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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】位相同期回路、送受信回路及び集積回路
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/00 20060101AFI20221110BHJP
   H03L 7/22 20060101ALI20221110BHJP
   H04B 1/403 20150101ALI20221110BHJP
【FI】
H03L7/00 220
H03L7/22
H04B1/403
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020529872
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2018025983
(87)【国際公開番号】W WO2020012550
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】柘植 政利
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-528011(JP,A)
【文献】特開2004-153332(JP,A)
【文献】特開平10-032489(JP,A)
【文献】特開2003-229762(JP,A)
【文献】特開2010-278720(JP,A)
【文献】特開2011-171895(JP,A)
【文献】特開2015-046799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 7/00ー7/26
H04B 1/403
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の遅延量が調整可能であり、前記第1の遅延量で第1の参照クロック信号を遅延し、第1の遅延参照クロック信号を出力する第1の遅延回路と、
前記第1の遅延参照クロック信号と第1の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第1のクロック制御信号を生成する第1のクロック制御回路と、
前記第1のクロック制御信号に基づいて前記第1の出力クロック信号を生成する第1のクロック信号生成回路と、
前記第1の出力クロック信号のジッタを監視し、前記第1の出力クロック信号のジッタの監視結果に基づいて前記第1の遅延量を調整する第1の監視回路とを有し、
前記第1の監視回路は、前記第1のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第1の遅延量を調整する位相同期回路。
【請求項2】
さらに、第2の参照クロック信号と第2の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第2のクロック制御信号を生成する第2のクロック制御回路と、
前記第2のクロック制御信号に基づいて前記第2の出力クロック信号を生成する第2のクロック信号生成回路とを有し、
前記第1の監視回路は、前記第1のクロック制御信号の変動と前記第2のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第1の遅延量を調整する請求項1に記載の位相同期回路。
【請求項3】
さらに、第2の参照クロック信号と第2の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第2のクロック制御信号を生成する第2のクロック制御回路と、
前記第2のクロック制御信号に基づいて前記第2の出力クロック信号を生成する第2のクロック信号生成回路と、
第2の遅延量が調整可能であり、前記第2の遅延量で第3の参照クロック信号を遅延し、第2の遅延参照クロック信号を出力する第2の遅延回路と、
前記第2の遅延参照クロック信号と第3の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第3のクロック制御信号を生成する第3のクロック制御回路と、
前記第3のクロック制御信号に基づいて前記第3の出力クロック信号を生成する第3のクロック信号生成回路と、
前記第3の出力クロック信号のジッタを監視し、前記第3の出力クロック信号のジッタの監視結果に基づいて前記第2の遅延量を調整する第2の監視回路とを有する請求項1に記載の位相同期回路。
【請求項4】
前記第1のクロック制御回路と前記第1のクロック信号生成回路の組みは、前記第2のクロック制御回路と前記第2のクロック信号生成回路の組みと、前記第3のクロック制御回路と前記第3のクロック信号生成回路の組みとの間に設けられ、
前記第1の監視回路は、前記第1のクロック制御回路と前記第1のクロック信号生成回路の組みと、前記第2のクロック制御回路と前記第2のクロック信号生成回路の組みとが動作し、前記第3のクロック制御回路と前記第3のクロック信号生成回路の組みが動作していない状態で、前記第1のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第1の遅延量を調整し、
その後、前記第2の監視回路は、前記第1のクロック制御回路と前記第1のクロック信号生成回路の組みと、前記第2のクロック制御回路と前記第2のクロック信号生成回路の組みと、前記第3のクロック制御回路と前記第3のクロック信号生成回路の組みが動作している状態で、前記第3のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第2の遅延量を調整する請求項に記載の位相同期回路。
【請求項5】
第1の遅延量が調整可能であり、前記第1の遅延量で第1の参照クロック信号を遅延し、第1の遅延参照クロック信号を出力する第1の遅延回路と、
前記第1の遅延参照クロック信号と第1の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第1のクロック制御信号を生成する第1のクロック制御回路と、
前記第1のクロック制御信号に基づいて前記第1の出力クロック信号を生成する第1のクロック信号生成回路と、
前記第1の出力クロック信号のジッタを監視し、前記第1の出力クロック信号のジッタの監視結果に基づいて前記第1の遅延量を調整する第1の監視回路とを有し、
前記第1の監視回路は、送信回路により前記第1の出力クロック信号に基づいて生成された送信信号を受信回路が受信したことによって得られる前記受信回路の受信信号のアイパターンの開口面積に基づいて、前記第1の遅延量を調整する位相同期回路。
【請求項6】
前記第1の監視回路は、前記送信回路により前記第1の出力クロック信号に基づいて生成された送信信号を前記受信回路が受信したことによって得られる前記受信回路の受信信号のアイパターンの開口面積が最大となるように、前記第1の遅延量を調整する請求項5に記載の位相同期回路。
【請求項7】
第1の出力クロック信号を生成する第1の位相同期回路と、
前記第1の出力クロック信号に基づいて送信を行う第1の送信回路と、
前記第1の出力クロック信号に基づいて受信を行う第1の受信回路とを有し、
前記第1の位相同期回路は、
