IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーフェイ ボシク ファームテック カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7174202高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法
<>
  • 特許-高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法 図1
  • 特許-高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法 図2
  • 特許-高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/16 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
C08B37/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021569340
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2020090535
(87)【国際公開番号】W WO2020233522
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】201910426525.4
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521508379
【氏名又は名称】ホーフェイ ボシク ファームテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HEFEI BOSIKC PHARMTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Floor 2, Block A, Xiangfeng Creative Park No. 211, Xiangzhang Avenue, High-tech Zone Hefei, Anhui 230088 China
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】ガウ フイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー ユウリン
(72)【発明者】
【氏名】パン パン
(72)【発明者】
【氏名】リ ミンミン
(72)【発明者】
【氏名】シェン ジアンフェ
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/036353(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調製過程は、
スガマデクスナトリウムの粗製品に保護剤を加え、不活性ガスの保護下で、再結晶によりスガマデクスナトリウムの精製品を得るプロセス工程を含む高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法であって、前記保護剤は、以下の一般式に示されるイノシトールリン酸エステル及びその誘導体から選択され
【化1】
前記イノシトールリン酸エステル及びその誘導体は、イノシトールヘキサリン酸エステル、イノシトールヘキサリン酸エステルの分解生成物であるイノシトールペンタリン酸、イノシトールテトラリン酸、イノシトールトリリン酸、イノシトールビスリン酸、イノシトール一リン酸であることを特徴とする高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法。
【請求項2】
加えられる保護剤とスガマデクスナトリウムの粗製品との質量比は、0.001%以上であることを特徴とする請求項1に記載の高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法。
【請求項3】
加えられる保護剤とスガマデクスナトリウムの粗製品との質量比は、0.1%~1%であることを特徴とする請求項に記載の高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法。
【請求項4】
再結晶溶媒は、水とスガマデクスナトリウムの貧溶媒の組合せから選択されることを特徴とする請求項1に記載の高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法。
【請求項5】
前記再結晶溶媒は、水とスガマデクスナトリウムの貧溶媒の組合せから選択され、前記スガマデクスナトリウムの貧溶媒は、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミドのうちの1つ又は複数の混合物であることを特徴とする請求項1~に記載の高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法。
【請求項6】
