(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】磁気歯車機構
(51)【国際特許分類】
F16H 49/00 20060101AFI20221110BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F16H49/00 A
H02K7/10 A
(21)【出願番号】P 2018175948
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】赤津 観
(72)【発明者】
【氏名】相曽 浩平
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-042449(JP,A)
【文献】特開平02-017879(JP,A)
【文献】米国特許第04693130(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0156221(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
H02K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に動作する動力源の回転動力を伝達する入力軸と
、前記入力軸の周囲に磁性が交互になるように配置される永久磁石と
、を
有する第一回転体を、少なくとも2つ以上有し、
前記第一回転体の外周側に、前記第一回転体の永久磁石と対向し、磁性が交互になるように円周状に配置される外周永久磁石と、前記外周永久磁石の外周側に配置される外周鉄心と
、を有する第二回転体
を有し、
前記第一回転体の永久磁石と前記第二回転体の外周永久磁石とは非接触で回転動力を伝達し、
前記第一回転体は、少なくとも2種類の磁極数を有することを特徴とする磁気歯車機構。
【請求項2】
前記第一回転体は、前記第二回転体の内側に円周状に配置されることを特徴とする請求項1に記載の磁気歯車機構。
【請求項3】
前記第一回転体は、前記第二回転体より高速に回転することを特徴とする請求項1に記載の磁気歯車機構。
【請求項4】
前記第一回転体は、少なくとも2種類の外径を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気歯車機構。
【請求項5】
出力が異なる少なくとも2種類の動力源が前記入力軸に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気歯車機構。
【請求項6】
前記動力源がモータであることを特徴とする請求項1に記載の磁気歯車機構。
【請求項7】
前記第一回転体の永久磁石の外表面の曲率半径RHと前記第二回転体の外周永久磁石の内表面の曲率半径RLがRL>RHであることを特徴とする請求項1に記載の磁気歯車機構。
【請求項8】
前記第一回転体と前記第二回転体との間のギャップGHLと前記第一回転体と前記第一回転体との間のギャップGHHがGHL<GHHであることを特徴とする請求項1に記載の磁気歯車機構。
【請求項9】
前記第一回転体の外径DHOと前記第二回転体の内径DLIとがDLI>2×DHOであることを特徴とする請求項1に記載の磁気歯車機構。
【請求項10】
個別に動作する動力源と、
前記動力源の回転動力を伝達する入力軸と前記入力軸の周囲に磁性が交互になるように配置される永久磁石とを
有する第一回転体を少なくとも2つ以上有し、前記第一回転体の外周側に、前記第一回転体の永久磁石と対向し、磁性が交互になるように円周状に配置される外周永久磁石と、前記外周永久磁石の外周側に配置される外周鉄心と
、を有する第二回転体と、を有し、
前記第一回転体の永久磁石と前記第二回転体の外周永久磁石とは非接触で回転動力を伝達し、前記第一回転体は、少なくとも2種類の磁極数を有する磁気歯車機構と、
前記動力源を駆動する駆動回路と、
を有することを特徴とする駆動システム。
【請求項11】
複数の動力源に対して、一つの駆動回路が配置されることを特徴とする請求項
10に記載の駆動システム。
【請求項12】
一つの動力源に対して、一つの駆動回路が配置されることを特徴とする請求項
10に記載の駆動システム。
【請求項13】
前記動力源と前記磁気歯車機構の第一回転体との間に、ワンウェイクラッチを配置したことを特徴とする請求項
12に記載の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で回転動力を伝達する磁気歯車機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道、産業機器、家電などの様々な分野において、動力源としてモータや原動機が用いられている。モータや原動機の出力は、トルクと回転数との積で表現され、モータや原動機の回転数を上げると大きな出力が得られる。このため、小型で出力の大きなモータや原動機を構成するために、モータや原動機の高回転数化が進んでいる。
【0003】