第1の遅延量が調整可能であり、前記第1の遅延量で第1の参照クロック信号を遅延し、第1の遅延参照クロック信号を出力する第1の遅延回路と、
前記第1の遅延参照クロック信号と前記第1の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第1のクロック制御信号を生成する第1のクロック制御回路と、
前記第1のクロック制御信号に基づいて前記第1の出力クロック信号を生成する第1のクロック信号生成回路と、
前記第1の出力クロック信号のジッタを監視し、前記第1の出力クロック信号のジッタの監視結果に基づいて前記第1の遅延量を調整する第1の監視回路とを有し、
前記第1の監視回路は、前記第1のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第1の遅延量を調整する送受信回路。
【請求項8】
さらに、第2の出力クロック信号を生成する第2の位相同期回路と、
前記第2の出力クロック信号に基づいて送信を行う第2の送信回路と、
前記第2の出力クロック信号に基づいて受信を行う第2の受信回路とを有し、
前記第2の位相同期回路は、
第2の参照クロック信号と前記第2の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第2のクロック制御信号を生成する第2のクロック制御回路と、
前記第2のクロック制御信号に基づいて前記第2の出力クロック信号を生成する第2のクロック信号生成回路とを有し、
前記第1の監視回路は、前記第1のクロック制御信号の変動と前記第2のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第1の遅延量を調整する請求項7に記載の送受信回路。
【請求項9】
さらに、第2の出力クロック信号を生成する第2の位相同期回路と、
前記第2の出力クロック信号に基づいて送信を行う第2の送信回路と、
前記第2の出力クロック信号に基づいて受信を行う第2の受信回路と、
第3の出力クロック信号を生成する第3の位相同期回路と、
前記第3の出力クロック信号に基づいて送信を行う第3の送信回路と、
前記第3の出力クロック信号に基づいて受信を行う第3の受信回路とを有し、
前記第2の位相同期回路は、
第2の参照クロック信号と前記第2の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第2のクロック制御信号を生成する第2のクロック制御回路と、
前記第2のクロック制御信号に基づいて前記第2の出力クロック信号を生成する第2のクロック信号生成回路とを有し、
前記第3の位相同期回路は、
第2の遅延量が調整可能であり、前記第2の遅延量で第3の参照クロック信号を遅延し、第2の遅延参照クロック信号を出力する第2の遅延回路と、
前記第2の遅延参照クロック信号と前記第3の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第3のクロック制御信号を生成する第3のクロック制御回路と、
前記第3のクロック制御信号に基づいて前記第3の出力クロック信号を生成する第3のクロック信号生成回路と、
前記第3の出力クロック信号のジッタを監視し、前記第3の出力クロック信号のジッタの監視結果に基づいて前記第2の遅延量を調整する第2の監視回路とを有する請求項7に記載の送受信回路。
【請求項10】
前記第1の位相同期回路は、前記第2の位相同期回路と前記第3の位相同期回路との間に設けられ、
前記第1の監視回路は、前記第1の位相同期回路と前記第2の位相同期回路が動作し、前記第3の位相同期回路が動作していない状態で、前記第1のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第1の遅延量を調整し、
その後、前記第2の監視回路は、前記第1の位相同期回路と前記第2の位相同期回路と前記第3の位相同期回路が動作している状態で、前記第3のクロック制御信号の変動に基づいて、前記の第2の遅延量を調整する請求項に記載の送受信回路。
【請求項11】
第1の出力クロック信号を生成する第1の位相同期回路と、
前記第1の出力クロック信号に基づいて送信を行う第1の送信回路と、
前記第1の出力クロック信号に基づいて受信を行う第1の受信回路とを有し、
前記第1の位相同期回路は、
第1の遅延量が調整可能であり、前記第1の遅延量で第1の参照クロック信号を遅延し、第1の遅延参照クロック信号を出力する第1の遅延回路と、
前記第1の遅延参照クロック信号と前記第1の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第1のクロック制御信号を生成する第1のクロック制御回路と、
前記第1のクロック制御信号に基づいて前記第1の出力クロック信号を生成する第1のクロック信号生成回路と、
前記第1の出力クロック信号のジッタを監視し、前記第1の出力クロック信号のジッタの監視結果に基づいて前記第1の遅延量を調整する第1の監視回路とを有し、
前記第1の監視回路は、前記第1の送信回路により前記第1の出力クロック信号に基づいて生成された送信信号を前記第1の受信回路が受信したことによって得られる前記第1の受信回路の受信信号のアイパターンの開口面積に基づいて、前記第1の遅延量を調整する送受信回路。
【請求項12】
前記第1の監視回路は、前記第1の送信回路により前記第1の出力クロック信号に基づいて生成された送信信号を前記第1の受信回路が受信したことによって得られる前記第1の受信回路の受信信号のアイパターンの開口面積が最大となるように、前記第1の遅延量を調整する請求項11に記載の送受信回路。
【請求項13】
第1の出力クロック信号を生成する第1の位相同期回路と、
前記第1の出力クロック信号に基づいて、第1の送信データを送信する第1の送信回路と、
前記第1の出力クロック信号に基づいて、第1の受信データを受信する第1の受信回路と、
前記第1の送信データを前記第1の送信回路に出力し、前記第1の受信データを前記第1の受信回路から入力する内部回路とを有し、
前記第1の位相同期回路は、
第1の遅延量が調整可能であり、前記第1の遅延量で第1の参照クロック信号を遅延し、第1の遅延参照クロック信号を出力する第1の遅延回路と、
前記第1の遅延参照クロック信号と前記第1の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第1のクロック制御信号を生成する第1のクロック制御回路と、
前記第1のクロック制御信号に基づいて前記第1の出力クロック信号を生成する第1のクロック信号生成回路と、
前記第1の出力クロック信号のジッタを監視し、前記第1の出力クロック信号のジッタの監視結果に基づいて前記第1の遅延量を調整する第1の監視回路とを有し、
前記第1の監視回路は、前記第1のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第1の遅延量を調整する集積回路。
【請求項14】
さらに、第2の出力クロック信号を生成する第2の位相同期回路と、
前記第2の出力クロック信号に基づいて、第2の送信データを送信する第2の送信回路と、
前記第2の出力クロック信号に基づいて、第2の受信データを受信する第2の受信回路とを有し、
前記第2の位相同期回路は、
第2の参照クロック信号と前記第2の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第2のクロック制御信号を生成する第2のクロック制御回路と、
