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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】光照射装置およびフラッシュランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/80 20060101AFI20221110BHJP
   H01J 61/36 20060101ALI20221110BHJP
   H01J 61/30 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H01J61/80
H01J61/36 Z
H01J61/30 Q
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019053952
(22)【出願日】2019-03-21
(65)【公開番号】P2020155346
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】森 和之
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 征彦
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-074217(JP,A)
【文献】特開2005-216647(JP,A)
【文献】特開2007-005347(JP,A)
【文献】特開平05-021042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/52-61/56
H01J 61/80
H01J 61/90
H01J 61/26
G03B 15/02
H01L 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ガスが封入された長尺な発光管と、該発光管の一端部側に設けられた第一電極導入部と、他端部側に設けられた第二電極導入部と、各電極導入部内に設けられた第一電極および第二電極とを有するフラッシュランプを多数備えた光照射装置であって、
前記フラッシュランプの発光管の前記第二電極導入部側の先端部には、光出射面が設けられていて、前記フラッシュランプは、前記光出射面が処理チャンバ内に臨むように、当該処理チャンバの天板に多数隣接して立設されていることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記フラッシュランプの少なくとも前記第二電極導入部は、当該発光管の長手方向軸に対して交差するように配置され、
隣接する前記各フラッシュランプの発光管は、前記第一電極導入部側の間隔が、前記光出射面側の間隔よりも広くなるように、前記長手方向軸が互いに傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記フラッシュランプは、前記処理チャンバ内の被処理物に隙間なく光照射するように配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記処理チャンバの天板は、ドーム形状をしていることを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記第二電極導入部は、隣接する各フラッシュランプの各発光管の間に位置するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記フラッシュランプは、前記天板の中央領域から周辺領域に広がるように同心円状に配置されており、前記中央領域から前記周辺領域に向けて灯数が多くなるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記フラッシュランプは、前記中央領域と前記周辺領域とで、それぞれの領域毎に電力制御可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記フラッシュランプは、それぞれ個別に電力制御可能に構成されることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の光照射装置。
【請求項9】
前記フラッシュランプが配置される前記天板には、前記各光出射面に対応して光照射窓が設けられていることを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数灯のフラッシュランプを備えた光照射装置およびこれに用いられるフラッシュランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体は、シリコンウエハに不純物をイオンドーピングした後にアニールすることにより、不純物が活性化され半導体として機能する。この加熱手段として、不純物がドープされた半導体表面のみをマイクロ秒(ms)以下という短い時間で加熱することが求められており、当該加熱工程では、例えば、特開2009-164201号公報(特許文献1)に開示されるように、フラッシュランプを用いたアニールが非常に有効である。
【0003】
近年、パワー半導体分野においては、従来用いられてきたシリコンウエハに加えて、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)からなる半導体ウエハも用いられ始めており、これらは高耐圧、高耐熱性、損出が小さい等の多くの利点を持つとして近年有望視されている。
