IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キョーラク株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図1
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図2
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図3
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図4
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図5
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図6
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図7
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図8
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図9
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図10
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図11
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図12
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図13
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図14
  • 特許-構造体及び構造体の製造方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】構造体及び構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/10 20060101AFI20221110BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20221110BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20221110BHJP
   B29C 44/42 20060101ALI20221110BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20221110BHJP
   B60R 7/04 20060101ALN20221110BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20221110BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
B29C51/10
B60N2/64
B29C44/12
B29C44/42
B29C44/00 F
B60R7/04 Z
B29K105:04
B29L9:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018159976
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2020032586
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 優
(72)【発明者】
【氏名】南川 佑太
(72)【発明者】
【氏名】横井 慎司
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-085336(JP,A)
【文献】特開2013-240967(JP,A)
【文献】特開2009-034872(JP,A)
【文献】特開平05-131550(JP,A)
【文献】特開2013-119174(JP,A)
【文献】特開昭58-105836(JP,A)
【文献】特開2018-127077(JP,A)
【文献】特開2010-000850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00 - 51/46
B29C 49/00 - 49/80
B29C 44/00 - 44/60
B60R 3/00 - 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、補強部材と、転倒防止部とを備え、
前記基材は、発泡樹脂で構成され、
前記補強部材は、板状部を有し、且つ、前記補強部材は、前記基材を補強するように設けられ、
前記板状部の縁部が、前記基材に埋め込まれ
前記転倒防止部は、前記板状部の両側にそれぞれ設けられ、且つ、前記転倒防止部は、前記板状部を支持している、構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の構造体であって、
前記基材は、ベース壁と、フランジ壁とを有し、
前記フランジ壁は、前記ベース壁に接続され、
前記板状部は、前記ベース壁及び前記フランジ壁に埋め込まれている、構造体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の構造体であって、
前記補強部材は、複数の前記板状部と、連結部とを有し、
前記連結部は、複数の前記板状部と連結している、構造体。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の構造体であって、
前記板状部の前記縁部には、引掛部が形成され、
前記引掛部は、前記基材に係合している、構造体。
【請求項5】
第1及び第2金型を用いる構造体の製造方法であって、
シート形成工程と、取付工程と、成形工程とを備え、
前記成形工程は、賦形工程と、型閉じ工程と、膨張工程とを有し、
前記構造体は基材と補強部材とを備え、前記補強部材は板状部を有しており、
前記シート形成工程では、溶融した発泡樹脂を押出機で押し出して発泡樹脂シートを形成し、
前記取付工程では、第1金型に前記補強部材を取り付け、
前記賦形工程では、前記発泡樹脂シートを、前記補強部材が配置された第1金型の内面に沿って賦形し、
前記型閉じ工程では、第1及び第2金型を閉じ、第1及び第2金型が閉じた状態において、第1金型と第2金型との間には、前記発泡樹脂を発泡させる発泡空間が形成され、
前記膨張工程では、前記発泡空間内で前記発泡樹脂を発泡させることで前記基材を成形し、前記膨張工程が完了した状態において、前記板状部の縁部が、前記基材に埋め込まれている、方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法であって、
第1金型は、スリットを有し、
前記取付工程では、前記板状部が前記スリットに挿入されるように、第1金型に前記補強部材を配置する、方法。
【請求項7】
請求項に記載の方法であって、
前記板状部は、前記スリットに係合するように構成されている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体及び構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の構造体の製造方法は、加熱して軟化状態とした発泡樹脂シートを分割金型のキャビティに配置し、その後、当該キャビティを減圧吸引することで発泡樹脂シートを二次発泡させて発泡樹脂シートを膨張させる、方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-310380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形による構造体の製造方法は、液状の溶融樹脂を高圧にして分割金型のキャビティに供給するため、キャビティの形状が入り組んだ場合であっても、溶融樹脂をキャビティ内に行き渡らせやすい。このため、射出成形による構造体の製造方法では、入り組んだ形状の構造体を製造しやすい。しかし、特許文献1の構造体の製造方法は1枚の発泡樹脂シートを分割金型で挟み込む構成を採用しているため、特許文献1の構造体の製造方法は、射出成形による構造体の製造方法と比較すると、成形できる構造体の形状の制約が大きくなる場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、製造方法に起因して形状に制約を受けることが抑制されている構造体と、構造体の形状の制約を抑制することができる構造体の製造方法と、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、基材と、補強部材とを備え、前記基材は、発泡樹脂で構成され、前記補強部材は、板状部を有し、且つ、前記補強部材は、前記基材を補強するように設けられ、前記板状部の縁部が、前記基材に埋め込まれている、構造体が提供される。
【0007】