高い回転数を実現(高回転数化)したモータや原動機の出力は、機械的なギアによって、必要なトルクや回転数に変換して使用される場合が多い。機械的なギアは、歯車どうしが接触することにより騒音が発生し、また、潤滑油などによるメンテナンスが必要になる。
【0004】
このような本技術分野の背景技術として、特開2013―21872号公報(特許文献1)がある。この公報には、回転電機の回転子に発生する動力を、磁気歯車変速機構で変速して伝達する場合に、回転子に発生するトルクの増加に応じて磁気歯車変速機構の伝達トルク容量を増加させることが記載され、磁気歯車変速機構のサン磁気歯車の界磁巻線と誘導機のロータ巻線を共有巻線によって共有化し、サン磁気歯車の界磁巻線と誘導機のロータ巻線に共通の電流が流れることで、ロータに発生するトルクとサン磁気歯車の界磁磁束量が比例関係となり、ロータに発生するトルクの増加に応じて磁気歯車変速機構の伝達トルク容量が増加することが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、回転電機(モータ)の回転子に発生する動力を磁気歯車変速機構で変速し、動力を伝達することが記載されている。しかし、特許文献1には、複数の個別に動作する動力源の回転動力を効率よく伝達する磁気歯車機構は開示されていない。
【0007】
そこで、本発明は、複数の個別に動作する動力源の回転動力を効率よく伝達し、信頼性が高く、安全な磁気歯車機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の磁気歯車機構は、個別に動作する動力源の回転動力を伝達する入力軸と、入力軸の周囲に磁性が交互になるように配置される永久磁石と、を有する第一回転体を、少なくとも2つ以上有し、第一回転体の外周側に、第一回転体の永久磁石と対向し、磁性が交互になるように円周状に配置される外周永久磁石と、外周永久磁石の外周側に配置される外周鉄心と、を有する第二回転体を有し、第一回転体の永久磁石と第二回転体の外周永久磁石とは非接触で回転動力を伝達し、第一回転体は、少なくとも2種類の磁極数を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の個別に動作する動力源の回転動力を効率よく伝達し、信頼性が高く、安全な磁気歯車機構を提供することができる。
【0010】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1における磁気歯車機構を斜視的に示す説明図である。
【
図2】実施例1における磁気歯車機構を断面的に示す説明図である。
【
図3】実施例1における第一回転体を断面的に示す説明図である。
【
図4】実施例1における第二回転体を断面的に示す説明図である。
【
図5】実施例2における磁気歯車機構を断面的に示す説明図である。
【
図6】実施例2における第二回転体の回転数とトルクとの関係を示す説明図である。
【
図7】実施例3における磁気歯車機構を断面的に示す説明図である。
【
図8】実施例4における磁気歯車機構を断面的に示し、第一回転体と第二回転体との曲率半径の関係を示す説明図である。
【
図9】実施例5における磁気歯車機構を断面的に示し、第一回転体と第二回転体との磁気ギャップの関係を示す説明図である。
【
図10】実施例2における第一回転体と第二回転体との磁気ギャップの関係を示す説明図である。
【
図11】実施例6における磁気歯車機構とモータの駆動回路とを示す説明図である。
【
図12】実施例7における磁気歯車機構とモータの駆動回路とを示す説明図である。
【
図13】比較例における磁気歯車機構を断面的に示す説明図である。
【
図14】実施例8おける磁気歯車機構を断面的に示す説明図である。
【
図15】比較例の磁気歯車機構と実施例8の磁気歯車機構とのスペックを比較する表である。
【
図16】比較例における磁気歯車機構を示す説明図である。
【
図17】実施例8おける磁気歯車機構を示す説明図である。
【
図18】比較例おける磁気歯車機構の電気角とトルクと関係を示す説明図である。
【
図19】実施例8おける磁気歯車機構の電気角とトルクと関係を示す説明図である。
【
図20】比較例の磁気歯車機構と実施例8の磁気歯車機構とのトルク密度を比較するグラフである。
【
図21】比較例の磁気歯車機構と実施例8の磁気歯車機構とのギア体積を比較するグラフである。
【
図22】比較例の磁気歯車機構と実施例8の磁気歯車機構との磁石体積を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、同一の構成には、同一の符号を付し、また、同一の用語を用い、説明が重複する場合は、その説明を省略する場合がある。
【0013】
以下、本発明の磁気歯車機構の実施例について説明する。以下の実施例に記載する磁気歯車機構は、ラジアルギャップ構造であるが、この構造に限定されるものではない。例えば、アキシャルギャップ構造やリニア構造などに関しても適用できる。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1における磁気歯車機構を斜視的に示す説明図である。
【0015】