しかしながら、SiC、GaNはシリコンに比べ大きな熱伝導率を持つため、従来と同じエネルギーでフラッシュランプアニールを行うと表面からより深い領域まで熱が伝達され、半導体ウエハ表面が所望の温度まで加熱できないという課題が生じている。そのため、従来よりも大きなエネルギーでフラッシュランプアニールを行うか、表面から入射された熱がウエハ内部に拡散しないように、より短い時間でフラッシュランプアニールを行う必要がある。
【0004】
ところが、フラッシュランプに入力するエネルギー量を増加させたり、同じ入力エネルギーでも短時間に入力しようとしたりすれば、結果的にランプ電流のピーク値を増大させなければならない。これは、ランプ内表面の温度上昇を引き起こし、発光管の劣化を早めることとなり、所定の寿命時間を全うすることが出来なくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-164201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、高強度な光を出射することが可能な光照射装置およびフラッシュランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明の光照射装置では、この発明の光照射装置では、発光ガスが封入された長尺な発光管と、該発光管の一端部側に設けられた第一電極導入部と、他端部側に設けられた第二電極導入部と、各電極導入部内に設けられた第一電極および第二電極とを有するフラッシュランプを多数備えた光照射装置であって、前記フラッシュランプの発光管の前記第二電極導入部側の先端部には、光出射面が設けられていて、前記フラッシュランプは、前記光出射面が処理チャンバ内に臨むように、当該処理チャンバの天板に多数隣接して立設されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記フラッシュランプの少なくとも前記第二電極導入部は、当該発光管の長手方向軸に対して交差するように配置され、隣接する前記各フラッシュランプの発光管は、前記第一電極導入部側の間隔が、前記光出射面側の間隔よりも広くなるように、前記長手方向軸が互いに傾斜して配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記フラッシュランプは、前記処理チャンバ内の被照射物に隙間なく光照射するように配置されていることを特徴とする。
また、前記処理チャンバの天板は、ドーム形状をしていることが好適である。
また、前記第二電極導入部は、隣接する各フラッシュランプの各発光管の間に位置するように配置されていることが好適である。
また、前記フラッシュランプは、前記天板の中央領域から周辺領域に広がるように同心円状に配置されており、前記中央領域から前記周辺領域に向けて灯数が多くなるように配置することができる。
【0010】
また、前記フラッシュランプは、前記中央領域と前記周辺領域とで、それぞれの領域毎に電力制御可能に構成することができる。
また、前記フラッシュランプは、それぞれ個別に電力制御可能に構成することができる。
また、前記フラッシュランプが配置される前記天板には、前記各光出射面に対応して光照射窓が設けられていることが好適である。
【0011】
また、上記課題を解決するために、この発明の光照射装置に用いられるフラッシュランプでは、発光ガスが封入された長尺な発光管と、該発光管の一端部側に設けられた第一電極導入部と、他端部側に設けられた第二電極導入部と、各電極導入部内に設けられた第一電極および第二電極とを備えたフラッシュランプであって、前記フラッシュランプの発光管の前記第二電極導入部側の先端部には、光出射面が設けられており、少なくとも前記第二電極導入部は、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように配置され、前記第二電極の先端は、前記発光管内へ突出するように配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、前記第二電極が陽極であることが好適である。
また、前記第一電極導入部は、前記発光管と同軸方向に延びるように形成することができる。
また、前記発光管の長手方向における前記第二電極の投影面積が、前記発光管の長手方向に直交する方向における前記第二電極の最大投影面積よりも小さくなるように形成することが好適である。
【0013】
また、前記第二電極は、前記発光管の長手方向に沿って偏平な形状とすることができる。
また、前記第二電極には、前記発光管の長手方向に沿うような貫通孔が設けられている形状とすることができる。
また、前記発光管の外表面にはチップ部が形成されており、前記チップ部を、前記第二電極導入部と対向するように配置することが好適である。
また、前記発光管の管壁には、その長手方向に沿って反射膜を形成することができる。
また、前記発光管の周側面には、その長手方向に沿ってトリガ部材が設けられており、前記トリガ部材は、前記第二電極導入部が配置される側とは反対側に配置することが好適である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、フラッシュランプが、発光管の長手軸方向の端面から強度の大きな光を取り出して利用する構成とするものである。つまり、発光ガスが封入された長尺な発光管と、該発光管の一端部側に設けられた第一電極導入部と、他端部側に設けられた第二電極導入部と、各電極導入部内に設けられた第一電極および第二電極とを備えたフラッシュランプを用いた光照射装置において、多数のフラッシュランプの先端面から光出射できるとともに、個々のフラッシュランプへの入力電流を大きくすることなく、全体として高強度な光を出射でき、フラッシュランプを実用的な寿命時間で使用可能とした光照射装置を提供することができる。
