダー樹脂を少なくとも二種の樹脂を含有することが好ましい。
好ましくは、ウレタン系樹脂/塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂/繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂/繊維素系樹脂、アクリル系樹脂/繊維素系樹脂、塩化ビニル系樹脂/繊維素系樹脂から選ばれる組み合わせであり、バインダー樹脂(A)100質量%中、二種の樹脂が合計で80~100質量%含むことが好ましく、さらに好ましくは90~100質量%であることが最も好ましい。
【0043】
更に、ウレタン系樹脂/塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂/繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂/繊維素系樹脂、アクリル系樹脂/繊維素系樹脂は、塩化ビニル系樹脂/繊維素系樹脂は、それぞれ質量比で95/5~20/80であることが好ましい。より好ましくは質量比で90/10~50/50である。この組み合わせにより、コーティング剤に所望される基本性能である耐摩擦性、耐ブロッキング性、耐熱性、耐油等に優れる。
【0044】
(硬化剤)
また、バインダー樹脂(A)に硬化剤を併用してもよい。硬化剤としては有機溶剤系のグラビアインキで汎用の硬化剤を使用すればよいが、最もよく使用されるのはイソシアネート系の硬化剤である。
イソシアネート化合物の添加量としては、硬化効率の観点からリキッド印刷インキ固形分に対し0.3質量%~10.0質量%の範囲が好ましく、1.0質量%~7.0質量%であればより好ましい。
バインダー樹脂(A)は、本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤に対して0.15~50質量%の範囲であることが好ましく、1~40質量%の範囲で使用することが最も好ましい。
【0045】
(抗菌剤及び/又は防カビ剤(B))
本発明に用いる抗菌剤及び/又は防カビの種類は特に限定されないが、抗菌性及び防カビ性に優れることから、銀系抗菌剤及び/又は銀系防カビ剤を用いることが好ましい。
銀系抗菌剤として、ゼオライト粒子、シリカゲル粒子、アルミナ粒子、リン酸塩粒子等を担体として、これらの担体粒子に銀化合物を担持させた銀担持抗菌剤のほか、炭酸銀等が挙げられる。中でも銀担持ゼオライトが好ましい。抗菌剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの銀担持抗菌剤は合わせて防カビ効果を有するものも多く、防カビ剤としても好ましく使用できる。このような抗菌剤及び/又は防カビ剤の例として、「ゼオミック」(シナネンゼオミック株式会社製)、「バクテキラー」(富士ケミカル株式会社製)、「ノバロン」(東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
【0046】
また、前記銀系抗菌剤及び/又は銀系防カビ剤の他、有機系抗菌剤及び/又は防カビ剤を無機化合物に複合坦持させた有機/無機ハイブリッド型の抗菌剤及び/又は防カビ剤を用いることができる。このハイブリッド型の抗菌剤及び/又は防カビ剤は、有機成分の持つ即効性と、無機成分の持つ耐熱性、持続性を兼ね備えている。また、複数の有効成分を担持させることで、それぞれ効力を発現する菌/カビ種が異なることから、幅広い分野での抗菌/防カビ性能が期待できる。このような抗菌剤及び/又は防カビ剤の例として、「エッセンガード」(シナネンゼオミック株式会社製)、「ラサップ」(ラサ工業株式会社製)、「カビノン」(東亞合成株式会社製)、「ハイブリッド・イオンピュア」(石塚硝子株式会社)などが挙げられる。
【0047】
本発明のコーティング剤中の抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)の含有量は、特に限定されないが、過小であると抗菌性あるいは防カビ性を発現しにくく、過大であるとコーティング剤の粘性が上がり、コーティング剤中に抗菌剤あるいは防カビ剤のダマ(かたまり)が生じやすくなり、コーティング剤をフィルム表面に均一に塗工しにくくなる。よって、抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)の含有量は、コーティング剤の固形分に対し1.0質量%~20.0質量%の範囲が好ましく、5.0質量%~10.0質量%であればより好ましい。
【0048】
前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)の平均粒径は、特に限定されないが、走査電子顕微鏡を用いてJIS H 7804法に準じて測定した平均粒径が0.5μm以上4μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上3μmである。前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)の平均粒径が小さすぎると、コーティング剤の硬化膜の表面に抗菌剤あるいは防カビ剤が現れず、充分な抗菌性や防カビ性が得られない可能性があるため、好ましくない。前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)の平均粒径が大きすぎると、グラビア版でのコーティングが困難になる傾向にある。また前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)の平均粒径が大きすぎると、抗菌剤、防カビ剤がコーティング剤中で沈降しやすくなる傾向にある。