調製過程の具体的なプロセス工程として、スガマデクスナトリウムの粗製品を水に溶解させ、保護剤を加え、不活性ガスの保護下で昇温し、そしてスガマデクスナトリウムの貧溶媒を加え、その後、撹拌して-20~30℃まで降温させ、ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品を得ることを特徴とする請求項に記載の高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法。
【請求項7】
前記不活性ガスは、窒素、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素から選択される一つであることを特徴とする請求項1に記載の高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬生産の技術分野に関し、具体的には、高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法である。
【背景技術】
【0002】
スガマデクスナトリウムの化学名は、6A,6B,6C,6D,6E,7F,6G,6H-オクタ-S-(2-カルボキシエチル)-6A,6B,6C,6D,6E,7F,6G,6H-オクタチオ-γ-シクロデキストリン,オクタナトリウム塩であり、構造式は、以下のとおりである。
【0003】
【化1】
【0004】
スガマデクスナトリウムは、オランダのOrganon社が研究開発した新規の筋弛緩薬拮抗剤であり、臨床上、ロクロニウム臭化物又はベクロニウム臭化物の神経筋遮断作用を拮抗させる。2008年7月、欧州連合がその発売を許可してから、既に日本、韓国、アメリカなどの国で発売され、2018年4月、中国で発売される。
【0005】
スガマデクスナトリウムは、γ-シクロデキストリン分子上の6-位の水酸基の構造が修飾された超分子環状化合物であり、その構造は複雑である。分子における活性部位が多く、置換反応により形成された8本の分岐鎖を有するので、スガマデクスナトリウムの調製過程において、大量の複雑な副生物が極めて生成しやすい。スガマデクスナトリウム分子におけるチオエーテル結合が酸化されて分解され、スルホキシド、チオエーテルなどの物質を生成しやすく、また、これらの物質は、さらに他の不純物と重合する。不純物は、スガマデクスナトリウムと構造が近似し、極性の差が小さく、分子量の差が小さいので、通常の手段により除去することは非常に困難であり、これにより、生産過程で生成した不純物の制御が困難となる。
【0006】
J. Med. Chem. 2002, 45, 1806-1816PPは、N,N-ジメチルホルムアミド系において、トリフェニルホスフィンの触媒下で、臭素とγ-シクロデキストリンを反応させて6-デオキシ-6-ペルブロモ-γ-シクロデキストリンを得、当該生成物と3-メルカプトプロピオン酸メチルを無水炭酸セシウムの触媒下で反応させて生成物であるスガマデクスメチルを得、さらに水酸化ナトリウムにより加水分解してスガマデクスナトリウムを得、収率が60%であることを提示している。この方法により得られたものは、スガマデクスナトリウムの粗製品であり、純度が低く、更なる精製に関する報告がない。
【0007】
【化2】
【0008】
Chem. Asian J. 2011, 6, 2390-2399では、まず、γ-シクロデキストリンをヨウ素置換して6-デオキシ-6-ペルヨード-γ-シクロデキストリンの粗製品を得、当該粗製品を無水酢酸と反応させてエステルとし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、さらにメナトリウムメトキシドで加水分解し、純度の高い6-デオキシ-6-ペルヨード-γ-シクロデキストリンの精製品を得た。最後に、3-メルカプトプロピオン酸でエーテルとし、目標生成物を得た。当該反応では、中間物の純度が高く、不純物が少なく、製品の後処理である精製が簡単である。しかし、カラムクロマトグラフィープロセスによりヨード-γ-シクロデキストリンを調製することは、反応工程が増加し、長い時間がかかってしまう。また、当該方法により製造されたヨード-γ-シクロデキストリンを原料としてスガマデクスナトリウムを調製する場合に、合格製品を直接得ることができず、依然としてスガマデクスナトリウム製品の精製が困難であるという問題に直面する。
【0009】
【化3】
【0010】
WO0140316PPでは、ヨウ素をハロゲン化試薬として用い、トリフェニルホスフィンの触媒下でγ-シクロデキストリンと反応させて6-デオキシ-6-ペルヨード-γ-シクロデキストリンを生成させる。さらに、当該中間物を3-メルカプトプロピオン酸と反応させてチオエーテルとし、膜透析により精製して目標生成物を得た。当該方法は、ルートが簡単で信頼でき、反応活性が高いが、製品の精製には、膜透析しか採用しないので、高純度のスガマデクスナトリウムを得ることは困難である。
【0011】
【化4】
【0012】
CN105348412には、スガマデクスナトリウムの粗製品の精製方法が開示されており、スガマデクスナトリウムの粗製品を、酸性条件下で加水分解して遊離酸の固体を得、その遊離酸の固体を水でスラリー化し、洗浄して精製する。さらに、遊離酸を有機アミンと反応させてスガマデクスアンモニウム塩を調製し、得られたアンモニウム塩を再結晶して精製する。さらに、酸性条件下で遊離させて遊離酸を得、その遊離酸の固体を水でスラリー化し、洗浄して精製し、得られた遊離酸を水酸化ナトリウムと反応させてスガマデクスナトリウムの精製品を調製する。当該方法は、カラムクロマトグラフィー、透析などの方法を使用していないが、工程が煩雑であり、遊離酸と塩の間での複数回の転換が必要で、操作が不便である。また、スガマデクス自身の構造の不安定性により、その酸性条件下での遊離過程において、自身の構造が解離されるリスクがあり、酸性の破壊不純物を形成し、製品精製の困難度が増加する。当該方法も、不活性ガス雰囲気の保護を考慮しておらず、スガマデクスナトリウムの酸化不純物の増加を抑制する条件を見出していない。
