(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】果菜収穫装置
(51)【国際特許分類】
A01D 46/24 20060101AFI20221110BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A01D46/24 B
G01B11/00 H
(21)【出願番号】P 2017215073
(22)【出願日】2017-11-07
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】508134337
【氏名又は名称】シブヤ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】二宮 和則
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ラジェンドラ
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-110255(JP,A)
【文献】特開2010-207118(JP,A)
【文献】特開昭59-031618(JP,A)
【文献】特開平04-184573(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0050852(US,A1)
【文献】特開平08-056459(JP,A)
【文献】特開2004-180554(JP,A)
【文献】特開平02-234013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 46/24
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果菜の果柄を把持して採取する採取手段と、上記採取手段を移動させる移動手段と、上記果菜を撮影する撮影手段と、上記撮影手段が撮影した画像に基づいて上記移動手段により上記採取手段を移動させて、上記採取手段により上記果菜の果柄を把持させる制御手段とを備えた果菜収穫装置において、
上記果柄に対して横方向に形成されたライン光を照射する照射手段を
上記撮影手段の上方に設けるとともに、当該照射手段の光軸を上記撮影手段の撮影方向
に対して斜め上方から交差するように設け、
上記制御手段は、上記撮影手段が撮影した画像から、上記果柄にライン光が照射された照射部分を検出して、当該照射部分を上記果菜の果柄と認識することを特徴とする果菜収穫装置。
【請求項2】
果菜の果柄を把持して採取する採取手段と、上記採取手段を移動させる移動手段と、上記果菜を撮影する撮影手段と、上記撮影手段が撮影した画像に基づいて上記移動手段により上記採取手段を移動させて、上記採取手段により上記果菜の果柄を把持させる制御手段とを備えた果菜収穫装置において、
上記果柄に対して横方向に形成されたライン光を照射する照射手段を
上記撮影手段の上方に設けるとともに、当該照射手段の光軸を上記撮影手段の撮影方向
に対して斜め上方から交差するように設け、
上記制御手段は、上記撮影手段が撮影した画像において、上記果柄にライン光が照射された照射部分を検出して、当該照射部分と上記画像に設定した基準位置との距離を認識し、当該距離に基づいて上記撮影手段と果柄との位置関係を認識することを特徴とする果菜収穫装置。
【請求項3】
上記採取手段と上記撮影手段と上記照射手段とを、上記移動手段に設けたベース部材に設けて、これらを一体的に移動させることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の果菜収穫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は果菜収穫装置に関し、詳しくは果菜の果柄を把持して採取する採取手段を備えた果菜収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イチゴやトマトなどの食用に供される部分(イチゴの場合花托部)が傷みやすい果菜を収穫する果菜収穫装置では、収穫の際に当該果菜の果柄を把持することで、果菜に直接触れないようにすることが望ましい。
このような果菜収穫装置として、果菜の果柄を把持して採取する採取手段と、上記採取手段を移動させる移動手段と、上記果菜を撮影する撮影手段と、上記撮影手段が撮影した画像に基づいて上記移動手段により上記採取手段を移動させる制御手段とを備えたものが知られている(特許文献1)。