【0049】
(沈降防止剤(C))
本発明は、前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)として使用する銀担持抗菌剤の沈降防止を目的として沈降防止剤(C)を使用することを必須とする。沈降防止剤(C)としては脂肪酸アマイドが好ましく、具体的にはパルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、及びヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド等を使用することができる。これらの脂肪酸アマイドは1種でも複数以上を併用して使用するのでもよい。なお脂肪酸アマイドは、コーティング剤固形分に対し0.1~10.0質量%含有することが特徴である。中でも0.1~5.0質量%が好ましく0.5~2.0質量%が最も好ましい。
また脂肪酸アマイドは、前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)に対して0.1~50.0質量%含有することが好ましい。中でも1.0~30.0質量%が好ましく、10.0~20.0質量%が最も好ましい。
【0050】
前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)として使用する銀担持抗菌剤と前記沈降防止剤(C)とを併用することで、コーティング剤中の銀担持抗菌剤は、コーティング中に効率的に基材に転移することができる。特にこの効果はグラビアコーティング法のように版を使用するコーティング方法の際に顕著である。この理由は定かではないが、沈降防止剤(C)を含有するコーティング剤は粘性を有するために比重が重い銀担持抗菌剤でも好適に基材に転移させることができるが、沈降防止剤(C)を含有しない場合はコーティング剤の流動性がニュートニアンに近い挙動を示し、比重の重い銀担持抗菌剤が版に残ってしまうものと推定される。あるいは沈降防止剤(C)を含有するコーティング剤は銀担持抗菌剤が均一に安定に存在できると推定され、これにより銀担持抗菌剤が均一な割合で基材に転移するものと推定される。
【0051】
(有機溶剤)
本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤で使用する有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合しても用いることができる。
【0052】
尚、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロパノール、ノルマルプロパノールなどを使用し、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しない事がより好ましい。
【0053】
中でもポリウレタン樹脂、硝化綿への溶解性の観点から、イソプロピルアルコール/酢酸エチル/メトキシプロパノールの混合液がより好ましい。また、乾燥調整のためにインキ全量の10質量%未満であればグリコールエーテル類を添加する事も出来る。
本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤は、その他、コーティング剤に所望される基本物性を付与することを目的として、ワックス、キレート架橋剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0054】
(紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤の製造方法)
本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤は、前記バインダー樹脂(A)や抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)等を有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0055】
本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤は、一般的なコーティング方法によりプラスチック材料、成形品、フィルム基材、包装材等の基材にコーティング可能である、具体的には、グラビアロールコーティング(グラビアコーター)、フレキソロールコーティング(フレキソコーター)、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。中でも工業的観点から、グラビアロールコーティング(グラビアコーター)、フレキソロールコーティング(フレキソコーター)を使用することが好ましい。
【0056】
また、基材を本発明のオーバーコーティング剤に含浸させることにより、基材上にコーティング層を設けてもよい。
本発明のコーティング剤を、グラビアコーターを用いてコーティングする場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#3を使用し25℃にて12~30秒であればよく、より好ましくは15~20秒である。
また、本発明のコーティング剤を、フレキソコーターを用いてコーティングする場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#4を使用し25℃にて7~40秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。