【0013】
CN107892727には、スガマデクスナトリウムの粗製品の精製方法が開示されており、当該方法は、前処理された所定のタイプの活性炭を使用し、スガマデクスナトリウムの水溶液において、吸着により不純物を除去し、製品を精製するという目的を達成する。当該方法は、コストが低いが、操作が煩雑であり、また、活性炭の品質安定性に対する要求が高く、サプライアーは、活性炭の生産プロセスを変更したり、生産を中止したりすると、当該プロセスが使用できなくなることから、当該方法の薬品生産における応用が制限されている。
【0014】
CN107778383には、スガマデクスナトリウムの再結晶による精製方法が開示されており、スガマデクスナトリウムにメルカプト化合物又は三置換有機リン化合物などを加え、再結晶によりスガマデクスナトリウムの粗製品を精製する。当該方法は、操作が簡単であり、不純物除去効果が高いが、残存タンパク質を効果的に除去することができない。使用されたメルカプト化合物の臭いが強く、製品中の三置換有機リン類などの化合物の残存量を制御する必要があり、当該方法の応用の困難度が増加する。
【0015】
CN106565858には、スガマデクスナトリウムの精製方法が開示されており、スガマデクスナトリウムを、予め処理されたイオン交換樹脂で難水溶性のスガマデクス塩に転換させ、さらに、水でスラリー化するなどの方式により、スガマデクスナトリウムの粗製品をさらに精製する。さらに、イオン樹脂でイオン交換を行い、スガマデクスナトリウムに転換させる。当該方法は、不純物除去効果が高いが、スガマデクスナトリウムの最終製品に他の金属イオンが混入するリスクがある。
従来技術における精製方法は、多くの欠点があるので、効果的な精製を実現してスガマデクスナトリウムの精製品を得るための、新たな高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法が緊急である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記課題を解決するために、本発明は、従来技術に存在する不足を克服する高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法を開示し、製品純度が高く、安全性に優れ、アレルギー反応が少なく、安定性が高いスガマデクスナトリウムの再結晶による精製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の目的を達成するために、本発明は、以下の技術方案を提供する。
調製過程は、
スガマデクスナトリウムの粗製品に保護剤を加え、不活性ガスの保護下で、再結晶によりスガマデクスナトリウムの精製品を得るプロセス工程を含む高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法であって、前記保護剤は、イノシトールヘキサリン酸エステル及びその塩又はエステル;イノシトールヘキサリン酸エステルの一部の分解生成物であるイノシトールペンタリン酸、イノシトールテトラリン酸、イノシトールトリリン酸、イノシトールビスリン酸、イノシトール一リン酸などの前記物質及びその塩又はエステルのうちの1つ又は2つ以上の任意の割合での混合物である、以下の一般式に示されるイノシトールリン酸エステル及びその誘導体から選択される高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法。
一般式は、以下のとおりである。
【0018】
【化5】
【0019】
前記高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法において、加えられる保護剤とスガマデクスナトリウムの粗製品との質量比は、0.001%以上であることが好ましく、0.1%~1%であることがさらに好ましい。
【0020】
前記高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法において、再結晶溶媒は、水とスガマデクスナトリウムの貧溶媒の組合せから選択されることが好ましい。前記スガマデクスナトリウムの貧溶媒は、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミドのうちの1つ又は複数の混合物である。
【0021】
前記高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法において、調製過程の具体的なプロセス工程として、スガマデクスナトリウムの粗製品を水に溶解させ、保護剤を加え、不活性ガスの保護下で昇温し、そしてスガマデクスナトリウムの貧溶媒を加えた後に、撹拌して-20~30℃まで降温させ、ろ過し、再結晶によりスガマデクスナトリウムの精製品を得ることが好ましい。
