(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】屋根の展示構造
(51)【国際特許分類】
G09B 25/04 20060101AFI20221110BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G09B25/04
G09B9/00 K
(21)【出願番号】P 2018172979
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】花井 ふみ
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】井本 睦久
(72)【発明者】
【氏名】原山 幸治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】阪田 吉康
(72)【発明者】
【氏名】寺西 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】神山 健
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-246238(JP,A)
【文献】特開平07-305452(JP,A)
【文献】特開2008-256875(JP,A)
【文献】家模型を使ったわかりやすい説明!,外壁塗り替え専門店 Paint Wall [online],2018年07月05日,https://paint-wall.com/blog/3437,[検索日:2022年3月30日]
【文献】武仲 毅知、田中 敏光、佐川 雄二,群集の移動により生じる床面と壁面の汚れのCG表現,電気学会論文誌 C,日本,一般社団法人電気学会,2012年04月01日,Vol.132 No.4
【文献】武仲 毅知、田中 敏光、佐川 雄二,人の行動による屋内の汚れの表現,情報処理学会研究報告,日本,一般社団法人情報処理学会,2010年08月15日,Vol.2010-CG-139 No.1,P1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-9/56
17/00-19/26
23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配を有し、棟から軒先まで連続して形成された既存屋根の屋根材上に、前記屋根材が露出した既存領域を残して、新たな屋根材が設けられたリフォーム後を示すリフォーム領域が配置された屋根の展示構造であって、
前記既存領域では、前記既存屋根の屋根材に、経年劣化したように加工するエイジング加工が施されており、
前記リフォーム領域は、前記既存領域を挟んで桁行方向へ沿って配置される第一領域および第二領域を有し、
前記第一領域と前記第二領域とでは、設けられる前記新たな屋根材が異なっており、前記新たな屋根材と前記既存屋根の屋根材との間に設けられる内部構成材が露出した状態とされ
、
前記第一領域および前記第二領域では、それぞれの棟に、水切り材と当該水切り材の上に配置される棟包材とからなる新たな棟部材が設けられるとともに、前記水切り材が露出している箇所が形成され、
前記既存屋根の屋根材、前記新たな屋根材、前記内部構成材、及び前記新たな棟部材は、それぞれ桁行方向の各端縁が勾配方向に対して略平行に延びる
ことを特徴とする屋根の展示構造。
【請求項2】
前記既存領域の軒先に既存の軒樋が設けられ、前記既存の軒樋に既存の縦樋が接続されており、
前記第一領域および前記第二領域の軒先それぞれにリフォーム後の新たな軒樋が設けられ、それぞれの前記新たな軒樋にリフォーム後の新たな縦樋が接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根の展示構造。
【請求項3】
前記第一領域および/または前記第二領域には、太陽電池モジュールが設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の屋根の展示構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の屋根の展示に関するものであり、特に、屋根のリフォーム前後の状態を分かるように展示した屋根の展示構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅展示場において、住宅の壁、床および屋根などの内部構造を見学することができるように、種々の提案がなされている。たとえば、下記特許文献1に開示された展示用住宅では、屋根の一部を除去して吹き抜け状態とした箇所において、屋根の下地材から仕上げ材までをずらしながら段階的に施工して、各部材を露出させている。