(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】乾式目地材の取付構造及び乾式目地材
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20221110BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
E03C1/20 B
E04H1/12 301
(21)【出願番号】P 2018158541
(22)【出願日】2018-08-27
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】石間 敦
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-196605(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0095826(KR,A)
【文献】特開2015-113607(JP,A)
【文献】特開2011-153513(JP,A)
【文献】特開平10-331461(JP,A)
【文献】特開平11-336208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
E04H 1/12
E04F 15/00、19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水まわりユニットルームにおける乾式目地材の取付構造であって、
水まわりユニットルームに設置され、外周に壁載せ凹部を有する洗い場床と、
前記壁載せ凹部内に載置される壁パネルと、
前記壁載せ凹部と、前記壁載せ凹部内に載置される前記壁パネルと、の間の隙間に挿入される乾式目地材と、
を備え、
前記洗い場床の上面は、複数の凹部と複数の凸部を有することで凹凸形状となっており、
前記乾式目地材は、
前記隙間内に下方に向けて挿入される挿入部と、
前記壁パネルと当接する壁側当接部と、
前記洗い場床へ向かって延出するように設けられ、前記洗い場床の上面と当接する床側延出部と、
を有し、
前記床側延出部は、
前記複数の凹部及び前記複数の凸部に当接する軟質部と、
前記軟質部の上部に接続されている支持部と、
を有し、
前記軟質部の硬さは、前記支持部の硬さよりも低いことを特徴とする乾式目地材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、乾式目地材の取付構造及び乾式目地材に関する。
【背景技術】
【0002】
洗い場床と、洗い場床に形成された壁載せ凹部に挿入される壁パネルと、を備えた水まわりユニットルームが知られている。このような水まわりユニットルームにおいて、壁載せ凹部に挿入される壁パネルと、壁載せ凹部と、の隙間に、乾式目地材を挿入することで、水密性や意匠性を担保する技術も、知られている(例えば、特許文献1)。この際、乾式目地材全体が該隙間の奥まで押し込まれると、乾式目地材の上に水が溜まりやすくなる。このため、乾式目地材の上部を洗い場床側へ延出させ、洗い場床上面と当接させることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、洗い場床の上面には、排水性を担保するためや入浴者が洗い場床上で滑ってしまうことを防ぐために、凹部及び凸部が形成されている。このため、延出された乾式目地材は、洗い場床の凸部上面には当接するものの、凹部上面には当接しにくい。その結果、乾式目地材と凹部上面との間へ、入浴時の汚水が入り込んでしまう。これにより、乾式目地材と凹部上面との間に汚れが溜まりやすくなり、黒ずみの発生や、悪臭の原因となってしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、洗い場床の上面に凹部及び凸部が形成されている場合でも、洗い場床の上面と乾式目地材との間の隙間を小さくできる、乾式目地材の取付構造及び乾式目地材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、水まわりユニットルームにおける乾式目地材の取付構造であって、水まわりユニットルームに設置され、外周に壁載せ凹部を有する洗い場床と、前記壁載せ凹部内に載置される壁パネルと、前