前記第2のクロック制御信号に基づいて前記第2の出力クロック信号を生成する第2のクロック信号生成回路とを有し、
前記第1の監視回路は、前記第1のクロック制御信号の変動と前記第2のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第1の遅延量を調整する請求項13に記載の集積回路。
【請求項15】
さらに、第2の出力クロック信号を生成する第2の位相同期回路と、
前記第2の出力クロック信号に基づいて、第2の送信データを送信する第2の送信回路と、
前記第2の出力クロック信号に基づいて、第2の受信データを受信する第2の受信回路と、
第3の出力クロック信号を生成する第3の位相同期回路と、
前記第3の出力クロック信号に基づいて、第3の送信データを送信する第3の送信回路と、
前記第3の出力クロック信号に基づいて、第3の受信データを受信する第3の受信回路とを有し、
前記第2の位相同期回路は、
第2の参照クロック信号と前記第2の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第2のクロック制御信号を生成する第2のクロック制御回路と、
前記第2のクロック制御信号に基づいて前記第2の出力クロック信号を生成する第2のクロック信号生成回路とを有し、
前記第3の位相同期回路は、
第2の遅延量が調整可能であり、前記第2の遅延量で第3の参照クロック信号を遅延し、第2の遅延参照クロック信号を出力する第2の遅延回路と、
前記第2の遅延参照クロック信号と前記第3の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第3のクロック制御信号を生成する第3のクロック制御回路と、
前記第3のクロック制御信号に基づいて前記第3の出力クロック信号を生成する第3のクロック信号生成回路と、
前記第3の出力クロック信号のジッタを監視し、前記第3の出力クロック信号のジッタの監視結果に基づいて前記第2の遅延量を調整する第2の監視回路とを有する請求項13に記載の集積回路。
【請求項16】
前記第1の位相同期回路は、前記第2の位相同期回路と前記第3の位相同期回路との間に設けられ、
前記第1の監視回路は、前記第1の位相同期回路と前記第2の位相同期回路が動作し、前記第3の位相同期回路が動作していない状態で、前記第1のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第1の遅延量を調整し、
その後、前記第2の監視回路は、前記第1の位相同期回路と前記第2の位相同期回路と前記第3の位相同期回路が動作している状態で、前記第3のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第2の遅延量を調整する請求項1に記載の集積回路。
【請求項17】
第1の出力クロック信号を生成する第1の位相同期回路と、
前記第1の出力クロック信号に基づいて、第1の送信データを送信する第1の送信回路と、
前記第1の出力クロック信号に基づいて、第1の受信データを受信する第1の受信回路と、
前記第1の送信データを前記第1の送信回路に出力し、前記第1の受信データを前記第1の受信回路から入力する内部回路とを有し、
前記第1の位相同期回路は、
第1の遅延量が調整可能であり、前記第1の遅延量で第1の参照クロック信号を遅延し、第1の遅延参照クロック信号を出力する第1の遅延回路と、
前記第1の遅延参照クロック信号と前記第1の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第1のクロック制御信号を生成する第1のクロック制御回路と、
前記第1のクロック制御信号に基づいて前記第1の出力クロック信号を生成する第1のクロック信号生成回路と、
前記第1の出力クロック信号のジッタを監視し、前記第1の出力クロック信号のジッタの監視結果に基づいて前記第1の遅延量を調整する第1の監視回路とを有し、
前記第1の監視回路は、前記第1の送信回路により前記第1の出力クロック信号に基づいて生成された送信信号を前記第1の受信回路が受信したことによって得られる前記第1の受信回路の受信信号のアイパターンの開口面積に基づいて、前記第1の遅延量を調整する集積回路。
【請求項18】
前記第1の監視回路は、前記第1の送信回路により前記第1の出力クロック信号に基づいて生成された送信信号を前記第1の受信回路が受信したことによって得られる前記第1の受信回路の受信信号のアイパターンの開口面積が最大となるように、前記第1の遅延量を調整する請求項17に記載の集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相同期回路、送受信回路及び集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧制御発振器の出力クロックを所定の値に分周したフィードバッククロックを分周器により生成するフェーズロックループを用いたクロック発生回路が知られている(特許文献1参照)。位相比較器は、フィードバッククロックと入力基準クロックとの位相差を検出してこの位相差を無くすための位相誤差信号を生成して電圧制御発振器の出力クロックを制御する。調整回路は、入力基準クロックの周波数変動が所定の範囲より大きい場合、周波数変動を所定の範囲内に調整する。
【0003】
また、位相比較器の第1の入力に与えられる信号と位相比較器の第2の入力に与えられる信号との間の位相差を示す信号を生成するための位相比較器を含む位相ロックループ回路が知られている(特許文献2参照)。第1の遅延素子は、位相比較器の第1の入力に供給される信号に遅延を与える。第2の遅延素子は、位相比較器の第2の入力に供給される信号に遅延を与える。第1の遅延素子及び第2の遅延素子のうちの少なくとも1つによって与えられる遅延は、関連する遅延制御値に従って変化する。マイクロコントローラは、第1の遅延素子及び第2の遅延素子に結合され、関連する遅延制御値を生成する。位相ロックループ回路と第1の遅延素子と第2の遅延素子とマイクロコントローラは、同じ半導体基板上に存在する。
【0004】
また、入力クロックから位相補間制御信号を生成する位相補間制御部を有する位相ロックループが知られている(特許文献3参照)。位相/周波数検出器は、第2の基準クロックとフィードバッククロックとの位相差を検出し、位相差を表す位相誤差信号を出力する。ループフィルタは、位相誤差信号をフィルタリングして第1の制御信号を生成する。位相補間発振器は、位相補間制御信号によって制御される第1の基準クロックと第1の制御信号によって制御される発振条件とによって位相補間された出力クロックを生成する。N分周回路(Nは整数)は、フィードバッククロックを生成するために出力クロックをN分周する。可変遅延モジュールは、位相/周波数検出器に結合され、第2の制御信号によって制御される量だけ入力クロックを遅延させて第2の基準クロックを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-153332号公報
【文献】米国特許第9859901号明細書
【文献】米国特許第8253454号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