【0015】
また、フラッシュランプが処理チャンバに多数隣接するように取り付けられており、該フラッシュランプの発光管には、第一電極導入部と第二電極導入部とが設けられ、前記第二導電部材側の先端部に光出射面が設けられていて、前記第二電極導入部が、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように配置され、隣接する前記各フラッシュランプの発光管は、前記第一電極導入部側の間隔が、前記光出射面側の間隔よりも広くなるように、前記長手方向軸が互いに傾斜して処理チャンバの天板上に配置されているので、フラッシュランプ相互が干渉することなく多数配置でき、多数のフラッシュランプの先端面から光出射できて、個々のフラッシュランプへの入力電流を大きくすることなく、全体として高強度な光を出射でき、フラッシュランプを実用的な寿命時間で使用可能とした光照射装置を提供することができる。
【0016】
また、発光管の一端部側に設けられた第一電極導入部と、他端部側に設けられた第二電極導入部と、とを備えたフラッシュランプにおいて、前記発光管の前記第二電極導入部側の先端部に光出射面が設けられており、前記第二電極導入部が、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように配置され、発光管の長手方向の端面から強度の大きな光を取り出して利用することができ、しかも、第二電極の先端が、前記発光管内に突出するように配置されているので、第一電極と第二電極との間で放電する際に、第二電極の周辺の発光管内壁にアークが触れることがなく、発光管の寿命を永くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の光照射装置の外観斜視図
図2】本発明の光照射装置に用いられるフラッシュランプの断面図
図3図1の断面図
図4】天板の上面図
図5】フラッシュランプの天板への取付け構造図
図6】被照射物におけるフラッシュランプからの照射範囲
図7】フラッシュランプの第2実施例の断面図
図8】フラッシュランプの第2電極の形態例
図9】フラッシュランプの第3実施例の断面図
図10】フラッシュランプの第4実施例の断面図
図11】フラッシュランプの第5実施例の断面図
図12】フラッシュランプの第6実施例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る光照射装置1を上面から見た外観斜視図であり、被照射物が収容される処理チャンバ2と、その天板21に放射状に立設された多数のフラッシュランプ3とからなる。このフラッシュランプ3は、発光管31の一端側に第一電極導入部32が設けられ、他端側に第二電極導入部34が設けられていて、当該第二電極導入部34側で処理チャンバ2の天板21に取り付けられている。
なお、処理チャンバ2には排気管22が設けられており、この排気管22を利用して処理チャンバ2内を真空排気する。
【0019】
図2に本発明の光照射装置1に用いられるフラッシュランプ3の概略構造が示されている。フラッシュランプ3は円筒状の長尺な発光管31を有し、その一端部には該発光管31と同一管軸方向に延びる第一電極導入部32を有していて、その内部には第一電極33が設けられている。
一方、発光管31の他端部側には当該発光管31の長手方向軸L1に対して交差するように第二電極導入部34が設けられていて、その内部に第二電極35が設けられ、その先端面が発光管31内の放電空間Sに臨むように配置されている。この配置により、第二電極35はその軸心L2方向が、発光管31の長手方向軸L1と交差する配置関係となる。
上記のように、前記第二電極35の先端面が発光管31の放電空間Sに臨む配置とすることで、第一電極33との間での放電によるアークが第二電極35の周囲の発光管31や第二電極導入部34のガラスに触れることがなく、その劣化が抑制される。
【0020】
なお、第二電極導入部34は発光管31に交差する配置としては、図2に示すように、典型的には発光管31に直交する配置とすることが一般的であるが、勿論これに限られるものではない。
ただ、第二電極導入部34内に設けられる第二電極35の軸線L2が、発光管31の長手方向軸L1と交差するように設けることが求められる。
【0021】
そして、発光管31の第二電極導入部34側の先端部には光出射面36が形成されていて、当該光出射面36を介して発光管31内に封入された発光ガスによって生じる光が出射される。
この封入される発光ガスは、例えば、キセノンガスであり、波長200~1100nmの光が生成される。
また、上記の第一電極33と第二電極35においては、第二電極35を陽極として利用することが好適である。この種フラッシュランプにおいては、陽極の方が陰極よりもその大きさを小さくすることができ、光出射面36側に位置する第二電極35を陽極とすることで、放電空間S内で生成された閃光が電極によって遮られて有効活用できないという不具合をできるだけ小さなものとすることができる。
【0022】
図3に本発明の光照射装置1全体の断面図が示され、処理チャンバ2はドーム形状の天板21を有している。この天板21には、図4に示すように、当該天板21の中央領域から周辺領域に広がるように、同心円状に多数の光照射窓23が配置されており、そのため、前記中央領域から前記周辺領域に向けて光照射窓23はその個数が多くなる。