【0057】
本発明のコーティング層の厚みは、用途や基材の材質により適宜調整できるが、例えば0.1μm~5μmの範囲が好ましく、0.3μm~3μmの範囲が好ましく、0.5~2μmの範囲が好ましい。
【0058】
本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤は分散性に優れていることから、該コーティング剤を用いて形成されたコーティング層において、抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)の一部が露出される構造となりやすい。そのため、本発明におけるコーティング層は抗菌あるいは抗カビ効果を最大限に発揮することができる。
【0059】
(本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤)
本発明で使用する基材は、紙基材またはプラスチック基材である。
【0060】
(紙基材)
紙基材は、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。
また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0061】
(プラスチック基材)
プラスチック基材は、プラスチック材料、成形品、フィルム基材、包装材等の基材に使用される基材であればよいが、特に、グラビアロールコーティング(グラビアコーター)、フレキソロールコーティング(フレキソコーター)を使用する場合には、グラビア・フレキソ印刷分野で通常使用されているフィルム基材をそのまま使用できる。
具体的には例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、原料として石油由来の原料あるいは植物由来の原料が使用されているが本発明においてはどちらでもよい。またこれらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。また基材フィルムにはコロナ放電処理がされていることが好ましく、アルミ、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
【0062】
また基材は、前記紙基材やフィルム基材をドライラミネート法や無溶剤ラミネート法、あるいは押出ラミネート法により積層させた積層構造を有する積層体(積層フィルムと称される場合もある)であっても構わない。また該積層体の構成に、金属箔、金属蒸着膜層、無機蒸着膜層、酸素吸収層、アンカーコート層、印刷層、ニス層等があっても構わない。このような積層体は用途に応じて多種存在するが、現在食品包装用や生活用品に最も多く使用される構成は、紙基材やフィルム基材を(F)と表現し、印刷やニス層を(P)と表現し、金属箔や蒸着膜層の金属あるいは無機層を(M)と表現し、接着剤層を(AD)、ホットメルト接着剤やヒートシール剤やコールドシール剤を(AD2)と表現すると、積層フィルムの具体的態様として以下の構成が考えられるが、もちろんこれに限定されることはない。
【0063】
(F)/(P)/(F)
(F)/(P)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(M)、
(F)/(P)/(AD)/(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(M)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(M)/(P)/(AD)/(M)、
(M)/(P)/(AD)/(F)/(AD)/(M)、
(P)/(F)
(P)/(F)/(P)
(P)/(F)/(AD)/(F)、
(P)/(F)/(AD)/(F)/(AD)/(F)
(F)/(P)/(F)/(AD2)
(F)/(P)/(AD2)
(F)/(P)/(AD)/(M)/(AD2)
【0064】
前記単層の紙基材あるいはフィルム基材、積層構造を有する積層体は、業界や使用方法等により、機能性フィルム、軟包装フィルム、シュリンクフィルム、生活用品包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、食品包装用フィルム、カートン、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等様々な表現がなされているが、本発明の紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤は特に限定なく使用することができる。この際本発明の紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤は、これらを使用した容器や包装材とした際に最表層となる面にコーティングされることが好ましい。
【0065】
前述の通り、積層構造を有する積層体として、紙基材やフィルム基材には印刷層が施された印刷層を有する積層体も多いが、本発明の紙基材用又はプラスチック基材用コーティング剤は、該印刷インキ層を有する基材上にコーティングすることももちろんでき好ましい。
【0066】
印刷インキ層に使用される印刷インキには特に限定はなく、オフセット平版インキ、グラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ、インクジェット印刷インキ等の印刷層上にコーティングは可能である。特に、コーティング方法つぃてグラビアロールコーティング(グラビアコーター)、フレキソロールコーティング(フレキソコーター)を使用する場合には、インライン印刷が可能であることからグラビア印刷インキやフレキソ印刷インキと組み合わせることが、工業的に好ましい。
グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ(以後リキッド印刷インキと称する)は、バインダー樹脂、顔料、溶剤、必要に応じて添加剤からなる印刷インキから形成される。
【0067】
(リキッド印刷インキ)
グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキとして使用されるリキッド印刷インキは、有機溶剤を主溶媒とする有機溶剤型リキッド印刷インキと、水を主溶媒とする水性リキッド印刷インキとに大別される。
【0068】
(有機溶剤型リキッド印刷インキ)
有機溶剤型リキッド印刷インキは、本発明で使用する変性顔料の他、後述のバインダー樹脂、有機溶剤媒体、分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。得られた顔料分散体に樹脂、水性媒体、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される。
【0069】
有機溶剤型リキッド印刷インキのインキ粘度は、グラビアインキとして使用する場合であっても、フレキソインキとして使用する場合であっても、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0070】
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、バインダー樹脂、顔料、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0071】
(印刷物の作成)
有機溶剤型リキッド印刷インキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。
【0072】
本発明の有機溶剤型リキッド印刷インキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成される印刷インキの膜厚は、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0073】
(バインダー樹脂)
有機溶剤型リキッド印刷インキ用のバインダー樹脂としては特に限定なく、一般の特に限定なく一般のリキッド印刷インキに使用される、ポリウレタン系樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0074】
上記の中でも、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ダンマル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂および環化ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むバインダー樹脂が好ましい。
バインダー樹脂の含有量は、本発明の水性リキッド印刷インキの固形分換算で固形分換算で1~50質量%の範囲であり、更に好ましくは2~40質量%である。
【0075】
(有機溶剤)
有機溶剤型リキッド印刷インキ用の有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合しても用いることができる。
【0076】
有機溶剤型リキッド印刷インキでは更に必要に応じて、ワックス、キレート系架橋剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0077】
(着色剤)
有機溶剤型リキッド印刷インキは、着色剤として前記変性顔料を使用するが、そのほかに、一般のインキ、塗料、及び記録剤などに使用されている有機顔料及び/または無機顔料を併用してもよい。
有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
【0078】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏などの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
前記顔料の平均粒子径は、10~200nmの範囲にあるものが好ましくより好ましくは50~150nm程度のものである。
前記顔料は、水性リキッド印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総質量に対して1~60質量%、インキ中の固形分質量比では10~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの顔料は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0079】
(水性リキッド印刷インキ)
水性リキッド印刷インキは、本発明で使用する変性顔料の他、後述のバインダー樹脂、水性媒体、分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。得られた顔料分散体に樹脂、水性媒体、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される