位相ロックループ回路は、出力クロック信号を生成する。しかし、出力クロック信号にジッタが発生することがある。ジッタは、出力クロック信号の時間軸方向に発生する高周波数の変動(揺らぎ)である。
【0007】
1つの側面では、本発明の目的は、出力クロック信号のジッタを低減することができる位相同期回路、送受信回路及び集積回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
位相同期回路は、第1の遅延量が調整可能であり、前記第1の遅延量で第1の参照クロック信号を遅延し、第1の遅延参照クロック信号を出力する第1の遅延回路と、前記第1の遅延参照クロック信号と第1の出力クロック信号の位相を比較し、前記比較の結果に基づいて第1のクロック制御信号を生成する第1のクロック制御回路と、前記第1のクロック制御信号に基づいて前記第1の出力クロック信号を生成する第1のクロック信号生成回路と、前記第1の出力クロック信号のジッタを監視し、前記第1の出力クロック信号のジッタの監視結果に基づいて前記第1の遅延量を調整する第1の監視回路とを有し、前記第1の監視回路は、前記第1のクロック制御信号の変動に基づいて、前記第1の遅延量を調整する。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面では、第1の出力クロック信号のジッタを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態による集積回路の構成例を示す図である。
図2図2は、複数の位相ロックループ回路に共通に接続される電源電位ノード及びグランド電位ノードを示す図である。
図3図3は、位相ロックループ回路の構成例を示す図である。
図4図4は、集積回路の制御方法を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態による位相ロックループ回路の構成例を示す図である。
図6図6は、第3の実施形態による位相ロックループ回路の構成例を示す図である。
図7図7は、集積回路の制御方法を示すフローチャートである。
図8図8は、第4の実施形態による送受信回路の構成例を示す図である。
図9図9は、遅延回路の遅延量調整前のアイパターンを示す図である。
図10図10は、遅延回路の遅延量調整後のアイパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による集積回路100の構成例を示す図である。集積回路100は、中央処理ユニット(CPU)101と、複数レーンの送受信回路111~114とを有する。
【0012】
送受信回路111は、送信回路(TX)121と、位相ロックループ(PLL)回路131と、受信回路(RX)141とを有する。位相ロックループ回路131は、位相同期回路であり、出力クロック信号を生成する。送信回路121は、位相ロックループ回路131が生成する出力クロック信号に基づいて、送信データを送信する。受信回路141は、位相ロックループ回路131が生成する出力クロック信号に基づいて、受信データを受信する。中央処理ユニット101は、内部回路であり、送信回路121に送信データを出力し、受信回路141から受信データを入力する。送信回路121は、位相ロックループ回路131が生成する出力クロック信号に同期して、中央処理ユニット101から入力した送信データをパラレルからシリアルに変換し、シリアルの送信データを他の集積回路に送信する。受信回路141は、クロックデータリカバリ(CDR)回路を有し、位相ロックループ回路131が生成する出力クロック信号に同期して、他の集積回路から受信したシリアルの受信信号を基に、クロック信号と受信データを再生する。そして、受信回路141は、受信データをシリアルからパラレルに変換し、パラレルの受信データを中央処理ユニット101に出力する。
【0013】
送受信回路112は、送信回路122と、位相ロックループ回路132と、受信回路142とを有する。位相ロックループ回路132は、位相同期回路であり、出力クロック信号を生成する。送信回路122は、位相ロックループ回路132が生成する出力クロック信号に基づいて、送信データを送信する。受信回路142は、位相ロックループ回路132が生成する出力クロック信号に基づいて、受信データを受信する。中央処理ユニット101は、送信回路122に送信データを出力し、受信回路142から受信データを入力する。送信回路122は、送信回路121と同様の処理を行う。受信回路142は、受信回路141と同様の処理を行う。
【0014】
送受信回路113は、送信回路123と、位相ロックループ回路133と、受信回路143とを有する。位相ロックループ回路133は、位相同期回路であり、出力クロック信号を生成する。送信回路123は、位相ロックループ回路133が生成する出力クロック信号に基づいて、送信データを送信する。受信回路143は、位相ロックループ回路133が生成する出力クロック信号に基づいて、受信データを受信する。中央処理ユニット101は、送信回路123に送信データを出力し、受信回路143から受信データを入力する。送信回路123は、送信回路121と同様の処理を行う。受信回路143は、受信回路141と同様の処理を行う。
【0015】
送受信回路114は、送信回路124と、位相ロックループ回路134と、受信回路144とを有する。位相ロックループ回路134は、位相同期回路であり、出力クロック信号を生成する。送信回路124は、位相ロックループ回路134が生成する出力クロック信号に基づいて、送信データを送信する。受信回路144は、位相ロックループ回路134が生成する出力クロック信号に基づいて、受信データを受信する。中央処理ユニット101は、送信回路124に送信データを出力し、受信回路144から受信データを入力する。送信回路124は、送信回路121と同様の処理を行う。受信回路144は、受信回路141と同様の処理を行う。
【0016】
送受信回路111~114は、それぞれ、位相ロックループ回路131~134を有するので、送受信速度を異ならせることができる。しかし、複数の位相ロックループ回路131~134は、相互に近くに配置されるため、電源ノイズの干渉が発生し易い。
【0017】
なお、5個以上の送受信回路111~114等を設けてもよい。また、送受信回路111~114毎に中央処理ユニット101を設けてもよい。
【0018】
図2は、複数の位相ロックループ回路131~134に共通に接続される電源電位ノードVDD及びグランド電位ノードGNDを示す図である。3種類の電源接続方法が存在する。
【0019】
第1の電源接続方法では、複数の位相ロックループ回路131~134は、集積回路100内で、共通の電源電位ノードVDD及びグランド電位ノードGNDに接続されている。
【0020】
第2の電源接続方法では、複数の位相ロックループ回路131~134の電源電位ノード及びグランド電位ノードは、集積回路100内では分離されている。その場合、複数の位相ロックループ回路131~134は、パッケージの電源接続により、共通の電源電位ノードVDD及びグランド電位ノードGNDに接続されている。
【0021】
第3の電源接続方法では、複数の位相ロックループ回路131~134の電源電位ノード及びグランド電位ノードは、集積回路100及びパッケージ内では分離されている。その場合、複数の位相ロックループ回路131~134は、ボードの電源接続により、共通の電源電位ノードVDD及びグランド電位ノードGNDに接続されている。