本発明によれば、構造体は、基材と、補強部材とを備えている。ここで、補強部材は基材を補強するように設けられているので、すなわち補強部材及び基材の位置関係は補強部材が基材を補強するような位置関係となっているので、補強部材及び基材からなる形状が入り組みやすくなり得る。しかし、本発明によれば、補強部材の板状部の縁部が基材に埋め込まれることで、補強部材と基材とが一体的に構成される。つまり、本発明によれば、構造体を製造する際に補強部材の板状部の縁部を基材に埋め込むので、補強部材及び基材からなる形状が入り組んでいたとしても、発泡樹脂シートを分割金型で挟み込む製造方法によって構造体を製造しやすくなる。このため、本発明によれば、製造方法に起因して形状に制約を受けることが抑制される。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記基材は、ベース壁と、フランジ壁とを有し、前記フランジ壁は、前記ベース壁に接続され、前記板状部は、前記ベース壁及び前記フランジ壁に埋め込まれている。
好ましくは、前記補強部材は、複数の前記板状部と、連結部とを有し、前記連結部は、複数の前記板状部と連結している。
好ましくは、前記板状部の前記縁部には、引掛部が形成され、前記引掛部は、前記基材に係合している。
好ましくは、転倒防止部を更に備え、前記転倒防止部は、前記板状部の両側にそれぞれ設けられ、且つ、前記転倒防止部は、前記板状部を支持している。
【0009】
実施形態に係る構造体の製造方法は、第1及び第2金型を用いる構造体の製造方法であって、シート形成工程と、取付工程と、成形工程とを備え、前記成形工程は、賦形工程と、型閉じ工程と、膨張工程とを有し、前記構造体は基材と補強部材とを備え、前記補強部材は板状部を有しており、前記シート形成工程では、溶融した発泡樹脂を押出機で押し出して発泡樹脂シートを形成し、前記取付工程では、第1金型に前記補強部材を取り付け、前記賦形工程では、前記発泡樹脂シートを、前記補強部材が配置された第1金型の内面に沿って賦形し、前記型閉じ工程では、第1及び第2金型を閉じ、第1及び第2金型が閉じた状態において、第1金型と第2金型との間には、前記発泡樹脂を発泡させる発泡空間が形成され、前記膨張工程では、前記発泡空間内で前記発泡樹脂を発泡させることで前記基材を成形し、前記膨張工程が完了した状態において、前記板状部の縁部が、前記基材に埋め込まれている。
好ましくは、第1金型は、スリットを有し、前記取付工程では、前記板状部が前記スリットに挿入されるように、第1金型に前記補強部材を配置する。
好ましくは、前記板状部は、前記スリットに係合するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは実施形態に係る構造体30の正面図であり、図1Bは実施形態に係る構造体30の正面斜視図であり、図1Cは実施形態に係る構造体30の背面斜視図である。
図2】実施形態に係る構造体30を分解した状態を示す背面斜視図である。
図3図1Aに示す構造体30のA-A端面図である。
図4図4A図3に示す領域Aの拡大図であり、図4B図1Aに示すB-B端面図である。
図5】実施形態に係る構造体30を製造するときに用いる、発泡成形機1と第1及び第2金型21、22とを示している。
図6】第1金型21と第2金型22との間に発泡樹脂シート23を垂下させ、第1金型21と第2金型22との間に表皮材32を配置し、第1金型21に補強部材50を配置した状態を示している。
図7図7Aはコアcr1のスリットsrに補強部材50を挿入する前の状態を示し、図7B図6の領域Bを示す斜視図であって、コアcr1のスリットsrに補強部材50を挿入し、コアcr1に補強部材50を配置した状態を示している。
図8】発泡樹脂シート23を第1金型21の内面に沿った形状に賦形した状態を示している。
図9図9Aは第1及び第2金型21、22を閉じた状態を示し、図9B図9Aに示す領域Bの拡大図であり、図9Cは発泡樹脂シート23を発泡させて発泡樹脂シート23を膨張させた状態を示す、図9Bに対応する図である。
図10図9Aに示す状態から、第1及び第2金型21、22を開いた状態を示している。
図11図11Aは変形例1に係る構造体30Bの背面斜視図であり、図11B図11Aに示す補強部材50Bの正面斜視図であり、図11Cは変形例2に係る構造体30Cの背面斜視図であり、図11D図11Cに示す補強部材50Cの正面斜視図である。
図12図12A図12D図1AのB-B端面に対応する位置の端面図であり、図12Aは変形例3に係る補強部材50Dの板状部51Dの端面図であり、図12Bは変形例4に係る補強部材50Eの板状部51Eの端面図であり、図12Cは変形例5に係る補強部材50Fの板状部51Fの端面図であり、図12Dは変形例6に係る補強部材50Gの板状部51Gの端面図であり、図12E図12Dに示す領域E拡大図である。