水性リキッド印刷インキを、フレキソインキとして使用する場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#4を使用し25℃にて7~25秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。また、得られたフレキソインキの25℃における表面張力は、25~50mN/mが好ましく、33~43mN/mであればより好ましい。インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回るとインキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にあり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回るとフィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。
【0080】
一方で水性リキッド印刷インキを、グラビアインキとして使用する場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#3を使用し25℃にて7~25秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。また、得られたグラビアインキの25℃における表面張力は、フレキソインキと同様に25~50mN/mが好ましく、33~43mN/mであればより好ましい。インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回るとインキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にあり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回るとフィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。
【0081】
(印刷物の作成)
水性リキッド印刷インキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。
【0082】
本発明の水性リキッドインキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成される印刷インキの膜厚は、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0083】
(バインダー樹脂)
水性リキッド印刷インキ用のバインダー樹脂としては特に限定なく、一般の水性リキッド印刷インキに使用される、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル系重合体エマルジョン、ポリエステル系ウレタンディスパージョン、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体などのアクリル共重合体;スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体などのスチレン-アクリル酸樹脂;スチレン-マレイン酸;スチレン-無水マレイン酸;ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体;酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びこれらの塩を使用することができる。これらのバインダ―樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0084】
なかでも、前記バインダー樹脂としては、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を使用することが、入手しやすく好ましく、特にアクリル酸エステル系重合体エマルジョン、ポリエステル系ウレタンディスパージョンが好ましい。
【0085】
前記バインダー樹脂は、本発明の水性リキッド印刷インキの固形分換算で5~50質量%であることが好ましい。5質量%以上であれば、インキ塗膜強度が低下することもなく、基材密着性、耐水摩擦性等も良好に保たれる。反対に50質量%を以下であれば、着色力が低下する事が抑制でき、また高粘度となる事が避けられ、作業性が低下することもない。中でも5~40質量%であることがなお好ましく、5~20質量%であることが最も好ましい。
【0086】
(水性媒体)
水性リキッド印刷インキ用の水性媒体としては、例えば、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム溶剤などが挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。また、水性媒体としては、安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、または、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0087】
水性リキッド印刷インキは、その他、前述の着色剤、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。中でも耐摩擦性、滑り性等を付与するためのオレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド類及び印刷時の発泡を抑制するためのシリコン系、非シリコン系消泡剤及び顔料の濡れを向上させる各種分散剤等が有用である。