記壁載せ凹部と、前記壁載せ凹部内に載置された前記壁パネルと、の間の隙間に挿入される乾式目地材と、を備え、前記洗い場床の上面は、複数の凹部と複数の凸部を有することで凹凸形状となっており、前記乾式目地材は、前記隙間内に下方に向けて挿入される挿入部と、前記壁パネルと当接する壁側当接部と、前記洗い場床へ向かって延出するように設けられ、前記洗い場床の上面と当接する床側延出部と、を有し、前記床側延出部は、前記複数の凹部及び前記複数の凸部に当接する軟質部と、前記軟質部の上部に接続されている支持部と、を有し、前記軟質部の硬さは、前記支持部の硬さよりも低いことを特徴とする乾式目地材の取付構造である。
【0007】
この乾式目地材の取付構造によれば、壁載せ凹部と壁パネルとの間の隙間に乾式目地材を挿入した際、軟質部が洗い場床上面の凹凸形状に当接し、洗い場床上面と支持部との間に挟まれる。挟み込まれた軟質部は、凹凸形状に倣って変形する。このため、乾式目地材と凹部上面との間における隙間の発生を抑制でき、隙間から入浴時の汚水が入り込み難くなる。この結果、乾式目地材付近における黒ずみや悪臭の発生を抑制できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記軟質部の高さ方向における厚みは、前記凹部の上面と前記凸部の上面との間の高さ方向における長さよりも大きいことを特徴とする乾式目地材の取付構造である。
【0009】
この乾式目地材の取付構造によれば、軟質部が凹凸形状に倣って変形した際、凹部の全体が軟質部により埋め込まれ易くなる。このため、洗い場床と乾式目地材との間に隙間がより発生し難くなる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記洗い場床の上面には、前記凹部の上面と前記凸部の上面とをつなぐ傾斜面が設けられ、前記凹部の上面と前記傾斜面との間の角度は、鈍角であることを特徴とする乾式目地材の取付構造である。
【0011】
この乾式目地材の取付構造によれば、軟質部が洗い場床の上面に当接して圧縮変形した際、軟質部が、傾斜面に沿って、凹部の上面に向けて変形し易くなる。これにより、軟質部と凹凸形状との間に隙間がより生じ難くなる。
【0012】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記壁載せ凹部内に設けられ、前記壁載せ凹部の内壁に沿った凹状の壁受け部材をさらに備え、前記壁パネルは、前記壁受け部材上に載置され、前記挿入部は、前記壁受け部材のうち前記隙間に位置する部分に挿入されて嵌合され、前記床側延出部は、前記壁受け部材上に前記壁パネルが載置されることで、前記洗い場床の上面に向けて押圧されることを特徴とする乾式目地材の取付構造である。
【0013】
この乾式目地材の取付構造によれば、壁パネルの重さにより、挿入部が壁載せ部材とともに下方に向けて継続的に押さえ付けられる。これにより、乾式目地材を取り付けた後も、洗い場床と軟質部との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0014】
第5の発明は、外周に壁載せ凹部を有し、水まわりユニットルームに設置され、上面が複数の凹部と複数の凸部を有することで凹凸形状となっている洗い場床と、前記壁載せ凹部内に載置される壁パネルと、の間の隙間に挿入される乾式目地材であって、前記隙間内に下方に向けて挿入される挿入部と、前記壁パネルと当接する壁側当接部と、前記洗い場床へ向かって延出するように設けられ、前記洗い場床の上面と当接する床側延出部と、を備え、前記床側延出部は、前記複数の凹部及び前記複数の凸部に当接する軟質部と、前記軟質部の上部に接続されている支持部と、を有し、前記支持部の硬さは、前記軟質部の硬さよりも低いことを特徴とする乾式目地材である。
【0015】