図3において、各フラッシュランプ3は、その発光管31の先端の光出射面36が、処理チャンバ2の天板21の光照射窓23に対応するように該天板21に立設されている。そのため、天板21上に配置されるフラッシュランプ3は、中央領域から周辺領域に向けてその設置個数が多くなる。
このとき、隣接する各フラッシュランプ3の発光管31は、前記第一電極導入部32側の間隔が、前記光出射面36側(前記第二電極導入部34側)の間隔よりも広くなるように、前記長手方向軸が互いに傾斜して配置されていて、発光管31の長手方向軸と交差するように延びる前記第二電極導入部34は、隣接する各フラッシュランプ3の各発光管31の間に延びて位置し、他のフラッシュランプ3の発光管31に干渉することがないように配置される。
天板21をドーム形状とすることで、このような配置が容易に得られる。
【0023】
図3に示すように、フラッシュランプ3の処理チャンバ2への取り付けは、例えば、フラッシュランプ3に被嵌されるような保持体4によってなされる。
図5に、内部にフラッシュランプ3を保持した保持体4を天板21に取り付ける具体的な取り付け構造の一例が示されている。天板21には、図4に示した光照射窓23が設けられており、保持体4をこの光照射窓23に対応した位置で天板21にネジ止めすることにより、保持体4内に保持されたフラッシュランプ3は、その光出射面35が前記光照射窓23に対応する位置で配置される。
このとき、光照射窓23は、処理チャンバ2内を真空状態にするために天板21に対して気密に取り付けられている。
なお、フラッシュランプ3の天板21への取り付けはこの例に限られず、任意の手段を用いることができる。
また、図3では、煩雑を避ける意味で保持体4は1本のみのフラッシュランプ3に被嵌されたものが示されているが、多数のフラッシュランプ3の全てに被嵌されるものである。
【0024】
この保持体4としては、フラッシュランプに対する3000V程度迄の印加電圧に対する絶縁性、最高数百度(~300℃)に耐える耐熱性、更にはフラッシュランプからの放射光に耐える耐光性が必要であり、これらの諸要求を満たす材料としては、コーニング製マコール(登録商標)やフェローテックセラミックス製ホトベール(登録商標)等のマシナブルセラミックス(機械加工性に優れたセラミックス)を用いることが好適である。
【0025】
再び図3を参照して、処理チャンバ2内には、被照射物Wを載置する載置台5が配置されていて、処理チャンバ2に取り付けられた多数のフラッシュランプ3からの光は、図6に示すように、単一のフラッシュランプ3からの照射範囲Xの一部が被照射物W上で互いに重なるように隙間なく照射される。
【0026】
図1及び図4に示すように、同心円状に配置された多数のフラッシュランプ3は、中央領域から周辺領域に向けて設置灯数が多くなり、これにより被照射物Wの温度が上昇しにくい周辺領域における光出力を増大させることができる。
そして、フラッシュランプ3は、中央領域と周辺領域とでそれぞれの領域毎に電力制御が行えるように構成することができる。これにより光出射範囲をエリア制御(ゾーン制御)することが可能となり、所望の加熱工程を実現できる。
また、他の例では、当該フラッシュランプ3は、それぞれ個別に電力制御可能に構成することもでき、こうした場合、より精度の高い光出力制御を実施することができる。
【0027】
図7にフラッシュランプ3の他の実施例が示されており、第二電極35が放電空間S内により突出している態様が示され、一例として、第二電極35の先端が、前記発光管31の中心軸L1を超える領域まで突出させてもよく、全体が放電空間S内に存在するようにしてもよい。このような構成において、放電空間S内で発生する閃光が当該第二電極35によって極力遮られないように、その電極形状を適宜調整する必要がある。
例えば、発光管31の管軸方向L1における第二電極35の投影面積が、管軸方向に直交する方向における第二電極35の最大投影面積よりも小さくなるように、電極形状を調整することが望ましい。
これは、放電空間Sから発生する閃光が第二電極35で遮られないように、発光管31の管軸方向における第二電極35の投影面積を小さくする必要があり、一方で排熱の観点から第二電極35の熱容量を小さくしすぎることのないように、管軸方向に直交する方向における第二電極35の投影面積を大きく設計する必要があるためである。
【0028】
図8に、そのような配慮のもとに形成された第二電極35の2種類の具体例が示されている。
図8(A)に示す第二電極35は、発光管31の管軸(長手方向軸)L1方向に沿って偏平な形状とされている。これにより、発光管31の管軸方向L1における第二電極35の投影面積Aを、管軸方向に直交する軸線方向L3における最大投影面積Bより小さくできる。
図8(B)に示す第二電極35は、発光管31の管軸方向(長手方向軸)に沿って貫通孔35aが形成されている。この例では第二電極35はリング形状をなすものである。これによっても、第二電極35の管軸方向L1における投影面積Aを、管軸方向に直交する軸方向L3における最大投影面積Bよりも小さくできる。また貫通孔35aが設けられることで、放電空間Sからの光取出しを良好にでき、より均一な光照射を実現できる。
【0029】
このように第二電極35は、その管軸方向L1における投影面積Aがより小さく設計されることが望ましく、例えば管軸方向と直交する軸線方向L3における最大投影面積Bの80%以下に設計することが好ましく、より好ましくは50%以下、更により好ましくは30%以下となるように設計することが好ましい。