図13図13Aは変形例7に係るコアcr1及び板状部51の斜視図であり、図13Bは変形例7に係る補強部材50Hの端面図であって図1AのB-B端面に対応する位置の端面図であり、図13Cは変形例8に係る補強部材50Iの端面図であって図1AのB-B端面に対応する位置の端面図である。
図14図14Aは変形例9に係る板状部51Jの左側面図であり、図14Bは板状部51Jの正面図であり、図14Cは板状部51Jの背面図であり、図14Dは板状部51Jの上面図であり、図14Eは変形例10に係る板状部51Kの左側面図であり、図14Fは板状部51Kの正面図であり、図14Gは板状部51Kの背面図であり、図14Hは板状部51Kの上面図である。
図15図15Aは変形例11に係る板状部51L(補強部材50L)の斜視図であり、図15Bは板状部51Lを基材140に埋め込んだ状態を示す斜視図であり、図15Cは変形例12に係る板状部51M(補強部材50M)の斜視図であり、図15Dは板状部51Mを基材140に埋め込んだ状態を示す斜視図であり、図15Eは変形例13に係る補強部材50Nの斜視図であり、図15Fは板状部51Nを基材140に埋め込んだ状態を示す斜視図であり、図15Gは変形例14に係る補強部材50Oの斜視図であり、図15Hは板状部51Oを基材140に埋め込んだ状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.構造体30
実施形態に係る構造体30は自動車の内装部品であり、構造体30には面部30aが形成され、自動車の搭乗者は面部30aに例えば飲物の容器といった物品を置くことができる。このように、面部30aは物品の荷重が加わる部分であるため、構造体30は、構造体30のうち面部30aの形成領域を補強する構成(後述する補強部材50)を備えている。
【0013】
図1A図2に示すように、構造体30は、基材40と、表皮材32と、補強部材50とを備えている。なお、基材40の前面は表皮材32によって覆われているため、図1A及び図1Bでは、基材40が表皮材32で隠れて見えない。ここで、表皮材32は基材40の前面に沿うように設けられているので、表皮材32の形状と基材40の形状は同様である。このため、図1A及び図1Bでは、基材40の構成を示す符号の引出線は、表皮材32ではなく、基材40の構成を示しているものとする。
【0014】
図3に示すように、構造体30は二層構造となっている。つまり、構造体30において、基材40が第1層であり、表皮材32が第2層である。基材40は発泡樹脂で形成された成形体である。基材40の発泡倍率は、特に限定されないが、例えば1.5~6倍である。なお、実施形態では、構造体30が表皮材32を備えている場合を一例として説明するが、表皮材32を備えていなくてもよい。また、構造体30には突出部35が形成されている。突出部35は、構造体30の凹状の空間を、第1領域R1と第2領域R2とに分けている。
【0015】
1-1.基材40
図1A図2に示すように、基材40は、基材本体41と、フランジ壁42とを備えている。基材本体41は凹状に形成され、基材本体41の縁にはフランジ壁42が接続されている。基材本体41はベース壁43と立設壁44とを備えている。ベース壁43は板状部材であり、実施形態においてベース壁43は平板である。なお、ベース壁43は湾曲していてもよい。ベース壁43は補強部材50によって支持されており、ベース壁43に荷重が加わった場合において、ベース壁43の変形が抑制される。ベース壁43は、第1縁部43Aと、第2縁部43aと、被覆面43Bと、埋込面43Cとを有する。第1縁部43Aにはフランジ壁42が接続されている。被覆面43Bは埋込面43Cの反対側に形成され、被覆面43Bは表皮材32に覆われている。被覆面43Bは、上述した面部30aが設けられている範囲に形成されている。埋込面43Cは補強部材50の一部が埋め込まれている。埋込面43Cは補強部材50に支持される面である。立設壁44は板状部材であり、立設壁44はベース壁43から立ち上がるように延びている。実施形態において立設壁44は第2縁部43aに接続されている。立設壁44の縁にはフランジ壁42が接続されている。
【0016】
フランジ壁42は板状部材である。フランジ壁42は、第1壁42Aと、第2壁42Bと、第3壁42Cとを有する。第1壁42Aは、環状部42A1と、脚部42A2とを有する。環状部42A1は環状に形成され、環状部42A1の内側縁は第1縁部43Aに接続され、環状部42A1の外側縁は脚部42A2に接続されている。環状部42A1には開口部42aが形成されており、開口部42aには、構造体30を自動車の車内部品に固定する固定部材(例えばボルト)が挿入される。第2壁42Bはベース壁43の埋込面43Cに対向するように設けられている。第2壁42Bの一端側は第1壁42Aに接続され、第2壁42Bの他端側は第3壁42Cに接続されている。第2壁42Bと埋込面43Cとの間の間隔は、第1壁42A側から第3壁42C側に向かうに従い、広がっている。第3壁42Cには開口部42C1が形成されており、開口部42C1には、構造体30を自動車の車内部品に固定する固定部材(例えばボルト)が挿入される。