この乾式目地材によれば、壁載せ凹部と壁パネルとの間の隙間に乾式目地材を挿入した際、軟質部が洗い場床上面の凹凸形状に当接し、洗い場床上面と支持部との間に挟まれる。挟み込まれた軟質部は、凹凸形状に倣って変形する。このため、洗い場床の上面に凹凸形状が存在する場合でも、乾式目地材と凹部上面との間における隙間の発生を抑制でき、隙間から入浴時の汚水が入り込み難くなる。この結果。乾式目地材付近における黒ずみや悪臭の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の態様によれば、洗い場床の上面に凹部及び凸部が形成されている場合でも、洗い場床の上面と乾式目地材との間の隙間を小さくできる、乾式目地材の取付構造及び乾式目地材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る乾式目地材の取付構造を有する水まわりユニットルームを表す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る乾式目地材の取付構造の洗い場床を表す分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係る乾式目地材の取付構造における洗い場床の一部および壁パネルの一部を拡大した斜視断面図である。
【
図5】実施形態に係る乾式目地材の取付構造の一部を拡大した断面図である。
【
図6】実施形態に係る乾式目地材の取付構造の乾式目地材を表す斜視断面図及び断面図である。
【
図7】実施形態に係る乾式目地材の取付構造の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0019】
図1は、実施形態に係る乾式目地材の取付構造を有する水まわりユニットルームを表す斜視図である。
図1に表した水まわりユニットルーム2は、乾式目地材の取付構造1を有する。取付構造1は、洗い場床10及び壁パネル20を備える。
【0020】
洗い場床10は、水まわりユニットルーム2の床面を構成している。洗い場床10は、周縁部が上側に折り曲げられた浅底の器状(パン状)に形成され、浴室外部に湯水を漏出させない防水性を有する。洗い場床10は、ボルト部を回転させることで高さ調節可能な構造を有する支持脚151を介して浴室設置面S上に設置されている。
【0021】
洗い場床10の外周には、壁載せ凹部11が設けられている。壁パネル20は、この壁載せ凹部11内に載置され、水まわりユニットルームの側面を構成している。壁パネル20は、例えば、パネル材21~27によって構成されている。
図1に表した例では、パネル材23は、不図示のドア取付枠を含むドアDRである。隣接するパネル材同士は、壁面接続部材50によって連結されている。
【0022】
図1に表した例では、水まわりユニットルーム2は、浴室である。そのため、水まわりユニットルーム2は、浴槽40をさらに有する。浴槽40は、支持脚151と同様の機能を有する支持脚41を介して、浴室設置面S上に設置されている。
【0023】
水まわりユニットルーム2の具体的構成は、
図1の例に限定されず、適宜変更可能である。例えば、水まわりユニットルーム2は、浴槽40を有していないシャワールームなどであっても良い。
【0024】
図2は、実施形態に係る乾式目地材の取付構造の洗い場床を表す分解斜視図である。
図2に表したように、洗い場床10は、床基材15及び床本体16を有する。
【0025】
床基材15は、支持脚151と、支持フレーム152と、受け板153と、を有する。一例として、支持フレーム152は、水平な第1の方向に延在する4本の第1のフレーム152aと、第1の方向と直交する水平な第2の方向に延在する4本の第2のフレーム152bと、を有する。支持脚151は、支持フレーム152の下面の4隅に設けられている。
【0026】
床基材15は、浴室等の設置場所の限られた空間の中において、洗い場床10の上面にかかる荷重を受け、その位置を保持するものである。そのため、床基材15には、充分な強度が必要とされる。例えば、床基材15には、熱可塑性発泡樹脂の強度よりも高い強度を有する鋼材が用いられる。
【0027】
床基材15は、浴室等の設置面(例えば、建物の床)の上に載置され、支持脚151のボルト部の回転により適宜高さが調整される。これにより、洗い場床10の水平面が確保される。そして、支持脚151および支持フレーム152は、受け板153を下方から支持している。受け板153は、例えばねじ等の締結部材により支持フレーム152に固定されている。
【0028】