【0030】
図9に本発明のフラッシュランプの他の実施例が示されていて、発光管31の外表面にはチップ部(排気管残部ともいう)37が形成されており、該チップ部37は、第二電極導入部34と対向する反対側の位置に形成されている。つまり、第二電極35の管軸方向L2の先に形成されている。
通常、電極軸を封止する工程においては、封止部(電極軸とガラスの封着部分)をガスバーナーで加熱溶着させて気密封止を実現する。より精度の高い加熱溶着を実現するためには、通常はガスバーナーに対して封止部を回転させながら加熱溶着することが望ましい。
【0031】
しかしながら、本発明のフラッシュランプ3では、第二電極導入部34が発光管31に交差する方向に延びる構成であるために、上記の電極封止工程で、第二電極導入部34を中心として回転させようとすると、発光管31の存在でその回転軸がずれてしまって、精密な加熱溶着が困難になるという不具合が生じる。
そこで第二電極導入部34の軸方向に沿う方向に排気管(後に溶融封止してチップ部37として残存する)を接続させ、第二電極導入部34を回転させながら第二電極35の電極軸35aを封着させる場合に、当該排気管37で支えながら第二電極導入部34を回転させることができ、当該回転時の回転軸ズレを起こさずに封止工程を実現できる。その後、排気管はチップオフ工程で取り除かれるため、結果として第二電極導入部34に対向する領域にチップ部37が形成される。
以上の点から、第二電極導入部34に対向する領域にチップ部37を配置させることが望ましい構成となる。
【0032】
図10にフラッシュランプ3の他の実施例が示されていて、この実施例では、発光管31の内周面に長手軸方向に沿うように、反射膜38が形成されている。これにより、放電空間S内で発生した閃光は、この反射膜38で反射されて、発光管31の先端部に形成された光出射面36から出射されることになり、出射光量を増加させることができる。
またこの反射膜38は、第一電極33の周囲を覆うように形成されることが望ましい。これにより、放電空間Sで生じる光が第一電極導入部32側から漏れる割合が大幅に減り、光の利用効率を高められる。
このような反射膜38は放電空間Sで発生する紫外域の光を反射する特性の材料が適しており、例えばシリカやアルミナで構成された反射膜を採用することができる。これは、SiCやGaN等は400nm以下の紫外域の光吸収量が大きく、加熱に対して非常に有効と成りえるためである。
【0033】
図11にフラッシュランプ3の更に他の実施例が示されていて、この実施例では、発光管31の外周面には、その長手方向に沿ってトリガ部材6が設けられている。このトリガ部材6は、封止されたトリガ管61と、その内部に配置された金属材料からなるトリガワイヤ62とで構成されている。そして、トリガ管61の内部は、真空引きされていてもよく、希ガスを封入させていてもよい。
このトリガ部材6は、第二電極導入部34が配置される側とは反対側に配置されている。トリガ部材6による放電は発光管3内部で該トリガ部材6に沿って生じるために、第一電極33と第二電極35間での放電を惹起する意味で、第二電極35に対向する位置に配置させることが好ましい。
【0034】
以上の各実施例では、第一電極導入部32は、発光管31と同一管軸方向に延びるものを示したが、これに限られず、図12に示すように、第二電極導入部34と同様に、発光管31の長手方向軸に対して交差するように設けられていてもよい。この場合、当然に第一電極33も発光管31とは交差する方向に延在している。
なお、第一電極導入部32と第二電極導入部34とは発光管31に対して必ずしも同じ方向に配置されていなくてもよい。
【0035】
以上説明したように、本発明におけるフラッシュランプを備えた光照射装置においては、フラッシュランプの先端の光出射面が処理チャンバ内に臨むように、当該処理チャンバの天板に多数隣接して立設されており、前記フラッシュランプに設けられた第一電極導入部と第二電極導入部のうち少なくとも前記第二電極導入部は、発光管の長手方向軸に対して交差するように配置され、隣接する前記各フラッシュランプの発光管は、前記第一電極導入部側の間隔が、前記光出射面側の間隔よりも広くなるように、前記長手方向軸が互いに傾斜して配置されていることにより、フラッシュランプ相互が干渉することなく処理チャンバに多数配置でき、多数のフラッシュランプの先端面から光出射できて、個々のフラッシュランプへの入力電流を大きくすることなく、全体として高強度な光を出射でき、フラッシュランプを実用的な寿命時間で使用可能とすることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 :光照射装置
2 :処理チャンバ
21 :天板
22 :排気管
23 :光照射窓
3 :フラッシュランプ
31 :発光管
32 :第一電極導入部
33 :第一電極
34 :第二電極導入部
35 :第二電極
35a:貫通孔
36 :光出射面
37 :チップ部
38 :反射膜
4 :保持体
5 :載置台
6 :トリガ部材
61 :トリガ管
62 :トリガワイヤ
S :放電空間
L1 :発光管の管軸(長手方向軸)
L2 :第二電極の軸線
L3 :発光管の管軸方向に直交する軸線
A :発光管の管軸方向における第二電極の投影面積
B :管軸方向に直交する軸線おける第二電極の最大投影面積



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12