【0022】
前記高純度のスガマデクスナトリウムの調製方法において、前記不活性ガスは、窒素、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素から選択される一つであることが好ましい。
【0023】
天然化合物において、イノシトールリン酸及びその誘導体は、通常の生物学的生成物として本発明者の注目を集めている。
【0024】
一方で、他のタイプの酸化防止剤と比べて、イノシトールリン酸及びその誘導体は、ラジカルを除去し、酸化反応の進行を阻止することができるとともに、効率のよい金属イオンキレート剤として本発明に用いることにより、スガマデクスナトリウムの酸化反応の進行を大幅に軽減し、酸化不純物の生成を抑制することができる。
【0025】
他方で、スガマデクスナトリウムを合成するための出発原料であるγ-シクロデキストリンは、デンプンをシクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼで発酵させて生産されたものであり、注射液中に残存タンパク質が混入するリスクがあり、異種タンパク質は、スガマデクスナトリウム注射液に対するアレルギー反応を引き起こす重要な原因となる。
【0026】
イノシトールリン酸及びその誘導体は、スガマデクスナトリウムに残留するタンパク質と結合して変性させて不溶分を形成することができ、溶液においてろ過により除去することができるという有益な効果により、スガマデクスナトリウム製剤の応用の安全性を大幅に向上させる。
【0027】
さらに一方で、従来の研究により明らかなように、スガマデクスナトリウム注射液生産の滅菌過程において、注射液の色は、金属イオン、特に鉄イオンの影響により無色から黄色まで次第に深くなり、最終的な薬品の品質及び安定性に影響する。イノシトールリン酸及びその誘導体類化合物を用いてスガマデクスナトリウム原料薬の調製に関与させることにより、金属イオンが残留するリスクを低下させるとともに、薬品の品質及び安定性を向上させることができる。
【0028】
本方法は、従来技術と比べて、精製効果、製品品質、製品安全性の点で、いずれも利点がある。したがって、このような物質をスガマデクスナトリウムの精製過程に応用することは、非常に重要な意味がある。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
1、本発明によれば、再結晶によるスガマデクスナトリウムの精製過程において、保護剤の作用により、ラジカルの生成を抑制するとともに、反応系中の金属イオンをキレート化し、スガマデクスナトリウムが酸化されるリスクを相乗的に低下させ、不純物の生成を抑制し、スガマデクスナトリウム製品の純度を向上させる。
【0030】
2、本発明の方法によりスガマデクスナトリウムの粗製品を精製すれば、効果的に不純物の増加を抑制し不純物を除去することができ、製品純度が99.0%以上であり、単一の不純物は0.1%以下であり、製品の品質は、注射剤用薬用原料に対する品質要求を満たすことができ、スガマデクスナトリウム注射剤の生産に品質の合格である原料を提供する。
【0031】
3、本発明で使用される保護剤は、良好なラジカル抑制効果を有する天然化合物及びその誘導体から選択され、その由来が広く、安全で信頼でき、遺伝毒性などのリスクがなく、薬品生産に対する要求をより満たしている。
【0032】
4、本発明で使用される保護剤は、高いタンパク質結合能を持つ天然生成物及びその誘導体から選択され、スガマデクスナトリウムに存在する可能性のある残存タンパク質、特にシクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼの除去に対して優れた効果を有し、異種タンパク質によるスガマデクスナトリウム製剤に対するアレルギー反応のリスクを顕著に低下させることができ、臨床応用価値が極めて高い。
【0033】
5、本発明で使用される保護剤は、良好な金属イオンキレート作用を持つ天然生成物及びその誘導体から選択され、スガマデクスナトリウム原料薬中の金属イオンの残留、特に鉄イオンの残留の減少に対して優れた効果を有し、原料薬中の金属イオンを顕著に低減させ、さらにスガマデクスナトリウム製剤の滅菌過程において金属イオンにより注射液の色が深くなるという現象を減少させることができ、注射液の品質及び安定性の向上に対して非常に重要な意味がある。
【0034】
6、本発明の精製方法は、プロセス過程が簡単であり、コストが低く、プロセスが操作しやすく、良好な経済性を有し、工業生産により適している。当該原料薬で製造された製剤は、純度が高く、安全性に優れ、アレルギー反応が少なく、患者に最大の利益を与える。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明のスガマデクスナトリウムの粗製品のHPLCチャートである。
図2】本発明の方法により調製されたスガマデクスナトリウムの精製品のHPLCチャートである。
図3】市販のスガマデクスナトリウム注射液のHPLCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の方法の好ましい実施形態をより詳しく説明する。正しく理解すべきなのは、本発明の実施例における方法は、本発明をさらに説明するためのものに過ぎず、発明を制限するものではないので、本発明の方法を前提とする本発明に対する簡単な改善はいずれも本発明で保護を請求する範囲に属することである。