【実施例】
【0088】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
【0089】
(ワニスAの調整)
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂として、日信化学工業株式会社製のソルバインAを以下の比率にて溶解したものをワニスAとした。
ソルバインA 25部
メチルエチルケトン 75部
【0090】
(ワニスBの調整)
繊維素系樹脂として、イーストマンケミカル株式会社製のCAB-381-01を以下の比率にて溶解したものをワニスBとした。
CAB-381-01 20部
酢酸エチル 80部
【0091】
(ワニスCの調整)
(ポリウレタン樹脂溶液Uの調整)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールとセバシン酸を原料とするポリエステルポリオール100部(水酸基価:108mgKOH/g)とイソホロンジイソシアネート32.3部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率3.08質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル71.2部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン8.47部、ジ-n-ブチルアミン0.46部、酢酸エチル143部およびイソプロピルアルコール115部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液Uを得た。得られたポリウレタン樹脂溶液Uは、樹脂固形分濃度29.9質量%、樹脂固形分の重量平均分子量は54,000であった。
【0092】
(ニトロセルロース溶液Nの調整)
工業用硝化綿H1/2(ニトロセルロース、固形分70%、JIS K-6703により溶液濃度25.0%における粘度9.0~14.9%品 太平化学製品株式会社製)37.5部に、イソプロピルアルコール/酢酸エチル/酢酸ノルマルプロピル/メチルシクロヘキサン(重量比で25/25/13/10の比率)の混合液を62.5部加え、充分混合しニトロセルロース溶液Nを作製した。
【0093】
(ロジン樹脂溶液Rの調製)
ロジン樹脂(商品名:NEOCITE F-896、江南化成株式会社製)50部を、イソプロピルアルコール50部に溶解させて固形分50%のロジン樹脂溶液Rを得た。
【0094】
得られたポリウレタン樹脂溶液Uを40部、ニトロセルロース溶液Nを25部、ロジン樹脂溶液Rを5部加え、ワニスCとした。
【0095】
(実施例1~5 比較例1~6 ワニスAとワニスBをバインダー樹脂とし抗菌剤を配合したコーティング剤の例)
(実施例1 コーティング剤の調整方法)
ワニスAを40部、ワニスBを20部、、酢酸n-プロピルを16部、モノサイザーATBC(DIC株式会社製のインキ用可塑剤)を2.5部、LUWAX AF-31(BASF社製のポリエチレンワックス)を0.3部、銀系抗菌剤である銀担持ゼオライトとしてゼオミックAJ-10N(シナネンゼオミック株式会社制)を1部、沈降防止剤としてフローノンSP-1000AFを1部(なおフローノンSP-1000AF(共栄社化学株式会社製)は高級脂肪酸アミドと酢酸ブチル/エタノール/メタノール/水との混合物であり、固形分である脂肪酸アマイドは10質量%であるため、固形分添加量は0.1となる)、メチルエチルケトンを残部として合計100部を攪拌混合し、コーティング剤(1)を調整した。
【0096】
(フィルムへのコーティング方法)
コーティング剤(1)を、メチルエチルケトン/酢酸エチル=1/1の希釈溶剤にてザーンカップ#3で16秒に粘度調整した後、硬化剤としてイソシアネートである「タケネートD-160N」(三井化学株式会社製)を4部配合し、175線/インチのグラビア版でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製E5102 12μm)にコーティングし、有機溶剤を乾燥させ、実施例1のフィルムを作製した。
【0097】
(実施例2~5)
コーティング剤の組成を表1のようにした以外は実施例1と同様にして、実施例2~5のコーティング剤及びフィルムを作製した。なお実施例4は、硬化剤「タケネートD-160N(三井化学株式会社製)」を配合しないものである。
【0098】
(比較例1 コーティング剤の調整方法))
銀系抗菌剤である銀担持ゼオライトとしてゼオミックAJ-10N(シナネンゼオミック株式会社制)を1部、沈降防止剤としてフローノンSP-1000AF(なおフローノンSP-1000AFは高級脂肪酸アミドと酢酸ブチル/エタノール/メタノール/水との混合物であり、固形分である脂肪酸アマイドは10質量%である 共栄社化学株式会社製)を1部配合しない以外は実施例1と同様に合計98部を攪拌混合し、比較例1のグラビアコーティング剤(H1)を調整した。
【0099】
(フィルムへのコーティング方法)
コーティング剤(H1)を、実施例1のフィルムへのコーティング方法と同様にして、比較例1のフィルムを作製した。
【0100】
(比較例2~6)
コーティング剤の組成を表2のようにした以外は比較例1と同様にして、比較例2~6のコーティング剤及びフィルムを作製した。
【0101】
(実施例6~10 比較例7~12 ワニスCをバインダー樹脂とし抗菌剤を配合したコーティング剤の例)
(実施例6)