床本体16は、床面材161と、クッション材162と、表面材163と、を有する。受け板153の上面は、洗い場床10が備える各部材の垂直方向の基準位置すなわち水平基準面となる。また、受け板153は、床面材161を下方から支持し、受け板153の上に載置される部材から荷重を受ける。そのため、受け板153としては、比較的に高強度で剛性を有する平板状の素材が好適である。その一例として、例えば鋼材製のデッキプレートやサンドイッチパネルなどが挙げられる。床基材15の強度は、後述する熱可塑性発泡樹脂により形成された床面材161の強度よりも高い。
【0029】
床面材161は、例えば熱可塑性発泡樹脂により形成されている。熱可塑性発泡樹脂としては、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンなどが挙げられる。床面材161の上には、クッション材162を介して表面材163が設けられている。クッション材162の材料としては、例えば発泡ポリウレタン等の軟質素材が用いられている。クッション材162の硬さ(柔らかさ)を変えることで、床面の硬さ(柔らかさ)を変更できる。
【0030】
表面材163は、床面材161の上面を覆っている。ここで説明する取付構造1の例では、表面材163の上面が、洗い場床10の上面を構成している。表面材163の上面は、意匠性や水はけ性を向上させるために、複数の凹部及び複数の凸部が設けられて凹凸形状となっている。
【0031】
図3は、実施形態に係る乾式目地材の取付構造の一部を拡大した斜視断面図である。
図4は、
図3の部分Aを拡大した斜視断面図である。
図5は、実施形態に係る乾式目地材の取付構造の一部を拡大した断面図である。
図6は、実施形態に係る乾式目地材の取付構造の乾式目地材を表す斜視断面図及び断面図である。
図7は、実施形態に係る乾式目地材の取付構造の一部を拡大した断面図である。
【0032】
図3及び
図4に表したように、実施形態に係る取付構造1は、さらに乾式目地材30を備える。乾式目地材30は、壁パネル20の洗い場床10側において、洗い場床10外周の壁載せ凹部11と、壁載せ凹部11内に載置された壁パネル20と、の間の隙間に挿入されている。
【0033】
例えば、
図4及び
図5に表したように、壁載せ凹部11の内側には、壁受け部材13が設けられる。壁受け部材13の形状は、壁載せ凹部11の内壁に沿った凹状である。壁受け部材13は、例えば、壁パネル20の洗い場床10に対する位置を決め易くする。壁パネル20は、この壁受け部材13の上に、パッキン14を介して載置される。パッキン14は、ゴムなどの弾性を有する材料からなり、壁受け部材13と壁パネル20との間の隙間を埋めて水密性を向上させる。
【0034】
乾式目地材30は、挿入部31、壁側当接部32、及び床側延出部33を有する。挿入部31は、壁載せ凹部11と壁パネル20との間の隙間に、下方に向けて挿入され、壁載せ部材13に嵌合されている。
【0035】
壁側当接部32は、挿入部31の上端に接続され、壁パネル20と当接している。床側延出部33は、挿入部31の上端に接続されており、洗い場床10へ向かって延出している。洗い場床10の上面12には、複数の凹部121及び複数の凸部122が設けられている。床側延出部33の先端は上面12の上に設けられており、床側延出部33の下面が上面12と当接している。
【0036】
図5、
図6(a)、及び
図6(b)に表したように、床側延出部33は、軟質部331及び支持部332を有する。軟質部331は、床側延出部33の下側に設けられ、洗い場床10の上面12が有する凹部121及び凸部122に当接する。支持部332は、床側延出部33の上側に設けられ、軟質部331の上部に接続されている。乾式目地材30が壁載せ凹部11と壁パネル20との間の隙間に挿入された状態において、軟質部331は、洗い場床10と支持部332との間に挟み込まれる。
【0037】
軟質部331の硬さは、支持部332の硬さよりも低い。すなわち、軟質部331は、支持部332よりも変形し易い。また、一般的に、洗い場床10(表面材163)の硬さは、人の重み等による応力が加わった際の洗い場床10の変形を抑えるために、乾式目地材の硬さよりも高く設計される。換言すると、軟質部331の硬さは洗い場床10の硬さよりも小さく、軟質部331は洗い場床10よりも変形し易い。
【0038】
また、
図5、
図6(a)、及び