これにより、屋根の内部構造を実際に見て確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、住宅の屋根のリフォームが盛んに行われるようになっており、屋根のリフォーム前後の状態を確認できるようにすることが望まれている。しかも、見学者にとって、如何に分かり易く展示するかについて課題がある。そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、屋根のリフォーム前後の状態が見やすく展示された屋根の展示構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明に係る屋根の展示構造は、勾配を有し、棟から軒先まで連続して形成された既存屋根の屋根材上に、前記屋根材が露出した既存領域を残して、新たな屋根材が設けられたリフォーム後を示すリフォーム領域が配置された屋根の展示構造であって、前記既存領域では、前記既存屋根の屋根材に、経年劣化したように加工するエイジング加工が施されており、前記リフォーム領域は、前記既存領域を挟んで桁行方向へ沿って配置される第一領域および第二領域を有し、前記第一領域と前記第二領域とでは、設けられる前記新たな屋根材が異なっており、前記新たな屋根材と前記既存屋根の屋根材との間に設けられる内部構成材が露出した状態とされ、前記第一領域および前記第二領域では、それぞれの棟に、水切り材と当該水切り材の上に配置される棟包材とからなる新たな棟部材が設けられるとともに、前記水切り材が露出している箇所が形成され、前記既存屋根の屋根材、前記新たな屋根材、前記内部構成材、及び前記新たな棟部材は、それぞれ桁行方向の各端縁が勾配方向に対して略平行に延びることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る屋根の展示構造は、前記既存領域の軒先に既存の軒樋が設けられ、前記既存の軒樋に既存の縦樋が接続されており、前記第一領域および前記第二領域の軒先それぞれにリフォーム後の新たな軒樋が設けられ、それぞれの前記新たな軒樋にリフォーム後の新たな縦樋が接続されていることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明に係る屋根の展示構造は、前記第一領域および/または前記第二領域には、太陽電池モジュールが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る屋根の展示構造によれば、リフォーム前を示す既存領域を挟んで、リフォーム後を示す第一領域および第二領域が配置される。ここで、既存領域の屋根材には、長年使い古したように加工するエイジング加工が施されている。また、第一領域および第二領域では、新たな屋根材の内部に配置される内部構成材が露出した状態とされている。従って、屋根のリフォーム前後の状態を見やすく展示することができる。しかも、第一領域と第二領域とでは、新たな屋根材の種類が異なるので、二つのリフォーム前後の状態を一度に分かり易く展示することができる。
【0009】
また、本発明に係る屋根の展示構造によれば、屋根材のリフォーム前後の状態に加えて、軒樋および縦樋のリフォーム前後の状態が展示されるので、実際に行われるリフォームに近い状態を展示することができる。
【0010】
さらに、本発明に係る屋根の展示構造によれば、第一領域および/または第二領域に太陽電池モジュールが設けられるので、太陽電池モジュールが設置されていないリフォーム前の状態と、リフォーム後の太陽電池モジュールが設置された状態とを見やすく展示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の屋根の展示構造の一実施例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1の屋根の展示構造が展示施設内に設置された状態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の屋根の展示構造の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1および
図2は、本発明の屋根の展示構造の一実施例を示す概略図であり、
図1は概略斜視図、
図2は使用状態を示す概略平面図である。本実施例の屋根の展示構造1は、屋根のリフォーム前後の状態を示すものであり、展示施設内に設置される。本実施例の屋根の展示構造1は、展示施設の床面に設置される土台2と、土台2に設けられる既存の屋根材3と、既存の屋根材3上に設けられる二種類の新たな屋根材4と、既存の屋根材3と新たな屋根材4との間に設けられる内部構成材5とを備える。
【0014】
土台2は、上下方向へ開口する筒状とされ、左右方向を長手方向とする平面視略長方形の角筒状に形成されている。土台2の上方への開口部は、前方へ行くに従って下方へ傾斜して形成されている。土台2は、軸方向が上下方向へ沿うようにして、展示施設の床面に設置される。