ワニスCを70部、メチルシクロヘキサンを6部、ラウリン酸アミド(重量平均分子量199.3 CAS番号1120-16-7)を1部、モノサイザーATBC(DIC株式会社製のインキ用可塑剤)を0.5部、チタンTAAキレート剤(BORICA社製:チタニウムアセチルアセトネート CAS:17927-27-9)を2部、銀系抗菌剤である銀担持ゼオライトとしてゼオミックAJ-10N(シナネンゼオミック株式会社制)を1部、沈降防止剤としてフローノンSP-1000AFを1部(なおフローノンSP-1000AF(共栄社化学株式会社製)は高級脂肪酸アミドと酢酸ブチル/エタノール/メタノール/水との混合物であり、固形分である脂肪酸アマイドは10質量%であるため、固形分添加量は0.1となる)、メチルエチルケトンを残部、の合計100部を攪拌混合し、コーティング剤(6)を調整した。
【0102】
(フィルムへのコーティング方法)
コーティング剤(6)を、メチルエチルケトン/酢酸エチル/イソプロピルアルコール=2/2/1の希釈溶剤にてザーンカップ#3で16秒に粘度調整した後、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製 FOR 厚さ20μm)の処理面にコーティングし、有機溶剤を乾燥させ、実施例6のフィルムを作製した。
【0103】
(実施例7~10)
コーティング剤の組成を表3のようにした以外は実施例6と同様にして、実施例7~10のコーティング剤及びフィルムを作製した。
【0104】
(比較例7 コーティング剤の調整方法))
銀系抗菌剤である銀担持ゼオライトとしてゼオミックAJ-10N(シナネンゼオミック株式会社制)及び、沈降防止剤としてフローノンSP-1000AFを配合しない以外は実施例6と同様に合計98部を攪拌混合し、比較例7のグラビアコーティング剤(H7)を調整した。
【0105】
(フィルムへのコーティング方法)
コーティング剤(H7)を、実施例6のフィルムへのコーティング方法と同様にして、比較例7のフィルムを作製した。
【0106】
(比較例8~12)
コーティング剤の組成を表4のようにした以外は比較例7と同様にして、比較例8~12のコーティング剤及びフィルムを作製した。
【0107】
(評価方法)
上記の方法で作製した実施例1~10、比較例1~12のフィルムについて、以下の評価を実施した。
【0108】
(耐摩擦性)
各フィルムの印刷面を、学振型耐摩擦試験機を用いて、上質紙にて摩擦し、印刷層の剥離度合いを目視判定した。(荷重 200gにて往復100回)
【0109】
(評価基準)
5:印刷皮膜がフィルムから全く脱離しない。
4:印刷皮膜の面積比率として、20%未満がフィルムから脱離する。
3:印刷皮膜の面積比率として、20%以上、40%未満がフィルムから脱離するが実用範囲である。
2:印刷皮膜の面積比率として、40%以上、60%未満がフィルムから脱離する。
1:印刷面の面積比率として、60%以上がフィルムから脱離する。
【0110】
(耐溶剤性)
エタノールをしみ込ませた綿棒で印刷面を20往復擦り、印刷層の剥離度合いを目視判定した。
【0111】
(評価基準)
5:印刷皮膜がフィルムから全く脱離しない。
4:印刷皮膜の面積比率として、20%未満がフィルムから脱離する。
3:印刷皮膜の面積比率として、20%以上、40%未満がフィルムから脱離するが実用範囲である。
2:印刷皮膜の面積比率として、40%以上、60%未満がフィルムから脱離する。
1:印刷面の面積比率として、60%以上がフィルムから脱離する。
【0112】
(コーティング面評価)
コーティング剤をコーティングしたフィルムの表面を、目視にて評価した。
○:表面に凹凸がなく良好
△:表面に凹凸が少し見られる
×:表面に凹凸が多く見られるため不良 とした
【0113】
(抗菌性試験)
JIS Z2801-2010プラスチック製品などの試験方法「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」の記載(主に、「5 試験方法」)に準拠し、実施例と比較例の組成物を塗工したフィルムを試料として試験を行なった。試験菌液中の菌株は、大腸菌(NBRC3972)、黄色ブドウ球菌(NBRC12732)とし試料の抗菌コーティング剤の塗工面に菌液(菌液NB濃度 1/100NB)を滴下し、フィルムをかぶせて菌液を密着させ、35±1℃、相対湿度90%以上で24時間培養した。その後、菌液を洗い出し、試料1cm2当たりの生菌数を測定した。
得られた抗菌活性値が2.0以上の場合、抗菌効果があると定義し、これを判定基準とした。
抗菌活性値は以下の式で算出する。
抗菌活性値(R)=Ut-At
Ut:抗菌コーティング剤未塗工試料の培養後の生菌数の対数値
At:抗菌剤添加試料の培養後の生菌数の対数値
【0114】
評価は、次のA~Cで行った。
A:抗菌活性値(R)が3.0以上である(抗菌性あり)
B:抗菌活性値(R)が2.0以上~3.0未満である(抗菌性を有する可能性が高い)
C:抗菌活性値(R)が2.0未満である(抗菌性がない)
【0115】
コーティング剤の組成を表1~4に、コーティング層を有するフィルムの物性結果を表5~8に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
(実施例11~15 比較例13~18 ワニスA及びワニスBをバインダー樹脂とし防カビ剤を配合したコーティング剤の例)
(実施例11 コーティング剤の調整方法)