図6(b)に表した例では、壁側当接部32が、軟質部321及び支持部322を有する。軟質部321は、支持部322よりも、壁側当接部32の先端側に設けられている。軟質部331の硬さは、支持部332の硬さよりも低い。また、一般的に、壁パネル20の硬さは、応力が加えられた際の壁パネル20の変形を小さくするため、典型的な乾式目地材の硬さよりも高く設計される。換言すると、軟質部321の硬さは、壁パネル20の硬さよりも低い。
【0039】
例えば、挿入部31、支持部322、及び支持部332の材料としては、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレンやABS(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)などのスチレン系樹脂、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、またはナイロンなどのポリアミド系樹脂、フッ素樹脂、などを用いることができる。
【0040】
軟質部321及び軟質部331には、ゲルを用いることができる。ゲルを用いることで、軟質部321及び軟質部331に、軟性を付与しつつ、適度な耐久性を持たせることができる。ゲルとして、例えば、シリコーンゲル、アクリルゲル、ウレタンゲルなどが挙げられる。例えば、乾式目地材30は、挿入部31、支持部322、及び支持部332の材料と、軟質部321及び軟質部331の材料と、を二色成型することで、一体に形成される。
【0041】
実施形態に係る取付構造1によれば、床側延出部33の軟質部331が、洗い場床10の上面12に当接し、洗い場床10と支持部332との間に挟み込まれる。この結果、
図7に表したように、軟質部331の形状が、上面12の凹部121及び凸部122に沿って変形する。なお、
図7は、壁パネル20表面に平行な面で切断したときの洗い場床10及び床側延出部33の構造を表している。
【0042】
軟質部331の形状が凹部121及び凸部122に沿って変形することで、床側延出部33と上面12(特に凹部121上面)との間に隙間が生じることを抑制できる。従って、本実施形態によれば、凹凸形状が存在する上面12に床側延出部33を当接させた場合でも、凹部121上面と乾式目地材30との間に入浴時の汚水等が入り込むことを抑制できる。この結果、乾式目地材30付近における黒ずみや悪臭の発生を抑制できる。
【0043】
同様に、実施形態に係る乾式目地材30を洗い場床10と壁パネル20との間の隙間に挿入することで、洗い場床10の上面12に凹凸形状が存在する場合でも、乾式目地材30と上面12(特に凹部121上面)との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0044】
なお、洗い場床10と乾式目地材30との間に隙間が生じることを防止するために、洗い場床10(表面材163)の端部に凹凸形状が存在しないように表面材163を作製する方法も考えられる。しかし、この方法では、表面材163を水まわりユニットルームごとに作製する必要があり、表面材163の製造コストが増大する。
上記の方法に対して、表面材163の構造を有する大きなシート状の部材を作製しておき、この部材の一部を切り出して表面材163として用いる方法もある。この方法によれば、それぞれの水まわりユニットルームに対応した表面材163の設計や作製が不要となるため、表面材163の製造コストを低減できる。
この方法では、切り出された表面材163の端部に凹凸形状が存在するが、上述した通り、本実施形態に係る取付構造1又は乾式目地材30により、洗い場床10と乾式目地材30との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0045】
洗い場床10及び支持部332の硬さについては、例えば、JIS K 7215で定められた「プラスチックの硬さ試験方法」に準拠するデュロメータを用いて測定できる。また、軟質部331の硬さについては、例えば、JIS K 6253で定められた「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準拠するデュロメータを用いて測定できる。これらのデュロメータで測定された各部材の硬さは、例えば以下の通りである。
支持部332の硬さは、50以上70以下である。洗い場床10の上面12における硬さは、75以上95以下である。軟質部331の硬さは、1以上30以下である。