【0017】
1-2.補強部材50
図2に示すように、補強部材50は板状部51から構成されている。なお、実施形態は補強部材50が板状部51から構成された形態であるが、それに限定されるものではなく、補強部材50は板状部51以外の構成を有していてもよい。板状部51は平板であり、板状部51はベース壁43及びフランジ壁42に立設するように設けられている。図3図4Bに示すように、板状部51は縁部51aを有する。縁部51aは板状部51の一部であり、縁部51aは板状部51の周縁に設けられている。縁部51aは基材40に埋め込まれている。図4A及び図4Bに示すように、実施形態では、縁部51aは、ベース壁43と、フランジ壁42とに埋め込まれている。具体的には、縁部51aは、ベース壁43と、第1壁42Aと、第2壁42Bと、第3壁42Cと、に埋め込まれている。このように、縁部51aが、ベース壁43と、フランジ壁42とに埋め込まれることで、補強部材50が基材40に強固に固定され、その結果、面部30a(ベース壁43)が補強部材50に強固に補強される。縁部51aは、ベース壁43と第1壁42Aと第2壁42Bと第3壁42Cのうちの全て、すなわちここで列挙した4つの構成の全て、に埋め込まれている必要はなく、ここで列挙した4つの構成のうちの少なくとも1つの構成に埋め込まれていればよい。
【0018】
1.3.表皮材32
図3に示すように、表皮材32は、基材40の前面の全域に設けられている。表皮材32は、一例では、通気性を有する不織布で構成され、具体的にはナイロン繊維、セルロース繊維、アラミド繊維などを挙げることができるが、その例に限定されない。
【0019】
2.発泡成形機1の構成
図5に示すように、発泡成形機1は、樹脂供給装置2と、Tダイ18と、第1金型21と、第2金型22とを備える。樹脂供給装置2は、ホッパー12と、押出機13と、インジェクタ16と、アキュームレータ17を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とTダイ18は、連結管27を介して連結される。
【0020】
2-1.ホッパー12及び押出機13
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。スクリューの基端にはギア装置が設けられており、ギア装置によってスクリューが回転駆動される。
【0021】
2-2.インジェクタ16
シリンダ13aには、シリンダ13a内に発泡剤を注入するためのインジェクタ16が設けられる。インジェクタ16から注入される発泡剤は、物理発泡剤、化学発泡剤、及びその混合物が挙げられるが、物理発泡剤が好ましい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、及びブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、更にはそれらの超臨界流体を用いることができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度-149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。化学発泡剤は、インジェクタ16から注入する代わりに、ホッパー12から投入してもよい。
【0022】
2-3.アキュームレータ17及びTダイ18
原料樹脂と発泡剤が溶融混練されてなる発泡樹脂は、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に発泡樹脂が貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に発泡樹脂が所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて発泡樹脂をTダイ18内に設けられたスリットから押し出して垂下させて発泡樹脂シート23を形成する。
【0023】
2-4.第1及び第2金型21、22