上記特許文献1にかかる果菜収穫装置では、上記撮影手段が撮影した画像から上記制御手段が果菜を認識すると、別途設けた果柄認識カメラで果菜の周辺を再度撮影し、その画像を画像処理することで当該果菜の果柄を認識していた。
また特許文献1では、上記採取手段が収穫対象外の果菜に接触しないよう、採取手段を収穫対象の果菜に接近させるための方向を設定し、当該設定した方向に採取手段を移動させて果柄を把持させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のように果柄認識カメラを用いて画像認識を行う場合、果柄の色味にばらつきがあると画像処理によって果柄を精度良く認識できないという問題があった。
また特許文献1では、採取手段をあらかじめ設定した方向から果柄に接近させているが、このとき果柄の位置を正確に認識しておらず、大まかな位置で果柄を把持するようになっていた。
このような問題に鑑み、本発明は果柄を精度よく認識することができ、また果柄の正確な位置の認識を行うことが可能な果菜収穫装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる果菜収穫装置は、果菜の果柄を把持して採取する採取手段と、上記採取手段を移動させる移動手段と、上記果菜を撮影する撮影手段と、上記撮影手段が撮影した画像に基づいて上記移動手段により上記採取手段を移動させて、上記採取手段により上記果菜の果柄を把持させる制御手段とを備えた果菜収穫装置において、
上記果柄に対して横方向に形成されたライン光を照射する照射手段を上記撮影手段の上方に設けるとともに、当該照射手段の光軸を上記撮影手段の撮影方向に対して斜め上方から交差するように設け、
上記制御手段は、上記撮影手段が撮影した画像から、上記果柄にライン光が照射された照射部分を検出して、当該照射部分を上記果菜の果柄と認識することを特徴としている。
また、請求項2の発明にかかる果菜収穫装置は、果菜の果柄を把持して採取する採取手段と、上記採取手段を移動させる移動手段と、上記果菜を撮影する撮影手段と、上記撮影手段が撮影した画像に基づいて上記移動手段により上記採取手段を移動させて、上記採取手段により上記果菜の果柄を把持させる制御手段とを備えた果菜収穫装置において、
上記果柄に対して横方向に形成されたライン光を照射する照射手段を上記撮影手段の上方に設けるとともに、当該照射手段の光軸を上記撮影手段の撮影方向に対して斜め上方から交差するように設け、
上記制御手段は、上記撮影手段が撮影した画像において、上記果柄にライン光が照射された照射部分を検出して、当該照射部分と上記画像に設定した基準位置との距離を認識し、当該距離に基づいて上記撮影手段と果柄との位置関係を認識することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、照明手段が照射したライン光が果柄に反射して、これを撮影手段が撮影することから、果柄の色味に関係なくこれを認識することが可能となる。
また照明手段の光軸を撮影手段の撮影方向に対して交差するように設けたことで、果柄に照射されずに当該果柄の後方に通過したライン光が撮影手段に撮影されないようにすることができる。
請求項2の発明によれば、照射手段の光軸を上記撮影手段の撮影方向と交差するように設けることで、撮影手段が撮影した画像において果柄に照射された照射部分と当該画像に設定した基準位置との距離を認識すれば、三角法等を用いて撮影手段と果柄との位置関係を算出することができ、採取手段を用いて正確に果菜の採取をすることが可能となる。
さらに請求項3の発明によれば、ベース部材に設けられた採取手段と上記撮影手段と上記照射手段とを一体的に移動させることができるため、上記果菜を認識する度に撮影手段と照射手段との位置関係や、撮影手段と採取手段との位置関係を認識しなおす必要がなくなり、迅速な処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】撮影手段、照明手段とイチゴとの位置関係を示した図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、
図1、