【0015】
土台2の上端部には、上方への開口部を閉塞するようにして、複数の既存の屋根材3が葺設される。この際、複数の既存の屋根材3は、土台2の上端に設けられる下地部材に固定される。これにより、土台2の上端部には、勾配を有する既存屋根が形成される。なお、本実施例では、各屋根材3は、板状に形成されたカラーベストとされる。
【0016】
既存屋根の屋根材3上には、その屋根材3が露出した既存領域6を残して、新たな屋根材4が設けられたリフォーム後を示すリフォーム領域7が配置される。ここで、リフォーム領域7は、既存領域6を挟んで左右方向(桁行方向)へ沿って配置される第一領域8および第二領域9を有している。本実施例では、第一領域8および第二領域9の左右長さは、既存領域6の左右長さよりも長く形成されている。
【0017】
既存領域6では、既存屋根の屋根材3に、年数が経過したように見せるために、経年劣化したように加工するエイジング加工が施される。典型的には、屋根材3に凹凸や傷をつけたり、屋根材3の表面を汚したりして、屋根材3にエイジング加工がなされる。すなわち、屋根材3は、風雨などにさらされて古くなったように見えるようにわざと加工される。これにより、既存領域6においては、屋根のリフォーム前の状態が表現される。
【0018】
既存領域6の左側に配置される第一領域8では、既存屋根の屋根材3上に、新たな屋根材4が設けられると共に、新たな屋根材4と既存屋根の屋根材3との間に設けられる内部構成材5が配置される。新たな屋根材4は、金属製で薄い平板状に形成されている。内部構成材5は、板状の断熱材10と、シート状の防水材11とを有している。新たな屋根材4および内部構成材5は、実際の現場と同様にして施工される。本実施例では、既存屋根の屋根材3上に敷設された防水材11の上に複数の屋根材4が上下に沿って配置される。この際、各屋根材4と防水材11との間には、断熱材10が配置される。また、第一領域8では、新たな屋根材4に太陽電池モジュール12が設置される。
【0019】
第一領域8では、一部で内部構成材5が露出している。すなわち、新たな屋根材4および断熱材10が施工されずに防水材11が露出している箇所、および新たな屋根材4が施工されずに断熱材10が露出している箇所が形成される。本実施例では、既存領域6と連続するようにして、第一領域8の右側から順に、防水材11が露出している箇所、断熱材10が露出している箇所、および新たな屋根材4が露出している箇所が形成されている。すなわち、第一領域8では、防水材11、断熱材10および新たな屋根材4は、既存領域6に隣接して、段階的にずらして施工されている。
【0020】
既存領域6の右側に配置される第二領域9では、第一領域8と同様にして、既存屋根の屋根材3上に、新たな屋根材4が設けられると共に、新たな屋根材4と既存屋根の屋根材3との間に設けられる内部構成材5が配置される。ここで、第一領域8と第二領域9とでは、設けられる新たな屋根材4が異なる。第二領域9の新たな屋根材4は、正面視略波形状の屋根材とされる。内部構成材5は、凸形状の断熱材10と、シート状の防水材11とを有している。新たな屋根材4および内部構成材5は、実際の現場と同様にして施工される。本実施例では、既存屋根の屋根材3上に敷設された防水材11の上に複数の屋根材4が上下および左右に沿って配置される。この際、各屋根材4と防水材11との間には、断熱材10が配置される。
【0021】
第二領域9では、一部で内部構成材5が露出している。すなわち、新たな屋根材4および断熱材10が施工されずに防水材11が露出している箇所、および新たな屋根材4が施工されずに断熱材10が露出している箇所が形成される。本実施例では、既存領域6と連続するようにして、第二領域9の左側から順に、防水材11が露出している箇所、断熱材10が露出している箇所、および新たな屋根材4が露出している箇所が形成されている。具体的には、第二領域9の上側部分では、防水材11が露出した箇所に隣接して、新たな屋根材4が露出した箇所が形成されている。ここで、断熱材10の左端部は、新たな屋根材4から左方へ延出して露出している。第二領域9の下側部分では、防水材11、断熱材10および新たな屋根材4が左側から順に露出している第一部分の下側に、防水材11および新たな屋根材4が左側から順に露出している第二部分が形成されている。第二部分には、新たな屋根材4と既存屋根の屋根材3との間に、軒先から枯れ葉や小動物(コウモリなど)などが入るのを防止する閉塞材13が露出している。このようにして、第二領域9では、防水材11、断熱材10および新たな屋根材4は、既存領域6に隣接して、段階的にずらして施工されている。
【0022】
