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  • 特許-光線治療装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】光線治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
A61N5/06 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018184964
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020054438
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】503416456
【氏名又は名称】株式会社インフォワード
(73)【特許権者】
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】森田 明理
(72)【発明者】
【氏名】坂野 勝利
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/109628(WO,A1)
【文献】特開平06-022997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0245724(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0228075(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0088822(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が保持して操作するプローブと、当該プローブに設けられて患部に光線を照射する光照射手段と、当該光照射手段の光線の制御を行う照射制御部と、照射制御部による光線の照射条件を設定する条件設定部と、照射条件を入力する入力部とを備えた光線治療装置において、
上記条件設定部の照射条件の変更を許可する許可データが登録されている医師が所有する医師用外部記憶媒体と、変更を許可しない禁止データ登録されている患者が所有する患者用外部記憶媒体と、上記医師用外部記憶媒体および上記患者用外部記憶媒体に登録されているデータを読み込むデータ読込部とを備え、
上記データ読込部が上記医師用外部記憶媒体に登録された許可データを読み込んだ場合、上記入力部を用いた上記条件設定部の照射条件を変更可能とし、
上記データ読込部が上記患者用外部記憶媒体に登録された禁止データを読み込んだ場合、上記入力部による条件設定部の照射条件の変更は許容されず、当該禁止データと共に患者用外部記憶媒体に登録された照射条件を条件設定部に設定することを特徴とする光線治療装置。
【請求項2】
上記入力部は所要の画面を表示させるとともに接触して入力操作が可能なタッチパネルからなり、
上記データ読込部が上記医師用外部記憶媒体から上記許可データを読み込んだ場合、上記入力部に照射条件を設定するための画面を表示させて、当該照射条件を入力可能とすることを特徴とする請求項1に記載の光線治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光線治療装置に関し、詳しくは、光線の照射条件を設定する条件設定部と、照射条件を入力する入力部とを備えた光線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾癬、白斑、アトピー性皮膚炎などの皮膚病の治療を目的に、長波紫外線(UVA)や中波紫外線(UVB)等の光線を患部に照射して治療する光線治療装置が知られている。
このような光線治療装置では、患部ごとに照射する光線の照射出力、照射時間などの照射条件が異なるため、光線治療装置には上記照射条件を登録する条件設定部が設けられるとともに、当該条件設定部に照射条件を登録するための入力部が設けられている。
そして、このような光線治療装置を持ち運び可能としたものとして、使用者が保持可能なプローブに、光線を照射する光照射手段を設けた光線治療装置(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-164417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような上記光線治療装置を用いた光線治療は、患者が自らの操作によって光線の照射条件を変更すると、光線の過剰な照射等による事故が発生する場合があることから、患者自身が自宅で治療を行う在宅治療は認められていなかった。
しかしながら、今後光線治療の在宅治療が認められた場合、同じ光線治療装置を医療機関において医師が使用し、一方では患者の自宅における在宅治療にも使用可能とすれば、光線治療装置の共用ができて効率的である。
ただしその場合には、医療機関において医師が光線の照射条件を容易に設定できるようにする一方、在宅治療においては患者が上記照射条件を変更できないようにする必要が生じる。
このような問題に鑑み、本発明は在宅治療に用いた場合には患者による照射条件の変更を防止し、医師による治療を行う場合には照射条件を容易に設定することが可能な光線治療装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる光線治療装置は、使用者が保持して操作するプローブと、当該プローブに設けられて患部に光線を照射する光照射手段と、当該光照射手段の光線の制御を行う照射制御部と、照射制御部による光線の照射条件を設定する条件設定部と、照射条件を入力する入力部とを備えた光線治療装置において、
