(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】光電子顕微鏡(PEEM)機能を備えた透過電子顕微鏡(TEM)
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20221110BHJP
H01J 37/26 20060101ALI20221110BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20221110BHJP
G01N 23/227 20180101ALI20221110BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/20 C
H01J37/20 F
H01J37/26
G01N23/04
G01N23/227
(21)【出願番号】P 2019127957
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】518433374
【氏名又は名称】株式会社北海光電子
(72)【発明者】
【氏名】武藤 正雄
(72)【発明者】
【氏名】津野 勝重
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-074039(JP,A)
【文献】特開2006-331979(JP,A)
【文献】特開2000-040483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01J 37/26
G01N 23/04
G01N 23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下向きに取り付けられた試料1に光2を当てるために前記試料1より下方のレンズ絞り8
に光照射機能を設けたことを特徴とするTEM。
【請求項2】
請求項1のTEMにおいて薄膜試料とバルク試料の双方の原子分解能観察を同時にまたは
交互に可能にしたPEEM機能が付加された
ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルク(塊状)材料の表面に光を当て、放出された光電子の拡大像を作る装置であるPEEMの機能を、TEMの付属装置として用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PEEMの空間分解能は一般に低く、数10nmに留まっている。(非特許文献1)
【0003】
そのため出願人らはPEEMの空間分解能向上のため、対物レンズの収差低減、検出信号量の増大、収差の補正について特許を出願した。(特許文献1)
【0004】
レンズの収差補正が施されている最上級のTEMにおいては、原子分解能に達しているが、試料は薄膜に限定され、バルク材料は観察できない。(非特許文献2)
【0005】
そのためバルク試料を観察できるSEM(走査型電子顕微鏡)機能を内蔵したSTEM(走査透過型電子顕微鏡)が開発されたが、3~5nmの触媒粒子の報告に留まり、原子分解能は得られない。(非特許文献3
図6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】出願番号特願2018-228545(段差番号0012~0015)
【0007】
【文献】光電子顕微鏡光電子顕微鏡、木下豊彦、春山雄一、放射光第13巻第4号(2000年)p.292-297.
【0008】
【文献】非特許文献2・電子顕微鏡の分解能の限界、進藤大輔、平賀賢二、まてりあ第35巻第11号(1996)、1230-1234.
【0009】
【文献】二次電子による原子分解能像観察、稲田博実、今野充、田村圭司、中村邦康、(2012.02)日立評論、p.29
図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されるPEEMにおいては、高分解を性能発現させるには振動、騒音、室温など設置環境に対する対策を個別に施さなければならない。
【0011】
前述の通りTEMは上記の設置環境対策が施されており、薄膜材料の原子分解能を有しているが、バルク材料については附属のSEMの入射電子線がバルク材料の内部で拡散されるため、原子分解能は得られない。
【0012】
SEMの代わりにPEEMをTEMに附属させる。そのためには、
【0013】
TEMにPEEM機能を内蔵させるためには、試料1に光2を当てなければならない。
【0014】
TEMの試料1はアース電位であるため、試料1に光2を当てても発生する光電子はエネルギーが低く、レンズ系の作用を施されるに必要な加速電圧を得られないため、試料は高電位3に配されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
試料に光を当てるため、PEEMの光源6はTEMのカメラ室5に設置する。カメラ室を装備していない場合は、付属装置挿入用のフランジ7や、レンズの絞り8を利用する。
【0016】
PEEMに用いる試料ホルダ
図2は薄膜とバルクの両方を保持できる構造
図3であって、1KV以上の高電圧3を印加する機構を有し、高電圧による非軸対称な電場分布の発生を防ぐため、試料の両端の箇所は絶縁性の材質4で構成する。
【発明の効果】
【0017】
PEEMを専用機でなく
図1bに示すようにTEMの付属装置として構成することにより、設置環境に対する原子分解能対策を施したTEMにてPEEMでも原子分解能発現を可能にする。
【0018】
これにより装置一台で薄膜試料とバルク試料の原子分解能観察を可能にする。
【0019】
試料ホルダ
図2を用いることにより、試料1を交換することなくTEM像とPEEM像を切換えて、または同時に観察できることから、試料交換による視野のずれや、試料の変質を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るTEMの附属機能としてのPEEMの全体図 a TEMの全体図 b PEEM機能を加えた図
【
図3】試料の形態 a 同一使用に薄膜部とバルク部を形成したもの b 薄膜試料とバルク試料を個別に配置したもの
【
図4】a PEEMとして使用した場合の光照射と光電子放出の経路 b TEMとして使用した場合の電子線照射と透過の経路
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1において、TEMの機能を保持したまま、PEEMとしても使用できることにより、設置環境対策を施したTEMの鏡筒をそのまま使用することで原子分解能観察を容易にする。
【0022】
試料1は材質4により試料ホルダ
図2のホルダ部より絶縁され高電位に配することができ、試料より放出する光電子がレンズ作用を受けるに必要な加速電圧を得ることができる。
【0023】
試料1にはカメラ室5内の光源部6またはフランジ7またはレンズの絞り8より光2を照射することにより光電子9を放出させ、PEEMとしての機能を発現する。
【0024】
図4aにおいて光2を当てることにより試料1から放出された光電子9は、対物レンズ10で焦点合わせと初段の拡大を行い、結像レンズ11,12,13で拡大され、蛍光板14で可視像に変換され観察し、カメラ室5で撮影される。
【0025】
TEMの場合は
図4bのように電子線16は試料の薄膜部20を透過して対物レンズ10で焦点合わせと初段の拡大を行い、結像レンズ11,12,13で拡大され、蛍光板14で可視像に変換され観察し、カメラ室5で撮影される。
【0026】
試料は
図3aのように同一試料をエッチングして薄膜部とバルク部を形成させて試料移動させてそれぞれを観察するか、
図3bのように、PEEMの場合はバルク試料23を、TEMの場合は薄膜試料22を載せて同じく試料移動させて観察する。
【符号の説明】
【0027】
1.試料
2.光
3.高電圧部
4.絶縁材質
5.カメラ室
6.光源部
7.鏡筒フランジ
8.レンズ絞り
9.光電子
10.対物レンズ
11.結像レンズ1
12.結像レンズ2
13.結像レンズ3
14.蛍光板
15.電子銃部
16.電子線
17.集束レンズ1
18.集束レンズ2
19.集束レンズ3
20.薄膜部
21.バルク部
22.薄膜試料
23.バルク試料
24.加速電圧部