本実施例に記載する磁気歯車機構は、個別に動作する動力源(以下、モータ13を用いて説明する)の回転動力を伝達する入力軸(以下、シャフト12を用いて説明する)とシャフト12の周囲に磁性が交互になるように配置される永久磁石11とを、少なくとも2つ以上(複数、本実施例では12個)、有する第一回転体10と、第一回転体10の外周側に、第一回転体10の永久磁石11と対向し、磁性が交互になるように円周状に配置される外周永久磁石21と、外周永久磁石21の外周側に配置される外周鉄心22とを有する第二回転体20と、を有するものである。
【0016】
つまり、本実施例に記載する磁気歯車機構は、12個のモータ13と連結するシャフト12を有する第一回転体10と、第一回転体10の外周側に配置される第二回転体20とを有する。
【0017】
本実施例では、モータ13は12個であり、これに対応するように、シャフト13も12本、第一回転体10も12個である。
【0018】
図2は、実施例1における磁気歯車機構を断面的に示す説明図である。
【0019】
第一回転体10は、シャフト12の表面(周囲)に永久磁石11を有する。そして、第一回転体10の外周側には、第一回転体10を囲うように、第二回転体20が配置される。つまり、第一回転体10は、第二回転体20の内側(内部)に配置される。このため、高速に回転する第一回転体10が、万一、破損した場合であっても、安全性が維持される。
【0020】
また、第二回転体20は、第一回転体10の永久磁石11と対向するように、円周状に外周永久磁石21を有し、外周永久磁石21の外周側には、外周鉄心22が配置される。
【0021】
なお、本実施例では、第一回転体10は、第二回転体20の内側(内部)に円周状に配置される。また、永久磁石11及び外周永久磁石21は、N極とS極との磁性が交互になるように配置される。
【0022】
モータ13の動作により、第一回転体10が回転すると、第一回転体10の永久磁石11と、第二回転体20の外周永久磁石21との間で磁気的な結合が生じる。この際に、永久磁石11と外周永久磁石21とは、非接触で回転動力を伝達する。
【0023】
なお、本実施例に記載する磁気歯車機構は、回転動力が伝達される外周鉄心22が出力軸(図示なし)になる場合や外周鉄心22に形成される部材が出力軸(図示なし)になる場合が想定される。
【0024】
また、本実施例では、第一回転体10の永久磁石11の極数は6極(3極対)に、第二回転体20の外周永久磁石21の極数は36極(18極対)に構成される。したがって、この場合、第一回転体10が6回転すると第二回転体20が1回転する。つまり、ギア比(本実施例では、入力軸の回転数と出力軸の回転数との比)1:6の磁気歯車機構が構成される。このように、本実施例では、第一回転体10は、第二回転体20より高速に回転することになる。
【0025】
本実施例では、永久磁石11は1極毎にセグメント磁石が配置される。
【0026】
なお、本実施例では、モータ13に、同一の電気的な特性(例えば、電圧、電流、モータ乗数、インダクタンス、抵抗、トルク、最高回転数など)を有するものを用い、同一の回転数で使用する。
【0027】
また、第一回転体10に配置される入力軸としての複数のシャフト12には、個々に回転動力を入力することができ、動作領域を拡大し、効率のよい動作が可能となる。つまり、2つ以上の個別に回転するシャフト12(入力軸)が配置されることにより、それぞれの動作状態を補うことができる。
【0028】
なお、シャフト12(入力軸)に回転動力を伝達し、個別に動作する動力源として、モータ13以外には、例えば、原動機、油圧機器、その他の回転エネルギー機器などが想定される。
【0029】
図3は、実施例1における第一回転体を断面的に示す説明図である。
【0030】
図3に記載するように、第一回転体10の永久磁石11は、N極11aとS極11bとが交互に配置される。
【0031】
なお、本実施例では、セグメント磁石を用いて説明するが、これに限定されるものではない。例えば、
図3に示すように、第一回転体10の永久磁石11の外側の表面が、N極の永久磁石11aとS極の永久磁石11bとのように、NとSとの交互の磁束が発生すればよく、リング磁石などでも構成できる。
【0032】
図4は、実施例1における第二回転体を断面的に示す説明図である。
【0033】
図4に記載するように、第二回転体20の外周永久磁石21は、N極21aとS極21bとが交互に配置される。
【0034】
なお、本実施例では、セグメント磁石を用いて説明するが、これに限定されるものではない。例えば、
図4に示すように、第二回転体20の外周永久磁石21の内側の表面が、N極の永久磁石21aとS極の永久磁石21bとのように、NとSとの交互の磁束が発生すればよく、リング磁石なども適用できる。
【0035】
また、
図3に示す永久磁石11や
図4に示す外周永久磁石21は、極異方配列やハルバッハ配列の磁石を用いることもできる。大きなトルクを伝達するためには、残留磁束密度の大きな磁石を用いることが好ましいが、磁石の材質は問わない。例えば、希土類を用いた焼結磁石、フェライト磁石、ボンド磁石なども適用できる。