【0022】
集積回路100が多数の送受信回路111~114を設ける場合には、パッケージの端子(ボール)を全ての送受信回路111~114毎に分離することが困難である。その場合、第2の電源接続方法になる場合が多い。
【0023】
複数の位相ロックループ回路131~134が同時に動作すると、複数の位相ロックループ回路131~134間では、電源電位ノードVDD及びグランド電位ノードGNDを介して、電源ノイズが相互干渉する。
【0024】
図3は、本実施形態による位相ロックループ回路131及び132の構成例を示す図である。
【0025】
位相ロックループ回路131は、遅延回路311と、位相周波数検出器(PFD)312と、チャージポンプ(CP)313と、ローパスフィルタ(LPF)314と、電圧制御発振器(VCO)315と、分周器(DIV)316と、アナログデジタル変換器(ADC)317と、遅延制御回路318とを有し、出力クロック信号CK1を生成する。
【0026】
遅延回路311は、遅延量が調整可能であり、その遅延量で参照クロック信号RCKを遅延し、遅延参照クロック信号RCKaを出力する。参照クロック信号RCKは、例えば100MHzである。分周器316は、電圧制御発振器315が生成した出力クロック信号CK1を分周し、その分周したクロック信号CK1aを位相周波数検出器312に出力する。位相周波数検出器312は、遅延参照クロック信号RCKaとクロック信号CK1aとの位相及び周波数を比較し、その比較の結果に基づいてアップ信号UP又はダウン信号DNをチャージポンプ313に出力する。チャージポンプ313は、アップ信号UPが入力されると制御信号V1の電圧を高くし、ダウン信号DNが入力されると制御信号V1の電圧を低くする。ローパスフィルタ314は、制御信号V1をローパスフィルタリングし、そのローパスフィルタリングしたクロック制御信号V1aを電圧制御発振器315に出力する。位相周波数検出器312とチャージポンプ313とローパスフィルタ314と分周器316は、クロック制御信号V1aを生成するクロック制御回路の一例である。電圧制御発振器315は、クロック信号生成回路であり、クロック制御信号V1aの電圧に基づいた周波数の出力クロック信号CK1を生成する。出力クロック信号CK1は、例えば、数GHzである。なお、アナログデジタル変換器317と遅延制御回路318については、後述する。
【0027】
位相ロックループ回路132は、遅延回路321と、位相周波数検出器322と、チャージポンプ323と、ローパスフィルタ324と、電圧制御発振器325と、分周器326とを有し、出力クロック信号CK2を生成する。
【0028】
遅延回路321は、所定の遅延量で参照クロック信号RCKを遅延し、遅延参照クロック信号RCKbを出力する。なお、遅延回路321は、削除してもよい。分周器326は、電圧制御発振器325が生成した出力クロック信号CK2を分周し、その分周したクロック信号CK2bを位相周波数検出器322に出力する。位相周波数検出器322は、遅延参照クロック信号RCKbとクロック信号CK2bとの位相及び周波数を比較し、その比較の結果に基づいてアップ信号UP又はダウン信号DNをチャージポンプ323に出力する。チャージポンプ323は、アップ信号UPが入力されると制御信号V2の電圧を高くし、ダウン信号DNが入力されると制御信号V2の電圧を低くする。ローパスフィルタ324は、制御信号V2をローパスフィルタリングし、そのローパスフィルタリングしたクロック制御信号V2bを電圧制御発振器325に出力する。位相周波数検出器322とチャージポンプ323とローパスフィルタ324と分周器326は、クロック制御信号V2bを生成するクロック制御回路の一例である。電圧制御発振器325は、クロック信号生成回路であり、クロック制御信号V2bの電圧に基づいた周波数の出力クロック信号CK2を生成する。なお、位相ロックループ回路132は、位相ロックループ回路131に対して、異なる構成により、出力クロック信号CK2を生成してもよい。
【0029】
位相ロックループ回路131及び132が同時に動作すると、位相ロックループ回路131及び132間では、電源電位ノードVDD及びグランド電位ノードGNDを介して、電源ノイズが相互干渉する。その結果、出力クロック信号CK1及び出力クロック信号CK2にジッタが生じる。ジッタは、出力クロック信号CK1及びCK2の時間軸方向に発生する高周波数の変動(揺らぎ)である。
【0030】
出力クロック信号CK1のジッタの大きさは、電源ノイズと出力クロック信号CK1の位相に依存している。したがって、出力クロック信号CK1の位相を適切な位相に変えることにより、出力クロック信号CK1のジッタを低減することができる。位相ロックループ回路131は、遅延回路311が遅延参照クロック信号RCKaの位相を変えることにより、出力クロック信号CK1の位相を変え、その結果、出力クロック信号CK1のジッタを低減することができる。遅延制御回路318は、出力クロック信号CK1のジッタが最小になるように、遅延回路311の遅延量を調整する。
【0031】
出力クロック信号CK1のジッタの大きさは、クロック制御信号V1aの変動量の大きさに依存する。すなわち、クロック制御信号V1aの変動量が大きいほど、出力クロック信号CK1のジッタが大きくなる。そこで、アナログデジタル変換器317は、クロック制御信号V1aをアナログからデジタルに変換し、デジタルの制御信号D1を遅延制御回路318に出力する。遅延制御回路318は、制御信号D1の変動量が最小になるように、遅延制御信号CTL1により、遅延回路311の遅延量を調整する。これにより、遅延制御回路318は、出力クロック信号CK1のジッタが最小になるように、遅延制御信号CTL1により、遅延回路311の遅延量を調整することができる。
【0032】
具体的には、遅延制御回路318は、遅延回路311の遅延量を最小値から最大値まで変化させ、遅延量毎に、制御信号D1の最大値と最小値を検出し、制御信号D1の最大値と最小値との差分を変動量として検出する。そして、遅延制御回路318は、遅延回路311の遅延量の最小値から最大値の中で、制御信号D1の変動量が最小となる遅延量を探索し、遅延回路311の遅延量を固定する。これにより、出力クロック信号CK1のジッタを最小にすることができる。
【0033】
遅延回路311の遅延量を変えることにより、遅延参照クロック信号RCKaの位相が変わり、位相ロックループ回路131による電源ノイズの位相が変わる。これにより、位相ロックループ回路132が生成する出力クロック信号CK2のジッタも低減する。
【0034】
以上のように、アナログデジタル変換器317と遅延制御回路318は、監視回路の一例であり、出力クロック信号CK1のジッタを監視し、出力クロック信号CK1のジッタの監視結果に基づいて、遅延回路311の遅延量を調整する。
【0035】
図4は、集積回路100の制御方法を示すフローチャートである。ステップS401では、中央処理ユニット101は、位相ロックループ回路131及び位相ロックループ回路132を起動する。ステップS402では、中央処理ユニット101は、位相ロックループ回路131のアナログデジタル変換器317を起動する。
【0036】
ステップS403では、遅延制御回路318は、遅延回路311の遅延量delに0(最小値)を代入する。遅延量delは、遅延コードでもよい。ステップS404では、遅延制御回路318は、変数iに0を代入する。