発泡樹脂シート23は、第1及び第2金型21、22間に導かれる。第1金型21には凹状のキャビティcv1と、凸状のコアcr1とが形成されている。図7Aに示すように、コアcr1にはスリットsrが形成されており、スリットsrは補強部材50の板状部51が挿入可能に構成されている。図7Bに示すように、板状部51がスリットsrに挿入されると、板状部51はコアcr1に挟み込まれた状態となり、板状部51がコアcr1に固定される。第2金型22には凸状のコアcr2と、凹状のキャビティcv2とが形成されている。第1及び第2金型21、22の移動方向において、コアcr2とキャビティcv1とは向かい合っており、且つ、キャビティcv2とコアcr1とは向かい合っている。第1及び第2金型21、22には、図示省略の多数の減圧吸引孔が設けられている。また、第1及び第2金型21、22には凸状のピンチオフ部21c、22cが形成されている。
【0024】
3.構造体30の製造方法
本実施形態に係る構造体30の製造方法は、シート形成工程と、取付工程と、成形工程と、切除工程とを備える。
【0025】
3-1.シート形成工程
図5に示すように、シート形成工程では、溶融した発泡樹脂をTダイ18のスリットから押し出して発泡樹脂シート23を形成する。発泡樹脂シート23は、Tダイ18のスリットから押し出されると、第1金型21と第2金型22との間の空間に垂下する。
【0026】
3-2.取付工程
図6に示すように、取付工程では、第1金型21と第2金型22との間に発泡樹脂シート23及び表皮材32を配置する。また、図7A及び図7Bに示すように、取付工程では、第1金型21に補強部材50を取り付ける。具体的には、板状部51を、第1金型21のコアcr1のスリットsrに挿入し、板状部51をコアcr1に挟み込ませ、板状部51をコアcr1に固定する。また、図7Bに示すように、第1金型21に補強部材50を配置した状態において、板状部51の縁部51aは、コアcr1から、はみ出している。
【0027】
3-2.成形工程
成形工程では、基材40と、表皮材32と、補強部材50とを有する構造体30を成形する。成形工程は、賦形工程と、型閉じ工程と、膨張工程とを備える。図8に示すように、賦形工程では、第2金型22の減圧吸引孔から発泡樹脂シート23及び表皮材32を吸引する。これにより、発泡樹脂シート23及び表皮材32が、第2金型22の内面に沿った形状に賦形される。
【0028】
図9Aに示すように、型閉じ工程では、第1金型21と第2金型22とを近接させて、第1及び第2金型21、22を型閉じする。型閉じ工程が完了した状態において、板状部51のうちコアcr1からはみ出した部分、すなわち板状部51の縁部51aは、発泡樹脂シート23に入り込んでいてもよいし、入り込んでいなくてもよい。また、図9A及び図9Bに示すように、型閉じ工程が完了した状態において、ピンチオフ部21cとピンチオフ部22cとが接触し、第1金型21及び第2金型22には密閉空間Sが形成される。密閉空間Sは、発泡樹脂を発泡させる発泡空間である。発泡樹脂シート23及び表皮材32のうち密閉空間S外にある部位はバリbrとなる。図9Cに示すように、膨張工程では、第1及び第2金型21、22の減圧吸引孔から密閉空間Sを減圧する。密閉空間Sが減圧されると、発泡樹脂シート23の発泡が促進されて、発泡樹脂シート23が膨張し、基材40が成形される。膨張工程が完了した状態において、板状部51の縁部51aは、基材40に埋め込まれている。
【0029】
3-3.切除工程
図10に示すように、第1及び第2金型21、22を型開きして、構造体30を第1及び第2金型21、22から取り出す。切除工程では、構造体30に形成されたバリbrを切除する。
【0030】
4.実施形態の効果
実施形態に係る構造体30は、基材40と、補強部材50とを備えている。ここで、補強部材50は基材40を補強するように設けられているので、補強部材50及び基材40の位置関係は、基材40の裏面側(背面側)に補強部材50が配置される位置関係となっており、補強部材50及び基材40からなる形状が入り組んでいる。このような構成の構造体は、射出成形による製造方法であれば、比較的容易に製造することができる。その一方で、実施形態に係る構造体30の製造方法のように、1枚の発泡樹脂シート23を第1及び第2金型21、22で挟み込む製造方法では、この構造体30のような構成を有する構造体を技術的に成形し難い。実施形態に係る構造体30は、補強部材50の板状部51の縁部51aが基材に埋め込まれることで、補強部材50と基材40とが一体的に構成される。つまり、構造体30を製造する際に補強部材50の板状部51の縁部51aを基材40に埋め込むので、補強部材50及び基材40からなる形状が入り組んでいたとしても、発泡樹脂シート23を第1及び第2金型21、22で挟み込む製造方法によって構造体30を製造しやすくなる。このため、実施形態に係る構造体30は、製造方法に起因して形状に制約を受けることが抑制された構成となっている。また、実施形態に係る製造方法は、構造体の形状の制約を抑制することができる方法である。特に、実施形態1に係る製造方法は、構造体30のように深絞り形状を有する構造体の裏面側(背面側)に補強構造を設ける場合に有効である。