【0036】
本実施例では、シャフト12はモータ13の回転動力を第一回転体10に伝達するものであり、シャフト12の表面(周囲)に、直接、永久磁石11を配置する。しかし、シャフト12と永久磁石11とを、必ずしも一体に(シャフト12の表面(周囲)に、直接、永久磁石11を配置)形成する必要はない。シャフト12と永久磁石11との間に、張り付け部材を形成してもよい。
【0037】
例えば、鉄系のシャフト12の周囲に、張り付け部材として、軟磁性の電磁鋼板を積層したもの、軟磁性のアモルファス金属を積層したもの、軟磁性のナノ結晶材料を積層したものを形成してもよい。張り付け部材の材料は、軟磁性材料が好ましいが、ハルバッハ配列の永久磁石を用いた場合などは、非磁性材料も適用できる。また、張り付け部材の材料は、軟磁性材料を積層することで、損失を低減できる。
【実施例2】
【0038】
図5は、実施例2における磁気歯車機構を断面的に示す説明図である。
【0039】
本実施例では、外径の異なる2種類の第一回転体10を有する。外径の大きな第一回転体10aは1個、外径の小さな第一回転体10bを2個、合計3個の第一回転体10を用いたものである。つまり、第一回転体10は、少なくとも2種類の外径を有することになる。
【0040】
また、本実施例では、外径の大きな第一回転体10aの永久磁石11の極数は16極(8極対)に、また、外径の小さな第一回転体10bの永久磁石11の極数は6極(3極対)に構成される。さらに、第二回転体20の外周永久磁石21の極数は24極(12極対)に構成される。
【0041】
例えば、外径の大きな第一回転体10aと第二回転体20とにおいては、外径の大きな第一回転体10aが1.5回転すると第二回転体20が1回転する。つまり、ギア比1:1.5の磁気歯車機構が構成される。
【0042】
同様に、例えば、外径の小さな第一回転体10bと第二回転体20とにおいては、外径の小さな第一回転体10bが5回転すると第二回転体20が1回転する。つまり、ギア比1:5の磁気歯車機構が構成される。
【0043】
外径の大きな第一回転体10aと外径の小さな第一回転体10bとを、1.5:5の回転数で動作させれば、3つの第一回転体10は第二回転体20に効率よくトルクを伝達できる。
【0044】
つまり、外径の大きな第一回転体10aと、外径の小さな第一回転体10bと、第二回転体20とを、1.5:5:1のギア比で動作させればよい。このように、第一回転体10の外径を変えることにより、ギア比の異なる磁気歯車機構を実現することができる。
【0045】
第二回転体20の内側(内部)に、外径の異なる2種類の第一回転体10を効率よく配置するためには、外径の小さな第一回転体10bの外径DHOと第二回転体20の内径DLIとの関係は、DLI>2×DHOであることが好ましい。
【0046】
なお、第二回転体20の内側(内部)に、外径の異なる3種類以上の第一回転体10を効率よく配置するためには、外径の最も小さな第一回転体10の外径の2倍より、第二回転体20の内径が大きいことが好ましい。
【0047】
図6は、実施例2における第二回転体の回転数とトルクとの関係を示す説明図である。
【0048】
モータ13は、一般に、定格点(定格回転数、定格電流、定格出力など)において、高効率になるように設計される。つまり、動作条件(回転数、電流、出力などの条件)によって大きく効率が変化する。
【0049】
図6は、第二回転体20の回転数と第二回転体20のトルクとの関係における、外径の大きな第一回転体10aの出力特性40a、及び、外径の小さな第一回転体10bの出力特性40bを示す。つまり、
図6は、第二回転体20の回転数が低い領域では、第二回転体20のトルクは、外径の大きな第一回転体10aのトルク(40a)と、2つの外径の小さな第一回転体10bのトルク(40b)との合計になることを示す。
【0050】
例えば、外径の大きな第一回転体10aには、低速大トルクのモータ13を接続し、外径の小さな第一回転体10bには、高速小トルクのモータ13を接続することが好ましい。この場合、回転数の低い領域では、3つのモータ13を、回転数の高い領域では、高速小トルクのモータ13を、動作させるように制御することにより、それぞれのモータ13の効率のよい動作領域を有効に活用でき、効率を向上できる。
【0051】
つまり、それぞれの第一回転体10の入力軸における回転数やトルクを制御することにより、第二回転体20の出力軸における出力を制御することができる。
【実施例3】
【0052】
図7は、実施例3における磁気歯車機構を断面的に示す説明図である。
【0053】
本実施例では、磁極数(又は「極数」と表現)の異なる2種類の第一回転体10を有する。磁極の少ない第一回転体10cを1個、磁極の多い第一回転体10dを1個、合計2個の第一回転体10を用いたものである。つまり、第一回転体10は、少なくとも2種類の磁極数を有することになる。
【0054】
また、本実施例では、磁極の少ない第一回転体10cの永久磁石11の極数は16極(8極対)に、また、磁極の多い第一回転体10dの永久磁石11の極数は32極(16極対)に構成される。さらに、第二回転体20の外周永久磁石21の極数は48極(24極対)に構成される。