【0037】
ステップS405では、遅延制御回路318は、遅延量delが最大遅延量nより小さいか否かを判定する。遅延制御回路318は、遅延量delが最大遅延量nより小さい場合には、ステップS406に進み、遅延量delが最大遅延量nより小さくない場合には、ステップS419に進む。
【0038】
ステップS406では、遅延制御回路318は、アナログデジタル変換器317が出力する制御信号D1の値を最大値max及び最小値minに代入する。
【0039】
ステップS407では、遅延制御回路318は、変数iが検出回数mより小さいか否かを判定する。検出回数mは、遅延制御回路318が制御信号D1を検出する回数である。遅延制御回路318は、変数iが検出回数mより小さい場合には、ステップS408に進み、変数iが検出回数mより小さくない場合には、ステップS414に進む。
【0040】
ステップS408では、遅延制御回路318は、アナログデジタル変換器317が出力する制御信号D1の値を変数outに代入する。ステップS409では、遅延制御回路318は、変数outが最大値maxより大きいか否かを判定する。遅延制御回路318は、変数outが最大値maxより大きい場合には、ステップS412に進み、変数outが最大値maxより大きくない場合には、ステップS410に進む。
【0041】
ステップS412では、遅延制御回路318は、最大値maxに変数outを代入し、ステップS413に進む。
【0042】
ステップS410では、遅延制御回路318は、変数outが最小値minより小さいか否かを判定する。遅延制御回路318は、変数outが最小値minより小さい場合には、ステップS411に進み、変数outが最小値minより小さくない場合には、ステップS413に進む。
【0043】
ステップS411では、遅延制御回路318は、最小値minに変数outを代入し、ステップS413に進む。
【0044】
ステップS413では、遅延制御回路318は、変数iをインクリメントし、ステップS407に戻る。上記の処理をm回繰り返すことにより、制御信号D1の最大値maxと最小値minを検出することができる。
【0045】
ステップS414では、遅延制御回路318は、最大値maxから最小値minを減算した値を、変動量ampに代入する。
【0046】
ステップS415では、遅延制御回路318は、遅延量delが0であるか否かを判定する。遅延制御回路318は、遅延量delが0である場合には、ステップS417に進み、遅延量delが0でない場合には、ステップS416に進む。
【0047】
ステップS417では、遅延制御回路318は、変動量ampを最小変動量amp_minに代入し、遅延量delを最小変動遅延量del_minに代入し、ステップS418に進む。
【0048】
ステップS416では、遅延制御回路318は、変動量ampが最小変動量amp_minより小さいか否かを判定する。遅延制御回路318は、変動量ampが最小変動量amp_minより小さい場合には、ステップS417に進み、変動量ampが最小変動量amp_minより小さくない場合には、ステップS418に進む。
【0049】
ステップS418では、遅延制御回路318は、遅延量delをインクリメントし、ステップS404に戻る。遅延量delの最小値0から最大値nまで上記の処理を繰り返す。最小変動量amp_minには、遅延量delを最小値0から最大値nまで変化させた場合の変動量ampの中で、最小の変動量ampが代入される。最小変動遅延量del_minには、遅延量delの最小値0から最大値nまでの中で、最小の変動量amp_minとなる場合の遅延量delが代入される。
【0050】
ステップS419では、遅延制御回路318は、遅延量delに最小変動遅延量del_minを代入する。ステップS420では、遅延制御回路318は、遅延回路311の遅延量delを固定し、遅延量delの調整を完了する。その後、集積回路100は、通常動作を行う。
【0051】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態による位相ロックループ回路131及び132の構成例を示す図である。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。図5の位相ロックループ回路131は、図3の位相ロックループ回路131と同じ構成を有する。図5の位相ロックループ回路132は、図3の位相ロックループ回路132に対して、アナログデジタル変換器327を追加したものである。
【0052】
アナログデジタル変換器327は、ローパスフィルタ324が出力するクロック制御信号V2bをアナログからデジタルに変換し、デジタルの制御信号D2を遅延制御回路318に出力する。遅延制御回路318は、遅延回路311の遅延量を最小値から最大値まで変化させ、制御信号D1の変動量と制御信号D2の変動量の総和が最小となる遅延回路311の遅延量を探索する。そして、遅延制御回路318は、遅延回路311の遅延量を、制御信号D1の変動量と制御信号D2の変動量の総和が最小となる遅延量に調整する。具体的な調整方法は、図4のフローチャートと同様である。これにより、位相ロックループ回路131が生成する出力クロック信号CK1のジッタと、位相ロックループ回路132が生成する出力クロック信号CK2のジッタを低減することができる。
【0053】
本実施形態は、3個以上の位相ロックループ回路に適用することもできる。すべての位相ロックループ回路131~134に、アナログデジタル変換器と可変の遅延回路を設け、すべての位相ロックループ回路131~134に共通の遅延制御回路318を設ける。遅延制御回路318は、各位相ロックループ回路131~134の遅延回路の遅延量を変化させ、すべての位相ロックループ回路131~134の制御信号D1,D2等の変動量の総和が最小となるように、すべての位相ロックループ回路131~134の遅延回路の遅延量を調整する。
【0054】
なお、すべての位相ロックループ回路131~134の制御信号D1,D2等の変動量の総和が最小であっても、いずれかの位相ロックループ回路の制御信号の変動量が閾値より大きい場合には、その遅延量の組み合わせは、採用しないようにしてもよい。
【0055】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態による位相ロックループ回路131~134の構成例を示す図である。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。位相ロックループ回路131と位相ロックループ回路132と位相ロックループ回路133と位相ロックループ回路134は、その順番で、相互に隣接して設けられている。位相ロックループ回路132は、位相ロックループ回路131と位相ロックループ回路133との間に設けられている。位相ロックループ回路133は、位相ロックループ回路132と位相ロックループ回路134との間に設けられている。
【0056】
図6の位相ロックループ回路131は、図3の位相ロックループ回路131に対して、アナログデジタル変換器317及び遅延制御回路318を削除したものである。遅延回路311は、所定の遅延量で参照クロック信号RCKを遅延し、遅延参照クロック信号RCKaを位相周波数検出器312に出力する。なお、遅延回路311は、削除してもよい。