図2は果菜としてのイチゴ1を収穫するイチゴ収穫装置2を示し、イチゴ1を栽培する栽培ベッド3に沿って移動可能に設けられた台車4と、当該台車4に設けられてイチゴ1を収穫するロボット5とを備え、これらは制御手段6によって制御されるようになっている。
図2に示すように、上記イチゴ1は食用に供される花托部1aと、当該花托部1aの上部に位置するいわゆるヘタ部1bとから構成され、上記ヘタ部1bの上部には果柄7が形成されている。
イチゴ1を収穫する際、上記花托部1aに触れるとイチゴ1が傷んでしまうため、本実施例のイチゴ収穫装置2は、上記果柄7をロボット5によって把持しながら当該果柄7を切断することで、イチゴ1の収穫を行うようになっている。
上記栽培ベッド3は例えば水耕栽培によってイチゴ1の栽培を行うようになっており、
図1の図示左右方向に細長く設けられるとともに、脚部3aによって所要の高さに保持されることで、
図2に示すように上記イチゴ1が栽培ベッド3の側部に垂れ下がるようになっている。
なお果菜としては、上記イチゴ1のほか、ブドウやモモ、ナシ、リンゴなどの果物や、トマトやナス、キュウリ、ゴーヤなどの野菜が考えられ、本実施例のイチゴ収穫装置2を応用することでこれらの果菜も傷めずに収穫することが可能である。
【0009】
上記台車4は、上記栽培ベッド3に沿って設けられたレール4a上を図示しない駆動手段の駆動力によって往復動するようになっており、当該台車4には上記ロボット5および当該ロボット5によって収穫されたイチゴ1を収容するためのトレー4bが設けられている。
上記ロボット5は、台車4に固定された移動手段としてのアーム部5aと、当該アーム部5aの先端に設けられたベース部材5bとを有し、当該ベース部材5bには、上記イチゴ1を採取する採取手段8と、イチゴ1を撮影する撮影手段9と、イチゴ1の果柄7に光を照射する照明手段10とが設けられている。
上記アーム部5aは従来公知のものを使用することができ、詳細な説明については省略するが、上記ベース部材5bを移動させることで、上記採取手段8、撮影手段9、照明手段10を一体的に移動させることが可能となっている。
【0010】
上記採取手段8は、上記特許文献1に記載された構成のものを使用することができ、一対のグリッパ11を図示しない駆動手段によって開閉させる構成を有している。
上記グリッパ11における対向した部分には、上記果柄7を両側から把持するための弾性素材からなる把持部11aと、当該把持部11aの上方に設けられてグリッパ11の閉鎖により上記果柄7を切断する切断部11bとが設けられている。
このような構成により、上記アーム部5aによって採取手段8を移動させ、グリッパ11の間に上記果柄7を位置させたら、その状態でグリッパ11を閉鎖させる。すると、最初に上記把持部11aによって上記果柄7が把持され、その後上記切断部11bが果柄7を切断するようになっている。
このようにしてイチゴ1を採取すると、上記採取手段8は当該イチゴ1の果柄7を把持したまま上記アーム5aによって上記台車4に設けられたトレー4bへと移動され、イチゴ1を当該トレー4b内に整列した状態で収容するようになっている。
【0011】
上記撮影手段9は上記ロボット5のベース部材5bに固定され、上記採取手段8の下方に位置するとともに、その撮影方向が水平を向くように設けられている。
上記撮影手段9にはカラー画像を撮影するCCDカメラを用い、また使用するCCDカメラは1台であってもよいが、2台のCCDカメラからなるステレオカメラとしてもよい。
【0012】
上記照明手段10は、上記ロボット5のベース部材5bに固定されるとともに、上記採取手段8の上方に位置し、横方向に形成されたラインレーザLを照射するレーザ照射手段によって構成されている。
上記照明手段10が照射する上記ラインレーザLの長さは、上記撮影手段9が撮影する撮影範囲を左右に横断する程度の長さに設定され、また上記照明手段10の光軸は斜め下方向に向けて設けられている。
また照明手段10が照射したラインレーザLが上記イチゴ1の果柄7に照射されるよう、照明手段10と撮影手段9の位置関係および上記照明手段10によるラインレーザLの光軸の向きが設定されている。
具体的には、水平に設定された撮影手段9の撮影方向、すなわちCCDカメラの光軸の方向に対し、上記照射手段10が照射するラインレーザLの光軸が斜め上方から交差するように設定されている。
【0013】