【0055】
例えば、磁極の少ない第一回転体10cと第二回転体20とにおいては、磁極の少ない第一回転体10cが3回転すると第二回転体20が1回転する。つまり、ギア比1:3の磁気歯車機構が構成される。
【0056】
同様に、例えば、磁極の多い第一回転体10dと第二回転体20とにおいては、磁極の多い第一回転体10dが1.5回転すると第二回転体20が1回転する。つまり、ギア比1:1.5の磁気歯車機構が構成される。
【0057】
磁極の少ない第一回転体10cと磁極の多い第一回転体10dとを、3:1.5の回転数で動作させれば、2つの第一回転体10は第二回転体20に効率よくトルクを伝達できる。
【0058】
つまり、磁極の少ない第一回転体10cと、磁極の多い第一回転体10dと、第二回転体20とを、3:1.5:1のギア比で動作させればよい。このように、第一回転体10の極数を変えることにより、ギア比の異なる磁気歯車機構を実現することができる。
【0059】
なお、本実施例では、磁極の少ない第一回転体10cと磁極の多い第一回転体10dとの外径は同一である。
【0060】
例えば、等方性のリング磁石などを用いて第一回転体10の永久磁石11を構成した場合、着磁により極数を変えることにより、ギア数を容易に変更できる。
【0061】
また、2つの異なる極数の第一回転体10を有することにより、第二回転体20の回転数が変化する場合には、第一回転体10cと第一回転体10dとを、効率の良い動作条件に設定し、動作させることができる。
【0062】
さらに、第一回転体10cに接続されたモータ13aの出力と、第一回転体10dに接続されたモータ13bの出力と、を変えることにより、例えば、モータ13aを大出力に設定し、モータ13bを小出力に設定することにより、モータを効率よく動作させることができ、動作領域を拡大できる。このように、出力が異なる少なくとも2種類のモータ(動力源)13をシャフト(入力軸)12に接続することができる。
【0063】
つまり、本実施例に記載する磁気歯車機構を用いた駆動システムは、幅広い動作領域(例えば、幅広い回転数やトルクの領域)で動作できることになる。また、第一回転体10cに接続されたモータ13aと、第一回転体10dに接続されたモータ13bとの電気的な特性を変えた場合にも、駆動システムの動作領域や動作条件を拡大できる。
【0064】
つまり、それぞれの第一回転体10の入力軸における回転数やトルクを最適に設定することにより、第二回転体20の出力軸における出力を制御することができる。
【実施例4】
【0065】
図8は、実施例4における磁気歯車機構を断面的に示し、第一回転体と第二回転体との曲率半径の関係を示す説明図である。
【0066】
図8には、3個の第一回転体10と第二回転体20とを示す。
【0067】
本実施例では、第一回転体10の永久磁石11の極数は16極(8極対)に、第二回転体20の外周永久磁石21の極数は24極(12極対)に構成される。したがって、この場合、第一回転体10が1.5回転すると第二回転体20が1回転する。つまり、ギア比1:1.5の磁気歯車機構が構成される。
【0068】
第一回転体10の永久磁石11の表面(外表面)の曲率半径をRHと、第二回転体20の外周永久磁石21の表面(内表面)の曲率半径をRLとする場合、RL>RHとすることが好ましい。
【0069】
これにより、第一回転体10と第二回転体20との最も狭い間隔の点から、回転が前後するにしたがって、この間隔を広げることができる。最も狭い間隔の点から徐々に、この間隔が広がるため、永久磁石11及び外周永久磁石21の磁束の変化を緩やかにすることができ、トルクの脈動を低減することができる。
【0070】
なお、
図8中のo1は第一回転体10の原点を示し、
図8中のo2は第二回転体20を示す。
【実施例5】
【0071】
図9は、実施例5における磁気歯車機構を断面的に示し、第一回転体と第二回転体との磁気ギャップの関係を示す説明図である。
【0072】
図9には、9つの第一回転体10と第二回転体20とを示す。
【0073】
本実施例では、第一回転体10の永久磁石11の極数は6極(3極対)に、第二回転体20の外周永久磁石21の極数は30極(15極対)に構成される。したがって、この場合、第一回転体10が5回転すると第二回転体20が1回転する。つまり、ギア比1:5の磁気歯車機構が構成される。
【0074】
図9中の矢印は、第一回転体10及び第二回転体20の回転方向を示すものである。なお、回転方向は、この方向に限定されるものではなく、モータ13を逆方向に回転させることにより、第一回転体10及び第二回転体20は、それぞれ逆方向に回転する。
【0075】
第一回転体10と第二回転体20との間のギャップをGHLと、第一回転体10と第一回転体10との間のギャップをGHHとする。
【0076】
ここで、第一回転体10と第二回転体20とは、それぞれの永久磁石11及び外周永久磁石21が作る磁束が、常に同方向に回転する。一方、第一回転体10と第一回転体10とは、それぞれの永久磁石11が作る磁束が、相対的に逆方向に回転する。