各部材の硬さがこれらの範囲内であれば、軟質部331を上面12及び支持部332に対して十分に変形させ、洗い場床10と壁パネル20との間の隙間の発生を好適に抑制できる。
なお、各部材の硬さを比較する場合は、JIS K 7215及びJIS K 6253の一方に準拠するデュロメータを用いて各部材の硬さを測定し、それらの測定結果を比較する。この場合、軟質部331の硬さ、又は洗い場床10と支持部332の硬さが正確には測定されない可能性がある。しかし、硬さの大小関係については正しい結果を得ることができる。
【0046】
洗い場床10と接触する前の軟質部331の厚みT(
図6(b)に示す)は、凸部122の上面122aと凹部121の上面121aとの間の高さ方向(鉛直方向)における長さL(
図7に示す)よりも大きいことが望ましい。
なお、厚みTは、換言すると、軟質部331の高さ方向における寸法である。軟質部331の高さ方向における寸法が場所によって異なる場合、当該寸法の最大値を、軟質部331の厚みTとすることができる。また、長さLと比較する際の厚みTには、軟質部331が圧縮変形されていない、乾式目地材30を取り付ける前の状態における軟質部331の高さ方向における寸法が用いられる。
厚みTが長さLよりも大きいと、軟質部331を変形させた際、凹部121の全体が軟質部331により埋め込まれ易くなる。これにより、洗い場床10と乾式目地材30との間の隙間がより発生し難くなる。
【0047】
また、
図7に表したように、洗い場床10の上面12には、凹部121の上面121aと、凸部122の上面122aと、をつなぐ傾斜面123aが設けられていることが望ましい。
例えば、上面121a及び上面122aは、水平方向に平行である。洗い場床10と軟質部331は、高さ方向において重ね合わされる。傾斜面123aは、これら水平方向及び高さ方向に対して傾いている。また、上面121aと傾斜面123aとの間の角度θ1及び上面122aと傾斜面123aとの間の角度θ2は、鈍角である。
このような構成によれば、軟質部331が洗い場床10へ当接して圧縮変形した際、軟質部331が、傾斜面123aに沿って、上面121aに向けて変形し易くなる。このため、軟質部331と上面12との間に、より隙間が生じ難くなる。
【0048】
また、上面121aと傾斜面123aをつなぐ角の部分(入隅)及び上面122aと傾斜面123aをつなぐ角の部分(出隅)には、湾曲した面(R)が設けられていても良い。例えば、湾曲面の曲率半径は、0.5mm以上である。出隅に湾曲面が設けられることで、凸部122の上面122aに接触した軟質部331が、出隅で引っ掛かること無く凹部121の上面121aに向けて変形し易くなる。また、入隅に湾曲面が設けられることで、入隅が軟質部331により埋め込まれ易くなる。これらの結果、軟質部331と上面12との間に、より隙間が生じ難くなる。
なお、入隅に湾曲面が設けられている場合、上述した角度θ1は、上面121a及び傾斜面123aのうち当該湾曲面を除く平面部分に基づいて算出される。同様に、出隅に湾曲面が設けられている場合、上述した角度θ2は、上面122a及び傾斜面123aのうち当該湾曲面を除く平面部分に基づいて算出される。
【0049】
壁載せ部材13上に壁パネル20を載置した際に、壁載せ部材13の一部は、
図5に表したように、壁載せ凹部11と壁パネル20との間に位置する。挿入部31は、壁載せ部材13の当該一部に挿入されることが望ましい。
壁載せ部材13上には、壁パネル20が載置される。すなわち、壁載せ部材13は、壁パネル20の重さにより、下方に向けて押される。挿入部31が壁載せ部材13に挿入されていると、壁パネル20の重さにより、挿入部31が壁載せ部材13とともに下方に向けて継続的に押さえ付けられる。これにより、乾式目地材30を取り付けた後も、洗い場床10と軟質部331との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0050】
壁載せ部材13及び挿入部31は、壁載せ部材13上に壁パネル20が載置された際に、挿入部31が壁載せ部材13とともに下方に向けてより強く安定して押さえ付けられることが望ましい。例えば、壁載せ部材13と挿入部31が接触する部分には、大きな摩擦力が生じるように構成される。
又は、望ましくは、挿入部31は、