【0031】
実施形態に係る構造体30の板状部51の縁部51aが基材40に埋め込まれているので、板状部51が基材40に強固に固定され、その結果、ベース壁43(図3参照)が板状部51に強固に補強される。特に、図3に示すように、構造体30は矢印Ar1方向の荷重に対する剛性が向上する。また、実施形態において、板状部51は第1壁42A及び第2壁42Bに接触しているので、ベース壁43に加わった荷重は第1壁42A及び第2壁42Bで受け止められる。つまり、ベース壁43に加わった荷重は、第1壁42A及び第2壁42Bに分散される。このため、ベース壁43に荷重が加わったときにおいて、構造体30の変形が抑制される。
【0032】
5.実施形態の変形例1、2:複数の板状部、連結部
図11A及び図11Cに示すように、変形例1、2に係る構造体30B、30Cの補強部材50B、50Cは、複数の板状部51B、51Cを有する。なお、変形例1、2では、板状部51B、51Cの数は2つ以上であってもよい。補強部材50B、50Cが複数の板状部51B、51Cを有することで、基材40がより強固に補強部材50B、50Cに補強される。
【0033】
図11A及び図11Bに示すように、変形例1に係る補強部材50Bは、複数の板状部51Bと、連結部52Bとを有する。板状部51Bには切欠又は貫通孔が形成され、当該切欠又は貫通穴には連結部52Bが挿入される。本変形例1において、板状部51Bには切欠が形成されている。連結部52Bは平板状部材である。連結部52Bは各板状部51Bと連結している。補強部材50Bが連結部52Bを有することで、補強部材50Bがユニット化されるため、補強部材50Bを第1金型21に取り付ける作業負担が抑制される。また、補強部材50Bが連結部52Bを有するので、構造体30Bは、矢印Ar1方向(上側から下側に向かう方向)の荷重に対する剛性だけでなく、矢印Ar2方向(前側から後側に向かう方向)の荷重に対する剛性が向上する。
【0034】
図11C及び図11Dに示すように、変形例2に係る補強部材50Cは、複数の板状部51Cと、連結部52Cとを有する。板状部51Cには切欠又は貫通孔が形成され、当該切欠又は貫通穴には連結部52Cが挿入される。本変形例2において、板状部51Cには切欠が形成されている。連結部52Cは各板状部51Cと連結している。連結部52Cは棒状部材である。変形例2に係る連結部52Cの短手方向の幅は変形例1に係る連結部52Bの短手方向の幅よりも広くなっている。変形例2に係る補強部材50Cも変形例1に係る補強部材50Bと同様の効果を有する。
【0035】
6.実施形態の変形例3~6:引掛部
変形例3~6の板状部51D~51Gは基材40に係合する引掛部53D~53Gを有するので、板状部51D~51Gが基材40により強固に連結する。
【0036】
図12Aに示すように、変形例3に係る補強部材50Dの板状部51Dの縁部には、引掛部53Dが形成されている。引掛部53Dは板状部51Dの表面から突出するように形成されており、引掛部53Dは基材40の内部に埋め込まれている。図12Bに示すように、変形例4に係る補強部材50Eの板状部51Eの縁部には、引掛部53Eが形成されている。引掛部53Eは板状部51Eの表面から突出するように形成されている。引掛部53Eは先端に向かうに従って幅が広がるように形成され、引掛部53Eの断面形状はテーパー形状をなしている。引掛部53Eは基材40の内部に埋め込まれている。
【0037】
図12Cに示すように、変形例5に係る補強部材50Fの板状部51Fの縁部には、引掛部53Fが形成されている。引掛部53Fは板状部51Fの表面から突出するように形成されており、また、引掛部53Fの断面形状は弧状になっている。引掛部53Fは基材40の内部に埋め込まれている。図12D及び図12Eに示すように、変形例6に係る補強部材50Gの板状部51Gの縁部には、引掛部53Gが形成されている。引掛部53Gには先端に向かうに従って幅が狭くなる幅狭部53G1が形成されており、幅狭部53G1は爪構造をなしている。
【0038】
7.実施形態の変形例7、8:転倒防止部