【0077】
このため、それぞれの永久磁石11が作る磁束が、吸引と反発とを繰り返す。第一回転体10と第一回転体10との間のギャップGHHが、第一回転体10と第二回転体20との間のギャップGHLよりも狭くなった場合、第一回転体10と第一回転体10との間の磁気的な干渉が大きくなり、第一回転体10が第二回転体20に対して伝達する回転動力に占める割合が大きくなる。
【0078】
つまり、回転動力を伝達するためのギャップGHLよりも、隣り合う第一回転体10間のギャップGHHを広くする必要がある。このようにGHL<GHHとすることで、隣り合う第一回転体10間の振動を抑制することができる。
【0079】
図10は、実施例2における第一回転体と第二回転体との磁気ギャップの関係を示す説明図である。
【0080】
実施例2では、外径の異なる2種類の第一回転体10を有する。外径の大きな第一回転体10aを1個、外径の小さな第一回転体10bを2個、合計3個の第一回転体10を用いたものである。
【0081】
また、実施例2では、外径の大きな第一回転体10aの永久磁石11の極数は16極(8極対)に、また、外径の小さな第一回転体10bの永久磁石11の極数は6極(3極対)に構成される。さらに、第二回転体20の外周永久磁石21の極数は24極(12極対)に構成される。
【0082】
例えば、外径の大きな第一回転体10aと第二回転体20とにおいては、外径の大きな第一回転体10aが1.5回転すると第二回転体20が1回転する。つまり、ギア比1:1.5の磁気歯車機構が構成される。
【0083】
同様に、例えば、外径の小さな第一回転体10bと第二回転体20とにおいては、外径の小さな第一回転体10bが5回転すると第二回転体20が1回転する。つまり、ギア比1:5の磁気歯車機構が構成される。
【0084】
図10中の矢印は、第一回転体10及び第二回転体20の回転方向を示すものである。なお、回転方向は、この方向に限定されるものではなく、モータ13を逆方向に回転させることにより、第一回転体10及び第二回転体20は、それぞれ逆方向に回転する。
【0085】
この場合、第一回転体10aと第二回転体20との間のギャップをG
HL1、第一回転体10aと第一回転体10bとのギャップをG
HH1とすると、
図9の説明で記載した理由と同様の理由により、G
HL1<G
HH1とすればよい。
【0086】
また、更に、第一回転体10bと第二回転体20との間のギャップをG
HL2、第一回転体10bと第一回転体10bとの間のギャップをG
HH2とすると、
図9の説明で記載した理由と同様の理由により、G
HL2<G
HH1、G
HL2<G
HH2とすればよい。
【0087】
また、第一回転体10aと第二回転体20との間のギャップGHL1を小さくすると、伝達する回転動力の限界が大きくなり、ギャップGHL1を大きくすると、この限界が小さくなり、最終的には0になる。したがって、第一回転体10aと第二回転体20との間のギャップGHL1を可変にすることにより、回転動力の伝達特性を可変にすることができる。また、同様に、第一回転体10bと第二回転体20との間のギャップGHL2を可変にすることにより、回転動力の伝達特性を可変にすることができる。
【0088】
つまり、出力軸における負荷特性が変化した場合であっても、第一回転体10と第二回転体20との間のギャップを調整することにより、必要な回転動力を伝達できる。
【0089】
このように、第一回転体10と第二回転体20との間のギャップを変えることにより、負荷特性の変化に対応した磁気歯車機構を実現することができる。
【実施例6】
【0090】
図11は、実施例6における磁気歯車機構とモータの駆動回路とを示す説明図である。
【0091】
本実施例では、複数(本実施例では4個)の第一回転体10と第二回転体20とを有する磁気歯車機構とモータの駆動回路とを有する駆動システムを示す。
【0092】
この駆動システムは、4個のモータ13を有し、4個のモータ13にそれぞれ接続するシャフト12と、それぞれのシャフト12に接続する第一回転体10と、第一回転体10の外周側に配置される第二回転体20とを有する磁気歯車機構を有し、そして、駆動回路50を有するものである。
【0093】
つまり、本実施例では、4個のモータ13に対して、1個の駆動回路50を接続したものである。例えば、モータ13を永久磁石モータとした場合、1個の駆動回路50で4個のモータ13を動作させるためには、永久磁石モータの回転子の位相(回転位置)を揃える必要がある。このため、急峻な負荷変動が少なく、徐々に負荷変動する場合の用途に適している。例えば、風を送るためのファンなどは急峻な負荷変動が少なく、回転数に応じて負荷変動するため、負荷変動を予測した駆動回路50を使用し、回転数やトルクを制御することができる。
【0094】