上記条件設定部の照射条件の変更を許可する許可データが登録されている医師が所有する医師用外部記憶媒体と、変更を許可しない禁止データ登録されている患者が所有する患者用外部記憶媒体と、上記医師用外部記憶媒体および上記患者用外部記憶媒体に登録されているデータを読み込むデータ読込部とを備え、
上記データ読込部が上記医師用外部記憶媒体に登録された許可データを読み込んだ場合、上記入力部を用いた上記条件設定部の照射条件を変更可能とし、
上記データ読込部が上記患者用外部記憶媒体に登録された禁止データを読み込んだ場合、上記入力部による条件設定部の照射条件の変更は許容されず、当該禁止データと共に患者用外部記憶媒体に登録された照射条件を条件設定部に設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記請求項1の発明によれば、上記医師用外部記憶媒体に登録された許可データを読み込んだ場合、使用者である医師が上記入力部を用いて条件設定部の照射条件を変更でき、本発明にかかる光線治療装置を医療機関において医師が患者の治療に用いることができる。
一方、上記患者用外部記憶媒体に登録された禁止データを読み込んだ場合、使用者である患者は上記入力部を用いて条件設定部の照射条件を変更できないものの、代わりに当該患者用外部記憶媒体に登録された照射条件が条件設定部に登録されるため、当該患者の患部に適した光線を照射させることができ、本発明にかかる光線治療装置を患者が安全に在宅治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例にかかる光線治療装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について説明すると、図1は光線治療装置1を説明する図であって、上記光線治療装置1は乾癬や白斑、アトピー性皮膚炎などの皮膚病を治療する装置となっている。
本実施例の光線治療装置1は、病院などの医療機関において医師が患者の治療に用いることも、患者が自宅等において行う在宅治療にも使用することも可能となっている。
上記光線治療装置1は、使用者が保持可能なプローブ3と、上記プローブ3とケーブルを介して接続された本体部4とを備え、上記本体部4には上記プローブ3を収容可能な収容部4aが形成されており、使用者はプローブ3やその他の付属機器を上記収容部4aに収容することで光線治療装置1を容易に持ち運びすることが可能となっている。なお、プローブ3と本体部4の接続は有線に限らず、各種の無線方式であってもよい。
なお、以下の説明において、患者は光線治療装置1の操作を行う使用者であるが、当該患者以外にも、当該患者を看護する看護者等も使用者として操作を行うことが可能となっており、また医療機関で使用する場合は医師が使用者となる。
【0009】
上記プローブ3には患者の皮膚に光線を照射する光照射手段5が設けられ、波長が311nm付近のいわゆるナローバンドUVBからなる光線を照射するようになっており、上記波長の光線を患者の患部に照射することで、上述したような皮膚病を治療することが可能である。
また上記プローブ3は使用者によって操作しやすい形状を有するとともに、光照射手段5からの光線の照射開始を指示するためのトリガースイッチ3aを備え、また上記光照射手段5から照射された光線が直接患者の目に入射しないように図示しないカバーを備えている。
本実施例の上記プローブ3には上記トリガースイッチ3a以外の操作スイッチ等が省略されており、当該プローブ3から光線の照射条件の設定をできないようにすることで、患者による余計な操作や誤操作を防止するようになっている。
【0010】
上記本体部4には、上記プローブ3の操作に基づいて光照射手段5より照射される光線の制御を行う照射制御部6と、照射制御部6による光線の照射条件を設定する条件設定部7と、医者または患者が所持する外部記憶媒体8を読み込むデータ読込部9と、患者にプローブ3の操作方法を示すとともに、医師に光線の照射条件の設定画面を示すモニタ部10とが設けられている。
上記照射制御部6は、上記光照射手段5より照射される光線の照射出力、照射時間、照射回数などの制御を行うようになっており、これら照射出力、照射時間、照射回数などの照射条件は上記条件設定部7に登録される。
そして、上記プローブ3のトリガースイッチ3aが操作されると、上記条件設定部7の照射条件に従って照射制御部6が上記プローブ3の光照射手段5から光線を照射させるようになっている。なお、照射条件としては照射出力に照射時間を乗じた照射量を設定することもできる。
【0011】
上記外部記憶媒体8としては従来公知のICカードを用いることができ、当該外部記憶媒体8を読み込む上記データ読込部9は従来公知のICカードリーダーを備えている。
上記外部記憶媒体8には、患者が所有する患者用カード8Aと、医師が所有する医師用カード8Bとの2種類があり、これら患者用カード8Aと医師用カード8Bのいずれかをデータ読込部9によって読み込ませることで、本実施例の光線治療装置1を在宅治療または医師による治療に用いることが可能となっている。
光線治療装置1の電源が投入されると、上記モニタ部10には上記データ読込部9に外部記憶媒体8の挿入を促す表示がなされ、その後患者用カード8Aまたは医師用カード8Bが挿入されると、各カードに予め登録されたパスワードを入力させる指示が表示されるようになっている。
またデータ読込部9は患者用カード8Aが挿入された時刻を記憶するようになっており、同一の患者用カード8Aを用いて治療を行う場合、前回の治療から例えば18時間経過していないときには、安全のため治療ができない旨の表示をモニタ部10に表示させるようになっている。
【0012】