制御手段6は、上記撮影手段9が撮影した画像から、収穫すべきイチゴ1を認識するとともに、当該収穫対象のイチゴ1の果柄7を認識し、その認識結果に基づいて上記採取手段8を移動させ、イチゴ1の収穫を行わせるようになっている。
具体的には、制御手段6は以下のステップに基づいてイチゴ1の収穫を行わせるようになっている。
最初に、制御手段6は上記撮影手段9によって複数のイチゴ1を撮影し、その中から収穫対象となるイチゴ1の選定を行う選定ステップを行う。
制御手段6は上記撮影手段9を上記栽培ベッド3の側部から若干離隔した位置に移動させ、その状態で撮影手段9が撮影を行うと、撮影された画像には複数のイチゴ1が映り込むこととなる。
制御手段6は、この複数のイチゴ1のなかから、花托部1aの大きさや色に基づいて収穫対象となるイチゴ1を認識する。
【0014】
次に、制御手段6は認識した収穫対象となるイチゴ1を収穫するため、上記採取手段8を当該イチゴ1に対してどの方向から接近させるかについて判断を行う進入方向設定ステップを行う。
つまり、上記収穫対象となるイチゴ1の近辺に収穫対象外のイチゴ1が位置していた場合、上記採取手段8を接近させる方向によっては当該採取手段8が収穫対象外のイチゴ1に接触してしまうおそれがあるからである。
なお、上記選定ステップや進入方向設定ステップについては、上記特許文献1に記載された処理を利用することができ、これ以上の説明については省略する。
【0015】
続いて、制御手段6は上記撮影手段9が撮影した画像から上記収穫対象のイチゴ1の果柄7を認識する果柄認識ステップを行う。
制御手段6は、上記ロボット5のアーム部5aを制御して、上記採取手段8を上記進入方向設定ステップで設定した進入方向から上記収穫対象のイチゴ1に接近させる。
続いて、撮影手段9は上記収穫対象のイチゴ1に接近した位置で当該イチゴ1を撮影し、制御手段6は撮影された画像から当該イチゴ1の形状を認識するとともに、当該イチゴ1の重心位置を認識する。
制御手段6は、撮影手段9が撮影した画像における所定の位置を基準位置Aとして認識するようになっており、上記イチゴ1の重心位置が上記基準位置Aに一致するよう、上記アーム部5aを制御して撮影手段9を移動させる。
なお、必ずしも上記基準位置Aをイチゴ1の重心位置に一致させるために撮影手段9を移動させる必要はなく、上記イチゴ1の形状を認識した際の画像に対して、イチゴ1とは関係のない位置に基準位置Aを設定してもよい。
【0016】
このようにして撮影手段9の位置が定められると、制御手段6は上記照明手段10からラインレーザLを照射させ、当該ラインレーザLが上記イチゴ1の果柄7に照射される。
図3は上記撮影手段9が撮影した画像の一例を示しており、当該画像では上記ラインレーザLのうち、上記果柄7に照射された照射部分Sのみが撮影された状態を示している。
上述したように、照明手段10の光軸は撮影手段9の撮影方向に対して交差していることから、ラインレーザLのうち上記果柄7に照射された以外の部分は果柄7の背後へと通過し、撮影手段9によって撮影されないこととなる。
そして制御手段6はこの撮影手段9によって撮影された画像の中から、上記ラインレーザLによる上記照射部分Sを検出して、当該照射部分Sがイチゴ1の果柄7であると認識するようになっている。
ここで制御手段6は、撮影された画像の中から果柄7に照射されたラインレーザLの反射光である照射部分Sを検出することから、果柄7の色にかかわらずこれを検出することが可能であり、より確実に果柄7を検出することが可能となっている。
【0017】
ここで、上記収穫対象のイチゴ1の背後に他のイチゴ1や葉が位置している場合、これらにもラインレーザLが照射され、その反射光も撮影手段9に撮影されることとなる。
その場合であっても、上記果柄7は細いことから上記照射部分Sはごく小さな領域として撮影されるため、制御手段6は撮影手段9が撮影した画像から当該小さな領域を検出してこれを果柄7であると認識することができる。
また、照明手段10が撮影手段9の上方から斜め下方にラインレーザLを照射することで、収穫対象のイチゴ1の果柄7が他のイチゴや葉よりも撮影手段9に接近している場合には、当該果柄7に照射された照射部分Sが、その他の部分に照射された反射光よりも上方に位置することとなる。
したがって制御手段6は、撮影手段9が撮影した画像の中から、一番上の部分で検出された反射光を果柄7を示す照射部分Sとして認識することができる。