このように本実施例に記載する駆動システムは、個別に動作するモータ(動力源)13を有し、そして、モータ13の回転動力を伝達するシャフト(入力軸)12とシャフト12の周囲に磁性が交互になるように配置される永久磁石11とを、少なくとも2つ以上(本実施例では4個)有する第一回転体10と、第一回転体10の外周側に、第一回転体10の永久磁石11と対向し、磁性が交互になるように円周状に配置される外周永久磁石21と、外周永久磁石21の外周側に配置される外周鉄心22とを有する第二回転体20と、を有する磁気歯車機構を有し、更に、モータ13を駆動する駆動回路50を有するものである。そして、複数(本実施例では4個)のモータ13に対して、1個の駆動回路50が配置されるものである。
【0095】
4個のモータ13における第一回転体10と第二回転体20とのそれぞれの相対位置をずらすことにより(それぞれの脈動を、相対位置をずらして、相殺させることにより)脈動を小さくすることができ、4個のモータ13を安定に動作させることができる。
【実施例7】
【0096】
図12は、実施例7における磁気歯車機構とモータの駆動回路とを示す説明図である。
【0097】
本実施例では、複数(本実施例では2個)の第一回転体10と第二回転体20とを有する磁気歯車機構とモータの駆動回路とを有する駆動システムを示す。
【0098】
この駆動システムは、2個のモータ13を有し、2個のモータ13にそれぞれ接続するシャフト12と、それぞれのシャフト12に接続する第一回転体10と、第一回転体10の外周側に配置される第二回転体20とを有する磁気歯車機構を有し、そして、2つのモータ13にそれぞれ接続する駆動回路50を有するものである。
【0099】
つまり、本実施例では、2個のモータ13に対して、2個の駆動回路50を接続したものである。例えば、電気的な特性の異なるモータ13を接続した場合や動作パターンが異なるモータ13を接続した場合(例えば、低速では上側のモータを動作、中速では上側及び下側の2個のモータを動作、高速では下側のモータを動作)では、モータ13の動作範囲を任意に制御できる駆動回路50を接続することができる。
【0100】
また、上側のモータ13をメイン(主要)モータとして全速度域(全ての回転数の領域)で動作させ、下側のモータ13をサブ(補助)モータとして必要な時に、例えば、トルクを押し上げる時に動作させることができる。場合によっては、上側のモータ13で出力動作させ、下側のモータ13で回生動作させることも可能である。
【0101】
このように本実施例に記載する駆動システムは、個別に動作するモータ(動力源)13を有し、そして、モータ13の回転動力を伝達するシャフト(入力軸)12とシャフト12の周囲に磁性が交互になるように配置される永久磁石11とを、少なくとも2つ以上(本実施例では2個)有する第一回転体10と、第一回転体10の外周側に、第一回転体10の永久磁石11と対向し、磁性が交互になるように円周状に配置される外周永久磁石21と、外周永久磁石21の外周側に配置される外周鉄心22とを有する第二回転体20と、を有する磁気歯車機構を有し、更に、モータ13を駆動する駆動回路50を有するものである。そして、複数(本実施例では2個)のモータ13に対して、複数(本実施例では2個)の駆動回路50が配置されるものである。つまり、一つのモータ13に対して、一つの駆動回路50が配置されることになる。
【0102】
また、この駆動システムは、モータ13と第一回転体10との間にワンウェイクラッチ60を有するものである。必ずしもワンウェイクラッチ60である必要はなく、双方向のクラッチであってもよい。
【0103】
これにより、モータ13が動作しないときに、ワンウェイクラッチ60を開放することにより、第一回転体10の回転がモータ13に伝達されなくすることができる。例えば、モータ13を永久磁石モータとした場合、永久磁石の鉄損や機械損などの損失を低減することができる。
【実施例8】
【0104】
ここでは、比較例における磁気歯車機構と実施例8における磁気歯車機構とを比較する。
【0105】
図13は、比較例における磁気歯車機構を断面的に示す説明図である。
【0106】
図13に記載した比較例における磁気歯車機構は、モータ13と連結する第一回転体10と第一回転体10の外周側に形成される第二回転体20とを有する。第一回転体10の外周側の表面には永久磁石11が形成される。また、第二回転体20の内周側の表面には外周永久磁石21が形成される。永久磁石11と外周永久磁石21との間には、永久磁石11と外周永久磁石21とに対向するように磁気変調させるポールピース100(鉄と樹脂等の非磁性体とが交互に配置されるもの)が形成される。
【0107】
図14は、実施例8おける磁気歯車機構を断面的に示す説明図である。
【0108】
図14には、15個の第一回転体10と第二回転体20とを示す。
【0109】
本実施例では、第一回転体10の永久磁石11の極数は6極(3極対)に、第二回転体20の外周永久磁石21の極数は60極(30極対)に構成される。したがって、この場合、第一回転体10が10回転すると第二回転体20が1回転する。つまり、ギア比1:10の磁気歯車機構が構成される。
【0110】
図15は、比較例の磁気歯車機構と実施例8の磁気歯車機構とのスペックを比較する表である。
【0111】