【0037】
本発明では、特別な断りがない限り、使用される試薬、計器、設備は、いずれも市販の商品である。
スガマデクスナトリウムの粗製品は、特許US6670340に開示されている方法を参照して生産する。
【0038】
参照実施例:
スガマデクスナトリウムの粗製品の調製
反応フラスコに3-メルカプトプロピオン酸(12.2mL、140mol)を投入し、N,N-ジメチルホルムアミド450mLを加え、室温下、窒素の保護下で三回に分けて水素化ナトリウム(12.3g、308mol、60%)を加えた。その後、室温下で30分撹拌し、γ-ヨードシクロデキストリン(31.2g、14mmol、N,N-ジメチルホルムアミド450mLに溶解する)を滴下し、滴下が完了後、70℃まで昇温し、12h反応させた。反応完了後、室温まで冷却し、水100mLを加えて撹拌し、溶媒が400mLになるまで減圧蒸留し、エタノール2Lを加えてろ過し、固体を回収し、真空乾燥して類白色固体45gを得た。純度は91.92%であった。スガマデクスナトリウムの粗製品の測定結果を図1に示す。
【0039】
スガマデクスナトリウム注射液の滅菌色の調査実験:
スガマデクスナトリウムのサンプル1gを取り、窒素の保護下で、注射用水8mlに溶解させ、加熱して溶解させ、pH値を調節し、注射用水を加えて10mlまで定容させた。前記液体を0.22μmのろ過膜に通過させた後に、ペニシリンボトルに充填し、ゴム栓でキャップをし、オートクレーブに入れて121℃で30min滅菌した。その色の変化の有無を測定した。
【0040】
スガマデクスナトリウム中の残存タンパク質の測定実験(クマシーブリリアントブルーG-250法):
試験管にそれぞれ標準タンパク質溶液0、6、12、24、36、48、60μlを加え、クマシーブリリアントブルーG-250染色液3mlを加え、均一に混合した後に、室温で15min保温し、595nmの波長で比色定量を行い、標準曲線を作成した。
スガマデクスナトリウムの測定対象サンプル1gを取り、注射用水8mlに溶解させ、加熱して溶解させ、pH値を調節し、注射用水を加えて10mlまで定容させ、前記液体を0.22μmのろ過膜に通過させた後に、測定対象サンプルの溶液を調製した。当該溶液60μlを取り、以上と同様に測定してその濃度を得た。
【0041】
実施例1:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製品100.0gを取り、水0.3Lで清澄になるまで溶解させ、撹拌しながらイノシトールヘキサリン酸エステル(50%水溶液)2.0gを加え、窒素の保護下で、80℃まで昇温し、溶液にN,N-ジメチルホルムアミド0.8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品39.8gを得た。純度は99.8%であった(図2を参照)。
もちろん、撹拌して-20~30℃まで降温してもよい。
【0042】
実施例2:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製品100gを取り、水1Lで清澄になるまで溶解させ、撹拌しながらイノシトールビスリン酸1gを加え、窒素の保護下で、70℃まで昇温し、溶液にアセトニトリル6Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品32.3gを得た。純度は99.5%であった。
保護ガスは、窒素、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素から選択される一つであってもよい。
【0043】
実施例3:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製品100gを取り、水0.5Lで清澄になるまで溶解させ、撹拌しながらイノシトール一リン酸3gを加え、窒素の保護下で、還流するまで昇温し、溶液にエタノール2Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品29.9gを得た。純度は99.6%であった。
【0044】
実施例4:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製品100gを取り、水0.3Lで清澄になるまで溶解させ、撹拌しながらイノシトールトリリン酸0.5gを加え、窒素の保護下で、60℃まで昇温し、溶液にアセトン2Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品32.1gを得た。純度は99.7%であった。
【0045】
実施例5:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製品100gを取り、水0.3Lで清澄になるまで溶解させ、撹拌しながらイノシトールテトラリン酸0.8gを加え、窒素の保護下で、80℃まで昇温し、溶液にN,N-ジメチルホルムアミド1Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品37.2gを得た。純度は99.7%であった。
【0046】