図5に表したように、壁載せ部材13に引っ掛かって係止される係止部311を有する。挿入部31が壁載せ部材13に嵌合されると、挿入部31の先端(乾式目地材30の下端)に設けられた係止部311が、壁載せ部材13に設けられた窪み131に引っ掛かる。これにより、乾式目地材30が壁載せ部材13に対して上方へ変位することをより確実に抑制できる。また、係止部311を用いることで、挿入部31を壁載せ部材13に嵌合させるだけで乾式目地材30を壁載せ部材13に対して固定でき、乾式目地材30の取付が容易となる。
【0051】
軟質部331の特性については、軟質部331の硬さが支持部332の硬さよりも低ければ、適宜変更可能である。
例えば、軟質部331は、弾性を有する。乾式目地材30を取り付けた後、使用者が水まわりユニットルームを使用したり、各部材に温度変化による変形が生じたりすることで、洗い場床10と乾式目地材30との位置関係が微小に変化することがある。軟質部331が弾性を有する場合、洗い場床10と乾式目地材30が互いに離れる方向に変位した場合でも、変位に応じて軟質部331の形状が変化する。従って、乾式目地材30を取り付けた後に、洗い場床10と軟質部331との間に隙間が生じることを抑制できる。
軟質部331は、粘性を有していても良い。軟質部331が粘性を有していると、軟質部331が洗い場床10の上面12に当接した際、軟質部331が上面12に引っ付き易くなる。これにより、乾式目地材30を取り付けた後、洗い場床10と乾式目地材30との位置関係が変化した場合でも、洗い場床10と軟質部331との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0052】
軟質部331は、
図4及び
図5に表したように、乾式目地材30を取り付けた際に、支持部332によって上方から完全に被覆されることが望ましい。軟質部331は、支持部332よりも柔らかいため、傷つき易い。乾式目地材30に傷が生じると、傷に汚水が溜まり、カビなどによる黒ずみや悪臭の原因となる。軟質部331が支持部332によって上方から被覆されることで、軟質部331が傷付き難くなり、黒ずみや悪臭の発生を抑制できる。
【0053】
また、乾式目地材30の上面は、洗い場床10へ向かって下方に傾斜していることが望ましい。この構造によれば、乾式目地材30の上の水が洗い場床10へ向けて流れ易くなり、乾式目地材30の上の水がより溜まり難くなる。
【0054】
壁側当接部32は、
図5、
図6(a)、及び
図6(b)に表したように、支持部322及び軟質部321を有することが望ましい。
乾式目地材30が壁載せ凹部11と壁パネル20との間の隙間に挿入されると、壁側当接部32は壁パネル20の表面に当接し、変形する。この結果、軟質部321は、水平方向において壁パネル20と支持部322との間に位置する。
壁パネル20の表面にも、微小な凹凸が存在する場合がある。特に、パネル材同士の連結部分では、比較的大きな窪みが生じやすい。壁側当接部32にも軟質部321が設けられることで、壁パネル20の表面の凹凸に沿って軟質部321が変形し、乾式目地材30と壁パネル20との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、取付構造及び水まわりユニットルームなどが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0056】
1 取付構造、 2 水まわりユニットルーム、 10 洗い場床、 11 壁載せ凹部、 12 上面、 13 壁受け部材、 14 パッキン、 15 床基材、 16 床本体、 20 壁パネル、 21~27 パネル材、 30 乾式目地材、 31 挿入部、 32 壁側当接部、 33 床側延出部、 40 浴槽、 41 支持脚、 50 壁面接続部材、 θ1、θ2 角度、 121 凹部、 121a 上面、 122 凸部、 122a 上面、 123a 傾斜面、 131 窪み、 151 支持脚、 152 支持フレーム、 152a 第1のフレーム、 152b 第2のフレーム、 153 受け板、 161 床面材、 162 クッション材、 163 表面材、 311 係止部、 321 軟質部、 322 支持部、 331 軟質部、 332 支持部、 DR ドア、 L 長さ、 S 浴室設置面、 T 厚み