図15に記載する表には、比較例の磁気歯車機構と実施例8の磁気歯車機構との比較における第一回転体の磁極対数、第二回転体の磁極対数、ポールピースの磁極数(比較例のみ)、ギア比、第二回転体の回転数、第二回転体のトルク、第一回転体の回転数、第一回転体のトルク(合計)が記載されている。
【0112】
低速大トルク用途の比較例の磁気歯車機構と低速大トルク用途の実施例8の磁気歯車機構との性能が、同等になるように設計した結果を示めしている。
【0113】
つまり、いずれも、第一回転体10と第二回転体20との間のギア比は1:10、第二回転体の回転数は0.1rpm、第二回転体のトルクは150kNm、第一回転体の回転数は1rpm、第一回転体のトルク(合計)は15kNmである。
【0114】
図16は、比較例における磁気歯車機構を示す説明図である。また、
図17は、実施例8おける磁気歯車機構を示す説明図である。
【0115】
磁界解析のシミュレーションを用いて、
図15に示した性能を満足する磁気歯車機構の体格を求めた。
図15に示した性能を満足するためには、比較例における磁気歯車機構は、外径1500mmでは、軸方向長さが908mm(
図16参照)となり、これに対して、実施例8における磁気歯車機構は、外径1500mmでは、軸方向長さが434mm(
図17参照)となる。
【0116】
このように、実施例8における磁気歯車機構は、比較例における磁気歯車機構に比較して、小さい体格でトルクを伝達することが可能である。逆に、実施例8における磁気歯車機構のギア体格(本実施例では軸方向長さ)を比較例における磁気歯車機構のギア体格(本実施例では軸方向長さ)と同等にすれば、磁束密度が低下し、高調波損失を抑制することが可能となり、効率のよい磁気歯車機構を構成することができる。
【0117】
さらに、ポールピース100は、第一回転体10と第二回転体20との間に形成され、周方向に断続的に形成する必要があり、強度不足が生じる可能性がある。一方、本実施例では、ポールピース100を排除することができ、信頼性が向上する。さらに、ポールピース100における損失も排除できるため、高い効率を実現することができる。
【0118】
図18は、比較例おける磁気歯車機構の電気角とトルクと関係を示す説明図である。また、
図19は、実施例8おける磁気歯車機構の電気角とトルクと関係を示す説明図である。
【0119】
図18及び
図19は、比較例おける磁気歯車機構と実施例8おける磁気歯車機構とのトルク脈動の特性をシミュレーションで求めたものであり、高いトルク成分の領域(High)と低いトルク成分の領域(Low)を示す。
【0120】
比較例おける磁気歯車機構は、ポールピース100を用いて磁気変調させ、周波数を変換してトルクを伝達するため、伝達するトルクに脈動が生じる(
図18参照)。これに対して、実施例8おける磁気歯車機構は、この脈動を抑制する(
図19参照)。これにより、振動騒音を低減すると共に、振動による不具合なども低減する。
【0121】
図20は、比較例の磁気歯車機構と実施例8の磁気歯車機構とのトルク密度を比較するグラフである。
図21は、比較例の磁気歯車機構と実施例8の磁気歯車機構とのギア体積を比較するグラフである。
図22は、比較例の磁気歯車機構と実施例8の磁気歯車機構との磁石体積を比較するグラフである。
【0122】
図20、
図21及び
図22は、比較例おける磁気歯車機構と実施例8おける磁気歯車機構との主要な特性(トルク密度、ギア体積、磁石体積)をシミュレーションで求めたものである。
【0123】
これらのグラフより、比較例おける磁気歯車機構に対して、実施例8おける磁気歯車機構は、トルク密度、ギア体積、磁石体積を大幅に向上させることができる。これらにより、高効率で信頼性の高い磁気歯車機構を提供することができる。
【0124】
なお、これら効果や特性は、実施例8に記載した磁気歯車機構に限定されるものではなく、他の実施例に記載した磁気歯車機構も有するものである。
【0125】
これら実施例によれば、複数の個別に動作するモータの出力(トルクや回転数)を効率よく伝達する低脈動の磁気歯車機構を実現することができる。複数のモータを個別に動作させることにより、モータを可変速で使用する場合にも適用できる。さらに、それぞれのモータを、最適な電気的な特性の動作条件で使用することができるため、高効率を実現できる。
【0126】
また、これら実施例によれば、第一回転体を小径化することができ、安全性、信頼性が向上する。
【0127】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成の置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加、削除、置換することも可能である。
【符号の説明】
【0128】
10、10a、10b、10c、10d 第一回転体
11 永久磁石
12 シャフト
13、13a、13b モータ
20 第二回転体
21、21a、21b 外周永久磁石
22 外周鉄心
40a、40b 出力特性
50 駆動回路
60 ワンウェイクラッチ
100 ポールピース