なお、上記果柄認識ステップについては、ラインレーザLのような狭い範囲を照射する光でなくとも、撮影方向と光軸とを傾斜させておくことにより、果柄7に照射されなかった光は後方に通過して撮影されないことから、撮影された画像から上記照射部分Sを認識することができ、果柄7を容易に認識することができる。
【0018】
このようにして上記果柄認識ステップが終了したら、制御手段6は上記撮影手段9が撮影した画像から、収穫対象のイチゴ1の果柄7の位置を認識する採取位置認識ステップを行う。
図4は撮影手段9および照明手段10に対するイチゴ1の位置関係を説明する図であり、また
図3に示す上記撮影手段9が撮影した画像のうち、
図3(a)は
図4に示す撮影手段9に接近したイチゴ1(a)の画像を、
図3(b)は撮影手段9より離隔したイチゴ1(b)の画像をそれぞれ示している。
図4から理解できるように、撮影手段9にイチゴ1(a)が接近している場合には、イチゴ1に対して上方に離隔した位置にラインレーザLが照射されるため、
図3(a)において上記果柄7を示す照射部分Sと上記画像に設定された基準位置A(イチゴ1の重心位置)との距離が大きくなる。
これに対し、撮影手段9からイチゴ1(b)が離隔している場合には、イチゴ1に対して上方に接近した位置にラインレーザLが照射されるため、
図3(b)において上記果柄7を示す照射部分Sと上記基準位置Aとの距離が小さくなる。
【0019】
そこで制御手段6は、上記果柄7を示す照射部分Sと上記画像に設定された基準位置Aとの距離を認識し、当該距離に基づいて上記撮影手段9と果柄7との位置関係を認識する。
具体的には、上記撮影手段9と照明手段10との位置関係と、撮影手段9の撮影方向と照明手段10の光軸の角度とが一定であるため、上記果柄7の照射部分Sと基準位置Aとの距離を測定すれば、三角法を用いることで撮影手段9から当該果柄7の照射部分Sまでの距離を算出することができる。
そして制御手段6は、照射部分Sと上記基準位置Aとの距離と、算出した撮影手段9から当該果柄7の照射部分Sまでの距離とから、上記撮影手段9と果柄7における照射部分Sとの位置関係を認識する。
さらに制御手段6は、上記採取手段8が上記撮影手段9とともにベース部材5bに固定されていることから、上記撮影手段9と果柄7との位置関係に基づいて、採取手段8と上記果柄7における照射部分Sとの位置関係も認識することができる。
【0020】
そして上記制御手段6は、上記ロボット5のアーム部5aおよび上記採取手段8を制御して、上記イチゴ1の収穫を行わせる収穫ステップを行う。
まず制御手段6は、認識した果柄7の照射部分Sの高さに合わせて上記採取手段8を上昇させ、その状態で上記進入方向設定ステップで設定した方向に採取手段8を前進させる。
このとき、制御手段6は上記採取位置認識ステップにおいて認識した採取手段8と上記果柄7における照射部分Sとの位置関係とから、上記果柄7の位置に合わせた距離だけ採取手段8を前進させる。
これにより上記採取手段8のグリッパ11の間に上記果柄7を位置させることができ、その後制御手段7がグリッパ11を閉鎖させることで、上記果柄7の把持および切断を行い、イチゴ1の収穫を行う。
この収穫ステップでは、上記採取位置認識ステップにおいて算出した採取手段8と果柄7との位置関係に基づいてグリッパ11を移動させるため、グリッパ11の把持部11aおよび切断部11bの長さを短く設定しても、これらの間に果柄7を位置させることができる。
これに対し、採取手段8と果柄7との位置関係を正確に認識していない場合には、上記進入方向ステップで設定した方向に採取手段8を移動させたとしても、把持部11aおよび切断部11bを長く設定して、大まかな位置で果柄7を把持する必要があった。
【0021】
上記構成を有するイチゴ収穫装置2の動作について説明すると、最初に、制御手段6は上記台車4を栽培ベッド3に沿って走行させ、また上記ロボット5のアーム部5aを制御して、撮影手段9を栽培ベッド3の側方に位置させる。
撮影手段9は栽培ベッド3より比較的離隔した位置から、複数のイチゴ1を撮影し、制御手段6は撮影された画像から収穫対象となるイチゴ1を認識する選定ステップと、上記収穫対象のイチゴ1に対して上記採取手段8を接近させる方向を判断する進入方向設定ステップとを行う。
【0022】