【0057】
図6の位相ロックループ回路132は、図3の位相ロックループ回路132に対して、アナログデジタル変換器327及び遅延制御回路328を追加したものである。遅延回路321は、遅延量が調整可能であり、その遅延量で参照クロック信号RCKを遅延し、遅延参照クロック信号RCKbを位相周波数検出器322に出力する。アナログデジタル変換器327は、クロック制御信号V2bをアナログからデジタルに変換し、デジタルの制御信号D2を遅延制御回路328に出力する。遅延制御回路328は、制御信号D2の変動量が最小になるように、遅延制御信号CTL2により、遅延回路321の遅延量を調整する。これにより、遅延制御回路328は、出力クロック信号CK2のジッタが最小になるように、遅延制御信号CTL2により、遅延回路321の遅延量を調整することができる。アナログデジタル変換器327と遅延制御回路328は、監視回路の一例であり、出力クロック信号CK2のジッタを監視し、出力クロック信号CK2のジッタの監視結果に基づいて、遅延回路321の遅延量を調整する。
【0058】
位相ロックループ回路133は、遅延回路331と、位相周波数検出器332と、チャージポンプ333と、ローパスフィルタ334と、電圧制御発振器335と、分周器336と、アナログデジタル変換器337と、遅延制御回路338とを有し、出力クロック信号CK3を生成する。
【0059】
遅延回路331は、遅延量が調整可能であり、その遅延量で参照クロック信号RCKを遅延し、遅延参照クロック信号RCKcを出力する。分周器336は、電圧制御発振器335が生成した出力クロック信号CK3を分周し、その分周したクロック信号CK3cを位相周波数検出器332に出力する。位相周波数検出器332は、遅延参照クロック信号RCKcとクロック信号CK3cとの位相及び周波数を比較し、その比較の結果に基づいてアップ信号UP又はダウン信号DNをチャージポンプ333に出力する。チャージポンプ333は、アップ信号UPが入力されると制御信号V3の電圧を高くし、ダウン信号DNが入力されると制御信号V3の電圧を低くする。ローパスフィルタ334は、制御信号V3をローパスフィルタリングし、そのローパスフィルタリングしたクロック制御信号V3cを電圧制御発振器335に出力する。位相周波数検出器332とチャージポンプ333とローパスフィルタ334と分周器336は、クロック制御信号V3cを生成するクロック制御回路の一例である。電圧制御発振器335は、クロック信号生成回路であり、クロック制御信号V3cの電圧に基づいた周波数の出力クロック信号CK3を生成する。アナログデジタル変換器337は、クロック制御信号V3cをアナログからデジタルに変換し、デジタルの制御信号D3を遅延制御回路338に出力する。遅延制御回路338は、制御信号D3の変動量が最小になるように、遅延制御信号CTL3により、遅延回路331の遅延量を調整する。これにより、遅延制御回路338は、出力クロック信号CK3のジッタが最小になるように、遅延制御信号CTL3により、遅延回路331の遅延量を調整することができる。アナログデジタル変換器337と遅延制御回路338は、監視回路の一例であり、出力クロック信号CK3のジッタを監視し、出力クロック信号CK3のジッタの監視結果に基づいて、遅延回路331の遅延量を調整する。
【0060】
位相ロックループ回路134は、遅延回路341と、位相周波数検出器342と、チャージポンプ343と、ローパスフィルタ344と、電圧制御発振器345と、分周器346と、アナログデジタル変換器347と、遅延制御回路348とを有し、出力クロック信号CK4を生成する。
【0061】
遅延回路341は、遅延量が調整可能であり、その遅延量で参照クロック信号RCKを遅延し、遅延参照クロック信号RCKdを出力する。分周器346は、電圧制御発振器345が生成した出力クロック信号CK4を分周し、その分周したクロック信号CK4dを位相周波数検出器342に出力する。位相周波数検出器342は、遅延参照クロック信号RCKdとクロック信号CK4dとの位相及び周波数を比較し、その比較の結果に基づいてアップ信号UP又はダウン信号DNをチャージポンプ343に出力する。チャージポンプ343は、アップ信号UPが入力されると制御信号V4の電圧を高くし、ダウン信号DNが入力されると制御信号V4の電圧を低くする。ローパスフィルタ344は、制御信号V4をローパスフィルタリングし、そのローパスフィルタリングしたクロック制御信号V4dを電圧制御発振器345に出力する。位相周波数検出器342とチャージポンプ343とローパスフィルタ344と分周器346は、クロック制御信号V4dを生成するクロック制御回路の一例である。電圧制御発振器345は、クロック信号生成回路であり、クロック制御信号V4dの電圧に基づいた周波数の出力クロック信号CK4を生成する。アナログデジタル変換器347は、クロック制御信号V4dをアナログからデジタルに変換し、デジタルの制御信号D4を遅延制御回路348に出力する。遅延制御回路348は、制御信号D4の変動量が最小になるように、遅延制御信号CTL4により、遅延回路341の遅延量を調整する。これにより、遅延制御回路348は、出力クロック信号CK4のジッタが最小になるように、遅延制御信号CTL4により、遅延回路341の遅延量を調整することができる。アナログデジタル変換器347と遅延制御回路348は、監視回路の一例であり、出力クロック信号CK4のジッタを監視し、出力クロック信号CK4のジッタの監視結果に基づいて、遅延回路341の遅延量を調整する。
【0062】
図7は、本実施形態による集積回路100の制御方法を示すフローチャートである。位相ロックループ回路131~134は、距離が近い位相ロックループ回路間の電源ノイズの干渉が大きく、距離が遠い位相ロックループ回路間の電源ノイズの干渉が小さい。そこで、本実施形態では、位相ロックループ回路131~134のうち、隣接した位相ロックループ回路間でジッタを最小にするための遅延量の調整を順に行うことで、すべての位相ロックループ回路間の電源ノイズの干渉を抑制する。これにより、すべての位相ロックループ回路131~134の出力クロック信号CK1~CK4のジッタを低減することができる。
【0063】
ステップS701では、中央処理ユニット101は、位相ロックループ回路131及び132を動作させ、他の位相ロックループ回路133及び134等を動作させない状態に制御する。
【0064】
次に、ステップS702では、遅延制御回路328は、図4のフローチャートと同様に、制御信号D2の変動量を観測し、制御信号D2の変動量が最小となるように、遅延回路321の遅延量を調整する。これにより、隣接する位相ロックループ回路131及び132間の電源ノイズの干渉を抑制し、出力クロック信号CK1及びCK2のジッタを低減することができる。
【0065】
次に、ステップS703では、中央処理ユニット101は、位相ロックループ回路131~133を動作させ、他の位相ロックループ回路134等を動作させない状態に制御する。
【0066】
次に、ステップS704では、遅延制御回路338は、図4のフローチャートと同様に、制御信号D3の変動量を観測し、制御信号D3の変動量が最小となるように、遅延回路331の遅延量を調整する。これにより、隣接する位相ロックループ回路131~133間の電源ノイズの干渉を抑制し、出力クロック信号CK1~CK3のジッタを低減することができる。