また、本実施例の屋根の展示構造1では、既存領域6の軒先に既存の軒樋14が設けられ、その既存の軒樋14に既存の縦樋15が接続されている。一方、第一領域8および第二領域9の軒先それぞれには、リフォーム後の新たな軒樋16が設けられ、それぞれの新たな軒樋16には、リフォーム後の新たな縦樋17が接続されている。本実施例では、既存の軒樋14および新たな軒樋16は、土台2の前面に固定されており、対応する領域の桁行方向全体にわたって設けられている。
【0023】
さらに、本実施例の屋根の展示構造1では、第一領域8および第二領域9の上端部において、リフォーム後の新たな棟部材18が配置されている。第一領域8および第二領域9では、棟部材18は、水切り材19および棟包材20を有しており、棟包材20が施工されずに水切り材19が露出している箇所が形成されている。第一領域8では、水切り材19が固定される下地材21に防水材11が被せられている箇所が露出しており、そこから既存領域6に下地材21が延出している。
【0024】
このような構成の屋根の展示構造1は、それを含む複数の展示物(住宅の構成部材や設備など)が展示される展示施設内に形成された通路22の折り返し部に配置される。屋根の展示構造1は、前側である軒先側を通路22に向けて、通路22の折り返し部に設置される。図示例では、壁材23と他の展示物24とで形成された折り返し部に設置される。
【0025】
本実施例の屋根の展示構造1の場合、既存領域6とリフォーム領域7とが配置されて、リフォーム前後の状態が展示される。この際、既存領域6では、屋根材3にエイジング加工が施されている。一方、リフォーム領域7では、防水材11、断熱材10および新たな屋根材4が露出した状態とされるので、リフォーム前後の状態を見やすく展示することができると共に、リフォーム後の屋根の構造を確認することができる。また、本実施例の屋根の展示構造1の場合、リフォーム領域7である第一領域8および第二領域9が既存領域6を挟んで配置される。ここで、第一領域8と第二領域9とでは、新たな屋根材4が異なっている。従って、二つのリフォーム後の状態を一つの構造上に分かり易く展示することができる。また、本実施例の屋根の展示構造1の場合、二つのリフォーム後を示す第一領域8および第二領域9において、リフォーム前の状態を示す既存領域6が共通化される。従って、構造自体を小さくして、省スペース化を図ることができる。
【0026】
また、本実施例の屋根の展示構造1の場合、第一領域8および第二領域9において、既存領域6と連続するようにして、既存領域6から防水材11、断熱材10および新たな屋根材4が順に露出される。従って、防水材11、断熱材10および新たな屋根材4の施工手順を確認することができる。また、本実施例の屋根の展示構造1の場合、軒樋および縦樋に関して、リフォーム前後の状態が展示されるので、実際のリフォームに近い展示とすることができる。また、本実施例の屋根の展示構造1の場合、軒樋および縦樋に加えて、リフォーム後の新たな棟部材18が展示されるので、屋根全体のリフォームについて確認することができる。
【0027】
また、本実施例の屋根の展示構造1の場合、第一領域8に太陽電池モジュール12が設置されるので、リフォーム後の太陽電池モジュール12が設置された状態を分かり易く展示することができる。また、本実施例の屋根の展示構造1の場合、展示施設の通路22の折り返し部に設置されるので、通常の通路幅よりも大きいスペースである折り返し部を有効に活用することができる。また、本実施例の屋根の展示構造1の場合、既存の屋根材3、新たな屋根材4、および内部構成材5上に、対応する部材の名称が記載された札が設けられるので、より分かり易く展示することができる。さらに、本実施例の屋根の展示構造1の場合、その構造に関する説明書きが隣接して配置されるので、リフォームのメリットをより分かり易く展示することができる。
【0028】
本発明の屋根の展示構造は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、新たな屋根材4は、金属製の板状部材と波形状の部材とされたが、これに限定されるものではなく、第一領域8と第二領域9とで新たな屋根材4の種類が異なっていればよい。また、前記実施例では、第一領域8の屋根材4に太陽電池モジュール12が設置されたが、第二領域9の屋根材4に一般的な太陽電池モジュールを設けてもよいし、第一領域8の屋根材4に太陽電池モジュール12を設けると共に、第二領域9の屋根材4に一般的な太陽電池モジュールを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の屋根の展示構造は、住宅の屋根のリフォーム前後の状態を示す展示に好適に適用される。
【符号の説明】
【0030】
1 屋根の展示構造
3 既存の屋根材
4 新たな屋根材
5 内部構成材
6 既存領域
7 リフォーム領域
8 第一領域
9 第二領域
10 断熱材
11 防水材
12 太陽電池モジュール
14 既存の軒樋
15 既存の縦樋
16 新たな軒樋
17 新たな縦樋