上記患者用カード8Aには、上記条件設定部7の照射条件の変更を許可しない禁止データと、予め医師が患部ごとに登録した照射条件と、患者にプローブ3の操作の指示をするための操作指示データとが登録されている。
上記禁止データが登録された患者用カード8Aをデータ読込部9によって読み込むと、上記モニタ部10には光線の照射条件を設定するための設定画面が表示されないようになっており、患者が自由に照射条件を変更することができないようになっている。
一方患者用カード8Aには、医師による診断に基づいて患部ごとに光線の照射出力、照射時間、照射回数などの照射条件が登録されており、患者用カード8Aがデータ読込部9によって読み込まれると、この照射条件が上記条件設定部7に登録されるようになっている。
患者用カード8Aへの照射条件の登録は、医療機関に設けられたパーソナルコンピュータ等を用い、ICカードライター等を介して行うことができるが、本実施例の光線治療装置1のデータ読込部9に照射条件の書き込み機能を持たせることも可能である。
その場合、最初にデータ読込部9に医師用カード8Bを読み込ませて医師が光線の照射条件を設定し、その後データ読込部9に上記患者用カード8Aを挿入して、設定した照射条件を当該患者用カード8Aに書き込むようにすればよい。
そして患者用カード8Aに登録された操作指示データとしては、患部の写真や動画、もしくはそれに代わるアニメーションやイラストが登録されており、これらを上記モニタ部10に表示させることで、患者にプローブ3を接触させる位置を指示するものとなっている。
なお、操作指示データとして音声等のデータを登録し、さらに本体部4に音声出力部を設けることで、上記モニタ部10に表示させた動画等と共に音声等による治療部位のアナウンスを行うことも可能である。
【0013】
上記医師用カード8Bには、上記条件設定部7の照射条件の変更を許可する許可データが登録されている。
上記許可データが登録された医師用カード8Bをデータ読込部9によって読み込むと、上記モニタ部10には光線の照射条件を設定するための設定画面が表示されるようになっており、医師は患者の患部を診察しながら、照射する光線の照射条件を変更することが可能となっている。
本実施例の医師用カード8Bは、医師が光線治療装置1を用いて患者の治療を行うための鍵として利用することができ、特に医師用カード8Bをデータ読込部9によって読み込んだ際にパスワードの入力を求めることで、医師以外の使用を防止するようになっている。
【0014】
上記モニタ部10は従来公知のタッチパネル式のモニタとなっており、患者にプローブ3の操作を指示する操作指示手段、もしくは医師が上記光線の照射条件を設定するための入力部として用いられ、また電源投入後にデータ読込部9が読み込んだ各カードのパスワードを入力する際にも使用される。
上述したように、上記データ読込部9が患者用カード8Aを読み込むと、上記モニタ部10は上記患者用カード8Aに登録された操作指示データを表示させ、これにより患者は上記モニタ部10に表示された画像等を見ながらプローブ3を正確に患部に位置させることができる。
そして、その状態で使用者がプローブ3のトリガースイッチ3aを操作すると、患者用カード8Aを介して条件設定部7に設定された照射条件に従って、照射制御部6が光照射手段5より光線を照射させることで、患部に対して適切な治療を行うことができる。
【0015】
一方、上記データ読込部9が医師用カード8Bを読み込むと、モニタ部10は光線の照射条件を入力するための設定画面を表示させ、医師は上記モニタ部10に触れながら、患部ごとの光線の適切な照射出力、照射時間などを入力することができる。
そして、医師は上記プローブ3を保持してこれを患者の患部まで移動させ、その後トリガースイッチ3aを操作することで、上記医師が設定した照射条件に従って、照射制御部6は当該患部に好適な照射出力、照射時間で光照射手段5より光線を照射させ、任意の照射回数で患部に対して適切な治療を行うことができる。
【0016】
上記構成を有する光線治療装置1によれば、当該光線治療装置1を医療機関において医師が使用することも、患者が自宅において在宅治療に使用することも可能であり、光線治療装置1を医療機関用、在宅治療用に分けて製造する必要がなくなるものとなっている。
そのうえで、本実施例の光線治療装置1は、上記医師が所持する許可データが登録された医師用カード8Bまたは患者が所持する禁止データが登録された患者用カード8Aをデータ読込部9に読み込ませることで、医師による上記照射条件の変更を許容し、一方では患者による照射条件の変更を禁止するようになっている。
つまり、上記医師用カード8Bを用いた場合、医師は医療機関において従来公知の光線治療装置1と同様、照射する光線の照射条件を自由に設定することができ、患部に対して適切な照射条件を設定して上記プローブ3を用いた適切な治療を行うことができる。
一方、上記患者用カード8Aを用いた場合、患者は自分で光線の照射条件を変更することができないため、誤設定による操作ミスは発生することはなく、また患者用カード8Aに登録された照射条件によって、医師の指示に基づいた正しい在宅治療を行うことが可能となっている。
【0017】
なお、本発明にかかる光線治療装置が照射する光線としては、上述した皮膚病を治療するためのナローバンドUVBに限らず、あざやしみ、ほくろ等を除去するレーザ光線も考えられ、このような光線を利用した治療を行うために当該光線の照射条件の設定を要するものであれば、上記実施例の構成を利用することが可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 光線治療装置 3 プローブ
4 本体部 5 光照射手段
6 照射制御部 7 条件設定部
8 外部記憶媒体 8A 患者用カード
8B 医師用カード 9 データ読込部
10 モニタ部(入力部)
図1