【0067】
次に、ステップS705では、中央処理ユニット101は、位相ロックループ回路131~134を動作させ、他の位相ロックループ回路を動作させない状態に制御する。
【0068】
次に、ステップS706では、遅延制御回路348は、図4のフローチャートと同様に、制御信号D4の変動量を観測し、制御信号D4の変動量が最小となるように、遅延回路341の遅延量を調整する。これにより、隣接する位相ロックループ回路131~134間の電源ノイズの干渉を抑制し、出力クロック信号CK1~CK4のジッタを低減することができる。
【0069】
その後、すべての位相ロックループ回路について同様の処理を行う。これにより、すべての位相ロックループ回路の出力クロック信号のジッタを低減することができる。
【0070】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態による送受信回路111及び112の構成例を示す図である。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0071】
送受信回路111は、送信回路121と、位相ロックループ回路131と、受信回路141と、アイモニタ151とを有する。図8の位相ロックループ回路131は、図3の位相ロックループ回路131に対して、アナログデジタル変換器317を削除したものである。送信回路121は、位相ロックループ回路131が生成した出力クロック信号CK1に同期して、パターンジェネレータにより生成されたテストパターンデータを送信する。受信回路141の入力端子は、切り替え可能である。図1の通常モードでは、受信回路141の入力端子は、他の集積回路に接続され、受信回路141は、他の集積回路が送信したデータを受信する。図8の調整モードでは、受信回路141の入力端子は、送信回路121の出力端子に接続され、受信回路141は、送信回路121が送信したデータを受信する。アイモニタ151は、図9及び図10に示すように、受信回路141が受信したデータのアイパターンの開口901及び1001を検出する。アイパターンは、複数のデータ遷移パターンを時間軸上で重ね合わせることにより形成されるパターンである。遅延制御回路318は、アイモニタ151が検出したアイパターンの開口901及び1001を基に、出力クロック信号CK1のジッタが最小になるように、遅延回路311の遅延量を調整する。
【0072】
送受信回路112は、送信回路122と、位相ロックループ回路132と、受信回路142と、アイモニタ152とを有する。図8の位相ロックループ回路132は、図3の位相ロックループ回路132と同じ構成を有する。送信回路122は、位相ロックループ回路132が生成した出力クロック信号CK2に同期して、パターンジェネレータにより生成されたテストパターンデータを送信する。受信回路142の入力端子は、切り替え可能である。図1の通常モードでは、受信回路142の入力端子は、他の集積回路に接続され、受信回路142は、他の集積回路が送信したデータを受信する。図8の調整モードでは、受信回路142の入力端子は、送信回路122の出力端子に接続され、受信回路142は、送信回路122が送信したデータを受信する。アイモニタ152は、受信回路142が受信したデータのアイパターンの開口を検出する。
【0073】
なお、遅延回路321の遅延量の制御を行わないので、送信回路122は、テストパターンデータを送信しなくてもよい。受信回路142の入力端子は、送信回路122の出力端子に接続しなくてもよい。アイモニタ152は、削除してもよい。
【0074】
図9は、遅延回路311の遅延量調整前のアイパターンを示す図である。アイモニタ151は、アイパターンの開口901を検出する。遅延回路311の遅延量が不適切である場合には、出力クロック信号CK1のジッタが大きくなり、アイパターンの開口901が小さくなる。
【0075】
図10は、遅延回路311の遅延量調整後のアイパターンを示す図である。アイモニタ151は、アイパターンの開口1001を検出する。遅延回路311の遅延量が適切である場合には、出力クロック信号CK1のジッタが小さくなり、アイパターンの開口1001が大きくなる。
【0076】
遅延制御回路318は、アイパターンの開口面積が最大になるように、遅延回路311の遅延量を調整する。すなわち、遅延制御回路318は、出力クロック信号CK1に基づいて生成された送信信号のアイパターンの開口に基づいて、遅延回路311の遅延量を調整する。
【0077】
例えば、アイモニタ151は、受信回路141の出力信号に対して、メイン用サンプラとモニタ用サンプラにより、サンプリングし、閾値と比較することにより2値判定を行う。この際、アイモニタ151は、モニタ用サンプラのサンプリング位相と閾値を変えながら、メイン用サンプラを用いて判定された値とモニタ用サンプラを用いて判定された値とを比較することにより、アイパターンの開口を検出する。遅延制御回路318は、アイパターンの開口面積が最大となる遅延回路311の遅延量を探索する。そして、遅延制御回路318は、アイパターンの開口面積が最大となるように、遅延回路311の遅延量を調整する。これにより、出力クロック信号CK1及びCK2のジッタを低減することができる。
【0078】
なお、ジッタの観点から、遅延制御回路318は、アイパターンの時間軸方向の中央部の開口面積が最大となるように、遅延回路311の遅延量を調整してもよい。
【0079】
また、上記の受信回路141及びアイモニタ151の代わりに、他の集積回路内の受信回路及びアイモニタを用いてもよい。その場合、送信回路121は、出力クロック信号CK1に同期して、テストパターンデータを他の集積回路に送信する。他の集積回路では、受信回路がそのテストパターンデータを受信し、アイモニタ151がそのテストパターンデータのアイパターンの開口を検出する。遅延制御回路318は、他の集積回路のアイモニタにより検出されたアイパターンの開口面積が最大になるように、遅延回路311の遅延量を調整する。
【0080】
また、図8に示した、第4の実施形態による位相ロックループ回路131、132に対しては、以下のような変形が可能である。
【0081】
例えば、図5に示した、第2の実施形態による位相ロックループ回路131、132と同様に、遅延制御回路318が、アイモニタ151が検出したアイパターンの開口に加えて、アイモニタ152が検出したアイパターンの開口を基に、アイモニタ151及び152が検出した2つのアイパターンの開口面積の総和が最大となるように、遅延回路311の遅延量を調整するようにしてもよい。
【0082】
また、図6に示した、第3の実施形態による位相ロックループ回路131~134と同様に、図8の位相ロックループ回131、132に加えて、位相ロックループ回路131と同様の回路を相互に隣接するように設け、隣接した位相ロックループ回路間でジッタを最小にするための遅延量の調整を順に行うようにしてもよい。
【0083】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
1つの側面では、出力クロック信号のジッタを低減することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10