実施例6:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製品100gを取り、水3Lで清澄になるまで溶解させ、撹拌しながらイノシトールペンタリン酸0.2gを加え、窒素の保護下で、70℃まで昇温し、溶液にアセトニトリル8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品34.7gを得た。純度は99.6%であった。
【0047】
実施例7:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製品100gを取り、水0.3Lで清澄になるまで溶解させ、撹拌しながらCPPM(CAS No.2271351-38-1、1,2,3,4,5-Cyclohexanepentol,6-[(phosphonooxy)methyl])0.8gを加え、窒素の保護下で、80℃まで昇温し、溶液にN,N-ジメチルホルムアミド1Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品36.1gを得た。純度は99.7%であった。
【0048】
実施例8:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製品100gを取り、水0.3Lで清澄になるまで溶解させ、撹拌しながらL-CIPM(CAS No.1313195-32-2、L-chiro-Inositol,2,3-dideoxy-3-[(phosphonooxy)methyl])0.9gを加え、窒素の保護下で、80℃まで昇温し、溶液にN,N-ジメチルホルムアミド1Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品37.5gを得た。純度は99.6%であった。
【0049】
実施例9:スガマデクスナトリウムの精製
スガマデクスナトリウムの粗製品100gを取り、水0.3Lで清澄になるまで溶解させ、撹拌しながらCDPM(CAS No.127233-15-2、1,2-Cyclohexanediol,4-[(phosphonooxy)methyl],bis(dihydrogen phosphate))0.8gを加え、窒素の保護下で、80℃まで昇温し、溶液にN,N-ジメチルホルムアミド1Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品38.3gを得た。純度は99.8%であった。
【0050】
実施例10:スガマデクスナトリウム注射液の滅菌色の調査
前記実施例1~9で調製されたスガマデクスナトリウム製品をそれぞれ1g取り、窒素の保護下で、注射用水8mLに溶解させ、加熱して溶解させ、pH値を調節し、注射用水を加えて10mlまで定容させた。前記液体を0.22μmのろ過膜に通過させた後に、ペニシリンボトルに充填し、ゴム栓でキャップをした。オートクレーブに入れて121℃で30min滅菌した。測定されたサンプルは、無色で透明であり、未滅菌前のサンプルと比べて、色が深くならず、市販の注射液と比べて、色が明らかに浅くなった。
【0051】
実施例11:スガマデクスナトリウムの粗製品100.0gを取り、そこに0.1%のシクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを加え、水0.3Lで清澄になるまで溶解させ、撹拌しながらイノシトールヘキサリン酸エステル(50%水溶液)2.0gを加え、窒素の保護下で、80℃まで昇温し、溶液にN,N-ジメチルホルムアミド0.8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、吸引ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品39.3gを得た。当該サンプルについて、前記残存タンパク質測定法(クマシーブリリアントブルーG-250法)により測定し、残存タンパク質が測定されなかった。
【0052】
比較例1:市販の先発のスガマデクスナトリウム注射液の純度測定結果は98.56%であった(図3)。
比較例1と実施例1~9の比較から分かるように、本発明で得られたスガマデクスナトリウムの精製品は、市販の製品よりも純度が高く、市販の製剤よりも不純物数がはるかに少なかった。
【0053】
比較例2:保護剤による残存タンパク質除去能の比較
スガマデクスナトリウムの粗製品100gを取り、そこに0.1%のシクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを加え、水0.3Lで溶解させ、窒素の保護下で、80℃まで昇温し、溶液にN,N-ジメチルホルムアミド0.8Lを加えた。その後、撹拌して室温まで降温し、大量の白色固体を析出させ、ろ過してスガマデクスナトリウムの精製品37.1gを得た。当該サンプルについて、前記残存タンパク質測定法(クマシーブリリアントブルーG-250法)により測定したところ、タンパク質の含有量が0.06μg/mlであった。
【0054】
本発明の方案に開示されている技術手段は、前記実施形態に開示されている技術手段のみに限られず、以上の技術的特徴の任意の組合せからなる技術方案を含む。説明すべきなのは、当業者にとって、本発明の原理から逸脱しない限り、いくつかの改善及び修飾を行うことができ、これらの改善及び修飾も、本発明の保護範囲と見なされている。
図1
図2
図3