制御手段6は、上記進入方向設定ステップで設定した進入方向から、上記収穫対象のイチゴ1に向けて採取手段8とともに上記撮影手段9および照明手段10を接近させ、上記果柄認識ステップを行う。
撮影手段9が上記収穫対象のイチゴ1の周囲の画像を撮影すると、制御手段6は当該イチゴ1の形状を認識するとともに、上記イチゴ1の重心位置を画像の基準位置Aに一致させるよう、撮影手段9を移動させる。
続いて、制御手段6は上記照明手段10よりラインレーザLを斜め下方に向けて照射させ、これによりラインレーザLの一部が上記収穫対象のイチゴ1の果柄7に照射され、その他のラインレーザLは果柄7の後方へと通過する。
これにより、撮影手段9には上記イチゴ1の果柄7に照射された照射部分SのラインレーザLだけが撮影され、制御手段6はこの照射部分Sが収穫対象のイチゴ1の果柄7であると認識する。
このとき、果柄7の背後に他のイチゴ1が位置している場合や、果柄7の前に葉がある場合等、制御手段6が画像から果柄7を検出できない場合には、収穫を断念するとともに、その旨を警告する。
【0023】
次に、制御手段6は果柄認識ステップで認識した果柄7について、上記撮影手段9と果柄7との位置関係を認識する採取位置認識ステップを行う。
制御手段6は、上記果柄7を認識した画像から、当該果柄7の照射部分Sと基準位置Aまでの距離を測定し、さらに上記撮影手段9および照明手段10の位置、並びに撮影方向と光軸との角度から、三角法を用いて撮影手段9と上記果柄7の照射部分Sまでの距離を測定する。
また制御手段6には、予め撮影手段9と採取手段8との位置関係も登録されていることから、制御手段6は採取手段8と果柄7の照射部分Sとの位置関係も算出することができる。
【0024】
その後、制御手段6は算出した位置関係に基づいて上記アーム部5aを制御し、収穫ステップを行う。
制御手段は、上記採取手段8のグリッパ11を開放した状態で、当該グリッパ11を上記進入方向設定ステップで設定した方向で果柄7へと接近させ、上記グリッパ11の間に果柄7を位置させる。
このようにしてグリッパ11の間に果柄7が位置すると、制御手段は上記グリッパ11を閉鎖させ、上記把持部11aによって果柄7を把持しながら、上記切断部11bによって果柄7を切断し、イチゴ1を収穫する。
続いて制御手段6は、アーム部5aによって採取手段8を上記台車4に載置されたトレー4bへと移動させ、上記イチゴ1を当該トレー4bに収容させる。
【0025】
なお、本実施例の採取手段8は、グリッパ11に把持部11aと切断部11bとを一体的に設けた構成となっているが、これらを別体としてそれぞれを個別に移動させるようにしてもよい。
これと同様、上記実施例では上記採取手段8、撮影手段9、照明手段10を、ロボット5のアーム部5aの先端に設けたベース部材5bに一体的に固定した構成となっているが、これらを個別に移動させるようにしてもよい。
その際、制御手段6によってこれらの位置関係を認識しておけば、上記実施例と同様、撮影手段9と収穫対象のイチゴ1の果柄7との位置関係を認識することができ、また採取手段5と果柄7との位置関係も認識することができる。
さらに、上記照明手段10からはラインレーザLを照射しているが、このラインレーザLとしては、レーザ照射手段の先端を左右に往復動させたり長方形の軌跡で移動させることで、ライン状のレーザ光が形成されるようにしてもよい。
【0026】
また上記実施例における上記果柄認識ステップにおいて、ラインレーザLを果柄7に照射して当該果柄7を認識せず、特許文献1に記載された方法に基づいて、画像認識により果柄7を認識し、その後上記実施例にかかる採取位置認識ステップを行ってもよい。
この場合の採取位置認識ステップでは、照明手段10が斜め下方に光を照射して、当該ラインレーザLを果柄7に照射して照射部分Sを得ることで、撮影手段9と果柄7との位置関係を認識することが可能となる。
また当該採取位置認識ステップにおいて果柄7に照射する光については、上記ラインレーザLに限らず、果柄7の一部分に上記照射部分Sが形成されるようなスポット光を照射するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 イチゴ(果菜) 2 イチゴ収穫装置(果菜収穫装置)
3 栽培ベッド 4 台車
5 ロボット 5a アーム部(移動手段)
5b ベース部材 6 制御手段
7 果柄 8 採取手段
9 撮影手段 10 照射手段
L ラインレーザ A 基準位置
S 照射部分