変形例7、8の構成は、板状部51の倒れを防止する転倒防止部54H、54Iを備えている。図13Aに示すように、変形例7に係る転倒防止部54Hは、基材40に形成されている。転倒防止部54Hは板状部51の両側にそれぞれ設けられ、転倒防止部54Hは板状部51を支持している。転倒防止部54Hは、基材40のうち縁部51aが埋め込まれている部分が盛り上がることで形成される。ここで、図13Bに示すように、第1金型21のコアcr1には、テーパー面tpが形成されている。発泡樹脂シートが板状部51の表面とテーパー面tpとの間に入り込むことで、転倒防止部54Hが基材40のうち縁部51aが埋め込まれている部分に形成される。
【0039】
図13Cに示すように、変形例8に係る転倒防止部54Iは板状部51の両側にそれぞれ設けられ、転倒防止部54Iは板状部51を支持している。転倒防止部54Iの平面視形状は三角形状であり、転倒防止部54Iは板状部材である。転倒防止部54Iは、板状部51の表面と基材40の表面とに接触するように設けられている。
【0040】
8.実施形態の変形例9、10:係合構造
変形例9、10の板状部51J、51Kには突出部55J、55Kが形成されている。図14A図14Dに示すように、変形例9に係る突出部55Jの表面は曲面状に形成され、図14E図14Hに示すように、変形例10に係る突出部55Kは三角柱状に形成されている。突出部55J、55Kが板状部51J、51Kに形成されていることで、板状部51J、51Kが第1金型21のコアcr1に係合し、板状部51J、51Kの位置ずれが抑制される。
【0041】
9.実施形態の変形例11~14
実施形態及び変形例1~10において、補強部材が、深絞り形状を有する基材に適用されているが、それに限定されるものではない。補強部材は平板状の基材に適用することもできる。
【0042】
図15A及び図15Bに示すように、変形例11に係る補強部材50Lの板状部51Lの縁部は、平板状の基材140に埋め込まれている。図15C及び図15Dに示すように、変形例12に係る補強部材50Mは複数の板状部51Mを有する。その他は、変形例12は変形例11と同様である。
【0043】
変形例13は、変形例1、2と同様の機能を有する形態である。図15E及び図15Fに示すように、変形例13に係る補強部材50Nは、複数の板状部51Nと複数の連結部52Nとを有する。各連結部52Nは複数の板状部51Nと連結している。
変形例14は変形例8と同様の機能を有する形態である。図15G及び図15Hに示すように、変形例14に係る補強部材50Oは、板状部51Oと転倒防止部54Oとを有する。なお、図15Hに示す破線は、転倒防止部54Oのうち基材140に埋め込まれている部分を示している。転倒防止部54Oは板状部51Oの両側にそれぞれ設けられ、転倒防止部54Oは板状部51Oを支持している。
【符号の説明】
【0044】
1 :発泡成形機
2 :樹脂供給装置
11 :原料樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a :シリンダ
16 :インジェクタ
17 :アキュームレータ
17a :シリンダ
17b :ピストン
18 :Tダイ
21 :第1金型
21c :ピンチオフ部
22 :第2金型
22c :ピンチオフ部
23 :発泡樹脂シート
25 :連結管
27 :連結管
30 :構造体
30a :面部
32 :表皮材
35 :突出部
40 :基材
41 :基材本体
42 :フランジ壁
42a :開口部
42A :第1壁
42A1 :環状部
42A2 :脚部
42B :第2壁
42C :第3壁
42C1 :開口部
43 :ベース壁
43A :第1縁部
43B :被覆面
43C :埋込面
43a :第2縁部
44 :立設壁
50 :補強部材
51 :板状部
51a :縁部
R1 :第1領域
R2 :第2領域
S :密閉空間
br :バリ
cr1 :コア
cr2 :コア
cv1 :キャビティ
cv2 :キャビティ
sr :スリット
30B :構造体
50B :補強部材
51B :板状部
52B :連結部
30C :構造体
50C :補強部材
51C :板状部
52C :連結部
50D :補強部材
51D :板状部
53D :引掛部
50E :補強部材
51E :板状部
53E :引掛部
50F :補強部材
51F :板状部
53F :引掛部
50G :補強部材
51G :板状部
53G :引掛部
53G1 :幅狭部
50H :補強部材
54H :転倒防止部
tp :テーパー面
50I :補強部材
54I :転倒防止部
51J :板状部
55J :突出部
51K :板状部
55K :突出部
140 :基材
50L :補強部材
51L :板状部
50M :補強部材
51M :板状部
50N :補強部材
51N :板状部
52N :連結部
50O :補強部材
51O :板状部
54O :転倒防止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15