ワニスAを40部、ワニスBを20部、酢酸n-プロピルを16部、モノサイザーATBC(DIC株式会社製のインキ用可塑剤)を2.5部、LUWAX AF-31(BASF社製のポリエチレンワックス)を0.3部、有機無機複合型の防カビ剤としてエッセンガード10(シナネンゼオミック株式会社制)を1部、沈降防止剤としてフローノンSP-1000AFを1部(なおフローノンSP-1000AF(共栄社化学株式会社製)は高級脂肪酸アミドと酢酸ブチル/エタノール/メタノール/水との混合物であり、固形分である脂肪酸アマイドは10質量%であるため、固形分添加量は0.1となる)、メチルエチルケトンを残部、の合計100部を攪拌混合し、コーティング剤(11)を調整した。
【0125】
(フィルムへのコーティング方法)
コーティング剤(11)を、メチルエチルケトン/酢酸エチル=1/1の希釈溶剤にてザーンカップ#3で16秒に粘度調整した後、硬化剤としてイソシアネートである「タケネートD-160N」(三井化学株式会社製)を4部配合し、175線/インチのグラビア版でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製E5102 12μm)にコーティングし、有機溶剤を乾燥させ、実施例11のフィルムを作製した。
【0126】
(実施例12~15)
コーティング剤の組成を表9のようにした以外は実施例11と同様にして、実施例12~15のコーティング剤及びフィルムを作製した。なお実施例14は、硬化剤「タケネートD-160N(三井化学株式会社製)」を配合しないものである。
【0127】
(比較例13 コーティング剤の調整方法))
有機無機複合型の防カビ剤エッセンガード10(シナネンゼオミック株式会社制)、及び沈降防止剤フローノンSP-1000AFを配合しない以外は実施例1と同様にして、比較例13のグラビアコーティング剤(H13)を調整した。
【0128】
(フィルムへのコーティング方法)
コーティング剤(H13)を、実施例11のフィルムへのコーティング方法と同様にして、比較例13のフィルムを作製した。
【0129】
(比較例14~18)
コーティング剤の組成を表10のようにした以外は比較例13と同様にして、比較例14~18のコーティング剤及びフィルムを作製した。
【0130】
(評価方法)
上記の方法で作製した実施例11~15、比較例13~18のフィルムについて、耐摩擦性、耐溶剤性、コーティング面評価は、実施例1~10や比較例1~12と同様の評価方法で行った。
【0131】
(かび抵抗性試験)
JIS Z2911-2018「かび抵抗性試験方法」の「附属書A プラスチック製品の試験」の「方法B グルコース添加無機塩寒天培地」に準拠し、実施例と比較例の組成物を塗工したPETフィルムを試料として試験を行なった。試験液としては以下の5種類の混合胞子懸濁液を使用した。
アスペルギルス ニゲル(Aspergillus niger)NBRC105649
ペニシリウム ピノヒルム(Penicillium pinophilum)NBRC100533
ペシロミセス バリオッチ(Paecilomyces variotii)NBRC107725
トリコデルマ ビレンス(Ttichoderma virens)NBRC6355
ケトミウム グロボスム(Chaetomium globosum)NBRC6347
グルコース添加無機塩寒天培地に試料を置き、混合胞子懸濁液をコーティング剤の塗布面に0.1ml滴下し、29±1℃、相対湿度90%以上で4週間培養した後のかびの発育状況を肉眼ならびに50倍の実態顕微鏡にて観察し、以下の基準で評価を行った。
0:肉眼及び実態顕微鏡下でかびの発育は認められない。
1:肉眼ではかびの発育は認められないが、実態顕微鏡下では明らかに確認できる。
2:肉眼ではかびの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%未満。
3:肉眼ではかびの発育が認められ、発育部分の面積は試料の全面積の25%以上50%未満。
4;菌糸はよく発育し、発育部分の面積は試料の全面積の50%以上。
5;菌糸の発育は激しく、資料全面を覆っている。
【0132】
コーティング剤の組成を表9~10に、コーティング層を有するフィルムの物性結果を表11~12に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
この結果、実施例のコーティング剤は、印刷適性に優れ、表面に凹凸がなく良好であり、優れた抗菌性を示した。
比較例1、4、5は銀担持ゼオライトを含有しない例であるが、抗菌性を示さなかった。また比較例2、3、6は銀担持ゼオライトを含有するが沈降防止剤である脂肪酸アマイドが所定量未満か未配合であり、コーティング面評価は低くなってしまった。
樹脂系を変更した実施例6~10、比較例7~12に於いても同様の傾向が見られた。また、有期無機複合型防カビ剤での実施例11~15、比較例13~18に於いても、沈降防止剤である脂肪酸アマイドの添加量が適切であった場合には、かび抵抗性とコーティング面評価の両立が可能となった。
【要約】
バインダー樹脂(A)、抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)、沈降防止剤(C)、及び有機溶剤を含有し、前記沈降防止剤(C)を、前記抗菌剤及び/又は防カビ剤(B)に対して0.1~50.0質量%含有する紙基材又はプラスチック基材用コーティング剤、前記紙基材又はプラスチック基材を使用した容器、包装材。前記バインダー樹脂(A)が、繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、又は塩化ビニル系樹脂を含有する。